(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】トラフの支持構造及び支持具
(51)【国際特許分類】
A01K 39/014 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
A01K39/014
(21)【出願番号】P 2020537304
(86)(22)【出願日】2018-08-13
(86)【国際出願番号】 JP2018030187
(87)【国際公開番号】W WO2020035891
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390030661
【氏名又は名称】株式会社ハイテム
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】椿井 康司
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-9556(JP,U)
【文献】実開平5-91317(JP,U)
【文献】特開平11-341933(JP,A)
【文献】実公昭50-35021(JP,Y2)
【文献】韓国登録特許第10-1788289(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 5/00- 5/02
A01K 39/00-39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に立設された支柱、該支柱から前方に突出するように前記支柱に取付けられた支持具、及び、該支持具に支持されたトラフを具備する支持構造であり、
前記支柱は、
対面している一対の側壁と、
一対の該側壁を同じ側で連結している後壁と、
該後壁に貫設された孔部と、を具備し、
前記支持具は、
平板状で、その平面が上下及び前後方向に拡がっている支持具本体と、
該支持具本体から後方に向かって突出していると共に、その基端に下方に開口した第一スリットを有している第一係止片と、
前記支持具本体から前記第一係止片と直角をなす方向に突出していると共に、後方に開口した第二スリットを有している第二係止片と、
前記支持具本体の上部において上方に開口している凹部と、を具備するものであり、
前記凹部に前記トラフの底部が挿入されており、
前記孔部に前記第一係止片が挿入されていると共に、前記孔部の下縁部が前記第一スリットに挿入されており、
一対の前記側壁の一方の前端部が前記第二スリットに挿入されている
ことを特徴とするトラフの支持構造。
【請求項2】
前記第二係止片に、前記トラフの底部が載置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のトラフの支持構造。
【請求項3】
前記支持具は、
前記支持具本体における前記凹部より前方で、上方に向かって延出しているアーム部と、
該アーム部の上端から、前記支持具本体の平面と直角をなす方向に延出している上端片と、を更に具備し、
該上端片に、前記トラフの前縁部が引掛けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のトラフの支持構造。
【請求項4】
前記支持具は、前記アーム部の側辺から前記支持具本体の平面と直角をなす方向に延出している側方片を更に具備し、
該側方片に、前記トラフの一部が載置されている
ことを特徴とする請求項3に記載のトラフの支持構造。
【請求項5】
平板状で、その平面が上下及び前後方向に拡がる向きで使用される支持具本体と、
該支持具本体から後方に向かって突出していると共に、その基端に下方に開口した第一スリットを有している第一係止片と、
前記支持具本体から前記第一係止片と直角をなす方向に突出していると共に、後方に開口した第二スリットを有している第二係止片と、
トラフの底部を挿入するための凹部であって、前記支持具本体の上部において上方に開口している凹部と
を具備することを特徴とするトラフの支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養鶏施設においてケージ列に沿って配される給餌用のトラフを支持するための支持構造、及び、該支持構造に使用される支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数のケージで多数羽のトリを飼育する施設では、複数のケージが水平方向に並設されたケージ列が複数段に積層されている。各ケージ列に沿って、長いトラフが水平方向に配されており、その内部にトリの餌が供給される。一般的に、トラフを支持する支持具は、ケージを保持するフレームに取付けられており、隣接する支持具間にトラフが架け渡されている。
【0003】
従前より、フレームへの支持具の取付けや、支持具へのトラフの取付けは、ボルト及びナットによる締結やリベットの打ち込みよって行われることが多い。非常に多数のケージを備える大型施設では、このような取付け用の部材も膨大な数となる。そのため、部品点数が多くなり、管理が煩雑であると共にコストが嵩むという問題や、工具を用いた取付け作業に手間や時間がかかるという問題があった。
【0004】
そこで、本出願人は、
図9(a)~
図9(c)に示すように、取付け用の部材が不要であり、工具を使用することなくトラフを設置することができるトラフの支持具100及び支持構造を提案し、実施している。支持具100は、上下方向に立設された支柱60から前方に突出するように、支柱60に取付けられるものである。支柱60は、対面している一対の側壁61と、一対の側壁61を同じ側で連結している後壁62と、後壁62に貫設された孔部とを具備している。孔部は、支持具100一つ当たりに二つ設けられており、孔部65と孔部66が上下に離隔している。
【0005】
一方、支持具100は、平板状で、その平面が上下及び前後方向に拡がる向きで使用される支持具本体110と、支持具本体110から後方に向かって突出していると共に、その基端に下方に開口したスリット115を有している係止片111と、係止片111の直下で、係止片111と同じ方向に突出している補助片119と、支持具本体110の上部において上方に開口している凹部120とを具備している。この凹部120は、トラフの底部の外形に沿う形状に形成されている。
【0006】
この支持具100でトラフを支持する際、支柱60は、後壁62がケージの側面と平行となり、且つ、後壁62がケージと近接する向きで、設置面から立設させる。そして、支柱60における上方の孔部65に支持具100の係止片111を挿入すると共に、下方の孔部66に補助片119を挿入する。係止片111の基端には、下方に開口したスリット115が形成されているため、支持具100は自重により孔部65の下縁部をスリット115に挿入しつつ下降し、係止片111が孔部65に引掛けられた状態で、支持具100が支柱60に取付けられる。また、補助片119が孔部66に挿入されていることにより、支柱60に対する支持具100の取付け強度が補強される。
【0007】
多数のケージを保持しているフレームを構成している支柱60のうち、トラフの長さより短い距離だけ離隔している支柱60に、同じ高さで同様に支持具100を取付ける。支持具100それぞれの凹部120と支柱60の側壁61との間にトラフの底部を上方から嵌め込めば、二つの支持具100間にトラフが架け渡された状態となる。従って、支持具100及び支柱60によれば、ボルトやリベットのような取付け用の部材を要することなく、且つ、工具を使用することなく、トラフをケージ列に沿って設置することができる。
【0008】
このような支持構造は、隣接する支持具100間にトラフが架け渡された後では、非常に堅固である。ところが、支柱60においては、孔部65に挿入された係止片111とのクリアランス、及び、孔部66に挿入された補助片119とのクリアランスは不可避である。そのため、
図9(c)に矢印で示すように、支持具100が横方向に回動してしまい、がたつきが生じることがあった。支持具100の凹部120は、トラフの底部が丁度嵌め込まれる形状に形成されているため、支持具100が傾いていると、トラフの底部を凹部120に嵌め込みにくい。そのため、支持具100の姿勢の調整に手間がかかることがあり、取付け用の部材や工具の使用を要することなくトラフを設置することができる利点を、十分に発揮できない場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、取付け用の部材や工具の使用を要することなくトラフを設置することができると共に、そのための作業がより容易であるトラフの支持構造、及び、該支持構造に使用される支持具の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるトラフの支持構造(以下、単に「支持構造」と称することがある)は、
「上下方向に立設された支柱、該支柱から前方に突出するように前記支柱に取付けられた支持具、及び、該支持具に支持されたトラフを具備する支持構造であり、
前記支柱は、
対面している一対の側壁と、
一対の該側壁を同じ側で連結している後壁と、
該後壁に貫設された孔部と、を具備し、
前記支持具は、
平板状で、その平面が上下及び前後方向に拡がっている支持具本体と、
該支持具本体から後方に向かって突出していると共に、その基端に下方に開口した第一スリットを有している第一係止片と、
前記支持具本体から前記第一係止片と直角をなす方向に突出していると共に、後方に開口した第二スリットを有している第二係止片と、
前記支持具本体の上部において上方に開口している凹部と、を具備するものであり、
前記凹部に前記トラフの底部が挿入されており、
前記孔部に前記第一係止片が挿入されていると共に、前記孔部の下縁部が前記第一スリットに挿入されており、
一対の前記側壁の一方の前端部が前記第二スリットに挿入されている」ものである。
【0011】
本構成では、第一係止片の第一スリットに孔部の下縁部が挿入されていると共に、第二係止片の第二スリットに一方の側壁の前端部が挿入されていることによって、支持具が支柱に係止されている。つまり、支持具は、直交する方向に開口している第一スリットと第二スリットとの双方で、支柱において直交する方向に延びている部分に係止されている。これにより、支柱に取付けられた状態の支持具のがたつきが、有効に防止されている。
【0012】
従って、トラフの長さより短い距離だけ離隔している二つの支柱それぞれに、同じ高さで支持具を取付ければ、がたつくことのない支持具それぞれの凹部に、トラフの底部を上方から容易に嵌め込むことができる。これにより、取付け用の部材や工具の使用を要することなく、且つ、容易な作業で、隣接する支持具間にトラフを架け渡すことができる。
【0013】
本発明にかかる支持構造は、上記構成に加え、
「前記第二係止片に、前記トラフの底部が載置されている」ものとすることができる。
【0014】
本構成では、第二係止片にトラフの底部が載置されていることにより、支持具によるトラフの支持がより安定している。つまり、本構成における第二係止片は、がたつきなく支持具を支柱に係止させる作用と、トラフを安定的に支持具に支持させる作用とを兼ねている。
【0015】
本発明にかかる支持構造は、上記構成に加え、
「前記支持具は、
前記支持具本体における前記凹部より前方で、上方に向かって延出しているアーム部と、
該アーム部の上端から、前記支持具本体の平面と直角をなす方向に延出している上端片と、を更に具備し、
該上端片に、前記トラフの前縁部が引掛けられている」ものとすることができる。
【0016】
本構成では、支持具の上部における構成である上端片にトラフの前縁部が引掛けられている。これにより、トラフに上方からかかる荷重を、支持具によってより安定して支えることができる。
【0017】
本発明にかかる支持構造は、上記構成に加え、
「前記支持具は、前記アーム部の側辺から前記支持具本体の平面と直角をなす方向に延出している側方片を更に具備し、
該側方片に、前記トラフの一部が載置されている」ものとすることができる。
【0018】
本構成では、側方片にトラフの一部が載置されていることにより、支持具によるトラフの支持がより安定している。
【0019】
次に、本発明にかかるトラフの支持具は、
「平板状で、その平面が上下及び前後方向に拡がる向きで使用される支持具本体と、
該支持具本体から後方に向かって突出していると共に、その基端に下方に開口した第一スリットを有している第一係止片と、
前記支持具本体から前記第一係止片と直角をなす方向に突出していると共に、後方に開口した第二スリットを有している第二係止片と、
トラフの底部を挿入するための凹部であって、前記支持具本体の上部において上方に開口している凹部と
を具備する」ものである。
【0020】
これは、上記の支持構造に使用される支持具の構成である。ここでの「上下」及び「前後」は、支持具が支柱に取付けられて使用される状態における上下及び前後である。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、取付け用の部材や工具の使用を要することなくトラフを設置することができると共に、そのための作業がより容易であるトラフの支持構造、及び、該支持構造に使用される支持具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は第一実施形態の支持構造の分解斜視図である。
【
図2】
図2(a)は第一実施形態において支柱に支持具が取付けられている状態を支柱の中央で切断して示す縦断面図であり、
図2(b)はIIB-IIB線断面図である。
【
図3】
図3は第一実施形態において支柱に支持具が取付けられている状態の斜視図である。
【
図4】
図4は第一実施形態の支持構造の斜視図である。
【
図5】
図5は第二実施形態の支持構造の分解斜視図である。
【
図6】
図6(a)は第二実施形態において支柱に支持具が取付けられている状態を支柱の中央で切断して示す縦断面図であり、
図6(b)はVIB-VIB線断面図である。
【
図7】
図7は第二実施形態において支柱に支持具が取付けられている状態の斜視図である。
【
図8】
図8は第二実施形態の支持構造の斜視図である。
【
図9】
図9(a)は従来の支持具と支柱の斜視図であり、
図9(b)は
図9(a)の支持具が支柱に取付けられている状態を支柱の中央で切断して示す縦断面図であり、
図9(c)はIXC-IXC線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態について、
図1乃至
図8を用いて説明する。まず、第一実施形態の支持構造、及び、該支持構造に使用される支持具1について、
図1乃至
図4を用いて説明する。第一実施形態の支持構造は、支柱60に取付けられた支持具1にトラフ50aが支持されているものである。
【0024】
支柱60は、
図9(a)~
図9(c)を用いて説明した従来技術における支柱と同じである。すなわち、支柱60は、対面している一対の側壁61と、一対の側壁61を同じ側で連結している後壁62と、後壁62に貫設された孔部とを具備している。孔部は、支持具1一つ当たりに二つ設けられており、孔部65と孔部66が上下に離隔している。また、孔部65,66は、それぞれ後壁62において幅方向の中央に形成されており、上下に細長い角孔である。なお、図では省略しているが、支柱60の長さは、ケージ列が複数段に積層された全高以上であり、孔部65と孔部66の対の数は、ケージ列が積層される段の数に応じて設定されている。
【0025】
支持具1が支持対象とするトラフ50aは、細長い長方形の底面部51aと、底面部51aの後端辺から立ち上がった後面部52aと、底面部51aの前端辺から立ち上がった前面部とを備えている。底面部51aは水平面であり、後面部52aは底面部51aに対して直角をなしている。一方、前面部は、底面部51aから直角に立ち上がった第一前面部53aと、第一前面部53aの上端辺から更に上方に向かって延出しつつ前方に向かって傾斜している第二前面部53bとからなる。また、トラフ50aは、第二前面部53bの上端に前縁部を有している。この前縁部は、第二前面部53bの上端辺から上方に延出した第一前縁部54aと、第一前縁部54aの上端辺から前方に向かって直角に延出した第二前縁部54bと、第二前縁部54bの前端辺から下方に向かって直角に延出している第三前縁部54cとからなる。なお、トラフ50aは、底面部51aの上を走行させるチェーンによって餌をフィードするチェーンフィード型である。
【0026】
支持具1は、支持具本体10と、第一係止片11と、第二係止片12と、凹部20aと、アーム部と、上端片38と、補助片19とを具備している。支持具本体10は、平板状であり、その平面が上下及び前後方向に拡がる向きで使用されるものである。第一係止片11は平板状であり、支持具本体10から後方に向かって突出している。第一係止片11は、その基端に下方に開口した第一スリット15を有している。第一係止片11の上下方向の長さは、孔部65の上下方向の長さより短く設定されていると共に、第一係止片11の厚さは、孔部65の幅より小さく設定されている。また、第一スリット15の幅は、支柱60の後壁62の厚さより僅かに大きく設定されている。
【0027】
凹部20aは、支持具本体10の上部において上方に開口している。凹部20aは、支持具本体10における後部において上下に延びている第一縦辺21と、支持具本体10における前部において上下に延びている第二縦辺22と、第一縦辺21及び第二縦辺22それぞれの下端を水平に結んでいる底辺23とで囲まれた空間である。凹部20aはトラフ50aの底部の外形に合わせた形状であり、第二縦辺22の長さはトラフ50aの第一前面部53aの高さにほぼ等しい。
【0028】
第二係止片12は平板状であり、支持具本体10から第一係止片11と直角をなす方向に、すなわち、支持具本体10の平面と直角をなす方向に突出している。本実施形態の第二係止片12は、凹部20aの底辺23から延出している。第二係止片12は、後方に開口した第二スリット16を有しており、第二係止片12の基端から第二スリット16までの長さは、支柱60の後壁62の幅長さの二分の一にほぼ等しい。
【0029】
アーム部は、支持具本体10に連続する平板状であり、支持具本体10において凹部20aより前方で、上方に向かって延出している。アーム部は、凹部20aの第二縦辺22の上端から、前方に向かって傾斜している傾斜辺35を有する傾斜アーム部31と、傾斜アーム部31の上端で上方に向かって延出している垂直アーム部32とからなり、垂直アーム部32の上端辺36は水平である。ここで、傾斜辺35が第二縦辺22となす角度はトラフ50aの第二前面部53bが第一前面部53aとなす角度とほぼ等しい。更に、垂直アーム部32が傾斜アーム部31の上端から上方に突出している長さは、トラフ50aの第一前縁部54aの高さとほぼ等しい。また、垂直アーム部32の上端辺36の前後方向の長さは、トラフ50aの第二前縁部54bが第一前縁部54aの上端辺から前方に向かって延出している長さにほぼ等しい。
【0030】
上端片38は、垂直アーム部32の上端辺36から、支持具本体10の平面と直角をなす方向に延出している。ここで、上端片38と第二係止片12は、共に支持具本体10の平面と直角をなしているものであるが、ここでは、上端片38が支持具本体10から延出している方向と、第二係止片12が支持具本体10から延出している方向が同じである場合を図示している。
【0031】
補助片19は平板状であり、第一係止片11の直下で、第一係止片11と同じ方向に支持具本体10から突出している。補助片19の上下方向の長さは、孔部66の上下方向の長さから第一スリット15の長さを減算した長さより、短く設定されている。また、補助片19の厚さは、孔部66の幅より小さく設定されている。また、第一係止片11と補助片19とが離隔している距離は、孔部65と孔部66が離隔している距離とほぼ等しい。
【0032】
この支持具1でトラフ50aを支持する際、支柱60は、後壁62がケージの側面と平行となり、且つ、後壁62がケージと近接する向きで、設置面から立設させる。そして、支柱60の孔部65に支持具1の第一係止片11を挿入すると共に、孔部66に補助片19を挿入する。支持具1では第一係止片11と直角に第二係止片12が延出しており、第二係止片12は後方に開口する第二スリット16を有している。そして、第二係止片12の基端から第二スリット16までの長さは、後壁62の幅長さの二分の一にほぼ等しい。そのため、後壁62において幅方向の中央に位置する孔部65に第一係止片11を挿入するのに伴い、支柱60の側壁61の一方の前端部が第二スリット16に挿入される。
【0033】
第一係止片11の基端には、下方に開口した第一スリット15が形成されているため、支持具1は自重により孔部65の下縁部を第一スリット15に挿入しつつ下降し、第一係止片11が孔部に引掛けられた状態となる。このとき、支持具1は、第二スリット16に側壁61の前端部を挿入させた状態のまま、支柱60に沿ってスライドしつつ下降する。
【0034】
これにより、支持具1が支柱60に取付けられた状態となる。第一係止片11が孔部65に挿入されていると共に、上下方向に離隔した補助片19が孔部66に挿入されていることにより、支柱60に対する支持具1の取付け強度が補強されていると共に、上下方向における支持具1の姿勢が安定する。
【0035】
加えて、支持具1は、直交する方向に開口している第一スリット15と第二スリット16との双方で、支柱60において直交する方向に延びている部分、すなわち、後壁62における孔部65の下縁部と側壁61とに係止されているため、支柱60に取付けられた状態の支持具1のがたつきが防止されている。
【0036】
多数のケージを保持しているフレームを構成している支柱60のうち、トラフ50aの長さより短い距離だけ離隔している支柱60に、同じ高さで同様に支持具1を取付ける。支持具1それぞれの凹部20aと支柱60の側壁61との間にトラフ50aの底部を上方から嵌め込めば、二つの支持具1間にトラフ50aが架け渡された状態となる。支柱60に取付けられた状態の支持具1ががたつくことがないため、凹部20aと側壁61との間に丁度嵌め込まれる形状及び大きさに形成されたトラフ50aの底部を、問題なく凹部20aに嵌め込むことができ、隣接する支柱60間にトラフ50aを容易に架け渡すことができる。
【0037】
本実施形態では、第二係止片12が凹部20aの底辺23から延出しているため、トラフ50aの底部を凹部20aと側壁61との間に嵌め込むと、トラフ50aの底面部51aが第二係止片12に載置される。これにより、支持具1が下方からトラフ50aを支持する状態がより安定する。つまり、支持具1の第二係止片12は、がたつきなく支持具1を支柱60に係止させる作用と、トラフ50aを安定的に支持具1に支持させる作用とを兼ねている。
【0038】
また、傾斜アーム部31における長さ及び角度の設定が、上述したようにトラフ50aに合わせたものであるため、凹部20aと側壁61との間にトラフ50aの底部を嵌め込むと、トラフ50aの第二前面部53bが支持具1の傾斜辺35に当接する。これにより、支持具1が下方からトラフ50aを支持する状態が更に安定する。
【0039】
加えて、垂直アーム部32及び上端片38における長さ及び角度の設定が、上述したようにトラフ50aに合わせたものであるため、凹部20aと側壁61との間にトラフ50aの底部を嵌め込むのと同時に、トラフ50aの前縁部が上端片38に引掛けられた状態となると共に、第二前縁部54bが上端片38に当接する。これにより、トラフ50aに上方からかかる荷重を支持具1によって支える状態がより安定する。
【0040】
次に、第二実施形態の支持構造、及び、該支持構造に使用される支持具2について、
図5乃至
図8を用いて説明する。第二実施形態の支持構造は、支柱60に取付けられた支持具2にトラフ50eが支持されているものである。支柱60は、第一実施形態と共通である。支持具2及びトラフ50eについても、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0041】
トラフ50eがトラフ50aと相違する点は、底面部51e、後面部、及び前面部53eの形状である。トラフ50aの底面部51aが水平面であったのに対し、トラフ50eの底面部51eは、長手方向に直交する断面がV字形である。後面部は、底面部51eの後端辺から上方に延出しつつ後方に傾斜している第一後面部52eと、第一後面部52eの上端辺から上方に延出している第二後面部52fとからなる。前面部53eは、底面部51eの前端辺から上方に延出しつつ前方に向かって傾斜している。また、トラフ50eは、前面部53eの上端に前縁部を有しているが、この前縁部はトラフ50eにおける前縁部(第一前縁部54a、第二前縁部54b、第三前縁部54c)と同様の構成である。なお、トラフ50eは、底面部51eの形状に対応しているV字形の先端部を有するスクレーパの摺動により餌をフィードするレベルフィード型である。
【0042】
支持具2が支持具1と相違する点は、主に、第二係止片12の位置と、凹部20eの形状と、側方片40を有している点である。凹部20eは、第一底辺25、第二底辺26、及び後部傾斜辺27によって囲まれた空間である。第一底辺25及び第二底辺26は、トラフ50eの底面部51eの断面形状であるV字形とほぼ等しいV字形をなしている。後部傾斜辺27は、第一底辺25の後端から上方に向かって延出しつつ後方に向かって傾斜している。後部傾斜辺27が傾斜している角度は、トラフ50eの第一後面部52eの角度とほぼ等しい。
【0043】
支持具1の第二係止片12は凹部20eの底辺から延出していたのに対し、支持具2の第二係止片12は、支持具本体10における凹部20eより後方の部分の上端辺から延出している。支持具本体10に対する位置を除けば、支持具2の第二係止片12と支持具1の第二係止片12とは同一の構成である。
【0044】
支持具2のアーム部は、支持具1のアーム部と同様に傾斜辺35を有する傾斜アーム部31と、傾斜アーム部31の上端で上方に向かって延出している垂直アーム部32とからなるが、支持具1では第二縦辺22の上端から傾斜辺35が延出していたのに対し、支持具2では第二底辺26の上端から傾斜辺35が延出している点で相違する。垂直アーム部32については、第一実施形態と同様である。また、垂直アーム部32の上端に設けられた上端片38も、第一実施形態と同様である。
【0045】
側方片40は平板状であり、傾斜辺35から支持具本体10の平面と直角をなす方向に延出している。支持具2における傾斜辺35の角度は、トラフ50eにおける前面部53eの角度とほぼ同一である。
【0046】
このような構成の支持具2であっても、第一係止片11を支柱60の孔部65に挿入した際に、第一スリット15に孔部65の下縁部が挿入されると共に、第二係止片12の第二スリット16に一方の側壁61の前端部が挿入される。これにより、第一実施形態と同様に、支柱60に取付けられた支持具2のがたつきが防止される。
【0047】
第一実施形態では、がたつきなく支持具2を支柱60に係止させる作用と、トラフ50eを載置する作用とを第二係止片12が兼ねていたのに対し、第二実施形態では、トラフ50eを載置する作用は側方片40が発揮している。すなわち、支持具2の凹部20eの断面形状におけるV字形は、トラフ50eの底面部51eの断面形状であるV字形とほぼ等しく、支持具2における傾斜辺35の角度は、トラフ50eにおける前面部53eの角度とほぼ同一であるため、トラフ50eの底部を凹部20eに嵌め込むと、トラフ50eの前面部53eが支持具2の傾斜辺35に当接すると共に、傾斜辺35から延出している側方片40に前面部53eが載置される。同時に、トラフ50eの第一後面部52eが、傾斜角度の等しい支持具2の後部傾斜辺27に載置される。
【0048】
なお、支持具2の凹部20eにトラフ50eの底部を嵌め込むのと同時に、トラフ50eの前縁部が上端片38に引掛けられた状態となると共に、第二前縁部54bが上端片38に当接することは、第一実施形態と同様である。
【0049】
以上のように、第一実施形態及び第二実施形態の支持構造によれば、支持具1,2は、直交する方向に開口している第一スリット15と第二スリット16との双方で、支柱60において直交する方向に延びている部分に係止されている。そのため、支柱60に取付けられた状態の支持具1,2のがたつきが防止されており、隣接する支柱60間にトラフ50a,50eを架け渡す作業を容易に行うことができる。
【0050】
また、トラフの底部を凹部に嵌め込んだ際、第一実施形態ではトラフ50aの底面部が支持具1の第二係止片12に載置され、第二実施形態ではトラフ50eの前面部53eが支持具2の側方片40に載置されるため、支持具によるトラフの支持が安定したものとなっている。
【0051】
更に、第一実施形態及び第二実施形態の何れにおいても、支持具の凹部にトラフの底部を嵌め込むのと同時に、トラフの前縁部が上端片38に引掛けられた状態となると共に、第二前縁部54bが上端片38に当接するため、支持具によるトラフの支持がより安定したものとなっている。
【0052】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0053】
例えば、上記の実施形態では、共に支持具本体10の平面と直角をなしている上端片38と第二係止片12が、支持具本体10に対して同一方向に延出している場合を例示した。これに限定されず、上端片38と第二係止片12が支持具本体10に対して反対方向に延出している構成としても、同様の作用効果が発揮される。
【0054】
また、上記では、第二係止片12でトラフ50aを載置する支持具1と、側方片40でトラフ50eを載置する支持具2を例示した。これに限定されず、支持具を、第二係止片及び側方片の双方でトラフを載置する構成とすることができる。