(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】タービン装置及び発電装置
(51)【国際特許分類】
F03D 1/04 20060101AFI20220113BHJP
F03D 80/00 20160101ALI20220113BHJP
F03B 3/04 20060101ALI20220113BHJP
F03B 3/12 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
F03D1/04 Z
F03D80/00
F03B3/04
F03B3/12
(21)【出願番号】P 2021093161
(22)【出願日】2021-06-02
【審査請求日】2021-08-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521241188
【氏名又は名称】谷口 伸幸
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】谷口 伸幸
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特許第5413757(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3160457(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/04
F03D 80/00
F03B 3/04
F03B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブレードを有し、軸線を中心に回転可能なタービンと、
外側に向く第1開口、及び、前記タービンに向き且つ前記第1開口よりも開口面積が小さい第2開口を各々が有し、前記軸線を中心とする円周方向に沿って配置された複数の流路部と
、
前記複数の流路部のうち隣り合う流路部を仕切る仕切り部と、を備え、
前記複数の流路部は、各々の前記第1開口から前記第2開口に流れる流体が前記タービンを同じ回転方向に回転させるように、各々の前記第2開口が前記軸線よりも前記回転方向に偏った位置であって前記タービンが回転する過程で前記複数のブレードのうち任意のブレードと向かい合う位置に設けられ
、
前記仕切り部は、一対の壁部を有し、
前記一対の壁部は、前記タービンに向く各々の内側端部が開放されている一方で、各々の外側端部が閉塞されており、
前記複数の流路部のうち所定の流路部を挟んで隣り合う前記仕切り部を、第1仕切り部及び第2仕切り部とすると、前記第1仕切り部及び前記第2仕切り部の各々の前記所定の流路部に向く面は、前記所定の流路部における前記第1開口から前記第2開口に向かって徐々に曲がる曲面を有する、
タービン装置。
【請求項2】
前記複数の流路部に対応して複数ある前記第1開口は、前記タービン装置の全周に渡って配置されている、
請求項1に記載のタービン装置。
【請求項3】
前記複数のブレードは、前記円周方向に沿って等間隔に設けられ、各々が、流体を主に受ける主面部と、前記主面部の外縁から迫り出す迫出部とを有する、
請求項1又は2に記載のタービン装置。
【請求項4】
前記タービンは、前記軸線が縦方向に沿う縦軸型である、
請求項1~
3のいずれか1項に記載のタービン装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のタービン装置と、
前記タービンの回転に基づいて発電する発電機と、を備える、
発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン装置及び発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体のエネルギーによりタービンを回転させるタービン装置が、例えば、特許文献1、2に記載されている。特許文献1に記載の装置は、水平方向の風を受けてプロペラ型のタービンを回転させる水平軸風車である。特許文献2に記載の装置は、タービンの円周方向から風を入れる一つの吸入口と、吸入口から入ってタービンを回転させた風を排出する一つの排出口とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-188455号公報
【文献】登録実用新案第3196037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2の記載の装置の構成では、タービンの回転させる風などの流体の向きが非常に限定される。そのため、これらの装置は、自然界では様々な方向に流れる流体のエネルギーを充分に活かせているとは言えない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、流体のエネルギーを効率良くタービンの回転動力に変換できるタービン装置及び発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るタービン装置は、
複数のブレードを有し、軸線を中心に回転可能なタービンと、
外側に向く第1開口、及び、前記タービンに向き且つ前記第1開口よりも開口面積が小さい第2開口を各々が有し、前記軸線を中心とする円周方向に沿って配置された複数の流路部と、
前記複数の流路部のうち隣り合う流路部を仕切る仕切り部と、を備え、
前記複数の流路部は、各々の前記第1開口から前記第2開口に流れる流体が前記タービンを同じ回転方向に回転させるように、各々の前記第2開口が前記軸線よりも前記回転方向に偏った位置であって前記タービンが回転する過程で前記複数のブレードのうち任意のブレードと向かい合う位置に設けられ、
前記仕切り部は、一対の壁部を有し、
前記一対の壁部は、前記タービンに向く各々の内側端部が開放されている一方で、各々の外側端部が閉塞されており、
前記複数の流路部のうち所定の流路部を挟んで隣り合う前記仕切り部を、第1仕切り部及び第2仕切り部とすると、前記第1仕切り部及び前記第2仕切り部の各々の前記所定の流路部に向く面は、前記所定の流路部における前記第1開口から前記第2開口に向かって徐々に曲がる曲面を有する。
【0007】
前記複数の流路部に対応して複数ある前記第1開口は、前記タービン装置の全周に渡って配置されている、ようにしてもよい。
【0008】
前記複数のブレードは、前記円周方向に沿って等間隔に設けられ、各々が、流体を主に受ける主面部と、前記主面部の外縁から迫り出す迫出部とを有する、ようにしてもよい。
【0011】
前記タービンは、前記軸線が縦方向に沿う縦軸型であってもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る発電装置は、
前記タービン装置と、
前記タービンの回転に基づいて発電する発電機と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流体のエネルギーを効率良くタービンの回転動力に変換できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発電装置の構成を示す図。
【
図2】同上実施形態に係るタービン装置の
図1に示すA-A線での断面図。
【
図3】同上実施形態に係るブレードの
図1に示すB-B線での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示す発電装置1は、風力発電を行うものであり、タービン10を有するタービン装置2と、タービン10の回転に基づいて発電する発電機3と、を備える。
図1では、タービン装置2を側面図で表すとともに、発電機3を模式的に示している。
【0017】
タービン装置2は、
図1又は
図2に示すように、タービン10と、基板20と、天板21と、収容室30と、複数の流路部40と、複数の仕切り部50と、を備える。
【0018】
タービン10は、軸線AXを中心に回転可能であり、回転部11と、複数のブレード12とを備える。回転部11は、軸線AXに沿う円柱状に形成されている。回転部11は、基板20及び天板21の各々に、図示せぬベアリングを介して軸線AXを中心に回転可能に支持されている。
図2に示すように、複数のブレード12の各々は、基端が回転部11に固定されて先端が軸線AXを中心とする半径方向に延びている。複数のブレード12は、軸線AXを中心とする円周方向に沿って等間隔に設けられている。この実施形態では、4枚のブレード12がタービン10に設けられている。ブレード12の詳細形状については後述する。
【0019】
基板20及び天板21は、
図1に示すように、軸線AXが延びる方向に間隔を開けて互いに対向する。基板20及び天板21は、各々が正方形状であり、互いに平行に配置されている。基板20と天板21の間に、複数の流路部40及び複数の仕切り部50が位置する。
【0020】
収容室30は、
図2に示すように、複数の流路部40及び複数の仕切り部50に囲まれた空間部であり、内部にタービン10を収容する。
【0021】
複数の流路部40は、
図2に示すように、軸線AXを中心とする円周方向に沿って設けられ、各々が外部から流入した風(流体)をタービン10に導くダクト状の部分である。複数の流路部40の各々は、タービン装置2の外側(詳しくは、側面方向の外側)に向く第1開口H1と、タービン10に向く第2開口H2とを有する。つまり、一つの流路部40は、一つの第1開口H1と一つの第2開口H2を有する。複数の流路部40の各々は、第2開口H2を介して収容室30と連通する。
【0022】
この実施形態では流路部40が4つ設けられている。タービン装置2の外側に向く第1開口H1は、正方形状の基板20の各辺に対応して設けられている。つまり、複数の流路部40に対応して複数ある第1開口H1は、タービン装置2の全周に渡って配置されている。この実施形態では、4つの第1開口H1の幅の合計は、タービン装置2の全周と略等しい。より詳細には、4つの第1開口H1の幅の合計と、後述するように4つある仕切り部50の外周端の厚みの合計とを合算した長さが、タービン装置2の全周の長さである。
【0023】
また、第2開口H2は、第1開口H1よりも開口面積が小さい。第1開口H1及び第2開口H2の各々の開口面積は、流路部40に風(流体)が流れる断面と見なせる。ここで、第1開口H1における断面積をA1、風速(流速)をU1とし、第2開口H2における断面積をA2、風速(流速)をU2とする。すると、流体力学における連続の式により、U2=A1/A2×U1が成り立つ。そのため、流路部40に第1開口H1から入って第2開口H2からタービン10に向かう流体の流速は、第1開口H1の通過時点よりも(A1/A2)倍だけ速くなる。第1開口H1及び第2開口H2の各々の開口面積は、A1>A2の条件を満たせば任意であるが、例えば、第2開口H2は、第1開口H1の1/3の開口面積に設定されている。第2開口H2を第1開口H1の1/3の開口面積に設定すれば、流路部40を経てタービン10に到達する風を3倍に加速させることができるため、例えば、1.5m/s程度の風速であってもタービン10を充分に回転させることができる。これは、ある程度大きな風速が必要である従来の風力発電用の風車に比べて大きな利点である。
【0024】
流路部40が有する第2開口H2は、
図1に示すように、軸線AXよりもタービン10の回転方向Dに偏った位置であって、
図2に示すように、タービン10が回転する過程で前記複数のブレード12のうち任意のブレード12と向かい合う位置に設けられている。なお、この実施形態におけるタービン10の回転方向Dは、
図2に示すように反時計方向であって、
図1に示すようにタービン装置2を側面方向から見た場合には右方向である。
【0025】
上述の第2開口H2の位置は、複数の流路部40の各々について成り立つ。つまり、複数の流路部40は、各々の第1開口H1から第2開口H2に流れる流体がタービン10を同じ回転方向Dに回転させるように、各々の第2開口H2が軸線AXよりも回転方向Dに偏った位置であってタービン10が回転する過程で複数のブレード12のうち任意のブレード12と向かい合う位置に設けられている。
【0026】
仕切り部50は、隣り合う流路部40を仕切る。したがって、この実施形態では、仕切り部50は、流路部40と同数の4つ設けられている。なお、一つの流路部40は、隣り合う仕切り部50、基板20及び天板21に囲まれた部分によって形成される。
【0027】
ここで、
図2に示すように、複数の流路部40のうち所定の流路部40を挟んで隣り合う仕切り部50を、第1仕切り部51及び第2仕切り部52とする。ここでの説明では、所定の流路部40を
図2での6時方向に向く第1開口H1を有するものとしている。第1仕切り部51及び第2仕切り部52の各々の所定の流路部40に向く面51a,52aは、所定の流路部40における第1開口H1から第2開口H2に向かって徐々に曲がる曲面を有する。つまり、流路部40の幅方向の形状を定める面51a,52aがこのような曲面を有することで、第1開口H1から第2開口H2に流体を効率良く導くことができる。
【0028】
複数の仕切り部50の各々は、一対の壁部61,62を有する。一対の壁部61,62において、壁部61は壁部62よりも回転方向Dに偏って位置する。一対の壁部61,62は、タービン10に向く各々の内側端部が開放されている一方で、各々の外側端部が閉塞されている。これにより、1つの仕切り部50を構成する一対の壁部61,62の間には、タービン装置2の外部から流れ込んだ流体のうち、タービン10の回転に不要な成分の流体を収容室30から逃がす退避室60が形成される。この実施形態では、1つの仕切り部50を構成する一対の壁部61,62の外側端部は、正方形状の基板20の角に至っている。
【0029】
前述した第1仕切り部51が有する面51aは、具体的には、第1仕切り部51の壁部61の壁面によって構成される。また、第2仕切り部52が有する面52aは、第2仕切り部52の壁部62の壁面によって構成される。以上に説明した、タービン装置2における複数の流路部40及び複数の仕切り部50の形状は、軸線AXを中心として4回対称(4相対称)の回転対称性を有する。
【0030】
ここで、ブレード12の詳細形状について説明する。ブレード12は、流体を主に受ける主面部120と、主面部120の外縁から迫り出す迫出部121とを有する。
【0031】
主面部120は、矩形の平板状に形成され、タービン10が回転する過程で任意の第2開口H2と対向する主面を有する部分である。つまり、この実施形態では、当該主面は平坦面である。また、当該主面の法線は、軸線AXと直交する。
【0032】
迫出部121は、
図1に示すように、主面部120の上端に接続された第1部分121aと、主面部120の下端に接続された第2部分121bと、主面部120の先端(軸線AXを中心とする半径方向の外端)に接続された第3部分121cとを有する。
図2及び
図3に示すように、迫出部121は、主面部120から回転方向Dの反対方向に迫り出している。このように形成された迫出部121により、ブレード12の外縁部に当たる流体を主面部120に集めることができる。なお、主面部120に対する迫出部121の傾きは任意であり、理論計算と実験の少なくともいずれかを経て、適切に設定されればよい。
【0033】
以上に説明した主面部120及び迫出部121は、複数のブレード12の各々が有する。したがって、タービン装置2における複数のブレード12の形状は、軸線AXを中心として4回対称(4相対称)の回転対称性を有する。
【0034】
この実施形態のタービン10は、軸線AXが縦方向に沿う縦軸型であり、主に水平方向に流れる流体のエネルギーにより回転する。「軸線AXが縦方向に沿う」とは、タービン装置2が設置される設置面(地面など)の法線方向に軸線AXが概ね沿っていればよく、軸線AXが鉛直方向に一致することだけでなく、タービン装置2の設置環境に応じて、軸線AXが鉛直方向からある程度傾いて設定されること、山、丘陵などの傾斜面の法線方向に沿って設定されること等を含む。したがって、縦軸型のタービン10とは、軸線AXが鉛直方向に設定されたタービン10だけでなく、軸線AXと概ね直交する方向から流れ込む流体によって回転可能に構成されたタービン10を含む。この実施形態のタービン10は、主に水平方向に流れる流体のエネルギーにより回転する。
【0035】
複数のブレード12は、水平方向から流体を受けた際に、軸線AXと平行な方向に揚力ができるだけ生じない形状に形成される。これにより、流体のエネルギーが回転動力に変換される際のエネルギーロスを抑制でき、タービン10の回転部11とこれを支持する部分とに無用な応力が生じることを抑制できる。
【0036】
図1に示す発電機3は、タービン10の回転部11の回転を電気に変換する。発電機3としては、周知の構成を適宜採用することができる。なお、発電機3と回転部11の間に、図示せぬ増速機が設けられてもよい。発電機3で発電された電気は、変圧器で昇圧されて送電線又は配電線に流されてもよいし、バッテリーに蓄電されてもよい。発電装置1の構成の説明は以上である。
【0037】
続いて、タービン装置2の動作を主に
図2を参照して説明する。
【0038】
(第1の場合)
まず、複数の流路部40のうち、一つの流路部40に風が流れ込む第1の場合について考える。ここでは説明便宜上、
図2の下から上に向かい風が吹くものとする。
【0039】
図2の6時方向に向く第1開口H1を有する流路部40に、第1開口H1から風が入ると、前述の連続の式を用いて説明したように、当該流路部40の第2開口H2から加速された風がタービン10に向かって流れ出す。
【0040】
タービン10は、第2開口H2からの風をブレード12が受けて回転方向D(反時計方向)に回転する。前述のように、第2開口H2は軸線AXよりも回転方向Dに偏った位置に設けられているため、タービン10が回転する過程で、複数のブレード12が順次、第2開口H2と向かい合い、当該第2開口H2から風を受ける。つまり、タービン10は、各ブレード12が第2開口H2と向かい合う位置関係になる度に、水平方向の風を受ける。なお、水平方向の風が任意のブレード12に当たる際、当該ブレード12が有する迫出部121によって、風が主面部120に集められる。これにより、タービン10は、水平方向の風をブレード12の主面部120で効率良く受けることができる。
【0041】
上述のように、6時方向に向く第1開口H1を有する流路部40に入り込んでタービン10を回転させた風は、他の3つ流路部40(第1開口H1が9時、12時、3時の各方向に向く3つの流路部40)の少なくともいずれかを通って、タービン装置2の外部に排出される。この際、外側に向く第1開口H1は第2開口H2よりも開口面積が大きいため、少ない流体抵抗でタービン装置2の外部に風を排出することができる。
【0042】
なお、即座にタービン装置2の外部に排出されない風であって、タービン10の回転に不要な成分の風(例えば、ブレード12で跳ね返った風など)については、各仕切り部50に設けられた退避室60に逃がすことができる。
【0043】
(第2の場合)
続いて、複数の流路部40のうち、二つの流路部40に風が流れ込む第2の場合を考える。ここでは説明便宜上、
図2の左下から右上に向かって斜めに風が吹くものとする。
【0044】
上記のように風が斜めに吹くと、風の一部は6時方向に向く第1開口H1を有する流路部40に入り込み、風の他の一部は9時方向に向く第1開口H1を有する流路部40に入り込む。
【0045】
6時方向に向く第1開口H1を有する流路部40に入り込んだ風は、当該流路部40によって風向きが制御された上で加速され、当該流路部40の第2開口H2からタービン10に向かって流れ出す。9時方向に向く第1開口H1を有する流路部40に入り込んだ風は、当該流路部40によって風向きが制御された上で加速され、当該流路部40の第2開口H2からタービン10に向かって流れ出す。
【0046】
図2に示すように、タービン10の各ブレード12が、各流路部40の第2開口H2と対向している状態を用いて説明すると、6時方向に向く第1開口H1を有する流路部40に入り込んだ風は、当該流路部40の第2開口H2から、
図2で3時方向に延びるブレード12に当たり、タービン10を回転方向Dに回す。また、9時方向に向く第1開口H1を有する流路部40に入り込んだ風は、当該流路部40の第2開口H2から、
図2で6時方向に延びるブレード12に当たり、タービン10を回転方向Dに回す。このように、双方の流路部40の各々の第2開口H2からタービン10に向かう風は、タービン10の回転方向Dへの回転を妨げるように干渉せず、いずれのエネルギーもタービン10の回転方向Dへの回転動力に変換される。双方の流路部40に入り込んでタービン10を回転させた風は、他の2つの流路部40(第1開口H1が12時、3時の各方向に向く2つの流路部40)の少なくともいずれかを通って、タービン装置2の外部に排出される。
【0047】
(第3の場合)
ここで、タービン装置2の設置環境によっては、互いに逆向きに進む風がタービン装置2に入り込む第3の場合も想定される。この場合を考慮して、
図2の下から上に向かう風と、上から下に向かう風との双方がタービン装置2に入り込む事態を考える。
【0048】
6時方向に向く第1開口H1を有する流路部40に入り込んだ風(
図2の下から上に向かう風)は、当該流路部40によって風向きが制御された上で加速され、当該流路部40の第2開口H2からタービン10に向かって流れ出す。12時方向に向く第1開口H1を有する流路部40に入り込んだ風(
図2の上から下に向かう風)は、当該流路部40によって風向きが制御された上で加速され、当該流路部40の第2開口H2からタービン10に向かって流れ出す。
【0049】
図2に示すように、タービン10の各ブレード12が、各流路部40の第2開口H2と対向している状態を用いて説明すると、6時方向に向く第1開口H1を有する流路部40に入り込んだ風は、当該流路部40の第2開口H2から、
図2で3時方向に延びるブレード12に当たり、タービン10を回転方向Dに回す。また、12時方向に向く第1開口H1を有する流路部40に入り込んだ風は、当該流路部40の第2開口H2から、
図2で9時方向に延びるブレード12に当たり、タービン10を回転方向Dに回す。このように、双方の流路部40の各々の第2開口H2からタービン10に向かう風は、タービン10の回転方向Dへの回転を妨げるように干渉せず、いずれのエネルギーもタービン10の回転方向Dへの回転動力に変換される。双方の流路部40に入り込んでタービン10を回転させた風は、他の2つの流路部40(第1開口H1が3時、9時の各方向に向く2つの流路部40)の少なくともいずれかを通って、タービン装置2の外部に排出される。
【0050】
以上に説明した第1~第3の場合を勘案すると、この実施形態に係るタービン装置2は、全周に渡るあらゆる方向から流れ込む風のエネルギーをタービン10の回転動力に効率良く変換できることが分かる。つまり、タービン装置2を備える発電装置1によれば、流体のエネルギーを電気に効率良く変換できる。
【0051】
本願発明者による試算では、このタービン装置2における、流体の運動エネルギーの機械的なエネルギーへの変換効率は、ベッツの法則から導かれる59.3%(ベッツ係数)を超えることができる可能性がある。このタービン装置2により実現可能なエネルギーの高効率変換については、今後の詳細な理論計算、実験、シミュレーションを経て、解明が待たれる。
【0052】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態に適宜の変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0053】
以上では発電装置1が風力発電を行う例を示したが、発電装置1は水力発電を可能に構成されてもよい。水力によりタービン装置2のタービン10を回転させる仕組みは、風力と同様である。また、発電装置1及びこれを構成する各部の大きさ、材質、形状は、発明の目的を達成することができる限りにおいては限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択可能である。
【0054】
以上ではタービン装置2に流路部40を4つ設けた例を示したが、流路部40は複数あれば良く、その数は任意である。例えば、タービン装置2は、3つの流路部40を備えてもよい。この場合、タービン装置2は、軸線AXが延びる方向から見て三角形状に構成され、当該三角形の各辺に相当する箇所に各流路部40の第1開口H1が配置されればよい。また、タービン装置2は、6つの流路部40を備えてもよい。この場合、タービン装置2は、軸線AXが延びる方向から見て六角形状に構成され、当該六角形の各辺に相当する箇所に各流路部40の第1開口H1が配置されればよい。なお、軸線AXと直交する種々の方向から流体を取り込み可能とすべく、複数の流路部40に対応して複数ある第1開口H1は、タービン装置2の全周に渡って配置されることが好ましい。したがって、流路部30は、3つ以上あることが好ましい。また、タービン装置2は、軸線AXが延びる方向から見て円形に構成されてもよい。
【0055】
複数の流路部40の各々の形状は、外側に向く第1開口H1と、第1開口H1よりも開口面積が小さい第2開口H2とを備え、タービン10を同じ回転方向Dに回転させることができれば、任意に変更可能である。例えば、第1開口H1に入り込む流量を調節する流量調節板をタービン装置2に設け、この流量調節板を環境に応じて制御する構成を採用してもよい。当該構成によれば、例えば台風などの強風時にタービン装置2の破損を防ぐこともできる。以上では、隣り合う仕切り部50の面51a,52aが曲面を有することにより、これらに挟まれる流路部40の幅方向の形状も曲面を有する例を示したが、流路部40の幅方向の形状は、平面を含んだ形状(傾きが異なる複数の平面を組み合わせた形状も含む)に形成されていてもよい。また、以上では、仕切り部50が一対の壁部61,62で構成され、一対の壁部61,62の間に退避室60が形成される例を示したが、仕切り部50の形状はこれに限られず任意である。例えば、仕切り部50は、退避室60に相当する部分が埋められた形状をなし、退避室60を備えていなくともよい。また、基板20及び天板21の流路部40を挟み込む部分の形状も、任意に変更可能である。また、タービン装置2における複数の流路部40及び複数の仕切り部50の形状は、軸線AXを中心とした回転対称性を有していなくともよい。例えば、タービン装置2の設置環境によっては流体が流れ込む方向に指向性がある場合もある。これを考慮して、特定の方向からの流体を効率良くタービン10を収容する収容室30に引き込むべく、各流路部40の形状を最適化してもよい。
【0056】
以上では、タービン10が4つのブレード12を備える例を示したが、ブレード12は複数あれば良く、その数は任意である。また、ブレード12の断面形状は、
図3に示す例に限られず目的に応じて変更可能である。例えば、ブレード12の断面形状は、回転方向Dに向かって凹む湾曲した形状であってもよい。つまり、ブレード12の主面部120は平板状に限られず、また、迫出部121は主面部120の外縁から迫り出す格好であれば、その形状は任意に変更可能である。さらには、各図において、各ブレード12の背面の形状を模式的に平坦面で表したが、各ブレード12の形状は図面に表された形状に限定されない。当該背面の形状は、タービン10が回転する際に流体から受ける抵抗を低減すべく、スプーンの裏のように湾曲した曲面(回転方向Dに膨らむ曲面)を有していることが好ましい。なお、ここで言うブレード12の背面とは、タービン10が回転する過程で第2開口H2と対向する主面の裏側に位置する面である。また、以上では、流路部40の数とブレード12の数が等しい例を示したが、双方の数は異なっていてもよい。例えば、流路部40が4つあり、タービン10のブレード12が6つある構成などを採用することもできる。また、以上では、回転方向Dが反時計方向の例を示したが、タービン装置2はタービン10を時計方向に回転させるように構成されてもよいことは勿論である。
【0057】
また、発電装置1の設置場所は目的に応じて任意である。例えば、風力発電を行う発電装置1をEV(Electric Vehicle)等の自動車に設け、発電機3で発電した電気を自動車のバッテリーに蓄電する構成を採用することができる。この場合、例えば、自動車の天井又は床下にタービン装置2を設置すればよい。また、例えば、水力発電を行う発電装置1を、海、河川、堤防に設置することもできる。また、都市計画で、ビル等の建物を複数の仕切り部50として機能するように配置すると共に、それらの中央部にタービン10を設置する構成を採用することで、都市の一区画を利用して風力発電を行う発電装置1も実現可能である。例えば、風力発電を行う発電装置1を地上に設置すれば、数十mの高さにも及ぶ支柱を介して設置されていた従来の風車のように景観を損ねることを防止できる。発電装置1を地上に設置すれば、高所や洋上にある従来の風車に比べてメンテナンスの容易化を図ることもできる。また、発電装置1は、その設置箇所を目的に応じて設定可能であるため、例えば洋上に設けられていた従来の風車に比べて送電ロスを抑制できる。例えば、発電装置1を家屋、ビルなどの建物内に設置すれば、落雷による被害を回避できる。また、発電装置1によれば、夜間でも発電可能であるため、太陽光発電の欠点を補うことができる。なお、鳥獣などの動物がタービン10に入り込む虞があれば、動物保護の観点から、タービン装置2の周りに柵を設けることもできる。
【0058】
タービン装置2においてタービン10の回転に伴い発生する虞のある騒音は、タービン10の回転部11を軸支するベアリングによって充分に抑えることができると考えられるが、必要に応じて、タービン装置2に防音壁、振動吸収シートなどを設けて騒音対策を施すこともできる。
【0059】
また、タービン装置2は、発電用途に限られず、流体のエネルギーを有用な機械的動力に変換する原動機として用いられてもよく、その用途は任意である。
【0060】
以上で説明したタービン装置2の主な効果を以下に説明する。
【0061】
(1)以上に説明したタービン装置2は、タービン10と、外側に向く第1開口H1、及び、タービン10に向き且つ第1開口H1よりも開口面積が小さい第2開口H2を各々が有し、軸線AXを中心とする円周方向に沿って配置された複数の流路部40と、を備える。タービン10は、複数のブレード12を有し、軸線AXを中心に回転可能である。複数の流路部40は、各々の第1開口H1から第2開口H2に流れる流体がタービン10を同じ回転方向Dに回転させるように、各々の第2開口H2が軸線AXよりも回転方向Dに偏った位置であってタービン10が回転する過程で複数のブレード12のうち任意のブレード12と向かい合う位置に設けられている。
上記(1)の構成によれば、複数の流路部40のいずれに入り込んだ流体によっても、タービン10を回転方向Dに回転させることができる。また、流路部40に第1開口H1から入って第2開口H2から流れ出す流体は、第1開口H1の通過時点よりも加速されてタービン10に向かう。したがって、流体のエネルギーを効率良くタービン10の回転動力に変換でき、タービン10のトルクを稼ぐことができる。また、ある流路部40を通ってタービン10を回転させた流体は、他の流路部40の第2開口H2を通って第1開口H1から排出される。この際、外側に向く第1開口H1は第2開口H2よりも開口面積が大きいため、少ない流体抵抗でタービン装置2の外部に風を排出することができる。このように流体が排出されることで、タービン10の回転方向Dへの回転を妨げる流体の圧力を良好に低下させることができる。つまり、タービン10の回転方向Dへの回転の抵抗になる流体を低減することができる。また、タービン装置2が3つ以上の流路部40を有していれば、ある流路部40に入り込んでタービン10を回転させた流体を、2つ以上の他の流路部40から排出することができるため、タービン10の回転方向Dへの回転の抵抗になる流体をより良好に低減することができる。
【0062】
(2)また、複数の流路部40に対応して複数ある第1開口H1は、タービン装置2の全周に渡って配置されている。
上記(2)の構成によれば、タービン装置2の全周に渡るいずれの方向から流体が流れ込んでも、流体のエネルギーをタービン10の回転動力に変換することができる。したがって、当該構成は、流体の流れの方向(風向き、水流の方向など)の制約が少なく、自然界の流体のエネルギーを効率良く用いることができる。
【0063】
(3)複数のブレード12は、軸線AXを中心とする円周方向に沿って等間隔に設けられ、各々が、流体を主に受ける主面部120と、主面部120の外縁から迫り出す迫出部121とを有する。
上記(3)の構成によれば、前述の通り、ブレード12の外縁部に当たる流体を主面部120に集めることができる。
【0064】
(4)タービン装置2は、複数の流路部40のうち隣り合う流路部を仕切る仕切り部50を備える。複数の流路部40のうち所定の流路部40を挟んで隣り合う仕切り部50を、第1仕切り部51及び第2仕切り部52とすると、第1仕切り部51及び第2仕切り部52の各々の所定の流路部40に向く面は、所定の流路部40における第1開口H1から第2開口H2に向かって徐々に曲がる曲面を有する。
上記(4)の構成によれば、第1開口H1から入り込んだ流体の向きを制御して、効率良くタービン10に導くことができる。
【0065】
(5)仕切り部50は、一対の壁部61,62を有し、一対の壁部61,62は、タービン10に向く各々の内側端部が開放されている一方で、各々の外側端部が閉塞されている。
上記(5)の構成によれば、一対の壁部61,62の間に前述の退避室60が形成されるため、タービン装置2の外部から流れ込んだ流体のうち、タービン10の回転に不要な成分の流体を収容室30から逃がすことができる。
【0066】
(6)タービン10は、軸線AXが縦方向に沿う縦軸型である。
上記(6)の構成によれば、タービン10及びタービン10を回転可能に支持する部分の各々において、軸線AXと直交する方向に負荷がかかることを抑制できる。したがって、ラジアル荷重が顕著に発生する従来の水平軸風車に比べて、装置に生じる歪みを抑制することができる。
【0067】
(7)タービン装置2は、発電装置1に備えられてもよい。この発電装置1は、タービン装置2と、タービン10の回転に基づいて発電する発電機3と、を備える。
【0068】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0069】
1…発電装置、2…タービン装置、3…発電機
10…タービン、D…回転方向
11…回転部、AX…軸線
12…ブレード、120…主面部、121…迫出部
20…基板、21…天板、30…収容室
40…流路部、H1…第1開口、H2…第2開口
50…仕切り部、51…第1仕切り部、52…第2仕切り部、51a,52a…面
60…退避室、61,62…壁部
【要約】
【課題】流体のエネルギーを効率良くタービンの回転動力に変換できるタービン装置及び発電装置を提供する。
【解決手段】タービン装置2は、タービン10及び複数の流路部40を備える。タービン10は、複数のブレード12を有し、軸線AXを中心に回転可能である。複数の流路部40は、外側に向く第1開口H1、及び、タービン10に向き且つ第1開口H1よりも開口面積が小さい第2開口H2を各々が有し、軸線AXを中心とする円周方向に沿って配置されている。複数の流路部40は、各々の第1開口H1から第2開口H2に流れる流体がタービン10を同じ回転方向Dに回転させるように、各々の第2開口H2が軸線AXよりも回転方向Dに偏った位置に設けられている。この位置は、タービン10が回転する過程で複数のブレード12のうち任意のブレード12と向かい合う位置である。
【選択図】
図2