(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】直角形成部材の使用方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/38 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
E04B1/38 400B
(21)【出願番号】P 2021093536
(22)【出願日】2021-06-03
【審査請求日】2021-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591000757
【氏名又は名称】株式会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 出
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-121338(JP,A)
【文献】米国特許第05107595(US,A)
【文献】特開2011-247081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38-1/61
E04B 1/26
E04G 21/14-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築の軸材に取り付けられて直角を出す直角形成部材であって、
直角をなす2辺と斜辺との間における45度をなす2つの角部の先を切除した直角二等辺三角形の板材からなる芯板部と、
前記芯板部の表裏両面における3辺の縁部に固定されて前記芯板部を挟む角材からなる縁取り部で構成され、
前記縁取り部を構成する前記角材が、前記芯板部の直角をなす2辺に沿って固定されて両端面が長手方向に直角の角材と、前記芯板部の斜辺に沿って固定されて両端面が長手方向に45度の角度で傾斜する角材であり、
前記芯板部の表裏両面の前記縁取り部における当該直角形成部材の厚み方向の厚みが互いに同じであるとともに、前記角材の横断面形状が長方形であり、当該直角形成部材の厚み方向の長さの方が他方の長さよりも長く設定され、
前記芯板部の外周の端面が前記縁取り部の外周面と面一であるとともに、
前記芯板部の表裏両面の前記縁取り部が、一方の前記角材を貫通し他方の前記角材に挿入される固定具で互いに結合されることで、
当該直角形成部材の直角をなす2面と、これらの端においてこれらと直角をなす端面の全体が平らに形成され、
前記縁取り部の内側に、前記縁取り部の内周面を露出させる凹所が形成され、
当該直角形成部材の厚みが取り付け対象である前記軸材と同じ厚みに設定され
た直角形成部材を使用する直角形成部材の使用方法であって、
木造建築物において四角く組まれる軸材の一対の対角のうち一方の対角をなす2つの角部の内側に、それぞれ前記直角形成部材の直角をなす側面を当てがったのち、
他方の対角をなす2つの角部の内側に、それぞれ前記直角形成部材の直角をなす側面を当てがって、
双方の対角の長さを測定して、これらの値が同一となるように前記軸材相互の位置を調整する
直角形成部材の使用方法。
【請求項2】
前記軸材相互の位置を調整したのち、前記直角形成部材を前記軸材に対して恒久的な固定を行う
請求項
1に記載の直角形成部材の使用方法。
【請求項3】
四角く組まれる前記軸材が水平に組まれるものであるとともに、
少なくとも相対向する2辺の前記軸材が、複数の前記軸材を長手方向に連結したものであり、
複数の前記軸材からなる辺の前記軸材が横架材で連結されるものである
請求項
1または請求項
2に記載の直角形成部材の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木造建築においてその構成要素である軸材を直角に接合する際に使用される直角形成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築において軸組のコーナー部分は、直角に規制される必要がある。
【0003】
そのためのコーナー連結金具が下記特許文献1に開示されている。このコーナー連結金具は、鉄板製の2つの部材で構成されている。一つの部材は、断面チャンネル状をなす水平方向の取付座板と垂直方向の取付座板が直角に連続したものである。他の一つの部材は、水平方向の取付座板と垂直方向の取付座板の内面間に斜めに渡架された、断面チャンネル状の筋かいである。水平方向の取付座板と垂直方向の取付座板における起立した側板の間の底板には、複数のボルト穴が形成されている。
【0004】
このような構成のコーナー連結金具は、土台に柱を立設したりするときにそのコーナー部分に当接することで、直角の定規としてコーナー部分の角度を修正する。また、ボルト穴にボルトが挿通されてコーナー部分を緊縛することで、コーナー部分は正しい角度に修正された状態で固定され、補強ができる。
【0005】
しかし、このコーナー連結金具は金属製であり、重量が大きいうえに、精度、特に水平方向の取付座板と垂直方向の取付座板の直角の精度が出しにくく、製品間でばらつきが生じやすい。形状は異なるが、例えばCチャンネルの直角度の寸法許容差は、±2°とされている。
【0006】
金属製ではなく木製の連結具(補強具)は、下記特許文献2に開示されている。
【0007】
この補強具は、L字形に組まれた二枚の矩形補強板からなる補強部材と、補強部材の側面全体を覆う直角三角形をなす一対の側板で構成されている。補強部材は釘又は木ねじによる固定で側板により挟持される。
【0008】
使用に際して補強具は、その直角部分を隅部に密着させて、接着剤、釘及び木ねじの少なくとも一つを用いて固定されて、隅部の変形を防止する。釘打ちや木ねじ止めは、側板の間の空間から行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】登録実用新案第3032928号公報
【文献】特許第3683262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような構成の補強具は、木製であるので軽量に形成できるものの、L字形をなす補強部材を一対の側板で挟んだ構成であるので、寸法精度の点で難点がある。すなわち、側板は板材を切り出して得られるが、板材は波打ちやすい。このため精度よく所望形状に側板を切り出したとしても、側板が補強部材から浮いたりすることによって、寸法精度が低下し、製品間でのばらつきも生じやすい。
【0011】
寸法精度が低いと、補強の面では問題なくとも、柱材を垂直に立てたり対角を出したりすることに手間がかかる上に満足な施工ができない。
【0012】
また、補強部材の両面を側板が覆っているので、釘などを用いての固定が行いにくい。
【0013】
そこでこの発明は、木造建築の軸材を組む際に正確な定規として使用でき、補強部材としても使用できる直角形成部材の提供を主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのための手段は、木造建築の軸材に取り付けられて直角を出す直角形成部材であって、直角をなす2辺と斜辺との間における45度をなす2つの角部の先を切除した直角二等辺三角形の板材からなる芯板部と、前記芯板部の表裏両面における3辺の縁部に固定されて前記芯板部を挟む角材からなる縁取り部で構成され、前記縁取り部を構成する前記角材が、前記芯板部の直角をなす2辺に沿って固定されて両端面が長手方向に直角の角材と、前記芯板部の斜辺に沿って固定されて両端面が長手方向に45度の角度で傾斜する角材であり、前記芯板部の表裏両面の前記縁取り部における当該直角形成部材の厚み方向の厚みが互いに同じであるとともに、前記角材の横断面形状が長方形であり、当該直角形成部材の厚み方向の長さの方が他方の長さよりも長く設定され、前記芯板部の外周の端面が前記縁取り部の外周面と面一であるとともに、前記芯板部の表裏両面の前記縁取り部が、一方の前記角材を貫通し他方の前記角材に挿入される固定具で互いに結合されることで、当該直角形成部材の直角をなす2面と、これらの端においてこれらと直角をなす端面の全体が平らに形成され、前記縁取り部の内側に、前記縁取り部の内周面を露出させる凹所が形成され、当該直角形成部材の厚みが取り付け対象である前記軸材と同じ厚みに設定された直角形成部材を使用する直角形成部材の使用方法であって、木造建築物において四角く組まれる軸材の一対の対角のうち一方の対角をなす2つの角部の内側に、それぞれ前記直角形成部材の直角をなす側面を当てがったのち、他方の対角をなす2つの角部の内側に、それぞれ前記直角形成部材の直角をなす側面を当てがって、双方の対角の長さを測定して、これらの値が同一となるように前記軸材相互の位置を調整する直角形成部材の使用方法である。
【0015】
この構成では、角材からなる縁取り部が板材からなる芯板部の全周である3辺を表裏両面から挟んで固め、芯板部の全体を平らに維持する。芯板部の全周を固める固定具は、表裏一方の角材から芯板部を貫通して他方の角材に挿入され、三者を一体にするとともに、三者間のずれを阻止する。
【0016】
芯板部の直角をなす2つの端面と、これらと面一の縁取り部の外周面は、直角をなす面を構成する。これら直角をなす面は、縁取り部が製材された角材からなり、芯板部は裁断されて正確な直角三角形部分を有し真に直角であり、直角をなす面同士のねじれもない状態であり、当てがわれた軸材同士を直角に規制する。軸材に対する仮止め、又は固定は、凹所の内側に露出している縁取り部の内周面から釘等を挿入して行える。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、芯板部と縁取り部は木材からなるので、軽量に構成できる。しかも、波打ったりしやすい芯板部の全周を縁取り部で縁取って、厚さ方向に挿入する固定具で固める構成であるので、芯板部が裁断されたときの直角三角形を有する形状を維持できる。このため、真に直角をなす2つの面を得ることができ、主として軸材を直角に接合する部分に当てがうことでそれらの軸材同士を直角にでき、例えば柱材の建て込みや基礎に対する土台の設置がより適正な状態で簡易に行える。このような定規として使用するほか、施工後も軸材に固定した状態すれば、軸材の変位を拘束し補強するための部材とすることができる。軸材に対する仮止めや固定は、凹所の内側に露出している縁取り部の内周面から行えるので開放された空間が広くて作業性がよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図6】直角形成部材を土台の火打ちとして使用した例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0020】
図1に、直角形成部材11の斜視図を示す。この直角形成部材11は、木造建築の構築に際して使用されるものであり、軸材に取り付けられて直角を出すものである。軸材は単独のものであるほか、他の部材と結合されたものである場合もある。前者の場合は、柱材や土台、横架材等の軸材である。後者の場合は、外壁パネルや間仕切りパネル等のパネルの一部として結合された柱材等の軸材である。
【0021】
すなわち直角形成部材11は、前述例のような軸材同士を直角に組むときに定規として使用されて軸材同志の角度を規制し、これらが直角に組んだ状態を作り出す。また直角形成部材11は、軸材同士の間に固定されて、筋交いや火打ちのように軸材同士の変位を拘束し補強する補強具としても使用される。
【0022】
直角形成部材11は、
図2の分解斜視図に示したように、板材からなる芯板部12と、角材からなる縁取り部13で構成されている。
【0023】
芯板部12は、直角三角形部分を有する形状であり、好ましくは構造用合板で形成されている。この例の芯板部12は、直角二等辺三角形、より正確には、直角をなす2辺と斜辺との間における45度をなす2つの角部の先を切除した形状である。切除された角部の形状は直角三角形である。このため芯板部12は、直角部21と、この直角部21を形成する縦辺22及び横辺23と、縦辺22及び横辺23の端で横辺23又は縦辺22と平行な端辺24と、縦辺22及び横辺23に対して45度の傾斜を持つ斜辺25を有していることになる。前述の直角三角形部分は、直角部21、縦辺22及び横辺23で構成される部分である。
【0024】
表裏双方の縁取り部13は、芯板部12の表裏両面における3辺の縁部に固定されて芯板部12を挟む部分である。この縁取り部13は、3本の角材31,32,33からなり、三角形の枠状に組んで構成される。角材31,32,33は、横断面形状が長方形であり、そのたてaとよこbの長さは、たてaの方が長く形成されている。
【0025】
ここで、たてaは、角材31,32,33の横断面における直角形成部材11の厚みに対応する方向であり、よこbは、縁取り部13の幅に対応する方向である。
【0026】
表裏双方の縁取り部13に使用される角材31,32,33の横断面形状はすべて同寸である。つまり、芯板部12の表裏に配設された縁取り部13における直角形成部材11の厚み方向の厚みは互いに同じである。このため、表裏とは表現しているものの、直角形成部材11は表裏の区別なく使用できる。
【0027】
また、芯板部12と縁取り部13を合わせた厚み、つまり直角形成部材11の厚みは、取り付け対象である軸材と同じ厚みである。接合される軸材の厚さが異なる場合には、いずれか一方の軸材の厚さと同じであるとよい。
【0028】
3本の角材31,32,33は、芯板部12の縦辺22と横辺23に沿って固定される両端面31a,32aが長手方向に直角の角材31,32と、斜辺25に沿って固定され両端面33aが長手方向に45度の角度で傾斜する角材33である。縦辺22と横辺23に固定される2本の角材31,32は、直角部21において一方の端面31aを他方の側面に突き合わせられる。これら2本の角材31,32の他方の端面31a,32aは、縁取り部13の外側に露出する部分であり、よこbの長さは、芯板部12の端辺24と同じ長さである。2本の角材31,32の他方の端面31a,32aは長手方向に直角であって、直角形成部材11の直角形成部材11の鋭角をなす2つの角部が尖ってないため、取り扱いしやすい。
【0029】
芯板部12の外周縁の大きさと、縁取り部13の外周縁の大きさは同一に形成される。つまり、芯板部12の外周の端面が縁取り部13の外周面と面一である。
【0030】
このような芯板部12と縁取り部13は、釘や木ねじのような固定具14で互いに固定される。すなわち、芯板部12の表裏両面の縁取り部13は、一方の角材31,32,33を貫通し他方の角材31,32,33に挿入される固定具14で互いに結合される。具体的には、
図3に示したように釘14aで固定するとよい。釘14aは、
図3(a)の平面図、
図3(b)の横辺23側から見た側面図、
図3(c)の斜辺25側から見た側面図に示したように、縁取り部13を構成するすべての角材31,32,33に略等間隔に複数本ずつ打たれている。表裏一方の縁取り部13の角材31,32,33に打ち込まれた釘14aは、芯板部12を貫通して他方の縁取り部13の角材31,32,33に挿入される。
【0031】
これらの釘14aのほか、直角をなす部分の一方の角材32から他方の角材31の端面31aにかけて釘14aは打たれる。また、斜辺25に沿って固定される角材33の両端面33a部分は、縦辺22又は横辺23の角材31,32に向けて打ち込まれた仕上げ釘15で固定されている。
【0032】
このように釘14a,15で一体化された芯板部12と縁取り部13からなる直角形成部材11は、側面として、直角をなす平らな2つの側面、つまり縦面11a及び横面11bと、これらに対して傾斜した斜面11cを有することになる。また直角形成部材11は、表裏両面の縁取り部13の内側に直角三角形をなす凹所11dを有することになる。
【0033】
芯板部12は直角部21を有するように裁断され、直角部21を形成する縦辺22と横辺23が縁取り部13、つまり横断面長方形をなす製材された角材で挟また状態で固められる。このため、波打つように歪みやすい板材からなる芯板部12の直角をなす2辺22,23は正確な直角に規制される。しかも、縁取り部13を構成する角材は、たてaの方がよこbよりも長い横断面形状であるので、より強固に芯板部12を固められる。この結果、側面における直角をなす2面である縦面11aと横面11bは、正しく直角をなすうえに、これらの面11a,11b同士の間でねじれもない、平らな面となる。
【0034】
以上のように構成された直角形成部材11の使用方法の一例を、以下に説明する。
【0035】
図4は基礎51の上に軸材52としての土台53を固定する際の例を示している。すなわち、四角く組まれる土台53の一対の対角をなす2つの角部の内側に、それぞれ直角形成部材11の直角をなす2つの側面11a,11bを当てがう。このときの固定は仮止めでよい。仮止めは、
図5に示したように釘16を用いて行える。釘16のほか木ねじを用いることもできる。釘16の打ち込みは、直角形成部材11の表裏両面に形成された凹所11dから行うとよい。
【0036】
つまり、縁取り部13の内側に形成された凹所11dによって露出された縁取り部13の内周面、つまり角材31,32,33のたてaの側面から軸材52(土台53)にかけて釘16を打ち込む。斜面11cから軸材52に釘16を打ち込むこともできる。
【0037】
芯板部12と縁取り部13を合わせた厚みは、取り付け対象である軸材52と同じ厚みであるので、直角形成部材11の直角をなす2つの側面11a,11bを正しく面接触させることは容易である。
【0038】
このようにして一対の対角に直角形成部材11を固定したあと、他方の対角をなす2つの角部の内側に、それぞれ直角形成部材11の直角をなす側面11a,11bを当てがい、一方の対角の長さL1と他方の対角の長さL2を測定する。そして、これらの値が同一となるように軸材52(土台53)相互の位置を調整する。
【0039】
位置調整後は、軸材52(土台53)を強固に固定し、定規として使用した直角形成部材11を取り除く。
【0040】
前述のように直角形成部材11における直角をなす2つの側面11a,11bは、正しく直角に形成されているので、これらを軸材52(土台53)に対して面接触させれば、直角に組まれるべき軸材52は直角になる。このため、おのずと2つの対角の長さL1,L2は同一、又は略同一となり、軸材52相互の位置調整をする作業を簡素化でき、簡易迅速に土台53を正しく設置できる。
【0041】
直角形成部材11は、土台53に対して仮止めではなく、恒久的な固定を行うと、
図6に示したように、土台53の火打ちとして、水平構面を補強し、耐力を向上させることができる。
【0042】
直角形成部材11の軸材52に対する固定は仮止めの場合と同様に釘等で行える。ボトルナット(図示せず)を用いることもできる。
【0043】
図7は、軸材52としての土台53の上に軸材52としての柱材54を建てるときの例を示している。すなわち、土台53の上に柱材54を建てるときに、土台53の上面とこれに連なる柱材54の一つの側面で形成される角部に直角形成部材11を当てる。
図4の例では直角形成部材11は土台53同士の直角を出すために使用したので、直角をなす2つの側面11a,11bが横に並ぶ態様で使用したが、柱材54は鉛直方向に延びるので、
図4の場合とは異なり直角形成部材11は立てて使用される。
【0044】
土台53と柱材54で形成される角部に直角形成部材11を当てて仮止めすると、直角形成部材11の直角をなす2面11a,11bが土台53と柱材54との間を直角に規制するので、土台53が水平である限り柱材54は垂直に延びることになる。必要であれば、直角形成部材11は2つの角部に仮止めしてもよい。
【0045】
柱材54に横架材等を固定して躯体を構成したのち、直角形成部材11は取り外される。
【0046】
図8は、柱材54を垂直に建てて鉛直構面を正しく構成するときの例を示している。すなわち、
図4の土台53を例に示した場合と同様に、四角く組まれる軸材52としての土台53と柱材54と横架材55からなる木造建築構造の一対の対角をなす2つの角部の内側に、それぞれ直角形成部材11の直角をなす2つの側面11a,11bを当てがって仮止めする。同様に、他方の対角をなす2つの角部の内側に、それぞれ直角形成部材11を仮止めする。そして、一対の対角の長さL1と他方の対角の長さL2を測定して、これらの値が同一となるように鉛直構面を構成する軸材52相互の位置を調整する。位置調整後に直角形成部材11は取り外される。
【0047】
前述と同様、直角形成部材11における直角をなす2つの側面11a,11bは、正しく直角に形成されているので、これらを軸材52(土台53、柱材54、横架材55)に対して面接触させれば、直角に組まれるべき軸材52は直角になる。このため、おのずと2つの対角の長さL1,L2は同一、又は略同一となる。この結果、前述と同様に、軸材52相互の位置調整をする作業は容易であり、軸材52を正しく組むことが迅速に行える。
【0048】
図9は、柱材54間に横架される梁材や桁材等の軸材52としての横架材55からなる水平構面を構成するときの例を示している。すなわち、四角く組まれる横架材55からなる一対の対角をなす2つの角部の内側に、それぞれ直角形成部材11の直角をなす2つの側面11a,11bを当てがったのち、他方の対角をなす2つの角部の内側にも、直角形成部材11を当てがう。そして、一対の対角の長さL1と他方の対角の長さL2を測定して、これらの値が同一となるように軸材52(横架材55)相互の位置を調整する。
【0049】
直角形成部材11は除去しても、そのまま火打ちとして残してもよい。
【0050】
土台53と柱材54と横架材55で構成される鉛直構面が前述したように正確に構築されている限り、横架材55で構成される水平構面も正確に構成できるが、前述と同様の直角形成部材11の作用によって、水平構面はより正確に構成される。このため、土台53と柱材54と横架材55で囲まれる空間に嵌め込んで固定される外壁パネル56や間仕切りパネル(図示せず)等のパネル材の取り付け作業は円滑に行える。
【0051】
図10は、木造軸組建築の土台53や柱材54、横架材55等の躯体を構成する部材と同じ太さの軸材を構成要素とする外壁パネル57や間仕切り(図示せず)を組むときの例を示している。すなわち、直角に組まれる4枚の外壁パネル57は土台53や柱材54、横架材55等として機能する軸材52を有しており、この外壁パネル57は平面視において四角く組まれる。
【0052】
外壁パネル57を組むのに際して、その上下の両端における水平構面を構成する角部に直角形成部材11を当てる。つまり、外壁パネル57の土台53と横架材55における一対の対角をなす2つの角部の内側に、それぞれ直角形成部材11を当てがって仮止めする。その後、他方の対角をなす2つの角部の内側に、それぞれ直角形成部材11を当てがって仮止めして、外壁パネルを連結する。続いて、一対の対角の長さと他方の対角の長さを測定して、これらの値が同一となるように外壁パネル57の軸材52相互の位置を調整する。
【0053】
この場合も、直角形成部材11が正確な直角を出すので、外壁パネルの組付けはより正確に行え、作業性も良好である。
【0054】
軸材52の位置調整後に、直角形成部材11を取り外すことなく、強固に固定した状態にすると、直角形成部材11は構築後に火打ちとして機能し、水平構面の耐力を向上することになる。
【0055】
図11は、
図10に示した例と同様の外壁パネル57を組むときの例を示しており、四角く組まれる軸材52が水平に組まれる構造であるが、この場合は、少なくとも相対向する2辺の軸材52が、複数の軸材52を長手方向に連結したものである。つまり、外壁パネル57が長手方向に複数、この例では柱材54を介して2枚接続されて一体となっている。長手方向に複数の軸材52が連結された軸材、換言すれば連結された2枚の外壁パネル57は、外壁パネル57同士で連結するほか、内側に架設される横架材58で連結される。
【0056】
すなわち、四角く組まれる四方の外壁パネル57の土台53と横架材55がなす一対の対角を構成する角部の内側に、それぞれ直角形成部材11を当てがって仮止めする。2枚の外壁パネル57で構成される面は、その中間の柱材54が互いに横架材58で連結される。また、他方の対角をなす2つの角部の内側に、それぞれ直角形成部材11を当てがって仮止めする。続いて、双方の対角の長さを測定して、これらの値が同一となるように外壁パネル57の軸材52相互の位置を調整する。位置調整後は、直角形成部材は
図12に示したように取り除かれる。
【0057】
前述と同様に、直角形成部材11によって、各外壁パネル57は正しく接合されて、角部が所望通りの直角となった水平構面が得られる。2枚の外壁パネルからなる面を接続する横架材58が所定の長さである限り、この面は左右に歪むことなく真っすぐに構成され、2組の対角の長さの相違もなく、又は限りなく小さく、容易に所望の状態に構築することができる。
【0058】
このため、
図12に示したように、火打ちの固定作業が行い易いうえに、火打ちの固定が正確に行え、耐力高い水平構面が得られる。
【0059】
なお、前述した横架材58が取り付けられる位置は、前述のような外壁パネル57間の柱材54のみではなく、外壁パネル57の土台53や横架材55であってもよい。
【0060】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することができる。
【0061】
たとえば、直角形成部材11は直角二等辺三角形のほか、3辺の長さが異なる直角三角形であってもよい。
【0062】
また、直角形成部材11の大きさの異なるものを複数種類用意して、適用する部位に応じて使い分けるとよい。
【0063】
仮止め又は固定のために、縁取り部13には固定具14を挿入する下穴を備えてもよい。
【0064】
直角形成部材11は前述のような外壁パネル56,57等のパネル材を構成する際に使用してもよい。直角形成部材11を用いてパネル材を構成するとともに恒久的な固定を行うことで、角の直角が正しく出た所望形状の精度の高いパネル材を容易に製造することができるとともに、パネル材の強度を向上することもできる。
【0065】
また、前述の例においては、便宜上簡略化して、平面視において四角い木造建築を例示したが、この発明において「四角く組まれる」とは、輪郭が四角い形状のみを意味するのではなく、軸材を組むときの部分的な形状が四角であることを含む意味である。
【符号の説明】
【0066】
11…直角形成部材
11a…縦面
11b…横面
11d…凹所
12…芯板部
13…縁取り部
14…固定具
52…軸材
【要約】
【課題】木造建築の軸材を組む際に正確な定規として使用できるとともに、補強部材としても使用できる直角形成部材の提供。
【解決手段】木造建築の軸材に取り付けられて直角を出す直角形成部材11において、直角三角形部分を有する構造用合板からなる芯板部12と、芯板部12の表裏両面における3辺の縁部に固定されて芯板部12を挟む角材からなる縁取り部13で構成する。芯板部12の外周の端面は縁取り部13の外周面と面一にして、芯板部12の表裏両面の縁取り部13を、一方の角材を貫通し他方の角材に挿入される釘14aからなる固定具14で互いに結合し、縁取り部13の内側に、縁取り部13の内周面を露出させる凹所11dを形成する。
【選択図】
図1