(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】抗ピログルタミン酸化アミロイドβヒト化抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20220224BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220224BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220224BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220224BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220224BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220224BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220224BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20220224BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P25/28
A61P43/00 105
A61P43/00 121
C07K16/46
C12N15/13
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2018501891
(86)(22)【出願日】2016-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2016066924
(87)【国際公開番号】W WO2017009459
(87)【国際公開日】2017-01-19
【審査請求日】2019-06-24
(32)【優先日】2015-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】DSMZ DSM ACC2924
【微生物の受託番号】DSMZ DSM ACC2925
【微生物の受託番号】DSMZ DSM ACC2926
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505403119
【氏名又は名称】ビボリョン セラピューティクス エヌブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】マーチン クレインシュミット
(72)【発明者】
【氏名】ジェンス‐ウルリッチ ラフフェレド
(72)【発明者】
【氏名】アンケ ピエコッタ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン スチルリング
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ギリース
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-528561(JP,A)
【文献】特表2014-509860(JP,A)
【文献】国際公開第2012/136552(WO,A1)
【文献】特表2013-537424(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0002945(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
C12N 15/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AβN3pEのピログルタメートを保有するN-末端に特異的に結合するヒト化抗体であって、ここで該抗体の軽鎖の可変部分が
:
【化1】
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はこれからなり、
該軽鎖の可変部分が、CDR領域、配列番号:12のV
L CDR1、配列番号:9のV
L CDR2及び配列番号:10のV
L CDR3を含み、
かつ、該抗体の重鎖の可変部分が
、
アミノ酸配列:
【化2】
又は
アミノ酸配列:
【化3】
を含むか、又はこれからな
り、
配列番号:24又は配列番号:27の重鎖の可変部分が、前記重鎖中にCDR領域:
【化4】
を含む、前記ヒト化抗体。
【請求項2】
前記軽鎖の可変部分が、配列番号11のアミノ酸配列
【化5】
を含むか、又はこれからなる、請求項1記載のヒト化抗体。
【請求項3】
前記軽鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
【化6】
を含むか、又はこれからなる、請求項1記載のヒト化抗体。
【請求項4】
前記軽鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
【化7】
を含むか、又はこれからなる、請求項1記載のヒト化抗体。
【請求項5】
配列番号:73及び74から選択されたアミノ酸配列を含むか、又はこれからなるヒトIgG1 Fc領域を有する、請求項1~
4のいずれか一項記載のヒト化抗体。
【請求項6】
前記ヒトIgG1 Fc領域が、配列番号:74のアミノ酸配列を含むか、又はこれからなる、請求項
5記載のヒト化抗体。
【請求項7】
前記軽鎖の可変部分が、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、又はこれからなり;及び
重鎖の可変部分が、配列番号:27のアミノ酸配列を含むか、又はこれからなり;及び
ヒトIgG1 Fc領域が、配列番号:74のアミノ酸配列を含むか、又はこれからなり;
軽鎖の可変部分が、配列番号:12のV
L CDR1、配列番号:9のV
L CDR2、及び配列番号:10のV
L CDR3であるCDR領域を含み;並びに
重鎖の可変部分が、配列番号:25のV
H CDR1、配列番号:26のV
H CDR2、及び配列番号:20のV
H CDR3であるCDR領域を含む、請求項1~
6のいずれか一項記載のヒト化抗体。
【請求項8】
前記ヒト化抗体が:
【化8】
からなる群から選択されるエピトープに、特異的に結合する、請求項1~
7のいずれか一項記載のヒト化抗体。
【請求項9】
本発明のヒト化抗体が、AβN3pEバリアントに結合し、ここでAβN3pEバリアントは、pE-Aβ
3-Xとして定義され、ここでxは、19~42の整数として定義される、請求項1~
8のいずれか一項記載のヒト化抗体。
【請求項10】
前記AβN3pEバリアントが:
pE-Aβ
3-38、
pE-Aβ
3-40、
pE-Aβ
3-42
から選択される、請求項
9記載のヒト化抗体。
【請求項11】
前記ヒト化抗体が、N-末端にピログルタメートを保有しないエピトープには結合しない、請求項1~
10のいずれか一項記載のヒト化抗体。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項記載のヒト化抗体を含む医薬組成物。
【請求項13】
更なる生体活性物質及び/又は医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤を更に含む、請求項
12記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記更なる生体活性物質が、中性子透過増強剤、精神治療薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、カルシウム-チャンネル遮断薬、生体アミン、ベンゾジアゼピントランキライザー、アセチルコリンの合成、貯蔵又は放出の増強剤、アセチルコリンシナプス後受容体アゴニスト、モノアミンオキシダーゼ-A又は-B阻害剤、N-メチル-D-アスパラギン酸型グルタミン酸受容体アンタゴニスト、非ステロイド系抗炎症薬、抗酸化剤、及びセロトニン受容体アンタゴニストから選択される、請求項
13記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記更なる生体活性物質が、酸化的ストレスに対し有効な化合物、抗-アポトーシス化合物、金属キレート剤、ピレンゼピン及び代謝産物などのDNA修復阻害剤、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸(3APS)、1,3-プロパンジスルホナート(1,3PDS)、α-セクレターゼ活性化剤、β-及びγ-セクレターゼ阻害剤、タウタンパク質、神経伝達物質、β-シート破壊物質、アミロイドβをクリアリング/枯渇する細胞成分の誘引物質、グルタミニルシクラーゼ阻害剤などのピログルタミン酸化されたアミロイドβ3-42を含むN-末端切断型アミロイドβの阻害剤、抗炎症性分子、又はタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、及び/もしくはガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)、Mlアゴニスト、並びに任意のアミロイドもしくはタウ修飾薬及び栄養補助剤、コリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)、メマンチン又はグルタミニルシクラーゼの阻害剤を含む他の薬物からなる群から選択される、請求項
13記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ピログルタミン酸化されたアミロイドβ(AβN3pE)ペプチドのN-末端のエピトープへ結合するヒト化抗体、並びにアミロイドーシスなどの、アミロイドペプチドの蓄積及び沈着に関連している疾患及び状態の、アルツハイマー病、ダウン症、脳アミロイド血管障害及び他の関連局面のような、ピログルタミン酸化されたアミロイドペプチドに関連した障害及び異常の群の、予防的及び治療的処置に関する。より具体的には、これは、脳内及び末梢の様々な組織内のAβN3pEの蓄積を防止するか又は沈着を逆転するため、並びにアミロイドーシスを軽減するための、血漿、脳、及び脳脊髄液中のピログルタミン酸化されたアミロイドβペプチドに結合するヒト化モノクローナル抗体の使用に関連する。本発明は更に、本発明のヒト化抗体を使用するアミロイドーシスの診断のための、診断アッセイに関連している。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
アミロイドーシスは、単独の疾患実体ではなく、むしろ1以上の器官又は体組織に蓄積する、アミロイドと称されるろう状のデンプン様タンパク質の細胞外組織沈着物によって特徴付けられる多様な進行性疾患過程群である。アミロイド沈着物が蓄積するにつれて、それらは器官又は体組織の正常な機能を妨害し始める。少なくとも15種の異なるタイプのアミロイドーシスが存在する。主な形態は、既知の前駆状態のない原発性アミロイドーシス、何らかの他の状態に続く続発性アミロイドーシス、及び遺伝性アミロイドーシスである。
【0003】
続発性アミロイドーシスは、結核、家族性地中海熱と呼ばれる細菌感染症、骨感染症(骨髄炎)、関節リウマチ、小腸の炎症(肉芽腫性回腸炎)、ホジキン病、及びハンセン病などの、慢性感染症又は炎症疾患時に生じる。
【0004】
アミロイド沈着物は、正常な血清アミロイドP(SAP)に関連する糖タンパク質であるアミロイドP(五角形)成分(AP)、及び結合組織の複合糖質である硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)を含む。アミロイドタンパク質原線維は、アミロイド物質の約90%を占めるが、これは、いくつかの異なるタイプのタンパク質の1つを含む。これらのタンパク質は、いわゆる「β-プリーツ」シート原線維へのフォールディングが可能であり、これは、アミロイドタンパク質の独特な染色特性を生じるコンゴーレッドの結合部位を示す独特なタンパク質立体形状である。
【0005】
多くの加齢疾患は、アミロイド様タンパク質に基づくか又はそれと関連しており、かつ一つには、発病、及び疾患進行の一因となるアミロイド又はアミロイド様物質の細胞外沈着物の集積を特徴とする。このような疾患としては、神経学的障害、例えば、軽度認知障害(MCI)、例えば、孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性、レヴィー小体型認知症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合が挙げられるが、これらに限定されない。アミロイド様タンパク質に基づくか又はそれと関連する他の疾患は、進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、及び黄斑変性症を含むその他のものである。
【0006】
これらの疾患の病因は多様であり得るが、それらの特徴的沈着物は、多くの共通の分子構成成分を含むことが多い。これは、かなりの程度まで、炎症促進性経路の局所的活性化に起因し得、それにより、活性化された補体成分、急性期反応物質、免疫修飾因子、及び他の炎症メディエーターの同時沈着が生じる(McGeerらの文献、Tohoku J Exp Med. 174(3):269-277(1994))。
【0007】
最近、累積証拠により、アルツハイマー病におけるN-末端修飾Aβペプチドバリアントの関与が立証されている。狙い撃ち生検(aiming biopsy)により、アルツハイマー患者の脳だけではなく、罹患していない個体の老人斑でも、Aβ1-40及びAβ1-42の存在が示されている。しかしながら、N-末端切断型及びpyroGlu修飾型AβN3pE-40/AβN3pE-42は、ほぼ例外なく、アルツハイマー病患者の斑内に染み付いており、そのため、このAβバリアントが適格な診断マーカー及び潜在的な創薬標的となっている。
【0008】
現在、いくつかの商業的製造業者が、低ピコグラム(pg)範囲でのAβ1-40/1-42及びAβN3pE-40/AβN3pE-42の検出を可能にするELISAキットを提供している。
【0009】
アルツハイマー病(AD)患者の脳は、神経原線維変化の存在によって、及び新皮質脳構造におけるAβペプチドの沈着物によって形態学的に特徴付けられる(Selkoe, D.J.及びSchenk, D.の文献、「アルツハイマー病:分子的理解は、アミロイドに基づく治療法を予測する(Alzheimer's disease: molecular understanding predicts amyloid-based therapeutics.)」、Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 43, 545-584(2003))。Aβペプチドは、β-及びγ-セクレターゼによる連続切断の後、アミロイド前駆体タンパク質(APP)から遊離される。γ-セクレターゼ切断は、Aβ1-40及びAβ1-42ペプチドの生成をもたらし、これらのペプチドは、そのC-末端が異なり、かつ凝集、原線維形成、及び神経毒性の異なる潜在能力を示す(Shin, R. W.らの文献、「アミロイドβ-タンパク質(Aβ)1-40は、ラット脳内のアルツハイマー病アミロイド原線維の実験的形成に寄与するが、Aβ1-42は寄与しない(Amyloid beta-protein (Abeta) 1-40 but not Abeta 1-42 contributes to the experimental formation of Alzheimer disease amyloid fibrils in rat brain.)」、J. Neurosci. 17, 8187-8193(1997);Iwatsubo, T.らの文献、「末端特異的Aβモノクローナルを用いた老人斑のAβ42(43)及びAβ40の可視化:最初に沈着する種がAβ42(43)である証拠(Visualization of Abeta 42 (43) and Abeta 40 in senile plaques with end-specific Abeta monoclonals: evidence that an initially deposited species is Abeta 42(43).)」、Neuron 13, 45-53(1994);Iwatsubo, T., Mann, D.M., Odaka, A., Suzuki, N. 及びIhara, Y.の文献、「アミロイドβタンパク質(Aβ)沈着:ダウン症において、Aβ42(43)はAβ40よりも前に現われる(Amyloid beta protein (Abeta) deposition: Abeta 42(43) precedes Abeta 40 in Down syndrome.)」、Ann. Neurol. 37, 294-299(1995);Hardy, J.A.及びHiggins, G.A.の文献、「アルツハイマー病:アミロイドカスケード仮説(Alzheimer's disease: the amyloid cascade hypothesis.)」、Science 256, 184-185(1992);Rossner, S., Ueberham, U., Schliebs, R., Perez-Polo, J.R.及びBigl, V.の文献、「コリン作動性機構及び神経栄養因子受容体シグナル伝達によるアミロイド前駆体タンパク質代謝の調節(The regulation of amyloid precursor protein metabolism by cholinergic mechanisms and neurotrophin receptor signaling.)」、Prog. Neurobiol. 56, 541-569(1998))。
【0010】
拡散斑に沈着したAβペプチドの大部分は、N-末端が切断又は修飾されている。Piccini及びSaidoの研究は、老人斑及び血管沈着物のコア構造が50%のピログルタメート(pyroGlu)修飾ペプチドからなることを示した(Picciniらの文献、J Biol Chem. 2005 Oct 7;280(40):34186-92;Saidoらの文献、Neuron. 1995 Feb; 14(2): 457-66)。pyroGlu修飾ペプチドは、他のAβ種よりも細胞毒性が強く、アミノペプチダーゼに対して安定である(Russoらの文献、J Neurochem. 2002 Sep;82(6):1480-9)。従って、pyroGlu Aβ種は、半減期がより長く、それにより、これらの種の蓄積、並びに神経毒性オリゴマー及び凝集体の形成が有利になる(Saidoの文献, Neurobiol Aging. 1998 Jan-Feb;19(1 Suppl):S69-75)。グルタメートからpyroGluへの環化により、荷電アミノ酸が消失し、それにより、ペプチドの溶解性が強く低下し、凝集傾向の増加が生じる。インビトロ研究により、例えば、Aβ3(pE)の初期のオリゴマー化が、非修飾ペプチドと比較して、はるかに速いことが示されている(Schillingらの文献、Biochemistry. 2006 Oct 17;45(41):12393-9)。AβN3pE-42ペプチドは、Aβ1-40/1-42ペプチドと共存し(Saido, T.C.らの文献、「老人斑中の明確なβアミロイドペプチド種AβN3pEの優勢で示差的な沈着(Dominant and differential deposition of distinct beta-amyloid peptide species, Abeta N3pE, in senile plaques)」、Neuron 14, 457-466 (1995);Saido, T.C., Yamao, H., Iwatsubo, T. 及びKawashima, S.の文献、「ヒト脳内に沈着したβ-アミロイドペプチドのアミノ-及びカルボキシル-末端の不均一性(Amino- and carboxyl-terminal heterogeneity of beta-amyloid peptides deposited in human brain)」、Neurosci. Lett. 215, 173-176 (1996))、並びにいくつかの知見を基に、ADの発症機序において顕著な役割を果たし得る。例えば、AβN3pE-42ペプチドの特定の神経毒性は、概説されており(Russo, C.らの文献、「培養されたニューロン及び星状膠細胞の生存に強力に影響を及ぼすピログルタメート-修飾されたアミロイドβ-ペプチドであるAβN3(pE)(Pyroglutamate-modified amyloid beta-peptides--AbetaN3(pE)--strongly affect cultured neuron and astrocyte survival)」、J. Neurochem. 82, 1480-1489 (2002))、並びにN-切断型AβペプチドのpE-修飾は、ほとんどのアミノペプチダーゼ並びにAβ-分解性エンドペプチダーゼによる分解に対し抵抗性をもたらす(Russo, C.らの文献、「培養されたニューロン及び星状膠細胞の生存に強力に影響を及ぼすピログルタメート-修飾されたアミロイドβ-ペプチドであるAβN3(pE)」、J. Neurochem. 82, 1480-1489 (2002);Saido, T.C.の文献、「タンパク質分解性障害としてのアルツハイマー病:β-アミロイドの同化作用及び異化作用(Alzheimer’s disease as proteolytic disorders: anabolism and catabolism of beta-amyloid)」、Neurobiol. Aging 19, S69-S75 (1998))。グルタミン酸のpEへの環化は、N-末端荷電の喪失につながり、結果的に未修飾のAβペプチドに比べ、AβN3pEの凝集が加速される(He, W.及びBarrow, C.J.の文献、「完全長Aβよりも、インビトロにおいてより大きいβ-シート形成及び凝集傾向を有する、老人斑において認められるAβ3-ピログルタミル及び11-ピログルタミルペプチド(The Abeta 3-pyroglutamyl and 11-pyroglutamyl peptides found in senile plaque have greater beta-sheet forming and aggregation propensities in vitro than full-length A beta)」、Biochemistry 38, 10871-10877 (1999);Schilling, S.らの文献、「pGlu-アミロイドペプチドの播種及びオリゴマー化(インビトロ)(On the seeding and oligomerization of pGlu-amyloid peptides (in vitro))」、Biochemistry 45, 12393-12399 (2006))。従って、AβN3pE-42形成の減少は、このペプチドをより分解されやすくすることにより、不安定化し、ひいてはより高い分子量のAβ凝集物の形成を防止し、かつニューロンの生存を増強する。
【0011】
しかしながら、長い間、AβペプチドのpE-修飾の発生様式は不明であった。最近、グルタミニルシクラーゼ(QC)は、弱酸性条件下で、AβN3pE-42形成を触媒することが可能であること、及び特異的QC阻害剤は、インビトロにおけるAβN3pE-42生成を妨げることが発見された(Schilling, S., Hoffmann, T., Manhart, S., Hoffmann, M.及びDemuth, H.-U.の文献、「グルタミニルシクラーゼは弱酸性条件下でグルタミルシクラーゼ活性を発展させる (Glutaminyl cyclases unfold glutamyl cyclase activity under mild acid conditions)」、FEBS Lett. 563, 191-196 (2004);Cynis, H.らの文献、「グルタミニルシクラーゼの阻害は哺乳動物細胞におけるピログルタメート形成を変更する (Inhibition of glutaminyl cyclase alters pyroglutamate formation in mammalian cells)」、Biochim. Biophys. Acta 1764, 1618-1625 (2006))。
【0012】
あらゆる事実から、pyroGlu Aβが原線維形成の初期化の一種の萌芽であることが示唆されている。更なる研究(Picciniらの文献、2005, 前掲)において、斑沈着を有するがAD特異的な病変を有さない志願者を、Aβ種の特徴的な量によって、AD患者と区別することができた。それに関して、N-末端切断型のpyroGlu修飾ペプチドの量は、AD患者の脳で有意により多かった。
【0013】
Aβ-ペプチドの位置3又は11でのpyroGluの翻訳後形成は、N-末端グルタメート残基の環化を示唆する。グルタミニルシクラーゼ(QC)は、pyroGluペプチドの生成において重要な役割を果たす。QCは、植物界及び動物界に広く見られ、とりわけ、ペプチドホルモンの成熟に関与する。アンモニアの放出によるグルタミンのpyroGluへの環化と水の放出によるグルタメートのpyroGluへの環化は両方とも、QCによって行なわれる。グルタミン環化とは対照的に、グルタメート環化は、自然には起こらない。QCは、グルタメートからpyroGluへの効率的な(望ましくない)副反応を触媒する。生成したpyroGlu残基は、タンパク質をタンパク質分解から保護する。QCがpyroGlu Aβの生成において重要な役割を果たすことを示すいくつかの参考文献がある:
1. いくつかの研究において、QCがAβのN-末端におけるグルタメートからのpyroGlu残基の形成を触媒することが示された(Cynisらの文献、Biochim Biophys Acta. 2006 Oct;1764(10):1618-25、Schillingらの文献、FEBS Lett. 2004 Apr 9;563(1-3):191-6);
2. AβペプチドとQCは両方とも、海馬及び皮質で大量に発現されている。これらの脳領域は、特に、ADのリスクが高い(Pohlらの文献、Proc Natl Acad Sci U S A. 1991 Nov 15;88(22):10059-63、Selkoeの文献、Physiol Rev. 2001 Apr;81(2):741-66);
3. APPは、形質膜への輸送中にβ-セクレターゼによって切断され、それにより、遊離グルタメート残基を有するAβのN-末端を生成させることができる(Greenfieldらの文献、Proc Natl Acad Sci U S A. 1999 Jan 19;96(2):742-7)。分泌小胞において、プロセシングされたAPPとQCの共局在が明らかにされた。従って、小胞の弱酸環境において、グルタメート残基からピログルタメートへの加速的修飾が起こり得る。
4. また、他の神経変性疾患(家族性デンマーク型認知症(FDD)又は家族性イギリス型認知症(FBD))は、N-末端pyroGlu修飾ペプチド、例えば、Bri2と関連しているが、対照的に、それらは、その一次構造の点では、Aβと関連していない(Vidal R.らの文献、1999 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97, 4920-4925)。
【0014】
QCによって触媒されるpyroGlu Aβの形成は、神経変性疾患の発症及び進行に関与する可能性がある。N-末端修飾アミロイドペプチドの形成は、確実に、Aβ凝集の過程における根本的要因であり、疾患の開始となり得る。QCの阻害によるpyroGlu Aβ形成の抑制は、治療アプローチを代表するものとなり得る。QC阻害剤ならば、pyroGlu Aβの形成を防止し、脳のピログルタメートAβの濃度を低下させ、従って、Aβ-ペプチドのオリゴマー化を遅延させることができるであろう。Schillingらは、QC発現がAD患者の皮質で上方調節され、pyroGlu修飾Aβ-ペプチドの出現と相関したことを示している。QC阻害剤の経口適用は、ADの2つの異なるトランスジェニックマウスモデルにおいて、及び新しいショウジョウバエ(Drosophila)モデルにおいて、ピログルタメート修飾AβpE(3-42)レベルの低下をもたらした(Schillingらの文献、2008 Biol. Chem.(389), 983-991)。
【0015】
レヴィー小体型認知症(LBD)は、65歳を超える人々に生じることがあり、通常、認知(思考)障害の症状及び異常な行動変化を引き起こす神経変性障害である。症状としては、認知障害、神経学的徴候、睡眠障害、及び自律神経障害を挙げることができる。認知障害は、大抵の症例において、LBDの主症状である。患者は、進行性に悪化する錯乱のエピソードに繰り返し見舞われる。認識能のゆらぎは、多くの場合、注意及び警戒の程度の変化を伴う。認知障害及び思考のゆらぎは、数分間、数時間、又は数日間にわたって変化し得る。レヴィー小体は、リン酸化された及びリン酸化されていない神経細線維タンパク質から形成され;それらは、シナプスタンパク質のα-シヌクレイン、及び損傷タンパク質又は異常タンパク質の排除に関与するユビキチンを含む。レヴィー小体に加えて、神経細胞の細胞突起における封入体であるレヴィー神経突起も存在し得る。アミロイド斑は、DLBに罹患した患者の脳で形成され得るが、それらは、アルツハイマー病患者で見られるよりも数が少ない傾向にある。ADの他の顕微病理学的特徴である神経原線維変化は、LBDの主要な特徴ではないが、アミロイド斑に加えて、高い頻度で存在する。
【0016】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位及び下位運動ニューロンの変性を特徴とする。一部のALS患者において、認知症又は失語症が存在し得る(ALS-D)。認知症は、最も一般的には、前頭側頭型認知症(FTD)であり、これらの症例の多くは、歯状回、並びに前頭葉及び側頭葉表層のニューロンに、ユビキチン陽性、タウ陰性の封入体を有する。
【0017】
封入体筋炎(IBM)は、通常50歳を超える人々に見られる、手足が不自由になる疾患であり、この疾患では、筋繊維が炎症を発症して、萎縮し始めるが、脳は危害を受けず、患者はその完全な知力を保持している。アミロイド-βタンパク質の生成に関与する2つの酵素が、高齢者のこの最も一般的な進行性筋疾患を有する患者の筋細胞の内部で増加することが分かり、高齢者では、アミロイド-βも増加している。
【0018】
アミロイド様タンパク質の蓄積及び沈着物に基づくか又はそれらと関連する別の疾患は、黄斑変性症である。黄斑変性症は、網膜(光感受性細胞が視覚シグナルを脳に送る眼底の紙のように薄い組織)の中心領域である黄斑の劣化を引き起こす一般的な眼疾患である。はっきりした明瞭な「直進性」の視覚は、黄斑によって処理される。黄斑の損傷は、盲点の発生及び不鮮明な又は歪んだ視覚をもたらす。加齢黄斑変性症(AMD)は、米国における視力障害の大きな原因であり、また、65歳を超える人々にとって、それは、白色人種における法的盲の主因である。40歳以上の約180万人の米国人が進行期AMDを有し、中間期AMDを有する別の730万人は、失明のリスクがかなりある。米国政府は、2020年までに、進行期AMDの人が290万人に達すると推定している。AMDの犠牲者は、この失明状態の原因及び治療についていかに何も分かっていないかということを知って驚き、苛立つことが多い。
【0019】
2つの形態の黄斑変性症:乾燥型黄斑変性症及び湿潤型黄斑変性症が存在する。黄斑の細胞が徐々に崩壊し始める乾燥型は、黄斑変性症症例の85%で診断される。通常、両目が乾燥型AMDに冒されるが、一方の目が視力を失っても、もう一方の目は冒されずにいることがある。網膜下の黄色い沈着物であるドルーゼンは、乾燥型AMDの一般的な初期徴候である。ドルーゼンの数又はサイズが増大するにつれて、進行期乾燥型AMD又は湿潤型AMDが発症するリスクは増大する。乾燥型AMDが、本疾患の湿潤型に変わることなく進行し、視力喪失を引き起こすことがあり得るが;初期の乾燥型AMDが突然湿潤型に変わることもあり得る。
【0020】
湿潤型は、本症例のわずか15パーセントを占めるに過ぎないが、失明の90パーセントを生じさせ、進行期AMDと考えられる(湿潤型AMDの初期段階も中間段階も存在しない)。湿潤型AMDに先立って、本疾患の乾燥型が必ず生じる。乾燥型が悪化するにつれて、黄斑の裏側に異常な血管成長を有し始める患者もいる。これらの血管は、非常に脆く、体液及び血液を漏出し(それ故、「湿潤型」黄斑変性症)、黄斑に急速な損傷を引き起こす。
【0021】
乾燥型のAMDは、多くの場合、最初にわずかな目のかすみを生じさせる。その後、特に視覚中心がかすみ始め、この領域は疾患が進行するにつれて大きく成長する。一方の目のみが冒されている場合は、症状に気付かないことがある。湿潤型AMDでは、直線が波状に見えることがあり、中心視力の喪失が急速に起こり得る。
【0022】
黄斑変性症の診断は、通常、散瞳検査と、視力検査と、AMDの診断を助ける眼底検査と呼ばれる手順を用いた眼底の観察とを伴い、湿潤型AMDが疑われる場合は、蛍光眼底血管造影を実施することもできる。乾燥型AMDが進行期に達している場合、今のところ、視力喪失を予防する治療はない。しかしながら、特定の高用量処方の抗酸化剤及び亜鉛は、中間期AMDが発展期から進行期に進むのを遅延させるか又は予防することができる。Macugen(登録商標)(ペグアプタニブナトリウム注射液)、レーザー光凝固術、及び光線力学的療法は、黄斑における異常な血管成長及び出血を制御することができ、湿潤型AMDを有する一部の人々には有益であるが;既に喪失した視力がこれらの技術によって回復することはない。視力を既に喪失している場合、生活の質を改善するのに役立ち得る低視力補助器具が存在する。
【0023】
加齢黄斑変性症(AMD)の最も初期の徴候の1つは、網膜色素上皮(RPE)の基底膜とブルッフ膜(BM)との間での、ドルーゼンとして知られる細胞外沈着物の蓄積である。Andersonらによって行われた最近の研究により、ドルーゼンがアミロイドβを含有することが確認された(Experimental Eye Research 78(2004) 243-256)。
【0024】
ピログルタミン酸化されたAβペプチドは、Aβペプチドの蓄積及びアルツハイマー病の斑形成において、重要な役割を果たすことが示されている。それらの疎水能のために、これらのペプチドは、凝集及び斑形成を促進することが示されている。更に、ニューロンにAβN3pE-42を発現しているトランスジェニックマウスモデルにおいて、このペプチドは、インビボにおいて神経毒性であり、ニューロンの喪失に繋がることが示されている(Wirthsらの文献、(2009) Acta Neuropatho/118, 487-496)。
【0025】
AβペプチドのN-末端ピログルタメートに対し特異性のある抗体は、N-末端にピログルタメートを保有するAβの病因種に対してのみそれらの特異性があり、N-末端ピログルタメートを伴わないAPP又は他のAβ種は検出しないので、利点があると考えられる。従って、制御できない脳炎症などの可能性のある副作用のリスクは、ピログルタミン酸化されたバリアントである他のAβ種に対する抗体と比べ、本発明の抗体の使用により、軽減されると考えられる。
【0026】
AβN3pEペプチドを標的化する抗体は、公知である(Aceroらの文献、(2009) J Neuroimmunol 213, 39-46;Saidoらの文献、(1996) Neuron 14, 457-466;米国特許第7,122,374号及びWO 2012/136552)。
【0027】
しかし、ヒト治療において使用することができ、かつアミロイドーシスに、特に臨床期又は前臨床期アルツハイマー病、ダウン症、及び臨床期又は前臨床期脳アミロイド血管障害などのAβN3pEが関与し得る疾患及び状態における認知に陽性に作用する、AβN3pEペプチドに特異性を持つヒト化抗体が必要とされている。
【発明の概要】
【0028】
(発明の概要)
本発明は、モノマー、ダイマー、トリマー型など、又はポリマー型で、凝集物、線維、フィラメントの形状もしくは斑の凝縮した形状で、抗体に提示され得る、広範なβ-アミロイド抗原由来の、特にAβN3pEペプチド由来の特異的エピトープを特異的に認識しかつこれに結合する能力を有する、部分的又は完全なヒト化抗体及びそれらの断片を含み、キメラ抗体及びそれらの断片を含む、高度に特異性がありかつ高度に有効な抗体を含む、新規方法及び組成物を提供する。
【0029】
特に、本発明は、ヒト化抗体又はその機能的バリアントであって、ここで該抗体の軽鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
【化1】
(ここで、
X
1は、Y及びHから選択され;並びに
X
2は、A、I及びTから選択される);
もしくは、
【化2】
から選択されるアミノ酸配列:を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり、
並びに/又は、
ここで、該抗体の重鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
【化3】
(ここで、
X
3は、Y及びHから選択され;
X
4は、Y及びSから選択され;
X
5は、G、T、A及びEから選択され;
X
6は、K及びQから選択され;
X
7は、L及びIから選択され;
X
8は、I及びTから選択され;
X
9は、Y及びHから選択され;並びに
X
10は、V及びTから選択される);
もしくは、
【化4】
から選択されるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、ヒト化抗体又はその機能的バリアントに関する。
【0030】
本発明は、AβN3pEが関与し得るアミロイドーシスの疾患及び状態に陽性に影響を及ぼすヒト化抗体又はそれらの断片を提供する。
【0031】
別の実施態様において、本発明は、循環及び組織中の、特に脳中の、AβN3pEペプチドに結合するヒト化抗体及びそれらの断片を提供する。本発明のヒト化抗体は、遊離のAβN3pEペプチド分子に、又はAβN3pEペプチドの結合型であっても、結合することが可能である。
【0032】
従って、本発明は更に、脳などの中枢神経系中、及び血漿などの循環中で、AβN3pEペプチドの可溶型及び結合型のクリアランスを変更するヒト化抗体を提供する。
【0033】
更なる実施態様において、本発明は、ヒト化抗体が、AβN3pEのピログルタメート保有するN-末端へ特異的に結合する、ヒト化抗体及びそれらの断片を提供する。
【0034】
なお更なる実施態様において、本発明はまた、ベクターにより形質転換された又はヒト化抗体もしくはそれらの断片を発現するポリヌクレオチドを組み込んでいる、宿主細胞にも関する。
【0035】
更に、本発明は、本発明のヒト化抗体及びそれらの断片を含む医薬組成物を提供する。
【0036】
本発明は更に、ヒトにおけるAβN3pEへの結合及びそのクリアランス又は除去に有用であり、これによりアミロイドーシス又はAβN3pE毒性により特徴付けられる疾患及び状態を診断、予防及び治療するのに有用なヒト化抗体及びそれらの断片の使用に関する。
【0037】
特定の実施態様において、生体液及び組織中のAβN3pEペプチドへの結合及びそのクリアランス又は除去が可能である本発明のヒト化抗体は、脳内の拡散斑、神経突起斑、及び脳血管(cerebrovascular)斑などのAβN3pE-含有斑の形成に関連した状態の予防及び/又は治療に有用である。
【0038】
免疫反応性のそれらの断片を含む、本発明のヒト化抗体の投与は、前述の斑又は他の生物学的複合体からのAβN3pEのクリアランス又は除去につながり得る。従って本発明のヒト化抗体は、循環、他の体液中を、前述の斑及び/もしくは他の生物学的複合体が形成される部位、又はそうでなければA□N3pEが損傷作用を示す部位へと、容易に輸送されるであろう。
【0039】
加えて本発明のヒト化抗体による斑又は他の生物学的複合体からのAβN3pEの除去は、不溶性型の斑の可溶化につながり、従って脳組織などの罹患組織からの完全な斑の除去につながり得る。これはひいては、軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)などのようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性、レヴィー小体型認知症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合などの神経変性疾患と診断された患者における認知の改善につながることができる。
【0040】
本発明のヒト化抗体の循環中又は他の体液中のAβN3pEへの結合は更に、循環型又は可溶性型AβN3pEの除去を生じ得る。先に考察したように、AβN3pEは、高い疎水性を示し、かつ他のもの、例えばピログルタミン酸化されないAβペプチドへの高い親和性を有し、このことはアミロイド斑などの、オリゴマー構造及び超分子構造の形成を生じる。特にこれらのオリゴマー構造は、高度に神経毒性であることが示されている。オリゴマー構造の形成は、神経細胞の細胞損傷及び死滅につながる。従って循環型もしくは可溶性型AβN3pEの除去、又は更にAβN3pEを含むオリゴマーの除去は、細胞損傷及び/又は神経毒性の予防につながる。従って本発明はまた、軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)などのようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性、レヴィー小体型認知症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合などの神経変性疾患を予防する方法も提供する。
【0041】
本発明は更に、アミロイド-様タンパク質、特にAβN3pEに基づくか又はそれに関連する他の疾患、例えば、進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病に関連した認知症;及び老人性心アミロイドーシス、並びに黄斑変性症を含む他の疾患を予防及び/又は治療する方法を提供する。
【0042】
本発明は更に、生物学的試料、例えば、液体試料又は血清試料、好ましくは血清試料、又は組織試料の中の、Aβバリアント、特にAβN3pEの定量的測定を可能にする、高感度で同時に堅固な検出技術を提供する。これは、血液中のこれらのAβN3pEペプチドの存在量が低いことを考慮すると、驚異的な挑戦である。しかしこのような検出技術を利用可能とすることは、薬物スクリーニング及び創薬プログラムにおける小型分子阻害剤の有効性の研究の前提条件である。
【0043】
本発明の教示により可能である抗体は、アミロイドーシスの診断、いくつか例を挙げると、非限定的に、アルツハイマー病(AD)、レヴィー小体認知症、ダウン症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型)、グアム島パーキンソン認知症複合などの神経障害、並びにアミロイド-様タンパク質に基づくか又はそれに関連する他の疾患、例えば、進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型)、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病に関連した認知症、老人性心アミロイドーシス;並びに黄斑変性症を含む他の疾患を含む、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含む、アミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群の診断に、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
(図面の説明)
【
図1】マウス抗体クローン#6のCDR定義。 軽鎖(LC)及び重鎖(HC)の可変ドメインのアミノ酸配列を示す。LC及びHCの3つのCDRには、1971年のKabat及びWuの文献(Kabat E. A.及びWU, T.T.:「タンパク質の非ヘリカル配列及び許容できるヘリカル配列を配置する試み:免疫グロブリン軽鎖及び重鎖の可変領域への適用(An Attempt to Locate the Non-helical and Permissively Helical Sequences of Proteins: Application to the Variable Regions of Immunoglobrin Light and Heavy Chains)」、Proc. Nat. Acad. Sci. USA; Vol. 68, No. 7, pp. 1501-1506, 1971)、並びに1991年のKabatらの文献(Kabat E. A.及びWU, T.T.:「同一のV領域アミノ酸配列及び異なる特異性の抗体の配列のセグメント:抗体結合部位の結合へのVH及びVL遺伝子、ミニ遺伝子、及び相補性決定領域の相対寄与(IDENTICAL V REGION AMINO ACID SEQUENCES AND SEGMENTS OF SEQUENCES IN ANTIBODIES OF DIFFERENT SPECIFICITIES: Relative Contributions of VH and VL Genes, Minigenes, and Complementarity-Determining Regions to Binding of Antibody-Combining Sites)」、The Journal of Immunology, Vol. 147; pp. 1709-1719, 1991)に従いフレームを付け(2009年のSircarらの文献から選択(Sircar A.ら:「RosettaAntibody:抗体可変領域相同性モデルサーバー(RosettaAntibody: antibody variable region homologyy modeling server)」、Nucleic Acids Research, 2009, Vol. 37, pp. W474-W479));加えて、HCのCDR1は、1989年のClothiaらの文献により定義されている(Clothia C.らの文献:「免疫グロブリン超可変領域のコンホメーション(Conformations of immunogloburin hypervariable regions)」、Nature, Vol. 342, pp. 877-883, 1989)。
【0045】
【
図2】プロテインGクロマトグラフィーによるヒト化抗体クローン#6の精製。 組換え生成されたヒト化抗体クローン#6は、プロテインGクロマトグラフィーにより精製した。24μlの投入画分(レーン1)、フロースルー画分(レーン22)及び溶離画分(レーン3)を、非還元条件下で10%SDS PAGE上に装加した。2μgのヒト化(レーン4)抗体を、10%クマーシー染色したSDSゲルにおいて、マウス抗体(レーン5)と比較した。
【0046】
【
図3】ヒト化抗体クローン#6 HC T97バリアント及びLC L41バリアントのKDの算出。 ヒト化抗体クローン#6のHC T97及びLC L41バリアントのAβ(pE3-18)への結合親和性を、ペプチド濃度1~100nM(HC T97バリアント)及び10~1000nM(LC L41バリアント)を使用するSPRにより測定した。KDは、5.3nMと算出した。LC L41バリアントのKD値は、RU
equ値をペプチド濃度に対してプロットし、かつ先に説明したような定常状態モデルにフットさせることにより、162.7nMと決定した。
【0047】
【
図4】ヒト化抗体クローン#6バリアントHC T97を発現する安定した細胞株の作製 A)ヒト化抗体クローン#6バリアントHC T97を安定して発現しているCHO DG44細胞のMTX処理。0.5μM MTX(レーン2)は、0.1μM及び非処理MTX(レーン1及び4)と比較して、発現の増加につながる。更に、1μM MTXを使用する処理と比べ、より少ない量の細胞が死滅した(レーン4)。24μlの上清を、非還元条件下で10%SDS PAGE上に装加した。B)限定希釈によるクローン選択後、18クローンを得、ウェスタンブロットにより分析した。24μlの上清を、非還元条件下で12%SDS PAGE上に装加した。C)これらの18クローン中の5種を、スケールアップし(scaled up)、7日間培養し、その上清中の発現レベルを、SPRにより分析した。
【0048】
【
図5】AβpE3-18 ペプチドによるヒト化抗体クローン#6のITC測定 精製したヒト化抗体クローン#6 HC T97バリアントを、ITC測定に使用した。上側:ITC測定の生データ。下側:ペプチド/抗体モル比の関数としての、添加したペプチドの濃度を表す、生データの積分。熱力学パラメータの値を左側に示している。
【0049】
【
図6】Fcγ受容体CD16Aへの、配列番号:73(WT)のヒトIgG1 Fc野生型領域、又はそのK322A変異体バリアント(配列番号:74)のいずれかを含む2種の抗体の結合
【0050】
【
図7】Fcγ受容体CD32Aへの、配列番号:73(WT)のヒトIgG1 Fc野生型領域、又はそのK322A変異体バリアント(配列番号:74)のいずれかを含む2種の抗体の結合
【0051】
【
図8】Fcγ受容体CD32Bへの、配列番号:73(WT)のヒトIgG1 Fc野生型領域、又はそのK322A変異体バリアント(配列番号:74)のいずれかを含む2種の抗体の結合
【0052】
【
図9】Fcγ受容体CD64への、配列番号:73(WT)のヒトIgG1 Fc野生型領域、又はそのK322A変異体バリアント(配列番号:74)のいずれかを含む2種の抗体の結合
【0053】
【
図10】C1qへの、配列番号:73(WT)のヒトIgG1 Fc野生型領域、又はそのK322A変異体バリアント(配列番号:74)のいずれかを含む2種の抗体の結合分析
【発明を実施するための形態】
【0054】
(発明の詳細な説明)
(定義)
用語「抗体」は、最も広範な意味で使用されており、かつ具体的には、それらが所望の生体活性を示す限り、無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を対象としている。抗体は、例えば、IgM、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4)、IgD、IgA、又はIgEであることができる。しかしながら、好ましくは、抗体は、IgM抗体ではない。
【0055】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、一般には、無傷の抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片;ダイアボディ;単鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0056】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を構成している個々の抗体は、少量で存在し得る可能な天然の変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、極めて特異的であり、単一の抗原性部位に対するものである。さらに、通常、様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を含む「ポリクローナル抗体」調製物とは対照的に、各々のモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、多くの場合、それが、他の免疫グロブリンが夾雑していない、ハイブリドーマ培養物によって合成されるという点で有利であり得る。「モノクローナル」とは、抗体が、実質的に均質な抗体の集団から得られるという性格を示しており、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerらの文献(Nature, 256:495 (1975))に最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製することができるか、又は一般に周知の組換えDNA法によって作製することができる。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonらの文献、Nature, 352:624-628 (1991)及びMarksらの文献、J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載された技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0057】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来するか又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、該鎖(複数可)の残りの部分は、別の種に由来するか又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である、キメラ抗体(免疫グロブリン)、並びに所望の生体活性を示す限り、そのような抗体の断片を含む。
【0058】
「ヒト化」型の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含む、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、もしくは抗体の他の抗原結合性部分配列)である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見られない残基を含むことができる。
【0059】
これらの修飾は、抗体性能をさらに精緻化及び最適化するために行なわれる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、CDR領域の全て又は実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、かつFR領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、通常、ヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、Jonesらの文献、Nature, 321:522-525 (1986)、Reichmannらの文献、Nature, 332:323-329 (1988):及びPrestaの文献、Curr. Op. Struct. Biel., 2:593-596 (1992)を参照されたい。
【0060】
「単鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、ここで、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このリンカーによって、sFvは、抗原結合のための望ましい構造を形成することができる。sFvの総説については、Pluckthunの文献、「モノクローナル抗体の薬理学(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies)」、113巻, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag社, New York, pp.269-315(1994)を参照されたい。
【0061】
用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する抗体小断片を指し、この断片は、重鎖可変ドメイン(VH)が同じポリペプチド鎖中の軽鎖可変ドメイン(VD)に接続したもの(VH-VD)を含む。同じ鎖上のこれら2つのドメイン間で対を形成させるには短すぎるリンカーを用いることによって、これらのドメインは、別の鎖の相補的なドメインとの対の形成を強いられ、2つの抗原結合部位を生成させる。ダイアボディは、Hollingerらの文献、Proc. Natl. Acad. Sol. USA, 90:6444-6448 (1993)において、さらに十分に説明されている。
【0062】
「単離された」抗体は、同定され、かつその天然の環境の成分から分離及び/又は回収された抗体である。その天然の環境の夾雑成分は、該抗体の診断的又は治療的使用を妨げる物質であり、かつこれは、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を含むことができる。好ましい実施態様において、該抗体は、(1)Lowry法で決定したときに抗体の95重量%を超えるまで、及び最も好ましくは99重量%を上回るまで、(2)スピニングカップシーケネーター(spinning cup sequenator)の使用により、N-末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、又は(3)クマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を用いる、還元もしくは非還元条件下でのSDS-PAGEによって均質になるまで精製される。単離された抗体は、組換え細胞内のインサイチュの抗体を含むが、それは、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないからである。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0063】
本明細書で使用される場合、表現「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」は、互換的に使用されており、そのような表記は全て子孫を含む。従って、語句「形質転換体」及び「形質転換された細胞」は、継代(transfer)の数とは関係なく、初代の対象細胞及びそれから派生した培養物を含む。全ての子孫は、意図的な又は意図的でない変異のために、DNA含有量が正確には同一でないことがあり得ることも理解される。最初に形質転換された細胞でスクリーニングされたものと同じ機能又は生体活性を有する変異体子孫が含まれる。異なる表記が意図される場合、これは文脈から明らかになるであろう。
【0064】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、互換性があり、かつペプチド結合によって連結されたアミノ酸から構成された生体分子を意味するものと定義される。
【0065】
ペプチド配列又はアミノ酸配列が本明細書において言及される場合、各アミノ酸残基は、アミノ酸の慣用名に対応する、一文字又は三文字表示で表され、これは下記の通常リストに従う:
【表1】
【0066】
本明細書で使用される用語「a」、「an」、及び「the」は、「1以上」を意味するものと定義され、文脈が不適切でない限り、複数を含む。
【0067】
「アミロイドもしくはアミロイド様タンパク質によって引き起こされるか、又はそれらと関連する疾患及び障害」という言い回しは、単量体、原線維、もしくは重合体状態、又はこれら3つの任意の組合せのアミロイド様タンパク質の存在又は活性によって引き起こされる疾患及び障害を含むが、これらに限定されない。そのような疾患及び障害としては、アミロイドーシス、内分泌腫瘍、及び黄斑変性症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
用語「アミロイドーシス」は、アミロイド斑形成と関連する疾患及び障害の群を指し、これは、限定されないが、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシス、例えば、限定されないが、神経学的障害、例えば、アルツハイマー病(AD)を含む、疾患を含み、これには、認知記憶能力の喪失を特徴とする疾患又は状態、例えば、軽度認知障害(MCI)、孤発性アルツハイマー病、レヴィー小体型認知症、ダウン症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合、家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族型のアルツハイマー病など;並びにアミロイド様タンパク質に基づくか又はそれと関連する他の疾患、例えば、進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、封入体筋炎(IBM)、成人発症型糖尿病、及び老人性心アミロイドーシス;並びにβ-アミロイド沈着による黄斑変性症、ドルーゼン関連視神経症、及び白内障を含む様々な眼疾患が含まれる。
【0069】
「アミロイドβ、Aβ、又は/β-アミロイド」は、当技術分野で認識されている用語であり、アミロイドβタンパク質及びペプチド、アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)、並びにこれらの修飾物、断片、及び任意の機能的同等物を指す。特に、本明細書で使用されるアミロイドβとは、APPのタンパク質分解的切断によって生成される任意の断片を意味するが、とりわけ、アミロイド病変に関与又は関連する断片を意味し、これには、限定されないが、Aβ
1-38、Aβ
1-40、Aβ
1-42が含まれる。これらのAβペプチドのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化5】
。
【0070】
「pGlu-Aβ」又は「AβN3pE」は、Aβのアミノ酸配列中の位置3のグルタミン酸残基から始まるN-末端切断型のAβを指し、ここで、該グルタミン酸残基は環化されて、ピログルタミン酸化残基を形成する。特に、本明細書で使用されるpGlu-Aβ又はAβN3pEとは、限定されないが、pGlu-Aβ3-38、pGlu-Aβ3-40、p-Glu-Aβ3-42を含む、アミロイド病変に関与又は関連するそれらの断片を意味する。
【0071】
N-末端切断型のAβであるAβ
3-38、Aβ
3-40、Aβ
3-42の配列は以下の通りである:
【化6】
。
【0072】
本発明は、N-末端のアミノ酸番号1及び2が切断されるか又は喪失されたことにより、N-末端切断され、並びにそのため露わになったN-末端アミノ酸番号3が、ピログルタメート形成により修飾され、従ってN-末端の位置3にピログルタメート残基を保有する、ヒトAβペプチド(更に、AβN3pEペプチド又はN3pE-Aβペプチド又はピログルタミン酸化されたAβペプチドと称される)に特異的なヒト化抗体に関する。
【0073】
第一の態様において、本発明は、該抗体の軽鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
【化7】
(ここで、
X
1は、Y及びHから選択され;並びに
X
2は、A、I及びTから選択される);
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、ヒト化抗体に関する。
【0074】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:7のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の軽鎖の可変部分を有する抗体は、軽鎖中に下記のCDR領域:
【化8】
(ここで、X
1は、Y及びHから選択される);
【化9】
を含む。
【0075】
より好ましくは、本発明の抗体の軽鎖の可変部分において、X
1はYであり、及びX
2はIであり、従って軽鎖の可変部分は、アミノ酸配列:
【化10】
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0076】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:11のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の軽鎖の可変部分を有する抗体は、軽鎖中に下記のCDR領域:
【化11】
を含む。
【0077】
更に好ましくは、本発明の抗体の軽鎖の可変部分において、X
1はYであり、及びX
2はAであり、従って軽鎖の可変部分は、アミノ酸配列:
【化12】
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0078】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:13のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の軽鎖の可変部分を有する抗体は、配列番号:12のVL CDR1、配列番号:9のVL CDR2、及び配列番号:10のVL CDR3であるCDR領域を含む。
【0079】
最も好ましくは、本発明の抗体の軽鎖の可変部分において、X
1はYであり、及びX
2はTであり、従って軽鎖の可変部分は、アミノ酸配列:
【化13】
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0080】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の軽鎖の可変部分を有する抗体は、配列番号:12のVL CDR1、配列番号:9のVL CDR2、及び配列番号:10のVL CDR3であるCDR領域を含む。
【0081】
更に最も好ましくは、本発明の抗体の軽鎖の可変部分において、X
1はHであり及びX
2はTであり、従って軽鎖は、アミノ酸配列:
【化14】
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0082】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:15のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の軽鎖の可変部分を有する抗体は、軽鎖中に下記のCDR領域:
【化15】
を含む。
【0083】
更に、第一の態様に従い、本発明は、該抗体の重鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
【化16】
(ここで、
X
3は、Y及びHから選択され;
X
4は、Y及びSから選択され;
X
5は、G、T、A及びEから選択され;
X
6は、K及びQから選択され;
X
7は、L及びIから選択され;
X
8は、I及びTから選択され;
X
9は、Y及びHから選択され;並びに
X
10は、V及びTから選択される);
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、ヒト化抗体に関する。
【0084】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:17のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の重鎖の可変部分を有する抗体は、重鎖中に下記のCDR領域:
【化17】
(ここで、X
3は、Y及びHから選択される);
【化18】
(ここで、X
4は、Y及びSから選択され、X
5は、G、T、A及びEから選択され;並びに、X
6は、K及びQから選択される);並びに
【化19】
を含む。
【0085】
好ましくは、本発明の抗体の重鎖の可変部分において、X
3はYであり、X
4はYであり、X
5はGであり、X
6はKであり、X
7はTであり、X
8はIであり、X
9はYであり、及びX
10はVであり、従って重鎖は、アミノ酸配列:
【化20】
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0086】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:21のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の重鎖の可変部分を有する抗体は、重鎖中に下記のCDR領域:
【化21】
を含む。
【0087】
より好ましくは、本発明の抗体の重鎖の可変部分において、X
3はHであり、X
4はSであり、X
5はGであり、X
6はQであり、X
7はIであり、X
8はTであり、X
9はHであり、及びX
10はVであり、従って重鎖は、アミノ酸配列:
【化22】
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0088】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:24のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の重鎖の可変部分を有する抗体は、重鎖中に下記のCDR領域:
【化23】
を含む。
【0089】
更により好ましくは、本発明の抗体の重鎖の可変部分において、X
3はHであり、X
4はSであり、X
5はGであり、X
6はQであり、X
7はIであり、X
8はTであり、X
9はHであり、及びX
10はTであり、従って重鎖は、アミノ酸配列:
【化24】
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0090】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:27のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の重鎖の可変部分を有する抗体は、重鎖中に下記のCDR領域:
【化25】
を含む。
【0091】
最も好ましくは、本発明の抗体の重鎖の可変部分において、X
3はHであり、X
4はSであり、X
5はTであり、X
6はQであり、X
7はIであり、X
8はTであり、X
9はHであり、及びX
10はTであり、従って重鎖は、アミノ酸配列:
【化26】
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0092】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:66のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の重鎖の可変部分を有する抗体は、重鎖中に下記のCDR領域:
【化27】
を含む。
【0093】
更に最も好ましくは、本発明の抗体の重鎖の可変部分において、X
3はHであり、X
4はSであり、X
5はAであり、X
6はQであり、X
7はIであり、X
8はTであり、X
9はHであり、及びX
10はTであり、従って重鎖は、アミノ酸配列:
【化28】
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0094】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:68のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の重鎖の可変部分を有する抗体は、重鎖中に下記のCDR領域:
【化29】
を含む。
【0095】
更に最も好ましくは、本発明の抗体の重鎖の可変部分において、X
3はHであり、X
4はSであり、X
5はEであり、X
6はQであり、X
7はIであり、X
8はTであり、X
9はHであり、及びX
10はTであり、従って重鎖は、アミノ酸配列:
【化30】
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0096】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:70のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の重鎖の可変部分を有する抗体は、重鎖中に下記のCDR領域:
【化31】
を含む。
【0097】
更に本発明の第一の態様に従い、下記の軽鎖及び重鎖の可変部分の組合せを含むか、これから本質的になるか又はこれからなるヒト化抗体が、好ましい:
【表2】
。
【0098】
より好ましくは、本発明のヒト化抗体の軽鎖の可変部分は、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0099】
更により好ましくは、本発明のヒト化抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:27のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0100】
更により好ましくは、本発明のヒト化抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:66、72及び74から選択されるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0101】
最も好ましくは、本発明のヒト化抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:70のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0102】
最も好ましくは、本発明のヒト化抗体の軽鎖の可変部分は、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり、並びに本発明のヒト化抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:27のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0103】
更に最も好ましくは、
-本発明のヒト化抗体の軽鎖の可変部分は、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに
-本発明のヒト化抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:27のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに
-配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の軽鎖の可変部分は、配列番号:12のVL CDR1、配列番号:9のVL CDR2及び配列番号:10のVL CDR3であるCDR領域を含み;並びに
-配列番号:27のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:25のVH CDR1、配列番号:26のVH CDR2及び配列番号:20のVH CDR3であるCDR領域を含む。
【0104】
更に最も好ましくは、本発明のヒト化抗体の軽鎖の可変部分は、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり、並びに本発明のヒト化抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:70のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0105】
更に最も好ましくは、
-本発明のヒト化抗体の軽鎖の可変部分は、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに
-本発明のヒト化抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:70のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに
-配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の軽鎖の可変部分は、配列番号:12のVL CDR1、配列番号:9のVL CDR2及び配列番号:10のVL CDR3であるCDR領域を含み;並びに
-配列番号:70のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:25のVH CDR1、配列番号:71のVH CDR2及び配列番号:20のVH CDR3であるCDR領域を含む。
【0106】
第二の態様において、本発明は、該抗体の軽鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
【化32】
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、ヒト化抗体に関する。
【0107】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:28のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の軽鎖の可変部分を有する抗体は、軽鎖中に下記のCDR領域:
【化33】
を含む。
【0108】
更に第二の態様に従い、本発明は、該抗体の重鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
【化34】
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、ヒト化抗体に関する。
【0109】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:32のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の重鎖の可変部分を有する抗体は、重鎖中に下記のCDR領域:
【化35】
を含む。
【0110】
第三の態様において、本発明は、該抗体の軽鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
【化36】
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、ヒト化抗体に関する。
【0111】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:36のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の軽鎖の可変部分を有する抗体は、軽鎖中に下記のCDR領域:
【化37】
を含む。
【0112】
更に第三の態様に従い、本発明は、該抗体の重鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
【化38】
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、ヒト化抗体に関する。
【0113】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号:40のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の重鎖の可変部分を有する抗体は、重鎖中に下記のCDR領域:
【化39】
を含む。
【0114】
更に特に好ましい実施態様において、本発明は、以下から選択された軽鎖中のCDR領域を含む、ヒトN3pE-Aβペプチドに特異的なヒト化抗体に関する:
【表3】
【0115】
更に、本発明は、以下から選択された重鎖中のCDR領域を含む、ヒトN3pE-Aβペプチドに特異的なヒト抗体に関する:
【表4】
【0116】
好ましい本発明のヒト化抗体は、以下から選択されるハイブリドーマ細胞株により作製される、モノクローナルマウス抗体のヒト化型であり:
Aβ5-5-6 (寄託番号DSM ACC 2923)
Aβ6-1-6 (寄託番号DSM ACC 2924)
Aβ17-4-3 (寄託番号DSM ACC 2925)
Aβ24-2-3 (寄託番号DSM ACC 2926)
これらは、WO 2010/009987に記載されている。
【0117】
本発明のヒト化抗体の軽鎖及び重鎖の配列は、変動することができる。これらの免疫グロブリンは、ヒトフレームワーク領域セグメントに機能的に連結された1以上のマウス相補性決定領域(CDR)を含む少なくとも1本の鎖である、軽鎖/重鎖複合体の2つの対を有することができる。
【0118】
別の実施態様において、本発明は、本明細書に説明した重鎖及び軽鎖CDRを含む、本発明のヒト化抗体をコードしている組換えポリヌクレオチドに関する。
【0119】
本発明の抗体のヒトフレームワーク領域は、CDRを供する非-ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域又は可変領域のアミノ酸配列の、ヒト免疫グロブリン可変領域を含む配列コレクション中の対応する配列との比較により、決定される。高いアミノ酸同一率を有する配列が、選択される。
【0120】
好ましい本発明のポリヌクレオチドは、軽鎖において配列番号:9、10、16、29-31及び37-39のアミノ酸配列からなるCDRから選択されたCDR、及び重鎖において配列番号:20、22、23、25、26、33-35、41-43、67、69及び71のアミノ酸配列からなるCDRから選択されたCDRを含む、抗体をコードしている。
【0121】
軽鎖の可変部分が、配列番号:7、11、13、14、及び28から選択されたアミノ酸を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる抗体をコードしているポリヌクレオチドが、更に好ましい。
【0122】
重鎖の可変部分が、配列番号:17、21、24、27、32、36、40、66、68及び70から選択されたアミノ酸を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる抗体をコードしているポリヌクレオチドが、なお一層好ましい。
【0123】
更なる実施態様において、本発明のヒト化抗体は、配列番号:73のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、ヒトIgG1 Fc領域を有する。
【0124】
C1q並びに2つのセリンプロテアーゼC1r及びC1sは、補体依存性細胞傷害活性(CDC)経路の第一成分であるC1複合体を形成する。C1qは、分子量およそ460,000で、6個の膠質性「茎」が、6個の球状頭部領域に接続されたチューリップの花束に例えられる構造を持つ、六価分子である(Burton及びWoofの文献, Advances in Immunol 51:1-84; 1992)。IgG1分子のC1qへの結合は、補体活性化を開始し、引き続き補体介在性細胞溶解へつながる。本発明のヒト化抗体は、炎症疾患及び状態の治療において使用されるものであり、すなわち本発明のヒト化抗体は、抗炎症特性を有するものである。
【0125】
本発明のヒト化抗体のエフェクター機能はまた、抗体のFc領域の、造血細胞上の細胞表面受容体として特定されるFc受容体(FcR)との相互作用により媒介され得る。Fc受容体は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、かつ抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)を介し、免疫複合体の貪食作用による抗体-コートされた病原体の除去、並びに対応する抗体によりコートされた赤血球及び様々な他の細胞標的(例えば腫瘍細胞)の溶解の両方を媒介することが示されている(Van de Winkel及びAndersonの文献, J. Leuk. Bioi. 49:511-24; 1991)。
【0126】
従って本発明は、それらのエフェクター機能を遂行するために、Fc受容体に依然結合するヒト化抗体を更に提供する。しかし本発明のヒト化抗体は、補体依存性細胞傷害を示さないことが好ましい。より好ましくは、本発明のヒト化抗体は、補体系を活性化しないが、むしろ補体-介在性細胞溶解を阻害する。
【0127】
従って好ましい実施態様において、本発明のヒト化抗体は、ヒトIgG Fc領域を有し、これは1個以上のアミノ酸置換、好ましくは3又は2個のアミノ酸の置換、最も好ましくは1個のアミノ酸の置換を含む。このアミノ酸置換は、本発明の抗体のヒトIgG1 Fc領域の部位指定変異誘発などの、従来の方法により達成することができる。
【0128】
より好ましい実施態様において、本発明のヒト化抗体は、位置322にアミノ酸置換を含むヒトIgG Fc領域を有する。このアミノ酸置換は、K322Aが好ましい。
【0129】
最も好ましい実施態様において、本発明のヒト化抗体は、配列番号:74のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、ヒトIgG Fc領域を有する。
【0130】
更に最も好ましくは、本発明のヒト化抗体の軽鎖の可変部分は、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに、本発明のヒト化抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:27のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに、ヒトIgG Fc領域は、配列番号:74のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0131】
なお最も、好ましくは、
-本発明のヒト化抗体の軽鎖の可変部分は、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに
-本発明のヒト化抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:27のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに
-ヒトIgG Fc領域は、配列番号:74のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに
-配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の軽鎖の可変部分は、配列番号:12のVL CDR1、配列番号:9のVL CDR2、及び配列番号:10のVL CDR3であるCDR領域を含み;並びに
-配列番号:27のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:25のVH CDR1、配列番号:26のVH CDR2、及び配列番号:20のVH CDR3であるCDR領域を含む。
【0132】
なお最も好ましくは、本発明のヒト化抗体の軽鎖の可変部分は、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに、本発明のヒト化抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:70のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに、ヒトIgG Fc領域は、配列番号:74のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる。
【0133】
なお最も好ましくは、
-本発明のヒト化抗体の軽鎖の可変部分は、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに
-本発明のヒト化抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:70のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに
-ヒトIgG Fc領域は、配列番号:74のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに
-配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の軽鎖の可変部分は、配列番号:12のVL CDR1、配列番号:9のVL CDR2、及び配列番号:10のVL CDR3であるCDR領域を含み;並びに
-配列番号:70のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、該抗体の重鎖の可変部分は、配列番号:25のVH CDR1、配列番号:71のVH CDR2、及び配列番号:20のVH CDR3であるCDR領域を含む。
【0134】
本発明の好ましいポリヌクレオチドは、軽鎖における配列番号:9、10、16、29-31及び37-39のアミノ酸配列からなるものから選択されたCDR、並びに重鎖における配列番号:20、22、23、25、26、33-35、41-43、67、69及び71のアミノ酸配列からなるものから選択されたCDRを含み;並びに、配列番号:73及び74から選択されたヒトIgG Fc領域を含む、抗体をコードしている。
【0135】
軽鎖の可変部分が、配列番号:7、11、13、14、及び28から選択されたアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに、ヒトIgG Fc領域が、配列番号:73又は74から選択されたアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、抗体をコードしているポリヌクレオチドが、更に好ましい。
【0136】
重鎖の可変部分が、配列番号:17、21、24、27、32、36、40、66、68及び70から選択されたアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;並びに、ヒトIgG Fc領域が、配列番号:73又は74から選択されたアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、抗体をコードしているポリヌクレオチドが、なお好ましい。
【0137】
前述のポリヌクレオチドは、当該技術分野において周知の発現ベクターへ組み込まれることができる。好適な宿主におけるこれらの発現ベクターのトランスフェクション、宿主の選択、並びに軽鎖、重鎖、軽/重鎖二量体もしくは無傷の抗体、結合断片又は他の免疫グロブリン型の発現の収集及び精製は、当該技術分野において周知の手法である。
【0138】
当業者は、例えば、哺乳動物細胞又は細菌細胞などの、特定の細胞におけるベクターの作製のために、所望の特性を基に、ベクターを選択することができる。
【0139】
様々な誘導性プロモーター又はエンハンサーのいずれかを、本発明の抗体又は調節し得る核酸の発現のために、ベクター内に含むことができる。かかる誘導性システムは、例えば、テトラサイクリン誘導性システム(Gossen及びBizardの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:5547-5551 (1992);Gossenらの文献、Science, 268:17664769 (1995);Clontech社、パロアルト、CA);重金属により誘導されたメタロチオネインプロモーター;エクジソンに反応性の昆虫ステロイドホルモン又はムリステロンなどの関連ステロイド(Noらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:3346-3351 (1996);Yaoらの文献、Nature, 366:476-479 (1993);Invitrogen社、カールスバッド、CA);糖質コルチコイド及びエストロゲンなどのステロイドにより誘導されたマウス乳癌ウイルス(MMTV)(Leeらの文献、Nature, 294:228-232 (1981));並びに、温度変化により誘導されるヒートショックプロモーター;ラットニューロン特異性エノラーゼ遺伝子プロモーター(Forss-Petterらの文献、Neuron 5; 197-197 (1990));ヒトβ-アクチン遺伝子プロモーター(Rayらの文献、Genes and Development (1991) 5:2265-2273);ヒト血小板由来増殖因子B(PDGF-B)鎖遺伝子プロモーター(Sasaharaらの文献、Cell (1991) 64:217-227);ラットナトリウムチャネル遺伝子プロモーター(Maueらの文献、Neuron (1990) 4:223-231);ヒト銅-亜鉛スーパオキシドジスムターゼ遺伝子プロモーター(Ceballos-Picotらの文献、Brain Res. (1991) 552:198-214);並びに、哺乳動物POU-ドメイン調節遺伝子ファミリーのメンバーのためのプロモーター(Xiらの文献、(1989) Nature 340:35-42)を含む。
【0140】
プロモーター又はエンハンサーを含む、調節エレメントは、その調節の性質に応じて、構成的であるか又は調節され得る。これらの調節配列又は調節エレメントは、本発明のポリヌクレオチド配列のひとつに機能的に連結され、その結果そのポリヌクレオチド配列と調節配列の間の物理的及び機能的関係は、このポリヌクレオチド配列の転写を可能にする。真核細胞における発現に有用なベクターは、例えば、CAGプロモーター、SV40初期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)ステロイド-誘導性プロモーター、Pgtf、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)プロモーター、thy-1プロモーターなどを含む調節エレメントを含むことができる。
【0141】
望ましいならば、ベクターは、選択マーカーを含むことができる。本明細書において使用される「選択マーカー」は、選択マーカーが導入された細胞へ選択可能な表現型を提供する遺伝要素を指す。選択マーカーは一般に、その遺伝子産物が、細胞増殖を阻害するか又は細胞を死滅させる物質に対する抵抗性を提供する遺伝子である。様々な選択マーカーを、本発明のDNA構築体において使用することができ、これは例えば、Ausubelらの文献(「最新分子生物学プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(補遺47)、John Wiley & Sons社、ニューヨーク(1999))及び米国特許第5,981,830号に説明されたような、例えば、Neo、Hyg、hisD、Gpt及びBle遺伝子を含む。選択マーカーの存在の選択に有用な薬物は、例えば、NeoのためのG418、Hygのためのヒグロマイシン、hisDのためのヒスチジノール、Gptのためのキサンチン、及びBleのためのブレオマイシンがある(Ausubelらの文献、前掲(1999);米国特許第5,981,830号を参照されたい)。本発明のDNA構築体は、陽性選択マーカー、陰性選択マーカー、又は両方を組み込むことができる(例えば、米国特許第5,981,830号を参照されたい)。
【0142】
様々な哺乳動物細胞培養システムはまた、組換えタンパク質を発現するためにも利用することができる。哺乳動物発現システムの例は、Gluzmanにより説明された(Cell, 23: 175 (1981)) サル腎線維芽細胞COS-7株を含む。互換性のあるベクターの発現が可能である他の細胞株は、例えば、C127、3T3、CHO、HeLa及びBHK細胞株を含む。哺乳動物発現ベクターは一般に、複製起源、好適なプロモーター及びエンハンサー、並びにまた任意の必要とされるリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライシングドナー及びアクセプター部位、転写終結配列、及び5'フランキング非転写配列を含むであろう。SV40スプライシング部位及びポリアデニル化部位由来のDNA配列を使用し、必要な転写されない遺伝要素を提供してもよい。
【0143】
本ポリペプチドは、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含む方法により、組換え細胞培養物から、回収及び精製することができる。ポリペプチドが細胞の表面に発現される場合に、回収は促進され得るが、このことは前提条件ではない。回収はまた、該ポリペプチドのより長い形の発現後に切断される切断産物にも望ましいであろう。当該技術分野において公知のタンパク質再折り畳み工程を、必要に応じ使用し、成熟タンパク質の立体配置を完成することができる。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、最終精製工程に使用することができる。
【0144】
ヒト定常領域DNA配列は、様々なヒト細胞から周知の手順に従い単離することができる。
【0145】
本発明は特に、高い親和性でAβN3pEペプチドに結合することを特徴とするヒト化抗体に関する。本発明はまた、高い親和性でAβN3pEペプチド又は免疫学的活性のあるそれらの断片に結合することを特徴とする抗体にも関する。該高親和性とは、本発明の状況において、親和性のKD値が10-5M、10-6M又は10-7M又はそれ以下を、好ましくはKD値が10-8M又はそれ以下、より好ましくはKD値が10-9M~10-12Mを意味する。これにより、本発明の抗体は、先に公知の抗体よりも、より高い親和性で、モノマー性AβN3pEに結合する。
【0146】
好ましくは、AβN3pE中の本発明のヒト化抗体の結合エピトープは、N-末端にピログルタメートを保有するエピトープである。より好ましくは、本発明のヒト化抗体の結合エピトープは、以下からなる群から選択される:
【化40】
。
【0147】
最も好ましくは、本発明のヒト化抗体は、N-末端にピログルタメートを保有しない結合エピトープには結合しない。
【0148】
なお最も好ましくは、前述の及び引き続き言及する結合エピトープに結合する場合、本発明のヒト化抗体は常に、N-末端にピログルタメートを含む配列又は配列の一部に結合する。本発明のヒト化抗体は、N-末端にピログルタメートを含まない配列又は配列の一部には結合しない。
【0149】
更に、本発明のヒト化抗体は、AβN3pEバリアントにも結合することができる。
【0150】
本発明の状況において、AβN3pEバリアントは特に:
pE-Aβ3-38、
pE-Aβ3-40、
pE-Aβ3-42
である。
【0151】
AβN3pEペプチドの更なるバリアントは、全てAβN3pEバリアントであり、これらは、アルツハイマー病の結果として又はアルツハイマー病に先だって脳に蓄積することが示されている。これらは、pE-Aβ3-Xペプチドであり、ここでxは、19~42の間の整数と定義し、例えば、上記のpE-Aβ3-42では、「42」が、「x」を表す整数となる。
【0152】
本発明の状況において、本発明のヒト化抗体の「機能的バリアント」は、結合能、特にpE-Aβ3-xペプチドに対する高親和性の結合能を保持している抗体である。そのような機能的バリアントの条件は、当技術分野で公知であり、かつ抗体及びその断片の定義において示された、上述の可能性を包含している。
【0153】
更なる実施態様において、ヒト化抗体は、上で定義したような抗体断片である。
【0154】
さらなる好ましい実施態様において、本発明のヒト化抗体は、上で定義した抗体の相補性決定領域(CDR)を有するヒト化抗体である。好ましくは、抗体は、標識することができ;可能性のある標識は、上述のもの、及び特に抗体の診断的使用の当業者に公知のもの全てである。
【0155】
別の実施態様において、ヒト化抗体は、固相に固定化され得る。
【0156】
別の実施態様において、本発明の及び本明細書で先に記載したようなヒト化抗体、又はこれらの断片は、AβN3pE単量体に対する結合親和性よりも、少なくとも2倍、特に少なくとも4倍、特に少なくとも10倍、特に少なくとも15倍、より特に少なくとも20倍、しかしとりわけ、少なくとも25倍高い、AβN3pEオリゴマー、線維、原線維、又はフィラメントに対する結合親和性を示す。
【0157】
さらに別の実施態様において、抗体が、哺乳動物、特にヒトの脳の、AβN3pEを含む、Aβ斑を含む、凝集したAβに実質的に結合するが、好ましくは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)とのいかなる顕著な交差反応性も示さない、ヒト化抗体又はそれらの断片が、本明細書において先に記載したように提供される。
【0158】
別の本発明の態様において、抗体が、哺乳動物の、特にヒト脳内の、AβN3pEを含む、オリゴマー性又はポリマー性のアミロイド、特にアミロイドβ(Aβ)に実質的に結合するが、好ましくは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)とのいかなる顕著な交差反応性も示さない、ヒト化抗体又はそれらの断片が、本明細書において先に記載したように提供される。
【0159】
本発明はまた、該ヒト化抗体を含む組成物、並びに哺乳動物、特にヒトにおける、アミロイドーシスの治療、特に神経変性疾患の治療のための該組成物の使用にも関する。前記神経変性疾患は特に、軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性からなる群から選択される。好ましくは、該神経変性疾患は、アルツハイマー病である。
【0160】
従って好ましい実施態様において、本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける、AβN3pEを含む斑の形成により特徴付けられる状態の、治療及び/又は予防の方法に関し、この方法は、本発明のヒト化モノクローナル抗体又はそれらの免疫学的反応性断片の治療的又は予防的有効量を、そのような治療を必要とするヒトへ、好ましくは末梢的に、投与することを含み、この抗体は、N-末端にピログルタメートを保有するAβN3pEペプチドのエピトープへ特異的に結合する。
【0161】
別の実施態様において、本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、アミロイド斑の形成を阻害し、及びアミロイド斑をクリアランス又は除去する方法に関し、この方法は、循環、体液又は組織中の、特に脳中のAβN3pEに結合する、かつ更に好ましくは血漿及び脳中のAβN3pEのクリアランスにつながるヒト化抗体の有効量を、そのような阻害を必要とするヒト対象へ、投与することを含む。
【0162】
従って本発明はまた、本発明のヒト化抗体の有効量を、対象へ投与することを含む、軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性、並びに臨床期又は前臨床期脳アミロイド血管障害と診断された、好ましくはアルツハイマー病と診断された対象において、認知能減退を逆転し、認知を改善し、認知能減退を治療し、及び認知能減退を防ぐ方法を提供する。
【0163】
本発明はまた、軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性、並びに臨床期又は前臨床期脳アミロイド血管障害の、好ましくはアルツハイマー病の治療、予防もしくは逆行のため;あるいは、軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性、並びに臨床期又は前臨床期脳アミロイド血管障害と、好ましくはアルツハイマー病と診断された対象において、認知能減退を逆転し、認知を改善し、認知能減退を治療し、及び認知能減退を防ぐための、医薬品の製造のための、本発明のヒト化抗体の使用を提供する。
【0164】
本発明は更に、軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性、並びに臨床期又は前臨床期脳アミロイド血管障害の、好ましくはアルツハイマー病の予防、治療、又は逆行において使用するための;軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性、並びに臨床期又は前臨床期脳アミロイド血管障害と診断された、好ましくはアルツハイマー病と診断された対象において、認知能減退の治療、予防もしくは逆転のため、認知の改善、認知能減退の治療、及び認知能減退の予防のための;あるいは、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるアミロイド斑の形成又はAβN3pEの作用の阻害のための、本明細書に開示されたヒト化抗体を提供する。
【0165】
具体的実施態様において、本発明は、動物、特に哺乳動物又はヒトへ、本発明の及び本明細書において先に説明したようなヒト化抗体、又はヒト化抗体を含有する医薬組成物を投与することにより、記憶障害に罹患している哺乳動物、特にヒトにおける、認知記憶能の保持又は増強のための、しかし特に認知記憶能の回復のための、方法を提供する。
【0166】
本発明は更に、AβN3pEに結合するヒト化抗体又はそれらのバリアントによる治療に対するヒト対象の反応を評価する方法を提供し、これは:
a)本発明のヒト化抗体又はそれらの断片を、対象へ投与すること;及び
b)対象から採取された生体試料中のAβN3pEの濃度を測定すること:を含む。
【0167】
本発明はまた、AβN3pEに結合する抗体又はそれらのバリアントにより、ヒト対象を治療する方法も提供し、これは:
a)抗体又はそれらの断片の第一の量を対象へ投与すること;
b)第一の投与量を投与した後3時間~2週間以内に、対象から採取された生体試料中のAβN3pEの濃度を測定すること;
c)必要ならば、工程b)の結果を基に、抗体又はそれらの断片の第二の量を計算することであって、ここで第二の量は、第一の量と同じか又は異なること;並びに
d)抗体又は断片の第二の量を投与すること:を含む。
【0168】
本発明はまた、哺乳動物の、好ましくはヒト対象における、アミロイド斑形成に関連したAβN3pEの阻害又は予防に関して、AβN3pE含有斑負荷の減少に関して、毒性AβN3pE及びそれらのバリアントの作用の減少に関して、又はAβN3pE含有する斑に関連した状態もしくは疾患の治療に関して、AβN3pEに結合する抗体又はそれらの断片の有効性を評価する方法であって:
a)対象から第一の生体試料を入手すること;
b)第一の試料中のAβN3pEのベースライン濃度を測定すること;
c)対象へ、本発明のヒト化抗体又はそれらの断片を投与すること;
d)抗体又はそれらの断片の投与後3時間~2週間以内に、対象から第二の生体試料を入手すること;並びに
e)第二の生体試料中のAβN3pEの濃度を測定すること:を含み、ここで、有効性は、血液中の抗体に結合したAβN3pEの量、及びAβN3pEの濃度、特に第一の生体試料と比べて第二の生体試料中のそれらの濃度の低下に関連している方法を含む。
【0169】
この生体試料は、例えばヒト由来の、任意の試料であってよい。一つの具体例において、試料は、組織試料、体液試料又は細胞試料である。一実施態様において、生体試料は、血液、血清、尿、脳脊髄液(CSF)、血漿、リンパ液、唾液、汗、胸膜液、滑液、涙液、胆嚢及び膵臓の分泌液からなる群から選択される。更なる実施態様において、生体試料は、血漿である。好ましい実施態様において、生体試料はCSFである。
【0170】
生体試料は、対象から、当業者に周知の様式で得ることができる。特に、血液試料は、対象から得ることができ、かつ血液試料は、常法により血清と血漿に分離することができる。生体試料が入手される対象は、好ましくは、アミロイドーシスの疾患又は状態、好ましくはアルツハイマー病に罹患していることが疑われる対象、アルツハイマー病発症のリスクのある対象及び/又はいずれか他の種類の認知症のリスクがあるか又はこれを有する対象である。特に、試料は、軽度認知障害(MCI)を有することが疑われるか及び/又はアルツハイマー病の初期段階であることが疑われる対象から入手される。
【0171】
軽度認知障害、アルツハイマー病、家族性イギリス型認知症又は家族性デンマーク型認知症、並びに例えばダウン症における神経変性などのアミロイドーシスの診断、予防及び/又は治療における本発明のヒト化抗体の有効性は、アルツハイマー病の現存する動物モデルにおいて試験することができる。
【0172】
アルツハイマー病の好適な動物モデルは、McGowanらの文献、TRENDS in Genetics、第22巻、2006年5月号、281-289頁において検証されており、かつ以下に説明するような、PDAPP、Tg2576、APP23、TgCRND8、PSEN1M146V又はPSEN1M146L、PSAPP、APPDutch、BRI-Aβ40及びBRI-Aβ42、JNPL3、TauP301S、TauV337M、TauR406W、rTg4510、Htau、TAPP、3xTgADから選択される。
【0173】
PDAPP:堅固な斑病変を伴う第一の変異体APPトランスジェニックモデル。このマウスは、インディアナ型変異(APPV717F)を伴うヒトAPP cDNAを発現している。斑病変は、ヘミ接合性PDAPPマウスにおいて6~9ヶ月の間に始まる。シナプス喪失が存在するが、明らかな細胞喪失及びNFT病変は認められない。このモデルは、ワクチン療法戦略において広範に使用されている。
【0174】
Tg2576:このマウスは、ハムスタープリオンプロモーターの制御下で、変異体APPSWEを発現する。斑病変は、月齢9ヶ月から認められる。これらのマウスは、認知障害を有するが、細胞喪失又はNFT病変は有さない。このモデルは、アルツハイマー病の分野において、最も広範に使用されるトランスジェニックモデルの一つである。
【0175】
APP23:このマウスは、Thy1プロモーターの制御下で、変異体APPSWEを発現する。顕著な脳血管アミロイド、アミロイド沈着が、月齢6ヶ月から認められ、海馬神経喪失の一部は、アミロイド斑形成と関連している。
【0176】
TgCRND8:このマウスは、複数のAPP変異(スウェーデン型とインディアナ型)を発現する。認知障害は、月齢~3ヶ月で、急激な細胞外の斑発達と同時に起こる。認知障害は、Aβワクチン療法により逆行させることができる。
【0177】
PSEN1M146V又はPSEN1M146L(各々、6.2株及び8.9株):インビボにおいてその変異体PSEN1が最初に明らかになったこれらのモデルは、Aβ42を選択的に上昇させる。明らかな斑病変は、認められない。
【0178】
PSAPP(Tg2576×PSEN1M146L、PSEN1-A246E+APPSWE):変異体PSEN1導入遺伝子を追加した、二遺伝性(bigenic)トランスジェニックマウスは、単独のトランスジェニック変異体APPマウスと比べ、アミロイド病変を顕著に促進し、このことはPSEN1-駆動したAβ42の上昇は、斑病変を増大することを明らかにしている。
【0179】
APPDutch:このマウスは、ヒトにおいてアミロイドーシス-オランダ型を伴う、遺伝性脳出血を引き起こす、オランダ型変異を伴うAPPを、発現する。APPDutchマウスは、重度のコンゴーレッド親和性のアミロイド血管障害を発症する。変異体PSEN1導入遺伝子の追加は、アミロイド病変を実質へ再分布させ、このことは血管及び実質でのアミロイド病変におけるAβ40及びAβ42の異なる役割を示唆している。
【0180】
BRI-Aβ40及びBRI-Aβ42:このマウスは、APP過剰発現を伴わずに、個々のAβアイソフォームを発現する。Aβ42を発現しているマウスのみが、老人斑及びCAAを発症するのに対し、BRI-Aβ40マウスは、斑を発症せず、このことは、Aβ42が斑形成に必須であることを示唆している。
【0181】
JNPL3:このマウスは、P301L変異を伴う4R0N MAPTを発現する。これは、顕著なもつれ病変及び細胞喪失を伴う、最初のトランスジェニックモデルであり、このことはMAPT単独で、細胞損傷及び喪失を引き起こし得ることを明らかにしている。JNPL3マウスは、脊髄の重度の病変及び運動神経喪失に起因した、年齢に伴う運動機能障害を発症する。
【0182】
TauP301S:P301S変異を伴う4R MAPTの最も短いアイソフォームを発現しているトランスジェニックマウスである。ホモ接合性マウスは、脳及び脊髄の広い範囲に広がった神経原線維病変並びに脊髄の神経喪失により、月齢5~6ヶ月で、重度の不全対麻痺を発症する。
【0183】
TauV337M:V337M変異による4R MAPTの低レベルの合成(1/10内在性MAPT)は、血小板-由来の増殖因子(PDGF)のプロモーターにより駆動される。これらのマウスにおける神経原線維病変の発達は、絶対MAPT細胞内濃度よりもむしろMAPTの性質が、病変を駆動することを示唆している。
【0184】
TauR406W:CAMKIIプロモーターの制御下で、R406W変異により4RヒトMAPTを発現しているマウス。マウスは、月齢18ヶ月から前脳において、MAPT封入体を発生し、かつ連想記憶が損傷されている。
【0185】
rTg4510:TET-オフシステムを使用する、誘導性MAPTトランスジェニックマウス。異常なMAPT病変は、月齢1ヶ月から発生する。マウスは、進行性NFT病変及び重度の細胞喪失を有する。認知障害は、月齢2.5ヶ月から顕著である。この導入遺伝子の停止(turn off)で、認知能力は向上するが、NT病変は悪化する。
【0186】
Htau:ヒトゲノムMAPTのみを発現しているトランスジェニックマウス(ノックアウトMAPTマウス)。Htauマウスは、6ヶ月から過リン酸化されたMAPTを蓄積し、かつそれらが月齢15ヶ月になる時点までに、Thio-S-陽性NFTを発生させる。
【0187】
TAPP(Tg2576×JNPL3):JNPL3と比べ、TAPPマウスにおける増加したMAPT前脳病変は、変異体APP及び/又はAβが、下流のMAPT病変に影響を及ぼし得ることを示唆している。
【0188】
3×TgAD:PSEN1M146V「ノックイン」バックグラウンド(PSNE1-KI)上で、変異体APPSWE、MAPTP301Lを発現している三重トランスジェニックモデル。このマウスは、6ヶ月から斑を発生させ、並びにそれらが月齢12ヶ月に達した時点から、MAPT病変を発生し、このことは、APP又はAβは、神経原線維病変に直接影響を及ぼし得るという仮説を裏付けている。
【0189】
更にWO 2009/034158は、導入遺伝子が、AβN3E-42、AβN3Q-42、AβN3E-40及びAβN3Q-40からなる群から選択される、少なくとも1種のアミロイドベータ(Aβ)ペプチドをコードしている、非-ヒトトランスジェニック動物モデルを開示している。これらのAβペプチドは、QC及びQPCTLの基質であり、N-末端グルタミン(Q)又はグルタメート(N)のピログルタメート(pGlu)への環化を生じる。従ってこれらのトランスジェニック動物モデルは、pGlu-Aβペプチドの、神経変性の発症過程に対する効果の調査のためのモデルシステムを提供する。
【0190】
抗-AβpN3pE抗体はまた、AβpN3pEの診断アッセイにおいて、例えば特定の細胞、組織、又は血清中のその出現の検出のために、有用であることができる。従って本発明のヒト化抗体は特別に、アミロイドーシスを検出、特に軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくはアルツハイマー病を検出するための、診断方法において有用である。
【0191】
診断的適用のために、抗体は、通常、検出可能な部分で標識されている。多くの標識が利用可能であり、それらは、一般に、以下のカテゴリーに分類することができる:
(a)放射性同位体、例えば、35S、14C、125I、3H、及び131I。抗体は、例えば、「免疫学の最新プロトコール(Current Protocols in Immunology)」、第1巻及び第2巻, Gutigenら編, Wiley-Interscience社. New York, New York. Pubs,(1991)に記載されている技術を用いて放射性同位体で標識することができ、放射能は、シンチレーションカウンティングを用いて測定することができる。
(b)蛍光標識、例えば、希土類キレート(ユーロピウムキレート)又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリスリン、並びにテキサスレッドが利用可能である。蛍光標識は、例えば、「免疫学の最新プロトコル」(前掲)に開示されている技術を用いて、抗体にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光光度計を用いて定量することができる。
(c)様々な酵素-基質標識が利用可能である。酵素は一般に、様々な技術を用いて測定することができる発色基質の化学的変化を触媒する。例えば、酵素は、基質の色の変化を触媒することができ、この変化は、分光光度法によって測定することができる。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変化させることができる。蛍光の変化を定量するための技術は上で説明されている。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起されるようになり、その後(例えば、化学発光計を用いて)測定し得る光を放出することができるか、又は蛍光受容体にエネルギーを供与する。酵素標識の例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、O-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。酵素を抗体にコンジュゲートさせるための技術は、O'Sullivanらの文献、「酵素イムノアッセイにおける使用のための酵素-抗体コンジュゲートの調製方法(Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay)」、Methods in Enzym(Langone及びH. Van Vunakis編), Academic Press社, New York, 73:147-166(1981)に記載されている。
【0192】
酵素-基質の組合せの例としては、例えば:
(i)セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)と、基質としての水素ペルオキシダーゼ、ここで、該水素ペルオキシダーゼは、色素前駆体(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)又は3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と、発色基質としてのパラ-ニトロフェニルホスフェート;及び
(iii)β-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)と、発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光基質4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ
が挙げられる。
【0193】
他の多くの酵素-基質の組合せが、当業者に利用可能である。
【0194】
標識は、抗体と間接的にコンジュゲートされている場合もある。当業者であれば、これを達成するための様々な技術を知っているであろう。例えば、抗体をビオチンとコンジュゲートさせることができ、上述の3つの幅広いカテゴリーの標識のいずれかをアビジンとコンジュゲートさせることができ、又はその逆も可能である。ビオチンはアビジンと選択的に結合し、そのため、この間接的な様式で、標識を抗体とコンジュゲートさせることができる。あるいは、標識と抗体との間接的コンジュゲーションを達成するために、抗体を小さいハプテン(例えば、ジゴキシン)とコンジュゲートさせ、上述の異なるタイプの標識のうちの1つを抗ハプテン抗体(例えば、抗ジゴキシン抗体)とコンジュゲートさせる。このようにして、標識と抗体との間接的コンジュゲーションを達成することができる。
【0195】
本発明のヒト化抗体は、任意の公知のアッセイ方法、例えば、競合結合アッセイ、直接的及び間接的サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイで利用することができる。Zolaの文献、「モノクローナル抗体 技術マニュアル(Monoclonal Antibodies A Manual of Techniques)」、pp.147-158(CRC Press社, 1987)。
【0196】
競合結合アッセイは、標識された標準が限られた量の抗体との結合を被験試料検体と競合する能力に依存している。被験試料中のAβN3pEの量は、抗体に結合する標準の量に反比例する。結合する標準の量を決定しやすくするために、抗体は、一般に、競合の前後に不溶化され、その結果、抗体に結合している標準及び検体を、未結合のままでいる標準及び検体から好都合に分離することができる。
【0197】
サンドイッチアッセイは、検出すべきタンパク質の異なる免疫原性部分、又はエピトープに各々結合することが可能である2つの抗体の使用に関与している。サンドイッチアッセイにおいて、被験試料検体は、固形支持体上に固定化されている第一の抗体によって結合され、その後、第二の抗体が検体に結合し、その結果、3つの部分の不溶性の複合物を形成する。第二の抗体は、検出可能な部分でそれ自体標識することができる(直接サンドイッチアッセイ)か、又は検出可能な部分で標識されている抗免疫グロブリン抗体を用いて測定することができる(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの1つの好ましいタイプはELISAアッセイであり、その場合、検出可能な部分は酵素である。
【0198】
免疫組織化学的解析のための組織試料は、新鮮なものもしくは凍結されたものであってよく、又はパラフィンに包埋され、例えば、ホルマリンなどの防腐剤で固定されたものであってもよい。
【0199】
本発明はまた、先に定義したようなヒト化抗体を含む組成物に関し、ここで該組成物は、特に生体試料中のAβN3pE又はそれらのバリアントの検出による;診断的用途のための、特に、軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくはアルツハイマー病の診断のための組成物である。
【0200】
(診断キット)
便宜上、本発明の抗体は、キット、すなわち、所定の量の試薬と診断アッセイを実施するための指示書とを包装して組み合わせたものとして提供することができる。抗体が酵素で標識されている場合、キットは、その酵素が必要とする基質及び補因子(例えば、検出可能な発色団又は蛍光団を提供する基質前駆体)を含む。さらに、他の添加剤、例えば、安定化剤、緩衝液(例えば、ブロック緩衝液又は溶解緩衝液)などが含まれていてもよい。アッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液中濃度を提供するために、様々な試薬の相対量を幅広く変化させることができる。特に、試薬は、溶解時に適切な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含む、通常凍結乾燥された乾燥粉末として提供することができる。
【0201】
本発明の診断用キットは、以下に記載されるようなさらなる生体活性物質を含むことができる。該更なる生体活性物質として診断用キットでの使用に特に好ましいのは、グルタミニルシクラーゼの阻害剤である。
【0202】
本発明の診断用キットは、アミロイド関連の疾患及び状態、特に、軽度認知障害(MCI)、例えば、孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくは、アルツハイマー病の検出及び診断に特に有用である。
【0203】
本発明はまた、インビトロにおける診断方法において使用するための、本発明のヒト化抗体又は該ヒト化抗体を含有する組成物に関し、これらは両方共先に定義している。特にこの診断方法は、特に生体試料中のAβN3pE又はそれらのバリアントの検出による;軽度認知障害(MCI)、例えば、孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくは、アルツハイマー病の診断に関係づけられる。
【0204】
特に好ましい実施態様において、本発明は:
本発明のヒト化抗体を、試料、好ましくは血清、体液又はCSF試料から選択された試料、最も好ましくは血清試料と;あるいは、該状態又は疾患に罹患したことが疑われる対象の特定の体の一部又は体の領域と、接触させる工程、並びに
試料から、AβN3pEへの抗体の結合を検出する工程:
を含む、アミロイド関連の疾患又は状態、好ましくはアルツハイマー病の診断のためのインビトロ又はインサイチュ診断方法に関する。
【0205】
より特定すると、本発明は:
(a)アミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料又は特定の体の一部もしくは体の領域を、本発明のヒト化抗体又はそれらの断片と接触させる工程;
(b)抗体及び/又はそれらの機能的部分を、AβN3pEに結合させ、免疫複合体を形成させる工程;
(c)免疫複合体の形成を検出する工程;並びに
(d)免疫複合体の存在又は非存在を、試料又は特定の体の一部もしくは領域中のAβN3pEの存在又は非存在と相関させる工程:
を含む、試料中の又はインサイチュでの、AβN3pEへの、本発明のヒト化抗体又はそれらの免疫活性のある断片の免疫特異的結合を検出することを含む、アミロイド関連の疾患又は状態、好ましくはアルツハイマー病の診断方法に関する。
【0206】
同じく、組織及び/又は体液中のアミロイド形成的斑負荷の程度を決定する方法は:
(a)試験下で、組織及び/又は体液を代表する試料を得る工程;
(b)本発明のヒト化抗体、又はキメラ抗体もしくはそれらの断片により、アミロイドタンパク質の存在について該試料を試験する工程;
(c)該タンパク質に結合したヒト化抗体の量を決定する工程;並びに
(d)組織及び/又は体液中の斑負荷を計算する工程:
を含む。
【0207】
特に、本発明は、組織及び/又は体液中のアミロイド形成的斑負荷の程度を決定する方法に関し、ここで工程c)における免疫複合体の形成は、免疫複合体の存在又は非存在は、アミロイドタンパク質、特にAβN3pEの存在又は非存在と相関するように決定される。
【0208】
更に別の実施態様において、本発明は、本発明のヒト化抗体、又はキメラ抗体もしくはそれらの断片を含み、並びに本明細書において先に説明されたような、任意の機能的に等価の抗体もしくはそれらの任意の誘導体もしくは機能的部分を含有する組成物、特に医薬として許容し得る担体を任意に更に含有する医薬組成物に関する。
【0209】
別の本発明の実施態様において、該組成物は、ヒト化抗体を治療的有効量で含有する。
【0210】
更に、本発明のヒト化抗体、又はキメラ抗体もしくはそれらの断片を含み、並びに本明細書において先に説明されたような、任意の機能的に等価の抗体もしくはそれらの任意の誘導体もしくは機能的部分を治療的有効量、並びに任意に更なる生体活性物質及び/又は医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤を含有する混合物が、本発明に含まれる。
【0211】
特に、本発明は、更なる生体活性物質が、アミロイドーシスの、軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくはアルツハイマー病に関与した、AβN3pEなどのアミロイド又はアミロイド-様タンパク質に関連した疾患及び障害の群の薬物療法において使用される化合物である、混合物に関する。
【0212】
別の本発明の実施態様において、その他の生体活性物質又は化合物はまた、AβN3pEによって引き起こされるアミロイドーシスの治療において使用することができるか、又は他の神経障害の薬物療法において使用することができる治療薬であってもよい。
【0213】
その他の生体活性物質又は化合物は、本発明の抗体と同じもしくは類似の機序によるか、又はある無関係の作用機序よるか、もしくは多様な関連した及び/又は無関係の作用機序により、その生物学的効果を発揮することができる。
【0214】
一般に、その他の生物学的活性化合物は、中性子透過増強剤、精神治療薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、カルシウム-チャンネル遮断薬、生体アミン、ベンゾジアゼピントランキライザー、アセチルコリンの合成、貯蔵又は放出の増強剤、アセチルコリンシナプス後受容体アゴニスト、モノアミンオキシダーゼ-A又は-B阻害剤、N-メチル- D-アスパラギン酸型グルタミン酸受容体アンタゴニスト、非ステロイド系抗炎症薬、抗酸化剤、及びセロトニン受容体アンタゴニストを含んでよい。
【0215】
より特定すると、本発明は、酸化的ストレスに対し有効な化合物、抗-アポトーシス化合物、金属キレート剤、ピレンゼピン及び代謝産物などのDNA修復阻害剤、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸(3APS)、1,3-プロパンジスルホナート(1,3PDS)、α-セクレターゼ活性化剤、β-及びγ-セクレターゼ阻害剤、タウタンパク質、神経伝達物質、β-シート破壊物質、アミロイドβをクリアリング/枯渇する細胞成分の誘引物質、グルタミニルシクラーゼ阻害剤などのピログルタミン酸化されたアミロイドβ3-42を含むN-末端切断型アミロイドβの阻害剤、抗炎症性分子、又はタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、及び/もしくはガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)、Mlアゴニスト、並びに任意のアミロイドもしくはタウ修飾薬及び栄養補助剤を含む他の薬物、並びに栄養補助剤からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、本発明の抗体、並びに任意に医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と一緒に含む混合物に関する。
【0216】
本発明は更に、該化合物が、コリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)である混合物、特に該化合物が、タクリン、リバスチグミン、ドネペジル、ガランタミン、ナイアシン及びメマンチンからなる群から選択される一つである混合物に関する。
【0217】
更なる実施態様において、本発明の混合物は、ナイアシン又はメマンチンを、本発明の抗体、及び任意に、医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と一緒に含んでよい。
【0218】
更なる実施態様において、本発明の混合物は、グルタミニルシクラーゼ阻害剤を、本発明の抗体、並びに任意に、医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と一緒に含んでよい。
【0219】
グルタミニルシクラーゼの好ましい阻害剤は、WO 2005/075436、WO 2008/055945、WO 2008/055947、WO 2008/055950、WO 2008/065141、WO 2008/110523、WO 2008/128981、WO 2008/128982、WO 2008/128983、WO 2008/128984、WO 2008/128985、WO 2008/128986、WO 2008/128987、WO 2010/026212、WO 2011/131748、WO 2011/029920、WO 2011/107530、WO 2011/110613、WO 2012/123563及びWO 2014/140279に記載されており、それらの開示は参照により本明細書に組み入れられている。
【0220】
更に別の本発明の実施態様において、幻覚、妄想、思考障害(顕著な思考散乱、脱線、脱線思考を呈する)、及び突飛な行動又は解体した行動、並びに無快感症、平坦情動、感情鈍麻、及び社会的引きこもりを含む、精神病の陽性及び陰性症状の治療のための「非定型抗精神病薬」、例えばクロザピン、ジプラシドン、リスペリドン、アリピプラゾール、又はオランザピンなどを、抗体、特に、本発明のモノクローナル抗体、しかし特に、キメラ抗体もしくはその断片、又は本発明の及び本明細書で先に記載したようなヒト化抗体もしくはその断片、並びに任意に医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と一緒に含む混合物が提供される。
【0221】
本発明の特定の実施態様において、本発明の及び本明細書で先に記載したような組成物及び混合物は、それぞれ、治療的有効量の本発明のヒト化抗体及び生体活性物質を含む。
【0222】
本発明のヒト化抗体と組み合わせた混合物中で好適に使用することができる他の化合物は、WO2008/065141号に記載されており(特に、37/38頁を参照)、これには、PEP阻害剤(43/44頁)、LiCl、ジペプチジルアミノペプチダーゼ阻害剤、好ましくは、DP IV又はDP IV様酵素阻害剤(48/49頁を参照);アセチルコリンエステラーゼ(ACE)阻害剤(47頁を参照)、PIMTエンハンサー、βセクレターゼ阻害剤(41頁を参照)、γセクレターゼ阻害剤(41/42頁を参照)、中性エンドペプチダーゼ阻害剤、ホスホジエステラーゼ-4(PDE-4)阻害剤(42/43頁を参照)、TNFα阻害剤、ムスカリンM1受容体アンタゴニスト(46頁を参照)、NMDA受容体アンタゴニスト(47/48頁を参照)、σ-1受容体阻害剤、ヒスタミンH3アンタゴニスト(43頁を参照)、免疫調節剤、免疫抑制剤、又はアンテグレン(ナタリズマブ)、Neurelan(ファムプリジン-SR)、キャンパス(アレムツズマブ)、IR 208、NBI 5788/MSP 771(チプリモチド)、パクリタキセル、Anergix.MS(AG 284)、SH636、Differin(CD 271、アダパレン)、BAY 361677(インターロイキン-4)、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(例えば、BB 76163)、インターフェロン-τ(トロホブラスチン)及びSAIK-MSからなる群から選択される薬剤;β-アミロイド抗体(44頁を参照)、システインプロテアーゼ阻害剤(44頁を参照);MCP-1アンタゴニスト(44/45頁を参照)、アミロイドタンパク質沈着阻害剤(42を参照)、並びにβアミロイド合成阻害剤(42頁を参照)が含まれ、この文献は、引用により本明細書中に組み込まれる。
【0223】
別の実施態様において、本発明は、治療的有効量の、本発明のヒト化抗体、又はキメラ抗体もしくはそれらの断片及び本明細書で先に記載したようなもの、並びに/あるいは生体活性物質を含む混合物に関する。
【0224】
本医薬組成物は、医薬として許容し得る担体又は希釈剤、並びに任意の他の既知の補助剤及び賦形剤と一緒に、「レミントン薬学の科学と実践(Remington : The Science and Practice of Pharmacy)」、第21版, Gennaro編, Mack Publishing Co., Easton, PA, 2005)に明らかにされたような従来の技術により、製剤化されてよい。
【0225】
医薬として許容し得る担体又は希釈剤、並びに任意に他の既知の補助剤及び賦形剤は、選択された本発明のヒト化抗体及び選択された投与様式に適さなければならない。好適には、医薬組成物の担体及び他の成分は、抗原結合についての選択された本発明のヒト化抗体又は医薬組成物の所望の生物学的特性に対し、著しい負の影響がない(例えば、実質的影響より少ない(10%以下の相対阻害、5%以下の相対阻害など))ことを基に決定される。
【0226】
本発明の医薬組成物はまた、希釈剤、充填剤、塩類、緩衝液、界面活性剤(例えば、Tween-20又はTween-80などの非イオン性界面活性剤)、安定化剤(例えば、糖類又はタンパク質-非含有アミノ酸)、保存剤、組織固定剤、可溶化剤、及び/又は医薬組成物中の包含に適した他の物質も含んでよい。
【0227】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、特定の患者、組成物、及び投与様式に関して、所望の治療的反応を達成するのに有効な量の活性成分を得るように、変動してよい。選択された用量レベルは、利用される特定の本発明の組成物の活性、又はそれらのアミド(amide)、投与経路、投与時間、利用される特定のヒト化抗体の排泄率、治療期間、利用される特定の組成物と併用される他の薬物、化合物及び/又は物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態及び既往歴、並びに医学分野において周知の同様の因子を含む、様々な薬物動態因子に応じて左右されるであろう。
【0228】
医薬組成物は、任意の好適な経路及び様式により投与されてよい。インビボ及びインビトロにおける本発明のヒト化抗体の投与に適した経路は、当該技術分野において周知であり、かつ当業者により選択されてよい。
【0229】
一実施態様において、本発明の医薬組成物は、非経口的に投与される。
【0230】
本明細書において使用される語句「非経口投与」及び「非経口的に投与される」とは、腸内及び局所性投与以外の投与様式、通常注射を意味し、並びに表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節包内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、角質下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外及び胸骨内の注射及び注入を含む。
【0231】
一実施態様において、その医薬組成物は、静脈内又は皮下の注射又は注入により投与される。
【0232】
医薬として許容し得る担体は、本発明のヒト化抗体と生理学的に適合性がある任意の又は全ての好適な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤、抗酸化剤及び吸収遅延薬などを含む。
【0233】
本発明の医薬組成物において利用することができる好適な水性及び非水性担体の例は、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、並びにそれらの好適な混合物、オリーブ油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、綿実油、及びゴマ油などの植物油、カルボキシメチルセルロースコロイド状溶液、トラガカントガム、及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステル、並びに/又は様々な緩衝液を含む。他の担体は、医薬技術分野において周知である。
【0234】
医薬として許容し得る担体は、滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌散剤を含む。医薬活性物質のためのかかる媒体及び物質の使用は、当該技術分野において公知である。任意の通常の媒体又は物質が、活性ヒト化抗体と不適合である限りを除き、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が意図される。
【0235】
適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング物質の使用によるか、分散液の場合の必要な粒子サイズの維持によるか、及び界面活性剤の使用により維持されてよい。
【0236】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、(1)水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;並びに、(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの、医薬として許容し得る抗酸化剤も含んでよい。
【0237】
本発明の医薬組成物はまた、該組成物中に等張化剤、例えば糖質、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、グリセロールなど、又は塩化ナトリウムを含んでもよい。
【0238】
本発明の医薬組成物はまた、該医薬組成物の貯蔵寿命又は有効性を増強し得る、保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散化剤、保存剤又は緩衝液などの、選択された投与経路に適している1種以上の補助剤を含んでよい。本発明のヒト化抗体は、インプラント、経真皮貼付剤、及びマイクロカプセル化された送達システムを含む、制御放出製剤など、迅速な放出に対してヒト化抗体を保護する担体と共に調製されてよい。かかる担体は、ゼラチン、グリセリルモノステアレート、グリセリルジステアレート、生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸の単独もしくはワックスとの併用、又は当該技術分野において周知の他の物質を含んでよい。かかる製剤の調製の方法は、一般に当業者に公知である。例えば、「持続及び制御放出薬物送達システム(Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems)」、J. R. Robinson編、Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0239】
一実施態様において、本発明の抗体は、インビボにおける適切な分布を確実にするように、製剤されてよい。非経口投与のための医薬として許容し得る担体は、滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌散剤を含む。医薬活性物質のためのかかる媒体及び物質の使用は、当該技術分野において公知である。任意の通常の媒体又は物質が、ヒト化抗体と不適合でない限り、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が意図される。
【0240】
注射用医薬組成物は、通常滅菌され、かつ製造及び貯蔵の条件下で安定していなければならない。この組成物は、液剤、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度に適した他の秩序のある構造物として、製剤されてよい。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、並びにそれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油、並びにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを含む、水性又は非水性の溶媒又は分散媒であってよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によるか、分散液の場合の必要な粒子サイズの維持によるか、及び界面活性剤の使用により維持されてよい。多くの場合において、該組成物中に、等張化剤、例えば糖質、ポリアルコール、例えばグリセロール、マンニトール、ソルビトールなど、又は塩化ナトリウムを含むことが、好ましいであろう。注射用組成物の持続吸収は、該組成物中に、吸収を遅延する物質、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを含むことにより、もたらされ得る。滅菌注射用溶液は、必要に応じ、例えば先に列挙したような、構成成分の1種又は組合せと共に、好適な溶媒中に、必要量のヒト化抗体を混入し、それに続けて滅菌精密濾過することにより、調製されてよい。一般に、分散液は、ヒト化抗体を、基本的分散媒体及び例えば先に列挙したものからの必要な他の構成成分を含む、滅菌ビヒクルへ混入することにより、調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌散剤の場合、調製方法の例は、活性成分と追加した所望の構成成分の散剤を、予め滅菌-濾過したそれらの溶液から生じる、真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0241】
滅菌注射用溶液は、必要に応じ、先に列挙したような、構成成分の1種又は組合せと共に、好適な溶媒中に、必要量のヒト化抗体を混入し、それに続けて滅菌精密濾過することにより、調製されてよい。一般に、分散液は、ヒト化抗体を、基本的分散媒体及び先に列挙したものからの必要な他の構成成分を含む、滅菌ビヒクルへ混入することにより、調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌散剤の場合、調製方法の例は、活性成分と追加した所望の構成成分の散剤を、予め滅菌-濾過したそれらの溶液から生じる、真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0242】
前記治療及び使用の方法における投薬計画は、最適な所望の反応(例えば、治療的反応)を提供するように、調節される。例えば、単回ボーラスは投与されるか、数回の分割量が時間をかけて投与されるか、又は投与量は、治療的状況の必要性により示されるように、比例して減少もしくは増加されてよい。非経口組成物は、投与を容易にするため及び均一な用量のために用量単位の形状で製剤化されてよい。本明細書において使用される用量単位の形状は、治療されるべき対象のための単一の用量として適した物理的に個別の単位を指し;各単位は、必要な医薬担体と関連して、所望の治療効果を生じるように計算された予め決定された量のヒト化抗体を含む。本発明の用量単位の形状に関する詳細は、(a)ヒト化抗体の独自の特徴及び達成されるべき特定の治療効果、並びに(b)個体の治療感受性のためのそのようなヒト化抗体を配合する当該技術分野において固有の制限:により指示されかつ直接左右される。
【0243】
本発明のヒト化抗体に関する有効量及び投薬計画は、治療されるべき疾患又は状態に応じて左右され、かつ当業者により決定されてよい。例として、本発明の抗体の治療的有効量の非限定的範囲は、約0.1~10mg/kg/体重、例えば約0.1~5mg/kg/体重、例えば約0.1~2mg/kg/体重、例えば約0.1~1mg/kg/体重、例として約0.15、約0.2、約0.5、約1、約1.5又は約2mg/kg/体重である。
【0244】
通常の技術を有する医師又は獣医師は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定しかつ処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、所望の治療効果を達成するために必要とされるよりもより低いレベルで、医薬組成物中で利用される8ηii-AβρE3抗体の投与量から開始し、かつ望ましい効果が達成されるまで、用量を次第に増加していく。概して、本発明の組成物の好適な一日量は、治療効果を生じるのに有効である最低投与量であるヒト化抗体の量であろう。かかる有効量は、一般に、先に説明された要因によって左右されるであろう。投与は、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下であり、及び例えば標的部位の近傍に投与されてよい。望ましいならば、医薬組成物の有効一日量は、2、3、4、5、6又はそれよりも多い部分投与量として、任意に単位剤形において、一日を通じて好適な間隔で個別に投与されてよい。本発明のヒト化抗体は単独で投与されることが可能であるが、先に説明されたような医薬組成物としてヒト化抗体を投与することが好ましい。
【実施例】
【0245】
(実施例)
(1. N3pE-Aβ特異的ヒト化抗体を生成するためのヒト化方法)
N3pE-Aβ特異的マウスモノクローナル抗体クローン#6、#17及び#24は、ハイブリドーマ細胞株6-1-6、17-4-3、及び24-2-3から入手し、これらはブダペスト条約に準拠して寄託されており、ドイツブラウンシュヴァイク(Braunschweig, DE)のドイツ微生物・培養細胞収集有限会社(Deutsche Sammlung fur Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ))において入手され、寄託日2008年6月17日付けで、それぞれの寄託番号は以下である:
(クローン 6-1-6): DSM ACC2924
(クローン 17-4-3): DSM ACC2925
(クローン 24-2-3): DSM ACC2926。
【0246】
抗体クローン#6、#17及び#24のヒト化プロセスの第一の工程は、軽鎖及び重鎖の可変ドメイン内のCDRの規定であった。Rosetta Antibodyモデリングサーバー(http://antibody.graylab.jhu.edu)により、CDRが予測された。
図1は、クローン#6について予測されたCDRの例を示す。
【0247】
非-ヒト抗体に最も類似しているCDR-グラフティングヒト配列について好適なフレームワークを選択するために、同定することが必要とされた。Blast解析により、軽鎖(Lv)及び重鎖(Hv)の可変ドメインは、公開されたヒト配列のプールと、個別にフィットさせた。軽鎖に関して、82%の同一性を伴うヒト抗体配列が認められ、これは、カッパLCクラスに属する。重鎖に関する最高の相同性は、62%の同一性を伴うヒトアミノ酸配列を有する。
【0248】
選択されたヒト抗体フレームワーク配列の生殖系列遺伝子配列へのグループ化のために、Blast検索を、生殖系列ライブラリーIMGTにおいて行った。軽鎖クローン#6及びクローン#24に関して、配列コードIGKV2-30*01を伴う配列を認めた。クローン#17の軽鎖可変領域は、IGKV2-30*02に最も類似していた。重鎖可変領域コードは、それぞれクローン#6、クローン#17及びクローン#24に対応して、IGHV1-3*01、IGHV1-69*13及びIGHV3-48*01と同定された。表1は、ヒト化抗体の可変領域のフレームワークパラメータを示す。
【0249】
表1:ヒト化抗体の可変領域のフレームワークパラメータ
【表5】
aa=アミノ酸配列、acc nr.=寄託番号、family=遺伝子ファミリー
【0250】
CDRグラフティングにより、マウス抗体クローン#6、#17及び#24のCDRは、各ヒト抗体フレームワークと組合せ、ヒト化抗体を作製した。ヒトIgG1の重鎖定常領域を、抗体全体を再構成するために使用した。軽鎖可変ドメインを、ヒトカッパ鎖定常領域へ融合した。
【0251】
(2. RNA単離及びcDNA合成)
定常配列の給源として、ヒトB細胞のRNAを、全血液500μlの、1×FACS溶解液(Becton Dickinson社)5mlによる、室温で10分間の溶解により単離した。この溶解液を、300gで5分間遠心し;ペレットを、PBSにより2回洗浄し、その後Nucleo Spin(登録商標)RNA II (Macherey-Nagel社)のRA1緩衝液350μl中に溶解させ、0.5M TCEP(SIGMA社)3.5μlを添加した。このRNAを、製造業者の指示により、単離した。RNA 10μlを最初に、0.5μg/μl OligodTプライマー(Invitrogen社)1μl及び10mM dNTPsの1μlと共に、65℃で5分間、インキュベーションした。次に、5×First Strand緩衝液(Invitrogen社)の4μl、100mM DTTの2μl及びSuperScript III逆転写酵素(Invitrogen社)の0.5μlを、20μlへ添加し、混合物を、25℃で5分間、50℃で50分間、及び70℃で15分間インキュベーションした。表2に示したプライマー対によるPCRにより合成された、軽鎖及び重鎖の定常領域のcDNAを、増幅した。
【0252】
表2:定常領域クローニングのためのプライマー
【表6】
【0253】
ヒト化軽鎖クローン#6のPCR産物の増幅のために、下記のフォワードプライマー及びリバースプライマーを、使用した:
【化41】
。
【0254】
参照遺伝子の増幅のために、マウスHPRTプライマーを使用した。
【0255】
増幅を実行するために、7.5μlのSybergreen(Firma社)、1μlのフォワードプライマー(25pmol/μl)、1μlのリバースプライマー(25pmol/μl)、5.5μlのddH2O、及び1μlのcDNAを、サイクラー内で使用した。
【0256】
(3. 2種の異なる発現プラスミドへのLC及びHCの個別のクローニングによるCHO細胞における組換え抗体の発現)
ヒト化抗体の軽鎖及び重鎖の配列を、各々、2種の異なる哺乳動物発現ベクターpCDNA3.1及びHC-pOptiVECへと、個別にクローニングした。CHO細胞培養物中での組換え抗体を発現するためのベクターの最適組合せを同定するために、異なるプラスミド組合せを使用し、接着性CHO細胞における一過性発現を行った。第二の工程において、LCとHCプラスミド間の異なるDNAの比は、発現レベルに影響を及ぼすかどうかを調べた。3μgのLC-pCDNA3.1及び1μgのHC-pOptiVECのトランスフェクションにより、増加した発現レベルを認めた。
【0257】
ヒト化抗体の更なる接着CHO細胞発現に関して、LC-pCDNA3.1及び1μg HC-pOptiVECのプラスミド組合せ並びにプラスミドDNA比LC:HCの3:1を使用した。
【0258】
Freestyle(商標)CHO浮遊細胞を、その後のトランスフェクションで使用し、より高い量の一過性に発現している細胞を培養し、組換え抗体を作製した。最初に、過剰なLCプラスミドは、接着細胞の場合のように、抗体の発現を向上することができるかどうかを、試験した。接着CHO細胞のように、LCのHCプラスミドDNAに対する比1:1及び3.1を使用した。ウェスタンブロット分析は、過剰なLCプラスミドは、接着CHO細胞の場合のように、ヒト化抗体の発現を増大することを、明らかにした。細胞生存度の測定により、細胞生存度は、6日後に、トランスフェクションされた細胞の約50%まで減少することが、明らかになる。6日後、上清中の抗体レベルの更なる増加は、検出されなかった。結果的に、培養上清を、下記のトランスフェクションの場合、6日目に、収集した。
【0259】
作製された抗体が、細胞上清へ効果的に輸送されるかどうかを調べるために、細胞溶解液試料を、SDS PAGEに適用し、ウェスタンブロットにより分析した。ハウスキーピング細胞質タンパク質であるGAPDHを参照に使用し、SDSゲルへ細胞溶解液タンパク質の同等量を装加した。ヒト化抗体を発現しているCHO細胞の細胞溶解液において、細胞上清中に検出されたものと同じサイズで移動する、120kDaの強力なバンドが出現した。
【0260】
(4. プロテインGクロマトグラフィーによる組換え抗体の精製)
ヒト化抗体クローン#6を精製し、当初のマウス抗体と比較し、このタンパク質の抗原結合特性を調べた。従って、キメラ抗体及びヒト化抗体を発現した上清300mlを作製し、プロテインGクロマトグラフィーにより精製した(
図2)。発現された抗体の量は非常に少ないので、その収量は、0.1μg/ml未満であり、合計25μgの精製タンパク質であった。溶離された抗体を、約200μg/mlまで濃縮し、かつタンパク質2μgを、SDS-PAGEに適用し、その後クマーシー染色した(
図2)。
【0261】
(5. マウス抗体及びヒト化抗体の抗原結合を比較するための表面プラズモン共鳴測定)
表面プラズモン共鳴測定を使用し、ヒト化抗体のAβpE3-18への結合効力を調べた(
図3)。測定時の質量移動及びアビディティ効果を防止するために、以下の手順を使用した:
最初にポリクローナルα-ヒト抗体を、SPR-チップにカップリングさせ、引き続き反応単位(Response Unit)が1000を超えるまで、ヒト化抗体を負荷した。
動態測定を、AβpE3-18-ペプチドの異なる濃度(5~1000nM)で行った。測定されたシリーズのグラフは、センサーグラムと重ねたプロットとして示し、流動緩衝液を測定するセンサーグラムにより補正し、注入時点及び注入前にゼロに調節したベースライン時と並置した。これらの結果は、k
off及びk
on速度定数を推進する、単純な1:1相互作用モデル(ラングミュアフィット)に従い評価した。
図3において、結合曲線及び解離曲線からなる、SPR-結合曲線を示した。
【0262】
1:1ラングミュアフィットに従うみかけの動態定数を、表3に列記した。ヒト化抗体はチップ表面に非共有的に結合するという事実のために、少量の抗体分子は、測定時に洗浄除去された。従ってRmax値は、単独のセンサーグラム毎に部分的にフィッティングされた。
【0263】
表3:ヒト化抗体クローン#6の動態のラングミュアフィット統計
【表7】
【0264】
これらの曲線のプロットは、ペプチドの結合時に非常に良くフィットした(
図3A、上側挿入図)のに対し、ペプチド解離曲線のプロット(
図3A、下側挿入図)は、実験曲線上に正確には局在化されなかった。このフィットにより、動態パラメータk
offの22.2×10
-3 1/秒を、コンピュータにより算出した(表2)。このパラメータは、結合したペプチドの半分が除去されるのに必要である時間を説明している。これは、1/0.0222秒=45秒の間に、注入されたペプチドの半分が除去されることを意味している(
図3A、下側挿入図参照)。ラングミュアフィットは、解離相においてはあまり良くはマッチしないので、K
D決定は、下記式を用い、ペプチド濃度にわたりR
equ値をフィットさせることにより行った(
図3B):R
equ=R
max・K
A・c/(1+K
A・c)(式中、対応する濃度cでの平衡状態のシグナルR
equは変数であり、かつR
max及び定数K
Aを、フィットする)。K
Dは、1/K
Aにより、算出される。
【0265】
マウスFab断片の構造解析により、抗体クローン#6は、HCのThr97が、AβpE3への結合親和性に対する重要な効果を有すると結論された。ヒト化抗体クローン#6のThr97によるAla97の置換後、改善された結合親和性が生じ、マウス抗体クローン#6と比べほぼ同じKD値であった。より高量発現された抗体が、追加の等温滴定熱量(ITC)測定によりこれらの知見を証明するためには必要であった。従ってその発現レベルを、マウス配列による、ヒト化抗体T97バリアントのLC及びHCシグナル配列の置換により、増大した。第二の工程において、安定した細胞株の生成を、抗体産生を増加するために行った。
【0266】
表4は、ヒト化抗体クローン#6の更なる配列バリアントの1:1ラングミュアフィットに従うみかけの動態定数を示す:
【表8】
【0267】
(6. ヒト化抗体バリアントHC T97の安定した細胞株生成)
安定した細胞株の発達のために、最初に安定したCHO-DG44細胞株のプールを、様々な濃度のメトトレキサート(MTX)による処理により生成した。最良の発現を、濃度0.5μM MTXで低量の死滅細胞を伴い、検出した(
図14A、レーン2)。従って、0.5μM MTXで予備処理した細胞を、限定希釈によるクローン選択に使用した。
【0268】
100の可能性のある抗体を発現しているクローンを、クローン選択の後に認めた。これらのクローンの上清を、HBS-EP緩衝液中に1:20希釈し、AβpE3-18カップリングしたチップを使用するSPRにより、分析した。較正曲線を使用し、上清中の抗体濃度を決定した。発現の3日後に、0.15μg/mlを上回る出発抗体濃度を示す18クローンを、分離した。これらのクローンを、24ウェルフォーマットでスケールアップさせ、かつ上清を収集し、ウェスタンブロットにより分析した(
図4B)。これらのクローンのうち5つが、良好な発現を明らかにし、かつ振盪培養により、30mlまで更にスケールアップさせた。発現の7日後に、発現レベルを、SPRにより測定した(
図4C)。クローン9Aは、7日間の培養後、最高の抗体濃度を示した。従って、このクローンを、上清のより高い量の発現のために使用した。より高い細胞生存力を得るために、培養は、更なる選択圧力を伴わずに行った。抗体含有上清の3Lを収集した。
【0269】
(7. プロテインGクロマトグラフィーによるヒト化抗体クローン#6の精製)
上清1Lを、40mM Na2HPO4(pH7)の1Lで希釈し、かつプロテインGカラム5mlに、4℃で一晩適用した。そのカラムを結合緩衝液(20mM Na2HPO4(pH7)、画分A1-A3)で洗浄した後、次に高塩緩衝液(2M NaCl、40mM Na2HPO4(pH7)、画分A4-A7)で洗浄し、非特異的に結合したタンパク質を除去した。この抗体を、0.1Mグリシン-HCl(pH2.7)により、カラムから溶離し、1Mトリス(pH9)により直ちに中和した。画分を収集し、24μlを、12%SDS PAGE上に、各々装加した。画分A12+B1をプールし、ITCによるKD決定のために使用した。全般的に、抗体2.5mgが、1Lの培養上清から精製された。
【0270】
(8. AβpE3-18によるヒト化抗体クローン#6のITC測定)
K
D値の決定のために、ヒト化抗体クローン#6を、濃度1μMに希釈した。濃度20μMのリガンドAβpE3-18を293.15Kで滴定した。ITC-測定値の生データの積分後(
図5B、下側)、化学反応量論1.5を算出した。算出したK
D値は、2.7nMであり、SPRデータから算出した値5.3nMと非常によく調和し、このことは、溶媒中でのヒト化クローン#6 HC T97リガンド結合を、高親和性相互作用として特徴付けた。この相互作用は、主にエンタルピー寄与により駆動され(ΔH=-23.45kcal/mol)、かつエントロピーペナルティにより妨害され(TΔS=-11.96 kcal/mol)、このことは、水素結合の形成による結合部位での構造上の再配置の常で、自由度の著しい消失を生じる。
【0271】
(9. 2種の更なるAβpE3-特異的抗体クローン#17及びクローン#24のヒト化、発現及び精製)
2種の更なるAβpE3-特異的抗体クローン#17及びクローン#24のヒト化、発現及び精製は、クローン#6について使用したものと同じプロトコール、材料及び方法並びに実験条件を用いて行った。
【0272】
(10. ヒト化抗体クローン#24及びクローン#17によるSPR測定)
pE3-Aβ18リガンドを使用するSPR測定は、両方のヒト化抗体は、pE3-Aβペプチドに結合することが可能であることを明らかにした。速度定数及びKD値は、ラングミュア1:1モデルフィットにより非常に良く計算することができた。マウス抗体のpE3-Aβへの当初のKD値は、表5に示している。ヒト化抗体クローン#24のkoff値は、マウス抗体クローン#24のkoff値よりも、20倍高いことが、明らかになり始めた。このことは、ヒト化後に、pE3-Aβペプチドは、その抗体の抗原結合ポケットからより迅速に解離することを意味する。
【0273】
表5:様々なAβペプチドのk
on、k
off及びK
D値の決定
【表9】
【0274】
(11. Fcγ受容体への結合)
配列番号:73のヒトIgG1 Fc野生型領域又はそれらのK322A変異体バリアント(配列番号:74)のいずれかを含む2種の抗体の、様々なFcγ受容体(CD16A、CD32A、CD32B、及びCD64)への結合を、比較した。
【0275】
K322A変異体は、部位指定変異誘発により作製した。完全長ヒトCD16A、CD32A、CD32B、又はCD64を安定して発現しているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に対する、その結合を、FACSベースの生体アッセイにおいて測定した。両方の抗体を、7つの異なる濃度で、各細胞株と共に、1時間インキュベーションし、引き続き洗浄した。受容体-結合したH6又はH67を、蛍光色素とコンジュゲートした-抗-Fab’により検出した。結合能を、FACSにより測定し、Kd及びBmaxを、非線形回帰により計算した。
【0276】
結果:両方の抗体は、全ての受容体に対し同等の結合を示した。
図6、7、8及び9を参照されたい。
【0277】
(12. C1qへの結合)
抗体のエフェクター機能をより良く特徴付けるために、配列番号:73のヒトIgG1 Fc野生型領域又はそれらのK322A変異体バリアント(配列番号:74)のいずれかを含む2種の抗体の、C1qへの結合を、比較した。
【0278】
これらの抗体のC1qへの結合を、いくつかのアッセイフォーマットで試験し、これは:
a)2種の抗体の、プレートへの直接結合、その後の溶液中のC1qへの結合;並びに
b)ストレプトアビジンコートされたプレートのビオチン化されたpE-Aβペプチドとの最初のインキュベーション、抗体への結合、その後のC1qへの結合:を含む。
【0279】
まとめると、フォーマットa)は、最良の結果を生じた。その手順を、以下にまとめている:
ELISAプレートを、配列番号:73のヒトIgG1 Fc野生型領域又はそれらのK322A変異体バリアント(配列番号:74)を含む抗体、及びC1qに結合しないK322A対照(hu14.18K322A)により、10、8、6、4、3、2、1及び0μg/mlで、3つ組でコートし、4℃で一晩インキュベーションした。翌日、プレートを、1×PBSにより3回洗浄し、その後1×PBS中の1%BSAにより、50μl/ウェルでブロックした。C1q(Sigma社、カタログ番号C1740)を、各ウェルに、ブロック緩衝液中2μg/mlで添加し、室温で1時間インキュベーションした。次にプレートを、1×PBSの200μlにより3回洗浄した。抗-C1q-HRP(Thermo社、カタログ番号PA1-84324)を、プレートに添加し、ブロック緩衝液(50μl/ウェル)中に1:250で希釈して、1時間結合を検出した。プレートを、再度1×PBSの200μlにより3回洗浄した。TMB(Invitrogen社、カタログ番号002023)の50μlを、各ウェルに添加し、その相互作用(Invitrogen社、カタログ番号002023)を2分間可視化した。停止溶液(1M硫酸)50μlを各ウェルに添加し、その後450nmでの吸光度を測定した。
【0280】
結果:配列番号:73のヒトIgG1 Fc野生型領域を含む抗体は、C1qに結合した。それらのK322A変異体バリアント(配列番号:74のIgG1 Fc領域を含む)は、C1qに結合しなかった。同じく
図10を参照されたい。
【0281】
(13. 免疫組織化学)
IHCにより、抗原AβN3pEは、脳の組織切片において局在化され得る。従って、本発明のヒト化抗体を、AβN3pEの検出に使用した。
【0282】
IHCのために、AD患者由来の海馬及び前頭皮質のヒト脳の組織切片、更には本明細書に記載のアルツハイマー病の現存する動物モデル由来の海馬の脳の組織切片を、使用することができる。これらのマウスモデルは、増大した脳Aβレベル、それに続く神経突起斑の発生を示す。これらの組織切片は、パラフィン-包埋し、連続切片とした。これらの切片を、細胞の核を着色するために、ヘマトキシリンで染色し、次に本発明の抗AβN3pE抗体により免疫染色した。組織切片の調製及び染色は、標準の方法に従い行った。
【0283】
(14. インビボにおけるアルツハイマーマウスの治療)
合計62匹のオスのマウスを、本試験に利用した。免疫化を開始する前に、アルツハイマー病の現存するマウスモデル(平均5.6±0.45月齢)のマウスの中の4匹のマウスを、屠殺し、治療開始時の脳のAβ斑負荷を評価するための、ベースライン対照とした。残りのマウスを、4群に分け、以下の治療を受けさせた:250μlの滅菌PBS(n=12;平均5.89±0.13月齢)、200μgの本発明のヒト化抗体。月齢及び性別が合致したWt同腹仔の群に、250μlのPBS(n=12;平均5.80±0.12月齢)を注射し、行動対照として使用した。マウスを、28週間にわたる総容量250μl(抗体又はPBS)の腹腔内注射により治療した。
【0284】
(安楽死及び組織調製)
月齢6ヶ月(ベースライン)又は13ヶ月で、マウスを安楽死させ、灌流し、血漿を収集した。脳を摘出し、矢状に分割した。海馬、皮質及び小脳を、一方の脳半球から切断し、生化学分析のために瞬間凍結させた。他方の脳半球を、4%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences社)中で、4℃で24時間、浸漬固定し、4℃のショ糖溶液勾配中で凍結防止し、OCTコンパウンド(Tissue Tek社)中に包埋した。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
ヒト化抗体又はその機能的バリアントであって、ここで該抗体の軽鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化1)
(ここで、
X
1
は、Y及びHから選択され;並びに
X
2
は、A、I及びTから選択される);
もしくは、
(化2)
から選択されるアミノ酸配列:を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり、
並びに/又は、
ここで、該抗体の重鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化3)
(ここで、
X
3
は、Y及びHから選択され;
X
4
は、Y及びSから選択され;
X
5
は、G、T、A及びEから選択され;
X
6
は、K及びQから選択され;
X
7
は、L及びIから選択され;
X
8
は、I及びTから選択され;
X
9
は、Y及びHから選択され;並びに
X
10
は、V及びTから選択される);
もしくは、
(化4)
から選択されるアミノ酸配列:を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、ヒト化抗体又はその機能的バリアント。
(構成2)
前記軽鎖中にCDR領域:
(化5)
(ここで、X
1
は、Y及びHから選択される);
(化6)
を含む、請求項1記載のヒト化抗体。
(構成3)
前記軽鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化7)
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1又は2記載のヒト化抗体。
(構成4)
前記軽鎖中にCDR領域:
(化8)
を含む、請求項3記載のヒト化抗体。
(構成5)
前記軽鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化9)
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1記載のヒト化抗体。
(構成6)
前記軽鎖中に、配列番号:12のV
L
CDR1、配列番号:9のV
L
CDR2、及び配列番号:10のV
L
CDR3であるCDR領域を含む、請求項5記載のヒト化抗体。
(構成7)
前記軽鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化10)
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1記載のヒト化抗体。
(構成8)
前記軽鎖中に、配列番号:12のV
L
CDR1、配列番号:9のV
L
CDR2、及び配列番号:10のV
L
CDR3であるCDR領域を含む、請求項7記載のヒト化抗体。
(構成9)
前記軽鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化11)
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1記載のヒト化抗体。
(構成10)
前記軽鎖中にCDR領域:
(化12)
を含む、請求項9記載のヒト化抗体。
(構成11)
前記重鎖中にCDR領域:
(化13)
(ここで、X
3
は、Y及びHから選択される);
(化14)
(ここで、X
4
は、Y及びSから選択され、X
5
は、G、T、A及びEから選択され;並びに、X
6
は、K及びQから選択される);並びに
(化15)
を含む、請求項1~10のいずれか一項記載のヒト化抗体。
(構成12)
前記重鎖の可変部分が、従ってアミノ酸配列:
(化16)
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1又は請求項11記載のヒト化抗体。
(構成13)
前記重鎖中にCDR領域:
(化17)
を含む、請求項12記載のヒト化抗体。
(構成14)
前記重鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化18)
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1又は請求項11記載のヒト化抗体。
(構成15)
前記重鎖中にCDR領域:
(化19)
を含む、請求項14記載のヒト化抗体。
(構成16)
前記重鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化20)
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1又は請求項11記載のヒト化抗体。
(構成17)
前記重鎖中にCDR領域:
(化21)
を含む、請求項16記載のヒト化抗体。
(構成18)
前記重鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化22)
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1又は請求項11記載のヒト化抗体。
(構成19)
前記重鎖中にCDR領域:
(化23)
を含む、請求項18記載のヒト化抗体。
(構成20)
前記重鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化24)
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1又は請求項11記載のヒト化抗体。
(構成21)
前記重鎖中にCDR領域:
(化25)
を含む、請求項18記載のヒト化抗体。
(構成22)
前記重鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化26)
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1又は請求項11記載のヒト化抗体。
(構成23)
前記重鎖中にCDR領域:
(化27)
を含む、請求項21記載のヒト化抗体。
(構成24)
前記抗体の軽鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化28)
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1記載のヒト化抗体。
(構成25)
前記軽鎖中にCDR領域:
(化29)
を含む、請求項24記載のヒト化抗体。
(構成26)
前記抗体の重鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化30)
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1又は25記載のヒト化抗体。
(構成27)
前記重鎖中にCDR領域:
(化31)
を含む、請求項26記載のヒト化抗体。
(構成28)
前記抗体の軽鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化32)
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1記載のヒト化抗体。
(構成29)
前記軽鎖中にCDR領域:
(化33)
を含む、請求項28記載のヒト化抗体。
(構成30)
前記抗体の重鎖の可変部分が、アミノ酸配列:
(化34)
を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1又は請求項29記載のヒト化抗体。
(構成31)
前記重鎖中にCDR領域:
(化35)
を含む、請求項30記載のヒト化抗体。
(構成32)
前記ヒトIgG1 Fc領域が、配列番号:73及び74から選択されたアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1~31のいずれか一項記載のヒト化抗体。
(構成33)
前記ヒトIgG1 Fc領域が、配列番号:74のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1~32のいずれか一項記載のヒト化抗体。
(構成34)
前記軽鎖の可変部分が、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;及び、重鎖の可変部分が、配列番号:27のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;及び、ヒトIgG1 Fc領域が、配列番号:74のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1~33のいずれか一項記載のヒト化抗体。
(構成35)
前記軽鎖の可変部分が、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;及び
重鎖の可変部分が、配列番号:27のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;及び
ヒトIgG1 Fc領域が、配列番号:74のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;
軽鎖の可変部分が、配列番号:12のV
L
CDR1、配列番号:9のV
L
CDR2、及び配列番号:10のV
L
CDR3であるCDR領域を含み;並びに
重鎖の可変部分が、配列番号:25のV
H
CDR1、配列番号:26のV
H
CDR2、及び配列番号:20のV
H
CDR3であるCDR領域を含む、請求項1~34のいずれか一項記載のヒト化抗体。
(構成36)
前記軽鎖の可変部分が、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;及び、重鎖の可変部分が、配列番号:70のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;及び、ヒトIgG1 Fc領域が、配列番号:74のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなる、請求項1~34のいずれか一項記載のヒト化抗体。
(構成37)
前記軽鎖の可変部分が、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;及び
重鎖の可変部分が、配列番号:70のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;及び
ヒトIgG1 Fc領域が、配列番号:74のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか又はこれからなり;
軽鎖の可変部分が、配列番号:12のV
L
CDR1、配列番号:9のV
L
CDR2、及び配列番号:10のV
L
CDR3であるCDR領域を含み;並びに
重鎖の可変部分が、配列番号:25のV
H
CDR1、配列番号:71のV
H
CDR2、及び配列番号:20のV
H
CDR3であるCDR領域を含む、請求項1~34及び36のいずれか一項記載のヒト化抗体。
(構成38)
前記ヒト化抗体が、AβN3pEエピトープのピログルタメートを保有するN-末端へ特異的に結合する、請求項1~37のいずれか一項記載のヒト化抗体。
(構成39)
前記ヒト化抗体が:
(化36)
からなる群から選択されるエピトープに、特異的に結合する、請求項1~38のいずれか一項記載のヒト化抗体。
(構成40)
本発明のヒト化抗体が、AβN3pEバリアントに結合し、ここでAβN3pEバリアントは、pE-Aβ
3-X
として定義され、ここでxは、19~42の整数として定義される、請求項1~37のいずれか一項記載のヒト化抗体。
(構成41)
前記AβN3pEバリアントが:
pE-Aβ
3-38
、
pE-Aβ
3-40
、
pE-Aβ
3-42
から選択される、請求項40記載のヒト化抗体。
(構成42)
前記ヒト化抗体が、N-末端にピログルタメートを保有しないエピトープには結合しない、請求項1~41のいずれか一項記載のヒト化抗体。
(構成43)
請求項1~42のいずれか一項記載のヒト化抗体を含む医薬組成物。
(構成44)
更なる生体活性物質及び/又は医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤を更に含む、請求項43記載の医薬組成物。
(構成45)
前記更なる生体活性物質が、中性子透過増強剤、精神治療薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、カルシウム-チャンネル遮断薬、生体アミン、ベンゾジアゼピントランキライザー、アセチルコリンの合成、貯蔵又は放出の増強剤、アセチルコリンシナプス後受容体アゴニスト、モノアミンオキシダーゼ-A又は-B阻害剤、N-メチル-D-アスパラギン酸型グルタミン酸受容体アンタゴニスト、非ステロイド系抗炎症薬、抗酸化剤、及びセロトニン受容体アンタゴニストから選択される、請求項44記載の医薬組成物。
(構成46)
前記更なる生体活性物質が、酸化的ストレスに対し有効な化合物、抗-アポトーシス化合物、金属キレート剤、ピレンゼピン及び代謝産物などのDNA修復阻害剤、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸(3APS)、1,3-プロパンジスルホナート(1,3PDS)、α-セクレターゼ活性化剤、β-及びγ-セクレターゼ阻害剤、タウタンパク質、神経伝達物質、β-シート破壊物質、アミロイドβをクリアリング/枯渇する細胞成分の誘引物質、グルタミニルシクラーゼ阻害剤などのピログルタミン酸化されたアミロイドβ3-42を含むN-末端切断型アミロイドβの阻害剤、抗炎症性分子、又はタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、及び/もしくはガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)、Mlアゴニスト、並びに任意のアミロイドもしくはタウ修飾薬及び栄養補助剤、コリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)、メマンチン又はグルタミニルシクラーゼの阻害剤を含む他の薬物からなる群から選択される、請求項44記載の医薬組成物。
(構成47)
アミロイドーシスの診断、予防又は治療のための、特に軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性、並びに臨床期又は前臨床期脳アミロイド血管障害からなる群から選択される神経変性疾患の治療のための、医薬品の調製のための、請求項1~46のいずれか一項記載のヒト化抗体又は医薬組成物の使用。
(構成48)
アミロイドーシスの診断、治療における使用、特に軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性、並びに臨床期又は前臨床期脳アミロイド血管障害からなる群から選択される神経変性疾患の治療における使用のための、請求項1~46のいずれか一項記載のヒト化抗体又は医薬組成物。
(構成49)
アミロイドーシスの、特に軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性、並びに臨床期又は前臨床期脳アミロイド血管障害からなる群から選択される神経変性疾患の診断、予防又は治療の方法であって、かかる治療を必要とする対象へ、請求項1~46のいずれか一項記載のヒト化抗体又はそれらの免疫学的反応性断片又は医薬組成物の治療的又は予防的有効量を投与することを含む、方法。
(構成50)
請求項1~46のいずれか一項記載のヒト化抗体又は医薬組成物の投与が、軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性イギリス型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症の神経変性、並びに臨床期又は前臨床期脳アミロイド血管障害と診断された対象における認知能減退の逆転、認知の改善又は認知能減退の予防につながる、請求項47~49のいずれか一項記載の使用又は方法。
(構成51)
請求項1~46のいずれか一項記載のヒト化抗体又は医薬組成物の投与が、斑又は他の生物学的複合体からのAβN3pEのクリアランス又は除去につながる、請求項47~50のいずれか一項記載の使用又は方法。
(構成52)
請求項1~46のいずれか一項記載のヒト化抗体又は医薬組成物の投与が、斑負荷の減少、及び/又は脳組織などの罹患組織からの完全な斑の除去につながる、請求項47~52のいずれか一項記載の使用又は方法。
【配列表】