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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】使い捨て用履物カバー
(51)【国際特許分類】
   A43B 3/16 20220101AFI20220113BHJP
【FI】
A43B3/16 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021109871
(22)【出願日】2021-07-01
【審査請求日】2021-07-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】721001982
【氏名又は名称】山田 栄子
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】特許業務法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 栄子
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-299402(JP,A)
【文献】実開昭49-105346(JP,U)
【文献】特開2012-196418(JP,A)
【文献】登録実用新案第3199363(JP,U)
【文献】実開昭59-091304(JP,U)
【文献】登録実用新案第3064128(JP,U)
【文献】実開昭59-154103(JP,U)
【文献】登録実用新案第3162478(JP,U)
【文献】実開平06-033503(JP,U)
【文献】特開平10-212613(JP,A)
【文献】登録実用新案第3166503(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性素材により開口部を備えた袋状に構成され、使用者が履いた履物の外周側に被せて使用される使い捨て用履物カバーであって、
前記伸縮性素材は、
ゴム材と、複数のメッシュ空間が格子状に配列されたネット材と、を含み、
底面の突起部による前記伸縮性素材の破断が生じない第1履物の外周側に被せられている場合は前記第1履物の外周形状に沿ってフィットし、かつ前記開口部を前記使用者の足首にフィットさせる第1態様となり
底面の突起部による前記伸縮性素材の破断が生じ得る第2履物の外周側に被せられている場合は前記使用者の意図によらず前記第2履物の前記突起部により前記伸縮性素材の適宜の位置が自然に破断して、当該突起部を前記使い捨て用履物カバー外に現出させる貫通孔を孔設しつつ、前記第2履物の外周形状に沿ってフィットし、かつ前記開口部を前記使用者の足首にフィットさせる第2態様となり
前記ネット材は、
前記第2態において前記第2履物の前記突起部が貫入した1つの前記メッシュ空間の外縁に位置し、前記第2履物の前記突起部により孔設された前記貫通孔の孔径の広がりを食い止める外縁部位を備え、
前記ゴム材は、
ゴム溶液への繰り返し浸漬により複数のゴム層が積層された積層構造を有しており、
前記積層構造では、1つの前記ゴム層と別の前記ゴム層との間に前記ネット材により構成された1層を挟んで積層されている
ことを特徴とする使い捨て用履物カバー。
【請求項2】
請求項1記載の使い捨て用履物カバーにおいて、
前記開口部には、
前記伸縮性素材を表裏反転させるように巻回した、巻き下げ部が形成されている
ことを特徴とする使い捨て用履物カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て用履物カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雨天時に靴の上から重ね履きする携帯用カバー型ゴム雨靴が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術の携帯用カバー型雨靴では、特許文献1の図1図2図4に示されるように踵のないスニーカー用の孔のない携帯用カバー型ゴム雨靴及び図3図5図6図7に示されるようにハイヒール仕様のヒールを通す穴5と、その周囲に、輪状にゴムを厚くして形成されたずれ止め遮水ゴム部6とを備えた携帯用カバー型ゴム雨靴7が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-167591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の携帯用カバー型ゴム雨靴では、靴の種類に応じて2つの形状の携帯用カバー型ゴム雨靴を使い分けなければならず、ユーザにとってこれらの使い分けや取り扱いが不便となる場合があった。
【0005】
本発明の目的は、履物の種類によらず各履物の外周形状に沿ってぴったりフィットし、雨水の侵入をガードすることができる使い捨て用履物カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、伸縮性素材により開口部を備えた袋状に構成され、使用者が履いた履物の外周側に被せて使用される使い捨て用履物カバーであって、前記伸縮性素材は、ゴム材と、複数のメッシュ空間が格子状に配列されたネット材と、を含み、底面の突起部による前記伸縮性素材の破断が生じない第1履物の外周側に被せられている場合は前記第1履物の外周形状に沿ってフィットし、かつ前記開口部を前記使用者の足首にフィットさせる第1態様となり、底面の突起部による前記伸縮性素材の破断が生じ得る第2履物の外周側に被せられている場合は前記使用者の意図によらず前記第2履物の前記突起部により前記伸縮性素材の適宜の位置が自然に破断して、当該突起部を前記使い捨て用履物カバー外に現出させる貫通孔を孔設しつつ、前記第2履物の外周形状に沿ってフィットし、かつ前記開口部を前記使用者の足首にフィットさせる第2態様となり前記ネット材は、前記第2態において前記第2履物の前記突起部が貫入した1つの前記メッシュ空間の外縁に位置し、前記第2履物の前記突起部により孔設された前記貫通孔の孔径の広がりを食い止める外縁部位を備え、前記ゴム材は、ゴム溶液への繰り返し浸漬により複数のゴム層が積層された積層構造を有しており、前記積層構造では、1つの前記ゴム層と別の前記ゴム層との間に前記ネット材により構成された1層を挟んで積層されていることを特徴としている。
【0007】
本願発明の使い捨て用履物カバーは、伸縮性素材によって袋状に構成されており、使用者は、袋状の開口部から履物を履いた状態の足ごと突っ込むようにした後、袋の開口部を手前側に引っ張るようにして、開口部を足首にフィットさせた状態にして使用する。
【0008】
その際、例えばハイヒールのように底面からある程度高く突出した踵を備えた第2履物である場合(第2使用態様)と、そのように踵が高く突出していない(若しくは踵のない)第1履物である場合(第1使用態様)と、のいずれの場合においても共通に使用し、履物に被せて各履物の外周形状に沿ってぴったりフィットさせ、雨水の侵入をガードすることができる。
【0009】
すなわち、第2使用態様の場合は、前述のように第2履物に対して被せる時、使用者は、第2履物に備えられる突起部により伸縮性素材の適宜の位置を意図的に破断して貫通孔をあけることで、突起部をカバー外に現出させる。これにより、突起部が存在する第2履物についても、カバーを当該第2履物の外形に沿うようにしてぴったりと覆うことができる。
【0010】
このとき、前述のように伸縮性素材はネット材を備えているが、突起部は、ネット材に含まれる複数のメッシュ空間のうちの1つのメッシュ空間に貫入しつつゴム材を突き破る形で上記貫通孔を孔設する。この貫通孔は、そのままでは、カバーの装着動作の進展やカバーを装着した後の使用者の歩行動作によって徐々に孔径が広がり、最終的にカバー全体を破壊する恐れがある。
【0011】
これに対して本願発明においては、上記貫通孔の孔径の広がりを、ネット材のうち、上記突起部が貫入した1つのメッシュ空間の外縁部位の素材(例えばプラスチック素材や繊維素材)によって食い止めることができる。これにより、上記のような貫通孔の孔径の広がりによるカバーの破壊を防止し、高い耐久性で継続的に使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の使い捨て用履物カバーによれば、履物の種類によらず各履物の外周形状に沿ってぴったりフィットし、雨水の侵入をガードすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の使い捨て用履物カバーを第2履物に被せた状態を表す側面図及び正面図及び斜視図である。
図2】本実施形態の使い捨て用履物カバーを第1履物に被せた状態を表す斜視図である。
図3】本実施形態の使い捨て用履物カバーを第1履物に被せた状態を表す斜視図である。
図4】本実施形態の使い捨て用履物カバーを第1履物に被せた状態を表す斜視図である。
図5】本実施形態に係る使い捨て用履物カバーの斜視図である。
図6】使い捨て用履物カバーを第2履物に被せる手順を説明する概念図である。
図7】使い捨て用履物カバーを第1履物に被せる手順を説明する概念図である。
図8】第2使用態様における貫通孔の形成工程の一例を説明する概念図である。
図9】使い捨て用履物カバーの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1に本実施形態の使い捨て用履物カバー1を第2履物7に被せた状態を示す。図1に示す方角は床面に垂直に向かう下方向と、下方向と逆方向に向かう上方向からなる上下方向、及び使用者Mから見た左右方向及び前後方向である。上下方向、左右方向、前後方向はそれぞれ互いに直交する方向である。同様の方角が適宜図2図7にも適用される。
【0016】
図1(a)は使用者Mが足に第2履物7を履いたときに使い捨て用履物カバー1を第2履物7の上から足に被せた状態を使用者M基準の右方向から見た側面図であり、図1(b)は同様の前記状態を使用者M基準の前方向から見た正面図であり、図1(c)は同様の前記状態を使用者M基準の前方向から見た左後方から見た斜視図である。
【0017】
使い捨て用履物カバー1は伸縮性素材2により開口部10を備えた袋状に構成され、使用者Mが履いた第2履物7の外周側に被せて使用される。
【0018】
伸縮性素材2は、ゴム材3と、複数のメッシュ空間9が格子状に配列されたネット材4とを含む。
【0019】
ゴム材3は、使い捨て用履物カバー1のフィット感及び外観上の美観を向上させるために、薄手で透明性があり、伸縮性を有するものが好ましい。ゴム材3としては例えばポリウレタンが挙げられる。厚手の樹脂素材、例えばポリ塩化ビニル(ビニール)やシリコン等を用いると、伸縮性が少ないため使い捨て用履物カバー1のフィット感が低下して履いた時に歩きにくい場合があったり、透明性がないものは内側の履物が見えなくなり使い捨て用履物カバー1のみが目立ち、洋服等とのバランスが取れず外観上の美観を損ねる場合がある。
【0020】
ネット材4は例えばプラスチックの細いネット、もしくは繊維素材等で構成されている。前記繊維素材としてはゴム材3と同様に伸縮性を有する素材であることが好ましく、例えば網タイツに使用されるようなナイロンやポリウレタン等の合成繊維素材が挙げられる。
【0021】
図1では、使い捨て用履物カバー1を底面5の突起部6による伸縮性素材2の破断が生じ得る第2履物7の外周側に被せ、第2履物7の突起部6で伸縮性素材2の適宜の位置を破断して、突起部6を使い捨て用履物カバー1外に現出させる貫通孔8を孔設しつつ、開口部10を前記使用者の足首にフィットさせる第2使用態様について図示している。
【0022】
すなわち、図1(a)及び図1(c)に示されるように、使い捨て用履物カバー1は突起部6により踵の部分のみが破断され、貫通孔8が孔設されている。第2履物7のうち突起部6は貫通孔8を介して使い捨て用履物カバー1外に現出している。
【0023】
第2履物7は例えばハイヒールのように踵の部分に高く突出した突起部6を有するものである。さらに具体的には、突起部6が高く、突起部6の数が一つであるもの、かつその大きさが1つのメッシュ空間9内に納まるような構造の履物である。
【0024】
使い捨て用履物カバー1は、前記第2使用態様において、第2履物7の突起部6により孔設された貫通孔8の孔径の広がりを、ネット材4のうち、第2履物7の突起部6が貫入した1つのメッシュ空間9の外縁部位11によって食い止めるようになっている。
【0025】
ハイヒールのような第2履物7では歩行時に突起部6による伸縮性素材2の破断が生じ得る。また、ハイヒールのように踵で体の重心の大部分を支えて歩く履物においては踵が伸縮性素材2で覆われていない方が歩きやすい場合もあるため、ここでは意図的に突起部6で伸縮性素材2を破断させて使用している。しかし意図的でなく自然に破断が生じた場合も突起部6による貫通孔8の広がりが食い止められることは同じである。
【0026】
この図では使い捨て用履物カバー1の開口部10の上方向の上端部に縞状の模様の縁取り部分を設けているが、これは外観上のデザインの一例であり、縁取り部分は他のデザインとしてもよいし、縁取り部分がなくてもよい。
【0027】
図2に本実施形態の使い捨て用履物カバー1を第1履物12に被せた状態を示す。図2(a)は使用者M基準の前方向から見た斜視図であり、図2(b)は右方向から見た斜視図である。
【0028】
使い捨て用履物カバー1は伸縮性素材2により開口部10を備えた袋状に構成され、使用者Mが履いた第1履物12の外周側に被せて使用される。図2では、使い捨て用履物カバー1を底面5の突起部6による伸縮性素材2の破断が生じない第1履物12の外周側に被せつつ、開口部10を使用者Mの足首にフィットさせる第1使用態様について図示している。
【0029】
第1履物12として、この図では草履13を使用している。草履13の底面5は平らであり突起部6は存在しない。そのため突起部6による伸縮性素材2の破断は生じないので、第1履物12の全表面が使い捨て用履物カバー1で覆われた状態となっている。
【0030】
使い捨て用履物カバー1は前記第1使用態様と前記第2使用態様とを選択的に可能としている。すなわち第1履物12を使用する場合は履物全体にカバーを被せる第1使用態様、第2履物7を使用する場合には踵部分の突起6によりカバーの適宜の一部を破断する第2使用態様とを使い分けることができる。
【0031】
図3に本実施形態の使い捨て用履物カバー1を別の第1履物12に被せた状態を示す。図3(a)は使用者M基準の左前方から見た斜視図であり、図3(b)は後方から見た斜視図である。
【0032】
第1履物12として、この図ではスニーカー14を使用している。スニーカー14の底面5は平らであり突起部6は存在しない。そのため図1に示すように突起部6による伸縮性素材2の破断は生じない。
【0033】
図4に本実施形態の使い捨て用履物カバー1を別の第1履物12に被せた状態を示す。図4は使用者M基準の右下方から見た斜視図である。この図では第1履物12としてサンダル15を使用している。サンダル15の底面5の突起部6は高さが低く、底面積も広く、2つの突起部6を備えるので突起部6が突出した形状となっておらず、また突起部6の底面積がネット材4のメッシュ空間9の面積よりも大きいため、突起部6による伸縮性素材2の破断は生じない。
【0034】
第1履物12、及び第2履物7としてはここに図示した例以外にも様々の履物に適用することができる。
【0035】
図5に使い捨て用履物カバー1の斜視図を示す。使い捨て用履物カバー1の開口部10には伸縮性素材2を表裏反転させるように巻回した、巻き下げ部16が形成されている。
【0036】
図5(a)は巻き下げ部16に伸縮性素材2の大部分が巻回されている状態であり使い捨て用履物カバー1を使用する前の状態である。
【0037】
図5(b)は巻き下げ部16から伸縮性素材2を使用者Mの足に被せるために巻き下げて引き出した状態である。この状態では図5の(a)よりも図の上下方向において使い捨て用履物カバー1の袋状の部位17が大きくなり、巻き下げ部16は小さくなっている。
【0038】
使い捨て用履物カバー1は使用者Mの足よりも小さいサイズに形成されており、これを足に被せた時に伸縮性素材2の伸縮性により足にフィットするように構成されている。
【0039】
図6に使い捨て用履物カバー1を第2履物7に被せる手順を説明する概念図を示す。
【0040】
図6(a)で使用者Mは足に第2履物7を履き使い捨て用履物カバー1を用意する。
【0041】
図6(b)にて使用者Mは図示されない手の指等で使い捨て用履物カバー1の巻き下げ部16を把持して開口部10を広げ第2履物7を履いたつま先部分から足ごと突っ込むようにした後、袋の開口部10を手前側(この図の後方向)に引っ張る。
【0042】
図6(c)にて開口部10をさらに手前側に引っ張って巻き下げ部16を巻き下げていき第2履物7の踵部分まで被せる。
【0043】
図6(d)にて第2履物7の底面5にある踵部分の突起6により伸縮性部材2の所望の場所を破断する。
【0044】
図6(e)は巻き下げ部16を全て巻き下げ、使用者Mの足首まで使い捨て用履物カバー1をフィットさせた状態である。
【0045】
図7に使い捨て用履物カバー1を第1履物12(この図ではスニーカー14)に被せる手順を説明する概念図を示す。
【0046】
図7(a)で使用者Mは足に第1履物12を履き使い捨て用履物カバー1を用意する。
【0047】
図6(b)にて使用者Mは図示されない手の指等で使い捨て用履物カバー1の巻き下げ部16を把持して第1履物12を履いたつま先部分から足ごと突っ込むようにした後、袋の開口部10を手前側(この図の後方向)に引っ張る。
【0048】
図6(c)にて開口部10をさらに手前側に引っ張って巻き下げ部16を巻き下げていき第1履物12の踵部分まで被せる。
【0049】
図6(d)は巻き下げ部16を全て巻き下げ、使用者Mの足首まで使い捨て用履物カバー1がフィットした状態である。
【0050】
図6図7に示した手順は一例であり、使い捨て用履物カバー1の使用手順は特にこれに限定されるものではない。
【0051】
図8に本実施形態における第2使用態様における貫通孔8の形成工程の一例を説明する概念図を示す。
【0052】
図8(a)はゴム材3と、複数のメッシュ空間9が格子状に配列されたネット材4を含む伸縮性素材2の拡大図である。
【0053】
図8(b)は複数のメッシュ空間9のうちの1つに第2履物7の突起部6を接触させた状態である。
【0054】
図8(c)は突起部6によりメッシュ空間9内のゴム材3を破断し伸縮性素材2に貫通孔8が孔設された状態である。この時突起部6はメッシュ空間9に貫入されている。
【0055】
図8(d)は使用者Mの歩行などにより、伸縮性素材2に孔設された貫通孔8が広がっていく様子を示している。
【0056】
図8(e)は貫通孔8の孔径の広がりが、ネット材4のうち、第2履物7の突起部6が貫入した1つのメッシュ空間9の外縁部位11によって食い止められている状態を示す。
【0057】
使い捨て用履物カバー1の伸縮性素材2においてはゴム材3とネット材4とが一体化しており、メッシュ空間9の外縁部位11においてはメッシュ空間9内のゴム材3のみの部分よりも強度が高くなるために、外縁部位11で囲まれた平面内の貫通孔8の広がりをメッシュ空間9の外縁部11により囲まれた平面内で食い止めることができる。
【0058】
図9に使い捨て用履物カバー1の製造工程の一例を示す。前記製造工程は工程(A)~(I)を含む。
【0059】
工程(A)において使い捨て用履物カバー1の型17をゴム溶液18に浸漬させる。型17は中空状のガラスで構成されている。型17は例えばセラミック、アルミなどで形成されていてもよい。ゴム溶液18は例えばゴム成分と溶媒とを含む。ゴム成分はポリウレタン成分を含む合成ゴム成分、溶媒は水または有機溶剤などが挙げられる。この時ゴム材3を着色したければ所望の顔料等をゴム溶液18に添加すればよい。
【0060】
次に工程(B)において型17を上方向に引き上げると、型17のまわりにゴム成分が付着し、第1ゴム層19が形成される。
【0061】
次に工程(C)において、型17ごと第1ゴム層19を乾燥させ、表面が固まった状態でネット材4を被せる。ネット材4はあらかじめメッシュ状にした繊維素材のネット等を被せる。しかしこの方法に限定されるものではなく、例えば乾燥させた第1ゴム層19の表面に樹脂等でメッシュ状の模様を形成させるなどしてネット材4を形成させてもかまわない。
【0062】
次に工程(D)において、ネット材4を被せた型17を凝固剤20の溶液に浸漬させる。
【0063】
次に工程(E)において型17を上方向に引き上げると、型17の表面に形成された第1ゴム層19と、その表面に配置されたネット材4との表面に凝固剤の層21が形成される。
【0064】
次に工程(F)において、前記工程(E)で形成された、最表面に凝固剤の層21を有する型17を再度ゴム溶液18に浸漬させる。
【0065】
このようにすると、工程(G)では凝固剤の層21がゴム溶液18のゴム成分を吸収して膨らむ。
【0066】
次に工程(H)において、型17を上方向に引き上げると、前記工程によりゴム成分を吸収した凝固剤の層21が第2ゴム層22となって型17の最表面に形成される。これを再度乾燥させる。
【0067】
上述の、工程(D)~(H)を所望の回数繰り返し、所望の膜厚となるまでゴム層の形成を繰り返す。工程(I)では第2ゴム層22の表面に第3ゴム層23、第4ゴム層24を形成させている。この時第1ゴム層19、第2ゴム層22、第3ゴム層23、第4ゴム層24とからゴム材3は構成される。この時ゴム材3とネット材4とは一体化されている。ゴム材3が所望の膜厚となれば、ゴム材3とネット材4とを型17から取り外せば、使い捨て用履物カバー1が形成される。
【0068】
すなわち、使い捨て用履物カバー1のゴム材3は、複数のゴム層が積層された積層構造を有しており、前記積層構造の中に、ネット材4により構成された1層が設けられている。
【0069】
図9に示した例では、使い捨て用履物カバー1のゴム材3は4層のゴム層とネット材4とからなっているが、ゴムの層はもっと少なくてもよいしもっと多くてもかまわない。図9では説明のために1つのゴム層の厚みを強調しているが、実際には1つのゴム層の膜厚は例えば0.1ミリメートル前後である。ゴム材3の厚みはゴム層の積層数でも調整できるし、原料となるゴム溶液の濃度やゴムの種類などで調整してもよい。
【0070】
この例ではネット材4を第1ゴム層19と第2ゴム層22の間に配置しているが、ネット材4はどこの層の間に配置してもよい。また、上述のようにゴム層とゴム層の間にネット材4を挟んで積層することが最も好ましいものの、他の方法、例えば、ネット材4を最も内側あるいは外側に配置して、ゴム材3とネット材4とを凝固剤あるいは接着剤、コーティング剤等を塗布して乾燥させる等の工程により一体化させてもかまわない。
【0071】
なお上述の製造工程は一例であり、他の製造工程により使い捨て用履物カバー1を製造してもかまわない。
【0072】
<実施形態の効果>
本実施形態の使い捨て用履物カバー1は、伸縮性素材2によって袋状に構成されており、使用者Mは、袋状の開口部10から履物を履いた状態の足ごと突っ込むようにした後、袋の開口部10を手前側に引っ張るようにして、開口部10を足首にフィットさせた状態にして使用する。
【0073】
その際、例えばハイヒールのように底面からある程度高く突出した踵を備えた第2履物7である場合(第2使用態様)と、そのように踵が高く突出していない(若しくは踵のない)第1履物12である場合(第1使用態様)と、のいずれの場合においても共通に使用し、履物に被せて各履物の外周形状に沿ってぴったりフィットさせ、雨水の侵入をガードすることができる。
【0074】
すなわち、第2使用態様の場合は、前述のように第2履物7に対して被せる時、使用者Mは、第2履物7に備えられる突起部6により伸縮性素材2の適宜の位置を意図的に破断して貫通孔8をあけることで、突起部6を使い捨て用履物カバー1外に現出させる。これにより、突起部6が存在する第2履物7についても、使い捨て用履物カバー1を第2履物7の外形に沿うようにしてぴったりと覆うことができる。
【0075】
このとき、前述のように伸縮性素材2はネット材4を備えているが、突起部6は、ネット材4に含まれる複数のメッシュ空間9のうちの1つのメッシュ空間9に貫入しつつゴム材3を突き破る形で上記貫通孔8を孔設する。この貫通孔8は、そのままでは、使い捨て用履物カバー1の装着動作の進展や使い捨て用履物カバー1を装着した後の使用者の歩行動作によって徐々に孔径が広がり、最終的に使い捨て用履物カバー1全体を破壊する恐れがある。
【0076】
これに対して本実施形態においては、貫通孔8の孔径の広がりを、ネット材4のうち、突起部6が貫入した1つのメッシュ空間9の外縁部位11の素材(例えばプラスチック素材や繊維素材)によって食い止めることができる。これにより、上記のような貫通孔8の孔径の広がりによる使い捨て用履物カバー1の破壊を防止し、高い耐久性で継続的に使用することができる。
【0077】
また、本実施形態では特に、図9で説明したように、公知のゴム風船の製造手法に準ずる手法で、高い信頼性で伸縮性素材2を構成することができる。ゴム材3の中にネット材4が積層された使い捨て用履物カバー1では、ゴム材3とネット材4とが一体化されているので、後述の変形例のようにゴム材3とネット材4とを別体として設ける場合と比べ、更なる効果として、上記第2使用態様における貫通孔8の孔径の広がり防止効果を確実に得ることができる。
【0078】
また、本実施形態では特に、図5に示すように、使い捨て用履物カバー1の開口部近傍の上端部に、巻き下げ部16が形成されているため、使用者Mはこの巻き下げ部16を手で把持することで、使い捨て用履物カバー1の装着や使用後の取り外しを円滑かつ容易に行うことができる。
【0079】
いずれの履物を使用した使用形態においても、第2履物7の突起部6による伸縮性素材2の破断以外に、例えば地面との摩擦や、石等を踏んだり、突起物にひっかかった等より伸縮性素材2のゴム材3の部分が破断する可能性もあるが、この時も同様に、ネット材4に含まれるメッシュ空間9の外縁部位11により伸縮性素材2の貫通孔8の広がりが一定以上とならないよう食い止める効果があるので、雨水等による履物の汚れを最小限とすることができる。
【0080】
また、使い捨て用履物カバー1の外観上のデザインは特に限定されるものではないが、本実施形態では、透明もしくは半透明のゴム材3と、例えば黒色あるいは白、肌色等、所望の色のネット材4とを一体化させることにより、使い捨て用履物カバー1が目立たず、内側の履物を透けて見せることができ、またネット材4の網目模様も使用者Mの好みのデザインにすることができ外観上の美観性に優れている。
【0081】
使い捨て用履物カバー1はあらゆる形状の履物に対応することができ、薄手で小さく折り畳むことができ、軽いので持ち運びしやすく、使い終われば破棄すれば良いので、濡れた状態の使い捨て用履物カバー1を持ち運ぶ必要がないので手荷物が増えることがない。
【0082】
使い捨て用履物カバー1の長さ寸法は特に限定されるものではなく例えばブーツ等に使用する等の目的により使用者Mの足首だけでなくふくらはぎや膝までフィットして被せられるような長としてもかまわない。
<変形例>
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例について説明する。
【0083】
(1)ゴム材3にネット材4が併設されたもの
図9で説明した製造方法以外にも、所定の膜厚に構成したゴム層からなるゴム材3の内側あるいは外側にネット材4を重ねて配置してもよい。この場合、使い捨て用履物カバー1の伸縮性素材2は、袋状に構成されたゴム材3の外周側又は内周側に、袋状又は筒状のネット材4が併設されたものにより構成される。
【0084】
変形例に係る使い捨て用履物カバー1によれば、単純な構成で容易かつ安価に伸縮性素材2を構成することができる。
(2)その他
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0085】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0086】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0087】
1 使い捨て用履物カバー
2 伸縮性素材
3 ゴム材
4 ネット材
5 底面
6 突起
7 第2履物
8 貫通孔
9 メッシュ空間
10 開口部
11 外縁部位
12 第1履物
13 草履
14 スニーカー
15 サンダル
16 巻き下げ部
17 袋状の部位
18 ゴム溶液
19 第1ゴム層
20 凝固剤
21 凝固剤の層
22 第2ゴム層
23 第3ゴム層
24 第4ゴム層
【要約】
【課題】履物の種類によらず各履物の外周形状に沿ってぴったりフィットし、雨水の侵入をガードする。
【解決手段】
伸縮性素材2により開口部10を備えた袋状に構成され、伸縮性素材2は、ゴム材3と、複数のメッシュ空間9が格子状に配列されたネット材4とを含み、底面5の突起部6による伸縮性素材2の破断が生じ得る第2履物7の外周側に被せ、第2履物7の突起部6で伸縮性素材2の適宜の位置を破断して、突起部6を使い捨て用履物カバー1外に現出させる貫通孔8を孔設しつつ、開口部10を使用者Mの足首にフィットさせる第2使用態様において、第2履物7の突起部6により孔設された貫通孔8の孔径の広がりを、ネット材4のうち、第2履物7の突起部6が貫入した1つのメッシュ空間9の外縁部位11によって食い止める使い捨て用履物カバー1。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9