(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体溶液組成物、それを用いたポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20220113BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220113BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20220113BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20220113BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20220113BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
C08L79/08 A
C08J5/18 CFG
C08L27/12
C08K3/00
C08K5/00
H05K1/03 610P
(21)【出願番号】P 2016135921
(22)【出願日】2016-07-08
【審査請求日】2019-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 厚志
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-148737(JP,A)
【文献】特開2012-047960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08J 5/00-5/24
C08K 3/00-3/40
C08K 5/00-5/59
H05K 1/00-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、フッ素系樹脂のマイクロパウダー
5~70質量%と、少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤
を前記フッ素系樹脂のマイクロパウダーに対して、0.1~20質量%と、着色材料(
但し、カーボンブラック、導電剤を除く)0.1~20質量%と、ポリイミド前駆体溶液と、を含むことを特徴とするポリイミド前駆体溶液組成物。
【請求項2】
フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体と、着色材料(
但し、カーボンブラック、導電剤を除く)と、ポリイミド前駆体溶液と、を少なくとも含
み、組成物全量に対して、前記フッ素系樹脂のマイクロパウダーが5~70質量%であり、前記フッ素系添加剤が前記フッ素系樹脂のマイクロパウダーに対して、0.1~20質量%であり、前記着色材料(但し、カーボンブラック、導電剤を除く)が0.1~20質量%であることを特徴とするポリイミド前駆体溶液組成物。
【請求項3】
フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体と、着色材料(
但し、カーボンブラック、導電剤を除く)と非水系溶媒とを少なくとも含む着色材料分散体又は着色材料溶液と、ポリイミド前駆体溶液と、を少なくとも含
み、組成物全量に対して、前記フッ素系樹脂のマイクロパウダーが5~70質量%であり、前記フッ素系添加剤が前記フッ素系樹脂のマイクロパウダーに対して、0.1~20質量%であり、前記着色材料(但し、カーボンブラック、導電剤を除く)が0.1~20質量%であることを特徴とするポリイミド前駆体溶液組成物。
【請求項4】
フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と着色材料(
但し、カーボンブラック、導電剤を除く)と非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー着色材料分散体と、ポリイミド前駆体溶液と、を少なくとも含
み、組成物全量に対して、前記フッ素系樹脂のマイクロパウダーが5~70質量%であり、前記フッ素系添加剤が前記フッ素系樹脂のマイクロパウダーに対して、0.1~20質量%であり、前記着色材料(但し、カーボンブラック、導電剤を除く)が0.1~20質量%であることを特徴とするポリイミド前駆体溶液組成物。
【請求項5】
前記フッ素系樹脂のマイクロパウダーが、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレン-プロピレン共重合体、パーフルオロアルコキシ重合体、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレンからなる群から選ばれる1種以上のフッ素系樹脂のマイクロパウダーであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物。
【請求項6】
前記着色材料(
但し、カーボンブラック、導電剤を除く)が、無機顔料、有機顔料、染料から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物。
【請求項7】
前記着色材料(
但し、カーボンブラック、導電剤を除く)が酸化物系黒色顔料、白色顔料から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物。
【請求項8】
前記ポリイミド前駆体溶液が、少なくとも、テトラカルボン酸二水和物及び/又はその誘導体と、ジアミン化合物と、を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物。
【請求項9】
前記フッ素系樹脂マイクロパウダー分散体において、分散された状態のフッ素系樹脂マイクロパウダーの平均粒子径が10μm以下であることを特徴とする請求項2乃至7
のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物を用いて得られることを特徴とするポリイミド。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物を用いて得られることを特徴とするポリイミドフィルム。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物を用いて得られることを特徴とするポリイミド絶縁膜。
【請求項13】
請求項11に記載のポリイミドフィルムを用いたことを特徴とするカバーレイフィルム。
【請求項14】
請求項11に記載のポリイミドフィルムを用いたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体溶液組成物、それを用いたポリイミドフィルムに関し、更に詳しくは、顔料や染料によって着色されて、隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性などの機能が付与されていても、高絶縁性で、耐熱性、電気特性(低誘電率、低誘電正接)、加工性などに優れる着色されたポリイミド、ポリイミドフィルム、カバーレイフィルム、フレキシブル配線板などに好適なポリイミド前駆体溶液組成物、それを用いたポリイミドフィルムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高速化、高機能化などが進むと共に、通信速度の高速化などが求められている。こうした中、各種電子機器材料の低誘電率化、低誘電正接化が求められており、特に絶縁材料や基板材料の低誘電率化、低誘電正接化などが求められている。
【0003】
従来、ポリイミドフィルムなどを含むポリイミドは、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性、機械特性などに優れることから、電気・電子用途に広く使用されてきている。例えば、ポリイミドをフィルムとして用いる場合は、電子回路材料の絶縁基材として用いられ、粘着フィルムや粘着テープに加工されて用いられることもある。また、コーティング剤として用いる場合は、ポリイミド前駆体溶液組成物を塗布乾燥後に熱処理してイミド化し、電子回路の絶縁層(多層配線基板の層間絶縁材料)、有機EL素子や半導体素子の表層保護膜、耐熱性保護膜、耐摩耗膜などとして用いられることもある。
【0004】
通常、ポリイミドフィルムは、接着剤を用いて銅箔と貼り合わせたり、蒸着法、メッキ法、スパッタ法、又はキャスト法などによりフィルム層と銅箔からなる積層板(銅箔付きポリイミドフィルム)に加工されたりして、フレキシブルプリント多層回路基板の基材フィルムとして使用されている。
この銅張積層板は、銅箔部分を加工して配線パターンなどが形成されて用いられるものであるが、この配線パターンは絶縁性のカバーレイフィルムなどによって被覆保護される。そして、このカバーレイフィルムの基材も主にポリイミドフィルムが用いられている。
【0005】
これらのポリイミドフィルムなどを用いたカバーレイフィルムやフレキシブルプリント配線板等は、隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性などのその他の機能などを付与するために白色、黒色、その他有色などに着色されて用いられるニーズが存在する。
例えば、白色のポリイミドフィルム等の白色系ポリイミド材料では、耐熱軽量白色材料、LED(発光ダイオード)、有機EL発光の反射材や、金属層白色フィルムの基材として使用され、また、LEDや有機ELや、他の発光素子を実装するフレキシブルなプリント配線基板などに好適に利用されている。
一方、黒色などの有色系ポリイミド材料では、近年の薄膜化、低コスト化などと共に、保護する電子部品や実装部品における遮蔽性、光学特性の要求が高まってきており、遮蔽性、遮光性を有する黒色などの有色系ポリイミド材料の需要が年々増加している。
【0006】
これらの白色、黒色などに着色されたポリイミドフィルム等のポリイミド材料としては、例えば、
1)特定のジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸とを反応させて得られるポリアミド酸に白色顔料を混合した液を支持体に流延・乾燥して、ポリイミド前駆体フィルムを得、該ポリイミド前駆体フィルムをイミド化させて得られる白色ポリイミドフィルム(例えば、特許文献1参照)、
2)ポリイミド層の片面又は両面に、顔料を含有するポリイミド層が積層された多層ポリイミドフィルムであって、前記顔料を含有するポリイミド層を構成するポリイミドを、特定成分から構成した遮光性又は光反射性を有する多層ポリイミドフィルム(例えば、特許文献2参照)、
3)特定の繰り返し単位を有するポリイミド、有色着色材料および白色顔料を含む樹脂組成物からなる着色遮光ポリイミドフィルム(例えば、特許文献3参照)、
4)ベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラック顔料(A)およびシリカ(B)を含み、ポリイミドフィルム全体に対する上記顔料(A)、(B)の合計総重量、重量比を特定の範囲とした黒色ポリイミドフィルム(例えば、特許文献4参照)、
5)少なくとも2種以上の顔料を含有する顔料添加ポリイミドフィルムであって、該ポリイミドフィルムの光沢度、熱膨張係数を特定の範囲とした顔料添加ポリイミドフィルム(例えば、特許文献5参照)、
6)特定のジアミンモノマーを特定の二無水物モノマーと反応させて得られるポリイミドポリマーであって、ポリイミド粒子から成る艶消し剤、及び1つ以上の着色顔料、を含む着色基材ポリイミドフィルム(例えば、特許文献6参照)などが知られている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1~6に記載される着色ポリイミドフィルムなどの着色ポリイミド材料などは、有機顔料や無機顔料などの着色材料によって着色すると、カバーレイフィルムやフレキシブルプリント配線板の電気特性(比誘電率、誘電正接)や絶縁性に影響を及ぼすことに課題を有する。
特に、黒色に着色するためにカーボンブラックを用いると、絶縁性が低下するだけでなく、比誘電率や誘電正接を悪化させるため、高速通信や高速処理などの用途には適さなくなってしまうなどの課題がある。
したがって、着色ポリイミド材料などには、電気特性(低誘電率、低誘電正接)や絶縁性に未だ技術的な課題や限界等があり、隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性などの機能を付与すると共に、電気特性(低誘電率、低誘電正接)や絶縁性を更に改善したポリイミド前駆体溶液組成物、それを用いたポリイミドフィルムなどが求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-169237号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【文献】国際公開WO2010/126047(特許請求の範囲、実施例等)
【文献】特開2012-167169号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【文献】特開2013-28767号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【文献】特開2014-141575号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【文献】特開2015-44977号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の課題及び現状等について、これを解消しようとするものであり、顔料や染料によって着色されて、隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性などのその他の機能などが付与されていても、高絶縁性で、耐熱性、電気特性(低誘電率、低誘電正接)、加工性などに優れる着色されたポリイミド、ポリイミドフィルム、それを用いたカバーレイフィルム、フレキシブル配線板などに好適なポリイミド前駆体溶液組成物、それを用いたポリイミドフィルムなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、下記の第1発明乃至第14発明により、上記目的のポリイミド前駆体溶液組成物、それを用いたポリイミドフィルムなどが得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0011】
すなわち、本第1発明は、少なくとも、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと、少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と、着色材料と、ポリイミド前駆体溶液と、を含むことを特徴とするポリイミド前駆体溶液組成物。
【0012】
本第2発明は、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体と、着色材料と、ポリイミド前駆体溶液と、を少なくとも含むことを特徴とするポリイミド前駆体溶液組成物。
【0013】
本第3発明は、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体と、着色材料と非水系溶媒とを少なくとも含む着色材料分散体又は着色材料溶液と、ポリイミド前駆体溶液と、を少なくとも含むことを特徴とするポリイミド前駆体溶液組成物。
【0014】
本第4発明は、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と着色材料と非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー着色材料分散体と、ポリイミド前駆体溶液と、を少なくとも含むことを特徴とするポリイミド前駆体溶液組成物。
【0015】
本第5発明は、前記フッ素系樹脂のマイクロパウダーが、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレン-プロピレン共重合体、パーフルオロアルコキシ重合体、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレンからなる群から選ばれる1種以上のフッ素系樹脂のマイクロパウダーであることを特徴とする本第1発明乃至本第4発明のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物。
【0016】
本第6発明は、前記着色材料が、無機顔料、有機顔料、染料の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする本第1発明乃至本第5発明のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物。
【0017】
本第7発明は、前記着色材料が炭素系黒色顔料、酸化物系黒色顔料、白色顔料から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする本第1発明乃至本第5発明のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物。
【0018】
本第8発明は、前記ポリイミド前駆体溶液が、少なくとも、テトラカルボン酸二水和物及び/又はその誘導体と、ジアミン化合物と、を含むことを特徴とする本第1発明乃至本第7発明のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物。
【0019】
本第9発明は、前記フッ素系樹脂マイクロパウダー分散体において、分散された状態のフッ素系樹脂マイクロパウダーの平均粒子径が10μm以下であることを特徴とする本第2発明乃至本第8発明に記載のポリイミド前駆体溶液組成物。
【0020】
本第10発明は、本第1発明乃至本第9発明のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物を用いて得られることを特徴とするポリイミド。
【0021】
本第11発明は、本第1発明乃至本第9発明のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物を用いて得られることを特徴とするポリイミドフィルム。
【0022】
本第12発明は、本第1発明乃至本第9発明のいずれか一つに記載のポリイミド前駆体溶液組成物を用いて得られることを特徴とするポリイミド絶縁膜。
【0023】
本第13発明は、本第11発明に記載のポリイミドフィルムを用いたことを特徴とするカバーレイフィルム。
【0024】
本第14発明は、本第11発明に記載のポリイミドフィルムを用いたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、顔料や染料によって着色されて、隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性などの機能が付与されていても、高絶縁性で、耐熱性、電気特性(低誘電率、低誘電正接)、加工性などに優れる着色されたポリイミド、ポリイミドフィルム、それを用いたカバーレイフィルム、フレキシブル配線板などに好適なポリイミド前駆体溶液組成物が提供される。
また、本発明のポリイミド前駆体溶液組成物を用いたポリイミド、ポリイミドフィルム、ポリイミド絶縁膜、カバーレイフィルム、フレキシブルプリント配線板などは、有機顔料や無機顔料、染料の着色材料によって着色されて、隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性などの機能が付与されていても、高絶縁性で、耐熱性、電気特性(低誘電率、低誘電正接)、加工性などに優れる着色されたポリイミド、ポリイミドフィルム、ポリイミド絶縁膜、カバーレイフィルム、フレキシブル配線板などが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明のポリイミド前駆体溶液組成物は、下記第1発明~第4発明にてそれぞれ構成されるものである。
本第1発明は、少なくとも、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと、少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と、着色材料と、ポリイミド前駆体溶液と、を含むことを特徴とするものであり、第2発明は、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体と、着色材料と、ポリイミド前駆体溶液と、を少なくとも含むことを特徴とするものであり、第3発明は、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体と、着色材料と、非水系溶媒とを少なくとも含む着色材料分散体又は着色材料溶液と、ポリイミド前駆体溶液と、を少なくとも含むことを特徴とするものであり、第4発明は、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と着色材料と非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体と、ポリイミド前駆体溶液と、を少なくとも含むことを特徴とするものである。
以下に、本第1発明~第4発明ごとに、各ポリイミド前駆体溶液組成物を詳述する。なお、各発明に共通する成分は、最初の第1発明等で詳述し、第2発明等以降では共通である旨等を記載し、その詳述を省略する。
【0027】
〔第1発明:ポリイミド前駆体溶液組成物〕
〈フッ素系樹脂のマイクロパウダー〉
本第1発明に用いるフッ素系樹脂のマイクロパウダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレン-プロピレン共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシ重合体(PFA)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(TFE/CTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)からなる群から選ばれる少なくとも1種のフッ素系樹脂のマイクロパウダーが挙げられる。
上記フッ素系樹脂のマイクロパウダーの中でも、特に、低比誘電率、低誘電正接の材料として、樹脂材料の中で最も優れた特性を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE、比誘電率2.1)の使用が望ましい。
このようなフッ素系樹脂のマイクロパウダーは、乳化重合法や粉砕法などにより得られるものであり、例えば、ふっ素樹脂ハンドブック(黒川孝臣編、日刊工業新聞社)に記載されている方法など、一般的に用いられる方法により得ることができる。前記乳化重合により得られたフッ素系樹脂のマイクロパウダーの場合には、凝集・乾燥して、一次粒子が凝集した二次粒子としての微粉末が回収されるものである。
【0028】
フッ素系樹脂のマイクロパウダーの好ましい粒子径は、用途により適宜選択されるものであるが、ポリイミド前駆体溶液組成物の安定性や得られるポリイミドなどの特性を充分に発揮する上では粒子径は小さい方が好ましい。望ましくはフッ素系樹脂のマイクロパウダーの一次粒子径が10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。また、上記一次粒子径の下限値は、低ければ低い程良好であるが、製造性、コスト面等から、0.05μm以上0.3μm以下が好ましい。
フッ素系樹脂のマイクロパウダーの一次粒子径の測定方法としては、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法、画像イメージング法などによって測定される体積基準の平均粒子径(50%体積径、メジアン径)が用いられるが、予想される一次粒子径に合った測定方法を選定することにより、実際の粒子径に即した測定値を得ることができるものである。
なお、一次粒子径が1μm以下となるようなフッ素系樹脂のマイクロパウダーの場合は、マイクロパウダーの製造段階においてレーザー回折・散乱法や動的光散乱法などによって得られた値を指し示すものであるが、乾燥して粉体状態にしたマイクロパウダーの場合には、一次粒子同士の凝集力が強く、容易に一次粒子径をレーザー回折・散乱法や動的光散乱法などによって測定することが難しいため、画像イメージング法によって得られた値を指し示すものであってもよい。測定装置としては、例えば、FPAR-1000(大塚電子株式会社製)による動的光散乱法や、マイクロトラック(日機装株式会社製)によるレーザー回折・散乱法や、マックビュー(株式会社マウンテック社製)による画像イメージング法などを挙げることができる。
【0029】
フッ素系樹脂のマイクロパウダーは、一次粒子径同士が異なる2種類以上を混ぜて用いることも可能であるし、分散された状態のフッ素系樹脂マイクロパウダーの平均粒子径同士が異なる2種類以上を混ぜることも可能であるし、前記の一次粒子径や平均粒子径の異なる2種類以上のフッ素系樹脂のマイクロパウダーを混ぜて用いることも可能である。粒子径の異なる2種類以上のフッ素系樹脂のマイクロパウダーを用いることにより、粘度を調製したり、充填率を上げたり、ポリイミドなどの表面の状態をコントロールすることができるようになる。
【0030】
また、フッ素系樹脂のマイクロパウダーは、各種表面処理を行ったものであってもよい。例えば、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理、オゾン処理、電子線照射処理、熱処理、水洗、湯洗、各種ガス処理などにより、フッ素系樹脂のマイクロパウダー表面に残っている界面活性剤や不純物などの不要な成分を除去したり、あるいは活性化することが可能である。
【0031】
本第1発明においては、フッ素系樹脂のマイクロパウダーは、ポリイミド前駆体溶液組成物の全固形分量に対して、5~70質量%含有されることが好ましく、より好ましくは、10~60質量%含有されることが望ましい。
この含有量が5質量%未満の場合には、最終的なポリイミドなどにフッ素系樹脂の有する特性を充分に付与することができず、また、含有量が70質量%を超える場合には、最終的なポリイミドなどの機械的強度が極端に弱くなるなどするため好ましくない。
【0032】
〈フッ素系添加剤〉
本第1発明に用いるフッ素系添加剤は、少なくとも含フッ素基と親油性基を有するものであることが必要であり、少なくとも含フッ素基と親油性基を有するものであれば、特に限定されるものではなく、この他に親水性基が含有されているものであってもよい。
少なくとも含フッ素基と親油性基を有するフッ素系添加剤を用いることにより、分散媒となる油性溶剤などの非水系溶媒の表面張力を低下させ、ポリテトラフルオロエチレン表面に対する濡れ性を向上させてポリテトラフルオロエチレンの分散性を向上させると共に、含フッ素基がポリテトラフルオロエチレン表面に吸着し、親油性基が分散媒となる油性溶剤等の非水系溶媒中に伸長し、この親油性基の立体障害によりポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂のマイクロパウダーの凝集を防止して分散安定性を更に向上させるものとなり、当該フッ素系樹脂のマイクロパウダーと、後述する着色材料とをポリイミド前駆体溶液組成物中に均一に且つ安定に微粒子分散等させることができるものとなる。
【0033】
含フッ素基としては、例えば、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルケニル基などが挙げられ、親油性基としては、例えば、アルキル基、フェニル基、シロキサン基などの1種又は2種以上が挙げられ、親水性基としては、例えば、エチレンオキサイドや、アミド基、ケトン基、カルボキシル基、スルホン基などの1種又は2種以上が挙げられる。
具体的に用いることできるフッ素系添加剤としては、パーフルオロアルキル基含有のサーフロンS-611などのサーフロンシリーズ(AGCセイミケミカル社製)、メガファックF-555、メガファックF-558、メガファックF-563などのメガファックシリーズ(DIC社製)、ユニダインDS-403Nなどのユニダインシリーズ(ダイキン工業社製)、フタージエント610FMなどのフタージエントシリーズ(ネオス社製)などを用いることができる。
これらのフッ素系添加剤は、用いるポリテトラフルオロエチレンと油性溶剤などの非水系溶媒の種類、着色材料によって、適宜最適なものが選択されるものであるが、1種類、または2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0034】
少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤の含有量は、フッ素系樹脂のマイクロパウダーに対し、0.1~20質量%が好ましい。この化合物の含有量が0.1質量%より少ないと、分散安定性が悪くなりフッ素系樹脂のマイクロパウダーが沈降しやすくなり、20質量%を越えると粘度が高くなったりして好ましくない。
さらに、熱硬化樹脂などに、フッ素系樹脂のマイクロパウダーの非水系分散体を添加した際の特性を考慮すれば、0.1~10質量%が望ましく、さらに0.1~7質量%が望ましく、特に0.1~5質量%が最も好ましい。
【0035】
本第1発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と組み合わせて、他の界面活性剤や分散剤を適宜量用いることも可能である。
例えば、フッ素系や非フッ素系に関わらず、ノニオン系、アニオン系、カチオン系などの界面活性剤や分散剤、ノニオン系、アニオン系、カチオン系などの高分子界面活性剤やブチラール(PVB)樹脂などの高分子分散剤などを挙げることができるが、これらに限定されることなく使用することができる。
上記ブチラール(PVB)樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)をブチルアルデヒド(BA)と反応させたビニルブチラール/酢酸ビニル/ビニルアルコールから構成される三元重合体が挙げられ、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造であり、これらの3種の構造の比率を変化させることにより、水酸基量やブチラール化度などが異なる各種ブチラール(PVB)樹脂を用いることができ、市販品では積水化学工業社製のエスレックBM-1(水酸基量:34モル%、ブチラール化度65±3モル%、分子量:4万)などのエスレックBシリーズ、KS-10(水酸基量:25mol%、アセタール化度65±3モル%、分子量:1.7万)などのK(KS)シリーズ、SVシリーズ、クラレ社製のモビタールB145(水酸基量:21~26.5モル%、アセタール化度67.5~75.2モル%)、同B16H(水酸基量:26.2~30.2モル%、アセタール化度66.9~73.1モル%、分子量:1~2万)などのモビタールシリーズなどを用いることができる。
【0036】
〈着色材料〉
本第1発明に用いる着色材料としては、無機顔料、有機顔料、染料の中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
用いることができる無機顔料、有機顔料、染料としては、従来よりポリイミドフィルム、カバーレイフィルム、フレキシブルプリント配線板などのポリイミド材料を着色し、隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性などの機能を施すために用いられているものであれば、特に限定なれないが、好ましくは、絶縁性、低誘電率化、低誘電正接化などの電気特性、加工性などの性能を損なうことなく、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、無機顔料、有機顔料では、炭素系黒色顔料、酸化物系黒色顔料、白色顔料の中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0037】
炭素系黒色顔料としては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、黒雲母、黒鉛粉末、グラファイト粉末として市販されているものなどが例示される。
酸化物系黒色顔料としては、例えば、酸化コバルト、四三酸化鉄、酸化第一鉄、酸化マンガン、チタンブラック、酸化クロム、酸化ビスマス、酸化第一錫、酸化第二銅又は銅-鉄-マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、鉄マンガンビスマスブラック、コバルト鉄クロムブラック、銅クロムマンガンブラック、鉄クロムブラック、マンガンビスマスブラック、マンガンイットリウムブラック、鉄マンガン酸化物スピネルブラック、銅クロマイトスピネルブラック、ヘマタイト、マグネタイト、雲母状酸化鉄、チタンブラック及び鉄を含む金属酸化物、複合金属酸化物などからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
これらの黒色顔料の中で、遮光性に優れるカーボンブラック、市販品では、三菱化学社製の#5、#10、#20、#25、#30、#32、#33、#40、#44、#45、#47、#52、#85、#95、CF9、MA7、MA8、MA11、MA100、MA220、MA230など、エボニック インダストリーズ社製のPrintex25、35、40、45、55、150T、U、V、P、L6などのPrintexシリーズなどを用いることが好ましく、また、電気的信頼性が向上するペリレンブラック顔料、市販品では、BASF社製ルモゲンブラックシリーズ、パリオゲンブラックシリーズなどを用いることが好ましい。また、遮熱特性に優れるアルミニウムフレーク顔料(黒色干渉アルミニウム顔料)も用いることができる。
【0038】
白色顔料としては、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、マグネシア、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素(六方晶立方晶)、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸カルシウム、塩基性モリブデン酸亜鉛、塩基性モリブデン酸カルシウム亜鉛、モリブデンホワイト、カオリン、シリカ、タルク、粉末マイカ、粉末ガラス、粉末アルミニウム、粉末ニッケル、炭酸カルシウム等を用いることができる。
これらの白色顔料の中でも、遮蔽力の大きい酸化チタン、及び絶縁性の高い微粉末シリカがより好ましく、これらを併用することができ、両者を併用することで、絶縁性と反射性とを共に向上することができる。上記酸化チタンとしては、アナターゼ型酸化チタンやルチル型酸化チタンが挙げられる。これらの中でもLED用に用いる場合には、近紫外LED及び青色LEDの波長を反射するアナターゼ型酸化チタンがより好ましい。また、上記微粉末シリカとしては、結晶性シリカ、溶融性シリカ、及び煙霧性シリカが挙げられる。
なお、酸化チタン表面をアルミナ、シリカ処理等、また、シラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤処理して、酸化チタンと光触媒との組合せによる有機質の酸化分解反応を抑制することができるため、ポリイミドフィルム、カバーレイフィルムなどの寿命を更に延ばすことができる。
【0039】
上記炭素系黒色顔料、酸化物系黒色顔料、白色顔料以外の無機顔料、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジスアゾ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、イソインドリン顔料、アントラキノン顔料、アントロン顔料、キサンテン顔料、ジケトピロロピロール顔料、アントラキノン(アントロン)顔料、ペリノン顔料、キナクリドン顔料、インジゴチン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、及びアゾメチン顔料等が挙げられる。また、無機顔料としては、例えば、酸化マンガン・アルミナ、酸化クロム・酸化錫、酸化鉄、硫化カドミウム・硫化セレンなどの赤色系、酸化コバルト、ジルコニア・酸化バナジウム、酸化クロム・五酸化二バナジウムなどの青色系、ジルコニウム・珪素・プラセオジム、バナジウム・錫、クロム・チタン・アンチモンなどの黄色系、酸化クロム、コバルト・クロム、アルミナ・クロムなどの緑色系、アルミニウム・マンガン、鉄・珪素・ジルコニウムなどの桃色系などが挙げられる。
【0040】
これらの炭素系黒色顔料、酸化物系黒色顔料、白色顔料等を含む無機顔料、有機顔料は、加工性などの性能を損なうことなく、隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性などのその他の機能を効果的に発揮せしめる点から、一次粒子径が1μm以下となるものが好ましい。
【0041】
用いることができる染料としては、例えば、油溶性染料、酸性染料、直接染料、塩基性染料、媒染染料、又は酸性媒染染料等の各種染料のいずれかの形態を有するものが挙げられる。また、前記染料をレーキ化して用いる場合や、染料と含窒素化合物との造塩化合物等の形態であっても良い。
用いる染料としては、ポリイミド前駆体溶液で用いる芳香族ジアミンなどのジアミン化合物に対して反応性のある置換基をもつものが望ましく、分子内にスルホン酸基あるいはカルボン酸基をもつものが好適である。例えば、酸性染料(ジアミンが塩基性の物質であるので、酸性染料でも塩基に弱いものは除く)などを好適に用いることができる。通常、染料はポリイミド分子の中に単に溶解し分散された状態であるのに対し、芳香族ジアミンなどのジアミン化合物がある場合、染料は熱処理によって、ポリイミド化した高分子マトリックスと一部結合するために、染料はポリイミドの中を動きにくくなり、耐溶剤性などを更に向上することができる。
本第1発明では、用いる着色材料である、無機顔料、有機顔料、染料の中からポリイミド材料(ポリイミドフィルム、ポリイミド絶縁膜、カバーレイフィルム、フレキシブルプリント配線板等)の用途、着色材料の含有により目的の遮蔽性、遮光性や反射特性を発揮せしめる点などを勘案して、上述の如く、最適な好ましい着色材料が選択される。
【0042】
本第1発明においては、用いる着色材料は、ポリイミド材料(ポリイミドフィルム、ポリイミド絶縁膜、カバーレイフィルム、フレキシブルプリント配線板等)の用途、隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性などのその他の機能などを勘案して好適な量が定まるものであり、絶縁性、低誘電率化、低誘電正接化などの電気特性、加工性などの性能を損なうことなく、着色材料の含有により目的の隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性などのその他の機能を発揮せしめる点から、ポリイミド前駆体溶液組成物の固形分全量に対して、下限は0.1質量%以上、より好ましくは、1質量%以上であり、一方、最終的なポリイミドなどの機械的強度などの特性を損なわない点から、上限は30質量%以下、より好ましくは、20質量%以下とすることが好ましい。
【0043】
〈ポリイミド前駆体溶液〉
本第1発明に用いるポリイミド前駆体溶液は、一般的にポリイミドの生成に用いられるポリイミド前駆体であればいずれも用いることができ、例えば、少なくとも、テトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体と、ジアミン化合物と、非水系溶媒とを含むものであり、その調製はテトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体と、ジアミン化合物を非水系溶媒の存在下で反応させることなどにより得られる。なお、本第1発明において、「ポリイミド前駆体溶液」は、使用する非水系溶媒を含有する概念である。
【0044】
用いることができるテトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体としては、例えば、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ベリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、また、前記テトラカルボン酸二無水物の誘導体であるテトラカルボン酸二無水物と同一の骨格を有するテトラカルボン酸、そのテトラカルボン酸の酸塩化物、そのテトラカルボン酸と炭素数1~4の低級アルコールとエステル等が挙げられ、これらは、単独でも2種以上混合しても用いることができる。
好ましくは、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)の使用が望ましい。
このテトラカルボン酸二無水物及び/その誘導体の含有量は、製造性、ポリイミドの用途、要求特性等に応じて変動するものである。
【0045】
用いることができるジアミン化合物としては、例えば、へキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、4,4-ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11-ジアミノドデカン、1,2-ビス-3-アミノプロポキシエタン、2,2-ジメチルプロピレンジアミン、3-メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘプタメチレンジアミン、3-メチルへプタメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、2,4-ジアミノトルエン、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,4-ビス(β-アミノ-第三ブチル)トルエン、ビス(p-β-アミノ-第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-6-アミノフェニル)ベンゼン、ビス-p-(1,1-ジメチル-5-アミノ-ペンチル)ベンゼン、1-イソプロピル-2,4-m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ジ(p-アミノシクロヘキシル)メタン、2,17-ジアミノエイコサデカン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,10-ジアミノ-1,10-ジメチルデカン、1,12-ジアミノオクタデカン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられ、これらは、単独でも2種以上混合しても用いることができる。
好ましくは、p-フェニレンジアミン(PPD)、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メタン(MBAA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)を用いることが望ましい。
このジアミン化合物の含有量は、製造性、ポリイミドの用途、要求特性等に応じて変動するものである。
【0046】
上記テトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体と、ジアミン化合物の組合せとしては、好ましくは、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)と4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、s-BPDAとp-フェニレンジアミン(PPD)等の組合せが挙げられる。
【0047】
また、本第1発明においては、ポリイミド前駆体溶液やポリイミド前駆体溶液組成物の粘度調整などのために、非水系溶媒を用いることができる。
例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2-ヘプタノン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル、ジオキサン、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルモノグリシジルエーテル、エチルモノグリシジルエーテル、ブチルモノグリシジルエーテル、フェニルモノグリシジルエーテル、メチルジグリシジルエーテル、エチルジグリシジルエーテル、ブチルジグリシジルエーテル、フェニルジグリシジルエーテル、メチルフェノールモノグリシジルエーテル、エチルフェノールモノグリシジルエーテル、ブチルフェノールモノグリシジルエーテル、ミネラルスピリット、2-ヒドロキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4-ビニルピリジン、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテル、ジメチルイミダゾリン、テトラヒドロフラン、ピリジン、フォルムアミド、アセトアニリド、ジオキソラン、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、フェノール、N-メチル-2-ピロリドン,N-アセチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、γ-ブチロラクトン、スルホラン、ハロゲン化フェノール類、各種シリコーンオイル、からなる群から選ばれる1種類の溶媒、またはこれらの溶媒を2種以上含んでいるものが挙げられる。
これらの非水系溶媒の中で、好ましくは、用いる材料やポリイミドの用途等により変動するものであるが、アセトアニリド、ジオキソラン、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、N-メチル-2-ピロリドン,N-アセチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、スルホラン、ハロゲン化フェノール類、キシレン、アセトンが挙げられる。
本第1発明に用いるポリイミド前駆体溶液に用いる非水系溶媒の含有量は、上記テトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体、上記ジアミン化合物の残部となるものである。
【0048】
〈第1発明:ポリイミド前駆体溶液組成物〉
本第1発明のポリイミド前駆体溶液組成物は、少なくとも、上記フッ素系樹脂のマイクロパウダーと、少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と、上記着色材料と、上記ポリイミド前駆体溶液と、を含むことを特徴とするものであり、例えば、非水系溶媒に上記テトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体とジアミン化合物を溶解し、重合させたポリイミド前駆体溶液中に、上記フッ素系樹脂のマイクロパウダーと、少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と、上記着色材料とを所定量を添加、混合して調製される。
この第1発明のポリイミド前駆体溶液組成物では、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と上記着色材料とを予め調製したポリイミド前駆体溶液に所定量を添加、混合することにより、組成物中にフッ素系樹脂のマイクロパウダー、並びに、着色材料を凝集や沈降することなく均一に微粒子分散等することができるものとなる。
本第1発明に用いるポリイミド前駆体溶液の調製は、公知の方法や所定の条件などを好適に採用することができ、例えば、非水系溶媒に所定の組成比となるテトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体と、ジアミン化合物を加え、撹拌することにより調製することができる。ポリイミド前駆体溶液中におけるテトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体、及びジアミン化合物の合計の濃度は、種々の条件に応じて設定されるが、通常、反応溶液全量(ポリイミド前駆体溶液全量)において5~30質量%が好ましい。これらを撹拌する際の反応条件は、特に限定されないが、反応温度は80℃以下、特に5~50℃に設定することが好ましい。反応温度が低すぎると反応が進行しない、あるいは反応が進行するまでに時間がかかりすぎ、高すぎるとイミド化が進行してしまうなどの問題が生じてくる。また、反応時間は1~100時間であることが好ましい。
また、ポリイミド前駆体溶液組成物は、例えば、ディスパー、ホモミキサーなどのミキサー類や、超音波分散機、3本ロール、湿式ボールミル、ビーズミル、湿式ジェットミルなどの分散機などを用いて撹拌、混合、分散することにより、作製することができるものである。
【0049】
また、本第1発明のポリイミド前駆体溶液組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤や分散剤、消泡剤等の各種添加剤、シリカ粒子やアクリル粒子などのフィラー材料やエラストマーなどを用いることが出来るものである。
【0050】
本第1発明のポリイミド前駆体溶液組成物は、カールフィッシャー法による水分量が、5000ppm以下〔0≦水分量≦5000ppm〕であることが好ましい。材料からの水分混入や製造段階における水分混入など考えられるが、最終的にポリイミド前駆体溶液組成物の水分量を5000ppm以下にすることで、より保存安定性に優れた、ポリイミド前駆体溶液組成物を得ることができる。
【0051】
〔第2発明:ポリイミド前駆体溶液組成物〕
本第2発明のポリイミド前駆体溶液組成物は、上述のフッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と上記非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体と、着色材料と、ポリイミド前駆体溶液とを少なくとも含むことを特徴とするものであり、上記各成分等の詳述は上記第1発明と同様であるので、その説明を省略する。
本第2発明では、上記第1発明に較べ、予め、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体を調製したものを用いるものであり、この分散体と着色材料とを、上記ポリイミド前駆体溶液に所定量添加、混合することなどによりフッ素系樹脂のマイクロパウダー、並びに、着色材料が組成物中に凝集や沈降することなく均一に微粒子分散等したポリイミド前駆体溶液組成物が得られるものである。
【0052】
本第2発明の上記フッ素系樹脂マイクロパウダー分散体は、例えば、ディスパー、ホモミキサーなどのミキサー類や、超音波分散機、3本ロール、湿式ボールミル、ビーズミル、湿式ジェットミルなどの分散機などを用いて撹拌、混合、分散することにより、作製することができるものであるが、分散状態においてフッ素系樹脂のマイクロパウダーの動的光散乱法またはレーザー回折・散乱法による体積基準の平均粒子径(50%体積径、メジアン径)は、10μm以下となるものが好ましい。通常、一次粒子が凝集し、二次粒子として粒子径が大きいマイクロパウダーとなっている。このフッ素系樹脂のマイクロパウダーの二次粒子を10μm以下の粒子径となるように分散することにより、例えば、ディスパー、ホモミキサーなどのミキサー類や、超音波分散機、3本ロール、湿式ボールミル、ビーズミル、湿式ジェットミル、高圧ホモジナイザーなどの分散機を用いて分散することにより、低粘度で長期保存した場合でも安定な分散体を得ることができるものである。
この平均粒子径としては、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下であることが望ましい。より安定な分散体となるからである。
【0053】
また、本第2発明のポリイミド前駆体溶液組成物においても、上述した本第1発明のポリイミド前駆体溶液組成物と同様に、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤や分散剤、消泡剤等の各種添加剤、シリカ粒子やアクリル粒子などのフィラー材料やエラストマーなどを用いることが出来るものである。
さらに、本第2発明のポリイミド前駆体溶液組成物においても、上述した本第1発明のポリイミド前駆体溶液組成物と同様に、カールフィッシャー法による水分量が、5000ppm以下〔0≦水分量≦5000ppm〕であることが好ましい。材料からの水分混入や製造段階における水分混入など考えられるが、最終的にポリイミド前駆体溶液組成物の水分量を5000ppm以下にすることで、フッ素系樹脂のマイクロパウダーや着色材料(顔料)が凝集することなく均一に存在させることが可能となり、より保存安定性に優れたポリイミド前駆体溶液組成物を得ることができる。
【0054】
〔第3発明:ポリイミド前駆体溶液組成物〕
本第3発明のポリイミド前駆体溶液組成物は、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と上記非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体と、着色材料と非水系溶媒とを少なくとも含む着色材量分散体又は着色材料溶液と、ポリイミド前駆体溶液とを少なくとも含むことを特徴とするものであり、上記各成分等の詳述は上記第1発明などと同様であるので、その説明を省略する。
本第3発明では、上記第1、第2発明に較べ、予め、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体と、着色材料と非水系溶媒とを少なくとも含む着色材料分散体又は着色材料溶液を調製したものを用いるものであり、この分散体や溶液を、上記ポリイミド前駆体溶液に所定量添加、混合することなどによりフッ素系樹脂のマイクロパウダー、並びに、着色材料が組成物中に凝集や沈降することなく均一に微粒子分散等したポリイミド前駆体溶液組成物が得られるものである。
【0055】
本第3発明の上記着色材料分散体は、例えば、上述の炭素系黒色顔料、酸化物系黒色顔料、白色顔料等を含む無機顔料、有機顔料を非水系溶媒に分散することで得られるものであるが、必要に応じて、また本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤や分散剤、顔料誘導体(シナジスト)、消泡剤などを用いて分散することができるものである。
分散に用いる装置としては、上述のフッ素系樹脂のマイクロパウダー分散体と同様に、例えば、ディスパー、ホモミキサーなどのミキサー類や、超音波分散機、3本ロール、湿式ボールミル、ビーズミル、湿式ジェットミルなどの分散機などを用いて撹拌、混合、分散することにより、作製することができるものである。
上記着色材料分散体は、分散状態において着色材料(顔料)の動的光散乱法またはレーザー回折・散乱法による体積基準の平均粒子径(50%体積径、メジアン径)が、3μm以下となるものが好ましい。この着色材料(顔料)を3μm以下の粒子径となるように分散することにより、例えば、ディスパー、ホモミキサーなどのミキサー類や、超音波分散機、3本ロール、湿式ボールミル、ビーズミル、湿式ジェットミル、高圧ホモジナイザーなどの分散機を用いて分散することにより、低粘度で長期保存した場合でも安定な分散体を得ることができるものである。
この平均粒子径としては、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下であることが望ましい。より安定な分散体となるからである。
【0056】
本第3発明の上記着色材料溶液は、例えば、上述の油溶性染料、酸性染料、直接染料、塩基性染料、媒染染料、又は酸性媒染染料等の各種染料を非水系溶媒に溶解することで得られるものである。
溶解に用いる装置としては、ディスパー、ホモミキサーなどのミキサー類や、超音波照射装置など、撹拌、混合、溶解が可能な装置であればいずれも用いることが可能であり、溶解性の低い着色材料(染料)を用いる場合には、非水系溶媒を加温しながら撹拌するなどして溶解することもできるものである。
駆体溶液組成物を得ることができる。
【0057】
〔第4発明:ポリイミド前駆体溶液組成物〕
本第4発明のポリイミド前駆体溶液組成物は、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と着色材料と上記非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー着色材料分散体と、ポリイミド前駆体溶液とを少なくとも含むことを特徴とするものであり、上記各成分等の詳述は上記第1発明などと同様であるので、その説明を省略する。
本第4発明では、上記第1、第2、第3発明に較べ、予め、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と着色剤と非水系溶媒とを少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー着色材料分散体を用いるものであり、この分散体を上記ポリイミド前駆体溶液に所定量添加、混合することなどによりフッ素系樹脂のマイクロパウダー、並びに、着色材料が組成物中に凝集や沈降することなく均一に微粒子分散等したポリイミド前駆体溶液組成物が得られるものである。
【0058】
本第4発明の上記フッ素系樹脂マイクロパウダー着色材料分散体は、例えば、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と着色剤とを一緒に非水系溶媒に分散することで得られるものであるが、必要に応じて、また本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤や分散剤、顔料誘導体(シナジスト)、消泡剤などを用いて分散することができるものである。
分散に用いる装置としては、上述のフッ素系樹脂のマイクロパウダー分散体や着色材料分散体と同様に、例えば、ディスパー、ホモミキサーなどのミキサー類や、超音波分散機、3本ロール、湿式ボールミル、ビーズミル、湿式ジェットミルなどの分散機などを用いて撹拌、混合、分散することにより、作製することができるものである。
【0059】
上記フッ素系樹脂マイクロパウダー着色材料分散体は、フッ素系樹脂マイクロパウダーと着色材料の両方が含まれた分散体であるため、フッ素系樹脂マイクロパウダー分散体や着色材料分散体と同様に、単純にその平均粒子径を出すことは難しいが、フィルターやメッシュなどを用いて最大の粒子径が10μm以下となるようにすることが好ましい。より安定な分散体となるからである。
【0060】
本発明では、上記第1発明~第4発明の各発明を実施等することにより、フッ素系樹脂のマイクロパウダー、着色材料が組成物中に凝集や沈降することなく均一に微粒子分散等したポリイミド前駆体溶液組成物が得られるものである。
また、上記第1発明~第4発明においては、上記非水系溶媒を用いるものであるが、他の溶媒と組み合わせて用いることや他の溶媒を用いることもできるものであり、用いるポリイミドの用途(回路基板を含む配線板、カバーレイフィルム、絶縁材料など)により好適なものが選択される。
【0061】
〔第1発明~第4発明の各ポリイミド前駆体溶液組成物より得られるポリイミド、ポリイミドフィルム、ポリイミド絶縁膜などの調製〕
本発明のポリイミド、ポリイミドフィルム、ポリイミド絶縁膜などは、上記で調製した第1発明~第4発明のポリイミド前駆体溶液組成物中の、ポリイミド前駆体をイミド化することにより、フッ素系樹脂、着色材料が均一に微粒子分散等され、顔料や染料によって着色されて、隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性などの機能が付与されていても、高絶縁性で、耐熱性、電気特性(低誘電率、低誘電正接)、加工性などに優れる着色されたポリイミド、ポリイミドフィルム、ポリイミド絶縁膜、カバーレイフィルム、フレキシブル配線板などが得られることとなる。
本発明において、ポリイミドの製造方法としては、例えば、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと、少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と、着色材料と、非水系溶媒と、を少なくとも含むフッ素系樹脂マイクロパウダー着色材料分散体を作製する工程と、テトラカルボン酸二水和物及び/又はその誘導体と、ジアミン化合物と、を少なくとも混合して、ポリイミド前駆体溶液組成物を作製する工程と、該フッ素系樹脂マイクロパウダー着色材料分散体と、該ポリイミド前駆体溶液組成物を混合してポリイミド前駆体溶液組成物を作製する工程と、該ポリイミド前駆体溶液組成物を硬化処理することにより、ポリイミドを得る工程と、を含むことを特徴とするポリイミドの製造方法が挙げられ、また、ポリイミドフィルムの製造方法としては、例えば、上述のポリイミドの製造方法と同様の工程を経て、ポリイミド前駆体溶液組成物を作製した上で、該ポリイミド前駆体溶液組成物を塗工、硬化処理することにより、ポリイミドフィルムを得る工程と、を含むことを特徴とするポリイミドの製造方法が挙げられ、更に、ポリイミド絶縁膜の製造方法としては、例えば、上述のポリイミドの製造方法と同様の工程を経て、ポリイミド前駆体溶液組成物を作製した上で、該ポリイミド前駆体溶液組成物を塗工、硬化処理することにより、ポリイミド絶縁膜を得る工程と、を含むことを特徴とするポリイミド絶縁膜の製造方法が挙げられる。なお、上記各製造方法において、硬化処理(イミド化の方法)は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。
【0062】
例えば、フッ素系樹脂が分散され、所定の着色、例えば、黒色又は白色のポリイミド、ポリイミドフィルム、ポリイミド絶縁材料を作製する場合、ポリイミド用基材、ポリイミドフィルム用基材の表面に上記で得られたポリイミド前駆体溶液組成物を塗布して膜状物(塗膜)を形成させ、該膜状物を加熱処理して、溶媒を除去、硬化処理(イミド化反応)を行うことにより得ることができる。
用いることができる基材としては、例えば、液体や気体を実質的に透過させない程度の緻密構造を有していれば、形状や材質で特に限定されるものではなく、通常のフィルムを製造する際に用いられるそれ自体公知のベルト、金型、ロール、ドラムなどのフィルム形成用基材、その表面にポリイミド膜を絶縁保護膜として形成する回路基板などの電子部品や電線、表面に皮膜が形成される摺動部品や製品、ポリイミド膜を形成して多層化フィルムや銅張積層基板を形成する際の一方のフィルムや銅箔などを好適に挙げることができる。
また、これらの基材に、ポリイミド前駆体溶液組成物を塗布する方法としては、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法、バー塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、スリットコート法などのそれ自体公知の方法を適宜採用することができる。
この基材に塗布されて形成されたポリイミド前駆体溶液組成物からなる膜状物、フィルム、絶縁材料等は、例えば、減圧下又は常圧下で室温以下など比較的低温で加熱する方法で脱泡しても構わない。
【0063】
基材上に形成されたポリイミド前駆体溶液組成物からなる膜状物などは、加熱処理することによって、溶媒を除去し、かつ硬化処理(イミド化)されてポリイミド、ポリイミドフィルム、ポリイミド絶縁材料が形成される。加熱処理は、いきなり高温で加熱処理するよりも最初に100~140℃以下の比較的低温で溶媒を除去し、次いで最高加熱処理温度まで温度を上げてイミド化する加熱処理が好適である。最高加熱処理温度は200~600℃の温度範囲が採用できるが、好ましくは300~500℃、より好ましくは250~500℃の温度範囲で加熱処理することができる。また、加熱処理の代わりに、あるいは加熱処理と併用してアミン系化合物などの触媒を用いてイミド化反応を進めることもできる。さらにまた、イミド化の過程において発生した水を速やかに除去するための脱水剤としてカルボン酸無水物などを用いることもできるものである。
ポリイミド、ポリイミドフィルム、ポリイミド絶縁材料は用途に応じて、その厚さが適宜調整され、例えば、厚みが0.1~200μm、好ましくは3~150μm、より好ましくは5~130μmのポリイミド膜、フィルムが好適に用いられる。加熱温度が250℃よりも低い場合イミド化が十分に進行せず、450℃を超えると熱分解などにより機械特性の低下などの問題が生じてくる。また、膜厚が200μmを超えると溶媒を十分に揮発させることができずに機械特性の低下、あるいは熱処理中に発泡を生じるなどの問題が起こる場合がある。
【0064】
上記第1発明~第4発明の各ポリイミド前駆体溶液組成物から得られる着色ポリイミド膜、着色ポリイミドフィルム、着色ポリイミド絶縁材料等中のフッ素系樹脂のマイクロパウダー濃度は、特に限定されるものではないが、本発明のポリイミド前駆体溶液組成物を硬化させた硬化物の全体質量に対して、好ましくは、5~70質量%、より好ましくは、10~60質量%、更に好ましくは、10~35質量%程度が好適である。フッ素系樹脂のマイクロパウダー濃度が小さすぎるとフッ素系樹脂のマイクロパウダーの添加効果がなく、また、フッ素系樹脂のマイクロパウダー濃度が大きすぎるとポリイミドの機械特性などが低下することになる。
また、着色ポリイミド絶縁膜などの着色ポリイミド絶縁材料等中のフッ素系樹脂の着色材料の濃度は、特に限定されるものではないが、本発明のポリイミド前駆体溶液組成物を硬化させた硬化物の全体質量に対して、好ましくは、0.1~30質量%、より好ましくは、1~20質量%、さらに好ましくは、5~20質量%程度が好適である。着色材料の濃度が小さすぎると、隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性等を発揮せしめるという効果がなく、また、着色材料の濃度が大きすぎるとポリイミドの電気特性、機械特性などが低下することになる。
【0065】
上記第1発明~第4発明の各ポリイミド前駆体溶液組成物から得られる着色ポリイミドフィルム、例えば、顔料として酸化チタンなどの白色顔料を用いて得られた白色のポリイミドフィルム等の白色系ポリイミド材料では、耐熱軽量白色材料、具体的には、LED(発光ダイオード)、有機EL発光の反射材や、金属層白色フィルムの基材として使用でき、また、LEDや有機ELや、他の発光素子を実装するフレキシブルなプリント配線基板などに好適に利用することができる。
また、上記第1発明~第4発明の各ポリイミド前駆体溶液組成物から得られる黒色ポリイミドフィルムなどの黒色ポリイミド材料では、保護する電子部品や実装部品における遮蔽性、光学特性、遮光性に優れるものとなる。
【0066】
〔回路基板を含むフレキシブルプリント配線板〕
本発明の回路基板を含むフレキシブルプリント配線板は、上記第1発明~第4発明の各ポリイミド前駆体溶液組成物から得られる着色ポリイミドフィルムを用いたことを特徴とするものである。
本発明の回路基板を含むフレキシブルプリント配線板は、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)では、上記ポリイミド前駆体溶液組成物から得られる絶縁性のポリイミドフィルムと金属箔をエポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂などの接着剤組成物で貼り合わせて金属箔積層板(CCL)を作製し、その金属箔に回路を施すことで製造することができる。
前記絶縁性のフィルムとなる本発明のポリイミドフィルムの厚さは、十分な電気絶縁性と金属箔積層板の厚さ、および柔軟性などを勘案して、好適な範囲で選択可能であり、好ましくは、5~50μm、より好ましくは、7~45μmが望ましい。
前記接着剤組成物の厚さは、ポリイミドフィルムとの界面密着性、積層板の柔軟性、接着強度などの点から、好ましくは、1~50μm、より好ましくは、3~30μmが望ましい。
前記金属箔としては、導電性を有する金属箔を有するものが挙げられ、例えば、金、銀、銅、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、これらの合金などが例示される。導電性、取扱いの容易性、価格等の観点から、銅箔やステンレス箔が好適に用いられる。銅箔としては、圧延法や電解法によって製造されるいずれのものでも使用することができる。
金属箔の厚さは、電気伝導性、絶縁性フィルムとの界面密着性、積層板の柔軟性、耐折り曲げ性の向上や、回路加工においてファインパターンを形成しやすいという点、配線間の導通性の点などを勘案して好適な範囲が設定でき、例えば、1~35μmの範囲内が好ましく、より好ましくは5~25μmの範囲内、特に好ましくは8~20μmの範囲内である。
また、使用する金属箔は、マット面の表面粗さRz(十点平均粗さ)が0.1~4μmの範囲内であることが好ましく、0.1~2.5μmの範囲内がより好ましく、特に、0.2~2.0μmの範囲内であることが好ましい。
【0067】
このように構成される本発明の回路基板を含むフレキシブルプリント配線板は、絶縁性フィルムとして、上記第1発明~第4発明の各ポリイミド前駆体溶液組成物から得られるポリイミドフィルムを用いることにより、顔料や染料によって着色されて、隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性などの機能が付与されていても、高絶縁性で、耐熱性、電気特性(低誘電率、低誘電正接)、加工性などに優れる回路基板を含むフレキシブルプリント配線板が得られるものとなる。
【0068】
〔カバーレイフィルム〕
次に、本発明のカバーレイフィルムは、上記第1発明~第4発明の各ポリイミド前駆体溶液組成物により得られた絶縁性のポリイミドフィルムと、該ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に接着剤層が形成されたことを特徴とするものである。
用いる接着剤層としては、前記回路基板に用いたエポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂などの接着剤組成物が使用される。
本発明のカバーレイフィルムは、フレキシブルプリント配線板(FPC)用などの表面保護フィルム等として用いるものであり、得られるポリイミドフィルム上に、接着剤層が形成されたものであり、接着剤層上に保護層となる紙やPETフィルムなどのセパレーター(剥離フィルム)が接合されたものである。なお、このセパレーター(剥離フィルム)は、作業性、保存安定性などを勘案して、必要に応じて、設けられるものである。
前記ポリイミドフィルムの厚さは、十分な電気絶縁性と保護性、および柔軟性などを勘案して、好適な範囲で選択可能であり、好ましくは、5~200μm、より好ましくは、
7~100μmが望ましい。前記接着剤組成物の厚さは、絶縁性フィルムとの界面密着性、接着強度などの点から、好ましくは、1~50μm、より好ましくは、3~30μmが望ましい。
【0069】
このように構成される本発明のカバーレイフィルムは、上記第1発明~第4発明の各ポリイミド前駆体溶液組成物より得られるポリイミドフィルム上に、コンマロールコーター、リバースロールコーターなどを用いて塗布により接着剤組成物からなる接着剤層を形成させ、乾燥して半硬化状態(組成物が乾燥した状態またはその一部で硬化反応が進行している状態)にし、次に、上述の保護層となるセパレーター(剥離フィルム)を積層することにより、比誘電率と誘電正接が低く、耐熱性、寸法安定性、電気特性などにも優れた特性を有するカバーレイフィルムを製造することができる。
【0070】
〔電子機器〕
本発明において、電子機器は、上記第1発明~第4発明の各ポリイミド前駆体溶液組成物より得られるポリイミド絶縁材料を用いたものであり、例えば、優れた電気特性(低比誘電率、低誘電正接)、電気絶縁性が要求される各種電子機器、例えば、薄型携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー、薄型ディスプレー、ハードディスク、プリンター、DVD装置をはじめ、各種電子機器の本体や部品などの絶縁材料などに用いることができる。
【0071】
本発明では、上述の第1発明~第4発明のポリイミド前駆体溶液組成物により得られる顔料や染料によって着色されて、隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性などの機能が付与されていても、耐熱性、機械特性、摺動性、絶縁性、低誘電率化、低誘電正接化などの電気特性、加工性に優れるポリイミドやポリイミドフィルム、ポリイミド絶縁材料を用いた上記回路基板を含むフレキシブルプリント配線板、カバーレイフィルム、電子機器以外にも、これらのポリイミドやポリイミドフィルム、ポリイミド絶縁材料を用いて、絶縁膜、配線基板用層間絶縁膜、表面保護層、摺動層、剥離層、繊維、フィルター材料、電線被覆材、ベアリング、塗料、断熱軸、トレー、シームレスベルトなどの各種ベルト、テープ、チューブなどの用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下に、本発明について、更に実施例、比較例を参照して詳しく説明する。なお、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0073】
〔フッ素系樹脂マイクロパウダー分散体、着色材料分散体、ポリイミド前駆体溶液の調製〕
実施例及び比較例の各ポリイミド前駆体溶液組成物に用いるフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体、フッ素系樹脂マイクロパウダー着色材料分散体、着色材料分散体、ポリイミド前駆体溶液を下記に示す各調製法により調製した。
【0074】
(フッ素系樹脂マイクロパウダー分散体の調製)
下記表1に示す配合処方にて、非水系溶媒中に少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤を充分に撹拌混合、溶解した後、フッ素系樹脂のマイクロパウダーとしてPTFEマイクロパウダーを添加して、さらに撹拌混合を行った。その後、得られたPTFE混合液を、横型のビーズミルを用いて、0.3mm径のジルコニアビーズにて分散してフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体Aを調製した。
【0075】
(フッ素系樹脂マイクロパウダー着色材料分散体の調製)
下記表2に示す配合処方にて、非水系溶媒中に少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤を充分に撹拌混合、溶解した後、フッ素系樹脂のマイクロパウダーとしてPTFEマイクロパウダーを、着色材料として黒色顔料又は白色顔料を添加して、さらに撹拌混合を行った。その後、得られたPTFE+顔料混合液を、横型のビーズミルを用いて、0.3mm径のジルコニアビーズにて分散して顔料含有のフッ素系樹脂マイクロパウダー着色材料分散体B、Cを調製した。
【0076】
得られたフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体AのPTFEの平均粒子径をFPAR-1000(大塚電子株式会社製)による動的光散乱法で測定したところ、得られた分散体AのPTFEの平均粒子径は、0.30μmであった。
【0077】
(着色材料分散体の調製)
下記表3に示す配合処方にて、非水系溶媒中に少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤を充分に撹拌混合、溶解した後、着色材料として黒色顔料又は白色顔料を添加して、さらに撹拌混合を行った。その後、得られた顔料混合液を、横型のビーズミルを用いて、0.3mm径のジルコニアビーズにて分散して着色材料分散体D、Eを調製した。
【0078】
(ポリイミド前駆体溶液の調製)
撹拌機と窒素ガス配管を有するガラス製容器に、N,N-ジメチルホルムアミドを400質量部、p-フェニレンジアミンを27質量部、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二水和物を73質量部を添加、混合し、充分に撹拌して、固形分濃度18質量%のポリイミド前駆体溶液を得た。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
〔実施例1~2、参考例1~3及び比較例1~3〕
上記で調製したフッ素系樹脂マイクロパウダー分散体、フッ素系樹脂マイクロパウダー着色材料分散体、着色材料分散体、ポリイミド前駆体溶液を下記表4に示す配合処方で混合した後、充分にディスパーにて撹拌して各ポリイミド前駆体溶液組成物を得た。
得られた各ポリイミド前駆体溶液組成物について下記評価方法により、沈降性、再分散性について評価した。
これらの結果を下記表4に示す。
(沈降性、再分散性の評価方法)
各ポリイミド前駆体溶液組成物について各種粒子(フッ素系樹脂マイクロパウダー、顔料粒子)の沈降状態を室温(25℃)下、30分静置した後、目視で確認し、下記各評価基準で沈降性、再分散性の各状態を官能評価した。
沈降性の評価基準:
○:下部に沈降層が見られないもの
△:下部に沈降層が見られるもの(再分散が容易)
×:下部に沈降層が見られるもの(再分散がしづらい)
再分散性の評価基準:
○:沈降物が撹拌した際に容易に再分散したもの
×:沈降物が撹拌した際に再分散がしづらいもの
【0083】
【0084】
上記表4の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1~2における、酸化チタンを用いているものは若干沈降物が少し見られたが、いずれも容易に再分散し使用性などには問題のないレベルであった。
これに対して、比較例1~3において、比較例1はフッ素系樹脂マイクロパウダー、着色材料(顔料)を含有しない通常のポリイミド前駆体溶液(組成物)であり、沈降性、再分散性の評価はなく、一方、比較例2及び3はフッ素系樹脂マイクロパウダーを含有しない着色材料(顔料)を含有するポリイミド前駆体溶液組成物である。
また、得られた実施例1~2、参考例1~3及び比較例1~3の各ポリイミド前駆体溶液組成物の水分量を測定したところ、カールフィッシャー法による各水分量は、それぞれ、800~3000ppmの範囲内であった。
【0085】
(ポリイミド膜/ポリイミドフィルムの調製)
上記で得た実施例1~2、参考例1~3及び比較例1~3の各ポリイミド前駆体溶液組成物を、基材となるガラス板上にコーターによって塗布し、減圧下、25℃で50分、脱泡及び予備乾燥した後、常圧、窒素雰囲気下で、120℃で45分、150℃で30分、200℃で15分、250℃で10分、400℃で10分加熱処理をして、厚さが30μmのポリイミド膜を形成した。ガラス基板からポリイミド膜をはがし、ポリイミドフィルムを得た。
得られた各ポリイミドフィルムについて、下記各方法により、ポリイミドフィルムの状態、比誘電率、体積抵抗率を評価、測定した。
これらの各評価・測定結果を下記表5に示す。
【0086】
(ポリイミドフィルムの状態の評価方法)
ポリイミドフィルムの状態を目視にて観察し、下記各評価基準で状態を官能評価した。
評価基準:
○:PTFEの凝集物などの異物がなく、平滑な表面が形成されている
×:PTFEの凝集物などの異物が確認される
【0087】
(ポリイミドフィルムの比誘電率の測定方法)
得られた各ポリイミドフィルムをJIS C6481-1996の試験規格に準じて、インピーダンス分析器(Impedence Analyzer)を用いて、25℃、1kHzの周波数で、比誘電率を測定した。
【0088】
(ポリイミドフィルムの体積抵抗率の測定方法)
得られた各ポリイミドフィルムをJIS C2151の試験規格に準じて測定した。
【0089】
【0090】
上記表5の結果から明らかなように、実施例1~2は、ポリイミドのみからなる比較例1と同等の比誘電率であった。一方、比較例2、3は比誘電率を上げているが、実施例1~2では同等または上昇を抑制できていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
有機顔料や無機顔料、染料の着色材料によって着色されて、隠蔽性、光学特性、遮光性や光反射性、意匠性などの機能が付与されていても、高絶縁性で、耐熱性、電気特性(低誘電率、低誘電正接)、加工性などに優れる着色されたポリイミド、ポリイミドフィルムなどが得られ、また、そのポリイミドやポリイミドフィルムを用いた回路基板を含むフレキシブル配線板、カバーレイフィルム、また、絶縁膜、配線基板用相関絶縁膜などのポリイミド絶縁材料を用いた電子機器、並びに、これらのポリイミド、ポリイミドフィルム、ポリイミド絶縁材料を用いた表面保護層、摺動層、剥離層、繊維、フィルター材料、電線被覆材、ベアリング、塗料、断熱軸、トレー、シームレスベルトなどの各種ベルト、テープ、チューブなどに好適に利用される。