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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】ベルトテンショニング装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/12 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
F16H7/12 A
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016181560
(22)【出願日】2016-09-16
(65)【公開番号】P2017075697
(43)【公開日】2017-04-20
【審査請求日】2019-09-17
(31)【優先権主張番号】10 2015 115 750.0
(32)【優先日】2015-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596179058
【氏名又は名称】ムール ウント ベンダー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Muhr und Bender KG
【住所又は居所原語表記】Mubea-Platz 1, D-57439 Attendorn,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ブーヘン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ディブリク
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク フォルマー
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0063531(US,A1)
【文献】特開2011-39384(JP,A)
【文献】米国特許第4307954(US,A)
【文献】特開2008-232304(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2573423(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011003113(DE,A1)
【文献】特開2015-200415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトドライブ用のベルトテンショニング装置であって、
位置が固定された部材に不動に結合可能なベース体(3)と、
前記ベース体(3)に対して旋回軸線(A)を中心にして旋回可能に支持された少なくとも1つのテンショニングアーム(4)と、
前記テンショニングアーム(4)に回転軸線(B)を中心にして回転可能に支持された、ベルトに張力を与えるテンショニングローラ(7)と、
前記テンショニングアーム(4)を周方向においてばね弾性的に支持するばね(6)と、
前記テンショニングアーム(4)を前記ベース体(3)に結合する結合装置(40)と、を備え、前記結合装置(40)は、周方向において延在する少なくとも2つのベース体・結合部分(41,41’,41’’)と、周方向において延在する少なくとも2つのテンショニングアーム・結合部分(42,42’,42’’)とを有し、前記ベース体・結合部分(41,41’,41’’)と前記テンショニングアーム・結合部分(42,42’,42’’)とは、差込み運動および回転運動によって互いに結合されており、
第1のベース体・結合部分(41)と第1のテンショニングアーム・結合部分(42)との間に、第1の接触面領域が形成されており、該第1の接触面領域は、第2のベース体・結合部分(41’,41’’)と第2のテンショニングアーム・結合部分(42’,42’’)との間に形成された第2の接触面領域よりも大きく、
周方向において隣接している2つのベース体・結合部分(41,41’,41’’)の間に、それぞれ1つの凹部(43,43’,43’’)が形成されており、周方向において延在している少なくとも2つのテンショニングアーム・結合部分(42,42’,42’’)は、半径方向の凸部として形成されており、前記テンショニングアーム(4)は、該テンショニングアーム(4)の前記半径方向の凸部が前記ベース体(3)の前記凹部(43,43’,43’’)の周方向領域に配置されている回転位置において、前記ベース体(3)内に軸方向で導入可能であり、
前記ベース体(3)と前記テンショニングアーム(4)との間に軸受装置(5)が設けられており、該軸受装置(5)によって、前記テンショニングアーム(4)は前記ベース体(3)に対して前記旋回軸線(A)を中心にして回転可能に支持されており、前記軸受装置(5)は、前記テンショニングアーム(4)に対応して配置された少なくとも1つの軸受エレメント(31)と、前記ベース体(3)に対応して配置された少なくとも2つの軸受エレメント(30,30’,30”)と、を有しており、該軸受エレメント(30,30’,30”)が、セグメント状に全周にわたって配置されており、前記ベース体(3)の、周方向で隣接する2つの軸受エレメント(30,30’,30”)の間にそれぞれ凹部(43,43’,43”)が形成されていて、該凹部(43,43’,43”)内に、前記テンショニングアーム(4)の半径方向の凸部が導入可能であることを特徴とする、ベルトドライブ用のベルトテンショニング装置。
【請求項2】
前記ベース体(3)の前記軸受エレメント(30’,30”)が、プラスチック材料から製造されていて、前記テンショニングアームの前記少なくとも1つの軸受エレメント(31)が金属材料から製造されている、請求項記載のベルトテンショニング装置。
【請求項3】
前記ベース体(3)の前記軸受エレメント(30,30’,30”)は、前記ベース体(3)のベース材料よりも高い熱伝導性を有する軸受材料から製造されている、請求項1または2記載のベルトテンショニング装置。
【請求項4】
ベルトドライブ用のベルトテンショニング装置であって、
位置が固定された部材に不動に結合可能なベース体(3)と、
前記ベース体(3)に対して旋回軸線(A)を中心にして旋回可能に支持された少なくとも1つのテンショニングアーム(4)と、
前記テンショニングアーム(4)に回転軸線(B)を中心にして回転可能に支持された、ベルトに張力を与えるテンショニングローラ(7)と、
前記テンショニングアーム(4)を周方向においてばね弾性的に支持するばね(6)と、
前記テンショニングアーム(4)を前記ベース体(3)に結合する結合装置(40)と、を備え、前記結合装置(40)は、周方向において延在する少なくとも2つのベース体・結合部分(41,41’,41’’)と、周方向において延在する少なくとも2つのテンショニングアーム・結合部分(42,42’,42’’)とを有し、前記ベース体・結合部分(41,41’,41’’)と前記テンショニングアーム・結合部分(42,42’,42’’)とは、差込み運動および回転運動によって互いに結合されており、
前記テンショニングアーム(4)は、組み立てられた状態において補機の駆動部分が差し込まれる孔(18)を有しており、前記テンショニングアーム(4)の、前記孔(18)を取り囲む壁が、周囲に分配して配置された複数のリブ(19)を備え、該リブ(19)が基部部分(23)において、ヘッド部分(24)におけるよりも大きな厚さを有していることを特徴とする、ベルトドライブ用のベルトテンショニング装置。
【請求項5】
第1のベース体・結合部分(41)と第1のテンショニングアーム・結合部分(42)との間に、第1の接触面領域が形成されており、該第1の接触面領域は、第2のベース体・結合部分(41’,41’’)と第2のテンショニングアーム・結合部分(42’,42’’)との間に形成された第2の接触面領域よりも大きい、請求項記載のベルトテンショニング装置。
【請求項6】
前記第1の接触面領域は、前記第2の接触面領域より少なくとも10%大きく、前記ベース体・結合部分(41,41’,41’’)と前記テンショニングアーム・結合部分(42,42’,42’’)とは、前記テンショニングアーム(4)と前記ベース体(3)とが正確に1つの予め確定された回転位置においてしか互いに差込み可能でないように構成されている、請求項1または記載のベルトテンショニング装置。
【請求項7】
前記テンショニングアーム(4)は、組み立てられた状態において補機の駆動部分が差し込まれる孔(18)を有しており、前記テンショニングアーム(4)の、前記孔(18)を取り囲む壁(13)が、周囲に分配して配置された複数のリブ(19)を備え、該リブ(19)が基部部分(23)において、ヘッド部分(24)におけるよりも大きな厚さを有している、請求項1記載のベルトテンショニング装置。
【請求項8】
前記リブ(19)は前記基部部分(23)において、高さにわたって変化する厚さ(T)を有しており、
変化する厚さを有する前記基部部分(23)の高さは、前記リブ(19)の全高(H)の少なくとも10%であり、
前記リブ(19)は前記ヘッド部分(24)において、高さにわたって一定の厚さを有しており、
一定の厚さを有する前記ヘッド部分の高さは、前記リブ(19)の全高(H)の少なくとも50%であり、
互いに隣接している2つのリブ(19)の間において前記ヘッド部分(24)に形成された最小間隔が、互いに隣接している2つのリブ(19)の間において前記基部部分(23)に形成された最小間隔よりも大きい
請求項または記載のベルトテンショニング装置。
【請求項9】
前記ベース体(3)と前記テンショニングアーム(4)とは、互いに異なった材料から製造されており、両方の部材、前記ベース体(3)と前記テンショニングアーム(4)との少なくとも1つは、少なくとも部分的にガラス繊維強化プラスチックから製造されている、請求項1からまでのいずれか1項記載のベルトテンショニング装置。
【請求項10】
前記ばね(6)は、コイルばねとして形成されていて、該コイルばねのばね軸線は、取付け状態において、前記旋回軸線(A)に対して平行に延びており、前記コイルばねは最多で3つの完全な巻条を有しており、前記コイルばね(6)の軸方向長さ(L6)に対する前記コイルばね(6)の呼び径(D6)の比が、取付け状態において3.0よりも大きい、請求項1から9までのいずれか1項記載のベルトテンショニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトドライブ用のベルトテンショニング装置に関する。ベルトドライブは、一般的に、無端のベルトと少なくとも2つのベルトプーリとを有しており、これらのベルトプーリのうちの1つは、駆動部として機能し、かつ別の1つはベルトドライブの被動部として機能することができる。このようなベルトドライブは、特に自動車の内燃機関において、補機を駆動するのに使用され、このとき第1のベルトプーリは、内燃機関のクランク軸に位置し、ベルトを駆動する。別のベルトプーリは、例えばウォータポンプ、オルタネータまたはエアコンディショニングコンプレッサのような補機に対応して配置されていて、ベルトドライブによって回転駆動させられる。汎用のベルトドライブでは、補機は消費機として設計されており、つまり補機は、クランク軸のベルトプーリによってベルトを介して駆動される。このときクランク軸と、ベルトの循環方向において隣接した、通常はジェネレータである補機との間には、ベルトの弛み側が形成されている。この弛み側においてベルトプーリにおけるベルトの十分な巻掛けを保証するために、ベルトには、ベルトテンショニング装置のテンショニングローラを用いて予荷重が加えられる。
【0002】
欧州特許出願公開第2573423号明細書に基づいて、このような形式の、ベルトドライブ用のベルトテンショニング装置が公知である。このベルトテンショニング装置は、テンショニングアームが旋回可能に支持されているベース体を有している。ベルトテンショニング装置は、テンショニングアームの旋回軸線が組み立てられた状態において補機のベルトプーリの外径の内部に配置されるように構成されている。
【0003】
燃料消費量の低減もしくはCO2エミッションの低減に対する努力に付随して、車両コンポーネントの重量低下に対する要求が現れている。そしてベルトテンショニング装置の分野においても既に、重量低減に対する方策が追求されている。
【0004】
出願人の独国特許出願公開第102014206716.2号明細書に基づいて、ベルトドライブ用のベルトテンショニング装置が公知であり、このベルトテンショニング装置は、ベース体と、このベース体に対して相対的に旋回可能なテンショニングアームと、このテンショニングアームを周方向においてばね弾性的に支持するばねとを有している。ベース体およびテンショニングアームは、少なくとも部分的にプラスチックから製造されているので、ベルトテンショニング装置は全体として僅かな重量を有している。
【0005】
特に、コンパクトな構造を有するベルトテンショニング装置では、エンジン運転からスタータ運転への変化によって生じる、ベルトドライブにおける高い回転変動が、ベルトテンショニング装置における高い摩擦損失、および相応の熱負荷を発生させることがある。
【0006】
本発明の課題は、簡単かつ安価に製造可能であり、かつ良好に放熱が可能であり、これによって特に、スタータジェネレータを備えたベルトドライブにおける使用のための技術的な要求に、長い耐用寿命にわたって耐えることができる、ベルトドライブ用のベルトテンショニング装置を提供することである。
【0007】
第1の解決策による、ベルトドライブ用のベルトテンショニング装置は、位置が固定された部材に不動に結合可能なベース体と、該ベース体に対して旋回軸線を中心にして旋回可能に支持された少なくとも1つのテンショニングアームと、該テンショニングアームに回転軸線を中心にして回転可能に支持された、ベルトに張力を与えるテンショニングローラと、テンショニングアームを周方向においてばね弾性的に支持するばね手段と、テンショニングアームをベース体に結合する結合装置と、を備え、このとき結合装置は、周方向において延在する少なくとも2つのベース体・結合部分と、周方向において延在する少なくとも2つのテンショニングアーム・結合部分とを有し、ベース体・結合部分とテンショニングアーム・結合部分とは、差込み運動および回転運動によって互いに結合されており、このとき第1のベース体・結合部分と第1のテンショニングアーム・結合部分との間に、第1の接触面領域が形成されており、該第1の接触面領域は、第2のベース体・結合部分と第2のテンショニングアーム・結合部分との間に形成された第2の接触面領域よりも大きい。
【0008】
第2の解決策による、ベルトドライブ用のベルトテンショニング装置は、位置が固定された部材に不動に結合可能なベース体と、該ベース体に対して旋回軸線を中心にして旋回可能に支持された少なくとも1つのテンショニングアームと、該テンショニングアームに回転軸線を中心にして回転可能に支持された、ベルトに張力を与えるテンショニングローラと、テンショニングアームを周方向においてばね弾性的に支持するばね手段と、テンショニングアームをベース体に結合する結合装置と、を備え、このときテンショニングアームは、組み立てられた状態において補機の駆動部分が差し込まれる孔を有しており、このときテンショニングアームの、孔を取り囲む壁が、周囲に分配して配置された複数のリブを備え、このとき該リブが基部部分において、ヘッド部分におけるよりも大きな厚さを有している。
【0009】
両方のベルトテンショニング装置に対して言える利点としては、当該ベルトテンショニング装置が良好な放熱を可能にし、かつ簡単に製造可能である、ということが挙げられる。テンショニングアームとベース体とが差込み運動および回転運動によって互いに結合可能であるように、結合装置が構成されていることに基づいて、簡単かつ安価な組立てが達成される。比較的大きな接触面領域によって、もしくは高さにわたって変化する幅を有するリブの構成によって、接触箇所からの良好な放熱が可能になり、その結果、接触面領域は、特に、スタータジェネレータを備えたベルトドライブにおける使用のための技術的な要求に、長い耐用寿命にわたって耐えることができる。
【0010】
もちろん、両方の解決策は、択一的にまたは互いに組み合わせて実現されてもよい。従って第1の解決策は、第2の解決策のリブの構成をも含むことができる。逆に第2の解決策は、第1の解決策における異なった大きさの接触面領域を備えた結合装置の構成をも含むことができる。
【0011】
ベルトテンショニング装置は、第1の可能性によれば、シングルアームテンショニング装置として構成されていてもよく、つまりただ1つのテンショニングアームを有していてもよい。この場合テンショニングアームは、周方向においてばね手段を介してベース体にばね弾性的に支持されている。第2の解決策によれば、ベルト装置は、2アームテンショニング装置として構成されていてもよく、つまり正確に2つのテンショニングアームを有していてもよい。この場合には両方のテンショニングアームは、ばね手段を介して周方向において互いに支持されている。2アームテンショニング装置は、別の補機としてスタータジェネレータが、つまり運転状態に応じてスタータまたはジェネレータとして作動することができる電動機が、ベルトドライブに組み込まれているベルトドライブにおいて使用される。もちろん、本発明の開示の枠内において、1つまたは前記のテンショニングアームに対するすべての記載は、第2のテンショニングアームに対しても同じことが言える。
【0012】
結合装置は、ベース体に対応して配置された複数の結合部分と、テンショニングアームに対応して配置された複数の結合部分とを有し、両方の複合部分は互いに共働する。このときベース体・結合部分とテンショニングアーム・結合部分とは、テンショニングアームとベース体とが差込み運動および回転運動によって互いに結合可能であるように構成されている。従って上に述べた結合は、バヨネットロックの形式で機能するので、ベルトテンショニング装置の簡単な組立て可能性が与えられている。組み立てられた状態においてそれぞれ、ベース体・結合部分と所属のテンショニングアーム・結合部分との間には、接触面領域が形成されている。接触面領域というのは、ベース体・結合部分と所属のテンショニングアーム・結合部分との間における相互の軸方向支持部もしくは相互の面状のオーバラップ部の領域を意味している。
【0013】
本発明の1態様によれば、第1のベース体・結合部分と第1のテンショニングアーム・結合部分との間における第1の接触面領域は、第2のベース体・結合部分と第2のテンショニングアーム・結合部分との間における第2の接触面領域よりも大きい。言い換えれば、第1のベース体・結合部分と第1のテンショニングアーム・結合部分との間における相互のオーバラップ部の面積は、第2のベース体・結合部分と第2のテンショニングアーム・結合部分との間におけるオーバラップ部の面積よりも大きい。好ましくは、第1の接触面領域は、第2の接触面領域より少なくとも10%大きい、特に第2の接触面領域より少なくとも20%、場合によっては少なくとも30%大きい。
【0014】
もちろん、結合装置は、ベース体とテンショニングアームとの間に3つ以上の結合部分を有することも可能であり、このような場合には、相応に多数の接触面領域が形成されている。これら別の領域は、その大きさに関して、第1の接触面領域または第2の接触領域に相当していても、またはそれとは異なった大きさを有していてもよい。
【0015】
結合装置は、好ましくは、テンショニングアームがベース体に、正確に1つの予め設定された回転位置においてだけ差込み可能であるように構成されている。このように構成されていると、組立てが簡単になり、組立て時間が短くなる。このようなエラーを回避する原理は、ポカヨーク(Poka Yoke)とも呼ばれる。具体的には、そのために、結合部分が不均一に全周にわたって分配して配置されている、および/または異なった周方向長さを有しているような構成が可能である。
【0016】
1つの態様によれば、周方向において互いに隣接している2つのベース体・結合部分の間に、各1つの凹部が形成されている。テンショニングアーム・結合部分は、凹部に対応する半径方向の凸部として形成されている。このように構成されていると、テンショニングアームは、テンショニングアームの半径方向の凸部がベース体の凹部の周方向領域に配置されている回転位置において、ベース体内に軸方向に導入可能である。もちろん、結合部分の動作機構的な逆転も可能であり、つまり凹部がテンショニングアームに、かつ半径方向の凸部がベース体に対応して配置されていてもよい。
【0017】
好適な態様によれば、ベース体および/または少なくとも1つのテンショニングアームは、補機の駆動部分が組み立てられた状態において差し込まれる孔を有している。駆動部分は、例えば補機の駆動軸および/またはベルトプーリであってもよい。テンショニングアームの、孔を取り囲む壁は、少なくともその周囲の一部にわたって複数のリブを備えていてもよい。これらのリブは、特に2つの機能を果たし、すなわち一方では、リブは、運転時に発生する摩擦熱をベルトテンショニング装置から放出し、このときリブが高さにわたって変化する厚さを有していると、良好な放熱のために特に好適である。他方においてリブは、ベルトテンショニング装置が固定されている補機への所望の空気供給を促進し、これにより補機を効果的に冷却することができる。リブは、孔の長手方向軸線に関して、真っ直ぐに、角度を成してまたは膨出して延びていてもよい。リブの角度を成した形態には、リブの側面またはリブの一部が長手方向軸線に対して平行に延びていないすべての形状を含むものと理解すべきである。特にリブは、螺旋状にまたはループ状に形成されていてもよい。
【0018】
1つの態様によれば、リブは基部部分において、高さにわたって変化する厚さを有しており、このとき変化する厚さを有する基部部分の高さは、リブの全高の少なくとも10%、特に少なくとも20%である。半径方向内側に向かってリブの自由端の方向に減少する、変化する厚さを備えた比較的長い部分によって、テンショニングアームの熱は、壁領域から極めて良好にリブ内に導入され、かつリブから周囲へと放出されることができる。これにより全体として、ベルトテンショニング装置の熱負荷は、相応に減じられ、耐用寿命は相応に長くなる。リブはヘッド部分において、高さにわたって一定の厚さを有しており、このとき一定の厚さを有するヘッド部分の高さは、例えば、リブの全高の少なくとも50%であってもよい。
【0019】
リブは、旋回軸線に関して、軸方向に延びていてもよい、または軸方向において少なくとも1つのピッチ成分を有していてもよい。さらに別の態様では、横断面で見て、周方向において互いに隣接している2つのリブの間においてヘッド部分に形成された最小間隔は、互いに隣接している2つのリブの間において基部部分に形成された最小間隔よりも大きい。
【0020】
全周にわたって複数のリブが設けられており、このときテンショニングアームの壁は、少なくとも60°の周囲部分にわたって、特に少なくとも90°の周囲部分にわたって設けられている。また、テンショニングアームの壁が、リブを備えた1つの周方向部分だけではなく、リブを備えた複数の周方向部分もしくはセグメントを有するような構成も可能である。さらにまた、テンショニングアームの内壁は、全内周にわたってリブを備えているような構成も可能である。この構成では、全部で20~30のリブが全周にわたって設けられていてもよい。
【0021】
ベース体とテンショニングアームとの間には、軸受装置が設けられており、この軸受装置を用いてテンショニングアームは、ベース体に対して旋回軸線を中心にして回転可能に支持されている。コンパクトな構造形態のためには、特に、ベルトテンショニング装置(テンショニングローラを除く)の軸方向長さに対する軸受直径の比が、1.5よりも大きく、好ましくは2.0よりも大きい。軸受装置は、好ましくは滑り軸受として形成されていて、ベース体に対応して配置された少なくとも1つの第1の軸受エレメントと、テンショニングアームに対応して配置された少なくとも1つの第2の軸受エレメントとを有しており、このとき第1の軸受エレメントと第2の軸受エレメントとの間には摩擦面対が形成されている。特に、軸受装置は、スラスト軸受およびラジアル軸受を含んでいる。スラスト軸受とラジアル軸受とは、機能的に別個に形成されていてもよく、つまりスラスト軸受は、純粋に、テンショニングアームとベース体との間における軸方向力を受け止めるのに用いられ、これに対してラジアル軸受は、純粋に、半径方向力を受け止めるのに用いられる。しかしながらもちろん、組み合わせられたスラスト/ラジアル軸受を使用することも可能である。第1の軸受エレメントと第2の軸受エレメントとは、異なった材料から製造されていてもよい。特に、一方の軸受エレメントは金属材料から製造され、かつ他方の軸受エレメントはプラスチック材料から製造することができ、このときテンショニングアームもしくはベース体に対する対応関係は任意である。
【0022】
別の態様によれば、ベース体の軸受エレメントは、セグメント状に全周にわたって配置されており、もしくは、周方向において互いに隣接している各2つの軸受エレメントの間に、テンショニングアームを差し込むための凹部が形成されている。このように構成されていると、ベース体に対するテンショニングアームの軸方向における組付けが可能になる。さらに、軸受エレメントは、ベース体の一体の構成部分として、ベース体と共に1つの構成ユニットとして予備製造することができる。そのために軸受エレメントは、低摩擦のプラスチック材料から製造されてもよく、このプラスチック材料は、ベース体のベース材料とは異なっていて、ベース体に製造時に射出される。
【0023】
ベース体およびテンショニングアームのための材料は、原則的に任意であり、かつ要求に応じて相応に選択することができる。例えば、テンショニングアームおよび/またはベース体は、金属材料から、例えばアルミニウム鋳造材料から製造することができる。テンショニングアームおよび/またはベース体は同様に、プラスチック材料から製造することも可能である。このときテンショニングアームとベース体とは、同じまたは異なったプラスチックから製造されていてもよいし、または一方の部材をプラスチックから、かつ他方の部材を金属材料から製造することも可能である。
【0024】
テンショニングアームおよび/またはベース体をプラスチックから製造するということには、特に、ベース材料がプラスチック材料であり、このプラスチック材料に、他の材料から成る別のエレメントが組み込まれていてもよい、という可能性が一緒に含まれている。別の態様によれば、ベース体および/またはテンショニングアームは、互いに異なる材料特性を有することができる複数のプラスチック材料から製造されていてもよい。製造は特に、異なったプラスチック材料を1つの型において1回の作業工程で製造する多成分射出成形法によって行うことができる。軸受領域からの良好な放熱のために、ベース材料に、ベース材料の熱伝導性よりも高い熱伝導性を有する添加材料を、添加するようになっていてもよい。ベース体および/またはテンショニングアームのためのベース材料としては、繊維強化プラスチックを、例えばガラス繊維強化されたおよび/または炭素繊維強化されたプラスチックを使用することができる。
【0025】
さらに別の態様では、ベース体に対応して配置された軸受エレメントは、ベース体のベース材料よりも高い熱伝導性を有する軸受材料から製造されている。使用される材料が、テンショニングアーム・軸受エレメントを起点としてベース体・軸受エレメントを介してベース体のベース材料に向かって、低下する熱伝導性を有していると、ベース体への良好な放熱のために特に好適である。
【0026】
ベース体および/またはテンショニングアームのための材料としてプラスチックを使用する場合には、プラスチックによって周囲を射出成形された金属材料から成る少なくとも1つの補強エレメントが設けられていてもよい。少なくとも1つの補強エレメントというのは、ベース体もしくはテンショニングアーム内に1つまたは複数の補強エレメントが設けられていてもよいということを意味する。従ってここでは1つまたは前記補強エレメントについての説明は、もちろんそれぞれ別の補強エレメントに対しても言える。補強エレメントは、例えば、周囲をプラスチック材料によって射出されたブシュとして形成されていてもよい。特に、テンショニングアームは、テンショニングアームをベース体の軸受手段において回転可能に支持する、金属材料製の補強ブシュもしくは軸受エレメントを有することができる。さらに、ベース体は、位置が固定された部材における固定のために、金属材料製の補強ブシュを有することができる。
【0027】
ばね手段は、好ましくは、長手方向軸線を取り囲んで延びる少なくとも1つのまたは正確に1つのばねとして形成されている。好ましくは、ばねはコイルばねとして形成されていて、このコイルばねのばね中心線は、少なくともほぼ旋回軸線Aに対して平行に延びており、このときコイルばねは、最多で3つの完全な巻条を、特に最多で2つの完全な巻条を有している。ベルトテンショニング装置の好適なコンパクトな構造形態のためには、コイルばねの軸方向長さに対するコイルばねの呼び径の比が、取付け状態において、3.0よりも大きい、特に4.0よりも大きい、好ましくは5.0よりも大きい。このように構成されていると、補機の周囲において追加的な構造空間を必要とすることなしに、ベルトテンショニング装置を端面側において補機に取り付けることができるようになる。択一的にばね手段はまた、周方向において1つの完全な巻条よりも僅かにした延在していない、ヨークばねまたはトーションばねとして形成されていてもよい。また、ばね手段が、取り付けられた状態で周方向において旋回軸線Aの周りを延びるばね中心線を有する、1つまたは複数のコイルばねを有するような構成も可能である。このような構成の利点としては、当該構造が、特殊な寸法比に基づいて特にコンパクトな構造を有し、かつプラスチックの使用時に特に僅かな重量を有するということが挙げられる。全体として、ベルトテンショニング装置は、プラスチック材料の使用時には小さな質量慣性を有することになるので、ベルト力(Trumkraft)のスパン幅(Spannweite)が減じられる。
【0028】
次に、図面を参照しながら好適な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係るベルトテンショニング装置の第1実施形態を示す縦断面図である。
図2図1に示したベルトテンショニング装置を軸方向において下から見た図である。
図3図1に示したベルトテンショニング装置の一部を拡大して示す図である。
図4】本発明に係るベルトテンショニング装置の第4実施形態を示す縦断面図である。
図5図4に示したベルトテンショニング装置を軸方向において下から見た図である。
図6図5に示したリブ配置形態の詳細を示す図である。
図7】択一的なリブ構成を備えた別の実施形態による本発明に係るベルトテンショニング装置を詳細に示す図である。
図8】択一的なリブ構成を備えた別の実施形態による本発明に係るベルトテンショニング装置を、軸方向で下から見た図である。
【0030】
以下において一緒に説明する図1図3には、本発明に係るベルトテンショニング装置2の第1実施形態が示されている。
【0031】
ベルトテンショニング装置2は、補機(図示せず)または補機に結合された部材に固定することができるベース体3と、テンショニングアーム4とを有しており、このテンショニングアーム4は、ベース体3に対して軸受装置5を用いて旋回軸線Aを中心にして旋回可能に支持され、かつばね6を介してベース体3に対して周方向に支持されている。ベース体3を固定するために、このベース体3は、半径方向外側に向かって突出する3つのフランジ部分11を有しており、これらのフランジ部分11は、補機における固定のためにねじを差し通すことができる孔を備えている。
【0032】
テンショニングアーム4は、自由端部にテンショニングローラ7を有しており、このテンショニングローラ7は、旋回軸線Aに対して平行な回転軸線Bを中心にして回転可能である。従ってテンショニングローラ7は、ローラ保持体と呼ぶこともできる。テンショニングローラ7は、テンショニングアーム4の軸受ジャーナル8に回転可能に支持されていて、ねじ9を用いてテンショニングアーム4に固定されている。テンショニングローラ7に対して軸方向において隣接して、さらに円板10を認識することができ、この円板10は、軸受12を侵入する汚れに対して保護している。テンショニングアーム4は、軸受装置5を介して軸方向および半径方向において、ベース体3に対して旋回軸線Aを中心にして回転可能に支持されていて、結合装置40を介してベース体3に結合されている。テンショニングアーム4は、少なくともほぼ、軸受装置5と一平面に位置しているので、軸方向における構造空間は僅かである。
【0033】
ばね6は、そのばね中心軸線が旋回軸線Aに対してほぼ平行に延びるコイルばねとして形成されている。コイルばね6の第1端部は、半径方向外側に向かって曲げられていて、ベース体3の相応の接触面に周方向において支持されている。コイルばね6の、反対側に位置する第2端部もまた同様に、半径方向外側に向かって曲げられていて、テンショニングアーム4の相応の接触面に周方向において支持されている。コイルばね6は、ベース体3に対してテンショニングアーム4の応力を生ぜしめ、これによってベルト駆動装置のベルトに対して予荷重が加えられる。
【0034】
コイルばね6は、テンショニングアーム4のための軸受装置5の外側において同軸的に配置されている。このときコイルばね6と軸受装置5とは少なくとも部分区分において軸方向において互いに合致しており、これによって軸方向における構造空間を僅かに保つことができる。コイルばねは、軸方向長さに関して、比較的大きな直径を有している。巻条の数は、1つよりも多くかつ2つよりも少ない。好ましくは、コイルばねの周方向長さは、540°~690°である。コイルばね6の軸方向長さL6に対する呼び径D6の比は、コイルばねが軸方向において予荷重を加えられている、コイルばねの取付け状態において、3.0~9.0、特に5.0~8.0である。もちろん、上に述べた値は、それに制限されたものではない。上に挙げた範囲内において、すべての中間範囲が使用可能である。さらに当然であるが、取付け状態における、上に述べた軸方向長さに対するばね直径の比は、特にばね線材の線材直径にも関連する。線材直径が大きければ大きいほど、コイルばねの軸方向長さは短く設計することができる。
【0035】
ベルトテンショニング装置2もしくはテンショニングアーム4は、長手方向軸線Aに対して同軸的な貫通孔18を有している。このように構成されていることによって、ベース体3は補機に簡単にねじ結合することができ、このとき駆動軸の一端部は、場合によっては貫通孔18内に進入することができる。これにより全体として、軸方向において短い構成を有する配置形態が得られる。少なくとも貫通孔18の一部分において、貫通孔18の最小内径D18は、好ましくは、駆動軸(図示せず)の外径よりも大きく、特にまた、駆動軸に結合されたベルトプーリ(図示せず)の外径よりも大きい。
【0036】
ベース体3は、テンショニングアーム4を支持するためのリング部分25を有している。このリング部分25には、半径方向外側にフランジ部分が接続しており、このフランジ部分は、ばね6のための軸方向における支持面21として働く。フランジ部分からは、複数の固定部分11が半径方向外側に向かって突出しており、これらの固定部分11はそれぞれ、接続部材にベース体3を固定するための孔を有している。固定部分11は、フランジ部分およびばね6に比べて、より長い直径上に位置している。このようにして、ベース体3に対して作用するトルクを良好に支持すること、もしくは接続部材に導入することができる。
【0037】
コイルばね6は、軸方向において予荷重されて、ベース体3の支持面21とテンショニングアーム4の、軸方向において反対側に位置する支持面22との間に、挿入されている。このようにして、テンショニングアーム4は、軸方向においてベース体3から離れる方向に押圧され、このとき前記両方の部分は、結合装置40を介して軸方向において互いに支持し合っている。ばね6のための支持面21は、ベース体3の周方向部分を越えて延びている。このとき支持面21の少なくとも一部は、軸方向において駆動軸と合致する平面に位置している。ベース体3の支持面21は、周方向において、コイルばね6のピッチに合わせられたランプ形状を有していてもよい。
【0038】
ベルトテンショニング装置2は、ベース体3におけるテンショニングアーム4の軸受装置5が補機の視線方向から見てベルト平面の後ろに位置するように構成されている。ベルト平面というのは、組み立てられた状態においてベルトの中心を通って延在する平面のことである。軸受装置5は、ベース体3に対応して配置された1つまたは複数の第1の軸受エレメント30と、テンショニングアーム4に対応して配置された1つの第2の軸受エレメント31とを有している。ベルトテンショニング装置2のコンパクトな構造形態のためには、ベルトテンショニング装置2(テンショニングローラを含まない)の軸方向長さ(L2)に対する軸受直径D5の比が、1.5よりも大きい、好ましくは2.0よりも大きいと、好適である。
【0039】
第1の軸受エレメント30は、半長手方向断面で見て、ほぼC字形に形成されていて、半径方向内側に円筒形部分32を有しており、この円筒形部分32からは、2つのフランジ部分33,34が半径方向外側に向かって突出している。このようにして第1の軸受エレメント30は、ベース体3のリング部分25を形状結合式(formschluessig)に取り囲んで把持している。このとき、テンショニングアーム4に向けられた第1のフランジ部分33は、テンショニングアーム4を第1の軸方向において支持するために、軸方向の軸受面を形成し、これに対して、第1のフランジ部分33から軸方向において間隔をおいて位置する第2のフランジ部分34は、逆向きの第2の軸方向において、テンショニングアーム4のための軸方向における軸受面を形成している。円筒形部分32は、テンショニングアーム4のための半径方向の軸受面を形成している。
【0040】
軸受エレメント30およびベース体3は、特に多成分射出成形によって一体に製造される。このとき軸受エレメント30は、ベース体3とは異なったプラスチック材料から成っている。軸受材料は、耐摩耗性のプラスチック材料、例えば、例えば2000MPa~4000MPaの強度を有する、ポリテトラフルオロエチレン成分(PTFE)を含む高強度のポリアミドから製造されている。これに対してベース材料は、例えば15000MPa~22000MPaの強度を有する、繊維強化ポリアミドから製造されている。多成分射出成形によって、ベース体3と軸受エレメント30とから成る構成ユニットを、簡単かつ安価に、ただ1つの型を用いて1回の作業工程において製造することができる。
【0041】
テンショニングアーム4はスリーブ部分26を有しており、このスリーブ部分26には、軸受ブシュとして形成された軸受エレメント31がプレス嵌めされている。テンショニングアーム4と軸受ブシュ(挿入体)とは、ハイブリッド部材として互いに面で結合されているので、運転中に発生する熱は、面でテンショニングアーム4に導入される。軸受ブシュ31は、特に金属薄板変形部材であり、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金から製造することができる。このとき軸受ブシュのブシュ部分27が、第1の軸受エレメント30の円筒形部分32と共にラジアル軸受を形成しており、これに対して軸受ブシュ31のフランジ部分28は、第1の軸受エレメント30のフランジ部分33と共にスラスト軸受を形成している。このとき軸受ブシュ31のフランジ部分28と第1の軸受エレメント30の所属のフランジ部分33とは、互いに面で接触しており、かつ同様に両方のフランジ部分28,33も所属の部材3,4と面で接触しているので、摩擦箇所からの良好な熱導出が可能になる。同じことは、一方ではテンショニングアーム・結合部分42と面で接触しかつ他方では軸受エレメント30のフランジ部分43と面で接触している、軸受エレメント31の下側のフランジ部分29に対しても言える。
【0042】
特に図2において認識できるように、結合装置40によってテンショニングアーム4はベース体3に結合されている。結合装置40は、バヨネットロックの形式で形成されており、かつ、ベース体3に対応して配置されていて全周にわたって分配して配置された複数の第1の結合部分41,41’,41’’と、該第1の結合部分41,41’,41’’と共働する、テンショニングアーム4に対応して配置された複数の第2の結合部分42,42’,42’’とを有している。組み立てられた状態において、それぞれベース体・結合部分41,41’,41’’と所属のテンショニングアーム・結合部分42,42’,42’’との間には、接触面領域が形成されている。
【0043】
本実施形態では、図2において認識できるように、ベース体3の第1の結合部分41とテンショニングアーム4の第1の結合部分42との間における第1の接触面領域は、第2のベース体・結合部分41’と第2のテンショニングアーム・結合部分42’との間における第2の接触面領域よりも大きく、もしくは第3のベース体・結合部分41’’と第3のテンショニングアーム・結合部分42’’との間における第3の接触面領域よりも大きい。このときベース体3の第1の結合部分41とテンショニングアーム4の第1の結合部分42との間における相互のオーバラップ面は、第2の結合部分と第3の結合部分(41’,42’;41’’,42’’)との間におけるオーバラップ面よりも20%を超える値だけ大きい。このことは次の構成によって実現される。すなわちこのとき、第1のテンショニングアーム・結合部分42は、第2および第3のテンショニングアーム・結合部分42’,42’’よりも大きな周方向延在長さを有している。テンショニングアーム・結合部分とベース体・結合部分との間における接触面ジオメトリの変化によって、特にテンショニングアーム・結合部分とベース体・結合部分との間における、運転時に最大負荷が加えられる接触面対を大きくすることによって、ここにおいて面圧を減じることができ、これによって熱の発生が僅かになり、かつ摩耗が減じられる。
【0044】
ベース体3の結合部分41,41’,41’’は、軸受エレメント30,30’,30’’によって形成されていて、特に軸受エレメント30,30’,30’’のフランジ部分34,34’,34’’の一部である。従って軸受エレメント30,30’,30’’は、2つの機能、すなわちベース体3に対するテンショニングアーム4の回転可能な支持と、テンショニングアーム・結合部分42,42’,42’’の軸方向における支持、ひいては両部材3,4相互の結合という機能を果たす。
【0045】
周方向において互いに隣接している2つのベース体・結合部分41,41’,41’’の間には各1つの凹部43,43’,43’’が形成されている。テンショニングアーム・結合部分42,42’,42’’は、凹部43,43’,43’’に対応する半径方向の凸部として形成されている。テンショニングアーム4は、これによってテンショニングアーム4は、テンショニングアーム4の半径方向の凸部がベース体3の凹部43,43’,43’’の周方向領域に配置されている回転位置において、ベース体3内に軸方向で導入可能である。これによって、テンショニングアーム4とベース体3とを差込み運動および回転運動によって互いに結合できることが可能になる。
【0046】
バヨネット位置とも呼ぶことができる第1の相対回転位置において、ベース体3とテンショニングアーム4とを軸方向において互いに内外に押し込むことができる。テンショニングアーム4の凸部42,42’,42’’が完全に凹部43,43’,43’’を通って貫通案内されると、テンショニングアーム4をベース体3に対して第2の相対回転位置に回転させることができる。この第2の位置においてテンショニングアーム4の凸部42,42’,42’’は、ベース体・結合部分41,41’,41’’にもしくは軸受エレメント30,30’,30’’に軸方向において支持される。テンショニングアーム4とベース体3とは、この位置において互いに軸方向において固定されていて、かつばね6を介して軸方向において互いに対して予荷重を加えられている。両方の部材3,4が再び不所望にバヨネット位置に回動することを阻止するために、回動ストッパとして働く固定ピン(図示せず)が設けられていてもよい。
【0047】
結合装置40は、テンショニングアーム4とベース体3とが第1の回転位置(バヨネット位置)において互いに内外に差込み可能であるように構成されている。これを可能にするために、テンショニングアーム・結合エレメント41,41’,41’’とベース体・結合エレメント42,42’,42’’とは、不規則に全周にわたって分配して配置されていて、正確に1つの相対回転位置においてしか互いに整合しないようになっている。この構成によって、組立てが簡単になり、誤った組立てが阻止される。
【0048】
ベース体3およびテンショニングアーム4のためのベース材料としては、好ましくは、高強度の繊維強化プラスチック、例えばガラス繊維強化されたおよび/または炭素繊維強化されたポリアミドが使用される。ベース体3およびテンショニングアーム4にはさらに、他の材料から成る補強エレメントが設けられている。特にベース体3は、接続フランジ11に、周囲をプラスチックによって射出成形された金属材料から成るブシュ16を有している。テンショニングアーム4は同様に、軸受ジャーナルとして形成された補強ブシュ8を有しており、この補強ブシュ8は、周囲をベース材料によって射出成形されていて、テンショニングローラ7の軸受のための保持体として働く。
【0049】
上において既に述べたように、テンショニングアーム4の貫通孔18は、補機(図示せず)の1つの駆動軸もしくはベルトプーリが、組み立てられた状態において貫通孔18内に差し込まれ得るように構成されている。テンショニングアーム4の、貫通孔18を取り囲む壁13は、全周にわたって分配して配置されたリブ19を備えている。これらのリブ19は特に2つの機能、すなわち一方では、運転時に発生する摩擦熱をテンショニングアーム4から放出するという機能を果たし、かつ他方ではリブ19が、ベルトテンショニング装置2が固定されている補機を効果的に冷却するために、この補機に向かっての所望の空気供給を促進するという機能を果たす。
【0050】
以下において一緒に説明する図4図6には、本発明に係るベルトテンショニング装置2の第2実施形態が示されている。この第2実施形態は、図1図3に示した実施形態に多くの部分が対応しているので、共通の部分に関しては、既に述べた説明を参照するものとする。なお同じもしくは互いに対応する部材に対しては、図1図3におけるのと同じ符号が使用されている。
【0051】
本実施形態の特徴は、テンショニングアーム4の壁13に設けられたリブ19が基部部分23において、ヘッド部分24におけるよりも大きな厚さD23を有しているということにある。肉厚の基部部分23によって、テンショニングアーム4の熱を、壁領域から極めて良好にリブ19に導入し、かつそこから周囲に放出することができる。テンショニングアーム4から表面への過剰なエネルギの経路形成が、リブ19の底部における可能な限り広幅の結合面を介して行われる。これによって熱エネルギを集めることができ、かつ所望のように対流によって周囲に放出することができる。この構造上の処置は、根元コンセプト(Wurzelkonzept)とも呼ぶことができる。これによって全体として、ベルトテンショニング装置2に対する熱負荷が低減され、耐用寿命が相応に長くなる。
【0052】
特に図6から認識できるように、リブ19は基部部分23において高さHにわたって変化する厚さTを有しており、これは、基部部分23が横断面で見て丸く面取りされていることによって実現される。変化する厚さTを有する基部部分23の高さは、本実施形態では、リブ19の全高Hの少なくとも20%である。リブ19は、ヘッド部分24においては高さにわたって一定の厚さを有しており、このとき本実施形態では、一定の厚さを有するヘッド部分24の高さは、リブ19の全高Hの少なくとも50%である。リブ19は軸方向に延びている。ヘッド部分24において周方向において互いに隣接している2つのリブ19の間に形成された最小間隔は、基部部分23に形成された最小間隔よりも大きい。このようにして、ヘッド領域における良好な放熱が保証される。本実施形態では、リブ19はほぼ全周にわたって分配して配置されている。具体的に言えば、それぞれ9つのリブ19を備えた3つのセグメント20が設けられており、このとき各2つのリブセグメント20の間には、間隙が形成されている。
【0053】
図7には、変形例によるリブ形状を備えたベルトテンショニング装置2が示されている。図4図6に示した実施形態によるリブ形状とは異なり、基部部分23は横断面において、(丸く面取りされた形状の代わりに)四角錐台形状に形成されている。その他の点においては、図7に示した実施形態は、図4図6に示した実施形態に相当しているので、その他の詳細に関しては上に述べた記載を参照するものとする。このとき同じもしくは互いに対応する部材に対しては、図4図6もしくは図1図3に示したのと同一符号が使用されている。
【0054】
図8には、さらに変化したリブ配置形態を備えた別の実施形態におけるベルトテンショニング装置2が示されている。この実施形態は、図7もしくは図1図6に示した実施形態に大部分相当しているので、共通の部分に関しては、上に述べた記載を参照するものとする。このとき同じもしくは互いに対応する部材に対しては、図1図6に示したのと同一符号が使用されている。
【0055】
図8に示した本実施形態における特徴は、テンショニングアーム4の壁13が部分周囲領域にだけリブ19を備えていることにあり、つまりただ1つのリブセグメント20だけを有していることにある。このリブセグメント20は、長手方向軸線Aを中心にして90°よりも幾分大きな周囲部分にわたって延在している。
【0056】
もちろん、本発明は図示の実施形態に制限されるものではなく、別の実施形態も可能である。
【0057】
特に、等しくない大きさの接触面領域を備えた結合配置形態を有する、図1図3に示した実施形態は、図4図8に示した実施形態のうちの1つに示したようなリブ配置形態を備えることが可能である。さらに、ベルトテンショニング装置2がカバー円板を備えているような実施形態も可能であり、このカバー円板は、下から軸受装置5もしくは結合装置40に装着され、これによって軸受装置5もしくは結合装置40を汚れの侵入に対して保護することができる。
【0058】
全体として、本発明に係るベルトテンショニング装置2は、良好な放熱、ひいてはこれに関連して長い耐用寿命という利点を提供する。
【符号の説明】
【0059】
2 ベルトテンショニング装置
3 ベース体
4 テンショニングアーム
5 軸受装置
6 ばね
7 テンショニングローラ
8 軸受ジャーナル
9 ねじ
10 シール円板
11 接続フランジ
12 ころがり軸受
13 壁
14 軸方向円板
15 スリーブ付加部
16 ブシュ
17
18 貫通孔
19 リブ
20 セグメント
21 支持面
22 支持面
23 基部部分
24 ヘッド部分
25 リング部分
26 スリーブ部分
27 ブシュ部分
28 フランジ部分
29 フランジ部分
30 軸受エレメント
31 軸受エレメント
32 円筒形部分
33 フランジ部分
34 フランジ部分
40 結合装置
41,41’,41’’ 結合部分
42,42’,42’’ 結合部分
43,43’,43’’ 凹部
A 旋回軸線
B 回転軸線
D 直径
H 高さ
L 長さ
T 厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8