(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】藻類分離システム、藻類分離方法及び藻類製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/01 20060101AFI20220128BHJP
C02F 1/52 20060101ALI20220128BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20220128BHJP
B01J 20/08 20060101ALI20220128BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20220128BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20220128BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20220128BHJP
C12N 1/12 20060101ALN20220128BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
B01D21/01 101A
C02F1/52 Z
C02F1/28 D
B01J20/08 A
B01J20/10 D
B01J20/18 B
B01J20/20 B
B01D21/01 102
C12N1/12 Z
C12M1/00 E
(21)【出願番号】P 2017057871
(22)【出願日】2017-03-23
【審査請求日】2020-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175190
【氏名又は名称】大竹 裕明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 峰彦
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-239382(JP,A)
【文献】特開2001-340847(JP,A)
【文献】特開2002-301484(JP,A)
【文献】実開平02-137996(JP,U)
【文献】特公昭54-023749(JP,B1)
【文献】特開平02-149397(JP,A)
【文献】特開昭59-193192(JP,A)
【文献】特開2000-061208(JP,A)
【文献】特開平10-235118(JP,A)
【文献】特表2015-503325(JP,A)
【文献】特開2002-177990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52-1/56
C02F 1/78
B01D 21/01
C02F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類を含む被処理水に1~120g-O
3/m
3のオゾンを添加することにより、前記オゾンが添加された前記被処理水に含まれる前記藻類を
非分解で凝集させるオゾン添加装置を備える、
藻類分離システム。
【請求項2】
前記被処理水から凝集した前記藻類を沈殿させる沈殿槽をさらに備える、
請求項1に記載の藻類分離システム。
【請求項3】
前記沈殿槽は、底部又は下部側面に、前記沈殿した前記藻類を流出させる流出口を有する、
請求項2に記載の藻類分離システム。
【請求項4】
前記オゾン添加装置は、更に、前記オゾンの添加を停止し、
前記沈殿槽は、前記オゾン添加装置が前記オゾンの添加を停止している間、前記藻類を沈殿させる、
請求項2または3に記載の藻類分離システム。
【請求項5】
前記被処理水を貯留する処理水槽と、
前記オゾンが添加された前記被処理水を、前記処理水槽から前記沈殿槽に導入する導入手段と、を更に備える、
請求項2または3に記載の藻類分離システム。
【請求項6】
前記処理水槽を複数備え、
各処理水槽間において前記被処理水を送水する送水手段をさらに備える、
請求項5に記載の藻類分離システム。
【請求項7】
前記被処理水から前記凝集した前記藻類を分離する分離手段をさらに備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載の藻類分離システム。
【請求項8】
前記被処理水に添加される前記オゾンの気泡を吸着する多孔質材料からなる接触材が、前記被処理水中に配置される、
請求項1から7のいずれか一項に記載の藻類分離システム。
【請求項9】
前記多孔質材料は、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、アルミナのいずれか又はそれらの組合せからなる材料である、
請求項8に記載の藻類分離システム。
【請求項10】
前記オゾン添加装置は、前記被処理水から未使用の前記オゾンを回収し、回収した前記オゾンを前記被処理水に添加する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の藻類分離システム。
【請求項11】
前記被処理水に前記1~120g-O
3
/m
3
のオゾンを添加することにより、前記オゾンが添加された前記被処理水に含まれる前記藻類を非分解で凝集沈殿させる、
請求項1から10のいずれか一項に記載の藻類分離システム。
【請求項12】
藻類を含む被処理水に1~120g-O
3/m
3のオゾンを添加することにより、前記オゾンが添加された前記被処理水に含まれる前記藻類を
非分解で凝集させる、
藻類分離方法。
【請求項13】
藻類を含む被処理水に1~120g-O
3/m
3のオゾンを添加することにより、前記オゾンが添加された前記被処理水に含まれる前記藻類を
非分解で凝集させて前記処理水から分離する、
藻類製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類分離システム及び藻類分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水中で増殖する藻類を分離して水を浄化したり、培養した藻類を水から分離して油分を得る等、生物由来の有機性資源であるバイオマスとして利用したりする技術が開発されている。藻類を水と分離する技術として、凝集剤を添加して沈殿分離する技術の他、粘性物質分泌性微細藻類を添加して凝集沈殿させる技術(例えば、特許文献1を参照)や、低濃度オゾンを使用して曝気を施しながらアオコ等の浮遊物を泡沫浮上分離させる技術(例えば、特許文献2を参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-200250号公報
【文献】特開2003-225654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凝集剤による沈降分離において、凝集剤の添加量が増加すると、凝集剤が藻類をバイオマスとして利用する際の妨害物質となったり、凝集剤の添加量に応じてコストが増大したりする。また、凝集剤の添加量が減少すると十分な凝集効果が得られなくなるため、凝集剤の添加量は、汚濁負荷に応じて制御することが求められる。また、粘性物質分泌性微細藻類による凝集沈殿では、凝集剤として添加される粘性物質分泌性微細藻類の濃度を調整しなければ、目的とする藻類の凝集沈殿効果が十分に得られない場合がある。さらに、オゾンを使用して藻類を浮上分離する場合、継続的に曝気処理を施すため使用される動力は増加する。
【0005】
そこで、本発明は、藻類を沈降分離する際の沈降性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、藻類を含む被処理水に1~120g-O3/m3のオゾンを添加し沈降分離することにした。
【0007】
詳細には、本発明は、藻類分離システムであって、藻類を含む被処理水に1~120g-O3/m3のオゾンを添加するオゾン添加装置と、オゾンが添加された被処理水に含まれる藻類を凝集沈殿させる沈殿槽と、を備える。
【0008】
上記の藻類分離システムであれば、沈殿槽に導入された被処理水中で、藻類がオゾンに反応して凝集することにより沈降性が向上し、凝集した藻類は沈殿槽の底部に沈殿する。藻類の沈降性が向上することで、藻類分離システムは、高濃度の藻類を容易に回収することができる。また、藻類の沈降性が向上することで、脱水性能も向上する。
【0009】
なお、1~120g-O3/m3の量のオゾンでは、藻類自体は分解されない。このため、藻類に取り込まれている窒素やリン等の成分は、藻類の死滅や細胞の破壊によって被処理水中に流出することはなく、藻類とともに分離回収することが可能である。また、藻類分離システムは、藻類に固定化されている二酸化炭素(CO2)も回収することができる
。
【0010】
また、オゾン添加装置は、更に、オゾンの添加を停止し、沈殿槽は、オゾン添加装置がオゾンの添加を停止している間、藻類を凝集沈殿させるものであってもよい。このような藻類分離システムであれば、オゾンを添加するための処理水槽及び処理水槽から沈殿槽への導入手段を備えなくてもよく、簡便なシステムによって藻類を凝集沈殿させることができる。
【0011】
また、藻類分離システムは、被処理水を貯留する処理水槽と、オゾンが添加された被処理水を、処理水槽から沈殿槽に導入する導入手段と、を更に備えるものであってもよい。このような藻類分離システムであれば、処理水槽は、オゾンが添加された被処理水を沈殿槽に送水したあと、次の被処理水を受け入れられるため、連続してオゾンの添加処理を実施することができる。
【0012】
また、藻類分離システムは、処理水槽を複数備え、各処理水槽間において被処理水を送水する送水手段をさらに備えるものであってもよい。このような藻類分離システムであれば、被処理水を各処理水槽に順次送水して、段階的に凝集沈殿させることができる。この場合、オゾンの添加量は、各処理水槽内の被処理水に含まれる藻類の濃度に応じて、処理水槽ごとに変えるようにしてもよい。また、藻類分離システムは、各処理水槽において個別に被処理水を凝集沈殿させることで、1つの処理水槽で処理するよりも多くの被処理水を処理することができる。
【0013】
また、沈殿槽は、底部又は下部側面に、凝集沈殿した藻類を流出させる流出口を有するものであってもよい。このような沈殿槽であれば、凝集沈殿した藻類を効率よく回収することができる。さらに、底部又は下部側面に設けられた流出口から藻類を回収することで、沈殿槽は、藻類の回収中であっても処理水槽から被処理水の導入を受け付けることができる。したがって、沈殿槽は、被処理水の藻類分離処理を連続的に実施することができる。
【0014】
また、藻類分離システムは、被処理水から凝集沈殿した藻類を分離する分離手段をさらに備えるものであってもよい。分離手段は、例えば、濾過、遠心分離、フィルタープレスによる加圧濾過である。1~120g-O3/m3のオゾンを添加することにより、被処理水中の藻類を分離する際の濾過性能及び脱水性能が向上するため、藻類分離システムは、藻類を効率よく回収することができる。
【0015】
また、藻類分離システムは、被処理水に添加されるオゾンの気泡を吸着する多孔質材料からなる接触材が、被処理水中に配置されるものであってもよい。このような処理水槽であれば、使用されずに排出されるオゾンの量は抑制される。さらに、多孔質材料に吸着したオゾンによって藻類の凝集は促進される。なお、多孔質材料は、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、アルミナのいずれか又はそれらの組合せからなる材料であってもよい。粒状の多孔質材料は、ネット等に入れて被処理水中に配置することができる。
【0016】
また、オゾン添加装置は、被処理水から未使用のオゾンを回収し、回収したオゾンを被処理水に添加するものであってもよい。このようなオゾン添加装置であれば、未使用のオゾンを有効に利用することができる。
【0017】
なお、本発明は、方法の側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、藻類を含む被処理水に1~120g-O3/m3のオゾンを添加し、オゾンが添加された被処理水に含まれる藻類を凝集沈殿させる藻類分離方法であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、藻類を沈降分離する際の沈降性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係る藻類分離システムの概略構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、接触材を配置する処理水槽を例示する図である。
【
図3】
図3は、実施例1における被処理水中の気泡の発生を示す写真である。
【
図4】
図4は、実施例1における藻類の凝集状態を示す写真である。
【
図5】
図5は、オゾン添加量に対する被処理水中のクロロフィルaの濃度の変化を 示すグラフである。
【
図6】
図6は、変形例1に係る藻類分離システムの概略構成を例示する図である。
【
図7】
図7は、変形例2に係る藻類分離システムの概略構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態様を例示したものであり、本願発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0021】
<実施形態>
図1は、実施形態に係る藻類分離システムの構成を例示する図である。藻類分離システム10は、処理水槽1、オゾン添加装置2、沈殿槽3、及び導入手段4を備える。
【0022】
処理水槽1は、藻類を含む被処理水を受け入れて貯留する。処理水槽1に貯留された被処理水は、オゾン添加装置2によってオゾンが添加されると、導入手段4により沈殿槽3に送水される。オゾン添加後の被処理水が沈殿槽3に送水されると、処理水槽1は、新たな被処理水を受け入れ、連続してオゾンの添加処理をすることができる。
【0023】
オゾン添加装置2は、処理水槽1に貯留された被処理水にオゾンを添加する。オゾン添加量は、1~120g-O
3/m
3の範囲であることが好ましい。オゾン添加量については、実施例中、
図5及び表1の説明において詳述される。オゾンを被処理水中に供給する方法は、散気管、ディフューザ、マイクロバブル等の公知の技術を用いることができる。また、オゾンは放電式、紫外線式等の公知の技術によって発生させることができる。オゾンの原料となるガスは、空気又は酸素のいずれであってもよい。
【0024】
なお、オゾン添加装置2は、塩酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、硫酸、硝酸、過酸化水素、リン酸等の無機酸、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、フマル酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、イソクエン酸等の有機酸のいずれか、又はこれらの二以上を組み合わせた触媒又は光触媒を、オゾンとともに被処理水に添加してもよい。また、オゾンが添加された被処理水に、超音波、マイクロ波、赤外線、紫外線等が照射されてもよい。これにより、オゾンによる凝集効果は促進され、より少ない添加量で沈降性向上の効果を得る事が可能である。
【0025】
沈殿槽3は、処理水槽1から導入された被処理水中の藻類を凝集沈殿させる。沈殿槽3は、底部又は下部側面に、凝集沈殿した藻類を流出させる流出口が設けられてもよい。沈殿槽3は、凝集沈殿した藻類を流出口から回収することで、処理水槽1から連続してオゾンが添加された被処理水を導入することができる。沈殿槽3での滞留時間については、求める上澄み液水質と相関がある。即ち、沈殿槽滞留時間を長時間にするほど、藻類が沈殿し、上澄み水が清浄になる。
【0026】
導入手段4は、処理水槽1でオゾンが添加された被処理水を沈殿槽3に導入する手段である。導入手段4は、例えば、処理水槽1と沈殿槽3とを接続する配管を通して、被処理
水をポンプによって処理水槽1から沈殿槽3に送水する。
【0027】
(接触材)
図2は、接触材を配置する処理水槽を例示する図である。処理水槽1は、添加されるオゾンを効率よく使用するため、被処理水中に接触材5を配置するものであってもよい。
図2に示すように、オゾン添加装置2に接続される供給部2Aは、被処理水中にオゾンを供給する。被処理水に添加されるオゾンは完全には溶解されず、溶解しなかったオゾンは使用されずに水面から放出される。このため、
図2に示すように処理水槽内に接触材5を配置し、接触材5にオゾンの気泡を吸着させることで、オゾンの水面からの放出は抑制される。また、接触材5上でオゾンと藻類との反応は促進される。接触材5は、オゾンの気泡を吸着可能な多孔質材料であればよく、例えば、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、アルミナのいずれか、又はそれらの組合せからなる材料である。
【0028】
<<実施例>>
〔実施例1〕
実施例1は、実施形態に係る藻類分離システム10において、藻類を含む被処理水にオゾンを添加する実験例である。実験は、処理水槽1に窒素及びリン等の液体肥料を入れて、屋外に放置することで藻類を増加させた。なお、液体肥料は、藻類の増殖とともに減少するため、実験中、適宜追加した。実験は、オゾンを添加するオゾン添加系統及び空気を添加する比較系統により実施した。実施例1では、沈殿槽3は用意せず、藻類は処理水槽1において凝集沈殿させた。
【0029】
図3及び
図4は、実験終了後のオゾン添加系統と比較系統とを比較する写真である。
図3は、実施例1における被処理水中の気泡の発生を示す写真である。左側の処理水槽1は比較系統、右側の処理水槽1はオゾン添加系統の実験終了後の状態を示す。右側のオゾン添加系統の処理水槽1では、藻類にオゾンを添加することによって藻類の粘性が高まり、藻類は、粘性によって凝集しフロック状になったと考えられる。なお、水面に表れる気泡の大きさは、右側のオゾン添加系統の方が左側の比較系統よりも大きく、また、オゾン添加系統の方が、気泡が消えにくい状態であることから、オゾンの添加により藻類の粘性が高まったことが示される。
【0030】
図4は、実施例1における藻類の凝集状態を示す写真である。左側の容器は比較系統の被処理水、右側の容器はオゾン添加系統の被処理水を入れて0.5時間程度凝集沈殿させた状態を示す。比較系統の被処理水中の藻類は、一部が沈殿するものの、凝集した塊はオゾン添加系統での藻類の塊よりも細かく、オゾン添加系統のような沈降性の向上は見られなかった。一方、オゾン添加系統では藻類がフロック状となり、沈降性が向上した。なお、オゾン添加系統の容器において、沈殿槽滞留時間を長くすることで、上澄み水はより清浄となる。
【0031】
〔実施例2〕
実施例2は、好適なオゾンの添加量を調べるため、被処理水に対するオゾン添加量を変えて、実施例1と同様の実験をした。被処理水に対するオゾン添加量は、藻類が死滅することなく凝集沈殿する範囲であることが好ましい。藻類が死滅しているか否かは、被処理水中のクロロフィルaの濃度を分析することにより判断することができる。クロロフィルaは、緑色色素であって、生きている藻類量と相関があるとされている。藻類が増加するとクロロフィルa濃度は上がり、死滅するとクロロフィルa濃度は下がる。実施例2は、オゾン添加量の増加に伴うクロロフィルa濃度の変化を分析し、藻類が死滅することなく凝集沈殿するようなオゾン添加量の範囲を調べた。なお、クロロフィルaの濃度は、上水試験方法(日本水道協会)に従って測定した。
【0032】
図5は、オゾン添加量に対する被処理水中のクロロフィルaの濃度の変化を示すグラフである。オゾン添加系統において、オゾン添加後、藻類が沈殿し上澄みが見られたが、処理水槽1内の被処理水を攪拌し、藻類も含めたクロロフィルa濃度を測定した。また、比較系統においても、実験終了後、処理水槽1内の被処理水を攪拌し、藻類も含めたクロロフィルa濃度を測定した。
図5のグラフの縦軸は、クロロフィルa濃度のオゾン添加系統/比較系統の比率である。横軸は、オゾン添加量である。オゾン添加量を変えて実験をした結果、添加量が124g-O
3/m
3を超えると、オゾン添加系統の比較系統に対するクロロフィルa濃度の比率が低下していった。即ち、124g-O
3/m
3を超える量のオゾンを添加することで、藻類は破壊されることがわかった。したがって、藻類を死滅させずに凝集沈殿させるためには、オゾン添加量は、120g-O
3/m
3以下としておくことが好ましい。
【0033】
〔実施例3〕
実施例3は、実施例2と同様に、被処理水に対するオゾン添加量を変えて凝集沈殿の実験をした。実験は、オゾンを添加するオゾン添加系統と空気のみを添加する比較系統によって実施され、目視にてオゾン添加系統を比較系統と比較し、オゾン添加系統における凝集性の向上の有無を確認した。実施例3は、オゾン添加量を減少させ、藻類が凝集沈殿しなくなる範囲を調べた。
【0034】
表1は、オゾン添加量と藻類の凝集との関係を示す。表1の例は、藻類としてアオコの凝集の様子を観察した結果を示す。
【0035】
【0036】
表1において、“×”は、アオコの凝集が確認されなかったことを示す。“○”は、アオコの凝集が確認されたことを示す。“△”は、“○”の場合程、即ち、オゾン添加量が1g-O3/m3以上の場合程の凝集は確認されなかったが、多少の凝集が見られたことを示す。オゾン添加量が0.8g-O3/m3程度から、藻類の凝集性の向上が確認された。したがって、藻類を凝集沈殿させるためには、オゾン添加量は、1g-O3/m3以上としておくことが好ましい。
【0037】
実施例2及び実施例3の結果より、藻類を死滅させることなく、藻類の沈降性を向上させるためには、オゾン添加量は、1~120g-O3/m3の範囲であることが好ましいことがわかった。オゾン添加量を1~120g-O3/m3の範囲内とすることで、藻類分離システム10は、死滅していない高濃度の藻類を分離回収することが可能となる。
【0038】
〔実施例4〕
実施例4は、実施例1と同様の実験を実施し、実験終了後の被処理水を濾過することで
、濾過性能を調べた。実験は、定量濾紙(47mmφ5C)を使用して、5分間の濾過量を計測することにより実施した。表2は、比較系統とオゾン添加系統の濾過量を示す。
【0039】
【0040】
比較系統における濾過量が10ml/5minであるのに対し、オゾン添加系統の濾過量は、19ml/5minであった。オゾンの添加により、藻類の濾過性能は向上することがわかった。また、濾過性能の向上により、凝集沈殿した藻類の脱水性能も向上する。脱水性能が向上することで、脱水のために使用されるエネルギー消費量は抑制される。
【0041】
<実施形態の作用効果>
本実施形態の藻類分離システム10によれば、オゾンが添加され、沈殿槽3に導入された被処理水は、藻類の沈降性が向上し、高濃度の藻類が容易に回収可能である。また、藻類の沈降性の向上に伴い、脱水性能も向上する。さらに沈殿槽3が処理水槽1とは別に設けられるため、連続した藻類分離処理が可能である。
【0042】
また、処理水槽1内に接触材5を配置することで、使用されずに処理水槽1から排出されるオゾンの量は抑制される。さらに、接触材5に吸着したオゾンによって藻類の凝集は促進される。さらに、使用されずに処理水槽1から排出されるオゾンを回収し、回収したオゾンを被処理水に戻すことで、未使用のオゾンは有効に利用することができる。
【0043】
<変形例1>
(沈殿槽を備えない藻類分離システム)
上述の実施形態では、藻類分離システム10は、オゾンが添加された被処理水を沈殿槽3に導入し、沈殿槽3において藻類を凝集沈殿させた。変形例1では、藻類分離システム10は、沈殿槽3を備えず、処理水槽1において藻類を凝集沈殿させる。変形例1について、上述の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0044】
図6は、変形例1に係る藻類分離システムの概略構成を例示する図である。変形例1に係る藻類分離システム101は、沈殿槽31、オゾン添加装置21を備える。
【0045】
沈殿槽31は、オゾン添加装置21によって1~120g-O3/m3のオゾンが添加されると、沈殿槽31内で藻類を凝集沈殿させる。オゾン添加装置21は、沈殿槽31に貯留された被処理水にオゾンを添加すると、オゾンの供給を停止する。なお、オゾンを添加する際の触媒等の添加、赤外線等の照射は、実施形態と同様である。また、沈殿槽31において凝集沈殿した藻類は、実施形態の沈殿槽3と同様に、沈殿槽31の底部又は下部側面に設けられた流出口から回収されるようにしてもよい。さらに、沈殿槽31は、実施形態の処理水槽1と同様に、被処理水中に接触材5を配置してもよい。
【0046】
変形例1に係る藻類分離システム101は、オゾンの添加と藻類の凝集沈殿を交互に実施することで藻類を分離回収するが、沈殿槽31において、被処理水の流入口と処理水の流出口とを所定の間隔を空けて設置することにより、連続的に藻類を分離回収することも可能である。即ち、沈殿槽31の流入口付近でオゾンを添加し、オゾンが添加された被処理水を流出口付近に移送して凝集沈殿させればよい。
【0047】
このような変形例1によれば、藻類分離システム101は、実施形態にかかる沈殿槽3及び沈殿槽3への被処理水の導入手段4を備えなくてもよく、沈殿槽31を備える簡便なシステムによって藻類を凝集沈殿させることができる。
【0048】
<変形例2>
(処理水槽を複数備える藻類分離システム)
上述の実施形態では、藻類分離システム10は、1つの処理水槽1においてオゾンを添加し、オゾン添加後の被処理水を沈殿槽3に導入した。変形例2では、藻類分離システム10は、処理水槽1を複数備える。変形例2について、上述の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0049】
図7は、変形例2に係る藻類分離システムの概略構成を例示する図である。変形例2に係る藻類分離システム102は、処理水槽121、処理水槽122、オゾン添加装置22、沈殿槽3、導入手段4及び送水手段6を備える。沈殿槽3及び導入手段4は、実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0050】
処理水槽121は、被処理水を受け入れる。被処理水は、1~120g-O3/m3のオゾンが添加されると、送水手段6により処理水槽122に送水される。処理水槽122は、処理水槽121から被処理水を受け入れ、オゾン添加装置22によってオゾンが添加されると、導入手段4により被処理水を沈殿槽3に導入する。被処理水は、処理水槽121及び処理水槽122(以下、総称して処理水槽12ともいう)において段階的にオゾンが添加された後、沈殿槽3に導入される。各処理水槽におけるオゾンの添加量は、藻類の凝集状態に応じて変更されてもよい。また、処理水槽の数は2に限られず、藻類分離システム102は、2より多くの処理水槽12を備えるようにしてもよい。藻類分離システム102は、被処理水を段階的に処理することで、各処理段階における藻類の凝集状態に応じでオゾンの添加量を調整することができる。
【0051】
なお、
図7は、被処理水を複数の処理水槽12で段階的に処理する例を示すが、各処理水槽12は、導入手段4によって、それぞれが沈殿槽3に接続され、個別に被処理水を処理するようにしてもよい。この場合、藻類分離システム102は、処理水槽12の数に応じた量の被処理水を処理することができる。また、藻類分離システム102は、各処理水槽12内の被処理水に含まれる藻類の濃度に応じて、各処理水槽12に対するオゾンの添加量を調整することができる。
【0052】
オゾン添加装置22は、処理水槽12に貯留された被処理水にオゾンを添加する。
図7の例では、オゾン添加装置22は、処理水槽122内の被処理水にオゾンを添加する。オゾン添加装置22は、処理水槽122において使用されなかったオゾンを回収し、回収したオゾンを、ブロワ等により処理水槽121内の被処理水に添加する。処理水槽121へのオゾンの添加量は、モータの回転速度や調節弁等によりブロワの風量を調節することで制御することが可能である。処理水槽121において使用されなかったオゾンは、空中に排気される。
【0053】
なお、
図7の例と異なり、オゾン添加装置22は、まず、処理水槽121にオゾンを添加し、使用されなかったオゾンを処理水槽122に添加するようにしてもよい。また、藻類分離システム102は複数のオゾン添加装置22を備え、各処理水槽12は、それぞれに接続されたオゾン添加装置22からオゾンの供給を受けるようにしてもよい。オゾンを添加する際の触媒等の添加、赤外線等の照射は、実施形態と同様である。各処理水槽12は、実施形態と同様に、被処理水中に接触材5を配置してもよい。
【0054】
このような変形例2によれば、藻類分離システム102は、被処理水を各処理水槽12に順次送水して、段階的に凝集沈殿させることができる。また、藻類分離システム102は、各処理水槽12がそれぞれ個別に被処理水を凝集沈殿させることで、1つの処理水槽12で処理するよりも多くの被処理水を処理することができる。
【符号の説明】
【0055】
10,101,102・・藻類分離システム:1,11,12,121,122・・処理水槽:2,21,22・・オゾン添加装置:3・・沈殿槽:4・・導入手段:5・・接触材:6・・送水手段