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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220113BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A61B5/055 311
G01N24/08 510Y
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017114619
(22)【出願日】2017-06-09
(65)【公開番号】P2017217488
(43)【公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-04-27
(31)【優先権主張番号】15/179,014
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジェイ・ウィートン
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0091567(US,A1)
【文献】国際公開第2011/148783(WO,A1)
【文献】特開2005-288025(JP,A)
【文献】特開平04-208134(JP,A)
【文献】特開2009-291484(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0169275(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00 - 24/14
G01R 33/28 - 33/64
CSDB(日本国特許庁)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング信号のADC(Analog Digital Conversion)収集の実行から、次のTR(Repetition Time)に係るRF(Radio Frequency)パルスの印加まで、同一の極性かつ略同一の振幅で、リードアウト傾斜磁場を印加するパルスシーケンスを実行するシーケンス制御部を備え、
前記リードアウト傾斜磁場は、イメージングボリュームを選択するための傾斜磁場としての役割を含んで印加される磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
磁気共鳴イメージング信号のADC(Analog Digital Conversion)収集の実行から、次のTR(Repetition Time)に係るRF(Radio Frequency)パルスの印加まで、同一の極性かつ略同一の振幅で、リードアウト傾斜磁場を印加するパルスシーケンスを実行するシーケンス制御部を備え、
前記ADC収集は、エコー時間(Echo Time)の前に開始される磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
磁気共鳴イメージング信号のADC(Analog Digital Conversion)収集の実行から、次のTR(Repetition Time)に係るRF(Radio Frequency)パルスの印加まで、同一の極性かつ略同一の振幅で、リードアウト傾斜磁場を印加するパルスシーケンスを実行するシーケンス制御部を備え、 前記シーケンス制御部は、ラジアル収集を用いて前記パルスシーケンスを実行し、
前記リードアウト傾斜磁場は、更に、次のTRの前記ラジアル収集に係るプレワインダー傾斜磁場としての役割を担う磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
磁気共鳴イメージング信号のADC(Analog Digital Conversion)収集の実行から、次のTR(Repetition Time)に係るRF(Radio Frequency)パルスの印加まで、同一の極性かつ略同一の振幅で、リードアウト傾斜磁場を印加するパルスシーケンスを実行するシーケンス制御部を備え、 前記シーケンス制御部は、音響伝達関数が最小となるように最適化された振幅で、前記リードアウト傾斜磁場を印加する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
磁気共鳴イメージング信号のADC(Analog Digital Conversion)収集の実行から、次のTR(Repetition Time)に係るRF(Radio Frequency)パルスの印加まで、同一の極性かつ略同一の振幅で、リードアウト傾斜磁場を印加するパルスシーケンスを実行するシーケンス制御部を備え、
前記ADC収集の開始のタイミングは、RFパルスの印加の後かつエコー生成の前であり、前記エコー生成の間、前記ADC収集が継続される、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
磁気共鳴イメージング信号のADC(Analog Digital Conversion)収集の実行から、次のTR(Repetition Time)に係るRF(Radio Frequency)パルスの印加まで、同一の極性かつ略同一の振幅で、リードアウト傾斜磁場を印加するパルスシーケンスを実行するシーケンス制御部を備え、
前記パルスシーケンスは、SSFP(Steady-State Free Precession)法のパルスシーケンスを含んだパルスシーケンスである磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
RF(Radio Frequency)パルスを選択する役割を果たすとともに、ADC(Analog Digital Conversion)収集の読み出しを担う単一のリードアウト傾斜磁場を、1つのTR(Repetition Time)あたり1個印加するパルスシーケンスを実行するシーケンス制御部を備える磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージングにおいて、撮像中に発生する音響ノイズは、患者の不快感などにつながるため、低減されるのが望ましい。これらの音響ノイズは、例えば、傾斜磁場コイルに供給される電流に起因して発生する。
【0003】
磁気共鳴イメージング装置に印加するパルスシーケンスを最適化することにより、音響ノイズを低下させる方法として、ゆっくりとした傾斜磁場振幅の変化(すなわち、スルーレート)を作り出す方法がある。
【0004】
しかし、この方法では、TR(Repetition Time))当たりの傾斜磁場遷移の回数が変化しないので、音響ノイズの低下が部分的な低下にとどまる場合もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Hennel等、 「‘Silent’ MRI Soft Gradient Pulse」、Magnetic Resonance in Medicine、1999年、42巻、p6~10
【文献】Segbers等、「Shaping and Timing Gradient Pulses to Reduce MRI Acoustic Noise」、Magnetic Resonance in Medicine、2010年、64巻、p546~553
【文献】Stehning等、「Fast Isotropic Volumetric Coronary MR Angiography Using Free-Breathing 3D Radial Balanced FFE Acquisition」、Magnetic Resonance in Medicine、2004年、62巻、p197~203
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、音響ノイズを低下させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、シーケンス制御部を備える。シーケンス制御部は、磁気共鳴イメージング信号のADC(Analog Digital Conversion)収集の実行から、次のTR(Repetition Time)に係るRFパルスの印加まで、同一の極性かつ略同一の振幅で、リードアウト傾斜磁場を印加するパルスシーケンスを実行する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置を表す図である。
図2図2は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が実行するパルスシーケンスの一例である。
図3図3は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が実行するパルスシーケンスの一例である。
図4図4は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1に示すMRIシステム(磁気共鳴イメージング装置)は、ガントリ10(概略断面で示す)と、これに接続された各種のMRIシステム構成要素20とを有する。少なくともガントリ10は、通常はシールドルーム内に配置される。図1に示すMRIシステムの構造は、実質的に同軸の円筒形に配置された静磁場B磁石12と、Gx、Gy、およびGzの傾斜磁場コイル14のセットと、大型の全身用RFコイル(Whole Body RF Coil:WBC)16の集まりとを有する。この円筒形に配置される要素の横軸に沿って、患者用寝台11によって支持された被検体9の関心領域(Region Of Interest:ROI)の解剖学的構造を実質的に取り囲むように、イメージングボリューム18がある。
【0011】
いくつかの実施形態では、小型のアレイRFコイル(図示せず)は、イメージングボリューム18が小型のアレイRFコイルに取り囲まれた領域を含むように、被検体9の一部分に取り付けられる。当業者には明らかなように、表面コイル等のように、全身用コイル(Whole Body Coil:WBC)と比較して小さいコイルやアレイコイルは、特定の身体部分(例えば、腕、肩、肘、手首、膝、脚、胸、背骨等)に合わせて設計されることが多い。以下、そのような小型RFコイルを、アレイコイル(Array Coil:AC)またはフェーズドアレイコイル(Phased Array Coil:PAC)と呼ぶ。これらは、イメージングボリューム内にRF(Radio Frequency)信号を送信するよう構成された少なくとも1つのコイルと、イメージングボリューム18からRF信号を受信するよう構成された1つまたは複数の受信コイルとを含んでもよい。
【0012】
MRI(Magnetic Resonance Imaging)システム制御部22は、ディスプレイ24、キーボード26、およびプリンタ28に接続された入出力ポートを有する。当然のことながら、ディスプレイ24は、制御入力もできるようにタッチスクリーンタイプのものであってもよい。
【0013】
MRIシステム制御部22またはMRIシステム制御部22に接続されたコンピュータを操作して、インストール済みのソフトウェアプログラムに従って、MRIシーケンス制御部30(シーケンス制御部)にパルスシーケンスについての情報を提供し、かつ/またはシステム全体の操作を管理できる。MRIシステム制御部22は、例えば、自動音声合成技術を使用して生成される音声メッセージによって息止め等のタスクを行うように患者に指示する構成要素としての役割を果たすこともできる。
【0014】
MRIシステム制御部22はMRIシーケンス制御部30に接続され、MRIシーケンス制御部30は、Gx、Gy、およびGzの傾斜磁場コイルドライバ32、ならびにRF送信部34および送受信スイッチ(T/R)36(同じRFコイルが送信と受信の両方に使用される場合)を制御する。MRIシーケンス制御部30は、MRIイメージング(核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)イメージングとしても知られている)技術を実装するための適切なプログラムコード構造38を含む。MRIイメージング技術は、例えば、パラレルイメージングや他のイメージングシーケンスを含みうる。
【0015】
パルスシーケンス情報は、パルスシーケンスに従って、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ32、ならびにRF送信部34および送信/受信スイッチ36(送受信両方のために同じRFコイルを使用する場合)を操作するために必要とされる情報を含む。このような情報は、xコイル、yコイル、およびzコイルに印加されるパルス電流の強度、持続期間、および印加タイミングを含む。デューティサイクルまたはTR(Repetition Time)もまた、MRIシステム制御部22および/またはMRIシーケンス制御部30により制御される。パルスシーケンスの送信、デューティサイクル等は、例えば、図2および図3に関連して記述される3D等方性収集等であるが、これに限定されない。例えば、放射状収集等の信号収集パターンのためのプログラムコードに基づいて、MRIシステム制御部22、MRIシーケンス制御部30、および/またはMRIデータプロセッサ42によって制御されてよい。
【0016】
MRIシステムは、ディスプレイ24に送られる処理画像データを作成するために、入力をMRIデータプロセッサ42に送るRF受信部40を有する。また、MRIデータプロセッサ42は、システム設定パラメータ46、プログラムコード構造44およびプログラム/データ格納部50にアクセスするように構成される。MRIプログラムコード構造44および50は、MRI画像を再構成する制御論理に加えて、傾斜磁場コイル14からの音響ノイズが低減されたMRデータを収集するための制御論理も含むことができる。例えば、図4および図5に関連して以下に記述されるプロセス400および500等のプロセスは、それぞれ、MRIシステム制御部22、MRIシーケンス制御部30、および/またはMRIデータプロセッサ42により実行可能である。
【0017】
RFコイル16から離れて位置するものとして図1に示すが、いくつかの実施形態では、RF送信部34、送信/受信スイッチ36、およびRF受信部40のいずれも、RFコイル16および/または他のRFコイルに極めて接近して、またはこれらの表面上に位置していてもよい。
【0018】
さらに図1には、MRIシステムプログラム/データ格納部50も一般化して図示されており、格納されたプログラムコード構造(例えば、放射状スキャン技術による音響ノイズが低減されたデータ収集を制御するため、放射状k空間収集の改善された画像再構成のため、グラフィカルユーザインタフェース(Graphical User Interface:GUI)を定義するため、操作者入力を受け取るため)および設定されたかまたは所定のデータ(例えば、プログラムの実行を制御するための特定の閾値設定、ノイズが低減されたMRデータ収集およびその後のMR画像再構成を制御するためのパラメータ)は、MRIシステムの種々のデータ処理コンポーネントにアクセス可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に格納される。当業者には明らかなように、プログラム/データ格納部50をセグメント化して、少なくとも一部分を、MRIシステム構成要素20の処理コンピュータのうち、通常操作においてそのような格納されたプログラムコード構造を最優先で必要とする別のコンピュータに直接接続(すなわち、MRIシステム制御部22に普通に格納したり直接接続したりするのではなく)してもよい。
【0019】
実際に、当業者には明らかなように、図1は、本明細書に記載される例示的実施形態を実現するために変更された典型的なMRIシステムの、非常に大まかな概略図を示したものである。システム構成要素は様々な論理集合の「ボックス」に分割することができ、通常、多数のデジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)と、マイクロプロセッサと、専用処理回路(例えば、高速AD変換用、高速フーリエ変換用、アレイ処理等用)とを含む。これらのプロセッサの各々は、通常、クロック制御された「状態マシン」であり、物理データ処理回路は、クロックサイクル(または、所定数のクロックサイクル)毎に、ある物理状態から別の物理状態に移る。
【0020】
処理回路(例えば、CPU、レジスタ、バッファ、演算装置)の物理状態が、操作過程であるクロックサイクルから別のクロックサイクルに徐々に変化するだけでなく、関連データ記憶媒体の物理状態(例えば、磁気記憶媒体内のビット記憶場所)も、このようなシステムの操作過程において、ある状態から別の状態に変換される。例えば、画像再構成処理や、時としてコイル感度マップ生成処理の終了時に、物理的記憶媒体内のコンピュータ可読でアクセス可能なデータ値の記憶場所の配列は、ある先行状態(例えば、すべて一様に「0」値、またはすべて「1」値)から新しい状態に変換され、そのような配列における物理的場所の物理状態は、最小値と最大値との間で変化して、実世界の物理的事象および物理的条件(例えば、イメージングボリューム空間内の患者の内部物理構造)を表す。当業者には明らかなように、命令レジスタに順次読み込まれMRIシステム構成要素20の1つ以上のCPUによって実行されたときに、MRIシステム内で特定のシーケンスの動作状態を引き起こし遷移させる特定構造のコンピュータ制御プログラムコードと同様に、そのような格納データ値の配列は物理的構造を表し構成する。
【0021】
図2は、実施形態によるMRデータ収集パターン200を示す。ディスプレイウインドウ204に示す傾斜磁場波形211は、例示的実施形態による3D放射状パターンを収集するプロセスの間の3つの連続するTR間隔にわたるGx傾斜磁場(リードアウト傾斜磁場)を概略的に示す。各ウインドウ202および204において、垂直軸の中間を通る水平線は0値の大きさまたは振幅を表し、水平軸は時間を表す。ウインドウ202は、傾斜磁場波形211に関連するRF励起パルス206a~206c(まとめて206)を示す。対応するTE(Echo Time)208a~208c(まとめて208)およびMRIデータ読出しアナログ-デジタル変換(Analog to Digital Conversion:ADC)サンプリング間隔210a~210c(まとめて210)もまた、ウインドウ204に示す。
【0022】
ウインドウ204で明らかなように、各TR間隔に対して、傾斜磁場波形211は1回の遷移しか有しない。各RF励起パルス206は、RF励起パルス206の後かつ対応するMRデータ収集の前に逆の極性への傾斜磁場波形211の遷移が起こるように位置決めされる。例えば、第2のTRのRF励起パルス206bは、第1のTR間隔のデータ収集ADC間隔210aの後かつ傾斜磁場波形211が212において遷移し始める前に発生する。RF励起パルス206bに対応して、TE208bは、212から開始される遷移が214で完了し、それにより傾斜磁場波形211は正極性の振幅から負極性の振幅へと変化した後に発生する。当業者が理解するように、Gx、Gy、Gz傾斜磁場振幅のわずかなゆっくりとした変化は、次のTR間隔中にk空間内でわずかに異なる放射状軌跡を描くように達成される。しかし、あるTR間隔から次のTR間隔までの大きさの変化は、音響ノイズを生じさせる力に関する限りごくわずかである。データ収集210bは、214における傾斜磁場遷移の完了後から始まるものとして図2に示されているが、データ収集210bは、RF励起後かつTE208b前の任意の時点で開始されてよい。データ収集には、ADCが含まれ、図2において単にADCと表される。
【0023】
ウインドウ204に示す第3のTRでは、RF励起パルス206cは、第2のTR間隔のデータ収集間隔210bの後かつ傾斜磁場波形211の216における遷移の前に送信される(すなわち、照射される)。次いで、依然として第3のTR内で、逆の極性への(わずかに異なる大きさの)傾斜磁場遷移は218で完了する。TE208cおよびデータ収集間隔210cは、傾斜磁場波形211が負の振幅からほんのわずかに変化した正の振幅までのその遷移を完了したときに発生する。
【0024】
RF励起パルス後かつ対応するTEの前に傾斜磁場極性を遷移させることによって、実施形態は、MRIデータ収集が、ゼロ(すなわち、k空間中心部)の片側から始まって、ゼロ点を通る軌跡に沿ってデータを収集し続け、ゼロのデータ収集が開始された側とは反対側の点へと進むように、k空間データの放射状収集において線(すなわち、軌跡)をたどることを可能にするプレワインダ傾斜磁場を自動で提供する。このことにより、例示的実施形態は、TRごとに1回しか遷移しないものの、放射状収集シーケンス中にk空間中心部およびk空間中心部の両側の点のデータを収集することもできるようになる。したがって、多くの従来技術とは対照的に、例示的実施形態では、TRごとの2回以上の遷移により引き起こされる音響ノイズを除去し、その一方で、k空間データの放射状収集において、線に沿ったゼロの両側のデータを収集するのに必要とされる別々のプレワインダ傾斜磁場パルスにより生じる音響ノイズも除去する。
【0025】
例示的実施形態のプレワインダを図2に関連して記述できる。例えば、RF励起パルス206aが照射されると、傾斜磁場波形211はそのとき命令された負極性の振幅において既にアクティブである。したがって、図示される例示的実施形態では、プレワインダは、イメージングボリューム18が逆極性のk空間モーメントを有するスピンを発生させ始めるため、RF励起パルスの直後に始まる。TE(例えば、RF励起パルス206aに対する208a)前の任意の時点でのデータ収集は、負のk空間モーメントを有するこれらのスピンからの信号をもたらすため、現在収集されている線(例えば、k空間中心部、すなわちゼロ点を通って進む軌跡)にk空間の片側のデータ点を提供する。TE発生時に、進行中のデータ収集プロセスは、k空間中心部およびこのときデータが収集されている放射状線に沿った反対側に対するデータ点を生じさせる。TE後に収集されるデータは、グラジエントリコールドエコー(Gradient Recalled Echo:GRE)データと呼ぶことができる。
【0026】
傾斜磁場振幅は、第1のTRのADC時間および次のTRのRF励起パルスで同じかまたは実質的に同じである。これは交互傾斜磁場に近いが、k空間内の3D放射状パターンの軌跡を収集するために、あるTR間隔から次のTR間隔までに投影角度がわずかに回転する。しかし、3D放射状パターンに従ってk空間の異なる点をサンプリングするために、振幅の値はわずかに変化する。典型的には、このわずかな変化は、読出し収集が完了した後かつ次の励起が行われる前に起こる。3D放射状パターンにおいて、Gx傾斜磁場、Gy傾斜磁場、およびGz傾斜磁場はそれぞれ、回転角度のわずかな変化を生むためにTRごとの1次遷移とより小さな2次遷移とを有するそれぞれに特有のパターンに従う。連続するTR間隔の間で必要なわずかな傾斜磁場変化を決定する技術を以下で論じる。
【0027】
ここでの説明は、非選択的RF励起パルス幅を仮定するため、比較的大きな領域が励起される。この例におけるMRIデータ収集およびその後の画像再構成は、RF励起が選択傾斜磁場ありで行われるか、または選択傾斜磁場なしで行われるかによっては大きく影響を受けない。有効な選択が非選択であるため、RFパルスによる選択の空間方向は重要ではない。
【0028】
例示的実施形態において、1次傾斜磁場遷移はさらに、スルーレートが小さくなるように比較的長い持続時間となるように構成されてよい。さらに、例示的実施形態において、MRIデータが放射状k空間パターンで収集されるとき、スルーレートはどの遷移についても同じ均一なレベルで留まりうる。このことにより、高スルーレートの結果として生じるノイズを低減でき、さらに、任意の特定のスルーレートで起こる変化により生じるノイズの突然でばらつきのある高まり(例えば、ピーク)を回避できる。
【0029】
音響ノイズは特定の例示的実施形態では劇的に低減されるが、いくらかのノイズは依然として存在するという点に留意すべきである。しかし、このノイズは、従来技術で起こるノイズよりも一貫した低レベルのノイズである。いくらか残るノイズのばらつきは、さまざまな傾斜磁場コイルのわずかに異なる音響学的特徴によるものでありうる。例えば、シーケンスがGx、Gy、Gz電流の振幅の大小により変化するとき、ノイズレベルは、これらのさまざまなコイルの異なる物理的構造、位置、および/またはその他の機械的な環境上の側面のために変化しうる。
【0030】
図3は、多数のTR間隔にわたる容積測定MR画像の完全な収集用のGx傾斜磁場、Gy傾斜磁場、およびGz傾斜磁場のための波形を含む3D等方性放射状パターンのスキャンシーケンスを示す。図3は、スクリーン300で、放射状k空間パターンの連続した軌跡に沿ってk空間をサンプリングするために、あるTR間隔から次のTR間隔まで傾斜磁場振幅がわずかに異なるように構成された交互傾斜磁場を示す。図3は、k空間内の3D等方性放射状投影パターンに対するMRIデータの収集中に使用される、RF励起、Gx傾斜磁場パルス、Gy傾斜磁場パルス、およびGz傾斜磁場パルスを示す。図3に示す収集は、8018msの収集時間を示す。ウインドウ302は、RF励起パルス、例えば、RF励起パルス206a~206c等のパターンを示す。ウインドウ304、306、および308は、それぞれ、収集時間中のGx傾斜磁場、Gy傾斜磁場、およびGz傾斜磁場を示す。図2における拡大形態で示すものは、図3に示すMRデータ収集シーケンスのごく一部である。
【0031】
スクリーン300のウインドウ302に示す実施形態では、RF励起パルスはTR間隔当たり1回送信される。ウインドウ304、306、および308は、収集時間中のGx傾斜磁場、Gy傾斜磁場、およびGz傾斜磁場の変化を示す。図示されているように、Gx傾斜磁場、Gy傾斜磁場、およびGz傾斜磁場は、上述したように、さらに図5に関連して以下で記述されるように、あるTR間隔から次のTR間隔までの最大傾斜磁場振幅が徐々に少しずつ変化しながら、正の方向および負の方向へと繰返し変化する。任意の特定のTR間隔におけるGx傾斜磁場、Gy傾斜磁場、およびGz傾斜磁場は、それぞれが対応するk空間の規定軌跡に沿ってMRIデータを収集する。この例では、軌跡は放射状に導かれ、k空間の中心部を通る。
【0032】
図4は、MRIデータの静音式収集およびMR画像の再構成のためのプロセス400のフローチャートを示す。実施形態において、ステップ402~408は、図示される順序または異なる順序で行ってよい。1つまたは複数のステップ402~408は、いくつかの実施形態では行われなくてもよく、1つまたは複数の新規のステップをいくつかの他の実施形態で行ってもよい。
【0033】
プロセス400に入った後、ステップ402では、1つまたは複数の実施形態に従って、MRIシステムは静音式スキャンおよび再構成のための設定パラメータを取得する。設定パラメータとしては、傾斜磁場遷移の長さ(例えば、1500~2000マイクロ秒)、TE(例えば、2~4ms)およびTR(例えば、5~9ms)、スルーレート(例えば、5~10mT/m/ms(ミリテスラ毎メートル毎ミリ秒))を挙げることができる。例えば、25cmの妥当な撮像視野(Field Of View:FOV)は、5~10mT/m/msに限定されたスルーで達成可能である。約5~10mT/m/msのスルーレートにおいて、スキャンは、ほとんどの従来技術よりも静かであるが、それでもなおいくらかの音響ノイズが生じる。
【0034】
別の設定パラメータは放射状投影の数(例えば、k空間中心部、すなわちゼロを通って進む放射状線)であってよく、これは、連続したデータ点がスキャンされるときに、傾斜磁場の振幅および/または投影角度になされるわずかな変化を決定するのに必要となりうる。放射状投影、すなわち、k空間のゼロ点を通る軌跡の数は、いくつかの例示的実施形態において、約1,000~100,000の範囲であってよい。いくつかの例示的実施形態では、30,000の放射状投影が、診断品質のMR画像を提供するのに十分である。
【0035】
例示的実施形態では、1次傾斜磁場遷移の周波数応答は、MRIシステムの音響周波数のヌル点(音響周波数が最小となる点)に合致(例えば、近似)するように合わせることができる。ここで、音響周波数のヌル点とは、具体的には、音響的な応答が最小となるような点を言う。磁気共鳴イメージング装置の音響的な応答は、例えば、音響伝達関数(acousitc trasnfer function)で特徴づけられる。すなわち、MRIシーケンス制御部30は、音響伝達関数が最小となるように最適化された振幅等で、リードアウト傾斜磁場を印加する。例えば、MRIシーケンス制御部30は、音響伝達関数が最小となるように最適化されたスリューレートで、リードアウト傾斜磁場を印加する。このように合致させることは、パルスシーケンス設計の一部であると考えてもよく、また操作402の設定プロセスの一部であってもよい。いくつかの実施形態では、繰返しのTR間隔の持続時間は、MRIシステムの音響ヌルに合致するように制御できる。例えば、MRIシーケンス制御部30は、音響伝達関数が最小となるように最適化された、リードアウト傾斜磁場の印加時間で、リードアウト傾斜磁場を印加する。また、MRIシーケンス制御部30は、音響伝達関数が大きくなるような所定の周波数などを避けて、リードアウト傾斜磁場を印加する。
【0036】
他の箇所で記述されるように、特定の実施形態のある特徴は、同じまたは実質的に同じ傾斜磁場遷移が全体を通して適用されることである。したがって、異なるように傾斜磁場遷移を形成している多くの従来技術と比較して、上述の合致させることは、例示的実施形態に用いられる単一の1次遷移タイプを使用して、より都合良く達成できる。合致させることは、多くの既知の技術、例えば、非特許文献2によって達成されうる。
【0037】
励起パルスの形状、幅、位相、フリップ角、周波数等、データ収集シーケンス等は、いくつかの実施形態で設定可能なその他のパラメータである。
【0038】
ステップ404では、回路を静音式スキャン用に設定する。回路を設定することは、予め設定したパラメータおよび/またはユーザにより提供された入力の一方または両方に従って設定することを含んでもよく、MRIシーケンス制御部30、MRIシステム制御部22、および/またはMRIデータプロセッサ42の1つまたは複数を設定することを含んでもよい。このような設定は好適に実行可能なコンピュータプログラム命令をMRIシーケンス制御部30に提供することによって行うことができ、このような命令の実行時に、MRIシーケンス制御部30は傾斜磁場コイルドライバ32およびRF送信部34を制御し、場合によっては、送信/受信スイッチ36も制御する。
【0039】
ステップ406では、MRIシーケンス制御部30は、あるTR間隔の間MRIデータを収集するのに使用される第1の極性のリードアウト傾斜磁場を、連続的なTRの間、実質的に同じ振幅およびベクトル方向に持続させることによってMRIデータを収集する。すなわち、MRIシーケンス制御部30は、磁気共鳴イメージング信号(MR信号)のADC(Analog Digital Conversion)収集の実行から、次のTR(Repetition Time)に係るRFパルスの印加まで、同一の極性かつ略同一の振幅で、リードアウト傾斜磁場を印加する。ADC収集の開始のタイミングは、RFパルスの印加の後かつエコー生成の前であり、エコー生成の間、ADC収集が継続されてもよい。第1の極性のリードアウト傾斜磁場は、リードアウト傾斜磁場が逆の極性へと遷移する前に次のTR間隔を開始させるRF励起パルスが送信される間、画像ボリューム選択傾斜磁場として使用される。すなわち、リードアウト傾斜磁場は、イメージングボリュームを選択するための傾斜磁場としての役割を含んでMRIシーケンス制御部30により印加される。例えば、MRIシーケンス制御部30は、RFパルスを選択する役割を果たすとともに、ADC収集の読み出しを担う単一のリードアウト傾斜磁場を、例えば1つのTRあたり1個印加する。
【0040】
ところで、傾斜磁場の遷移(遷移の数、勾配の大きさ及び期間)は、パルスシーケンスの音響ノイズを最適化をするという目的にとって、最も興味深い特徴である。本願においては、図2に示されているように、傾斜磁場は存在しない。この傾斜磁場は、RF選択、ADCリードアウト及びスポイラーとして用いられる。すなわち、一つの同じ傾斜磁場が、これらすべての機能として用いられる。このことにより、一つのTRあたりの傾斜磁場の遷移の回数を、1にまで減らすことができる。そして、設計されるべき傾斜磁場の遷移が一つしかないため、シーケンス設計者は、音響ノイズを、より簡単に、「チューニング」または最適化することができる。ステップ406における処理を、図5に関連して以下でさらに記述する。
【0041】
ステップ408では、MRI画像を、収集したk空間データから再構成する。いくつかの実施形態によると、画像再構成は操作406で収集したデータから直接実行されてよい。所望により、いくつかの実施形態において、放射状パターンで収集したk空間データのデカルト格子への再グリッディングは、再構成前に実行できる。再グリッディングは、カイザー-ベッセル核等の有限補間核を用いた畳み込み積分等であるがこれに限定されない既知の技術を使用して実行できる。加えて、また所望により、いくつかの実施形態では、密度補償を画像再構成の前に行ってもよい。例えば、密度補償を実行して、k空間中心部領域のより多くの点、またはk空間中心部からさらに外の領域におけるより多くのMRデータ点を収集できる。分析重み付け解除(de-weighting)関数または反復数値重み付け解除解法を用いた乗法等であるがこれらに限定されない技術を、密度補償のために使用可能である。次に、所望により、再グリッディングおよび/または密度補償により処理されても処理されていなくてもよいk空間データを使用して、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)を実行することによりMR画像を生成できる。いくつかの実施形態では、再グリッディング、密度補償、およびFFT処理は、超短TE(Ultra Short TE:UTE、例えば、TE<1ms)に使用される技術または投影再構成(Projection Reconstruction:PR)技術を使用して処理できる。再構成MR画像は、診断目的のディスプレイに出力され、ネットワーク上に送信され、かつ/またはデジタルストレージデバイスに格納されてよい。
【0042】
当業者が理解するように、収集したMRIデータはまた、後の画像再構成のために格納されても(ローカルまたは遠隔で)よい。
【0043】
図5は、MRIデータの静音式収集のためのプロセス500のフローチャートを示す。いくつかの実施形態では、プロセス500を実行して、プロセス400のステップ406中にk空間をサンプリングできる。いくつかの実施形態では、ステップ502~516は、図示される順序または異なる順序で行ってよい。1つまたは複数のステップ502~516は、いくつかの実施形態では行われなくてもよく、1つまたは複数の新規の操作をいくつかの他の実施形態で行ってもよい。
【0044】
プロセス500に入った後、ステップ502では、初期傾斜磁場をGx、Gy、Gz(例えば、リードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、および選択傾斜磁場)のために設定する。傾斜磁場は、例えば図2および図3に示すように、かつ/または任意の所望のユーザ設定に基づいて、設定できる。
【0045】
ステップ504では、MRIシーケンス制御部30は、RF励起パルスを送信する。励起パルスの幅、包絡線形状、位相等は、例えば、先の設定により予め決められてよい。第1のTR間隔は、RF励起パルスが送信されるとすぐ始まる。
【0046】
ステップ506~516は、例えば図3に図示する収集のような3D等方性放射状収集において収集される各データ点に対して繰り返される。実際には、その他の収集パターンも実施形態として考えられる。
【0047】
ステップ506では、MRIシーケンス制御部30は、依然として直前のRF励起パルスにより開始されたのと同じTR間隔において、データ収集(アナログ-デジタル変換を含む)を始める。このTR間隔内のMRIデータの収集は、TE508の前に始まる。k空間MRIデータは、510においてk空間の放射状に導かれる軌跡に沿って収集され、514において送信される次のRF励起パルスが発生した後の次のTR間隔において、当該次のTR間隔中に収集されるk空間のMRIデータの軌跡がゼロの片側で始まって、進み続けてゼロを通り、k空間内のゼロの他方の側まで進むことを保証するのに十分なプレワインダ傾斜磁場としてのリードアウト傾斜磁場を持続させる。k空間データの収集される放射状に導かれる線は、k空間の3Dボリューム全体に分布している。すなわち、MRIシーケンス制御部30は、放射状の収集(ラジアル収集)を用いてパルスシーケンスを実行するが、このとき印加されるリードアウト傾斜磁場は、次のTRに係るプレワインダ傾斜磁場としての役割を担う。
【0048】
当該次のTR間隔内のMRIデータの収集(ADC収集)は、RF励起パルス送信直後であるが、当該MR信号のいずれかの傾斜磁場エコーが発生する前に開始されることができ、前のRF励起パルスにより開始された継続中のMR信号が後に発生している間も持続可能である。
【0049】
ステップ506におけるデータ収集の開始後、ステップ508において、直前のRF励起パルスに対応するTEが発生し、MRIシーケンス制御部30は、エコーデータを収集し続けることができる。
【0050】
ステップ510において、直前のRF励起パルスにより開始されるMR信号のデータ収集を完了する。
【0051】
現在のADCデータ収集完了後、ステップ512において、k空間について十分なk空間データが既に収集されたかどうか判断する。この判断は、収集データにより充填されるk空間の閾値に基づいてよい。十分にk空間データが収集されていれば、プロセス500は完了する。
【0052】
十分なk空間データがまだ収集されていないと判断された場合、ステップ514において、MRIシーケンス制御部30は、別のRF励起パルスを送信して次のTR間隔を開始する。RF励起パルスは、前のRF励起パルスと同じまたは実質的に同じであってよい。上記のように、RF励起パルスは非選択的パルスであってよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、MRIシーケンス制御部30は、ADCデータ収集完了後かつ次のRF励起パルス送信前の任意の時点でスポイラ傾斜磁場を印加することができる。このようなスポイラ傾斜磁場は例えば、それよりも前の励起によって引き起こされる擬似エコー信号を減らすことができる。いくつかの実施形態では、RF位相サイクリング(phase cycling)を使用して、このような擬似エコー信号を除去できる。例えば、同一周波数でRF励起パルスを送信する一方で、位相角は、実質的に、または部分的に擬似エコー信号を除去するために、あるTR間隔から次のTR間隔にかけて変化させてよい(例えば、117°の間隔)。
【0054】
ステップ516において、傾斜磁場は逆極性へと遷移する。すなわち、MRIシーケンス制御回路30は、リードアウト傾斜磁場を、TRごとに極性を反転しながら、例えば1TRあたり1個印加する。傾斜磁場の振幅は、連続するTR間隔の間、k空間において放射状に導かれる異なる軌跡に沿ってMRIデータを収集するためのTR間隔のデータ収集部分間で、ある閾値未満、例えば、5%未満ずつ、漸増的に調節される。実際に、多くの実施形態では、あるTR間隔から次のTR間隔までの傾斜磁場振幅の漸増的調節は、1%よりもはるかに小さくてもよい。いくつかの実施形態によれば、連続的な遷移それぞれの各傾斜磁場の振幅は、非特許文献3の記載に基づく式等であるがこれに限定されない既知の技術に従って決定できる。非特許文献3は、「3Dでの放射状サンプリングを用いたほぼ等方性のk空間範囲は、球上を一方の極から赤道へと進む螺旋に沿って投影すべての端点を分布させることにより得られる」と記述している。一実施形態によると、非特許文献3に基づいて、新しい傾斜磁場Gx、Gy、およびGzは、3D等方性投影再構成エンコーディングパターンのn番目の投影について、式(1)~(3)を用いたz(n)、x(n)、およびy(n)として決定される。
【数1】
【数2】
【数3】
【0055】
(1)~(3)において、Nは収集される投影の総数であり、nは現在の、すなわち「n番目」のシーケンス数である。ある収集「ショット」(例えば、あるTR間隔)と次の収集ショットとの違いは、通常非常にわずかであり、すなわち、わずかな回転角度のみである。しかし、数千回または数万回の回転後、3Dボリューム全体がカバーされる。さらに、交互傾斜磁場の極性遷移は、10mT/m/ms未満のスルーレートに制限されうる。
【0056】
ステップ516後、プロセス500がステップ506に戻って繰り返し、次の投影を処理する。
【0057】
実施形態で使用されるRF励起パルスによる大きな非選択ボリューム励起のため、放射状軌跡のサンプリングがk空間中心部の片側で始まりk空間中心部を通ってもう一方の側まで進む3D投影エンコーディングパターンは、効率的なk空間サンプリングパターンである。しかし、当業者は、その他の実施形態において他のサンプルパターンの使用が考慮されることを理解するであろう。
【0058】
例えば、いくつかの実施形態では、平衡定常状態自由歳差運動(balanced Steady-State Free Precession:bSSFP)タイプのシーケンスをk空間のサンプリングに使用できる。すなわち、MRIシーケンス制御部30が実行するパルスシーケンスは、SSFP法のパルスシーケンスを含んだパルスシーケンスであってもよい。当技術分野において既知のbSSFP技法は、互いに等間隔のRFパルスおよび互いに等間隔のエコーを使用する。bSSFPタイプの技法は、少なくともほぼ実現可能であり、タイミングに関してRFパルスおよびエコーを平衡させることにより、実施形態において使用できる。傾斜磁場イベント、RF送信イベント、およびRF受信イベントは、実質的なbSSFPのMRI信号を収集するために調整される。このような技法は、SSFPタイプの技法に特徴的な信号対雑音比(Signal-to-Noise Ratio:SNR)が高いという利点をもたらすが、B0感受性のためアーチファクトにもつながりうる。
【0059】
別の例示的実施形態によれば、データ収集は、RF励起パルスが送信されたらすぐに、または直後(例えば、RF送信部をオフにしRF受信部をオンにするための最小限の時間であるわずかなデッドタイム間隔後)に開始される。このことにより、励起パルスの送信直後にボリューム内で発生する自由誘導減衰(Free Induction Decay:FID)データの収集が可能となる。このFIDデータは、収集されるその後に生じるGREデータと一緒に使用可能である。
【0060】
本明細書に記載される実施形態は、MRIスキャンにおける音響ノイズ低減のための従来技術に優る多くの利点を提供する。これらの利点には、より高いサンプリング効率、k空間中心部領域外の領域の捕捉と同じADC収集間隔でのk空間中心部領域の捕捉、データが複数回の収集または代数的推定ではなく、1回の収集で得られることによるデータの整合性故のより効率的な画像再構成、従来のパルスシーケンスにTEおよびTRが類似していることによるより普通の画像コントラスト、ならびにより安定したレベルのノイズを維持する能力がある。
【0061】
より高いサンプリング効率は、実施形態において、同一のデータ収集TR間隔における1本の放射状軌跡線に沿ったk空間中心部およびk空間中心部両側の点を収集する能力によって達成される。上で述べたように、前のリードアウト傾斜磁場と実質的に同じ傾斜磁場が依然としてアクティブであるときに励起パルスを送信することにより、実施形態は自動でプレワインダ傾斜磁場を得て、k空間中心部の次の読出しがデータを収集する側とは反対の側からデータ収集を開始する。このことにより、実施形態は、各TRにおいてより多くのデータ点、例えば、放射状パターンのスポーク線軌跡のゼロから正負両側を収集するために2回のTR間隔を必要とした従来のハーフエコー収集手法によって収集される点の50%超を収集できる。実際に、一部のデータ収集をTEよりも前の時点に適宜ずらすことによって、いくつかの実施形態は、k空間中心部を通る各放射状線について必要とされるサンプリング点を最大100%収集できる。
【0062】
同一の収集間隔内でk空間中心部領域およびこの中心部領域外の領域を捕捉する能力によって、フルエコー技法または部分エコー技法を使用する能力を提供する。k空間中心部のサンプル点が利用可能であることによって、さらに、より正確な体動補正のための能力も提供する。MR画像再構成技法によっては、放射状収集パターンのサンプル点のちょうど50%を用いて機能しうるが、さらなるサンプル点を使用して、データ整合性を改善することができる。
【0063】
例示的実施形態は、FFE等の従来技術と類似のTRおよびTEを有するため、実施形態から得られる画像は、一般的な従来のパルスシーケンスから使用者が期待するものと類似する特定の性質(例えば、見える内容、コントラスト等)を有しうる。例えば、FFEは骨等から得られる追加の信号を示さず、本発明の少なくとも一部の実施形態は同様に、骨、腱等からの追加の信号を捕捉しない。これは、骨等を見えるようにするUTE様信号を収集しない例示的実施形態のためである。UTE様信号を必要とする骨、腱等のためのMRIの適用は、臨床的影響が限定されていることに留意されたい。
【0064】
多くの従来技術と比較すると、本明細書における実施形態は、実質的に音響ノイズを低減しながらも、除去されないノイズの量がどの程度であれ、実質的に均一なノイズパターン(ことによると、傾斜磁場コイル間の物理的な差異によるわずかなピッチ変化を伴う)を維持する。これは、スキャン全体におけるある遷移から次の遷移まで実質的に同レベルの傾斜磁場振幅を使用することによって達成される。
【0065】
いくつかの実施形態は、より位相分散しやすく、いくつかの従来技術よりも傾斜磁場の欠陥への感度に影響を受けやすい場合がある。例えば、より長いTEによって、例えば乱流等によって引き起こされる信号欠如による位相分散が起こるのに対し、フィールドエコーベースのパルスシーケンスはUTEによる位相分散の損失が少なくなりうる。しかし、このような位相分散はFFEのようなシーケンスではよくあることである。少なくとも部分的に傾斜磁場遷移が励起の後かつデータ収集前に起こることによる傾斜磁場の欠陥に対する感度は、このような傾斜遅延および非均一性をすべて特徴づけることによって、対応できる。傾斜遅延および非均一性は、分析モデルまたは反復数値解法を使用してk空間データを調整することによって、再構成の一部として補正できる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
30 MRIシーケンス制御部
図1
図2
図3
図4
図5