(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】波面のアノテーション
(51)【国際特許分類】
A61B 5/349 20210101AFI20220113BHJP
A61B 5/367 20210101ALI20220113BHJP
【FI】
A61B5/349
A61B5/367
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017155070
(22)【出願日】2017-08-10
【審査請求日】2020-06-11
(32)【優先日】2016-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】リオール・ボッツァー
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル-タル
(72)【発明者】
【氏名】エラド・ナカル
【審査官】樋口 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-139706(JP,A)
【文献】特表2013-533007(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0032014(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0191132(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極とプロセッサを備える装置の作動方法であって、
前記プロセッサが、以下の工程:
前記一対の電極のうちの選択された一方から取得したユニポーラ信号の導関数を計算し、当該ユニポーラ信号の導関数の局所最小値の発生時刻を計算すること、
前記一対の電極から取得したバイポーラ信号の導関数を計算すること、
前記局所最小値と、当該局所最小値の発生時刻における前記バイポーラ信号の導関数の値との比を求めること、並びに
前記比が予め設定された閾値の比の値を超え、かつ
前記発生時刻に対応するバイポーラ信号及びユニポーラ信号から特徴値を算出し、当該特徴値ごとに設定されたファジー関数に基づき算出された信頼値が予め設定された閾値を上回る場合は、前記心筋の活性化時間として前記発生時刻を割り当てること
、
を実施する、方法。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記発生時刻における前記バイポーラ信号の導関数の値が予め設定された閾値を下回る場合は、前記心筋の前記活性化時間として前記発生時刻を割り当てることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記局所最小値が予め設定された閾値を下回る場合は、前記心筋の前記活性化時間として前記発生時刻を割り当てることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記バイポーラ信号の振幅が予め設定されたバイポーラ信号の閾値を上回る場合は、前記心筋の前記活性化時間として前記発生時刻を割り当てることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ヒト被験体の心筋に近接して配置されるように構成された一対の電極と、
プロセッサであって、
前記一対の電極からバイポーラ信号を受信し、
前記一対の電極のうちの選択された一方からユニポーラ信号を受信し、
前記ユニポーラ信号の導関数を計算し、当該ユニポーラ信号の導関数の局所最小値の発生時刻を計算し、
前記バイポーラ信号の導関数を計算し、
前記局所最小値と、当該局所最小値の発生時刻における前記バイポーラ信号の導関数の値との比を求め、かつ
前記比が予め設定された閾値の比の値を超え、かつ、
前記発生時刻に対応するバイポーラ信号及びユニポーラ信号から特徴値を算出し、当該特徴値ごとに設定されたファジー関数に基づき算出された信頼値が予め設定された閾値を上回る場合は、前記心筋の活性化時間として前記発生時刻を割り当てる、ように構成されたプロセッサと、を含む、装置。
【請求項6】
前記発生時刻におけるバイポーラ信号の導関数の値が予め設定された閾値を下回る場合は、前記心筋の前記活性化時間として前記発生時刻を割り当てることを更に含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記局所最小値が予め設定された閾値を下回る場合は、前記心筋の前記活性化時間として前記発生時刻を割り当てることを更に含む、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記バイポーラ信号の振幅が予め設定されたバイポーラ信号の閾値を上回る場合は、前記心筋の前記活性化時間として前記発生時刻を割り当てることを含む、請求項7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる2016年8月11日出願の米国特許仮出願第62/373,458号の利益を主張するものである。本出願は、本出願と同日付で出願された「Classifying ECG Signals」と題された出願に関連する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、広義には心電計(ECG)信号に関し、より詳細には信号にアノテーション付けするための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心臓の電気信号のマッピング及びイメージングは、典型的には、カテーテルのECG信号によって示される局所活性化時間(LAT)と信号の空間位置との組み合わせに基づく。こうした方法は、Biosense Webster(Diamond Bar,Ca)製のCARTO(登録商標)3システムで用いられている。
【0004】
既存の活動測定アルゴリズムは、本質的に遠距離場の干渉の影響を受けないバイポーラ信号の処理に基づく。歴史的には、LATは基準アノテーションと、マッピングカテーテルチャネル内のバイポーラ信号における最初の活動と、の間の時間差によって測定される。しかしながら、最初の活性化は、2つのユニポーラ信号からの接近場(approaching fields)構成であり、活動波の開始とは必ずしも一致しないため、バイポーラ信号における最初の活性化を測定すると、LATの測定値は曖昧になる。
【0005】
本特許出願に参照により組み込まれる文献は、いずれかの用語がこれらの組み込まれた文献において、本明細書に明確に又は暗示的になされる定義と矛盾する形で定義されている場合には、本明細書中の定義のみが考慮されるべきである点を除いて、本出願の一部とみなされるものとする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、
ヒト被験体の心筋に近接する一対の電極からバイポーラ信号を受信すること、
一対の電極のうちの選択された一方からユニポーラ信号を受信すること、
ユニポーラ信号の局所ユニポーラ最小導関数、及びユニポーラ最小導関数の発生時刻を計算すること、
バイポーラ信号のバイポーラ導関数を計算すること、
バイポーラ導関数と局所ユニポーラ最小導関数との比を求めること、並びに、
比が予め設定された閾値の比の値を超える場合は、心筋の活性化時間として発生時刻を特定すること、を含む、方法を提供する。
【0007】
開示された実施形態は、バイポーラ導関数が予め設定されたバイポーラ導関数の閾値を下回る場合は、心筋の活性化時間として発生時刻を割り当てることを含む。
【0008】
更なる開示された実施形態は、局所ユニポーラ最小導関数が予め設定されたユニポーラ導関数の閾値を下回る場合は、心筋の活性化時間として発生時刻を割り当てることを含む。
【0009】
なお更に開示される実施形態は、発生時刻に対応する信頼水準が予め設定された信頼水準を上回る場合は、心筋の活性化時間として発生時刻を割り当てることのみを含む。典型的には、方法は、バイポーラ信号の振幅が予め設定されたバイポーラ信号の閾値を上回る場合は、心筋の活性化時間としての発生時刻を割り当てることのみを含み得る。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、更に、
ヒト被験体の心筋に近接して配置されるように構成された一対の電極と、
一対の電極からバイポーラ信号を受信し、
一対の電極のうちの選択された一方からユニポーラ信号を受信し、
ユニポーラ信号の局所ユニポーラ最小導関数、及びユニポーラ最小導関数の発生時刻を計算し、
バイポーラ信号のバイポーラ導関数を計算し、
バイポーラ導関数と局所ユニポーラ最小導関数との比を求め、かつ
比が予め設定された閾値の比の値を超える場合は、心筋の活性化時間として発生時刻を特定するように構成されたプロセッサと、を含む、装置が提供される。
【0011】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態によるアルゴリズムの概略的なブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、バイポーラ信号、及びユニポーラ正極信号によって測定される活動の例である。
【
図3】本発明の一実施形態による、ベースラインのふらつきの除去を図示するグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態による、ベースラインのふらつき除去システムのブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、2つのガウスフィルタのグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態によるアノテーション検出器ブロックの概略的なブロック図である。
【
図7】本発明の一実施形態による、ユニポーラ及びバイポーラ信号、並びにこれらの導関数のグラフである。
【
図8】本発明の一実施形態による、アノテーションアルゴリズムの第1拒絶フェーズを図示するグラフを示す。
【
図9】本発明の一実施形態による、局所及び遠距離場の候補アノテーションを図示するグラフを示す。
【
図10】本発明の一実施形態による、候補アノテーションのマージ、及びどのように拒絶判定基準が用いられるかを図示するグラフである。
【
図11】本発明の一実施形態による、ユニポーラ導関数のファジー関数のグラフである。
【
図12】本発明の一実施形態による、ユニポーラ信号のセグメンテーションを図示するグラフである。
【
図13】本発明の一実施形態による、ユニポーラ持続時間のファジー関数のグラフである。
【
図14】本発明の一実施形態による、ユニポーラ振幅のファジー関数のグラフである。
【
図15】本発明の一実施形態による、ユニポーラ持続時間と振幅との比のファジー関数のグラフである。
【
図16】本発明の一実施形態による、バイポーラ振幅のファジー関数のグラフである。
【
図17】本発明の一実施形態による、装置を用いた侵襲性医療処置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概説
バイポーラ信号とは異なり、ユニポーラ信号における活動開始は、信号の急な下方偏向によって明確にマークされるが、バイポーラ信号とは異なり、ユニポーラは遠距離場活性化に対して敏感である。
【0014】
本発明の実施形態は、2種類のECG信号(バイポーラ信号、及びそれに付随するユニポーラ信号のうちの1つ)の特性を組み合わせるように作用する波面アノテーションアルゴリズムを用いて、正確な信号アノテーションを生成する。本発明者らは、本アルゴリズムが、遠距離場の干渉の影響を受けない正確なアノテーションを提供することを実証した。
【0015】
波面アノテーションアルゴリズムは、比較的短時間に多数のLATポイントの捕捉及びアノテーション付けを可能にする自動的で信頼性の高いアノテーションポイントの検出を実現する。
【0016】
本発明の実施形態は、ヒト被験体の心筋に近接する一対の電極からバイポーラ信号を受信することを含む。一対の電極のうちの選択された一方からユニポーラ信号もまた受信され、ユニポーラ信号の局所ユニポーラ最小導関数が計算される。また、ユニポーラ最小導関数の発生時刻も計算される。バイポーラ信号のバイポーラ導関数が計算され、バイポーラ導関数と局所ユニポーラ最小導関数との比が求められる。
【0017】
比が予め設定された閾値の比の値を超える場合は、心筋の活性化時間として(ユニポーラ最小導関数の)発生時刻が同定される。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態による波面アノテーションアルゴリズムの概略的なブロック図である。アルゴリズムの入力値は、典型的には、500Hzをカットオフした低域通過フィルタ及び電力遮断フィルタ(power rejection filter)を辿る、アルゴリズムを操作するプロセッサ20に提供される単一のバイポーラ信号、及びそのユニポーラ信号のうちの1つからなる。プロセッサ20の操作の更なる詳細は、下記の
図17を参照して提供される。ユニポーラ信号の極性は、既知であると考えられる(すなわち、これは正極又は陰極のいずれかから導かれる)。プロセッサは、スタンドアロン型プロセッサ、及び/又は典型的にはコンピュータを操作する汎用プロセッサであってもよい。アルゴリズムは、本明細書で要約される多数の段階からなる。
【0019】
前処理段階22は、ベースラインのふらつきの除去、低域通過フィルタリング、及び微分の任意の順序を含む。ベースラインのふらつきの除去は、アーチファクトであり、機械的なカテーテルの運動又は呼吸などの様々な理由に起因する付加的な低周波信号の除去を含む。この低周波信号は、推定された信号の導関数を変更させ得るため、典型的には除去される。
【0020】
特徴抽出段階24は、処理後信号を用いて、全ての候補アノテーションに関して特徴を抽出する。
【0021】
第1のアノテーション検出器段階26は、特徴のサブセットに基づいて候補アノテーションの排除を行う。
【0022】
次に、ペア排除段階28で、必要な特徴閾値を通過するが、別の非常に近接した活性化と比較すると重要ではない候補アノテーションは捨ててもよい。
【0023】
最後に、第2のアノテーション検出器段階30で、各候補アノテーションにその特徴値に基づいたスコアが付与される。スコアの閾値を上回る候補アノテーションのみが、有効なアノテーションであると考えられ、これらのタイミング及び特徴は、候補アノテーションのマップ生成といったプロセッサの更なる操作においてプロセッサによって用いられる。
【0024】
アルゴリズムの要素については下記でより詳細に説明する。
【0025】
アルゴリズムの核心部は、3つの基本的な観察に依存する。
・ユニポーラ活動は信号の振幅における急な下方偏向によってマークされる。これらの偏向は、活動速度信号における局所最小値として容易に同定が可能である(即ちユニポーラ信号の導関数)。しかしながら、全ての局所最小値が活動の指標となるわけではなく、いくつかは、ノイズ又は遠距離場活動の結果である。したがって、アルゴリズムの目的は、局所の実際の活性化と関連付けられる速度信号における局所最小値と、そうではないものと、を区別することにある。これは、次の観察を用いることで可能となる。
・遠距離場活性化は、ユニポーラのペアの電位にほぼ等しく影響を与える。したがって、これらのバイポーラ対応物は、遠距離場活性化の間に残留活動しか有さない。これは、電極のうちの一方が活性化部位(activation)に近接し、もう一方が比較的遠い(数mmで十分である)局所活動測定の間には当てはまらない。この場合、バイポーラ信号は、ユニポーラ信号の勾配変化と同時的な勾配変化を更に示す(
図2及び下記の説明を参照されたい)。この現象を用いて、近距離場活性化から生じるユニポーラの急な偏向と、遠距離場活性化から生じるものと、を区別することが可能である。
・候補アノテーションの複数の特徴を組み合わせることにより、より強固なアノテーションの検出を実施するための方法が提供される。例えば、局所活性化の結果としてのバイポーラ振幅の変化を、特徴として用いることができる。しかしながら、時には遠距離場活性化はバイポーラコンポーネントを有し得る(例えば、心室弁付近の下部心房(inferior atria)をマッピングする時)。したがって、バイポーラ振幅のみに基づく意思決定は失敗する場合がある。しかしながら、信号の追加的な特徴が用いられると、意思決定はより強固なものになり得る。1つのこうした特徴は、活性化部位周囲のユニポーラ振幅であり得る(
図2)。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態による、バイポーラ信号、及びユニポーラ正極信号によって測定される活動の例である。グラフ40はバイポーラ信号を示し、グラフ44はユニポーラ信号を示す。区域Aにおける左側の急な下方偏向は、ユニポーラ及びバイポーラ信号において同時発生的な近距離場活動である。遠距離場の心室活性化中に区域Bに示されるように、ユニポーラ信号は変化するが、バイポーラ活動は無視できる程度である。本発明の実施形態は、上記で例示されたものと類似した信号の複数の特徴を用いて、局所活性化と遠距離場活性化とを分離するのを補助する。例えば、区域Aでは、ユニポーラ振幅及びその速度はバイポーラ信号と類似しているが、一方で、区域Bでは、バイポーラ信号と比較してユニポーラ信号振幅ははるかに大きく、その速度ははるかに速い。
【0027】
以下の説明は、
図1に例示されたアルゴリズムの要素を説明する。
【0028】
前処理段階22及び特徴抽出段階24(
図1)
前処理段階及び特徴抽出段階の目的は、ユニポーラ及びバイポーラ信号における干渉を除去及び減衰させ、同時に後続の段階で用いられる信号のこれらの特徴を維持して、かつ強調することにある。分かりやすさのために、本明細書で説明される作用は段階22及び24で発生すると仮定してあるが、これらの作用のうちの少なくともいくつかは、アルゴリズムのその他の段階で発生する場合があることを理解されたい。我々が保持したいと欲する特徴は、活性化のモルホロジーであり、その理由は、これが勾配の変化を反映するためである。典型的に捨てられる特徴は、勾配の測定を誤らせ得る付加的な信号として、かつ高周波ノイズとしても作用するベースラインのふらつきである。段階22及び24は、4つの亜段階に分割される。
【0029】
1.ユニポーラ前処理亜段階
ユニポーラ前処理段階は、以下の工程を順番に適用することからなる。
1.1KHzでのベースラインの推定及びサブトラクション(中央値フィルタ及び低域通過フィルタ(LPF)を使用した)
2.8KHzへのアップサンプリング(因数8によるサンプリング及び保持、又はその他のアップサンプリング技法)
3.第1の平滑化フィルタ-LPF FIR(-6db@155Hz、145タップ)。フィルタは、500Hzの65タップ等リプルフィルタとガウス10ミリ秒窓とのコンボリューションである。
4.第2の平滑化フィルタ。用いられるフィルタは、典型的には500Hzの低域通過フィルタシステムである、アンチエイリアスLPFである。
5.導関数
【0030】
工程5の導関数は、第1のアノテーション検出器段階26(
図1)におけるユニポーラアノテーション検出器(フェーズI)への入力値として用いられる。工程4の追加的にフィルタリングされた信号の出力値は、アルゴリズムの特徴抽出段階24のために用いられる。
【0031】
2.バイポーラ前処理亜段階
バイポーラ前処理段階は、以下の工程を順番に適用することからなる。
1.1KHzでのベースライン推定及びサブトラクション(中央値フィルタ+LPF)
2.8KHzへのアップサンプリング(因数8によるサンプリング及び保持)
3.平滑化-LPF FIR(-6db@310Hz、113タップ)フィルタは、500Hzの65タップ等リプルフィルタとガウス6ミリ秒窓とのコンボリューションである。
4.導関数
【0032】
バイポーラ前処理段階(バイポーラ導関数)の最終出力値は、上記のユニポーラアノテーション検出器(フェーズI)への入力値として用いられる(
図1)。
【0033】
3.ベースラインのふらつき推定亜段階
心臓内(IC)信号は、カテーテルの運動、被験者の運動、及び組織との界面を変化させる呼吸から生じる付加的なベースラインのふらつき信号を含む場合がある(
図3及び下記の説明を参照されたい)。これらの運動アーチファクトが含む成分は、ほとんどが低周波成分である。しかし、近距離場活動信号もまた、これらのスペクトル帯に有意なエネルギーを含む場合がある。したがって、高域通過IIR又はFIRフィルタによる従来の除去方法には問題があり、IC信号に歪み及び形態変化を引き起こす場合がある。結果として、我々が使用する選択されたアプローチは、ベースラインのふらつきの推定(
図3)、及び信号からそれを減算することに基づく。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態による、ベースラインのふらつきの除去を図示するグラフである。ユニポーラ信号50は、当初はベースラインのふらつきに寄与する低周波アーチファクトによって汚染されている。ベースラインを推定する目的は、続いて信号から減算されるベースラインを計算することである。図では、計算されたベースライン54がユニポーラ信号にオーバーレイされている。ベースラインのふらつきはユニポーラ導関数の推定にノイズを加えるおそれがあり、したがってアノテーション検出に影響を与え得るため、ベースラインのふらつきを拒絶することが重要である。
【0035】
ベースラインのふらつき推定、及びオリジナルからそれを減算することは、
図4に図示される通りに一連の2つのフィルタを用いて近距離場活動を除去することにより達成される。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態による、ベースラインのふらつき除去システムのブロック図である。典型的には60msの窓を有する中央値フィルタ60は、原信号からの活動を除去するように設計され、一方で、一実施形態では、約10Hzの典型的なカットオフを有する89タップFIRハニングフィルタであるLPF 64は、中央値フィルタから生じた縁部を平滑化するように設計されている。最終的に、否定68、続いて加算72の処理によってベースライン推定を原信号から減算して、ベースラインのふらつきを含まない信号を得る。
【0037】
4.平滑化導関数亜段階
図5は、本発明の一実施形態による、2つのガウスフィルタのグラフである。信号における鋭い偏向ポイントの検出は、信号の速度に基づくものであり、したがって導関数アプローチを用いる。しかしながら、導関数は高域通過フィルタとして作用するため、高周波ノイズを強化する。したがって、導関数推定のノイズを減少させるために我々は平滑化関数を用いる。我々が用いる平滑化関数は、
図5に図示されるユニポーラガウス関数80及びバイポーラガウス関数84を含む、正規化されたゼロ平均のガウス関数である。これらのユニポーラ及びバイポーラガウスフィルタは、それぞれ±2ms及び±1msの時間窓のエネルギーの90%を有する。したがって、これらの値よりも大きい活性化又は接近する遠距離場は、事実上無視され、導関数値には影響しない。
【0038】
アノテーション検出器-I段階26(
図1)
ここで、
図6~9を参照する。
図6はアノテーション検出器-I段階26の概略的ブロック図であり、
図7は、ユニポーラ及びバイポーラ信号、並びにその導関数のグラフであり、
図8は、アノテーションアルゴリズムの第1の拒絶フェーズを図示したグラフを有し、
図9は、本発明の一実施形態による、局所及び遠距離場の候補アノテーションを図示するグラフを有する。
【0039】
図6を参照すると、下記の表Iは、検出器で用いられるパラメータ、及びブロック図での対応する頭字語を提供する。
【0040】
【0041】
図7は、ユニポーラアノテーション周辺のゼロのバイポーラ勾配の例を示す。グラフは、ユニポーラ遠位信号100、その導関数102、その局所活性化(A)、並びにバイポーラ信号104、及びその導関数106を示す。ユニポーラ偏向ポイント(A)では、バイポーラ導関数はほぼゼロであり、バイポーラ振幅の大きな変化を示唆しないことに留意されたい。
【0042】
図8は、
図1のアノテーションアルゴリズムの第1の拒絶段階を図示したグラフを有する。上のグラフ110はユニポーラ信号を示し、下のグラフ114はその平滑化導関数を示す。黒色ドット118は閾値未満の導関数信号の最小値であり、可能なアノテーションポイントとして更に検討され、一方で灰色ドット122は拒絶される閾値を超える最小値を示す。
【0043】
図9は、本明細書で説明するバイポーラ導関数とユニポーラ導関数との比の特徴を用いた局所(A)候補アノテーションと遠距離場(B)候補アノテーションとの分離を図示する。図は、ユニポーラ130及びバイポーラ132信号、並びにユニポーラ136及びバイポーラ138導関数を示す。局所活性化では、ユニポーラ導関数の変化は、2msの活動窓(activity window)140によって図示されるように、バイポーラ導関数の変化によって達成される。しかしながら、窓144によって図示されるように、これは遠距離場によって導かれた偏向(B)には当てはまらず、したがって、遠距離場の場合におけるバイポーラ及びユニポーラ勾配の変化の間の比は、必要な比の閾値を下回る。
【0044】
図6に戻ると、アノテーション検出器-Iブロックの入力値は、試験されている適切なユニポーラ信号導関数、その極性、及びその平滑化バイポーラ導関数である。ブロックの出力値は、アノテーション指標及びこれらの勾配値である(アノテーション指標におけるユニポーラ導関数値)。勾配値はアノテーションのスコアとしての役割を果たす。
【0045】
本発明の一実施形態では、閾値(典型的には-0.01mv/ms)を下回る最小値ポイントを発見することによりブロック90及び92にユニポーラ信号の右下がり勾配における偏向ポイントが検出されるが、これは
図8を更に参照されたい。活動は、以下の他の2つに加えて、この条件を典型的に満たす。
1.ユニポーラ偏向ポイント(典型的には±2ms)周囲の時間窓のバイポーラ平滑化導関数信号(S-BIP)の値は、閾値TH-BIPを負の様式で超えるべきである。
したがってS-BIP<TH-BIPである。一実施形態では、TH-BIPは典型的には約0.008mv/msである。
2.このバイポーラ平滑化導関数値とユニポーラ平滑化導関数勾配値との間の比はTh-Ratioよりも高く、典型的には約0.2であるべきである。
【0046】
#1及び#2は、ブロック94及び96、並びに判定98で評価される。
【0047】
図6を参照すると、バイポーラ導関数値(S-bip)は、正極と負極とでは異なる方法で計算される。開示された実施形態では、正極については、それは2ミリ秒の時間窓内の最小値であり、負極については、それはその時間窓内の最大値の負値である。アノテーションポイントで導関数ではなく時間窓を用いる理由は、特定の病理及び/又は向き(カテーテルと波の伝播の方向の)において、ユニポーラ活性化間の活動の時間遅延が相殺され得るために、所与のポイントでのバイポーラ信号が小さい又は更にはゼロであり得るからである(
図7)。正極における先端の活動はバイポーラ信号において右下がり勾配として認められ、一方、負極での活動はバイポーラ信号において右上がり勾配として認められるため、その値は、正極と負極では異なる方法で計算される。
【0048】
ユニポーラ導関数とバイポーラの導関数との比は、分類の判定基準としても用いられ得るが、それは、この判定基準が近距離場活動と遠距離場活動とを区別し得るためである。近距離場活動では、右下がり勾配の活動の少なくともいくらかは、典型的にはバイポーラ信号で表され、一方で、遠距離場の場合は、バイポーラ信号は残留活動のみを有し得る。
【0049】
ペア排除段階28(
図1)
アルゴリズムのペア排除段階は、単一の活動から生じる2つのアノテーションをマージする役割を担う。このスプリット現象は、何らかの理由で、もう一方の電極で記録された活動、又は一方の電極に他方よりも強い影響を与える遠距離場活動のいずれかによって、近距離場活動の右下がり勾配が瞬間的な右上がり勾配を含む場合に発生し得る。瞬間的な右上がり勾配は、信号の導関数に2つの最小値を生じさせ、これらが十分に強い場合は、これは2つのアノテーションを生じさせる。これらのケースを除外するために、我々は右上がり勾配に起因する信号の変化を評価する。
【0050】
過度に離れていない(典型的には50ms未満)同じユニポーラ信号における全てのアノテーションペアを、スプリットに関して分析する。ユニポーラ導関数信号の2つの候補アノテーション間のセグメントを右上がり勾配に関して分析する。右上がり勾配の振幅が有意であると考えられる時は、2つのアノテーションは維持される。そうでない場合は、より小さな右下がり勾配を有するアノテーションは捨てられる。
【0051】
図10は、本発明の一実施形態による、候補アノテーションのマージ、及びどのように拒絶判定基準が用いられるかを図示するグラフ150である。グラフは、ユニポーラ導関数信号及び2つの可能なアノテーション(A[i]及びA[i+1])と記された円)を示す。
【0052】
ペア排除ブロック38の目的は、最小の導関数振幅と、2つの可能なアノテーション間のピークPと、の間の右上がり勾配振幅の変化(垂直の両矢印でマークされている)が有意であるか否かを判定することである。変化が有意であると考えられる場合は両方のアノテーションが維持され、そうでない場合は、より弱い活性化(A[i])が捨てられる。
【0053】
したがって、捨てられるアノテーションA[i]に関しては、50msの時間窓A[i+1]内でより強い勾配を有する、任意の隣接する候補アノテーション間での、ピーク振幅(P)に対する相対的な変化が考えられる。ピークが有意に高い場合は、このポイントは拒絶されない。数学的条件では、一実施形態では、(P-A[i])/(0.02-A[i])の値が0.5未満である場合、アノテーションA[i]が捨てられる。即ち、50msの時間窓内の1つ又は2つ以上のアノテーションが上記のルールに従う場合は、アノテーションA[i]は拒絶される。
【0054】
アノテーション検出器II段階30(
図1)
前フェーズを通過した候補アノテーションを、追加的な特徴及び測定基準を用いてこのブロックで再評価する。このブロックを通過して、更にユーザーのバイポーラ電圧で制御された閾値も通過するアノテーションのみが、有効なアノテーションと考えられる。各アノテーションに関して、複数の特徴を計算する。各特徴値に対して、特徴の信頼値に対応する0~1の範囲のファジースコアを付与する。最後に、全てのスコアを組み合わせてこれらの値をグローバルスコア閾値に対して試験する。グローバルスコア閾値を通過する、即ち高い信頼値を有するアノテーションは有効なアノテーションとみなされ、通過しない、即ち低い信頼値を有するアノテーションは拒絶される。
【0055】
本明細書で説明するファジー関数は、本発明の一実施形態で用いられる関数の例である。しかしながら、その他のファジー関数又はその他の確率論/関数も、当業者には明らかであり、そのような関数は全て本発明の範囲内に含まれると想定される。更に、特定の要件では、複数のファジースコアを用いてもよい(例えば、強い又は小さいバイポーラ信号をハイライトするファジー関数など)。
【0056】
全てのファジー関数は、0~1の間で有界である。
【0057】
ブロックが用いる特徴は、以下の通りである。
1.ユニポーラ導関数値
2.ユニポーラ勾配の持続時間s2
3.時間窓s2でのユニポーラ勾配の振幅
4.上記の持続時間と振幅との間の比
5.時間窓-s2におけるバイポーラ信号の振幅
【0058】
5つの特徴について下記で説明する。
【0059】
1.ユニポーラ導関数
図11は、本発明の一実施形態による、ユニポーラ導関数のファジー関数のグラフ160である。グラフは、導関数に割り当てられるスコアf(s
1)を提供し、本明細書では導関数値はs
1と称される。グラフに示すように、-0.07未満の導関数値には1のスコアが与えられ、-0.07を超える値は、勾配の-0.018で0.5のスコアが到達されるように直線状に減少する。-0.01未満の導関数値には0のスコアが与えられる。
【0060】
ユニポーラ導関数s1は両方の検出器段階で用いられるが、0.01mv/msの二分閾値(dichotomy threshold)を有する第1の段階とは異なり、本明細書ではその値はスコアf(s1)を提供するために用いられる。スコアが高いほど、この特徴のみに従ってこれが有効なアノテーションである可能性がより高くなる。
【0061】
2.ユニポーラ活動のセグメンテーション及び持続時間
図12は、本発明の一実施形態による、ユニポーラ信号のセグメンテーションを図示するグラフを示す。セグメンテーションについて下記でより詳細に説明する。ユニポーラ信号170及びその導関数174は、候補アノテーションの時間指標176(黒点)の周囲に図示されている。閾値を示す水平点線180は、両方向の探索セグメント(search segment)(典型的には約±25ms)をマークする。一実施形態では、セグメント値は、アノテーションポイントにおける絶対最大ユニポーラ導関数値の20%として定義される。セグメントA、Bは、信号導関数が閾値未満である検索窓内の時間間隔をマークする。この実施例の最終セグメントは、セグメントAか、あるいは特定の条件(本明細書の下記で説明する)が満たされる場合は、開始Aで始まりBで終結する結合セグメントか、のいずれであってもよい。
【0062】
我々がユニポーラ信号から導く特徴は、候補アノテーション周囲の右下がり勾配セグメントの持続時間s2である。この目的は、その初期下降から右上がり勾配を開始するまでの間にユニポーラの右下がり勾配を検出することである。その動機は、そのセグメントにおける持続時間の特性、振幅、及びこれらの関係などの信号の特徴を検査して、これらを分類器の基準として用いることである。本発明者らは、この課題のためにいくつかの方法を検討し、それら全てが明白な単一勾配のケースでは効果があったが、勾配セグメント内で勾配の傾向の変化、及び局所的ピークを有する複雑なケースでも効果があるために、本明細書で説明される方法が選択された。
【0063】
図12を参照すると、セグメンテーションは以下の工程を介してユニポーラ導関数を分析することに基づく。
1.候補アノテーションの時間指標176上に集中したユニポーラ信号導関数174の50msセグメントを、それに対してセグメントが画定され得る閾値線180の最大スパンとみなす。
図12では、スパンは線180の端点182と186との間にある。我々は、ユニポーラ信号の右下がり勾配セグメントは、この50msの時間窓内に制限されているものとみなす。セグメントがこれよりも大きい場合は、これは、この50msの区画に強制的に限定される(force-bounded)。
2.導関数セグメントの振幅を、一定の閾値に対して比較する。本明細書で説明する実施形態における閾値は、候補アノテーション時間においてユニポーラ導関数値の20%であると推定される。その値未満である線180上のセグメントは、
図12で2つのセグメントA及びBとしてマークされている。
3.次の工程は、セグメントの境界を計算して、これらのセグメントにおける信号の絶対値の合計に対応する、各サブセグメントの個別の導関数未満領域を合計することである。
4.セグメントのマージ。間を占めるセグメント、及びこれらの面積に基づいて、最終セグメントが主セグメント(A)又は追加的セグメント(B)のどちらを含むべきか決定する。一実施形態では、セグメントを結合するために、隣接する端点は互いから1ms以下でなければならず、追加的セグメント(B)の面積は、Bの信号δがAの信号δの30%未満となるように、主セグメントの30%未満であるべきである。
【0064】
本明細書ではs
2と称される、上記の工程から求められた持続時間に、続いて、
図13に関連して下記で説明されるファジー関数を用いたスコアf(s
2)を割り当てる。
【0065】
図13は、本発明の一実施形態による、ユニポーラ持続時間のファジー関数のグラフ190である。2ms未満の非常に短い勾配は、実際の活性化から生じたものではないことが疑われ、非常に長い活性化は、おそらく遠距離場のイベントである。更に、局所的な有効活性化のユニポーラ持続時間は、短すぎてもいけず、長すぎてもいけない。上記の観察は、スコアf(s
2)を提供する
図13のファジー関数に要約される。関数ポイント192、194は、{2,0.5}、{19,0.5}であり、勾配はそれぞれ0.5及び-0.5である。
【0066】
3.ユニポーラ振幅
図14は、本発明の一実施形態による、ユニポーラ振幅のファジー関数のグラフ200である。ユニポーラ振幅は、検出された活動セグメント(ピーク対ピーク)の持続時間s
2におけるユニポーラ信号の振幅である(本明細書ではs
3と称される)。一実施形態では、ファジー関数勾配は、ポイント202、204{0.1,0.5}、{0.42,1}で交差する。ファジー関数から導かれたスコアf(s
3)は、信号の振幅よりも高い。即ち、高いスコア及び高い振幅の場合、遠距離場信号が大きな振幅を有していない限り、信号は局所活性化に由来している可能性が高い。
【0067】
4.ユニポーラ持続時間と振幅との比
図15は、本発明の一実施形態による、ユニポーラ持続時間と振幅との比のファジー関数のグラフ210である。活動が長くなるほど振幅は小さくなり、これは誤ったアノテーションである可能性が高いため、ユニポーラ持続時間と振幅との比は、高い比の値を除外する。一実施形態では、ファジー関数線の式は、
f(s
4)=-0.0184・s
4+1.283 (1)であり、
式中、s
4は、持続時間と振幅との比であり、
f(s
4)は比に割り当てられるスコアである。
【0068】
5.バイポーラ振幅
図16は、本発明の一実施形態による、バイポーラ振幅のファジー関数のグラフ220である。ユニポーラ活動セグメント内のバイポーラ振幅(ピーク対ピーク)であるs
2もまた、候補アノテーションの可能性をスコア付けするために用いられる。値が高いほど、これが真の活性化である可能性が高まる。
【0069】
ファジー関数の式は、
f(s5)=25・s5,0≦s5≦0.04;f(s5)=1,s5>0.04 (2)であり、
式中、s5はバイポーラ振幅であり、
f(s5)は振幅に割り当てられるスコアである。
【0070】
振幅は、ガウス低域通過フィルタ及びアンチエイリアシングフィルタの後で、ベースラインによって拒絶されたバイポーラによって平滑化された信号に基づいて計算される。
【0071】
6.最終スコア
上述したように、各特徴はスコアを付与され、スコアはグローバルスコアの生成時に共に用いられる。この意図は、特徴は、アノテーションの取り入れ又は除外において相互に支援し得るというものである。一実施形態では、我々が用いたスコア法は、以下に定義される通りである。
【0072】
【0073】
有効であるとみなされるアノテーションの場合、GSの値は、例えば0.8の特定の閾値を通過するべきである。
【0074】
上記で例示したものとは異なるが、同等の結果を有するグローバルスコアを本発明の実施形態で用いてもよいことが、当業者には明らかになるであろう。こうしたグローバルスコアは、個々のスコアの加重平均、及び/又は個々のスコアのドット積のほぼ全ての組み合わせを含むことができる。こうしたグローバルスコアはまた、ファジー特徴のサブセットに基づくスコア構成を含み得る。本発明の範囲は、こうしたグローバルスコアの全てを含む。
【0075】
バイポーラ振幅のフィルタリング
いくつかの実施形態では、アルゴリズムの最終段階は、低いバイポーラ振幅を有する場合に検出されたアノテーションを排除する能力をユーザーに提供するように設計されている。必要な振幅の閾値は、ユーザーによって制御される。バイポーラ振幅のフィルタリングは、処理後段階を超えた各アノテーションのバイポーラ振幅と、閾値とを比較する。閾値を超えるバイポーラ振幅を有するアノテーションのみがシステムに渡される。(ユーザーがこの段階をスキップすることを望む場合は、ユーザーは閾値を0に設定して、この段階のルールを排除してもよい)。
【0076】
各アノテーションのバイポーラ振幅は、ピーク対ピーク振幅、除去されたベースライン、アノテーション時間を中心とした14ms窓の1KHzバイポーラ信号(最大ユニポーラ速度ポイント)を測定することにより定義される。一実施形態では、バイポーラ振幅閾値のシステムデフォルト値は、30マイクロボルトに設定されている。
【0077】
このバイポーラ振幅は固定間隔で測定されるため、このバイポーラ振幅は、ファジー制御されたバイポーラ振幅(上述)とは異なる。ファジー分類器は、ユニポーラ活性化の動的セグメントを用いるため、いくつかの実施形態では、動的セグメントは分類器としてより有意性があり得る。更に、この分類器は、ユーザー制御される二値(dichotomic)閾値として用いられる。
【0078】
アルゴリズム最終出力値
ファジースコア及びバイポーラのユーザーによって制御されるバイポーラ振幅を通過する全てのアノテーションは、プロセッサによって用いることのできる有効なアノテーションとみなされる。
【0079】
一実施形態では、各アノテーションは以下の特徴を有するべきである。
1.アノテーション時間指標
2.ユニポーラ及びバイポーラ導関数値
3.ファジースコア
4.ユニポーラによって検出された(unipolar detected)右下がり勾配セグメント持続時間
5.そのセグメント内のユニポーラ振幅
6.そのセグメント内のバイポーラ振幅
7.ユーザーによって制御された値のバイポーラ振幅
更に、以下を含む追跡ファイル(trace files)が提供されてもよい。
1.各特徴に対する特定のファジースコア
2.ユニポーラセグメントの開始及び終了時間指標
【0080】
図17は、本発明の一実施形態による、装置400を用いた侵襲性医療処置の概略図である。手順は、医療専門家402によって実施され、また一例として、本明細書の下記の説明における手順は、ヒト患者406の心臓404からECG信号を取得することを含むと想定される。
【0081】
信号を取得するために、専門家402は、患者の内腔内に予め配置されたシース410にプローブ408を挿入する。シース410は、プローブの遠位端412が、シースの遠位端414から抜け出た後に患者の心臓に侵入して、心臓の組織に接触し得るように配置される。
【0082】
プローブ408は、患者の心臓に挿入することが可能で、かつ典型的には磁気追跡システム及び/又はインピーダンス測定システムを用いて追跡可能な任意のタイプのカテーテルを含んでもよい。例えば、プローブ408は、ラッソーカテーテル、シャフト様カテーテル、若しくはBiosense Webster(Diamond Bar,CA)製pentaRayカテーテル、又はこれらのカテーテルに概ね類似するカテーテルを含んでもよい。Biosense Websterは、本発明の実施形態で使用可能な磁気追跡システム及びインピーダンス測定システムも製造している。
【0083】
プローブ408は、本明細書で説明されるアルゴリズムの実施中にプロセッサ20によって使用されるECG信号を取得するために用いられる少なくとも2つの電極411を含む。
【0084】
装置400はプロセッサ20(
図1)によって制御され、プロセッサは、典型的にはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)として構成されるリアルタイムノイズリダクション回路420、続いてアナログ・デジタル(A/D)信号変換集積回路424を含み得る。プロセッサは、信号をA/D回路424から別のプロセッサに渡すことができ、また、本明細書に開示されるアルゴリズムを実施するようにプログラム可能である。
【0085】
プロセッサ20は、装置の操作コンソール430に設置されている。コンソール430は、専門家402によって用いられてプロセッサと通信するための制御装置432を含む。手順の間、プロセッサ20は、ECG信号を取得し、並びに本明細書で開示されるアルゴリズムを実施するために、モジュールバンク440内のECGモジュール436と通信する。
【0086】
ECGモジュール436は電極411からECG信号を受信する。一実施形態では、信号は、モジュール436で低ノイズ前置増幅器438を通り、帯域通過フィルタ440を介して、主増幅器442に転送される。モジュール436は、本明細書で説明されたアルゴリズムをプロセッサによって実装するために、ECG信号のデジタル化された値をプロセッサ20に転送するアナログ・デジタル変換器(ADC)444を更に含む。典型的には、プロセッサ20は前置増幅器438、フィルタ440、増幅器442、及びADC 444の操作を制御する。
【0087】
かくして、ECGモジュール436によって、電極411が受信した、本明細書で参照されたECG信号を含むEP(電気生理学的)信号を、プロセッサ20が取得して分析することが可能となる。信号は、典型的には、表示画面450にリアルタイムで更新される電圧/時間グラフとして専門家402に示される。
【0088】
プロセッサ20及びモジュールバンク440のソフトウェアは、例えばネットワークを介した電子的形態でプロセッサにダウンロード可能である。あるいは又は更には、ソフトウェアは、例えば、光学的、磁気的、又は電子的記憶媒体のような非一時的有形媒体上で提供され得る。
【0089】
装置12を操作するために、モジュールバンク50は、典型的には、プロセッサがプローブ408の遠位端を追跡することを可能にする1つ又は2つ以上の追跡モジュールなどの、上記のECGモジュール以外のモジュールを含む。分かりやすさのために、こうしたその他のモジュールは
図1に図示されていない。全てのモジュールはハードウェア及びソフトウェア要素を含み得る。
【0090】
電極411によって取得されたECG信号を示す表示画面450に加えて、更に、本明細書で説明するアルゴリズムの結果452を表示画面上でアルゴリズムのユーザーに示してもよい。
【0091】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し、説明したものに限定されない点は理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記されている種々の特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせと、前述の説明を読むことに基づいて当業者が想起するであろう、先行技術に開示されていない変形例及び修飾と、の両方を含む。
【0092】
〔実施の態様〕
(1) ヒト被験体の心筋に近接する一対の電極からバイポーラ信号を受信すること、
前記一対の電極のうちの選択された一方からユニポーラ信号を受信すること、
前記ユニポーラ信号の局所ユニポーラ最小導関数、及び前記ユニポーラ最小導関数の発生時刻を計算すること、
前記バイポーラ信号のバイポーラ導関数を計算すること、
前記バイポーラ導関数と前記局所ユニポーラ最小導関数との比を求めること、並びに
前記比が予め設定された閾値の比の値を超える場合は、前記心筋の活性化時間として前記発生時刻を特定すること、を含む、方法。
(2) 前記バイポーラ導関数が予め設定されたバイポーラ導関数の閾値を下回る場合は、前記心筋の前記活性化時間として前記発生時刻を割り当てることを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記局所ユニポーラ最小導関数が予め設定されたユニポーラ導関数の閾値を下回る場合は、前記心筋の前記活性化時間として前記発生時刻を割り当てることを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記発生時刻に対応する信頼水準が予め設定された信頼水準を上回る場合は、前記心筋の前記活性化時間として前記発生時刻を割り当てることのみを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記バイポーラ信号の振幅が予め設定されたバイポーラ信号の閾値を上回る場合は、前記心筋の前記活性化時間として前記発生時刻を割り当てることのみを含む、実施態様4に記載の方法。
【0093】
(6) ヒト被験体の心筋に近接して配置されるように構成された一対の電極と、
プロセッサであって、
前記一対の電極からバイポーラ信号を受信し、
前記一対の電極のうちの選択された一方からユニポーラ信号を受信し、
前記ユニポーラ信号の局所ユニポーラ最小導関数、及び前記ユニポーラ最小導関数の発生時刻を計算し、
前記バイポーラ信号のバイポーラ導関数を計算し、
前記バイポーラ導関数と前記局所ユニポーラ最小導関数との比を求め、かつ
前記比が予め設定された閾値の比の値を超える場合は、前記心筋の活性化時間として前記発生時刻を特定するように構成されたプロセッサと、を含む、装置。
(7) 前記バイポーラ導関数が予め設定されたバイポーラ導関数の閾値を下回る場合は、前記心筋の前記活性化時間として前記発生時刻を割り当てることを更に含む、実施態様6に記載の装置。
(8) 前記局所ユニポーラ最小導関数が予め設定されたユニポーラ導関数の閾値を下回る場合は、前記心筋の前記活性化時間として前記発生時刻を割り当てることを更に含む、実施態様6に記載の装置。
(9) 前記発生時刻に対応する信頼水準が予め設定された信頼水準を上回る場合は、前記心筋の前記活性化時間として前記発生時刻を割り当てることのみを含む、実施態様6に記載の装置。
(10) 前記バイポーラ信号の振幅が予め設定されたバイポーラ信号の閾値を上回る場合は、前記心筋の前記活性化時間として前記発生時刻を割り当てることのみを含む、実施態様9に記載の装置。