IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 菱和コンクリート株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-護岸ブロックおよび護岸構造物 図1
  • 特許-護岸ブロックおよび護岸構造物 図2
  • 特許-護岸ブロックおよび護岸構造物 図3
  • 特許-護岸ブロックおよび護岸構造物 図4
  • 特許-護岸ブロックおよび護岸構造物 図5
  • 特許-護岸ブロックおよび護岸構造物 図6
  • 特許-護岸ブロックおよび護岸構造物 図7
  • 特許-護岸ブロックおよび護岸構造物 図8
  • 特許-護岸ブロックおよび護岸構造物 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】護岸ブロックおよび護岸構造物
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/14 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
E02B3/14 301
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017158299
(22)【出願日】2017-08-20
(65)【公開番号】P2019035290
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】508079441
【氏名又は名称】菱和コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145517
【弁理士】
【氏名又は名称】宮原 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】新海 秀貴
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
(72)【発明者】
【氏名】小塚 雄治
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-336675(JP,A)
【文献】特開2007-239237(JP,A)
【文献】特開2002-194754(JP,A)
【文献】特開2000-282494(JP,A)
【文献】特開2003-020661(JP,A)
【文献】特開2017-106233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04-3/14
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段に積み上げ可能な護岸ブロックであって、
前板部と、
前記前板部の後方に設けられた後板部と、
前記前板部と前記後板部との間に上下方向の間隙を形成するための連結板部とを備え、
前記前板部の外形は長方形状であり、当該前板部は前記連結板部の上面よりも上方に張り出した第1張出部を有しており、
前記後板部の外形は長方形状であり、当該後板部は前記連結板部の下面よりも下方に張り出し、かつ、前記第1張出部と上下方向寸法が同じ第2張出部を有しており、
前記連結板部の下面には、前記第2張出部と上下方向寸法が同じ支持部であって、前記連結板部の下面を支持する支持部が設けられており、
前記護岸ブロックの前記後板部の前記第2張出部と前記支持部とを、下段側の前記護岸ブロックの前記前板部の前記第1張出部の後側に挿入することにより、前記護岸ブロックは前記下段側の護岸ブロックに積み上げ可能である、護岸ブロック。
【請求項2】
前記前板部の下面は前記連結板部の下面と面一であり、前記後板部の上面は前記連結板部の上面と面一であり、前記後板部の下面は前記支持部の下面と面一である、
請求項1に記載の護岸ブロック。
【請求項3】
前記前板部と前記後板部は後ろ向きに傾いていて、前記前板部の前面と前記後板部の後面は平行である、
請求項1または2に記載の護岸ブロック。
【請求項4】
前記支持部の上面の前後方向寸法は、前記前板部の前面と前記後板部の前面との前後方向寸法から前記第1張出部の厚さを減じた寸法に一致しており、
前記支持部の下面の前後方向寸法は、前記支持部の上面の前後方向寸法よりも僅かに小さい、
請求項3に記載の護岸ブロック。
【請求項5】
前記護岸ブロックは、前記後板部の下面と前記支持部の下面とで自立できるように重心位置が設定されている、
請求項3または4に記載の護岸ブロック。
【請求項6】
前記前板部の下部には、重心位置調整のための肉厚部が設けられており、
前記連結板部には、重心位置調整を兼ねる連結孔が左右方向に形成されている、
請求項5に記載の護岸ブロック。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の護岸ブロックを裏込材層の表面に沿って多段に積み上げて構築された護岸構造物であって、
上段側の護岸ブロックは、後板部の第2張出部と支持部を下段側の護岸ブロックの前板部の第1張出部の後側に挿入されていて、支持部の下面が下段側の護岸ブロックの連結板部の上面に接するように積み上げられており、
多段に積み上げられた護岸ブロックそれぞれの間隙には胴込コンクリート部が設けられている、
護岸構造物。
【請求項8】
最上段の護岸ブロックの前板部の第1張出部の後側には、第1張出部と上下方向寸法が同じ天端コンクリート層が設けられている、
請求項7に記載の護岸構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、護岸ブロックと、この護岸ブロックを用いて構築された護岸構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
後記特許文献1には、前面および後面との間の中央に上面から下面に至る中空部が設けられその両側に上面から下面に至る凹部が設けられているとともに、上面の中空部および凹部を除く部分に嵌合突起が設けられ、下面の中空部および凹部を除く部分に嵌合凹部が設けられたコンクリートブロック(以下、単にブロックと言う)が開示されている。このブロックは、下側ブロックの嵌合突起に上側ブロックの嵌合凹部が嵌まり込むようにして、裏込材の表面に沿ってブロックの積み上げを行い、積み上げられたブロックの中空部および凹部にコンクリートを充填することにより施工されるものである。
【0003】
しかしながら、前記ブロックは、下側ブロックに上側ブロックを積み上げるときに、下側ブロックの嵌合突起に上側ブロックの嵌合凹部を位置合わせしながら嵌め込む作業が必要となる。この嵌め込み作業は、サイズが小さいブロックでも数百kgの質量があることも相俟って、熟練者でも難しい作業である。すなわち、前記ブロックは、その積み上げに係る労力および時間が嵩むために施工性が良いとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-106233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、積み上げに係る労力および時間を軽減して施工性の向上を図れる護岸ブロックと、この護岸ブロックを用いて高施工性下で構築できる護岸構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る護岸ブロックは、多段に積み上げ可能な護岸ブロックであって、前板部と、前記前板部の後方に設けられた後板部と、前記前板部と前記後板部との間に上下方向の間隙を形成するための連結板部とを備え、前記前板部の外形は長方形状であり、当該前板部は前記連結板部の上面よりも上方に張り出した第1張出部を有しており、前記後板部の外形は長方形状であり、当該後板部は前記連結板部の下面よりも下方に張り出し、かつ、前記第1張出部と上下方向寸法が同じ第2張出部を有しており、前記連結板部の下面には、前記第2張出部と上下方向寸法が同じ支持部であって、前記連結板部の下面を支持する支持部が設けられており、前記護岸ブロックの前記後板部の前記第2張出部と前記支持部とを、下段側の前記護岸ブロックの前記前板部の前記第1張出部の後側に挿入することにより、前記護岸ブロックは前記下段側の護岸ブロックに積み上げ可能である。
【0007】
一方、本発明に係る護岸構造物は、前掲の護岸ブロックを裏込材層の表面に沿って多段に積み上げて構築された護岸構造物であって、上段側の護岸ブロックは、後板部の第2張出部と支持部14を下段側の護岸ブロックの前板部の第1張出部の後側に挿入されていて、支持部の下面が下段側の護岸ブロックの連結板部の上面に接するように積み上げられており、多段に積み上げられた護岸ブロックそれぞれの間隙には胴込コンクリート部が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、積み上げに係る労力および時間を軽減して施工性の向上を図れる護岸ブロックと、この護岸ブロックを用いて高施工性下で構築できる護岸構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(A)は本発明を適用した護岸ブロックを前から見た図、図1(B)は同護岸ブロックを後から見た図、図1(C)は同護岸ブロックを右側から見た図、図1(D)は同護岸ブロックを上から見た図、図1(E)は同護岸ブロックを下から見た図、図1(F)は図1(A)のS1-S1線断面図である。
図2図2は本発明を適用した護岸構造物の縦断面図である。
図3図3(A)および図3(B)は図2に示した護岸構造物を前から見たときの護岸ブロックの積み上げ配列をそれぞれ示す図である。
図4図4図2に示した護岸構造物の施工方法例の説明図である。
図5図5図2に示した護岸構造物の施工方法例の説明図である。
図6図6図2に示した護岸構造物の施工方法例の説明図である。
図7図7図2に示した護岸構造物の施工方法例の説明図である。
図8図8図2に示した護岸構造物の施工方法例の説明図である。
図9図9(A)は図1に示した護岸ブロックの変形例を示す図1(D)対応図、、同変形例を示す図1(E)対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、図1を用いて、本発明を適用した護岸ブロック10の構成について説明する。なお、この説明では、便宜上、図1(C)の左側を前、右側を後、奥側を左、手前側を右、上側を上、下側を下と表記し、他の図についてもこれらに準じて向きを表記する。また、この説明中の「寸法が同じ」と「面が平行」と「角度が同じ」と「面一」と「厚さが一定」と「寸法が一致」と「直角」等の表記は設計上の基準寸法に基づく便宜的なものであり、製造公差を含めると実際上は当該公差内で異なる場合もあり得る。
【0011】
図1に示した護岸ブロック10は、前板部11と、後板部12と、2個の連結板部13と、2個の支持部14とを備えたプレキャストコンクリートブロックである。図1(D)および図1(E)に示したように、2個の連結板部13は、前板部11と後板部12とを連結する役割を果たす他、前板部11と後板部12との間に上下方向の3個の間隙GAを形成する役割を果たしている。なお、護岸ブロック10は内部鉄筋を有しているが、図1(F)にはその図示を省略している。
【0012】
図1(A)および図1(B)に示したように、前板部11の外形と後板部12の外形はいずれも長方形状であって、前板部11の左右方向寸法W11と後板部12の左右方向寸法W12は同じであり、前板部11の上下方向寸法H11と後板部12の上下方向寸法H12は同じである。また、図1(C)に示したように、前板部11と後板部12は同じ角度θにて後ろ向きに傾いていて、前板部12の前面と後板部13の後面は平行である。
【0013】
さらに、図1(A)~図1(C)および図1(F)に示したように、前板部11の上部は各連結板部13の上面よりも上方に張り出した第1張出部11aとなっており、後板部12の下部は各連結板部13の下面よりも下方に張り出した第2張出部12aとなっており、第1張出部11aの上下方向寸法H11aと第2張出部12aの上下方向寸法H12aは同じである。
【0014】
さらに、図1(A)および図1(C)~図1(F)に示したように、前板部11の前面には、外形が長方形状を成し、かつ、表面に岩肌模様や石肌模様等が付された複数(図面では計12個)の化粧部1bが左右方向と上下方向に隙間を介して並ぶように設けられている。図1(A)から分かるように、左右方向隙間の位置が上下方向でずれるように、左右方向で並ぶ化粧部11bの左右寸法は同一ではない。すなわち、前板部11の前面に設けられた複数の化粧部11bは、石垣のような景観が得られるような態様となっている。
【0015】
さらに、図1(C)および図1(F)に示したように、前板部11は互いが平行な上面および下面を有しており、後板部12も互いが平行な上面および下面を有しており、各連結板部13も互いが平行な上面および下面を有している。さらに、図1(C)および図1(F)に示したように、前板部11の下面は各連結板部13の下面と面一であり、後板部12の上面は各連結板部13の上面と面一であり、後板部12の下面は各支持部14の下面と面一である。さらに、図1(D)に示したように、左側の連結板部13の左右方向中心は前板部11の左端から「左右方向寸法W11の1/4」の位置にあり、右側の連結板部13の左右方向中心は前板部11の右端から「左右方向寸法W11の1/4」の位置にある。
【0016】
さらに、図1(C)および図1(E)に示したように、前板部11の厚さは、第1張出部11aを含む上部が一定で、上部を除く部分(肉厚部11c)が下方に向かって大きくなっている。この厚さ変化は、後述する重心位置調整に関する配慮であり、前板部11の剛性向上の役割も果たしている。さらに、図1(C)~図1(E)に示したように、各連結板部13の前板側13aには横断面形が台形状を成す補強部13aが形成されている。この補強部13aは、後述する重心位置調整に関する配慮であり、各連結板部13と前板部11との連結強化の役割も果たしている。さらに、図1(C)および図1(F)に示したように、各連結板部13には前記間隙GAと連通する縦断面形が台形状を成す連絡孔13bが左右方向に形成されている。各連結板部13において連絡孔13bの下側部分の縦断面積が上側部分の縦断面積よりも大きくなるような縦断面形の連絡孔13bを採用しているのは、後述する重心位置調整に関する配慮である。
【0017】
さらに、図1(C)および図1(E)に示したように、各支持部14は、各連結板部13の左右方向寸法よりも若干大きな左右方向寸法、あるいは、各連結板部13の左右方向寸法と同じ左右方向寸法を有している。さらに、図1(C)に示したように、各支持部14の上下方向寸法は、第2張出部12aの上下方向寸法H12aと同じである。さらに、図1(C)に示したように、各支持部14の上面の前後方向寸法は、前板部11の前面と後板部12の前面との前後方向寸法から第1張出部11aの厚さを減じた寸法に一致しており、各支持部14の下面の前後方向寸法は、各支持部14の上面の前後方向寸法よりも僅かに小さい。具体的には、各支持部14の後面は角度θにて後ろ向きに傾いているものの、各支持部14の前面14aは各支持部14の上面および下面と直角を成している。
【0018】
参考までに、図1の基になっている護岸ブロックの仕様は、前板部11の左右方向寸法W11と後板部12の左右方向寸法W12が1250mm、前板部11の上下方向寸法H11と後板部12の上下方向寸法H12が800mm、第1張出部11aの上下方向寸法H11aと第2張出部12aの上下方向寸法H12aが100mm、前板部11の前面と後板部12の後面との前後方向寸法D10が330mm、各化粧部11bの厚さが50mm、前板部11と後板部12の傾斜角度θが63.4度、質量が380kgである。
【0019】
ここで、護岸ブロック10の重心位置について説明する。一般に護岸構造物の施工に際し、護岸ブロックは施工前や施工途中に現場に搬入して保管されるが、保管スペースの観点からすると自立できる護岸ブロックの方がスペース削減に有効であり、また、施工の観点からすると自立できる護岸ブロックの方がクレーンによる搬送時および積み上げ時の姿勢制御が極めて容易になる。
【0020】
例えば、護岸ブロック10が前記のような仕様の場合、前後方向寸法D10が小さいために重心位置の調整を行わないと、当該護岸ブロック10を自立させることはできない。そのため、先に述べたように、前板部11に肉厚部11cを設ける手法、各連結板部13に補強部13aを設ける手法、各連結板部13の連結孔13bの縦断面形を工夫する手法等によって、護岸ブロック10の重心位置の調整が施されている。すなわち、護岸ブロック10の重心を図1(C)に示した支持部14の下面の上方に位置するように調整することによって、護岸ブロック10を図1(C)に示した姿勢で自立できるようにしている。
【0021】
次に、図2を用いて、本発明を適用した護岸構造物20、すなわち、図1に示した護岸ブロック10を用いて構築された護岸構造物20の構成について説明する。なお、この説明では、便宜上、図2の左側を前、右側を後、奥側を左、手前側を右、上側を上、下側を下と表記する。
【0022】
図2に示した護岸構造物20は、地盤21の法面に設けられた裏込材層22と、裏込材層22の下端部に設けられた基礎材層23と、基礎材層23の上に設けられた基礎コンクリート部24と、基礎コンクリート部24を基準として裏込材層22の表面に沿って多段に積み上げられた護岸ブロック10と、積み上げられた護岸ブロック10それぞれの間隙GAに設けられた胴込コンクリート部25と、最上段の護岸ブロック10の前板部11の第1張出部11aの後側に設けられた天端コンクリート層26と、天端コンクリート層26の上面と地盤21の上面を覆う盛土部27とを備えている。
【0023】
地盤21は、河岸や海岸や湖岸等の岸を整地したものである。裏込材層22と基礎材層23は、砕石や再生砕石等から成る。基礎コンクリート部24の上面には、護岸ブロック10の後板部12の第2張出部12aと各支持部14を受容する凹部24aが左右方向に形成されている。胴込コンクリート部25は、護岸ブロック10それぞれの間隙GAの他に、各連結板部13の連絡孔13bにも入り込んでいる。天端コンクリート層26は、最上段の護岸ブロック10の前板部11の第1張出部11aの後側から裏込材層22の上面に及んで作製されており、その上下方向寸法は第1張出部11aの上下方向寸法11aと同じである。
【0024】
多段に積み上げられた護岸ブロック10は、前から見たときに図3(A)または図3(B)に示した積み上げ配列となっている。図3(A)に示した積み上げ配列は、下段側の護岸ブロック10に上段側の護岸ブロック10が左右方向にずれずに積み上げられたマトリクス配列である。一方、図3(B)に示した積み上げ配列は、下段側の護岸ブロック10に上段側の護岸ブロック10が前板部11の左右方向寸法W11の1/2だけ左右方向にずれて積み上げられた千鳥配列である。
【0025】
次に、図4図8を用いて、図2に示した護岸構造物20の構成理解を補うために、図2に示した護岸構造物20の施工方法例について説明する。なお、この説明では、便宜上、図4の左側を前、右側を後、奥側を左、手前側を右、上側を上、下側を下と表記し、他の図についてもこれらに準じて向きを表記する。また、ここで説明する施工方法はあくまでも一例であって、護岸構造物20の施工方法を制限するものではない。
【0026】
最初に地盤21の法面に裏込材層22を作製するとともにその下端部に基礎材層23を作製し、続いて、基礎材層23の上に凹部24aを有する基礎コンクリート部24を作製する。
【0027】
続いて、図4に示したように、クレーンによって搬送された護岸ブロック10の後板部12の後面を裏込材層22の表面に接触させた後に当該護岸ブロック10を降下させて、1段目の護岸ブロック10(1個目)の後板部12の第2張出部12aと各支持部14を、基礎コンクリート部24の凹部24aに挿入して設置する。続いて、この護岸ブロック10の左側と右側の少なくとも一方に別の護岸ブロック10を同様に設置して左右方向に並べる作業を繰り返して、1段目の護岸ブロック10の積み上げを行う。
【0028】
続いて、図5に示したように、クレーンによって搬送された護岸ブロック10の後板部12の後面を裏込材層22の表面に接触させた後に当該護岸ブロック10を降下させて、2段目の護岸ブロック10(1個目)の後板部12の第2張出部12aと各支持部14を、1段目の護岸ブロック10の前板部11の第1張出部11aの後側に挿入して設置する。続いて、この護岸ブロック10の左側と右側の少なくとも一方に別の護岸ブロック10を同様に設置して左右方向に並べる作業を繰り返して、2段目の護岸ブロック10の積み上げを行う。
【0029】
先に述べたように、護岸ブロック10の左側の連結板部13の左右方向中心が前板部11の左端から「左右方向寸法W11の1/4」の位置にあり、右側の連結板部13の左右方向中心が前板部11の右端から「左右方向寸法W11の1/4」の位置にあるため、2段目の護岸ブロック10の積み上げ配列には図3(A)に示したマトリクス配列と図3(B)に示した千鳥配列の一方を選択的に採用することができる。
【0030】
また、護岸ブロック10の前板部11の第1張出部11aの上下方向寸法H11aと後板部12の第2張出部12aの上下方向寸法H12aが同じであり、かつ、各支持部14の上下方向寸法が第2張出部12aの上下方向寸法H12aが同じであるため、積み上げられた2段目の護岸ブロック10それぞれは、各支持部14の下面が1段目の護岸ブロック10の連結板部13の上面に接する。また、積み上げられた2段目の護岸ブロック10それぞれは、前板部11の下面が1段目の護岸ブロック10の前板部11の上面に接し、かつ、後板部12の下面が1段目の護岸ブロック10の後板部12の上面に接する。すなわち、2段目の護岸ブロック10それぞれを安定した姿勢で1段目の護岸ブロック10に積み上げることができる。
【0031】
さらに、護岸ブロック10の各支持部14は、その後面が角度θにて後ろ向きに傾いているものの、その前面14aは支持部14の上面および下面と直角を成しているため、2段目の護岸ブロック10それぞれの後板部12の第2張出部12aと各支持部14を1段目の護岸ブロック10の前板部11の第1張出部11aの後側に挿入するときに、各支持部14が1段目の護岸ブロック10の前板部11の第1張出部11aにぶつかることを極力回避できる。すなわち、2段目の護岸ブロック10それぞれを比較的簡単に1段目の護岸ブロック10に積み上げることができる。
【0032】
つまり、1段目の護岸ブロック10に2段目の護岸ブロック10をみ上げるときには、2段目の護岸ブロック10それぞれの後板部12の第2張出部12aと各支持部14を1段目の護岸ブロック10の前板部11の第1張出部11aの後側に挿入するだけで良いため、積み上げの際に従前のような嵌め合わせに係る位置合わせが不要であり、これにより積み上げに係る労力および時間を軽減することができる。
【0033】
続いて、図6に示したように、3段目と最上段の護岸ブロック10の積み上げを前記と同様に行い、最上段の護岸ブロック10の積み上げが完了したところで、最上端の護岸ブロック10それぞれの間隙GAに未硬化のコンクリートを流して込んで、積み上げられた護岸ブロック10それぞれの間隙GAに胴込コンクリート部25を作製する。なお、この胴込コンクリート部25の作製は1段毎または2段毎に行っても良い。図6から分かるように、最上段の護岸ブロック10の積み上げが完了したところでは、最上段の護岸ブロック10それぞれの前板部11の第1張出部11aは裏込材層22の上面および胴込コンクリート部25の上面よりも上方に突出している。
【0034】
続いて、図7に示したように、天端コンクリート層26を、最上段の護岸ブロック10それぞれの前板部11の第1張出部11aの後側から裏込材層22の上面に及んで作製する。図7から分かるように、天端コンクリート層26の上下方向寸法は、第1張出部11aの上下方向寸法H11aと同じである。天端コンクリート層26の上下方向寸法を第1張出部11aの上下方向寸法H11aと同じにした理由は、天端コンクリート層26を第1張出部11aによって前から見えないように隠して、護岸構造物20を前から見たときの見栄えを良くするためである。換言すれば、天端コンクリート層26の上下方向寸法については規格があるため、この規格に合わせて第1張出部11aの上下方向寸法H11aが設定することにより、天端コンクリート層26が前から見える場合に比べて見栄えを格段向上することができる。
【0035】
続いて、図8に示したように、盛土部27を、天端コンクリート層26の上面と地盤21の上面を覆うように作製する。以上で、図2に示した護岸構造物20の施工が完了する。
【0036】
次に、前記護岸ブロック10と前記護岸構造物20によって得られる作用効果について説明する
【0037】
〈E1〉護岸ブロック10の前板部11が各連結板部13の上面よりも上方に張り出した第1張出部11aを有し、後板部12が各連結板部13の下面よりも下方に張り出し、かつ、第1張出部11aと上下方向寸法が同じ第2張出部12aを有し、各連結板部の下面に第2張出部12aと上下方向寸法が同じ支持部14が設けられている。すなわち、下段側の護岸ブロック10に上段側の護岸ブロック10をみ上げるときには、上段側の護岸ブロック10それぞれの後板部12の第2張出部12aと各支持部14を下段側の護岸ブロック10の前板部11の第1張出部11aの後側に挿入するだけで良いため、積み上げの際に従前のような嵌め合わせに係る位置合わせが不要であり、これにより積み上げに係る労力および時間を軽減することができる。
【0038】
〈E2〉護岸ブロック10の前板部11の下面は各連結板部13の下面と面一であり、後板部12の上面は各連結板部13の下面と面一であり、後板部12の下面は各支持部14の下面と面一である。すなわち、下段側の護岸ブロック10に積み上げられた上段側の護岸ブロック10それぞれは、各支持部14の下面が下段側の護岸ブロック10の連結板部13の上面に接するとともに、前板部11の下面が下段側の護岸ブロック10の前板部11の上面に接し、かつ、後板部12の下面が下段側の護岸ブロック10の後板部12の上面に接するため、上段側の護岸ブロック10それぞれを安定した姿勢で下段側の護岸ブロック10に積み上げることができる。
【0039】
〈E3〉護岸ブロック10の各支持部14の上面の前後方向寸法は、前板部11の前面と後板部12の後面との前後方向寸法から第1張出部11aの厚さを減じた寸法に一致し、各支持部14の下面の前後方向寸法は、各支持部14の上面の前後方向寸法よりも僅かに小さい。すなわち、上段側の護岸ブロック10それぞれの後板部12の第2張出部12aと各支持部14を下段側の護岸ブロック10の前板部11の第1張出部11aの後側に挿入するときに、各支持部14が下段側の護岸ブロック10の前板部11の第1張出部11aにぶつかることを極力回避できるため、上段側の護岸ブロック10それぞれを比較的簡単に下段側の護岸ブロック10に積み上げることができる。
【0040】
〈E4〉護岸ブロック10は、後板部12の下面と各支持部14の下面とで自立できるように重心位置が設定されている。すなわち、施工前や施工途中に現場に搬入した護岸ブロック10を自立状態で保管できるため、保管スペースの削減に有効である。また、クレーンによる搬送時および積み上げ時における護岸ブロック10の姿勢を自立状態に近い姿勢とすることができるため、搬送時および積み上げ時における護岸ブロック10の姿勢制御が極めて容易である。
【0041】
〈E5〉護岸ブロック10の前板部11の下部には重心位置調整のための肉厚部11cが設けられており、各連結板部13には重心位置調整を兼ねる連結孔13bが左右方向に形成されている。すなわち、護岸ブロック10の重心位置調整を、前板部11に肉厚部11cを設ける手法や各連結板部13の連結孔13bの縦断面形を工夫する手法等によって行っているので、護岸ブロック10の前後方向寸法D10が小さい場合でも所期の重心位置調整を的確に行うことができる。
【0042】
〈E6〉護岸構造物20の最上段の護岸ブロック10の前板部11の第1張出部11aの後側には、第1張出部11aと上下方向寸法が同じ天端コンクリート層26が設けられている。すなわち、天端コンクリート層26を第1張出部11aによって前から見えないように隠して、護岸構造物20を前から見たときの見栄えを良くすることができる。換言すれば、天端コンクリート層26の上下方向寸法については規格があるため、この規格に合わせて第1張出部11aの上下方向寸法H11aを設定すれば、天端コンクリート層26が前から見える場合に比べて見栄えを格段向上することができる。
【0043】
次に、前記同様の作用効果を得ることが可能な、前記護岸ブロック10と前記護岸構造物20の変形例について説明する。
【0044】
〈M1〉図1には、前板部11の左右方向寸法W11と後板部12の左右方向寸法W12が同じ護岸ブロック10を示したが、護岸ブロック10を前板部11の左右方向寸法を優先して左右方向に並べる場合には、後板部12の左右方向寸法を前板部11の左右方向寸法よりも僅かに小さく設定すると良い。例えば、後板部12の左右方向寸法を前板部11の左右方向寸法の97%前後に設定すれば、護岸ブロック10を前板部11の左右方向寸法を優先して左右方向に並べることができる。
【0045】
〈M2〉図1には、前板部11の左右方向寸法W11と後板部12の左右方向寸法W12が同じ護岸ブロック10を示したが、護岸ブロック10の質量を軽減する場合には、後板部12の左右方向寸法を前板部11の左右方向寸法よりもかなり小さく設定しても良い。例えば、図9に示したように、後板部12の左右方向寸法を前板部11の左右方向寸法の70%前後に設定すれば、削減分だけ護岸ブロック10の質量を軽減することができる。
【0046】
〈M3〉図1には、前板部11と後板部12との間に2個の連結板部13(支持部14も2個)を備えた護岸ブロック10を示したが、前板部11の左右方向寸法が大きい場合には、連結板部13の数を3個(支持部14も3個)としても良い。この場合、左側の連結板部13の左右方向中心を前板部11の左端から「左右方向寸法W11の1/6」の位置とし、連結板部13の左右方向中心を前板部11の右端または左端から「左右方向寸法W11の1/2」の位置とし、右側の連結板部13の左右方向中心を前板部11の右端から「左右方向寸法W11の1/6」の位置とすれば、図3(A)に示したマトリクス配列と図3(B)に示した千鳥配列に類似の配列の一方を選択的に採用することができる。
【0047】
〈M4〉図1には、前板部11の左右方向寸法W11が上下方向寸法H11よりも大きな護岸ブロック10を示したが、前板部11の左右方向寸法W11と上下方向寸法H11は同じにしても良いし、前板部11の左右方向寸法W11を上下方向寸法H11よりも小さくしても良い。また、前板部11と後板部12の傾斜角度θも、図示した角度よりも多少小さくして良いし大きくしても良い。
【符号の説明】
【0048】
10…護岸ブロック、11…前板部、11a…第1張出部、11b…化粧部、11c…肉厚部、12…後板部、12a…第2張出部、13…連結板部、13a…補強部、13b…連絡孔、14…支持部、14a…前面、GA…間隙、20…護岸構造物、21…地盤、22…裏込材層、23…基礎材層、24…基礎コンクリート部、25…胴込コンクリート部、26…天端コンクリート層、27…盛土部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9