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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】蓄電池制御装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20220113BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20220113BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20220113BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220113BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J7/02 F
H02J7/34 B
H02J7/00 302C
H02J3/46
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017175223
(22)【出願日】2017-09-12
(65)【公開番号】P2019054565
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】磯野 英里
(72)【発明者】
【氏名】千葉 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 泰知
【審査官】須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073053(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176868(WO,A1)
【文献】特開2011-182609(JP,A)
【文献】特開2012-205436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 7/02
H02J 7/34
H02J 7/00
H02J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電池を制御する蓄電池制御装置において、
放電あるいは充電の指令値を受け付ける指令値受付部と、
前記各蓄電池より前記各蓄電池の蓄電状態を取得する蓄電池状態取得部と、
最大出力を含む前記各蓄電池の定格を記録する定格記録部と、
前記蓄電池状態取得部から前記各蓄電池の蓄電状態を、前記定格記録部から前記各蓄電池の最大出力を、それぞれ取り込み、前記各蓄電池の蓄電状態と前記各蓄電池の最大出力とに基づいて、前記各蓄電池が最大出力にて放電可能な時間あるいは充電可能な時間を計算する時間計算部と、
最大出力にて放電可能な時間が長い前記蓄電池から順に、あるいは最大出力にて充電可能な時間が長い前記蓄電池から順に、前記蓄電池を選択して前記指令値を前記各蓄電池に配分する指令値配分部と、
前記指令値配分部により配分された前記各蓄電池に対する指令値を前記各蓄電池に出力する指令値出力部、
を備えたことを特徴とする蓄電池制御装置。
【請求項2】
前記蓄電池状態取得部は、前記各蓄電池の蓄電状態として前記各蓄電池のSOCを取得するSOC取得部であり、
前記時間計算部は、前記SOCから現在の前記各蓄電池の放電可能量を求めると共に、当該放電可能量を前記各蓄電池の最大出力で除算することにより、前記各蓄電池が最大出力にて放電可能な時間を計算することを特徴とする請求項1に記載の蓄電池制御装置。
【請求項3】
前記蓄電池状態取得部は、前記各蓄電池の蓄電状態として前記各蓄電池のSOCを取得するSOC取得部であり、
前記時間計算部は、前記SOCから現在の前記各蓄電池の充電可能量を求めると共に、当該充電可能量を前記各蓄電池の最大出力で除算することにより、前記各蓄電池が最大出力にて充電可能な時間を計算することを特徴とする請求項1に記載の蓄電池制御装置。
【請求項4】
前記SOC取得部は、時間的あるいは環境的な要因による前記蓄電池の性能低下分を差し引いた前記各蓄電池の実質的なSOCを取得することを特徴とする請求項2又は3に記載の蓄電池制御装置。
【請求項5】
前記時間計算部は、計算した前記各蓄電池の最大出力での放電可能あるいは充電可能な時間に基づいて、計算を行った時点での前記各蓄電池の最大出力での充電可能あるいは放電可能な時間を計算することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電池制御装置。
【請求項6】
前記指令値配分部は、
最大出力にて放電可能あるいは充電可能な時間が長い前記蓄電池から順に、高い順位を複数の前記蓄電池に付与する優先順位付与部と、
前記順位に基づいて前記蓄電池を順次選択する蓄電池選択部と、
選択された前記各蓄電池に前記指令値を割り振る指令値分配部、
を備えたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の蓄電池制御装置。
【請求項7】
前記指令値配分部は、
最大出力にて放電可能あるいは充電可能な時間が長い前記蓄電池から順に高い順位を複数の前記蓄電池に付与する優先順位付与部と、
前記優先順位付与部が複数の前記蓄電池に対して同一の順位を付与した場合、同一の順位を持つ前記蓄電池同士の最大出力の比または放電可能量の比あるいはSOCの比を算出する比算出部と、
前記比算出部が算出した比に基づいて前記指令値を、同一の順位を持つ複数の前記蓄電池に割り振る指令値按分部、
を持つことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の蓄電池制御装置。
【請求項8】
前記指令値配分部は、前記指令値受付部が前記指令値を受け付ける毎に前記各蓄電池への指令値を配分することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の蓄電池制御装置。
【請求項9】
複数の蓄電池を制御する蓄電池制御方法において、
放電あるいは充電の指令値を受け付ける指令値受付ステップと、
前記各蓄電池より前記各蓄電池の蓄電状態を取得する蓄電池状態取得ステップと、
最大出力を含む前記各蓄電池の定格を記録する定格記録ステップと、
前記蓄電池状態取得ステップから前記各蓄電池の蓄電状態を、前記定格記録ステップから前記各蓄電池の最大出力を、それぞれ取り込み、前記各蓄電池の蓄電状態と前記各蓄電池の最大出力とに基づいて、前記各蓄電池が最大出力にて放電可能な時間あるいは充電可能な時間を計算する時間計算ステップと、
最大出力にて放電可能な時間が長い前記蓄電池から順に、あるいは最大出力にて充電可能な時間が長い前記蓄電池から順に、前記蓄電池を選択して前記指令値を前記各蓄電池に配分する指令値配分ステップと、
前記指令値配分ステップにて配分された前記各蓄電池に対する指令値を前記各蓄電池に出力する指令値出力ステップ、
を含むことを特徴とする蓄電池制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数の蓄電池を制御する蓄電池制御装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用して発電された電力が、系統に導入されている。これに伴い、例えば電力系統電圧の上昇や発電出力の変動が大きくなり、電力品質へ悪影響が及ぼされることが懸念されている。蓄電池は、こうした系統課題解決の一案と考えられており、系統安定化やピークカット等を行うべく、比較的大容量の蓄電池を複数導入して、蓄電池の充放電により発電量の変動もしくは電圧上昇を抑えることが望まれている。
【0003】
そこで従来から、複数の蓄電池を集合化して制御する蓄電池制御装置が注目を集めている。この蓄電池制御装置では、各蓄電池の最大出力と容量を合算し、総合して高い充放電出力と容量を獲得することができる。つまり、蓄電池を集合化した蓄電池制御装置では、蓄電池の充放電を通じて、全体が一台の仮想電源として機能することができる。したがって、再生可能エネルギー導入時の需給調整余力を確実に確保することが可能となる。このような蓄電池制御装置は、既述の系統課題解決の一助となるものとして多大な期待が寄せられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-50170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の蓄電池制御装置には、次のような課題が指摘されている。すなわち、蓄電池制御装置では、配下の蓄電池の最大出力及び容量を合算した値が、そのまま装置全体の最大出力及び容量になるとは限らなかった。例えば、容量50kWh、最大出力100kWの蓄電池Aと、容量100kWh、最大出力50kWの蓄電池Bを集合化した場合の蓄電池制御装置の容量と最大出力は、単純に両者を加算して、容量150kWh、最大出力150kWとは必ずしもならない。
【0006】
上記の蓄電池A、Bを集合化した蓄電池制御装置において、蓄電池Aを優先的に使用して100kWの出力を出そうとした場合に、容量はあるにもかかわらず、最大出力が短時間しか出せないことがある。このように、複数の蓄電池を制御する蓄電池制御装置では、蓄電池単独と比べて最大出力及び容量が向上することは確かであるが、配下の全蓄電池の最大出力及び容量を合算した蓄電池として扱うことは出来ない。
【0007】
蓄電池制御装置の制御対象である複数の蓄電池では、その最大出力や容量が異なっていることがある。このとき、蓄電池制御装置が例えば、次のように蓄電池の放電を行うとする。まず、放電余力が最も大きい蓄電池から順に放電を開始するといった制御を行い、蓄電池の放電余力がゼロとなる、つまり、放電を行っていた蓄電池の放電可能量が無くなった時点で、その蓄電池の放電が終了する。その後、更に放電が必要な場合には、放電余力が二番目に大きい蓄電池を用いて放電を行うようにしたとする。
【0008】
ここで、いくつかの蓄電池の放電余力がゼロで、他の蓄電池には放電余力があったとする。この場合、全蓄電池の合計最大出力で放電をする指令値に対しては、指令値を満足するだけの放電を行うことが出来ない。なぜなら、いくつかの蓄電池の放電余力がゼロで、それらの蓄電池は放電することが出来ないからである。
【0009】
充電側も同様に、いくつかの蓄電池が満充電となってしまった場合に、指令値を満足させるだけの充電が出来ない場合がある。すなわち、蓄電池の充電を行う場合に、充電余力が最も小さい蓄電池から順に充電を開始するといった制御を行い、蓄電池の充電余力がゼロとなるとする、つまり、充電を行っていた蓄電池が満充電となった時点で、その蓄電池の充電が終了する。その後、更に充電が必要な場合には、充電余力が二番目に小さい蓄電池を用いて充電を行うようにしたとする。
【0010】
ここで、いくつかの蓄電池が満充電で、他の蓄電池には充電余力があったとする。この場合、全蓄電池の合計最大出力で充電をする指令値に対しては、指令値を満足するだけの充電を行うことが出来ない。なぜなら、いくつかの蓄電池が満充電で、それらの蓄電池は充電することが出来ないからである。
【0011】
したがって、従来の蓄電池制御装置においては、複数の蓄電池を集合化したことによるメリットを最大限活かしているとは言えない。このような状況を鑑みて、各蓄電池の合計最大出力を長期にわたって発揮することが要請されていた。
【0012】
本発明の実施形態は、上記の課題を解決するために提案されたものであり、各蓄電池の放電余力や充電余力をきめ細かく把握して、複数の蓄電池の合計最大出力で長時間にわたり、放電あるいは充電を実施可能であり、電力品質の向上に寄与することができる蓄電池制御装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態は、複数の蓄電池を制御する蓄電池制御装置において、次の構成要素(1)~(6)を備えている。また、本発明の実施形態は、蓄電池制御方法もその態様の一つである。
(1)放電あるいは充電の指令値を受け付ける指令値受付部。
(2)各蓄電池より各蓄電池の蓄電状態を取得する蓄電池状態取得部。
(3)最大出力を含む各蓄電池の定格を記録する定格記録部。
(4)前記蓄電池状態取得部から各蓄電池の蓄電状態を、前記定格記録部から各蓄電池の最大出力を、それぞれ取り込み、前記各蓄電池の蓄電状態と各蓄電池の最大出力とに基づいて、各蓄電池が最大出力にて放電可能な時間あるいは充電可能な時間を計算する時間計算部。
(5)最大出力にて放電可能な時間が長い蓄電池から順に、あるいは最大出力にて充電可能な時間が長い蓄電池から順に、蓄電池を選択して前記指令値を各蓄電池に配分する指令値配分部。
(6)前記指令値配分部により配分された各蓄電池に対する指令値を各蓄電池に出力する指令値出力部。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態のブロック図。
図2】第1の実施形態の上位系と下位系を含むブロック図。
図3】第1の実施形態におけるSOCの説明図。
図4】第1の実施形態の指令値配分部のブロック図。
図5】第1の実施形態のフローチャート。
図6】第1の実施形態の指令値配分の説明図。
図7】第1の実施形態の指令値配分の説明図。
図8】第2の実施形態の指令値配分部のブロック図。
図9】第2の実施形態のフローチャート。
図10】第2の実施形態の指令値配分の説明図。
図11】第2の実施形態の指令値配分の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
[構成]
以下、図1図8を用いて、第1の実施形態に係る蓄電池制御装置10について具体的に説明する。図1は第1の実施形態のブロック図、図2は第1の実施形態の上位系と下位系を含むブロック図、図3は第1の実施形態におけるSOCの説明図、図4は第1の実施形態の指令値配分部のブロック図、図5は第1の実施形態における指令値配分処理のためのフローチャート、図6図7は第1の実施形態における指令値配分を説明するための図である。
【0016】
[全体構成]
図2に示すように、上位システム1には複数の蓄電池制御装置10が接続されている。上位システム1は、系統安定化やピークカットなどを行う目的で、蓄電池制御装置10に放電指令値あるいは充電指令値を与えるものである。上位システム1に代えて、蓄電池制御装置10の上位に、蓄電池制御装置10に放電指令値あるいは充電指令値を与える運用者を設けるようにしてもよい。
【0017】
各蓄電池制御装置10には複数の蓄電池2が接続されている。蓄電池制御装置10は、上位システム1からの指令値を依頼として受け、配下の複数の蓄電池2を充放電制御する。複数の蓄電池2は、互いに異なる最大出力及び容量を持っていることを前提とする。ただし、時間的な要因あるいは環境的な要因などから、蓄電池2の充電性能が低下することがあるため、その最大出力及び容量が他の蓄電池2とほぼ同レベルになる場合もある。
【0018】
[蓄電池制御装置の構成]
蓄電池制御装置10の構成について図1を用いて説明する。図1に示すように、蓄電池制御装置10には、指令値受付部11と、定格記録部14と、SOC取得部13と、時間計算部12と、指令値配分部15と、指令値出力部16が設けられている。
【0019】
指令値受付部11は、上位システム1から蓄電池制御装置10への放電指令値あるいは充電指令値を受け付ける。指令値受付部11が放電指令値あるいは充電指令値を受け付ける頻度は、短い周期を想定する。具体的には、電力系統運用における負荷周波数制御の周期や、再生可能エネルギー導入に伴う変動抑制や周波数制御の周期等が考えられる。
【0020】
時間計算部12は、SOC取得部13から各蓄電池2の充電率を示すSOC(SOCの定義について後段にて詳述)を、定格記録部14から各蓄電池2の最大出力を、それぞれ取り込み、各蓄電池2が最大出力にて放電可能あるいは充電可能な時間を計算する。より詳しくは、時間計算部12は、各蓄電池2のSOCを各蓄電池2の最大出力で除算することにより、各蓄電池2が最大出力にて放電可能な時間を計算する。以後、最大出力での放電可能な時間については単に放電可能時間とも記載する。
【0021】
蓄電池システムや運用方針などにより、蓄電池2の運用範囲を制限することがある。本明細書に記載したSOCは、特にことわらない限り、運用範囲内で蓄電残量を基に計算されたものとする。以後、最大出力で充電可能な時間については単に充電可能時間、最大出力で放電可能な時間については単に放電可能時間とも記載する。
【0022】
SOC取得部13は、各蓄電池2のSOCを各蓄電池2より定期的に取得する。定期的な取得という場合の取得周期は、指令値受付部11が放電指令値あるいは充電指令値を受け付ける周期、つまり負荷周波数制御や変動抑制あるいは周波数制御の周期等に対応した短い周期と、同程度に設定されることが望ましいが、必ずしも一致しなくても良い。その場合は、最新のSOCに基づいて制御を行うものとする。
【0023】
蓄電池2の充電率を示すSOCは、次の点を加味して定義した指標である。前述したように、蓄電池2は、時間的な要因あるいは環境的な要因などから充電性能が低下する。そこで、この充電性能の低下分を差し引いて各蓄電池2が実質的に保有している充電量を、ここでは、それらを加味した値として、SOCという表現を用いることとする。
【0024】
あるSOCにて蓄電池2が保有している充電量は、その時点での蓄電池2の実際の放電余力=放電可能量と同値である。つまり、蓄電池2は満充電されたとしても、初期状態の容量と同じではなく、充電性能が低下した分だけ、容量が減っていることになる。この容量の低減分を差し引いた蓄電池2の最大容量が、蓄電池2の最大SOC=蓄電池2の実際の最大放電可能量となる。最大SOCを蓄電池2の最大出力で除算することで、完全放電状態にある蓄電池2が、最大出力にて充電可能な最長時間を求めることができる。つまり蓄電池2のSOCが分かれば、蓄電池2の充電可能な最長時間を求めることが可能である(図3参照)。
【0025】
定格記録部14は、各蓄電池2の最大出力を含む定格を記録するデータベースである。また、指令値出力部16は、指令値配分部15が割り振った指令値を、各蓄電池2へと出力する部分である。
【0026】
指令値配分部15は、放電可能時間が長い蓄電池2から順に、あるいは充電可能時間が長い蓄電池2から順に、蓄電池2を選択して、指令値を各蓄電池2に配分する。なお、蓄電池2を選択する際の優先順位は、指令値を各蓄電池2に配分することに用いられるので、配分優先度と呼ぶことにする。
【0027】
以下、指令値配分部15の内部構成について図4を用いて説明する。図4に示すように、指令値配分部15には、優先順位付与部17と、蓄電池選択部18と、指令値分配部19が設けられている。優先順位付与部17は、各蓄電池2への指令値を配分する際の優先順位つまり配分優先度を付与する部分であって、放電可能時間が長い蓄電池2から順に、あるいは充電可能時間が長い蓄電池2から順に、高い順位の配分優先度を、蓄電池2に対して付与する。
【0028】
蓄電池選択部18は、優先順位付与部17によって付与された配分優先度の順位に基づいて、蓄電池2を順次選択する。指令値分配部19は、選択された蓄電池2に対して指令値を割り振る。このような構成を有する指令値配分部15は、指令値受付部11が指令値を受け付ける毎に各蓄電池2への指令値を配分する。
【0029】
[指令値配分処理]
図5に示すフローチャートを用いて、蓄電池制御装置10による複数の蓄電池2への指令値配分処理を説明する。蓄電池制御装置10において、指令値受付部11は、上位システム1から与えられる充電指令値あるいは放電指令値を受け付ける(指令値受付ステップS01)。それと並行して、SOC取得部13は配下の蓄電池2から蓄電池2個々のSOCを定期的に取得している(SOC取得ステップS02)。また、定格記録部14は個々の蓄電池2の最大出力を含む定格を記録している(定格記録ステップS03)。
【0030】
[放電指令値の配分]
指令値受付部11が上位システム1から放電指令値を受け付けると、時間計算部12が各蓄電池2の放電可能時間を計算する(放電可能時間計算ステップ04)。この時間計算ステップでは、時間計算部12は、SOC取得部13から蓄電池2個々のSOCを取得し、且つ定格記録部14より個々の蓄電池2の最大出力を参照する。続いて、時間計算部12は、取得したSOCを、それを取得した蓄電池2の最大出力にて除算することで、蓄電池2が最大出力での放電可能時間を計算する。
【0031】
指令値配分部15では、まず優先順位付与部17が、時間計算部12の計算結果に基づいて、放電可能時間の長い蓄電池2から順に、高い順位の配分優先度を付与する(放電可能時間に関する順位付与ステップS05)。ここで、蓄電池2の優先度付けと、蓄電池2への指令値の配分について、図6図7を用いて具体的に説明する。図6では、3台の蓄電池A~Cについて、それぞれの蓄電池の最大出力と放電可能量、さらには、最大出力での放電可能時間(=放電可能量/最大出力)が示されている。
【0032】
すなわち、
蓄電池A:最大出力100kW、放電可能量200kWh、放電可能時間120分
蓄電池B:最大出力50kW、放電可能量200kWh、放電可能時間240分
蓄電池C:最大出力200kW、放電可能量300kWh、放電可能時間90分
合計最大出力:350 kW、合計放電可能量700kWhとする。
優先順位付与部17が、最大出力での放電可能時間が長い蓄電池2から順に、指令値の配分優先度を高くつけるので、蓄電池A~Cの配分優先度は次のようになる。
蓄電池A:放電可能時間120分なので配分優先度2
蓄電池B:放電可能時間240分なので配分優先度1
蓄電池C:放電可能時間90分なので配分優先度3
【0033】
優先順位付与部17が付与した配分優先度の順位に基づいて、蓄電池選択部18が蓄電池2を順次選択し(選択ステップS06)、選択された各蓄電池2に対して指令値分配部19が放電指令値を割り振る(分配ステップS07)。図6に示すように、1時間当たりの放電指令値は「100kW」であるとする。このとき、配分優先度1の蓄電池Bに対して指令値の中の50kWを割り当て、配分し切れなかった分である50kWを、配分優先度2の蓄電池Aに対して配分する。
【0034】
指令値の配分後の結果を図7に示す。図7に示すように、放電指令値「100kW」の配分後、配分優先度1の蓄電池Bにおいては、放電可能量は200-50=150kWhとなり、最大出力での放電可能時間は、時間計算部12にて放電可能量を最大出力で除したことで、150/50*60=180分となる。蓄電池Bでは、指令値の配分前の最大出力での放電可能時間が240分だったので、最大出力での放電可能時間は、60分減ったことになる。
【0035】
一方、配分優先度2の蓄電池Aでは、放電可能量は200-50=150kWhとなり、最大出力での放電可能時間は、時間計算部12にて150/100*60=90分となる。蓄電池Aでは、指令値の配分前の最大出力での放電可能時間が120分だったので、最大出力での放電可能時間は、30分減ったことになる。
【0036】
以上のようにして指令値配分部15は、最大出力にて放電可能時間が長い蓄電池2から順に選択して、放電指令値を各蓄電池2に配分する(指令値配分ステップ05~07)。さらに、指令値出力部16は、指令値分配部19が割り振った放電指令値を、各蓄電池2へと出力する(指令値出力ステップS08)。
【0037】
[充電指令値の配分]
また、指令値受付部11が上位システム1から充電指令値を受け付けた場合は、時間計算部12が各蓄電池2の充電可能時間を計算する。このとき、ステップS01~S04までは、放電指令値を受け付けた場合の処理と同じである。ステップS04に続いて、時間計算部12は、各蓄電池2が最大出力にて充電を行うように予め設定された時間から、各蓄電池2の放電可能時間を減算して、各蓄電池2の充電可能時間を計算する(充電可能時間計算ステップ09)。
【0038】
次に、指令値配分部15は、時間計算部12の計算結果に基いて、優先順位付与部17が、充電可能時間の長い蓄電池2から順に、配分優先度の高い順位を付与する(充電可能時間に関する順位付与ステップS10)。その後の処理は放電指令値の配分処理と同様である。すなわち、蓄電池選択部18が配分優先度の順位に基づいて蓄電池2を順次選択していき(選択ステップS06)、指令値分配部19が選択された蓄電池2に対して充電指令値を割り振る(分配ステップS07)。最終的に、指令値出力部16が、指令値分配部19が割り振った充電指令値を、各蓄電池2へと出力する(指令値出力ステップS08)。
【0039】
[作用及び効果]
以上の第1の実施形態では、時間計算部12が、SOC取得部13から各蓄電池2のSOCを、定格記録部14から各蓄電池2の最大出力を、それぞれ取り込み、各蓄電池2の放電可能時間あるいは充電可能時間を計算する。そして、指令値配分部15は、指令値受付部11が上位システムから指令値を受け付ける毎に、これら放電可能時間あるいは充電可能時間の長い蓄電池2から順に選択して、指令値を各蓄電池2へと配分する。
【0040】
以上のようにして指令値の配分を行う第1の実施形態では、指令値を受け取った時点で最も長い放電可能時間あるいは充電可能時間を持つ蓄電池2を用いて、放電あるいは充電を行うことができる。したがって、蓄電池2の放電余力及び充電余力を最も有効に利用することができ、蓄電池2の能力を最大限に発揮させることができる。
【0041】
このような第1の実施形態によれば、集合化した複数の蓄電池2の合計最大出力で、可能な限り長い時間、放電あるいは充電を実施することができる。例えば、蓄電池D、E、Fがあり、これらの最大容量は3台の蓄電池D、E、Fが共に100kWh、最大出力は蓄電池Dが100kW、蓄電池Eが最大出力300kW、蓄電池Fが最大出力75kWと想定する。この蓄電池制御装置10では、三つの蓄電池D、E、Fを加算して、最大の容量は100×3=300kWh、最大出力は100+300+75=475kWとすることが、理論的には可能である。しかし実際に、このような性能を発揮できる時間は、どの蓄電池D、E、Fを優先的に用いるかで違ってくる。
【0042】
具体例として、ある時点での蓄電池池D、E、Fの放電可能時間を、10分、30分、20分であると仮定し、蓄電池制御装置10に対し放電指令値が与えられたとする。この時、従来では、放電可能時間が最も長い蓄電池Eから使い始め、蓄電池Eが完全放電となった段階で、次に放電可能時間が長い蓄電池Fによる放電に移行していたとする。
【0043】
この場合は、蓄電池制御装置10が最大出力を発揮することが可能な放電可能時間は、最大でも、蓄電池Eが持つ放電可能時間の30分である。しかし実際には、蓄電池Eの放電可能時間が急激に短くなることがあり、30分よりも短い時間しか最大出力を継続できなくなることが多い。
【0044】
これに対して、第1の実施形態では、指令値受付部11が放電指令値を受け付ける毎に、時間計算部12が各蓄電池2の放電可能時間を計算し、指令値配分部15が放電可能時間の一番長い蓄電池2を選択して、放電指令値を各蓄電池2に配分する。上記の例に即して言えば、本実施形態でも放電可能時間の最も長い蓄電池Eから使い始めるが、指令値受付部11が放電指令値を受け付ける毎に時間計算部12が各蓄電池2の放電可能時間を計算する。
【0045】
したがって、放電指令値を受けた時点で、蓄電池Eの放電可能時間が例えば15分に減り、蓄電池Fの放電可能時間である20分よりも短くなった場合には、その時点で蓄電池Eから蓄電池Fに切り替えて、蓄電池Fに対して放電指令値を出力する。さらに、時間が経過して放電指令値を受けた時点で、蓄電池Fの放電可能時間が10分を切り、蓄電池Dの放電可能時間である10分よりも短くなった場合には、その時点で蓄電池Fから蓄電池Dに切り替えて、蓄電池Dに対して放電指令値を出力するようにする。
【0046】
その結果、蓄電池制御装置10が放電指令値を受け付ける場合、常に放電可能時間が最も長い蓄電池2が優先的に選ばれることになる。このように、蓄電池制御装置10が三台の蓄電池D、E、Fを切り替えながら使うので、蓄電池Eを1台しか使わなかった場合と比べて、最大出力での放電継続時間を大幅に延ばすことができる。
【0047】
また、第1の実施形態は、指令値受付部11が充電指令値を受け付ける場合も同様の配分処理を行っている。すなわち、時間計算部12が各蓄電池2の充電可能時間を計算して、指令値配分部15が充電可能時間の一番長い蓄電池2を選択して、指令値を各蓄電池2に配分している。したがって、三台の蓄電池D、E、Fを切り替えながら使う蓄電池制御装置10では、蓄電池Eを1台しか使わなかった場合と比べて、最大出力での充電継続時間を延ばすことが可能である。
【0048】
しかも、第1の実施形態では、指令値受付部11が、負荷周波数制御や変動抑制あるいは周波数制御の周期等に対応した短い周期で、充放電の指令値を受け付けている。そのため、SOC取得部13は、指令値受付部11が指令値を受け付ける都度、個々の蓄電池2のSOCを取得している。また、SOCとしては、時間的あるいは環境的な要因などにより充電性能の低下が起きることを加味した実質的な値を用いている。
【0049】
したがって、第1の実施形態においては、正確な蓄電池2のSOCに基づいて蓄電池2の放電可能時間あるいは充電可能時間を高精度に計算することが可能である。その結果、放電あるいは充電に関して最もポテンシャルのある蓄電池2を選択することができる。このような第1の実施形態では、1台の蓄電池2が完全放電状態あるいは満充電状態となってから別の蓄電池2を用いて充放電を行う制御を行うのではなく、指令値を受けた時点での各蓄電池2の放電余力や充電余力をきめ細かく把握可能であり、放電余力あるいは充電余力が最も大きい蓄電池2を、優先的に用いて充放電を行うことができる。
【0050】
つまり、蓄電池制御装置10が上位システム1から指令値を受け付けるたびに、複数の蓄電池2の中で、最も放電能力あるいは充電能力が高い蓄電池2によって、放電あるいは充電を行っている。したがって、蓄電池制御装置10では、充放電に使用する蓄電池2を、蓄電池2の状態に合わせてフレキシブルに交代させていくことができ、複数の蓄電池2の合計最大出力で、可能な限り長い時間、放電あるいは充電を続けられる。
【0051】
上記の第1の実施形態によれば、放電あるいは充電を安定して長期にわたり実施できるので、需給調整余力を十分に確保することが可能であり、再生可能エネルギーの系統導入に伴う電力系統電圧の上昇や発電出力の変動を確実に抑えることができる。よって、第1の実施形態は、系統安定化に寄与することができ、再生可能エネルギーの系統導入の促進に貢献することができる。
【0052】
また、第1の実施形態では、複数の蓄電池2の最大出力と容量の合算値を発揮する時間が長くなるので、優れた充放電出力と容量を獲得することができる。したがって、現状考えられている単純な蓄電池の容量や出力の表記方法をそのまま採用したとしても、蓄電池制御装置10の性能はそれらの合算値から導かれるものと大差が無いことになる。その結果、第1の実施形態の性能の高さが運用者等に伝わり易く、使い勝手が良好である。
【0053】
[第2の実施形態]
[構成]
以下、図8図11を用いて、第2の実施形態について具体的に説明する。図8は第2の実施形態の指令値配分部のブロック図、図9は第2の実施形態における指令値配分処理のフローチャート、図10図11は第2の実施形態における指令値配分を説明するための図である。第2の実施形態の基本構成は、上記第1の実施形態と同様であり、指令値配分部の構成に特徴がある。
【0054】
図8に示すように、第2の実施形態に係る指令値配分部25は、蓄電池選択部18に代わって比算出部20を有し、指令値分配部19に代わって指令値按分部21を有している。比算出部20は、優先順位付与部17が複数の蓄電池2に対し、配分優先度について同一順位を付与した場合、配分優先度が同一順位である蓄電池2の最大出力を参照して、同一順位を持つ蓄電池2同士の最大出力の比を算出する。指令値按分部21は、比算出部20が算出した比に基づいて指令値を、配分優先度が同一順位である複数の蓄電池2に割り振る。
【0055】
[指令値配分処理]
前述したように、第1の実施形態による指令値配分処理において、指令値配分部15の優先順位付与部17は、放電可能時間あるいは充電可能時間の長い蓄電池2から順に、高い順位の配分優先度を付与している。このとき、放電可能時間あるいは充電可能時間の長さが等しい蓄電池2が複数存在した場合、優先順位付与部17が複数の蓄電池2に対して同一順位の配分優先度を付与するケースがある。
【0056】
第2の実施形態はこのようなケースでの指令値配分処理に特徴がある。優先順位付与部17が同一順位を付与した複数の蓄電池2に対して指令値を配分する場合、同一順位の蓄電池2における最大出力等の比率に応じて指令値を振り分けるので、単なる指令値の分配と区別して、これを指令値の按分と呼ぶことにする。
【0057】
図9に示すフローチャートに示すように、第2の実施形態でも第1の実施形態と同じく、指令値受付部11が、上位システム1から与えられる充放電の指令値を受け付ける(指令値受付ステップS01)。これ以降の処理が第1の実施形態とは異なる。以下、第1の実施形態との差分を中心に、図9のフローチャートを用いて第2の実施形態による指令値按分処理を説明する。
【0058】
第2の実施形態では、個々の蓄電池2の優先順位を参照して順位の高い蓄電池2を選択する(選択ステップS21)。このとき、蓄電池2への指令値の配分にあたっては、同一順位の蓄電池2が複数存在するかを確認する(順位確認ステップS22)。同一順位の蓄電池2が複数存在しない、つまり順位が最も高い蓄電池2が1台しかない場合(ステップS22のNo)には、その蓄電池2に対し指令値の全てを配分可能であるかを確認する(配分確認ステップS23)。
【0059】
この確認の結果、一台の蓄電池2に対して指令値の全てを配分することが可能であるならば(ステップS23のYes)、その蓄電池2に指令値を配分する(指令値配分ステップS24)。また、一台の蓄電池2に指令値の全てを配分することができないのであれば(ステップS23のNo)、選択ステップS21に戻り、次に順位の高い蓄電池2を選択する。
【0060】
配分優先度が同一順位である蓄電池2が複数存在する場合(ステップS22のYes)、比算出部20は同一順位の蓄電池2の最大出力を参照して(参照ステップS25)、同一順位の蓄電池2同士における最大出力の比を算出する(比算出ステップS26)。続いて、比算出部20が算出した比に基づいて、指令値按分部21は、指令値の全てを、同一順位を持つ複数の蓄電池2に割り振る(按分ステップS27)。
【0061】
さらに、同一順位を持つ複数の蓄電池2にて、指令値の全てを割り振れるかを確認する(按分確認ステップS28)。この確認の結果、同一順位を持つ複数の蓄電池2にて、指令値の全てを割り振ることができるのであれば(ステップS28のYes)、それら蓄電池2に対し指令値を配分する(指令値配分ステップS24)。また、同一順位を持つ複数の蓄電池2にて、指令値の全てを割り振ることができないのであれば(ステップS28のNo)、ステップS21に戻り、次に順位の高い蓄電池2を選択する。
【0062】
ここで、蓄電池2への指令値の按分について、図10図11を用いて具体的に説明する。図10に示すように、1時間当たりの放電指令値は「200kW」であり、蓄電池Bが配分優先度1、蓄電池Aと蓄電池Cは共に配分優先度2であるとする。このとき、配分優先度1の蓄電池Bには「50kW」という指令値が配分され、残りの「200-50=150kw」という指令値が配分優先度2である蓄電池A及び蓄電池Cに按分される。
【0063】
按分の比率は、蓄電池2の最大出力またはSOCの比を用いて計算するので、蓄電池A:蓄電池Cの按分比率は、例えば、最大出力100kW:200kWとなり、1:2となる。この按分比率に基づいて指令値を計算して、蓄電池Aには「50kW」という指令値が割り振られ、蓄電池Cには「100kW」という指令値が割り振られる。
【0064】
図11では、1時間当たりの放電指令値は、図10と同じく「200kW」であるが、蓄電池A~Cが全て配分優先度1であるとする。このとき、蓄電池A: 蓄電池B:蓄電池Cの按分比率は、例えば最大出力100kW:50kW:200kWとなり、2:1:4となる。この按分比率に基づいて指令値を計算すると、蓄電池Aには「57.14kW」という指令値が割り振られ、蓄電池Bには「28.57kW」という指令値が割り振られ、蓄電池Cには「114.28kW」という指令値が割り振られる。
【0065】
[作用及び効果]
以上の第2の実施形態では、上記第1の実施形態が持つ効果に加えて、次のような効果がある。第2の実施形態においては、放電可能時間あるいは充電可能時間の長さが等しい蓄電池2が複数存在した場合に、指令値配分部15の比算出部2が蓄電池2同士の最大出力の比またはSOCの比を求め、指令値按分部21が、比算出部20が算出した比に基づいて指令値を、同一順位を持つ複数の蓄電池2に割り振っている。
【0066】
そのため、放電可能時間あるいは充電可能時間の長さが等しい蓄電池2同士の間では、各蓄電池2の最大出力またはSOCの大きさに応じて、放電あるいは充電を担うことができる。このような第2の実施形態によれば、複数の蓄電池2の放電余力及び充電余力を、さらに効率良く利用することができ、再生可能エネルギーの導入促進と、系統運用の安定化を、いっそう進めることができる。
【0067】
[他の実施形態]
上記の実施形態は、本明細書において一例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図するものではない。すなわち、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことが可能である。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0068】
例えば、SOC取得部13がSOCを取得する頻度や、時間計算部12が各蓄電池2の放電可能時間あるいは充電可能時間を計算する頻度等に関しては、運用者が任意に選択するものであったり、取得タイミングを任意に決めるものであったりと、様々なものを想定することが可能である。
【0069】
すなわち、上記第1の実施形態では、指令値受付部11が放電指令値あるいは充電指令値を受け付ける頻度は、電力系統運用における負荷周波数制御等の短周期制御での周期を想定したが、これに限らず、蓄電池2の運転スケジュールを作成して、指令値の配分優先度に基づき、蓄電池2に対して事前に、指令値の配分あるいは按分を行うようにしてもよい。指令を配分あるいは按分した結果、配分優先度が変化した場合には、その変化を考慮して、さらに指令値の配分あるいは按分を行うようにしてもよい。
【0070】
また、時間計算部12が、蓄電池2の充電可能時間を計算する場合、蓄電池2の放電可能時間を求めて、この放電可能時間を、蓄電池2の充電を行おうとする充電予定時間から差し引くといった手順ではなく、各蓄電池のSOCから充電可能量を求めておき、これを各蓄電池の最大出力で除算することにより、各蓄電池の充電可能時間を求めるようにしてもよい。
【0071】
上記の実施形態では、放電可能時間あるいは充電可能時間を求める際に、SOCという指標を用いたが、蓄電池の充電度を示すSOCと蓄電池の最大出力を用いて、放電可能時間あるいは充電可能時間を求めるようにしてもよい。なお、SOCを求める際、充電性能の低下分を求める時間的あるいは環境的な要因は、蓄電池2の種類や特性、設置環境などに応じて適宜選択自由である。
【0072】
さらに、定格記録部14に記録された蓄電池2の最大出力には、蓄電池セル単位の最大出力や、太陽光発電システム等に用いられるPCSの最大出力等も含まれる。また、定格記録部14に記録された蓄電池2の最大出力には、集合化され運用を行うものに対して提示した出力にて稼動することを提示したシステムの最大出力も含まれる。
【0073】
また、上記の第2の実施形態では、比算出部20が蓄電池2同士の最大出力の比を算出していたが、比算出部20が配分優先度が同一順位である蓄電池2の放電可能量あるいはSOCを参照して、蓄電池2同士の放電可能量の比あるいはSOCの比を算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 上位システム
2 蓄電池
10 蓄電池制御装置
11 指令値受付部
12 最長時間計算部
13 SOC取得部
14 定格記録部
15、25 指令値配分部
16 指令値出力部
17 優先度判定部
18 蓄電池選択部
19 指令値分配部
20 比算出部
21 指令値按分部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11