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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】フェンダーインシュレータ
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20220113BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20220113BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20220113BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B62D25/08 E
B60R13/08
G10K11/162
G10K11/16 110
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017216946
(22)【出願日】2017-11-10
(65)【公開番号】P2019085057
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100101627
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 宜延
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】杉本 寛樹
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3048125(JP,U)
【文献】特開2006-193073(JP,A)
【文献】特開平09-185381(JP,A)
【文献】特開2001-003819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B60R 13/08
G10K 11/162
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のピラーとフェンダーとの間で、上下方向に配設される縦長のフェンダーインシュレータにおいて、
該フェンダーインシュレータの外形を形成する軟質ポリウレタン発泡体からなるインシュレータ本体と、
該インシュレータ本体に埋設一体化されたボックス状のレゾネータ容積部と、
該レゾネータ容積部に基端がつながり、先端の管口を前記インシュレータ本体から露出させ、且つ車両への取付けで、該管口が車両前方側に向く連通管と、を具備し、且つ前記インシュレータ本体が、前記レゾネータ容積部の外周全面を包み込んで、該レゾネータ容積部を埋設していることを特徴とするフェンダーインシュレータ。
【請求項2】
前記レゾネータ容積部の下方部位に基端をつなげた前記連通管が、前記インシュレータ本体内を下向きに延在し、先端の前記管口が前記インシュレータ本体の車両前方側表面に覗くように屈曲した請求項1記載のフェンダーインシュレータ。
【請求項3】
前記レゾネータ容積部に一体成形された板状取付け部材をさらに具備し、該取付け部材が車体への係止用部分を有する請求項1又は2に記載のフェンダーインシュレータ。
【請求項4】
前記取付け部材が前記レゾネータ容積部の上方部位から前記インシュレータ本体上方の上端部近くまで配設されると共に、前記レゾネータ容積部の下方部位に基端をつなげた前記連通管が前記インシュレータ本体内を下向きに延在して、前記取付け部材が該連通管の部分から該インシュレータ本体の下端部近くまで鉛直方向に配設されている請求項3記載のフェンダーインシュレータ。
【請求項5】
前記レゾネータ容積部が上下方向に複数個連設され、且つ各レゾネータ容積部のそれぞれに基端がつながり、先端の管口を前記インシュレータ本体外へ出して該管口を車両前方側に向けた前記連通管が備わる請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフェンダーインシュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のピラーとフェンダーとの間に配設されるフェンダーインシュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、車室が快適な居住空間となるよう、例えばフロントピラーとフロントフェンダーとの隙間を塞ぐ騒音吸収用のインシュレータが提案され(例えば特許文献1、2)、車室内への騒音侵入を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-1178号公報
【文献】実用新案登録第3048125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1、2のフェンダーインシュレータは、いずれも軟質の発泡樹脂を用いており、遮音効果を有するものの、低周波(例えば250Hz付近)の騒音には効果が低くかった。デコボコ道の車両走行中で、タイヤ内部の空気ボリュウムに起因する空洞共鳴音や、走行中のタイヤとタイヤハウス空間容量とで引き起こす騒音は、低周波の250Hz付近となるが、特許文献1,2等のフェンダーインシュレータでは透過してしまい遮音対策が不十分となった。
こうしたことから、図2に描くフェンダーライナー73に繊維系の吸音材を貼付けることで対策を講じているものもあるが、該繊維系吸音材は、降雨時などで吸水して吸音特性が変化してしまう。吸音性能が落ちて車室内が騒音悪化する問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、高周波騒音のみならず、凹凸走行のタイヤ変形に伴うタイヤの空洞共鳴音や、車両走行中のタイヤハウスに起因する低周波域の騒音も効率良く低減することができるフェンダーインシュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、態様1に記載の発明の要旨は、車両のピラーとフェンダーとの間で、上下方向に配設される縦長のフェンダーインシュレータにおいて、該フェンダーインシュレータの外形を形成する軟質ポリウレタン発泡体からなるインシュレータ本体と、該インシュレータ本体に埋設一体化されたボックス状のレゾネータ容積部と、該レゾネータ容積部に基端がつながり、先端の管口を前記インシュレータ本体から露出させ、且つ車両への取付けで、該管口が車両前方側に向く連通管と、を具備することを特徴とするフェンダーインシュレータにある。
態様2の発明たるフェンダーインシュレータは、態様1で、レゾネータ容積部の下方部位に基端をつなげた前記連通管が、前記インシュレータ本体内を下向きに延在し、先端の前記管口が前記インシュレータ本体の車両前方側表面に覗くようにしたことを特徴とする。態様3の発明たるフェンダーインシュレータは、態様1又は2で、レゾネータ容積部に一体成形された板状取付け部材をさらに具備し、該取付け部材が車体への係止用部分を有することを特徴とする。態様4の発明たるフェンダーインシュレータは、態様3で、取付け部材が、前記レゾネータ容積部から上方向及び/又は下方向へ延在し、その先端部分に前記係止用部分を有することを特徴とする。態様5の発明たるフェンダーインシュレータは、態様1~4で、レゾネータ容積部が上下方向に複数個連設され、且つ各レゾネータ容積部のそれぞれに基端がつながり、先端の管口を前記インシュレータ本体外へ出して該管口を車両前方側に向けた前記連通管が備わることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフェンダーインシュレータは、この製品一つで、ピラーとフェンダーの隙間を遮蔽し、また軟質のポリウレタン発泡体からなるインシュレータ本体で高周波の騒音を持続して低減し、さらにレゾネータでタイヤハウス等に起因する低周波域の騒音も持続して低減できるなど優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1で、フェンダーインシュレータを取付ける様子の斜視図である。
図2図1のフェンダーインシュレータが車両に取着状態にある斜視図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4】(イ)がフェンダーインシュレータの全体斜視図、(ロ)が(イ)の縦断面図である。
図5図2に代わる他態様のフェンダーインシュレータが車両に取着状態にある斜視図である。
図6図5のVI-VI線断面図である。
図7】(イ)が図4(イ)に代わる他態様のフェンダーインシュレータの斜視図、(ロ)が図4(ロ)に代わる他態様のフェンダーインシュレータの縦断面図である。
図8】(イ)が図7のレゾネータに代わる別態様のレゾネータの斜視図、(ロ)が図7(イ)に代わるフェンダーインシュレータの斜視図である。
図9】実施形態2で、(イ)が図7(イ)に代わるフェンダーインシュレータの斜視図、(ロ)が図7(ロ)に代わるフェンダーインシュレータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るフェンダーインシュレータについて詳述する。
(1)実施形態1
図1図6は本発明のフェンダーインシュレータFSの一形態で、自動車のフロントピラー71とフロントフェンダー72との間に用いられるフェンダーインシュレータに適用する。図1は車両にフェンダーインシュレータを取付ける様子の斜視図、図2図1のフェンダーインシュレータが車両に取着状態にある斜視図、図3図2のIII-III線断面図、図4は(イ)がフェンダーインシュレータの全体斜視図、(ロ)が(イ)の縦断面図、図5図2に代わる他態様図、図6図3に代わる他態様図、図7図4に代わる他態様図である。各図は図面を判り易くするため発明要部を強調図示し、また本発明と直接関係しない部分を簡略化又は省略する。
【0010】
フェンダーインシュレータFSは、車両のピラー71とフェンダー72との間で、車両の上下方向に配設される縦長形状品である。フェンダーインシュレータFSは、図2,図4のごとく車幅方向外側面1cをフェンダー72の裏面に沿う弧状面にした柱状体で、フロントピラー71(以下、単に「ピラー」ともいう。)とフロントフェンダー72(以下、単に「フェンダー」ともいう。)との間の隙間εを遮蔽する(図3)。フェンダー72が組付けられると、ピラー71との間に縦長スリット状の隙間εができるが、この隙間εを通って車室空間RMへの図3の矢印で示す音の進入を、本フェンダーインシュレータFSが止める。ここでは、フェンダー72の車両後方部が屈曲してフェンダー内側に延在するフランジ721と、ピラー71の車両前方側の側壁とに、フェンダーインシュレータFSを車両前方側から当接して隙間εを塞ぐ。フェンダーインシュレータFSはその縦長方向を車両上下方向に合わせて隙間εを埋めるようにして車体Pに取付けられる。
フェンダーインシュレータFSは、インシュレータ本体1とレゾネータ2とを具備する。
【0011】
インシュレータ本体1は、軟質のポリウレタン発泡体からなるフェンダーインシュレータFSの外形主部を形成する縦長部である(図1図4)。比較的密度の高い軟質のポリウレタン発泡体からなるインシュレータ本体1が高周波域の騒音を遮音する。本実施形態のポリウレタン発泡体は、密度が80~200Kg/mで、図示ごとくの簡略形状とするが、実際はピラー71やフェンダー72の多少複雑な形状に合わせる形となり、またドア9へと向かう図示しないハーネス等を通す凹所等が適宜設けられる。
【0012】
軟質ポリウレタン発泡体からなるインシュレータ本体1は、圧縮変形し易いが、除圧後の弾性復元性も大きいクッション性に富むので、フェンダー72とピラー71との間の隙間εを埋めるようにして取付けられた時、圧縮変形する取付け部分がパッキンの役目を担ってシール性を高める。耐屈曲疲労性も良好で、フェンダーインシュレータFS用に打ってつけとなっている。
また、インシュレータ本体1の軟質ポリウレタン発泡体がモールド発泡成形によって造られることから、その表面にスキン層が形成される。フェンダーインシュレータFSの外形表面がスキン層で覆われている。ピラー71とフェンダー72間に取付けられるインシュレータ本体1の表面には、雨天時などでタイヤ8の転動に伴って水滴等が付着する場合があるが、前記スキン層が備わることで、インシュレータ本体1は吸水が抑制される。また、このスキン層により面密度が上がり遮音性能が向上する。
【0013】
レゾネータ2は、ヘルムホルツのレゾネータで、密閉容器のレゾネータ容積部3とこれに基端開孔410でつながる連通管4とを具備する。レゾネータ2は前記インシュレータ本体1に埋設一体化されたボックス状のレゾネータ容積部3と、該レゾネータ容積部3に基端41が接続し、先端42の管口420をインシュレータ本体1から露出させ、且つ車両への取付けで、該管口420が車両前方側(タイヤハウス内方側)に向くようにして、騒音が管口420に当たるようにする。フェンダーインシュレータFSがフロントピラー71とフロントフェンダー72との間の隙間εを遮蔽して車両に組付けられると、前記管口420が車両前方を向いてフェンダー72の内側(フェンダー72とインナーパネル74間の空間)に在る大気と接する。レゾネータ容積部3の空洞部30が、連通管4を介して、フェンダー72内側の大気と導通している。該大気が管口420から連通管4の管内40を経由し、基端41側の開孔410を通ってレゾネータ容積部3の空洞部30と通じる。凹凸道路走行中タイヤ8の空洞共鳴音やタイヤハウスに起因する騒音用音波が管口420に当たると、レゾネータ2の内部の空気が共鳴して振動する。連通管4の管内40の空気が振動することで、摩擦によりエネルギ損失が起こり、特定周波数の騒音を低減できる。
【0014】
レゾネータ2は、ブロー成形や射出成形等によって造られ、ポリプロピレン樹脂製や高密度ポリエチレン製等の樹脂成形品である。その成形にあたり、レゾネータ容積部3に係る空洞部30の容積、連通管4の断面積、及び連通管4の長さが吸音対象の所定周波数(例えば250Hz)になるよう調整される。レゾネータ2の共振周波数(固有振動数)がこれらによって定まるからである。
【0015】
ここでのレゾネータ2は、中空角柱状のレゾネータ容積部3の下方部位32、詳しくは下端部分32kの底面に基端41をつなげた連通管4が、インシュレータ本体1内をまず下向きに延在し、さらに略水平又は下降傾斜ぎみに車両前方に延在し、先端42の管口420をインシュレータ本体1の車両前方側表面1aから露出状態とする。車両前方側表面1aとは、フェンダーインシュレータFSを車両に取付けた時のインシュレータ本体1の車両前方側の面をいう。インシュレータ本体1内を下向きに延在させる構成により、雨天時等で管口420からレゾネータ容積部3内への水分進入を防ぐ。
【0016】
レゾネータ容積部3は一部をインシュレータ本体1から露出させることもできる。ただ、レゾネータ2は、図3,図4のようにレゾネータ容積部3の外周全面をインシュレータ本体1で包み込んで、該レゾネータ容積部3が埋設一体成形されるのがより好ましい。レゾネータ2内の共鳴による空気の振動で生じるレゾネータ容積部3の壁面振動や、剛性の樹脂成形品からなるレゾネータ容積部3が車両走行時等の振動での干渉音が発生するのを、弾性を有するインシュレータ本体1で包み込むことで壁面振動や干渉音等を抑えられるからである。連通管4においても、同様の理由で、インシュレータ本体1に埋設一体成形され、インシュレータ本体1内を通って、先端42の管口420がインシュレータ本体1の車両前方側表面1aに覗くように構成するのがより好ましい。本実施形態も連通管4の先端管口420の部分だけがインシュレータ本体1から露出するフェンダーインシュレータFSになっている。
【0017】
斯かるフェンダーインシュレータFSは、例えばフェンダーインシュレータFSの発泡成形型内に、連通管4の先端管口420側をキャビティ面に当接させ、該先端管口420の部分がインシュレータ本体1の表面に現れるようにしてレゾネータ2を係止セットする。且つ、連通管4の先端管口420がレゾネータ容積部3よりも下方にくるようにセットし、発泡ポリウレタン原料を注入して一体発泡成形することで造られる。
【0018】
図5図7は、図1図4に代わる他態様のフェンダーインシュレータFSを示す。レゾネータ2がレゾネータ容積部3と連通管4に加え、取付け部材5を具備する。取付け部材5は別部品として、レゾネータ容積部3に組み付ける構成でもよいが、本レゾネータ2は、レゾネータ容積部3と連通管4と取付け部材5がブロー成形によって一体成形されている。ブロー成形でレゾネータ容積部3周りにできるバリを必要分残して取付け部材5とし、フェンダーインシュレータFSの低コスト化を図る。
【0019】
ここでは、レゾネータ容積部3の略中間高さで、車両後方側の壁面から図7のごとく板状取付け部材5の板面を起立状態にしたまま車幅方向に延在するようにして、レゾネータ容積部3に取付け部材5が一体成形される。そして、該取付け部材5の先端部分に車体Pへの係止用部分51たる小孔510を穿設する。また図5のごとくフェンダーフランジ721に張出し部7211を設けて、ここに透孔721aを穿設する。透孔721aと小孔510にビスBSを図7(ロ)のように挿着してフェンダーインシュレータFSがフェンダー72に固定される。図示を省略するが、ピラー71側にもレゾネータ容積部3から取付け部材5を延在させ、該取付け部材5の係止用部分51とピラー71とを接続固定させるとより好ましい。別部材を必要とせずに、本フェンダーインシュレータFSだけで、ピラー71とフェンダー72との隙間εを遮蔽して、ピラー71の側壁とフェンダーフランジ721に取付け固定できるからである。符号15はインシュレータ本体1に設けた凹みを示す。ビスBSを小孔510に挿着し易くする該凹み15に現われた取付け部材5の一部と、連通管4の先端管口420の部分以外は、軟質発泡体のインシュレータ本体1に埋まったフェンダーインシュレータFSになっている。他の構成は図1図4と同様で、その説明を省く。
【0020】
図8も、取付け部材5付きレゾネータ2にして、図5図7に代わる他態様のフェンダーインシュレータFSを示す。図5図7に示したレゾネータ容積部3、連通管4と同形状にしながら、取付け部材5をレゾネータ容積部3から上方向及び/又は下方向へ延在し、その先端部分に係止用部分51たる小孔510を形成したレゾネータ2とする。図8(イ)のレゾネータ2は、レゾネータ容積部3の上方部位31(ここでは上面)から矩形の取付け部材5をインシュレータ本体上方の上端部11近くまで配設する。またレゾネータ容積部3の下端部分32kたる底面に、基端41がつながる連通管4が鉛直方向に延在した後、車両前方に該連通管4が延びるが、その部分から矩形の取付け部材5をインシュレータ本体1の下端部12近くまで鉛直方向に配設する。そして、両取付け部材5の先端部分に、ピラー71等の車両への取付け固定用小孔510を形成する。取付け部材5はレゾネータ2と別体構成でもよいが、ここでもブロー成形で一体成形品にして低コスト化を図っている。インシュレータ本体1に埋設される取付け部材5付きレゾネータ2が、樹脂成形品にして剛性を有するので、軟質のインシュレータ本体1の芯材としても機能する。
尚、連通管4から取付け部材5を延在させるのに代え、レゾネータ容積部3の下方部位32(例えば下面)から取付け部材5を鉛直方向に延在させることもできる。取付け部材5はフランジ形状にすることもできる。他の構成は図5図7と同様で、その説明を省く。図中、符号75はステップアウター、符号76はエンジンフード、符号77はルーフを示す。
【0021】
(2)実施形態2
本実施形態は、レゾネータ容積部3を複数個有する図9ごとくのフェンダーインシュレータFSである。レゾネータ容積部3が上下方向に複数個連設され、且つ各レゾネータ容積部3のそれぞれに基端41がつながる一方、先端側管口420がインシュレータ本体1外へ出て、車両へのフェンダーインシュレータFSの取付けで、該管口420が車両前方側に向く連通管4を有する。空洞部30の容量を変えたレゾネータ容積部3と連通管4とが対になったレゾネータ2が複数個備わることで、低周波騒音のなかから複数の周波数に対して吸音できるフェンダーインシュレータFSになる。
本実施形態は図示のごとくレゾネータ2を二個にして、上側レゾネータ容積部3に比し、下側レゾネータ容積部3を大きくする。板状接続部6で両レゾネータ2を結合させたブロー成形による一体成形品で、また図8と同様、取付け部材5を設ける。上側レゾネータ容積部3の上面から取付け部材5をインシュレータ本体1の上端部11近くまで配設する。下側レゾネータ容積部3の車両前方に延びる連通管4の水平部分から取付け部材5をインシュレータ本体1の下端部12近くまで配設する。取付け部材5の先端部分に小孔510を設け、さらにビスBSを小孔510に挿着し易くする凹み15を設ける。
かくして、軟質のポリウレタン発泡体からなるインシュレータ本体1内に、複数のレゾネータ容積部3、接続部6、連通管4、及び取付け部材5が上下方向に連設され、取付け部材5も一体成形されたブロー成形品を埋設したフェンダーインシュレータFSになっている。剛性のある該ブロー成形品が軟質のインシュレータ本体1の芯材としても機能発揮するフェンダーインシュレータFSになる。他の構成は実施形態1と同様で、その説明を省く。実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0022】
(3)効果
このように構成したフェンダーインシュレータFSは、インシュレータ本体1にレゾネータ2を埋設して、車両への取付けで、連通管4の先端管口420を車両前方側に向けてインシュレータ本体1から露出させているので、特許文献1,2等のインシュレータでは透過してしまった例えば250Hz付近のローノイズを該レゾネータ2で効果的に低減できる。隙間εをシールして遮音し、また軟質のポリウレタン発泡体からなるインシュレータ本体1で高周波の騒音を遮音し、さらにレゾネータ2で共鳴の大きい周波数を低減できる製品を、本フェンダーインシュレータFSの一部材だけで完成する。
密度の高い軟質ポリウレタン発泡体からなるインシュレータ本体1に、ブロー成形や射出成形等で造られたレゾネータ2を一体発泡成形することで、軟質のポリウレタン発泡体による高周波域の騒音低減だけでなく、レゾネータ2でタイヤハウス空間等に起因する例えば250Hz付近の騒音も低減し、快適な車室空間RMを確保できるフェンダーインシュレータFSになる。そして、レゾネータ容積部3をインシュレータ本体1に埋設するので、高価なポリウレタン発泡体の量を減らし、低コスト化できる。
【0023】
従来の特許文献1,2にみられるフェンダーインシュレータFSは例えば250Hz付近のローノイズを低減できず、またローノイズを吸音できる繊維系インシュレータは降雨時等で吸水して吸音特性が悪化する。ローノイズを低減すべく、ヘルムホルツレゾネータ2を採用し、これをフェンダー72内側に設置することも考えられるが、新たに設置場所の確保や保持用部材も必要になり、さらに走行中の車両振動による干渉音や異音が発生しないように対策を講じなければならず、コスト高になってしまう。
一方、本フェンダーインシュレータFSはインシュレータ本体1にレゾネータ容積部3が埋設一体化されるので、新たな設置場所を必要としない。しかも、埋設一体化で、レゾネータ容積部3を包み込む密度の高い軟質ポリウレタン発泡体によって、レゾネータ容積部3に発生する壁面振動を抑制することができる。連通管4がレゾネータ容積部3から先端42に向けて該インシュレータ本体1内を通って、先端42の管口420だけがインシュレータ本体1の車両前方側表面1aに覗くようにして埋設されれば、車体との干渉による異音発生防止により効を奏する。さらに、レゾネータ容積部3に一体成形された板状取付け部材5を具備し、該取付け部材5に車体Pへの係止用部分51を設ければ、レゾネータ2の保持用部材も別途要しなくなる。
さらにいえば、軟質のポリウレタン発泡体からなるインシュレータ本体1はモールド発泡成形品であり、その表面にスキン層が形成されるので、面密度が上がり遮音性能が向上する。また、冠水時や降雨時等で、繊維系インシュレータのように吸水することがない。レゾネータ容積部3よりも連通管4を下方に配して水はけを良好にしたので、レゾネータ容積部3に水が溜まって共鳴周波数が変化することがない。
【0024】
また、レゾネータ容積部3から図8のように車両の上方向及び下方向(上方向又は下方向)へ延在する取付け部材5が設けられると、板状取付け部材5の部分が柔らかな軟質ポリウレタン発泡体からなるインシュレータ本体1の補強用芯材としての効果をも発揮し、フェンダーインシュレータFSの製品全体としての保形性能が向上する。隙間εをシールする気密性確保のため、インシュレータ本体1に柔らかな軟質ポリウレタンフォームを用いても、車両への組付け性が向上し、組付け作業が容易になる。
【0025】
加えて、図9のごとくレゾネータ容積部3が上下方向に複数個連設され、且つ各レゾネータ容積部3のそれぞれに基端41がつながり、先端42の管口420をインシュレータ本体1外へ出して該管口420を車両前方側に向けた連通管4が備わると、250Hz付近のローノイズ域で、異なる周波数を低減でき、吸音性能を一段と高めることができる。
このように本発明のフェンダーインシュレータFSは、上述した種々の優れた効果を発揮し、極めて有益である。
【0026】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。インシュレータ本体1,レゾネータ容積部3,連通管4,取付け部材5,接続部6等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。実施形態ではフェンダーフランジ721とフロントピラー71の車両前方側の側壁とにフェンダーインシュレータFSを当てて隙間εを遮蔽したが、例えばフェンダーフランジ721とピラー71の天板部とにフェンダーインシュレータFSを当てて隙間εを遮蔽してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 インシュレータ本体
1a 車両前方側表面
2 レゾネータ
3 レゾネータ容積部
4 連通管
41 基端
42 先端
420 管口(先端管口)
5 取付け部材
51 係止用部分
71 ピラー(フロントピラー)
72 フェンダー(フロントフェンダー)
FS フェンダーインシュレータ
ε 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9