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特許7002950直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造及び接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造及び接続方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20220128BHJP
   E21D 11/15 20060101ALI20220128BHJP
   E21D 11/36 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D11/15
E21D11/36
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018008509
(22)【出願日】2018-01-23
(65)【公開番号】P2019127707
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 直俊
(72)【発明者】
【氏名】大石 憲寛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 知博
(72)【発明者】
【氏名】井櫻 潤示
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-353377(JP,A)
【文献】特開2000-220376(JP,A)
【文献】特開2007-023546(JP,A)
【文献】特開2011-247037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/04
E21D 11/15
E21D 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に並設された発進側トンネルと到達側トンネルとの間に架け渡された鋼管からなる直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造であって、
前記到達側トンネルを構成するセグメントは地山側が開放された凹陥部と、
前記凹陥部の内部に充填され硬化した硬化体と、を少なくとも具備し、
前記鋼管の先端には前記硬化体を削孔可能なビットが固定され、
前記凹陥部は、一方の対向する2枚の坑口リブと、他方の対向する前記セグメントの2枚の主桁と、によって囲われた断面矩形の筒状形状を形成し、前記2枚の坑口リブの内空側端部が支持部材によって閉塞され、前記セグメントの主桁の桁高の範囲内に収容され、
前記鋼管を回転させることで前記ビットの摺動によって前記硬化体を削孔し、該鋼管の所定の長さが貫入された状態で到達されたこと、
を特徴とする、直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造。
【請求項2】
前記鋼管は断面円形であることを特徴とする、請求項1に記載の直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造。
【請求項3】
前記凹陥部の両側面が前記セグメントを構成する主桁からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造。
【請求項4】
地中に並設された発進側トンネルと到達側トンネルとの間に架け渡された鋼管からなる直線パイプルーフと到達側トンネルを接続する、直線パイプルーフと到達側トンネルの接続方法であって、
前記到達側トンネルを構成するセグメントは地山側が開放された凹陥部と、
前記凹陥部の内部に充填され硬化した硬化体と、を少なくとも具備し、
前記鋼管の先端には前記硬化体を削孔可能なビットが固定されており、
前記凹陥部は、一方の対向する2枚の坑口リブと、他方の対向する前記セグメントの2枚の主桁と、によって囲われた断面矩形の筒状形状を形成し、前記2枚の坑口リブの内空側端部が支持部材によって閉塞され、前記セグメントの主桁の桁高の範囲内に収容され、 前記発進側トンネルから前記鋼管を推進させて、該鋼管自体を回転させながら前記硬化体を削孔し、該鋼管の所定の長さが貫入された状態で止めることを特徴とする、直線パイプルーフと到達側トンネルの接続方法。
【請求項5】
地中に並設された発進側トンネルと到達側トンネルとの間に架け渡された鋼管からなる直線パイプルーフと到達側トンネルを接続する、直線パイプルーフと到達側トンネルの接続方法であって、
前記到達側トンネルを構成するセグメントは地山側が開放された凹陥部と、
前記凹陥部の地山側を閉塞する板状の蓋部材と、を少なくとも具備し、
前記鋼管の先端には前記硬化体を削孔可能なビットが固定されており、
前記凹陥部は、一方の対向する2枚の坑口リブと、他方の対向する前記セグメントの2枚の主桁と、によって囲われた断面矩形の筒状形状を形成し、前記2枚の坑口リブの内空側端部が支持部材によって閉塞され、前記セグメントの主桁の桁高の範囲内に収容され、 前記発進側トンネルから前記鋼管を推進させて、該鋼管自体を回転させながら前記蓋部材を削孔し、該鋼管の所定の長さが貫入された状態で止め、
前記凹陥部の内部を充填材で充填する、ことを特徴とする、直線パイプルーフと到達側トンネルの接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に並設された発進側トンネルと到達側トンネルとの間に架け渡された直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造と接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、軟弱な地盤が分布する都市部で道路トンネルを施工する場合、開削工法の適用が一般的であるものの、開削工法は、工事中の騒音や振動、交通規制等の課題を内在している。また、都市部の道路下空間は、複数の地下鉄や共同溝等の埋設物が輻輳していることから、新たに施工しようとするトンネルの設置深度は往々にして深くなる傾向にあり、設置深度の深層化は建設費の高騰に直結する。このような背景の下、道路トンネルの施工に際してシールド工法を適用するケースが増加している。ところで、この道路トンネルの施工に当たり、一般の道路トンネルの施工では、例えば一台のシールド掘進機の掘進によって断面円形の本線トンネルが施工されることで足りる。一方、道路トンネルの分合流部の施工では、本線トンネルとランプトンネルの各断面を包括する、極めて大規模な地中拡幅が必要になり、その施工方法には様々な工夫を講じる必要がある。施工方法の一例として、本線トンネルとランプトンネルの2つのトンネル間に円弧状のパイプルーフ(いわゆる曲線パイプルーフ)を架け渡して先受け支保工を施工する方法が挙げられる。この先受け支保工を施工した後、パイプルーフ間を鉛直方向の支保工にて支持し、上方のパイプルーフ直下を掘削しながらトンネルの一部を撤去することにより、例えば多連円弧状の大断面空間が形成される。そして、このように形成された大断面空間において、上記する道路トンネルの分合流部等の構造物を構築することができる。
【0003】
このように、パイプルーフを用いて地中に並設された2つのトンネルを繋ぐ施工方法が提案されており、より詳細には、パイプルーフとパイプルーフが到達する到達側トンネルとを接続する施工方法や接続構造が提案されている。パイプルーフの施工方法に関しては、地中に複数のトンネルを併設させながら施工するステップ、発進側トンネルから地中に挿入されたパイプルーフ用の鋼管を到達側トンネルの表面もしくは表面から離れた位置まで推進させ、かつ、発進側トンネルから到達側トンネルに導坑を施工し、該導坑を利用して固定部材を到達側トンネルの表面まで搬送し、パイプルーフ用鋼管の端部と到達側トンネルの表面を固定部材を介して固定して双方のトンネル間にパイプルーフを架け渡して先受け支保工を形成するステップを有する、パイプルーフの施工方法(パイプルーフと到達側トンネルの接続方法)である(例えば、特許文献1参照)。一方、パイプルーフの接続構造に関しては、地中に併設された複数のトンネルの発進側のトンネルと到達側のトンネルとの間に架け渡されたパイプルーフ用鋼管の端部と到達側のトンネルの表面が固定部材を介して固定され、固定部材は、半割り管がベースプレートに取り付けられてなる第1の分割体と、別途の半割り管からなる第2の分割体から構成され、第1の分割体と第2の分割体が固定された固定部材のベースプレートが到達側のトンネルの表面に固定されている、パイプルーフの接続構造(パイプルーフと到達側トンネルの接続構造)である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5685508号公報
【文献】特許第5826313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載のパイプルーフと到達側トンネルの接続方法や接続構造によれば、到達側トンネルを構成するセグメント等にパイプルーフ用鋼管を貫通させることなく、到達側トンネルの表面とパイプルーフ用鋼管の端部を固定部材で固定することにより、到達側トンネルに鋼管を貫通させる際の出水の問題を解消することができる。また、到達側トンネルと発進側トンネルの双方に施工誤差が存在する場合でも、到達側トンネルの貫通孔に精緻に鋼管を受け入れる必要がないことから、これらの施工誤差を許容しながら容易に鋼管の端部と到達側トンネルの表面を固定することができる。しかしながら、到達側トンネルにパイプルーフが到達した後に、到達側トンネルの背面地山側に作業員が入り、到達側トンネルのスキンプレートの外面に半割り管を取付けて固定部材を形成することから、固定部材の取付け施工を実施するトンネル周辺地盤が、難透水性地盤や不透水性地盤であるか、あるいは地下水位以浅に存在することを要する。また、これらの条件を満たしていない場合には、発進側トンネルと到達側トンネルの間の地盤を全面的に地盤改良して止水性を確保することを要する。従って、トンネル周辺の地盤条件や地下水位条件に依存した施工方法となり、全面的な地盤改良を余儀なくされる場合は工費の嵩む接続構造となり得る。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、トンネル周辺の地盤条件や地下水位条件に依存することなく形成することのできる、直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造と接続方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造の一態様は、地中に並設された発進側トンネルと到達側トンネルとの間に架け渡された鋼管からなる直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造であって、前記到達側トンネルを構成するセグメントは地山側が開放された凹陥部と、前記凹陥部の内部に充填され硬化した硬化体と、を少なくとも具備し、前記鋼管の先端には前記硬化体を削孔可能なビットが固定され、前記凹陥部は、一方の対向する2枚の坑口リブおよび他方の対向する前記セグメントの2枚の主桁と、によって囲われた断面矩形の筒状形状を成し、前記2枚の坑口リブの内空側端部が支持部材によって閉塞され、前記セグメントの主桁の桁高の範囲に収容され、前記鋼管を回転させることで前記ビットの摺動によって前記硬化体を削孔し、該鋼管の所定の長さが貫入された状態で到達されたこと、を特徴とする。
【0008】
本態様によれば、到達側トンネルの背面地山側に作業員が進入して接続構造を形成する必要がないことから、接続構造の形成に際してトンネル周辺の地盤条件や地下水位条件に依存することがない。本態様の接続構造では鋼管の先端が到達側トンネルを貫通していない。また、仮設部材としてのみならず、本設部材としてそのまま残置することが可能になる。また、直線パイプルーフを形成する鋼管は鋼管自体を回転できれば断面円形の鋼管であってもよいし、断面が正多角形状の鋼管であってもよい。この接続構造では、直線パイプルーフを形成する鋼管に作用する土圧もしくは土水圧に基づいて鋼管に軸力が生じ、この鋼管に生じた軸力は、鋼管の先端からコンクリート体に伝達され、コンクリート体から凹陥部に伝達される。凹陥部は、到達側トンネルを形成するセグメントの主桁もしくは主桁間を繋ぐ縦リブ等に固定されており、従って、凹陥部に伝達された軸力は、当該凹陥部から主桁に直接伝達されるか、縦リブ等を介して主桁に間接的に伝達されることになる。このようにして、直線パイプルーフを形成する鋼管から作用する軸力を、伝達部材を介して、高剛性のセグメントの主桁に伝達し、当該主桁にて軸力を負担させることができる。
【0009】
また、本発明による直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造の他の態様において、前記鋼管は断面円形であることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、鋼管の形状が断面円形であるため、鋼管の硬化体への貫入孔が鋼管外面形状とほぼ同様となるため、鋼管と硬化体との一体性をより向上させることができる。
【0011】
また、本発明による直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造の他の態様において、前記凹陥部の両側面が前記セグメントを構成する主桁からなることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、鋼管から伝達される軸力を硬化体を介してセグメントの主部材である主桁に直接伝達できるため、構造耐力の観点から好ましい形態と言える。
【0013】
また、本発明による直線パイプルーフと到達側トンネルの接続方法の一態様は、地中に並設された発進側トンネルと到達側トンネルとの間に架け渡された鋼管からなる直線パイプルーフと到達側トンネルを接続する、直線パイプルーフと到達側トンネルの接続方法であって、前記到達側トンネルを構成するセグメントは地山側が開放された凹陥部と、前記凹陥部の内部に充填され硬化した硬化体と、を少なくとも具備し、前記鋼管の先端には前記硬化体を削孔可能なビットが固定されており、前記凹陥部は、一方の対向する2枚の坑口リブおよび他方の対向する前記セグメントの2枚の主桁と、によって囲われた断面矩形の筒状形状を成し、前記2枚の坑口リブの内空側端部が支持部材によって閉塞され、前記セグメントの主桁の桁高の範囲に収容され、前記発進側トンネルから前記鋼管を推進させて、該鋼管自体を回転させながら前記硬化体を削孔し、該鋼管の所定の長さが貫入された状態で止めることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、直線パイプルーフを形成する鋼管を到達側トンネルに貫通させることなく、さらには、セグメントの背面地山側での作業を不要としながら、直線パイプルーフと到達側トンネルを接続することができる。従って、トンネル周辺の地盤が透水性地盤からなる場合や、地下水位が到達側トンネルと直線パイプルーフの接続箇所よりも高い場合であっても、到達側トンネルの背面の地山内への地盤改良を必ずしも必要としない。
【0015】
また、本発明による直線パイプルーフと到達側トンネルの接続方法の他の態様において、地中に並設された発進側トンネルと到達側トンネルとの間に架け渡された鋼管からなる直線パイプルーフと到達側トンネルを接続する、直線パイプルーフと到達側トンネルの接続方法であって、前記到達側トンネルを構成するセグメントは地山側が開放された凹陥部と、前記凹陥部の地山側を閉塞する板状の蓋部材と、を少なくとも具備し、前記鋼管の先端には前記硬化体を削孔可能なビットが固定されており、前記凹陥部は、一方の対向する2枚の坑口リブおよび他方の対向する前記セグメントの2枚の主桁と、によって囲われた断面矩形の筒状形状を成し、前記2枚の坑口リブの内空側端部が支持部材によって閉塞され、前記セグメントの主桁の桁高の範囲に収容され、前記発進側トンネルから前記鋼管を推進させて、該鋼管自体を回転させながら前記蓋部材を削孔し、該鋼管の所定の長さが貫入された状態で止め、前記凹陥部の内部を充填材で充填する、ことを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、到達側トンネルを構成するセグメントの凹陥部に地山側の開放部を閉塞する板状の蓋部材が具備されていることにより、到達側トンネル構築時に凹陥部内部に土砂やシールド工法における裏込め材等の侵入を防止することができ、鋼管自体を回転させながら蓋部材を削孔し、鋼管と凹陥部との間の隙間を鋼管の到達した後から充填材で充填することができる。また、鋼管到達後に発進側の鋼管端部から鋼管の内部にコンクリート等の充填材を充填することで、到達側トンネルからの充填を不要としつつ、前記隙間内部に効率的にコンクリートが充填され、鋼管と凹陥部とをより一体的に接続することができる。鋼管内部のコンクリートを鋼管部材の一部としてみなすSC構造として合理的に設計する際に有効な方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のパイプルーフと到達側トンネルの接続構造及び接続方法によれば、トンネル周辺の地盤条件や地下水位条件に依存することなく、直線パイプルーフと到達側トンネルを接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造を有する、道路トンネルの分合流部の仮設構造を説明する断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造であり、(a)トンネル軸方向から見た接続構造の側面視図、(b)a図のA-A断面図、(c)a図のB-B断面図、(d)a図のC-C断面図、である。
図3】本発明の実施形態に係る直線パイプルーフと到達側トンネルの接続方法の一例を説明する工程図である。
図4】本発明の実施形態に係る直線パイプルーフと到達側トンネルの接続方法の他の一例を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造と接続方法について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0020】
[実施形態に係る直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造]
<道路トンネルの分合流部の仮設構造>
はじめに、図1を参照して、実施形態に係る直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造を備える、道路トンネルの分合流部の仮設構造について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造を有する、道路トンネルの分合流部の仮設構造を説明する断面図である。図1に示すように、道路トンネルの分合流部の仮設構造は、地中に間隔を置いて併設施工された、相対的に小断面のランプトンネル100と、相対的に大断面の本線トンネル200と、ランプトンネル100と本線トンネル200の上方において双方のトンネル間に架け渡された曲線パイプルーフ300と、を有する。また、ランプトンネル100と本線トンネル200の下方位置には、双方のトンネル間に跨る先行仮設下部受け500をさらに有する。また、ランプトンネル100と本線トンネル200はともに、トンネル内において、曲線パイプルーフ300との交差位置を起点として鉛直方向に延設する鉛直支保工60を有し、以上で説明した各構成が仮設構造の基本構成となる。なお、ランプトンネル100と本線トンネル200の下方位置においても、一点鎖線で示す下方の曲線パイプルーフ300Aを必要に応じて施工してもよく、下方の曲線パイプルーフ300Aが施工される場合はこれも仮設構造の構成要素となる。
【0021】
仮設構造ではないが、ランプトンネル100と本線トンネル200にはそれぞれ、上方斜め支保工70と下方斜め支保工80が仮設段階で施工される。これらの部材はいずれも、図中の建築限界の外周側に位置しており、この建築限界の外周側に施工されるコンクリート等に埋設される部材となり得る。上方斜め支保工70は、図中の一点鎖線で示す本設トンネルの本設天井湾曲受け1000の軸線に沿う方向に延びて、本設トンネル供用後に本設天井湾曲受け1000から作用する軸力を逃がす部材である。一方、下方斜め支保工80は、図中の一点鎖線で示す本設トンネルの本設下方湾曲受け1100の軸線に沿う方向に延びて、本設トンネル供用後に本設下方湾曲受け1100から作用する軸力を逃がす部材である。
【0022】
本線トンネル200とランプトンネル100はいずれも、シールド工法にて施工され、複数のセグメント20がリング方向に接続されてセグメントリングを形成するとともに、複数のセグメントリングがトンネルの軸線方向に接続されることにより所定延長に亘るトンネルを形成している。各セグメント20は、周方向に延びる湾曲した複数の主桁21と、主桁21の外周面に溶接にて接続されたスキンプレート24と、主桁21の周方向端部において当該主桁21とスキンプレート24に溶接にて接続された継手板22と、主桁21同士を繋いでセグメント20を補強する縦リブ23と、を有する。
【0023】
本線トンネル200とランプトンネル100において、本設天井湾曲受け1000と本設下方湾曲受け1100の端部が接続される箇所のセグメント20に、それぞれ凹陥部26,27が予め設けられている。
【0024】
曲線パイプルーフ300は、ランプトンネル100を発進側トンネルとし、ランプトンネル100から鋼管30を順次推進させながら到達側トンネルである本線トンネル200の手前まで湾曲線形を有して延設している。なお、ランプトンネル100が到達側トンネルであり、本線トンネル200が発進側トンネルであってもよい。図示例では、曲線パイプルーフ300を形成する先頭の鋼管30の先端31が到達側トンネル200に到達せずにトンネルの背面地山G内に留まっている形態を示しているが、この形態以外にも、先頭の鋼管30の先端31が到達側トンネル200に接触している形態であってもよい。いずれの形態であっても、曲線パイプルーフ300を形成する先頭の鋼管30の先端31が到達側トンネル200を貫通していないことを要する。
【0025】
到達側トンネル200側においては、到達側トンネル200の手前で先端31が止まっている鋼管30と、セグメント20においてスキンプレート24が撤去された領域から地山G内に突出している伝達部材10の突出部と、鋼管30の先端31と伝達部材10の突出部とを巻き込んで一体化している硬化体40と、により、曲線パイプルーフ300と到達側トンネルの接続構造600が形成される。
一方、発進側トンネル100側においては、発進側トンネル100の内部に留まっている曲線パイプルーフ300を構成する鋼管30の端部32と、セグメント20と、これらを巻き込んで一体化している硬化体40と、により、曲線パイプルーフ300と発進側トンネルの接続構造700が形成されている。
なお、本明細書においては、曲線パイプルーフ300と到達側トンネルの接続構造600および発進側トンネルの接続構造700の詳細な説明は省略する。
【0026】
また、到達側トンネル200のうち、先行仮設下部受け500の端部が嵌め込まれる箇所には予めセグメント20に対して凹陥部25が設けられ、例えばこの凹陥部25は、トンネル施工当初はコンクリート等の硬化体で閉塞されている。発進側トンネル100から掘進機を発進させ、地山を掘進しながら鋼管50の推進を実行して鋼管50同士を繋ぐことにより、先行仮設下部受け500が施工される。
発進側トンネルの接続構造900は前記曲線パイプルーフ300と発進側トンネルの接続構造700と同様であっても、他の形態であっても良い。
なお、到達側トンネルの接続構造800については、以下で詳説する。
【0027】
図示例の道路トンネルの分合流部の仮設構造では、ランプトンネル100と本線トンネル200の背面地山G内において地盤改良を行っていない。それは、直線パイプルーフ500と到達側トンネルの接続構造800等の構築において、背面地山G内に作業員が進入して施工する必要性がないからであるが、地盤条件や地下水条件、施工性や工費等を勘案して、ランプトンネル100と本線トンネル200の背面地山G内にて適宜の地盤改良施工が行われてもよく、本実施形態に係る接続方法は地盤改良施工を完全に排除するものではない。
【0028】
<直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造>
次に、本発明の実施形態に係る直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造について図2を参照して説明する。本実施形態は、前記<道路トンネルの分合流部の仮設構造>で示したとおり、先行仮設下部受け500と到達側トンネルとの接続構造800に相当するが、後述するとおり、先行仮設下部受け500が直線形状の鋼管であることが本発明の特徴の一つであり、“先行仮設下部受け”としての使用形態に係らず、“直線パイプルーフ”への適用も広く含まれることから、以降の記載は“先行仮設下部受け500”という標記ではなく、“直線パイプルーフ500”という標記で統一する。
【0029】
図2は、本発明の実施形態に係る直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造であり、(a)トンネル軸方向から見た接続構造の側面視図、(b)a図のA-A断面図、(c)a図のB-B断面図、(d)a図のC-C断面図をそれぞれ示す。
到達側トンネル200のうち、接続構造800を形成する領域においては、縦リブ23が干渉する場合、縦リブ23は撤去されており、スキンプレート24も同様に撤去されている。凹陥部25は、一方の対向する2枚の坑口リブ1a,1bおよび他方の対向する2枚の主桁21,21とによって囲われた断面矩形の筒状形状をなし、内空側端部が支持部材2によって塞がれることで、地山側にのみ開放された形状が形成される。
支持部材2は、坑口リブ1a,1bの端辺に沿って凹陥部を塞ぐように坑口リブ1a,1bおよび主桁21,21に固定された支持版2aと、支持版2aに直交して坑口リブ1a,1bの端辺を跨ぐように支持版2aに固定された長方形板からなる複数のウェブ2b,2b・・・と、複数のウェブ2b,2b・・・に直交するように複数のウェブ2b,2b・・・に沿って固定された長方形板からなる複数のフランジ2c,2c・・・とから形成される。これにより、支持版2aはウエブ2b,2b・・・とフランジ2c,2c・・・とによって補剛されている。
凹陥部25の各部材同士および各部材と主桁21,21との固定は隅肉溶接により行うが、所定の強度を有すれば固定方法は溶接に限定されない。
【0030】
凹陥部25の内部は地山側が開放されているため、この状態で到達トンネル200を構築すると、凹陥部25の内部にシールドの施工に伴う土砂や泥水、裏込め材等が侵入する。このため、凹陥部25の内部は、到達トンネル200を構築する前に硬化体40が形成されている必要がある。本実施形態における硬化体40は凹陥部25の内部に充填材を充填し、所定の強度が発揮されるまで養生することで形成される。
さらに、硬化体40は前述の通り土砂等の異物が侵入することを避けることと、シールド掘削機のテールを通過させる必要性とから、セグメント20のスキンプレート24の外面に沿って形成される。
なお、本実施形態における硬化体40はコンクリートであるが、後述する鋼管の先端に固定した切削ビットにより切削が可能であり、鋼管50から伝達される軸力を凹陥部25に伝えることができる強度を有していれば、モルタルやエポキシ樹脂であっても良く、素材に限定されない。
【0031】
図2より明らかなように、支持部材2の下面は、主桁21の内側端面よりもトンネル内に突出していない(主桁21の桁高内に収まっている)。そのため、到達側トンネル200内において本設構造物が完成した際に、主桁21よりもトンネル内に突出していて建築限界を侵している仮設部材を切断撤去等する作業は一切不要となる。また、このように坑口リブ1や支持部材2等の仮設部材が建築限界を侵していないことから、本設構造物が完成した後においてもこれらの仮設部材を残置し、本設部材として兼用することが可能になる。
【0032】
図2に示すように、直線パイプルーフ500を形成する鋼管50は硬化体40に所定の長さが貫入された状態で到達されている。貫入長は鋼管50から伝達される軸力が硬化体40に効率的に伝達できれば特に限定されないが、実施形態では確実に軸力を伝達できる貫入長として鋼管50の外径程度以上を確保するものとしている。
硬化体40への鋼管50の貫入は、鋼管50の先端51に沿って所定の間隔で配置,固定された複数の切削ビット52,52・・・によって行う。鋼管50からの軸力を効率的に伝達するためには、鋼管50と硬化体40との間に隙間が無い方が望ましく、鋼管50自体を回転させながら硬化体40に貫入させることで、双方の一体性をより確実にしている。そして、鋼管50の先端51と、凹陥部25と、硬化体40と、により、直線パイプルーフ500と到達側トンネルの接続構造800が形成される。
【0033】
[実施形態に係る直線パイプルーフと到達側トンネルの接続方法]
次に、図3および図4を参照し、本発明の実施形態に係る直線パイプルーフと到達側トンネルの接続方法を説明する。ここで、図3および図4は、本発明の実施形態に係る直線パイプルーフと到達側トンネルの接続方法の一例を説明する工程図である。この接続方法に当たり、図1に示すように、シールド工法による、発進側トンネル100と到達側トンネル200の施工は完了しているものとする。ここで、図1における発進側トンネル100と到達側トンネル200の周辺地盤において、地盤改良施工は必須ではないが、これら発進側トンネル100や到達側トンネル200の施工に前後し、かつ直線パイプルーフ500の施工前の段階において、適宜の地盤改良施工が実施されてもよい。
【0034】
図3(a)に示すように、発進側トンネル100側から鋼管50をZ1方向に推進させ、その先端51を到達側トンネル200の手前の背面地山Gで止めることにより、直線パイプルーフ500を発進側トンネル100と到達側トンネル200との間に架け渡す(鋼管推進工程)。この直線パイプルーフ500の施工においては、掘進機Mにて地山Gを掘進しながら鋼管50の推進を実行する。掘進機Mが到達側トンネル200の手前まで到達し、前方の鋼管50の先端51を到達側トンネル200の手前まで到達させた段階で、掘進機Mを縮径させ、直線パイプルーフ500を形成する各鋼管50を介してZ2方向に発進側トンネル100内へ縮径した掘進機Mを引き戻して回収する。
【0035】
このように、掘進機Mを発進側トンネル100内にて回収することにより、次に施工する鋼管50の推進施工に際して回収された掘進機Mを転用することができる。なお、図3において、直線パイプルーフ500を形成する先頭の鋼管50の先端51は、到達側トンネル200に到達せずにトンネルの背面地山G内に留まっているが、この形態以外にも、先頭の鋼管50の先端51が到達側トンネル200に接触している形態であってもよい。いずれの形態であっても、直線パイプルーフ500を形成する先頭の鋼管50の先端51が到達側トンネル200を貫通していないことを要する。
【0036】
図3(b),(c)に示すように、鋼管50自体を回転させながら前方に推進させ、先端51に沿って配置,固定された複数の切削ビット52,52・・・によって、硬化体40を直接切削する。鋼管50は所定の長さを貫入させた状態で到達を完了とする。
【0037】
図示はしないが、他の実施形態として、少なくとも排土孔が設けられ、複数の削孔ビット52,52・・・が配置,固定されたカッターフェイスを先端に備えた鋼管50自体を地山Gの推進と硬化体40への貫入を行っても良い。
これにより、前記のような推進用の掘進機を併用する必要は無く、地山Gの推進掘削と硬化体40への削孔貫入を連続的に行うことができ効率的である。
【0038】
図4に、図3とは別の実施形態を示す。凹陥部25の内部には予め硬化体40が充填されておらず、凹陥部25の地山側開放部にスキンプレート24に相当する蓋部材3が溶接固定された状態である。
先ず、図4(a)に示すように、発進側トンネル100側から鋼管50をZ1方向に推進させ、その先端51を到達側トンネル200の手前の背面地山Gで止めることにより、直線パイプルーフ500を発進側トンネル100と到達側トンネル200との間に架け渡す(鋼管推進工程)。
次に、図4(b)に示すように、蓋部材3を直接切削し、鋼管50の所定の長さが貫入する。ここまでの直線パイプルーフ500の施工においては、前記推進用の掘進機Mによっても、カッターフェイスを先端に備えた鋼管50自体の回転圧入によって行なっても良い。
さらに、図4(c)に示すように、発進側トンネル100側から充填され、直線パイプルーフ500を形成する鋼管50を介して流し込まれたフレッシュコンクリートが鋼管50の先端51から到達側トンネル200の背面地山G内に充填され、硬化することによって硬化体40が形成される。このように、鋼管50の先端51からフレッシュコンクリートが充填されるが、セグメント20において蓋部材3が切断撤去されている箇所では、凹陥部25が開口部を完全に塞いていることから、フレッシュコンクリートが到達側トンネル200の内部に流れ込む恐れはない。また、支持部材2は支持版2aがウエブ2b,2b・・・とフランジ2c,2c・・・とによって補剛されていることから、充填されたフレッシュコンクリートのコンクリート圧や硬化後の硬化体40の重量等によって座屈等する恐れもない。接続構造800の構成からも分かる通り、接続構造800の形成に当たり、到達側トンネル200の内部から背面地山G内に作業員が入り込んで作業を行う必要がないことから、高い施工安全性を有する接続方法となる。
【0039】
図示する接続方法によれば、到達側トンネル200周辺の地盤条件や地下水位条件に依存することなく、直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造800を施工することができる。また、この施工に際して、到達側トンネル200の背面地山G内に作業員が入り込んで行う作業を一切不要にでき、高い施工安全性を享受できる。また、施工される仮設部材はいずれも、セグメント20の内側端面よりも地山G側に位置していることから、本設構造物が完成した際に仮設部材を切断撤去等する作業を一切不要にでき、これらの仮設部材を本設部材にも兼用することが可能になる。さらに、直線パイプルーフ500は、各鋼管50内にコンクリートが充填された構造とすれば、高剛性の直線パイプルーフ500が構築される。
【0040】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0041】
1:坑口リブ、2:支持部材、3:蓋部材、20:セグメント、21:主桁、22:継手板、23:縦リブ、24:スキンプレート、24a:開口部、30:鋼管(角鋼管)、31:先端、40:硬化体、50:鋼管(丸鋼管)、60:鉛直支保工、70:上方斜め支保工、80:下方斜め支保工、100:発進側トンネル(ランプトンネル)、200:到達側トンネル(本線トンネル)、300:曲線パイプルーフ、500:直線パイプルーフ(先行仮設下部受け)、600:接続構造(曲線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造)、700:接続構造(曲線パイプルーフと発進側トンネルの接続構造)、800:接続構造(直線パイプルーフと到達側トンネルの接続構造)、900:接続構造(直線パイプルーフと発進側トンネルの接続構造)、1000:本設天井湾曲受け、1100:本設下方湾曲受け、G:地山(背面地山)

図1
図2
図3
図4