(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】ウインドレギュレータ
(51)【国際特許分類】
E05F 11/38 20060101AFI20220113BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
E05F11/38 F
B60J1/17 A
B60J1/17 C
(21)【出願番号】P 2018055062
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】502036147
【氏名又は名称】株式会社トノックス
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】婦木 勝彦
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-231656(JP,A)
【文献】実開平04-132175(JP,U)
【文献】特開2010-150762(JP,A)
【文献】特開昭62-086282(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3156576(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第10053627(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/38
E05F 11/48
B60J 1/00- 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラスの昇降方向と平行に設けられたガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って移動自在なキャリアプレートと、
前記キャリアプレートと連結具を介し結合されていて、前記窓ガラスの下端部を保持するガラスホルダと、
前記キャリアプレートを前記ガイドレールに沿って移動させる駆動手段と、を備え、
前記連結具は、頭部フランジ付きの柱状部を有していて、前記ガラスホルダに固定されており、前記キャリアプレートは前記柱状部の軸方向に摺動自在に嵌合し、
前記連結具は、前記ガラスホルダに対して、前記キャリアプレートを前記窓ガラスの厚み方向に位置ずれ可能に連結していることを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項2】
前記連結具は、前記柱状部の前記頭部フランジとは反対側の先端部にネジ部を有する段付きボルトであり、
前記キャリアプレートには筒状スペーサが固着され、
前記ガラスホルダにはナットが固着され、
前記段付きボルトが前
記筒状スペーサの内周を貫通して前記ナットに螺着されていることを特徴とする請求項
1に記載のウインドレギュレータ。
【請求項3】
前記窓ガラスが湾曲面を有し、前記ガイドレールが前記湾曲面に対応して湾曲していることを特徴とする請求項1
又は2に記載のウインドレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓ガラスを昇降するためのウインドレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアに取り付けられる窓ガラスは、車両ドア前後に設けられるサッシュにより、摺動自在に案内されて昇降可能となっている。窓ガラスは、ウインドレギュレータにより、昇降駆動される。 ウインドレギュレータは、窓ガラスの昇降方向と平行に設けられたガイドレールと、ガイドレールに沿って移動可能なキャリアプレートと、窓ガラスの下端部に取り付けられキャリアプレートと結合されるガラスホルダと、キャリアプレートに係止される上昇用ケーブル及び下降用ケーブルと、上昇用ケーブル及び下降用ケーブルの巻き取り・送り出しを行う駆動装置とを備えている。従来は、窓ガラスを保持するガラスホルダとキャリアプレートとはリジッドに固定されている構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、防弾車両の場合、防弾窓ガラスの厚みは25mm以上あり、標準車両の5mmに対し5倍の重量がかかる。また、厚い窓ガラスを仕込むために、ドアを改造して取り付けている。そして、窓ガラスが曲面を成している場合、ウインドレギュレータのキャリアプレートの軌跡をその曲面に高精度で合わせることは、非常に難しい作業となる。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、窓ガラスを保持するガラスホルダの移動軌跡と、ガイドレールに沿って移動するキャリアプレートの移動軌跡のずれを吸収可能で、円滑な窓ガラスの昇降が可能なウインドレギュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様はウインドレギュレータである。このウインドレギュレータは、窓ガラスの昇降方向と平行に設けられたガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動自在なキャリアプレートと、前記キャリアプレートと連結具を介し結合されていて、前記窓ガラスの下端部を保持するガラスホルダと、前記キャリアプレートを前記ガイドレールに沿って移動させる駆動手段と、を備え、
前記連結具は、頭部フランジ付きの柱状部を有していて、前記ガラスホルダに固定されており、前記キャリアプレートは前記柱状部の軸方向に摺動自在に嵌合し、
前記連結具は、前記ガラスホルダに対して、前記キャリアプレートを前記窓ガラスの厚み方向に位置ずれ可能に連結していることを特徴とする。
【0008】
前記連結具は、前記柱状部の前記頭部フランジとは反対側の先端部にネジ部を有する段付きボルトであり、前記キャリアプレートには筒状スペーサが固着され、前記ガラスホルダにはナットが固着され、前記段付きボルトが前記筒状スペーサの内周を貫通して前記ナットに螺着されている構成であるとよい。
【0009】
前記窓ガラスが湾曲面を有し、前記ガイドレールが前記湾曲面に対応して湾曲しているとよい。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、窓ガラスを保持するガラスホルダに対して、キャリアプレートを前記窓ガラスの厚み方向に位置ずれ可能に連結する構造とすることで、前記ガラスホルダの移動軌跡と、前記キャリアプレートの移動軌跡のずれを吸収可能で、円滑な窓ガラスの昇降駆動が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るウインドレギュレータの実施の形態であって、車両のドアの内側方向からみた斜視図。
【
図2】実施の形態において、ウインドレギュレータのガイドレールが窓ガラスに沿って湾曲していることを示す側面図。
【
図4】実施の形態において、ウインドレギュレータのガイドレールに沿って昇降するキャリアプレートにスペーサを溶接した状態を示す拡大斜視図。
【
図5】実施の形態において、キャリアプレートにガラスホルダを段付きボルトで連結する手順を示す拡大斜視図。
【
図6】実施の形態において、段付きボルトと螺合するナットをガラスホルダに溶着した状態を示すガラスホルダの背面図。
【
図7】実施の形態において使用する段付きボルトであって、(A)は平面図、(B)は正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1乃至
図6を用いて本発明の実施の形態に係るウインドレギュレータを説明する。本発明の実施の形態に係るウインドレギュレータ1は、車両のドアのインナーパネルとアウターパネルとの間に固定され、ドアの窓ガラスを昇降する装置である。ウインドレギュレータ1は、ガイドレール10と、この上端部に取り付けられた上ジョイント部材20と、ガイドレール10の下端部に取り付けられた下ジョイント部材30と、ガイドレール10に摺動自在に設けられるキャリアプレート40と、モータ駆動のドラムを有する駆動部50と、窓ガラスWを保持するガラスホルダ70とを備えている。
【0015】
ウインドレギュレータ1はワイヤ式ウインドレギュレータであり、駆動部50と上ジョイント部材20、及び駆動部50と下ジョイント部材30とはそれぞれコントロールケーブル60(アウターケーシング61の内側をインナーワイヤ(図示せず)が移動する多重構造)で接続されている。コントロールケーブル60の芯線であるインナーワイヤは上ジョイント部材20を介して上方からキャリアプレート40に接続され、かつ前記インナーワイヤは下ジョイント部材30介して下方からキャリアプレート40に接続されている。駆動部50内のドラムの回転によってインナーワイヤを上方又は下方に引っ張ってキャリアプレート40を昇降駆動する。キャリアプレート40の昇降機構は周知であるので詳細は省略する。駆動部50及びコントロールケーブル60を含む機構がキャリアプレート40をガイドレール10に沿って移動させる駆動手段となる。なお、ガイドレール10は、窓ガラスWの昇降方向と平行となるように上ジョイント部材20及び下ジョイント部材30を介しドアのインナーパネル又はアウターパネルに取り付けられる(固定される)。
【0016】
ドアの窓ガラスWが平板であれば、ガイドレール10は窓ガラスWの厚み方向にも直線的でよく、窓ガラスWを保持するガラスホルダ70はキャリアプレート40に単純にリジッドに固定する構造が可能であるが、
図2に示すように、窓ガラスWが湾曲している曲面ガラスの場合には、これに合わせてガイドレール10もドアの厚み方向に湾曲している必要がある。つまり、ドアの窓枠でガイドされる窓ガラスWの移動軌跡とガイドレール10でガイドされるキャリアプレート40の移動軌跡を合致させることが理想である。しかし、窓ガラスWの移動軌跡とキャリアプレート40の移動軌跡とを高精度で合致させることは実際には非常に難しい作業になる。
【0017】
本実施の形態では、キャリアプレート40に対して、窓ガラスWを保持するガラスホルダ70を、
図7(A),(B)に示す連結具としての段付きボルト80で窓ガラスWの厚み方向(ドアの厚み方向)に位置ずれ可能に連結している。以下にキャリアプレート40と、窓ガラスWを保持するガラスホルダ70との連結構造を具体的に述べる。
【0018】
図3乃至
図6に示すように、キャリアプレート40には、ガラスホルダ70を取り付けるための貫通孔41が形成されている。キャリアプレート40のガラスホルダ取付面の反対面の貫通孔41形成位置に円筒状(若しくは略円筒状)スペーサ42が溶接で固着されている。貫通孔41と円筒状スペーサ42の内周孔中心位置とは一致している。ガラスホルダ70の取付孔71のキャリアプレート非対面側にはナット72が溶接で固着されている。
【0019】
段付きボルト80は
図7(A),(B)のように、頭部にフランジ85が形成されたフランジ付き柱状部81と、柱状部81の頭部のフランジ85とは反対側の先端部に形成されたネジ部82とを有している。柱状部81よりもネジ部82は小径であり、両者間に段差が形成されている。
【0020】
そして、キャリアプレート40のガラスホルダ取付面の反対側から段付きボルト80を円筒状スペーサ42の内周を貫通するように挿入し、ネジ部82をガラスホルダ70側のナット72に螺着することで、キャリアプレート40とガラスホルダ70とが連結される。このとき、柱状部81は円筒状スペーサ42の内周に摺動自在に嵌合し、頭部のフランジ85がキャリアプレート40の抜け止めとなっている。
図3に示すガラスホルダ70に対するキャリアプレート40の可動範囲Dが、ガラスホルダ70とキャリアプレート40間の軌跡ズレ吸収代となる。例えば車内方向に10mm程度確保する。なお、ガラスホルダ70は窓ガラスWの下端部(下縁部)が嵌合する凹部73を有し、ここで窓ガラスWを保持(挟持)する。
【0021】
以上の実施の形態の構成において、駆動部50を作動させてコントロールケーブル60の芯線であるインナーワイヤを介しキャリアプレート40をガイドレール10に対し、引き上げ、又は引き下げることでキャリアプレート40を昇降させ、ドアの窓枠を窓ガラスWで閉めたり、又は窓ガラスWをドアのインナーパネルとアウターパネルとの間に格納する。その際、窓枠側のサッシュでガイドされる窓ガラスWの下端部の移動軌跡(すなわちガラスホルダ70の移動軌跡)とキャリアプレート40の移動軌跡との間にずれがあっても、ガラスホルダ70に対するキャリアプレート40の可動範囲Dが存在して軌跡ズレ吸収代となるため、円滑に窓ガラスWを昇降させることが可能である。
【0022】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0023】
(1) 窓ガラスWの昇降方向と平行に設けられたガイドレール10に沿って移動自在なキャリアプレート40と、窓ガラスWの下端部を保持するガラスホルダ70とを連結具を介し結合する場合に、キャリアプレート40に対して、ガラスホルダ70を窓ガラスWの厚み方向に位置ずれ可能に連結している。このため、窓ガラスWの下端部の移動軌跡(すなわちガラスホルダ70の移動軌跡)とキャリアプレート40の移動軌跡との間にずれがあっても、円滑に窓ガラスWを昇降させることが可能である。
【0024】
(2) ガラスホルダ70とキャリアプレート40間の軌跡ズレが許容されるため、ガイドレール10の取付作業が容易となり、作業性が改善される。
【0025】
(3) ガラスホルダ70とキャリアプレート40とを連結する連結具として、頭部フランジ付きの柱状部81及びネジ部82を有する段付きボルト80を用いることで、簡単な構造でガラスホルダ70に対するキャリアプレート40の可動範囲Dを確保でき、その可動範囲Dがガラスホルダ70とキャリアプレート40間の軌跡ズレ吸収代となる。
【0026】
(4) とくに、窓ガラスWが曲面でかつ防弾ガラスのように分厚い場合でも、問題無く窓ガラスWを昇降可能なウインドレギュレータを実現できる。
【0027】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0028】
実施の形態では、キャリアプレートとガラスホルダとの連結に段付きボルトを使用したが、それ以外の連結具も利用可能である。
【0029】
実施の形態では、段付きボルトを連結具として用い、段付きボルトのネジ部が螺合するガラスホルダにナットを溶着したが、ガラスホルダの材質(肉厚)によってはガラスホルダに直接ネジを形成して段付きボルトを螺着してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 ウインドレギュレータ
10 ガイドレール
20 上ジョイント部材
30 下ジョイント部材
40 キャリアプレート
41 貫通孔
42 円筒状スペーサ
50 駆動部
60 コントロールケーブル
70 ガラスホルダ
71 取付孔
72 ナット
80 段付きボルト
81 柱状部
82 ネジ部
85 フランジ
W 窓ガラス