(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】排水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/34 20060101AFI20220203BHJP
C02F 3/12 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C02F3/34 101B
C02F3/34 101C
C02F3/12 J
(21)【出願番号】P 2018059751
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591095823
【氏名又は名称】株式会社九電工
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【氏名又は名称】下田 正寛
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】小笹 慶二
(72)【発明者】
【氏名】永田 真史
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-203090(JP,A)
【文献】特開平11-169887(JP,A)
【文献】特開2012-200705(JP,A)
【文献】特開2017-100092(JP,A)
【文献】特開2004-275826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0374345(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/28-3/34
C02F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された排水を硝化細菌、通性嫌気性細菌、及びリン蓄積細菌を含む微生物フロックを用いて微生物処理することによって排水中の窒素に対して硝化を行う硝化槽並びに上記微生物フロックを用いて微生物処理することによって排水中の硝酸又は亜硝酸を窒素ガスに還元し、大気中に窒素を放出する脱窒槽から構成される反応槽と、
上記反応槽の槽内に設けられ、所定時間ごとに上記排水中のアンモニア濃度を測定する2個のアンモニアセンサと、
上記反応槽の槽内に設けられ、所定時間ごとに上記排水中の溶存酸素濃度を測定する1個の溶存酸素濃度センサと、
上記硝化槽の槽内下方に設けられ、排水中に散気する複数の散気手段と、
上記複数の散気手段のそれぞれに対して必要な流量の空気を送風する送風手段と、
それぞれの散気手段とこの送風手段との間にそれぞれ介在された複数の可変式送風バルブと、
上記硝化槽に存在する排水の一部を上記脱窒槽に供給する排水循環手段を有し、
上記脱窒槽は上記反応槽の流入端に直結し、上記硝化槽は上記反応槽の流出端に直結し、
上記脱窒槽には、第1アンモニアセンサが設けられ、
上記硝化槽の全長に対して上記硝化槽の流入端側から2/3の位置から上記硝化槽の流出端までの領域に第2アンモニアセンサが設けられ、
上記硝化槽の流入端側には、上記溶存酸素濃度センサが設けられ、
上記散気手段は、硝化槽の全長に対して硝化槽の流入端側から1/2の位置までの領域に散気する前方散気手段と、前方散気手段以降の流出端までの領域に散気する後方散気手段とに分離され、
上記第1アンモニアセンサにより測定された排水の第1アンモニア濃度に対応する排水の溶存酸素濃度に基づいて上記前方散気手段による空気の散気量を、上記送風手段による空気の流量およびまたは可変式送風バルブの開閉度に基づいて調整するとともに、
上記第2アンモニアセンサにより測定された排水の第2アンモニア濃度が所定の下限濃度以下の場合には、上記後方散気手段による空気の散気量を低下させ、上記第2アンモニアセンサにより測定された排水の第2アンモニア濃度が所定の上限濃度を超える場合には、上記後方散気手段による空気の散気量を増加させ、
上記溶存酸素濃度センサにより測定された排水の溶存酸素濃度が、第1アンモニアセンサにより測定された第1アンモニア濃度に対応する溶存酸素濃度より濃い場合には、上記前方散気手段による空気の散気量を低下させ、上記溶存酸素濃度センサにより測定された排水の溶存酸素濃度が、第1アンモニアセンサにより測定された第1アンモニア濃度に対応する溶存酸素濃度より薄い場合には、上記前方散気手段による空気の散気量を増加させる排水処理装置。
【請求項2】
供給された排水を硝化細菌、通性嫌気性細菌、及びリン蓄積細菌を含む微生物フロックを用いて微生物処理することによって排水中の窒素に対して硝化を行う硝化槽、上記微生物フロックを用いて微生物処理することによって排水中の硝酸又は亜硝酸を窒素ガスに還元し、大気中に窒素を放出する脱窒槽並びに上記微生物フロックからリン酸を放出させるリン放出槽から構成される反応槽と、
上記反応槽の槽内に設けられ、所定時間ごとに上記排水中のアンモニア濃度を測定する2個のアンモニアセンサと、
上記反応槽の槽内に設けられ、所定時間ごとに上記排水中の溶存酸素濃度を測定する1個の溶存酸素濃度センサと、
上記硝化槽の槽内下方に設けられ、排水中に散気する複数の散気手段と、
上記複数の散気手段のそれぞれに対して必要な流量の空気を送風する送風手段と、
それぞれの散気手段とこの送風手段との間にそれぞれ介在された複数の可変式送風バルブと、
上記硝化槽に存在する排水の一部を上記脱窒槽に供給する排水循環手段を有し、
上記リン放出槽は上記反応槽の流入端に直結し、上記硝化槽は上記反応槽の流出端に直結するとともに、上記脱窒槽は、上記リン放出槽と上記硝化槽との間に設けられ、
上記脱窒槽には、第1アンモニアセンサが設けられ、
上記硝化槽の全長に対して上記硝化槽の流入端側から2/3の位置から上記硝化槽の流出端までの領域に第2アンモニアセンサが設けられ、
上記硝化槽の流入端側には、上記溶存酸素濃度センサが設けられ、
上記散気手段は、硝化槽の全長に対して硝化槽の流入端側から1/2の位置までの領域に散気する前方散気手段と、前方散気手段以降の流出端までの領域に散気する後方散気手段とに分離され、
上記第1アンモニアセンサにより測定された排水の第1アンモニア濃度に対応する排水の溶存酸素濃度に基づいて上記前方散気手段による空気の散気量を、上記送風手段による空気の流量およびまたは可変式送風バルブの開閉度に基づいて調整するとともに、
上記第2アンモニアセンサにより測定された排水の第2アンモニア濃度が所定の下限濃度以下の場合には、上記後方散気手段による空気の散気量を低下させ、上記第2アンモニアセンサにより測定された排水の第2アンモニア濃度が所定の上限濃度を超える場合には、上記後方散気手段による空気の散気量を増加させ、
上記溶存酸素濃度センサにより測定された排水の溶存酸素濃度が、第1アンモニアセンサにより測定された第1アンモニア濃度に対応する溶存酸素濃度より濃い場合には、上記前方散気手段による空気の散気量を低下させ、上記溶存酸素濃度センサにより測定された排水の溶存酸素濃度が、第1アンモニアセンサにより測定された第1アンモニア濃度に対応する溶存酸素濃度より薄い場合には、上記前方散気手段による空気の散気量を増加させる排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、汚染物質の除去を行うために連続的に排水を流入させる生物学的排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排水中の有機物や窒素成分を除去する排水処理方法としては、それぞれ標準活性汚泥法や、様々な生物学的窒素除去法など、反応槽の全体または一部に、あるいは回分式の処理法にあっては時間を区切って空気を送風する生物学的処理法が知られている。
このうち、連続的に排水を流入させる生物学的窒素除去法では、アンモニアを硝酸に酸化する硝化槽と硝酸を窒素ガスに還元する脱窒槽との2種類の槽が一つずつ、もしくは複数設けられている。硝化槽ではその槽内を好気性状態にするために空気を送風し、脱窒槽ではその槽内を無酸素状態にするために空気を送風しない方式があり、硝化槽の送風量が過剰にならないような何らかの制御がなされている。また、硝化と脱窒を同時並行的に完全混合型の反応槽で達成することから、硝化槽と脱窒槽の区別のない反応槽全体に空気を送風する方式もあり、この場合は、硝化槽と脱窒槽を有する窒素除去法よりは高度な制御法を使用している。
【0003】
断続的に排水を流入させる方式である回分式の生物学的窒素除去法では、アンモニアを硝酸に酸化する硝化時間帯は好気性状態にするために空気を送風し、硝酸を窒素ガスに還元する脱窒時間帯は、無酸素状態にするために空気を送風しない。回分式での送風制御は、このように基本的には送風(設備)のオンとオフの制御であり、基本的にその制御の困難性は、連続的に排水を流入させる方式よりは遙かに低い。
【0004】
ところが、実際の生物学的排水処理装置のほとんどは完全混合型ではなく、その対局にある細長い形状の押し出し流れ型と呼ばれる反応槽として建設されている。押し出し流れ型反応槽の場合は、流入端から流出端に沿って、各種水質成分濃度や微生物活性が変化し不均一となる。また、流入水質の時間変動があるため、その不均一の分布形状は、時々刻々変化する。このため、押し出し流れ型反応槽内での特定の位置の必要空気量も時々刻々変化する。このように、空気の必要な箇所と不必要な個所があるにもかかわらず、一律に、もしくは固定された送風量分布で空気を供給すると、特定の位置において空気に過不足が生じることになる。この結果、汚染物質の除去効率も悪く、また、空気供給部に送風する送風手段も無駄なエネルギーを消費することにもなる。この欠点は、有機物除去を目的とした標準活性汚泥法でも課題となっており、この解決は、有機物除去、窒素除去を問わず処理水質の向上と送風に要する電力の削減に大きく貢献する。
【0005】
このような従来技術の中で、硝化と脱窒を押し出し流れ型の反応槽で達成する空気の送風制御技術として、非特許文献1が開示されている。
非特許文献1に記載の装置は、上流から下流まで排水の流れに沿って複数の曝気領域に分割され、上流側に脱窒槽、下流側に空気を送風する散気手段を設けた硝化槽としている。そして、脱窒槽と硝化槽の中間点にそれぞれアンモニア計を設け、硝化槽の流出端に溶存酸素計を設けている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】後藤正広ら「下水・排水の制御技術・高度処理プロセス・次世代型システム」日立評論2015年8月号、36p~41p
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1に記載の発明によれば、溶存酸素濃度センサは下流側、つまり、流出端に直結する曝気領域に設けられている。このため、反応槽の流入端における溶存酸素濃度を測定していないこととなる。
排水中に供給される空気中の酸素は、アンモニアの硝酸への酸化反応の他に、有機物の酸化、活性汚泥の内生呼吸に用いられる。また、排水中に供給される空気中の酸素は、消費された酸素を補給し、排水処理後の処理水の溶存酸素濃度を保持するためにも用いられる。したがって、反応槽の流入端の溶存酸素濃度を適切に把握および制御すれば、仮に排水中に含まれる有機物の濃度に変動があったとしても、適量の空気を供給することができ、排水中の窒素を硝酸に酸化する硝化を適切に進行させることができる。非特許文献1に記載の発明では、反応槽の流入端における溶存酸素濃度を測定していないことから、有機物の濃度に変動があった場合には、排水の硝化を適切に進行させることができない。
【0008】
そこで、発明者は、反応槽の構造に着目し、硝化槽の適切な配置と、アンモニアセンサ、溶存酸素濃度センサの適切な配置により、有機物の濃度に変動があった場合であっても排水の硝化を適切に進行させることができることを知見し、本発明を完成させた。
本発明は、排水の有機物の濃度に変動があった場合でも、適切に排水中の窒素を硝化および脱窒処理をすることができる排水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、供給された排水を硝化細菌、通性嫌気性細菌、及びリン蓄積細菌を含む微生物フロックを用いて微生物処理することによって排水中の窒素に対して硝化を行う硝化槽並びに上記微生物フロックを用いて微生物処理することによって排水中の硝酸又は亜硝酸を窒素ガスに還元し、大気中に窒素を放出する脱窒槽から構成される反応槽と、上記反応槽の槽内に設けられ、所定時間ごとに上記排水中のアンモニア濃度を測定する2個のアンモニアセンサと、上記反応槽の槽内に設けられ、所定時間ごとに上記排水中の溶存酸素濃度を測定する1個の溶存酸素濃度センサと、上記硝化槽の槽内下方に設けられ、排水中に散気する複数の散気手段と、上記複数の散気手段のそれぞれに対して必要な流量の空気を送風する送風手段と、それぞれの散気手段とこの送風手段との間にそれぞれ介在された複数の可変式送風バルブと、上記硝化槽に存在する排水の一部を上記脱窒槽に供給する排水循環手段を有し、上記脱窒槽は上記反応槽の流入端に直結し、上記硝化槽は上記反応槽の流出端に直結し、上記脱窒槽には、第1アンモニアセンサが設けられ、上記硝化槽の全長に対して上記硝化槽の流入端側から2/3の位置から上記硝化槽の流出端までの領域に第2アンモニアセンサが設けられ、上記硝化槽の流入端側には、上記溶存酸素濃度センサが設けられ、上記散気手段は、硝化槽の全長に対して硝化槽の流入端側から1/2の位置までの領域に散気する前方散気手段と、前方散気手段以降の流出端までの領域に散気する後方散気手段とに分離され、上記第1アンモニアセンサにより測定された排水の第1アンモニア濃度に対応する排水の溶存酸素濃度に基づいて上記前方散気手段による空気の散気量を、上記送風手段による空気の流量およびまたは可変式送風バルブの開閉度に基づいて調整するとともに、上記第2アンモニアセンサにより測定された排水の第2アンモニア濃度が所定の下限濃度以下の場合には、上記後方散気手段による空気の散気量を低下させ、上記第2アンモニアセンサにより測定された排水の第2アンモニア濃度が所定の上限濃度を超える場合には、上記後方散気手段による空気の散気量を増加させ、上記溶存酸素濃度センサにより測定された排水の溶存酸素濃度が、第1アンモニアセンサにより測定された第1アンモニア濃度に対応する溶存酸素濃度より濃い場合には、上記前方散気手段による空気の散気量を低下させ、上記溶存酸素濃度センサにより測定された排水の溶存酸素濃度が、第1アンモニアセンサにより測定された第1アンモニア濃度に対応する溶存酸素濃度より薄い場合には、上記前方散気手段による空気の散気量を増加させる排水処理装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、供給された排水を硝化細菌、通性嫌気性細菌、及びリン蓄積細菌を含む微生物フロックを用いて微生物処理することによって排水中の窒素に対して硝化を行う硝化槽、上記微生物フロックを用いて微生物処理することによって排水中の硝酸又は亜硝酸を窒素ガスに還元し、大気中に窒素を放出する脱窒槽並びに上記微生物フロックからリン酸を放出させるリン放出槽から構成される反応槽と、上記反応槽の槽内に設けられ、所定時間ごとに上記排水中のアンモニア濃度を測定する2個のアンモニアセンサと、上記反応槽の槽内に設けられ、所定時間ごとに上記排水中の溶存酸素濃度を測定する1個の溶存酸素濃度センサと、上記硝化槽の槽内下方に設けられ、排水中に散気する複数の散気手段と、上記複数の散気手段のそれぞれに対して必要な流量の空気を送風する送風手段と、それぞれの散気手段とこの送風手段との間にそれぞれ介在された複数の可変式送風バルブと、上記硝化槽に存在する排水の一部を上記脱窒槽に供給する排水循環手段を有し、上記リン放出槽は上記反応槽の流入端に直結し、上記硝化槽は上記反応槽の流出端に直結するとともに、上記脱窒槽は、上記リン放出槽と上記硝化槽との間に設けられ、上記脱窒槽には、第1アンモニアセンサが設けられ、上記硝化槽の全長に対して上記硝化槽の流入端側から2/3の位置から上記硝化槽の流出端までの領域に第2アンモニアセンサが設けられ、上記硝化槽の流入端側には、上記溶存酸素濃度センサが設けられ、上記散気手段は、硝化槽の全長に対して硝化槽の流入端側から1/2の位置までの領域に散気する前方散気手段と、前方散気手段以降の流出端までの領域に散気する後方散気手段とに分離され、上記第1アンモニアセンサにより測定された排水の第1アンモニア濃度に対応する排水の溶存酸素濃度に基づいて上記前方散気手段による空気の散気量を、上記送風手段による空気の流量およびまたは可変式送風バルブの開閉度に基づいて調整するとともに、上記第2アンモニアセンサにより測定された排水の第2アンモニア濃度が所定の下限濃度以下の場合には、上記後方散気手段による空気の散気量を低下させ、上記第2アンモニアセンサにより測定された排水の第2アンモニア濃度が所定の上限濃度を超える場合には、上記後方散気手段による空気の散気量を増加させ、上記溶存酸素濃度センサにより測定された排水の溶存酸素濃度が、第1アンモニアセンサにより測定された第1アンモニア濃度に対応する溶存酸素濃度より濃い場合には、上記前方散気手段による空気の散気量を低下させ、上記溶存酸素濃度センサにより測定された排水の溶存酸素濃度が、第1アンモニアセンサにより測定された第1アンモニア濃度に対応する溶存酸素濃度より薄い場合には、上記前方散気手段による空気の散気量を増加させる排水処理装置である。
【0012】
本発明によれば、反応槽は、リン放出槽およびまたは脱窒槽と硝化槽とから構成されている。つまり、除去対象となる汚染物質によりリン放出槽、脱窒槽が硝化槽と組み合わされ、反応槽が構成されている。そして、反応槽の流入端側にリン放出槽または脱窒槽、流出端側に硝化槽が設けられている。リン放出槽、脱窒槽、硝化槽の容積は、それぞれの微生物処理に必要な反応時間を考慮した容積である。また、リン放出槽、脱窒槽、硝化槽は、それぞれ、さらに小さく区分けしたブロックを設け、複数のリン放出槽、脱窒あるいは硝化槽としてもよい。このように構成された反応槽に、排水が流れる。このとき、硝化槽は、散気手段を設けて曝気する。
本発明に係る排水処理装置は、2個のアンモニアセンサと1個の溶存酸素濃度センサを有している。そして、リン放出槽または脱窒槽と、硝化槽に1本ずつアンモニアセンサを配置する。前者に配置されるアンモニアセンサを第1アンモニアセンサ、後者に配置されるアンモニアセンサを第2アンモニアセンサとする。なお、第2アンモニアセンサは、硝化槽の全長に対して硝化槽の流入端側から2/3の位置から硝化槽の流出端までの領域に設けられている。
また、溶存酸素濃度センサを、硝化槽の流入端側に配置する。
【0013】
このように配置された排水処理装置は、基本的に第1アンモニアセンサにより測定されたアンモニア濃度に基づいて空気の流量を調整する。
具体的には、散気手段は、硝化槽の全長に対して硝化槽の流入端側から1/2の位置までの領域に散気する前方散気手段と、前方散気手段以降の流出端までの領域に散気する後方散気手段とに、物理的又は電子制御的に分離されている。そして、第1アンモニアセンサにより測定された排水の第1アンモニア濃度に対応する排水の溶存酸素濃度を予め定める目標値となるように前方散気手段による硝化槽の空気の散気量を、送風手段による空気の流量およびまたは可変式送風バルブの開閉度により調整する。
【0014】
そして、散気手段による空気の散気量を最適化するために、第2アンモニアセンサにより測定されたアンモニア濃度及び溶存酸素濃度センサにより測定された排水中の溶存酸素濃度に基づいて空気の散気量を微調整する。
具体的には、第2アンモニアセンサにより測定された排水の第2アンモニア濃度が所定の下限濃度以下の場合には、後方散気手段による空気の散気量を低下させ、第2アンモニアセンサにより測定された排水の第2アンモニア濃度が所定の上限濃度を超える場合には、後方散気手段による空気の散気量を増加させる。つまり、硝化槽に排水を流入させることで排水を硝化処理するが、硝化槽における後方散気手段が設けられている領域において、排水の第2アンモニア濃度が最適化されれば、散気手段による空気の散気量が最適といえる。
このように、排水の第2アンモニア濃度が所定の下限値以下であれば後方散気手段による空気の散気量が過剰であり、上限値以上であれば後方散気手段による空気の散気量が過小であると判断し、後方散気手段による空気の散気量を微調整する。これにより、過剰又は過小の空気の散気となることを防止するために、硝化槽の全長に対して硝化槽の流入端側から2/3の位置から硝化槽の流出端までの領域に第2アンモニアセンサを設ける。
【0015】
また、溶存酸素濃度センサにより測定された排水の溶存酸素濃度が、第1アンモニアセンサにより測定された第1アンモニア濃度に対応する溶存酸素濃度の目標値より高い場合には、前方散気手段による硝化槽前半部分の空気の散気量を低下させ、溶存酸素濃度センサにより測定された排水の溶存酸素濃度が、第1アンモニアセンサにより測定された第1アンモニア濃度に対応する溶存酸素濃度の目標値より低い場合には、前方散気手段による硝化槽前半部分の空気の散気量を増加させる。
排水中の酸素(つまり、排水の溶存酸素)は、硝化反応の他に、有機物の酸化、活性汚泥の内生呼吸に用いられる。このうち、活性汚泥の内生呼吸は、流入端から流入する排水の水質によって大きくは変動しないため、排水の溶存酸素の消費速度は、硝化反応と有機物の酸化の2つの因子によって変動する。硝化反応は、第1アンモニアセンサと第2アンモニアセンサにより把握されるため、有機物の酸化、つまり、排水の有機物濃度変化を溶存酸素濃度の変化として把握することにより、排水を適切にかつ効率的に処理することが可能である。
溶存酸素濃度センサにより測定された排水の溶存酸素濃度が、第1アンモニアセンサにより測定された第1アンモニア濃度に対応する溶存酸素濃度の目標値より高い場合には、有機物の濃度が低下したことを示すことから、前方散気手段による硝化槽前半部分の空気の散気量を低下させ、第1アンモニアセンサにより測定された第1アンモニア濃度に対応する溶存酸素濃度の目標値となるように調整する。
逆に、溶存酸素濃度センサにより測定された排水の溶存酸素濃度が、第1アンモニアセンサにより測定された第1アンモニア濃度に対応する溶存酸素濃度より薄い場合には、有機物の濃度が濃いことを示し、排水中に含まれるアンモニアの硝酸への酸化反応だけでなく有機物の酸化により排水の溶存酸素濃度が消費される。このため、前方散気手段による空気の散気量を増加させ、第1アンモニアセンサにより測定された第1アンモニア濃度に対応する溶存酸素濃度の目標値となるように調整する。
【0016】
以上のような操作を行うことで、排水の有機物濃度に変動があっても、硝化槽において硝化を適切に進行させるのに過不足のない空気の散気量になり、反応槽全体で適切な散気量の空気を排水に対して供給することができ、送風に必要な電力消費の節約に貢献する。
このとき、有機物濃度の変動を考慮した上でアンモニアの硝化を最適化する送風制御システムとしては、2本のアンモニアセンサと溶存酸素濃度センサとの3本のセンサに基づいて送風制御を行うことから、排水処理装置の送風制御システム構成が単純となる。また、従来の排水処理装置では、溶存酸素濃度センサを用いた送風制御システムが設備されていることが多く、その既存システムに本発明を適用することができる。このように送風制御システム構成が単純であり、また、既存システムも活用できることから、安価で省エネ性能に優れた排水処理装置となる。また、簡易な構造の排水処理装置であるため、故障率が低く、メンテナンスも容易である。このため、安価で簡易な排水処理装置の構造となる。簡易な構造の排水処理装置であるため、故障率が低く、メンテナンスも容易となる。
【0017】
排水としては、下水、汚水、し尿、畜産排水、産業排水等を対象とすることができる。
硝化槽とは、いわゆる硝化を行う槽である。
硝化槽やリン放出槽、脱窒槽内には、その一部に開口部を有する隔壁や、多数の孔を有する隔壁状の整流板が設けられてもよい。
散気手段は、後述する送風手段から送られた空気を細かい気泡にして硝化槽を流れる排水に吹き込み、微生物が必要とする空気(酸素)を供給する装置であり、その先端には例えば、散気板、円形式散気板、多孔性散気筒、フレキシブルチューブ、ディスクディフューザ、スパージャ、多孔管、水中撹拌式エアレーション装置等の散気装置が装着される。
可変式送風バルブの開閉度の制御とは、複数の可変式送風バルブの開閉度をそれぞれ個別に制御することをいう。
送風手段は、各散気手段に空気を送る送風機である。送風機の機種は送風量、送気圧等を勘案して選定する。例えば、遠心式ターボブロワ、多段ターボブロワ、単段増速ブロワ、容積型回転式ブロワ等を挙げることができる。送風手段は、単一のブロワで構成することも、複数のブロワにより構成することもできる。複数のブロワにより送風手段を構成した場合、全てのブロワから全ての散気手段に送風を可能とすることができる。または、複数の散気手段のそれぞれに対応して複数のブロワを配設することもできる。
送風手段の動作の制御とは、1台のブロワの動作を制御すること、複数のブロワの動作をそれぞれ個別に制御することを意味する。例えば、各ブロワの回転数(送風量)を制御すること、作動するブロワの台数を増減することを含む。
微生物処理とは、硝化機能を有する硝化細菌、脱窒素機能を有する通性嫌気性細菌、リン除去機能を有するリン蓄積細菌等を含む微生物フロックにより排水中の窒素に対して硝化、脱窒、生物学的脱リンを行うことである。
【0018】
リン放出槽とは、排水中に微生物を加え、空気を送風しない状態(嫌気状態)で混合する工程であり、生物学的脱リンに必要な、いわゆるリン放出(リン吐き出し)を行う槽である。リン放出槽は隔壁または整流板で複数に分かれていてもよい。
脱窒槽とは、硝化槽に存在する排水の一部が排水循環手段にて供給される領域であり、排水中の硝酸が窒素ガスに還元され、大気中に窒素が放出される、いわゆる脱窒を行う槽である。脱窒槽もリン放出槽と同様に、隔壁または整流板で複数に分かれていてもよい。
本発明にあっては、反応槽は、除去対象となる汚染物質によりリン放出槽およびまたは脱窒槽が反応槽の流入端側に設けられ、硝化槽が反応槽の流出端側に設けられるが、その構成にかかわらず、硝化処理を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の排水処理装置によれば、除去対象となる汚染物質によりリン放出槽、脱窒槽が硝化槽と組み合わされて反応槽を構成し、硝化槽のみに散気手段を設けて曝気する。そして、2本のアンモニアセンサと1本の溶存酸素濃度センサによって硝化槽における硝化処理の状態を確実に把握することにより、有機物濃度に変動があった場合であっても、硝化槽に適量の空気を散気することができ、排水の硝化処理を適切に進行させることができる。
また、2本のアンモニアセンサと1本の溶存酸素濃度センサのみによって排水処理の最適化を図ることから、安価で簡易で省エネ性能に優れた排水処理装置の構造となる。簡易な構造の排水処理装置であるため、故障率が低く、メンテナンスも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の排水処理装置を用いた排水処理システムを示すフローシートである。
【
図2】本発明の実施例1に係る排水処理装置を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施例2に係る排水処理装置を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施例3に係る排水処理装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の実施例1に係る排水処理装置を用いた排水処理システムを示すフローシートである。
図1において、排水処理システムに流入した排水は、まず、スクリーン1にて粗大浮遊物等を除去される。スクリーン1の下流に沈砂池2が設けられ、スクリーン1を通過した排水に含まれる砂等の固形物を沈砂池2にて沈降分離させる。
沈降分離された排水の反応槽への流入量は、流量調整槽3にて調整される。流量が調整された排水は、最初沈殿池4にて排水の懸濁物質等が沈降分離される。その後、懸濁物質等が沈降分離した排水は、押出流れ型反応槽11(以下、反応槽11と記述する。)にて、微生物処理により汚染物質が除去される。また、この反応槽11に対しては送風機16(送風手段)により空気が供給されるよう構成されている。
汚染物質が除去された排水は、最終沈殿池6にて微生物や、反応槽11にて生じた汚泥が沈降し固液分離される。固液分離された排水は、消毒及び放流槽7にて消毒され、処理水として河川等に放流される。
なお、流量調整槽3や最初沈殿池4を省略して排水処理システムを構成して運転することも可能である。この場合は、沈砂池2から流出した排水が最初沈殿池4に直接流入されるように、又は、流量調整槽3から流出した排水が反応槽11に直接流入されるように配管を連結して排水処理システムが構成される。
【0023】
図2は、本発明の排水処理装置10を示す模式図である。
この排水処理装置10は、排水が流入する流入口11Aと、排水が流出する流出口11Bを有する反応槽11を備えている。つまり、排水は流入口11Aから流入し、直線的な1本の流れを構成して流出口11Bから排出される。なお、反応槽の平面形状としては矩形に限られず、円形その他の形状を呈する場合も含まれる。
この排水処理装置10には、反応槽11の流れに沿って隔壁により区画された槽11a、11bが設けられている。そして、この反応槽11の流入口11Aに直結する槽をリン放出槽11aとし、反応槽の流出口11Bに直結する槽を硝化槽11bとする。硝化槽11bは、等間隔に4つの散気手段14が取付けられている。各散気手段14は、可変式送風バルブ15にそれぞれ連結されており、これらの可変式送風バルブ15は送風機16(送風手段)に連結されている。また、各可変式送風バルブ15は、これに付設されたバルブ開閉装置15aによりそれぞれその開閉度が制御される構成である。
散気手段14は、送風機16から送られた空気を微細な気泡にして、硝化槽11b中の排水に吹き込み、反応目的に適した空気を供給する。この散気手段14は、円筒状の主筒に複数の散気装置(ディフューザ)が取り付けられて構成されている。空気は主筒から供給され、散気装置の気孔から微細な気泡となって排出される。
リン放出槽11aの上方には第1アンモニアセンサ12aが設けられている。また、硝化槽11bの上方に第2アンモニアセンサ12bが設けられている。この第2アンモニアセンサ12bは、硝化槽11bの全長に対して、硝化槽11bの流入端側から7/8の位置に設けられている。
また、硝化槽11bの全長に対して、硝化槽11bの流入端側から1/8の位置に、溶存酸素濃度センサ13が設けられている。第1アンモニアセンサ12aと、第2アンモニアセンサ12bと、溶存酸素濃度センサ13の出力信号ケーブルは、反応判断・送風量制御装置17に連結されており、この反応判断・送風量制御装置17は、制御信号ケーブルを介して、バルブ開閉装置15aおよび送風機16に連結・接続されている。
【0024】
この反応槽11内には硝化機能を有する硝化細菌、脱窒素機能を有する通性嫌気性細菌、リン除去機能を有するリン蓄積細菌等を含む微生物フロックが浮遊している。
微生物の種類は、硝化・脱窒反応に関しては、亜硝酸細菌、硝酸細菌、脱窒細菌の3種類である。亜硝酸細菌(アンモニア酸化細菌)ではNitrosomonas、硝酸細菌(亜硝酸酸化細菌)ではNitrobacter、そして、脱窒細菌では通性嫌気性のPseudomonas denitrificans等が代表的な微生物である。また、同時に機能する有機物の生物学的好気性分解では、ZoogloeaやBucillus等の細菌類、鞭毛虫類や繊毛虫類などの原生動物、輪虫類や貧毛類等の後生動物等の微生物が利用される。
【0025】
第1アンモニアセンサ12a、第2アンモニアセンサ12b(両者を合わせて単に「アンモニアセンサ」という。)は、排水中のアンモニア濃度を測定するセンサである。硝化反応による排水中のアンモニア濃度の変化を測定し、その変化から硝化の進行程度を確認し、硝化の制御を安定させる。また、硝化反応速度を演算により求めることができる。
溶存酸素濃度センサ13は、排水中の溶存酸素濃度を測定するセンサである。
【0026】
上記送風機16は、ケーシング内に収められた羽根車を高速回転させ、羽根を通過する気体の運動量の増加によって、圧力と速度を高めるブロワである。この送風機16の回転数を増減することで送風量の増減を制御できる。
【0027】
上記可変式送風バルブ15は、上記散気手段14と送風機16との間に設けられた、空気の散気量を調節する部材である。これらの可変式送風バルブ15には、電動モータで構成されてその弁体を開閉するバルブ開閉装置15aがそれぞれ連結されている。このバルブ開閉装置15aは、後述する反応判断・送風量制御装置17から送信された制御信号に基づいて連結されている各々の可変式送風バルブ15の開閉度を調節する。
【0028】
反応判断・風量制御装置17は、CPU,ROM,RAM,I/Oなどで構成され、多数の部品を保護しながら外部の湿気に影響を受けないように防水処理された外箱、演算プログラムが記録・格納された反応判断部と、送風量制御部とを収納するための内箱を備えている。反応判断・送風量制御装置17の内箱は、反応判断部と送風量制御部とが収納されるように空間及び位置が確保されており、内箱の一側面には反応判断部、送風量制御部及びその他の部品に電源が供給できるように電源供給端子と連通されるよう孔部が形成されている。
反応判断部に格納された演算プログラムは、アンモニアセンサ12a、12bと、溶存酸素濃度センサ13とで測定され、入力された信号から得られるアンモニア濃度、溶存酸素濃度とそれぞれの目標値あるいは上限値・下限値との差を算出する数式で構成され、その結果により反応状態、および流入する排水中のアンモニア濃度と有機物濃度と、硝化槽後段における排水中のアンモニア濃度との時間的増減傾向を判断する。
送風量制御部は、上記反応判断部で判断された濃度、目標値あるいは上限値・下限値との差、反応状況、濃度の時間的増減傾向に基づいて、硝化槽11bの各々の可変式送風バルブ15に対応する散気手段14において必要な空気の散気量を算出し、送風機16とバルブ開閉装置15aに信号を送信する装置である。
散気手段14は、硝化槽11bの全長に対して硝化槽の流入端側から1/2の位置までの領域に散気する前方散気手段と、前方散気手段以降の流出端までの領域に散気する後方散気手段とに、物理的又は電子制御的に分離されている。
制御の流れについて、以下説明する。
まず、事前に、排水のアンモニア濃度とその減少速度(つまり、硝化反応速度)と排水の溶存酸素濃度との相関関係を調べ、モデル相関図として規定する。
次に、排水を反応槽11内に供給しながら第1アンモニアセンサ12aにより排水の第1アンモニア濃度(つまり、反応槽11への流入直後のアンモニア濃度)を測定する。そして、測定された排水の第1アンモニア濃度に応じて前方散気手段による空気の散気量を、送風機16による空気の流量およびまたはバルブ15の開閉度に基づいて調整する。
このとき、第2アンモニアセンサ12bにより排水の第2アンモニア濃度(つまり、反応槽から流出する直前のアンモニア濃度)の計測・監視がなされている。そして、排水の第2アンモニア濃度が所定の下限濃度(例えば0.5mg-N/L)以下の場合には、硝化槽11bにて、すでに硝化が完了に近い状態であると判断し、後方散気手段による硝化槽11bへの空気の散気量を低下させる。逆に、排水の第2アンモニア濃度が所定の上限濃度(例えば1.0mg-N/L)を超える場合には、硝化槽11bでの硝化が不十分であると判断し、後方散気手段による硝化槽11bへの空気の散気量を増加させる。この散気量の増減も送風機16による空気の流量およびまたはバルブ15の開閉度に基づいて調整される。
また、溶存酸素濃度センサ13により排水の溶存酸素濃度を継続的に測定する。第1アンモニアセンサ12aにより測定された第1アンモニア濃度から、上記モデル相関図に基づいて算出される算出溶存酸素濃度と、第1アンモニアセンサ12aにより第1アンモニア濃度を測定した時における溶存酸素濃度センサ13により測定された排水の実測溶存酸素濃度と、を比較する。このとき、排水の実測溶存酸素濃度が、算出溶存酸素濃度より高い場合には、有機物濃度が低く、有機物酸化に消費される酸素の量が少ないだけでなく、排水の硝化反応に必要な酸素量を満たしていると判断する。これにより、前方散気手段による硝化槽11bへの空気の散気量を低下させる。逆に、実測溶存酸素濃度が、算出溶存酸素濃度より低い場合には、有機物濃度が高く、排水の硝化反応だけでなく、有機物酸化反応に消費される酸素の量も不足していると判断する。このため、前方散気手段による硝化槽11bへの空気の散気量を増加させる。この散気量の増減も送風機16による空気の流量およびまたはバルブ15の開閉度に基づいて調整される。
なお、これらの操作確認後には、再び第2アンモニアセンサ12bにより排水の第2アンモニア濃度による計測・監視の結果により後方散気手段による硝化槽11bへの空気の散気量の増減調整が必要と判断した場合には、硝化槽11bへの散気量の操作がなされる。一方、その変動幅が所定の範囲内(例えば0.5mg-N/L~1.0mg-N/L)であるときは、硝化が最適に進行していることを示していることになる。この場合には、空気の流量を調整せずに現状維持とする。
【0029】
以上の制御の流れを繰り返すことで、硝化槽に排水を流入させることで排水を硝化処理するが、硝化槽における後方散気手段が設けられている領域において、排水の第2アンモニア濃度が最適化されれば、散気手段による空気の散気量が最適といえる。
【0030】
以下に、上記構成からなる排水処理装置10にて、硝化処理あるいは硝化と脱窒処理を行った例を示す。
【0031】
体積が5m3の反応槽に、排水を連続流入させた。排水は分流式都市下水処理場の最初沈殿池流出水であり、排水の「生物化学的酸素要求量/総窒素量」比が3~4、処理水量が17m3/日、反応槽滞留時間が7.1時間、処理を担う微生物フロックの濃度が夏期2100~冬期2800mg/L、汚泥返送率が60%になるような状態で排水処理装置を運転した。水温は冬期19~夏期27℃の範囲で変化した。
その結果、流入水の総窒素量(流入水TN)は夏期30~冬期42mg-N/L、処理水の総窒素量(処理水TN)は夏季12~冬季20mg-N/Lであった。処理水TNの内訳は、季節によらずほとんどは硝酸(ただし、その濃度は夏期11mg-N/L程度、冬期19mg-N/L程度となり、流入水TNの影響は認められる。)であり、有機性窒素が0.5mg-N/L程度、アンモニアはほぼ1mg-N/Lとなり、高い効率で安定した硝化処理性能を得られる処理方式であることを確認した。また、空気の散気量制御の結果、冬期の高濃度TN流入水の場合も夏期の低濃度TN流入水の場合も、硝化槽11bにおけるアンモニア濃度は、その流入端から流出端に向かってなだらかに低下し、季節にかかわらず流出端のアンモニア濃度1mg-N/L程度に収束することを確認した。
【実施例2】
【0032】
図3示すように、実施例2に係る排水処理装置は、実施例1に係る排水処理装置に対し、流出端に直結する槽(硝化槽)21bから流入端に直結する槽(脱窒槽)21aに、硝化槽21bの後端部に存在する排水の一部を供給する排水循環設備(ポンプおよび循環水路)21Cが設けられている。その他の構成は実施例1と同様である。この場合、流入口21Aに直結する槽21aは、脱窒槽として機能する。排水循環設備21Cにより供給される排水中のアンモニア濃度がほぼ処理水濃度であるため、1mg-N/L程度であることによる希釈効果で、第1アンモニアセンサによるアンモニア濃度は実施例1の場合より低下する。しかし、このように構成しても、原理的に硝化処理を行う硝化槽には影響を与えないため、本法の効果は実施例1と同等であった。なお、排水循環設備21Cによる循環水量を排水処理水量と同量条件で、冬期には、硝酸濃度が実施例1より7mg-N/L程度改善された。
【実施例3】
【0033】
図4に示すように、実施例3に係る排水処理装置は、実施例1に係る排水処理装置に対し、流入端に直結するリン放出槽31aに隣接して、脱窒槽31bが設けられている。そして、流出端に直結する硝化槽31cから脱窒槽31bに、硝化槽31cの後端部に存在する排水の一部を供給する排水循環設備31Cが設けられている。また、第1アンモニアセンサ32aは、脱窒槽31bに設けられている。その他の構成は実施例1と同様である。このように構成しても、原理的に硝化処理を行う硝化槽には影響を与えないため、本法の効果は実施例1、実施例2と同等であった。また、処理水の硝酸濃度の改善効果は実施例2と同等であった。
【符号の説明】
【0034】
11、21、31 反応槽、
11A 流入口(流入端)、
11B 流出口(流出端)、
11a、31a リン放出槽、
11b、21b、31c 硝化槽、
21a、31b 脱窒槽、
12a 第1アンモニアセンサ、
12b 第2アンモニアセンサ、
13 溶存酸素濃度センサ、
14 散気手段、
15 可変式送風バルブ、
15a バルブ開閉装置、
16 送風機(送風手段)、
17 反応判断・送風量制御装置、
21C、31C 排水循環設備(排水循環手段)。