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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】レンジ判定装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20220113BHJP
   F16H 59/10 20060101ALI20220113BHJP
   B60K 20/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
F16H61/12
F16H59/10
B60K20/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018067388
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178716
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大介
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-32155(JP,A)
【文献】特開2009-126227(JP,A)
【文献】特開2011-221793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12,61/16-61/24,
61/66-61/70,63/40-63/50
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御レンジを備えた車両に搭載され、前記複数の制御レンジから乗員によって選択された選択レンジを判定するレンジ判定装置であって、
初期位置と前記複数の制御レンジに対応する複数のレンジ位置とに移動自在であり、乗員によって前記複数のレンジ位置の何れかに操作され、乗員の操作解除によって前記初期位置に戻される操作レバーと、
第1電源から電力が供給され、前記操作レバーの位置に応じて信号を出力する複数のセンサからなる第1センサ群と、
第2電源から電力が供給され、前記操作レバーの位置に応じて信号を出力する複数のセンサからなる第2センサ群と、
前記第1および第2センサ群からの出力信号に基づき、乗員に操作された前記操作レバーの位置を検出するレバー位置検出部と、
前記操作レバーが前記レンジ位置に到達する過程で通過する位置を、チェック位置として前記レンジ位置毎に設定する通過位置設定部と、
前記操作レバーが前記チェック位置を通過して前記レンジ位置に到達し、かつ前記操作レバーが確定時間に渡って同じ前記レンジ位置に保持された場合に、保持された前記レンジ位置に基づき前記選択レンジを確定するレンジ確定部と、
を有し、
前記通過位置設定部は、
前記第1および第2センサ群からの出力信号が正常である場合には、前記チェック位置として、前記複数のレンジ位置に対応する複数の第1チェック位置を設定する一方、
前記第1または第2センサ群からの出力信号が異常である場合には、前記チェック位置として、前記複数の第1チェック位置に対して少なくとも一部が相違し、かつ前記複数のレンジ位置に対応する複数の第2チェック位置を設定する、
レンジ判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレンジ判定装置において、
前記第1センサ群と前記第2センサ群との少なくとも何れか一方は、前記操作レバーが前記レンジ位置の1つである特定位置に操作された場合と、前記操作レバーが前記特定位置に隣接する隣接位置に操作された場合とに、共通の信号を出力し、
前記レンジ確定部は、前記特定位置に基づき前記選択レンジを確定する際の前記確定時間として、前記第1および第2センサ群からの出力信号が正常である場合には第1時間を用いる一方、前記第1または第2センサ群からの出力信号が異常である場合には前記第1時間よりも長い第2時間を用いる、
レンジ判定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンジ判定装置において、
前記レバー位置検出部は、
前記第1および第2センサ群からの出力信号が正常である場合には、前記第1センサ群と前記第2センサ群との双方からの出力信号に基づき、前記操作レバーの位置を検出する一方、
前記第1または第2センサ群からの出力信号が異常である場合には、前記第1センサ群と前記第2センサ群との一方からの出力信号に基づき、前記操作レバーの位置を検出する、
レンジ判定装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のレンジ判定装置において、
前記第1センサ群からの出力信号は、前記レンジ位置毎に相違し、
前記第2センサ群からの出力信号は、前記レンジ位置毎に相違する、
レンジ判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員に選択された選択レンジを判定するレンジ判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、前進レンジ(Dレンジ)や後退レンジ(Rレンジ)等の制御レンジが設定されている。これらの制御レンジを乗員が選択する際には、乗員によってシフトレバー等の操作レバーが操作される(特許文献1~4参照)。乗員に操作される操作レバーは、通信ネットワークを介して自動変速機等に接続されることが多い。このようなシステムは、所謂シフトバイワイヤシステムと呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-32155号公報
【文献】特開2005-104219号公報
【文献】特開2004-353828号公報
【文献】特開2003-287112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、シフトバイワイヤシステムに用いられる操作レバーとして、所謂モーメンタリ式の操作レバーが多く採用されている。このモーメンタリ式の操作レバーを用いて制御レンジを選択する際には、各制御レンジに対応するレンジ位置まで操作レバーが操作される。その後、操作レバーに対する乗員の操作力が解かれると、操作レバーはレンジ位置から初期位置まで自動的に戻される。このように、モーメンタリ式の操作レバーは、操作後に操作レバーが初期位置まで戻される構造、つまり操作レバーがレンジ位置に止まっていない構造を有している。このため、ホール素子等のセンサによる操作レバーの位置検出状況によっては、操作レバーが操作されたレンジ位置を検出すること、つまり複数の制御レンジから乗員によって選択された選択レンジを判定することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、選択レンジを適切に判定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレンジ判定装置は、複数の制御レンジを備えた車両に搭載され、前記複数の制御レンジから乗員によって選択された選択レンジを判定するレンジ判定装置であって、初期位置と前記複数の制御レンジに対応する複数のレンジ位置とに移動自在であり、乗員によって前記複数のレンジ位置の何れかに操作され、乗員の操作解除によって前記初期位置に戻される操作レバーと、第1電源から電力が供給され、前記操作レバーの位置に応じて信号を出力する複数のセンサからなる第1センサ群と、第2電源から電力が供給され、前記操作レバーの位置に応じて信号を出力する複数のセンサからなる第2センサ群と、前記第1および第2センサ群からの出力信号に基づき、乗員に操作された前記操作レバーの位置を検出するレバー位置検出部と、前記操作レバーが前記レンジ位置に到達する過程で通過する位置を、チェック位置として前記レンジ位置毎に設定する通過位置設定部と、前記操作レバーが前記チェック位置を通過して前記レンジ位置に到達し、かつ前記操作レバーが確定時間に渡って同じ前記レンジ位置に保持された場合に、保持された前記レンジ位置に基づき前記選択レンジを確定するレンジ確定部と、を有し、前記通過位置設定部は、前記第1および第2センサ群からの出力信号が正常である場合には、前記チェック位置として、前記複数のレンジ位置に対応する複数の第1チェック位置を設定する一方、前記第1または第2センサ群からの出力信号が異常である場合には、前記チェック位置として、前記複数の第1チェック位置に対して少なくとも一部が相違し、かつ前記複数のレンジ位置に対応する複数の第2チェック位置を設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1および第2センサ群からの出力信号が正常である場合には、複数のレンジ位置に対応する複数の第1チェック位置を設定する一方、第1または第2センサ群からの出力信号が異常である場合には、複数の第1チェック位置に対して少なくとも一部が相違し、かつ複数のレンジ位置に対応する複数の第2チェック位置を設定する。これにより、選択レンジを適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態であるレンジ判定装置が搭載された車両の構成例を示す概略図である。
図2】(a)~(c)は、シフトレバーの操作状況を示す図である。
図3】レンジ判定装置が備える第1および第2センサ群の構造の一例を示す図である。
図4】(a)および(b)は、第1および第2センサ群によって検出されるシフトレバー位置の一例を示す図である。
図5】(a)~(e)は、シフトレバーがニュートラル位置に操作される際のマグネットとセンサとの位置関係を示す図である。
図6】(a)~(i)は、シフトレバーが前進位置に操作される際のマグネットとセンサとの位置関係を示す図である。
図7】(a)~(i)は、シフトレバーが後退位置に操作される際のマグネットとセンサとの位置関係を示す図である。
図8】各センサからの出力信号とシフトレバーの位置との関係を示す図である。
図9】コントローラによるレンジ確定制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図10】正常時レンジ確定処理の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図11】第1異常時レンジ確定処理における実際のレバー位置と検出されるレバー位置との関係を示す図である。
図12】第2異常時レンジ確定処理における実際のレバー位置と検出されるレバー位置との関係を示す図である。
図13】第1異常時レンジ確定処理の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図14】第2異常時レンジ確定処理の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
[車両構成]
図1は本発明の一実施の形態であるレンジ判定装置10が搭載された車両11の構成例を示す概略図である。図1に示すように、車両11には、エンジン12および自動変速機13を備えたパワーユニット14が搭載されており、自動変速機13の変速出力軸15には、デファレンシャル機構16等を介して車輪17が連結されている。また、自動変速機13には前後進切替機構18や変速機構19が組み込まれており、自動変速機13には前後進切替機構18等に作動油を供給制御するバルブユニット20が設けられている。さらに、車両11には、バルブユニット20を介して自動変速機13の作動状態を制御するため、マイコンや駆動回路等からなるコントローラ21が設けられている。なお、前後進切替機構18は、変速機構19の入力軸である変速入力軸22の回転方向を切り替える機構であり、図示しない遊星歯車列、前進クラッチおよび後退ブレーキ等によって構成される。
【0011】
[制御レンジ]
車両11には、パワーユニット14の作動状態を制御する複数の制御レンジが設定されている。これらの制御レンジとして、例えば、前進走行用の前進レンジ(Dレンジ)、後退走行用の後退レンジ(Rレンジ)、動力切断用の中立レンジ(Nレンジ)がある。これら制御レンジのうち、何れの制御レンジを使用するかについては、後述する乗員のシフトレバー操作によって決定される。以下、前進レンジについてはDレンジと記載し、後退レンジについてはRレンジと記載し、中立レンジについてはNレンジと記載する。
【0012】
例えば、乗員によってDレンジが選択された場合には、コントローラ21によってバルブユニット20が制御され、前後進切替機構18の前進クラッチが締結されて後退ブレーキが解放される。また、乗員によってRレンジが選択された場合には、コントローラ21によってバルブユニット20が制御され、前後進切替機構18の前進クラッチが解放されて後退ブレーキが締結される。さらに、乗員によってNレンジが選択された場合には、コントローラ21によってバルブユニット20が制御され、前後進切替機構18の前進クラッチおよび後退ブレーキが共に解放される。
【0013】
[レバーユニット]
前述した制御レンジを乗員の手動操作によって切り替えるため、車両11には乗員によって操作されるレバーユニット29が設けられている。レバーユニット29は、所定の移動経路に沿って移動自在に設けられるシフトレバー(操作レバー)30と、シフトレバー30の位置を検出する複数のセンサS1~S3からなる第1センサ群31と、シフトレバー30の位置を検出する複数のセンサS4~S6からなる第2センサ群32と、を有している。なお、シフトレバー30の位置を検出するセンサS1~S6としては、ホール素子やMRセンサ等を用いることができる。また、乗員に操作されるシフトレバー30は、セレクトレバーやチェンジレバーとも呼ばれている。
【0014】
第1センサ群31には第1電源31aが接続されており、第1電源31aから供給される電力によってセンサS1~S3は作動している。また、第2センサ群32には第2電源32aが接続されており、第2電源32aから供給される電力によってセンサS4~S6は作動している。このように、第1センサ群31と第2センサ群32との電源31a,32aを分けることにより、レンジ判定装置10の信頼性を高めることが可能である。つまり、何れかの電源31a,32aに障害が発生した場合であっても、第1センサ群31と第2センサ群32との一方を機能させることができるため、レンジ判定装置10の判定機能を確保することができる。
【0015】
図2(a)~(c)は、シフトレバー30の操作状況を示す図である。図2(a)~(c)のそれぞれには、各制御レンジを選択する際のシフトレバー30の動きが、白抜きの矢印に沿って順に示されている。後述するように、レバーユニット29は、操作後にシフトレバー30がホーム位置PHに復帰する所謂モーメンタリ式のレバーユニットである。
【0016】
図2(a)に示すように、制御レンジとしてNレンジを選択する際には、乗員によってシフトレバー30がホーム位置PHからニュートラル位置PNに操作される(矢印a1)。そして、乗員によるシフトレバー30の操作が解かれると、シフトレバー30は自動的にニュートラル位置PNからホーム位置PHに戻される(矢印a2)。
【0017】
図2(b)に示すように、制御レンジとしてDレンジを選択する際には、乗員によってシフトレバー30がホーム位置PHから前進位置PDに操作される(矢印b1)。そして、乗員によるシフトレバー30の操作が解かれると、シフトレバー30は自動的に前進位置PDからホーム位置PHに戻される(矢印b2)。
【0018】
図2(c)に示すように、制御レンジとしてRレンジを選択する際には、乗員によってシフトレバー30がホーム位置PHから後退位置PRに操作される(矢印c1)。そして、乗員によるシフトレバー30の操作が解かれると、シフトレバー30は自動的に後退位置PRからホーム位置PHに戻される(矢印c2)。
【0019】
[レバー位置検出構造]
図3はレンジ判定装置10が備える第1および第2センサ群31,32の構造の一例を示す図である。図3に示すように、レバーユニット29には、シフトレバー30の位置を検出する第1および第2センサ群31,32が設けられている。第1センサ群31は、3つのセンサS1~S3によって構成されており、第2センサ群32は、3つのセンサS4~S6によって構成されている。また、レバーユニット29には、シフトレバー30に連動して移動するマグネット33が設けられている。このマグネット33がセンサS1~S6に近づくと、センサS1~S6はコントローラ21に向けてON信号を出力する。一方、マグネット33がセンサS1~S6から離れると、センサS1~S6はコントローラ21に向けてOFF信号を出力する。なお、ON信号とは所定電圧を上回る電圧信号であり、OFF信号とは所定電圧を下回る電圧信号である。
【0020】
図4(a)および(b)は、第1および第2センサ群31,32によって検出されるシフトレバー位置の一例を示す図である。図4(a)に示すように、図示するレバーユニット29においては、センサ群31,32およびコントローラ21によって7箇所のシフトレバー位置(以下、レバー位置と記載する。)を検出することが可能である。検出可能なレバー位置として、ホーム位置(初期位置)PHがあり、Nレンジに対応するニュートラル位置(レンジ位置)PNがあり、Dレンジに対応する前進位置(レンジ位置)PDがあり、Rレンジに対応する後退位置(レンジ位置)PRがある。また、図4(b)に示すように、ニュートラル位置PNは、シフトレバー30の移動経路Roの途中に位置する途中位置であり、前進位置PDおよび後退位置PRは、シフトレバー30の移動経路Roの末端に位置する末端位置である。さらに、図4(a)に示すように、検出可能なレバー位置として、ホーム位置PHとニュートラル位置PNとの間の中間位置Phnがあり、ニュートラル位置PNと前進位置PDとの間の中間位置Pndがあり、ニュートラル位置PNと後退位置PRとの間の中間位置Pnrがある。
【0021】
図5(a)~(e)は、シフトレバー30がニュートラル位置PNに操作される際のマグネット33とセンサS1~S6との位置関係を示す図である。制御レンジとしてNレンジを選択するため、シフトレバー30がニュートラル位置PNに操作される場合には、図4に示すように、シフトレバー30は、ホーム位置PH、中間位置Phn、ニュートラル位置PN、中間位置Phn、ホーム位置PHの順に移動する。このため、図5(a)~(e)の順に示すように、シフトレバー30に連動するマグネット33は、センサS1,S4に対向し、センサS4に対向し、センサS5,S6に対向し、センサS4に対向し、センサS1,S4に対向する。
【0022】
図6(a)~(i)は、シフトレバー30が前進位置PDに操作される際のマグネット33とセンサS1~S6との位置関係を示す図である。制御レンジとしてDレンジを選択するため、シフトレバー30が前進位置PDに操作される場合には、図4に示すように、シフトレバー30は、ホーム位置PH、中間位置Phn、ニュートラル位置PN、中間位置Pnd、前進位置PD、中間位置Pnd、ニュートラル位置PN、中間位置Phn、ホーム位置PHの順に移動する。このため、図6(a)~(i)の順に示すように、シフトレバー30に連動するマグネット33は、センサS1,S4に対向し、センサS4に対向し、センサS5,S6に対向し、センサS6に対向し、センサS3,S6に対向し、センサS6に対向し、センサS5,S6に対向し、センサS4に対向し、センサS1,S4に対向する。
【0023】
図7(a)~(i)は、シフトレバー30が後退位置PRに操作される際のマグネット33とセンサS1~S6との位置関係を示す図である。制御レンジとしてRレンジを選択するため、シフトレバー30が後退位置PRに操作される場合には、図4に示すように、シフトレバー30は、ホーム位置PH、中間位置Phn、ニュートラル位置PN、中間位置Pnr、後退位置PR、中間位置Pnr、ニュートラル位置PN、中間位置Phn、ホーム位置PHの順に移動する。このため、図7(a)~(i)の順に示すように、シフトレバー30に連動するマグネット33は、センサS1,S4に対向し、センサS4に対向し、センサS5,S6に対向し、センサS5に対向し、センサS2,S5に対向し、センサS5に対向し、センサS5,S6に対向し、センサS4に対向し、センサS1,S4に対向する。
【0024】
[センサS1~S6からの出力信号]
図8は各センサS1~S6からの出力信号とシフトレバー30の位置との関係を示す図である。まず、図7(a)に示すように、シフトレバー30がホーム位置PHに移動すると、マグネット33はセンサS1,S4に対して対向する。このため、図8に示すように、レバー位置がホーム位置PHである場合には、センサS1,S4からON信号が出力され、センサS2,S3,S5,S6からOFF信号が出力される。
【0025】
図7(b)に示すように、シフトレバー30が中間位置Phnに移動すると、マグネット33はセンサS4に対して対向する。このため、図8に示すように、レバー位置が中間位置Phnである場合には、センサS4からON信号が出力され、センサS1~S3,S5,S6からOFF信号が出力される。
【0026】
図7(c)に示すように、シフトレバー30がニュートラル位置PNに移動すると、マグネット33はセンサS5,S6に対して対向する。このため、図8に示すように、レバー位置がニュートラル位置PNである場合には、センサS5,S6からON信号が出力され、センサS1~S4からOFF信号が出力される。
【0027】
図7(d)に示すように、シフトレバー30が中間位置Pnrに移動すると、マグネット33はセンサS5に対して対向する。このため、図8に示すように、レバー位置が中間位置Pnrである場合には、センサS5からON信号が出力され、センサS1~S4,S6からOFF信号が出力される。
【0028】
図7(e)に示すように、シフトレバー30が後退位置PRに移動すると、マグネット33はセンサS2,S5に対して対向する。このため、図8に示すように、レバー位置が後退位置PRである場合には、センサS2,S5からON信号が出力され、センサS1,S3,S4,S6からOFF信号が出力される。
【0029】
図6(d)に示すように、シフトレバー30が中間位置Pndに移動すると、マグネット33はセンサS6に対して対向する。このため、図8に示すように、レバー位置が中間位置Pndである場合には、センサS6からON信号が出力され、センサS1~S5からOFF信号が出力される。
【0030】
図6(e)に示すように、シフトレバー30が前進位置PDに移動すると、マグネット33はセンサS3,S6に対して対向する。このため、図8に示すように、レバー位置が前進位置PDである場合には、センサS3,S6からON信号が出力され、センサS1,S2,S4,S5からOFF信号が出力される。
【0031】
図8に示すように、各レバー位置PH,Phn,PN,Pnr,PR,Pnd,PDにおいて、センサS1~S6から出力されるON・OFF信号の組み合わせについては、少なくとも1箇所のON・OFF信号が相違している。これにより、コントローラ21は、第1および第2センサ群31,32からの出力信号、つまりセンサS1~S6からの出力信号を用いて、各レバー位置PH,Phn,PN,Pnr,PR,Pnd,PDを検出することが可能である。
【0032】
また、各レバー位置PH,PN,PR,PDにおいて、第1センサ群31のセンサS1~S3から出力されるON・OFF信号の組み合わせについては、少なくとも1箇所のON・OFF信号が相違している。これにより、コントローラ21は、第1センサ群31からの出力信号、つまりセンサS1~S3からの出力信号を用いて、各レバー位置PH,PN,PR,PDを検出することが可能である。つまり、第1センサ群31からの出力信号は、レンジ位置PN,PR,PD毎に相違している。
【0033】
また、各レバー位置PH,PN,PR,PDにおいて、第2センサ群32のセンサS4~S6から出力されるON・OFF信号の組み合わせについては、少なくとも1箇所のON・OFF信号が相違している。これにより、コントローラ21は、第2センサ群32からの出力信号、つまりセンサS4~S6からの出力信号を用いて、各レバー位置PH,PN,PR,PDを検出することが可能である。つまり、第2センサ群32からの出力信号は、レンジ位置PN,PR,PD毎に相違している。
【0034】
[レンジ確定制御]
続いて、複数の制御レンジ(Nレンジ,Dレンジ,Rレンジ)から乗員によって選択された選択レンジを確定するレンジ確定制御について説明する。まず、図1に示すように、コントローラ21には、レンジ確定制御を実行するため、センサ異常判定部40、レバー位置検出部41、レンジ確定部42、確定時間設定部43、通過位置設定部44および情報通知部45が設けられている。後述するように、センサ異常判定部40は、センサS1~S6から取得した出力信号に基づき、センサS1~S6が異常であるか否かを判定する。また、レバー位置検出部41は、センサS1~S6からの出力信号に基づきレバー位置を検出し、レンジ確定部42は、検出されたレバー位置に基づき乗員が選択した選択レンジを確定する。また、確定時間設定部43は、選択レンジを確定する際に用いる所定の確定時間T1,T2a,T2bを設定し、通過位置設定部44は、レンジ位置(PN,PR,PD)毎にシフトレバー30が通過する予定のチェック位置P1,P2a,P2bを設定する。また、情報通知部45は、センサS1~S6等の異常を各種機器や乗員に対して通知する。なお、コントローラ21にはコンビネーションメータ46が接続されており、コンビネーションメータ46には各種情報を表示する表示パネル47が設けられている。
【0035】
図9はコントローラ21によるレンジ確定制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。図9に示したフローチャートは、コントローラ21によって所定周期毎に実行される。図9に示すように、ステップS10では、各センサS1~S6からの出力信号(以下、センサ信号と記載する。)を取得する。続くステップS11では、取得したセンサ信号が、正常なON・OFF信号の組み合わせであるか否かが判定される。つまり、ステップS11において、ステップS10で取得したセンサ信号が、図8に示されるON・OFF信号の組み合わせと一致する場合には、センサ信号が正常であると判定される。このように、ステップS11において、センサ信号が正常であると判定された場合には、ステップS12に進み、後述する正常時レンジ確定処理が実行される。
【0036】
一方、ステップS11において、ステップS10で取得したセンサ信号が、図8に示されるON・OFF信号の組み合わせと相違する場合には、センサ信号が異常であると判定される。このように、ステップS11において、センサ信号が異常であると判定された場合には、ステップS13に進み、センサ信号の異常内容が片側電源失陥時の異常であるか否かが判定される。ここで、片側電源失陥時とは、第1または第2電源31a,32aに異常が発生した状況であり、第1または第2センサ群31,32の検出機能が失われた状況である。この場合には、第1または第2センサ群31,32からのセンサ信号が、レバー位置に関係なく全てON信号やOFF信号として出力される。
【0037】
また、ステップS13において、センサ信号の異常内容が片側電源失陥時の異常ではないと判定された場合には、ステップS14に進み、センサ信号の異常内容が個々のセンサS1~S6の故障であるか否かが判定される。ここで、個々のセンサS1~S6の故障とは、第1センサ群31を構成するセンサS1~S3の何れかの故障、または第2センサ群32を構成するセンサS4~S6の何れかの故障である。この場合には、第1センサ群31を構成するセンサS1~S3の何れか、または第2センサ群32を構成するセンサS4~S6の何れかから、レバー位置に関係なくON信号やOFF信号が出力される。
【0038】
ステップS13において、センサ信号の異常内容が片側電源失陥時の異常であると判定された場合や、ステップS14において、センサ信号の異常内容が個々のセンサS1~S6の故障であると判定された場合には、ステップS15に進み、第2センサ群32の異常であるか否かが判定される。つまり、第1センサ群31と第2センサ群32との一方に異常が発生している場合には、ステップS15に進み、第2センサ群32の異常であるか否かが判定される。ステップS15において、第2センサ群32の異常であると判定された場合、つまり第1センサ群31を用いて選択レンジを確定させる場合には、ステップS16に進み、後述する第1異常時レンジ確定処理が実行される。一方、ステップS15において、第2センサ群32の異常ではないと判定された場合、つまり第2センサ群32を用いて選択レンジを確定させる場合には、ステップS17に進み、後述する第2異常時レンジ確定処理が実行される。
【0039】
なお、ステップS14において、センサ信号の異常内容が個々のセンサS1~S6の故障ではないと判定された場合、すなわち第1センサ群31と第2センサ群32との双方に異常が発生している場合には、ステップS18に進み、車両停止等のフェイルセーフ処理が実行される。
【0040】
[正常時レンジ確定処理:フローチャート]
図9のステップS12に示した正常時レンジ確定処理の実行手順について説明する。前述したように、正常時レンジ確定処理は、第1および第2センサ群31,32の双方が正常に機能している場合、つまり第1および第2センサ群31,32からのセンサ信号が正常である場合に実行される。ここで、図10は正常時レンジ確定処理の実行手順の一例を示すフローチャートである。図10に示したフローチャートは、コントローラ21によって所定周期毎に実行される。
【0041】
図10に示すように、ステップS20では、第1および第2センサ群31,32からセンサ信号が取得される。続くステップS21では、取得したセンサ信号に基づいて、レバー位置がホーム位置PH以外であるか否かが判定される。ステップS21において、ホーム位置PHであると判定された場合には、シフトレバー30が操作されていないため、選択レンジを更新することなくルーチンを抜ける。一方、ステップS21において、ホーム位置PH以外であると判定された場合には、シフトレバー30が操作されているため、ステップS22に進み、選択レンジを更新するか否かの判定を開始する。
【0042】
ステップS22では、今回取得したセンサ信号が前回取得したセンサ信号から変化しているか否かが判定される。ステップS22において、センサ信号が変化していると判定された場合、つまりレバー位置が変化していると判定された場合には、ステップS23に進み、変化前つまり直前のレバー位置が保存される。続いて、ステップS24に進み、シフトレバー30の通過予定位置であるチェック位置(第1チェック位置)P1が設定され、選択レンジ(Nレンジ,Dレンジ,Rレンジ)を確定する際に用いられる確定時間(第1時間)T1が設定される。続いて、ステップS25では、選択レンジを確定する際に用いられる確定カウンタCaのクリア処理が実施され、続くステップS26では、センサ異常を判定する際に用いられる異常カウンタCbのクリア処理が実施される。
【0043】
一方、ステップS22において、センサ信号が変化していないと判定された場合、つまりレバー位置が保持されていると判定された場合には、ステップS27に進み、現在のレバー位置が、前進位置PD、ニュートラル位置PN、または後退位置PRであるか否かが判定される。ステップS27において、前進位置PD、ニュートラル位置PN、または後退位置PRであると判定された場合、つまり制御レンジに対応するレンジ位置であると判定された場合には、ステップS28に進み、確定カウンタCaのカウント処理が実施される。なお、図示する「Can-1」は、直近の確定カウンタCaである。
【0044】
続いて、ステップS29では、確定カウンタCaが確定時間T1以上であるか否かが判定される。ステップS29において、確定カウンタCaが確定時間T1に達していないと判定された場合には、一旦ルーチンを抜けて再びステップS20から、新たに取得されたセンサ信号に基づき各種判定や各種処理が実施される。一方、ステップS29において、確定カウンタCaが確定時間T1に到達したと判定された場合、つまりシフトレバー30が確定時間T1に渡って同じレンジ位置(PD,PN,PR)に保持された場合には、ステップS30に進み、シフトレバー30の操作経路が正常であるか否かが判定される。
【0045】
ステップS30においては、ステップS23で保存された直前のレバー位置が、後述するチェック位置P1と一致するか否かが判定される。ステップS30において、直前のレバー位置とチェック位置P1とが互いに一致すると判定された場合には、シフトレバー30が正常なルートを経てレンジ位置(PD,PN,PR)に達したと判定される。すなわち、シフトレバー30の操作経路が正常であることから、ステップS31に進み、保持されたレンジ位置に基づき選択レンジ(Dレンジ,Nレンジ,Rレンジ)が確定される。
【0046】
ここで、チェック位置P1とは、シフトレバー30が各レンジ位置(PN,PR,PD)に達する過程で通過する位置である。つまり、図8に示すように、ニュートラル位置PNについては、チェック位置P1として、直前に通過する3つの中間位置Phn,Pnr,Pndが設定される。すなわち、シフトレバー30をニュートラル位置PNに操作し、選択レンジとしてNレンジを確定させるためには、確定時間T1に渡ってニュートラル位置PNを保持するだけでなく、ニュートラル位置PNへの到達直前に中間位置Phn,Pnr,Pndの何れかを検出することが必要である。
【0047】
また、前進位置PDについては、チェック位置P1として、直前に通過する中間位置Pndが設定される。このため、シフトレバー30を前進位置PDに操作し、選択レンジとしてDレンジを確定させるためには、確定時間T1に渡って前進位置PDを保持するだけでなく、前進位置PDへの到達直前に中間位置Pndを検出することが必要である。さらに、後退位置PRについては、チェック位置P1として、直前に通過する中間位置Pnrが設定される。このため、シフトレバー30を後退位置PRに操作し、選択レンジとしてRレンジを確定させるためには、確定時間T1に渡って後退位置PRを保持するだけでなく、後退位置PRへの到達直前に中間位置Pnrを検出することが必要である。
【0048】
このように、シフトレバー30がチェック位置(Phn,Pnr,Pnd)P1を通過してレンジ位置(PD,PN,PR)に到達し、かつシフトレバー30が確定時間T1に渡って同じレンジ位置に保持された場合に、選択レンジ(Dレンジ,Nレンジ,Rレンジ)を確定させている。すなわち、単にレンジ位置(PD,PN,PR)を判定するだけでなく、チェック位置P1を用いてシフトレバー30の操作経路を判定するようにしたので、ノイズ等によってセンサ信号が一時的に変化した場合であっても、選択レンジを適切に判定することが可能である。
【0049】
また、図8に示すように、確定時間T1は、チェック位置P1毎に設定されている。つまり、ニュートラル位置PNにおいて、チェック位置P1が中間位置Phnである場合には確定時間T1として「1秒」が設定されている。また、ニュートラル位置PNにおいて、チェック位置P1が中間位置Pnd,Pnrである場合には確定時間T1として「2秒」が設定されている。シフトレバー30が中間位置Pnd,Pnrからニュートラル位置PNに移動する場合とは、シフトレバー30が前進位置PDや後退位置PRからホーム位置PHに戻る場合であり、乗員がNレンジの選択を意図してしないことが予測される。このため、選択レンジの誤判定を回避する観点から、確定時間T1として「1秒」よりも長い「2秒」が設定されている。また、シフトレバー30の移動経路Roの末端に位置する前進位置PDや後退位置PRについては、乗員によるシフトレバー操作の意図が明確であることから、ニュートラル位置PNよりも短い確定時間T1として「0.5秒」が設定されている。なお、図8に示した確定時間T1は一例であり、確定時間T1として他の時間を設定しても良い。
【0050】
続いて、図10に示すように、前述したステップS30において、シフトレバー30の操作経路が異常であると判定された場合には、ステップS32に進み、異常カウンタCbのカウント処理が実施される。なお、図示する「Cbn-1」は、直近の異常カウンタCbである。このように、異常カウンタCbのカウント処理が実施されると、ステップS33に進み、異常カウンタCbが所定値X(例えば「3」)以上であるか否かが判定される。ステップS33において、異常カウンタCbが所定値Xを上回ると判定された場合、つまりシフトレバー30の操作経路がX回(例えば3回)に渡って異常であると判定された場合には、センサS1~S6に異常が発生している虞があるため、ステップS34に進み、各種機器や乗員に対してセンサ異常が通知される。なお、乗員にセンサ異常を通知する際には、表示パネル47にセンサ異常が表示される。
【0051】
なお、ステップS30において、操作経路が異常であると判定される場合とは、図8に符号a1で示すように、シフトレバー30が「2秒」に渡ってニュートラル位置PNに保持され、かつニュートラル位置PNに達する直前のレバー位置が中間位置Phn,Pnr,Pnd以外であった場合である。また、符号a2で示すように、シフトレバー30が「1秒」に渡って後退位置PRに保持され、かつ後退位置PRに達する直前のレバー位置が中間位置Pnr以外であった場合である。さらに、符号a3で示すように、シフトレバー30が「1秒」に渡って前進位置PDに保持され、かつ前進位置PDに達する直前のレバー位置が中間位置Pnd以外であった場合である。このような場合には、センサS1~S6に異常が発生している虞があるため、各種機器や乗員に対してセンサ異常が通知される。
【0052】
[第1および第2異常時レンジ確定処理:レバー位置の検出状況]
続いて、第1および第2異常時レンジ確定処理におけるレバー位置の検出状況について説明する。前述したように、第1および第2異常時レンジ確定処理は、第1および第2センサ群31,32の一方に異常が発生している場合、つまり第1または第2センサ群31,32からのセンサ信号が異常である場合に実行される。ここで、図11は、第1異常時レンジ確定処理における実際のレバー位置と検出されるレバー位置との関係を示す図である。また、図12は、第2異常時レンジ確定処理における実際のレバー位置と検出されるレバー位置との関係を示す図である。
【0053】
図11に示すように、第2センサ群32に異常が発生する第1異常時レンジ確定処理においては、第1センサ群31からのセンサ信号を用いてレバー位置が検出される。この場合には、ニュートラル位置PNでのセンサ信号や、中間位置Phn,Pnr,Pndでのセンサ信号が、全て共通の信号として出力される。すなわち、第1センサ群31からは、シフトレバー30がニュートラル位置(特定位置)PNに移動した場合と、シフトレバー30が中間位置(隣接位置)Phn,Pnr,Pndに移動した場合とに、共通の信号が出力される。このため、実際のレバー位置が中間位置Phn,Pnr,pndであったとしても、レバー位置がニュートラル位置PNとして検出されるため、実際のレバー位置を適切に判定することが困難であった。なお、ニュートラル位置PNはレンジ位置の1つである特定位置であり、中間位置Phn,Pnr,Pndはニュートラル位置PNに隣接する隣接位置である。
【0054】
また、図12に示すように、第1センサ群31に異常が発生する第2異常時レンジ確定処理においては、第2センサ群32からのセンサ信号を用いてレバー位置が検出される。この場合には、後退位置PRおよび中間位置Pnrでのセンサ信号が互いに共通であり、前進位置PDおよび中間位置Pndでのセンサ信号が互いに共通である。すなわち、第2センサ群32からは、シフトレバー30が後退位置(特定位置)PRに移動した場合と、シフトレバー30が中間位置(隣接位置)Pnrに移動した場合とに、共通の信号が出力される。また、第2センサ群32からは、シフトレバー30が前進位置(特定位置)PDに移動した場合と、シフトレバー30が中間位置(隣接位置)Pndに移動した場合とに、共通の信号が出力される。このため、実際のレバー位置が中間位置Pnr,Pndであったとしても、レバー位置が後退位置PR,前進位置PDとして検出されるため、実際のレバー位置を適切に判定することが困難であった。なお、後退位置PRはレンジ位置の1つである特定位置であり、中間位置Pnrは後退位置PRに隣接する隣接位置である。また、前進位置PDはレンジ位置の1つである特定位置であり、中間位置Pndは前進位置PDに隣接する隣接位置である。
【0055】
このように、第1および第2異常時レンジ確定処理においては、中間位置Phn,Pnr,Pndの一部または全部を検出することが困難であるため、慎重に選択レンジを確定させることが求められている。
【0056】
[第1異常時レンジ確定処理:フローチャート]
図9のステップS16に示した第1異常時レンジ確定処理の実行手順について説明する。前述したように、第1異常時レンジ確定処理は、第2センサ群32からのセンサ信号が異常である場合に実行される。ここで、図13は第1異常時レンジ確定処理の実行手順の一例を示すフローチャートである。図13に示したフローチャートは、コントローラ21によって所定周期毎に実行される。
【0057】
図13に示すように、ステップS40では、第1センサ群31からセンサ信号が取得される。続くステップS41では、取得したセンサ信号に基づいて、レバー位置がホーム位置PH以外であるか否かが判定される。ステップS41において、ホーム位置PHであると判定された場合には、シフトレバー30が操作されていないため、選択レンジを更新することなくルーチンを抜ける。一方、ステップS41において、ホーム位置PH以外であると判定された場合には、シフトレバー30が操作されているため、ステップS42に進み、選択レンジを更新するか否かの判定を開始する。
【0058】
ステップS42では、今回取得したセンサ信号が前回取得したセンサ信号から変化しているか否かが判定される。ステップS42において、センサ信号が変化していると判定された場合、つまりレバー位置が変化していると判定された場合には、ステップS43に進み、変化前つまり直前のレバー位置が保存される。続いて、ステップS44に進み、シフトレバー30の通過予定位置であるチェック位置(第2チェック位置)P2aが設定され、選択レンジ(Nレンジ,Dレンジ,Rレンジ)を確定する際に用いられる確定時間(第2時間)T2aが設定される。続いて、ステップS45では、選択レンジを確定する際に用いられる確定カウンタCaのクリア処理が実施され、続くステップS46では、センサ異常を判定する際に用いられる異常カウンタCbのクリア処理が実施される。
【0059】
一方、ステップS42において、センサ信号が変化していないと判定された場合、つまりレバー位置が保持されていると判定された場合には、ステップS47に進み、現在のレバー位置が、前進位置PD、ニュートラル位置PN、または後退位置PRであるか否かが判定される。ステップS47において、前進位置PD、ニュートラル位置PN、または後退位置PRであると判定された場合、つまり制御レンジに対応するレンジ位置であると判定された場合には、ステップS48に進み、確定カウンタCaのカウント処理が実施される。なお、図示する「Can-1」は、直近の確定カウンタCaである。
【0060】
続いて、ステップS49では、確定カウンタCaが確定時間T2a以上であるか否かが判定される。ステップS49において、確定カウンタCaが確定時間T2aに達していないと判定された場合には、一旦ルーチンを抜けて再びステップS40から、新たに取得されたセンサ信号に基づき各種判定や各種処理が実施される。一方、ステップS49において、確定カウンタCaが確定時間T2aに到達したと判定された場合、つまりシフトレバー30が確定時間T2aに渡って同じレンジ位置(PD,PN,PR)に保持された場合には、ステップS50に進み、シフトレバー30の操作経路が正常であるか否かが判定される。
【0061】
ステップS50においては、ステップS43で保存された直前のレバー位置が、後述するチェック位置P2aと一致するか否かが判定される。ステップS50において、直前のレバー位置とチェック位置P2aとが互いに一致すると判定された場合には、シフトレバー30が正常なルートを経てレンジ位置(PD,PN,PR)に達したと判定される。すなわち、シフトレバー30の操作経路が正常であることから、ステップS51に進み、保持されたレンジ位置に基づき選択レンジ(Dレンジ,Nレンジ,Rレンジ)が確定される。
【0062】
ここで、チェック位置P2aとは、前述したチェック位置P1と相違する位置である。また、チェック位置P2aとは、シフトレバー30が各レンジ位置(PN,PR,PD)に達する過程で通過する位置である。つまり、図11に示すように、ニュートラル位置PNについては、チェック位置P2aとして、直前に通過する3つのホーム位置PN、後退位置PR、前進位置PDが設定される。すなわち、シフトレバー30をニュートラル位置PNに操作し、選択レンジとしてNレンジを確定させるためには、確定時間T2aに渡ってニュートラル位置PNを保持するだけでなく、ニュートラル位置PNへの到達直前にホーム位置PN、後退位置PR、前進位置PDの何れかを検出することが必要である。
【0063】
また、前進位置PDについては、チェック位置P2aとして、直前に通過するニュートラル位置PNが設定される。このため、シフトレバー30を前進位置PDに操作し、選択レンジとしてDレンジを確定させるためには、確定時間T2aに渡って前進位置PDを保持するだけでなく、前進位置PDへの到達直前にニュートラル位置PNを検出することが必要である。さらに、後退位置PRについては、チェック位置P2aとして、直前に通過するニュートラル位置PNが設定される。このため、シフトレバー30を後退位置PRに操作し、選択レンジとしてRレンジを確定させるためには、確定時間T2aに渡って後退位置PRを保持するだけでなく、後退位置PRへの到達直前にニュートラル位置PNを検出することが必要である。
【0064】
このように、シフトレバー30がチェック位置(PH,PR,PD,PN)P2aを通過してレンジ位置(PD,PN,PR)に到達し、かつシフトレバー30が確定時間T2aに渡って同じレンジ位置に保持された場合に、選択レンジ(Dレンジ,Nレンジ,Rレンジ)を確定させている。すなわち、単にレンジ位置(PD,PN,PR)を判定するだけでなく、チェック位置P2aを用いてシフトレバー30の操作経路を判定するようにしたので、ノイズ等によってセンサ信号が一時的に変化した場合であっても、選択レンジを適切に判定することが可能である。
【0065】
また、図11に示すように、確定時間T2aは、チェック位置P2a毎に設定されている。つまり、ニュートラル位置PNにおいて、チェック位置P2aがホーム位置PHである場合には確定時間T2aとして「2秒」が設定されている。また、ニュートラル位置PNにおいて、チェック位置P2aが前進位置PDや後退位置PRである場合には確定時間T2aとして「4秒」が設定されている。シフトレバー30が前進位置PDや後退位置PRからニュートラル位置PNに移動する場合とは、シフトレバー30が前進位置PDや後退位置PRからホーム位置PHに戻る場合であり、乗員がNレンジの選択を意図してしないことが予測される。このため、選択レンジの誤判定を回避する観点から、確定時間T2aとして「2秒」よりも長い「4秒」が設定されている。また、シフトレバー30の移動経路Roの末端に位置する前進位置PDや後退位置PRについては、乗員によるシフトレバー操作の意図が明確であることから、ニュートラル位置PNよりも短い確定時間T2aとして「0.5秒」が設定されている。なお、図11に示した確定時間T2aは一例であり、確定時間T2aとして他の時間を設定しても良い。
【0066】
続いて、図13に示すように、前述したステップS50において、シフトレバー30の操作経路が異常であると判定された場合には、ステップS52に進み、異常カウンタCbのカウント処理が実施される。なお、図示する「Cbn-1」は、直近の異常カウンタCbである。このように、異常カウンタCbのカウント処理が実施されると、ステップS53に進み、異常カウンタCbが所定値X(例えば「3」)以上であるか否かが判定される。ステップS53において、異常カウンタCbが所定値Xを上回ると判定された場合、つまりシフトレバー30の操作経路がX回(例えば3回)に渡って異常であると判定された場合には、センサS1~S3に異常が発生している虞があるため、ステップS54に進み、各種機器や乗員に対してセンサ異常が通知される。なお、乗員にセンサ異常を通知する際には、表示パネル47にセンサ異常が表示される。
【0067】
なお、ステップS50において、操作経路が異常であると判定される場合とは、図11に符号b1で示すように、シフトレバー30が「1秒」に渡って後退位置PRに保持され、かつ後退位置PRに達する直前のレバー位置がニュートラル位置PN以外であった場合である。また、符号b2で示すように、シフトレバー30が「1秒」に渡って前進位置PDに保持され、かつ前進位置PDに達する直前のレバー位置がニュートラル位置PN以外であった場合である。このような場合には、センサS1~S3に異常が発生している虞があるため、各種機器や乗員に対してセンサ異常が通知される。
【0068】
[第2異常時レンジ確定処理:フローチャート]
図9のステップS17に示した第2異常時レンジ確定処理の実行手順について説明する。前述したように、第2異常時レンジ確定処理は、第1センサ群31からのセンサ信号が異常である場合に実行される。ここで、図14は第2異常時レンジ確定処理の実行手順の一例を示すフローチャートである。図14に示したフローチャートは、コントローラ21によって所定周期毎に実行される。
【0069】
図14に示すように、ステップS60では、第1センサ群31からセンサ信号が取得される。続くステップS61では、取得したセンサ信号に基づいて、レバー位置がホーム位置PH以外であるか否かが判定される。ステップS61において、ホーム位置PHであると判定された場合には、シフトレバー30が操作されていないため、選択レンジを更新することなくルーチンを抜ける。一方、ステップS61において、ホーム位置PH以外であると判定された場合には、シフトレバー30が操作されているため、ステップS62に進み、選択レンジを更新するか否かの判定を開始する。
【0070】
ステップS62では、今回取得したセンサ信号が前回取得したセンサ信号から変化しているか否かが判定される。ステップS62において、センサ信号が変化していると判定された場合、つまりレバー位置が変化していると判定された場合には、ステップS63に進み、変化前つまり直前のレバー位置が保存される。続いて、ステップS64に進み、シフトレバー30の通過予定位置であるチェック位置(第2チェック位置)P2bが設定され、選択レンジ(Nレンジ,Dレンジ,Rレンジ)を確定する際に用いられる確定時間(第2時間)T2bが設定される。続いて、ステップS65では、選択レンジを確定する際に用いられる確定カウンタCaのクリア処理が実施され、続くステップS66では、センサ異常を判定する際に用いられる異常カウンタCbのクリア処理が実施される。
【0071】
一方、ステップS62において、センサ信号が変化していないと判定された場合、つまりレバー位置が保持されていると判定された場合には、ステップS67に進み、現在のレバー位置が、前進位置PD、ニュートラル位置PN、または後退位置PRであるか否かが判定される。ステップS67において、前進位置PD、ニュートラル位置PN、または後退位置PRであると判定された場合、つまり制御レンジに対応するレンジ位置であると判定された場合には、ステップS68に進み、確定カウンタCaのカウント処理が実施される。なお、図示する「Can-1」は、直近の確定カウンタCaである。
【0072】
続いて、ステップS69では、確定カウンタCaが確定時間T2b以上であるか否かが判定される。ステップS69において、確定カウンタCaが確定時間T2bに達していないと判定された場合には、一旦ルーチンを抜けて再びステップS60から、新たに取得されたセンサ信号に基づき各種判定や各種処理が実施される。一方、ステップS69において、確定カウンタCaが確定時間T2bに到達したと判定された場合、つまりシフトレバー30が確定時間T2bに渡って同じレンジ位置(PD,PN,PR)に保持された場合には、ステップS70に進み、シフトレバー30の操作経路が正常であるか否かが判定される。
【0073】
ステップS70においては、ステップS63で保存された直前のレバー位置が、後述するチェック位置P2bと一致するか否かが判定される。ステップS70において、直前のレバー位置とチェック位置P2bとが互いに一致すると判定された場合には、シフトレバー30が正常なルートを経てレンジ位置(PD,PN,PR)に達したと判定される。すなわち、シフトレバー30の操作経路が正常であることから、ステップS71に進み、保持されたレンジ位置に基づき選択レンジ(Dレンジ,Nレンジ,Rレンジ)が確定される。
【0074】
ここで、チェック位置P2bとは、前述したチェック位置P1と相違する位置である。また、チェック位置P2bとは、シフトレバー30が各レンジ位置(PN,PR,PD)に達する過程で通過する位置である。つまり、図12に示すように、ニュートラル位置PNについては、チェック位置P2bとして、直前に通過する3つのホーム位置PN、後退位置PR、前進位置PDが設定される。すなわち、シフトレバー30をニュートラル位置PNに操作し、選択レンジとしてNレンジを確定させるためには、確定時間T2bに渡ってニュートラル位置PNを保持するだけでなく、ニュートラル位置PNへの到達直前にホーム位置PN、後退位置PR、前進位置PDの何れかを検出することが必要である。
【0075】
また、前進位置PDについては、チェック位置P2bとして、直前に通過するニュートラル位置PNが設定される。このため、シフトレバー30を前進位置PDに操作し、選択レンジとしてDレンジを確定させるためには、確定時間T2bに渡って前進位置PDを保持するだけでなく、前進位置PDへの到達直前にニュートラル位置PNを検出することが必要である。さらに、後退位置PRについては、チェック位置P2bとして、直前に通過するニュートラル位置PNが設定される。このため、シフトレバー30を後退位置PRに操作し、選択レンジとしてRレンジを確定させるためには、確定時間T2bに渡って後退位置PRを保持するだけでなく、後退位置PRへの到達直前にニュートラル位置PNを検出することが必要である。
【0076】
このように、シフトレバー30がチェック位置(PH,PR,PD,PN)P2bを通過してレンジ位置(PD,PN,PR)に到達し、かつシフトレバー30が確定時間T2bに渡って同じレンジ位置に保持された場合に、選択レンジ(Dレンジ,Nレンジ,Rレンジ)を確定させている。すなわち、単にレンジ位置(PD,PN,PR)を判定するだけでなく、チェック位置P2bを用いてシフトレバー30の操作経路を判定するようにしたので、ノイズ等によってセンサ信号が一時的に変化した場合であっても、選択レンジを適切に判定することが可能である。
【0077】
また、図12に示すように、確定時間T2bは、チェック位置P2b毎に設定されている。つまり、ニュートラル位置PNにおいて、チェック位置P2bがホーム位置PHである場合には確定時間T2bとして「1秒」が設定されている。また、ニュートラル位置PNにおいて、チェック位置P2bが前進位置PDや後退位置PRである場合には確定時間T2bとして「2秒」が設定されている。シフトレバー30が前進位置PDや後退位置PRからニュートラル位置PNに移動する場合とは、シフトレバー30が前進位置PDや後退位置PRからホーム位置PHに戻る場合であり、乗員がNレンジの選択を意図してしないことが予測される。このため、選択レンジの誤判定を回避する観点から、確定時間T2bとして「1秒」よりも長い「2秒」が設定されている。また、シフトレバー30の移動経路Roの末端に位置する前進位置PDや後退位置PRについては、乗員によるシフトレバー操作の意図が明確であることから、短い確定時間T2bとして「1秒」が設定されている。なお、図12に示した確定時間T2bは一例であり、確定時間T2bとして他の時間を設定しても良い。
【0078】
続いて、図14に示すように、前述したステップS70において、シフトレバー30の操作経路が異常であると判定された場合には、ステップS72に進み、異常カウンタCbのカウント処理が実施される。なお、図示する「Cbn-1」は、直近の異常カウンタCbである。このように、異常カウンタCbのカウント処理が実施されると、ステップS73に進み、異常カウンタCbが所定値X(例えば「3」)以上であるか否かが判定される。ステップS73において、異常カウンタCbが所定値Xを上回ると判定された場合、つまりシフトレバー30の操作経路がX回(例えば3回)に渡って異常であると判定された場合には、センサS4~S6に異常が発生している虞があるため、ステップS74に進み、各種機器や乗員に対してセンサ異常が通知される。なお、乗員にセンサ異常を通知する際には、表示パネル47にセンサ異常が表示される。
【0079】
なお、ステップS70において、操作経路が異常であると判定される場合とは、図12に符号c1で示すように、シフトレバー30が「2秒」に渡って後退位置PRに保持され、かつ後退位置PRに達する直前のレバー位置がニュートラル位置PN以外であった場合である。また、符号c2で示すように、シフトレバー30が「2秒」に渡って前進位置PDに保持され、かつ前進位置PDに達する直前のレバー位置がニュートラル位置PN以外であった場合である。このような場合には、センサS4~S6に異常が発生している虞があるため、各種機器や乗員に対してセンサ異常が通知される。
【0080】
[まとめ]
これまで説明したように、レンジ判定装置10においては、シフトレバー30がチェック位置を通過してレンジ位置(PD,PN,PR)に到達し、かつシフトレバー30が確定時間に渡って同じレンジ位置に保持された場合に、選択レンジ(Dレンジ,Nレンジ,Rレンジ)を確定させている。このように、単にレンジ位置(PD,PN,PR)を判定するだけでなく、チェック位置を用いてシフトレバー30の操作経路を判定したので、ノイズ等によってセンサ信号が一時的に変化した場合であっても、選択レンジを適切に判定することが可能である。
【0081】
また、図8に示すように、第1および第2センサ群31,32からの出力信号が正常である場合には、複数の第1チェック位置P1として、中間位置Phn,Pnr,Pndが設定される。一方、図11および図12に示すように、第1または第2センサ群31,32からの出力信号が異常である場合には、複数の第2チェック位置P2a,P2bとして、ホーム位置PN、後退位置PR、前進位置PD、ニュートラル位置PNが設定される。このように、第1および第2異常時レンジ確定処理においては、正常時レンジ確定処理の第1チェック位置P1とは別個の第2チェック位置P2a,P2bが設定されている。
【0082】
これにより、第1および第2異常時レンジ確定処理においても、正常時レンジ確定処理と同様に、選択レンジを適切に判定することが可能である。つまり、第1センサ群31を用いて選択レンジを確定させる第1異常時レンジ確定処理や、第2センサ群32を用いて選択レンジを確定させる第2異常時レンジ確定処理においても、単にレンジ位置(PD,PN,PR)を判定するだけでなく、チェック位置P2a,P2bを用いてシフトレバー30の操作経路を判定することができ、選択レンジを適切に判定することが可能である。
【0083】
図11および図12に示した例では、第1チェック位置P1と第2チェック位置P2aとの全てが相違しており、第1チェック位置P1と第2チェック位置P2bとの全てが相違しているが、これに限られることはない。センサS1~S6の配置によっては、第1チェック位置P1と第2チェック位置P2aとの一部が相違しても良く、第1チェック位置P1と第2チェック位置P2bとの一部が相違しても良い。
【0084】
また、図11に示すように、第2センサ群32の異常時に実行される第1異常時レンジ確定処理においては、ニュートラル位置(特定位置)PNに基づき選択レンジを確定する際の確定時間として、第2時間である確定時間T2a(例えば2秒や4秒)が用いられる。一方、図8に示すように、第1および第2センサ群31,32の正常時に実行される正常時レンジ確定処理においては、ニュートラル位置(特定位置)PNに基づき選択レンジを確定する際の確定時間として、第1時間である確定時間T1(例えば1秒や2秒)が用いられる。このように、第2時間である確定時間T2aは、第1時間である確定時間T1よりも長く設定されている。これにより、ニュートラル位置PNの判定が困難な第1異常時レンジ確定処理においては、確定時間T1よりも長い確定時間T2aを用いることができ、選択レンジを適切に確定させることができる。なお、第1異常時レンジ確定処理において、Nレンジを確定させる際の確定時間T2aを延長するだけでなく、DレンジやRレンジを確定させる際の確定時間T2aを延長しても良い。
【0085】
また、図12に示すように、第1センサ群31の異常時に実行される第2異常時レンジ確定処理においては、前進位置(特定位置)PDや後退位置(特定位置)PRに基づき選択レンジを確定する際の確定時間として、第2時間である確定時間T2b(例えば1秒)が用いられる。一方、第1および第2センサ群31,32の正常時に実行される正常時レンジ確定処理においては、前進位置(特定位置)PDや後退位置(特定位置)PRに基づき選択レンジを確定する際の確定時間として、第1時間である確定時間T1(例えば0.5秒)が用いられる。このように、第2時間である確定時間T2bは、第1時間である確定時間T1よりも長く設定されている。これにより、前進位置PDや後退位置PRの判定が困難な第2異常時レンジ確定処理においては、確定時間T1よりも長い確定時間T2bを用いることができ、選択レンジを適切に確定させることができる。なお、第2異常時レンジ確定処理において、DレンジやRレンジを確定させる際の確定時間T2bを延長するだけでなく、Nレンジを確定させる際の確定時間T2bを延長しても良い。
【0086】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、第1センサ群31を3つのセンサS1~S3によって構成し、第2センサ群32を3つのセンサS4~S6によって構成しているが、これに限られることはない。例えば、第1センサ群31を2つのセンサによって構成しても良く、第1センサ群31を4つ以上のセンサによって構成しても良い。同様に、第2センサ群32を2つのセンサによって構成しても良く、第2センサ群32を4つ以上のセンサによって構成しても良い。また、前述の説明では、制御レンジの一例として、Dレンジ、Nレンジ、Rレンジを挙げているが、これに限られることはなく、他の制御レンジが用いられていても良い。
【0087】
図9に示した例では、ステップS13において、センサ信号の異常内容が片側電源失陥時の異常であると判定された場合や、ステップS14において、センサ信号の異常内容が個々のセンサS1~S6の故障であると判定された場合に、共通の異常時レンジ確定処理を実行しているが、これに限られることはなく、センサS1~S6の異常内容に応じて異常時レンジ確定処理の内容を変えても良い。
【0088】
また、レンジ判定装置10が搭載される車両11としては、自動変速機13を備えた車両11に限られることはなく、自動変速機13を備えていない車両11であっても良い。また、レンジ判定装置10が搭載される車両11としては、動力源としてエンジン12のみを備えた車両に限られることはなく、動力源として走行用モータのみを備えた電気自動車であっても良く、動力源として走行用モータおよびエンジンを備えたハイブリッド車両であっても良い。なお、電気自動車等においては、前後進切替機構18やバルブユニット20を備えていないことが一般的である。このため、制御レンジをDレンジやRレンジ等に切り替える際には、前述したようにバルブユニット20を制御するのではなく、インバータ等を制御することで走行用モータの回転方向が切り替えられる。また、図示する車両11においても、バルブユニット20を用いて制御レンジを切り替えているが、これに限られることはなく、電動アクチュエータ等を用いて制御レンジを切り替えても良い。
【0089】
なお、第1異常時レンジ確定処理や第2異常時レンジ確定処理においては、通常時に使用される確定時間T1よりも、確定時間T2a,T2bが延長されている。つまり、異常時レンジ確定処理においては、通常時よりもシフトレバー30を長く保持することが求められる。このため、シフトレバー30を操作する乗員に違和感を与えないように、シフトレバー30の操作方法を表示パネル47等に表示しても良い。
【符号の説明】
【0090】
10 レンジ判定装置
11 車両
30 シフトレバー(操作レバー)
31 第1センサ群
31a 第1電源
32 第2センサ群
32a 第2電源
41 レバー位置検出部
42 レンジ確定部
43 確定時間設定部
44 通過位置設定部
S1~S6 センサ
PH ホーム位置(初期位置,第2チェック位置)
PN ニュートラル位置(レンジ位置,第2チェック位置,特定位置)
PD 前進位置(レンジ位置,第2チェック位置,特定位置)
PR 後退位置(レンジ位置,第2チェック位置,特定位置)
Phn 中間位置(第1チェック位置,隣接位置)
Pnd 中間位置(第1チェック位置,隣接位置)
Pnr 中間位置(第1チェック位置,隣接位置)
P1 チェック位置(第1チェック位置)
P2a チェック位置(第2チェック位置)
P2b チェック位置(第2チェック位置)
T1 確定時間(第1時間)
T2a 確定時間(第2時間)
T2b 確定時間(第2時間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14