(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】防火建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20220113BHJP
E06B 7/14 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B7/14
(21)【出願番号】P 2018083517
(22)【出願日】2018-04-24
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】山口 一儀
(72)【発明者】
【氏名】永田 孫史
(72)【発明者】
【氏名】三室 智史
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-031722(JP,A)
【文献】特開2014-118748(JP,A)
【文献】特開2016-169600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00 - 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する下枠を備え、
中空部の上壁及び室外側壁に排水孔が形成されており、
中空部の室外側壁
の室外側面における排水孔を除く
、排水孔の上方部位と排水孔の左右両側の部位に加熱により膨張して室外側壁と障子の下框との間に充満する膨張材が配置されており、中空部内における室外側壁の排水孔に対向する部位に加熱により膨張
して中空部内に形成された排水経路を閉塞する膨張材が配置されている防火建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物開口部に配置される防火建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物開口部に配置される建具として、室内側に中空部を有する下枠を備える建具が公知となっている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の建具は、下枠の室内側に配置した中空部に気密材を配置して、障子の閉鎖時に気密ラインを形成している。
このような建具においては、気密ラインの室内側に生じる結露を排水する排水経路を形成する場合があるが、そのような場合には、室内側の中空部の上壁と室外側壁にそれぞれ水抜孔を形成することができる。
しかし、建具においては、高い防火性能が求められており、火災時に、中空部の上壁と室外側壁の水抜孔による排水経路を通じて火炎が浸入することに対して対策が必要となる。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑み、排水経路を確実に確保すると共に、火災時には、中空部に形成した排水経路を確実に塞いで、防火性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、中空部を有する下枠を備え、中空部の上壁及び室外側壁に排水孔が形成されており、中空部の室外側壁の室外側面における排水孔を除く、排水孔の上方部位と排水孔の左右両側の部位に加熱により膨張して室外側壁と障子の下框との間に充満する膨張材が配置されており、中空部内における室外側壁の排水孔に対向する部位に加熱により膨張して中空部内に形成された排水経路を閉塞する膨張材が配置されている防火建具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態により、排水経路を確実に確保すると共に、火災時には、中空部に形成した排水経路を確実に塞いで、防火性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る防火建具の外観図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る防火建具の竪断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る防火建具の横断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る防火建具の下枠部分の竪断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る防火建具の下枠部分の図であり、(a)(b)は下枠に配置する加熱膨張材の正面図であり、(c)は下枠の正面図及び対応する竪断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る防火建具の下枠部分の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の防火建具について、図面を参考にして説明する。
(全体の構成)
図1ないし3に示すように、本実施形態の防火建具は、上枠11、下枠12及び左、右竪枠13,14を四周に組んでなる枠体1の内周に上框21、下框22及び左、右竪框23,24を四周に組んで内周にガラス等のパネル体25を嵌め込んでなる障子2を有している。
そして、上枠11と上框21との間及び下枠12と下框22との間に配置したフリクションバーなどの機構により、外開き自在に配置してなる外開き建具として構成されている。
【0010】
枠体1を構成する上枠11は、建物の躯体開口部の内周に配置される上枠本体部111と、上枠本体部111の室内側より下方に延設される室内側壁部112を有している。
室内側壁部112の室外側面の下端には、障子2の上框21の室内側面に当接もしくは近接する気密材を取り付ける気密材取付部112aが形成されており、気密材取付部112aの上方(外周)位置には、加熱膨張材ホルダー112bが形成されている。
【0011】
また、上枠本体部111の室外側端には、閉鎖時に障子2の上框21の室外側部上端に当接もしくは近接する気密材を取り付ける気密材取付部111aが形成されている。
【0012】
枠体1を構成する下枠12は、建物の躯体開口部の内周に配置される下枠本体部121と、下枠本体部121の室内側より立ち上がる中空部122を有している。
中空部122を構成する室外側壁122aの室外側面の上端には、障子2の下框22の室内側面に当接もしくは近接する気密材を取り付ける気密材取付部122sが形成されており、気密材取付部122sの下方(外周)位置には、加熱膨張材ホルダー122tが形成されている。
【0013】
枠体1を構成する左竪枠13は、建物の躯体開口部の内周に配置される左竪枠本体部131と、左竪枠本体部131の室内側より内周側に延びる室内側壁部132を有している。
室内側壁部132の室外側面の内周端には、障子2の左竪框23の室内側面に当接もしくは近接する気密材を取り付ける気密材取付部132aが形成されているとともに、気密材取付部132aの外周位置には、加熱膨張材ホルダー132bが形成されている。
なお、枠体1を構成する右竪枠14については、その構成は左竪枠13とほぼ同様であるので、その説明は省略する。
【0014】
障子2の上框21は、中空部211aを有する上框本体211と、上框本体211の室内側下面に取り付けられる押縁材212を有しており、上框本体211の中空部211aの室外側下面から下方に延設された室外側間口壁部211bと押縁材212とによりパネル間口が形成されている。
【0015】
障子2の下框22は、中空部221aを有する下框本体221と、下框本体221の室内側上面に取り付けられる押縁材222を有しており、下框本体221の中空部221aの室外側上面から上方に延設された室外側間口壁部221bと押縁材222とによりパネル間口が形成されている。
【0016】
障子2の左竪框23は、中空部231aを有する左竪框本体231と、左竪框本体231の室内側内周面に取り付けられる押縁材232を有しており、左竪框本体231の中空部231aの室外側内周面から内周方向に延設された室外側間口壁部231bと押縁材232とによりパネル間口が形成されている。
左竪框本体231の中空部231aの室外側端から外周方向に向かって室外側壁231cが延設されており、室外側壁231cの端部に左竪枠13との間を気密する気密材が設けられている。
なお、障子2を構成する右竪框24については、その構成は左竪框23とほぼ同様であるので、その説明は省略する。
【0017】
次に、本実施形態の防火建具の下枠12の構成について、
図4ないし6を参考にして、更に詳細に説明する。
図4(a)に示すように、下枠12の室内側に立ち上がる中空部122は、室外側壁122aと、上壁122bと、室内側壁122cを有しており、室外側壁122aの室外側面の上端に配置される気密材sと障子2の下框22の室内側面とによって、下枠の室内側の気密ラインが形成されている。
【0018】
そして、中空部122の上壁122bの適宜位置には排水孔122mが形成されるとともに、室外側壁122aの適宜位置に排水孔122nが形成されることで、中空部122内の空間Aには、下枠12の室内側の気密ラインより室内側に生じる結露水等を排水する排水経路Xが形成されている。
なお、排水孔122m及び排水孔122nには、必要に応じて逆止弁等を設けることができる。
【0019】
また、本実施形態の防火建具は、
図4(b)に示すように、火災時に、下枠12と下框22との間の空間Bを介して火炎や煙が侵入することを防止するために、中空部122の室外側壁122aの室外側面に加熱により膨張する第1の加熱膨張材61が配置されており、火災時に第1の加熱膨張材61が膨張することで、下枠12と下框22との間の空間Bを閉塞することができる。
【0020】
このとき、下枠12の中空部122の室外側壁122aに排水孔122nが形成されていることから、下枠12の室外側壁122aの排水孔122nが形成された位置に配置される第1の加熱膨張材61については、
図5(b)に示すように、排水孔部分611aが除かれた加熱膨張材611が配置されている。
これによって、下枠部分における排水経路Xを確保することができ、また、第1の加熱膨張材61の結露水による劣化を防ぐことができる。
【0021】
しかし、排水孔部分611aが除かれた第1の加熱膨張材611を配置することで、火災時に、下枠12と下框22との間の空間Bにおける排水孔122nに対向する部分に加熱膨張材が十分に充満することができずに、隙間が生じてしまう可能性があり、中空部122に形成した排水経路Xを介して煙や火炎が浸入するおそれがあった。
そこで、本実施形態の防火建具においては、下枠12の中空部122内の室内側壁122cであって、室外側壁122aに形成した排水孔122nに対応する位置に、
図5、
図6に示すように、第2の加熱膨張材62を配置している。
【0022】
このように中空部122内の排水孔122nに対応する部位に第2の加熱膨張材62を配置することで、火災時には、室外側壁122aに設けた第1の加熱膨張材61が膨張して下枠12と下框22との間の空間Bに充満するとともに、第2の加熱膨張材62が膨張することで下枠12の中空部122内に形成された排水経路Xを閉塞することができる。
さらに、第2の加熱膨張材62は、排水孔122nを介して室外側にあふれ出し、第1の加熱膨張材61により充満しきれない空間を満たして、下枠12と下框22との間の空間Bをより完全に閉塞することができる。
【0023】
以上のように、本実施形態の防火建具によれば、中空部の室外側面に配置される膨張材は、排水孔を除く部位に配置されているので、排水孔によって形成される排水経路の排水を妨げることがなく、排水経路の排水によって加熱膨張材が劣化することを抑制することができる。
また、火災時には、中空部の室外側面に配置される加熱膨張材が下枠と障子の下框との間の隙間を塞ぐと共に、室外側壁の排水孔が配置される位置については、中空部内に配置される膨張材が排水孔を塞ぐと共に、下枠と障子の下框との間の隙間に充満されるので、下枠と障子との間において、室内外の連通を抑制することができる。
【0024】
なお、以上の実施形態は,請求項に記載された発明を限定するものではなく,例示として取り扱われることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0025】
1 :枠体
2 :障子
12 :下枠
121 :下枠本体部
122 :中空部
122a :室外側壁
122b :上壁
122c :室内側壁
122m :排水孔
122n :排水孔
122s :気密材取付部
122t :加熱膨張材ホルダー
61(611):第1の加熱膨張材
611a :排水孔部分
62 :第2の加熱膨張材