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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】アクチュエータの動作検出装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/28 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
F15B15/28 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018159955
(22)【出願日】2018-08-29
(65)【公開番号】P2020034056
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2020-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健元
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-033464(JP,A)
【文献】特開2018-059549(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104728195(CN,A)
【文献】特表2014-512495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複動型シリンダを有、前記複動型シリンダ内の空間が、前記複動型シリンダ内に摺動可能に保持されるピストンにより、第1圧力作用室と、第2圧力作用室とに区画され、前記ピストンの前記第2圧力作用室側端面にロッドが連結され、切換弁が、前記第1圧力作用室への圧縮空気の給気と、前記第2圧力作用室への圧縮空気の給気とを切り換えることで、前記ピストンが往復運動を行うことが可能な空気圧アクチュエータの、前記ピストンの動作状態を監視するアクチュエータの動作検出装置において、
前記第1圧力作用室の圧力を検出する第1圧力検出器を備えること、
前記第2圧力作用室の圧力を検出する第2圧力検出器を備えること、
前記ピストンの前記第2圧力作用室に面する側の端面の第1受圧面積が、前記ピストンの前記第1圧力作用室に面する側の端面の第2受圧面積よりも、前記ロッドの外径分だけ小さいことを考慮し、前記第2圧力検出器が検出した圧力値に、前記第1受圧面積の、前記第2受圧面積に対する比率である受圧面積比率を乗じた値を、前記第1圧力検出器が検出した圧力値から減じることで、前記ピストンに作用する推力を算出する算出器を備えること、
前記推力の符号に基づいて、前記ピストンが前記複動型シリンダの前記第1圧力作用室に面する側の端面に向かって運動しているのか、または前記複動型シリンダの前記第2圧力作用室に面する側の端面に向かって運動しているのかを判定を行う監視器を備えること、
を特徴とするアクチュエータの動作検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータの動作検出装置において、
前記監視器は、前記推力の変化率に基づいて、前記ピストンの動作状態を確認すること、
を特徴とするアクチュエータの動作検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクチュエータの動作検出装置において、
前記監視器は、前記ピストンが運動を開始したのか、または運動を停止したのかを判定し、かつ、前記ピストンが前記複動型シリンダの第1圧力作用室側端面に向かって運動しているのか、または前記複動型シリンダの第2圧力作用室側端面に向かって運動しているのかを判定を行うこと、
を特徴とするアクチュエータの動作検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複動型シリンダを有するアクチュエータであって、前記複動型シリンダ内の空間が、前記複動型シリンダ内に摺動可能に保持されるピストンにより、第1圧力作用室と、第2圧力作用室とに区画され、前記ピストンの第2圧力作用室側の端面にロッドが連結されている前記アクチュエータの、前記ピストンの動作状態を監視するアクチュエータの動作検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品工場などで使用されるロボットアームの制御には、複動型シリンダを有するアクチュエータが用いられる。
複動型シリンダの内部は、ピストンにより、第1圧力作用室と、第2圧力作用室とに区画され、第1圧力作用室と第2圧力作用室のそれぞれに、圧縮空気を給気または排気する配管の一端が接続されている。該配管のもう一端には切換弁を介して圧縮空気供給源が接続され、第1圧力作用室への給気と、第2圧力作用室への給気を切換弁によって切り換えることで、ピストンがシリンダ内を往復運動する。
なお、ここで、ピストンの第2圧力作用室側端面にロッドが接続されているものとする。また、ピストンが複動型シリンダの第2圧力作用室側端面に向かって動作し、ロッドが複動型シリンダから突出する方向に動作するのを前進運動とし、ピストンが複動型シリンダ第1圧力作用室端面に向かって動作し、ロッドが複動型シリンダに収納される方向に動作するのを後進運動とする。
【0003】
上記のような複動型シリンダにおいては、ロッドに磁石を内蔵し、さらに複動型シリンダ本体の一端ともう一端に磁気検出センサを配置することで、ピストンが、複動型シリンダ本体の第1圧力作用室側端面または第2圧力作用室側端面に到達したか否かを検出し、ピストンの往復運動の監視を行っていた。
しかし、食品工場においては、食品等に使用する洗浄液が複動型シリンダ本体にかかる可能性があり、洗浄液がかかると、磁気検出センサや磁気検出センサの配線が腐食するおそれがあった。
【0004】
そこで、特許文献1に示すように、第1圧力作用室に接続される配管内の流体の第1圧力値と、第2圧力作用室に接続される配管内の流体の第2圧力値とを検出し、第1圧力作用室の第1圧力値と、第2圧力作用室の第2圧力値との差圧が正の値であったか負の値であったかを見ることで、ピストンが複動型シリンダ本体の第1圧力作用室側端面または第2圧力作用室側端面に到達したか否かを監視するアクチュエータの動作検出装置が用いられている。
【0005】
すなわち、ピストン前進運動時は、第1圧力値が、第2圧力値よりも大きく、ピストン後進運動時は、第2圧力値が第1圧力値よりも大きいため、第1圧力値から第2圧力値を減じることで求められる差圧が、ピストンの前進運動時は正の値であり、ピストンの後進運動時は負の値となる。したがって、差圧が正の値であるときはピストンが前進運動をしていること、負の値であるときはピストンが後進運動をしていることが判断することができる。また、ピストンが複動型シリンダの一端に到達し前進運動または後進運動を完了したときは、差圧に急激な変動が生じるため、差圧の急激な変動を捕捉することで、ピストンが複動型シリンダの一端に到達したことを判断することできる。
したがって、差圧に急激な変動が生じる前に、差圧が正の値であったか負の値であったかを見ることで、ピストンが複動型シリンダのどちら側の端部に到達したのかを判断することが可能となるのである。
【0006】
また、複動型シリンダが小型である場合には、ピストン容積が小さいために、プッシュ動作とプル動作が切り換わる際の第1圧力値と第2圧力値の圧力変動が微少である場合があり、ノイズによる誤検出が生じるおそれがある。そこで、特許文献2に示すように、圧力値を時間微分することで、圧力値の変化率を監視し、ピストンが複動型シリンダ本体の第1圧力作用室側端面または第2圧力作用室側端面に到達したか否かを監視するアクチュエータの動作検出装置が用いられている。
【0007】
これらのアクチュエータの動作検出装置によれば、複動型シリンダ近傍に磁気検出センサや、磁気検出センサのための配線を配置する必要がなく、食品工場における洗浄工程で磁気検出センサや磁気検出センサの配線が腐食するおそれがなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2017/187934号
【文献】特開2018-59549号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記先行技術には次のような問題があった。
<問題点1>
特許文献1に開示される圧力値によってピストン動作を監視するアクチュエータの動作検出装置においては、スピードコントローラにより動作タクトを遅くした場合に、ピストンの動作を正確に監視することができなくなることを、本願出願人は発見した。
例えば、切換弁の切換周期が1secであるのに対し、スピードコントローラにより排気量を制限し、ピストンの動作タクトを900msecまで遅くしたとすると、図5に示すように、切換弁のソレノイドに電気信号が送られ(t0時点)、切換弁が切り換わり(t1時点)、第1圧力作用室への給気が開始されて第1圧力値P1が上昇を開始するとともに、第2圧力作用室の排気が開始されて第2圧力値P2が減少を開始するが、第1圧力値P1と第2圧力値P2が逆転せず、第2圧力値P2が第1圧力値P1よりも大きい状態のまま、ピストンが前進運動を開始してしまう(t3時点)。
【0010】
第2圧力値P2が第1圧力値P1よりも大きい状態のままピストンが前進運動を開始してしまう原因は、スピートコントローラにより排気量を制限すると、排気側の第2圧力作用室の第2圧力値P2が、排気量の制限を行わない場合と比べて高く維持されるが、ピストンの第2圧力作用室側端面の受圧面積は、ロッドが接続されている分小さいため、第2圧力値P2が、第1圧力値P1よりも高い状態であっても、ピストンの第1圧力作用室側端面に作用する力(以下第1作用力F1)よりも、第2圧力作用室側端面に作用する力(以下第2作用力F2)が低くなり、前進運動が可能となるためである。
【0011】
そして、ピストンの前進運動完了(t4時点)後、第1圧力値P1が上昇し、第2圧力値P2が減少するが、直後に切換弁のソレノイドに電気信号が送られ(t5時点)、切換弁が切り換わり第2圧力作用室に給気が開始されるとともに第1圧力作用室の排気が開始される(t6時点)。すると、第2圧力値P2の減少が止まり、第1圧力値P1が減少を開始するため、第1圧力値P1と第2圧力値P2が逆転することがなく、ピストンは後進運動を開始する。
【0012】
ピストンの前進運動時、後進運動時を通して、第1圧力値P1と第2圧力値P2が逆転することがないため、常に第1圧力値P1が第2圧力値P2よりも小さく、第1圧力値P1から第2圧力値P2を減じた差圧は、常に負の値となる。よって、差圧の符号によっては、ピストンが前進運動をしているのか、後進運動をしているのか判断することができず、ピストンの動作を正確に監視することができなくなる。
【0013】
そこで、本願出願人は、物体の動作には、当該物体に作用する推力が関係するのであり、圧力値によってピストンの動作を監視するには限界があると考え、ピストンに作用する推力によってピストンの動作を監視するのが望ましいという結論に至った。ピストンが前進運動をしている場合は、ピストンの第1作用力F1が、第2作用力F2よりも大きく、ピストンが後進運動をしている場合には、ピストンの第2作用力F2が、第1作用力F1よりも大きい関係にある。このような関係はいかなる動作タクトにおいても変わることがなく、推力がピストンの前進方向に作用しているのか、後進方向に作用しているのか、明確となるためである。
【0014】
<問題点2>
また、特許文献2に開示されるアクチュエータの動作検出装置においては、アクチュエータの動作検出装置に内蔵されるマイクロコンピュータの情報処理に遅延が生じるおそれがあった。
例えば、第1圧力値P1および第2圧力値P2を時間微分することで、圧力値の変化率を監視し、ピストンが複動型シリンダ本体の第1圧力作用室側端面または第2圧力作用室側端面に到達したか否かを監視する場合、図6に示すように、第1圧力作用室の第1圧力値P1の時間微分値dP1は、ピストンの動作開始時(t3時点)の直前に正方向に大きく変動する一方で、動作終了時(t4時点)の変動は小さいため、動作開始時の検出が容易であるが、動作終了時の検出はノイズにより誤検出が発生する可能性がある。また、図7に示すように、第2圧力作用室の第2圧力値P2の時間微分値dP2は、ピストンの動作開始時(t3時点)直前の変動は小さい一方で、動作終了時(t4時点)直前に大きく負方向に変動するため、動作終了時の検出が容易であるが、動作開始時の検出はノイズにより誤検出が発生する可能性がある。
【0015】
上記ノイズによる誤検出を防止するため、動作開始時および動作終了時を確実に検出するためには、動作開始時は、第1圧力値P1の変化率によって検出し、動作終了時は第2圧力値P2の変化率によって検出する、というように、第1圧力値P1の変化率と、第2圧力値P2の変化率と、の双方を並行して監視しなければならず、アクチュエータの動作検出装置に内蔵されるマイクロコンピュータの情報処理に遅延が生じるおそれがあった。
【0016】
本発明は、上記の問題点1、問題点2を解決するためのものであり、動作タクトの速度に関わらずピストンの動作を正確に監視することが可能であるとともに、情報処理の遅延を防止することができるアクチュエータの動作検出装置を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明のアクチュエータの動作検出装置は、次のような構成を有している。
(1)複動型シリンダを有、複動型シリンダ内の空間が、複動型シリンダ内に摺動可能に保持されるピストンにより、第1圧力作用室と、第2圧力作用室とに区画され、ピストンの第2圧力作用室側端面にロッドが連結され、切換弁が、前記第1圧力作用室への圧縮空気の給気と、前記第2圧力作用室への圧縮空気の給気とを切り換えることで、前記ピストンが往復運動を行うことが可能な空気圧アクチュエータの、ピストンの動作状態を監視するアクチュエータの動作検出装置において、第1圧力作用室の圧力を検出する第1圧力検出器を備えること、第2圧力作用室の圧力を検出する第2圧力検出器を備えること、ピストンの第2圧力作用室に面する側の端面の第1受圧面積が、ピストンの第1圧力作用室に面する側の端面の第2受圧面積よりも、ロッドの外径分だけ小さいことを考慮し、第2圧力検出器が検出した圧力値に、第1受圧面積の、第2受圧面積に対する比率である受圧面積比率を乗じた値を、第1圧力検出器が検出した圧力値から減じることで、ピストンに作用する推力を算出する算出器を備えること、推力の符号に基づいて、ピストンが複動型シリンダの第1圧力作用室に面する側の端面に向かって運動しているのか、または複動型シリンダの第2圧力作用室に面する側の端面に向かって運動しているのかを判定を行う監視器を備えること、を特徴とする。
【0018】
(2)(1)に記載のアクチュエータの動作検出装置において、監視器は、推力の変化率に基づいて、ピストンの動作状態を確認すること、を特徴とする。
【0019】
(3)(1)または(2)のいずれか1つに記載のアクチュエータの動作検出装置において、監視器は、ピストンが運動を開始したのか、または運動を停止したのかを判定し、かつ、ピストンが複動型シリンダの第1圧力作用室側端面に向かって運動しているのか、または複動型シリンダの第2圧力作用室側端面に向かって運動しているのかを判定を行うこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のアクチュエータの動作検出装置は、上記構成を有することにより次のような作用・効果を有する。
(1)複動型シリンダを有するアクチュエータであって、複動型シリンダ内の空間が、複動型シリンダ内に摺動可能に保持されるピストンにより、第1圧力作用室と、第2圧力作用室とに区画され、ピストンの第2圧力作用室側端面にロッドが連結されているアクチュエータの、ピストンの動作状態を監視するアクチュエータの動作検出装置において、第1圧力作用室の圧力を検出する第1圧力検出器を備えること、第2圧力作用室の圧力を検出する第2圧力検出器を備えること、第1圧力検出器が検出した圧力と、第2圧力検出器が検出した圧力と、ピストンの受圧面積と、に基づき、ピストンに作用する推力を算出する算出器を備えること、推力に基づいて、ピストンの動作状態を確認する監視器を備えること、を特徴とするので、第1圧力検出器および第2圧力検出器が、それぞれ第1圧力作用室の圧力および第2圧力作用室の圧力を検出し、算出器が、第1圧力作用室の圧力、第2圧力作用室の圧力およびピストンの受圧面積にもとづいて、ピストンに作用する推力を算出する。そして、算出された推力に基づいて、監視器がピストンの動作状態を確認することができる。ピストン前進運動時はピストンの第1作用力F1が、第2作用力F2より大きく、ピストン後進運動時は第2作用力F2が第1作用力F1より大きいという関係がある。当該関係は、動作タクトの速度によって変わることがないため、ピストンに作用する推力が算出されることで、ピストンの前進運動をしているのか、後進運動をしているのかが明確となり、動作タクトの速度に関わらず正確なピストン動作の監視をすることが可能である。
【0021】
(2)(1)に記載のアクチュエータの動作検出装置において、算出器は、ピストンの第2圧力作用室側端面の受圧面積が、ピストンの第1圧力作用室側端面の受圧面積よりも、ロッドの外径サイズ分だけ小さいことを考慮し、推力を算出すること、監視器は、推力の符号に基づいて、ピストンの動作状態を確認すること、を特徴とするので、ピストンの第2圧力作用室側端面にはロッドが接続されているため、受圧面積が、ピストンの第1圧力作用室側端面の受圧面積よりも、ロッドの外径サイズ分だけ小さくなることを考慮し、推力が算出されることとなる。
ここで、推力とは、第1圧力値から、第2圧力値に受圧面積比率を乗じて得た値を減じて求められる値をいう。
受圧面積比率とは、ピストンの第1圧力作用室側端面の受圧面積に対する第2圧力作用室側端面の受圧面積の比率であり、例えば、シリンダ径25mm、ロッド径12mmである場合、ピストンの第2圧力作用室側の受圧面積の、第1圧力作用室側の受圧面積に対する比率は、約0.75となる。つまり、第1圧力値から、第2圧力値に0.75を乗じた値を減じて求められる値がピストンに作用する推力となる。なお、受圧面積比率は、シリンダ径や、ロッド径など、アクチュエータ固有の仕様により変動する値である。
【0022】
圧力によってピストン往復運動を監視すると、スピードコントローラにより排気量を制御された状態で運動の監視をピストンが前進運動を行う際、ピストンの第2圧力作用室側端面の受圧面積が、ロッドが接続されている分小さいため、第2圧力作用室の第2圧力値は、第1圧力作用室の第1圧力値よりも高い状態であっても、ピストンの第1圧力作用室側端面に作用する力よりも、第2圧力作用室側端面に作用する力が低くなり、前進運動が可能となる。したがって、第1圧力と第2圧力の大小関係よっては、ピストンの往復運動を正確に監視することができないケースが生じるが、受圧面積を考慮し、ピストンに作用する推力を求めることで、ピストンが前進運動を行っているときは常に推力が正の値であり、ピストンが後進運動を行っているときは常に推力が負の値となる。
そして、推力が正の値であるか、負の値であるかにより、ピストンが前進運動をしているのか、後進運動をしているのかが明確となるため、監視器が、推力の符号によってピストンがどのような動作を行っているのか正確に監視をすることが可能である。
【0023】
(3)(1)または(2)に記載のアクチュエータの動作検出装置において、監視器は、推力の変化率に基づいて、ピストンの動作状態を確認すること、を特徴とするので、監視器は、推力の時間微分値である変化率のみに基づき情報処理を行えばよく、従来技術のように第1圧力作用室の第1圧力値の変化率と、第2圧力作用室の第2圧力値の変化率と、の双方を並行して情報処理をする必要がないため、アクチュエータの動作検出装置に内蔵されるマイクロコンピュータの情報処理に遅延が生じるおそれが解消される。
【0024】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のアクチュエータの動作検出装置において、監視器は、ピストンが運動を開始したのか、または運動を停止したのかを判定し、かつ、ピストンがシリンダの第1圧力作用室側端面に向かって運動しているのか、または前記シリンダの第2圧力作用室側端面に向かって運動しているのかを判定を行うこと、を特徴とするので、例えば、アクチュエータの動作検出装置が表示装置を備えていれば、監視器が判定した情報を該表示装置に表示させることで、使用者はアクチュエータの正確な動作状況を把握することができるため、給気する流体の圧力や、スピードコントローラ等の調整をしながら、使用者の希望する動作タクトを設定することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】アクチュエータの動作検出装置20を用いたアクチュエータ監視システム1の回路図である。
図2】アクチュエータの動作検出装置20の構成を示すブロック図である。
図3】(a)は第1圧力値P1と圧力値P3との時間経過に伴う挙動を表したグラフであり、(b)はピストン102に作用する推力Fの時間経過に伴う挙動を表したグラフであり、(c)は推力Fの時間微分値dFの時間経過に伴う挙動を表したグラフである。
図4】マイクロコンピュータ201が、ピストン102の動作を判定するフローチャートである。
図5】従来技術における、第1圧力値P1と第2圧力値P2との時間経過に伴う挙動を表したグラフである。
図6】従来技術における、第1圧力値P1の時間微分値dP1の時間経過に伴う挙動を表したグラフである。
図7】従来技術における、第2圧力値P2の時間微分値dP2の時間経過に伴う挙動を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のアクチュエータの動作検出装置20の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1はアクチュエータの動作検出装置20を用いたアクチュエータ監視システム1の回路図である。アクチュエータの動作検出装置20は、アクチュエータ10を構成する複動型シリンダ101の内部に摺動可能に保持されるピストン102の動作状態を監視する装置として機能する。
【0027】
複動型シリンダ101の内部は、ピストン102により、第1圧力作用室103と、第2圧力作用室104とに区画されている。また、ピストン102の第2圧力作用室側端面102bには、ロッド105が接続されており、ロッド105は、複動型シリンダ101の第2圧力作用室側端面101bの挿通孔101cを貫通し、複動型シリンダ101の外部に延出している。
【0028】
第1圧力作用室103には、圧縮空気を給気または排気する第1配管11の一端が接続されており、第1配管11のもう一端は、切換弁13の第1接続ポート131に接続されている。
そして、第2圧力作用室104には、圧縮空気を給気または排気する第2配管12の一端が接続されており、第2配管12のもう一端は、切換弁13の第2接続ポート132に接続されている。
また、第1配管11および第2配管12上には、スピードコントローラ14がそれぞれ設けられている。
【0029】
切換弁13は、圧縮空気を入力する入力ポート133を有し、入力ポート133には給気配管15の一端が接続され、給気配管15のもう一端は、圧縮空気供給源16に接続されている。
【0030】
切換弁13は、ダブルソレノイド型電磁弁であり、外部からソレノイド134A、134Bに電気信号が与えられることで、内部の弁体(図示せず)が駆動する。
ソレノイド134Aに電気信号が与えられると、切換弁13の弁体が、ソレノイド134A側に引き寄せられ、入力ポート133と、第1接続ポート131が連通するとともに、第2接続ポート132が外部に開放される。
入力ポート133と、第1接続ポート131が連通することで、圧縮空気供給源16から供給される圧縮空気が、入力ポート133から切換弁13に入力され、第1接続ポート131から出力される。第1接続ポート131から出力された圧縮空気は、第1配管11を流れ、複動型シリンダ101の第1圧力作用室103に給気される。
【0031】
第1圧力作用室103に圧縮空気が給気されることで、第1圧力作用室103内部の圧力が上昇し、ピストン102の第1圧力作用室側端面102aが押圧され、ピストンが前進方向(図中矢印X)に移動する。ピストンが前進方向に移動するとともに、第2圧力作用室104の排気が始まり、第2配管12、第2接続ポート132および切換弁13を介して、第2圧力作用室104に給気されていた圧縮空気が外部に排出される。
【0032】
一方、ソレノイド134Bに電気信号が与えられると、切換弁13の弁体が、ソレノイド134B側に引き寄せられ、入力ポート133と、第2接続ポート132が連通するとともに、第1接続ポート131が外部に開放される。
入力ポート133と、第2接続ポート132が連通することで、圧縮空気供給源16から供給される圧縮空気が、入力ポート133から切換弁13に入力され、第2接続ポート132から出力される。第2接続ポート132から出力された圧縮空気は、第2配管12を流れ、複動型シリンダ101の第2圧力作用室104に給気される。
【0033】
第2圧力作用室104に圧縮空気が給気されることで、第2圧力作用室104内部の圧力が上昇し、ピストン102の第2圧力作用室側端面102bが押圧され、ピストン102が後進方向(図中矢印Y)に移動する。ピストン102が後進方向に移動するとともに、第1圧力作用室103の排気が始まり、第1配管11、第1接続ポート131および切換弁13を介して、第1圧力作用室103に給気されていた圧縮空気が外部に排出される。
【0034】
切換弁13のソレノイド134A、Bへの通電によって弁体を駆動させることで、第1圧力作用室103への圧縮空気の給気と、第2圧力作用室104への圧縮空気の給気とを切り換えることができ、該切り換えの繰り返しによりピストン102が往復運動を行うことができる。そして、ピストン102の往復運動に伴い、ピストン102の第2圧力作用室側端面102bに接続されたロッド105が往復運動を行う。
【0035】
第1配管11および第2配管12上であって、スピードコントローラ14とアクチュエータ10の間には、アクチュエータの動作検出装置20が接続されており、第1配管11の第1圧力値P1と、第2配管12の第2圧力値P2を逐次検出し、アクチュエータ10のピストン102の動作を監視している。
【0036】
次に、アクチュエータの動作検出装置20の構成について説明する。図2は、アクチュエータの動作検出装置20の構成を示すブロック図である。
アクチュエータの動作検出装置20は、マイクロコンピュータ201と、第1圧力検出器202と、第2圧力検出器203と、差動増幅回路205と、表示部206と、設定部207と、通信手段208と、信号出力回路209と、を備えている。
【0037】
第1圧力検出器202は、第1配管11に接続され、第1配管11における圧縮空気の圧力である第1圧力値P1を検出する。そして、第2圧力検出器203は、第2配管12に接続され、第2配管12における圧縮空気の圧力である第2圧力値P2を検出する。なお、第1配管11の圧力は、第1圧力作用室103の圧力に応じて変動し、第2配管12の圧力は、第2圧力作用室104の圧力に応じで変動するため、第1配管11および第2配管12において圧力値を検出することは、第1圧力作用室103および第2圧力作用室の圧力値を検出するのと同義である。
【0038】
第1圧力検出器202は、差動増幅回路205に接続されており、第1圧力検出器202が検出する第1圧力値P1に応じた信号を差動増幅回路205に出力する。
【0039】
第2圧力検出器203は分圧器204を介して差動増幅回路205に接続されており、第2圧力検出器203で検出した第2圧力値P2に応じた信号が、分圧器204によって分圧された上、差動増幅回路205に入力される。つまり、ピストンの第2圧力作用室側端面102bの受圧面積は、ロッド105が接続されているため、ロッド105の外径分だけ受圧面積が、第1圧力作用室側端面102aの受圧面積と比べて小さくなる。分圧器204は第1圧力作用室側端面102aの受圧面積と第2圧力作用室側端面102bの受圧面積の比率に基づき、第2圧力値P2に応じた信号を分圧し、圧力値P3として出力する。
例えば、シリンダ径25mm、ロッド径12mmである場合、ピストン102の第2圧力作用室側端面102bの受圧面積の、第1圧力作用室側端面102aの受圧面積に対する比率は、約0.75となる。したがって、第2圧力値P2に0.75を乗じた値が圧力値P3となる。
【0040】
そして、差動増幅回路205において、第1圧力値P1から圧力値P3を減じた差分が計算される。当該差分がピストン102に作用する推力Fとなる。
ピストン102の前進運動時は、ピストン102の第1圧力作用室側端面102aに作用する力が、第2圧力作用室側端面102bに作用する力より大きく、ピストン102の後進運動時は第2圧力作用室側端面102bに作用する力が第1圧力作用室側端面102aに作用する力より大きいという関係がある。当該関係は、動作タクトの速度によって変わることがない
第1圧力値P1から圧力値P3を減じた差分である推力Fは、ピストンが前進運動を行っているときは常に推力Fが正の値であり、ピストンが後進運動を行っているときは常に推力Fが負の値となる。
【0041】
差動増幅回路205は、マイクロコンピュータ201に接続されており、差動増幅回路205により算出されたピストン102に作用する推力Fが、マイクロコンピュータ201に入力される。
そして、マイクロコンピュータ201は、推力Fに基づきピストンの動作を監視する。
より具体的に説明すると、マイクロコンピュータ201は、推力Fの符号に基づき、差動増幅回路205から入力される推力Fに基づき、ピストン102が前進運動をしているのか、後進運動をしているのかを判定処理を行う。推力Fが正の値であるのか、負の値であるのかによって、ピストンが前進運動をしているのか、後進運動をしているのか明確となるため、動作タクトの速度に関わらず正確なピストン動作の監視をすることが可能である。
【0042】
さらに、マイクロコンピュータ201は、差動増幅回路205から入力される推力Fの変化率に基づき、ピストン102が運動を開始したのか、または運動を停止したのかを判定を行うことができる。
【0043】
マイクロコンピュータ201は、差動増幅回路205から入力される推力Fに対し、時間微分を行い、推力Fの変化率である微分値dFを算出する。
そして、マイクロコンピュータ201は、微分値dFが時間経過に伴い、正方向または負方向に急激に変動したか否かを監視し、微分値dFの急激な変動を捕捉した場合は、ピストン102の運動が開始または停止されたと判定する。マイクロコンピュータ201は、推力Fの微分値dFに基づきピストン102の動作について判定を行うため、従来技術のように第1圧力作用室の第1圧力値P1の微分値と、第2圧力作用室の第2圧力値の微分値と、の双方を並行して情報処理をする必要がない。よって、マイクロコンピュータ201の情報処理に遅延が生じるおそれが解消される。
【0044】
マイクロコンピュータ201には、表示部206と、通信手段208と、信号出力回路209が接続されており、マイクロコンピュータ201が判定処理した情報を、表示部206に表示したり、通信手段208や信号出力回路209を介して外部に出力したりすることができる。
マイクロコンピュータ201が判定処理した情報を、表示部206に表示したり、外部に出力したりすることで、使用者はアクチュエータ10の正確な動作状況を把握することができるため、給気する流体の圧力や、スピードコントローラ14の調整をしながら、使用者の希望する動作タクトを設定することが容易となる。
また、マイクロコンピュータ201には、設定部207が接続されており、ピストン径等のマイクロコンピュータ201における判定処理に必要な情報を、使用者が入力し、設定することができる。なお、通信手段208を介して、マイクロコンピュータ201がピストン102の運動について判定処理を行うために必要な情報を、外部から入力することも可能である。
【0045】
次に、第1圧力値P1および圧力値P3の時間経過に対する挙動について説明する。図3(a)は、切換弁13の切換周期が1secであるのに対し、スピードコントローラ14により排気量を調整し、ピストン102の動作タクトを900msecとした場合の第1圧力値P1および圧力値P3の挙動を表したグラフである。
【0046】
図3中t0時点で、ソレノイド134Aに電気信号が与えられる。ソレノイド134Aに電気信号が与えられると、切換弁13の弁体が、ソレノイド134A側に引き寄せられ、入力ポート133と、第1接続ポート131が連通するとともに、第2接続ポート132が外部に開放される(図3中t1時点)。
入力ポート133と、第1接続ポート131が連通することで、圧縮空気供給源16から供給される圧縮空気が、入力ポート133から切換弁13に入力され、第1接続ポート131から出力される。第1接続ポート131から出力された圧縮空気は、第1配管11を流れ、第1圧力作用室103に給気される。
一方、第2圧力作用室104は、第2配管12と、切換弁13とを介して大気と連通し、圧縮空気の排気を開始する(図3中t1時点)。
【0047】
第1圧力作用室103に給気されることで、第1圧力作用室103に接続されている第1配管11の第1圧力値P1は急激に上昇する。一方で、第2圧力作用室104の排気が開始されることで、第2圧力作用室104に接続される第2配管12の第2圧力値P2は減少するため、圧力値P3も減少する。
そして、図3中t2時点で、第1圧力値P1と圧力値P3とが逆転し、その後t3時点でピストン102が前進運動を開始する。
ピストン102が前進運動を開始すると、ピストン102が複動型シリンダ101の第2圧力作用室側端面101bに到達するt4時点まで、第1圧力値P1と、圧力値P3とが、緩やかに上昇する。
ピストン102が複動型シリンダ101の第2圧力作用室側端面101bに到達すると、ピストン102は停止する。ピストン102が停止すると、第1圧力値P1は緩やかに上昇し、第2圧力値P2は急激に減少する。
【0048】
次に、図3中t5時点でソレノイド134Bに電気信号が与えられる。ソレノイド134Bに電気信号が与えられると、切換弁13の弁体が、ソレノイド134B側に引き寄せられ、入力ポート133と、第2接続ポート132が連通するとともに、第1接続ポート131が外部に開放される(図3中t6時点)。
入力ポート133と、第2接続ポート132が連通することで、圧縮空気供給源16から供給される圧縮空気が、入力ポート133から切換弁13に入力され、第2接続ポート132から出力される。第2接続ポート132から出力された圧縮空気は、第2配管12を流れ、第2圧力作用室104に給気される。
一方、第1圧力作用室103は、第1配管11と、切換弁13とを介して大気と連通し、圧縮空気の排気を開始する。
【0049】
第2圧力作用室104に給気されることで、第2圧力作用室104に接続されている第2配管12の第2圧力値P2は急激に上昇するため、圧力値P3も急激に上昇する。一方で、第1圧力作用室103の排気が開始されることで、第1圧力作用室103に接続される第1配管11の第1圧力値P1は減少する。
そして、図中t7時点で、第1圧力値P1と圧力値P3とが逆転し、その後t8時点でピストン102が前進運動を開始する。
ピストン102が前進運動を開始すると、ピストン102が複動型シリンダ101の第1圧力作用室側端面101aに到達するt9時点まで、第1圧力値P1と、圧力値P3とが、緩やかに上昇する。
ピストン102が複動型シリンダ101の第1圧力作用室側端面101aに到達すると、ピストン102は停止する。ピストン102が停止されると、圧力値P3は緩やかに上昇し、第1圧力値P1は急激に減少する。
そして、図3中t10時点でソレノイド134Aに電気信号が与えられ、その後の挙動は図3中t0からt10までと同一である。
【0050】
以上のような第1圧力値P1および圧力値P3の時間経過に伴う挙動から、ピストン102に作用する推力Fを求め、表したのが図3(b)のグラフである。具体的には、第1圧力値P1から、第2圧力値P2に受圧面積比率を乗じた値である圧力値P3を減じて求められた値が推力Fとなる。受圧面積比率とは、ピストン102の第2圧力作用室側端面102bの受圧面積に対する、第1圧力作用室側端面102aの受圧面積の比率であり、ピストン102の第2圧力作用室側端面102bの受圧面積が、ロッド105が接続されている分、第1圧力作用室側端面102aよりも小さくなることを考慮したものである。例えば、ピストン径を25mmとし、ロッド径を12mmとした場合、受圧面積比率は、約0.75となる。
【0051】
具体的に、推力Fの時間経過に伴う挙動について説明する。
切換弁13のソレノイド134Aに電気信号が送られるt0時点では、直前までピストン102が後進運動を行っていたため、推力Fは負の値である。t1時点で切換弁13の切り換えにより、第1圧力作用室103への給気と、第2圧力作用室104の排気が開始され、ピストン102に作用する推力Fが正の方向に急激に上昇する。t2時点で推力Fが0を超え、その後t3時点からピストン102が前進運動を始める。ピストン102の前進運動開始後、ピストン102の前進運動が完了するt4時点まで、推力Fはゆるやかに減少し、ピストン102の前進運動が完了した後は、ソレノイドに電気信号が送られ(t5時点)、切換弁13が切り換わるt6時点まで上昇する。
切換弁13が切り換わると、第2圧力作用室104への給気が開始されるとともに、第1圧力作用室103の排気が開始されるため、ピストン102に作用する推力Fは、負の方向に急激に変動する。そして、t7時点で推力Fが0以下となり、t8時点からピストン102が後進運動を開始する。その後、ピストン102の後進運動が完了されるt9時点まで、推力Fは緩やかに下降する。そして、ピストン102の後進運動が完了されると、推力Fは急激に下降する。
【0052】
ピストン102が前進運動をしているときの推力Fは正の値であり、ピストン102が後進運動をしているときの推力Fは負の値であるため、マイクロコンピュータ201は、推力Fが正の値であるのか、負の値であるのかに基づいて、ピストンが前進運動をしているのか、後進運動をしているのか判断することができ、動作タクトの速度に関わらず正確にピストン102の動作を監視することが可能である。
【0053】
推力Fの時間微分値dFを求め、時間経過に伴う微分値dFの挙動を表したものが図3(c)のグラフである。
具体的に時間経過に伴う微分値dFの挙動について説明する。
切換弁13の切り換え時点(t0)からピストン102が前進運動を開始する時点(t3)の時間帯において、推力Fの急激な上昇に伴い、微分値は正方向に急激に変化する。ピストン102の前進運動開始から前進運動を完了するt4時点の直前までは略0を維持し、前進運動完了後に負方向に急激に変化する。
その後、ソレノイドに電気信号が送られるt5まで略0に向かい緩やかに上昇し、t5時点で正方向に急激に変化する。その後、ピストン102が後進運動を開始するt8時点までに略0に向かい下降する。
ピストン102の後進運動開始から後進運動を完了するt9時点の直前までは略0を維持し、後進運動完了後に正方向に急激に変化する。その後、切換弁13の切り換え時点t10まで略0に向かい緩やかに下降する。
【0054】
マイクロコンピュータ201は、差動増幅回路205から逐次入力される推力Fに対して時間微分値dFを算出し、微分値dFの正方向または負方向の急激な変化を捉えることで、ピストン102が運動を開始したのか、または運動を停止したのかを判定を行う。従来技術のように第1圧力作用室の第1圧力値P1の微分値と、第2圧力作用室の第2圧力値の微分値と、の双方を並行して情報処理をする必要がないため、マイクロコンピュータ201の情報処理に遅延が生じるおそれが解消される。
【0055】
図4は推力Fの符号および時間微分値dFに基づき、ピストン102の動作を判定するフローチャートである。
マイクロコンピュータ201は、逐次入力される推力Fに基づき時間微分値dFを算出し、算出した時間微分値dFが急激に変動したか否かを判定する(S1)。時間微分値dFが急激に変動していた場合(S1:Yes)、マイクロコンピュータ201は、ピストン102が複動型シリンダ101の一端から他端に向かって動き始めたと判定し(S2)、当該判定結果を、マイクロコンピュータ201は表示部206に表示し、使用者に通知する(S3)。
その後、マイクロコンピュータ201は、推力Fが正の値か否かを判定する(S4)。推力Fが正の値である場合(S4:Yes)、マイクロコンピュータ201は、ピストン102が前進運動をしていると判定し(S5)、当該判定結果を、マイクロコンピュータ201は表示部206に表示し、使用者に通知する(S6)。
次に、マイクロコンピュータ201は、時間微分値dFが急激に変動したか否かを判定する(S7)。時間微分値dFが急激に変動していた場合(S7:Yes)、マイクロコンピュータ201は、ピストン102が複動型シリンダ101の一端に到達し、運動を停止したと判定し(S8)、当該判定結果を、マイクロコンピュータ201は表示部206に表示し、使用者に通知する(S9)。
【0056】
一方、マイクロコンピュータ201が、S4において推力Fが正の値でないと判定した場合(S4:No)、マイクロコンピュータ201は、推力Fが負の値か否かを判定する(S10)。推力Fが負の値である場合(S10:Yes)、マイクロコンピュータ201は、ピストン102が後進運動をしていると判定し(S11)、当該判定結果を、マイクロコンピュータ201は表示部206に表示し、使用者に通知する(S12)。
次に、マイクロコンピュータ201は、時間微分値dFが急激に変動したか否かを判定する(S13)。時間微分値dFが急激に変動していた場合(S13:Yes)、マイクロコンピュータ201は、ピストン102が複動型シリンダ101の一端に到達し、運動を停止したと判定し(S14)、当該判定結果を、マイクロコンピュータ201は表示部206に表示し、使用者に通知する(S15)。
【0057】
ピストン102が前進運動をしているときの推力Fは正の値であり、ピストン102が後進運動をしているときの推力Fは負の値であるため、マイクロコンピュータ201は、推力Fが正の値であるのか、負の値であるのかに基づいて、ピストンが前進運動をしているのか、後進運動をしているのか判断することができ、動作タクトの速度に関わらず正確にピストン102の動作を監視することが可能である。
【0058】
また、マイクロコンピュータ201は、差動増幅回路205から逐次入力される推力Fに対して時間微分値dFを算出し、微分値dFの正方向または負方向の急激な変化を捉えることで、ピストン102が運動を開始したのか、または運動を停止したのかを判定を行う。従来技術のように第1圧力作用室の第1圧力値P1の微分値と、第2圧力作用室の第2圧力値の微分値と、の双方を並行して情報処理をする必要がないため、マイクロコンピュータ201の情報処理に遅延が生じるおそれが解消される。
【0059】
以上説明したように、本実施形態のアクチュエータの動作検出装置20によれば、
(1)複動型シリンダ101を有するアクチュエータ10であって、複動型シリンダ101内の空間が、複動型シリンダ101内に摺動可能に保持されるピストン102により、第1圧力作用室103と、第2圧力作用室104とに区画され、ピストン102の第2圧力作用室側端面102bにロッド105が連結されているアクチュエータ10の、ピストン102の動作状態を監視するアクチュエータの動作検出装置20において、第1圧力作用室103の圧力を検出する第1圧力検出器202を備えること、第2圧力作用室104の圧力を検出する第2圧力検出器203を備えること、第1圧力検出器202が検出した圧力と、第2圧力検出器203が検出した圧力と、ピストン102の受圧面積と、に基づき、ピストン102に作用する推力Fを算出する差動増幅回路205を備えること、推力Fに基づいて、ピストン102の動作状態を確認するマイクロコンピュータ201を備えること、を特徴とするので、第1圧力検出器202および第2圧力検出器203が、それぞれ第1圧力作用室103の圧力および第2圧力作用室104の圧力を検出し、差動増幅回路205が、第1圧力作用室103の圧力、第2圧力作用室104の圧力およびピストン102の受圧面積にもとづいて、ピストン102に作用する推力Fを算出する。そして、算出された推力Fに基づいて、マイクロコンピュータ201がピストン102の動作状態を確認することができる。ピストン102前進運動時はピストン102の第1圧力作用室側端面102aに作用する力が、第2圧力作用室側端面102bに作用する力より大きく、ピストン102後進運動時は第2圧力作用室側端面102bに作用する力が第1圧力作用室側端面102aに作用する力より大きいという関係がある。当該関係は、動作タクトの速度によっては変わることがないため、ピストン102に作用する推力Fが算出されることで、ピストン102の前進運動をしているのか、後進運動をしているのかが明確となり、正確なピストン102動作の監視をすることが可能である。
【0060】
(2)(1)に記載のアクチュエータの動作検出装置20において、差動増幅回路205は、ピストン102の第2圧力作用室側端面102bの受圧面積が、ピストン102の第1圧力作用室側端面102aの受圧面積よりも、ロッド105の外径サイズ分だけ小さいことを考慮し、推力Fを算出すること、マイクロコンピュータ201は、推力Fの符号に基づいて、ピストン102の動作状態を確認すること、を特徴とするので、ピストン102の第2圧力作用室側端面102bにはロッド105が接続されているため、受圧面積が、ピストン102の第1圧力作用室側端面102aの受圧面積よりも、ロッド105の外径サイズ分だけ小さくなることを考慮し、推力Fが算出されることとなる。
ここで、推力Fとは、第1圧力作用室103の第1圧力値から、第2圧力作用室104の第2圧力値に受圧面積比率を乗じて得た値を減じて求められる値をいう。
受圧面積比率とは、ピストン102の第1圧力作用室側端面102aの受圧面積に対する第2圧力作用室側端面102bの受圧面積の比率であり、例えば、複動型シリンダ101の径が25mm、ロッド105の径が12mmである場合、ピストン102の第2圧力作用室側端面102bの受圧面積の、第1圧力作用室側端面102aの受圧面積に対する比率は、約0.75となる。つまり、第1圧力値から、第2圧力値に0.75を乗じた値を減じた値がピストンに作用する推力Fとなる。
【0061】
圧力によってピストン102の往復運動を監視すると、スピードコントローラ14により排気量を制御された状態でピストン102が前進運動を行う際、ピストン102の第2圧力作用室側端面102bの受圧面積が、ロッド105が接続されている分小さいため、第2圧力作用室104の第2圧力値が、第1圧力作用室103の第1圧力値よりも高い状態であっても、ピストン102の第1圧力作用室側端面102aに作用する力よりも、第2圧力作用室側端面102bに作用する力が低くなり、前進運動が可能となる。したがって、第1圧力と第2圧力の大小関係よっては、ピストン102の往復運動を正確に監視することができないケースが生じるが、受圧面積を考慮し、ピストン102に作用する推力Fを求めることで、ピストン102が前進運動を行っているときは常に推力Fが正の値であり、ピストン102が後進運動を行っているときは常に推力Fが負の値となる。
【0062】
そして、マイクロコンピュータ201は、推力Fの符号によってピストン102の動作状態を確認することができるので、推力Fが正の値であるのか、負の値であるのかに基づいて、マイクロコンピュータ201が、ピストン102が前進運動をしているのか、後進運動をしているのか判定することができる。従って、ピストン102が前進運動をしているのか、後進運動をしているのか、明確となるため、正確にピストン102の動作を監視することが可能である。
【0063】
(3)(1)または(2)に記載のアクチュエータの動作検出装置20において、マイクロコンピュータ201は、推力Fの変化率に基づいて、ピストン102の動作状態を確認すること、を特徴とするので、マイクロコンピュータ201は、推力Fの変化率のみに基づき情報処理を行えばよく、従来技術のように第1圧力作用室103の第1圧力値の変化率と、第2圧力作用室104の第2圧力値の変化率と、の双方を並行して情報処理をする必要がないため、アクチュエータの動作検出装置20に内蔵されるマイクロコンピュータ201の情報処理に遅延が生じるおそれが解消される。
【0064】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のアクチュエータの動作検出装置20において、マイクロコンピュータ201は、ピストン102が運動を開始したのか、または運動を停止したのかを判定し、かつ、ピストン102が複動型シリンダ101の第1圧力作用室側端面101aに向かって運動しているのか、または複動型シリンダ101の第2圧力作用室側端面101bに向かって運動しているのかを判定を行うこと、を特徴とするので、アクチュエータの動作検出装置20が表示部206を備えることで、マイクロコンピュータ201が判定した情報を表示部206に表示でき、使用者はアクチュエータ10の正確な動作状況を把握することができるため、給気する流体の圧力や、スピードコントローラ14等の調整をしながら、使用者の希望する動作タクトを設定するということが容易に行える。
【0065】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、本実施形態ではスピードコントローラ14により排気量を制限した状態を説明しているが、スピードコントローラにより給気量を制御した状態でも本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0066】
10 アクチュエータ
20 アクチュエータの動作検出装置
101 複動型シリンダ
102 ピストン
103 第1圧力作用室
104 第2圧力作用室
105 ロッド
201 マイクロコンピュータ
202 第1圧力検出器
203 第2圧力検出器
204 分圧器
205 差動増幅回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7