(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】水晶発振回路
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
H03B5/32 J
(21)【出願番号】P 2018216059
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-09-17
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502208205
【氏名又は名称】アクシス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリック フロベルグ
【審査官】橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-317624(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0070897(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力と、出力とを有する反転増幅器と、
前記反転増幅器の前記入力に接続される第1の端子と、前記反転増幅器の前記出力に接続される第2の端子とを有する帰還抵抗と、
第1の端子と、第2の端子とを有する水晶と、
前記水晶の前記第1の端子と、信号グランド(Gnd)との間に接続された第1の負荷コンデンサ(C1)と、
前記水晶の前記第2の端子と、前記信号グランド(Gnd)との間に接続された第2の負荷コンデンサ(C2)と、
前記帰還抵抗の前記第2の端子と、前記水晶の前記第2の端子との間に接続された第3のコンデンサとを備える水晶発振回路において、
前記第3のコンデンサのキャパシタンスCdは、下記の式に従って選択され、
【数1】
ここで、CLは、前記第1および第2の負荷コンデンサの等価キャパシタンスであり、kは、減衰係数であり、前記反転増幅器(410)への電源電圧は、前記水晶の前記第2の端子で、前記減衰係数kで減衰されて、前記水晶の駆動レベルに整合し、
ここで、前記反転増幅器がバッファ付きインバータであり、前記反転増幅器からの出力電圧が方形波である場合、要求される減衰係数を
【数2】
とする
ことを特徴とする水晶発振回路。
【請求項2】
前記駆動レベルは、2倍以上軽減される請求項1に記載の水晶発振回路。
【請求項3】
入力と、出力とを有する反転増幅器と、
前記反転増幅器の前記入力に接続される第1の端子と、前記反転増幅器の前記出力に接続される第2の端子とを有する帰還抵抗と、
第1の端子と、第2の端子とを有する水晶と、
前記水晶の前記第1の端子と、信号グランド(Gnd)との間に接続された第1の負荷コンデンサ(C1)と、
前記水晶の前記第2の端子と、前記信号グランド(Gnd)との間に接続された第2の負荷コンデンサ(C2)と、
前記帰還抵抗の前記第2の端子と、前記水晶の前記第2の端子との間に接続された第3のコンデンサとを備える水晶発振回路において、
前記第3のコンデンサのキャパシタンスCdは、下記の式に従って選択され、
【数3】
ここで、CLは、前記第1および第2の負荷コンデンサの等価キャパシタンスであり、kは、減衰係数であり、前記反転増幅器(410)への電源電圧は、前記水晶の前記第2の端子で、前記減衰係数kで減衰されて、前記水晶の駆動レベルに整合し、
ここで、前記反転増幅器からの出力電圧が正弦波である場合、要求される減衰係数を
【数4】
とする
ことを特徴とする水晶発振回路。
【請求項4】
前記水晶のシャントキャパシタンスは、1pFより大きい請求項1に記載の水晶発振回路。
【請求項5】
前記水晶の前記駆動レベルは、400uWを下回る請求項1に記載の水晶発振回路。
【請求項6】
前記反転増幅器への電源電圧は、1.5Vより大きい請求項1に記載の水晶発振回路。
【請求項7】
請求項1に記載の水晶発振回路を備える電子デバイス。
【請求項8】
送信機、受信機、トランシーバ、周波数シンセサイザ、無線通信デバイス、無線データ取得デバイス、監視カメラ又はネットワークビデオレコーダ
を含むカメラ、ホームオートメーションデバイス、データロガー、ビデオエンコーダ、物理アクセスコントローラ、又は、ドアステーションの何れかを備える請求項7に記載の電子デバイス。
【請求項9】
反転増幅器の電源電圧を、水晶発振回路の水晶の駆動レベルに整合させる方法であって、前記水晶発振回路は、
入力と、出力とを有する反転増幅器と、
前記反転増幅器の前記入力に接続された第1の端子と、前記反転増幅器の前記出力に接続された第2の端子とを有する帰還抵抗と、
第1の端子と、第2の端子とを有する水晶と、
前記水晶の前記第1の端子と、信号グランドとの間に接続された第1の負荷コンデンサ(C1)と、
前記水晶の前記第2の端子と、前記信号グランドとの間に接続された第2の負荷コンデンサ(C2)を備え、前記方法は、
前記帰還抵抗の前記第2の端子と、前記水晶の前記第2の端子との間に第3のコンデンサを接続することと、
下記の式に従って、前記第3のコンデンサのキャパシタンスCdを選択することとを備え、
【数5】
ここで、CLは、前記第1および第2の負荷コンデンサの等価キャパシタンスであり、kは、減衰係数であり、前記反転増幅器への前記電源電圧は、前記水晶の前記第2の端子で、前記減衰係数kで減衰され、前記水晶の前記駆動レベルに整合し、
ここで、前記反転増幅器がバッファ付きインバータであり、前記反転増幅器からの出力電圧が方形波である場合、要求される減衰係数を
【数6】
とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、水晶発振回路に関する。特に、本明細書の実施形態は、増幅器の電源電圧を、水晶発振回路の水晶の駆動レベルに整合させること、及び、水晶発振回路を備える電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
水晶発振回路は、増幅器、又は利得素子と、水晶を有するフィードバックネットワークからなる。歴史的に、これら2つのビルディングブロックは両方とも、周波数制御製品を専門とする企業によって設計、及び製造されている。しかし、別々の企業が水晶と増幅器を設計して製造するにつれて、パラダイムは変化した。これにより、増幅器、又は利得素子を水晶と整合させることに問題が生じている。
【0003】
良好に機能する水晶振動子を有するための重要な要素は、増幅器の電源電圧が水晶の駆動レベルに少なくともほぼ整合しなければならないことであり、さもなければ、水晶は、目標周波数を達成することに問題を有し、加速エージングを経験する。先行技術では、電源電圧を水晶の駆動レベルと整合させるために説明された異なる解決策があり、しばしばサプライヤーによって推奨される解決策は、減衰抵抗を追加した、いわゆるピアス発振回路を使用することである。減衰抵抗は、実際に、水晶の電源電圧を減衰させる。しかし、水晶の振動能力にも影響する。つまり、発振マージンが減少し、場合によっては、水晶が全く発振しないことを意味する。
【発明の概要】
【0004】
上記に照らして、本明細書の実施形態の目的は、水晶発振回路内の水晶の駆動レベルと電源電圧とを整合させる技術を提供することである。
【0005】
本明細書の実施形態の1つの態様によれば、本目的は、水晶発振回路によって達成される。水晶発振回路は、入力と出力とを有する反転増幅器、及び、反転増幅器の入力に接続された第1の端子と、反転増幅器の出力に接続された第2の端子とを有する帰還抵抗を備える。
【0006】
水晶発振回路は、更に、第1の端子と第2の端子とを有する水晶;水晶の第1の端子と、信号グランドとの間に接続された第1の負荷コンデンサ;及び、水晶の第2の端子と、信号グランドとの間に接続された第2の負荷コンデンサを備える。
【0007】
水晶発振回路は、更に、帰還抵抗の第2の端子と、水晶の第2の端子との間に接続された第3のコンデンサを備える。第3のコンデンサのキャパシタンス、Cdは、下記式に従って選択される。
【0008】
【0009】
ここで、CLは、第1および第2の負荷コンデンサの等価キャパシタンスであり、kは、減衰係数である。このようにして、反転増幅器への電源電圧は、水晶の第2の端子で、減衰係数kで減衰され、水晶の駆動レベルに整合する。
【0010】
本明細書の実施形態の1つの態様によれば、目的は、反転増幅器への電源電圧を、水晶の駆動レベルに整合させるための上述の水晶発振回路の使用によって達成される。
【0011】
本明細書の実施形態の1つの態様によれば、目的は、反転増幅器の電源電圧を、水晶発振回路の水晶の駆動レベルに整合させる方法によって達成される。水晶発振回路は、入力と出力とを有する反転増幅器と、反転増幅器の入力に接続された第1の端子と、反転増幅器の出力に接続された第2の端子とを有する帰還抵抗とを備える。水晶発振回路は、第1の端子と第2の端子とを有する水晶;水晶の第1の端子と、信号グランドとの間に接続された第1の負荷コンデンサと;水晶の第2の端子と、信号グランドとの間に接続された第2の負荷コンデンサとを備える。当該方法は、帰還抵抗の第2の端子と、水晶の第2の端子との間に第3のコンデンサを接続することと、第3のコンデンサのキャパシタンスCdを、下記式に従って選択することを含む。
【0012】
【0013】
ここで、CLは、第1および第2の負荷コンデンサの等価キャパシタンスであり、kは、減衰係数である。このようにして、反転増幅器への電源電圧は、水晶の第2の端子で、減衰係数kで減衰され、水晶の駆動レベルに整合する。
【0014】
電源電圧を、水晶発振回路内の水晶の駆動レベルに整合させる技術は、コンデンサCdを更に含むピアス発振回路に基づいている。コンデンサCdは、負荷コンデンサと共に、容量分圧器として作用し、コンデンサのキャパシタンスは、水晶発振マージンに影響を与えることなく、水晶振動子の駆動レベルに整合するように、電源電圧を低下させるように選択することができる。
【0015】
本明細書の実施形態による水晶発振回路は、水晶の駆動レベルを2倍以上減少させる必要がある場合、特に、有用である。すなわち、ミスマッチは、かなり大きく、従来技術に記載されている代替の方法を使用して大きな抵抗が必要となることを意味する。
本明細書の実施形態によるマッチング方法は、以下の状況に特に適しているが、これに限定されない:
●物理的に小さな水晶を有し、低駆動レベルが必要な発振回路、通常<400uW;
●高い電源電圧を有する発振回路、例えば、1.5Vより大きい;
●高電圧利得の反転増幅器を使用する発振回路、例えば、レールからレールへスイングする方形波出力電圧を有するバッファ付きインバータ;
●水晶の負荷キャパシタンスCLを小さくすると、許容できない周波数引き込み感度が生じる発振回路;
●減衰抵抗を追加すると、発振マージンが大幅に減少する発振回路、例えば、水晶のシャントキャパシタンスが高い場合、典型的には1pFより大きい;
●反転増幅器の相互コンダクタンスが未知であるため、発振マージンを減少させる追加の抵抗減衰を導入することは望ましくない発振回路;
●減衰抵抗を追加するだけでは、駆動レベルの低減にはほとんど影響を与えない、即ち、要求される制動抵抗が高すぎる発振回路。
【0016】
本明細書の実施形態は、電源電圧と、水晶発振回路内の水晶の駆動レベルとを整合させる技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
実施形態の例は、添付の図面を参照してより詳細に説明される:
【0018】
【
図1】先行技術によるピアス発振回路を示す概略ブロック図である。
【
図3】水晶発振回路の負性抵抗モデルを示す概略ブロック図である
【
図4】本明細書の実施形態による発振回路を示す概略ブロック図である
【
図5】水晶の駆動レベルを整合させる方法のフローチャートである
【
図6】本明細書の実施形態による発振回路が実装される電子デバイスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書の実施形態を開発する一部として、先行技術による減衰抵抗を備えたピアス発振回路の、機能、原理およびいくつかの問題が最初に議論され、特定される。
【0020】
図1は、ピアス発振回路100の簡略化した概略図を示す。ピアス発振回路100は、水晶Q、帰還抵抗Rf、インバータ、又は反転増幅器Inv、第1および第2の負荷コンデンサC1及びC2、及び、減衰抵抗Rdを備え、VDDは、反転増幅器Invの電源電圧であり、gmは、単位mA/Vの反転増幅器Invのトランスコンダクタンス利得である。
【0021】
帰還抵抗Rfは、VDD/2に近い反転増幅器Invのトランジスタの線形領域にバイアス点を提供する。Rfの標準値は、約1MΩである。Rfは、発振回路に埋め込まれていてもよい。帰還抵抗Rfは、インバータInvを、論理ゲートでアナログ増幅器に変換する。
【0022】
負荷コンデンサC1及びC2の値は、その直列コンビネーションが、CLと等しくなるように選択される。典型的には、C1及びC2は、浮遊容量CSを考慮するために、2CLよりわずかに小さく選択される。コンデンサのタイプは、温度係数が低く、公差が小さい必要があり、例えば、5%である。
【0023】
【0024】
【0025】
Csは、主に、インバータの入力、及び出力パッドキャパシタンスからの合計浮遊容量である。
【0026】
ピアス発振回路100の望ましい特性は、浮遊容量Cs1及びCs2の影響が、水晶容量C0の両端ではなく、C1及びC2の両端にそれぞれ現れることである。
【0027】
図2は、水晶の等価回路を示す。成分Lm、Cm及びRmは、運動アームと呼ばれ、水晶の機械的挙動を表す。水晶のインピーダンスは、Rmを無視すると、下記の式のようになる。
【0028】
【0029】
図3は、最大発振マージンを達成するために、CLとC0対gmを最適化するために使用される水晶発振回路の負性抵抗モデルを示している。負性抵抗モデルにおける発振条件は、下記の通りである:
-RNEG=RM、即ち、負の抵抗の絶対値は、運動アームの抵抗に等しい;
-XOSC=XM、即ち、反応性部分、即ち、アクティブ発振器ネットワークの容量部及び、運動アームの反応性部分はキャンセルされなければならない。
与えられたgmに対する発振マージンは、抵抗RSで表すことができ、以下の式のように表すことができる。
【0030】
【0031】
ここで、Reは、任意の負荷キャパシタンスCLにおける水晶の実効抵抗であり、CLは、下記の式のように定義することができる。
【0032】
【0033】
始動時の運動抵抗Rmは、5Rmまでとすることができるので、実効抵抗Reも、5Reまでとすることができる。水晶発振回路の発振マージンを確認する場合、水晶と直列に抵抗を追加し、発振が停止するかを確認することができる。したがって、RSは、発振が停止する前に水晶と直列に追加できる最大の抵抗に対応する。
【0034】
負の抵抗、即ち、ループ周りの利得は、gm、C1、C2及びC0の関数である。RNEG_minは、gm_min又はgm_maxのいずれかで発生する。C1、C2及びC0は、アクティブネットワークの一部である。
以下の式から分かるように、C0が増加するにつれて、負の抵抗の達成可能な最大絶対値は低下する:
【0035】
【0036】
水晶の駆動レベルは、以下の式を使用して、決定することができる:
【0037】
【0038】
任意の負荷キャパシタンスにおける水晶の実効抵抗は、下記の式の通りであり,
【0039】
【0040】
ここで、Rmは、水晶の抵抗であり、Iは、水晶を通る電流であり、下記の式のように定義することができる。
【0041】
【0042】
【0043】
ここで、Vは、C1の両端の電圧のAC成分の二乗平均平方根(RMS)値である。
共振時には、運動アームのリアクタンス部分が誘導性となり、CL+C0と並列共振する。水晶を通る電流Iは、下記の式のように表すことができる。
【0044】
【0045】
ここで、Vpは、水晶の両端のピーク電圧であり、下記の式を与える。
【0046】
【0047】
バッファ無しのインバータは、数百の範囲の電圧利得を有する。バッファ付きインバータは、数千の範囲の電圧利得を有する。
【0048】
水晶が消費する電力を概算すると、反転増幅器の出力における電圧XOUTが方形波である場合、即ち、VDDに近いピークとピークの間の電圧の振れを持つ、レールからレールへスイングする出力電圧を備えたバッファ付きインバータである場合、水晶の両端に下記の式で表されるピーク電圧を有する正弦波がおおよそ存在すると推定される。
【0049】
【0050】
バッファ無しのインバータ、又は、振幅制限制御を備えたオシレーターの場合、又は、測定値が利用可能な場合、駆動レベルを計算する際は、水晶の両端で得られる最大電圧振幅を使用する必要がある。水晶が消費する電力の概算のために、反転増幅器の出力における電圧XOUTが正弦波である場合、水晶の両端には、下記の式で表すピーク電圧を有する正弦波が存在するとみなすことができる。
【0051】
【0052】
式(4)から分かるように、駆動レベルを低下させるために、Re、CL及び/又はVpを減少させてもよい。Rmは、水晶のサイズで与えられる。水晶が大きければ、Rmが小さくなるが、C0も高くなる。より低いCLは、駆動レベルを減少させるが、引き込み感度、即ち、負荷容量変化当たりの周波数変化をより高くする。水晶発振回路のアクティブネットワークが提供できる負の抵抗RNEGを最大にするためには、CLを選択する必要がある。
【0053】
したがって、駆動レベルを低減させるために、Vpを低減する必要がある。Vpを低減させる1つの方法は、VDDを下げることである。先行技術においてしばしば示唆されている1つの方法は、下記式の値を有する直列減衰抵抗Rdを追加することである。
【0054】
【0055】
XOUTでVDDに等しいピークとピークの間の電圧の振れを持つ方形波は、VDDの90%、即ち、下記の式に等しいピークとピークの間の電圧の振れを持つ正弦波として、減衰抵抗Rdの反対側に現れる。
【0056】
【0057】
しかしながら、式(2)から分かるように、減衰抵抗Rdは、発振マージンを直接減少させる。
【0058】
上記の問題を解決するために、本明細書の実施形態によるキャパシタンスCdを有する減衰コンデンサを追加することにより、駆動レベルを低減することができる。このようにして、C2と減衰コンデンサは、容量分圧器を構成し、容量分圧器は、Vp=k・Vddで表されるVpを直接、減少させ、ここで、下記式は、減衰係数を表す。
【数19】
【0059】
減衰なしの駆動レベルがP1で、目標駆動レベルがPtとすると、以下の式のようになる。
【数20】
【0060】
減衰コンデンサのキャパシタンスは、下記の式で与えられる。
【0061】
【0062】
図4は、本明細書の実施形態による水晶発振回路400を示す。水晶発振回路400は、入力411と出力412を有する反転増幅器410;反転増幅器410の入力に接続された第1の端子421と、反転増幅器410の出力に接続された第2の端子422とを有する帰還抵抗420と;第1の端子431と、第2の端子432を有する水晶430と;水晶430の第1の端子431と信号グランドGndとの間に接続された第1の負荷コンデンサC1と;水晶430の第2の端子432と信号グランドGndとの間に接続された第2の負荷コンデンサC2と;帰還抵抗420の第2の端子422と、水晶430の第2の端子432との間に接続された第3のコンデンサ440を有する。
【0063】
第3のコンデンサ440のキャパシタンスCdは、下記式に従って選択され、
【数22】
【0064】
CLは、第1および第2の負荷コンデンサの等価キャパシタンスであり、kは減衰係数であり、反転増幅器410への電源電圧は、水晶430の第2の端子432で、減衰係数kで減衰され、水晶430の駆動レベルに整合する。駆動レベルは、通常、製品仕様書に示されており、発振回路が動作している間の水晶による消費電力が示されている。水晶が駆動レベル仕様内に収まることが重要である。水晶による消費電力が、水晶の仕様で指定された駆動レベルを超えないように、水晶の電源電圧は、適切なレベルにある必要がある。
【0065】
図5は、水晶発振回路400内の水晶の駆動レベルに、反転増幅器の電源電圧を整合させる方法のフローチャートを示す。該方法は、帰還抵抗の第2の端子と、水晶の第2の端子との間に第3のコンデンサを接続すること(501)を備える。
【0066】
該方法は、更に、下記の式に従って、第3のコンデンサのキャパシタンスCdを選択すること(502)を備え、
【数23】
【0067】
ここで、CLは、第1および第2の負荷コンデンサの等価キャパシタンスであり、kは、減衰係数であり、水晶の駆動レベルに整合させるために、反転増幅器への電源電圧は、水晶の第2の端子で、減衰係数kで減衰される。
【0068】
本明細書の実施形態による減衰コンデンサを追加することの利点を図示するために、いくつかの異なる水晶が調査される。典型的には、これら水晶の最大駆動レベルは、製造業者によって、200から300uWで規定される。データシートによれば、異なる水晶の最大シャントキャパシタンスC0_maxは、1から3pFの範囲で指定されている。標準的なシャントキャパシタンスC0_typは、0.5から1pFの範囲である。一例を以下に示す。
例1:VDD=3.3V、f=24MHz、CL=10pF、C0_typ=0.57pF、C0_max=1.0pF、Rm_max=80Ω
水晶の実効抵抗を式(3)に従って計算することができる:
【数24】
そして、式(4)による駆動レベル:
【数25】
【0069】
水晶の駆動レベルが高すぎるため、駆動レベルを低減させる必要があることがわかる。この問題は、主に、高い電源電圧に起因する。
負荷キャパシタンスが減少した場合、即ち、CL=8pFの場合、駆動レベルは下記のようになる:
【数26】
【0070】
CLが減少したため、この水晶の駆動レベルは、今は低いが、駆動レベルはまだ高すぎるため、更に低くする必要がある。
【0071】
目標駆動レベルを、Pt=280uW、及び下記の式とすると、
【数27】
【0072】
ここで、kは、要求される電圧減衰係数である。
減衰コンデンサは、下記の式のようになる。
【数28】
【0073】
例2:VDD=1.8V、f=50MHz、CL=8pF、C0_typ=1pF、C0_max=3pF、Rm_max=50Ω
水晶の実効抵抗を式(3)に従って計算することができる:
【数29】
式(4)に従った駆動レベル:
【数30】
【0074】
水晶の駆動レベルが高すぎるため、駆動レベルを低減する必要があることが分かる。この問題は主に、高い電源電圧に起因する。
【0075】
目標駆動レベルを、Pt=180uW、Pt=k2・p1とすると、kは、要求される電圧減衰係数である。
減衰コンデンサは、下記の式のように表される。
【数31】
【0076】
上記の例の水晶発振回路のために、幾つかの測定が行われてきており、測定された駆動レベルは、推定駆動レベルに近く、負の抵抗は維持されている。
【0077】
本明細書の実施形態による反転増幅器の電源電圧を、水晶の駆動レベルに整合させる方法は、不整合がかなり大きい場合、特に有用である。反転増幅器の電源電圧と、水晶の駆動レベルとの大きな不整合は、先行技術の解決策によれば、大きな抵抗が必要となることを意味し、発振マージンも大幅に減少する。例えば、駆動レベルを2倍以上減少させる必要がある場合、即ち、p1>2・Ptの場合、減衰なしの駆動レベルは、P1であり、目標駆動レベルがPtである。
【0078】
水晶の周波数精度、及び加速エージングの問題を回避するために、推定消費電力PXは、水晶のデータシートで規定されている最大駆動レベルDLより小さくなければならない。
下記の式を目指している。
【数32】
【0079】
上記の式から、下記の式のようになる。
【0080】
【0081】
方形波出力を有するインバータ、即ち、高電圧利得を有するバッファ付きインバータ、例えば、1000xに関して、下記の式の場合、該方法は、特に有用である。
【数34】
【0082】
正弦波出力を有するインバータ、即ち、低電圧利得を有するバッファ無しのインバータ、例えば、100xに関して、該方法は、下記の式の場合、特に有用である。
【0083】
【0084】
本明細書のいくつかの実施形態によれば、反転増幅器がバッファ付きインバータであり、反転増幅器からの出力電圧が方形波である場合、典型的な減衰係数は、下記の式のようであってもよい。
【数36】
【0085】
反転増幅器からの出力電圧が、正弦波の場合、典型的な減衰係数は、下記の式のようであってもよい。
【数37】
【0086】
いくつかの先行技術では、減衰コンデンサCdと同じ場所に接続されたコンデンサが存在するが、コンデンサは異なる機能を有する。例えば、CN104052465の
図5では、コンデンサCSは、位相補償のためのものであり、ゼロ位相シフトを満たす。「HCMOS水晶発振器」(フェアチャイルドセミコンダクター社、アプリケーションノート340、1983年5月)において、発振器が、高周波で動作しているとき、例えば、4MHzより上のとき、R2の追加の位相シフトを避けるために、減衰抵抗R2を小さなコンデンサに変更する必要があることが示唆されている。このコンデンサの値は、約1/ωCだが、約20pF以上である。
【0087】
したがって、先行技術と比較して、本明細書の実施形態による減衰コンデンサの機能及び目的には大きな差がある。
【0088】
要約すると、電源電圧を、本明細書の実施形態による水晶発振回路内の水晶の駆動レベルに整合させる技術は、ピアス発振回路に基づいており、ピアス発振回路は、更に、減衰コンデンサCdを備える。コンデンサCdは、負荷コンデンサとともに、容量分圧器として機能し、水晶発振回路の発振マージンに影響を与えることなく、水晶振動子の駆動レベルを整合させるために、コンデンサのキャパシタンスは、電源電圧を低下させるように選択されてもよい。
【0089】
水晶の駆動レベルを2倍以上低減する必要がある場合、本明細書の実施形態による水晶発振回路は、特に有用である。すなわち、不整合がかなり大きく、先行技術に記載された減衰抵抗を使用することにより、大きな抵抗が必要とされ、その結果、位相シフトが大きくなり、発振マージンが低下し、発振を開始しないことが暗示されている。
本明細書の実施形態によるマッチング方法は、以下の状況に特に適しているが、これに限定されない:
●低駆動レベルが必要な、物理的に小さな水晶を有する発振回路、通常<400uW;
●高い電源電圧を有する発振回路、例えば、1.5Vより大きい;
●高電圧利得を有する反転増幅器を使用した発振回路、例えば、レールからレールへスイングする方形波出力電圧を備えたバッファ付きインバータ;
●水晶の負荷キャパシタンスCLを小さくすると、周波数引き込み感度が許容不可能になる発振回路;
●減衰抵抗を追加すると、発振マージンが大幅に減少する、例えば、水晶のシャントキャパシタンスが高い場合、通常1pFより大きい発振回路。これは、発振マージンが小さく、抵抗分圧器を追加すると、水晶の発振が影響を受けるためである;
●反転増幅器の相互コンダクタンスが未知であるため、発振マージンを減少させる追加の抵抗減衰を導入することは望ましくない発振回路;
●減衰抵抗を追加することは、駆動レベルを低減することにわずかな影響しかおよぼさない、即ち、要求される制動抵抗が高すぎる発振回路。
【0090】
本明細書の実施形態による水晶の駆動レベルを、反転増幅器の電源電圧に整合させる水晶発振回路400、及び方法は、クロック信号が必要とされる任意の電子デバイスに適している。
図6は、本明細書の実施形態による水晶発振回路400が実装され得る電子デバイス600を示す。電子デバイス600は、情報記憶、及び信号処理のための処理ユニット620、データを記憶するためのメモリ640、構成、プログラムコードなどを更に備えていてもよい。電子デバイス600は、送信機、受信機、トランシーバ、周波数シンセサイザ、無線通信デバイス、無線データ取得デバイス、監視カメラ、又はネットワークビデオレコーダなどのカメラ、ホームオートメーションデバイス、データロガー、ビデオエンコーダ、物理アクセスコントローラ、又はドアステーションの何れかであってよい。
【0091】
「備える(comprise)」又は「備える(comprising)」という用語を使用する場合、非限定的なものとして解釈されるべきであり、即ち、「少なくとも~からなる」を意味する。
【0092】
本明細書の実施形態は、上述の好ましい実施形態に限定されない。様々な代替、変更、及び、均等物を使用することができる。したがって、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。