(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】制御部およびモバイル制御モジュールから成る装置
(51)【国際特許分類】
B66C 13/40 20060101AFI20220113BHJP
B66C 23/90 20060101ALI20220113BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20220113BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B66C13/40 D
B66C23/90 M
B66F11/04
B66F9/24 Z
(21)【出願番号】P 2018538919
(86)(22)【出願日】2016-10-14
(86)【国際出願番号】 AT2016060077
(87)【国際公開番号】W WO2017063014
(87)【国際公開日】2017-04-20
【審査請求日】2018-06-12
(32)【優先日】2015-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】518129329
【氏名又は名称】パルフィンガー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】PALFINGER AG
【住所又は居所原語表記】Lamprechtshausener Bundesstrasse 8, 5101 Bergheim bei Salzburg, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ハンゲーブル
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-278789(JP,A)
【文献】特開平08-127490(JP,A)
【文献】特開2014-174020(JP,A)
【文献】特開平03-073795(JP,A)
【文献】特表2013-523558(JP,A)
【文献】特表2005-514997(JP,A)
【文献】国際公開第90/007465(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/036894(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/40
B66C 23/90
B66F 11/04
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロリックリフティング装置に配置されたまたは配置されるべき制御部(1)と、前記制御部(1)を遠隔操作することができるモバイル制御モジュール(2)と、から成る装置であって、
前記制御部(1)には、信号入力部(6,7)を介してセンサデータを供給することができ、前記制御部(1)のプロセッサ(8)は、前記センサデータから、および、格納されている前記リフティング装置に特有のデータから、現在の吊り荷状況に固有の、および/または、場合によっては所与の現在の吊り荷状況での、前記リフティング装置における作業プロセスの許容性に固有の情報を算出するように構成されている、装置において、
前記制御部(1)は所定のモードを有しており、前記モード中に、前記制御部(1)は、前記モバイル制御モジュール(2)に、送信および受信モジュール(4)を介して、前記現在の吊り荷状況に固有の、および/または、場合によっては所与の現在の吊り荷状況での前記リフティング装置における作業プロセスの前記許容性に固有の情報を、無線式(10)および/または有線式(11)に、前記モバイル制御モジュール(2)の送信および受信ユニット(5)に伝送し、前記モバイル制御モジュール(2)のプロセッサ(9)が、前記情報から、表示ユニット(3)を介してユーザに表示することができる表示用のグラフィックデータを算出し、
前記表示は、前記リフティング装置に関する現在の過負荷値および/またはオフ値についての情報を、多角形チェイン(K)として含んでいる、
ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記モバイル制御モジュール(2)は、ユーザによって操作することができる、前記算出および/または前記表示をアクティブ化するためのアクティブ化手段(28)を有している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記モバイル制御モジュール(2)はエネルギ蓄積部(29)を有しており、前記算出および/または前記表示を、前記エネルギ蓄積部(29)の最小充電状態においてのみ行うことができる、請求項1または2
に記載の装置。
【請求項4】
前記固有の情報が増分的に伝送される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記制御部(1)は別のモードを有しており、前記別のモード中に、前記制御部(1)は前記センサデータの変化率に依存して、前記固有の情報を伝送する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記センサデータが緩慢に変化する場合、前記固有の情報の伝送を低減されたデータレートで行う、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記固有の情報の伝送の前に、前記制御部(1)においてデータ圧縮を行う、請求項1から6までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記固有の情報の伝送を、前記リフティング装置の支持状況および/または前記リフティング装置の重心の位置が変化した際にのみ行う、請求項1から7までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記リフティング装置の前記支持状況および/または前記重心の位置の変化は、前記リフティング装置によって引き上げられたペイロードの大きさまたは位置の変化によって、および/または、前記リフティング装置に配置することができるバラストウェイト(30)の大きさまたは位置の変化によって行われる、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記表示が、デカルト座標または極座標を有する座標系における前記リフティング装置の現在の負荷の表示を含む、請求項1から9までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記表示は、座標系において点(P)、線(L)または他の幾何学形状として、前記リフティング装置の現在の負荷
の表示を含み、前記点(P)、前記線(L)または前記他の幾何学形状は、前記リフティング装置の現在の負荷に対応する色またはグレースケールを有している、請求項1から10までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記表示に使用される前記固有の情報の前記無線式の伝送を、並行して存在する固有の第2の伝送チャネルを介して行う、請求項1から
11までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記伝送チャネルは暗号化されている、請求項
12に記載の装置。
【請求項14】
請求項1から
13までのいずれか1項に記載の装置を備えた、ハイドロリックリフティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の特徴を備えている、ハイドロリックリフティング装置に配置されたまたは配置されるべき制御部およびモバイル制御モジュールから成る装置と、その種の装置を備えたハイドロリックリフティング装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の吊り荷状況の算出は、リフティング装置の現在のジオメトリおよびリフティング装置の支持状態に基づいて、据え付けの制御部において行われる。そのようにして算出されたデータから、現在の吊り荷状況に固有の、および/または、所与の現在の吊り荷状況でのリフティング装置における作業プロセスの許容性に固有の情報が求められる。それらの情報は、無線式または有線式にモバイル制御モジュールに伝送される。
【0003】
伝送すべきデータの量は、リアルタイムが要求される基本条件下では、つまり遅延を伴わないデータ伝送では問題になる。遅延が過度に大きい場合、モバイル制御モジュールにおいて表示される状況が、リフティング装置において実際に生じている状況とは異なるものになる可能性がある。例えば、リフティング装置の制御部が運動を既に停止したにもかかわらず、モバイル制御モジュールにおいてはその運動が依然として認められていると表示される可能性がある。
【0004】
モバイル制御モジュールによる制御部の遠隔操作は、セキュリティが重要なプロセスであるので、モバイル制御モジュールにおいては、あらゆる任意の電子ハードウェアを使用することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、モバイル制御モジュールの蓄電池の動作時間が著しく制限されることになる程の高い処理能力を要することなく、リアルタイム動作を保証しながら機能するモバイル制御モジュールと制御部とから成る装置、ならびに、その種の装置を備えたハイドロリックリフティング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を備えた装置、および、その種の装置を備えたハイドロリックリフティング装置によって解決される。本発明の有利な実施の形態は、従属請求項に規定されている。
【0007】
この課題は、本発明によれば、制御部が所定のモードを有しており、このモード中に、制御部が、モバイル制御モジュールに、送信および受信モジュールを介して、現在の吊り荷状況に固有の、および/または、場合によっては所与の現在の吊り荷状況でのリフティング装置における作業プロセスの許容性に固有の情報を、無線式および/または有線式に、モバイル制御モジュールの送信および受信ユニットに伝送し、モバイル制御モジュールのプロセッサが、それらの情報から、表示ユニットを介してユーザに表示することができる表示用のグラフィックデータを算出することによって解決される。
【0008】
モバイル制御部ないしモバイル制御モジュールとは、独立した(場合によっては携帯可能な)操作ユニットであると解され、この操作ユニットでもって、ユーザは、クレーンないしハイドロリックリフティング装置のある程度の範囲の周囲において実質的に自由に移動することができる。もちろん、その種のモバイル制御モジュールと(特に固有の制御部を備えている)クレーンないしハイドロリックリフティング装置との間で、データないし情報を交換することができる。
【0009】
ハイドロリックリフティング装置に配置されたまたは配置されるべき据え付けの制御部においてセンサデータを処理および解釈することによって、高い計算能力を有するプロセッサを利用することができ、その際、プロセッサの電力消費量を見掛け上考慮する必要はない。
【0010】
センサデータは、リフティング装置の一部に、例えばハイドロリックシリンダ、回動ジョイント、屈曲ジョイント、フレーム部またはスライディングアームにそれぞれ配置されている、例えば圧力センサ、ロータリエンコーダ、ひずみゲージ、変位センサまたはスイッチに由来するものであってよい。
【0011】
例えば、リフティング装置の現在の支持状況、負荷、ジオメトリまたは装備も一緒に含めることができるリフティング装置の負荷に固有の情報を、制御部のそのために適した運転モード中に、モバイル制御モジュールに伝送することができる。それらの伝送された情報に基づいて、モバイル制御モジュールにおいては、適切なプロセッサによって、表示用のグラフィックデータを算出することができる。この算出は、例えば、制御モジュールに格納されているシンボルまたはグラフィックのスケーリング、選択および/または作成もしくは算出されたグラフィックデータの、格納されているバックグラウンドグラフィックへの統合を含むことができる。つまり、表示が、実質的にリアルタイムで行われることを達成することができる。表示ユニットは、例えば、液晶ディスプレイを有することができる。
【0012】
現在の吊り荷状況、および/または、場合によっては所与の現在の吊り荷状況でのリフティング装置における作業プロセスの許容性を通知する、算出されたグラフィックデータの表示を、ユーザが容易に理解できるやり方で、モバイル制御モジュールにおいて実現することができる。
【0013】
情報の有線式の伝送は、例えば、ユーザがハイドロリックリフティング装置に配置されたまたは配置されるべき制御部のある程度の範囲の周囲にいるときに行うことができる。特にセキュリティが重要な制御プロセスでは、このことは、ユーザからモバイル制御モジュールを介して出力された制御命令の許容性についての必要条件であってもよい。
【0014】
ここで、リフティング装置は、クレーン、例えば車両に配置することができるローダクレーンであってよく、また高所作業台であってもよい。
【0015】
好適には、モバイル制御モジュールが、ユーザによって操作することができる、算出および/または表示をアクティブ化するためのアクティブ化手段を有している。これによって、算出および/または表示を、例えばユーザによって、所望の時点において、または所望の期間にわたりアクティブ化することができる。その他の時間においては、算出および/または表示に付随するプロセッサ性能、またそれに関連するエネルギ消費量を節約することができる。ユーザによって実行されるモバイル制御モジュールの調整によって、算出および/または表示のアクティブ化を、本発明による制御部を備えたリフティング装置の負荷が所定の値に近付いた際に、または、吊り荷重の限界に近付いた際に、自動的に行うことも考えられる。
【0016】
モバイル制御モジュールがエネルギ蓄積部を有し、算出および/または表示を、エネルギ蓄積部の最小充電状態においてのみ行うことができることは有利であると分かった。これによって、算出および/または表示によって、また場合によってはその算出および/または表示に関連してエネルギ消費量が高まることによって、例えばエネルギ蓄積部の充電状態が既に低いときに、別の急速な放電によってモバイル制御モジュールが動作不能になることを阻止することができる。モバイル制御モジュールが有線式に動作する場合には、エネルギ蓄積部の充電も行うことができる。
【0017】
固有の情報を増分的に伝送することができる。ここでは伝送を、例えば、ペイロードを支持する部分の、例えばクレーンアーム、本発明による制御部を備えたリフティング装置の極角にわたり所定の角度増分で行うことができる。つまり例えば、固有の情報は、その都度、360°のうちの5°毎の吊り荷重限界値または負荷限界値に関する値を含むことができる。リフティング装置の負荷が所定の値に近付いた際、または、吊り荷重限界値に近付いた際に、固有の情報はその都度、例えば、360°のうちの1°毎の吊り荷荷重限界値または負荷限界値に関する値を含むことができ、したがって、伝送を所定の状況においてはより細分化された増分で行うことができる。これとは異なり、またはこれに加えて、現在の吊り荷状況に関する固有の情報の増分的な伝送は、その都度、先行の吊り荷状況に対する変化だけを含むことが考えられ、これによって伝送すべきデータ量を削減することができる。
【0018】
さらに、制御部は、別のモードを有することができ、この別のモード中に、制御部はセンサデータの変化率に依存して、固有の情報を伝送する。これによって、モバイル制御モジュールにおいて処理される情報、また表示されるグラフィックデータも、リフティング装置の現在の状態に対応することを保証することができる。リフティング装置のセンサデータの変化は、例えば、モバイル制御モジュールへの固有の情報の伝送をトリガすることができる。リフティング装置のセンサデータの変化が生じない場合、例えば、モバイル制御モジュールへの固有の情報の伝送を中断することができる。
【0019】
さらに、センサデータが緩慢に変化する場合、固有の情報の伝送を低減されたデータレートで行うことは有利であると考えられる。例えば、リフティング装置のペイロードを支持する部分が緩慢に移動する場合、固有の情報の伝送を毎秒より少ない頻度で行うことができる。リフティング装置の吊り荷状況が高速に変化する場合、固有の情報の伝送を、高められたデータレートで行うことができる。したがって、固有の情報の実質的にリアルタイムで行われる表示を最適なデータ伝送レートで行うことができる。
【0020】
さらに、固有の情報の伝送の前に、制御部においてデータ圧縮を行うことは有利であると考えられる。これによって、有利には、固有の情報に必要とされる伝送時間を最小限にすることができる。
【0021】
固有の情報の伝送を、リフティング装置の支持状況および/またはリフティング装置の重心の位置が変化した際に、特に変化した際にのみ行うことは有利であると考えられる。ここで重心の変化は、例えばリフティング装置のアウトリガーの変位または位置の変化によって、またはリフティング装置の一部、例えばある程度の自重を有する、送り出された巻き上げワイヤロープの位置変化によっても行われると考えられる。支持状況は、例えば地面において支持されるべきリフティング装置の支持装置、例えばテレスコピック式に伸縮可能な支持脚の変化によって変化すると考えられる。リフティング装置の支持状況および/またはリフティング装置の重心の位置が変化した際に固有の情報が伝送されることによって、モバイル制御モジュールにおいて表示されるグラフィックデータが常に、ハイドロリックリフティング装置の実際の吊り荷状況に対応することを達成できる。リフティング装置の支持状況および/またはリフティング装置の重心の位置が変化した際にのみ伝送が行われる場合、制御部ないしモバイル制御モジュールの電力消費量を最適化することができる。
【0022】
さらに、リフティング装置の支持状況および/または重心の位置の変化は、リフティング装置によって引き上げられたペイロードの大きさまたは位置の変化によって、および/または、リフティング装置に配置することができるバラストウェイトの大きさまたは位置の変化によって行われることが考えられる。この場合、支持状況および/または重心の位置の変化は、本発明による制御部を備えたリフティング装置ないしそのようなリフティング装置が配置されている車両の、例えば、積載面またはジブへの荷重の収容もしくは積載面またはジブからの荷重の除去も含むことができる。これによって、有利には、リフティング装置の均一な荷重が生じ、また、リフティング潜在能力が最適に利用される。リフティング装置のより効率的な利用および荷重を同様に、リフティング装置に配置することができるバラストウェイトの変位、位置の変化または大きさの変化によって行うことができる。
【0023】
表示は、デカルト座標または極座標を有する座標系におけるリフティング装置の現在の負荷の表示を含むことができる。そのような表示は、ユーザに、容易かつ直観的に理解できる、リフティング装置の現在の吊り荷状況の処理を提供する。
【0024】
ここで、表示が、座標系において点、線または他の幾何学形状として、リフティング装置の現在の負荷の表示を含むことは有利であると考えられ、この場合、点、線または他の幾何学形状は、リフティング装置の現在の負荷に対応する色またはグレースケールを有している。この場合、表示は、ある程度の負荷限界値に達する前の、例えばリフティング装置のアームにおいて引き上げられる吊り荷の絶対的に実現できる到達距離を表すことができる。この表示を、例えば、リフティング装置の回動可能な柱が座標系の原点に位置しているデカルト座標系における点または任意の他のグラフィックシンボルとして行うことができる。線としての現在の負荷の表示は、例えば、線ないし半径の長さが、現在の絶対的な変位、または、現在の相対的な、例えばパーセンテージでの負荷に対応すると考えられる極座標での表示において提供される。極角は、ここで、車両クレーンにおいて事前に規定された軸線、例えば車両の長手方向軸線に対して相対的な、ペイロードを支持するアームの角位置を表すことができる。改善された光学的な制御のために、点、線または他の幾何学形状はさらに色を有することができるか、例えば信号システムの色に従った色を有することができるか、または点、線または他の幾何学形状にリフティング装置の現在の負荷に応じたグレースケールを設けることができる。
【0025】
ここで有利には、表示が、リフティング装置に関する現在の過負荷値および/またはオフ値についての情報を、特に多角形チェインとして含むことができる。現在の過負荷値および/またはオフ値についての情報は、例えば、安定性または負荷に関する、最大限に実現される絶対的な到達距離を表すことができる。現在の過負荷値および/またはスイッチオフ値についての情報を、一定方向への負荷の上昇を介して通知することも考えられる。表示は、座標系において、例えば節点間に算出された限界値を内挿することによって得ることができる多角形チェインによって行うことができ、これによって、現在の吊り荷状況を非常に良好に表示および評価することができる。
【0026】
表示に使用される固有の情報の無線式の伝送を、並行して存在する固有の第2の伝送チャネルを介して行うことができる。これによって、制御命令の伝送と固有の情報の伝送とを相互に別個に行うことができる。つまり、異なる通信標準を使用することも可能である。したがって、セキュリティが重要な制御命令に関しては、例えば適切な暗号化、スペクトル拡散または妥当性確認を用いる認可されたハードウェアを使用することができ、他方では、固有の情報を伝送するために、より単純なコネクションを利用することができ、また場合によってはより高速なコネクション、例えばISM無線コネクションも利用することができる。
【0027】
伝送チャネルが暗号化されていることは有利であると考えられる。これによって、固有の情報の伝送を盗聴すること、または、固有の情報に影響を及ぼすことを阻止することができまたは困難にすることができる。ここで、暗号化の要求は、制御命令用の伝送チャネルの要求とは異なると考えられる。
【0028】
上記において述べたような装置を備えた、ハイドロリックリフティング装置、特に車両用のローダクレーン、特に好適にはジブクレーン、または、高所作業台についても保護が望まれる。
【0029】
本発明の実施例を図面に基づき考察する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】車両に配置されたリフティング装置の実施の形態を示す。
【
図3】リフティング装置および本発明による装置の実施例の概略図を示す。
【
図4a】固有の情報から算出されたグラフィックデータの表示を概略的に示す。
【
図4b】固有の情報から算出されたグラフィックデータの表示を概略的に示す。
【
図4c】固有の情報から算出されたグラフィックデータの表示を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
クレーン制御部1は、信号入力部6,7を介して、クレーンジオメトリ、支持状況、また必要に応じて吊り荷に関するセンサデータを受け取る。クレーン制御部1は、プロセッサ8において、それらのデータから、また格納されているクレーン特有のデータから、現在の吊り荷状況に固有の、および/または、場合によっては所与の現在の吊り荷状況での、クレーンにおける作業プロセスの許容性に固有の情報を算出する。
【0032】
制御部1は、メモリ30を有しており、このメモリ30には、リフティング装置に特有のデータを格納することができる。これらのデータは、リフティング装置の装備、機能および運転パラメータの限界値についての情報を含むことができる。現在の吊り荷状況に固有の、および/または、場合によっては所与の現在の吊り荷状況でのリフティング装置における作業プロセスの許容性に固有の情報の算出を、有利にはメモリ30に格納されているデータも含めて行うことができる。
【0033】
送信および受信モジュール4を介して、現在の吊り荷状況に固有の、および/または、場合によっては所与の現在の吊り荷状況での、クレーンにおける作業プロセスの許容性に固有の情報が、無線コネクション10または有線コネクション11を介して、モバイル制御モジュール2の送信および受信モジュール5に伝送される。無線コネクション10を用いる伝送と有線コネクション11を用いる伝送の組合せも考えられる。無線コネクション10は、複数のチャネルを介して、また複数の周波数帯域で、データを送信および受信することができ、また送信および受信を並行して行うこともできる。
【0034】
モバイル制御モジュール2は、メモリ31を有しており、このメモリ31には、伝送された情報、また算出された、表示用のグラフィックデータを記憶することができる。
【0035】
エネルギ供給のために、モバイル制御モジュール2は、例えば再充電可能な蓄電池の形態のエネルギ蓄積部29を有している。制御部1のエネルギ供給は、リフティング装置の図示していないユニットを介して行うことができる。
【0036】
図2には、車両12に配置されたリフティング装置およびリフティング装置に配置された制御部1の実施の形態が示されている。車両12は、ペイロード、またバラストウェイト32を収容するための、また搬送するための積載面13を有している。クレーン14の形態のリフティング装置は、クレーンベース15を介して車両12に結合されている。クレーンベース15には、垂直方向軸線周りに回動可能なクレーン柱16が支承されている。クレーン柱16には、水平方向軸線周りに、ハイドロリックシリンダ22を用いて旋回可能なリフティングアーム17が配置されている。リフティングアーム17にもまた、水平方向軸線周りに、ハイドロリックシリンダ23を用いて旋回可能であり、かつ、テレスコピック式に伸縮可能な少なくとも1つのクレーンスライディングアーム19を備えたクレーンアーム延長部18が配置されている。
図2の実施の形態において示されているように、クレーンアーム延長部18には、同様にハイドロリックシリンダ24を用いて水平方向軸線周りに旋回可能であるフロントアーム20を配置することができる。同様に、フロントアーム20は、テレスコピック式に伸縮可能な少なくとも1つのクレーンスライディングアーム21を有することができる。クレーン14、ないし、リフティング装置が載置された車両12を付加的に支持するために、アウトリガー26,27の形態の支持装置が設けられており、この支持装置は、進出可能かつテレスコピック式に伸縮可能な支持脚を有することができる。
【0037】
図3は、制御部1およびモバイル制御モジュール2から成る本発明による装置ならびにリフティング装置の実施例の概略図を示す。ここで、クレーン14の形態のリフティング装置は、前述のコンポーネントの他にクレーン14の現在の位置を検出するための種々のセンサを有している。クレーンベース15の両側に形成することができるアウトリガー26に対しては、基盤におけるアウトリガー26の支持状態を検出するためのスイッチS3,S4が設けられている。同様に、ここでは図示していない、車両12の枠部に配置することができるアウトリガー27に対しても、その種のセンサシステムを設けることができる。また、アウトリガー26,27の進出位置が、ここでは図示していない変位センサを介して検出されることも考えられる。クレーンベース15に対して相対的な、クレーン柱16の回動角度を検出するために、ロータリエンコーダDG1が設けられている。ロータリエンコーダDG1によって検出された、垂直方向軸線周りのクレーン柱16の回動角度は、極表示では極角に対応すると考えられる。クレーン柱16とリフティングアーム17とが成す、垂直方向の平面における屈曲角度を検出するために、別のロータリエンコーダDG2が設けられている。クレーン負荷に固有の、リフティングアーム17のハイドロリックシリンダ22における液圧を検出するために圧力センサDS1が設けられている。垂直方向の平面における、リフティングアーム17とクレーンアーム延長部18とが成す屈曲角度を検出するために、ロータリエンコーダDG3が設けられている。クレーンアーム延長部18のハイドロリックシリンダ23における液圧を検出するために、圧力センサDS2が設けられている。クレーンアーム延長部18のクレーンスライディングアーム19の移動状態を検出するために、スイッチS1が設けられている。さらに、垂直方向の平面における、クレーンアーム延長部18とフロントアーム20とが成す屈曲角度を検出するために、ロータリエンコーダDG4が設けられている。フロントアーム20のハイドロリックシリンダ24の液圧を検出するために、圧力センサDS3が設けられている。フロントアーム20のクレーンスライディングアーム21の移動状態を検出するために、スイッチS2が設けられている。基本的に、個々のクレーンスライディングアームのスライディング位置を、スライディング位置センサを介して、例えば変位センサを用いて検出されることは排除されるべきではない。
【0038】
センサデータは、各信号入力部を介して制御部1に供給され、それらの信号入力部のうち、クレーンアーム延長部18およびフロントアーム20の移動位置を検出するスイッチS1,S2の信号入力部6,7に例示的に参照番号を付している。続いて制御部1においては、それらのセンサデータから、またメモリ30に格納されている、この例ではクレーン14に特有のデータから、現在の吊り荷状況、および/またはクレーン14における作業プロセスに固有である情報が算出される。続いてそれらの情報を、制御部1の送信および受信モジュール4から無線コネクション10および/または有線コネクション11を介して、モバイル制御モジュール2の送信および受信モジュール5に伝送することができる。それらの情報から、モバイル制御モジュール2において表示用のグラフィックデータを算出することができ、また表示ユニット3を介して、ユーザに表示することができる。必要に応じて、表示のアクティブ化を、例えばスイッチまたはボタンの形態の、ユーザによって操作可能なアクティブ化手段28を介して行うことができる。モバイル制御モジュール2を操作するために、また制御命令を入力するために、モバイル制御モジュール2には、種々の操作素子25が設けられている。
【0039】
図4aには、表示ユニット3における、伝送された情報から算出されたグラフィックデータの概略的な表示が示されている。表示ユニット3を、例えばグラフィック能力のある液晶ディスプレイ33によって形成することができ、この液晶ディスプレイ33がモバイル制御モジュール2内またはモバイル制御モジュール2上に取り付けられるか、または、この液晶ディスプレイ33をモバイル制御モジュール2内もしくはモバイル制御モジュール2上に取り付けることができる。図示の実施の形態において、表示ユニット3における表示は、
図2に示したようなリフティング装置を備えた車両12の、座標系36にはめ込まれた平面図での概略的な表示を含んでおり、ここで有利には、回動可能に支承されているクレーン柱16が座標系36の原点に位置している。ここでは、図示のように、XおよびYで表された座標軸を有するデカルト座標系において表示を行うことができるか、または、極座標を有する座標系においても表示を行うことができる。リフティング装置の現在の負荷を、座標系36にプロットされた点Pとして表示することができる。ここで多角形チェインKは、リフティング装置の公称最大許容負荷を表す。図示のように、リフティング装置は現在、最大許容負荷に近い状態にあり、このことをユーザは、点Pが多角形チェインKによって表されている負荷限界に近付いていることによって、容易かつ直観的に認識することができる。表示ユニット3における表示は、さらに、設定、情報または代替的な機能へのアクセスを実現するメニューバー35と、例えばエネルギ蓄積部29の充電状態またはデータコネクションの種類および品質も通知することができる状態表示部37を備えたタイトルバー34と、を含むことができる。また、座標線は、表示の現在のスケーリングについての情報を含む凡例38を有することができる。
【0040】
図4bには、固有の情報から算出された、表示ユニット3を介して表示されるグラフィックデータの概略的な表示が示されており、ここでは、リフティング装置の現在の負荷が、極座標を有する座標系における線として表示されている。例えば、
図3に図示したような、クレーン14を備えた装置では、線Lの極角が、ロータリエンコーダDG1によって検出された、クレーンベース15に対して相対的なクレーン柱16の回動角度に実質的に対応し、ここで、
図4bにおいて概略的に平面図で示された車両12は、座標系36における仮想の長手方向軸線に沿って配向されている。公称許容負荷限界値は、座標系36において、多角形チェインKによって表されている。線Lとして表されるリフティング装置の負荷は、線Lの長さによって表されており、ここでは図示のように、リフティング装置の負荷が、公称許容負荷限界値を超えている。つまりユーザは、リフティング装置が許容されない負荷領域にあることを容易に認識することができる。
【0041】
図4cには、リフティング装置の負荷のグラフィック表の別の実施の形態が示されている。ここでもまた表示が、座標系36に示された線Lによって行われており、ここでは、線Lの極角がやはりリフティング装置の回動角度に対応している。リフティング装置の負荷が、現在の負荷に対応するグレースケールによって示されている。この場合、より高い負荷をより暗いグレースケールによって表示することができる。これとは異なり、対応する色によって負荷を表示することも可能である。この場合、例えば、信号システムの色に類似して、低い負荷を緑色の線Lによって、中間的な負荷をオレンジ色の線Lによって、また、高い負荷を例えば赤い線Lによって表すことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 制御部
2 制御モジュール
3 表示ユニット
4 送信および受信ユニット
5 送信および受信ユニット
6,7 信号入力部
8 プロセッサ
9 プロセッサ
10 無線コネクション
11 有線コネクション
12 車両
13 積載面
14 クレーン
15 クレーンベース
16 クレーン柱
17 リフティングアーム
18 クレーンアーム延長部
19 クレーンスライディングアーム
20 フロントアーム
21 クレーンスライディングアーム
22,23,24 ハイドロリックシリンダ
25 操作素子
26,27 アウトリガー
28 アクティブ化手段
29 エネルギ蓄積部
30 メモリ
31 メモリ
32 バラストウェイト
33 液晶ディスプレイ
34 タイトルバー
35 メニューバー
36 座標系
37 状態表示部
38 凡例
DS1,DS2 圧力センサ
DG1,DG2,DG3,DG4 ロータリエンコーダ
S1,S2,S3,S4 スイッチ
P 点
L 線
K 多角形チェイン