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▶ イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】樹脂相溶性積層体構造物
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/02 20060101AFI20220113BHJP
   B32B 29/02 20060101ALI20220113BHJP
   H02K 3/30 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B32B5/02 A
B32B29/02
H02K3/30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018556964
(86)(22)【出願日】2017-05-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 US2017030348
(87)【国際公開番号】W WO2017192424
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-04-27
(31)【優先権主張番号】62/331,561
(32)【優先日】2016-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】カン ビョンサム
(72)【発明者】
【氏名】リー サンウー
【審査官】團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-122550(JP,U)
【文献】特開昭62-169638(JP,A)
【文献】特開昭57-132614(JP,A)
【文献】米国特許第03523061(US,A)
【文献】特開昭62-151338(JP,A)
【文献】特開昭56-150543(JP,A)
【文献】米国特許第06153301(US,A)
【文献】特開平10-116720(JP,A)
【文献】米国特許第06017627(US,A)
【文献】中国特許出願公開第1179607(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B1/00-43/00
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
H02K3/30-3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁物として使用するために適した積層体構造物であって、
a)90~99重量パーセントの均一に分散されたか焼マイカと、1~10重量パーセントの支持材料とを含む第1の紙層であって、前記支持材料の重量による大部分は、フロックの形態であり、前記支持材料がアラミドフィブリドであるバインダーをさらに含む、第1の紙層と、
b)一方向フィラメント、または一方向ヤーン、または織ヤーンを含む支持体層であって、第1および第2の面を有する支持体層と
を含み、
前記支持体層の前記第1の面は、前記第1の紙層の面に直接結合され、
前記積層体構造物は、15kV/mm以上の絶縁耐力、400秒以下のガーレイ多孔度および60重量パーセント以上の全マイカ含有量を有
前記第1の紙層内の前記フロックは、前記第1の紙層内の前記支持材料の全量に基づいて60重量パーセント以上の量で存在する、
ことを特徴とする積層体構造物。
【請求項2】
前記フロックは、アラミド、セルロース、酢酸塩、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ガラス、ロックウール、アルミナのような多結晶、チタン酸カリウムのような単結晶またはそれらの混合物である、請求項1に記載の積層体構造物。
【請求項3】
電気絶縁物として使用するために適した積層体構造物であって、
a)90~99重量パーセントの均一に分散されたか焼マイカと、1~10重量パーセントの支持材料とを含む第1の紙層であって、前記支持材料の重量による大部分は、フロックの形態であり、前記支持材料がアラミドフィブリドであるバインダーをさらに含む、第1の紙層と、
b)一方向または織フィラメントヤーンを含む支持体層であって、第1および第2の面を有する支持体層と、
c)90~99重量パーセントの均一に分散されたか焼マイカと、1~10重量パーセントの支持材料とを含む第2の紙層であって、前記支持材料の重量による大部分は、フロックの形態である、第2の紙層と、を含み、
前記支持体層の前記第1の面は、前記第1の紙層の面に直接結合され、かつ前記支持体層の前記第2の面は、前記第2の紙層の面に直接結合され、および
前記積層体構造物は、60重量パーセント以上の全マイカ含有量を有
前記第1の紙層内の前記フロックは、前記第1の紙層内の前記支持材料の全量に基づいて60重量パーセント以上の量で存在する、
積層体構造物。
【請求項4】
前記フロックは、アラミド、セルロース、酢酸塩、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ガラス、ロックウール、アルミナのような多結晶、チタン酸カリウムのような単結晶またはそれらの混合物である、請求項3に記載の積層体構造物。
【請求項5】
0.635~5.1センチメートル(0.25~2インチ)の幅を有するテープの形態における、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーター、発電機およびインバーターなどのものにおいて電気絶縁物として使用するために適した積層体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者にとって、用語「マイカ紙」は、概して少なくとも90重量パーセント以上の量の高濃度の無機鉱物マイカを使用して製造され、残部が、紙に対するある機械的結着性を提供するバインダーである、シートを指す。しかしながら、得られたマイカ紙は機械的に強い紙ではない。
【0003】
Levitらに対する米国特許第6,991,845号明細書および米国特許第7,399,379号明細書には、マイカの豊富な面およびマイカの少ない面を有するバリアプライと、バリアプライのマイカの少ない面に付着された可飽和裏層を含有する強化プライとを含む電気絶縁または耐燃性のためのシート構造物が開示されている。
【0004】
米国特許第6,991,845号明細書およびForstenらに対する米国特許第6,312,561号明細書には、m-アラミド繊維、m-アラミドフィブリドおよびマイカの均質なブレンドから製造されたアラミド-マイカ混合紙が開示されている。Levitらは、この「アラミド-マイカ紙」が「マイカ紙」と比較して優れた機械的性質を有し、一切の裏強化なしで使用できることをさらに教示する。
【0005】
か焼マイカは、「未か焼」マイカよりも改良された誘電性質を有するため、いくつかの場合、高電圧電気絶縁体市場において利用されるシート構造物内での「か焼」マイカの使用が望ましい。か焼は、天然または未か焼マイカフレークと比較したときにより小さいサイズのマイカプレートレットを提供し、それは、シート内のマイカの誘電体性能を改良すると考えられる。残念ながら、これらの小さいサイズのマイカプレートレットは、多孔性がより低い層も形成し、それは、層が母材樹脂を含浸することによって湿潤するのが難しいことがあり得ることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって必要とされるものは、改良された多孔度を有するか焼マイカを含有する積層体構造物を製造する改良された方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電気絶縁物として使用するために適した積層体構造物であって、
a)90~99重量パーセントの均一に分散されたか焼マイカと、1~10重量パーセントの支持材料とを含む第1の紙層であって、支持材料の重量による大部分は、フロックの形態である、第1の紙層と、
b)一方向フィラメント、または一方向ヤーン、または織ヤーンを含む支持体層であって、第1および第2の面を有する支持体層と
を含み、
支持体層の第1の面は、第1の紙層の面に直接結合され、
積層体構造物は、15kV/mm以上の絶縁耐力、400秒以下のガーレイ多孔度および60重量パーセント以上の全マイカ含有量を有する、積層体構造物に関する。
【0008】
本発明は、電気絶縁物として使用するために適した積層体構造物であって、
a)90~99重量パーセントの均一に分散されたか焼マイカと、1~10重量パーセントの支持材料とを含む第1の紙層であって、支持材料の重量による大部分は、フロックの形態である、第1の紙層と、
b)一方向または織フィラメントヤーンを含む支持体層であって、第1および第2の面を有する支持体層と、
c)90~99重量パーセントの均一に分散されたか焼マイカと、1~10重量パーセントの支持材料とを含む第2の紙層であって、支持材料の重量による大部分は、フロックの形態である、第2の紙層と
を含み、
支持体層の第1の面は、第1の紙層の面に直接結合され、かつ支持体層の第2の面は、第2の紙層の面に直接結合され、および
積層体構造物は、60重量パーセント以上の全マイカ含有量を有する、積層体構造物にも関する。好ましくは、積層体構造物は、15kV/mm以上の絶縁耐力および400秒以下のガーレイ多孔度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、驚くべき高い多孔度と高い誘電特性との組合せを有する積層体構造物であって、か焼マイカと支持材料とを含有する少なくとも第1の紙層と、支持体層とを含む積層体構造物に関する。第1の紙層の面は、支持体層の面に直接かつ均一に結合される。直接かつ均一に結合されるとは、2つの層が互いに本質的に接触していることを意味するが、ただし、語句「接触した」は、限定されないが、接着剤を使用して2つの層を一緒に付着させることを包含すると理解される。
【0010】
本発明は、それぞれか焼マイカと支持材料とを含有する、少なくとも第1の紙層および第2の紙層を含む多層積層体構造物であって、支持体層は、紙の2つの層間に配置されかつそれらに付着される、多層積層体構造物にも関する。
【0011】
本明細書中で用いられるとき、「か焼マイカ」は、天然マイカを高温(通常、800°C超、場合により950°C超)に加熱することによって得られるか焼白雲母もしくは金雲母マイカまたはそれらのブレンドを意味する。この処理は、水および不純物を取り除き、マイカの温度耐性を改良する。か焼マイカは、通常、フレーク粒子の形態で使用され、白雲母タイプのマイカが好ましい。か焼マイカは、天然または未か焼マイカよりも改良された誘電性質および耐コロナ性を有する。か焼は、天然または未か焼マイカフレークと比較して小さいサイズのマイカプレートレットを提供する。残念ながら、これらの小さいサイズのマイカプレートレットは、多孔性がより低い層も形成し、それは、層が母材樹脂を含浸することによって湿潤するのが難しいことがあり得ることを意味する。層または積層体構造物の多孔度は、層または積層体構造物のガーレイ多孔度を測定することによって明らかにされ、それは、空気の特定の体積を材料の特定の面積を通って特定の圧力差で送るのにかかる秒単位の時間を測定する。より高い値、すなわちより長い時間は、多孔性がより低い構造物を意味する。より小さい値は、より多孔性の構造物を示す。
【0012】
本明細書中で用いられるとき、「未か焼マイカ」は、好ましくは、均質化および精製して欠陥および不純物を取り除いた本質的に高純度の自然形態である白雲母または金雲母マイカなどのマイカを意味する。未か焼マイカは、天然マイカフレークのより大きいサイズのために非常に多孔性のマイカ層を形成することができる。それは、母材樹脂によって容易に湿潤および含浸される。残念ながら、未か焼マイカは、か焼マイカよりも絶縁耐力が小さい。
【0013】
積層体構造物において使用される第1の紙層は、層内のか焼マイカおよび支持材料の全量に基づいて90~99重量パーセントの均一に分散されたか焼マイカと、1~10重量パーセントの支持材料とを含む。いくつかの好ましい実施形態において、第1の紙層は、層内のか焼マイカおよび支持材料の全量に基づいて95~99パーセント均一に分散されたか焼マイカと、1~5重量パーセント支持材料とを含む。均一に分散されたとは、マイカが紙層の全体にわたって均質に分散され得るか、またはマイカが、層の面の1つにより近い、紙の濃縮平面領域の全体にわたって均一に面積的に分散され得ることを意味する。最終積層体構造物の所望の電気的性能をもたらすためにマイカが十分に分散されることがこの定義に言外に含まれる。
【0014】
第1の紙層において、ごく少量の支持材料が存在するが、その支持材料の重量による大部分は、フロックの形態である。支持材料の重量による大部分(すなわち50重量%超)がフロックであるとき、得られた紙層は、大量のか焼マイカが存在するにもかかわらず(90~99重量%)、驚くべき良好な多孔度を有することが見出された。好ましくは、フロックは、紙層内の支持材料の全量に基づいて第1の紙層内の支持材料中に60重量パーセント以上の量で存在する。別の実施形態において、フロックは、紙層内の支持材料の全量に基づいて第1の紙層内の支持材料中に80重量パーセント以上の量で存在する。いくつかの実施形態において、フロックは、アラミド、セルロース、酢酸塩、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ガラス、ロックウール、アルミナのような多結晶、チタン酸カリウムのような単結晶またはそれらの混合物である。
【0015】
一実施形態において、第1の紙層内の支持材料は、層内の支持材料中のフロックの全量に基づいて50重量パーセント超~65重量パーセントのフロックを含む。別の実施形態において、第1の紙層内の支持材料は、層内の支持材料中のフロックの全量に基づいて65~80重量パーセントのフロックを含む。いくつかの好ましい実施形態において、第1の紙層内の支持材料は、層内の支持材料中のバインダーおよびフロックの量に基づいて1~20重量パーセントのバインダーおよび80~99重量パーセントのフロックを含む。
【0016】
支持材料は、多量のフロックを含有し、残りの支持材料は、1つまたは複数のバインダーであり得る。バインダーは、1つまたは複数のタイプのバインダーであり得、バインダーは、フロックまたは繊維材料を結合して紙を形成するための当該技術分野で公知の任意の化学物質、または処理剤、または添加剤であり得るが、好ましい一実施形態において、バインダーは、バインダー粒子、好ましくは薄膜状構造を有する粒子である。好ましいバインダー粒子は、フィブリドであり、好ましいフィブリドは、アラミドフィブリドである。好ましい一実施形態において、第1の紙層内の支持材料は、アラミドフィブリドおよびアラミドフロックの形態のアラミドバインダーのみからなる。バインダー、フィブリドおよびフロックのための好ましいアラミドには、ポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)が含まれる。
【0017】
第1の紙層自体は、好ましくは、50グラム/平方メートル以上の基本重量を有する。いくつかの実施形態において、100グラム/平方メートル以上の基本重量が好ましい。実際的な観点から、層は、150グラム/平方メートル以上の最大基本重量を有する。好ましい実施形態において、第1の紙層自体は、350秒以下のガーレイ多孔度を有する。好ましくは、第1の紙層自体は、300秒以下のガーレイ多孔度を有する。
【0018】
積層体構造物において、第1の紙層は、支持体層に直接結合される。支持体層は、積層体構造物に対する機械的結着性を提供する。支持体層は、一方向フィラメント、または一方向ヤーン、または織ヤーンを含み、かつ支持体層を第1の紙層の面に直接結合するための第1の面と、任意選択の第2の紙層の面に潜在的に直接結合するための対向する第2の面とを有する。好ましい一実施形態において、支持体層のフィラメントまたは繊維は、ガラスフィラメントまたは繊維を含む。
【0019】
支持体層のための有用なフィラメントおよび繊維は、10~50マイクロメートルの範囲であり得る。支持体層のための有用な基本重量は、10~30グラム/平方メートルの範囲であり得る。
【0020】
多くのテープ用途のために最も有用である支持体層の形態は、フィラメントまたはフィラメントヤーンの一方向たて糸であると考えられる。これは、支持体層が重量および/または厚さの最小量を積層体構造物に寄与することを可能にする。これは、支持体層の材料が一般的にマイカ紙層の誘電体性能を有さない点において重要である。
【0021】
積層体構造物は、電気絶縁物として使用するために適しており、か焼マイカと支持材料とを含有する第1の紙層と、支持体層とを含む。支持体層は、第1および第2の面を有し、支持体層の第1の面は、第1の紙層の面に直接結合される。
【0022】
具体的には、一実施形態において、電気絶縁物として使用するために適した積層体構造物は、
a)90~99重量パーセントの均一に分散されたか焼マイカと、1~10重量パーセントの支持材料とを含む第1の紙層であって、支持材料の重量による大部分は、フロックの形態である、第1の紙層と、
b)一方向フィラメント、または一方向ヤーン、または織ヤーンを含む支持体層であって、第1および第2の面を有する支持体層と
を含み、
支持体層の第1の面は、第1の紙層の面に直接結合され、積層体構造物は、15kV/mm以上の絶縁耐力、400秒以下のガーレイ多孔度および60重量パーセント以上の全マイカ含有量を有する。この実施形態は、本明細書において2層実施形態とも称される。
【0023】
一実施形態において、第1の紙層は、接着剤の使用によって支持体層に結合される。有用な接着剤には、限定されないが、ポリウレタン、エポキシ、ポリイミド、フェノール樹脂、メラミン、アルキド、ポリエステル、ポリエステルイミド、ベンゾオキサジン、シリコーンおよびそれらの組合せなどに基づいた接着剤が含まれる。
【0024】
積層体構造物は、驚くべきことに、か焼マイカの使用による、積層体構造物の厚さ1mm当たり15kV以上の高い絶縁耐力と、フロックとして存在する紙層中の多量の重量の支持材料による、400秒以下の低いガーレイ多孔度との所望の組合せを有する。いくつかの実施形態において、絶縁耐力は、積層体構造物の厚さ1mm当たり17.5kV超、積層体構造物の厚さ1mm当たり好ましくは20kV超である。絶縁耐力は、異なる厚さを有する材料の絶縁破壊電圧を比較する有意義な値である。絶縁破壊電圧または電気的耐圧は、2つの電極間に配置された電気絶縁物において、規定された条件下で絶縁破損が起こる電位差である。
【0025】
積層体構造物は、本明細書において、一括して母材樹脂とも称される含浸用樹脂、ワニスまたはそれらの混合物をさらに含み得る。好ましい一実施形態において、樹脂、ワニスまたはそれらの混合物は、積層体構造物中で部分的にまたは完全に硬化される。一般的に、積層体構造物またはテープは、最初に導体に適用され、次に構造物全体が含浸される。しかしながら、絶縁物として使用する前に積層体構造物を樹脂で予備含浸するいくつかの場合があり得る。
【0026】
積層体構造物全体のガーレイ多孔度の測定値がより低くなることが望ましい。これらの積層体構造物は、ガーレイ多孔度の測定値がより高い積層体構造物よりも多孔性である。これは、モーターおよび発電機内の電気部品または主壁絶縁材において使用される場合など、積層体構造物が母材樹脂で急速に含浸され得ることを意味する。これは、積層体構造物が真空含浸を経て電気部品または壁絶縁材を形成する場合に特に重要である。積層体構造物は、400秒以下のガーレイ多孔度を有するが、好ましくは、積層体構造物は、375秒以下のガーレイ多孔度を有する。
【0027】
いくつかの好ましい実施形態において、積層体構造物は、テープの形態で電気絶縁物として使用される。本明細書中で用いられるとき、テープという語は、積層体構造物の比較的幅が狭いストリップ、好ましくは約0.635~5.1センチメートル(0.25~2インチ)の幅を有するテープを意味する。いくつかの実施形態において、幅は、0.635~2.54センチメートル(0.25~1インチ)である。いくつかの実施形態において、幅は、好ましくは、10~25ミリメートル(1~2.5cmまたは0.39~1.0インチ)である。これらの積層体構造物テープは、一般的に、積層体構造物のより幅が大きいシートまたはロールの正確なスリッチングによって製造される。
【0028】
積層体構造物は、マイカの量と、一切の含浸用母材樹脂なしの積層体構造物の全重量とに基づいて60重量パーセント以上の全マイカ含有量を有する。マイカのこの全量は、十分な電気絶縁性能を提供するために積層体中で必要であると考えられる。いくつかの実施形態において、全積層体構造物の全マイカ含有量は、マイカの量と、一切の母材樹脂なしの積層体構造物の全重量とに基づいて75重量パーセント以上である。
【0029】
いくつかの実施形態において、支持体層は、母材樹脂なしの全積層体構造物の組成物の5~30重量パーセントのみを占める。いくつかの他の実施形態において、支持体層は、母材樹脂なしの全積層体構造物の組成物の10~20重量パーセントを占める。さらに、いくつかの実施形態において、接着剤は、母材樹脂なしの全積層体構造物の0~8重量パーセントの量で積層体構造物中に存在し得、いくつかの実施形態において、接着剤は、母材樹脂なしの全積層体構造物の4~8重量パーセントである。いくつかの他の実施形態において、接着剤の量は、母材樹脂なしの全積層体構造物の組成物の0~3重量パーセントである。使用される場合、接着剤は、好ましくは、約9g/m2までの量で適用され得る。
【0030】
いくつかの実施形態において、全積層体構造物の基本重量は、約70g/m2~300g/m2までもある。しかしながら、いくつかの好ましい実施形態において、基本重量は、約100g/m2~225g/m2である。全積層体構造物の他の具体的な好ましい性質には、0.10~1.0mmの範囲の全厚が含まれる。
【0031】
さらに、積層体構造物は、自動ラッピング装置を使用して導体の周りに巻き付けられる十分な機械的強度を有することが好ましい。これは、紙またはテープのための最小引張強さとして表わすことができる。いくつかの実施形態において、巻き付け可能なテープの最小引張強さは、20ニュートン/センチメートル幅である。積層体構造物の好ましい引張強さは、70N/cm以上、好ましくは100N/cmである。さらに、多層積層体構造物のテープを使用する導体の有用な巻き付けのために、積層体構造物は、好ましくは、高速装置テープ巻き付けプロセスにおいて使用するために約100N/m未満、好ましくは約50N/m未満の可撓性または剛性を有するべきである。
【0032】
モーター、インバーター、発電機および他の電気デバイスは、1つのワイヤーまたは導体が別のワイヤーまたは導体と接触することを防ぐように個別に絶縁された多数の巻回ワイヤーまたは導体を含み得る。多くの場合、これらの絶縁巻回ワイヤーまたは導体は、モーターの巻線の密度の高い均一な充填を確実にするために断面が矩形であるが、任意の断面形状の導体を使用することができる。導体およびワイヤーという語は、本明細書では交換可能に使用される。
【0033】
いくつかの実施形態において、積層体構造物は、積層体構造物の細いテープを導体の周りにスパイラル状に巻き付けることによって適用され、重なり合う層を形成する。いくつかの場合、これは、ワニス樹脂または母材樹脂が絶縁物の層間に浸透して存在する経路を可能にする。本明細書中で用いられるとき、「スパイラル状に巻き付けられた」は、導体の外周の周りの1つまたは複数のテープのスパイラル状または螺旋状の巻き付けを含むことを意図する。
【0034】
任意の1つの導体上の絶縁物の全厚は、テープの単巻き付けまたは複数の重なり合うテープから構成され得るため、いくつかの実施形態において、導体上の電気絶縁物のシースの総合密度は、約0.2~0.6グラム/立方センチメートル、好ましくは約0.3~0.5グラム/立方センチメートルである。いくつかの実施形態において、任意の1つの導体上の絶縁物の全厚は、0.635~1.3ミリメートル(0.025~0.05インチ)であり得る。約0.635ミリメートル(mm)未満の絶縁物の厚さは、十分な絶縁耐力を提供するには少なすぎる量の絶縁材料を提供すると考えられる。約1.3mm(0.05インチ)超の厚さは、多くの電気デバイスのために実用的でないと考えられる。絶縁物の全厚または「構造(build)」は、重要なパラメーターであり得るため、重ねられるテープの実際の層数は変化し得、絶縁物は、積層体構造物の1層または2層の厚さから積層体構造物の10~さらに100層でもあるか、またはより多い層が可能である。
【0035】
別の実施形態において、電気絶縁物として使用するために適した積層体構造物は、
a)90~99重量パーセントの均一に分散されたか焼マイカと、1~10重量パーセントの支持材料とを含む第1の紙層であって、支持材料の重量による大部分は、フロックの形態である、第1の紙層と、
b)一方向または織フィラメントヤーンを含む支持体層であって、第1および第2の面を有する支持体層と、
c)90~99重量パーセントの均一に分散されたか焼マイカと、1~10重量パーセントの支持材料とを含む第2の紙層であって、支持材料の重量による大部分は、フロックの形態である、第2の紙層と
を含み、
支持体層の第1の面は、第1の紙層の面に直接結合され、かつ支持体層の第2の面は、第2の紙層の面に直接結合され、および積層体構造物は、60重量パーセント以上の全マイカ含有量を有する。換言すれば、この実施形態において、支持体層は、第1の紙層と第2の紙層との間に挟まれ、両方の層に直接結合される。好ましくは、この実施形態の積層体構造物は、15kV/mm以上の絶縁耐力および400秒以下のガーレイ多孔度を有する。この実施形態は、本明細書において3層実施形態とも称される。
【0036】
この実施形態において、第1および第2の紙層は、必要に応じて同じ組成を有することができるか、または組成は、本明細書に記載された範囲内に収まる限り変化することができる。具体的には、第1の紙層および第2の紙層の両方内のフロックは、それぞれの紙層内の支持材料の全量に基づいて60重量パーセント以上の量で存在し得、または第1の紙層および第2の紙層の両方内のフロックは、それぞれの紙層内の支持材料の全量に基づいて80重量パーセント以上の量で存在し得る。第2の紙層の特性、特徴および優先度の他の範囲は、本明細書に記載された第1の紙層と同じである。接着剤など、第1の紙層が、本明細書において先に記載されたような支持体層に結合される方法は、支持体層への第2の紙層の結合にも適用される。いくつかの実施形態において、第2の紙層は、第1の紙層と同じである。さらに、好ましくは、積層体構造物のこの3層実施形態の性質は、2層実施形態について本明細書に開示される特性値の範囲によって記載されるかまたはその中に含まれる。
【0037】
本明細書で使用されるとき、用語「フロック」は、短かい長さを有し、ウエットレイドシートおよび/または紙の調製において通常使用される繊維を意味する。典型的には、フロックは、約3~約20ミリメートルの長さを有する。好ましい長さは、約3~約7ミリメートルである。フロックは、通常、当該技術分野で公知の方法を使用して必要とされる長さに連続繊維を切断することによって製造される。
【0038】
本明細書で使用されるとき用語アラミドは、アミド(-CONH-)結合の少なくとも85%が直接2つの芳香族環に結合している芳香族ポリアミドを意味する。添加剤がアラミドと共に使用され得、ポリマー構造全体にわたり分散されていてもよい。最大で約10重量パーセントもの他の支持材料をアラミドとブレンドできることが発見された。アラミドのジアミンを置換する約10パーセントもの他のジアミン、またはアラミドの二酸塩化物を置換する約10パーセントもの他の二酸塩化物を有するコポリマーを使用できることも発見された。
【0039】
好ましいアラミドは、メタ-アラミドである。アラミドポリマーは、2個の環またはラジカルが分子鎖に沿って互いに対してメタ位に方向付けられるときにメタ-アラミドであると考えられる。好ましいメタ-アラミドは、ポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)である。米国特許第3,063,966号明細書、米国特許第3,227,793号明細書、米国特許第3,287,324号明細書、米国特許第3,414,645号明細書および米国特許第5,667,743号明細書は、アラミドフロックを製造するために使用され得るアラミド繊維を製造するための有用な方法を説明している。
【0040】
代わりに、アラミドフロックは、パラ-アラミドまたはアラミドコポリマーであり得る。アラミドポリマーは、2個の環またはラジカルが分子鎖に沿って互いに対してパラ位に方向付けられるときにパラ-アラミドであると考えられる。パラ-アラミド繊維を製造するための方法は、一般的に、例えば米国特許第3,869,430号明細書、米国特許第3,869,429号明細書および米国特許第3,767,756号明細書に開示されている。1つの好ましいパラ-アラミドは、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)であり、1つの好ましいパラ-アラミドコポリマーは、コポリ(p-フェニレン/3,4’ジフェニルエステルテレフタルアミド)である。好ましいアラミドフロックは、メタ-アラミドフロックであり、特に好ましいのは、メタ-アラミドポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)から製造されるフロックである。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語フィブリドは、それらの3つの寸法の少なくとも1つが最大の寸法に比べて規模が小さい非常に小さい非粒状、繊維質またはフィルム状の粒子を意味する。これらの粒子は、例えば、米国特許第2,988,782号明細書および米国特許第2,999,788号明細書に開示されるように、高い剪断下で非溶媒を用いて支持材料の溶液を沈殿させることによって調製される。アラミドフィブリドは、320℃を超える融点または分解点を有する芳香族ポリアミドの非粒状フィルム状粒子である。好ましいアラミドフィブリドは、メタ-アラミドフィブリドであり、特に好ましいのは、メタ-アラミドポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)から製造されるフィブリドである。
【0042】
フィブリドは、一般的に、約5:1~約10:1の長さ対幅のアスペクト比で約0.1mm~約1mmの範囲内の最大寸法長さを有する。厚み寸法は、数分の一ミクロン、例えば約0.1ミクロン~約1.0ミクロンのオーダーである。必須ではないが、アラミドフィブリドが未乾燥状態である間にフィブリドを層中に混入することが好ましい。
【0043】
第1の紙層および第2の紙層において使用される層という用語は、好ましくは、特定の組成の薄い平面材料を指す。また、用語「層」は、一緒に付着される複数の薄い平面ウェブから製造される紙を指し、ここで、全ての平面ウェブは同じ組成を有する。用語「面」は、紙層の2つの主面のいずれかまたは支持体層の2つの主面のいずれか(すなわち、紙層または支持体層の一方の面または他方の面)を指す。
【0044】
いくつかの実施形態において、か焼マイカと支持材料とを含有する個々の紙層は、0.5ミリメートル以下の厚さを有する。いくつかの他の実施形態において、個々の紙層は、0.25ミリメートル以下の厚さを有する。好ましい一実施形態において、個々の紙層は、0.13ミリメートル以下の厚さを有する。他の好ましい実施形態において、個々の紙層は、0.1ミリメートル以下の厚さを有する。さらに、個々の紙層は、十分なマイカを積層体構造物に提供するために少なくとも0.06ミリメートルの厚さを有するべきであると考えられる。
【0045】
2層実施形態において、第1の紙層は、接着剤の連続したまたは不連続な層の使用によって支持体層に直接結合され得る。3層実施形態において、第1の紙層および第2の紙層は、接着剤の連続したまたは不連続な層の使用によって支持体層に結合され得る。この3層実施形態の一実施において、層のそれぞれが別々に製造され、次に接着剤の層がその間に提供されて組み合わされ、層は、順に第1の紙層、支持体層、次いで第2の紙層である。実施形態の全てにおいて、第1の紙層および第2の紙層のそれぞれを製紙装置で別個に製造するため、所望の量および比率のマイカおよび支持材料の水性分散体をヘッドボックスに提供し、次にウェブとして組成物を製紙ワイヤー上にウエットレイする。次に、湿潤ウェブを乾燥機のドラム上で乾燥させて紙を形成することができる。好ましくは、次に紙を加圧および加熱下においてホットロールカレンダーのニップでカレンダー処理するかまたは他の手段によって処理して、さらに紙を、所望の厚さを有する紙層に固めて高密度化する。必要に応じて、同じ組成の2つ以上のより軽い基本重量またはより薄い湿潤ウェブまたは紙を別々に製造し、次に一緒にカレンダー処理して単一紙層に固めることができる。好ましい実施形態において、紙層のそれぞれは、積層体構造物中の支持体層と組み合わされる前に別々にカレンダー処理される。
【0046】
紙層それぞれの面を支持体層の面に均質かつ連続的に結合する好ましい一実施形態において、液体接着剤は、比較的均一に層の少なくとも1つの面に適用される。接着剤は、隙間なく層の1つの面への接着剤の均一で連続的な適用をもたらす任意の方法を使用して紙層または支持体層のいずれかに適用され得る。このような方法には、ロールコーティング、またはナイフコーティング、または吹付コーティングを必要とする方法が含まれる。好ましくは、接着剤は、均一な厚さに適用され、接着剤は、積層体において連続している。代わりに、接着剤は、マイカ含有層および支持体層のそれぞれの間に挿入された固体シートの形態で提供され得る。次に、層および接着剤は、層を一緒に加圧または固化することができる任意の方法を使用して、接着剤を層間に配置して一緒に加圧される。このような方法には、カレンダーロールの組のニップに(接着剤をその間に有する)層を挟むことが含まれ得る。これは、所望の厚さを有する積層体構造物に層を固化し、層を一緒に完全にかつ直接結合する。必要に応じて、接着剤は、層が圧力を受けて加圧される前、その後またはその間に適用される熱を使用してさらに硬化され得る。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態において、最終積層体構造物は、(1)支持体層に付着された第1の紙層+それらの層間に配置された任意選択の接着剤、または(2)支持体層に付着され、次に第2の紙層に付着される第1の紙層+それらの層のそれぞれの間に配置された任意選択の接着剤から本質的になるか、またはそれらのみからなる。
【0048】
いくつかの実施形態において、シートの形態の積層体構造物をテープに切断し、次にいくつかの可能な方法を使用して樹脂で含浸することができる。1つの一般的な方法は、積層体構造物が、絶縁される物品に挿入されるかまたはその周りに巻回された後にテープの形態のそれを樹脂で含浸する工程を含む。次に、樹脂が硬化される。第2の一般的な方法は、積層体構造物が、絶縁される物品に挿入されるかまたはその周りに巻回される前にテープの形態のそれを樹脂で含浸する工程と、次に樹脂を硬化させる工程とを含む。
【0049】
積層体構造物は、工業モーター、風力タービン発電機における直接の使用が考えられるが、限定されないが、走行用モーター、ターボおよび水中発電機ならびに工業用パワーインバータなどの他の使用および用途が可能である。
【0050】
試験方法
以下の試験方法が、以下に提供される実施例において使用された。
【0051】
基本重量をASTM D 645およびASTM D 645-M-96に従って測定し、g/m2単位で記録した。
【0052】
厚さをASTM D 646-96に従って測定し、mm単位で記録した。
【0053】
引張強さを、幅2.54cmの試験片および18cmのゲージ長を使用してASTM D 828-93に従って測定し、N/cm単位で記録した。
【0054】
ガーレイ多孔度は、TAPPI T460に従って1.22kPaの圧力差を使用して紙の約6.4平方センチメートルの円形面積についてシリンダー変位100ミリリットル当たりの秒単位の空気抵抗によって測定された。
【0055】
剛性(可撓性)または剛軟度は、IEC 60371-2に従って試験体を曲げるための最大曲げ荷重を試験体(幅15mm×長さ200mm)の長さで割った値であり、N/mで記録する。
【0056】
絶縁耐力は、絶縁材料の絶縁破損が特定の条件下で起こる電位傾度である。それは、本明細書においてASTM D149-97Aに従って測定され、kV/mm単位で記録された。
【0057】
耐電圧性は、絶縁材料が表面コロナの作用下で長時間の交流電圧ストレスに耐えることができる時間である。本明細書において、それは、ASTM D2275-01に従ってコロナ条件下で長時間の交流電圧ストレスに対する耐性のメジアン破損時間として測定され、12kV/mm、360hzにおいて時間単位で記録された。
【実施例
【0058】
実施例1
積層体構造物は、マイカ紙層およびガラス織布支持体層から製造された。マイカ紙層は、厚さ0.15mmであり、95重量パーセントのか焼マイカフレーク(Electrical Samica Flake Co.,Rutland,Vermontから入手可能な白雲母タイプ)と、米国特許第3,756,908号明細書に一般的に記載された方法で製造された2重量パーセントのポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)フィブリドと、DuPont Co.,Wilmington,Delawareから入手可能な線密度0.22texおよび長さ0.64cmのNomex(登録商標)繊維であるフロック3重量パーセントとを含有した。したがって、マイカ紙層内の支持材料のパーセンテージは、60重量%のフロックおよび40重量%のフィブリドであった。
【0059】
ガラス織布をベースとした支持体層は、50μmのガラス糸を含有した。それは、マイカ紙層とガラス織布との間に置かれるエポキシ系接着剤(約9g/m2)によってマイカ紙層に付着された。次に、150℃に加熱されて2500N/cmのニップ圧力で作動するニップカレンダーロール間でこの集成体をカレンダー処理して接着剤を硬化させ、マイカ紙層、接着剤およびガラス織布支持体層を有する積層体構造物を製造した。得られた積層体構造物は、0.16mmの厚さおよび191g/m2の基本重量を有し、十分に接合され、優れた引張強さ、可撓性および良好なガーレイ多孔度を示した。この積層体構造物のデータは、表1および2に示される。
【0060】
比較例A
比較例Aは、ポリマーフロックを全く含有しないが、代わりに5重量パーセントのポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)フィブリドと、95重量パーセントのか焼マイカフレーク(Electrical Samica Flake Co.,Rutland,Vermontから入手可能な白雲母タイプとを含有すること以外、実施例1と同様の方法で製造された。得られた積層体構造物は、十分に接合され、0.151mmの厚さおよび188g/m2の基本重量を有した。この積層体構造物のデータは、表1および2に示される。
【0061】
表2に示されるように、積層体構造物の絶縁耐力は、実施例1の積層体構造物と同様であった。しかしながら、比較例Aの積層体構造物のガーレイ多孔度は、実施例1の積層体構造物よりも劇的に高く、多孔性がはるかに低い構造を示した。したがって、マイカ紙層の支持材料中にフロックが存在しないことは、最終積層体構造物のガーレイ多孔度に予想外の効果を有し、それは、高温カレンダリング下での薄いか焼マイカフレークおよび膜状のフィブリドの過度の高密度化の結果であると考えられる。
【0062】
比較例B
比較例Aを繰り返したが、か焼マイカの代わりに未か焼マイカフレーク(SWECOInc.,South Koreaから入手可能な白雲母タイプ)をマイカ紙層において使用した。得られた全積層体構造物は、0.18mmの厚さおよび183g/m2の基本重量を有した。この積層体構造物のデータは、表1および2に示される。
【0063】
表2に示されるように、未か焼マイカの使用は、低いガーレイ多孔度によって示されるように高多孔性基材をもたらした。しかしながら、絶縁耐力も望ましくなく低下した。
【0064】
比較例C
比較例Cは、マイカ紙層が100重量パーセントの未か焼マイカフレーク(SWECOInc.,South Koreaから入手可能な白雲母タイプ)のみを含有したこと以外、実施例Aと同様の方法で製造された。得られた全積層体構造物は、0.20mmの厚さおよび182g/m2の基本重量を有した。この積層体構造物のデータは、表1および2に示される。
【0065】
表2に示されるように、未か焼マイカを使用し、フィブリドを使用しないことにより、低いガーレイ多孔度によって示されるように好適に多孔性の基材をもたらした。しかしながら、絶縁耐力は、比較例Bよりもさらに一層低下した。
【0066】
実施例2
多層積層体構造物が3つの別個の層から製造され、ここで、ガラス織物支持体層は、2つのマイカ紙層の間に配置され、かつそれらに付着された。マイカ紙層は、実施例1の場合と同様であったが、90g/m2のより低い基本重量を有した。
【0067】
ガラス織布をベースとした支持体層は、50μmのガラス糸を含有した。それは、エポキシ系接着剤(約9g/m2)で2つのマイカ紙層のそれぞれに付着され、次に150℃に加熱されて2500N/cmのニップ圧力で作動するニップカレンダーロール間で集成体をカレンダー処理して、マイカ紙層、接着剤、ガラス織布支持体層、接着剤および別のマイカ紙層を有する積層体構造物を製造した。全積層体構造物の厚さは、0.17mmであった。得られた積層体構造物は、0.17mmの厚さおよび201g/m2の基本重量を有し、十分に接合され、優れた引張強さ、可撓性および良好なガーレイ多孔度を示した。この積層体構造物のデータは、表1および2に示される。付加的な層を使用しても、3層積層体構造物は、絶縁耐力とガーレイ多孔度との良好な組合せを有した。
【0068】
実施例3
実施例1および2の多層積層体構造物を幅15mmのテープのロールに切断する。次に、テープを使用して、150mm×75mmの断面寸法を有する金属導体にスパイラル状に巻き付ける。テープは、導体が十分に絶縁されるまで半巻きで(50%重なり合わせて)巻き付けられる。巻き付けられた導体は、そのままでモーターにおいて使用されるものもあるが、モーターにおいて使用する前にエポキシ樹脂で含浸されるものもある。テープは、導体に良好な電気絶縁を提供する。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】

次に、本発明の好ましい態様を示す。
1.電気絶縁物として使用するために適した積層体構造物であって、
a)90~99重量パーセントの均一に分散されたか焼マイカと、1~10重量パーセントの支持材料とを含む第1の紙層であって、前記支持材料の重量による大部分は、フロックの形態である、第1の紙層と、
b)一方向フィラメント、または一方向ヤーン、または織ヤーンを含む支持体層であって、第1および第2の面を有する支持体層と
を含み、
前記支持体層の前記第1の面は、前記第1の紙層の面に直接結合され、
前記積層体構造物は、15kV/mm以上の絶縁耐力、400秒以下のガーレイ多孔度および60重量パーセント以上の全マイカ含有量を有する、積層体構造物。
2.前記フロックは、アラミド、セルロース、酢酸塩、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ガラス、ロックウール、アルミナのような多結晶、チタン酸カリウムのような単結晶またはそれらの混合物である、上記1に記載の積層体構造物。
3.前記第1の紙層内の前記フロックは、前記第1の紙層内の前記支持材料の全量に基づいて60重量パーセント以上の量で存在する、上記2に記載の積層体構造物。
4.前記第1の紙層内の前記フロックは、前記第1の紙層内の前記支持材料の前記全量に基づいて80重量パーセント以上の量で存在する、上記3に記載の積層体構造物。
5.前記アラミドは、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である、上記2に記載の積層体構造物。
6.電気絶縁物として使用するために適した積層体構造物であって、
a)90~99重量パーセントの均一に分散されたか焼マイカと、1~10重量パーセントの支持材料とを含む第1の紙層であって、前記支持材料の重量による大部分は、フロックの形態である、第1の紙層と、
b)一方向または織フィラメントヤーンを含む支持体層であって、第1および第2の面を有する支持体層と、
c)90~99重量パーセントの均一に分散されたか焼マイカと、1~10重量パーセントの支持材料とを含む第2の紙層であって、前記支持材料の重量による大部分は、フロックの形態である、第2の紙層と
を含み、
前記支持体層の前記第1の面は、前記第1の紙層の面に直接結合され、かつ前記支持体層の前記第2の面は、前記第2の紙層の面に直接結合され、および
前記積層体構造物は、60重量パーセント以上の全マイカ含有量を有する、積層体構造物。
7.前記フロックは、アラミド、セルロース、酢酸塩、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ガラス、ロックウール、アルミナのような多結晶、チタン酸カリウムのような単結晶またはそれらの混合物である、上記6に記載の積層体構造物。
8.15kV/mm以上の絶縁耐力および400秒以下のガーレイ多孔度を有する、上記7に記載の積層体構造物。
9.前記第1の紙層および前記第2の紙層の両方内の前記フロックは、前記それぞれの紙層内の前記支持材料の全量に基づいて60重量パーセント以上の量で存在する、上記8に記載の積層体構造物。
10.前記第1の紙層および前記第2の紙層の両方内の前記フロックは、前記それぞれの紙層内の前記支持材料の前記全量に基づいて80重量パーセント以上の量で存在する、上記9に記載の積層体構造物。
11.前記支持体層の前記第1または第2の面上に接着剤をさらに含む、上記1~10のいずれか一に記載の積層体構造物。
12.前記支持材料は、アラミドフィブリドであるバインダーをさらに含む、上記1~11のいずれか一に記載の積層体構造物。
13.前記支持体層の前記フィラメントまたは繊維は、ガラスフィラメントまたは繊維を含む、上記1~12のいずれか一に記載の積層体構造物。
14.0.635~5.1センチメートル(0.25~2インチ)の幅を有するテープの形態における、上記1~13のいずれか一に記載の積層体構造物。
15.含浸用樹脂、ワニスまたはそれらの混合物をさらに含む、上記1~14のいずれか一に記載の積層体構造物。