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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】薄膜デバイスの無溶剤製法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20220113BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20220113BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
G02B5/28
G02B5/22
G02B5/26
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019046030
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2019174799
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2019-05-20
(31)【優先権主張番号】62/643,038
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502151820
【氏名又は名称】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Viavi Solutions Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】アルバート アルゴイティア
(72)【発明者】
【氏名】カンニン リャン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ピー ザイデル
(72)【発明者】
【氏名】ヤロスロウ ジエバ
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-016849(JP,A)
【文献】米国特許第03138475(US,A)
【文献】特表2005-538233(JP,A)
【文献】特開2009-126977(JP,A)
【文献】特表2005-513207(JP,A)
【文献】特表2002-537149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
G02B 5/22
G02B 5/26
C09C 1/00
C09C 3/00
C09D 5/00
C23C 14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜デバイスを形成する方法であって、
ウェブを多層薄膜でコーティングするステップと、
ナイフによる補助を用いた機械力を加えて前記ウェブから前記多層薄膜を剥離するステップと
を含み、
前記多層薄膜はファブリペロー構造を含み、前記ウェブは剥離層を含まない、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記多層薄膜は3層を含む方法。
【請求項3】
薄膜デバイスを形成する方法であって、
ウェブを第1層でコーティングするステップと、
前記第1層をリフレクタ層でコーティングするステップと、
前記リフレクタ層を第2層でコーティングして多層薄膜を形成するステップと、
ナイフによる補助を用いたドライ技法により前記ウェブから前記多層薄膜を剥離するステップと
を含み、
前記多層薄膜はファブリペロー構造を含み、前記ウェブは剥離層を含まない、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記剥離された多層薄膜を回収するステップをさらに
含む方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、前記剥離された多層薄膜を粉砕するステップをさらに
含む方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法において、前記第1層及び前記第2層はそれぞれ独立して、有機
層又は複合有機/無機層である方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法において、前記ドライ技法は、前記多層薄膜を割る局部張力を発
生させる機械力付与の後に、高速のガス、空気、又は蒸気を加えることである方法。
【請求項8】
請求項3に記載の方法において、前記ドライ技法は局部超音波印加の機械力付与である
方法。
【請求項9】
請求項3に記載の方法において、前記ドライ技法は、前記ウェブから前記多層薄膜を直
接引っ張る機械力付与である方法。
【請求項10】
請求項3に記載の方法において、前記ドライ技法は、振動力を加えながら前記多層薄膜
を引き伸ばす機械力付与である方法。
【請求項11】
請求項3に記載の方法において、前記ドライ技法は、バキュームブレードを近接させる
ことにより前記ウェブから前記多層薄膜を剥ぎ取るバキューミングの機械付与力である方
法。
【請求項12】
請求項3に記載の方法において、各層を独立して、スロットダイ、グラビア、マイクロ
グラビア、インクジェット、カーテンコーティング、バーコータ、マイヤーバーコーティ
ング、フレキソ、及びオフセット印刷から選択されるプロセスを用いて塗布する方法。
【請求項13】
請求項3に記載の方法において、各層を独立して、物理蒸着及び化学蒸着から選択され
る真空下プロセスを用いて塗布する方法。
【請求項14】
請求項3に記載の方法において、前記第1層及び第2層を、スロットダイ、グラビア、
マイクログラビア、インクジェット、カーテンコーティング、バーコータ、マイヤーバー
コーティング、フレキソ、及びオフセット印刷から選択されるプロセスを用いて塗布し、
前記リフレクタ層を、物理蒸着及び化学蒸着から選択される真空下プロセスを用いて塗布
する方法。
【請求項15】
請求項5に記載の方法において、前記粉砕は、ジェットミル、低温粉砕、液体媒体上で
の超音波粉砕、微粉砕、及び高シア湿式粉砕から選択されるプロセスである方法。
【請求項16】
請求項3に記載の方法において、前記第1層及び前記第2層は、それぞれが独立して、
無色粒子、有機色素顔料、有機色素染料、無機着色粒子、有機吸収体粒子、無機吸収体粒
子、有機高屈折率誘電体粒子、無機高屈折率誘電体粒子、有機低屈折率誘電体粒子、無機
低屈折率誘電体粒子、無機金属粒子、無機複合体、無機合金のうち少なくとも1つを含む
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、2018年3月14日に出願された米国仮出願第62/643,038号の優先権を主張し、その開示を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、概して、薄膜デバイスを形成する方法であって、ウェブを多層薄膜でコーティングするステップと、機械力を加えてウェブから多層薄膜を剥離するステップとを含む、薄膜デバイスを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
薄膜デバイスは、概して、ウェブと多層構造体との間に剥離層を設けてウェブ上に作製される。場合によっては、剥離層は、薄膜デバイスのコーティング前に蒸発する塩化ナトリウム剥離層である。他の場合では、剥離層は、ポリエチレンテレフタレートウェブにより提供されるアセトン可溶ポリマー剥離層である。いずれの場合も、薄膜は、アセトン/水又は100%アセトンを用いて剥離層を溶解するウェットプロセスで剥ぎ取られる。有害な引火性のアセトン(溶剤)の使用には、剥離状態の薄膜のストリッピング、すすぎ、ろ過、及び乾燥用の特殊プロセス装置が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
剥離層を備えたウェブから多層構造体を除去する、但し苛性溶剤を用いずに除去する方法、例えば、現行のウェットプロセスの代わりに単純で安価なドライプロセスを用いる方法が必要である。さらに、又は代替的に、剥離層を備えないウェブから多層構造体を除去する方法が必要である。このような方法は、プロセスがより単純となり、付加的な材料がないのでより費用効果的となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、薄膜デバイスを形成する方法であって、ウェブを多層薄膜でコーティングするステップと、機械力を加えてウェブから多層薄膜を剥離するステップとを含む方法が開示される。
【0006】
別の態様では、薄膜デバイスを形成する方法であって、ウェブを第1層でコーティングするステップと、第1層をリフレクタ層でコーティングするステップと、リフレクタ層を第2層でコーティングして多層薄膜を形成するステップと、ドライ技法によりウェブから多層薄膜を剥離するステップとを含む方法が開示される。
【0007】
さらに別の態様では、剥離層を備えたウェブを用意するステップと、剥離層を多層薄膜でコーティングするステップと、機械力を加えてウェブから多層薄膜を剥離するステップとを含む、薄膜デバイスを形成する方法が開示される。
【0008】
種々の実施形態のさらに他の特徴及び利点は、一部が以下の説明に記載され一部が説明から明らかとなるか、又は種々の実施形態の実施により会得され得る。種々の実施形態の目的及び他の利点は、本明細書の説明で特に指摘される要素及び組み合わせにより実現及び達成されるであろう。
【0009】
本開示のいくつかの態様及び実施形態は、詳細な説明及び添付図面からさらに十分に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一例による、本方法の一態様を実施する搬送法を示す。
図2】本開示の一例による、薄膜デバイスの断面図である。
図3】本開示の一例による、薄膜デバイスの断面図である。
図4】本開示の一例による、薄膜デバイスの断面図である。
図5】本開示の一例による、薄膜デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び図を通して、同じ参照符号は同じ要素を示す。
【0012】
上述の概要及び以下の詳細な説明の両方が、例示及び説明のためのものにすぎず、本教示の種々の実施形態の説明を提供するものであることを理解されたい。各図に示す層/コンポーネントは、特定の図に関して説明されている場合があるが、特定の層/コンポーネントの説明が他の図の同等の層/コンポーネントにも当てはまることを理解されたい。
【0013】
広範且つ多様な実施形態において、薄膜デバイス10を形成する方法であって、ウェブ40を多層薄膜20でコーティングするステップと、機械力を加えてウェブ40から多層薄膜20を剥離するステップとを含む方法が開示される。一態様では、ウェブ40は剥離層30を含まず、多層薄膜20がウェブ40に直接成膜される。多層薄膜20は、3層、4層、5層、又は6層以上、例えば7層等の2つ以上の層を含み得る。一態様では、多層薄膜20は3層を含み得る。一態様では、多層薄膜20は5層を含み得る。多層薄膜20は、ファブリペロー構造を含み得る。ファブリペロー構造は、薄膜干渉効果をもたらすために5層以上を有し得る。ファブリペロー構造中の層数は、所望の光学特性に応じて変わり得るが、他の特性、例えば磁気特性に応じても変わり得る。本方法を用いて、特殊効果顔料等の薄膜デバイス10を作製することができる。多層薄膜20を構成する(comprising)層については、以下でより詳細に説明する。
【0014】
一態様では、薄膜デバイス10を形成する方法は、ウェブ40を第1層でコーティングするステップと、第1層をリフレクタ層でコーティングするステップと、リフレクタ層を第2層でコーティングして多層薄膜20を形成するステップと、ドライ技法によりウェブ40から多層薄膜20を剥離するステップとを含み得る。一態様では、ウェブ40は剥離層30を含まず、第1層等の多層薄膜がウェブ40に直接成膜される。本方法は、剥離された多層薄膜20を回収するステップをさらに含み得る。本方法は、剥離された多層薄膜20を粉砕するステップをさらに含み得る。第1層、リフレクタ層、及び第2層については、以下でより詳細に説明する。
【0015】
一態様では、薄膜デバイス10を形成する方法であって、剥離層30を備えたウェブ40を用意するステップと、剥離層30を多層薄膜20でコーティングするステップと、機械力を加えてウェブ40から多層薄膜20を剥離するステップとを含む方法が開示される。一態様では、多層薄膜20は3層を含み得る。一態様では、多層薄膜20は5層を含み得る。多層薄膜20は、ファブリペロー構造を含み得る。ファブリペロー構造は、薄膜干渉効果をもたらすために5層以上を有し得る。ファブリペロー構造中の層数は、所望の光学特性に応じて変わり得るが、他の特性、例えば磁気特性に応じても変わり得る。本方法を用いて、特殊効果顔料等の薄膜デバイス10を作製することができる。多層薄膜20を構成する層については、以下でより詳細に説明する。一態様では、剥離層30をコーティングする多層薄膜20は、剥離層30をコーティングする第1層と、第1層をリフレクタ層でコーティングすることと、リフレクタ層を第2層でコーティングして多層薄膜20を形成することとを含み得る。第1層、リフレクタ層、及び第2層については、以下でより詳細に説明する。
【0016】
本明細書に開示する方法で用いられるウェブ40は、剥離層30及び多層薄膜20の少なくとも一方を保持できる任意の材料であり得る。一態様では、ウェブ40は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の微細構造ウェブ40であり得る。ウェブ40は可撓性であり得る。一態様では、ウェブ40は剥離層30を含み得る。他の態様では、ウェブ40に剥離層30がなく、多層薄膜20、例えば第1層がウェブ40に直接成膜されてもよい。
【0017】
本明細書に開示する方法のいくつかで用いられる剥離層30は、低い付着力でウェブ40の表面に設けられ得る。一態様では、剥離層30は、ウェブ40に対する低い付着力よりも低い付着力を多層薄膜20の第1層に対して有し得る。このように、剥離層30は、多層薄膜20の第1層の代わりにウェブ40からより容易に除去することができる。一態様では、剥離層30は水溶性であり得る。剥離層30は、粉砕プロセス後に、且つアルミニウム等の金属層を含む顔料で用いられるような例えば不動態化/機能化ウェットプロセス前に、多層薄膜20から除去することができる。ドライストリッピングプロセス等のドライ技法を行うのに、剥離層30がなくてよく、又はウェブ40に対する低い付着力を有する剥離層30があってもよい。剥離層30は、ウェブ40と多層薄膜20との間にある必要はない。
【0018】
剥離層30は、ポリビニルアルコール配合物、多糖類配合物(デキストラン)、ポリアクリル酸配合物、ポリ酢酸ビニル配合物、ポリビニルピロリドン配合物、カルボキシメチルセルロース配合物、及びそれらの組み合わせから選択され得る。剥離層30は、水溶性だが、第1層、リフレクタ層、及び第2層を含む多層薄膜20のコーティングに用いられる溶剤には不溶であり得る。さらに、剥離層30の分子量を変えて水への溶解度を改善することができる。例えば、第1層が水系配合物を有する場合、剥離層30の水への溶解度を低くすべきである。剥離層30は、多層薄膜20の少なくとも第1層のコーティング及び乾燥に要する期間はその完全性を維持すべきである。
【0019】
一態様では、剥離層30は、ポリビニルアルコール(PVA)配合物であり得る。この配合物は、無毒、透明、且つ不活性である。これは、成膜特性に優れた水溶性ポリマーである。PVAのコーティングは、ポリエチレンフタレート(PET)等の疎水性ポリマーの表面に対する付着力が低く、大半の有機溶剤に不溶である。疎水性ポリマーシート(ウェブ)をプレコートしたPVA層を、1つ又は複数の溶剤型層でコーティングする場合、PVA層は、コーティングプロセス中に無傷のままとなるだけでなく、圧縮空気又は水流からの衝撃等の機械力を加えることによりこれらの層をポリマーシート(ウェブ)から都合よく分離させることができる。このように、PVA層は、剥離層30として機能することができる。
【0020】
PVA層は、PVA水溶液でウェブ40をコーティングすることにより形成され得る。完全に加水分解されたPVA及び部分的に加水分解された(例えば、86%~88%加水分解)PVAの両方を用いて、剥離層30を形成することができる。さらに、Mw10,000~20,000の範囲の分子量を有するPVAが、剥離層30に適し得る。部分的に加水分解されたPVAからは、透明なコーティング及び高い冷水への溶解度を得ることができる一方で、完全に加水分解されたPVAからは、その強力な分子内水素結合相互作用に起因してより硬質のコーティングを得ることができる。低分子量は、水への溶解を速く且つ溶液粘度を低くすることを可能にし得る。これとは逆に、高分子量では、水への溶解が遅く溶液粘度が高くなり得る。
【0021】
0.01%~30%PVAを有する配合物を用いて、ウェブ40をコーティングし且つ剥離層30を形成することができる。PVAに加えて、界面活性剤、変形剤、有機溶剤、防汚剤等の添加材を、剥離層30を形成する配合物に含ませて、コーティング性能を向上させることができる。効果的なPVA剥離層30は、ウェブ40の特性に応じて、約1nm~10ミクロンの、例えば約50nm~約1100nmの範囲の層厚を有し得る。
【0022】
PVAは、室温又は高温で架橋剤により架橋させることができる。適切な架橋剤は、グリオキサール及びグルタルアルデヒド等のジアルデヒド類;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸類;ホウ酸;及びAl3+等の一部の多価金属イオンが挙げられるが、これらに限定されない。PV層の架橋は、PVA層を不水溶性にし、且つ水性コーティング用の剥離材料として機能可能にすることができる。
【0023】
一態様では、ポリアクリル酸(PAA)PVA混合物を剥離層30として用いることができる。ウェブ40に対するこの混合物の付着力は、水酸化ナトリウム等の塩基を添加して中和されたカルボン酸基の含有率を制御することにより調整することができる。PAAは、水酸化ナトリウムと反応すると、カルボン酸ナトリウム塩を形成する。ウェブ40に対するPAA・PVA剥離層30の付着力は、カルボン酸塩の含有率が低下すると低下し得ることが分かっている。このように、剥離層30中のカルボン酸塩の量を制御することにより、多層薄膜20の剥離を調整することが可能である。
【0024】
剥離層30は、無機塩及び/又は有機塩を含み得る。剥離層30での使用に適した塩の非限定的例としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。塩は、剥離層30の特性を変更することができ、剥離層30とウェブ40との間の付着力を低下させることができる。
【0025】
多層薄膜20は、第1層、リフレクタ層、第2層、及び吸収層及び/又は磁気層等の追加層の少なくとも1つを含み得る。追加層は、多層薄膜20内の種々の位置に位置付けることができる。例えば、多層薄膜20は、吸収層/誘電体層/リフレクタ層/誘電体層/吸収層等のファブリペロー構造を含み得る。
【0026】
開示の方法では、第1層及び第2層は、それぞれが独立して有機層又は複合有機/無機層であり得る。第1層及び第2層は、それぞれが独立して、無色粒子、有機色素(colorant)顔料、有機色素染料、無機着色粒子、有機吸収体(absorber)粒子、無機吸収体粒子、有機高屈折率誘電体粒子、無機高屈折率誘電体粒子、有機低屈折率誘電体粒子、無機低屈折率誘電体粒子、無機金属粒子、無機複合体、無機合金のうち少なくとも1つを含み得る。第1層及び第2層の分子及び/又は粒子は、分子又は粒子のサイズが入射光の波長よりも大きい場合に生じ得るミー散乱を起こさないサイズを有し得る。これは、入射光の波長が粒子のサイズよりも大きい場合のレイリー散乱の逆である。
【0027】
無機高屈折率誘電体粒子及び無機低屈折率粒子の非限定的例としては、SiO、TiO、Al、ZrO、WO、VO、ITO、Ta、CeO、Y、ZnS、ZnO、In、La、MgO、Nd、Pr11、Fe、Fe、SiO、SnO、FeOx、MgF、AlF、CeF、LaF、LiF、CaF、TiC、TiN、サーメット、ダイヤモンドライクカーボン、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属炭窒化物、金属酸炭化物、金属酸窒化物、金属酸炭窒化物、炭化ホウ素、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
有機吸収体粒子及び無機吸収体粒子の非限定的例としては、炭素、黒鉛、ケイ素、ゲルマニウム、サーメット、誘電体マトリックス中に混合した金属、及び可視スペクトルで一様な又は選択的な吸収体として作用可能な他の物質が挙げられる。サーメット、及びインコネル、ステンレス鋼、ハステロイ等の種々の金属も、それらの光学的及び物理的特性により用いることができる。一部の金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属炭窒化物、金属酸炭化物、金属酸窒化物、金属酸炭窒化物も、有機マトリックスに埋め込まれている場合のそれらの吸収特性により用いることができる。
【0029】
第1層及び/又は第2層は、使用可能な有機モノマー及びポリマー、アクリレート類(例えば、メタクリレート)、エポキシ類、ペルフルオロアルケン類、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリエステル類、ポリビニル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリカーボネート類、ポリ尿素類、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、硝酸セルロース、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0030】
第1層及び/又は第2層は、最終薄膜顔料フレークの外観だけでなく他の機能性も変えるように無機誘電体粒子を含むことができる。無機粒子の添加により生じる機能特性としては、電気及び/又は磁気特性、蛍光特性、アップコンバージョン特性(例えば、近赤外レーザビームを可視光に変換する、又は赤色等の光の低エネルギー色を青色又は緑色等の高エネルギー色にする)、難燃性、及び静電気散逸性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
有機色素顔料及び有機色素染料の非限定的例としては、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラピリミジン、アントラキノン、アンタントロン、ベンゾイミダゾロン、ジスアゾ縮合、アゾ、キノロン、キサンテン、アゾメチン、キノフタロン、インダントロン、フタロシアニン、トリアリルカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、イソインドリン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、チアジンインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロン、イソビオラントロン、ミヨシメタン(miyoshi methane)、トリアリルメタン、バット染料、硫化染料、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0032】
多層薄膜20は、PVA-PETにコーティングされたエポキシ、アクリレート、又はエポキシアクリレートハイブリッドの第1層を含み得る。第1層は、溶剤型配合物を用いたスロットダイコータ又はドローダウンコータを用いてコーティングされ得る。一態様では、この第1層は、エアストリップ法等の機械力付与によりPETウェブ40から首尾よく剥離することができる。
【0033】
さらに別の態様では、多層薄膜20は、(HL)、(HL)、(HL)H、(LH)L、及びそれらの組み合わせ等の設計を含む全誘電体薄膜干渉構造体を含むことができ、ここでnは、約2~4等の約1~約100の整数である。L層及びH層はそれぞれ、選択された設計波長でQWOTである。他の適切な設計は、光学的厚さの異なる高誘電率コーティング及び低誘電率コーティングの組み合わせにより得ることもでき、設計によっては、同じ波長のQWOTを有しない層があり得る。同様に、光学設計によっては対称であり得る。
【0034】
第1層、第2層、リフレクタ層、及び追加層を含む多層薄膜20は、成膜プロセスを用いて成膜され得る。一態様では、各層が独立して、スロットダイ、グラビア、マイクログラビア、インクジェット、カーテンコーティング、バーコータ(metering rod)、マイヤー(myer)バーコーティング、フレキソ、及びオフセット印刷から選択されるプロセスを用いたコーティングとして塗布され得る。別の態様では、各層が独立して、物理蒸着及び化学蒸着から選択される真空下プロセスを用いたコーティングとして塗布され得る。さらに別の態様では、第1層及び第2層を、スロットダイ、グラビア、マイクログラビア、インクジェット、カーテンコーティング、バーコータ、マイヤーバーコーティング、フレキソ、及びオフセット印刷から選択されるプロセスを用いて塗布することができ、リフレクタ層が、物理蒸着及び化学蒸着から選択される真空下プロセスを用いて塗布される。
【0035】
多層薄膜20のリフレクタ層は、真空下で成膜され得る。リフレクタ層は、金属等の反射特性を有する任意の材料を含み得る。反射特性を有する材料の非限定的例としては、アルミニウム、銀、銅、金、白金、スズ、チタン、パラジウム、ニッケル、コバルト、ロジウム、ニオブ、クロム、及びそれらの化合物、組み合わせ、又は合金が挙げられる。他の適切な反射合金及び化合物の非限定的例としては、青銅、真鍮、窒化チタン等、並びに銀パラジウム等の上記金属の合金が挙げられる。銅、金、銀銅合金、真鍮、青銅、窒化チタン、及びそれらの化合物、組み合わせ、又は合金等のリフレクタ層は、固有の色を有し得る。
【0036】
リフレクタ層は、有機マトリックスに組み込んだ反射特性を有する粒子も含み得る。真空下で成膜されたリフレクタ層について記載したのと同じ材料を、適切な有機マトリックスへの添加粒子として用いることができる。さらに、銀リフレクタ層を、Brashear銀めっき(Brashear silver)プロセスの変形形態を用いて成膜することができる。
【0037】
アルミニウムを含むリフレクタ層に基づく特殊効果顔料を、不動態化処理を用いてさらに処理して、アルミニウム層の酸化を回避することができる。
【0038】
多層薄膜20は、第1層、リフレクタ層、第2層、及び/又は追加層のそれぞれに独立して粘着及び接着促進材料を含み得る。これらの材料は、各層に直接添加されてもよく、又は多層薄膜20の界面に添加されてもよい。適切な接着促進剤としては、ヒドロキシル、チオール、アミン、カルボン酸、リン酸、又はシロキサン基を含む分子及び樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書に開示する方法は、機械力を加えてウェブ40及び/又は存在する場合は剥離層30を有するウェブ40から多層薄膜20を剥離するステップ等、ドライ技法を用いるステップを含み得る。一態様では、機械力を加えることで多層薄膜20にフレークを形成させることができ、それを剥離してさらに処理することができる。別の態様では、機械力を加えてもフレークは形成されないが、特殊な光学及び機能設計を有する自立薄膜デバイス10が形成される。
【0040】
機械力付与は、多層薄膜20を割ってフレークを形成する局部張力を含み得る。一態様では、局部張力は、ウェブ40の裏面と接触する鋭利なナイフにより補助することができる。局部張力を加えた後に、高速のガス、空気、又は蒸気を加えることができる。特に、エアストリッププロセスは、(1)ウェブ40に張力を加えて多層薄膜20に割れを生じさせ、フレーク等の薄膜デバイスを形成すること、及び(2)多層薄膜20に圧縮空気流を当てて、ウェブ40から多層薄膜20のフレークを吹き飛ばすことを含み得る。
【0041】
別の態様では、機械力付与は、局部超音波印加を含み得る。別の態様では、機械力付与は、ウェブ40から多層薄膜20を直接引っ張ることを含み得る。機械力付与は、振動力を加えながら多層薄膜20を引き伸ばすことも含み得る。機械力付与は、バキュームブレードを多層薄膜20に近接させてそれをウェブ40から回収室に吸い込むことにより、ウェブ40から多層薄膜を剥ぎ取るバキューミングも含み得る。フレーク等の薄膜デバイスの回収は、図1に示すもの等の薄膜デバイス搬送法により達成することができる。
【0042】
剥離された多層薄膜20は、回収及び/又は粉砕等のさらなる処理が施され得る。一態様では、剥離された多層薄膜20は、適当な通気システムによるサイクロンへの回収等で回収できるフレークの形態である。回収されたフレークは粉砕され得る。粉砕は、ジェットミル、低温粉砕、液体媒体上での超音波粉砕、微粉砕、及び高シア湿式粉砕から選択されるプロセスであり得る。フレークには、続いてすすぎ及び/又は乾燥を施すことができる。一態様では、乾燥ステップは必要ないが、それは、アルミニウム不動態化プロセスには、水、ドデシルホスホン酸ナトリウム、オクチルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、ドデシルリン酸カリウム等、及びシリカ、チタニア、ジルコニア、酸化セリウム、アルミナ、又はそれらの組み合わせ等の材料でのゾルゲルカプセル化処理が必要なものがあるからである。
【0043】
さらに別の態様では、薄膜デバイス10は、多層薄膜20及び剥離層30を含み得る。剥離層30は、光学特性を変えることができ、且つ薄膜デバイス10に機能性を組み込むことができる。図2及び図3に示すように、剥離層30は、多層薄膜20の片面にあってもよく、又は多層薄膜20の両面にあってもよい。剥離層30が多層薄膜20の両面にある場合、各剥離層30は同じであっても異なっていてもよい。例えば、一方の剥離層30は、ウェブ40と本来接触している剥離層30として機能することができ、第2剥離層30は、薄膜に機能性を追加することができる。
【0044】
一態様では、図4に示すように、剥離層30をウェブ40の両面にコーティングして製造費を減らすことができる。第1案の製造構造は、以下のようなものとなる:多層薄膜/剥離層/ウェブ/剥離層/多層薄膜。
【0045】
さらに別の態様では、剥離層30及び多層薄膜20のスタックをウェブ40上に形成して製造費を減らすことができる。図5に示すように、第2案の製造構造体は、以下のようなものとなる:ウェブ/剥離層/多層薄膜/剥離層/多層薄膜20。これにより、ウェブ40の同じ表面からのフレークの量が2倍になり得る。さらに、第1案(図4)及び第2案(図5)の製造構造体を組み合わせて、費用をさらに減らすと共に生産量を増やすことができる。
【実施例1】
【0046】
3層を含む多層薄膜20を、PETのウェブ40に直接成膜した。すなわち、剥離層は存在しなかった。多層薄膜20は、有機赤色色素を含む複合ハイブリッドアクリレートエポキシの第1有機層を含んでおり、これはスロットダイプロセスを用いて成膜した。真空蒸着を用いて、アルミニウムのリフレクタ層で第1層をコーティングした。スロットダイプロセスを用いて、有機赤色色素を含む複合ハイブリッドアクリレートエポキシを含む第2層をリフレクタ層にコーティングした。
【0047】
機械力を多層薄膜20に加えて、これをウェブ40から剥離した。機械力には、ウェブの裏面に接触する鋭利なナイフを用いてウェブ40に張力を加えることにより、多層薄膜20を割ることが含まれた。ナイフは、多層薄膜20への損傷を回避するために多層薄膜20と直接接触させなかった。続いて、ウェブ40を覆う多層薄膜20に高流量/高速の空気流を向けて、割れたコーティングを吹き飛ばした。ナイフ(割れ)の適用と空気の適用とはほぼ同時に行った。このようにして、多層薄膜20をウェブ40から剥離し、フレーク等の薄膜デバイスを形成した。フレークを、適当な通気システムによりサイクロンへ回収した。フレーク、すなわち剥離された多層薄膜20は、ジェットミル粉砕技術を用いて粉砕した。
【実施例2】
【0048】
3層を含む多層薄膜20を、水溶性ポリマー配合物(PVA)でできた剥離層30を有するPETのウェブ40に直接成膜した。多層薄膜20は、有機赤色色素を含む複合ハイブリッドアクリレートエポキシの第1有機層を含んでおり、これはスロットダイプロセスを用いて成膜した。真空蒸着を用いて、アルミニウムのリフレクタ層で第1層をコーティングした。スロットダイプロセスを用いて、有機赤色色素を含む複合ハイブリッドアクリレートエポキシを含む第2層をリフレクタ層にコーティングした。
【0049】
機械力を多層薄膜20に加えて、これをウェブ40から剥離した。機械力には、ウェブの裏面に接触する鋭利なナイフを用いてウェブ40に張力を加えることにより、多層薄膜20を割ることが含まれた。ナイフは、多層薄膜20への損傷を回避するために多層薄膜20と直接接触させなかった。続いて、ウェブ40を覆う多層薄膜20に高流量/高速の空気流を向けて、割れたコーティングを吹き飛ばした。ナイフ(割れ)の適用と空気の適用とはほぼ同時に行った。このようにして、多層薄膜20をウェブ40から剥離し、フレーク等の薄膜デバイスを形成した。フレークを、適当な通気システムによりサイクロンへ回収した。フレーク、すなわち剥離された多層薄膜20は、ジェットミル粉砕技術を用いて粉砕した。
【実施例3】
【0050】
クロムの第3層、硫化亜鉛の第1層、アルミニウムのリフレクタ層、硫化亜鉛の第2層、及びクロムの第4層に基づいて、5層薄膜を形成した。多層薄膜20は、緑色シフトが無いか又は遅い設計をもたらすように硫化亜鉛誘電体層(第1層及び第2層)の光学的厚さを有するものとした。第1層及び第2層は、PETウェブ40にボックスコータ(box coater)を用いて真空物理蒸着した。PETウェブ40は、PVAの剥離層30(60nm~200nm)を含んでいた。PVA剥離層30は、エアストリップ可能且つ水溶性であった。緑色多層薄膜20は、以下の構造を有していた:8nm Cr/368nm ZnS/80nm Al/368nm ZnS/8nm Cr。
【実施例4】
【0051】
クロムの第3層、フッ化マグネシウムの第1層、アルミニウムのリフレクタ層、フッ化マグネシウムの第2層、及びクロムの第4層に基づき、5層薄膜干渉を形成した。多層薄膜20は、赤色/金色シフト設計をもたらすようにフッ化マグネシウム誘電体層(第1層及び第2層)の光学的厚さを有するものとした。第1層及び第2層は、PETウェブ40にロールツーロール真空物理蒸着した。PETウェブ40は、厚さの異なるPVAの剥離層30(60nm~200nm)を含んでいた。PVA層のコーティングには、それぞれウェット膜厚4ミクロン、12ミクロン、及び50ミクロンに相当するKバー0番、2番、及び5番を用いたK101コントロールKハンドコータを用いた。いずれの場合も、PVAコーティング配合物は、2.2%固形分を有し、PVA層の乾燥物理膜厚は、それぞれ88nm、264nm、及び1100nmであった。3つのPVA剥離層30を有する多層は、エアストリップ可能且つ水溶性であった。厚いPVA層ほど、エアストリッププロセスを効率的にする傾向があった。赤色/金色多層薄膜20は、以下の構造を有していた:10nm Cr/250nm MgF/80nm Al/250nm MgF/10nm Cr。
【0052】
上述した説明から、本教示をさまざまな形態で実施できることが当業者には理解され得る。したがって、これらの教示を特定の実施形態及びその例に関連して説明したが、本教示の真の範囲をそれに限定すべきではない。本明細書中の教示の範囲から逸脱せずに、種々の変更及び修正を行うことができる。
【0053】
この範囲開示は、広義に解釈されるものとする。本開示は、本明細書に開示されたデバイス、活動、及び機械的作用を達成するための等価物、手段、システム、及び方法を開示するためのものである。開示された各デバイス、製品、方法、手段、機械要素、又は機構について、本開示は、本明細書に開示された多くの態様、機構、及びデバイスを実施する等価物、手段、システム、及び方法を同じくその開示に包含し且つ教示することが意図される。さらに、本開示は、コーティング及びその多くの態様、特徴、及び要素に関する。このようなデバイスの使用及び動作は動的なものとすることができ、本開示は、デバイス及び/又は製品の使用の等価物、手段、システム、及び方法、並びに本明細書に開示された動作及び機能の説明及び趣旨と一致したその多くの態様を包含することが意図される。本願の特許請求の範囲も同様に、広義に解釈されるものとする。
【0054】
本明細書中の発明の多くの実施形態での説明は、例示的なものにすぎず、したがって、本発明の要旨から逸脱しない変形形態は、本発明の範囲内にあることが意図される。このような変形形態は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱するものとみなされないものとする。
図1
図2
図3
図4
図5