(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】がんの治療のためのCCR5の修飾薬の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/46 20060101AFI20220128BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20220128BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220128BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220128BHJP
C12Q 1/04 20060101ALN20220128BHJP
C12Q 1/66 20060101ALN20220128BHJP
C12Q 1/6827 20180101ALN20220128BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220128BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20220128BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220128BHJP
A61P 35/02 20060101ALN20220128BHJP
G01N 33/574 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
A61K31/46
A61K31/506
A61P35/00
A61P35/04
C12Q1/04
C12Q1/66
C12Q1/6827 Z
C12N15/09 Z
C12N15/867 Z
C12N15/12
A61P35/02
G01N33/574 A
(21)【出願番号】P 2019080669
(22)【出願日】2019-04-22
(62)【分割の表示】P 2015512749の分割
【原出願日】2013-05-14
【審査請求日】2019-05-21
(32)【優先日】2012-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514291060
【氏名又は名称】ペステル リチャード ジー.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ペステル リチャード ジー.
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-518957(JP,A)
【文献】PLoS ONE,2011年,Vol.6, No.12,e28842, pp.1-11
【文献】ONCOLOGY REPORTS,2009年,Vol.21,pp.1113-1121
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P 35/00-35/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のCCR5拮抗薬を含む、対象におけるCCR5発現がん細胞の転移を治療、予防、または管理するための医薬製剤であって、
該医薬製剤は、原発部位から身体内の第二部位へ拡散しているCCR5発現がん細胞の数
を低減するものであり、該第二部位は循環系からのコロニー形成を受けたものであり、
前記CCR5拮抗薬が、4,4-ジフルオロ-N-[(1S)-3-[(1R,5S)-3-(3-メチル-5-プロパン-2-イル-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-1-フェニルプロピル]シクロヘキサン-1-カルボキサミド(「マラビロック」)もしくは(4,6-ジメチルピリミジン-5-イル)-[4-[(3S)-4-[(1R)-2-メトキシ-1-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]-3-メチルピペラジン-1-イル]-4-メチルピペリジン-1-イル]メタノン(「ビクリビロック」)であり、
該CCR5発現がん細胞が、乳がん細胞である、医薬製剤。
【請求項2】
前記第二部位が、肝臓、脳、膀胱、肺、副腎、腎臓、皮膚、膵臓および骨からなる群より選択される1または複数の器官である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記CCR5拮抗薬は、前記身体内の第二部位における前記CCR5発現がん細胞の増殖または生存を阻害していない、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記第二部位が、肝臓、脳、膀胱、肺、副腎、腎臓、皮膚、膵臓および骨からなる群から選択される、1または複数の器官である、請求項3に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記CCR5拮抗薬が、CCL5に競合してCCR5発現がん細胞に結合する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項6】
従来型のがん治療に対する補助療法としてCCR5拮抗薬が投与されるものであることをさらに含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項7】
下記をさらに含む、請求項1に記載の医薬製剤;
i.対象の予後が改善されること。
【請求項8】
下記のうちの少なくとも一つをさらに含む、請求項1に記載の医薬製剤;
i.CCR5発現がん細胞へのケモカインの移動、およびCCR5発現がん細胞からのケモカインの移動が制御されていること;
ii.蛍光標識細胞分取(FACS)解析によってCCR5発現が富化されたCCR5発現がん細胞が特定されていること;
iii.CCL5およびCCR5発現の一つまたは両方が富化されたCCR5発現がん細胞が特定されていること;
vi.前記細胞の試料にCCL5を加え、誘導されたカルシウム流を蛍光強度によって評価することによってCCR5発現がん細胞が特定されていること;
vii.CCR5拮抗薬が、CCR5発現がん細胞の試料のCCL5誘導性カルシウムシグナルを阻止するかどうかが決定されていること;ならびに、
viii.CCR5拮抗薬が、CCR5発現がん細胞の試料のコラーゲンゲルへのFBS誘導性浸潤を阻止するかどうかが決定されていること。
【請求項9】
前記乳がんの分子サブタイプが、基底がんおよびHer2がんのうちの一つである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記乳がん細胞が、腺管癌、腺癌、小葉(小細胞)癌、腺管内癌、乳腺髄様がん、乳粘液性がん、乳管がん、乳頭状乳がん、乳がんのパジェット病、および炎症性乳がんのうちの一つからのものである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記CCR5拮抗薬が、医薬製剤の一部として投与され、ならびに任意に、水溶液、脂質溶液、懸濁液、固体剤形、エアロゾル、乾燥粉末、坐剤、膣坐薬、局所、および皮膚用パッチ剤のうちの一つとして投与される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記医薬製剤が、酸、エステル、または薬剤的に許容できる塩の形態で前記CCR5拮抗薬を含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記CCR5拮抗薬が、一またはそれ以上の用量において約10μg/kg~60mg/kgの量で投与される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項14】
CCR5拮抗薬を
含む、
がん治療を補助し、およびCCR5発現がん細胞の転移を治療、予防、または管理するための補助組成物であって、
該CCR5拮抗薬が、4,4-ジフルオロ-N-[(1S)-3-[(1R,5S)-3-(3-メチル-5-プロパン-2-イル-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-1-フェニルプロピル]シクロヘキサン-1-カルボキサミド(「マラビロック」)もしくは(4,6-ジメチルピリミジン-5-イル)-[4-[(3S)-4-[(1R)-2-メトキシ-1-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]-3-メチルピペラジン-1-イル]-4-メチルピペリジン-1-イル]メタノン(「ビクリビロック」)であり、
該CCR5発現がん細胞が、乳がん細胞である
、該補助組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年5月14日に出願された、「Use Of Modulators Of CCR5 In The Treatment Of Cancer And Cancer Metastasis」という表題の米国仮特許出願第61/646,586号;および2012年5月14日に出願された、「Use Of Modulators Of CCR5 In The Treatment Of Cancer And Cancer Metastasis」という表題の同第61/646,593号の利益を主張するものであり、これら両方の全体が参照により本発明に組み込まれている。
【0002】
発明の分野
本開示は、部分的に、がんを有する対象が該がんの転移を起こすリスクを有するかどうかを判定する方法およびがん転移(methastasis)を阻止する方法に関する。
【0003】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、部分的に、PASPA-UNAM(M.A.V-V.)、NIH助成金R01CA070896、R01CA075503、R01CA132115、R01CA107382、R01CA086072(R.G.P.)、R01CA120876(M.P.L)、キメルがんセンターNIHがんセンター(Kimmel Cancer Center NIH Cancer Center)中核助成金P30CA056036(R.G.P.)、Dr. Ralph and Marian C. Falk医学研究基金およびMargaret Q. Landenberger研究基金からの多額の助成金、並びにペンシルベニア保険局(R.G.P.)からの助成金によって支援を受けた。従って、合衆国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
乳がんは、毎年、米国において40,000人の女性の死亡を、そして世界において410,000人の女性の死亡を引き起こしている1。前記疾患の治療の進歩にもかかわらず、早期乳がんを有する患者の20%~30%が、遠隔転移性疾患を伴う再発を引き起こす2。それらの患者において、転移は主な死因となる。基底腫瘍を有する患者は、転移リスクが増加しており、生存率がより低い3、4。Kennecke et al.は、3,726人の乳がん患者に対して研究を行い、ルミナール(luminal)AまたはルミナールB腫瘍を有する患者と比較して、基底腫瘍が、転移をより高い頻度で引き起こし、転移の同定から死亡までの時間が短いことを報告した4。基底乳腺腫瘍に通常存在する5、AR、ER、およびHER-2の非存在は、それらがホルモン療法またはHER-2標的化療法に応答しにくいことを意味している。現在、化学療法、放射線照射、および外科手術は、基底乳がんを有する患者にとっての唯一の選択肢であるが、その全てが、転帰不良を示す6。基底乳がんに対する特異的標的化療法の必要に依然として迫られている。
【発明の概要】
【0005】
発明の簡単な概要
例示として本明細書で開示される実施形態の特定の態様が、以下に要約される。これらの態様が、本明細書で開示および/または特許請求される発明が取り得る特定の形態の簡潔な概要を読者に提供することのみを目的として提供されていること、並びに、これらの態様が、本明細書で開示および/または特許請求されるいかなる発明の範囲をも限定することを意図していないことは理解されよう。実際には、本明細書で開示および/または特許請求されるいかなる発明も、以下に記載されない場合がある種々の態様を包含し得る。
【0006】
本開示は、概して、対象ががんを有するかどうか、またはがんを発症するリスクを有するかどうか、および/またはがん転移を起こすリスクを有するかどうかを判定する方法を含む、種々の方法に関する。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、患者における新生物またはがん転移を治療、予防、または管理する方法を含む。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、マウス上皮細胞またはマウス前立腺上皮細胞の形質導入から得られ、NeuT、Ha-Ras、およびc-Srcからなる群から選択される少なくとも1つの癌遺伝子によって形質転換された、一連の一つまたは複数の前立腺がん細胞株において、CCR5発現をダウンレギュレートするためのインビボでの方法を含む。いくつかの好ましい実施形態において、HIVウイルスが宿主細胞に侵入し感染するために用いるHIV受容体CCR5を標的とする薬剤が、がん細胞の、患者の身体における一次組織から二次部位への遊走および拡散を阻止するために用いられる。一実施形態では、HIV受容体CCR5を標的とする薬剤は、補助療法として、つまり、一次の、主要な、または初期のがん治療に加えて該薬剤が患者に投与される補助的治療として、用いられ得る。いくつかの実施形態において、そのような補助療法は、がんに対する他の療法に付随してまたは同時に投与され得る。一実施形態では、そのような補助療法は、他の補助療法と同時にまたは他の補助療法の後に、与えられ得る。
【0007】
いくつかの実施形態において、CCR5受容体拮抗薬は、補助療法として用いられる場合に、がん患者の予後を改善する。いくつかの実施形態において、複数の抗がん剤ががん治療と組み合わせて用いられる場合、CCR5受容体拮抗薬は、治療中のがんの転移を阻止することでがん治療の臨床転帰の改善に寄与することによって、治療効果を向上させるために、補助療法として含まれ得る。
[本発明1001]
がんを有する対象が該がんの転移を起こすリスクを有するかどうかを判定する方法であって、
(a)がんを有する対象から生物学的試料を得ること;
(b)該生物学的試料中のCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルを決定すること;ならびに
(c)ステップ(b)で決定されたCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルが、対照試料中のCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルと比較して増加している場合に、該対象が、該がんの転移を起こすリスクを有する可能性があると特定されること
を含む、前記方法。
[本発明1002]
対象ががんの転移を起こすリスクを有する可能性があると特定された場合に、対象にCCR5拮抗薬を投与することによってがん転移を治療、予防、または管理することをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
CCR5拮抗薬ががんの転移を阻止する、本発明1002の方法。
[本発明1004]
一次の、主要な、または初期のがん治療に加えて、CCR5拮抗薬が対象に投与される、本発明1002の方法。
[本発明1005]
前記がんが、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病(erythroleukemia leukemia)、骨髄異形成症候群;慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、毛様細胞性白血病;真性赤血球増加症;リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病;多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫および髄外性形質細胞腫;ワルデンストロームマクログロブリン血症;意味未確定の単クローン性高γグロブリン血症;良性単クローン性高γグロブリン血症;重鎖病;骨および結合組織肉腫、骨肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨線維肉腫、脊索腫、骨膜性肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫(angiosarcoma, hemangiosarcoma)、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫;脳腫瘍、神経膠腫、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、乏突起膠腫、非神経膠腫瘍(nonglial tumor)、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体腫、松果体芽腫、原発性脳リンパ腫;乳がん、例えば、限定はされないが、腺管癌、腺癌、小葉(小細胞)癌、腺管内癌、乳腺髄様がん、乳粘液性がん、乳管がん、乳頭状乳がん、パジェット病、および炎症性乳がん;副腎がん、褐色細胞腫および副腎皮質癌;甲状腺がん、乳頭様甲状腺がんまたは濾胞性甲状腺がん、甲状腺髄様がんおよび組織非形成性甲状腺がん;膵がん、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、およびカルチノイドまたは島細胞腫瘍;下垂体がん、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大症、および尿崩症(diabetes insipius);眼がん、眼メラノーマ、虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫、および毛様体メラノーマ(cilliary body melanoma)、および網膜芽細胞腫;腟がん、扁平上皮癌、腺癌、およびメラノーマ;外陰がん、扁平上皮癌、メラノーマ、腺癌、基底細胞癌、肉腫、およびパジェット病;子宮頸がん、扁平上皮癌、および腺癌;子宮がん、子宮内膜癌、子宮肉腫;卵巣がん、上皮性卵巣癌、境界型腫瘍、胚細胞性腫瘍、および間質性腫瘍;食道がん、扁平上皮がん、腺癌、腺様嚢胞癌、粘表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、メラノーマ、形質細胞腫、疣状癌、および燕麦細胞(小細胞)癌;胃がん、腺癌、肉芽腫性(ポリープ状)、潰瘍性、表在拡大型、びまん性拡大型、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および癌肉腫;結腸がん;直腸がん;肝臓がん、肝細胞癌および肝芽腫;胆嚢がん、腺癌;胆管癌、乳頭状癌(pappillary cancer)、結節性がん(nodular cancer)、びまん性がん(diffuse cancer);肺がん、非小細胞肺がん、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌および小細胞肺がん;精巣がん、胚腫瘍(germinal tumor)、精上皮腫、未分化の、古典的(典型的)な、精母細胞性の、非精上皮腫、胎生期癌、奇形腫、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)、前立腺がん、前立腺上皮内腫瘍、腺癌、平滑筋肉腫、および横紋筋肉腫;陰茎がん(penal cancer);口腔がん、扁平上皮癌;基底細胞がん(basal cancer);唾液腺がん、腺癌、粘表皮癌、および腺様嚢胞癌;咽頭がん、扁平上皮がん、および疣状癌(verrucous);皮膚がん、基底細胞癌、扁平上皮癌およびメラノーマ、表在拡大型黒色腫、結節性黒色腫、悪性黒子黒色腫、末端黒子型黒色腫;腎がん、腎細胞癌、腺癌、グラヴィッツ腫瘍(hypemephroma)、線維肉腫、移行上皮がん(腎盂および/または尿管(uterer));ウィルムス腫瘍;膀胱がん、移行上皮癌、扁平上皮がん、腺癌、癌肉腫、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽細胞腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原性癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌および乳頭状腺癌からなる群から選択される、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記がんが、基底乳がん(basal breast cancer)およびHer2陽性乳がんからなる群から選択される、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記CCR5拮抗薬が、4,4-ジフルオロ-N-[(1S)-3-[(1R,5S)-3-(3-メチル-5-プロパン-2-イル-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-1-フェニルプロピル]シクロヘキサン-1-カルボキサミド(「マラビロック」)および(4,6-ジメチルピリミジン-5-イル)-[4-[(3S)-4-[(1R)-2-メトキシ-1-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]-3-メチルピペラジン-1-イル]-4-メチルピペリジン-1-イル]メタノン(「ビクリビロック」)からなる群から選択される、本発明1002の方法。
[本発明1008]
前記CCR5拮抗薬が、4,4-ジフルオロ-N-[(1S)-3-[(1R,5S)-3-(3-メチル-5-プロパン-2-イル-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-1-フェニルプロピル]シクロヘキサン-1-カルボキサミド(「マラビロック」);
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-フェニルプロピルシクロブタンカルボキサミド;
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-フェニルプロピルシクロペンタンカルボキサミド;
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-フェニルプロピル-4,4,4-トリフルオロブタンアミド;
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-フェニルプロピル-4,4-ジフルオロシクロヘキサンカルボキサミド;
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-(3-フルオロフェニル)プロピル-4,4-ジフルオロシクロヘキサンカルボキサミド;およびそれらの薬剤的に許容できる塩または溶媒和化合物からなる群から選択される、本発明1002の方法。
[本発明1009]
前記CCR5拮抗薬が、
N-{3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-2H-ピラン-4-カルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}3-アゼチジンカルボキサミド;
1-ヒドロキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロペンタンカルボキサミド;
2-メチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロプロパンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-{1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-3-フランカルボキサミド;
3,3,3-トリフルオロ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-2-フランカルボキサミド;
1-(アセチルアミノ)-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロペンタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
1-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロペンタンカルボキサミド;
1-アミノ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロペンタンカルボキサミド;
1-メチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-オキソ-4-ピロリジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル)3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[6-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(3-{4-[(メチルスルホニル)アミノ]ベンジル}-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[7-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-{(1S)-3-[7-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3,3,3-トリフルオロ-N-{(1S)-3-[7-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
N-{(1S)-3-[7-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-{(1S)-3-[7-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[7-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-チア-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-[(1S)-3-(3-エンド-{[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ}-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル)-1-フェニルプロピル]アセトアミド;
N-[(1S)-3-(3-{[3-エンド-(4-フルオロフェニル)プロパノイル]アミノ}-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル)-1-フェニルプロピル]シクロブタンカルボキサミド;
N-[(1S)-3-(3-{[3-エキソ-(4-フルオロフェニル)プロパノイル]アミノ}-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル)-1-フェニルプロピル]シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-[(1S)-3-(3-エキソ-{[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ}-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル)-1-フェニルプロピル]アセトアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル)}1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-3-フランカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-2H-ピラン4-カルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-2-フランカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
メチル3-[({(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アミノ)カルボニル]-1-アゼチジンカルボン酸;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-アゼチジンカルボキサミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
2-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-ピロリジンカルボキサミド;
1-メチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-オキソ-4-ピロリジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-エチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-エチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-((1S)-1-フェニル-3-{3-エキソ-[2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル}プロピル)-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-((1S)-1-フェニル-3-{3-エキソ-[2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル}プロピル)-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-((1S)-1-フェニル-3-{3-エキソ[2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル}プロピル)アセトアミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-((1S)-1-フェニル-3-{3-エキソ-[2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル}プロピル)アセトアミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N(1S)-3-[3-エキソ-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N(1S)-3-[3-エキソ-(5-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル)3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(5-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(5-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(5-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-メチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
(2S)-1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-アゼチジンカルボキサミド;
(2R)-1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-アゼチジンカルボキサミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-ピロリジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-(トリフルオロメチル)シクロプロパンカルボキサミド;
2-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-メチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
2-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-メチル-3-オキセタンカルボキサミド;
3-エチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-オキセタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-オキセタンカルボキサミド;
3-エチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-オキセタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-メチル-3-オキセタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-オキセタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-メチル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-メトキシアセトアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N{-1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-メトキシプロパンアミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;およびそれらの薬剤的に許容できる塩からなる群から選択される、本発明1002の方法。
[本発明1010]
転移が、肝臓、脳、膀胱、肺、副腎、腎臓、骨およびそれらの組み合わせからなる群から選択される器官、またはそれ以上の器官における腫瘍転移である、本発明1004の方法。
[本発明1011]
CCR5拮抗薬ががんに対する他の療法に付随してまたは同時に投与される、本発明1002の方法。
[本発明1012]
CCR5拮抗薬が他の補助療法と同時にまたは他の補助療法の後に投与される、本発明1002の方法。
[本発明1013]
CCR5受容体拮抗薬が、がんを有する対象の予後を改善する、本発明1002の方法。
[本発明1014]
CCR5受容体拮抗薬が、治療中のがんの転移を阻止することでがん治療の臨床転帰の改善に寄与することにより、付随してまたは同時に投与されたがん治療の治療効果を向上させる、本発明1002の方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
上記概要、並びに本発明の他の特徴、態様、および利点、並びに以下の本発明の実施形態の発明を実施するための形態は、添付の特許請求の範囲および添付の好ましい実施形態の図面と併せて読むと、より良く理解される。
【
図1A】
図1Aは、遺伝子発現パターンに基づき分子サブタイプ(ルミナールA、ルミナールB、基底、正常様、およびHer-2)によって分類される乳がんを有する患者から得られた試料における、CCL5およびその受容体CCR5の発現のヒートマップを示している。
【
図1B】
図1B1~1B5は、乳がん分子サブタイプの、ルミナールA、ルミナールB、基底、正常様、およびHer-2の間のCCL5およびCCR5の発現の散布図および相関分析(スチューデントt検定)を示している。
【
図1C】
図1Cは、CCL5およびCCR5を過剰発現している乳がん試料の割合の定量化を示しており、棒グラフの分数は、
図Bに示される散布図の右上象限を表している。
【
図1D】
図1Dは、本願の材料および方法のセクションに記載される解析データベースにおける、異なる分子サブタイプの乳がんの無転移カプラン・マイヤープロットおよびログランク解析を示している。
【
図2A】
図2Aは、MDA-MB-231乳がん細胞におけるCCR5発現のフローサイトメトリーヒストグラムにより、CCR5
+細胞亜集団が同定されたことを示している。
【
図2B】
図2B1および2B2は、Fluo-4-AMを加え、その後CCL5(60μg/mL)およびFBS(5%)を逐次添加した細胞における、カルシウムシグナル伝達の誘導を示している。
【
図2C】
図2Cは、CCL5(15μg/mL)を化学誘引物質として用いた乳がん細胞系によるコラーゲンゲルへの3次元浸潤を示している。
【
図2D】
図2Dは、3つの独立した実験から得られた浸潤の平均距離±SEMを示している。
【
図2E】
図2Eは、MCF-10A細胞並びにMCF-10A-NeuT、MCF-10A-Ras、およびMCF-10A-Src誘導体の3次元浸潤アッセイを示しており、これらはCCL5誘導性浸潤が発癌性形質転換によって活性化されることを示している。
【
図2F】
図2Fは、
図2Eに示される、CCL5誘導性浸潤が発癌性形質転換によって活性化されることを示している、MCF-10A細胞並びにMCF-10A-NeuT、MCF-10A-Ras、およびMCF-10A-Src誘導体の3次元浸潤アッセイの定量化(F、平均値±SEM、n=3)を示している。
【
図2G】
図2Gは、FACSによって単離されたSUM-159細胞株由来のCCR5
+およびCCR5
-亜集団、並びに、ウシ胎児血清(FBS)を化学誘引物質として用いて評価された、コラーゲンゲルへのそれらの浸潤を示している。
【
図2H】
図2Hは、CCR5
+およびCCR5
-亜集団のコラーゲンへの浸潤の定量化を、
図2Gに示される2つの独立した実験の平均値±SEMとして示している。
【
図3A】
図3A1~3A4は、CCR5拮抗薬であるマラビロックまたはビクリビロック(100nmol/L)で30分間処置され、その後CCL5(60μg/mL)を添加された、Fluo-4AMを加えたMDA-MB-231細胞の強度-時間解析を示している。
【
図3B】
図3Bは、CCL5の添加時に蛍光強度が増加した細胞の割合の比較を示している。
【
図3C】
図3C1~3C4は、Hs578T細胞においてCCR5拮抗薬によって遮断されたCCL5誘導性カルシウムシグナル伝達を示している。
【
図3D】
図3Dは、
図3A~3Cに示される3~4つの独立した実験の定量化(平均値±SEM)を示している。
【
図4A】
図4Aは、CCR5拮抗薬(100nmol/L)存在下における、Hs578T乳がん細胞によるコラーゲンゲルへのFBS誘導性浸潤の3次元再構築を示している。
【
図4B】
図4Bは、
図4Aに示される、Hs578T乳がん細胞によるコラーゲンゲルへのFBS誘導性浸潤の定量化(平均値±SEM、n=3)および解析(ボンフェローニt検定)を示している。
【
図4C】
図4Cは、CCR5拮抗薬(100nmol/L)存在下でのSUM-159乳がん細胞によるコラーゲンゲルへのFBS誘導性浸潤の3次元再構築を示している。
【
図4D】
図4Dは、
図4Aに示される、SUM-159乳がん細胞によるコラーゲンゲルへのFBS誘導性浸潤の定量化(平均値±SEM、n=3)および解析(ボンフェローニt検定)を示している。
【
図5A】
図5Aは、非肥満性糖尿病(NOD)/重症複合免疫不全(SCID)マウス(以下ではNOD/SCIDマウスと省略)のビヒクル処置またはマラビロック処置(12時間ごとに8mg/kg)の例示的なインビボ生物発光画像(BLI)を示している。
【
図5B】
図5Bは、対照群(ビヒクル処置NOD/SCIDマウス、赤線/四角)および処置群(マラビロック処置NOD/SCIDマウス、青線/三角)におけるインビボ生物発光画像(BLI)の定量化(平均値±SEM、n=6)を示している。
【
図5C】
図5C1および5C2は、エキソビボイメージング(左)および墨汁染色(右)によって実証された、肺腫瘍の存在および処置間の差異を示している。
【
図5D】
図5Dは、転移性腫瘍を有するマウスの割合を示しており、対照群において有意により大きかった(P<0.0001、フィッシャーの直接確率検定)。
【
図5E】
図5Eは、肺のスライドにおける転移性腫瘍で覆われた領域の組織学的解析(ヘマトキシリン&エオシン染色、100倍)を示している。
【
図5F】
図5Fは、
図5Eに示される肺のスライドにおける転移性腫瘍で覆われた領域の定量化を示している。
【
図6A】
図6Aは、乳がん細胞の生存率に対するCCR5拮抗薬の影響を示している。MDA-MB-231細胞を漸増する濃度のマラビロック(逆三角形)またはビクリビロック(四角)に48時間暴露し、細胞生存率をMTTアッセイで評価した。
【
図6B】
図6Bは、pcDNA3.1
+/Zeo
+(MDA.ベクター)またはpCDNA3
+Zeo
+にクローニングされたヒトCCR5(MDA.CCR5)を安定的に形質移入されたMDA-MB-231細胞におけるCCR5発現を示している、フローサイトメトリー分析を示している。
【
図6C】
図6Cは、MDA.ベクターおよびMDA.CCR5におけるMDA-MB-231のインビトロでの増殖速度の比較を示している。
【
図6D】
図6Dは、マウスにおける確立した転移の成長に対するマラビロックのインビボでの影響の評価を示しており、図示されているように、マウスの処置はMDA.pFULG細胞の注入の10日後に開始され、治療の有効性を評価するためのマウスのインビボ生物発光画像法(BLI)は、0、10、17、24、31および38日目に開始された。
【
図6E】
図6Eは、対照(赤/四角)および処置群(青/三角)におけるインビボでのBLIの定量化(平均値±SEM、n=5)が、成長速度において差を示さなかったことを示している。
【
図6F】
図6Fは、MDA-MB-231細胞による肺コロニー形成でのCCR5の役割を評価するために用いられた実験計画のスキームを示している。
【
図6G】
図6Gは、マウスにMDA.pFULG細胞を注入してから24時間後の、マウスの肺におけるeGFP
+細胞の例示的な共焦点像を示しており、eGFPを発現している細胞は、マウス(n=5マウス/群)ごとの2つの異なる組織切片の(互いに700μm隔てられた)3つの無作為視野においてカウントされた。
【
図6H】
図6Hは、マウスにMDA.pFULG細胞を注入してから24時間後の、マウスの肺におけるeGFP
+細胞の数の定量化(H)を示しており、eGFPを発現している細胞は、マウス(n=5マウス/群)ごとの2つの異なる組織切片の(互いに700μm隔てられた)3つの無作為視野においてカウントされた。
【
図7A】
図7Aは、CCR5およびCCL5の富化に関連する遺伝子発現シグナル経路を決定するための、腫瘍試料のKEGGおよびGOを用いたGSEA解析を示しており、試験された乳がんデータセットにおける遺伝子は、最も高い2.5%CCL5/CCR5発現試料および最も低い(2.5%)CCL5/CCR5発現試料(N=54)におけるそれらの発現差異を表す信号対雑音計量によって分類され、色の勾配で示されており、赤色はCCL5/CCR5発現との正相関を示しており、青色はCCL5/CCR5発現との逆相関を示している。
【
図7B】
図7B1~7B5は、
図1Aに示される一連の2250例のヒト乳がんデータから得られた、乳がん分子サブタイプ間の、CCR1およびCCR5の発現の散布図およびスチューデントt検定を用いた相関分析を示している。
【
図7C】
図7C1~7C5は、
図1Aに示される一連の2250例のヒト乳がんデータから得られた、乳がん分子サブタイプ間の、CCR3およびCCL5の発現の散布図および相関分析を示している。
【
図7D】
図7D1および7D2は、最も高いレベルのCCR5(50%より上)および対するより低いレベルのCCR5発現(下位50%)について富化された乳がん試料を有する患者の、カプラン・マイヤー曲線を示している。
【
図8】
図8Aは、正常集団における、CCL5発現並びにその受容体であるCCR5、CCR1およびCCR3のヒートマップを図示している。
図8Bは、正常集団間の、CCL5発現並びにその受容体であるCCR5、CCR1およびCCR3の相互相関を表すヒートマップを図示している。
図8Cおよび8Dは、乳がん2550例の集団から得られた乳がん患者間の、CCL5発現並びにその受容体であるCCR5、CCR1およびCCR3の相互相関を表すヒートマップを図示している。
【
図9A】
図9Aは、CCR5に対するアロフィコシアニン(APC)標識抗体を安定的に形質移入されたHS578T細胞におけるCCR5発現のフローサイトメトリープロットを示している。
【
図9B】
図9B1および9B2は、Fluo-4-AMを加えた後にCCL5(60μg/mL)およびウシ胎児血清(FBS)(5%)を逐次添加したHS578T細胞におけるカルシウムシグナル伝達の誘導を示しており、RFIは相対蛍光強度を表している。赤色は、CCL5リガンドの添加には応答しなかったがFBS(ウシ胎児血清)には応答する細胞の領域をトレースしており、緑線はCCL5の添加に応答し、FBSにも応答する細胞のトレースである。このデータは、MDA-MB-231細胞が、いくつかの細胞がその受容体を有していてCCL5-に応答し、いくつかの細胞がCCR5受容体を有しておらずそのリガンドであるCCL5に応答しない、細胞集団であることを示している。
【
図9C】
図9Cは、CCR5に対するアロフィコシアニン(APC)標識抗体を安定的に形質移入されたSUM159細胞におけるCCR5発現のフローサイトメトリープロットを示している。
【
図9D】
図9D1および9D2は、Fluo-4-AMを加えた後にCCL5(60μg/mL)およびウシ胎児血清(FBS)(5%)を逐次添加したSUM159細胞におけるカルシウムシグナル伝達の誘導を示しており、RFIは相対蛍光強度を表している。赤色は、CCL5リガンドの添加には応答しなかったがFBS(ウシ胎児血清)には応答する細胞の領域をトレースしており、緑線はCCL5の添加に応答し、FBSにも応答する細胞のトレースである。このデータは、SUM-159細胞が、いくつかの細胞がその受容体を有していてCCL5-に応答し、いくつかの細胞がCCR5受容体を有しておらずそのリガンドであるCCL5に応答しない、細胞集団であることを示している。
【
図10A】
図10A1および10A2は、SUM159-ベクター対照細胞またはCCR5受容体を安定に過剰発現するSUM159細胞におけるCCR5受容体の存在量の蛍光標識細胞分取(FACS)解析を示している。CCR5に対するAPC標識抗体を用いて、CCR5陽性細胞を追跡した。
【
図10B】
図10Bは、カルシウムシグナル伝達誘導のスケジュールの略図を示しており、その中で、CCL5はSUM159-ベクター対照細胞またはCCR5受容体を安定に過剰発現するSUM159細胞に60秒の時点で添加され、FBSは320秒の時点で添加される。
【
図10C】
図10Cは、Fluo-4-AMを加えた後およびそれと同時にCCL5またはFBSを添加したSUM159-ベクター対照細胞における、カルシウムシグナル伝達の誘導(FBSと比較した、CCL5に対するCa
+2応答)を示している。
【
図10D】
図10Dは、SUM159-ベクター対照細胞の集団の平均蛍光を示している。
【
図10E】
図10Eは、60秒の時点において、CCR5受容体を安定に過剰発現するSUM159細胞におけるカルシウムシグナル伝達の誘導(FBSと比較した、CCL5に対するCa
+2応答)を示しており、FBSは320秒の時点で添加される。
【
図10F】
図10Fは、SUM159-CCR5細胞の集団の平均蛍光を示している。
【
図11A】
図11Aは、肺転移性腫瘍の死前の輝度(radiance antemortem)が肺に対する腫瘍量の代替測定として用いられる、マラビロック処置NOD/SCIDマウスに対して5週間行われた毎週のBLIの定量化結果によって証明された、マラビロックがMDA-MB-231乳がんの肺転移負荷量を低減するという事実を示している(
図5Bの通り)。
【
図11B】
図11Bは、肺転移性腫瘍の死前の輝度(radiance antemortem)が腫瘍量の代替測定として用いられる、ビヒクル処置NOD/SCIDマウスに対して5週間行われた毎週のBLIの結果を示す定量化によって証明された、マラビロックがMDA-MB-231乳がんの肺転移負荷量を低減するという事実を示している。
【
図12】
図12A~12Fは、MDA.pFULG細胞の尾静脈注射によって生じた転移性腫瘍への、CCR5
+細胞の割合のFACS解析によって証明された、肺腫瘍がCCR5
+4細胞において富化されているという事実を示している。培養液中のeGFP
+MDA.pFULG細胞内のCCR5
+細胞の割合(
図12A)を、転移性腫瘍から単離された細胞のそれ(
図12B)と比較した。データの解析(
図12C)により、腫瘍内のCCR5
+画分において8倍の増加が示された(平均値±SEM、n=6;スチューデントt検定)。
【
図13A】
図13A1~13A5は、FACS解析による、細胞株MDA-MB-23、HS578T、SUM159、MCF-7、ジャーカット細胞における、CCR1タンパク質の細胞表面発現を示している。
【
図13B】
図13B1~13B5は、FACS解析による、細胞株MDA-MB-23、HS578T、SUM159、MCF-7、ジャーカット細胞における、CCR3タンパク質の細胞表面発現を示している。
【
図13C】
図13C1~13C5は、FACS解析による、細胞株MDA-MB-23、HS578T、SUM159、MCF-7、ジャーカット細胞における、CCR5タンパク質の細胞表面発現を示している。
【
図13D】
図13Dは、FACS解析で測定された、細胞株MDA-MB-23、HS578T、SUM159、MCF-7、ジャーカット細胞の、CCR1、CCR3およびCCR5の細胞表面発現の相対的存在量を示している。
【
図14A】
図14Aは、乳がん組織におけるCCR5の免疫組織化学染色を示しており、正常乳房組織と比較して、染色が乳がん上皮細胞に主に局在化していたことを示している。
【
図14B】
図14Bは、正常乳房組織におけるCCR5の染色が非常に低度であることを示す、正常乳房組織におけるCCR5の免疫組織化学染色を示しており、これは、乳腺腫瘍と比較した場合の、正常乳房におけるCCR5の欠如を示している。
【
図14C】
図14Cは、乳がん組織におけるCCR5の免疫組織化学染色を示しており、正常乳房組織と比較して、CCR5免疫組織化学染色が乳がん上皮細胞に主に局在化していることを示している。
【
図14D】
図14Dは、正常乳房組織におけるCCR5の免疫組織化学染色を示しており、乳腺腫瘍と比較した場合の、(
図14Bに示される異なる患者の)正常乳房組織におけるCCR5の欠如を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ランテス(RANTES)(Regulated on Activation, Normal T cell Expressed and Secretedの頭字語)としても知られている、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5(「CCL5」)は、ヒトにおいて、CCL5遺伝子にコードされるタンパク質である。その受容体である、C-Cケモカイン受容体5型(「CCR5」または「CD195」)は、白血球上に存在するタンパク質である。CCR5は、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)およびHIV-2のマクロファージ(M)向性株によって利用される主な補助受容体であり、ウイルス伝播に関与している。従って、CCR5はHIV病因において重要な役割を担っている。MIP-1α、MIP-1β、ランテス、MCP-2、およびHCC-1[9-74]を含むいくつかの炎症性CCケモカインは、CCR5作動薬として作用し、一方、MCP-3は、該受容体の天然の拮抗薬である。CCR5は、記憶T細胞、マクロファージ、および未成熟樹状細胞において主に発現され、炎症誘発性サイトカインによって発現増加される。
【0010】
HIVに対して活性を有する抗レトロウイルス薬剤のクラスには、ヌクレオシド類似体、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、融合阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、およびCCR5受容体拮抗薬が含まれる。CCR5拮抗薬は、CCR5向性ウイルスのCD4T細胞への侵入を阻止することにより、HIVに対するそれらの抗ウイルス活性を発現する。結果として、CCR5拮抗薬は、これまで、免疫系の炎症性細胞における発現と関連するのみであった。
【0011】
本開示より前に、ケモカインCCL5およびその受容体CCR5のがんの進行における役割は不明であった。本明細書に開示されるように、CCL5およびその受容体CCR5を発現するがんを有する患者によって、新規の薬物標的が提供される。本明細書に開示されるように、CCL5およびその受容体CCR5に関するそれらの活性を遮断する薬剤を用いる、CCL5およびその受容体CCR5を発現したがんの治療は、変異型ケモカインCCL5およびその受容体CCR5を発現するこれらのがん細胞に選択的に影響を及ぼす。一実施形態では、ヒト乳がん細胞系の亜集団が、CCL5に対し機能的反応を示したCCR5を発現することが分かった。
【0012】
2,254個のヒト乳がん試料に対して行われたマイクロアレイ解析により、基底およびHER-2遺伝子サブタイプにおいて、CCL5およびその受容体CCR5の発現増加が見出されたが、CCR3の発現増加は見出されなかった。CCR5を発現することが見出されたヒト乳がん細胞系の亜集団は、CCL5に対し機能的反応を示した。また、癌遺伝子形質転換によってCCR5発現が誘導され、機能的CCR5を発現したがん細胞の亜集団は浸潤性の増加も示した。
【0013】
一実施形態では、CCR5HIV補助受容体機能を遮断するために初期に開発されたCCR5拮抗薬は、インビトロにおいて、細胞の増殖または生存率に影響を与えることなく、がん細胞の浸潤を低減した。一実施形態では、CCR5拮抗薬には、マラビロックおよびビクリビロックが含まれる。一実施形態では、機能的CCR5を発現したがん細胞の亜集団には、基底乳がん細胞が含まれる。一実施形態では、CCR5拮抗薬には、インビトロにおいて、基底細胞がんの細胞増殖または生存率に影響を与えることなく基底細胞がん細胞の浸潤を低減した、マラビロックおよびビクリビロックが含まれる。一実施形態では、CCR5拮抗薬には、インビボにおいて、基底細胞がんの細胞増殖または生存率に影響を与えることなく基底細胞がん細胞の浸潤を低減した、マラビロックおよびビクリビロックが含まれる。
【0014】
しかし、本明細書に開示されるように、CCL5およびその受容体CCR5は、乳がん細胞を含むがん細胞において発現されることが分かり、また、原発部位から身体内の他の部位(例えば、脳、肝臓、肺)へのがんの拡散である、がん転移を制御していることも分かった。さらに、マラビロックおよびビクリビロック等のCCR5拮抗薬によるCCR5受容体の遮断によって、がんの原発部位から身体内の他の部位への遊走および拡散が阻止されたことが分かった。
【0015】
本明細書に記載されるように、CCR5およびCCL5は、がんの浸潤性において重要な役割を担っていることが分かった。例えば、CCR5拮抗薬は、CCL5および/またはその受容体CCR5を発現するがんによる身体内の二次部位の浸潤を減速および/または阻止することが示されたが、このことは、CCL5および/またはその受容体CCR5を発現する基底乳がん分子サブタイプを有する患者を含む、がん患者における転移のリスクを減少させるための実行可能な補助療法としてのCCR5拮抗薬の有用性を示している。
【0016】
細胞受容体の状態により、がん患者が特定の抗がん治療に影響を受け易いか否かを決定することができる。例えば、アンドロゲンもしくはエストロゲン受容体またはHER-2を発現しない基底乳がんサブタイプと診断された患者において、化学療法、放射線照射、または外科手術を含む現在の治療選択は、これらの患者にとっての唯一の選択肢であるだけでなく、その全てがこれらの患者に対して転帰不良を示している。現在これらの患者に利用可能な他の有効な療法が存在しないという事実にもかかわらず、この基底乳がん変種を有する患者は、さらに、この基底乳がん変種が典型的に転移にも関連しているという事実によっても不利な立場にある。新規のがん治療は、これらの患者にとっての、がん無再発生存の唯一の望みを提供するものである。従って、基底乳がんサブタイプに対する特異的標的化療法の差し迫った必要がある。
【0017】
一態様において、本発明は、新生物または新生物転移を治療、予防、または管理するためのCCR5修飾薬の使用に関する。一実施形態では、新生物はがんである。本発明の方法の好ましい実施形態に従って治療、予防、または管理することができる例示的ながんおよび関連する障害としては、限定はされないが、白血病、例えば、限定はされないが、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、例えば、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、および赤白血病(erythroleukemia leukemia)および骨髄異形成症候群;慢性白血病、例えば、限定はされないが、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、毛様細胞性白血病;真性赤血球増加症;リンパ腫、例えば、限定はされないが、ホジキン病、非ホジキン病;多発性骨髄腫、例えば、限定はされないが、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫および髄外性形質細胞腫;ワルデンストロームマクログロブリン血症;意味未確定の単クローン性高γグロブリン血症;良性単クローン性高γグロブリン血症;重鎖病;骨および結合組織肉腫、例えば、限定はされないが、骨肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨線維肉腫、脊索腫、骨膜性肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫(angiosarcoma, hemangiosarcoma)、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫;脳腫瘍、例えば、限定はされないが、神経膠腫、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、乏突起膠腫、非神経膠腫瘍(nonglial tumor)、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体腫、松果体芽腫、原発性脳リンパ腫;乳がん、例えば、限定はされないが、腺管癌、腺癌、小葉(小細胞)癌、腺管内癌、乳腺髄様がん、乳粘液性がん、乳管がん、乳頭状乳がん、パジェット病、および炎症性乳がん;副腎がん、例えば、限定はされないが、褐色細胞腫および副腎皮質癌;甲状腺がん、例えば、限定はされないが、乳頭様甲状腺がんまたは濾胞性甲状腺がん、甲状腺髄様がんおよび組織非形成性甲状腺がん;膵がん、例えば、限定はされないが、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、およびカルチノイドまたは島細胞腫瘍;例えば、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大症、および尿崩症(diabetes insipius)に限定される、下垂体がん;眼がん、例えば、限定はされないが、眼メラノーマ、例えば、虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫、および毛様体メラノーマ(cilliary body melanoma)、および網膜芽細胞腫;腟がん、例えば、扁平上皮癌、腺癌、およびメラノーマ;外陰がん、例えば、扁平上皮癌、メラノーマ、腺癌、基底細胞癌、肉腫、およびパジェット病;子宮頸がん、例えば、限定はされないが、扁平上皮癌、および腺癌;子宮がん、例えば、限定はされないが、子宮内膜癌および子宮肉腫;卵巣がん、例えば、限定はされないが、上皮性卵巣癌、境界型腫瘍、胚細胞性腫瘍、および間質性腫瘍;食道がん、例えば、限定はされないが、扁平上皮がん、腺癌、腺様嚢胞癌、粘表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、メラノーマ、形質細胞腫、疣状癌、および燕麦細胞(小細胞)癌;胃がん、例えば、限定はされないが、腺癌、肉芽腫性(ポリープ状)、潰瘍性、表在拡大型、びまん性拡大型、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および癌肉腫;結腸がん;直腸がん;肝臓がん、例えば、限定はされないが、肝細胞癌および肝芽腫;胆嚢がん、例えば、腺癌;胆管癌、例えば、限定はされないが、乳頭状(pappillary)、結節性、およびびまん性胆管癌;肺がん、例えば、非小細胞肺がん、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌および小細胞肺がん;精巣がん、例えば、限定はされないが、胚腫瘍(germinal tumor)、精上皮腫、未分化の、古典的(典型的)な、精母細胞性、非精上皮腫、胎生期癌、奇形腫、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)、前立腺がん、例えば、限定はされないが、前立腺上皮内腫瘍、腺癌、平滑筋肉腫、および横紋筋肉腫;陰茎がん(penal cancer);口腔がん、例えば、限定はされないが、扁平上皮癌;基底細胞がん(basal cancer);唾液腺がん、例えば、限定はされないが、腺癌、粘表皮癌、および腺様嚢胞癌;咽頭がん、例えば、限定はされないが、扁平上皮がん、および疣状癌(verrucous);皮膚がん、例えば、限定はされないが、基底細胞癌、扁平上皮癌およびメラノーマ、表在拡大型黒色腫、結節性黒色腫、悪性黒子黒色腫、末端黒子型黒色腫;腎がん、例えば、限定はされないが、腎細胞癌、腺癌、グラヴィッツ腫瘍(hypemephroma)、線維肉腫、移行上皮がん(腎盂および/または尿管(uterer));ウィルムス腫瘍;膀胱がん、例えば、限定はされないが、移行上皮癌、扁平上皮がん、腺癌、癌肉腫が挙げられる。さらに、がんには、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽細胞腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原性癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌および乳頭状腺癌が含まれる。
【0018】
一実施形態では、CCR5の拮抗薬は、CCR5発現新生物またはCCR5発現新生物の転移を治療するのに用いられる。一実施形態では、CCR5の拮抗薬は、新生物または前記新生物の転移を予防するのに用いられる。一実施形態では、CCR5の拮抗薬は、前記新生物の新生物転移を管理するために用いられる。一実施形態では、CCR5の拮抗薬は、CCR5発現新生物またはCCR5発現新生物の転移の進行を緩徐化するために用いられる。一実施形態では、CCR5の拮抗薬は、CCR5発現新生物の転移を遅延させるために用いられる。
【0019】
一実施形態では、例示的な本発明の方法に従った使用に適したCCR5の拮抗薬としては、限定はされないが、Perros et alによる、米国特許第6,667,314号に記載される化学物質が挙げられる。Perros et al.の化学物質並びにそれらを含む全ての製剤および剤形は、参照によって本出願に組み込まれている。Perros et al.による化合物の好ましい例としては、
4,4-ジフルオロ-N-[(1S)-3-[(1R,5S)-3-(3-メチル-5-プロパン-2-イル-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-1-フェニルプロピル]シクロヘキサン-1-カルボキサミド(「マラビロック」);
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-フェニルプロピルシクロブタンカルボキサミド;
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-フェニルプロピルシクロペンタンカルボキサミド;
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-フェニルプロピル-4,4,4-トリフルオロブタンアミド;
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-フェニルプロピル-4,4-ジフルオロシクロヘキサンカルボキサミド;
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-(3-フルオロフェニル)プロピル-4,4-ジフルオロシクロヘキサンカルボキサミド;
およびそれらの薬剤的に許容できる塩または溶媒和化合物が挙げられる。
【0020】
一実施形態では、新生物もしくは前記新生物の転移の治療;または新生物もしくは前記新生物の転移の予防;または前記新生物の新生物転移の管理;または新生物もしくは前記新生物の転移の進行の緩徐化;または新生物もしくは前記新生物の転移の遅延に適したCCR5受容体の修飾薬としては、限定はされないが、Armour et alによる、米国特許第6,586,430号に記載される化学物質が挙げられる。Armour et al.の化学物質およびそれらを含む全ての製剤または剤形は、参照によって本出願に組み込まれている。Armour et al.による化合物の好ましい例としては、
N-{3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-2H-ピラン-4-カルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}3-アゼチジンカルボキサミド;
1-ヒドロキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロペンタンカルボキサミド;
2-メチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロプロパンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-{1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-3-フランカルボキサミド;
3,3,3-トリフルオロ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-2-フランカルボキサミド;
1-(アセチルアミノ)-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロペンタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
1-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロペンタンカルボキサミド;
1-アミノ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロペンタンカルボキサミド;
1-メチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-オキソ-4-ピロリジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル)3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[6-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(3-{4-[(メチルスルホニル)アミノ]ベンジル}-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[7-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-{(1S)-3-[7-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3,3,3-トリフルオロ-N-{(1S)-3-[7-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
N-{(1S)-3-[7-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-{(1S)-3-[7-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[7-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-チア-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-[(1S)-3-(3-エンド-{[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ}-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル)-1-フェニルプロピル]アセトアミド;
N-[(1S)-3-(3-{[3-エンド-(4-フルオロフェニル)プロパノイル]アミノ}-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル)-1-フェニルプロピル]シクロブタンカルボキサミド;
N-[(1S)-3-(3-{[3-エキソ-(4-フルオロフェニル)プロパノイル]アミノ}-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル)-1-フェニルプロピル]シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-[(1S)-3-(3-エキソ-{[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ}-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル)-1-フェニルプロピル]アセトアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル)}1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-3-フランカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-2H-ピラン4-カルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-2-フランカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
メチル3-[({(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アミノ)カルボニル]-1-アゼチジンカルボン酸;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-アゼチジンカルボキサミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
2-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-ピロリジンカルボキサミド;
1-メチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-オキソ-4-ピロリジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-エチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-エチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-((1S)-1-フェニル-3-{3-エキソ-[2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル}プロピル)-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-((1S)-1-フェニル-3-{3-エキソ-[2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル}プロピル)-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-((1S)-1-フェニル-3-{3-エキソ[2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル}プロピル)アセトアミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-((1S)-1-フェニル-3-{3-エキソ-[2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル}プロピル)アセトアミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N(1S)-3-[3-エキソ-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N(1S)-3-[3-エキソ-(5-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル)3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(5-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(5-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(5-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-メチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
(2S)-1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-アゼチジンカルボキサミド;
(2R)-1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-アゼチジンカルボキサミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-ピロリジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-(トリフルオロメチル)シクロプロパンカルボキサミド;
2-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-メチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
2-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-メチル-3-オキセタンカルボキサミド;
3-エチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-オキセタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-オキセタンカルボキサミド;
3-エチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-オキセタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-メチル-3-オキセタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-オキセタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-メチル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-メトキシアセトアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N{-1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-メトキシプロパンアミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
およびそれらの薬剤的に許容できる塩が挙げられる。
【0021】
さらに別の実施形態では、新生物もしくは新生物の転移の治療;または新生物もしくは新生物の転移の予防;または新生物の新生物転移の管理;または新生物もしくは新生物の転移の進行の緩徐化;または新生物もしくは前記新生物の転移の遅延に適したCCR5受容体の修飾薬としては、限定はされないが、共にBaroudy et al.による、米国特許第6,689,765号および同第7,384,944号に記載される化学物質が挙げられる。Baroudy et al.の化学物質およびそれらを含む全ての製剤または剤形は、参照によって本出願に組み込まれている。Baroudy et al.による化合物の好ましい例としては、5-({4-[(3S)-4-{2-メトキシ-1-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}-3-メチルピペラジン-1-イル]-4-メチルピペリジン-1-イル}カルボニル)-4,6-ジメチルピリミジンという代替のIUPAC名を有する、(4,6-ジメチルピリミジン-5-イル)-[4-[(3S)-4-[(1R)-2-メトキシ-1-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]-3-メチルピペラジン-1-イル]-4-メチルピペリジン-1-イル]メタノン(ビクリビロック、以前の名称はSCH417690およびSCH-D);およびそれらの薬剤的に許容できる塩または溶媒和化合物が挙げられる。
【0022】
一態様において、本発明は、対象ががんを有するかどうか、または対象が、がんを発症するリスクを有するかどうか、および/もしくはその転移を起こすリスクを有するかどうかを判定する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、がんを有する、またはがんを有することが疑われる対象から生物学的試料を得ること、並びに該生物学的試料中のCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルを評価すること、を含む。一実施形態では、生物学的試料中のCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルは、対照試料中のCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルと比較される。一実施形態では、生物学的試料中のCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルが、対照試料中のCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルよりも高い場合、対象はがんを有する可能性があると診断される。一実施形態では、生物学的試料中のCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルが、対照試料中のCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルよりも高い場合、対象はがんを発症するリスクが増加していると診断される。一実施形態では、生物学的試料中のCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルが、対照試料中のCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルよりも高い場合、対象はがん転移を起こすリスクが増加していると診断される。
【0023】
本明細書で使用される用語「対象」には、動物が含まれることが意図される。特定の実施形態において、対象は、哺乳動物、ヒトまたは非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシまたはげっ歯類である。
【0024】
別の態様では、本発明は、がんの生物学的試料中のCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルに基づく、がんの分子レベルでの分類のための方法を提供する。一実施形態では、がんの分子レベルでの分類のための方法は、(a)対象からがんの生物学的試料を得ること;(b)該生物学的試料中のCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルを決定すること;並びに(c)ステップ(b)で決定されたCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルが、対照試料中のCCR5の発現レベルおよび/または少なくとも1つのCCR5リガンドの発現レベルよりも高い場合に、がんをCCR5発現がんに分類すること、を含む。一実施形態では、CCR5発現がんに分類されたがんを有する対象は、がんの転移を起こすリスクを有する可能性があると診断される。一実施形態では、がんは乳がんである。一実施形態では、がんは前立腺がんである。一実施形態では、がんは、白血病、例えば、限定はされないが、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、例えば、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、および赤白血病(erythroleukemia leukemia)および骨髄異形成症候群;慢性白血病、例えば、限定はされないが、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、毛様細胞性白血病;真性赤血球増加症;リンパ腫、例えば、限定はされないが、ホジキン病、非ホジキン病;多発性骨髄腫、例えば、限定はされないが、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫および髄外性形質細胞腫;ワルデンストロームマクログロブリン血症;意味未確定の単クローン性高γグロブリン血症;良性単クローン性高γグロブリン血症;重鎖病;骨および結合組織肉腫、例えば、限定はされないが、骨肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨線維肉腫、脊索腫、骨膜性肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫(angiosarcoma, hemangiosarcoma)、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫;脳腫瘍、例えば、限定はされないが、神経膠腫、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、乏突起膠腫、非神経膠腫瘍(nonglial tumor)、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体腫、松果体芽腫、原発性脳リンパ腫;乳がん、例えば、限定はされないが、腺管癌、腺癌、小葉(小細胞)癌、腺管内癌、乳腺髄様がん、乳粘液性がん、乳管がん、乳頭状乳がん、パジェット病、および炎症性乳がん;副腎がん、例えば、限定はされないが、褐色細胞腫および副腎皮質癌;甲状腺がん、例えば、限定はされないが、乳頭様甲状腺がんまたは濾胞性甲状腺がん、甲状腺髄様がんおよび組織非形成性甲状腺がん;膵がん、例えば、限定はされないが、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、およびカルチノイドまたは島細胞腫瘍;例えば、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大症、および尿崩症(diabetes insipius)に限定される、下垂体がん;眼がん、例えば、限定はされないが、眼メラノーマ、例えば、虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫、および毛様体メラノーマ(cilliary body melanoma)、および網膜芽細胞腫;腟がん、例えば、扁平上皮癌、腺癌、およびメラノーマ;外陰がん、例えば、扁平上皮癌、メラノーマ、腺癌、基底細胞癌、肉腫、およびパジェット病;子宮頸がん、例えば、限定はされないが、扁平上皮癌、および腺癌;子宮がん、例えば、限定はされないが、子宮内膜癌および子宮肉腫;卵巣がん、例えば、限定はされないが、上皮性卵巣癌、境界型腫瘍、胚細胞性腫瘍、および間質性腫瘍;食道がん、例えば、限定はされないが、扁平上皮がん、腺癌、腺様嚢胞癌、粘表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、メラノーマ、形質細胞腫、疣状癌、および燕麦細胞(小細胞)癌;胃がん、例えば、限定はされないが、腺癌、肉芽腫性(ポリープ状)、潰瘍性、表在拡大型、びまん性拡大型、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および癌肉腫;結腸がん;直腸がん;肝臓がん、例えば、限定はされないが、肝細胞癌および肝芽腫;胆嚢がん、例えば、腺癌;胆管癌、例えば、限定はされないが、乳頭状(pappillary)、結節性、およびびまん性胆管癌;肺がん、例えば、非小細胞肺がん、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌および小細胞肺がん;精巣がん、例えば、限定はされないが、胚腫瘍(germinal tumor)、精上皮腫、未分化の、古典的(典型的)な、精母細胞性、非精上皮腫、胎生期癌、奇形腫、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)、前立腺がん、例えば、限定はされないが、前立腺上皮内腫瘍、腺癌、平滑筋肉腫、および横紋筋肉腫;陰茎がん(penal cancer);口腔がん、例えば、限定はされないが、扁平上皮癌;基底細胞がん(basal cancer);唾液腺がん、例えば、限定はされないが、腺癌、粘表皮癌、および腺様嚢胞癌;咽頭がん、例えば、限定はされないが、扁平上皮がん、および疣状癌(verrucous);皮膚がん、例えば、限定はされないが、基底細胞癌、扁平上皮癌およびメラノーマ、表在拡大型黒色腫、結節性黒色腫、悪性黒子黒色腫、末端黒子型黒色腫;腎がん、例えば、限定はされないが、腎細胞癌、腺癌、グラヴィッツ腫瘍(hypemephroma)、線維肉腫、移行上皮がん(腎盂および/または尿管(uterer));ウィルムス腫瘍;膀胱がん、例えば、限定はされないが、移行上皮癌、扁平上皮がん、腺癌、癌肉腫からなる群から選択される。さらに、がんには、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽細胞腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原性癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌および乳頭状腺癌が含まれる。
【0025】
別の態様では、本発明は、対象における、CCR-5を発現する新生物またはCCR5を発現する新生物の転移を治療、予防、または管理する方法を提供する。一実施形態では、CCR5発現新生物を有する、またはCCR5発現新生物の転移を起こすリスクを有する対象におけるCCR-5発現新生物またはCCR5発現新生物の転移を治療または管理する方法は、に対象CCR5修飾薬を投与することを含む。一実施形態では、CCR5修飾薬はCCR5拮抗薬を含む。一実施形態では、CCR5拮抗薬は、4,4-ジフルオロ-N-[(1S)-3-[(1R,5S)-3-(3-メチル-5-プロパン-2-イル-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-1-フェニルプロピル]シクロヘキサン-1-カルボキサミド(「マラビロック」)を含む。一実施形態では、CCR5修飾薬は、CCR5拮抗薬を含む。一実施形態では、CCR5拮抗薬は、(4,6-ジメチルピリミジン-5-イル)-[4-[(3S)-4-[(1R)-2-メトキシ-1-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]-3-メチルピペラジン-1-イル]-4-メチルピペリジン-1-イル]メタノン(「ビクリビロック」)を含む。一実施形態では、CCR5拮抗薬は、4,4-ジフルオロ-N-[(1S)-3-[(1R,5S)-3-(3-メチル-5-プロパン-2-イル-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-1-フェニルプロピル]シクロヘキサン-1-カルボキサミド(「マラビロック」)および(4,6-ジメチルピリミジン-5-イル)-[4-[(3S)-4-[(1R)-2-メトキシ-1-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]-3-メチルピペラジン-1-イル]-4-メチルピペリジン-1-イル]メタノン(「ビクリビロック」)からなる群から選択される。
【0026】
一実施形態では、適切なCCR5拮抗薬は、
4,4-ジフルオロ-N-[(1S)-3-[(1R,5S)-3-(3-メチル-5-プロパン-2-イル-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-1-フェニルプロピル]シクロヘキサン-1-カルボキサミド(「マラビロック」);
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-フェニルプロピルシクロブタンカルボキサミド;
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-フェニルプロピルシクロペンタンカルボキサミド;
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-フェニルプロピル-4,4,4-トリフルオロブタンアミド;
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-フェニルプロピル-4,4-ジフルオロシクロヘキサンカルボキサミド;
N-(1S)-3-3-(3-イソプロピル-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-エキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル-1-(3-フルオロフェニル)プロピル-4,4-ジフルオロシクロヘキサンカルボキサミド;
およびそれらの薬剤的に許容できる塩または溶媒和化合物からなる群から選択される。
【0027】
一実施形態では、適切なCCR5拮抗薬は、
N-{3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-2H-ピラン-4-カルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}3-アゼチジンカルボキサミド;
1-ヒドロキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロペンタンカルボキサミド;
2-メチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロプロパンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-{1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-3-フランカルボキサミド;
3,3,3-トリフルオロ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-2-フランカルボキサミド;
1-(アセチルアミノ)-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロペンタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
1-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロペンタンカルボキサミド;
1-アミノ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}シクロペンタンカルボキサミド;
1-メチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-オキソ-4-ピロリジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル)3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[6-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(3-{4-[(メチルスルホニル)アミノ]ベンジル}-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[7-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-{(1S)-3-[7-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3,3,3-トリフルオロ-N-{(1S)-3-[7-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
N-{(1S)-3-[7-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-{(1S)-3-[7-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-オキサ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[7-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-3-チア-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナ-9-イル]-1-フェニルプロピル}シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-[(1S)-3-(3-エンド-{[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ}-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル)-1-フェニルプロピル]アセトアミド;
N-[(1S)-3-(3-{[3-エンド-(4-フルオロフェニル)プロパノイル]アミノ}-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル)-1-フェニルプロピル]シクロブタンカルボキサミド;
N-[(1S)-3-(3-{[3-エキソ-(4-フルオロフェニル)プロパノイル]アミノ}-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル)-1-フェニルプロピル]シクロブタンカルボキサミド;
2-シクロプロピル-N-[(1S)-3-(3-エキソ-{[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ}-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル)-1-フェニルプロピル]アセトアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル)}1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-3-フランカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-2H-ピラン4-カルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}テトラヒドロ-2-フランカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
メチル3-[({(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アミノ)カルボニル]-1-アゼチジンカルボン酸;
N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-アゼチジンカルボキサミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
2-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-ピロリジンカルボキサミド;
1-メチル-N-{(1S)-3-[3-エンド-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-オキソ-4-ピロリジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-エチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-エチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-((1S)-1-フェニル-3-{3-エキソ-[2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル}プロピル)-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-((1S)-1-フェニル-3-{3-エキソ-[2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル}プロピル)-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-((1S)-1-フェニル-3-{3-エキソ[2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル}プロピル)アセトアミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-((1S)-1-フェニル-3-{3-エキソ-[2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル}プロピル)アセトアミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N(1S)-3-[3-エキソ-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N(1S)-3-[3-エキソ-(5-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル)3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(5-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(5-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(5-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-メチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
(2S)-1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-アゼチジンカルボキサミド;
(2R)-1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-アゼチジンカルボキサミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-ピロリジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-(トリフルオロメチル)シクロプロパンカルボキサミド;
2-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-メチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
2-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-メトキシ-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-メチル-3-オキセタンカルボキサミド;
3-エチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-オキセタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-2-メチル-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-オキセタンカルボキサミド;
3-エチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-オキセタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-メチル-3-オキセタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-オキセタンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-メチル-3-アゼチジンカルボキサミド;
1-アセチル-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-1-プロピオニル-3-アゼチジンカルボキサミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-2-メトキシアセトアミド;
N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
N{-1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}-3-メトキシプロパンアミド;
2-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}アセトアミド;
3-[アセチル(メチル)アミノ]-N-{(1S)-3-[3-エキソ-(4-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-8-イル]-1-フェニルプロピル}プロパンアミド;
およびそれらの薬剤的に許容できる塩から成る群から選択される。
【0028】
本明細書に開示されるような、本発明の一態様は、対象にCCR5受容体拮抗薬を投与することにより、対象におけるCCR5発現新生物またはCCR5発現新生物の転移を治療、予防、または管理する方法を提供する。一実施形態では、CCR5受容体拮抗薬(anatagonist)は、CCR5受容体拮抗薬を含む医薬製剤または剤形の形態で投与される。一実施形態では、CCR5受容体拮抗薬は、酸、エステル、または他の適切な化学誘導体の形態で用いられる。一実施形態では、CCR5受容体拮抗薬は、当該技術分野において周知の手順に従って種々の有機および無機の酸および塩基から得られた、薬剤的に許容できる塩の形態である。一実施形態では、本明細書で使用される「薬剤的に許容できる塩」という表現は、CCR5受容体拮抗薬の塩形態、特に、CCR5受容体拮抗薬の遊離形態または他の先に開示された塩形態と比較して、CCR5受容体拮抗薬に向上した薬物速度論的特性を与える塩形態で使用されるCCR5受容体拮抗薬を含む活性成分を意味することが意図されている。一実施形態では、CCR5受容体拮抗薬の薬剤的に許容できる塩形態は、最初に、CCR5受容体拮抗薬にそれが以前は有していなかった所望の薬物速度論的特性を与え、さらに、身体におけるその治療的活性に関するCCR5受容体拮抗薬の薬力学に正の影響を与え得る。一実施形態では、有利に影響を受け得るCCR5受容体拮抗薬の薬物速度論的特性には、例えば、その後にCCR5受容体拮抗薬の吸収、分布、生体内変換または排出に直接且つ正の影響を与え得る、CCR5受容体拮抗薬が細胞膜を通過して運搬される様式が含まれる。医薬組成物の投与経路は重要であり、種々の解剖学的、生理学的および病理学的な要因は生物学的利用能に決定的な影響を与える可能性があるが、CCR5受容体拮抗薬の溶解性は、通常、CCR5受容体拮抗薬が利用した特定のその塩形態の特性に依存する。さらに、水溶液は治療中の患者の身体への活性成分の最も迅速な吸収を与え得るが、脂質溶液および懸濁液、並びに固体剤形は、それほど迅速ではない吸収をもたらし得る。CCR5受容体拮抗薬の経口摂取は、安全性、利便性、および経済性の理由から最も好ましい投与経路であるが、そのような経口剤形の吸収は、極性、胃腸粘膜の過敏によって引き起こされる嘔吐、消化酵素および低pHによる分解、食物または他の薬剤の存在下での不規則な吸収または推進、並びに粘膜、腸管内菌叢、または肝臓の酵素による代謝等の身体的特徴によって、不利な影響を受ける可能性がある。CCR5受容体拮抗薬の異なる薬剤的に許容できる塩形態への製剤化は、経口剤形の吸収に伴う上記問題のうちの一つまたは複数を克服または軽減するのに有効であり得る。周知の薬剤的に許容できる塩としては、限定はされないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベシル酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンフルスルホン酸、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシ硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グリセロリン酸、ヘミコハク酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、リン酸ナトリウム、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、チオリンゴ酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩が挙げられる。
【0029】
適切なCCR5受容体拮抗薬の化合物の塩基塩としては、限定はされないが、アンモニウム塩;ナトリウムおよびカリウム等のアルカリ金属塩;カルシウムおよびマグネシウム等のアルカリ土類金属塩;ジシクロヘキシルアミン、メグルミン、N-メチル-D-グルカミン、トリスヒロドキシメチル)メチルアミン(トロメタミン)等の有機塩基との塩、並びにアルギニン、リジン等のアミノ酸との塩が挙げられる。塩基性窒素含有基を含む本発明の化合物は、(C1C4)ハロゲン化アルキル、例えば、メチル、エチル、イソ-プロピルおよびtert-ブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;硫酸ジ(C1-C4)アルキル、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルおよび硫酸ジアミル;(C10-C18)アルキルハロゲン化物、例えば、デシル、ドデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;並びにアリール-(C1-C4)アルキルハロゲン化物、例えば、塩化ベンジルおよび臭化フェネチル等の作用剤で四級化されていてもよい。そのような塩は、水溶性の本発明の化合物および油溶性の本発明の化合物の両方の調製を可能にする。
【0030】
上記の医薬塩の中で、好ましいものとしては、限定はされないが、酢酸塩、ベシル酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヘミコハク酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、イセチオン酸塩、マンデル酸塩、メグルミン、硝酸塩、オレイン酸塩、ホスホン酸塩、ピバル酸塩、リン酸ナトリウム、ステアリン酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、チオリンゴ酸塩、トシル酸塩、およびトロメタミンが挙げられる。
【0031】
CCR5受容体拮抗薬がそのような薬剤的に許容できる塩を形成することができる2つ以上の基を含有する(ontain)多塩形態(multiple salts form)が、本発明の範囲内に含まれる。典型的な多塩形態の例としては、限定はされないが、酒石酸水素塩、二酢酸塩、二フマル酸塩、ジメグルミン、二リン酸塩、二ナトリウム、および三塩酸塩が挙げられる。適切なCCR5受容体拮抗薬は、単独で投与することができるが、一般的には、意図される投与経路および標準的な医療実施を考慮して選択される一つまたは複数の適切な医薬賦形剤、希釈剤または担体と混合して投与される。
【0032】
例えば、CCR5受容体拮抗薬は、即時放出または制御放出適用のための、芳香剤または着色剤を含有していてもよい、錠剤、カプセル剤、膣坐剤(ovules)、エリキシル剤、液剤または懸濁剤の形態で、経口的に、または舌下に、投与することができる。そのような錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウムおよびグリシン等の賦形剤、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカデンプン)、アルギン酸およびある種の複合ケイ酸塩等の崩壊剤、並びにポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチンおよびアカシア等の等の造粒結合剤を含有していてもよい。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよび滑石等の滑沢剤が含まれていてもよい。同じような種類の固体組成物が、ゼラチンカプセル内の充填剤として用いられてもよい。これに関して好ましい賦形剤としては、ラクトースまたは乳糖、並びに高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁剤および/またはエリキシル剤において、CCR5受容体拮抗薬は、種々の甘味剤または芳香剤、着色物質または色素と、乳化剤および/または懸濁化剤と、並びに水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリン等の希釈剤と、並びにそれらの組み合わせと、組み合わされていてもよい。
【0033】
適切なCCR5受容体拮抗薬は、非経口的に、例えば、静脈内に、腹腔内に、くも膜下腔内に、脳室内に、胸骨内に(intrastemally)、頭蓋内に、筋肉内に、または皮下に注入することもでき、あるいは、点滴法により投与されてもよい。適切なCCR5受容体拮抗薬は、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするのに充分な塩またはグルコースを含有していてもよい無菌水溶液の形態で、最もよく使用される。前記水溶液は、必要な場合、(好ましくは、3~9のpHに)適切に緩衝化されるべきである。無菌条件下での適切な非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な医薬技術によって、容易に達成される。
【0034】
ヒト対象への経口投与および非経口投与において、CCR5受容体拮抗薬の一日の投与量レベルは、通常、1μg/kg~25mg/kg(単回量または分割量で)である。従って、CCR5受容体拮抗薬の錠剤またはカプセル剤は、1個投与または適当であれば同時に複数個投与するために、0.05mg~1.0gの活性化合物を含有していてもよい。いずれにしても、任意の個々の患者に最も適した実際の投与量は、医師によって決定され、特定の患者の年齢、体重および応答によって異なる。上記の投与量は、平均的な場合の例である。当然のことながら、より高いまたはより低い用量域が相応しい個々の場合があり得、これらは本発明の範囲内である。適切なCCR5受容体拮抗薬は、鼻腔内に、または吸入によって、投与することもでき、適切な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン(例えば、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a))、二酸化炭素または他の適切な気体を用いる、加圧容器または噴霧器からの、乾燥粉末吸入器またはエアロゾルスプレー形(aerosol spray presentation)の形態で、送達されることが好都合である。加圧式エアロゾルの場合、投与単位は、計量された量を送達する弁を与えることにより、決定されてもよい。加圧容器または噴霧器は、例えば、エタノールおよび噴霧剤の混合物を溶媒として用いて、本活性化合物の溶液または懸濁液を含有していてもよく、さらに、滑沢剤(例えば、ソルビタントリオレエート)を含有していてもよい。吸入器または注入器で用いるカプセル剤およびカートリッジ剤(例えば、ゼラチンから製造される)は、CCR5受容体拮抗薬およびラクトースまたはデンプン等の適切な粉末基剤の混合粉末を含有するように製剤化されてもよい。
【0035】
エアロゾルまたは乾燥粉末製剤は、対象へ送達するため、それぞれの計量された用量または「パフ(puff)」が20μg~20mgのCCR5受容体拮抗薬を含有するように、好ましく調製される。エアロゾルによる総一日量は、1日を通して1回の投与で、またはより一般的には、分割した投与で投与され得る、20μg~20mgの範囲である。あるいは、適切なCCR5受容体拮抗薬は、坐剤または膣坐薬の形態で投与することができ、あるいは、ローション剤、液剤、クリーム、軟膏剤または散布粉剤の形態で局所的に塗布してもよい。CCR5受容体拮抗薬は、皮膚用パッチ剤を用いることで経皮投与されてもよい。CCR5受容体拮抗薬は、特に、眼の神経障害を治療するために、眼球経路(ocular route)によって投与されてもよい。
【0036】
眼への使用において、本化合物は、等張の、pH調整した、無菌の食塩水中の微粉化懸濁剤として、または、好ましくは、等張の、pH調整した、無菌の食塩水中の液剤として、所望により、塩化ベンザルコニウム(benzylalkonium chloride)等の保存剤と組み合わせて、製剤化することができる。あるいは、本化合物は、ワセリン等の軟膏剤中に製剤化されてもよい。皮膚に局所的に塗布するため、式(I)の化合物は、例えば、以下のうちの一つまたは複数との混合物中に懸濁または溶解された本活性化合物を含有する適切な軟膏剤として、製剤化することができる:ミネラルオイル、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ろうおよび水。あるいは、式(I)の化合物は、例えば、以下のうちの一つまたは複数の混合物中に懸濁または溶解された適切なローション剤またはクリーム剤として、製剤化することができる:ミネラルオイル、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベニルアルコール(benyl alcohol)および水。
【0037】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は、CCR5ケモカイン受容体活性、並びにCCR5受容体およびそのリガンドによりその後に仲介される、結果として生じる、または関連する発病過程を調節することができる。本明細書で使用される「CCR5ケモカイン受容体活性を調節する」という表現は、CCR5ケモカイン受容体およびそれらのリガンドが関与する基本的な生理的過程および作用(agency)の操作を指すことが意図されている。CCR5受容体の全てのタイプおよびサブタイプが、特定の患者のどの組織内にそれらが存在していても、且つそれらの組織を構成する細胞のどの構成要素の中または表面上にそれらが局在化していても、この意図される意味の範囲の中に含まれる。最も一般的には、CCR5受容体は、単球等の特定の細胞型の細胞膜上に位置している。CCR5受容体は、それらが天然に結合する種々の内因性リガンドと共に、ケモカイン等の作用因子の、それらの細胞および組織への移動およびそれらの細胞および組織からの移動に対してCCR5受容体が及ぼす影響によって、重要な細胞機能および組織機能を制御するシグナル経路に関与し、それを定義づける。
【0038】
患者に治療有効量のCCR5受容体拮抗薬を投与することを含む本発明の治療法に従って、本明細書に記載のCCR5ケモカイン受容体活性の調節を介した、またはそれに関連する、患者における疾患および状態を治療または予防を行うのに有効な、並びに患者におけるその予後に有利な影響を与えるのに有効な、式(I)の化合物の投与量および投与速度は、CCR5受容体拮抗薬の性質、患者のサイズ、治療目的、治療中の病態の性質、使用される具体的な医薬組成物、患者が受け得る同時処置、並びに治療医の観察および結論等の種々の要素に依存する。
【0039】
しかし、一般的に、対象に投与される適切なCCR5受容体拮抗薬の有効治療用量は、一日当たり約10μg(0.01mg)/kg体重~約60.0mg/kg体重、好ましくは一日当たり約100μg(0.1mg)/kg体重~約10mg/kg体重、より好ましくは一日当たり約1.0mg/kg体重~約6.0mg/kg体重、最も好ましくは一日当たり約2.0mg/kg体重~約4.0mg/kg体重のCCR5受容体拮抗薬である。
【0040】
活性成分としてのCCR5受容体拮抗薬に加えて追加の治療薬および活性成分を同時投与することを含む実施形態、並びに活性成分としてのCCR5受容体拮抗薬に加えて追加の治療薬および活性成分を含有する組成物が、本発明の範囲内に含まれる。しばしば併用療法と称されるそのような多剤投与計画は、CCR5ケモカイン受容体調節を介した、またはそれと関連するいかなる疾患または状態(特にがん転移)の治療および予防にも用いることができる。治療薬のそのような組み合わせの使用は、がんの治療、がんの予防、またはがん転移のリスクの管理を必要としている対象におけるがん転移の治療、予防、または管理に対して、特に適切である。
【0041】
例示的なCCR5受容体拮抗薬は、1日1~4回、好ましくは1日1回または2回の投与計画に従って投与されてもよい。いかなる特定の患者に対する投与の具体的な服用レベルおよび頻度も変化し得、使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝的安定性および作用の長さ、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与の様式時期、排泄速度、薬剤の組み合わせ、特定の状態の重症度、並びに処置中の宿主(the host undergoing)を含む、種々の要素によって異なる。
【0042】
Perros et al.による米国特許第6,667,314号に開示されている通り、CCR5拮抗薬は、即時放出、遅延放出、調節放出、持続性放出、パルス放出または制御放出適用のための、芳香剤または着色剤を含有していてもよい、錠剤、カプセル剤、多粒子剤(multi-particulate)、ゲル剤、フィルム(film)、膣坐剤(ovule)、エリキシル剤、液剤または懸濁剤の形態で、経口的に、頬側に、または舌下に投与することができる。CCR5受容体拮抗薬は、高速分散性または高速溶解性の剤形として、または高エネルギー分散系の形態で、またはコーティングされた粒子として、投与されてもよい。CCR5受容体拮抗薬の化合物の適切な製剤は、所望により、コーティングされた、またはコーティングされていない形態であり得る。そのような固体医薬組成物(例えば、錠剤)は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、グリシンおよびデンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカデンプン)等の賦形剤、グリコール酸デンプンナトリウム(sodium starch glycollate)、クロスカルメロースナトリウムおよびある種の複合ケイ酸塩等の崩壊剤、並びにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチンおよびアカシア等の造粒結合剤を含んでいてもよい。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよび滑石等の滑沢剤が含まれていてもよい。
【0043】
本明細書で使用される「転移」は、循環系もしくはリンパ系を介した、または自然な体腔を介した、通常は新形成の原発部位から身体内の遠位部位への、悪性腫瘍細胞、または新生物の移動、および後の新しい部位での二次性の腫瘍またはコロニーの発達と定義される。本発明の方法のいくつかの好ましい実施形態において、転移は、肝臓、脳、膀胱、肺、副腎、腎臓、骨、皮膚もしくは膵臓または対照腎臓(control kidney)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される器官またはそれ以上の器官における腫瘍転移を含む。
【0044】
別の態様では、本発明は、がん転移を低減または予防または治療する化合物を同定する方法を提供する。一実施形態では、前記方法により、CCR5を過剰発現する、および/またはCCR5受容体リガンドの少なくとも1つを過剰発現する、新生細胞の増殖または生存能に選択的に干渉する候補化合物が同定される。一実施形態では、前記方法により、CCR5を過剰発現する、および/またはCCR5受容体リガンドの少なくとも1つを過剰発現する新生細胞において、CCR5および/またはCCR5受容体リガンドの少なくとも1つの活性を選択的に遮断する候補化合物が同定される。例示的な一実施形態において、CCR5を過剰発現する、および/またはCCR5受容体リガンドの少なくとも1つを過剰発現する新生細胞においてがん転移を低減または予防または治療する候補化合物を同定するための方法は、(a)CCR5を過剰発現する、および/またはCCR5受容体リガンドの少なくとも1つを過剰発現する一つまたは複数の新生細胞を一つまたは複数の候補化合物と接触させること;並びに(b)CCR5を過剰発現する、および/またはCCR5受容体リガンドの少なくとも1つを過剰発現する一つまたは複数の新生細胞の活性および/または増殖もしくは生存能を検出することを含み、ここで、(対照試料と比較した)一つまたは複数の新生細胞の活性の低減および/または増殖の低減および/または生存能の低減は、該候補化合物を、CCR5を過剰発現する、および/またはCCR5受容体リガンドの少なくとも1つを過剰発現する新生細胞におけるがん転移を選択的に低減または予防または治療する化合物と同定する。一実施形態では、一つまたは複数の新生細胞の増殖が、CCR5を過剰発現する、および/またはCCR5受容体リガンドの少なくとも1つを過剰発現する未処置(対照)新生細胞と比較して低減/抑制されている場合、前記候補化合物は、CCR5を過剰発現する、および/またはCCR5受容体リガンドの少なくとも1つを過剰発現する新生細胞の転移を選択的に低減または予防または治療する化合物であると同定される。一実施形態では、一つまたは複数の新生細胞の生存能が、CCR5を過剰発現する、および/またはCCR5受容体リガンドの少なくとも1つを過剰発現する未処置(対照)新生細胞と比較して低減/抑制されている場合、前記候補化合物は、CCR5を過剰発現する、および/またはCCR5受容体リガンドの少なくとも1つを過剰発現する新生細胞の転移を選択的に低減または予防または治療する化合物であると同定される。一実施形態では、一つまたは複数のCCR5受容体リガンドはCCL5を含む。一実施形態では、一つまたは複数のCCR5受容体リガンドはCCL8を含む。一実施形態では、一つまたは複数のCCR5受容体リガンドはCCL7を含む。
【0045】
本明細書で開示される研究のために、ヒト乳がん細胞系におけるCCL5およびCCR5の発現、並びにCCR5拮抗薬のインビトロおよびインビボにおける作用を調べた。2,254人の患者の乳がん試料との関連において、マイクロアレイデータセットを用いて照合を行い、CCR5およびCCL5の発現を評価した。データセットにおける試料を、ルミナール(luminal)A、ルミナールB、正常様、基底およびHER-2過剰発現疾患を含む5種の乳がんサブタイプに割り当てた。解析によって、基底サブタイプおよびHER-2サブタイプを有する患者におけるCCL5およびCCR5の発現増加が明らかになった。58%のがん試料が、CCR5およびCCL5陽性シグネチャを示した。正常乳腺細胞において、それらががん細胞へと癌化する際に、癌遺伝子によってCCR5受容体が活性化されることが分かった。それらの細胞の転移が、CCR5によって制御されていることも分かった。
【0046】
インビトロでの細胞の遊走および浸潤におけるCCR5の機能的関連性を評価するために、薬剤を、2種の異なる細胞株を用いる3次元浸潤アッセイにおいて試験した。両方の拮抗薬が乳がん細胞の浸潤性を阻害することが分かった。
【0047】
インビボでの細胞の遊走および浸潤におけるCCR5の機能的関連性を評価するために、マウスに拮抗薬を注射し、基底乳がん細胞の他の組織(すなわち肺)への浸潤性を、生物発光画像法を用いて追跡した。薬剤処置されたマウスは、未処置マウスと比較して、肺転移の数およびサイズの両方において90%超の減少を示すことが分かった。この、およびその他の前臨床試験によって、基底乳がんの転移を阻止するための新規治療としてCCR5拮抗薬の使用を研究するための合理的根拠が得られた。これらの発見は、CCR5が転移を促進する他のがん(例えば、前立腺がんおよび胃がん)に対する示唆も与え得る。
【0048】
同じ要素が同じ参照番号で表される添付の詳細な図面を参照して、本発明の好ましい実施形態は
図1A~14Dに示される。
【0049】
図1Aを参照すると、乳がんの遺伝子発現パターンに基づいて乳がんの分子サブタイプによって分類された乳がん、すなわちルミナールA、ルミナールB、基底、正常様、およびHer-2を有する患者から得られた試料における、CCL5およびその受容体CCR5の発現のヒートマップが示されている。ヒートマップは、CCL5およびCCR5の相対的存在量が、基底およびHER-2乳がんサブタイプを有する患者において増加(過剰発現)していることを示している。またヒートマップは、CCL5およびCCR5がHer-2乳がんサブタイプにおいて過剰発現していることも示している。
【0050】
図1B1~1B5を参照すると、CCL5およびその受容体CCR5の発現が
図1Aに示される乳がん分子サブタイプ間の、CCL5およびCCR5の発現の蛍光標識細胞分取(FACS)散布図および相関分析(スチューデントt検定)が示されている。Aで観察されたCCL5およびその受容体CCR5の発現と一致して、散布図は、CCL5およびCCR5が、基底およびHER-2乳がんサブタイプを有する患者において過剰発現していることを示している。
【0051】
図1Cを参照すると、
図1B1~1B5に示されるCCL5およびCCR5を過剰発現している乳がん試料の比率を定量化したもの(バーの画分は
図1B1~1B5に示される散布図の右上象限を示している)が示されている。各サブタイプにおける試料の数は、バーの頂部に示されている。
【0052】
図1Dを参照すると、本開示の材料および方法のセクションに記載される解析データベースにおける異なる遺伝子サブタイプの無転移カプラン・マイヤープロットおよびログランク解析が示されている。無転移カプラン・マイヤープロットは、基底またはHER-2サブタイプの乳がんを有する患者が、転移を起こす確率の増加を示すことを示している。
【0053】
図2A~2Hは、CCR5を発現するヒト乳がん細胞系がCCL5に応答することを示している。
図1Aにおいて、MDA-MB-231乳がん細胞におけるCCR5発現のフローサイトメトリーヒストグラムにより、CCR5
+細胞の亜集団が同定された。
図2Bおよび2B2において、Fluo-4-AMを加え、その後CCL5(60μg/mL)およびFBS(5%)を逐次添加した細胞における、カルシウムシグナル伝達の誘導が示されている。わずかな細胞がCCL5に応答した(顕微鏡像の中央の黒色の矢印)が、残りは応答しなかった(白色の矢印)。5つの応答性細胞(緑線)および5つの非応答性細胞(赤線)上の蛍光における平均変化を、一番右のグラフに表す。示されるデータは、各細胞株に対する3~5回の独立した実験を代表したものである(バー、100μm)。
図2Cにおいて、CCL5(15μg/mL)を化学誘引物質として用いた乳がん細胞系によるコラーゲンゲルへの3次元浸潤が示されている。
図2Dは、3次元浸潤が
図2Cに示される3つの独立した実験から得られた、浸潤の平均距離±SEMを示している。
図2Eは、MCF-10A細胞並びにMCF-10A-NeuT、MCF-10A-Ras、およびMCF-10A-Src誘導体の3次元浸潤アッセイを示しており、それらの対応する定量化は
図2Fに示されており(平均値±SEM、n=3)、これらはCCL5誘導性浸潤が発癌性形質転換によって活性化されることを示している。
図2Gは、CCR5
+細胞が増加した浸潤性を示すことを示している。SUM-159細胞株由来のCCR5
+およびCCR5
-亜集団をFACSで単離し、FBSを化学誘引物質として用いてコラーゲンゲルへの浸潤を評価した。
図2Gにおける試料のFACSおよびコラーゲンゲルへの浸潤実験の定量化が、2つの独立した実験の平均値±SEMとして、
図2Hに示される。スチューデントt検定を用いて統計解析を行った。
【0054】
図3A1~3Dは、CCR5拮抗薬がCCL5誘導性カルシウムシグナル伝達を遮断することを示している。
図3A1~3A4では、CCR5拮抗薬であるマラビロックまたはビクリビロック(100nmol/L)で30分間処置され、その後CCL5(60μg/mL)を添加された、Fluo-4AMを加えたMDA-MB-231細胞の強度-時間解析が示されている。顕微鏡像は、擬似線スキャンプロット(pseudoline scan plot)の軸(x-x')を図示している。これらの軸を用いて、隣接する強度-時間プロットを作成した。
図3Bでは、CCL5の添加時に蛍光強度が増加した細胞の割合の比較が示されている。
図3C1~3C4では、CCL5誘導性カルシウムシグナル伝達が、Hs578T細胞においてもCCR5拮抗薬によって遮断された。対応する定量化は
図3Dに示されている。
図3Bおよび
図3Dのデータは、3~4つの独立した実験の平均値±SEMである。スチューデントt検定を用いて統計解析を行った。
【0055】
図4A~4Dは、CCR5拮抗薬がFBS誘導性乳がん細胞浸潤を阻止することを示している。
図4Aでは、CCR5拮抗薬(100nmol/L)存在下における、Hs578T乳がん細胞によるコラーゲンゲルへのFBS誘導性浸潤の3次元再構築が示されている。
図3Cでは、CCR5拮抗薬(100nmol/L)存在下における、SUM-159乳がん細胞によるコラーゲンゲルへのFBS誘導性浸潤の3次元再構築が示されている。対応する定量化(平均値±SEM、n=3)および解析(ボンフェローニt検定)は、
図4Bおよび
図4Dに示されている。
【0056】
図5A~5Fを参照すると、示されるデータは、CCR5拮抗薬マラビロックがインビボにおいて肺転移を阻止することを示している。
図5Aでは、Luc2-eGFP融合タンパク質を形質導入されたMDA-MB-231細胞を、NOD/SCIDマウスの尾静脈に注入し、インビボでの生物発光シグナルを1週間毎に定量化した。ビヒクル処置マウスまたはマラビロック処置マウス(12時間毎に8mg/kg)の代表的なインビボ画像が、
図5Aに示されている。
図5Bでは、対照群(赤線)および処置群(青線)におけるBLIの定量化(平均値±SEM、n=6)が示されている。不均一分散に対してウエルチ補正を用いるスチューデントt検定を使用して、統計比較(
*、P=0.048)を行った。
図5C1および5C2に示されるように、肺腫瘍の存在および処置間の差異を、エキソビボイメージング(左)および墨汁染色(右)によって実証した。
図5Dに示されるように、転移性腫瘍を有するマウスの割合は、対照群において有意により大きかった(P<0.0001、フィッシャーの直接確率検定)。
図5Eは、肺のスライドにおける転移性腫瘍で覆われた領域の組織学的解析(ヘマトキシリン&エオシン染色、100倍)および対応する定量化(
図5Fに示されている)を示している。腫瘍領域を、ニコン社製Elements BR3.0ソフトウェアを用い、マウス毎に2つの異なる組織切片の(互いに600μm隔てられた)2つの無作為視野を弱拡大(40倍)で解析して、定量化した。不均一分散に対してウエルチ補正を用いるスチューデントt検定を使用して、統計解析を行った(対照群および処置群についてはそれぞれ、n=33および12)。
【0057】
図6A~6Hを参照すると、マラビロックが、肺におけるコロニー形成を低減するが、細胞増殖は変化させないことが示されている。
図6Aでは、乳がん細胞の生存率に対するCCR5拮抗薬の影響が示されている。MDA-MB-231細胞を漸増する濃度のマラビロック(逆三角形)またはビクリビロック(四角)に48時間暴露し、細胞生存率をMTTアッセイで評価した。グラフは6連で行われた代表的な実験から得られたものである。3つの独立した実験に統計的有意差は見られなかった(分散分析)。
図6Bでは、pcDNA3.1+/Zeo+(MDA.ベクター)またはpCDNA3+Zeo+にクローニングされたヒトCCR5(MDA.CCR5)を安定的に形質移入されたMDA-MB-231細胞におけるCCR5発現が示されている。
図6Cにおいて、MDA.ベクター対MDA.CCR5のインビトロでの増殖速度の比較では、差は示されなかった(分散分析)。6連で行われた2つからの代表的な実験。
図6Dでは、確立した転移の成長に対するマラビロックのインビボでの影響を評価するために、図示されているように、MDA.pFULG細胞の注入の10日後にマウスの処置を開始した。
図6Eでは、対照(赤/四角)および処置群(青/三角)におけるインビボでのBLIの定量化(平均値±SEM、n=5)は、成長速度において差を示さなかった。肺において一度確立された腫瘍腫瘍の成長速度に対するマラビロックの影響は存在しない。従って、肺における腫瘍体積の減少は、肺への腫瘍の「ホーミング(homing)」または拡散の阻害によるものである。
図6Fは、肺におけるコロニー形成でのCCR5の役割を評価するために用いられた実験計画のスキームを示している。
図6Gは、代表的な共焦点像を示しており、
図6Hは、MDA.pFULG細胞の注入から24時間後の肺における、eGFP
+細胞の数の定量化を示している。マウス(n=5マウス/群)ごとの2つの異なる組織切片の(互いに700μm隔てられた)3つの無作為視野において、eGFPを発現している細胞をカウントした。スチューデントt検定を用いて統計解析を行った。顕微鏡像におけるバーは100μmである。
【0058】
次に、
図7A1~7D2を参照する。CCR5およびCCL5の富化に関連する遺伝子発現シグナル経路を決定するために、本明細書に記載される腫瘍試料の、KEGGおよびGOを用いるGSEA解析を行った。
図7AはGSEA解析を示している。これらの研究により、リンパ球活性化、Janus活性化キナーゼ(JAK)-STATシグナル伝達、およびToll様受容体活性化を含む経路の遺伝子発現の富化が示された。CCL5の受容体にはCCR1およびCCR3が含まれる。基底およびHER-2遺伝子腫瘍型(
図7B1~7B5および7C1~7C5)において、CCL5の発現増加はCCR1の増加と関連しているが、CCR3とは関連していない。化学療法を受けているER陰性患者において、CCR5発現が減少した集団と比較して、CCR5が増加した集団において、無転移生存および無再発生存の有意でない減少傾向があった(
図7D1および7D2)。
【0059】
図8A~8Dでは、正常乳房を乳がんと比べている、CCR5、CCR1、およびCCR3に対するCCL5の発現レベルの比較によって、正常乳房組織と比べて、腫瘍において、受容体とリガンドの発現レベルの間に高い相関が示された。
図8Aは、正常集団における、CCL5発現並びにその受容体であるCCR5、CCR1およびCCR3のヒートマップを図示している。正常集団は、乳がん2550例の集団の一部として、以前に報告された(Ertel, A., Dean, J. L., Rui, H., Liu, C., Witkiewicz, A. K., Knudsen, K. E., and Knudsen, E. S. RB-pathway disruption in breast cancer: differential association with disease subtypes, disease-specific prognosis and therapeutic response. Cell Cycle, 9: 4153-4163, 2010.)。
【0060】
図9A~9D
2を参照すると、基底の表現型および分子シグネチャを有する3種のヒト乳がん細胞系:MDA-MB-231、Hs578T、およびSUM-159(34~37)を、本研究のモデルとして用いた。FACSによるCCR5発現の解析により、小さな細胞亜集団が、3種全ての細胞株において、該受容体について陽性であったことが示された(MDA-MB-231については
図2A、Hs578TおよびSUM-159については
図9Aおよび
図9C)。CCR5活性化はカルシウム流(38、39)を誘導するため、カルシウムシグナル伝達の活性化をCCL5によって評価した。CCL5を培地に添加することにより、細胞亜集団においてカルシウム流が即時に誘導され(MDA-MB-231については
図2B、Hs578TおよびSUM-159については
図9Bおよび
図9D)、これにより、CCR5が基底乳がん細胞において機能的であるという証拠が得られた。陽性対照として、同一の培地を5%FBSに曝した(40)。相対蛍光強度によって評価されたカルシウム流は、FBS添加後に、95%を超える細胞において増加していた(
図2Bならびに
図9B、9D1、および9D2)。CCL5依存的シグナル伝達をさらに特徴付けるために、SUM159細胞に、CCR5発現ベクターを安定に形質導入し、CCL5に対するCa
+2応答を、FBSと比較して、行った(
図10Cおよび
図10D、並びに
図10Eおよび
図10F)。CCR5は、CCR5過剰発現細胞においてCa
+2シグナル伝達を誘導したが、両方の系が、FBS誘導性Ca
-2活性化に対して同様に応答した(
図10A1~
図10F)。
【0061】
CCR5拮抗薬によるCCR5阻害がカルシウムシグナル伝達および細胞浸潤を低減させたという発見を鑑みて、インビボにおける肺転移に対するマラビロックの影響を決定した。実験転移モデルにおいて、MDA-MB-231細胞に、Luc2-eGFPレンチウイルスベクターを形質導入した(MDA.pFULG細胞)。Luc2遺伝子はコドン最適化されたLucの異形であり、このレポーターを発現している細胞は、未改変Luc遺伝子よりも、10~100倍より明るい(30)。MDA.pFULG細胞をマウスの尾静脈に注入した後、非浸潤性のBLIによって、乳がん転移の早期発見が可能となった(41)。1週間毎のBLIを5週間行い、死前の輝度(radiance antemortem)を、腫瘍量の代替測定として用いた。マラビロック(8mg/kgを1日2回)で処置されたマウスは、ビヒクル処置マウスと比較して、肺転移の数およびサイズの両方において有意な減少を示した(
図5Aおよび
図5B、
図11Aおよび
図11B)。不適切な染色によって転移が見逃される可能性を排除するため、肺のエキソビボイメージング、墨汁染色(
図5C1および5C2)、および組織学的検査(
図5E)を行った。組織学的解析によって、先に示された通り(30)、腫瘍量が生物発光と対応していることが実証された。転移性腫瘍はマラビロック処置マウスの50%においてなお検出可能であったが、それらの平均サイズは65%減少していた(
図5Dおよび
図5F)。興味深いことに、対照マウスから得られた肺におけるCCR5発現の解析によって、CCR5
+画分の8倍の富化が示された(
図12A~12F)。まとめると、これらの結果により、CCR5拮抗薬がインビボにおいて乳がん転移を低減するという証拠が得られた。
【0062】
基底乳がんの高悪性度の臨床的挙動およびそれに対する標的化療法の欠如を鑑みて、ヒト乳がん細胞系MDA-MB-231、Hs578TおよびSUM-159の浸潤および転移におけるCCL5/CCR5の重要性を評価した。これらの細胞株は、乳がんの基底サブタイプの臨床病理学的な特徴(HER-2、ER、およびプロゲステロン受容体の欠如を含む)、基底細胞様(basal-like)分子シグネチャ、特定のシグナル経路(例えば、低酸素応答またはEGF受容体応答)の活性化、および上皮間葉転換タンパク質(FN、VIM、および(ad)マトリックスメタロプロテアーゼ2;参考文献34~37)の過剰発現を反映している。FACS解析で評価した際、本研究で用いられた細胞株内のほんのわずかの細胞でしか、CCR5は発現されていなかった。本研究において、逆転写酵素PCRによってMDA-MB-23細胞におけるCCR5の発現が確認され、FACS解析によってCCR5タンパク質の存在が示され(
図13A1~
図13D1)、正常乳房組織と比較してCCR5免疫組織化学染色が乳がん上皮細胞に主に局在化していたことが示された(
図14A~
図14D)。
【0063】
本明細書で開示される結果は、CCL5が基底細胞様ヒト乳がん細胞においてカルシウム流を活性化することを示している。選択的CCR5拮抗薬であるマラビロックおよびビクリビロックを用いることで(共に30nmol/L未満のIC50を有する;参考文献44、45)、CCL5活性化シグナル伝達がCCR5によって仲介されることが示された。しかし、CCL5陽性細胞の割合(MDA-MB-231細胞およびHs578T細胞のそれぞれにおいて10%および12%)は、FACSによって決定されたCCR5発現細胞のパーセンテージよりも高かった。これは、FACSによる解析の感度と比較した場合の、Ca2+活性化アッセイのより高い感度のためであり得る。さらに、CCL5誘導性カルシウム再分布は、CCR5拮抗薬によって完全には阻止されていない。これは、CCL5に対する他の受容体、すなわちCCR1およびCCR3の発現によって引き起こされ得る。CCR5はMDA-MB-231細胞における主要なCCL5受容体として同定されており(13)、CCR1およびCCR3の転写物は、MDA-MB-231細胞株またはHs578T細胞株(8)および乳腺腫瘍試料(11)の両方において存在しない。CCR1およびCCR3はFACSによって検出が可能であるが(
図13A1~
図13D)、このことは、CCR5拮抗薬に対して不完全に応答する機構の可能性を示唆している。
【0064】
一態様において、本発明は、NeuT、Ha-Ras、c-Srcおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される内在性癌遺伝子またはウイルスにより形質導入された癌遺伝子を過剰発現する腫瘍細胞において、CCR5および/またはそのリガンドのうちの一つまたは複数の発現をダウンレギュレートする候補化合物を同定するための、インビボにおける方法を提供する。一実施形態では、本方法は、(a)候補化合物を腫瘍細胞の動物モデルに投与すること;および(b)動物モデルにおけるCCR5のRNAまたはタンパク質の発現レベルを測定することを含み、動物モデルにおけるCCR5のRNAまたはタンパク質の発現レベルが、未処置動物モデルにおけるCCR5のRNAまたはタンパク質の発現レベルと比較して減少している場合、その候補化合物は、NeuT、Ha-Ras、c-Srcおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される内在性癌遺伝子またはウイルスにより形質導入された癌遺伝子を過剰発現する腫瘍細胞において、CCR5および/またはそのリガンドのうちの一つまたは複数の発現をダウンレギュレートする化合物と同定される。一実施形態では、腫瘍細胞は哺乳類前立腺がん細胞を含む。一実施形態では、腫瘍細胞は、NeuT、Ha-Ras、c-Srcおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される癌遺伝子を保有するレトロウイルスベクターに感染した一連の哺乳類初代上皮細胞のうちの少なくとも一つまたは複数を含む、哺乳類前立腺がん細胞株を含む。
【0065】
本発明での使用に適した哺乳類前立腺がん細胞株の例としては、限定はされないが、2012年5月14日に出願された米国仮特許出願第61/646,586号で開示されている哺乳類前立腺がん細胞株が挙げられ、該米国仮特許出願の内容はその全体が参照によって本明細書に組み込まれている。一実施形態では、哺乳類前立腺がん細胞株は、癌遺伝子を保有するレトロウイルスベクターに感染した一連の哺乳類初代上皮細胞のうちの少なくとも一つまたは複数を含む。一実施形態では、前記癌遺伝子は、c-Myc、Ha-Ras、NeuT、c-Srcおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。哺乳類前立腺がん細胞株の一実施形態では、c-Myc、Ha-Ras、NeuT、c-Srcおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される癌遺伝子が発現される。哺乳類前立腺がん細胞株には、マウス初代上皮細胞を含む、いかなる適切な哺乳類細胞も含まれ得る。いくつかの実施形態において、哺乳類初代上皮細胞は、いかなる免疫適格性の哺乳動物からも得られる。一実施形態では、哺乳類初代上皮細胞は、げっ歯類(例えば、ラットおよびマウス)からなる群から選択される、免疫適格性の哺乳動物から得られる。
【0066】
いくつかの実施形態において、がんの適切な動物モデルは、c-Myc、Ha-Ras、NeuT、c-Srcおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される一連の癌遺伝子のうちの一つまたは複数で形質転換されたがん細胞株を移植された免疫適格性の哺乳動物を含む。一実施形態では、がんの動物モデルは、c-Myc、Ha-Ras、NeuT、c-Srcおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される一連の癌遺伝子のうちの一つまたは複数の発現レベルに基づく、検出可能な分子遺伝学的シグネチャを生むことが可能な前立腺腫瘍を発生させる本発明の哺乳類前立腺がん細胞株を用いて作製された、免疫適格性のトランスジェニックマウスである。
【0067】
いくつかの実施形態において、がんの適切な動物モデルは、インビトロ法によって作製される。一実施形態では、適切な動物モデルを作製するためのインビトロ法は、不死化した哺乳類初代上皮細胞の作製を含む。一実施形態では、不死化した哺乳類初代上皮細胞をインビトロで作製するための方法は、哺乳類初代上皮細胞をc-Myc、Ha-Ras、NeuT、c-Srcおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される癌遺伝子を保有するレトロウイルスベクターに感染させて、感染細胞を作製することを含み、ここで、該哺乳類初代上皮細胞は、前記レトロウイルスベクターによって、且つc-Myc、Ha-Ras、NeuT、c-Srcおよびそれらの組み合わせが前記感染細胞において発現される条件下で、感染されることが可能である。
【実施例】
【0068】
I.実施例
A.材料および方法
A.1. 乳がん患者のデータセットおよび統計解析
公共レポジトリであるGene Expression Omnibus(23)およびArrayExpress(24)から以前に集められた(21)マイクロアレイのデータセットを用いて、臨床試料との関連において、CCR5およびCCL5の発現を評価した。このデータセットにおける試料を、ルミナールA、ルミナールB、正常様、基底、およびHER-2過剰発現疾患を含む、5つの標準的な乳がんサブタイプに割り当てた。これら5つのサブタイプ間のマイクロアレイ試料の分類は、各サブタイプを代表する発現プロファイル重心(centroid)に対するそれらの相関を算出し、最も高い対応する相関係数を有するサブタイプに試料を割り当てることによって達成された(25)。0.3未満の最大相関係数を有する試料は未分類とみなした。次に、特にルミナールA、ルミナールB、基底、正常様、およびHER-2サブタイプの中で、CCL5およびCCR5転写物の解析を行った。これら試料サブセット中の平均した遺伝子シグネチャ規模の発現差異を、両側スチューデントt検定を用いて評価した。カプラン・マイヤー解析を用いて、試料サブセット内の生存傾向を評価した。また、CCR5試料に対するCCL5試料の散布図を作成し、各サブタイプに特異的な同時制御パターンを観察した。これらの散布図のために、遺伝子プロファイルを中央値で合わせ、単一SDに基準化した。
【0069】
A.2. 細胞株および細胞培養
MDA-MB-231、MCF-7、およびHs578T細胞は、10%FBSを添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で維持した。SUM-159細胞(ミシガン州デトロイトウェイン州立大学のStephen Ethier博士から好意により提供)は、4μg/mLのインスリン、1μg/mLのヒドロコルチゾン、および5%FBSを添加したハムF‐12中で維持した。MCF-10A細胞の癌遺伝子形質転換誘導体(MCF10A-NeuT、MCF10A-Src、およびMCF10A-Ras;参考文献26)は、4mg/mLのインスリン、10ng/mLのEGF、および1mg/mLのヒドロコルチゾンを添加したDMEM:ハムF‐12(50の50(50 of 50))中で維持した。合計100μg/mLの各ペニシリンおよびストレプトマイシンを、全培地に含ませた。細胞は5%CO2、37℃で培養した。インビトロ処置のために、マラビロックをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、培地で希釈した。処置培地および対照培地中のDMSOの最終濃度は0.5%であった。ビクリビロックは培地中に溶解した。
【0070】
A.3. 蛍光標識細胞分取解析
CCR5についての細胞標識および蛍光標識細胞分取(FACS)解析は、若干の修正を加えた、先の刊行物(27)に基づくものであった。標識の前に、細胞を正常マウスIgG(100の1(1 of 100))および精製ラット抗マウスFcγIII/II受容体抗体(100の1(1 of 100);ファーミンゲン社(Pharmingen))で30分間ブロッキングし、次に、アロフィコシアニン(APC)標識CCR5抗体(R&Dシステムズ社)と一緒にインキュベートした。全ての実験は4℃で行った。試料分析はFACSCaliburフローサイトメーター(BDバイオサイエンス社)上で行った。これらのデータはFlowJoソフトウェア(ツリースター社(Tree Star, Inc.))を用いて解析した。
【0071】
A.4. 浸潤アッセイ
3次元浸潤アッセイを先に報告された通りに行った(12)。簡潔に説明すると、100μLの1.67mg/mLラット尾部コラーゲンI型(BDバイオサイエンス社)を、24ウェル8μm孔Transwell(コーニング社)の上部チャンバにピペットで添加した。Transwellを37℃で一晩インキュベートし、コラーゲンを凝固させた。次に、合計30,000個の細胞をTranswell膜の底に播種し、接着させた。無血清増殖培地を下部チャンバに入れて、一方、15ng/mLのCCL5または5%FBSを上部チャンバの培地中に化学誘引物質として用いた。次に、細胞を、上方のコラーゲンを通してフィルターを越えて3日間化学誘引した。細胞を4%ホルムアルデヒドで固定し、PBS中0.2%Triton-Xで透過処理し、次いで、40μg/mLのヨウ化プロピジウム(PI)で2時間染色した。蛍光を、キメルがんセンターバイオイメージング施設(Kimmel Cancer Center Bioimaging Facility)で、Zeiss LSM 510 Meta倒立共焦点顕微鏡を用いて、フィルターの底面からの10倍の拡大率の共焦点z形断面(20μm毎に1断面)により、解析した。
【0072】
A.5. 細胞内カルシウムアッセイ
ヒトがん細胞株においてCCL5またはFBSによって誘導されるカルシウム応答を、先に報告された通りに蛍光共焦点顕微鏡下でモニターした(28)。簡潔に説明すると、乳がん細胞を、4ウェルlabtekチャンバ(ヌンク社)内に104細胞/cm2で播種し、1日間インキュベートした。12時間の飢餓状態の後、細胞をHBSS中2mmol/LのFluo-4-AM(モレキュラープローブス社)と一緒に30分間インキュベートすることにより標識し、2回洗浄し、さらに30分間インキュベートし、その後顕微鏡下でイメージングした。微速度撮影画像を、37℃の恒温器と共にZeiss LSM 510 Meta倒立共焦点顕微鏡を用いて集めた。相対細胞内Ca2+濃度を、CCL5(60ng/mL)またはFBS(5%)を添加した際のFluo-4-AMの蛍光強度(FI)における変化によって決定し、(FIt-FI0)/FI0として算出した。
【0073】
A.6. MTTアッセイ
MTTアッセイは、細胞酵素がテトラゾリウム色素、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド、黄色のテトラゾール(MTT)を、紫色を呈色するその不溶性ホルマザンに還元する活性を測定するための、比色分析である。これらのアッセイは、NAD(P)H依存性細胞性酸化還元酵素を介した細胞代謝活性を測定し、定義された条件下で、生細胞の数(細胞増殖)を反映し得る。テトラゾリウム色素アッセイを用いて、候補薬剤および有毒物質の細胞毒性(生細胞の減少)または細胞分裂停止活性(増殖性状態から静止状態への移行)を測定することもできる。MTT試薬は感光性であることから、MTTアッセイは通常は暗所で行われる。
【0074】
CCR5拮抗薬の細胞生存率および増殖速度に対する影響を、可溶性テトラゾリウム塩MTTアッセイを用いて評価した(29)。MTTは生細胞のミトコンドリアによって還元され、還元されたホルマザンの量は生細胞の数に比例する。前記薬剤への暴露から72時間後、細胞を1mg/mLのMTTと一緒に90分間インキュベートした。次に、還元された(不溶性且つ有色の)ホルマザンをDMSO中に溶解し、分光測定で570nmで測定した。乳がん細胞増殖におけるCCR5過剰発現の影響を、以前に報告された通りの、pcDNA3.1+/Zeo+ベクターにサブクローニングした完全長ヒトCCR5を形質移入し、Zeocin(200μg/mL)で選択したMDA-MB-231細胞(トロント大学(カナダオンタリオ州トロント)のEleanor Fish博士の好意により提供)において研究した(18)。MTTアッセイは96ウェルマイクロプレートを用いて6連で行った。
【0075】
A.7. ウイルス性の細胞導入
ホタルルシフェラーゼ2(Luc2)-eGFP融合タンパク質をコードするレンチウイルスベクターは、Sanjiv S. Gambhir博士(スタンフォード大学医学部、カリフォルニア州スタンフォード;参考文献30)から好意により提供された。レンチウイルス増殖は、Zahlerら(31)に記載のプロトコルに従って行った。乳がん細胞系は、8mg/mLのポリブレン(シグマ社)の存在下、感染多重度20で、24時間形質導入した(30、31)。
【0076】
A.8. 実験的転移アッセイおよび生物発光画像法
Luc2-eGFPを発現するMB-MDA-231細胞(本明細書の残りの部分ではMDA.pFLUGと称される)を、非酵素的細胞解離緩衝液(Ca2+およびMg2+非含有PBS中4mmol/LのEDTA)を用いて剥離し、Ca2+およびMg2+を含有しないダルベッコPBS中に懸濁し、即座に、8週齢、雌、非肥満性の糖尿病/重症複合免疫不全(NOD/SCID)マウス(NCI、メリーランド州ベテスダ)の尾静脈に注射した。各マウスは106個の細胞を与えられた。マウスを、強制経口投与により、マラビロック(12時間ごとに8mg/kg)またはビヒクル(酸性化した水中の5%DMSO;参考文献32)で処置した。確立した転移の増殖を解析する実験のために、処置を注射直後または10日後に開始した。インビボ生物発光画像法(BLI)のために、マウスに、200μLのd-ルシフェリン(30mg/mL)を含む腹腔内(i.p.)注射を与えた。マウスをイソフルラン(1L/分の酸素中2%)で安楽死させ、生物発光画像を、IVIS XRシステム(キャリパーライフサイエンス社(Caliper Life Sciences))を用いて、d-ルシフェリン注射の10~15分後に撮影した。撮像時間は10秒(後期の時点)~5分(早期の時点)の範囲であった。データは全光子束として表され、Living Image 3.0ソフトウェア(キャリパーライフサイエンス社)を用いて解析した。エキソビボBLIにおいて、d-ルシフェリンをPBS中で300μg/mLの最終濃度に希釈し、それを用いて、新たに分離した肺をイメージング前に2~3分間浸した。いくつかの肺を、先に報告された通りに墨汁で染色するか(33)、またはヘマトキシリンおよびエオシンで処理および染色して、肺腫瘍の存在を実証した。ホーミングアッセイ(homing assay)において、MDA.pFULG細胞の静脈内注射から24時間後にマウスを安楽死させた。肺をPBSで灌流し、新たに調製したホルムアルデヒド(PBS中4%)で固定し、最適切削温度に凍結した(サクラファインテック社(Sakura Finetek))。凍結切片(10μm)を4′,6-ジアミジノ-2-フェニルインドールで対比染色し、共焦点顕微鏡で解析した。動物実験はトマス・ジェファーソン大学の施設内動物管理使用委員会によって承認されたものであった。
【0077】
A.9. 試薬および抗体
CCL5(カタログ番号278-RN)および抗CCR5 APC抗体(カタログ番号FAB1802A)は、R&Dシステムズ社から購入した。ウサギ抗ヒトCCR5ポリクローナル抗体(ジェンスクリプト(GenScipt);カタログ番号A00979)を免疫組織化学染色に用いた。ラット尾部コラーゲンI型はBDバイオサイエンス社から購入した。ビクリビロックおよびマラビロックはセレック・ケミカルズ社(Selleck Chemicals)から入手した。ルシフェリンはゴールド・バイオテクノロジー社(Gold Biotechnology)から入手した。
【0078】
B. 結果
B.1.
基底乳がんにおける活性CCL5/CCR5シグナル伝達
遺伝子サブタイプによるCCL5およびその受容体CCR5の相対的存在量を調べるため、27回の独立した研究から得られたヒト乳がん試料2,254例を含む複合マイクロアレイデータベース内で照合を行った(21)。CCL5およびCCR5の相対的存在量は、正常様、ルミナールAおよびルミナールBサブタイプと比較して、基底およびHER-2サブタイプにおいて有意に増加していた(
図1A)。CCL5およびCCR5の発現増加は個々の乳がん試料において正に相関しており、その相関は基底およびHER-2サブタイプにおいて高度に有意であった(
図1B1~1B5)。CCL5/CCR5陽性シグネチャを有する患者の割合は、基底およびHER-2サブタイプにおいて58%を超えていた(
図1C)。先の報告と一致して、このデータベース内の前記症例の臨床情報は、転移を発生する確率が基底、ルミナールB、およびHER-2サブタイプにおいて増加していることを示した(
図1D)。
【0079】
CCR5およびCCL5の富化に関連する遺伝子発現シグナル経路を決定するため、これらの腫瘍試料の、KEGGおよびGOを用いたGSEA解析を行った(
図7A)。これらの研究により、リンパ球活性化、Janus活性化キナーゼ(JAK)-STATシグナル伝達、およびToll様受容体活性化を含む経路の遺伝子発現の富化が示された(
図7A)。CCL5の受容体にはCCR1およびCCR3が含まれる。基底およびHER-2遺伝子腫瘍型(
図7B1~7B5および7C1~7C5)において、CCL5の発現増加はCCR1の増加と関連しているが、CCR3とは関連していない。化学療法を受けているER陰性患者において、CCR5発現が減少した集団と比較して、CCR5が増加した集団において、無転移生存および無再発生存の有意でない減少傾向があった(
図7D1および7D2)。正常乳房を乳がんと比較べるCCR5、CCR1、およびCCR3に対するCCL5の発現レベルの比較によって、正常乳房組織と比べて、腫瘍における受容体発現レベルおよびリガンド発現レベルの間の高い相関が示された(
図8A)。
【0080】
B.2. Ccl5は乳がんのCa
2+
シグナル伝達および細胞浸潤を促進する
基底の表現型および分子シグネチャを有する3種のヒト乳がん細胞系:MDA-MB-231、Hs578T、およびSUM-159(34~37)を、本明細書に記載の研究のモデルとして用いた。FACSによるCCR5発現の解析により、小さな細胞亜集団が、3種全ての細胞株において、該受容体について陽性であったことが示された(MDA-MB-231については
図2A、Hs578TおよびSUM-159については
図9Aおよび
図9C)。CCR5活性化はカルシウム流を誘導する(38、39)ため、カルシウムシグナル伝達の活性化をCCL5によって評価した。CCL5を培地に添加することにより、細胞亜集団においてカルシウム流が即時に誘導され(MDA-MB-231については
図2B、Hs578TおよびSUM-159については
図9B1/9B2および
図9D1/9D2)、これにより、CCR5が基底乳がん細胞において機能的であるという証拠が得られた。陽性対照として、同一の培地を5%FBSに曝した(40)。相対蛍光強度によって評価されたカルシウム流は、FBS添加後に、95%を超える細胞において増加していた(
図2B1/2B2および
図9B1/9B2および9D1/9D2)。CCL5依存的シグナル伝達をさらに特徴付けるために、SUM159細胞に、CCR5発現ベクターを安定に形質導入し、CCL5に対するCa
+2応答を、FBSと比較して、行った(
図10Cおよび
図10D、並びに
図10Eおよび
図10F)。CCR5は、CCR5過剰発現細胞においてCa
+2シグナル伝達を誘導したが、両方の系が、FBS誘導性Ca
+2活性化に対して同様に応答した(
図10A1~
図10F)。
【0081】
次に、乳がん細胞浸潤に対するCCR5活性化の影響を、3次元遊走アッセイを用いて評価した。CCL5は基底MDA-MB-231、Hs578T、SUM-159の浸潤を誘導したが、ルミナールMCF-7細胞の浸潤は誘導しなかった(
図2Cおよび2D)。CCL5は、MCF10Aベクター形質導入細胞と比較して、NeuT、H-Ras、またはc-Src癌遺伝子を発現するよう操作されたMCF-10A細胞の浸潤を促進したが(
図2Eおよび
図2F)、このことは、CCL5応答性が形質転換の際に得られ、特異的且つ協同的な発癌性シグナルを必要とすることを示している。CCL5が細胞浸潤を誘導したという発見から、CCR5
-細胞の遊走能と比較してCCR5
+細胞の遊走能を調べることとなった。同一のSUM-159乳がん細胞系の中で、CCR5
+細胞はおよそ40倍大きな細胞浸潤性を示したが(
図2Gおよび
図2H)、このことは、CCR5の発現が浸潤誘発性(proinvasive)表現型と相関することを示している。
【0082】
B.3.
CCR5拮抗薬は乳がんのカルシウムシグナル伝達および細胞浸潤を阻止する
HIV感染におけるCCR5の重要性から、この受容体を標的とする様々な薬剤の開発が行われた。従って、CCR5拮抗薬であるマラビロックおよびビクリビロックが基底乳がん細胞におけるCCL5/CCR5シグナル伝達を阻止することができるかどうかの試験を行った。両方のCCR5拮抗薬がCCL5誘導性カルシウム動員を阻止した。MDA-MB-231細胞において、マラビロックおよびビクリビロックは、カルシウム応答をそれぞれ65%および90%阻害した(
図3Aおよび
図3B)。同様の観察を、両薬剤を用いてHs578T細胞において行ったところ(
図3C1~3C4および
図3D)、様々な基底乳がん細胞で発現されるCCR5が薬理学的阻害に感受性を有することが示された。
【0083】
細胞の遊走および浸潤におけるCCR5の機能的関連性を評価するために、マラビロックおよびビクリビロックの影響を、3次元浸潤アッセイにおいて試験した。2つの異なる細胞株を用いて、両方のCCR5拮抗薬が臨床的に意義のある100nmol/Lの濃度においてFBS誘導性乳がん細胞浸潤を阻害したことが分かった(
図4A~
図4D)。従って、CCR5の浸潤誘導性効果は特定の拮抗薬を用いることで抑制され得る。
【0084】
B.4.
CCR5阻害はインビボにおいて乳がん転移を阻止する
CCR5拮抗薬によるCCR5阻害がカルシウムシグナル伝達および細胞浸潤を低減させたという発見を鑑みて、インビボにおける肺転移に対するマラビロックの影響を決定した。Luc2-eGFPレンチウイルスベクターを形質導入したMDA-MB-231細胞(MDA.pFULG細胞)を、実験転移モデルで用いた。Luc2遺伝子はコドン最適化されたLucの異形であり、このレポーターを発現している細胞は、未改変Luc遺伝子よりも、10~100倍より明るい(30)。MDA.pFULG細胞をマウスの尾静脈に注入した後、非浸潤性のBLIによって、乳がん転移の早期発見が可能となった(41)。1週間毎のBLIを5週間行い、死前の輝度(radiance antemortem)を、腫瘍量の代替測定として用いた。マラビロック(8mg/kgを1日2回)で処置されたマウスは、ビヒクル処置マウスと比較して、肺転移の数およびサイズの両方において有意な減少を示した(
図5AおよびB、
図11Aおよび
図11B)。不適切な染色によって転移が見逃される可能性を排除するため、肺のエキソビボイメージング、墨汁染色(
図5C1および5C2)、および組織学的検査(
図5E)を行った。組織学的解析によって、先に示された通り(30)、腫瘍量が生物発光と対応していることが実証された。転移性腫瘍はマラビロック処置マウスの50%においてなお検出可能であったが、それらの平均サイズは65%減少していた(
図5Dおよび
図5F)。興味深いことに、対照マウスから得られた肺におけるCCR5発現の解析によって、CCR5
-画分の8倍の富化が示された(
図12A~12F)。まとめると、これらの結果により、CCR5拮抗薬がインビボにおいて乳がん転移を低減するという証拠が得られた。
【0085】
B.5.
CCR5拮抗薬は肺コロニー形成を低減させるが、細胞増殖または腫瘍増殖は低減しない
マラビロックによる転移性腫瘍の減少が、細胞増殖および/または標的器官コロニー形成における変化に関与するかどうかを判定した。インビトロおよびインビボの両方における細胞生存率および増殖に対するCCR5阻害の影響を分析した。MDA-MB-231細胞の48時間のマラビロックまたはビクリビロック処置は、がん細胞数の代替測定として用いられたMTT還元に影響を与えなかった(
図6A)。それと一致して、MDA-MB-231細胞におけるCCR5の過剰発現は、空ベクターを形質移入された細胞と比較して、それらの増殖速度を変化させなかった(
図6Bおよび
図6C)。そして、確立した肺転移を有するマウスのマラビロック処置は、腫瘍増殖を変化させず(
図6Dおよび
図6E)、このことは、CCR5活性化が、基底乳がん細胞の増殖を、インビトロにおいても免疫不全マウスの肺の微小環境においても促進しなかったことを示している。
【0086】
別のインビボ実験において、肺への乳がん細胞のホーミングに対するマラビロックの影響を調べた。血漿および組織における定常状態濃度に到達させるため、マウスに10回のマラビロック投与(1日2回を5日間)を与え、その後、MDA.pFULG細胞を静脈内注射した(
図6F)。対照群および処置群における同数のMDA.pFULG細胞の接種は、注射直後のBLIによって確証された。マラビロックは肺におけるeGFP
+細胞の数を40%減少させ(
図6Gおよび
図6H)、このことは、インビボにおけるマラビロックの転移抑制効果が、循環から標的器官に移動するがん細胞の数の減少によって引き起こされることを示唆している。
【0087】
C. 考察
本研究により、(i)CCL5/CCR5発現の富化が乳がんの基底およびHer2陽性遺伝子サブタイプを有する患者において生じていること;(ii)異なる癌遺伝子による不死化ヒト乳腺細胞の発癌性形質転換がCCL5応答性を誘導すること;並びに(iii)CCR5栄養性HIV感染を治療するためのFDA承認薬であるマラビロックが、インビボにおいて転移性腫瘍量を減少させること、が初めて示される。
【0088】
以前の研究により、CCL5レベルが原発性および転移性乳房腫瘍において上昇していることが示されたが(9~11)、このことは、悪性腫瘍の獲得におけるCCL5の役割を示唆するものである。本開示により、CCL5およびCCR5の発現増加が関連していること、並びにCCL5/CCR5発現レベルが乳がんの異なる遺伝子サブタイプ間で異なることが示される。CCL5およびCCR5の発現増加は基底およびHER-2サブタイプにおいて見られる。それと一致して、CCL5発現の増加は、ER陰性患者において主に見られた(42)。また、CCL5の増加は乳がんの基底およびHer2遺伝子サブタイプにおけるCCR1の増加と相関した。無転移生存および無再発生存が減少する傾向が、化学療法を受けた患者におけるCCR5過剰発現腫瘍の間で観察された。
【0089】
基底乳がんの高悪性度の臨床的挙動およびそれに対する標的化療法の欠如を鑑みて、浸潤および転移におけるCCL5/CCR5軸の重要性を、ヒト乳がん細胞系MDA-MB-231、Hs578TおよびSUM-159において評価した。これらの細胞株は、乳がんの基底サブタイプの臨床病理学的な特徴(HER-2、ER、およびプロゲステロン受容体の欠如を含む)、基底細胞様(basal-like)分子シグネチャ、特定のシグナル経路(例えば、低酸素応答またはEGF受容体応答)の活性化、および上皮間葉転換タンパク質(FN、VIM、およびマトリックスメタロプロテアーゼ2;参考文献34~37)の過剰発現を反映している。FACS解析で評価した際、本研究で用いられた細胞株内のほんのわずかの細胞でしか、CCR5は発現されていなかった。我々の発見は、定量的リアルタイムPCRによってMDA-MB-231におけるCCR5発現を示したMullerらによる研究と一致している(8)。これらの研究において、逆転写酵素PCRによってMDA-MB-23細胞におけるCCR5の発現が確認され、FACS解析によってCCR5タンパク質の存在が示され(
図13A1~
図13D)、正常乳房組織と比較してCCR5免疫組織化学染色が乳がん上皮細胞に主に局在化していたことが示された(
図14A~
図14D)。
【0090】
本明細書に記載される結果は、免疫系の細胞(39、43)およびCCR5トランスフェクト細胞(27、44、45)において先に報告されたのと同様の、基底細胞様ヒト乳がん細胞におけるCCL5活性化カルシウム流を示している。選択的CCR5拮抗薬であるマラビロックおよびビクリビロックを用いることで(共に30nmol/L未満のIC50を有する;参考文献44、45)、CCL5活性化シグナル伝達がCCR5によって仲介されることが示された。しかし、CCL5陽性細胞の割合(MDA-MB-231細胞およびHs578T細胞のそれぞれにおいて10%および12%)は、FACSによって決定されたCCR5発現細胞のパーセンテージよりも高かった。これは、FACSによる解析の感度と比較した場合の、Ca
2-活性化アッセイのより高い感度のためであり得る。さらに、CCL5誘導性カルシウム再分布は、CCR5拮抗薬によって完全には阻止されていない。これは、CCL5に対する他の受容体、すなわちCCR1およびCCR3の発現によって引き起こされ得る。CCR5はMDA-MB-231細胞における主要なCCL5受容体として同定されており(13)、CCR1およびCCR3の転写物は、MDA-MB-231細胞株またはHs578T細胞株(8)および乳腺腫瘍試料(11)の両方において存在しない。CCR1およびCCR3はFACSによって検出が可能であるが(
図13A1~
図13D)、このことは、CCR5拮抗薬に対して不完全に応答する機構の可能性を示唆している。
【0091】
CCR5+細胞の亜集団が浸潤性の増加を示したことが観察されたが、このことは、CCR5が基底細胞様乳がん細胞における細胞遊走および浸潤に有利であることを示している。ルミナール様MCF-7細胞がCCL5に応答しないことは、先の公表と一致する(12)。これらの研究により、マラビロックまたはビクリビロックによるCCR5阻害が、インビトロにおいて、細胞生存率に影響を与えずに、FBS誘導性乳がん細胞浸潤を減少させたことも示された。CCR5拮抗薬がFBS誘導性浸潤を阻止するという発見は新しいものであり、CCR5活性化が、様々な走化性シグナルおよび増殖シグナルが存在するインビボにおいて、転移の発生に寄与していることを示唆している。FBSにより活性化される浸潤性のCCR5調節に関与する機構は特徴付けされていないが、それらは、非がん性細胞において説明された通り、他のGPCRのヘテロ二量体化およびリガンド親和性調節(46)、または増殖因子受容体のトランス活性化(47)、またはインテグリン介在性シグナル伝達(48)を含み得る。
【0092】
インビボにおけるマラビロックの転移抑制効果は、MDA.pFULG細胞を免疫不全マウスの循環に注射し、それらを臨床的に意義のある用量の該薬剤で処置することによって示された。ヒトにおいては、300mgの経口投与量によって1,200nmol/Lの平均Cmaxがもたらされ(49)、一方マウスにおいては、16mg/kgの経口投与量によって1,045nmol/Lの平均Cmaxがもたらされる(32)。前記薬剤は臨床状況において1日2回摂取されるため、16mg/kg/dは2回分の用量に分割され、本明細書に記載の実験の間に投与される。マラビロックは肺の腫瘍量を有意に減少させた。薬理学的なCCR5阻害が乳がんを有する患者に有益であり得ることは提唱されていたが、我々が知る限りにおいては、これが、CCR5拮抗薬の全身投与が基底乳がん細胞の転移性コロニー形成を減少させることを示す最初の研究である。
【0093】
マラビロックの転移抑制効果は、確立された転移の成長における変化によって引き起こされるものではない。CCL5によるCCR5活性化はCCR5形質移入MCF-7乳がん細胞(18)および前立腺がん細胞(50)における増殖を行わせるが、本研究および他の研究(13)によって、CCL5/CCR5軸が基底細胞様MDA-MB-231細胞における細胞増殖または細胞生存に関与しないことが示された。さらに、MDA-MB-231細胞におけるドミナントネガティブ型のCCR5(CCR5Δ32)を介したCCR5細胞表面発現の阻害は、インビボにおける増殖またはアポトーシス応答を変化させない(17)。一方、マラビロックがMDA.pFULGがん細胞による肺コロニー形成を減少させたことが分かった。この結果は、乳がん細胞内でのCCR5発現の阻害または担癌マウスへの抗CCL5中和抗体の投与が、間葉系幹細胞(MSC)の同時注入によって誘導された転移能増強を低減した、以前の研究と一致する(参考文献13)。前記著者らは、がん細胞の血管外遊走が、CCL5/CCR5阻害によって影響を受ける決定的な転移段階であると特定した(13)。まとめると、これらのデータは、到達後の基底乳がん細胞の増殖または生存の阻害ではなく、基底乳がん細胞の転移部位への到達能力の阻止における、CCR5拮抗薬の役割を裏付けるものである。転移部位へのがん細胞のホーミングの阻止は、真の転移抑制剤における望ましい特徴である(51)。従って、CCR5拮抗薬は、CCR5を過剰発現する乳房基底腫瘍またはCCR5が転移を促進する他の腫瘍型(例えば、前立腺がん(50)または胃がん(52))に対する補助療法として、有用であり得る。
【0094】
上記に示され説明された好ましい実施形態に、その広範な発明概念から逸脱することなく、変化がなされ得ることは、当業者には理解される。従って、本発明が、示され説明された好ましい実施形態に限定されず、むしろ、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内の変更を包含することを意図されていることが理解される。例えば、好ましい実施形態の特定の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている発明の一部であっても一部でなくてもよく、開示される実施形態の特徴は、組み合わされてもよい。本明細書に特に記載がない限り、用語「1つの」、「ある」、および「その」は、1つの要素に限定されず、むしろ、「少なくとも1つ」を意味するものと読まれるべきである。
【0095】
本発明の図面および記述の少なくとも一部は、本発明の明確な理解に適した要素に注目するために単純化されている一方で、明確化を目的として、本発明の一部を構成し得ると当業者によって理解される他の要素が排除されていることを理解されたい。しかしながら、そのような要素は当該技術分野において周知であり、かつ必ずしも本発明のより良い理解に役立つとは限らないことから、そのような要素の説明は本明細書には提供されていない。
【0096】
さらに、本方法が本明細書に記載される段階の特定の順番に依拠しない限りにおいて、該段階の特定の順番は、添付の特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本発明の方法を対象とする添付の特許請求の範囲は、記述された順番におけるそれらの段階の実行に限定されるべきではなく、当業者は、それらの段階が変更されることがありかつ本発明の精神および範囲内のままでありつづけることを、容易に理解することができる。
【0097】
本明細書に引用される、刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、それぞれの参考文献が、参照によって本明細書に組み込まれており、その全体が本明細書に記載されていることを、個々に且つ具体的に示されているのと同程度に、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0098】