(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】開口部建材
(51)【国際特許分類】
E06B 7/14 20060101AFI20220113BHJP
E06B 1/36 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
E06B7/14
E06B1/36 Z
(21)【出願番号】P 2019144096
(22)【出願日】2019-08-06
(62)【分割の表示】P 2019014921の分割
【原出願日】2013-06-25
【審査請求日】2019-08-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】増山 新作
(72)【発明者】
【氏名】新口 貴之
(72)【発明者】
【氏名】鶴谷 直美
【合議体】
【審判長】森次 顕
【審判官】奈良田 新一
【審判官】有家 秀郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-142336(JP,U)
【文献】特開2003-321967(JP,A)
【文献】実公昭56-24799(JP,Y2)
【文献】特開平11-131918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B1/00-1/70,3/00-3/04,3/50-3/52,7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠と、障子とを備え、
障子の室内側面と枠の室外側面との間に空間を形成してあり、枠は、障子に向けて突出し、障子との間に隙間を有する軟質の突出片を有し、突出片により
前記空間の内周側の間口を前記空間の見込寸法よりも狭めてあることを特徴とする開口部建材。
【請求項2】
障子の室内側面と対向する枠の室外側面が樹脂製であることを特徴とする請求項1記載の開口部建材。
【請求項3】
障子の框の室内側面が樹脂製であることを特徴とする請求項1又は2記載の開口部建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部建材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サッシ枠の室内側に内周側に突出した内向き突出部を備え、内向き突出部に室内側シール材を室外側に向けて装着し、室内側シール材で框組体の室内側部を被覆した建具が記載されている。
この建具においては、ガラスの室内側面に結露水が生ずると、室内側シール材が框組体の室内面に当接しているために、結露水が室内側シール材により堰き止められて下枠上面(下枠の内向き突出部の上面)に滞留する不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、室外の冷気を居住空間まで伝わりにくくすることで、断熱性能を向上できる開口部建材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による開口部建材は、枠と、障子とを備え、障子の室内側面と枠の室外側面との間に空間を形成してあり、枠は、障子に向けて突出し、障子との間に隙間を有する軟質の突出片を有し、突出片により前記空間の内周側の間口を前記空間の見込寸法よりも狭めてあることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明による開口部建材は、請求項1記載の発明の構成に加え、障子の室内側面と対向する枠の室外側面が樹脂製であることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明による開口部建材は、請求項1又は2記載の発明の構成に加え、障子の框の室内側面が樹脂製であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明による開口部建材は、障子の室内側面と枠の室外側面との間に空間を形成してあり、枠は、障子に向けて突出し、障子との間に隙間を有する軟質の突出片を有し、突出片により前記空間の内周側の間口を前記空間の見込寸法よりも狭めてあることで、屋外の冷気が居住空間まで伝わりにくくなり、断熱性能が向上する。
【0009】
請求項2記載の発明による開口部建材は、障子の室内側面と対向する枠の室外側面が樹脂製であることで、断熱性能がより一層向上する。
【0010】
請求項3記載の発明による開口部建材は、障子の框の室内側面が樹脂製であることで、断熱性能がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の開口部建材の第1実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】第1実施形態の開口部建材の横断面図である。
【
図3】第1実施形態の開口部建材の室内側正面図である。
【
図4】第1実施形態の開口部建材において、障子が開いた状態を示す横断面図である。
【
図5】(a)は下枠の室内側枠部の端部の加工状態を示す平面図であり、(b)は同室内側枠部の縦断面図であり、(c)は同室内側枠部の納まりを示す横断面図である。
【
図6】(a)は下枠の室内側枠部の端部の加工状態の他の例を示す平面図であり、(b)は同室内側枠部の縦断面図であり、(c)は同室内側枠部の納まりを示す横断面図である。
【
図7】本発明の開口部建材の第2実施形態を示す横断面図である。
【
図8】本発明の開口部建材の第3実施形態を示す縦断面図である。
【
図9】第3実施形態の開口部建材の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~4は、本発明の開口部建材の第1実施形態であって、住宅用のたてすべり出し窓を示している。本開口部建材は、躯体開口部に取付けられる枠1と、枠1に開閉自在に支持した障子2とを備えている。
【0013】
枠1は、
図1,2に示すように、上枠3と下枠4と竪枠5,6とを枠組みして構成してある。上枠3と下枠4と竪枠5,6は、それぞれアルミニウム合金の押出形材よりなる金属枠部7,8,9,10と、金属枠部7,8,9,10の室内側の内周部に取付けた樹脂の押出形材よりなる室内側樹脂枠部11,12,13,14とで構成されている。
障子2は、アルミニウム合金の押出形材よりなる上框15と下框16と竪框17,17とを四周框組みし、各框の内周側に形成した溝18内に複層ガラス19をグレチャン20を介して嵌め込んである。障子2は、上枠3の金属枠部7と上框15の間と、下枠4の金属枠部8と下框16の間に配置されたフリクションステー21a,21bにより枠1と連結され、
図4に示すように、戸先側にスライドしながら縦軸回りに90°回動して開くようになっている。障子2の開閉操作は、
図3に示すように、下枠4の室内側樹脂枠部12の室内側面に設けたオペレータハンドル22を操作して行う。
【0014】
各金属枠部7,8,9,10は、
図1,2に示すように、室内外方向の中間部に内周側に突出してタイト材ホルダー23が設けてあり、タイト材ホルダー23に室外側に向けてタイト材25が取付けてある。タイト材25は、障子2の框15,16,17の室内側面の外周縁部に当接している。
【0015】
各室内側樹脂枠部11,12,13,14は、金属枠部7,8,9,10のタイト材ホルダー23の室内側に内周側に突出して設けられ、枠1の室内側の見えがかりの部分を覆っている。各室内側樹脂枠部11,12,13,14は、矩形断面の中空部26と、中空部26の外周側の壁を室内側に延出して設けたアングル部27と、中空部26の内周側の壁を室外側に延出して設けた突出片28と、金属枠部7,8,9,10に係止する複数の係止爪29a,29b,29cとを有している。突出片28は、框15,16,17の室内側壁の内周縁30から5~10mm程度内周側に離間して位置し、突出片28の先端と障子2のガラス面31との間には3mm程度の隙間32が設けてある。突出片28の先端部28aは、軟質樹脂で形成してある。この軟質樹脂部分は、他の硬質樹脂部分と一体に押出成形(いわゆる二色成形)して設けている。
枠1の室内側の内周部にこのような室内側樹脂枠部11,12,13,14を設けることで、障子2の框15,16,17が室内側から見て見えないように隠されると共に、障子2の框15,16,17と室内側樹脂枠部11,12,13,14との間に、間口が狭く奥行が深い空間33を形成している。
【0016】
四周の室内側樹脂枠部11,12,13,14のうち下枠4の室内側樹脂枠部12は、
図1に示すように、外周側部12aと内周側部12bとに分割して形成してある。このように下枠4の室内側樹脂枠部12を分割構造とすることで、オペレータハンドル22を取付けたり、オペレータハンドル22の動きをフリクションステー21bに伝える連動機構を設置したりするための加工が容易に行える。
また、
図2に示すように、戸先側の竪枠6の室内側樹脂枠部14も、外周側部14aと内周側部14bとに分割して形成してある。本開口部建材は、オペレータハンドル22に替えて、障子2の戸先框17の室内側面にカムラッチハンドルを取付けることもでき、その場合は戸先側の竪枠6の室内側樹脂枠部14に切欠き加工等を行う必要があるが、室内側樹脂枠部14をこのように分割構造とすることで、加工が容易に行える。
【0017】
各室内側樹脂枠部11,12,13,14は、予め各金属枠部7,8,9,10に内周側から取付けられ、その上で上下枠3,4の金属枠部7,8の長手方向の端面を竪枠5,6の金属枠部9,10の内周側面に当接し、側方から挿入したネジを上下枠3,4の金属枠部7,8に形成されたタッピングホールに捩じ込んで、上下枠3,4と竪枠5,6を枠組みしている。
竪枠5,6の室内側樹脂枠部13,14と上下枠3,4の室内側樹脂枠部11,12の端部の納まりは、
図3に示すように、いわゆる横勝ちの状態になっている。上下枠3,4の室内側樹脂枠部11,12の端部は、
図5に示すように、突出片28に長手方向端部より竪框17から内周側に離間した位置まで達する切欠き34を設け、竪枠5,6の室内側樹脂枠部13,14は長手方向端部を直角に切断し、その切断した小口を上下枠3,4の室内側樹脂枠部11,12の内周側面35に当接している。そのため、竪枠5,6の室内側樹脂枠部13,14の突出片28は切欠き加工が不要であり、加工工数を削減できる。
図6は、上下枠3,4の室内側樹脂枠部11,12の端部の加工の他の例を示している。突出片28は、
図6(b)に示すように、軟質樹脂で形成された先端部28aの室内外方向の長さが
図5のものより長くなっており、また
図6(a)に示すように、長手方向端部の突出片28の切欠き34を小さくすると共に、竪枠5,6の室内側樹脂枠部13,14の突出片28の外周側に隣接する位置で、突出片28に切り込み36を設けてある。このように突出片28に切り込み36を設けたことで、
図6(c)に示すように、突出片28の左右の端部のみが障子2閉鎖時に変形するから、突出片28の障子2の竪框17と重合する部分を切除しなくても、障子2を閉鎖するのに支障がない。
【0018】
以上に述べたように本開口部建材は、枠1の室内側の内周部に室内側樹脂枠部11,12,13,14を設け、室内側樹脂枠部11,12,13,14は内周側面35に室外側に突出する突出片28を有し、突出片28は障子2の框15,16,17よりも内周側に位置していることで、障子2の框15,16,17が室内側樹脂枠部11,12,13,14で隠れるため、内観の見栄えが良い。さらに、突出片28の先端と障子2のガラス面31との間に隙間32が設けてあることで、
図1に示すように、上框15やガラス面31等に生じた結露水37を、図中の矢印38a,38bで示すように、突出片28で堰き止めることなく流下させられ、下枠4上面(室内側樹脂枠部12の内周側面35)に結露水が滞留することがない。なお、流下した結露水は、下枠4と下框16とをシールしているタイト材25の上に滞留するが、障子2を開ければ室外に排水されるし、障子2を開けなくてもそのうちに蒸発してなくなる。
さらに本開口部建材は、室内側樹脂枠部11,12,13,14の突出片28により、障子2の框15,16,17と室内側樹脂枠部11,12,13,14との間に間口が狭く奥行の深い空間33を設けており、しかもその空間33の入り口部分33aがジグザグした形になっているため、アルミ製の框15,16,17を伝わる室外の冷気がこの空間33に滞留し、居住空間まで冷気が伝わりにくくなるため、断熱性能が向上する。また、暴風時にタイト材25を超えて噴出した雨水は、前記空間33を上昇するうちに運動エネルギーが低下して室内側に漏水しにくくなるので、水密性能も向上する。
また、室内側樹脂枠部11,12,13,14の突出片28の先端部28aを軟質樹脂で形成したことで、暴風時にガラス19が室内側に変形したり、障子2を乱暴に閉鎖したりしたときに、突出片28がガラス面31と接触したとしても、ガラス19の破損を防止することができ、前述の排水・断熱・水密性能をそのまま維持することができる。
突出片28は、框15,16,17の室内側壁の内周縁30から5~10mm程度内周側に離間しているため、
図4中に二点鎖線で示すように、障子2が開き始める際に障子2が戸先側にスライドしても、突出片28が戸尻側の竪框17と干渉することがなく、障子2の開閉が妨げられない。
さらに本開口部建材は、内観視で障子2の框15,16,17が見えないばかりか、室内側樹脂枠部11,12,13,14とガラス19との間に質感や色の異なるシール材が無いため、内観意匠をより一層向上することができる。
【0019】
図7は、本発明の開口部建材の第2実施形態を示している。本実施形態は、竪枠5,6の室内側樹脂枠部13,14の形状が第1実施形態と異なっている。竪枠5,6の室内側樹脂枠部13,14は、内周側面42が室外側に向かうにつれて内周側に位置するように傾斜している。戸先側の竪枠6の室内側樹脂枠部14は、外周側部14aが第1実施形態と兼用である。
このように、内周側面42を傾斜させることで、竪枠5,6の室内側端部の見付寸法Aを小さくすることができ、内観意匠がさらに向上する。また、上下枠3,4と竪枠5,6とで室内側端部の見付寸法Aを共通にすることもできる。さらに、竪枠5,6の内周側面42とガラス面31との間の入隅部43が鈍角になるため、直角とした場合と比べて、入隅部43の拭き掃除が容易になる。
本実施形態においても、竪枠5,6の室内側樹脂枠部13,14と上下枠3,4の室内側樹脂枠部11,12の端部の納まりを、第1実施形態と同様に横勝ちの状態とすることで、竪枠5,6の室内側樹脂枠部13,14の内周側面42を傾斜させても、上下枠3,4の室内側樹脂枠部11,12の端部を斜めに切断する必要がなく、加工が容易である。
【0020】
図8,9は、本発明の開口部建材の第3実施形態を示している。本実施形態のものは、障子2を枠1内に固定具(図示省略)で固定し、FIX窓としている。枠1と障子2は、第1実施形態のものと共通である。
下枠4の室内側樹脂枠部12の突出片28の先端とガラス面31との間の隙間32には、
図8に示すように、ゴムや軟質樹脂で形成された隙間塞ぎ材44を内周側から挿入して取付けている。これにより、障子2を開閉できないFIX窓において、下枠4の室内側樹脂枠部12の突出片28の先端とガラス面31との間の隙間32に異物が落下して取り出しが困難となったり、意匠が低下したりするのを防ぐことができる。しかも、
図9に示すように、竪枠5,6の室内側樹脂枠部13,14の突出片28の先端とガラス面31との間には隙間32があるため、ガラス面31に生じた結露水は隙間塞ぎ材44の上に落下した後、この隙間32を通じて排水することができ(図中の矢印45参照)、室内側樹脂枠部12の上面に結露水が滞留するのを防止できる。
水密性や密閉性を重視する場合は、四周の室内側樹脂枠部11,12,13,14の突出片28の先端とガラス面31との間の隙間32を隙間塞ぎ材44で塞ぐこともできる。その場合でも、少なくとも一方の竪枠5又は6の下端部において、突出片28とガラス面31との間の隙間32を残存しておくことで、ガラス面31に生じた結露水をその隙間32を通じて排水することができる。
【0021】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。障子は、横すべり出し式に室外側に開くものや、ヒンジで枠と連結されて室外側に開くものであってもよく、様々な開き方の窓とFIX窓との間で枠を兼用することができる。枠は、金属枠部と樹脂製の室内側枠部とで構成したものに限らず、金属枠部に相当する部分と室内側枠部に相当する部分を一体で形成したもの、例えば樹脂でこれらの部分を一体成型したものであってもよい。障子の框は、樹脂製であってもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 枠
2 障子
3 上枠
4 下枠
5,6 竪枠
7,8,9,10 金属枠部
11,12,13,14 室内側樹脂枠部(室内側枠部)
15 上框
16 下框
17 竪框
28 突出片
32 隙間