(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】自動車の少なくとも1つの部品のための診断方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/26 20060101AFI20220203BHJP
B60T 13/138 20060101ALI20220203BHJP
B60T 17/22 20060101ALI20220203BHJP
F16J 15/3296 20160101ALI20220203BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20220203BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20220203BHJP
F16D 25/12 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G01M3/26 M
B60T13/138 A
B60T17/22 Z
F16J15/3296
F16J15/18 B
F16J15/52 Z
F16D25/12 B
G01M3/26 P
(21)【出願番号】P 2019501669
(86)(22)【出願日】2017-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2017066653
(87)【国際公開番号】W WO2018011021
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】102016112971.2
(32)【優先日】2016-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509159159
【氏名又は名称】アイピーゲート・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ライバー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ライバー
(72)【発明者】
【氏名】アントン ファン ツァンテン
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/036601(WO,A2)
【文献】特表平10-507512(JP,A)
【文献】米国特許第06631636(US,B1)
【文献】特開2005-344865(JP,A)
【文献】特開平10-132696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
B60T 13/138、17/22
F16J 15/18、15/3296、15/52
F16D 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の少なくとも1つの部品に対する診断方法、特に少なくとも1つのシールおよび/または弁の密封性を確認するための診断方法であって、
ピストン(18)を電動モータ駆動部(9)によって駆動するピストン・シリンダユニット(18,D)が圧力供給ユニット(DV)を形成し、
制御ユニットが少なくとも1つのセンサ(8a)によって、前記ピストン(18)のピストン位置および/またはピストン運動を検出し、かつ少なくとも1つのセンサ(15,8b)によって、前記圧力供給ユニット(DV)によって生成された圧力または前記駆動部(9)を通って流れるモータ電流(i)を検出する方法において、
前記制御ユニットは前記診断方法の間に、
前記ピストン(18)の前記ピストン運動(S
k)の量、および/または前記ピストン位置の時間的な変化(f
sk(t))を、前記モータ(9)の一定のまたは近似的に一定の駆動力の下で測定し、前記ピストン運動(S
K)の前記量、および/または前記ピストン位置の前記時間的な変化(f
sK(t))を、前記部品の変化および/または機能性の判断時に考慮する、または
前記ピストン(18)を所定の行程区間(s
K)ぶんだけ位置調整し、同時に、前記圧力供給ユニット(DV)によって生成された圧力(p)および/または前記電動モー
タ駆動部を流れる電流(i)を測定して、前記部品における、または前記部品の一部における流れ抵抗を求める、または
静止している前記ピストン(18)の下で前記圧力の時間的な変化(dp/dt)を測定し、前記圧力の測定された前記時間的な変化(dp/dt)を、前記部品の変化および/または機能性の判断時に考慮
し、
前記制御ユニットは前記診断方法を、前記診断方法の持続時間の間に制動を行う必要がない場合には、前記車両の走行中に実施し、
このために前記制御ユニットは、前記診断方法の開始前に、前記車両の走行状態および車両状態を検査する、
ことを特徴とする診断方法。
【請求項2】
前記ピストン(18)の測定された前記ピストン運動(s
K)、前記ピストン(18)の前記ピストン運動の測定された時間的な変化(f
sK(t))または前記圧
力の時間的な変化(dp/dt)を、始まっているまたは存在している、前記部品の変化および/または機能性を表す尺度として用いる、請求項1記載の診断方法。
【請求項3】
前記診断方法は、リーケージレート(dv/dt;dp/dt)を求め、求められた前記リーケージレートに基づいて、相応する出力信号またはメッセージを作成する、請求項1または2記載の診断方法。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記診断方法を、前記車両の複数の部品に対して、時間的にずらして実施し、ここで各部品には、固有の許容される最大リーケージレートが割り当てられている、請求項3記載の診断方法。
【請求項5】
前記車両の前記部品は、ブレーキ装置またはブレーキ装置の一部であり、特に弁(SV1-4;Avi、TV1,2)または前記ピストン・シリンダユニット自体または前記電動モータ駆動部(9)、液圧式に動作するクラッチまたは車両バッテリー(B)である、請求項1から4までのいずれか1項記載の診断方法。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記診断方法の間に、前記ピストン(18)の位置変化(s
K)の量を、前記駆動部(9)を通って流れる一定のモータ電流(i)の下で測定し、前記ピストン(18)の前記位置変化(s
K)に基づいて、特に、前記部品の圧力体積特性曲線を評価して、前記部品または前記部品の一部の密封性および/または機能性を求める、請求項1から5までのいずれか1項記載の診断方法。
【請求項7】
前記制御ユニットは、前記診断方法の間に、前記部品内の一定の圧力を、前記圧力供給ユニット(DV)によっておよび前記部品内の圧力測定によって調整し、この際に、前記ピストン(18)
の位置変化(s
K)の量を測定し、前記ピストン(18)の前記位置変化(S
K)に基づいて、特に、前記部品の圧力体積特性曲線を評価して、前記部品または前記部品の一部の密封性および/または機能性を求める、請求項1から6までのいずれか1項記載の診断方法。
【請求項8】
前記制御ユニットは、前記診断の際に
、ブレーキ回路および/またはホイール回路の前記圧力体積特性曲線を考慮する、請求項
7記載の診断方法。
【請求項9】
第1のステップにおいて、前記圧力供給ユニット(DV)は、前記弁(TV1、2)の閉成によって、前記車両の残りの部品から分離され、これに続いて、前記駆動部が短時間駆動制御され、ここから結果として生じる短時間の負荷に基づいて、前記車両の前記バッテリー(B)の状態が検査される、請求項
5記載の診断方法。
【請求項10】
前記診断方法は、制動終了付近で、または制動終了後に、または車両静止時に実施される、請求項1から
9までのいずれか1項記載の診断方法。
【請求項11】
既に前記部品におい
て設定されたもしくは調整された圧力が前記診断方法に使用される、請求項1から
10までのいずれか1項記載の診断方法。
【請求項12】
前記車両の制動中において、前記
部品の密封性が、前記圧力体積特性曲線の比較によって検査される、請求項
7記載の診断方法。
【請求項13】
前記モータ電流(i)を介した前記圧力供給ユニット(DV)の制御および調整のため
に目標値(i
soll)が電流特性マップから読み取られる、請求項1から
12までのいずれか1項記載の診断方法。
【請求項14】
前記特性マップ内には、パラメータである前記駆動部の摩擦および/または前記ピストンの摩擦、前記ピストンの速度および/または加速度とモータ電流の関係が記憶されている、請求項
13記載の診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の少なくとも1つの部品に対する診断方法、特に少なくとも1つのシールおよび/または弁の密封性を確認するための診断方法に関する。ここでは、ピストンが電動モータ式駆動部によって駆動されるピストン・シリンダユニットが圧力供給ユニットを形成し、制御ユニットが少なくとも1つのセンサによって、ピストンのピストン位置および/またはピストン運動を検出し、かつ少なくとも1つのセンサによって、この圧力供給ユニットによって生成された圧力またはこの駆動部を通って流れるモータ電流を検出する。
【0002】
従来技術
従来技術の液圧式走行ダイナミックシステムのための圧力調整方法が、Bremsenhandbuch(第4版、Bert Breuer,Karlheinz Bill,Springer Vieweg)の434ページ以下に詳細に記載されている。
【0003】
従来技術に相応に、従来のABS/ESPシステムでは、いわゆる「Rueckfoerdersysteme」が使用される(
図20.12 Bremsenhandbuch 434ページ)。調整動作(ABS動作)において、圧力調整は、吸入弁および吐出弁の時間制御を介して行われる。圧力調整を改良するために、パルス幅調整(PWM)によって弁が制御される。このような従来の方法は、極めて多くのコストがかかり、かつ極めて正確なモデルを必要とする。なぜなら、時間制御の際に、多数の非線形の影響、例えばコイル温度、差圧、粘性、弁の製造誤差および調整時の圧力レベルが再現されなければならないからである。通常はポンプが圧力源として使用され、これは多くの場合に、一定の一次圧力を供給する。この一次圧力は、足の力および倍力装置の増幅係数に関連する。
【0004】
独国特許出願公開第102013210563号明細書(DE102013210563A1)から、さらに、増圧および減圧が、倍力装置動作時に、電動モータによって駆動制御されるピストンによって調整されるブレーキ装置が公知である。ABS動作時には、ピストンを介して、一定の一次圧力が設定される。ここでこの圧力は、ホイールブレーキにおいて、吸込弁および吐出弁によって、時間制御/PWM制御を介して調整される。
【0005】
別の液圧システム(例えばクラッチおよびギヤセレクター)の場合には、体積流量が、可変の開放横断面を有する比例弁を介して制御され、ここでは、圧力は、ポンプおよび高圧アキュムレータを介して提供される。
【0006】
別のブレーキ装置が、EP1874602から公知であり、ここでは、ホイールブレーキ内のブレーキ圧が、マルチプレクス圧力調整を用いて調整され、ここでは、位置調整可能なピストンおよびホイールに割り当てられた各切替弁を介して、圧力が、圧力体積特性曲線およびピストンの距離制御を介して調整される。
【0007】
マルチプレクス調整を伴う別のブレーキシステムが、DE102011085273から公知である。このようなブレーキシステムでは、各ホイールブレーキに割り当てられた切替弁が、増圧および減圧のために開放され、圧力が、ピストンの距離制御を介して、圧力距離特性曲線を考慮して変えられる。ここでは、増圧のために、ピストンが、前方へ、所定の行程区間ぶん動かされ、減圧のために、ピストンが、後方へ、所定の行程区間ぶん動かされる。実際圧力に達した後、各弁が閉成される。種々のホイール内の圧力は、短い時間で連続して、続けて調整される、もしくは部分的に同時に調整される。このような方法の場合にも、圧力ピストンもしくは位置調整された圧力ピストンが、圧力調整のためのアクチュエータである。
【0008】
有利にはこのような調整方法では、高い圧力調整精度と、閉じられているブレーキ回路における圧力調整、すなわちブレーキ回路は、開放された弁を介して、リザーバタンクと接続されていない。このような方法が有する、切替弁の製造誤差に対する要求は僅かである。欠点となるのは、ピストンの位置調整駆動部の動性ならびに切替弁の大きい開放横断面および開放圧力安定度に対する高い要求である。
【0009】
PCT/EP2014/069723から、複動式ピストンユニットが公知であり、複動式ピストンユニットは、圧力を、1つまたは2つのブレーキ回路において、前進および後退において、最小の時間中断で、増圧および減圧させる、もしくは体積を継続的に搬送し、さらに、切替弁を介して、液圧式に作用する面の切替を、前進および後退において可能にする。このような解決手段は、ブレーキシステムに対してのみ適しているのではなく、圧力源を必要とする全ての液圧システム、例えば変速機制御部およびクラッチ制御部に適している。これら全てのシステムに対して、密封性診断および流れ抵抗が、システムにおいて、継続的に実行されなければならない。
【0010】
独国特許出願公開第102011081240号明細書(DE102011081240A1)は、ブレーキバイワイヤブレーキシステムを示しており、これは、ブレーキシステムを監視する(診断する)方法を表している。リーケージを診断する際には、等しいピストン位置の下で圧力が複数回、測定される。測定された測定値対(圧力-ピストン位置)は、ここで、特性マップと比較される。測定値対が許容される領域を下回ると、これは、リーケージとして識別される。このような測定値によって、いわゆるシステム剛性が求められる。これは、液圧回路の空気の流通を求めるのに良好に適している。しかし、独国特許出願公開第102011081240号明細書(DE102011081240A1)には、元来のリーケージ、すなわち、圧力またはピストンの位置変化の時間的変化を測定することは記載されていない。第3の測定量によって、メインシリンダの圧力が測定され、第4の測定量によって、ペダル距離が測定され、別の特性マップと比較される。これは、ブレーキバイワイヤシステムにおいては通常である。なぜなら、ここでは、妥当でない場合に、例えばペダル故障の危険、または距離シミュレータの漏れの結果として欠陥メッセージが形成され、圧力供給装置(BKV)のスイッチオフによってフォールバックレベルに切り替えられるからである。例えば、弁およびブレーキ回路の全体的な診断のための方法は、独国特許出願公開第102011081240号明細書(DE102011081240A1)にも記載されていない。
【0011】
独国特許出願公開第102012201535号明細書(DE102012201535A1)は、液圧検査を可能にし、例えば操作ユニットからの圧力手段の排出を可能にするブレーキシステムを開示している(密封性またはリーケージ)。ここでは、全体的なブレーキシステムの一部だけが検査され、検査のために、弁の形態の付加的に制御可能な手段が必要である。リーケージの検査は、制御可能な圧力源の圧力手段体積放出によって行われる。
【0012】
近々、自律走行のためのシステムが使用されるだろう。欠陥の発生が、致命的な結果を有し得るので、その安全性の要求は特に高い。ここで特にクリチカルなのは、いわゆる隠れた欠陥である。隠れた欠陥は、例えば、圧力が低い場合には良好に識別されない、シールからの漏出流または弁内の微細なゴミである。これらは、識別されない場合には、次の制動時に、クリチカルな機能不全、例えばブレーキ回路の故障を生じさせ得る。別のシステム、たとえばクラッチ操作部では、調整介入の操作速度の妨害がクリチカルであり、これは圧力供給部の流速を介して測定可能である。
【0013】
ここでは、バッテリー状態も検査されなければならない。なぜなら、制動時に、制動力アクチュエータが故障してはならないからである。公知であるのは、バッテリー診断に対する、比較的高い電流強度による短い負荷テストである。
【0014】
発明の課題
本発明の課題は、車両の少なくとも1つの部品のための診断方法を提供することである。
【0015】
課題の解決手段
本発明の課題は、本発明に相応に、請求項1の特徴部分に記載された構成を有する診断方法によって解決される。請求項1に記載されている診断方法の別の有利な構成は、従属請求項の特徴部分に記載されている構成によって解決される。
【0016】
有利には、本発明の診断方法によって、電気式の圧力源に給電するためのバッテリー状態を含めて、全体的な液圧システムが監視される。ここでは、全ての重要な部品、例えば弁、シールが、漏れおよび機能不全に関して検査される。
【0017】
本発明の診断方法は、有利には、少数のセンサで足りるということを特徴とする。ピストン位置の測定を介した診断時には、不所望に流出する液圧媒体の体積が正確に測定される。ここでは、多くの場合に、圧力変動の発生によって、誤った結果を生じさせる、液圧回路における圧力測定を省くことができる。有利には、リーケージレートとも称される流速も求められ、これによって、この診断が、車両の種々の部品に対して使用可能になる。
【0018】
したがって、制御ユニットによって、この診断方法の間に、ピストンのピストン運動の量、および/またはピストン位置の時間的な変化が測定される。ここで、ピストン運動の量および/またはピストン位置の時間的な変化が、部品の変化および/または機能性の判断時に考慮される。
【0019】
しかし有利には、制御ユニットがピストンを所定の行程区間ぶんだけ位置調整し、同時に、圧力供給ユニットによって生成された圧力および/または電動モータ式駆動部を流れる電流を測定して、部品または部品の一部における流れ抵抗を求めることも可能である。
【0020】
この診断方法は有利には、所定の時間、静止しているピストンの下で圧力の時間的な変化を測定することも可能であり、ここでこの圧力の測定された時間的な変化は、部品の変化および/または機能性の判断時に考慮される、または直接的にリーケージレートが求められる。リーケージレートとは、本発明の範囲において、時間あたりの体積変化(dv/dt)または時間あたりの圧力変化(dp/dt)であると理解されたい。各車両部品に対して、異なる大きさのリーケージレートが許容されていてよい。
【0021】
上述したように、本発明の診断方法によって、リーケージレートdv/dtもしくはdp/dtが求められ、求められたリーケージレートに基づいて、相応する出力信号またはメッセージが作成される。これによって、例えば、システムの故障前に、相応する欠陥除去を行うことができる。したがって例えば制御ユニットは、ピストン運動が閾値を上回ると直ぐに部品の機能性もしくは密封性を確認することができる。この閾値は、例えば、設定されたもしくは調整されたモータ電流または液圧回路内の圧力に関連していてよい。
【0022】
有利には、制御ユニットは、この診断方法を、車両の複数の部品に対して、時間的にずらして実施してよい。ここで各部品には、固有の許容される最大リーケージレートが割り当てられている。
【0023】
考えられる車両の部品は、ブレーキ装置またはブレーキ装置の一部であってよく、特に弁またはピストン・シリンダユニット自体またはその電動モータ式駆動部、液圧式に動作するクラッチまたは車両バッテリーであってよい。
【0024】
この診断方法の第1の有利な実施形態では、制御ユニットは、診断方法の間に、ピストンの位置変化の量を、駆動部を通って流れる一定のモータ電流の下で測定し、次に、この測定されたピストンの位置変化に基づいて、特に、部品の圧力体積特性曲線を評価して、部品または部品の一部の密封性および/または機能性、特にリーケージレートを求める。
【0025】
モータ電流(位相電流またはバッテリー電流)の測定によって、有利には圧力測定、ひいては、そうでない場合にこのために必要になる圧力センサを省くことができる。場合によって生じる、ピストン力もしくはモータ電流から、それによって生成された圧力の導出時の不正確さを、特性マップの使用を介して改善することができる。特性マップはこのために有利には、以下の関係およびパラメータを考慮することができる。すなわち、モータ電流、駆動部における摩擦、ピストンの位置変化速度、ピストン加速度、もしくはローターの回転加速度である。特性マップは全ての圧力制御および調整に使用されてもよく、例えば、増圧および減圧ならびにABS機能の際に使用されてよい。
【0026】
この診断方法の第2の有利な実施形態では、制御ユニットは、診断方法の間に、部品内の一定の圧力を、圧力供給ユニットによっておよび部品内の圧力測定によって調整し、この際に、ピストンの位置変化の量を求め、これによって、ピストンのこの位置変化に基づいて、特に、部品の圧力体積特性曲線を評価して、部品または部品の一部の密封性および/または機能性、特にリーケージレートを求める。
【0027】
この診断方法によってブレーキシステムが検査される場合には、制御ユニットは、診断時に、ブレーキ回路および/またはホイール回路の圧力体積特性曲線をともに考慮する。
【0028】
車両のブレーキシステムが検査されるべき場合には、この診断方法は有利には、制動終了付近で、制動終了後にまたは車両静止時に実施される。診断方法が車両の走行時に実施されるべき場合には、これは、制動が行われないまたは高い確率で行われない時間窓においてのみ行われる。したがって、制御ユニットは、診断方法の開始前に、車両の走行状態および車両状態を検査しなければならない。有利には、既に部品において、特にブレーキ回路において設定されたもしくは調整された圧力がこの診断方法に使用可能である。
【0029】
診断時には、部品の寿命が著しく短くなるのができるだけ回避されるべきであり、これに相応して、上述した診断が、各部品に合わせられるべきである。ここでは特に、動作圧力、例えば存在している制動圧力を使用することが適している。これは、特に、車両静止状態時に存在している制動圧力を診断のために利用する場合に有利である。
【0030】
圧力供給装置が、設けられている弁によって、車両の残りの部品から切り離される場合には、ピストンの駆動モータに、特定のテスト周期において負荷がかけられ、さらに短時間、バッテリーに比較的高い電流で負荷がかけられ、これによってバッテリーを検査することができる。ここでは、過度に大きい電圧降下が、バッテリーの故障に対する徴候であることが知られている。付加的に、密封性の診断が短時間で行われ、かつ正確でなければならない、ということが重要である。なぜなら、例えばストップアンドゴーの場合、車両静止状態時に使用できる時間は短いからである。
【0031】
故障率(AW)が通常、年に関係しており、多くの場合に、ppm(10
-6)によって規定されていることが知られている。車両は近年、200×10
3制動/年で規定されている。シール故障は、1ppmで想定される。ここで、各制動時に診断が行われる場合、制動中の故障率
【数1】
になるだろう。したがって故障リスクは、最小であろう。短い時間間隔でのアクティブな診断の重要性は次の点にある。
・格段に低い故障率、ひいては起こっている故障の早期識別。上述した例を参照。1ppm=10
-6の代わりに、診断6×10
-12を有しており、ファクターはほぼ100万。ここから、テストが例えば各50回の制動後にのみに、例えば車両静止状態時に実行されれば十分であることが導出可能である。
・既に次の制動の前に、クリチカルな、例えば隠れている欠陥が識別される。
・検査範囲および適用における、例えば診断周期の多様性、例えば機能中、機能終了付近、車両静止状態、部分的にサービスインターバルにおいてのみ。
【0032】
密封性の測定量は、高解像度の圧力センサによる遮断されている体積の時間的な圧力変化または択一的に、圧力源の電動モータの一定の圧力または電流下での、ピストン距離測定を介した時間的な体積変化である。ここでは、圧力または電流は、テスト周期においてのみ、近似的に一定でなければならない。なぜなら、2つの測定された影響ファクターは、体積変化に算入されるからである。本発明では、システムの密封性を複数の診断周期において検出することが提案される。例えば、1.液圧回路、2.弁、3.圧力チャンバ、4.シール、5.圧力供給部。さらに、一定の圧力または電流の下でのピストン距離変化による体積変化が、測定量として使用されるべきである。体積変化の測定は、格段に正確であり、その測定が、システムにおける圧力変動によって影響される、高解像度の圧力センサを必要としない。時間的な体積測定は、流れ抵抗の特定にも使用可能である。最後に、上述したテスト周期の多くでは、体積測定を圧力測定と組み合わせることも可能である。短時間の比較的高い電流負荷によってバッテリーでの電圧降下、ひいてはバッテリー自体を診断するために、メインシリンダおよびホイールシリンダへの全ての弁が閉じられる。
【0033】
本発明の利点は、スピンドルねじ駆動部またはボールねじ駆動部によって操作される簡単なプランジャーと複動式ピストンを有する2つのシステムにおいて示される。しかし択一的に、別の駆動部も使用可能である。
【0034】
第1のシステムでは、ピストンは分離弁を介して種々の調整シリンダ(プランジャー)を操作し、これは、調整介入、例えばクラッチ操作を生じさせる。ここで診断は、液圧回路、弁、シールの密封性、圧力供給部の時間的な体積搬送およびバッテリーの状態を含む流れ抵抗を検出する。
【0035】
第2の、より複雑なシステムは、ブレーキシステムに相当し、これは、例えばDE102014109384から公知である。このシステムは、複動式ピストンと5つの異なる圧力チャンバと多数の弁とシールを有しているタンデムメインシリンダを有している。このシステムは、冗長的なブレーキ回路、相応する弁回路および冗長的なコイル(2×3相)によって自律走行に適している。
【0036】
要約すると、以降の重点が含まれている。
・圧力、ピストン運動、バッテリー電圧の時間的な変化の測定によるブレーキシステム全体における密封性、流れ抵抗およびバッテリーの診断
・液圧システムの個々の領域および部品のための種々の診断周期
・圧力体積特性曲線との比較による各制動中の密封性テスト
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】1回路式圧力供給部を有する簡易的なシステムと2つの液圧回路HKaとHKbを有するピストン
【
図1a】T
Tの後の単式のテスト周期を伴う種々の測定量の時間的な経過
【
図2】2回路式圧力供給部と複数の液圧回路を備えた複雑なブレーキシステムとタンデムメインシリンダ
【0038】
図1は、スピンドル駆動部10を介して、シールD6を備えるピストン18を直線的に駆動するモータ9を有する1回路式圧力供給部を示している。圧力は圧力チャンバDにおいて生じ、圧力センサ15を介して測定される。ピストンストロークS
Kは例えば、特に、モータの回転角度を検出するモータセンサ8aを介して測定される。圧液体積は、目標値に相応に、分離弁TV1またはTV2を介して、液圧回路HLaおよびHLb内に搬送される。
図1は例えば、液圧回路HLaおよびHLb、調整シリンダ16aおよび16bを有するトランスミッションコントローラに相当する。これは、調整手段17の操作、例えばクラッチ操作を生じさせる。分離のために、ピストン18は後方に動く。この例では、HLaおよびHLbは閉じられている液圧回路である。リザーバタンクVBと接続された付加的な吐出弁(図示されていない)によって、液圧回路内の増圧P
aufに関連しないで、圧力が低減される(P
ab)。
【0039】
吐出弁を介して液圧媒体がリザーバタンクVB内に排出される場合には、ピストン18の戻り運動時に、相応する体積が圧力チャンバD内で失われる。これは吸込弁SVを介して再び補足され得る。モータは、シャント(分流器)を介して、電圧測定Vのために、バッテリーBと接続されている。センサ8bによって、モータ内の位相電流が測定される。バッテリー電流は、付加的な抵抗を介して測定可能である。付加的に、センサ8cによって、モータの温度または圧力チャンバ内の温度が測定される。バッテリー電流の代わりに、モータ内の位相電流も測定可能である。
【0040】
図1aは、重要な測定量である圧力P、通流量Q、ピストンストロークS
Kおよび電流iの時間的な変化を示している。時点T
Tで、本発明による診断方法が実行され、ここでは弁TV1とTV2が閉じられ、ピストンストロークはこれ以上上昇しない。モータ電流iもさらに上昇しない。したがって圧力は、設定された値にとどまるべきである。ここで、一定の圧力または電流の下で、ピストンが動くと、これは、圧力チャンバDおよび/または液圧管路内でまたは弁TV1およびTV2内で漏れが生じている、ということの徴候である。漏出流は、それが小さい場合であっても、容易に、ピストン距離変化を介して特定される。T
0とT
Tの間で、既にリーケージが存在している場合には、搬送された体積および圧力を、ピストン押し退け体積に基づく液圧回路HLaまたはHLbの圧力体積特性曲線と比較し、評価することができる。同時に、流れ抵抗が、システムにおいて測定される。例えば切替弁TV1または液圧管路内に微細なゴミがある場合、または高いピストン摩擦またはノイズが調整駆動部内に存在している場合には、これは、高い圧力において、圧力体積特性曲線と比較されて、検知可能になる。
【0041】
時点Tbでは、弁TV1およびTV2が短時間閉成され、これによって、圧力が上昇し、これは相応する駆動制御部を備えたモータにおける電流上昇を生じさせる。電流上昇に基づいて、バッテリーでの電圧降下が過度に高くなると、このバッテリーは故障しており、サービス時に、詳細に調査される。時点Teで、調整量は最大である。
【0042】
図2は、複動式ピストンを備えた2回路式圧力供給部を有する、複雑な2回路式ブレーキシステムを示している。このシステムは、独国特許出願公開第102014117726号明細書(DE102014117726A1)に詳細に記載されている。以降の記載は、むしろ、主要な重点および診断に対する基礎を含んでいる。このようなシステムは、自律走行(AF)のために使用可能である。このシステムは、3つの主要な部品、3つの圧力チャンバA、B、Cと2つのピストン5とプッシュロッド4を備えた補助ピストンを有するタンデムメインシリンダTHZと、複動式ピストンと2つの圧力チャンバDおよびEとを有する圧力供給部と、モータ9と冗長的な固定子コイル(2×3相)を備える固定子と上述したコイルの冗長性において同様に冗長的であるセンサ8a-8cと温度センサ3とから成る。ブレーキシステムはさらに、ABSの圧力調整のための弁回路、吐出弁AV1、AV3、切替弁SV1-SV4、分離弁TV1/2を備える圧力供給の制御部、バイパス弁ShVおよび吐出弁PD3、吸込弁SV1/2、さらにフィードバルブESVおよび距離シミュレータ遮断弁WAを介した距離シミュレータを備える制御部THZを有している。全ての弁は、いわゆる、弁ブロックにおける液圧ユニットHCUにまとめられる。ここでこれは、ホイールブレーキRB1-RB4との接続のための出口を有している。ピストンは、シールD1-D7によって密閉されている。圧力チャンバAおよびCは、リザーバタンクVBと、逆止弁RVを備える絞りDRと通流量に関連する切替弁とを介して接続されている。全ての弁およびシールは欠陥を有することがあり、機能不全の場合には、機能またはブレーキシステムの故障を意味する。重大なのは、例えば自律走行時のブレーキ回路および圧力供給部の故障であり、これは同時に、許されるものではない。シールについては、小さい漏れと、特に比較的高い圧力下で、大きい漏出流を伴う完全な故障とが区別される。
【0043】
使用されている弁では、入口および出口でのフィルターにもかかわらず、ゴミが通流の際に、弁座に付着してしまうという恐れがある。これは、弁の機能を故障させる。クリチカルであるのは、例えば、微細なゴミに基づいて通流が発生してしまう吐出弁AV1/2での場合である。これが制動の終了時に診断によって識別されない場合には、ブレーキ回路が次の制動時に故障してしまう可能性がある。これは例えば、隠れている欠陥である。ピストンは、汚れまたは摩耗または傾斜によって、動けない、または動きづらくなることがある。これは、本発明の診断方法によって識別される。
【0044】
これら全ての欠陥は、診断において検出されるべきである。故障率AWの低減のための診断の有効性は、既に説明されている。
【0045】
以降では幾つかの典型的な欠陥が、その作用とともに説明されている。
【0046】
故障D1:補助ピストン、シールの故障D1は、結果として足下空間におけるリーケージ(漏れ)をもたらす。したがって、安全性の点で重大ではない。なぜなら、リザーバタンクVB内のレベルセンサが反応を示すからである。
診断 D o.k.(それが診断周期において完全に検査されることを意味している。
【0047】
故障D2:ペダルプッシュロッドの故障を惹起させる。これは、ペダル距離センサによって識別され、密封性の診断は不可能であり、サービスにおいてのみ行われる。自律走行には重要でない。ここで、RV/DR(逆止弁と絞り)およびVD/DR(切替弁と絞り)を用いた解決策が図られ、これは、シールD2の故障時のペダル故障に対して、絞りDRの取り付けによって漏れを著しく低減させる。絞りは、通常時には、温度変化時の圧力調整のタスクしか有していない。したがって、これは、小さい通流量、例えば0.3cm3/sに合わせて設計されている。絞り(Dr)は、フォールバック段階の場合のために、圧力供給部、例えばモータの故障に合わせて寸法設定される。絞りによって、例えばTHZにおいて体積損失が、100km/hと60bar=0.6gからの制動時に、約20%生じる。これは依然として、高い制動を可能にし、これによって欠陥が重大でなくなる。このような漏れ体積は、診断時に、良好に識別もされる。比較的高い漏れ体積はこの場合、シール故障に相当する。
【0048】
絞りの特別な構成は、通流量に関連する切替弁である。これは、通流量が比較的多い場合に、例えば診断時に閉じる逆止弁を表している。種々の通流量を伴うこのような解決策は、故障の際、例えば制動中の圧力供給部の故障、例えば搭載電源網の故障時には、有利ではない。ここでは、ペダルおよび補助ピストンが初期位置にある場合に、大きな時間的な遅延を伴わずに、所定の体積がブレーキ回路からRVを介して流れ出なければならない。通流量に関連する切替弁の場合には、これは、より大きい横断面を通って、絞りでの場合よりも格段に迅速に行われる。
【0049】
故障D3によって、通常の制動時に、体積Vが圧力チャンバBからVBに流入する。なぜなら相応する差圧が存在し、距離シミュレータ遮断弁WAを開放するからである。故障は、圧力供給部の付加的な体積搬送によって、診断時に、動作中に、圧力体積特性曲線(p-V特性曲線)によって検出される。さらに、特別な診断周期における場合は、
図3を参照されたい。
【0050】
SK-ピストン5の故障D4、故障は補助ピストンの場合のように、絞りDR1によって阻止される。シールD4における漏出流>絞りの漏出流の場合に、診断o.k.になる。
【0051】
シールD4およびD5では、通常動作時におよび自律走行の際に、作用しない漏出流が存在する。なぜならこれは、圧力供給部搬送体積の1%を下回るからである。絞りDR1の代わりに、電磁弁MVも使用可能である。しかしこれは、多大なコスト増大と結び付いているだろう。DR/RV(絞りと逆止弁)は、シールの故障の影響を低減する簡単な手法である。シールD6(二重シール)およびD7は、2回路式、すなわち冗長的な圧力供給部用に設計されている。D6によって、2つのシールと、その間に位置する漏出路が示されている。圧力チャンバDまたはEの故障時に、冗長性が、DHKによって与えられる。故障Dまたはこれに相応したブレーキ回路では、比較的小さいピストン面によって、低減された搬送体積だけが存在する。しかしこれは、依然として十分である。ブレーキ回路の故障時にも、常に、第2の回路が使用可能である。
【0052】
複動ピストンDHKの漏れまたはシールD6、D7のうちの1つのシールのリーケージは、結果として、体積搬送における損失をもたらし、これは圧力体積特性曲線との比較によって識別される。同様に、通流抵抗の上昇が検出される。
【0053】
圧力センサの故障は、測定されたモータ電流の妥当性によって検出される。
【0054】
バイパス弁ShVを含む分離弁TV1/2の弁故障(漏れ)は通常機能の間、圧力供給部の圧力体積特性曲線を介して検出される。付加的な特別な診断が、テスト周期において行われ得る。吐出弁AV1、AV3を含めた、切替弁SV1-4のうちの1つの切替弁の機能不全は、ABS動作またはESP動作時に、または診断周期の間に識別される。ESV故障はD3のように作用し、距離シミュレータ遮断弁の故障と同様である。
【0055】
ブレーキ回路故障は、液圧ユニット内で、シール(密封)されていない弁または圧力センサによって、またはTHZに対する図示されていないシールによって生じ得る。このような故障は希であり、低い故障率を有している。付加的に、液圧ユニット外の漏れが格段に多い。ここではホイールシリンダからHCUへの液圧接続部分および管路からブレーキホースへの中間部分さらには相応するシールを有するホイールシリンダも該当する。これらの要素は、格段に高い故障率を有している。その故障は、圧力供給部の圧力体積特性曲線によって、および弁SVの後続の閉成によって検出される。弁SVの開放後、同様に、圧力体積特性曲線を介して、ホイール管路の故障が検出される。ホイール管路の故障時には場合によっては、部分故障を有するブレーキシステムBKおよび3つのホイールシリンダに基づいて、2つの相応する完全なブレーキ力欠如の場合よりも良好に制動される。リーケージを有し易いホイール回路の論理的な識別を伴う診断は、制動の間に行われ、障害のないホイールシリンダ管路の増圧Paufに対して遅延時間を生じさせる。
【0056】
要約:
故障し易い全ての部品は、部分的に、ブレーキのアクティブな操作の間、増圧Pauf(TestI)の下で、機能診断によって、p-V特性マップとの比較によってまたは弁の切り替えによっても監視される、または特定の診断周期においてテストされ、例えば車両静止状態においてテストされる。これによって、密封性、流れ抵抗および弁のオン/オフ切り替えが相対的に短い時間間隔で監視される。重要なのは、冗長的な固定子コイルと相応する駆動制御部を有する2回路式圧力供給部が、ブレーキ回路と圧力供給部の同時の故障を回避するということである。
【0057】
上述した、隠れている欠陥も、有利には回避可能である。
【0058】
図3は、簡易的に、考えられる診断周期の時間的な経過を示している。ここでは、診断周期は、周期I、T
01-T
1において、約10-20barへの圧力降下P
ab後に始まる。
【0059】
このようなフェーズT01からT1では、実質的に、圧力と共に体積増加が、妥当性検査において、圧力体積特性曲線(P-V)に基づいて、または特性マップに基づいて評価される。結果は、全ての液圧回路の排気を示しており、P-V特性曲線の時間的な変化の差異には、比較的大きなリーケージ(漏れ)を有する非密封性も示している。ブレーキバイワイヤシステムの利点は、圧力源の比較的小さいリーケージが補償されるということである。比較的小さいリーケージは、後続のテスト周期において検出される。圧力源が故障している場合には、これらは、フォールバック段階にとって重要である。なぜならこれは、密封されていないブレーキ回路の場合に、交通に危険をもたらすからである。
【0060】
診断周期Iは、T1の後に、2つのブレーキ回路における圧力チャンバAおよびBおよびシールにおける密封性を検出する。ここでは、フィードバルブESVが閉成され、補助ピストン回路が分離される。したがって、HiKoにおける圧力は、ペダル運動に相応して、0近傍になる。密封性は、ここで、圧力降下を介してまたは有利にはピストン運動SKを介して測定される。ここでは有利には、電流は10-20%ぶんだけ上昇し、これによって、ピストンでの摩擦およびボールねじ駆動部KGTの摩擦が補償される。電流の制御が特性マップから読み取られることによって、電流測定を伴う電流制御がさらに改善され得る。これは例えば、パラメータであるモータ電流、摩擦、ピストン調整速度および/またはピストン加速度もしくは可動子の回転加速度の関係が検出されることによって行われる。一定の電流または一定の圧力の下での時間的なピストン運動は、密封性または漏出流QIを表す尺度である。
【0061】
診断周期IIは、T2の後に行われる。ここで重要なのは、相応するホイール回路が、相応するSV弁を介して分離されているということである。これは、隠れている欠陥を回避するために必要である。ここでは圧力は、圧力供給部を介して、僅かに、約5bar上昇し、したがって、ホイール圧力に対して差圧が生じる。切替弁SVの密封性の測定は、診断周期Iaの場合と同様に、圧力変化の測定またはピストン位置SKの測定を介して行われる。
【0062】
診断周期IIIは、T3で開始され、回路Cにおける、補助ピストンHiKoの密封性を検出する。このために、フィードバルブESVが開放され、これによって、圧力チャンバAおよびB内の圧力が圧力チャンバCにおける小さい体積増加によって低減される。ここでは、小さい、示されていない体積変化が、漏出流QDによって、絞りDR2によって生じる。なぜなら、補助ピストンの初期位置において、ブリーザ穴が開けられており、これによって、リザーバタンクVBに対する接続が形成されるからである。同様のことが診断周期Iに対しても当てはまる。漏出流QDよりも大きい漏れが検出される。Dr1/RVの代わりに、通流量に関連する切替弁を使用する場合には、圧力供給部を介して短時間に、相応する搬送量が、VDの閉成のために供給されなければならない(簡易的な図において示されていない)。
【0063】
診断周期IVは、T4で始まり、分離弁TV1およびバイパス弁ShVの密封性を検出する。このために、複動式ピストンは、緩慢に動かされ、ここで同時に、弁PD3が開放される。したがって、圧力チャンバE内に低圧が生じる。漏れの場合には、圧力チャンバA-Cにおいて、圧力変化が生じる。
【0064】
このような診断周期は、特定の部品を検査するための特別な周期で拡張され得る。周期は、リスクおよび欠陥安全性に関連して、車両停止CSC、駐車停止PSCまたはサービスに分類されてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 ペダルプッシュロッド
2 ピストンプレート
3 a/b ペダル距離センサ
4 プッシュロッド
5 SK-ピストン
6 ピストン戻しばね
7 THZ-ハウジング
8a モータセンサ
8b モータ電流センサ
8c 温度センサ
9 モータ
10 スピンドル
11 ハウジング
12 SK-ストッパ
13 逆止弁のボール
14 戻しばね
15 圧力センサ
16 調整シリンダ
16a 調整シリンダ
17 調整手段
18 プランジャーピストン
19 2×3相のコイルを有する固定子
20 漏出路
A,B,C 圧力チャンバ
AV 1/3吐出弁
AF 自律走行
B バッテリー
BK I-IIブレーキ回路
D1-D8 シール
DHK 複動式ピストン
DR1 絞り1
DR2 絞り2
DV 圧力供給部
ESV フィードバルブ
HCU 液圧ユニット
HiKo 補助ピストン
HL1/2 液圧管路 ブレーキ回路1および2
HL11/12 圧力供給部の液圧管路
Pauf 増圧
Pab 減圧
PD3 吐出弁
RB1-4 ホイールブレーキ
RF 戻しばね
ShV バイパス弁
SiK 安全臨界
SK ピストン運動
SV1-4 切替弁
SV 吸込弁
TV1/2 分離弁
V 電圧
VB リザーバタンク
VD 通流量に関連する切替弁
WA 距離シミュレータ遮断弁