IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-2つの要素の相対的な移動の監視 図1
  • 特許-2つの要素の相対的な移動の監視 図2
  • 特許-2つの要素の相対的な移動の監視 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】2つの要素の相対的な移動の監視
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20220113BHJP
   G01D 5/20 20060101ALI20220113BHJP
   B61G 7/14 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
G01B7/00 101C
G01B7/00 101M
G01D5/20 110X
B61G7/14 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019507198
(86)(22)【出願日】2017-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2017064535
(87)【国際公開番号】W WO2018028860
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】102016215066.9
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ホーマン
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-336904(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/143525(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
G01D 5/12
G01D 5/20
B61G 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗力に抗して相互に移動可能に支持されている第1の要素(115)および第2の要素(120)と、
相互に移動可能に支持されている2つの要素(115,120)の間の相対的な移動を監視するための装置(110)と、
を含むエネルギ吸収機構(105)であって、
前記装置(110)は、
・発信器(125)およびセンサ(130)を含み、前記発信器(125)と前記センサ(130)とは、相互に固定されており、かつ、場(145)によって相互に接続されており、
・前記センサ(130)は、前記場(145)に基づいて前記発信器(125)を非接触で検出するように構成されており
・前記発信器(125)は、前記要素(115,120)のうちの一方に取り付けられるように構成されており、
・前記センサ(130)は、他方の要素(115,120)のための接触面(150)を有し、
・前記要素(115,120)が相互に移動させられた場合に、前記他方の要素(115,120)によって前記発信器(125)から切り離されるようになっており、
前記要素(115,120)のうちの一方に前記発信器(125)が、他方の要素(115,120)に前記センサ(130)が、以下のように取り付けられている、すなわち、前記センサ(130)の接触面(150)が前記他方の要素(115,120)の軸方向表面(155)に面するように取り付けられている、
エネルギ吸収機構(105)。
【請求項2】
前記発信器(125)は、磁場(145)を提供するための永久磁石を含み、
前記センサ(130)は、磁場センサを含む、
請求項1に記載のエネルギ吸収機構(105)
【請求項3】
前記センサ(130)は、電磁場(145)を提供するためのコイルを含み、
前記発信器(125)は、前記電磁場(145)に影響を与えるための要素を含む、
請求項1または2に記載のエネルギ吸収機構(105)
【請求項4】
前記センサ(130)は、電圧源を含み、
前記発信器(125)は、誘電体要素を含む、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のエネルギ吸収機構(105)
【請求項5】
前記発信器(125)は、前記センサ(130)から非破壊で分離可能である、
請求項1から4までのいずれか1項に記載のエネルギ吸収機構(105)
【請求項6】
前記センサ(130)は、前記発信器(125)に材料結合によって取り付けられている、
請求項5に記載のエネルギ吸収機構(105)
【請求項7】
前記センサ(130)は、前記発信器(125)に摩擦結合によって取り付けられている、
請求項5または6に記載のエネルギ吸収機構(105)
【請求項8】
前記センサ(130)は、前記発信器(125)に形状結合によって取り付けられている、
請求項5から7までのいずれか1項に記載のエネルギ吸収機構(105)
【請求項9】
前記他方の要素(115,120)までの距離を検出するための別の機構(215)をさらに含む、
請求項1から8までのいずれか1項に記載のエネルギ吸収機構(105)
【請求項10】
特に2つの鉄道車両を連結するための連結ロッド(100)であって、
前記連結ロッド(100)は、請求項1から9までのいずれか1項に記載のエネルギ吸収機構(105)を含む、
連結ロッド(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの要素の相対的な移動の監視に関する。特に、本発明は、相互に移動可能に支持されている2つの要素を備える移動ヒューズ機構のトリガの検出に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの要素は、相互に移動可能に支持されており、これら2つの要素の間の相対的な移動は、所定の条件下でのみ生じるべきである。例えば、2つの要素の間で所定の力が伝達され得るように、ただし、比較的大きな力によってこれらの要素の相対的な移動が引き起こされるように、これら2つの要素を相互に結合することができる。1つの実施形態においては、2つの要素は、過負荷保護連結部を形成しており、相対的な移動には、要素のうちの一方の破断、せん断、または、変形が含まれ得る。要素の間で所定の相対的な移動が発生することを、トリガとも呼ぶことができる。
【0003】
トリガを監視するために、例えば機械的なインジケータを使用することができ、この機械的なインジケータは、1つの実施形態においてはピンを含み、このピンは、2つの要素が相互に移動すると変形または分離される。より有利なのは、トリガが発生した場合に信号を供給する電気的な監視装置である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の基礎となる課題は、相互に移動可能に支持されている2つの要素の相対的な移動を監視するための改善された技術を提供することである。本発明は、独立請求項に記載の対象によって上記の問題を解決する。従属請求項は、好ましい実施形態を示す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
相互に移動可能に支持されている2つの要素の相対的な移動を監視するための装置は、発信器およびセンサを含み、発信器とセンサとは、相互に固定されており、かつ、場によって相互に接続されている。センサは、場に基づいて発信器を非接触で検出するように構成されている。発信器は、要素のうちの一方に取り付けられるように構成されており、センサは、他方の要素のための当接面を有し、要素が相互に移動させられた場合に、他方の要素によって発信器から切り離されるようになっている。
【0006】
発信器とセンサとを場によって接続することにより、発信器が場の領域内にあるか否かをセンサが場に基づいて非接触で検出することが可能となる。これにより、トリガが発生したか否かを確実に検出することが可能となる。例えば、湿気、埃、油、または、他の液体がセンサもしくは発信器に侵入不可能となるように、発信器とセンサとを相互に気密に分離することができる。特に、発信器とセンサとの間のガルバニック絶縁を実現することができる。発信器をセンサと一体的に構成することができ、これによって装置の取り扱いを簡単にすることができる。センサがトリガ状態(トリガされたまたはトリガされていない)またはトリガイベントを指示する信号を供給することにより、特にセンサを、電気的な評価装置に接続されるように構成することができる。
【0007】
本装置は、特に、破断センサまたはせん断センサとして使用することができる。要素のうちの一方を、他方の要素に対して線形に変位可能または回転可能に支持することができる。発信器は、要素のうちの一方に一体的に設けることができる。センサは、他方の要素に後から取り付けすることができ、または、必要であれば、特に、トリガ後に取り替えることができる。発信器は、好ましくは受動型であり、すなわち、専用の電流供給部を有していないので、簡単かつ低コストに構成することができる。トリガが発生した場合には、センサを簡単に交換すること、または、センサを発信器に再び簡単に取り付けることが可能である。
【0008】
第1の変形形態においては、磁気による検出が実施される。このために発信器は、磁場を提供するための永久磁石を含むことができ、センサは、磁場センサを含むことができる。磁場センサは、例えばホールセンサとして能動型に構成することができ、または、例えばリード接点として受動型に構成することができる。センサが発信器に取り付けられている限り、磁場を簡単かつ確実に検出することができる。別の実施形態においては、センサの領域内に磁場を形成するために磁気ガイド要素を設けることができ、これによって、トリガが発生しない限り、センサの領域内で磁場が増幅されるようになっている。
【0009】
第2の変形形態においては、誘導による検出が実施される。この場合にはセンサは、電磁場を提供するためのコイルを含むことができ、発信器は、電磁場に影響を与えるための要素を含むことができる。特に発信器は、電磁場を形成するために軟磁性要素を含むことができ、これによって発信器の存在下で、センサの領域内の場の強度またはコイルの電流消費に影響を与えることができる。通常、コイルは、交流電流によって駆動され、この場合には電圧源をセンサに含めることができ、または、外部に実現することができる。電磁場は、好ましくは、コイルを流れる電流またはコイルに印加される電圧に基づいて検出することができる。しかしながら、別の実施形態においては、電磁場を検出するための専用のセンサを設けることも可能である。
【0010】
第3の変形形態においては、容量による検出が実施され、この場合にはセンサは、好ましくは電圧源を含み、発信器は、誘電体要素を含む。この場合、センサと発信器との間には電場が存在しており、誘電体要素によってこの電場強度に影響を与えることができ、特に、この電場強度を増幅することができる。発信器がセンサから分離されると、特に、電圧源の接続部の間の静電容量の変化が生じる可能性があり、この変化を適切な評価装置によって検出することが可能である。評価装置をセンサに含めることができ、または、外部に設けることができる。
【0011】
状況に応じて、上述した変形形態を相互に組み合わせることも可能である。センサが発信器に取り付けられている限り、複数の場によって発信器とセンサとを相互に接続することも可能である。これによって評価の確実性を改善することができる。
【0012】
さらに好ましくは、発信器は、センサから非破壊で分離可能である。エネルギ吸収機構の要素のうちの一方における発信器の交換を、これによって不要にすることが可能となる。これに対して、エネルギ吸収機構のトリガプロセスにおいてセンサが損傷を受けた場合には、センサを簡単にチェックし、必要であれば交換することが可能である。1つの実施形態においては、発信器とセンサとの間に結合要素を設けることができ、いくつかの実施形態においては、この結合要素がトリガによって損壊または破壊されるようにすることができる。結合要素は、簡単に交換または修理されるように構成することができる。
【0013】
センサを発信器に取り付けるためにも、複数の異なる変形形態が考えられる。第1の変形形態においては、センサは、発信器に材料結合によって取り付けられている。このために例えば、センサと発信器との間に接着剤または硬化性材料を設けることができ、この接着剤または硬化性材料が接着力によってセンサを発信器に保持する。材料は、例えば硬化性シーリング材料もしくは接着材料、または、例えばシーリングラッカーのような形態のラッカーを含むことができる。発信器からのセンサの分離が、例えば、振動、温度影響、または、経年劣化に起因して誤って許容されないようにするために、最大限に作用可能な接着力を、センサと発信器との間の結合が確実に耐久しなければならない負荷に合わせて調整することができる。これによって、エネルギ吸収機構のトリガの誤った指示を、改善的に回避することができる。
【0014】
第2の変形形態においては、センサは、発信器に摩擦結合によって取り付けられている。このために例えば、機械的なスナップ結合、ばね負荷による摩擦力に基づいた結合、または、磁力による結合を使用することができる。最後に挙げた実施形態を、発信器によって提供された磁場をセンサが走査する上述した実施形態と有利に組み合わせることが可能である。
【0015】
第3の変形形態においては、センサは、発信器に形状結合によって取り付けられている。この変形形態は、上述した結合要素を含むことができる。3つの取り付け形式を組み合わせることも可能である。
【0016】
別の実施形態においては、本装置は、他方の要素までの距離を検出するための別の機構を含む。この機構は、好ましくはセンサに取り付けられており、したがって、この別の機構は、トリガが発生するまでセンサと一緒に発信器に保持されている。これによって、発信器からのセンサの分離をもたらさない、要素の間の所定の相対的な移動を検出すること、または、より正確に分析することが可能となる。この場合には、相対的な移動が所定の経路を超えて初めてトリガが発生する。
【0017】
別の実施形態においては、さらに別のセンサまたは測定値記録器を本装置に含めることができる。この記録器は、好ましくは最初に挙げたセンサに取り付けられており、センサの動作状態、または、要素のうちの一方の動作状態をより正確に検出するために使用することができる。
【0018】
エネルギ吸収機構は、抵抗力に抗して相互に移動可能に支持されている第1の要素および第2の要素と、先行する請求項のうちのいずれか1項に記載の装置とを含む。この場合には好ましくは、要素のうちの一方に発信器が、他方の要素にセンサが、以下のように取り付けられており、すなわち、センサの接触面が他方の要素の軸方向表面に面するように取り付けられている。エネルギ吸収機構は、2つの要素の間の力の伝達を過負荷から保護することができ、トリガを引き起こす力が発生した場合には、エネルギを低減することができる。エネルギの低減は、特に、要素のうちの一方の変形によって実施することができる。
【0019】
エネルギ吸収機構は、特に、内側の管部分および外側の管部分を含むことができ、内側の管部分と外側の管部分とは、相互に同軸に変位可能に支持されている。これらの管部分を、特に、入れ子式に相互に挿入することができる。この場合には、特に、本装置の発信器を内側の管部分に、さらにはセンサを発信器に、センサの接触面が外側の管部分の軸方向表面に面するように取り付けることができる。
【0020】
好ましい実施形態においては、管部分は、塑性変形することなく相互に軸方向に挿入されるように構成されている。要素の相対的な移動は、この場合には通常、可逆的である。このプロセスにおいては通常、作動流体がこれらの管部分の間の領域において圧縮され、または、この領域から排出される。この流体は、絞りを通過して作業室に収容されることができる。このプロセスにおいては、特に、流体の加熱によって再生式のエネルギ消費を実施することができる。このようなエネルギ吸収機構は、例えば静水圧緩衝器もしくは気体油圧緩衝器として、または、衝撃方向および引張方向に作用するツインストローク緩衝器として構成することができる。
【0021】
別の好ましい実施形態においては、管部分は、管部分の少なくとも一方の塑性変形によって破壊式のエネルギ消費を実現するように構成されている。内側の管部分は、特に、半径方向内側に変形することができ、または、外側の管部分は、半径方向外側に変形することができる。塑性変形によって例えば、エネルギ吸収機構に作用する衝撃エネルギを、管部分のうちの少なくとも一方の変形エネルギに変換することが可能である。変形は通常、不可逆的であり、変形した管部分は、基本的に交換する必要がある。
【0022】
特に、2つの鉄道車両を相互に連結するための連結ロッドは、上述したエネルギ吸収機構を含むことができる。再生式または破壊式のエネルギ消費を選択的に実施することができる。
【0023】
本装置は、発信器と、発信器に取り付けられたセンサとを含む。発信器は、第1の要素に取り付けられており、センサは、第1の要素に対して移動可能に支持されている第2の要素のための当接面を有する。2つの要素の間の相対的な移動を監視するための方法は、センサによって、発信器とセンサとの間に存在する場に基づいて発信器を非接触で検出するステップと、発信器がセンサから切り離された場合に、要素が相互に移動したことを検出するステップとを含む。
【0024】
本発明を、添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】エネルギ吸収機構と、エネルギ吸収機構がトリガされたかどうかを監視するための装置とを備える連結ロッドを示す図である。
図2】別の実施形態における図1の装置を備える連結ロッドを示す図である。
図3図1または図2の装置を用いて連結ロッドをトリガに関して監視するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、エネルギ吸収機構105と装置110とを含む連結ロッド100を例示的に示す。2つの要素を相対的な移動に関して監視するための本提案による技術を、連結ロッド100とは異なる機構において使用することも、連結ロッド100とは関係なしに、エネルギ吸収機構105を使用することなく使用することも可能であることに留意すべきである。
【0027】
装置110は、エネルギ吸収機構105のトリガを検出するように構成されている。連結ロッド100は、好ましくは2つの鉄道車両の間の結合部の一部として使用可能である。このために連結ロッド100を、例えば鉄道車両の台枠と、シャルフェンベルク式連結器のような連結器との間に配置することができる。
【0028】
エネルギ吸収機構105は、所定の方法で相互に移動可能に支持されている第1の要素115および第2の要素120を含む。この移動は、好ましくは、図1の図示においては、水平方向に延在している1つの次元のみに沿った変位として実施される。好ましい実施形態においては、連結ロッド100またはエネルギ吸収機構105は、引張荷重に対して剛性を有しており、せん断荷重が所定量を上回る場合には、このせん断荷重に対して移動可能である。せん断荷重は、エネルギ吸収機構105に対して圧縮するように作用し、したがって、図1の図示においては、第1の要素115が右に向かって押圧され、第2の要素120が左に向かって押圧される。第1の要素115は、好ましくは内側の管部分として構成されており、第2の要素120は、外側の管部分として構成されており、これによって第1の要素115を、第2の要素120の中に入れ子式に挿入することができるようになっている。
【0029】
要素115,120は、好ましくは、これらの要素115,120のうちの少なくとも一方の塑性変形が生じるように、しかも、特に半径方向に生じるように寸法設定されている。圧縮荷重が所定量を下回ると、挿入が阻止される。第1の要素115が第2の要素120の中に軸方向に所定量-ゼロであってもよい-を超えて挿入されることを、トリガと呼ぶ。要素115,120のうちの少なくとも一方の、挿入に関連した塑性変形に起因してエネルギ吸収機構105の耐荷重が変化するので、所定の力またはエネルギ伝達を引き続き保証することができるようにするためには、場合によってエネルギ吸収機構105を交換する必要がある。装置110は、エネルギ吸収機構105のトリガを検出し、トリガを指示する信号を供給するように構成されている。信号を、特に監視装置または制御装置に転送することができ、信号は、特に電気的に形成される。
【0030】
エネルギ吸収機構105を用いることなく装置110を使用することが計画されている場合には、要素115,120をこれとは異なるように構成することも可能であり、特に、運動エネルギを実質的に減少させることなく相互に移動可能に支持することも可能である。
【0031】
装置110は、第1の要素115に取り付けられた発信器125と、発信器125に取り付けられたセンサ130とを含む。図示の実施形態においては、発信器125は、発信器ハウジング135内に収容されており、センサ130は、センサハウジング140内に収容されている。特に好ましくは、センサ130は、発信器125に対して可能な限り気密に封止されている。特に好ましくは、センサ130は、発信器125に対してガルバニック絶縁されている。さらに好ましくは、センサ130は、発信器125から分離された後でも活電部が外側に出ないように構成されている。発信器125は、好ましくは純粋に受動型に構成されている。これに対してセンサ130は、ローカルの電流供給部、または、ケーブル接続された電流供給部を有することができる。
【0032】
センサ130と発信器125との間には、センサ130を発信器125に結合する場145が形成されている。センサ130は、場145の強度、方向、または、性質を検出し、その結果に応じて、発信器125がセンサ130に接触した状態で存在しているか否かを推定するように構成されている。発信器125は、場145を励起し、または、場145に影響を与えるように構成される。
【0033】
第1の変形形態においては、場145は、磁場であり、発信器125は、永久磁石を含み、センサ130は、磁場を検出するように構成されている。この変形形態においては、センサハウジング140を、特に非磁性的に構成することができる。センサ130は、さらなるエネルギ供給なしに磁場に反応することによって受動型に構成され得る、または、エネルギを使用して磁場を検出することによって能動型に構成され得る。受動型のセンサ130は、リード接点を含み、能動型のセンサ130は、ホールセンサを含む。センサ130が、磁場145を指示するアナログ量または多値デジタル量を検出するように構成されている場合には、センサ130の領域または遠隔の位置に設けられた装置を用いて閾値との比較を実施することができる。
【0034】
第2の変形形態においては、センサ130は、電磁場145を提供するためのコイルを含む。センサ130はさらに、好ましくはコイルを駆動するための電圧源を含み、この電圧源は、好ましくは交流電圧を出力する。この場合における場145は、電磁場または交番電磁場である。発信器125は、例えばコイルコアの形態の、電磁場145に影響を与えるための要素、特に軟磁性材料を含む。これによって、センサ130が発信器125に取り付けられている限り、発信器125が電磁場145に影響を与えることとなる。コイルに印加される電圧またはコイルを流れる電流は、発信器125の存在または不在を指示することができる。
【0035】
第3の変形形態においては、センサ130は、磁場、容量場および/または電場、または、光学的な構造/パターンを検出することができる電気的および/または電子的なコンポーネントである。この場合、場または光学的な構造/パターンは、発信器125において生成される。このことは、例えば、磁石、容量性表面、コイル、光学的な構造、または、カラーマーキングによって実施することができる。センサ130と発信器125とが相互に離れると、センサによって検出される場、または、検出される光学的な構造またはカラーパターンが変化し、これによって分離したことが識別される。
【0036】
実施形態に応じて、エネルギ供給を外部から、1つまたは複数のバッテリから、または、環境発電(Energy Harvesting)から、実施することができる。データは、有線接続または無線接続を介して伝送することができる。
【0037】
発信器125を、第1の要素115に永続的に留まるように構成することができる。
【0038】
センサ130は、好ましくは当接面150を含み、この当接面150は、エネルギ吸収機構105の第2の要素120の軸方向表面155に面している。エネルギ吸収機構105がトリガされると、第2の要素120は、軸方向表面155が当接面150に当接するまでセンサ130に向かって移動する。その後、センサ130は、第2の要素120が第1の要素115に向かってさらに移動することにより、せん断原理に従って発信器125から切り離される。この際、発信器125の元々センサ130に面していた側を、第2の要素120によって覆うことができ、したがって、発信器125とセンサ130との物理的な近接性は、差し当たり回復することができないようになっている。
【0039】
センサ130が発信器125から分離されるときに、結合部160を解除することができる。結合部160は、複数の異なる変形形態において材料結合部、摩擦結合部、または、形状結合部とすることができ、これらの組み合わせもまた可能である。特に材料結合部を形成するためには、結合部160は、特に、硬化型の接着剤または粘着材料を含むことができる。
【0040】
図2は、別の実施形態における図1の装置110を備えるエネルギ吸収機構105を示す。この実施形態においては、エネルギ吸収機構105のトリガ状態を指示する信号を供給するための接続部205が、センサ130に直接的に接続されているのではなく制御装置210に接続されており、この制御装置210自体がセンサ130に接続されている。制御装置210は、特に、センサ130を駆動するための直流または交流の電圧源、電流センサ、電圧センサ、または、上述した追加的な要素のうちの1つを含むことができる。
【0041】
図示の実施形態においては、装置110はさらに、センサ130に機械的に結合されているもう1つまたは複数の他のセンサを含むことができる。本実施例においては、これらのセンサは、センサハウジング140内に収容されている。第1のセンサ215は、要素115と要素120との相対的な移動方向に沿ってエネルギ吸収機構105の第2の要素120までの距離を検出するように構成されている。このために第2の要素120の、センサ130に面している表面に基準要素220を取り付けることができ、この基準要素220は、基準要素220までの距離を検出するために第1のセンサ215によって検出することができる。基準要素220は、例えば永久磁石を含むことができ、この場合には磁場の強度が、第2の要素120までの距離を指示することができる。第2のセンサ225を、センサ130の加速度を検出するように構成することができる。センサ130の領域における温度を検出するために第3のセンサ230を設けることができる。センサ130と、別のセンサ215,225,および230とを周期的または持続的に走査するように、制御装置210を構成することができる。エネルギ吸収機構105がトリガされた場合に、センサ215,225,230の走査値に基づくことにより、発信器125からのセンサ130の分離をもたらした状況をより良好に分析することが可能となる。これらのデータを、エネルギ吸収機構105のトリガに関連したイベントを復元するために使用することができる。また、これらの情報に基づいて、エネルギ吸収機構105の状態を改善的に判断することも可能である。
【0042】
図3は、図1または図2のうちの1つによる装置110を用いてエネルギ吸収機構105のトリガを監視するための方法300のフローチャートを示す。
【0043】
ステップ305において、センサ130が発信器125に取り付けられる。この場合、発信器125は、エネルギ吸収機構105の第1の要素115に既に取り付けられていることが前提とされる。発信器125を第1の要素115に組み付ける時点で、センサ130が既に発信器125に固定されている場合には、ステップ305を省略することもできる。
【0044】
ステップ310において、必要に応じてセンサ130の側で場145が生成され、この場145がセンサ130を発信器125に結合する。いくつかの実施形態においては、発信器125によって場145が生成され、センサ130によって場145を能動的に生成したり、または、センサ130によって場145に能動的に影響を与えたりする必要はない。ステップ315において、センサ130と発信器125との間の場145が非接触で検出される。場145がセンサ130の側で、特に、電圧源、コイル、または、電極のような電気的な装置によって生成される場合には、場145を検出するために、対応する手段において電気的なパラメータを走査することができる。
【0045】
ステップ320において、発信器125がセンサ130の検出領域内に位置していることを、走査された場145が指示しているかどうかがチェックされる。この検出領域は、検出領域から退出するためにセンサ130から発信器125までの距離が数ミリメートルまたは数センチメートルで十分となるように、通常、空間的に小さく寸法設定されている。発信器125が検出領域内に位置している場合には、方法300は、好ましくはステップ310に進み、改めて進行することができる。
【0046】
そうでない場合にはステップ325において、発信器125からのセンサ130の破断が検出され、このことは、エネルギ吸収機構105のトリガに等しい。接続部205を介して対応する信号を出力することができる。
【0047】
任意のステップ330において、エネルギ吸収機構105を交換することができる。センサ130を再使用することができ、または、トリガプロセスにおいてセンサ130が損傷を受けた場合には、センサ130を交換することができる。状況に応じて、第1の要素115を発信器125と一緒に引き続き使用すること、または、再使用することが可能である。
【0048】
エネルギ吸収機構105および装置110が修理された後、方法300は、ステップ305に進み、改めて進行することができる。
【符号の説明】
【0049】
100 連結ロッド
105 トリガ装置
110 装置
115 第1の要素(内側の管部分)
120 第2の要素(外側の管部分)
125 発信器
130 センサ
135 発信器ハウジング
140 センサハウジング
145 場
150 当接面
155 軸方向表面
160 結合部
205 接続部
210 制御装置
215 第1のセンサ
220 基準要素
225 第2のセンサ
230 第3のセンサ
300 方法
305 センサを発信器に取り付ける
310 場合によって場を生成する
315 場を検出する
320 発信器が検出領域内にあるか?
325 破断を検出する
330 センサまたは結合要素を取り替える
図1
図2
図3