(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】膵臓癌を処置するためのグルココルチコイドレセプターモジュレーター
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4745 20060101AFI20220203BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20220203BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220203BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20220203BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61K31/4745
A61K31/337
A61P35/00
A61P1/18
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019512982
(86)(22)【出願日】2017-09-08
(86)【国際出願番号】 US2017050812
(87)【国際公開番号】W WO2018049255
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2019-07-02
(32)【優先日】2016-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503345477
【氏名又は名称】コーセプト セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ハント, ヘイゼル
(72)【発明者】
【氏名】ブロック, タデウス エス.
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-527233(JP,A)
【文献】特表2015-517580(JP,A)
【文献】国際公開第2015/077530(WO,A1)
【文献】特表2019-507159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 45/00-45/08
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学療法剤および非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター(SGRM)を含む、非ACTH分泌膵臓腫瘍を持つ被験体を処置するための組合せ物であって、前記組合せ物は、前記被験体に投与されて、前記膵臓腫瘍の腫瘍負荷を減少させることを特徴とし、前記化学療法剤が、タキサンであり、ここで、前記SGRMが以下の構造:
【化31】
;
または、
【化32】
を有する化合物である、組合せ物。
【請求項2】
非ACTH分泌膵臓腫瘍が外分泌膵臓腫瘍である、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項3】
前記タキサンが、パクリタキセル、ドセタキセル、アッカチンIII(accatin
III)、10-デアセチルタキソール、7-キシロシル-10-デアセチルタキソール、セファロマンニン、10-デアセチル-7-エピタキソール、7-エピタキソール、10-デアセチルバッカチンIII、10-デアセチルセファロマンニン
、アルブミン結合パクリタキセ
ルならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項4】
前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、式:
【化20】
を有する化合物である、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項5】
前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、以下の構造:
【化22】
を有する化合物である、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項6】
非ACTH分泌膵臓腫瘍を処置するための薬学的組成物であって、薬学的に許容され得る賦形剤および非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター化合物とを含む、薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、タキサンと組み合わせて投与されることを特徴とし、ここで、前記選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター化合物が:
【化33】
;
または、
【化34】
である、薬学的組成物。
【請求項7】
前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、式:
【化27】
を有する化合物である、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、式:
【化29】
を有する化合物である、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
化学療法剤を含む、非ACTH分泌膵臓腫瘍を持つ被験体を処置するための組成物であって、前記組成物は、非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター(SGRM)と組み合わせて投与されて、前記膵臓腫瘍の腫瘍負荷を減少させることを特徴とする、組成物であって、前記化学療法剤が、タキサンであり、ここで、前記SGRMが:
【化35】
または、
【化36】
である、組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年9月9日に出願された米国仮出願第62/385,590号の利益を主張し、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景
膵臓癌は、米国における第5位の癌死亡原因である。それは男性でより一般的であり、60~70歳の男性が最もリスクがある。膵臓内の異常細胞が制御不能に成長して腫瘍を形成すると、膵管において、膵臓癌が通常発生する。膵臓癌の95%超は、外分泌膵臓腫瘍として分類される。これらの腫瘍は、消化を助ける膵臓酵素を作る外分泌細胞において発生する。神経内分泌膵臓腫瘍は、すべての膵臓腫瘍の5%未満を占めており、それらは、外分泌腫瘍よりも遅く成長する傾向がある。膵臓神経内分泌腫瘍は、膵島細胞と称される膵臓内の内分泌(ホルモン産生)細胞の異常成長から発症するので、「膵島細胞腫瘍」と称されることが多い。早期に診断された場合であっても、膵臓癌は予後不良であることが多く、癌が非常に進行して完全な外科的切除が不可能になるまで、徴候および症状が現れない場合がある。
【0003】
膵臓癌の従来の処置選択肢としては、外科手術、照射療法(「放射線治療」とも称される)および化学療法が挙げられる。上記理由により、診断時に切除可能な腫瘍はわずか15~25%であり、残念ながら、2年を超えて生存する切除患者はわずか10~20%であろう。進行期の膵臓腫瘍は、放射線治療または化学療法処置を必要とすることが多い。
【0004】
放射線治療は、正常周辺組織を保持しながら、罹患組織の最大限の曝露を必要とする。放射性供給源を含む針を腫瘍に包埋する組織内治療は、有益な新たなアプローチとなっている。このようにして、周辺正常構造を保持しながら、高線量の放射線を局所的に送達し得る。手術中にビームを腫瘍に直接当てる一方、ビームから正常構造を安全に遠ざける術中放射線治療は、別の特殊な放射線手法である。やはり、これは、周辺構造への曝露を制限しながら、腫瘍の有効な照射を達成する。照射の局所制御を前提とするアプローチの利点は明白であるにもかかわらず、患者の生存率は依然として非常に低い。
【0005】
化学療法は、DNAへの全般的な損傷および染色体構造の不安定化に依拠しており、最終的には、癌細胞の破壊につながる。しかしながら、これらの処置の非選択的性質は、多くの場合、重度かつ消耗性の副作用をもたらす。これらの薬物の全身使用は、通常、健常器官および組織の損傷をもたらし得、患者の長期的な健康を損ない得る。
一般に、癌細胞に対するグルココルチコイドレセプター(「GR」)媒介性シグナル伝達経路の効果には論争がある。一方、GRシグナル伝達経路の活性化は、有利なことに、悪性リンパ癌におけるアポトーシスを誘導すると考えられている(Schlossmacher,J.Endocrinol.(2011)211(1):17-25を参照のこと)。他方、GRシグナル伝達経路を遮断する薬剤は、乳癌細胞の死滅において化学療法を増強し得ることが報告されている(米国特許第9,149,485号を参照のこと)。新生物治療剤と特定のGRアンタゴニストとの組み合わせは、膵臓癌を含む30種類を超える新生物(癌)を処置するために使用され得ることが示唆されている(Altschulら、米国特許第8,658,128号)。ソマトスタチンレセプター結合剤と組み合わせてGRインヒビターを使用して、膵臓のアドレノコルチコトロピン(「ACTH」)分泌膵島細胞腫瘍を処置し得ることも示唆されている(国際公開第2013/039916号、Niemannら、「Compositions for and Methods of Treatment and Enhanced Detection of Non-Pituitary Tumors」を参照のこと)。しかしながら、膵臓癌に対する効果に関して、一般的見解は、グルココルチコイド、例えばデキサメタゾンが化学療法剤の副作用を緩和し得るので、膵臓癌の処置において化学療法剤と共投与(co-administer)されるべきであるというものである(Zhangら、BMC Cancer,2006 March 15 6:61を参照のこと)。さらに、デキサメタゾンは、膵臓癌細胞成長を阻害することが報告されている。Normanら、J.Surg.Res.1994 Jul;57(1):33-8を参照のこと。GRシグナル伝達の活性化が膵臓癌患者に有益であるという一般的見解とは対照的に、本出願は、GRシグナル伝達を阻害する化合物を用いて、特定の種類の膵臓癌を患っている患者を処置する新規かつ驚くべき併用療法を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第9,149,485号明細書
【文献】米国特許第8,658,128号明細書
【文献】国際公開第2013/039916号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単な概要
非ACTH分泌膵臓腫瘍を持つ被験体を処置するための新規な方法が本明細書中に開示される。前記方法は、有効量の化学療法剤および有効量のGRM(ここで、GRMは、「グルココルチコイドレセプターモジュレーター」の頭字語である)を被験体に投与して、被験体における非ACTH分泌膵臓腫瘍の腫瘍負荷を減少させることを含む。好ましい実施形態において、GRMは、非ステロイド性GRMである。前記方法はまた、有効量の化学療法剤および有効量のSGRM(ここで、SGRMは、「選択的なグルココルチコイドレセプターモジュレーター」の頭字語である)を被験体に投与して、被験体における非ACTH分泌膵臓腫瘍の腫瘍負荷を減少させることを含む。好ましい実施形態において、SGRMは、非ステロイド性SGRMである。いくつかの場合において、非ACTH分泌膵臓腫瘍は、外分泌膵臓腫瘍である。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
非ACTH分泌膵臓腫瘍を持つ被験体を処置する方法であって、有効量の化学療法剤および有効量の非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター(SGRM)を前記被験体に投与して、前記膵臓腫瘍の腫瘍負荷を減少させることを含む、方法。
(項目2)
非ACTH分泌膵臓腫瘍が外分泌膵臓腫瘍である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記化学療法剤が、タキサン、アルキル化剤、トポイソメラーゼインヒビター、小胞体ストレス誘導剤、代謝拮抗物質、有糸分裂インヒビターおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記化学療法剤がタキサンである、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記化学療法剤が、nab-パクリタキセル、5-フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、シスプラチンおよびカペシタビンからなる群より選択される、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、縮合アザデカリン構造を含む化合物である、項目1~5のいずれかに記載の方法。
(項目7)
縮合アザデカリン構造を含む前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター化合物が、以下の式:
【化16】
(式中、
L
1
およびL
2
は、結合および非置換アルキレンから独立して選択されるメンバーであり;
R
1
は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-OR
1A
、NR
1C
R
1D
、-C(O)NR
1C
R
1D
および-C(O)OR
1A
から選択されるメンバーであり、ここで、
R
1A
は、水素、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから選択されるメンバーであり、
R
1C
およびR
1D
は、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、
ここで、R
1C
およびR
1D
は場合により接合して、それらが結合している窒素とともに非置換環を形成し、ここで、前記環は、場合により、さらなる環窒素を含み;
R
2
は、式:
【化17】
(式中、
R
2G
は、水素、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-CNおよび-CF
3
から選択されるメンバーであり;
Jは、フェニルであり;
tは、0~5の整数であり;
Xは、-S(O
2
)-である)を有し;および
R
5
は、1~5個のR
5A
基で場合により置換されているフェニルであり、ここで、
R
5A
は、水素、ハロゲン、-OR
5A1
、S(O
2
)NR
5A2
R
5A3
、-CNおよび非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ここで、
R
5A1
は、水素および非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ならびに
R
5A2
およびR
5A3
は、水素および非置換アルキルから独立して選択されるメンバーである)を有する化合物またはその塩および異性体である、項目6に記載の方法。
(項目8)
縮合アザデカリン構造を含む前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター化合物が、
【化18】
である、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造またはオクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む化合物である、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、式:
【化19】
(式中、
R
1
は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1a
からそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;
各R
1a
は、水素、C
1-6
アルキル、ハロゲン、C
1-6
ハロアルキル、C
1-6
アルコキシ、C
1-6
ハロアルコキシ、CN、N-オキシド、C
3-8
シクロアルキルおよびC
3-8
ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;
環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリール環は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有し;
各R
2
は、水素、C
1-6
アルキル、ハロゲン、C
1 6
ハロアルキル、C
1 6
アルコキシ、C
1-6
ハロアルコキシ、C
1-6
アルキル-C
1-6
アルコキシ、CN、OH、NR
2a
R
2b
、C(O)R
2a
、C(O)OR
2a
、C(O)NR
2a
R
2b
、SR
2a
、S(O)R
2a
、S(O)
2
R
2a
、C
3-8
シクロアルキルおよびC
3-8
ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキル基は、1~4個のR
2c
基で場合により置換されており;
あるいは、同じ炭素に連結されている2個のR
2
基は一緒になって、オキソ基(=O)を形成し;
あるいは、2個のR
2
基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2d
基で場合により置換されており;
R
2a
およびR
2b
は、水素およびC
1-6
アルキルからなる群よりそれぞれ独立して選択され;
各R
2c
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1-6
アルコキシ、C
1-6
ハロアルコキシ、CNおよびNR
2a
R
2b
からなる群より独立して選択され;
各R
2d
は、水素およびC
1-6
アルキルからなる群より独立して選択されるか、または同じ環原子に結合している2個のR
2d
基は一緒になって、(=O)を形成し;
R
3
は、1~4個のR
3a
基でそれぞれ場合により置換されているフェニルおよびピリジルからなる群より選択され;
各R
3a
は、水素、ハロゲンおよびC
1-6
ハロアルキルからなる群より独立して選択され;ならびに
下付き文字nは、0~3の整数である)を有するヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む化合物またはその塩および異性体である、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、式:
【化20】
を有するヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む化合物である、項目9に記載の方法。
(項目12)
オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター化合物が、式:
【化21】
(式中、
R
1
は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1a
からそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;
各R
1a
は、水素、C
1-6
アルキル、ハロゲン、C
1-6
ハロアルキル、C
1-6
アルコキシ、C
1-6
ハロアルコキシ、N-オキシドおよびC
3-8
シクロアルキルからなる群より独立して選択され;
環Jは、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され;
各R
2
は、水素、C
1-6
アルキル、ハロゲン、C
1-6
ハロアルキル、C
1-6
アルコキシ、C
1-6
ハロアルコキシ、C
1-6
アルキル-C
1-6
アルコキシ、CN、OH、NR
2a
R
2b
、C(O)R
2a
、C(O)OR
2a
、C(O)NR
2a
R
2b
、SR
2a
、S(O)R
2a
、S(O)
2
R
2a
、C
3-8
シクロアルキル、ならびにN、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有するC
3-8
ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;
あるいは、隣接環原子上の2個のR
2
基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2c
基で場合により置換されており;
R
2a
、R
2b
およびR
2c
はそれぞれ、水素およびC
1-6
アルキルからなる群より独立して選択され;
各R
3a
は独立して、ハロゲンであり;ならびに
下付き文字nは、0~3の整数である)またはその塩および異性体を有する、項目9に記載の方法。
(項目13)
前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、以下の構造:
【化22】
を有するオクタヒドロ縮合アザデカリンを含む化合物である、項目9に記載の方法。
(項目14)
非ACTH分泌膵臓腫瘍を処置するための薬学的組成物であって、薬学的に許容され得る賦形剤と、縮合アザデカリン構造を含む非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター化合物とを含む、薬学的組成物。
(項目15)
縮合アザデカリン構造を含む前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター化合物が、以下の式:
【化23】
(式中、
L
1
およびL
2
は、結合および非置換アルキレンから独立して選択されるメンバーであり;
R
1
は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-OR
1A
、NR
1C
R
1D
、-C(O)NR
1C
R
1D
および-C(O)OR
1A
から選択されるメンバーであり、ここで、
R
1A
は、水素、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから選択されるメンバーであり、
R
1C
およびR
1D
は、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、
ここで、R
1C
およびR
1D
は場合により接合して、それらが結合している窒素とともに非置換環を形成し、ここで、前記環は、場合により、さらなる環窒素を含み;
R
2
は、式:
【化24】
(式中、
R
2G
は、水素、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-CNおよび-CF
3
から選択されるメンバーであり;
Jは、フェニルであり;
tは、0~5の整数であり;
Xは、-S(O
2
)-である)を有し;および
R
5
は、1~5個のR
5A
基で場合により置換されているフェニルであり、ここで、
R
5A
は、水素、ハロゲン、-OR
5A1
、S(O
2
)NR
5A2
R
5A3
、-CNおよび非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ここで、
R
5A1
は、水素および非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ならびに
R
5A2
およびR
5A3
は、水素および非置換アルキルから独立して選択されるメンバーである)を有する化合物またはその塩および異性体である、項目14に記載の薬学的組成物。
(項目16)
縮合アザデカリン構造を含む前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター化合物が、
【化25】
である、項目14に記載の薬学的組成物。
(項目17)
前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造またはオクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む化合物である、項目14に記載の薬学的組成物。
(項目18)
前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、式:
【化26】
(式中、
R
1
は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1a
からそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;
各R
1a
は、水素、C
1-6
アルキル、ハロゲン、C
1-6
ハロアルキル、C
1-6
アルコキシ、C
1-6
ハロアルコキシ、CN、N-オキシド、C
3-8
シクロアルキルおよびC
3-8
ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;
環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリール環は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有し;
各R
2
は、水素、C
1-6
アルキル、ハロゲン、C
1 6
ハロアルキル、C
1 6
アルコキシ、C
1-6
ハロアルコキシ、C
1-6
アルキル-C
1-6
アルコキシ、CN、OH、NR
2a
R
2b
、C(O)R
2a
、C(O)OR
2a
、C(O)NR
2a
R
2b
、SR
2a
、S(O)R
2a
、S(O)
2
R
2a
、C
3-8
シクロアルキルおよびC
3-8
ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキル基は、1~4個のR
2c
基で場合により置換されており;
あるいは、同じ炭素に連結されている2個のR
2
基は一緒になって、オキソ基(=O)を形成し;
あるいは、2個のR
2
基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2d
基で場合により置換されており;
R
2a
およびR
2b
は、水素およびC
1-6
アルキルからなる群よりそれぞれ独立して選択され;
各R
2c
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1-6
アルコキシ、C
1-6
ハロアルコキシ、CNおよびNR
2a
R
2b
からなる群より独立して選択され;
各R
2d
は、水素およびC
1-6
アルキルからなる群より独立して選択されるか、または同じ環原子に結合している2個のR
2d
基は一緒になって、(=O)を形成し;
R
3
は、1~4個のR
3a
基でそれぞれ場合により置換されているフェニルおよびピリジルからなる群より選択され;
各R
3a
は、水素、ハロゲンおよびC
1-6
ハロアルキルからなる群より独立して選択され;ならびに
下付き文字nは、0~3の整数である)を有するヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む化合物またはその塩および異性体である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、式:
【化27】
を有するヘテロアリールケトン縮合アザデカリンを含む化合物である、項目17に記載の薬学的組成物。
(項目20)
前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、式:
【化28】
(式中、
R
1
は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1a
からそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;
各R
1a
は、水素、C
1-6
アルキル、ハロゲン、C
1-6
ハロアルキル、C
1-6
アルコキシ、C
1-6
ハロアルコキシ、N-オキシドおよびC
3-8
シクロアルキルからなる群より独立して選択され;
環Jは、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され;
各R
2
は、水素、C
1-6
アルキル、ハロゲン、C
1-6
ハロアルキル、C
1-6
アルコキシ、C
1-6
ハロアルコキシ、C
1-6
アルキル-C
1-6
アルコキシ、CN、OH、NR
2a
R
2b
、C(O)R
2a
、C(O)OR
2a
、C(O)NR
2a
R
2b
、SR
2a
、S(O)R
2a
、S(O)
2
R
2a
、C
3-8
シクロアルキル、ならびにN、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有するC
3-8
ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;
あるいは、隣接環原子上の2個のR
2
基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2c
基で場合により置換されており;
R
2a
、R
2b
およびR
2c
はそれぞれ、水素およびC
1-6
アルキルからなる群より独立して選択され;
各R
3a
は独立して、ハロゲンであり;ならびに
下付き文字nは、0~3の整数である)を有するオクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む化合物またはその塩および異性体である、項目17に記載の薬学的組成物。
(項目21)
前記非ステロイド性選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、式:
【化29】
を有するオクタヒドロ縮合アザデカリンを含む化合物である、項目17に記載の薬学的組成物。
【0008】
いくつかの場合において、化学療法剤は、抗微小管剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼインヒビター、小胞体ストレス誘導剤、代謝拮抗物質、有糸分裂インヒビターおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの場合において、化学療法剤は、タキサンである。いくつかの場合において、化学療法剤は、nab-パクリタキセル、5-フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、シスプラチンおよびカペシタビンからなる群より選択される。
【0009】
いくつかの場合において、GRM(例えば、非ステロイド性SGRMなどのSGRM)は、経口投与される。いくつかの場合において、GRMは、経皮適用によって、噴霧化懸濁物によって、またはエアロゾルスプレーによって投与される。
【0010】
いくつかの場合において、GRM(例えば、非ステロイド性SGRMなどのSGRM)の有効量は、1~100mg/kg/日の1日用量であり、GRMは、少なくとも1つの化学療法剤とともに投与される。いくつかの実施形態において、GRMの1日用量は、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50、60、70、80、90または100mg/kg/日である。いくつかの場合において、GRMは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75または80週間投与される。
【0011】
いくつかの場合において、GRM(例えば、SGRM)は、縮合アザデカリン構造を含む非ステロイド性化合物である。いくつかの場合において、縮合アザデカリン化合物は、以下の式:
【化1】
(式中、L
1およびL
2は、結合および非置換アルキレンから独立して選択されるメンバーであり;R
1は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-OR
1A、NR
1CR
1D、-C(O)NR
1CR
1Dおよび-C(O)OR
1Aから選択されるメンバーであり、ここで、R
1Aは、水素、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから選択されるメンバーであり、R
1CおよびR
1Dは、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、ここで、R
1CおよびR
1Dは場合により接合して、それらが結合している窒素とともに非置換環を形成し、ここで、前記環は、場合により、さらなる環窒素を含み;R
2は、式:
【化2】
(式中、R
2Gは、水素、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-CNおよび-CF
3から選択されるメンバーであり;Jは、フェニルであり;tは、0~5の整数であり;Xは、-S(O
2)-である)を有し;およびR
5は、1~5個のR
5A基で場合により置換されているフェニルであり、ここで、R
5Aは、水素、ハロゲン、-OR
5A1、S(O
2)NR
5A2R
5A3、-CNおよび非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ここで、R
5A1は、水素および非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ならびにR
5A2およびR
5A3は、水素および非置換アルキルから独立して選択されるメンバーである)を有する化合物またはその塩および異性体である。
【0012】
いくつかの場合において、縮合アザデカリン化合物は、
【化3】
である。
【0013】
いくつかの場合において、GRM(例えば、SGRM)は、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造またはオクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む非ステロイド性化合物である。いくつかの場合において、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン化合物は、式:
【化4】
(式中、R
1は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1aからそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;各R
1aは、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、CN、N-オキシド、C
3-8シクロアルキルおよびC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリール環は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有し;各R
2は、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1 6ハロアルキル、C
1 6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、CN、OH、NR
2aR
2b、C(O)R
2a、C(O)OR
2a、C(O)NR
2aR
2b、SR
2a、S(O)R
2a、S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキルおよびC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキル基は、1~4個のR
2c基で場合により置換されており;あるいは、同じ炭素に連結されている2個のR
2基は一緒になって、オキソ基(=O)を形成し;あるいは、2個のR
2基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2d基で場合により置換されており;R
2aおよびR
2bは、水素およびC
1-6アルキルからなる群よりそれぞれ独立して選択され;各R
2cは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、CNおよびNR
2aR
2bからなる群より独立して選択され;各R
2dは、水素およびC
1-6アルキルからなる群より独立して選択されるか、または同じ環原子に結合している2個のR
2d基は一緒になって、(=O)を形成し;R
3は、1~4個のR
3a基でそれぞれ場合により置換されているフェニルおよびピリジルからなる群より選択され;各R
3aは、水素、ハロゲンおよびC
1-6ハロアルキルからなる群より独立して選択され;ならびに下付き文字nは、0~3の整数である)またはその塩および異性体を有する。
【0014】
いくつかの場合において、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン化合物は、式:
【化5】
を有する。
【0015】
いくつかの場合において、オクタヒドロ縮合アザデカリン化合物は、式:
【化6】
(式中、R
1は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1aからそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;各R
1aは、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、N-オキシドおよびC
3-8シクロアルキルからなる群より独立して選択され;環Jは、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され;各R
2は、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、CN、OH、NR
2aR
2b、C(O)R
2a、C(O)OR
2a、C(O)NR
2aR
2b、SR
2a、S(O)R
2a、S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキル、ならびにN、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有するC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;あるいは、隣接環原子上の2個のR
2基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2c基で場合により置換されており;R
2a、R
2bおよびR
2cはそれぞれ、水素およびC
1-6アルキルからなる群より独立して選択され;各R
3aは独立して、ハロゲンであり;ならびに下付き文字nは、0~3の整数である)またはその塩および異性体を有する。
【0016】
いくつかの場合において、非ステロイド性SGRMは、以下の構造:
【化7】
を有するCORT125134、すなわち(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンである。
【0017】
いくつかの場合において、非ステロイド性SGRMは、以下の構造:
【化8】
を有するCORT125281、すなわち((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、1)ビヒクル、2)7.5mg/kgのパクリタキセル)(4日ごと、「Q4D」)、3)CORT125134(パクリタキセルよりも前の日におよびパクリタキセルと同じ日に30mg/kgを投与)およびパクリタキセル(7.5mg/kg、Q4D)または4)CORT125281(パクリタキセルよりも前の日におよびパクリタキセルと同じ日に30mg/kgを投与)およびパクリタキセル(7.5mg/kg)(Q4D)で処置したマウスの4つの群からの腫瘍成長データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
A.緒言
本明細書中に開示される方法は、有効量の化学療法と組み合わせて、有効量のグルココルチコイドレセプターモジュレーター(GRM)、好ましくは選択的なグルココルチコイドレセプターモジュレーター(SGRM)を投与して、膵臓癌の腫瘍負荷を減少させることによって、非ACTH分泌膵臓腫瘍を持つ患者を処置するために使用され得る。好ましい実施形態において、SGRMは、非ステロイド性SGRMである。実施形態において、非ステロイド性SGRMは、縮合アザデカリン構造を含む化合物である。実施形態において、非ステロイド性SGRMは、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造またはオクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む化合物である。他の薬剤と組み合わせたGCが膵臓癌の従来の処置選択肢であるという文献報告を考慮すると、化学療法剤と組み合わせてSGRMを使用して腫瘍負荷を減少させることは驚くべきことである。
【0020】
B.定義
本明細書中で使用されるとき、用語「腫瘍」および用語「癌」は互換的に使用され、両方とも、過剰な細胞分裂から生じる組織の異常成長のことを指す。周辺組織に浸潤しおよび/または転移し得る腫瘍は、「悪性」と称される。転移しない腫瘍は、「良性」と称される。
【0021】
本明細書中で使用されるとき、用語「被験体」または「患者」とは、ヒトまたは非ヒト生物のことを指す。したがって、本明細書中に記載される方法および組成物は、ヒト疾患および獣医学的疾患の両方に適用可能である。特定の実施形態において、被験体は、「患者」(すなわち、疾患または状態の医療を受けている生きたヒト)である。これは、規定の病気を有しない者であって、病理の徴候について調査されている者を含む。本発明の組成物および方法によって標的化される膵臓癌の既存の診断を受けた被験体が好ましい。いくつかの場合において、被験体は、1つまたはそれを超える種類の癌を同時に患っていてもよく、これらの少なくとも1つは膵臓癌であり、本発明の組成物および方法によって標的化される。
【0022】
本明細書中で使用されるとき、用語「副腎皮質刺激ホルモン」(ACTH)は、下垂体前葉によって産生されるペプチドホルモンであって、グルココルチコイドホルモン(これは、細胞がグルコースを合成し、タンパク質を異化し、遊離脂肪酸を動員し、アレルギー反応における炎症を阻害するのを助ける)を分泌するように副腎皮質を刺激するペプチドホルモンのことを指す。1つのそのようなグルココルチコイドホルモンは、炭水化物、脂肪およびタンパク質の代謝を調節するコルチゾールである。
【0023】
本明細書中で使用されるとき、用語「非ACTH分泌膵臓腫瘍」とは、ACTH分泌腫瘍ではない膵臓腫瘍のことを指す。「非ACTH分泌膵臓腫瘍」はACTHを分泌しないか、または微量を超えるACTHを分泌しないので、副腎皮質からのコルチコステロイドおよびコルチゾールの産生および放出の増加を引き起こさない。ACTH分泌腫瘍は、ACTHを分泌し、それにより、副腎皮質からのコルチコステロイドおよびコルチゾールの増大した産生および放出を引き起こす非下垂体腫瘍である。膵臓腫瘍の95%を占める外分泌膵臓腫瘍は、非ACTH分泌膵臓腫瘍であると考えられている。http://www.pancreaticcancer.org.uk/typesを参照のこと。いくつかの内分泌膵臓腫瘍(神経内分泌腫瘍とも称される)、例えば膵臓の膵島細胞腫瘍は、ACTH分泌腫瘍である。www.npplweb.com/wjmscr/fulltext/2/13から入手可能なChertmanら、Word Journal of Medical and Surgical case reports Vol.(5)を参照のこと。腫瘍がACTH分泌腫瘍であるかを決定するための方法は周知であり、限定されないが、本開示中に提供されるものが挙げられる。
【0024】
本明細書中で使用されるとき、用語「腫瘍負荷」または「腫瘍量」とは、一般に、任意の所定時点における被験体の体内の癌細胞の数、腫瘍のサイズまたは癌の量のことを指す。腫瘍負荷は、例えば、腫瘍特異的遺伝子マーカーの発現を計測し、本明細書の以下に開示されるいくつかの周知の生化学的方法またはイメージング方法によって腫瘍サイズを計測することによって検出され得る。
【0025】
本明細書中で使用されるとき、用語「有効量」または「治療量」とは、処置される疾患の少なくとも1つの症状を処置、排除または緩和するために有効な薬理学的薬剤の量のことを指す。いくつかの場合において、「治療有効量」または「有効量」とは、検出可能な治療効果または阻害効果を示すために有用な機能的薬剤または薬学的組成物の量のことを指し得る。この効果は、当該分野で公知の任意のアッセイ方法によって検出され得る。有効量は、抗腫瘍応答を引き起こすために有効な量であり得る。本開示の目的のために、SGRMの有効量または化学療法剤の有効量は、それぞれ化学療法剤またはSGRMと組み合わせた場合に、腫瘍負荷を減少させるか、または癌改善に関連する他の所望の有益な臨床転帰をもたらすであろう量である。
【0026】
本明細書中で使用されるとき、用語「投与する」、「投与すること」、「投与される」または「投与」とは、化合物または組成物(例えば、本明細書中に記載されるもの)を被験体または患者に提供することを指す。
【0027】
本明細書中で使用されるとき、用語「併用療法」とは、疾患を処置するために少なくとも2つの薬剤を被験体に投与することを指す。2つの薬剤は、処置期間の全体または一部において、同時投与され得るか、または任意の順序で逐次投与され得る。少なくとも2つの薬剤は、同じまたは異なる投与レジメンにしたがって投与され得る。いくつかの場合において、一方の薬剤は、計画的レジメンにしたがって投与され、他方の薬剤は断続的に投与される。いくつかの場合において、両薬剤は断続的に投与される。いくつかの実施形態において、一方の薬剤、例えばSGRMは毎日投与され、他方の薬剤、例えば化学療法剤は2日、3日または4日ごとに投与される。
【0028】
本明細書中で使用されるとき、用語「化合物」とは、ユニークで特定可能な化学構造の分子部分を表すために使用される。分子部分(「化合物」)は、他の分子と会合していない遊離種形態で存在し得る。化合物はまた、それが他の分子と会合しているより大きな凝集体の一部として存在し得るが、それにもかかわらず、その化学的同一性を保持する。規定の化学構造(「化合物」)の分子部分が溶媒の分子と会合している溶媒和物は、そのような会合形態の例である。水和物は、会合溶媒が水である溶媒和物である。「化合物」の記述は、それが遊離形態または会合形態で存在するかにかかわらず、(記述されている構造の)分子部分それ自体のことを指す。
【0029】
本明細書中で使用されるとき、用語「薬学的に許容され得るキャリア」とは、薬学的投与に適合する任意のすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含むことを意図する。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物におけるそれらの使用が企図される。補助活性化合物も組成物に組み込まれ得る。
【0030】
用語「糖質コルチコステロイド」(「GC」)または「グルココルチコイド」とは、グルココルチコイドレセプターに結合するステロイドホルモンのことを指す。糖質コルチコステロイドは、代表的には、21個の炭素原子、環Aにおけるα,β-不飽和ケトンおよび環Dに結合したα-ケトール基を有することを特徴とする。それらは、C-11、C-17およびC-19における酸素化またはヒドロキシル化の程度が異なる;Rawn,“Biosynthesis and Transport of Membrane Lipids and Formation of Cholesterol Derivatives,”in Biochemistry,Daisyら(eds.),1989,pg.567を参照のこと。
【0031】
I型グルココルチコイドレセプター(GRI)としても公知の鉱質コルチコイドレセプター(MR)は、ヒトではアルドステロンによって活性化される。
【0032】
本明細書中で使用されるとき、用語「グルココルチコイドレセプター」(「GR」)は、コルチゾールおよび/またはコルチゾールアナログに特異的に結合する細胞内レセプターのファミリーのことを指す。グルココルチコイドレセプターはまた、コルチゾールレセプターとも称される。この用語は、GRのアイソフォーム、組換えGRおよび変異型GRを含む。「グルココルチコイドレセプター」(「GR」)は、コルチゾールおよび/またはコルチゾールアナログ、例えばデキサメタゾンに特異的に結合するII型GRのことを指す(例えば、Turner&Muller,J. Mol. Endocrinol. October 1,2005 35 283-292を参照のこと)。
【0033】
「グルココルチコイドレセプターモジュレーター」(GRM)は、アゴニストへのGRの結合に関連する任意の生物学的応答を阻害する任意の化合物のことを指す。例えば、デキサメタゾンなどのGRアゴニストは、HepG2細胞(ヒト肝臓肝細胞癌細胞株;ECACC,UK)におけるチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性を増加させる。したがって、本発明のGRモジュレーターは、デキサメタゾンの効果を阻害する化合物の能力を計測することによって同定され得る。TAT活性は、文献A.Aliら、J.Med.Chem.,2004,47,2441-2452に概説されているように計測され得る。モジュレーターは、10マイクロモル濃度未満のIC50(半最大阻害濃度(half maximal inhibition concentration))を有する化合物である。以下の実施例1を参照のこと。
【0034】
本明細書中で使用されるとき、用語「選択的なグルココルチコイドレセプターモジュレーター」(SGRM)とは、アゴニストへのGRの結合に関連する任意の生物学的応答を阻害する任意の組成物または化合物のことを指す。「選択的な」とは、他の核レセプター(例えば、プロゲステロンレセプター(PR)、鉱質コルチコイドレセプター(MR)またはアンドロゲンレセプター(AR))ではなくGRに優先的に結合する薬物である。選択的なグルココルチコイドレセプターモジュレーターは、MR、ARもしくはPR、MRとPRの両方、MRとARの両方、ARとPRの両方またはMR、ARおよびPRに対する親和性より10倍高い親和性(1/10のKd値)でGRに結合することが好ましい。より好ましい実施形態では、選択的なグルココルチコイドレセプターモジュレーターは、MR、ARもしくはPR、MRとPRの両方、MRとARの両方、ARとPRの両方またはMR、ARおよびPRに対する親和性よりも100倍高い親和性(1/100のKd値)でGRに結合する。別の実施形態において、選択的なグルココルチコイドレセプターモジュレーターは、MR、ARもしくはPR、MRとPRの両方、MRとARの両方、ARとPRの両方またはMR、ARおよびPRに対する親和性よりも1000倍高い親和性(1/1000のKd値)でGRに結合する。
【0035】
本明細書中で使用されるとき、用語「選択的なグルココルチコイドレセプターモジュレーター」および「SGRM」とは、ORG34517も11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン誘導体も以下の式:
【化9】
(式中、Aは、2個のヘテロ原子(これらは互いに接続されておらず、OおよびSから独立して選択される)を含む5もしくは6員環の残基であり、前記環は、1個もしくはそれを超えるハロゲン原子で場合により置換されており、またはAは、二重C--C結合が存在しない5もしくは6員環であって、OおよびSから選択される1個のヘテロ原子を含む5もしくは6員環の残基であり、このヘテロ原子は、アスタリスクで示されている位置においてフェニル基に接続されており、前記環は、1個もしくはそれを超えるハロゲン原子で場合により置換されており;R1は、HまたはI-オキソ(1-4C)アルキルであり;R2は、H、(1-8C)アルキル、ハロゲンまたはCF3であり;Xは、(H、OH)、OおよびNOHから選択され;ならびに破線は、任意選択の結合を表す(例えば、米国特許第8,658,128号の請求項1を参照のこと))の11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン誘導体も含まない。
【0036】
本明細書中で使用されるとき、用語「組成物」とは、指定量の指定成分、例えば前記化合物、それらの互変異性形態、それらの誘導体、それらのアナログ、それらの立体異性体、それらの多形体、それらの重水素化種、それらの薬学的に許容され得る塩、エステル、エーテル、代謝産物、異性体の混合物、それらの薬学的に許容され得る溶媒和物および薬学的に許容され得る組成物、を含む生成物、ならびに指定量の指定成分の組み合わせから直接的または間接的に生じる任意の生成物を包含することを意図する。薬学的組成物に関するそのような用語は、活性な成分と、キャリアを構成する不活性な成分とを含む生成物、ならびに直接的または間接的に、前記成分のいずれか2つもしくはそれよりも多くの組み合わせ、錯体形成もしくは凝集をもたらすか、または前記成分の1つもしくはそれよりも多くの解離から、もしくは前記成分の1つもしくはそれよりも多くの他の種類の反応もしくは相互作用から生じる任意の生成物を包含することを意図する。したがって、本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物とそれらの薬学的に許容され得るキャリアとを混合することによって作製される任意の組成物を包含することを意味する。
【0037】
いくつかの実施形態において、用語「から本質的になる」とは、その唯一の活性な成分が、示されている活性な成分であるが、しかしながら、安定化、貯蔵などのためのものである他の化合物が含まれ得る製剤の組成物のことを指すが、前記製剤は、示されている活性な成分の治療効果に直接関与しない。いくつかの実施形態において、用語「から本質的になる」とは、活性な成分と、活性な成分の放出を容易にする成分とを含む組成物のことを指し得る。例えば、組成物は、被験体への活性な成分の経時的な持続放出を提供する1つまたはそれを超える成分を含み得る。いくつかの実施形態において、用語「からなる」とは、活性な成分と、薬学的に許容され得るキャリアまたは賦形剤とを含む組成物のことを指す。
【0038】
本明細書中で使用されるとき、SGRMの文脈における語句「非ステロイド骨格」は、4つの縮合環に結合した17個の炭素原子を含むステロイド骨格を有するコルチゾールと構造的相同性を共有せず、または前記コルチゾールの改変ではないSGRMのことを指す。そのような化合物には、部分的にペプチド性、偽ペプチド性および非ペプチド性の分子実体を含む、タンパク質の合成模倣物およびアナログが含まれる。
【0039】
非ステロイド性SGRM化合物としては、縮合アザデカリン構造(これは、縮合アザデカリン骨格とも称され得る)を含むSGRM、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造(これは、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン骨格とも称され得る)を含むSGRM、およびオクタヒドロ縮合アザデカリン構造(これは、オクタヒドロ縮合アザデカリン骨格とも称され得る)を含むSGRMが挙げられる。縮合アザデカリン構造を含み有する例示的な非ステロイド性グルココルチコイドレセプターモジュレーターとしては、米国特許第7,928,237号および同第8,461,172号に記載されているものが挙げられる。ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む例示的な非ステロイド性グルココルチコイドレセプターモジュレーターとしては、米国特許出願公開第2014/0038926号に記載されているものが挙げられる。オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む例示的な非ステロイド性グルココルチコイドレセプターモジュレーターとしては、2013年11月25日に出願された表題Octahydro Fused Azadecalin Glucocorticoid Receptor Modulators、代理人整理番号85178-887884(007800US)の米国仮特許出願第61/908,333号および2014年11月21日に出願された米国特許出願第14/549,885号に記載されているものが挙げられる。
【0040】
置換基が、左から右に向かって記述されるそれらの従来の化学式によって明記される場合、それらは、右から左に向かって構造を記述することによってもたらされ得る化学的に同一の置換基を等しく包含し、例えば、-CH2O-は、-OCH2-と等価である。
【0041】
「アルキル」とは、示される数の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和脂肪族ラジカルのことを指す。アルキルは、任意の数の炭素(例えば、C1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C1-7、C1-8、C1-9、C1-10、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6およびC5-6)を含み得る。例えば、C1-6アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチルおよびヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
「アルコキシ」とは、アルキル基を結合点に連結する酸素原子を有するアルキル基:アルキル-O-のことを指す。アルキル基と同様に、アルコキシ基は、C1-6などの任意の好適な数の炭素原子を有し得る。アルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、iso-プロポキシ、ブトキシ、2-ブトキシ、iso-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどを含む。
【0043】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素のことを指す。
【0044】
「ハロアルキル」とは、水素原子のいくつかまたはすべてが、ハロゲン原子で置き換えられている、上で定義されたようなアルキルのことを指す。アルキル基と同様に、ハロアルキル基は、C1-6などの任意の好適な数の炭素原子を有し得、ハロアルキル基としては、トリフルオロメチル、フルオロメチルなどが挙げられる。
【0045】
用語「ペルフルオロ」は、すべての水素がフッ素で置き換えられている化合物またはラジカルを定義するために使用され得る。例えば、ペルフルオロメタンとしては、1,1,1-トリフルオロメチルが挙げられる。
【0046】
「ハロアルコキシ」とは、水素原子のいくつかまたはすべてがハロゲン原子で置換されているアルコキシ基のことを指す。アルキル基と同様に、ハロアルコキシ基は、C1-6などの任意の好適な数の炭素原子を有し得る。アルコキシ基は、1、2、3個またはそれを超えるハロゲンで置換され得る。すべての水素が、ハロゲン、例えば、フッ素で置き換えられるとき、その化合物は、全置換(per-substituted)、例えば、全フッ素置換(perfluorinated)される。ハロアルコキシとしては、トリフルオロメトキシ、2,2,2,-トリフルオロエトキシおよびペルフルオロエトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
「シクロアルキル」とは、3~12個の環原子または示されている数の原子を含む、飽和または部分不飽和の、単環式、縮合二環式または架橋多環式の環アセンブリ(ring assembly)のことを指す。シクロアルキルは、任意の数の炭素(例えば、C3-6、C4-6、C5-6、C3-8、C4-8、C5-8、C6-8、C3-9、C3-10、C3-11およびC3-12)を含み得る。飽和単環式シクロアルキル環としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロオクチルが挙げられる。飽和二環式および多環式シクロアルキル環としては、例えば、ノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレンおよびアダマンタンが挙げられる。シクロアルキル基は、その環内に1つまたはそれを超える二重結合または三重結合を有する部分不飽和でもあり得る。部分不飽和である代表的なシクロアルキル基としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-および1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-、1,4-および1,5-異性体)、ノルボルネンおよびノルボルナジエンが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキルが、飽和単環式C3-8シクロアルキルであるとき、例示的な基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキルが、飽和単環式C3-6シクロアルキルであるとき、例示的な基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
「ヘテロシクロアルキル」とは、3~12個の環員、ならびにN、OおよびSのうちの1~4個のヘテロ原子を有する飽和環系のことを指す。B、Al、SiおよびPを含むがこれらに限定されないさらなるヘテロ原子もまた有用であり得る。それらのヘテロ原子はまた、酸化され得、例えば、-S(O)-および-S(O)2-であるがこれらに限定されない。ヘテロシクロアルキル基は、任意の数の環原子(例えば、3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11または3~12個の環員)を含み得る。任意の好適な数(例えば、1、2、3もしくは4、または1~2、1~3、1~4、2~3、2~4もしくは3~4)のヘテロ原子が、ヘテロシクロアルキル基に含まれ得る。そのヘテロシクロアルキル基には、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、キヌクリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン(1,2-、1,3-および1,4-異性体)、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、オキサン(テトラヒドロピラン)、オキセパン、チイラン、チエタン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン(テトラヒドロチオピラン)、オキサゾリジン、イソオキサリジン(isoxalidine)、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ジオキソラン、ジチオラン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサンまたはジチアンなどの基が含まれ得る。ヘテロシクロアルキル基はまた、芳香環系または非芳香環系と縮合して、インドリンを含むがこれに限定されないメンバーを形成し得る。
【0049】
ヘテロシクロアルキルが、3~8個の環員および1~3個のヘテロ原子を含むとき、代表的なメンバーとしては、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、オキサン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサンおよびジチアンが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルは、5~6個の環員および1~2個のヘテロ原子を有する環も形成し得、代表的なメンバーとしては、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジンおよびモルホリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
「アリール」とは、任意の好適な数の環原子および任意の好適な数の環を有する芳香環系のことを指す。アリール基は、任意の好適な数の環原子(例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の環原子)ならびに6~10、6~12または6~14個の環員を含み得る。アリール基は、単環式であり得るか、縮合して二環式基もしくは三環式基を形成し得るか、または結合によって連結されてビアリール基を形成し得る。代表的なアリール基としては、フェニル、ナフチルおよびビフェニルが挙げられる。他のアリール基としては、メチレン連結基を有するベンジルが挙げられる。いくつかのアリール基は、6~12個の環員を有する(例えば、フェニル、ナフチルまたはビフェニル)。他のアリール基は、6~10個の環員を有する(例えば、フェニルまたはナフチル)。いくつかの他のアリール基は、6個の環員を有する(例えば、フェニル)。アリール基は、置換され得るか、または非置換であり得る。
【0051】
「ヘテロアリール」とは、5~16個の環原子(ここで、それらの環原子の1~5個は、N、OまたはSなどのヘテロ原子である)を含む、単環式または縮合二環式もしくは三環式の芳香環アセンブリのことを指す。B、Al、SiおよびPを含むがこれらに限定されないさらなるヘテロ原子もまた有用であり得る。それらのヘテロ原子はまた、酸化され得、例えば、N-オキシド、-S(O)-および-S(O)2-であるがこれらに限定されない。ヘテロアリール基は、任意の数の環原子(例えば、3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11または3~12個の環員)を含み得る。任意の好適な数(例えば、1、2、3、4もしくは5;または1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4もしくは3~5)のヘテロ原子が、ヘテロアリール基に含まれ得る。ヘテロアリール基は、5~8個の環員および1~4個のヘテロ原子、または5~8個の環員および1~3個のヘテロ原子、または5~6個の環員および1~4個のヘテロ原子、または5~6個の環員および1~3個のヘテロ原子を有し得る。ヘテロアリール基には、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾールおよびイソオキサゾールなどの基が含まれ得る。ヘテロアリール基はまた、フェニル環などの芳香環系に縮合されて、ベンゾピロール(例えば、インドールおよびイソインドール)、ベンゾピリジン(例えば、キノリンおよびイソキノリン)、ベンゾピラジン(キノキサリン)、ベンゾピリミジン(キナゾリン)、ベンゾピリダジン(例えば、フタラジンおよびシンノリン)、ベンゾチオフェンおよびベンゾフランを含むがこれらに限定されないメンバーを形成し得る。他のヘテロアリール基としては、結合によって連結されたヘテロアリール環、例えば、ビピリジンが挙げられる。ヘテロアリール基は、置換され得るか、または非置換であり得る。
【0052】
ヘテロアリール基は、環上の任意の位置を介して連結され得る。例えば、ピロールには、1-、2-および3-ピロールが含まれ;ピリジンには、2-、3-および4-ピリジンが含まれ;イミダゾールには、1-、2-、4-および5-イミダゾールが含まれ;ピラゾールには、1-、3-、4-および5-ピラゾールが含まれ;トリアゾールには、1-、4-および5-トリアゾールが含まれ;テトラゾールには、1-および5-テトラゾールが含まれ;ピリミジンには、2-、4-、5-および6-ピリミジンが含まれ;ピリダジンには、3-および4-ピリダジンが含まれ;1,2,3-トリアジンには、4-および5-トリアジンが含まれ;1,2,4-トリアジンには、3-、5-および6-トリアジンが含まれ;1,3,5-トリアジンには、2-トリアジンが含まれ;チオフェンには、2-および3-チオフェンが含まれ;フランには、2-および3-フランが含まれ;チアゾールには、2-、4-および5-チアゾールが含まれ;イソチアゾールには、3-、4-および5-イソチアゾールが含まれ;オキサゾールには、2-、4-および5-オキサゾールが含まれ;イソオキサゾールには、3-、4-および5-イソオキサゾールが含まれ;インドールには、1-、2-および3-インドールが含まれ;イソインドールには、1-および2-イソインドールが含まれ;キノリンには、2-、3-および4-キノリンが含まれ;イソキノリンには、1-、3-および4-イソキノリンが含まれ;キナゾリンには、2-および4-キノアゾリンが含まれ;シンノリンには、3-および4-シンノリンが含まれ;ベンゾチオフェンには、2-および3-ベンゾチオフェンが含まれ;ベンゾフランには、2-および3-ベンゾフランが含まれる。
【0053】
いくつかのヘテロアリール基は、5~10個の環員、およびN、OまたはSを含む1~3個の環原子を有するヘテロアリール基(例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、ベンゾチオフェンおよびベンゾフラン)を含む。他のヘテロアリール基は、5~8個の環員および1~3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール基(例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾールおよびイソオキサゾール)を含む。いくつかの他のヘテロアリール基は、9~12個の環員および1~3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール基(例えば、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾフランおよびビピリジン)を含む。なおも他のヘテロアリール基は、5~6個の環員、およびN、OまたはSを含む1~2個の環ヘテロ原子を有するヘテロアリール基(例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾールおよびイソオキサゾール)を含む。
【0054】
いくつかのヘテロアリール基は、5~10個の環員および窒素だけのヘテロ原子を含む(例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-異性体)、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジンおよびシンノリン)。他のヘテロアリール基は、5~10個の環員および酸素だけのヘテロ原子を含む(例えば、フランおよびベンゾフラン)。いくつかの他のヘテロアリール基は、5~10個の環員および硫黄だけのヘテロ原子を含む(例えば、チオフェンおよびベンゾチオフェン)。なおも他のヘテロアリール基は、5~10個の環員および少なくとも2個のヘテロ原子を含む(例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-異性体)、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、キノキサリン、キナゾリン、フタラジンおよびシンノリン)。
【0055】
「ヘテロ原子」とは、O、SまたはNのことを指す。
【0056】
「塩」とは、本発明の方法において使用される化合物の酸塩または塩基塩のことを指す。薬学的に許容され得る塩の例証的な例は、鉱酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸など)の塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)の塩、四級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチルなど)の塩である。薬学的に許容され得る塩は無毒性であると理解される。好適な薬学的に許容され得る塩に関するさらなる情報は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985(参照により本明細書中に援用される)に見られ得る。
【0057】
「異性体」とは、同じ化学式を有するが構造的に識別可能な化合物のことを指す。
【0058】
「互変異性体」とは、平衡状態で存在し、一方の形態からもう一方の形態に容易に変換される、2つまたはそれを超える構造異性体のうちの1つのことを指す。
【0059】
本発明の化合物の説明は、当業者に公知の化学結合の原理によって限定される。したがって、ある基が、いくつかの置換基のうちの1つまたはそれを超える置換基によって置換され得る場合、そのような置換は、化学結合の原理に適合するように、ならびに本質的に不安定でない化合物および/または周囲条件(例えば、水性、中性または生理学的条件)下で不安定である可能性があると当業者に公知であり得る化合物を生成するように、選択される。
【0060】
「薬学的に許容され得る賦形剤」および「薬学的に許容され得るキャリア」とは、活性な作用物質を被験体に投与することおよびその活性な作用物質が被験体によって吸収されることを助ける物質のことを指し、患者に毒物学的な有意な悪影響を及ぼさずに本発明の組成物中に含められ得る。薬学的に許容され得る賦形剤の非限定的な例としては、水、NaCl、通常の食塩水溶液、乳酸加リンガー液、通常のスクロース、通常のグルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング剤、甘味料、香料および着色料などが挙げられる。当業者は、他の薬学的賦形剤が本発明において有用であることを認識するだろう。
【0061】
C.膵臓腫瘍
膵臓癌は、膵腺内の悪性腫瘍である。膵臓癌患者のほぼ90%は、55歳超である。この癌が発見される時点の平均年齢は、72歳である。膵臓癌のリスク因子としては、年齢、男性、アフリカ人種、喫煙、肉が多い食事、肥満、糖尿病、慢性膵炎(関連しているが因果関係不明である)、ガソリンに関連する特定の殺虫剤、色素および化学物質への職業的曝露、家族歴、Helicobacter pylori感染、歯肉炎または歯周病が挙げられる(Pancreatic Cancer.Von Hoffら、ed.,Maine;2005.)。特定の遺伝的な遺伝性症候群は、10%もの膵臓癌を引き起こす。膵臓癌に関連する遺伝子マーカーとしては、例えば、PNCA1、PALLDまたはBRCA2遺伝子における変異が挙げられる(例えば、Bankeら、2000,Med.Clin.North Am.84:677-690;Mecklerら、2001,Am.J.Surg.Path.25:1047-1053;Pogue-Geileら、2006,PLoS Med.3:e516;Murphyら、2002,Cancer Res.62:3789-3793を参照のこと)。しかしながら、現在認められているリスクカテゴリーのすべての患者が、膵臓癌を発症するわけではない。多くの膵臓癌は、「散発的に」(すなわち、家族歴を有しない患者において)生じる。
【0062】
初期膵臓癌症状は、非特異的かつ多様である。一般的な症状としては、上腹部痛(これは、代表的には背部に放散し、前傾によって緩和される)(膵臓の本体または尾部の癌腫に見られる)、食欲不振、吐き気、嘔吐、有意な体重減少、および胆道閉塞に関連する無痛性黄疸(膵臓の頭部の癌腫)が挙げられる。しかしながら、これらの症状はすべて、複数の他の原因を有し得、膵臓癌に限定されない。
【0063】
イメージングベースの方法、例えば磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影法(CT)、X線および陽電子放出断層撮影法(PET)スキャン、または超音波検査法(US)の1つまたはそれよりも多くが、多くの場合、例えば関連臨床症状の提示に基づいて膵臓癌を有すると疑われる被験体に対して実施される。正確な診断および腫瘍の起源に関する情報を提供するために、これらのイメージング検査の結果は、多くの場合、患者の病歴、身体検査および臨床検査と組み合わされる。
【0064】
膵臓癌の存在、膵臓癌の種類およびステージは、病理学者によって実施される腫瘍の組織学的分析によって確認され得る。組織学は、膵臓癌臨床処置、管理および予後の多くの側面を決定する。
【0065】
腫瘍が膵臓の外分泌腺または内分泌腺から発生するかに基づいて、2つの主な種類の膵臓癌がある。膵臓の外分泌腺から形成される腫瘍は、はるかに一般的である。これらの外分泌膵臓腫瘍は、膵臓腫瘍の約95パーセントを占める。これらの腫瘍は、消化を助ける膵臓酵素を作る外分泌細胞において発生する。
【0066】
膵臓内分泌腫瘍は、膵臓腫瘍の5%未満を構成し、ACTH分泌腫瘍である。これらの腫瘍は膵島細胞腫瘍とも称され、ほとんどが良性である。内分泌膵臓腫瘍の特殊な種類の腫瘍(膨大部腫瘍)は、肝臓由来の胆管および膵管が小腸に流れ込む場所において起こり得る。この種類の癌は、多くの場合、皮膚および眼の黄変などの徴候を引き起こすので、それは、通常、ほとんどの膵臓癌よりも早期に発見される。処置成功の可能性は、膨大部癌を患っている患者に関してより良好である。
【0067】
American Joint Committee on Cancer(AJCC)基準によれば、膵臓癌は、4つのステージ(ステージI~IV)の1つにあり得、ステージIVは、癌が拡散しており、より重症であることを示す。具体的には、ステージIの膵臓癌としては、特定の禁止敏感領域(proscribed sensitive area)に拡散しておらず、罹患所属リンパ節も遠位転移も有していない腫瘍が挙げられる。ステージIIとしては、十二指腸、胆管または「膵臓周辺」組織に拡散しており、罹患所属リンパ節も遠位転移も有していない腫瘍が挙げられる。ステージIIIの癌としては、これらの領域に拡散していてもよいしまたは拡散していなくてもよく、罹患所属リンパ節を有しているが、遠位転移の証拠を示していない腫瘍が挙げられる。ステージIVAとしては、胃、脾臓、大腸または隣接大血管に拡散しており、罹患所属リンパ節を有しているが、遠位転移の証拠を示していない腫瘍が挙げられる。ステージIVBとしては、遠位転移の証拠を有する任意の種類のリンパ節状態の任意の種類の膵臓腫瘍が挙げられる。それにもかかわらず、ステージは、患者の予後または処置選択肢に十分に一致しないので、この膵臓癌ステージ分類システムは、その純粋な形ではほとんど使用されない。代替案は、放射線学的所見に基づく3つのステージ分類(切除可能性、局所進行性および転移性)である。他の予後因子も考慮される。顕微鏡下で細胞がどの程度異常に見えるかを示す癌のグレードは、G1~G4のスケールで列挙されることもあり、G1癌は、正常細胞と最もよく似ており、見通しが最も良好である。手術を受ける患者の場合、切除の程度(すなわち、腫瘍のすべてが除去されるか否か)もまた、見通しに関して重要である。これは、R0~R2のスケールで列挙されることもあり、R0は、見ることができる腫瘍のすべてが除去されたことを示し、R2は、見ることができる一部の腫瘍を除去することができないことを示す。
【0068】
D.非ACTH分泌膵臓腫瘍
本明細書中に開示される方法は、非ACTH分泌膵臓腫瘍を処置するために適用可能である。膵臓癌の診断後、腫瘍を評価して、組織学的分析によって、腫瘍起源(すなわち、腫瘍が外分泌腫瘍または神経内分泌腫瘍であるか)を決定し得る。一般に、膵臓腫瘍の大部分を占める外分泌膵臓腫瘍は非ACTH分泌腫瘍であるので、特許請求の範囲内に包含される。一般に、神経内分泌膵臓腫瘍はACTH分泌膵臓腫瘍であり、特許請求の範囲内に包含されない。
【0069】
あるいは、腫瘍がACTH分泌腫瘍であるかは、患者のACTHレベルを計測することによって決定され得る。これは、組織学的分析に代えて、または組織学的分析に加えて実施され得る。ACTHの決定に好適なサンプルの種類は、被験体から採取された血清、血漿、唾液、尿または他の任意の生体液であり得る。ACTHのレベルは、様々な方法を用いて計測され得、それらの方法としては、イムノアッセイ、例えば、競合イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光酵素アッセイおよびELISA;競合タンパク質結合アッセイ;液体クロマトグラフィー(例えば、HPLC);および質量分析、例えば、高速液体クロマトグラフィー/三連四重極質量分析(LC-MS/MS)が挙げられるが、これらに限定されない。ACTHを計測するための市販のキットは、例えば、Mayo clinic(Test ID:ACTH)、Siemens Healthcare Global(Immulite(登録商標)2000 ACTHアッセイ)およびRoche Molecular Diagnostics(カタログ番号03255751190)から容易に入手可能である。
【0070】
患者におけるACTH分泌腫瘍の存在は、代表的には、正常参照値よりも有意に高い血中ACTHレベルに関連する。コルチゾールと同様に、健康個体におけるACTHは、24時間の間に変動し、午前6~8時ごろの朝に最高レベルに達し、午後11時ごろの夜間に最低レベルに達するので、正常な参照値は、アッセイ方法、サンプルの種類ならびにサンプル回収のタイミングに応じて変動する。様々な市販のキットが、正常な参照値をその検査プロトコルに提供している。例えば、Mayo Clinc Test ID:ACTHを使用したACTHの正常範囲は、約10~60pg/mLである。膵臓癌患者が、正常範囲の上限よりも有意に高い、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%高いACTHレベルを有する(一般に、腫瘍がACTH分泌腫瘍であることを示す)場合、彼または彼女は、特許請求の範囲の発明によって包含される被験体ではない。
【0071】
E.グルココルチコイドレセプターモジュレーター(GRM)
一般に、非ACTH分泌膵臓腫瘍の処置は、任意の化学構造または作用機序の有効量のグルココルチコイドレセプターモジュレーター(GRM)と組み合わせて、有効量の化学療法剤を投与することによって提供され得る。実施形態において、GRMは、選択的なGRM(SGRM)である。実施形態において、非ACTH分泌膵臓腫瘍の処置は、有効量のSGRMと組み合わせて、有効量の化学療法剤を投与することによって提供され得る。好ましい実施形態において、非ACTH分泌膵臓腫瘍の処置は、有効量の非ステロイド性SGRMと組み合わせて、有効量の化学療法剤を投与することによって提供され得る。例示的なGRM、特に例示的な非ステロイド性SGRMのクラス、およびそのようなクラスの特定のメンバーが本明細書中に提供される。しかしながら、当業者は、本明細書中に記載される処置方法において用いられ得る他の関連または非関連GRMおよびSGRMを容易に認識するであろう。
【0072】
非ステロイド性グルココルチコイドレセプターモジュレーター
本明細書中に開示される方法に使用され得る例示的な非ステロイド性グルココルチコイドレセプターモジュレーター(非ステロイド性GRM)のクラスおよびそのようなクラスの特定のメンバーが本明細書中に提供される。しかしながら、当業者は、本明細書中に記載される処置方法において使用され得る他の関連するまたは無関係のグルココルチコイドレセプターモジュレーターを容易に認識するだろう。これらには、部分的にペプチド性、偽ペプチド性および非ペプチド性の分子実体を含む、タンパク質の合成模倣物およびアナログが含まれる。例えば、本発明において有用なオリゴマーペプチド模倣物としては、(α-β-不飽和)ペプチドスルホンアミド、N置換グリシン誘導体、オリゴカルバメート、オリゴ尿素ペプチド模倣物、ヒドラジノペプチド、オリゴスルホンなどが挙げられる(例えば、Amour,Int.J.Pept.Protein Res.43:297-304,1994;de Bont,Bioorganic&Medicinal Chem.4:667-672,1996を参照のこと)。
【0073】
非ステロイド性GRモジュレーターの例には、米国特許第5,696,127号;同第6,570,020号;および同第6,051,573号に開示されているGRアンタゴニスト化合物;米国特許出願20020077356に開示されているGRアンタゴニスト化合物、Bradleyら、J.Med.Chem.45,2417-2424(2002)に開示されているグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト、例えば、4α(S)-ベンジル-2(R)-クロロエチニル-1,2,3,4,4α,9,10,10α(R)-オクタヒドロ-フェナントレン-2,7-ジオール(「CP394531」)および4α(S)-ベンジル-2(R)-プロプ-1-イニル-1,2,3,4,4α,9,10,10α(R)-オクタヒドロ-フェナントレン-2,7-ジオール(「CP409069」);ならびにステロイドレセプターに対して高親和性で高度に選択的なアンタゴニストである非ステロイド性化合物を記載しているPCT国際出願番号WO 96/19458に開示されている化合物(例えば、6置換-1,2-ジヒドロ-N-保護-キノリン)が挙げられる。
【0074】
本発明の方法において利用され得るさらなる化合物、ならびにそのような化合物を同定および作製する方法については、米国特許第4,296,206号(上記を参照のこと);同第4,386,085号(上記を参照のこと);同第4,447,424号;同第4,477,445号;同第4,519,946号;同第4,540,686号;同第4,547,493号;同第4,634,695号;同第4,634,696号;同第4,753,932号;同第4,774,236号;同第4,808,710号;同第4,814,327号;同第4,829,060号;同第4,861,763号;同第4,912,097号;同第4,921,638号;同第4,943,566号;同第4,954,490号;同第4,978,657号;同第5,006,518号;同第5,043,332号;同第5,064,822号;同第5,073,548号;同第5,089,488号;同第5,089,635号;同第5,093,507号;同第5,095,010号;同第5,095,129号;同第5,132,299号;同第5,166,146号;同第5,166,199号;同第5,173,405号;同第5,276,023号;同第5,380,839号;同第5,348,729号;同第5,426,102号;同第5,439,913号;および同第5,616,458号;ならびに国際公開第96/19458号(ステロイドレセプターの高親和性高選択的モジュレーター(アンタゴニスト)である非ステロイド性化合物、例えば6置換-1,2-ジヒドロN-1保護キノリンが記載されている)を参照のこと。
【0075】
いくつかの実施形態において、癌を処置するための併用療法は、縮合アザデカリン構造を含むGRM、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含むGRM、またはオクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含むGRMを伴う。
【0076】
縮合アザデカリン構造を含む例示的なGRMとしては、米国特許第7,928,237号;および同第8,461,172号に記載されているものが挙げられ、そこに開示されているように調製され得る。これらの特許は、その全体が本明細書中に援用される。そのような例示的なGRMは、SGRMであり得る。いくつかの場合において、縮合アザデカリン構造を含むGRMは、以下の構造:
【化10】
(式中、
L
1およびL
2は、結合および非置換アルキレンから独立して選択されるメンバーであり;
R
1は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-OR
1A、-NR
1CR
1D、-C(O)NR
1CR
1Dおよび-C(O)OR
1Aから選択されるメンバーであり、ここで、
R
1Aは、水素、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから選択されるメンバーであり、
R
1CおよびR
1Dは、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、
ここで、R
1CおよびR
1Dは場合により接合して、それらが結合している窒素とともに非置換環を形成し、ここで、前記環は、場合により、さらなる環窒素を含み;
R
2は、式:
【化11】
(式中、
R
2Gは、水素、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-CNおよび-CF
3から選択されるメンバーであり;
Jは、フェニルであり;
tは、0~5の整数であり;
Xは、-S(O
2)-である)を有し;および
R
5は、1~5個のR
5A基で場合により置換されているフェニルであり、ここで、
R
5Aは、水素、ハロゲン、-OR
5A1、-S(O
2)NR
5A2R
5A3、-CNおよび非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ここで、
R
5A1は、水素および非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ならびに
R
5A2およびR
5A3は、水素および非置換アルキルから独立して選択されるメンバーである)またはその塩および異性体を有する。
【0077】
ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む例示的なGRMとしては、米国特許出願公開第2014/0038926号(これは、その全体が本明細書中に援用される)に記載されているもの(これは、そこに開示されているように調製され得る)が挙げられる。そのような例示的なGRMは、SGRMであり得る。いくつかの場合において、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含むGRMは、以下の構造:
【化12】
(式中、
R
1は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1aからそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;
各R
1aは、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、-CN、N-オキシド、C
3-8シクロアルキルおよびC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;
環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリール環は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有し;
各R
2は、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、-CN、-OH、-NR
2aR
2b、-C(O)R
2a、-C(O)OR
2a、-C(O)NR
2aR
2b、-SR
2a、-S(O)R
2a、-S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキルおよびC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキル基は、1~4個のR
2c基で場合により置換されており;
あるいは、同じ炭素に連結されている2個のR
2基は一緒になって、オキソ基(=O)を形成し;
あるいは、2個のR
2基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2d基で場合により置換されており;
R
2aおよびR
2bは、水素およびC
1-6アルキルからなる群よりそれぞれ独立して選択され;
各R
2cは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、-CNおよび-NR
2aR
2bからなる群より独立して選択され;
各R
2dは、水素およびC
1-6アルキルからなる群より独立して選択されるか、または同じ環原子に結合している2個のR
2d基は一緒になって、(=O)を形成し;
R
3は、1~4個のR
3a基でそれぞれ場合により置換されているフェニルおよびピリジルからなる群より選択され;
各R
3aは、水素、ハロゲンおよびC
1-6ハロアルキルからなる群より独立して選択され;ならびに
下付き文字nは、0~3の整数である)またはその塩および異性体を有する。
【0078】
オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む例示的なGRMとしては、2014年11月21日に出願された米国特許出願公開第20150148341号に記載されているもの(これは、そこに記載されているように調製され得る)が挙げられる。米国特許出願公開第20150148341号の開示は、その全体が本明細書中に援用される。そのような例示的なGRMは、SGRMであり得る。いくつかの場合において、オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含むGRMは、以下の構造:
【化13】
(式中、
R
1は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1aからそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;
各R
1aは、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、N-オキシドおよびC
3-8シクロアルキルからなる群より独立して選択され;
環Jは、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され;
各R
2は、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、-CN、-OH、-NR
2aR
2b、-C(O)R
2a、-C(O)OR
2a、-C(O)NR
2aR
2b、-SR
2a、-S(O)R
2a、-S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキル、ならびにN、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有するC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;
あるいは、隣接環原子上の2個のR
2基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2c基で場合により置換されており;
R
2a、R
2bおよびR
2cはそれぞれ、水素およびC
1-6アルキルからなる群より独立して選択され;
各R
3aは独立して、ハロゲンであり;ならびに
下付き文字nは、0~3の整数である)またはその塩および異性体を有する。
【0079】
F.選択的なグルココルチコイドレセプターモジュレーター(SGRM)の同定
検査化合物がSGRMであるかを決定するために、最初に、化合物をアッセイに供して、GRに結合してGR媒介性活性を阻害するその能力を計測し、それにより、化合物がグルココルチコイドレセプターモジュレーターであるかを決定する。化合物がグルココルチコイドレセプターモジュレーターであることが確認された場合、化合物を選択性検査に供して、化合物が、非GRタンパク質、例えばエストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、アンドロゲンレセプターまたは鉱質コルチコイドレセプターと比較してGRに特異的に結合し得るかを決定する。1つの実施形態において、SGRMは、非GRタンパク質よりも実質的に高い親和性、例えば少なくとも10倍高い親和性でGRに結合する。SGRMは、非GRタンパク質への結合と比べて、GRへの結合について100倍、1000倍またはそれを超える選択性を示し得る。
【0080】
i.結合
グルココルチコイドレセプターに結合する検査化合物の能力は、様々なアッセイを使用して、例えば、グルココルチコイドレセプターへの結合についてデキサメタゾンなどのグルココルチコイドレセプターリガンドと競合する検査化合物の能力についてスクリーニングすることによって計測され得る。当業者は、そのような競合結合アッセイを実施するための多くの方法があることを認識するであろう。いくつかの実施形態において、グルココルチコイドレセプターを標識グルココルチコイドレセプターリガンドとともにプレインキュベートし、次いで、検査化合物と接触させる。この種類の競合結合アッセイはまた、本明細書中では結合置換アッセイとも称され得る。グルココルチコイドレセプターに結合した標識リガンドの量の減少は、検査化合物がグルココルチコイドレセプターに結合することを示す。いくつかの場合において、標識リガンドは、蛍光標識化合物(例えば、蛍光標識ステロイドまたはステロイドアナログ)である。あるいは、グルココルチコイドレセプターへの検査化合物の結合は、標識検査化合物を用いて直接計測され得る。この後者の種類のアッセイは、直接結合アッセイと称される。
【0081】
直接結合アッセイおよび競合結合アッセイは両方とも、様々な異なるフォーマットで使用され得る。フォーマットは、イムノアッセイおよびレセプター結合アッセイにおいて使用されるフォーマットと同様のものであり得る。競合結合アッセイおよび直接結合アッセイを含む結合アッセイのための様々なフォーマットの説明については、Basic and Clinical Immunology 7th Edition(D.Stites and A.Terr ed.)1991;Enzyme Immunoassay,E.T.Maggio,ed.,CRC Press,Boca Raton,Florida(1980);および“Practice and Theory of Enzyme Immunoassays,”P.Tijssen,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Elsevier Science Publishers B.V.Amsterdam(1985)(これらの各々が、参照により本明細書中に援用される)を参照のこと。
【0082】
固相競合結合アッセイでは、例えば、サンプル化合物は、固体表面に結合した結合剤上の特定の結合部位について、標識分析物と競合し得る。このタイプのフォーマットでは、標識分析物は、グルココルチコイドレセプターリガンドであり得、結合剤は、固相に結合したグルココルチコイドレセプターであり得る。あるいは、標識分析物は、標識グルココルチコイドレセプターであり得、結合剤は、固相グルココルチコイドレセプターリガンドであり得る。結合アッセイでは、捕捉剤に結合した標識分析物の濃度は、検査化合物の競合能力に反比例する。
【0083】
あるいは、競合結合アッセイは、液相において行われ得、未結合標識タンパク質から結合標識タンパク質を分離するために、当該分野で公知の様々な手法のいずれかが使用され得る。例えば、結合リガンドと過剰な結合リガンドとを、または結合検査化合物と過剰な未結合検査化合物とを区別するために、いくつかの手順が開発されている。これらは、スクロース勾配における沈降、ゲル電気泳動またはゲル等電点電気泳動による結合複合体の同定;硫酸プロタミンを用いたレセプター-リガンド複合体の沈殿またはヒドロキシルアパタイト上への吸着;およびデキストランコーティング木炭(DCC)上への吸着または固定化抗体への結合による未結合化合物またはリガンドの除去を含む。分離後、結合リガンドまたは検査化合物の量が決定される。
【0084】
あるいは、分離工程が不要な均一結合アッセイが実施され得る。例えば、グルココルチコイドレセプター上の標識は、そのリガンドまたは検査化合物へのグルココルチコイドレセプターの結合によって変化され得る。結合アッセイの終了時における標識の計測が、結合状態のグルココルチコイドレセプターの検出または定量を可能にするように、標識グルココルチコイドレセプターにおけるこの変化は、標識によって放出されるシグナルの減少または増加をもたらす。多種多様の標識が使用され得る。構成要素は、いくつかの方法のうちのいずれか1つによって標識され得る。有用な放射性標識としては、3H、125I、35S、14Cまたは32Pが組み込まれたものが挙げられる。有用な非放射性標識としては、フルオロフォア、化学発光剤、リン光性剤、電気化学発光剤などが組み込まれたものが挙げられる。蛍光剤は、タンパク質構造のシフトを検出するために使用される解析手法、例えば蛍光異方性および/または蛍光偏光において特に有用である。標識の選択は、必要な感度、化合物とのコンジュゲーションの容易性、安定性要件および利用可能な計測に依存する。使用され得る様々な標識またはシグナル生成システムの総説については、米国特許第4,391,904号(これは、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書中に援用される)を参照のこと。標識は、当該分野で周知の方法にしたがって、アッセイの所望の成分に直接的または間接的にカップリングされ得る。いくつかの場合において、GRに対する既知の親和性を有する蛍光標識リガンド(例えば、ステロイドまたはステロイドアナログ)の存在下で、検査化合物とGRとを接触させ、標識リガンドの蛍光偏光を計測することによって、結合および遊離標識リガンドの量を推定する。
【0085】
ii.活性
1)HepG2チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)アッセイ
GRに対する所望の結合親和性を示した化合物は、GR媒介性活性の阻害におけるそれらの活性について検査される。代表的には、化合物をチロシンアミノトランスフェラーゼアッセイ(TATアッセイ)に供し、デキサメタゾンによるチロシンアミノトランスフェラーゼ活性の誘導を阻害する検査化合物の能力を評価する。実施例1を参照のこと。本明細書中に開示される方法に好適なGRモジュレーターは、10マイクロモル濃度未満のIC50(半最大阻害濃度)を有する。限定されないが、下記のものを含む他のアッセイもまた、化合物のGRモジュレーション活性を確認するために用いられ得る。
【0086】
2)細胞ベースのアッセイ
グルココルチコイドレセプターを含む全細胞または細胞画分を伴う細胞ベースのアッセイもまた、検査化合物の結合またはグルココルチコイドレセプターの活性のモジュレーションについてアッセイするために使用され得る。本発明の方法にしたがって使用され得る例示的な細胞型としては、例えば、任意の哺乳動物細胞、例えば白血球、例えば好中球、単球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、肥満細胞およびリンパ球、例えばT細胞およびB細胞、白血病細胞、バーキットリンパ腫細胞、腫瘍細胞(マウス乳房腫瘍ウイルス細胞を含む)、内皮細胞、線維芽細胞、心臓細胞、筋肉細胞、乳房腫瘍細胞、卵巣癌腫、子宮頸癌腫、神経膠芽細胞腫、肝臓細胞、腎臓細胞、神経細胞ならびに真菌細胞(酵母を含む)が挙げられる。細胞は、初代細胞または腫瘍細胞または他の種類の不死細胞株であり得る。当然のことながら、グルココルチコイドレセプターは、内因性型のグルココルチコイドレセプターを発現しない細胞において発現され得る。
【0087】
いくつかの場合において、グルココルチコイドレセプターの断片およびタンパク質融合物がスクリーニングに使用され得る。グルココルチコイドレセプターリガンドとの結合について競合する分子が望まれる場合、使用されるGR断片は、リガンド(例えば、デキサメタゾン)に結合することができる断片である。あるいは、GRの任意の断片を標的として使用して、グルココルチコイドレセプターに結合する分子を同定し得る。グルココルチコイドレセプター断片は、例えば、グルココルチコイドレセプターの少なくとも20個、30個、40個、50個のアミノ酸から、1個を除くすべてのアミノ酸を含むタンパク質までの任意の断片を含み得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、グルココルチコイドレセプター活性化によってトリガーされるシグナル伝達の減少は、グルココルチコイドレセプターモジュレーターを同定するために使用される。グルココルチコイドレセプターのシグナル伝達活性は、多くの方法で決定され得る。例えば、下流分子事象は、シグナル伝達活性を決定するためにモニタリングされ得る。下流事象は、グルココルチコイドレセプターの刺激の結果として生じる活性または発現を含む。非変化細胞における転写活性化および拮抗作用の機能評価において有用な例示的な下流事象としては、いくつかのグルココルチコイド応答エレメント(GRE)依存性遺伝子(PEPCK、チロシンアミノトランスフェラーゼ、アロマターゼ)のアップレギュレーションが挙げられる。さらに、GR活性化に対して感受性の特定の細胞型が使用され得、例えば骨芽細胞におけるオステオカルシン発現(これは、グルココルチコイドによってダウンレギュレートされる);PEPCKおよびグルコース-6-リン酸(G-6-Pase)のグルココルチコイド媒介性アップレギュレーションを示す初代肝細胞である。GRE媒介性遺伝子発現はまた、周知のGRE制御性配列(例えば、レポーター遺伝子構築物の上流にトランスフェクトされたマウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター(MMTV))を使用して、トランスフェクト細胞株において実証されている。有用なレポーター遺伝子構築物の例としては、ルシフェラーゼ(luc)、アルカリホスファターゼ(ALP)およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)が挙げられる。転写抑制の機能評価は、単球またはヒト皮膚線維芽細胞などの細胞株において行われ得る。有用な機能的アッセイとしては、IL-1ベータ刺激性IL-6発現;コラゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ-2および様々なケモカイン(MCP-1、RANTES)のダウンレギュレーション;LPS刺激性サイトカイン放出、例えばTNFα;またはトランスフェクト細胞株においてNFkBもしくはAP-1転写因子によって制御される遺伝子の発現を計測するものが挙げられる。
【0089】
全細胞アッセイにおいて検査された化合物はまた、細胞傷害アッセイにおいて検査され得る。細胞傷害アッセイは、感知効果が、非グルココルチコイドレセプター結合細胞効果に起因する程度を決定するために使用される。例示的な実施形態において、細胞傷害アッセイは、構成的に活性な細胞と検査化合物とを接触させることを含む。細胞活性の任意の減少は、細胞傷害効果を示す。
【0090】
3)さらなるアッセイ
本発明の方法において利用される組成物を同定するために使用され得る多くのアッセイのさらなる例示は、インビボにおけるグルココルチコイド活性に基づくアッセイである。例えば、グルココルチコイドによって刺激された細胞におけるDNAへの3H-チミジンの取り込みを阻害する推定GRモジュレーターの能力を評価するアッセイが使用され得る。あるいは、推定GRモジュレーターは、肝癌組織培養GRへの結合について3H-デキサメタゾンと競合(complete)し得る(例えば、Choiら、Steroids 57:313-318,1992を参照のこと)。別の例として、3H-デキサメタゾン-GR複合体の核結合を遮断する推定GRモジュレーターの能力が使用され得る(Alexandrovaら、J.Steroid Biochem.Mol.Biol.41:723-725,1992)。(Jones,Biochem J.204:721-729,1982に記載されているように)推定GRモジュレーターをさらに同定するために、レセプター結合動態によってグルココルチコイドアゴニストとモジュレーターとを区別することができる動態アッセイも使用され得る。
【0091】
別の実例では、抗グルココルチコイド活性を同定するために、Daune,Molec.Pharm.13:948-955,1977;および米国特許第4,386,085号に記載されているアッセイが使用され得る。簡潔に言えば、デキサメタゾンを含む栄養培地中で、副腎切除ラットの胸腺細胞を様々な濃度の検査化合物(推定GRモジュレーター)とともにインキュベートする。3H-ウリジンを細胞培養物に添加し、これをさらにインキュベートし、ポリヌクレオチドへの放射性標識の組み込みの程度を計測する。グルココルチコイドアゴニストは、組み込まれる3H-ウリジンの量を減少させる。したがって、GRモジュレーターは、この効果に拮抗するであろう。
【0092】
iii.選択性
次いで、上記で選択されたGRモジュレーターを選択性アッセイに供して、それらがSGRMであるかを決定する。代表的には、選択性アッセイは、非グルココルチコイドレセプタータンパク質への結合の程度について、インビトロでグルココルチコイドレセプターに結合する化合物を検査することを含む。選択性アッセイは、上記のように、インビトロでまたは細胞ベースのシステムで実施され得る。結合は、抗体、レセプター、酵素などを含む任意の好適な非グルココルチコイドレセプタータンパク質に対して検査され得る。例示的な実施形態において、非グルココルチコイドレセプター結合タンパク質は、細胞表面レセプターまたは核内レセプターである。別の例示的な実施形態において、非グルココルチコイドレセプタータンパク質は、ステロイドレセプター、例えばエストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、アンドロゲンレセプターまたはミネラロコルチコイドレセプターである。
【0093】
MRと比べたGRに対するアンタゴニストの選択性は、当業者に公知の様々なアッセイを使用して計測され得る。例えば、特定のアンタゴニストは、MRと比較してGRに結合するアンタゴニストの能力を計測することによって同定され得る(例えば、米国特許第5,606,021号;同5,696,127号;同5,215,916号;同5,071,773号を参照のこと)。そのような解析は、直接結合アッセイを使用して、または公知のリガンドの存在下における精製GRもしくはMRへの競合結合を評価することによって実施され得る。例示的なアッセイでは、高レベルでグルココルチコイドレセプターまたはミネラコルチコイドレセプターを安定発現する細胞(例えば、米国特許第5,606,021号を参照のこと)を精製レセプターの供給源として使用する。次いで、レセプターに対するリガンドの親和性を直接計測する。次いで、本発明の方法において使用するために、MRと比べてGRに対して少なくとも10倍、100倍、多くの場合には1000倍高い親和性を示すGRモジュレーターを選択する。
【0094】
選択性アッセイはまた、GR媒介性活性を阻害するがMR媒介性活性を阻害しない能力をアッセイすることを含み得る。そのようなGR特異的モジュレーターを同定する1つの方法は、トランスフェクションアッセイを使用して、レポーター構築物の活性化を防止するアンタゴニストの能力を評価することである(例えば、Bocquelら、J.Steroid Biochem Molec.Biol.45:205-215,1993;米国特許第5,606,021号、同第5,929,058号を参照のこと)。例示的なトランスフェクションアッセイでは、レセプターをコードする発現プラスミドと、レセプター特異的制御エレメントに連結されたレポーター遺伝子を含むレポータープラスミドとを、好適なレセプター陰性宿主細胞にコトランスフェクトする。次いで、レポータープラスミドのホルモン応答性プロモーター/エンハンサーエレメントを活性化することができるホルモン(例えば、コルチゾールまたはそのアナログ)の存在下および非存在下で、トランスフェクト宿主細胞を培養する。次に、レポーター遺伝子配列の産物の誘導(すなわち、存在)について、トランスフェクトされ培養された宿主細胞をモニタリングする。最後に、アンタゴニストの存在下および非存在下でレポーター遺伝子の活性を決定することによって、(発現プラスミド上のレセプターDNA配列によってコードされ、トランスフェクトされ培養された宿主細胞において産生される)ホルモンレセプタータンパク質の発現および/またはステロイド結合能力を計測する。GRおよびMRレセプターの公知のアンタゴニストと比較して、化合物のアンタゴニスト活性を決定し得る(例えば、米国特許第5,696,127号を参照のこと)。次いで、参照アンタゴニスト化合物と比べた各化合物について観察された最大応答率として、有効性を報告する。次いで、本明細書中に開示される方法において使用するために、MR、PRまたはARと比べてGRに対して少なくとも100倍、多くの場合には1000倍またはそれを超える活性を示すGRモジュレーターを選択する。
【0095】
本明細書中に開示される方法において使用され得る例示的な非ステロイド性SGRMは、CORT125134、すなわち以下の構造:
【化14】
を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンである。
【0096】
本明細書中に開示される方法において使用され得る別の例示的な非ステロイド性SGRMは、CORT125281、すなわち以下の構造:
【化15】
を有する((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンである。
【0097】
G.薬学的組成物および投与
実施形態において、本発明は、非ACTH分泌膵臓腫瘍を処置するための薬学的組成物であって、薬学的に許容され得る賦形剤とGRMとを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、薬学的に許容され得る賦形剤とSGRMとを含む。好ましい実施形態において、薬学的組成物は、薬学的に許容され得る賦形剤と非ステロイド性SGRMとを含む。
【0098】
GRMおよびSGRM(本明細書中で使用されるとき、GRMおよびSGRMは、非ステロイド性GRMおよび非ステロイド性SGRMを含む)は、多種多様の経口、非経口および局所的剤形で調製され、投与され得る。経口調製物としては、患者による経口摂取に適した、錠剤、丸剤、散剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ロゼンジ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁物などが挙げられる。GRMおよびSGRMはまた、注射によって、すなわち、静脈内に、筋肉内に、皮内に、皮下に、十二指腸内に、または腹腔内に、投与され得る。また、GRMおよびSGRMは、吸入によって、例えば、鼻腔内に投与され得る。さらに、GRMおよびSGRMは、経皮的に投与され得る。したがって、本発明はまた、薬学的に許容され得るキャリアまたは賦形剤と、GRMまたはSGRMとを含む薬学的組成物を提供する。
【0099】
GRMおよびSGRMから薬学的組成物を調製する場合、薬学的に許容され得るキャリアは、固体または液体であり得る。固体の形態の調製物としては、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤および分散性顆粒剤が挙げられる。固体のキャリアは、希釈剤、矯味矯臭剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤または封入材料としても作用し得る1つまたはそれを超える物質であり得る。製剤化および投与のための手法に関する詳細は、科学文献および特許文献に十分に記載されており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Maack Publishing Co,Easton PA(「Remington’s」)の最新版を参照のこと。
【0100】
散剤において、キャリアは、微粉化された固体であり、それは、微粉化された活性な成分、GRMまたはSGRMとともに混合物中に存在する。錠剤において、活性な成分は、必要な結合特性を有するキャリアと好適な比率で混合され、所望の形状およびサイズに圧縮される。
【0101】
散剤および錠剤は、好ましくは5%または10%~70%の活性化合物を含む。好適なキャリアは、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ろう、カカオバターなどである。用語「調製物」は、他のキャリアの有無にかかわらず活性な成分がキャリアに取り囲まれてそれに結合しているカプセルを提供するキャリアとして封入材料を用いた活性化合物の製剤化を含むことを意図する。同様に、カシェ剤およびロゼンジも含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤およびロゼンジは、経口投与に好適な固体剤形として使用され得る。
【0102】
好適な固体賦形剤は、炭水化物またはタンパク質充填剤であり、糖(ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む);トウモロコシ、コムギ、イネ、ジャガイモまたは他の植物由来のデンプン;セルロース(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム);およびゴム(アラビアおよびトラガントを含む);ならびにタンパク質(例えば、ゼラチンおよびコラーゲン)が挙げられるが、これらに限定されない。所望であれば、崩壊剤または可溶化剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム))を加えてもよい。
【0103】
糖衣錠コアには、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/もしくは二酸化チタン、ラッカー溶液ならびに好適な有機溶媒または溶媒混合物も含み得る好適なコーティング剤(例えば、濃縮された糖の溶液)が提供される。生成物の識別のため、または活性な化合物の量(すなわち、投与量)を特徴付けるために、染料または色素が、錠剤または糖衣錠コーティングに加えられてもよい。本発明の薬学的調製物はまた、例えば、ゼラチンからできた押し込み型カプセル、ならびにゼラチンおよびコーティング剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)からできた密封された軟カプセルを使用して、経口的に使用され得る。押し込み型カプセルは、充填剤または結合剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)、潤滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウム)および必要に応じて安定剤と混合されたGRモジュレーターを含み得る。軟カプセルでは、GRモジュレーター化合物は、安定剤を含むまたは含まない好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコール)に溶解または懸濁され得る。
【0104】
液体形態調製物としては、溶液、懸濁物およびエマルジョン、例えば水または水/プロピレングリコール溶液が挙げられる。非経口注射では、液体調製物は、ポリエチレングリコール水溶液の溶液で製剤化され得る。
【0105】
経口使用に好適な水溶液は、活性な成分を水に溶解し、所望により好適な着色料、矯味矯臭剤、安定剤および増粘剤を添加することによって調製され得る。経口使用に適した水性懸濁物は、微粉化された活性な成分を、粘稠性材料(例えば、天然ゴムまたは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴムおよびアラビアゴム)および分散剤または湿潤剤(例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノ-オレエート)またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノ-オレエート)とともに水に分散させることによって、生成され得る。その水性懸濁物は、1つまたはそれを超える保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはp-ヒドロキシ安息香酸n-プロピル)、1つまたはそれを超える着色剤、1つまたはそれを超える矯味矯臭剤および1つまたはそれを超える甘味剤(例えば、スクロース、アスパルテームまたはサッカリン)も含み得る。製剤は、オスモル濃度について調整され得る。
【0106】
使用する直前に経口投与用の液体の形態の調製物に変換されることが意図された固体の形態の調製物も含められる。そのような液体の形態としては、溶液、懸濁物およびエマルジョンが挙げられる。これらの調製物は、活性な成分に加えて、着色剤、香料、安定剤、緩衝剤、人工および天然の甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含み得る。
【0107】
SGRMを植物油(例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油またはやし油)または鉱油(例えば、流動パラフィン);またはこれらの混合物に懸濁することによって、油性懸濁物が製剤化され得る。その油性懸濁物は、増粘剤(例えば、蜜ろう、固形パラフィンまたはセチルアルコール)を含み得る。甘味剤(例えば、グリセロール、ソルビトールまたはスクロース)は、美味な経口調製物を提供するために加えられ得る。これらの製剤は、アスコルビン酸などの酸化防止剤を加えることによって、保存することができる。注射可能な油性ビヒクルの例として、Minto,J.Pharmacol.Exp.Ther.281:93-102,1997を参照のこと。本発明の薬学的製剤は、水中油型エマルジョンの形態でもあり得る。油相は、上に記載された植物油もしくは鉱油またはこれらの混合物であり得る。好適な乳化剤としては、天然に存在するゴム(例えば、アラビアゴムおよびトラガントゴム)、天然に存在するホスファチド(例えば、ダイズレシチン)、脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来するエステルまたは部分エステル(例えば、ソルビタンモノ-オレエート)およびこれらの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノ-オレエート)が挙げられる。エマルジョンは、シロップ剤およびエリキシル剤の製剤におけるように、甘味剤および矯味矯臭剤も含み得る。そのような製剤は、粘滑剤、保存剤または着色剤も含み得る。
【0108】
GRMおよびSGRMは、アプリケータスティック、溶液、懸濁物、エマルジョン、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、散剤およびエアロゾルとして製剤化され、局所経路によって経皮的に送達され得る。
【0109】
GRMおよびSGRMはまた、身体内での緩徐な放出のためにミクロスフェアとしても送達され得る。例えば、ミクロスフェアは、皮下にゆっくり放出する薬物含有ミクロスフェアの皮内注射を介して投与され得る(Rao,J.Biomater Sci.Polym.Ed.7:623-645,1995を参照のこと;生分解性で注射可能なゲル製剤として(例えば、Gao,Pharm.Res.12:857-863,1995を参照のこと);または経口投与用のミクロスフェアとして(例えば、Eyles,J.Pharm.Pharmacol.49:669-674,1997を参照のこと)。経皮的経路と皮内経路の両方が、数週間または数ヶ月間にわたって一定の送達をもたらす。
【0110】
本発明の薬学的製剤は塩として提供され得、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むがこれらに限定されない多くの酸で形成され得る。塩は、水性溶媒または他のプロトン性溶媒中で、対応する遊離塩基形態よりも可溶性である傾向がある。他の場合では、調製物は、4.5~5.5のpH範囲の1mM~50mMヒスチジン、0.1%~2%スクロース、2%~7%マンニトール中の凍結乾燥散剤であり得、使用前に緩衝液と混ぜ合わされる。
【0111】
別の実施形態において、本発明の薬学的製剤は、リポソームを使用することによって送達され得、そのリポソームは、細胞膜と融合するか、またはエンドサイトーシスされ、すなわち、そのリポソームに付着されたリガンド、または細胞の表面膜タンパク質レセプターに結合するオリゴヌクレオチドに直接付着されたリガンドを使用することによってエンドサイトーシスがもたらされる。特に、リポソーム表面が、標的細胞に特異的なリガンドを有するか、または別途、特定の器官に優先的に方向づけられている場合に、リポソームを使用することによって、インビボにおいてGRモジュレーターを標的細胞に送達することに焦点を合わせることができる(例えば、Al-Muhammed,J.Microencapsul.13:293-306,1996;Chonn,Curr.Opin.Biotechnol.6:698-708,1995;Ostro,Am.J.Hosp.Pharm.46:1576-1587,1989を参照のこと)。
【0112】
薬学的調製物は、好ましくは単位剤形である。そのような形態では、調製物は、好適な量の活性な成分、GRMまたはSGRMを含む単位用量に細分される。単位剤形は、別個の量の調製物を含む包装された調製物、例えばバイアルまたはアンプル中の小包に入った錠剤、カプセル剤および散剤であり得る。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤もしくはロゼンジそれ自体であり得るか、またはそれは、包装形態のこれらのいずれかの好適な数であり得る。
【0113】
単位用量調製物中の活性な成分の量は、0.1mg~10000mg、より代表的には1.0mg~6000mg、最も代表的には50mg~500mgで変更または調整され得る。好適な投与量としては、特定の適用および活性な成分の効力に応じて、約1mg、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900または2000mgも挙げられる。組成物はまた、所望により、他の適合性治療剤を含み得る。
【0114】
患者によって要求および耐容される投与量および頻度に応じて、製剤の単回投与または複数回投与が施され得る。製剤は、疾患状態を有効に処置するために十分な量の活性剤を提供するべきである。したがって、1つの実施形態において、GRMの経口投与のための薬学的製剤は、約0.01~約150mg/キログラム体重/日(mg/kg/日)の1日量である。いくつかの実施形態において、1日量は、約1.0~100mg/kg/日、5~50mg/kg/日、10~30mg/kg/日および10~20mg/kg/日である。特に、解剖学的に離れた部位、例えば脳脊髄液(CSF)空間に薬物を投与する場合、経口投与、血流、体腔または器官の内腔への投与とは対照的に、より低投与量が使用され得る。局所投与では、実質的により高投与量が使用され得る。非経口的に投与可能な製剤を調製するための実際の方法は、当業者に公知であるかまたは明らかであり、前掲のRemington’sなどの刊行物により詳細に記載されている。Nieman,In“Receptor Mediated Antisteroid Action,”Agarwalら、eds.,De Gruyter,New York(1987)も参照のこと。
【0115】
非ACTH分泌膵臓腫瘍の腫瘍負荷を減少させるか、または腫瘍の症状を別様に改善するためのGRMまたはSGRMによる処置の継続期間は、被験体における状態の重症度およびGRMまたはSGRMに対する被験体の反応に応じて変動し得る。いくつかの実施形態において、GRMおよびSGRMは、約1週間~104週間(2年間)、より代表的には約6週間~80週間、最も代表的には約9~60週間投与され得る。好適な投与期間としては、5~9週間、5~16週間、9~16週間、16~24週間、16~32週間、24~32週間、24~48週間、32~48週間、32~52週間、48~52週間、48~64週間、52~64週間、52~72週間、64~72週間、64~80週間、72~80週間、72~88週間、80~88週間、80~96週間、88~96週間および96~104週間も挙げられる。好適な投与期間としては、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、25、30、32、35、40、45、48、50、52、55、60、64、65、68、70、72、75、80、85、88、90、95、96、100および104週間も挙げられる。一般に、GRMまたはSGRMの投与は、臨床的に有意な減少または改善が観察されるまで継続されるべきである。本発明に従ったGRMまたはSGRMによる処置は、2年間またはそれを超える間継続し得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、GRMまたはSGRMの投与は連続的ではなく、1つまたはそれを超える期間にわたって中断され得、続いて、1つまたはそれを超える期間で投与が再開される。投与が中断する好適な期間としては、5~9週間、5~16週間、9~16週間、16~24週間、16~32週間、24~32週間、24~48週間、32~48週間、32~52週間、48~52週間、48~64週間、52~64週間、52~72週間、64~72週間、64~80週間、72~80週間、72~88週間、80~88週間、80~96週間、88~96週間および96~100週間が挙げられる。投与が中断する好適な期間としては、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、25、30、32、35、40、45、48、50、52、55、60、64、65、68、70、72、75、80、85、88、90、95、96および100週間も挙げられる。
【0117】
投与レジメンはまた、当技術分野で周知の薬物動態パラメータ、すなわち吸収速度、バイオアベイラビリティ、代謝、クリアランスなどを考慮する(例えば、Hidalgo-Aragones(1996)J.Steroid Biochem.Mol.Biol.58:611-617;Groning(1996)Pharmazie 51:337-341;Fotherby(1996)Contraception 54:59-69;Johnson(1995)J.Pharm.Sci.84:1144-1146;Rohatagi(1995)Pharmazie 50:610-613;Brophy(1983)Eur.J.Clin.Pharmacol.24:103-108;the latest Remington’s、前掲を参照のこと)。最新技術は、臨床医が、個々の各患者、GRモジュレーターおよび処置される疾患または状態のための投与レジメンを決定することを可能にする。
【0118】
SGRMは、グルココルチコイドレセプターのモジュレートにおいて有用であることが公知の他の活性剤と、または単独では有効であり得ないが活性剤の有効性に寄与し得る補助剤と組み合わせて使用され得る。
【0119】
いくつかの実施形態において、共投与は、1つの活性剤GRMまたはSGRMを、第2の活性剤の0.5、1、2、4、6、8、10、12、16、20または24時間以内に投与することを含む。共投与は、2つの活性剤を同時に、ほぼ同時に(例えば、互いに約1、5、10、15、20または30分以内に)または任意の順序で逐次に投与することを含む。いくつかの実施形態において、共投与は、共製剤化(すなわち、両活性剤を含む単一の薬学的組成物を調製すること)によって達成され得る。他の実施形態において、活性剤は、別々に製剤化され得る。別の実施形態において、活性剤および/または補助剤は、互いに連結またはコンジュゲートされ得る。
【0120】
本発明のGRモジュレーターを含む薬学的組成物を許容され得るキャリア中に製剤化した後、それを好適な容器に入れ、示された状態の処置のためにラベルを付し得る。GRMまたはSGRMの投与のために、そのようなラベルは、例えば、投与の量、頻度および方法に関する指示を含むであろう。
【0121】
本発明の薬学的組成物は塩として提供され得、限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含む多くの酸で形成され得る。塩は、水性溶媒中で、または対応する遊離塩基形態である他のプロトン性溶媒中でより可溶性である傾向がある。他の場合において、調製物は、4.5~5.5のpH範囲で1mM~50mMヒスチジン、0.1%~2%スクロース、2%~7%マンニトールの凍結乾燥散剤であり得、使用前に緩衝液と組み合わされる。
【0122】
別の実施形態において、本発明の組成物は、非経口投与、例えば静脈内(IV)投与または体腔もしくは器官の内腔への投与に有用である。投与用の製剤は、一般に、薬学的に許容され得るキャリアに溶解された本発明の組成物の溶液を含む。用いられ得る許容され得るビヒクルおよび溶媒のうちに、水およびリンガー溶液、等張性塩化ナトリウムがある。さらに、滅菌された固定油が、慣習的に溶媒または懸濁媒として使用され得る。この目的のために、合成モノ-またはジグリセリドを含む任意の無刺激の固定油が使用され得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製において同様に使用され得る。これらの溶液は、滅菌されており、一般に、望ましくない物質を含まない。これらの製剤は、従来の周知の滅菌手法によって滅菌され得る。製剤は、生理学的条件に近づけるために必要とされるような薬学的に許容され得る補助物質(例えば、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど)を含み得る。これらの製剤における本発明の組成物の濃度は、大きく変動し得、選択される特定の投与様式および患者のニーズに従って、主に、流体体積、粘度、体重などに基づいて選択され得る。静脈内(IV)投与の場合、製剤は、滅菌された注射可能な調製物(例えば、滅菌された注射可能な水性または油性の懸濁物)であり得る。この懸濁物は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用する公知の技術にしたがって製剤化され得る。滅菌された注射可能な調製物はまた、無毒性の非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒中の滅菌された注射可能な溶液または懸濁物(例えば、1,3-ブタンジオールの溶液)であり得る。
【0123】
H.化学療法剤
本発明のSGRMと組み合わせて使用するために好適な化学療法剤としては、癌細胞を死滅させるかまたは癌細胞成長を阻害する特性を有する薬剤、例えば、米国特許出願公開第20150218274号およびさらにhttp://chemocare.com/chemotherapy/what-is-chemotherapy/types-of-chemotherapy.aspxに開示されているものが挙げられる。これらの薬剤としては、限定されないが、抗微小管剤(例えば、タキサンおよびビンカアルカロイド)、トポイソメラーゼインヒビターおよび代謝拮抗物質(例えば、そのように作用するヌクレオシド類似体、例えばゲムシタビン)、有糸分裂インヒビター、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂インヒビター、アントラサイクリン、挿入剤、シグナル伝達経路を妨害することができる薬剤、アポトーシスを促進する薬剤、プロテオソームインヒビターなどが挙げられる。
【0124】
アルキル化剤は、細胞の休止期において最も活性がある。これらの種類の薬物は、細胞周期非特異的である。本発明のSGRMと組み合わせて使用され得る例示的なアルキル化剤としては、限定されないが、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素およびトリアゼン):ウラシルマスタード(Aminouracil Mustard(登録商標)、Chlorethaminacil(登録商標)、Demethyldopan(登録商標)、Desmethyldopan(登録商標)、Haemanthamine(登録商標)、Nordopan(登録商標)、Uracil nitrogen Mustard(登録商標)、Uracillost(登録商標)、Uracilmostaza(登録商標)、Uramustin(登録商標)、Uramustine(登録商標))、クロルメチン(Mustargen(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Clafen(登録商標)、Endoxan(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(商標))、イホスファミド(Mitoxana(登録商標))、メルファラン(Alkeran(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、ピポブロマン(Amedel(登録商標)、Vercyte(登録商標))、トリエチレンメラミン(Hemel(登録商標)、Hexalen(登録商標)、Hexastat(登録商標))、トリエチレンチオホスホルアミン、チオテパ(Thioplex(登録商標))、ブスルファン(Busilvex(登録商標)、Myleran(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、ロムスチン(CeeNU(登録商標))、ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標))およびダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))が挙げられる。さらなる例示的なアルキル化剤としては、限定されないが、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標));テモゾロミド(Temodar(登録商標)およびTemodal(登録商標));ダクチノマイシン(アクチノマイシンDとしても公知、Cosmegen(登録商標));メルファラン(L-PAMとしても公知、L-サルコリシン(sarcolysin)およびフェニルアラニンマスタード、Alkeran(登録商標));アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)としても公知、Hexalen(登録商標));カルムスチン(BiCNU(登録商標));ベンダムスチン(Treanda(登録商標));ブスルファン(Busulfex(登録商標)およびMyleran(登録商標))カルボプラチン(Paraplatin(登録商標));ロムスチン(CCNUとしても公知、CeeNU(登録商標));シスプラチン(CDDPとしても公知、Platinol(登録商標)およびPlatinol(登録商標)-AQ);クロラムブシル(Leukeran(登録商標));シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)およびNeosar(登録商標));ダカルバジン(DTIC、DICおよびイミダゾールカルボキサミドとしても公知、DTIC-Dome(登録商標));アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)としても公知、Hexalen(登録商標));イホスファミド(Ifex(登録商標));プレドヌムスチン(Prednumustine);プロカルバジン(Matulane(登録商標));メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード、ムスチン(mustine)および塩酸メクロロエタミン(mechloroethamine hydrochloride)としても公知、Mustargen(登録商標));ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標));チオテパ(チオホスホアミド、TESPAおよびTSPAとしても公知、Thioplex(登録商標));シクロホスファミド(Endoxan(登録商標)、Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(登録商標));およびベンダムスチンHCl(Treanda(登録商標))が挙げられる。
【0125】
抗腫瘍抗生物質は、土壌真菌Streptomycesの種によって産生される天然産物から得られる化学的薬剤である。これらの薬物は、細胞周期の複数の段階で作用し、細胞周期特異的と考えられる。限定されないが、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ミトキサントロンおよびイダルビシン)、クロモマイシン(例えば、ダクチノマイシンおよびプリカマイシン)、マイトマイシンおよびブレオマイシンを含むいくつかの種類の抗腫瘍抗生物質がある。
【0126】
代謝拮抗物質は、細胞周期特異的な化学療法処置のタイプである。細胞がこれらの代謝拮抗物質を細胞代謝に取り込むと、それらは分裂することができない。これらのクラスの化学療法剤としては、葉酸アンタゴニスト、例えばメトトレキサート;ピリミジンアンタゴニスト、例えば5-フルオロウラシル、フロクスウリジン(Foxuridine)、シタラビン、カペシタビンおよびゲムシタビン;プリンアンタゴニスト、例えば6-メルカプトプリンおよび6-チオグアニン;アデノシンデアミナーゼインヒビター、例えばクラドリビン、フルダラビン、ネララビンおよびペントスタチンが挙げられる。
【0127】
本発明のSGRMと組み合わせて使用され得る例示的なアントラサイクリンとしては、例えば、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標)およびRubex(登録商標));ブレオマイシン(Lenoxane(登録商標));ダウノルビシン(塩酸ダウノルビシン(dauorubicin)、ダウノマイシンおよび塩酸ルビドマイシン(rubidomycin hydrochloride)、Cerubidine(登録商標));ダウノルビシンリポソーム(クエン酸ダウノルビシンリポソーム、DaunoXome(登録商標));ミトキサントロン(DHAD、Novantrone(登録商標));エピルビシン(Ellence);イダルビシン(Idamycin(登録商標)、Idamycin PFS(登録商標));マイトマイシンC(Mutamycin(登録商標));ゲルダナマイシン;ハービマイシン;ラビドマイシン(Ravidomycin);およびデスアセチルラビドマイシン(Desacetylravidomycin)が挙げられる。
【0128】
抗微小管剤としては、ビンカアルカロイドおよびタキサンが挙げられる。本発明のSGRMと組み合わせて使用され得る例示的なビンカアルカロイドとしては、限定されないが、酒石酸ビノレルビン(Navelbine(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))およびビンデシン(Eldisine(登録商標)));ビンブラスチン(硫酸ビンブラスチン、ビンカロイコブラスチンおよびVLBとしても公知、Alkaban-AQ(登録商標)およびVelban(登録商標))およびビノレルビン(Navelbine(登録商標))が挙げられる。本発明のSGRMと組み合わせて使用され得る例示的なタキサンとしては、限定されないが、パクリタキセルおよびドセタキセルが挙げられる。パクリタキセル剤の非限定的な例としては、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(Abraxis Bioscienceによって販売されているABRAXANE)、ドコサヘキサエン酸結合パクリタキセル(Protargaによって販売されているDHA-パクリタキセル、タキソプレキシン)、ポリグルタメート結合パクリタキセル(Cell Therapeuticによって販売されているPG-パクリタキセル、パクリタキセルポリグルメックス、CT-2103、XYOTAX)、腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)、ANG105(ImmunoGenによって販売されている、3分子のパクリタキセルに結合したAngiopep-2)、パクリタキセル-EC-1(erbB2認識ペプチドEC-1に結合したパクリタキセル;Liら、Biopolymers(2007)87:225-230を参照のこと)、およびグルコースコンジュゲートパクリタキセル(例えば、2’-パクリタキセルメチル2-グルコピラノシルスクシネート、Liuら、Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters(2007)17:617-620を参照のこと)が挙げられる。
【0129】
本発明のSGRMと組み合わせて使用され得る例示的なプロテオソームインヒビターとしては、限定されないが、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標));カルフィルゾミブ(PX-171-007、(S)-4-メチル-N--((S)-1-(((S)-4-メチル-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソペンタン-2-イル)アミノ)-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル)-2-((S)-2-(2-モルホリノアセトアミド)-4-フェニルブタンアミド)-ペンタンアミド);マリゾミブ(NPI-0052);クエン酸イクサゾミブ(MLN-9708);デランゾミブ(CEP-18770);およびO-メチル-N-[(2-メチル-5-チアゾリル)カルボニル]-L-セリル-O-メチル-N-[(1S)-2-[(-2R)-2-メチル-2-オキシラニル]-2-オキソ-1-(フェニルメチル)エチル]-L-セリンアミド(ONX-0912)が挙げられる。
【0130】
いくつかの実施形態において、化学療法剤は、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ストレプトゾシン、カルムスチン、ロムスチン、ベンダムスチン、ウラムスチン、エストラムスチン、カルムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、マンノスルファンブスルファン、ダカルバジン、テモゾロミド、チオテパ、アルトレタミン、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン、シタラビン、フロクスリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、ペメトレキセド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、SN-38、ARC、NPC、カンポテシン、トポテカン、9-ニトロカンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、ルビフェン(rubifen)、ギマテカン(gimatecan)、ジフルモテカン(diflomotecan)、BN80927、DX-895 If、MAG-CPT、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、アッカチンIII(accatin III)、10-デアセチルタキソール、7-キシロシル-10-デアセチルタキソール、セファロマンニン、10-デアセチル-7-エピタキソール、7-エピタキソール、10-デアセチルバッカチンIII、10-デアセチルセファロマンニン、ゲムシタビン、イリノテカン、アルブミン結合パクリタキセル、オキサリプラチン、カペシタビン、シスプラチン、ドセタキセル、イリノテカンリポソームおよびエトポシドならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0131】
特定の実施形態において、化学療法剤は、経験的最適化を条件として米国食品医薬品局(FDA)または他の規制機関によって承認されている用量およびスケジュールによって導かれ得る用量およびスケジュールで投与される。いくつかの場合において、化学療法剤は、約100~1000mg、例えば約200mg~800mg、約300mg~700mgまたは約400mg~600mg、例えば約200mg、300mg、400mg、500mg、600mgまたは700mgの用量で投与される。投与スケジュールは、例えば、毎週、5日ごと、4日ごと、1日おきから毎日、1日2回、または1日3回まで変動し得る。1つの実施形態において、化学療法剤は、処置期間の全部または一部にわたり毎日約100mg~600mg、例えば毎日、1日おきまたは4日ごとに約100mg、200mg、260mg、300mg、400mgまたは600mgの経口用量または静脈内用量で投与される。いくつかの実施形態において、化学療法剤はタキサンであり、本発明の方法にしたがって、任意の標準用量、例えばFDAによって承認されているタキサン用量で使用され得る。様々な実施形態において、タキサンはnab-パクリタキセルであり、28日サイクルごとの1日目、8日目および15日目に30分間にわたって静脈内注入として80mg~125mg/m2体表面積の範囲の用量で投与される。
【0132】
なおさらなる実施形態において、1つを超える化学療法剤は、処置期間の全体または一部の間に同時に、または任意の順序で逐次に投与され得る。2つの薬剤は、同じまたは異なる投与レジメンにしたがって投与され得る。
【0133】
I.併用療法
GRMまたはSGRMと化学療法剤との様々な組み合わせ(または、そのような薬剤と化合物との組み合わせ)は、患者の腫瘍負荷を減少させるために用いられ得る。「併用療法」または「と組み合わせて」とは、治療剤を同時に投与しおよび/または一緒に送達するために製剤化しなければならないことを意味するものではないが、これらの送達方法は、本明細書の記載の範囲内である。GRMまたはSGRMおよび化学療法剤は、同じまたは異なる投与レジメンにしたがって投与され得る。いくつかの実施形態において、GRMまたはSGRMおよび化学療法剤は、処置期間の全体または一部の間に任意の順序で逐次に投与される。いくつかの実施形態において、GRMまたはSGRMおよび抗癌剤は、同時にまたはほぼ同時に(例えば、互いに約1、5、10、15、20または30分以内に)投与される。併用療法の非限定的な例は以下のとおりであり、GRMまたはSGRMおよび化学的薬剤の投与は、例えば、GRMまたはSGRMは「A」であり、化学療法レジメンの一環として与えられる抗癌剤または化合物は「B」である:
【0134】
A/B/AB/A/BB/B/AA/A/BA/B/BB/A/AA/B/B/B B/A/B/B
【0135】
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
【0136】
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0137】
患者への治療用化合物または薬剤の投与は、もしあれば治療の毒性を考慮して、そのような化合物を投与するための一般的なプロトコルに従うであろう。外科的介入もまた、記載されている治療と組み合わせて適用され得る。
【0138】
GRMまたはSGRMを伴う本方法は、他の処置手段、例えば手術、照射、標的化療法、免疫療法、成長因子インヒビターの使用、または抗血管新生因子と組み合わされ得る。
【0139】
J.腫瘍負荷の減少における改善の評価
本明細書中に開示されるGRMまたはSGRM療法は腫瘍負荷を減少させ、非ACTH分泌膵臓腫瘍を有する患者に有益な臨床転帰を付与し得る。これらの反応を計測するための方法は、例えば、ctep.cancer.gov/protocolDevelopment/docs/recist_guideline.pdfにおいて入手可能な固形癌効果判定基準(「RECIST」)ガイドラインに記載されているように、癌治療の分野における当業者に周知である。
【0140】
1つのアプローチでは、腫瘍負荷は、腫瘍特異的バイオマーカーの発現をアッセイすることによって計測される。このアプローチは、転移性腫瘍に特に有用である。腫瘍特異的バイオマーカーは、癌細胞にユニークであるかまたは非癌細胞と比較してはるかに豊富であるタンパク質または他の分子である。膵臓癌のための有用なバイオマーカーは公知であり、例えば、米国特許第6,720,413号に開示されているCaSM遺伝子、およびMisekら、J.Natl.Compr.Canc.Netw.2007;5(10):1034-1041に開示されているp53、MUC1、Rad51、DEADボックスタンパク質48、カルレティキュリン、ビメンチン、オステオポンチンなどである。いくつかの場合において、膵臓腫瘍細胞によって放出される外来物質であるCA19-9のレベルが、処置を通して評価される。CA19-9値の減少は、処置が有効であり、体内の腫瘍または癌の量が減少していることを示し得る。膵臓癌の処置後のCA19-9レベルの低下とそれに続くその後の上昇は、腫瘍の再発または進行を示唆し得る。https://www.pancan.org/facing-pancreatic-cancer/diagnosis/CA19-9を参照のこと。
【0141】
腫瘍特異的遺伝子マーカーの発現レベルを計測する方法は、周知である。いくつかの実施形態において、血液サンプルまたは腫瘍組織から遺伝子マーカーのmRNAを単離し、リアルタイム逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を実施して、遺伝子マーカーの発現を定量する。いくつかの実施形態において、ウエスタンブロットまたは免疫組織化学解析を実施して、腫瘍特異的遺伝子マーカーのタンパク質発現を評価する。代表的には、本発明の併用療法の経時的に採取された複数のサンプルにおいて、腫瘍特異的遺伝子マーカーのレベルを計測し、レベルの減少は、腫瘍負荷の減少と相関する。
【0142】
別のアプローチでは、本明細書中に開示される併用療法による腫瘍負荷の減少は、腫瘍サイズの減少または体内の癌の量の減少によって示される。腫瘍サイズの計測は、代表的には、イメージングベースの手法によって達成される。例えば、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンは、既存の病変の成長または新たな病変もしくは腫瘍転移の発生のいずれかを特定することによって、腫瘍の縮小または成長だけではなく疾患の進行についての正確な信頼できる解剖学的情報を提供し得る。
【0143】
さらに別のアプローチでは、腫瘍負荷の減少は、機能的および代謝的イメージング手法によって評価され得る。これらの手法は、灌流、酸素化および代謝の変化を観察することによって、治療応答の早期評価を提供し得る。例えば、18F-FDG PETは、放射性標識グルコースアナログ分子を使用して、組織代謝を評価する。腫瘍は、代表的には、グルコースの取り込みの上昇を有し、腫瘍組織代謝の減少に対応する値の変化は、腫瘍負荷の減少を示す。同様のイメージング手法は、Kangら、Korean J.Radiol.(2012)13(4)371-390に開示されている。
【0144】
本明細書中に開示される治療を受けている患者は、様々な程度の腫瘍負荷減少を示し得る。いくつかの場合において、患者は、「疾患の証拠がない(NED)」とも称される完全奏効(Complete Response)(CR)を示し得る。CRは、検査、身体検査およびスキャンによって示されるように、すべての検出可能な腫瘍が消失したことを意味する。いくつかの場合において、本明細書中に開示される併用療法を受けている患者は、総腫瘍体積の少なくとも50%の減少にほぼ対応する部分応答(Partial Response)(PR)を経験し得るが、一部の残存疾患が依然として残っている証拠がある。いくつかの場合において、PRを有すると分類された少数の患者が、実際にはCRを有し得るように、深部の部分応答における残存疾患は、実際には、死腫瘍または瘢痕であり得る。また、処置中に縮小を示す多くの患者は、継続的な処置によってさらなる縮小を示し、CRを達成し得る。いくつかの場合において、併用療法を受けている患者は、軽度応答(Minor Response)(MR)(これは、総腫瘍体積の25%超かつ50%未満(50%はPRになる)の少量の縮小を概ね意味する)を経験し得る。いくつかの場合において、併用療法を受けている患者は、安定病態(SD)(これは、腫瘍がほぼ同じサイズであり続けることを意味するが、少量の成長(代表的には、20または25%未満)または少量の縮小(軽度応答が起らない限り、PR未満のあらゆるもの。そうなれば、SDは、代表的には25%未満と定義される)を含み得る)を示し得る。
【0145】
併用療法からの所望の有益な結果または所望の臨床結果としては、例えば、末梢器官への癌細胞浸潤の減少(すなわち、ある程度の減速および/または停止);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の減速および/または停止);奏効率(RR)の増加;応答期間の増加;癌に関連する症状のうちの1つもしくはそれより多くのある程度の軽減;疾患の処置に必要な他の医薬の用量の減少;疾患の進行の遅延;ならびに/または患者の生存の延長および/もしくは生活の質の改善も挙げられ得る。これらの効果を評価するための方法は周知であり、ならびに/または例えばcancerguide.org/endpoints.htmlおよび前掲のRECISTガイドラインに開示されている。
【0146】
本明細書中で引用されるすべての特許、特許公開公報、刊行物および特許出願は、個々の各刊行物または特許出願が参照により援用されると具体的かつ個別に示されているかのように、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0147】
理解を明確にするために例証および実施例によって、上記本発明をある程度詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱せずに、本発明に対して特定の変更および改変を行い得ることは、本発明の教示を考慮して、当業者には容易に明らかであろう。
【実施例】
【0148】
以下の実施例は、限定のためではなく例証のために提供されているに過ぎない。当業者であれば、本質的に同様の結果を得るために変更または改変され得る様々な重要ではないパラメータを容易に認識するであろう。
【0149】
実施例1.HepG2チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)アッセイ
以下のプロトコルでは、HepG2細胞(ヒト肝臓肝細胞癌細胞株;ECACC,UK)におけるデキサメタゾンによるTATの誘導を計測するためのアッセイが記載されている。10%(v/v)ウシ胎仔血清;2mM L-グルタミンおよび1%(v/v)NEAAを補充したMEME培地を使用して、HepG2細胞を37℃、5%/95%(v/v)CO2/空気で培養する。次いで、HepG2細胞を計数し、フェノールレッド、10%(v/v)炭ストリップFBS、2mM L-グルタミンを含まないRPMI1640中で細胞0.125×106個/mlの密度が得られるように調整し、細胞25,000個/ウェルで200μlを96ウェル滅菌組織培養マイクロタイタープレートに播種し、37℃、5%CO2で24時間インキュベートする。
【0150】
次いで、成長培地を除去し、アッセイ培地{フェノールレッド、2mM L-グルタミン+10μMフォルスコリンを含まないRPMI1640}と交換する。次いで、100nMデキサメタゾンのチャレンジに対して、検査化合物をスクリーニングする。次いで、10mMストックから100%(v/v)ジメチルスルホキシド(dimethylsupfoxide)で化合物を連続半対数希釈する。次いで、8点半対数希釈曲線を作成し、続いて、アッセイ培地を1:100希釈して10×最終アッセイの化合物濃度を求め、この結果、最終アッセイの化合物濃度は、0.1%(v/v)ジメチルスルホキシド中10~0.003μMの範囲となった。
【0151】
マイクロタイタープレート中で、検査化合物を細胞とともに37℃、5/95(v/v)CO2/空気で30分間プレインキュベートした後、100nMデキサメタゾンを添加し、続いて20時間経過させて最適なTAT誘導を可能にした。
【0152】
次いで、プロテアーゼインヒビターカクテルを含む30μlの細胞溶解緩衝液で、HepG2細胞を4℃で15分間溶解する。次いで、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中の5.4mMチロシンナトリウム塩、10.8mM α-ケトグルタル酸塩および0.06mMピリドキサール5’リン酸塩を含む155μlの基質混合物を添加し得る。37℃で2時間インキュベートした後、15μlの10M水酸化カリウム水溶液の添加によって反応を停止させ、プレートを37℃でさらに30分間インキュベートし得る。λ340nmの吸光度によって、TAT活性生成物を計測し得る。
【0153】
化合物濃度に対する(100nMデキサメタゾンTAT刺激に対して正規化した)%阻害をプロットし、データを4パラメータロジスティック方程式にフィッティングすることによって、IC50値を算出し得る。アンタゴニストが、デキサメタゾンに関する競合インヒビターであると仮定し、ChengおよびPrusoff方程式を使用して、IC50値をKi(平衡解離定数)に変換し得る。
【0154】
実施例2.CORT125134と化学療法剤との併用療法を使用した腫瘍成長の減少
ヒト膵臓癌腫細胞(MIA-PaCa-2)は、American Type Cell Collection(ATCC)から購入した。10%(v/v)熱不活性化ウシ胎仔血清および2.5%ウマ血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、細胞を37℃で成長させた。細胞の懸濁物を5~6週齢の免疫無防備状態の雌性マウス(Balbc/cヌード)の左脇腹に細胞300万個/マウスで皮下注射した。それらが100~200立方ミリメートル(mm3)の体積に達するまで、腫瘍を成長させた。次いで、マウスをマウス10匹/群の4つの群に分け、以下のように化合物またはビヒクルで処置した。ビヒクルまたはパクリタキセルを静脈内投与し、SGRM、すなわちCORT125134およびCORT125281を経口投与した。SGRMをビヒクル((10%ジメチルスルホキシド(DMSO)、0.1%Tween80(ポリエチレングリコールソルビタンモノオレアート(ポリソルベート80))および89.9%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(0.5%))で投与した。グループ1には、化合物ビヒクル(10%DMSO、0.1%Tween80および89.9%HPMC(0.5%))を毎日投与した。グループ2には、7.5mg/kgのパクリタキセルを4日ごとに投与した(「Q4D」)。グループ3には、7.5mg/kgのパクリタキセルをQ4Dで投与し、パクリタキセルの投与日の前の日およびパクリタキセルの投与日と同じ日に30mg/kgのCORT125134を投与した。グループ4には、7.5mg/kgのパクリタキセルをQ4Dで投与し、パクリタキセルの投与日の前の日およびパクリタキセルの投与日と同じ日に30mg/kgのCORT125281を投与した。
【0155】
電子カリパスを用いて、腫瘍の最長(L)および最短(S)直径を週3回計測し、式V=0.5a×b
2(式中、aおよびbは、それぞれ腫瘍の長い直径および短い直径である)を使用して、腫瘍体積を算出した。腫瘍成長データは
図1に示されており、各マウス群の平均投与前腫瘍体積と比較した平均腫瘍体積が、処置開始以来の腫瘍成長の日数に対してプロットされている。結果は、パクリタキセルとSGRM(すなわち、CORT125134またはCORT125281)との組み合わせが、腫瘍成長の減少においてパクリタキセル群よりも優れていることを示している。パクリタキセルとCORT125134との組み合わせで処置したマウスは、最も有意な腫瘍成長減少を示した。
【0156】
実施例3.SGRMおよび化学療法剤による膵臓癌を有する患者の処置
代表的な膵臓患者は、代表的には背部に拡散する上腹部痛を訴え得る。そのような患者は、食欲不振、吐き気および嘔吐のエピソードを経験し得、有意な体重減少を受け得る。CTスキャンは、膵臓中の腫瘍の存在を示し得る。組織学的分析によって、外分泌膵臓腫瘍の存在を確認し得る。血中ACTHレベルは、ACTHの正常範囲内であり得る。28日サイクルごとの1日目、8日目および15日目に30分間にわたって静脈内注入として80mg/平方メートル体表面積の用量のnab-パクリタキセルの静脈内注入と組み合わせて、200mgの用量のCORT125134で、そのような患者を8週間にわたって1日1回処置し得る。そのような処置前、処置中および処置後に、強化MRIを使用して、腫瘍負荷をモニタリングし得る。イメージング結果は、腫瘍のサイズが徐々に減少することを示し得る;処置期間の終了時において、そのような減少は50%を超え得る。
【0157】
実施例4.複数の過去の化学療法処置に対する腫瘍進行後における、SGRMおよび化学療法剤による進行膵臓癌を有する患者の処置
1サイクル当たり4週間のうち3週間にわたる毎週nab-パクリタキセル注入と組み合わせた100mgのGRアンタゴニストCORT125134の毎日投与の有効性を評価する臨床研究において、膵臓の転移性腺癌と診断された39歳の患者が参加した。患者の以前の処置中または処置前に得られた腫瘍組織サンプルは高いGR発現を有し、細胞の90%がGRについて染色され、高強度の染色が大部分であることが免疫組織化学によって見出された。このGRアンタゴニストとnab-パクリタキセルとの併用処置を受ける前、患者は、複数の化学療法による処置を以前に受けていた;ゲムシタビン単剤療法;5-フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカンおよびオキサリプラチンによる8ヶ月間の併用化学療法処置(FOLFIRINOX処置);nab-パクリタキセルと組み合わせたゲムシタビンによる5ヶ月間の処置;ならびに5-フルオロウラシル、ロイコボリン(leuvocorin)および塩酸イリノテカンによる4ヶ月間の併用化学療法処置(FOLFIRI処置)。これらの過去の処置は失敗であった:これらの過去の化学療法処置にもかかわらず、患者の癌は進行した。
【0158】
これまで、この患者は、1サイクル当たり4週間のうち3週間にわたる毎週nab-パクリタキセル注入と組み合わせた毎日100mgのCORT125134の併用処置を8ヶ月間(8サイクル)受けていた。患者は、CORT125134とnab-パクリタキセルとの組み合わせによるこの処置に対して部分応答(PR)を経験しており、この処置にある程度良好に耐容性を示した。3ヶ月目/サイクルの処置において、腫瘍体積は、研究開始時に計測した腫瘍体積と比較して約40%減少したことが観察された(コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを使用して、体積計測を実施した)。1ヶ月後に再度スキャンしたところ、腫瘍体積は依然として、ベースライン体積と比較して約40%減少したので、PR状態が確認された。7ヶ月目の処置の間に、さらなるスキャンも実施し、患者は、(ベースラインと比較して)腫瘍体積の40%減少を保持していたことが見出された。患者は依然として処置中であり、処置に対して良好に耐容性を示し続けている。
【0159】
要約すると、この進行膵臓癌患者は、8ヶ月間の処置の間に持続的な部分応答を達成することによって、優れた臨床反応を示した。患者は、CORT125134およびnab-パクリタキセルによる処置に良好に耐容性を示し、さらなる処置サイクルを受け続けている。以前に、この患者は、nab-パクリタキセルおよびゲムシタビンの組み合わせによる処置を含む過去の化学療法中に腫瘍の有意な成長/進行を経験していたことは注目に値する。したがって、この患者の進行膵臓癌の処置において、1サイクル当たり4週間のうち3週間にわたる毎週nab-パクリタキセル注入と毎日100mgのCORT125134との組み合わせは、腫瘍体積の退縮をもたらし、nab-パクリタキセル+ゲムシタビンによる処置よりも長期の反応を提供した。