(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】Vテンショナ及び無端駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 7/12 20060101AFI20220113BHJP
F02B 67/06 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
F16H7/12 A
F02B67/06 A
(21)【出願番号】P 2019513909
(86)(22)【出願日】2017-09-13
(86)【国際出願番号】 CA2017051078
(87)【国際公開番号】W WO2018049521
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-07-22
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504039362
【氏名又は名称】リテンズ オートモーティヴ パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー マイケル ビー
(72)【発明者】
【氏名】マー ウェイ
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/085917(WO,A1)
【文献】特開2006-200639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/12
F02B 67/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端駆動部材用テンショナであって、
近位端と遠位端を有し、前記近位端で固定構造体に取り付け可能な基部と、
共通軸線を中心に前記基部に対して枢動可能な第1のテンショナアームと、
前記共通軸線から離間した第1のプーリー軸線を中心に前記第1のテンショナアーム上で回転するように取り付けられた第1のテンショナプーリーと、
前記共通軸線を中心に前記基部に対して枢動可能な第2のテンショナアームと、
前記共通軸線から離間し前記第1のプーリー軸線から離間した第2のプーリー軸線を中心に前記第2のテンショナアーム上で回転するように取り付けられた第2のテンショナプーリーと、
前記第1及び第2のテンショナプーリーを互いに向かって付勢するように前記第1及び第2のテンショナアームの間に係合されるテンショナ付勢部材と、
前記第1のテンショナアームと前記基部との間で半径方向に位置決めされた第1の半径方向減衰部分と、第1の軸方向減衰部分とを含む第1のテンショナアーム減衰システムであって、前記第1の半径方向減衰部分及び前記第1の軸方向減衰部分は、前記第1のテンショナアームの移動に対して減衰を行うように協働する、第1のテンショナアーム減衰システムと、
前記第2のテンショナアームと前記基部との間で半径方向に位置決めされた第2の半径方向減衰部分と、第2の軸方向減衰部分とを含む第2のテンショナアーム減衰システムであって、前記第2の半径方向減衰部分及び前記第2の軸方向減衰部分は、前記第2のテンショナアームの移動に対して減衰を行うように協働する、第2のテンショナアーム減衰システムと、
前記第1及び第2のテンショナアーム間に係合され、第1及び第2の減衰システム付勢力をそれぞれ前記第1及び第2の軸方向減衰部分に加える減衰システム付勢部材であって、前記第1及び第2の減衰システム付勢力は、軸方向で互いに反対方向に向けられる、減衰システム付勢部材と、を備えている、
ことを特徴とする無端駆動部材用テンショナ。
【請求項2】
前記第1の軸方向減衰部分は、前記第1のテンショナアーム上の遠位面と協働して前記第1のテンショナアームの移動を減衰する遠位部分と、前記第1のテンショナアーム上の近位面と協働して前記第1のテンショナアームの移動を減衰する第1の近位部分とを有している、
請求項1に記載のテンショナ。
【請求項3】
前記第2の軸方向減衰部分は、前記第2のテンショナアーム上の遠位面と協働して前記第2のテンショナアームの移動を減衰する遠位部分を有している、
請求項2に記載のテンショナ。
【請求項4】
前記第2の軸方向減衰部分は、前記第2のテンショナアーム上の近位面と協働して前記第2のテンショナアームの移動を減衰する近位部分をさらに有している、
請求項3に記載のテンショナ。
【請求項5】
前記第1の軸方向減衰部分の前記遠位部分は、前記第2の軸方向減衰部分の前記近位部分と一体である、
請求項4に記載のテンショナ。
【請求項6】
前記第1の軸方向減衰部分の前記遠位部分は、前記第2の軸方向減衰部分の前記近位部分から離れている、
請求項4に記載のテンショナ。
【請求項7】
前記第1のテンショナアーム減衰システムは、第1の遠位トップハット部材と第1の近位トップハット部材とを有し、前記第1の遠位トップハット部材及び第1の近位トップハット部材の各々は、前記基部を取り囲むシリンダとフランジとを有し、前記第1の遠位トップハット部材の前記フランジは、前記第1の軸方向減衰部分の前記遠位部分を構成し、前記第1の近位トップハット部材の前記フランジは、前記第1の軸方向減衰部分の前記近位部分を構成する、
請求項2に記載のテンショナ。
【請求項8】
前記第2の軸方向減衰部分は、前記第2のテンショナアーム上の遠位面と協働して前記第2のテンショナアームの移動を減衰する遠位部分を有し、
前記第2のテンショナアーム減衰システムは、第2の遠位トップハット部材を有し、前記第2の遠位トップハット部材は、前記基部を取り囲むシリンダとフランジとを有し、前記第2の遠位トップハット部材の前記フランジは、前記第2の軸方向減衰部分の前記遠位部分を構成する、
請求項7に記載のテンショナ。
【請求項9】
前記第2の軸方向減衰部分は、前記第2のテンショナアーム上の近位面と協働して前記第2のテンショナアームの移動を減衰する近位部分をさらに有し、
前記第2のテンショナアーム減衰システムは、第2の近位トップハット部材を有し、前記第2の近位トップハット部材は、前記基部を取り囲むシリンダとフランジとを有し、前記第2の近位トップハット部材の前記フランジは、前記第2の軸方向減衰部分の前記近位部分を構成する、
請求項8に記載のテンショナ。
【請求項10】
前記第1のテンショナアーム減衰システム及び前記第2のテンショナアーム減衰システムは、一緒に、第1のアームトップハット部材と、第2のアームトップハット部材と、減衰円板とを有し、前記第1及び第2のトップハット部材は、各々、前記基部を取り囲むシリンダとフランジとを有し、
前記第1のアームトップハット部材の前記フランジは、前記第1のテンショナアーム上の近位面と協働して前記第1のテンショナアームの移動を減衰し、前記第2のアームトップハット部材の前記フランジは、前記第2のテンショナアーム上の遠位面と協働して前記第2のテンショナアームの移動を減衰し、
前記減衰円板は、前記第1のテンショナアーム上の遠位面及び前記第2のテンショナアーム上の近位面と協働して、前記第1及び第2のテンショナアームのいずれか一方の移動を前記第1及び第2のテンショナアームの他方に対して減衰するように位置決めされる、
請求項1に記載のテンショナ。
【請求項11】
前記第1及び第2のアームトップハット部材の各々の前記シリンダは、テーパー状の半径方向外面を有する、
請求項10に記載のテンショナ。
【請求項12】
前記減衰システム付勢部材は、前記第1及び第2のテンショナアームの一方と共に移動するように位置決めされる少なくとも1つのばね座金と、前記第1及び第2のテンショナアームの一方と共に移動するように位置決めされ、前記少なくとも1つのばね座金と、第1及び第2のテンショナアームの他方に関連する前記第1及び第2の軸方向減衰部分のいずれか一方との間に位置決めされる少なくとも1つの支持円板とを有している、
請求項1に記載のテンショナ。
【請求項13】
無端駆動部材用テンショナであって、
近位端と遠位端を有し、前記近位端で固定構造体に取り付け可能な基部と、
共通軸線を中心に前記基部に対して枢動可能な第1のテンショナアームと、
前記共通軸線から離間した第1のプーリー軸線を中心に前記第1のテンショナアーム上で回転するように取り付けられる第1のテンショナプーリーと、
前記共通軸線を中心に前記基部に対して枢動可能な第2のテンショナアームと、
前記共通軸線から離間しかつ前記第1のプーリー軸線から離間した第2のプーリー軸線を中心に前記第2のテンショナアーム上で回転するように取り付けられる第2のテンショナプーリーと、
前記第1及び第2のテンショナプーリーを互いに向かって付勢するように前記第1及び第2のテンショナアームの間に係合されるテンショナ付勢部材と、
前記第1のテンショナアームと前記基部との間で半径方向に位置決めされた第1の半径方向減衰部分と、第1の軸方向減衰部分とを含む第1のテンショナアーム減衰システムであって、前記第1の半径方向減衰部分及び前記第1の軸方向減衰部分は、前記第1のテンショナアームの移動に対して減衰を行うように協働する、第1のテンショナアーム減衰システムと、
前記第2のテンショナアームと前記基部との間で半径方向に位置決めされた第2の半径方向減衰部分と、第2の軸方向減衰部分とを含む第2のテンショナアーム減衰システムであって、前記第2の半径方向減衰部分及び前記第2の軸方向減衰部分は、前記第2のテンショナアームの移動に対して減衰を行うように協働する、第2のテンショナアーム減衰システムと、
前記第1及び第2の軸方向減衰部分で摩擦を生成するように軸方向付勢力を前記第1及び第2の軸方向減衰部分に加えるように位置決めされる減衰システム付勢部材と、
を備え、
前記第1のテンショナアーム減衰システム及び前記第2のテンショナアーム減衰システムは、一緒に、第1のアームトップハット部材、第2のアームトップハット部材、及び中間トップハット部材を有し、前記第1のアームトップハット部材、前記第2のアームトップハット部材、及び前記中間トップハット部材は、各々、前記基部を取り囲むシリンダと、フランジとを有し、
前記第1のアームトップハット部材の前記フランジは、前記第1のテンショナアーム上の近位面と協働して前記第1のテンショナアームの移動を減衰し、前記第2のアームトップハット部材の前記フランジは、前記第2のテンショナアーム上の遠位面と協働して前記第2のテンショナアームの移動を減衰し、
前記中間トップハット部材の前記フランジは、前記第1のテンショナアーム上の遠位面及び前記第2のテンショナアーム上の近位面と協働して、前記第1及び第2のテンショナアームのいずれか一方の移動を前記第1及び第2のテンショナアームの他方に対して減衰するように位置決めされる、
ことを特徴とする無端駆動部材用テンショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2017年9月13日出願の米国特許仮出願第62/394,081号の優先権及び利益を主張するものであり、その開示内容全体は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、無端駆動装置用テンショナの分野に、より詳細にはスタータージェネレータユニットを有するエンジン用ベルト駆動装置に関し、ベルト駆動装置は、Vテンショナを含む。
【背景技術】
【0003】
1990年代から燃費を向上させるために開発されている、スタータージェネレータユニットを有するエンジンは、増加の一途をたどっている。このようなエンジンでは、燃焼プロセスは、例えば信号で車両が停車したときに停止する。この状態では、スタータージェネレータユニッは、エンジンを再始動させるスターターモータとして作動する。エンジンが始動すると、スタータージェネレータユニットは、バッテリを再充電するジェネレータとして選択的に作動することができる。
【0004】
スタータージェネレータユニットは、ベルト又はチェーンなどの無端駆動部材を介してエンジンに機械的に接続されている。無端駆動部材は、特にスタータージェネレータユニットの機能がスターターとジェネレータとの間で切り替わる際に張力変動を受け、その場合、無端駆動部材の張り側及び緩み側が逆になる。無端駆動部材の張力システムは、上記の張力変動及びエンジン作動時に発生する他の張力変動に対処する必要がある。
【0005】
本技術分野では様々なデュアルアーム式テンショナが知られており、例えば、独国特許公開第102 53 450号、欧州特許公開第1 464 871号、米国特許公開第2004/0171448号、欧州特許公開第1 122 464号、及び独国特許公開第42 43 451号に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許公開第102 53 450号公報
【文献】欧州特許公開第1 464 871号公報
【文献】米国特許公開第2004/0171448号公報
【文献】欧州特許公開第1 122 464号公報
【文献】独国特許公開第42 43 451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書に開示されたテンショナは、当該テンショナの耐用年数を延ばすためによりしっかりした解決策を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、無端駆動部材用テンショナが提供され、このテンショナは、近位端と遠位端を有し、近位端で固定構造体に取り付け可能な基部を備える。テンショナは、共通軸線を中心に基部に対して枢動可能な第1のテンショナアームと、共通軸線から離間した第1のプーリー軸線を中心に第1のテンショナアーム上で回転するように取り付けられる第1のテンショナプーリーとをさらに備える。テンショナは、共通軸線を中心に基部に対して枢動可能な第2のテンショナアームと、共通軸線から離間しかつ第1のプーリー軸線から離間した第2のプーリー軸線を中心に第2のテンショナアーム上で回転するように取り付けられる第2のテンショナプーリーとをさらに備える。テンショナは、第1及び第2のテンショナプーリーを互いに向かって付勢するために、第1及び第2のテンショナアームの間に係合されるテンショナ付勢部材をさらに備える。テンショナは、第1のテンショナアームと基部との間で半径方向に位置決めされた第1の半径方向減衰部分と、第1の軸方向減衰部分とを含む第1のテンショナアーム減衰システムをさらに備える。第1の半径方向減衰部分及び第1の軸方向減衰部分は、第1のテンショナアームの移動に対して減衰を行うように協働する。テンショナは、第2のテンショナアームと基部との間で半径方向に位置決めされた第2の半径方向減衰部分と、第2の軸方向減衰部分とを含む第2のテンショナアーム減衰システムをさらに備える。第2の半径方向減衰部分及び第2の軸方向減衰部分は、第2のテンショナアームの移動に対して減衰を行うように協働する。テンショナは、第1及び第2のテンショナアーム間に係合され、かつ、第1及び第2の減衰システム付勢力をそれぞれ第1及び第2の軸方向減衰部分に加える減衰システム付勢部材をさらに備える。第1及び第2の減衰システム付勢力は、軸方向で互いから反対方向に向けられる。
【0009】
他の態様において、無端駆動部材用テンショナが提供され、このテンショナは、近位端と遠位端を有し、近位端で固定構造体に取り付け可能な基部を備える。テンショナは、共通軸線を中心に基部に対して枢動可能な第1のテンショナアームと、共通軸線から離間した第1のプーリー軸線を中心に第1のテンショナアーム上で回転するように取り付けられる第1のテンショナプーリーとをさらに備える。テンショナは、共通軸線を中心に基部に対して枢動可能な第2のテンショナアームと、共通軸線から離間しかつ第1のプーリー軸線から離間した第2のプーリー軸線を中心に第2のテンショナアーム上で回転するように取り付けられる第2のテンショナプーリーとをさらに備える。テンショナは、第1及び第2のテンショナプーリーを互いに向かって付勢するために、第1及び第2のテンショナアームの間に係合されるテンショナ付勢部材をさらに備える。テンショナは、第1のテンショナアームと基部との間で半径方向に位置決めされた第1の半径方向減衰部分と、第1の軸方向減衰部分とを含む第1のテンショナアーム減衰システムをさらに備える。第1の半径方向減衰部分及び第1の軸方向減衰部分は、第1のテンショナアームの移動に対して減衰を行うように協働する。テンショナは、第2のテンショナアームと基部との間で半径方向に位置決めされた第2の半径方向減衰部分と、第2の軸方向減衰部分とを含む第2のテンショナアーム減衰システムをさらに備える。第2の半径方向減衰部分及び第2の軸方向減衰部分は、第2のテンショナアームの移動に対して減衰を行うように協働する。テンショナは、第1及び第2の軸方向減衰部分で摩擦を生成するために軸方向付勢力を第1及び第2の軸方向減衰部分に加えるように位置決めされる減衰システム付勢部材をさらに備える。第1のテンショナアーム減衰システム及び第2のテンショナアーム減衰システムは、一緒に、第1のアームトップハット部材、第2のアームトップハット部材、及び中間トップハット部材を有し、第1のアームトップハット部材、第2のアームトップハット部材、及び中間トップハット部材は、各々、基部を取り囲むシリンダと、フランジとを含む。第1のアームトップハット部材のフランジは、第1のテンショナアーム上の近位面と協働して第1のテンショナアームの移動を減衰する。第2のアームトップハット部材のフランジは、第2のテンショナアーム上の遠位面と協働して第2のテンショナアームの移動を減衰する。中間トップハット部材のフランジは、第1のテンショナアーム上の遠位面及び第2のテンショナアーム上の近位面と協働して、第1及び第2のテンショナアームのいずれか一方の移動を第1及び第2のテンショナアームの他方に対して減衰するように位置決めされる。
【0010】
以上及び他の態様は、添付図面を考慮するとより容易に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】テンショナを組み込む無端駆動装置の平面図である。
【
図2】第1及び第2のテンショナアームを有する、
図1に示すテンショナの上面図である。
【
図5】第1のテンショナアームに作用する力を示す、
図1に示すテンショナの別の断面側面図である。
【
図6】第2のテンショナアームに作用する力を示す、
図1に示すテンショナの別の断面側面図である。
【
図7】本開示の別の実施形態による、代替的減衰装置を有する
図1に示すテンショナの断面側面図である。
【
図8】本開示の別の実施形態による、別の代替的減衰装置を有する
図1に示すテンショナの断面側面図である。
【
図9】本開示の別の実施形態による、さらに別の代替的減衰装置を有する
図1に示すテンショナの断面側面図である。
【
図10】本開示の別の実施形態による、さらに別の代替的減衰装置を有する
図1に示すテンショナの断面側面図である。
【
図11】本開示の別の実施形態による、さらに別の代替的減衰装置を有する
図1に示すテンショナの断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
説明の単純化及び明瞭化のために、適切であれば、参照番号は、対応する又は類似の要素を示すために各図の間で繰り返し使用することができる。加えて、本明細書で説明する実施形態を完全に理解できるように、多数の特定の詳細が記載される。しかしながら、当業者であれば、本明細書で説明する実施形態は、これらの特定の詳細がなくても実施できることを理解できるはずである。場合によっては、公知の方法、処置、手順、及び構成要素は、本明細書で説明する実施形態を不明瞭にしないように詳細な説明が省略されている。また、本説明は、本明細書で説明する実施形態の範囲を制限すると考えるべきではない。
【0013】
本明細書を通して使用される様々な用語は、前後関係から別段の指示がない限り、以下のように読んで理解することができる。すなわち、全体を通して使用される「又は」は、あたかも「及び/又は」と記載されるように包含的であり、全体を通して使用される単数形の冠詞及び代名詞は、複数形を含み、その逆もまた同じであり、同様に、代名詞が、本明細書に記載のいかなるものも、単一の性による使用、実装、実施などに限定するものとして解釈されるべきでないように、性別代名詞はそれぞれの反対の性別代名詞を包含し、「例示的(exemplary)」は、「例示的(illustrative)」又は「例示的(exemplifying)」として解釈されるべきであり、必ずしも他の実施形態より「好ましい(preferred)」として解釈されるべきではない。さらに、語句の定義を本明細書で提示することがあるが、それらの定義はそれらの語句が前又は後に出てきた場合にも適用でき、これは、本明細書を読むことにより理解されるであろう。
【0014】
図2は、無端駆動部材11(
図1)の張力調整に使用可能なテンショナ10の実施形態の上面図である。無端駆動部材11は、車両(図示せず)用のエンジン13で用いることができ、クランクシャフトプーリー912、ウォータポンププーリー960、モータ/ジェネレータユニット916(MGU916とも呼ばれる)用のモータ/ジェネレータユニットプーリー950、及びアイドラ925に接続することができる。MGU916は、例えば、を含め、エンジン13が一時的にオフである場合に、無端駆動部材11によってウォーターポンプ又は空調圧縮機(図示せず)などの駆動補機を駆動することを含む、複数の目的のために使用することができる(例えば、車両が信号停止中であり、燃料を節約するために一部のハイブリッド車で自動的に行われるようにエンジン13が停止している場合)。MGU916は、エンジン13に対するBAS駆動性能をもたらすために使用することができ、エンジン13は、無端駆動部材11を用いてMGU916によって始動することができる。
【0015】
無端駆動部材11はベルトとすることができ、又は代替的に何らかの他の適切な形式の無端駆動部材とすることができる。無端駆動部材11がベルトである場合、無端駆動部材11は、平ベルト、Vベルト、ポリVベルト、タイミングベルトなど何らかの適切な形式のベルトとすることができる。
【0016】
図3及び
図4を参照すると、テンショナ10は、エンジンブロックなどの固定構造体99に取り付け可能な基部12を含む。基部12は、テンショナアーム枢動軸Aを形成する中空軸の形態とすることができ、基部12は、取付け締結具(例えば、ねじ部品)13を有し、取付け締結具13は、基部12を貫通して固定構造体99の取付け開口(例えば、ねじ付き開口)に取り付けられる。テンショナ10は、第1のテンショナアーム14(下部テンショナアームと呼ぶことができる)及び第2のテンショナアーム16(上部テンショナアームと呼ぶことができる)をさらに含む。第1のテンショナアーム14は、基部12に枢着される。実施例において、図示の第1のテンショナアーム14は、基部12に取り付けるための貫通開口18を有する。この実施例では第1及び第2の下部ブッシング20及び22を含む第1のブッシング構成部は、第1のアーム開口18と基部12の外面との間の半径方向の空間内に延びており、基部12と第1のアーム14との間の金属同士の接触を防ぐようになっている。ブッシング20及び22は、ポリアミド4.6又は6.6などの何らかの適切な材料から作製することができる。ブッシング20及び22は、軸方向に離間して示されている。代替的に、ブッシング20及び22は、軸方向に離間しないことが可能である。さらに、第1のブッシング構成部は、例えば単一のブッシングなどの異なる数のブッシングを備えることができる。
【0017】
同様に、第2のテンショナアーム16は、第2のアーム16を基部12に枢着する貫通開口24を含む。第1のブッシング構成部と類似とすることができる(及び、この実施例では、第1及び第2の上部ブッシング26及び28を含む)第2のブッシング構成部を開口24と基部12の外面との間の半径方向の空間内に設けることができる。
【0018】
テンショナアーム付勢部材30が設けられており、これは、第1のテンショナアーム14上の駆動面34と係合する第1の端部32と、第2のテンショナアーム16上の第2の駆動面38と係合する第2の端部36とを有し、第1及び第2のアームをそれぞれの第1及び第2の自由アーム方向でベルト11に付勢するようになっている。自由アーム方向は、アームの移動を妨害するベルトがない場合に、テンショナアーム14又は16が付勢部材30によって移動することになる方向である。対照的に、負荷停止方向は、ベルト張力が付勢部材30の付勢力に打ち勝つように十分に高い場合に、アーム16が移動する方向である。一般に、テンショナアームの自由アーム方向は、テンショナアームをベルトに至らせる移動方向であり、荷重停止方向は、テンショナアームをベルトから離す移動方向である。テンショナアーム付勢部材30は、例えば、捩りばねなどの何らかの適切な形式の付勢部材とすることができる。
【0019】
テンショナアーム14及び16の各々は、回転自在に取り付けられたプーリーを有し、それぞれプーリー軸線AP1及びAP2を中心に回転するようになっている(それぞれ、46及び48で示す)。各プーリー46、48は、プーリー内の軸受をダスト及びデブリから保護するのを助けるダストシールド50を有する。取付け締結具(例えば、ねじ部品)52は、プーリー46、48をそれぞれのテンショナアーム14、16に取り付けるために使用される。
【0020】
図1に示すように、各プーリー46、48は、ベルト11のそれぞれのベルトスパン11b、11aと係合する。プーリー46、48が係合するベルトスパン11a及び11bは、MGUプーリー950の左右側のベルトスパンである。テンショナ10は、スパン11a及び11b上で作動して、MGU916がベルト11を駆動する駆動装置として作動するか(その場合、ベルトスパン11bの張力は相対的に高く、ベルトスパン11aのベルト張力は相対的に低いことになる)、又はベルト11がエンジン13によって駆動されて、MGU916が停止するか又はジェネレータの機能を果たすかに関わらず、ベルト張力がベルトスパン11a及び11bで維持されることを保証する。
【0021】
図4を参照すると、1又は2以上の軸方向予圧部材40は(この例では2つ)、基部12上の肩部42に位置しており、(軸方向予圧と呼ぶことができる)軸方向付勢力を下部テンショナアーム14に加えるように配置される。軸方向予圧部材40は、大きな付勢力を生成できかつコンパクトである、例えば、ベルビルワッシャなどの何らかの適切な形式の付勢部材とすることができる。軸方向予圧部材40はアーム14に直接係合せず、代わりに、支持部材(例えば、金属質円板)44が付勢部材とアーム14との間に設けられている。さらに、ブッシング22は、アーム14と支持部材44との間の直接的な摺動運動を防止するために、軸方向予圧部材40とアーム14との間に存在するフランジ部分46を有する。
図5に示すように、軸方向予圧は、平均半径rで、下部アーム14の円周部の周りに加えることができる。軸方向予圧部材40の機能をさらに以下で説明する。
【0022】
減衰構造体54は、高分子(例えば、無充填(非補強)ナイロン)テンショナアーム減衰部材56と、減衰部材56を保持して減衰部材56を捩りばね30との係合による損傷に対して保護する金属製(例えば、鋼製)スリーブ58を含む。減衰部材56は、テンショナアーム16の運動に関する減衰を行う。テンショナアーム組立体の構成要素は、国際公開第2013/059929号に説明されている類似の構成要素と同様とすることができ、その開示内容全体は引用により本明細書に組み込まれている。2つのベルトスパン11a及び11bのベルト張力の全体的増加の結果として、テンショナアーム14及び16の移動の間に捩りばね30は拡張するので、減衰部材56は、下部テンショナアーム14のカップ部分59の内壁に押しやられる。
【0023】
スライド円板60は、互いに向かい合う2つのテンショナアーム14及び16の回転を支持するように、上部ブッシング20のフランジ部と下部ブッシング28のフランジ部との間に設けられる。前部円板62は、締結具13の頭部と上部ブッシング26のフランジ部との間に設けられる。
【0024】
図5を参照すると、作動時、ベルト11(
図2)は、F3で示すハブ負荷を第1のプーリー46に加え、結果的に力が第1のアーム14にかかる。このハブ負荷F3は、傾斜力を下部アーム14に導入し、その結果、対応しなかった場合、下部アーム14の偏揺れが発生する可能性がある。これによって、結果的に、ベルト11の騒音及び摩耗の問題が発生する可能性があり、さらに、ブッシング20及び22の偏摩耗が発生する可能性がある。ブッシング20及び22の偏摩耗によって、アーム14と基部12との間の遊びが徐々に増え、経時的にテンショナ10の早期故障が発生する可能性がある。ハブ負荷F3によって引き起こされる傾斜力に対処するために、軸方向予圧部材40は、十分に高い軸方向予圧(
図5にF4で示す)を第1のアーム14に加えるように選択され、軸方向予圧からブッシング20及び22に加えられた結果的に得られる半径方向反力は、ハブ負荷F3の結果として、ブッシング20及び22に加えられたブッシングハブ負荷と少なくともほぼ同じくらいの大きさである。軸方向予圧F4がアーム14の円周部全体の周りに加えられるので、軸方向予圧F4は、常にプーリーハブ負荷F3から生じるブッシングハブ負荷を相殺するように位置付けされる。
【0025】
実施例では、第1のテンショナアーム14が特定の位置にあるときのプーリー46へのハブ負荷F3は、395Nとすることができる。プーリーハブ負荷F3から生じるブッシングハブ負荷は、以下のように決定される。すなわち、BHL=F3×L3/BL、式中、BHLはブッシングハブ負荷、F3はプーリーハブ負荷、L3はプーリーハブ負荷からブッシング20及び22の底部までの軸方向の距離、BLはブッシング20及び22の軸方向の長さである。この実施例では、F3=395N、L3=34.6mm、及びBL=22mmである。この実施例のBHLは、621Nと計算することができる。
【0026】
軸方向予圧部材40の結果であるブッシング20及び22に加えられた反力は、以下のように決定される。すなわち、CF=F4×L4/(BL/2)、式中、CFは反力、F4は軸方向予圧、L4は軸方向予圧の半径rである。軸方向予圧部材が14.5mmの半径rで軸方向予圧F4=1000Nを加えるように選択されている場合、結果として得られる反力は、1318Nである。反力はブッシングハブ負荷を超えるので、ブッシング20及び22に偏摩耗を引き起こすモーメントは導入されない。その結果、ブッシング20及び22は均一に磨耗し、結果的にテンショナ10の長寿命化につながる。実施例をアーム14が特定の位置にある状態で説明したが、軸方向予圧部材40によって生じた反力は、テンショナアーム14の様々な位置を通して、好ましくは、アーム14がエンジン13(
図1)の設計条件内で作動中に移動することになる位置の実質的に全てを通して、ブッシングハブ負荷と少なくともほぼ同じくらいの大きさであるように十分に高くできることに留意されたい。
【0027】
上部テンショナアーム16の機構を以下に説明する。プーリーハブ負荷は、F1で示されており、この実施例では486Nである。ばね30の第2の端部34は、力F2をテンショナアーム16に加える。ばね30の第2の端部34は、力F2が力F1と概ね同じ方向にあるように配向することができる(すなわち力は付加的である)。これらの力は、ブッシング26及び28を通る反力に抗する。反力(LFR)の重心は、LFR=((F1×L1)+(F2×L2))/(F1+F2)によって決定することができ、式中、L1は、力F1のモーメントアーム、L2は、力F2のモーメントアームである。実施例では、F1は、基準線までの34.6mmのモーメントアームL1で486Nとすることができる。F2は、41.4mmのモーメントアームで866Nである。この実施例では、LFR=39mmであり、
図6から分かるように、LFRは、ブッシング26及び28の中央部に近く、基準線から35.5mmにある。従って、上部ブッシング26及び28、又は上部アーム16全体は、バランスしているといえる。この上部アーム16に関連した構成は、国際公開第2010/037232号に記載されている通りとすることができ、この開示内容全体は、引用により本明細書に組み込まれている。ブッシング上で軸方向にほぼ中心がある反力をもたらすことによって、摩耗の均一化、結果的にブッシング26及び28の長寿命化につながる。
【0028】
上述のように、
図6に示す図では、上部テンショナアーム16上に、ばね30の第2の端部36から付与されるように示される力F2がある。しかしながら、
図5から分かるように、下部テンショナアーム14上には、ばね30の第1の端部32から付与されるように示される類似の力はない。類似の力が下部テンショナアーム14に関して示されていない理由は、下部アーム14上にばね30から付与された力は、本質的に打ち消されるからである。より具体的には、テンショナアーム付勢部材30のコイル61は、第1及び第2のテンショナアーム14及び16に対して第1及び第2の端部32及び36によって加えられた張力に比例して半径方向に拡張する。減衰構造体54は、摩擦減衰力を(第1のテンショナアーム14のカップ部分59との係合によって)第1のテンショナアーム14に加えるために押しやられ、摩擦減衰力は、テンショナアーム付勢部材30の半径方向の拡張量に比例する。この構成の結果として、下部アーム14上にばね30の第1の端部32から付与された張力は、ばね30の上部コイル61の拡張から下部アーム14のカップ部分59に減衰構造体54を介して付与された力によって実質的に相殺される。
【0029】
実施例はアーム16が1つの特定の位置にある状態で説明したが、第2のブッシング構成部で生成された反力は、テンショナアーム16の様々な位置を通じて、第2のブッシング構成部に沿って軸方向のほぼ中心にあることに留意されたい。
【0030】
従って、ブッシング20及び22、並びに26及び28の作動寿命を延ばすことに関して上述した特徴の両方を提供することによって、テンショナ10の作動寿命は、従来技術の他のVテンショナの作動寿命よりも長くすることができる。
【0031】
念のため、ブッシング20及び22並びにブッシング26及び28に関して上述した複数の利点は、単一のブッシングのみを含む第1及び第2のブッシング構成部の各々に適用可能であることに留意されたい。
【0032】
図4及び
図5において、力F1、F2、F3及びF4を表す矢印の長さは、表される力の大きさを示すと解釈すべきではないことに留意されたい。
【0033】
取付けピン64を設けることができ、取付けピン64は、ベルト11の取り付けを容易にするためにアーム14及び16を特定の位置に保持するために第1及び第2のテンショナアーム14及び16の開口66及び68に挿入可能かつ取り外し可能である。ベルト11を組み入れ際に、取付けピン(又は、より一般的にはアームロック部材)を取り外すことができ、アーム14及び16は、ベルト11のそれぞれのスパンに係合することができる。
【0034】
図7~
図14を参照すると、減衰構造体のいくつかの異なる構成を有するテンショナ10が示されている。各図において、テンショナ10の特定の要素にわずかな相違がある場合があり、このわずかな相違を説明する。
図7~
図13では、テンショナは、
図1~
図6ではテンショナ10内に存在する減衰構造体54を備えていないことに留意されたい。
【0035】
図7は、第1のテンショナアーム14と基部12との間で半径方向に位置決めされた第1の半径方向減衰部分102及び第1の軸方向減衰部分104を含む第1のテンショナアーム減衰装置100を含むテンショナ10の断面図を示す。第1の半径方向減衰部分102及び第1の軸方向減衰部分104は、第1のテンショナアーム14の移動に対して減衰を行うように協働する。
図7のテンショナ10は、第2のテンショナアーム16と基部12との間に半径方向に位置決めされた第2の半径方向減衰部分108及び第2の軸方向減衰部分110を含む第2のテンショナアーム減衰装置106をさらに含む。第2の半径方向減衰部分108及び第2の軸方向減衰部分110は、第2のテンショナアーム16の移動に対して減衰を行うように協働する。
図7のテンショナ10は、減衰システム付勢部材112をさらに有し、減衰システム付勢部材112は、第1及び第2のテンショナアーム14及び16間に係合しかつ第1及び第2の減衰システム付勢力(FB1及びFB2で示す)をそれぞれ、第1及び第2の軸方向減衰部分104及び110に付与する。第1及び第2の減衰システム付勢力FB1及びFB2は、互いに軸方向で反対方向に向いている。
図7では、付勢力FB1及びFB2は、軸線Aに沿って真っ直ぐに示されているが、これは、単に点力としての表現である。付勢力FB1は、軸線Aを中心に常に対称的に配置されかつ近位方向に(すなわち基部12の近位端の方に)軸方向に配向された分散力であることに留意されたい。従って、付勢力FB1及び付勢力FB2は、軸線Aを中心に均一にバランスしており、テンショナアーム14及び16の何らかの傾きが阻止される。これとは対照的に、従来技術の一部のテンショナは、バランスしていない減衰をもたらし、その結果、一方又は両方のテンショナアームの傾きが助長され、これによって経時的にテンショナ10の故障が発生する可能性がある。
図7~
図14の目的のために、基部12の近位端113は、テンショナ10を組み入れる際に固定部材99と係合する基部12の端部である。同様に、基部12は、遠位端114を有し、遠位端114は、近位端113の反対側にある端部である。図示の実施形態では、第1のテンショナアーム14は、近位に位置決めされているアームであり、第2のテンショナアーム16は、遠位に位置決めされているアームである。
【0036】
図示の実施形態では、第1の軸方向減衰部分104は、第1のテンショナアーム14上の遠位面118と協働して第1のテンショナアーム14の移動を減衰する遠位部分116と、第1のテンショナアーム14上の近位面122と協働して第1のテンショナアーム14の移動を減衰する第1の近位部分120とを含む。同様に、第2の軸方向減衰部分110は、第2のテンショナアーム16上の遠位面126と協働して第2のテンショナアーム16の移動を減衰する遠位部分124を含む。
図7の第2の軸方向減衰部分110は、第2のテンショナアーム16上の近位面130と協働して第2のテンショナアーム16の移動を減衰する近位部分128をさらに含む。
【0037】
図7に示す実施形態では、第1のテンショナアーム減衰装置100は、第1の遠位トップハット部材132及び第1の近位トップハット部材134によって提供される。第1の遠位トップハット部材132及び第1の近位トップハット部材及び134の各々は、シリンダ136及びフランジ138を含む。シリンダ136は、基部12を取り囲む。適切なトップハット部材の実施例は、
図3~
図6ではブッシング20、22、26及び28で示されている。トップハット部材132及び134は、第1のテンショナアーム14の移動中に適切な摩擦減衰特性をもたらす何らかの適切な材料で作製することができる。例えば、トップハット部材132及び134は、PTFE浸漬ステンレス鋼で作製することができる。
【0038】
トップハット部材132及び134は、第1のテンショナアーム14に固定することができ、アーム14が移動する際に基部12に対して移動することができる。従って、トップハット部材132及び134によってもたらされた摩擦減衰は、テンショナ10の基部12又は他の部材(以下で論じる座金支持円板199などの)に関連することができる。
図7に示す実施形態では、トップハット部材132及び134の各々からのシリンダ136は、一緒になって第1の半径方向減衰部分102を構成し、2つのトップハット部材132及び134からのフランジ138は、一緒になって第1の軸方向減衰部分110を構成する。第1の遠位トップハット部材132のフランジ138は、第1の軸方向減衰部分110の遠位部分116を構成する。第1の近位トップハット部材134のフランジ138は、第1の軸方向減衰部分110の近位部分120を構成する。
【0039】
図7に示す実施形態では、第2のテンショナアーム減衰システム106は、第2の遠位トップハット部材140、及び第1の遠位トップハット部材132からのフランジ138に対向する遠位部分によって提供される。第2の遠位トップハット部材140は、トップハット部材132及び134と同様とすることができる。
図7に示す実施形態では、第1の軸方向減衰部分104の遠位部分116は、第2の軸方向減衰部分110の近位部分128と一体であることが分かる。しかしながら、
図8に示す実施形態などの他の実施形態では、第1の軸方向減衰部分104の遠位部分116は、180で示す別のトップハット部材上に設けられているので、第2の軸方向減衰部分110の近位部分128とは別体である。トップハット部材140は、基部12を取り囲むシリンダ136及び第2の軸方向減衰部分110の遠位部分124を構成するフランジ138を含む。
【0040】
図8では、上述したように、第2のテンショナアーム減衰システム106は、トップハット部材132及び134と同様とすることができる第2の近位トップハット部材142を有し、従って、基部12を取り囲むシリンダ136及びフランジ138を含むことができる。
図8のトップハット部材142のフランジ138は、第2の軸方向減衰部分110の近位部分128を構成する。
【0041】
図11を参照する。
図11に示す実施形態では、第1のテンショナアーム減衰システム100及び第2のテンショナアーム減衰システム106は、一緒になって、第1のアームトップハット部材144、第2のアームトップハット部材146、及び減衰円板148を含む。第1及び第2のアームトップハット部材144及び146は、各々が基部12を取り囲むシリンダ136及びフランジ138を含むという意味で、トップハット部材132及び134と同様とすることができる。第1のアームトップハット部材144のフランジ138は、第1のテンショナアーム14上の近位面122と協働して第1のテンショナアーム14の移動を減衰する。第2のアームトップハット部材146のフランジ138は、第2のテンショナアーム16上の近位面126と協働して第2のテンショナアーム16の移動を減衰する。減衰円板148は、第1のテンショナアーム14上の遠位面118及び第2のテンショナアーム16上の近位面130と協働して第1及び第2のテンショナアーム14及び16の一方の移動を第1及び第2のテンショナアーム14及び16の他方に対して減衰するように位置決めされている。
【0042】
図11に示す実施形態では、第1及び第2のアームトップハット部材144及び146の各々のシリンダ136は、テーパー状の(すなわち、フランジ138に向かって増加する直径を有する)半径方向外面150を有する。対応して、テンショナアーム14及び16の内面(それぞれ152及び154で示す)も、シリンダ136の外面150と嵌合するようにテーパー状である。テーパー状の内面152及び154をテンショナアーム14及び16上に有することによって、テンショナアームは、鋳造などの金属成形プロセスによってより容易に形成することができる。これは、テンショナアーム14及び16の製造コストの低減を助けることができる。
【0043】
【0044】
図7~
図12に示す減衰システム付勢部材112は、第1及び第2のテンショナアーム14及び16の一方と共に移動する(すなわち、枢動する)ように位置決めされる少なくとも1つのばね座金160(例えば、少なくとも1つのベルビルワッシャ)と、第1及び第2のテンショナアーム14及び16の上記一方と共に移動するように位置決めされる少なくとも1つの支持円板199を有し、この支持円板199は、少なくとも1つのばね座金160と、第1及び第2のテンショナアーム14及び16の他方に関連する第1及び第2の軸方向減衰部分104及び110のいずれか一方との間に位置決めされることが分かる。
図7~
図12に示す実施例では、ばね座金160及び支持円板199は、第2のテンショナアーム16と共に移動し(すなわち、枢動し)、支持円板199は、ばね座金160と第1のテンショナアーム14上の第1の軸方向減衰部分104との間に位置決めされる。これは、支持円板199と、これに隣接するいずれかの減衰面(例えば、
図7に示すように第1の遠位トップハット132上のフランジ138)との間に摩擦係合があることを意味する。
【0045】
使用されるばね座金160の数は、特定のエンジンにもたらされることになる減衰力の大きさに基づいて選択することができる。
【0046】
支持円板199は、ばね座金160が力を支持円板199に加えることによって削れるのを阻止するように金属材料で作製することができる。
【0047】
他の形式の減衰システム付勢部材を代替的に使用できることを理解されたい。
【0048】
図10は、近位トップハット部材及び遠位トップハット部材が各テンショナアーム14及び16上にあり、減衰システム付勢部材112が第1及び第2のテンショナアーム14及び16に対して近位に配置されたテンショナ10を示す。他方で、
図9は、近位トップハット部材及び遠位トップハット部材が各テンショナアーム14及び16上にあり、減衰システム付勢部材112が第1及び第2のテンショナアーム14及び16に対して遠位に配置されたテンショナ10を示す。付勢部材112がアーム14及び16の近位に又はアーム14及び16の遠位に配置される実施形態では、別の支持円板199は、第1のアーム14の遠位にあるトップハット部材との間、及び第2のアーム16の近位にあるトップハット部材との間に設けることができることに留意されたい。
【0049】
さらに、付勢部材112の場所を問わず(換言すると、付勢部材112が第1及び第2のアーム14及び16の遠位にある状態で、又は付勢部材112が第1及び第2のアーム14及び16の近位にある状態で)、3つのトップハット部材(例えば、
図7に示す実施形態と同様の)を備えるテンショナを提供することが好都合であることに留意されたい。3つのトップハット部材を備える実施形態では、トップハット132(
図7)は、中間トップハット部材と考えることができ、中間トップハット部材132のフランジ138は、第1のテンショナアーム14上の遠位面118及び第2のテンショナアーム16上の近位面130と協働して、第1及び第2のテンショナアーム14及び16のいずれか一方の移動を第1及び第2のテンショナアーム14及び16の他方に対して減衰するように位置決めされる。この実施形態では、トップハット部材134は、第1のアームトップハット部材と呼ぶことができ、トップハット部材140は、第2のアームトップハット部材と呼ぶことができる。中間トップハット部材132は、第1のテンショナアーム14に係合して支持するように、近位に向けられたシリンダを有するように示されているが、代替的に、中間トップハット部材132は、シリンダ136が遠位に向けられて第2のテンショナアーム16を支持し、フランジ138が第2のテンショナアーム16の近位面130と直接係合するように配向することが可能である。このような場合、付勢部材112は、フランジ138の近位に配置され、第1のテンショナアーム14と共に移動することになる。
【0050】
アーム14及び16は、何らかの適切な構成を有することができる。例えば、アーム14は、アーム14上で遠位に配置されたプーリー46を有することができ、一方で、アーム16は、アーム16上で近位に配置されたプーリーを有することができる。対照的に、
図13に示す実施形態では、両方のアーム14及び16上のプーリー46及び48は、遠位に配置されている。
図14に示す実施例では、プーリー46及び48はアーム14及び16上で近位に配置されている。
【0051】
当業者であれば、特許請求の範囲の適正な意味から逸脱することなく本明細書で説明した実施形態に対して様々な変更を行うことができることを理解できるはずである。