(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】数値制御式の工作機械を測定する方法に適用する、数値制御式の工作機械において使用するための装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20220113BHJP
G01B 21/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B23Q17/00 Z
G01B21/00 A
(21)【出願番号】P 2019534103
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2017083727
(87)【国際公開番号】W WO2018115071
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2019-09-05
(31)【優先権主張番号】102016226073.1
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508268090
【氏名又は名称】デッケル マホ プフロンテン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】DECKEL MAHO Pfronten GmbH
【住所又は居所原語表記】DECKEL-MAHO-Strasse 1, 87459 Pfronten, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー, マルツェル
(72)【発明者】
【氏名】マルチネック, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ロッホビーラー, トマス
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-097459(JP,A)
【文献】米国特許第05430948(US,A)
【文献】特開2009-133790(JP,A)
【文献】特表2004-502955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00
G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数値制御式の工作機械を測定するための方法に適用するための、前記数値制御式の工作機械で使用するための装置であって、前記装置は、
測定機械を介して測定するための第1の測定要素と、
前記測定機械を介して測定するための第2の測定要素と、
前記第1の測定要素と前記第2の測定要素とを互いに間隔を置いて配置するスペーサ要素と、
前記装置を前記工作機械
の機械部品に締結するための第1の締結部分を有する第1の締結要素と、
前記装置を前記工作機械の前記機械部品に締結するための第2の締結部分を有する第2の締結要素と、を備え、
前記第1の締結要素及び前記第2の締結要素は、互いに間隔を置いて前記スペーサ要素に配置され、
前記第1の締結要素及び前記第2の締結要素は、それぞれ、ロック可能な接続
部を介して前記スペーサ要
素及び/又
は前記測定要素のそれぞれ1つに締結されて
おり、
前記第1の締結要素と前記スペーサ要素及び/又は前記測定要素のそれぞれ1つとの間の前記ロック可能な接続部は、第1の中間要素を備え、第1のジョイント部が前記第1の締結要素と前記第1の中間要素との間に配置されており、第2のジョイント部が前記第1の中間要素と前記スペーサ要素及び/又は前記測定要素のそれぞれ1つとの間に配置されている、装置。
【請求項2】
前記第1の中間要素は、前記第1のジョイント部及び前記第2のジョイント部を同時にロックするためのロック手段を有していることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記第1の測定要素及び前記第2の測定要素は、それぞれ、剛性接続を介して前記スペーサ要素に締結されることを特徴とする、請求項1
又は2記載の装置。
【請求項4】
前記スペーサ要素は、前記第1の測定要素と前記第2の測定要素との間に配置される部分を有しており、且つ3.0×10
-6K
-1以下の熱膨張係数を有する材料から形成されており、又は
前記スペーサ要素は、前記第1の測定要素と前記第2の測定要素との間に配置される部分を有しており、且つ前記第1の測定要素と前記第2の測定要素との間の間隔方向において、3.0×10
-6K
-1以下の熱膨張係数を有する材料から形成されていることを特徴とする、
請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記スペーサ要素は、少なくとも前記第1の測定要素と前記第2の測定要素との間に3.0×10
-6K
-1以下の熱膨張係数を有する材料を含み、又は
前記スペーサ要素は、前記第1の測定要素と前記第2の測定要素との間の間隔方向において少なくとも前記第1の測定要素と前記第
2の測定要素との間に、3.0×10
-6K
-1以下の熱膨張係数を有する材料を含むことを特徴とする、
請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記スペーサ要素は、炭素繊維強化プラスチックから形成される部分であって前記第1の測定要素と
前記第2の測定要素との間に配置される部分を有しており、又は
前記スペーサ要素は、炭素繊維強化プラスチックから形成されることを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記スペーサ要素は、炭素繊維ロッドとして構成されることを特徴とする、請求項
6記載の装置。
【請求項8】
前記スペーサ要素は、石英ガラスで形成される部分であって前記第1の測定要素と前記第2の測定要素との間に配置される部分を有しており、又は
前記スペーサ要素は、石英ガラスで形成されていることを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記スペーサ要素は、石英ガラスロッドとして構成されることを特徴とする、請求項
8記載の装置。
【請求項10】
前記第1の測定要素及び/又は前記第2の測定要素は、測定ボールであるか、又は少なくとも1つの測定ボール部分を有することを特徴とする、請求項1から
9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記第1の締結要素及び/又は前記第2の締結要素は、前記ロック可能な接続
部のロック解除状態において、前記スペーサ要素に対して旋回可能及び/又は自由に回転可能であることを特徴とする、請求項1から
10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記第1の締結要素及び/又は前記第2の締結要素の前記ロック可能な接続
部が、1つ以上のジョイント部を有することを特徴とする、請求項1から
11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記第1の締結要素及び/又は前記第2の締結要素の前記1つ以上のジョイント部は、回転ジョイント部及び/又はボールジョイント部であることを特徴とする、請求項
12記載の装置。
【請求項14】
前記第2の締結要素は、
第2の中間要素を介して前記スペーサ要
素及び/又
は前記測定要素のそれぞれ1つと接続されており
、第3のジョイント部が前記第2の締結要素と前記第2の中間要素との間に配置されており、第4のジョイント部が前記第2の中間要素と前記スペーサ要
素及び/又は前記測定要素のそれぞれ1
つとの間に配置されている、請求項1から
13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
前記第2の中間要素は、前記第3のジョイント部及び
前記第4のジョイント部を同時にロックするためのロック
手段を有することを特徴とする、請求項
14記載の装置。
【請求項16】
前記第1の締結要素及び/又は前記第2の締結要素は、前記工作機械の前記機械部品に締結するための磁気ホルダを含むことを特徴とする、請求項1から
15までのいずれか1項載の装置。
【請求項17】
前記磁気ホルダは、切り替え可能な電磁石及び/又は機械的に切り替え可能な磁気ベースを含むことを特徴とする請求項
16に記載の装置。
【請求項18】
前記スペーサ要素は、前記第1の測定要素と前記第2の測定要素との間の所定の距離を規定することを特徴とする請求項1から
17までのいずれか項記載の装置。
【請求項19】
前記第1の測定要素と前記第2の測定要素との間の前記所定の距離は、100mm以上であることを特徴とする請求項
18記載の装置。
【請求項20】
前記第1の測定要素と前記第2の測定要素との間の前記所定の距離は、800mm以下であることを特徴とする、請求項
18又は
19記載の装置。
【請求項21】
前記装置は、所定の工作機械で使用するために提供され、
前記工作機械は、制御可能な直線軸を含み、
前記スペーサ要素は、前記第1の測定要素と前記第2の測定要素との間に所定の距離を有しており、前記距離は、前記制御可能な直線軸の軸方向長さの30%~70%であることを特徴とする、請求項
18から
20までのいずれか1項記載の装置。
【請求項22】
数値制御式の工作機械と、
請求項1から
21までのいずれか1項記載の数値制御式の工作機械で使用するための装置と、を含むシステム。
【請求項23】
数値制御式の工作機械の測定方法であって、
前記工作機械の作業スピンドル内に測定機械を収容するステップと、
直線的及び/又は回転的に変位可能な前記工作機械の機械部品
に装置を取り付けるステップ
であって、前記装置は、
前記測定機械を介して測定するための第1の測定要素と、
前記測定機械を介して測定するための第2の測定要素と、
前記第1の測定要素と前記第2の測定要素とを互いに間隔を置いて配置するスペーサ要素と、
前記装置を前記工作機械の前記機械部品に締結するための第1の締結部分を有する第1の締結要素と、
前記装置を前記工作機械の前記機械部品に締結するための第2の締結部分を有する第2の締結要素と、を備え、
前記第1の締結要素及び前記第2の締結要素は、互いに間隔を置いて前記スペーサ要素に配置され、
前記第1の締結要素及び前記第2の締結要素は、それぞれ、ロック可能な接続部を介して前記スペーサ要素及び/又は前記測定要素のそれぞれ1つに締結されている、ステップと、
前記工作機械の前記機械部品の少なくとも2つの位置において、前記測定機械を用いて前記第1の測定要素のそれぞれの実際の位置を決定するステップと、
前記工作機械の前記機械部品の少なくとも2つの位置において、前記測定機械を用いて前記第2の測定要素のそれぞれの実際の位置を決定するステップと、
前記工作機械の前記機械部品の少なくとも2つの位置における前記第1の測定要素及び前記第2の測定要素の決定された実際の位置と、前記工作機械の前記機械部品の少なくとも2つの位置における前記第1
の測定要素及び
前記第2の測定要素のそれぞれの目標位置と、
前記第1の測定要素及び前記第2の測定要素のそれぞれの前記実際の位置を決定するステップの間一定に保たれる前記第1の測定要素
と前記第2の測定要素
との間の既知の距離と、に基づいて、前記工作機械の1つ又は複数の制御可能な軸の1つ又は複数の座標基準パラメータを決定するステップと、を備える測定方法。
【請求項24】
数値制御式の工作機械の測定方法であって、
前記工作機械の作業スピンドル内に測定機械を収容するステップと、
直線的及び/又は回転的に変位可能な前記工作機械の機械部品
に装置を取り付けるステップ
であって、前記装置は、
前記測定機械を介して測定するための第1の測定要素と、
前記測定機械を介して測定するための第2の測定要素と、
前記第1の測定要素と前記第2の測定要素とを互いに間隔を置いて配置するスペーサ要素と、
前記装置を前記工作機械の前記機械部品に締結するための第1の締結部分を有する第1の締結要素と、
前記装置を前記工作機械の前記機械部品に締結するための第2の締結部分を有する第2の締結要素と、を備え、
前記第1の締結要素及び前記第2の締結要素は、互いに間隔を置いて前記スペーサ要素に配置され、
前記第1の締結要素及び前記第2の締結要素は、それぞれ、ロック可能な接続部を介して前記スペーサ要素及び/又は前記測定要素のそれぞれ1つに締結されている、ステップと、
前記工作機械の周囲温度を検知するステップと、
前記第1の測定要素のそれぞれ決定された実際の位置の時点での前記工作機械の検知された周囲温度に対する前記工作機械の前記機械部品の少なくとも2つの位置において、前記第1の測定要素のそれぞれの実際の位置を前記測定機械によって決定するステップと、
前記第2の測定要素のそれぞれ決定された実際の位置の時点での前記工作機械の検知された周囲温度に対する前記工作機械の前記機械部品の少なくとも2つの位置において、前記第2の測定要素のそれぞれの実際の位置を前記測定機械によって決定するステップと、
それぞれ検知された周囲温度に対する前記第1の測定要素及び前記第2の測定要素のそれぞれ決定された実際の位置を、前記工作機械の基準温度に調整するステップと、
前記工作機械の前記基準温度に対する前記工作機械の前記機械部品の前記少なくとも2つの位置における前記第1の測定要素及び前記第2の測定要素の決定された実際の位置と、前記工作機械の前記基準温度に対する前記工作機械の前記機械部品の前記少なくとも2つの位置における前記第1の測定要素及び前記第2の測定要素のそれぞれの目標位置と、前記工作機械の前記基準温度に対する前記第1の測定要素及び前記第2の測定要素の間の既知の距離と、に基づいて、前記工作機械の1つ又は複数の制御可能な軸の1つ又は複数の座標基準パラメータを決定するステップと、を備える測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御式の工作機械を測定する方法に適用する、数値制御式の工作機械において使用するための装置に関する。さらに、本発明は、方法自体、並びに数値制御式の工作機械と本発明に係る装置を備えるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばEP1696289A1又はDE102010038783A1から知られている工作機械の測定方法は、とりわけ正確度偏差に関し工作機械を検査するために使用される。これらの偏差は、例えば、ガイドの摩耗から、又は可動機械部品の相互の衝突によって生じる可能性がある。
【0003】
EP1696289A1には、工作機械の回転軸を測定する方法が記載されている。ここで、測定ボールは、測定ボールが取り付けられる回転軸をさらに旋回させることから生じる2つの測定位置(2点測定)で探査される。測定ボールの半径は既知であるので、例えば機械座標系に関して、それぞれの測定位置における測定ボールのそれぞれのボール中心点(又は別の測定ボール基準点)の空間位置は、(測定ボールの2つの測定位置のそれぞれにおいて)測定ボール表面の3つの点で探査し且つ3つの表面点の座標を決定することによって、決定することができる。2つの測定位置とそれぞれ決定された空間位置との間の回転軸の旋回角度から、回転軸の中心点位置が決定される。
【0004】
2つの測定値の座標から、測定ボールが取り付けられた回転軸の旋回点が決定される。直線軸を計算するために、上述の2点測定を回転軸上の異なる高さで繰り返すことができ、それによって、この高さに対する旋回点を2点測定から計算することができる。両方の旋回点の接続は、回転軸の方向を決定するために使用される。
【0005】
DE102010038783A1には、機械の直線軸を移動させることによって回転軸の円周上のゲージの複数の位置を探査し、この探査によって回転軸の移動を決定する方法が記載されている。このようにして決定された測定値は、探査された点の座標を通る円形経路を計算的に決定するために使用される。また、回転軸と探査直線軸との間の相対的な傾斜誤差を決定するために測定結果が使用されてもよいと記載されている。
【0006】
さらに、測定システム製造業者RENISHAWによって機械の正確度をチェックするための方法(及び対応する装置)が知られており、測定(真円度試験)は、「ボールバー」によって、完全な円及び部分的な円の両方にわたって実施することができる。測定は、機械の3つの平面全てから1つのクランプで行われる。3つの関連する測定値に基づいて、機械の体積正確度を決定することができる。
【0007】
しかしながら、上述の方法は、使用される測定セットアップが、特定の軸を測定するために部分的に移動されなければならないという点で、いくつかの欠点を有する。しかしながら、測定セットアップを動かすことは、軸の測定の持続時間を増加させ、また、測定に追加の不確実性を導入するリスクを伴う。RENISHAWのシステムの別の欠点は、真円度試験の多くが比較的限定された部分円にわたってしか実行できず、その結果、横断されていない領域における機械の不正確さが「見逃される」可能性があることである。また、RENISHAWの方法では、作業スピンドルと機械テーブルとの間の円運動を解析するために、機械テーブルの回転中心に支持部材が取り付けられている。したがって、テーブルの回転中心上の正確な位置決めは事実上不可能であり、回転中心に非常に近い位置決めはわずかな測定しかできず、それに基づいて機械テーブルの「実際の」回転中心の位置についての結論を導き出さなければならないので、支持要素の重大な位置決め誤差は円運動の偏差を重ね合わせる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、上記の問題を回避することができ、それに基づいて工作機械の幾何学的形状の最適化を実行することができる、数値制御式の工作機械を測定する方法に適用する、数値制御式の工作機械において使用するための装置を提供することである。
【0009】
さらに、本発明の目的は、本発明による装置を用いて実施することができる方法、並びに本発明による装置及び工作機械を備えるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、請求項1に記載の装置、請求項23に記載のシステム、及び請求項24に記載の方法によって達成される。従属請求項は、本発明による装置の有利な実施形態に関する。
【0011】
数値制御式の工作機械を測定する方法に適用する、数値制御式の工作機械において使用するための本発明による装置は、測定機械を介して測定するための第1の測定要素と、測定機械を介して測定するための第2の測定要素と、第1の測定要素及び第2の測定要素を互いに離間して配置するスペーサ要素と、装置を工作機械の機械部品に固定するための少なくとも1つの締結部分と、を備える。
【0012】
測定要素の適切な配置を有する本発明による装置によって、工作機械の複数の軸を1つの測定サイクルで測定することができ、それらの対応する誤差(直線軸の真直度、交差角度、直線軸の補償誤差、回転軸のピッチ誤差、回転軸の転倒など)を決定することができる。例えば、5軸の工作機械では、3つの直線軸と2つの回転軸とを1サイクルで測定することができる。しかし、様々な他のタイプの工作機械(例えば、旋盤、研削機、浸食機など)も、本発明の装置で有利に測定することができる。次に、得られた結果を用いて、対応する工作機械が(例えば、ガイド、ベアリングなどを再加工又は交換することによって)より精巧な修正を受けなければならないかどうか、あるいは、補償、すなわち機械パラメータの調整(目標値/目標位置の補正)の著しく長い時間及びコスト節約の可能性が代わりに存在するかどうかを決定することができる。
【0013】
これにより、機械の運動学に加えて、機械の基本的な幾何学的形状(正確度)を較正することが可能になる。
【0014】
スペーサ要素によって互いに間隔を置いて配置され、例えば、測定要素の位置を測定するために測定プローブによって探査される2つの測定要素の使用(ボール距離測定)は、とりわけ、工作機械を測定するための方法を著しく簡略化する。ユーザは、装置を機械部品の上に一度だけ位置決めすればよく、工作機械の構成に従って位置決めされた装置によって全ての軸を測定することができる。
【0015】
測定要素の位置を検出するための測定プローブの使用は、点測定システムの一例に過ぎず、以下の例としてさらに使用される。しかし、任意の他の点測定システム、例えば、レーザスポットメータ又はエアギャップメータを使用することができる。
【0016】
加えて、2つの測定要素によって位置当たりのより多くの測定点を検出することができるため、装置によって、取り付けられた装置を用いて機械部品の異なる位置の細かい細分化を省略することが可能である。したがって、工作機械の軸をより粗いステップで測定することができ、それによって方法全体を高速化することができる。
【0017】
上述の装置の利点は、測定要素間の距離が既知であるだけでなく、数回の測定サイクルにわたってできるだけ一定に保つことができることである。例えば、機械の連続運転中に、機械内の温度分布及び値が変化するので、これらの変化は、スペーサ要素の状態、ひいては測定に反映され得る。このため、周囲条件の予想される変化にほとんど影響されないスペーサ要素が選択された。
【0018】
したがって、この距離は、一種の「長さ標準」として、したがって、周囲条件が変化するより長い測定サイクルにわたってさえ、機械を測定するための基準値として使用することができる。
【0019】
不完全な測定配置に起因する測定要素の測定における誤差を回避するための上述の装置の別の重要な特徴は、測定要素がスペーサ要素と共に、非常に小さい張力を生成しながら機械部品に固定され得ることである。
【0020】
これは、締め付け及び/又は磁気締め付け及び/又は固定の複数オプションを有することによって達成される。これらのオプションは、測定要素をスペーサ要素と共に機械部品の上に所望のように位置決めし、次いで、スペーサ要素の位置を測定要素と共に機械部品に対して固定することを可能にする。装置は、機械部品の上に固定されるだけでなく、さらに、例えば、ワークピースを用いた工作機械の測定に続いて処理される対応するワークピースの上に固定されてもよく、又は、機械部品とワークピースとの組み合わせで固定されてもよいことに留意されたい。
【0021】
したがって、必要な正確度を有する工作機械の高精度部品を対応して製造するために、工場に存在する機械置場(machine park)の工作機械の非常に迅速な分類が可能である。さらに、工作機械の対応する不正確さを知ることによって、製造される部品がどの正確度を有するかを予測することができる。
【0022】
本発明による装置の適用及びそれに基づく工作機械のその後の較正により、本発明者らは、工作機械を測定するための装置を非常に単純かつ複雑でなく保ちながら、機械の正確度の著しい向上を達成することができた。
【0023】
本発明による装置の特に有利なさらなる改良形態は、第1の測定要素及び第2の測定要素がそれぞれ、剛性接続を介してスペーサ要素に固定されることである。
【0024】
この時点で、及び以下で、スペーサ要素に対する測定要素の相対位置が固定されることを確実にするために、剛性接続が理解されるべきである。したがって、剛性接続は、測定要素とスペーサ要素との間の頑丈且つ固定された接続であると考えることもでき、その結果、測定要素とスペーサ要素とは、互いに分離されるだけであってもよく、又は、これらの要素の相対位置は、取り付け/固定を解除することによってのみ変更されてもよい。これは、特に複数の測定で、測定結果を遡って調べるのに非常に有利である。接続を解除することによって、測定要素間の予め定められた距離及び予め定められた位置が失われ、その結果、スペーサ要素上又はスペーサ要素での測定要素の新たな取り付けの後に、本発明による装置を再び測定しなければならない。
【0025】
剛性接続は、2つの測定要素及びスペーサ要素がユニットを形成することを確実にする。このユニットを一種の「長さ標準」として形成することだけが可能である。これは、測定結果の正確度に関する工作機械の測定にとって、及び測定中の基準値としての可能な使用にとって重要である。
【0026】
さらに、本発明による装置は、スペーサ要素が第1の測定要素と第2の測定要素との間に配置された部分を有し、その部分が3.0×10-6K-1以下特に1.0×10-6K-1以下の熱膨張係数を有する材料から形成され、又はスペーサ要素が、第1の測定要素と第2の測定要素との間に配置された部分であって、第1の測定要素と第2の測定要素との間の間隔方向に3.0×10-6K-1以下特に1.0×10-6K-1以下の熱膨張係数を有する材料から形成された部分を有するという点で、有利にさらに改良させることができる。
【0027】
さらに、本発明による装置は、スペーサ要素が少なくとも第1の測定要素と第2の測定要素との間に、3.0×10-6K-1以下特に1.0×10-6K-1以下の熱膨張係数を有する材料を含むか、又はスペーサ要素が、第1の測定要素と第2の測定要素との間の間隔方向における少なくとも第1の測定要素と第2の測定要素との間に、3.0×10-6K-1以下特に1.0×10-6K-1以下の熱膨張係数を有する材料を含むという点で、有利にさらに改良させることができる。
【0028】
いずれにしても、スペーサ要素全体、又は第1の測定要素と第2の測定要素との間に配置されるスペーサ要素の一部のいずれかが、周囲温度の変化にほとんど影響されないように、比較的低い熱膨張係数を有する材料からなる場合に有利である。
【0029】
本発明による装置の有利なさらなる改良は、スペーサ要素が炭素繊維強化プラスチックから形成される、第1の測定要素と第2の測定要素との間に配置される部分を有するか、又はスペーサ要素が炭素繊維強化プラスチックから形成されるか、又はスペーサ要素が炭素繊維ロッドとして形成されることである。
【0030】
炭素繊維強化プラスチック又は炭素繊維ロッドは、本発明者らの最初の実験において非常に有利であることがすでに証明されているが、これは、この材料及びそれから作製されたロッド形状スペーサが、非常に低い熱膨張係数を有するだけでなく、得られるスペーサ要素も、曲げ及び圧縮/引張応力に対して非常に耐性があり、しかもなお比較的軽量であるからである。これは、ロッド状スペーサ要素が、それ自身の低重量によって(垂直配置の外側で)著しく変形が少なく、したがって、ロッド状スペーサ要素が工作機械内に配置される位置にかかわらず、2つの測定要素間の所定の距離が不確実性によって影響されにくいので、非常に有利である。
【0031】
本発明による装置は、スペーサ要素が、第1の測定要素と第2の測定要素との間に配置された、石英ガラスから形成される部分を有するか、又はスペーサ要素が石英ガラスから形成されるか、又はスペーサ要素が石英ガラスロッドとして構成されるという点で、さらに改良されてもよい。
【0032】
非常に低い熱膨張係数のためにスペーサ要素を形成するのに有利な別の材料は、石英ガラスである。炭素と同様に、この材料は、温度変化の影響を非常に受けにくい。しかし、スペーサ要素をそれと共に形成する場合には、そのより高い密度を考慮すべきである。
【0033】
しかしながら、炭素繊維ロッド又は石英ガラスロッドの代わりに、例えば、コストの節約及び/又はより低い正確度要件を理由に、金属材料をスペーサに使用することもできる。金属材料は、炭素繊維材料又は石英ガラスと比較して著しく高い熱膨張係数を有しており、したがって、周囲温度の変化に対してはるかに強く反応する。さらに、金属材料で作られたスペーサ要素は、例えば、炭素繊維ロッドよりも著しく高い重量を有することがあり、これは、装置の特定の位置における測定の正確度にさらに影響を及ぼすことがある。
【0034】
可能な本発明による装置の特に有利な更なる改良形態は、第1の測定要素及び/又は第2の測定要素が測定ボールであるか、又は少なくとも1つの測定ボール部分を有することである。
【0035】
測定中に測定要素を測定点として取り扱うために、測定要素をボール又は球形部分として構成することが特に有利であることが証明されている。この形状によれば、プローブがどの側から測定要素に接触しているかに関わらず、ボール/ボール部分の既知の半径を用いてボール/ボール部分の中心点を検出し、検出された中心点を測定点として用いることができる。
【0036】
ボール又はボール部分が、例えば測定プローブによって探査することができる、可能な限り最大の露出面積を有する場合、特に有利である。これは、各ボールの中心点の決定を別々に行うことができるという利点を有する。また、ボールをほとんどの側から検出することができるので、ボール同士の位置ずれは容易に認識することができる。どちらの利点も、測定の正確度をさらに高める可能性を提供する。
【0037】
本発明による装置は、当該装置を工作機械の機械部品に締結するための第1の締結部分を有する第1の締結要素と、工作機械の機械部品に締結するための第2の締結部分を有する第2の締結要素とによって更に有利に改良されてもよく、この場合、第1の締結要素及び第2の締結要素は、スペーサ要素上で互いに間隔を空けて配置される。
【0038】
さらに、本発明による装置は、有利には、第1の締結要素及び第2の締結要素のそれぞれを、スペーサ要素及び/又は複数の測定要素のそれぞれ1つに堅固な接続を介して締結することによって、さらに改良することができる。
【0039】
これにより、測定要素及びスペーサ要素からなるユニットを機械部品に多点で取り付けることができ、このユニットをより安定して配置することができる。ここで、好ましい例は、装置の2点取り付けである。それにもかかわらず、1つのみ又は2つ以上の締結要素を有する締結が可能である。したがって、2点取り付けは、様々な可能性から選択される例として以下で理解されるであろう。この場合も、装置は、機械部品に固定されるだけでなく、対応するワークピースに固定されてもよく、又は機械部品とワークピースとの組み合わせで固定されてもよいことを明確に指摘しておく。
【0040】
本発明による装置は、有利には、第1の締結要素及び第2の締結要素が、それぞれ、ロック可能な接続部を介して、スペーサ要素及び/又は複数の測定要素のそれぞれ1つに締結されることによって、さらに改良することができる。
【0041】
ロック可能な接続部は、締結要素に対し、スペーサ要素及び/又は測定要素の位置が依然として可変である間に、締結要素を機械部品に固定することを可能にする。これは、スペーサ要素を有する測定要素の応力のない配置のために特に重要である。なぜなら、それによってのみ、先に規定された距離が、工作機械における配置及び固定の後でさえ、スペーサ要素によって維持されることがほとんど確実にされ得るからである。
【0042】
本発明による装置の有利な改良は、第1の締結要素及び/又は第2の締結要素が、ロック可能な接続部のロック解除状態において、スペーサ要素に対して旋回可能及び/又は自由に回転可能であることである。
【0043】
本発明による装置は、1つ又は複数のジョイント、特に回転ジョイント及び/又はボールジョイントを有する第1の締結要素及び/又は第2の締結要素のロック可能な接続部によって有利に改良することができる。
【0044】
特に、締結要素とスペーサ要素又は測定要素との間の接続が複数の回転自由度を有する可能性は、空間の状態が可能な限り張力なしであることを可能にし、したがって、(「長さ標準」の重要な部分としての)スペーサ要素によって予め規定される距離が可能な限り影響を受けないことを可能にする。したがって、特に、回転ジョイント及び/又はボールジョイントは、スペーサ要素を測定要素に張力のない方法で固定するための好ましい選択肢である。
【0045】
本発明による装置の特に有利な改良は、第1の締結要素が第1の中間要素を介してスペーサ要素及び/又は複数の測定要素のそれぞれ1つに接続されることであり、この場合、第1の継手は第1の締結要素と第1の中間要素との間に配置されており、第2の継手は第1の中間要素とスペーサ要素及び/又は複数の測定要素のそれぞれ1つとの間に配置されており、及び/又は第2の締結要素が第2の中間要素を介してスペーサ要素及び/又は複数の測定要素のそれぞれ1つに接続されており、第3の継手は第2の締結要素と第2の中間要素との間に配置されており、第4の継手は第2の中間要素とスペーサ要素及び/又は複数の測定要素のそれぞれ1つとの間に配置されている。
【0046】
スペーサ要素と測定要素との取り付けの柔軟性をさらに高めるために、また、張力のない配置の要件を満たすために、締結要素と測定要素又はスペーサ要素との間に配置される中間要素が使用されてもよい。これらの中間要素の各々は、締結要素をスペーサ要素及び/又は測定要素に接続するために設けられた少なくとも2つのジョイント部を有する。これらのジョイント部は、やはり、複数の回転自由度を有することができ、これにより、最初に締結要素を機械部品に対して固定し、次に、測定要素をスペーサ要素と共に締結要素に対して固定することが可能になる。
【0047】
本発明による装置は、第1のジョイント部及び第2のジョイント部を同時にロックするためのロック手段を有する第1の中間要素、及び/又は第3のジョイント部及び第4のジョイント部を同時にロックするためのロック手段を有する第2の中間要素によって、さらに有利に改良することができる。
【0048】
さらに、可能な限り張力のない測定要素を有するスペーサ要素の状態は、ロックが中間要素を介して達成されるときに達成することができ、少なくとも2つのジョイントは、中間要素をロックするときに同時に固定/ロックされる。この目的のために、既に上述したような締め付けロックの選択肢が再び有利である。
【0049】
本発明による装置は、工作機械の機械部品に取り付けるための磁気ホルダを含む第1の締結要素及び/又は第2の締結要素によってさらに有利に改良することができる。
【0050】
その結果、磁化可能な全ての表面上での装置の非常に柔軟な使用が可能である。したがって、装置は、工作機械内の既存のねじ込み点又は同様の格子依存の締結オプションによって締結されることに依存せず、磁気ホルダによる工作機械(又はその構成要素)の測定に必要な工作機械の部品上の任意の場所に取り付けることができる。
【0051】
本発明による装置は、切り替え可能な電磁石及び/又は機械的に切り替え可能な磁気ベースを含む磁石ホルダによってさらに有利に改良することができる。
【0052】
電気的に操作される磁気コイルと、(例えば、磁気ベース内に設置された永久磁石の位置を変更することによって)純粋に機械的に切り換えられる磁気ベースとの両方が、装置を工作機械内に固定するために使用されてもよい。
【0053】
さらに、締結要素を工作機械の機械部品に締結するために、解除可能な接着結合、並びに締結接続(ねじ接続、クランプなど)を使用することもできる。
【0054】
本発明による装置の有利な改良は、スペーサ要素が、第1の測定要素と第2の測定要素との間の所定の距離を画定することである。
【0055】
有利には、スペーサ要素はまた、非常に低い熱膨張係数を有し、その結果、第1の測定要素と第2の測定要素との間の所定の距離は、変化する周囲条件(例えば、温度変化)の下でさえも維持され得る。
【0056】
本発明による装置は、第1の測定要素と第2の測定要素との間の所定の距離が100mm以上、特に200mm以上、特に300mm以上であることによって有利に改良することができる。
【0057】
さらに、本発明による装置は、有利には、第1の測定要素と第2の測定要素との間の所定の距離が800mm以下、特に700mm以下、特に600mm以下であることによってさらに改良することができる。
【0058】
これらの距離は、本発明による装置の原理の第1の適用試験において有利であることが分かっており、異なるテーブルサイズ及び作業空間容積の多数の工作機械における使用を可能にする。
【0059】
本発明による装置の有利な改良形態は、装置が所定の工作機械での使用のために提供されることであり、この場合、工作機械は制御可能な直線軸を有し、スペーサ要素は、制御能な直線軸の軸方向長さの30%~70%、特に40%~60%、特に実質的に50%である、第1の測定要素と第2の測定要素との間の所定の距離を有する。
【0060】
テーブルサイズ及び制御可能な直線軸の軸長に応じて、2つの測定要素間のより長い距離又はより短い距離を選択することは意味がある。ある距離(例えば、軸方向長さの約50%)は、制御可能な直線軸の軸方向長さに関して有利であることが証明されており、その結果、機械のサイズに適合された装置のサイズは、好ましくは、工作機械の正確度(機械形状)の迅速な評価のために使用され得る。
【0061】
しかしながら、2つの測定要素間の距離がより小さいか又はより大きいことも、対応する用途にとって有利であり得る。例えば、工作機械の軸方向長さの50%未満に対応する距離が有利であり得る。工作機械を複数回測定するために装置を変位させることはより複雑であるが、有意により多くの測定点を検出することを可能にし、それに基づいて、機械の正確度のより詳細な、したがってより正確な評価が可能である。
【0062】
本発明によるシステムは、数値制御式の工作機械と、前述の態様/改良の1つによる数値制御式の工作機械で使用するための装置とを含む。
【0063】
本発明による数値制御式の工作機械を測定する方法は、以下のステップを含んでおり、即ち、工作機械の作業スピンドル上で測定機械を受けるステップと、前述の改良の1つによる装置を工作機械の直線的及び/又は回転的に変位可能な機械部分に取り付けるステップと、工作機械上の機械部分の少なくとも2つの位置において、測定プローブを用いて第1の測定要素のそれぞれの実際の位置を決定するステップと、工作機械上の機械部分の少なくとも2つの位置において、測定機械を用いて第2の測定要素のそれぞれの実際の位置を決定するステップと、工作機械の機械部分の少なくとも2つの位置における第1の測定要素及び第2の測定要素の決定された実際の位置と、工作機械の機械部品の少なくとも2つの位置における第1の測定要素及び第2の測定要素のそれぞれの目標位置と、第1の測定要素及び第2の測定要素の間の既知の距離と、に基づいて工作機械の1つ又は複数の制御可能な軸の1つ又は複数の座標基準パラメータを決定するステップと、を含んでいる。
【0064】
ここで、測定機械として点測定システムを使用することができ、これは、好ましい測定機械としての測定プローブに加えて、レーザスポットメータ又はエアギャップメータを含むこともできる。
【0065】
例えば、測定プローブ及び対応する測定要素を使用する測定で一般的であるように、測定要素の少なくとも2つの位置が、測定プローブによって連続的に取得され、次いで、測定要素が理想的に有するべきであった位置と比較され、測定要素の相互の距離が、この方法において(例えば、基準値として)さらに考慮される。本明細書に開示される方法は、第2の測定要素による測定を後で開始するために、第1の測定要素の複数の位置を最初に取得することに限定されない。むしろ、第1の測定要素又は第2の測定要素の第2の位置で測定を続けるために、第1の測定要素及び第2の測定要素の第1の位置のみが、装置が対応する機械部品と共に移動される前に取得されてもよい。
【0066】
さらに、本方法は、装置が取り付けられた機械部品の表面に平行な平面に2つの測定要素を配置することにも限定されない。装置が上述の中間要素を含む場合、例えば、1つの測定サイクルで5軸工作機械の5つの軸すべてを測定するために、測定要素間に意図的に高さオフセットを設けることも可能である。
【0067】
本発明による数値制御式の工作機械を測定する方法は、以下のステップを含んでおり、即ち、工作機械の作業スピンドル上で測定機械を受けるステップと、請求項1~22のいずれか1項に記載の装置を直線的及び/又は回転的に変位可能な工作機械の機械部分に取り付けるステップと、工作機械の周囲温度を検知するステップと、第1の測定要素のそれぞれ決定された実際の位置の時に、工作機械の検知された周囲温度に対し、測定機械を用いて、工作機械の機械部分の少なくとも2つの位置において第1の測定要素のそれぞれの実際の位置を決定するステップと、第2の測定要素のそれぞれ決定された実際の位置の時に、工作機械の検知された周囲温度に対し、測定機械を用いて、工作機械の機械部分の少なくとも2つの位置において第2の測定要素のそれぞれの実際の位置を決定するステップと、第1の測定要素及び第2の測定要素のそれぞれ決定された実際の位置を、それぞれ検知された周囲温度に対して工作機械の基準温度に調節するステップと、工作機械の基準温度に対する工作機械の機械部品の少なくとも2つの位置における第1及び第2の測定要素の決定された実際の位置と、工作機械の基準温度に対する工作機械部品の少なくとも2つの位置における第1及び第2の測定要素のそれぞれの目標位置と、工作機械の基準温度に対する第1及び第2の測定要素間の既知の距離とに基づいて、工作機械の1つ以上の制御可能な軸の1つ以上の座標基準パラメータを決定するステップと、を含んでいる。
【0068】
絶対値を測定する場合、決定された実際値が他の目標値と比較できないので、実際値の温度調整を実行することが特に重要である。特に、温度変化(例えば、機械工場の一日中)が非常に大きい場合、温度調整は、機械の正確度又は機械の誤差の信頼性のある決定に不可欠であり得る。
【0069】
実際の位置のそれぞれの決定時に周囲温度を検出する方法を拡張することによって、決定された実際の位置の温度影響(測定中の温度変化など)の補正が可能である。これは、決定された位置を、それぞれの検出された周囲温度で工作機械の基準温度に調整することによって行われる。したがって、測定中に温度が変化した場合、目標位置/目標値は、通常、ある温度、この場合は基準温度に対して有効であるので、実際位置と目標位置との比較のみが可能である。
【0070】
ここで説明する方法では、測定機械として点測定システムを再び使用することができ、この点測定システムは、好ましい測定機械として測定プローブに加えてレーザスポットメータ又はエアギャップメータを含むこともできる。
【0071】
さらに、(ある温度に対する)目標値をそれぞれの周囲温度に調整することによって、温度の影響の補正を逆に行うこともできる。
【0072】
工作機械を測定するために本発明による装置を使用することは、1つの測定サイクルにおいて工作機械のすべての直線軸及び回転軸をさらに細かく確実に測定し、それに基づいて工作機械の運動学及び付加的な基本的な幾何学的形状を較正する可能性を提供するための簡単な方法であり、機械の正確度の著しい向上につながる。
【0073】
その他の態様及び利点、並びに上記の態様及び特徴の利点及びより具体的な実施形態は、以下の説明及び添付の図面に関する説明において記載されるが、決して限定的であることを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】
図1は、装置の第1の実施形態を有する機械部品(ここでは機械テーブル)と、その上に設置された測定プローブを有する作業スピンドルと、を有する工作機械を概略的に示す。
【
図2】
図2は、装置の第2の実施形態を有する機械部品(ここでは機械テーブル)と、その上に設置された測定プローブを有する作業スピンドルと、を有する工作機械を概略的に示す。
【
図3A】
図3Aは、装置の第2の実施形態を有する機械部品(ここでは機械テーブル)と、その上に設置された測定プローブを有する作業スピンドルと、を有する工作機械を概略的に示す。
【
図3B】
図3Bは、装置の第2の実施形態を有する機械部品(ここでは機械テーブル)と、その上に設置された測定プローブを有する変位された作業スピンドルと、を有する
図3Aによる工作機械を概略的に示す。
【
図4】
図4は、装置の第3の実施形態を有する機械部品(ここでは機械テーブル)と、その上に設置された測定プローブを備えた作業スピンドルと、有する工作機械を概略的に示す。
【
図5A】
図5Aは、スペーサ要素に沿って複数の測定要素を有する装置の第4の実施形態を示す。
【
図5B】
図5Bは、十字形のスペーサ要素、複数の測定要素(十字形のスペーサ要素の部分にも沿う)、及び装置の4点取り付けを有する装置の第5の実施形態を示す。
【
図6】
図6は、本発明による方法の実施形態のフローチャートを示す。
【
図7】
図7は、本発明による別の方法の実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図中の同一又は類似の要素は、同一の参照符号によって指定されてもよいが、異なる参照符号によって指定されてもよい。
【0076】
しかしながら、本発明は、以下に記載される実施形態及びその特徴に決して限定されるものではなく、むしろ、実施形態の修正、特に、記載される実施例の特徴の修正、又は記載される実施例の特徴の1つ以上の組み合わせによって、独立請求項の範囲内に含まれるものを含むことに留意されたい。
【0077】
図1は、装置1の第1の実施形態を有する機械部品20(ここでは機械テーブル)と、装置1に設置された測定プローブ10を有する作業スピンドル30と、を有する工作機械100を概略的に示す。
【0078】
装置1(測定装置1)は、2つの測定要素3を含み、各測定要素3は、スペーサ要素2の一端に取り付けられ、スペーサ要素2に固定的に接続される。さらに、
図1の装置は、2つの締結要素4を含み、それによって装置1を機械部品20に固定することができる。
【0079】
測定要素3の測定ボール(又は測定ボール部分)とスペーサ要素2との配置は、必ずしも1つの平面に限定される必要はない。
図1に示す例とは対照的に、測定要素3の測定ボールは、スペーサ要素2の長手方向軸の周りを互いに対して任意の角度だけ回転させることもできる。さらに、測定要素3の測定ボールは、スペーサ要素2の方向にさらに内側に配置されてもよいし、又は、スペーサ要素2のそれぞれの端部に接続して
図1に示されるx軸に沿って、スペーサ要素2に対して反対方向に、スペーサ要素2の端部からさらに外側に配置されてもよい。これは、y軸及びz軸に関して測定要素3の測定ボールにも同様に当てはまる。
【0080】
測定要素3及びスペーサ要素2は、剛性接続によって1つのユニットを形成し、この剛性接続は、一種の「長さ標準」としての参照目的のため、工作機械100の測定における後の使用を意図する。しかし、例えば、測定要素3及びスペーサ要素2の端部が、スペーサ要素2に対する測定要素3の位置を規定する機械的停止部を有する場合、剛性接続は、取り外し可能な接続によって置き換えられてもよい。これは、例えば、異なる形状の測定要素3又は異なる形状の測定ボール/測定ボール部分のために測定要素3を交換しなければならない場合に有利に使用することができるが、測定要素の距離の新たな測定は必ずしも必要ではない。
【0081】
さらに、スペーサ要素2の材料は、温度変化に対して非常に低い膨張係数を有するように選択される。好適な材料は、とりわけ、炭素繊維又は石英ガラスであり、炭素繊維の熱膨張係数は約‐0.1×10-6K-1であり、石英ガラスの熱膨張係数は約0.54×10-6K-1である。低い熱膨張係数を有する他の材料も、スペーサ要素として使用するのに適している。
【0082】
スペーサ要素2の端部に(
図1に示すように測定要素3にも)、装置1を機械部品20(ここでは機械テーブル)に固定するために、締結要素4がそれぞれ設けられている。この目的のために、締結要素4は、電磁石又は機械的に切り替え可能な永久磁石を含むことができ、それによって、各締結要素4を機械部品20の表面に締結することができる。加えて、磁気締結オプションの代わりに、装置1と機械部品20との間の着脱可能な接着結合を使用することが可能である。さらに、磁気締結の代わりに、又は磁気締結と組み合わせて、クランプ締結が、装置1を機械部品20に固定するために提供されてもよい。
【0083】
工作機械100の作業スピンドル30に受け入れられた測定プローブ10は、好ましくは、触覚的に、すなわち接触によって、装置1(測定装置1)の測定要素3を検出することができる。しかしながら、さらに、測定要素3の光学的検出(例えば、レーザスポットメータによる)も、工作機械100の機械座標系に対する測定要素3のそれぞれの位置を決定するために実行されてもよい。さらに、測定プローブ10は、検知素子3との接触を、例えば、容量的又は誘導的に検知することができるが、歪みゲージで使用されるような可変電気抵抗によって検知することもできる。
【0084】
工作機械100の作業スピンドル30は、
図1に示す直線軸を介して測定プローブ10をx、y、z方向に移動させ、したがって測定要素3の測定ボール/測定ボール部分を触覚的に検知するために使用することができる。測定要素3の測定ボール/測定ボール部分の既知の半径のおかげで、測定要素3の測定ボール/測定ボール部分の中心点を測定点として使用することができる。しかしながら、各測定ボール/測定ボール部分自体が理想的な球体からの形状の偏差を有することは事実であるので、測定プローブ10と測定要素3自体との間の接触点を測定点として使用することも可能であるが、これらは無視できるほど小さいことが多い。
【0085】
それにもかかわらず、測定要素3当たりの測定点としていくつかの接触点を用いて、測定要素3の位置、ひいては工作機械100の機械運動学及び基本的な幾何学的形状のさらに細かい画像を作成することができる。これは、次に、工作機械100の可能な後続の較正のため、及び機械の正確度を高めるために、非常に有用であることが証明され得る。
【0086】
さらに、
図1に示すように、機械テーブルは、工作機械100の機械部品20として、第1の回転軸及び第2の回転軸の周りを移動することができる。これにより、装置1の測定要素3の高さオフセットを生成することが可能になり、この場合、機械テーブルに又は高さオフセットを調整するための余分な要素(例えば、高さ要素40、
図2~
図3B参照)に、装置1を柔軟に位置決めする必要がない。これに基づいて、工作機械100の全ての軸を1つの測定サイクルで測定することができる。
【0087】
装置1(測定装置1)を機械テーブル上で機械テーブルに関して意図的に対称的に配置しないことは有利であり得る。むしろ、測定要素3の距離を常に可能な限り一定に保ちながら、測定要素3のその選択された距離を用いて、機械テーブルに対して可能な限り異なる測定要素3の位置を達成することを試みることができる。これは、例えば、工作機械100の測定された機械の誤差のそれぞれの原因を遡って調べる際の改善に使用することができる。
【0088】
一般に、工作機械100は、測定要素3の決定された位置を受け取り、必要に応じてこれを処理する評価ユニット50有する。この評価ユニットについては、ここではさらに明記しないい。さらに、評価ユニット50は、一般に、温度測定手段60に接続され、この温度測定手段60は、工作機械100の内部及び/又は工作機械100の外部の周囲温度を検知し、且つ、検知された値を評価ユニット50に送って、決定された位置値を考慮し得るように構成される。
【0089】
図1に示されるような直線軸と回転軸の分割は、3つの直線軸(L1、L2、L3)の全てに沿って移動可能な作業スピンドル30と、2つの回転軸(R1、R2)の周りにねじるだけの機械テーブルとに限定されないことに留意されたい。制御可能な軸の分割は、例えば、作業スピンドル30が2つの直線軸と(作業スピンドル30の作業軸に垂直な)回転軸とを有し、機械テーブルが直線軸と回転軸とを有するようなものであってもよい。工作機械100の制御可能な横断軸及び移動軸の数のこの分割又は可能な増加の種々のさらなる設計可能性が、ここで考慮されるべきである。
【0090】
図2は、装置1の第2の実施形態を有する機械部品20(ここでは機械テーブル)と、機械部品20に設置された測定プローブ10を有する作業スピンドル30とを有する工作機械100を概略的に示す。
【0091】
図1の装置1と比較して、
図2の装置は、2つの中間要素5も含み、それぞれの中間要素5は、2つのジョイント部7のうちの1つを介して締結要素4に接続され、2つのジョイント部7の他方を介して測定要素3に接続されている。ジョイント部7は、単純なヒンジの場合のように、回転自由度を有していてもよいし、ボールジョイントやユニバーサルジョイントのように、複数の回転自由度を有していてもよい。
【0092】
中間要素5の各々はロック手段6を更に有しており、ロック手段6は、締結要素4を機械部品20に固定し且つ測定要素3をスペーサ要素2と共に整列させた後に、締結要素4又は機械部品20に対して測定要素3及びスペーサ要素2の位置を固定するために使用することができる。ここで、使用される中間要素5のジョイント部7は、例えば、クランプされてもよく、又はジョイント部7の動きは、他の方法で防止されてもよい。ジョイント部7をクランプするために、例えば、中間要素5のジョイントベアリング部分をねじギアによって締結することが、ロック手段6として適切であり得る。しかし、例えば自転車で使用されるようなクイックリリース装置のような他の可能性も考えられる。
【0093】
さらに、
図2の例示的な実施形態による装置1を使用することによって、高さオフセット(この場合、z方向)が、例えば昇降要素40によって意図的に生成されてもよい。高さオフセットのために、工作機械100の全ての5つの軸は、例えば、1つの測定サイクルで測定することができ、それによって、工作機械100の全ての軸を検出するための装置1の再位置決め又は変位を回避することができる。
【0094】
しかし、昇降要素40は、工作機械100と一緒に測定される、機械加工されるワークピースであってもよい。これは、高重量のワークピースを高精度で製造/機械加工しなければならない場合に特に有利である。この目的のために、実際の機械加工プロセスの前に、例えばワークピースでワークピースがクランプされる機械テーブルの移動シーケンスを測定し、このようにして決定された(例えば、機械テーブルの案内における)誤差を取得し、機械加工中にそれらを考慮に入れることが有利である。これは、例えば、ワークピースの機械加工の精度を著しく高めるために、機械テーブルの補償、すなわち目標位置値の補正によって達成することができる。
【0095】
評価ユニット50、温度測定手段60、並びに直線軸及び回転軸(L
1、L
2、L
3、R
1、R
2)の記述のために、不必要な繰り返しを避けるために
図1を参照する。
【0096】
図3Aは、装置1の第2の実施形態を有する機械部品20(ここでは機械テーブル)と、機械部品20に設置された測定プローブ10を有する作業スピンドル30と、を有する工作機械100を概略的に示す。
【0097】
図2に示す設計との差は、工作機械100が
図1及び
図2の工作機械100とは異なる構成を有することである。
【0098】
ここに示される工作機械100の作業スピンドル30は、2つの直線軸(ここではx及びz方向)と、作業スピンドル30をy軸の周りに回転可能にする回転軸(一緒にL
1、L
2、R
3)とを有する。さらに、(機械部品20としての)機械テーブルは、直線軸(y方向、L
3)と、機械テーブルをz軸の周りで回転させることができる回転軸(R
2)とを有する。さらに、工具の先端、この場合には測定プローブ10の先端は、このように構成された工作機械100では普通であるように、作業スピンドル30の周りの円の中心によって
図3Aに示される作業スピンドル30の回転軸線の回転軸に配置される。
【0099】
工作機械100のこの構成に関して特別なことは、(
図1に示すように)高さオフセットなしに装置1の測定要素3を位置決めするとき、z方向の直線軸を他の軸と同じサイクルで測定することができなかったことである。しかしながら、
図2及び
図3Aに示すように、装置1を中間要素5で構成することによって、測定構造は非常に柔軟であり、z方向における直線軸の測定のための高さオフセットを提供することができる。これは、直線軸がz方向に移動しなければならない移動範囲を増大させるために、昇降要素40(又はワークピース)を使用することによってさらに増幅することができる。
【0100】
不必要な繰り返しを避けるために、評価ユニット50及び温度測定手段60の説明については、
図1を参照する。
【0101】
図3Bは、装置1の第2の実施形態を有する機械部品20(ここでは機械テーブル)と、装置1に設置された測定プローブ10を有する変位された作業スピンドル30とを有する
図3Aによる工作機械100を概略的に示している。
【0102】
図3Bは、垂直位置から水平位置への工作機械100の作業スピンドル30の変位、及びプローブ10の先端がその位置にどのように留まるかを示す。このことは、機械テーブルに対する変更された位置における装置1の新たな位置決めを回避するために、高さオフセットの必要性を再び明らかにする。
【0103】
不必要な繰り返しを避けるために、評価ユニット50、温度測定手段60、並びに直線軸及び回転軸(L
1、L
2、R
3、L
3、R
2)の記載については、
図1を参照する。
【0104】
図4は、装置1の第3の実施形態を有する機械部品20(ここでは機械テーブル)と、装置1に設置された測定プローブ10を有する作業スピンドル30とを有する工作機械100を概略的に示す。
【0105】
ここに示される装置1の実施形態は、それぞれの測定要素3と機械部品20との間の距離を段階的に又は連続的に一定の範囲内で調節することができる伸縮式調節手段8を備える点において、
図3A及び
図3Bに示される装置1とは異なっている。
【0106】
伸縮式調節手段8では、機械部品20までの距離をクランプ方式(例えば、ユニオンナット又はクイックリリース装置)で保持するか、又は締結要素4にネジを設け、測定要素3にねじ込んだり外したりしており、これにより、締結要素4と測定要素3との間の距離を長くしたり短くしたりすることができる。また、距離の段階的な調節は、例えばラッチ機構によって可能である。
【0107】
不必要な繰り返しを避けるために、評価ユニット50、温度測定手段60、並びに直線軸及び回転軸(L
1、L
2、R
3、L
3、R
2)の記載については、
図1を参照する。
【0108】
図5Aは、スペーサ要素2に沿って複数の測定要素3を有する装置1の第4の実施形態を概略的に示す。
【0109】
ここに示す装置1は、スペーサ要素2の2つの端部にそれぞれ1つの測定要素3を有するだけでなく、スペーサ要素2に沿って取り付けられたさらなる測定要素3も有する。この場合、追加の測定要素3の数は、示された数に限定されるものではなく、また、スペーサ要素2の長さに関する追加の測定要素3の分割も、示されたものに決して限定されない。測定要素3間の距離は、予め決定されてもよいし、工作機械100の測定前に測定されてもよい。
【0110】
有利には、これにより、測定サイクル当たりの測定点の数を大幅に多くすることができ、機械形状の測定及びその後の補正を大幅に改善することができる。さらに、スペーサ要素2の長さにわたる測定要素3の分布は、より多くの測定要素3による位置変化のより詳細な検出を必要とする領域を提供するために、非常に柔軟であってもよい。機械テーブルとしての機械部品20では、これらは、例えば、機械テーブルの旋回点に対してより大きな距離を有する領域であってもよい。
【0111】
装置1はまた、
図4に記載された伸縮式調節手段8によって拡張されてもよく、及び/又は、
図5Aに明示的に示されていなくても
図2に記載された、中間要素5、ロック手段6、及び/又はジョイント部7によって拡張されてもよい。
【0112】
図5Bは、十字形のスペーサ要素2、複数の測定要素3(十字形のスペーサ要素2の部分に沿っても)、及び装置1の4点取り付けを有する装置1の第5の実施形態を概略図で示す。
【0113】
また、スペーサ要素2を純粋に棒状の要素として構成するのではなく、十字形の要素とすることも有利である。これは、スペーサ要素2に測定要素3を設けるさらなる可能性をもたらし、これは、次に、工作機械100の測定の特定の必要性に適合され得る。また、これにより、測定サイクル当たりの測定点の数を著しく多くすることができ、これにより、機械形状の測定及びその後の補正を著しく改善することができる。
【0114】
さらに、重ね合わされた不正確さは、例えば、十字形スペーサ要素2がそれに沿って延在する2つの空間方向を介して検出することができる。一例は、機械部品20の回転軸の場合である。ここで、回転軸が回転する際に、半径方向における軸誤差/軸ずれを検出することができるだけでなく、回転軸の傾きを平行に検出することもできる。これは、時間を節約し、非常に短時間で不正確さを示し、そうでなければ、装置1のより頻繁な測定及び移動によってのみ検出された可能性がある。
【0115】
やはり、測定要素3の数は、示された数に決して限定されるものではなく、また、十字形スペーサ要素2の棒状領域の長さにわたる追加の測定要素3の分布も、示されたものに決して限定されるものではない。
【0116】
さらに、測定要素3は、必ずしも十字形スペーサ要素2の棒状部分の交差部に設けられる必要はない。棒状部分はまた、接続要素によって互いに接続されてもよく、又は十字形スペーサ要素2は、一体的に形成されてもよい。
【0117】
装置1はまた、
図4に記載された伸縮式調節手段8によって拡張されてもよく、及び/又は、
図5Bに明示的に示されていなくても
図2に記載された、中間要素5、ロック手段6、及び/又はジョイント部7によって拡張されてもよい。
【0118】
図6は、本発明による方法の例示的な実施形態のフローチャートを示す。
【0119】
本発明による方法では、ステップS102において、方法の開始時に、測定プローブ10が工作機械100の作業スピンドル30内に受け入れられ、作動状態にされる。ここで、後続のサブステップは、測定プローブ10をここでは詳述しない評価ユニット50に接続するために実行することができ、そして、工作機械100内に存在する機械座標系を構成するために実行することができる。
【0120】
次のステップS103において、装置1は、締結要素4によって、様々な長手方向軸及び/又は様々な回転軸に沿って対応して移動可能であってもよい機械部品20に締結される。さらに、
図2に示すように、装置の測定要素3の高さオフセットを意図的に生成するために、昇降要素40を使用することができる。さらに、昇降要素40の代わりに又は昇降要素40と組み合わせて、工作機械100の(機械部品20としての)機械テーブルに既にクランプされている機械加工されるワークピースを使用してもよく、装置1が機械加工されるワークピースに固定されてもよい。
【0121】
続くステップS104において、機械部品20の第1の位置における装置1の第1の測定要素3の位置座標(実際の位置)が、測定プローブ10によって決定される。機械部品20の位置が、工作機械100の少なくとも1つの制御可能な軸(例えば、3つの直線軸及び2つの回転軸)を第2の位置に移動させることによって変更された後、第1の測定要素3の位置座標(実際の位置)は、再び測定プローブ10によって決定される。機械部品20によって採用される位置の数は、2つの位置に限定されず、機械部品20の位置当たりの測定プローブ10の第1又は任意の他の測定要素3との接触(接触点)の数と同様に、任意に増加されてもよい。
【0122】
ステップS105では、ステップS104と同様に、装置1の第2の測定要素3の位置座標(実際の位置)の決定が、機械部品20の少なくとも2つの位置で実行される。
【0123】
しかし、第1の測定要素3の位置座標(実際の位置)が機械部品20の第1の位置で測定プローブ10によって決定され、その後、第2の測定要素3の位置座標(実際の位置)が、機械部品20が第2の位置に移動される前に機械部品20の位置を変更することなく測定プローブ10によって決定されるように、移動を変更することもできる。
【0124】
次のステップS106では、工作機械100の制御可能な軸のうちの少なくとも1つから、工作機械100の機械座標系のための1つ又は複数の基準パラメータ(座標基準パラメータ)が決定される。これは、機械部品20の少なくとも2つの位置における第1の測定要素3及び第2の測定要素3の決定された位置座標(実際の位置)、機械部品20の少なくとも2つの位置における第1の測定要素3及び第2の測定要素3のそれぞれの目標位置、並びに第1の測定要素3及び第2の測定要素3の間の既知の距離を評価することによって行われる。
【0125】
ここで、基準パラメータによって、工作機械100の対応する制御可能な軸は、例えば補償によって較正することができる。さらに、評価は、工作機械100の対応する軸における誤差の補償が意味をなすか、又は可能であるかどうかに関する情報を提供することもできる。制御可能な軸の誤差の補償がもはや可能でない場合、基準パラメータ又は結果として生じる理想的な軸からの偏差を使用して、対応する制御可能な軸を調整又は他の方法で較正することができる。
【0126】
有利には、工作機械100の分類は、評価と共に実行されてもよい。このようにして、ワークピースに要求される正確度又はワークピースに要求される公差に応じて、工作機械100で対応する機械加工ステップを実行することができるワークピースの機械加工シーケンスの過程にわたって迅速に決定することができる。
【0127】
図7は、本発明によるさらなる方法の実施形態のフローチャートを示す。
【0128】
本発明によるさらなる方法のステップS201~S203は、本発明による前の方法のステップS101~S103と同一である。
【0129】
ステップS204では、周囲温度が検知される。これは、例えば、工作機械100の内部及び/又は外部の1つ又は複数の温度測定手段60によって行うことができる。検知された温度値は、ここではこれ以上指定されていない評価ユニット50に送られ、そこで処理される。
【0130】
続くステップS205において、装置1の第1の測定要素3の位置座標(実際の位置)が、測定プローブ10によって機械部品20の第1の位置において決定される。工作機械100の少なくとも1つの制御可能な軸(例えば、3つの直線軸及び2つの回転軸)を第2の位置に移動させることによって機械部品20の位置が変更された後、第1の測定要素3の位置座標(実際の位置)がプローブ10によって再び決定される。第1の測定要素3の実際の位置の決定は、この時点で測定された周囲温度に対して行われる。
【0131】
機械部品20によって採用される位置の数は、2つの位置に限定されるものではなく、機械部品20の位置当たりの第1又は任意の他の測定要素3との測定プローブ10の接触(接触点)の数と同様に、任意に増加させることができる。
【0132】
ステップS206では、ステップS205と同様に、この時点で測定された周囲温度に対する機械部品20の少なくとも2つの位置にいて、装置1の第2の測定要素3の位置座標(実際の位置)の決定が実行される。
【0133】
ステップS207では、その時点で検知された温度値に対する決定された実位置(実値)を工作機械100の基準温度に調整する。これは、目標位置/目標値の値を含む全ての値が同じ温度に対して有効であることを保証する。このようにしてのみ、実際の位置を対応する目標位置と比較し、偏差/誤差をできるだけ正確に決定することが可能である。
【0134】
ステップS208では、工作機械100の制御可能な軸のうちの少なくとも1つから、工作機械100の機械座標系のための1つ又は複数の基準パラメータ(座標基準パラメータ)が決定される。これは、工作機械100の基準温度に対する機械部品20の少なくとも2つの位置における第1の測定要素3及び第2の測定要素3の決定された位置座標(実際の位置)、工作機械100の基準温度に対する機械部品20の少なくとも2つの位置における第1の測定要素3及び第2の測定要素3のそれぞれの目標位置、及び工作機械100の基準温度に対する第1の測定要素3及び第2の測定要素3の間の既知の距離を評価することによって達成される。
【0135】
ここで、基準パラメータによって、工作機械100の対応する制御可能な軸は、例えば補償によって較正することができる。さらに、評価は、工作機械100の対応する軸における誤差の補償が意味をなすか、又は可能であるかどうかに関する情報を提供することもできる。制御可能な軸の誤差の補償がもはや可能でない場合、基準パラメータ又は結果として生じる理想的な軸からの偏差を使用して、対応する制御可能な軸を調整又は他の方法で較正することができる。
【0136】
以上、添付図面を参照して、本発明の実施例及び実施形態並びにその利点を詳細に説明した。
【0137】
しかしながら、本発明は、上述の実施形態及びそれらの特徴に決して限定されるものではなく、特に、記載された実施例の特徴の修正によって、又は記載された実施例の特徴の1つ以上の組み合わせによって、独立請求項の範囲内に含まれる実施形態の修正をさらに含むことに、再び留意されたい。
【符号の説明】
【0138】
1 装置/測定装置
2 スペーサ要素
3 測定要素
4 締結要素/締結部
5 中間要素
6 ロック手段
7 ジョイント部
8 伸縮式調節手段
10 測定プローブ
20 機械部品
30 作業スピンドル
40 昇降要素
50 評価ユニット
60 温度測定手段
100 工作機械