(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】フィールド装置のための電流診断
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
G05B23/02 V
(21)【出願番号】P 2019568034
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 US2018025049
(87)【国際公開番号】W WO2018226304
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2020-01-24
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515231553
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ウェインホールド、ニコラス、アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ブロンチク、アンドリュー、ジェームズ
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-501980(JP,A)
【文献】特表2012-533121(JP,A)
【文献】特開平09-210830(JP,A)
【文献】特開平10-215508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業用プロセスのためのフィールド装置であって、
前記フィールド装置によって消費される電流量を検出するための電流検出器と、
前記フィールド装置が少なくとも1つの他の装置と通信することを可能にするインタフェースであって、前記フィールド装置によって消費される電流量が第1の閾値を超えるときに第1の警報を通信し、前記フィールド装置によって消費される電流量が第2の閾値を下回るときに第2の警報を通信するようにするインタフェースと、
を備えるフィールド装置。
【請求項2】
前記電流検出器が、前記フィールド装置内の電力調整器を流れる電流量を検出する請求項1に記載のフィールド装置。
【請求項3】
前記電流検出器が、増幅ステージ及び比較ステージを備える請求項2に記載のフィールド装置。
【請求項4】
前記増幅ステージが、前記電力調整器を流れる前記電流に存在する通信信号を除去する請求項3に記載のフィールド装置。
【請求項5】
前記増幅ステージが、増幅された電圧出力を提供し、前記比較ステージが、それぞれが入力として前記増幅された電圧を受ける2つの並列比較器を備える請求項3に記載のフィールド装置。
【請求項6】
前記増幅された電圧が第1の閾値を上回るときに、第1の前記2つの並列比較器が第1のバイナリ出力を変更し、前記増幅された電圧が第2の閾値を下回るときに、第2の前記2つの並列比較器が第2のバイナリ出力を変更する請求項5に記載のフィールド装置。
【請求項7】
前記第1のバイナリ出力及び前記第2のバイナリ出力を受信し、前記第1のバイナリ出力及び前記第2のバイナリ出力に基づいて、前記第1の警報及び前記第2の警報が通信されるときに制御するように前記インタフェースを制御するマイクロコントローラをさらに備える請求項6に記載のフィールド装置。
【請求項8】
前記フィールド装置に指定された機能を前記フィールド装置が実行することが不可能になる前に、前記インタフェースが前記第1の警報を通信する請求項1に記載のフィールド装置。
【請求項9】
前記フィールド装置に指定された前記機能とは、プロセス変数の値を提供することである請求項8に記載のフィールド装置。
【請求項10】
前記フィールド装置がフィールド装置のセグメントの一部であり、前記フィールド装置が前記フィールド装置のセグメント内の他のフィールド装置の動作に影響を与える前に、前記インタフェースが前記第1の警報を通信する請求項1に記載のフィールド装置。
【請求項11】
前記フィールド装置が、前記フィールド装置によって消費される電流量が第1の閾値を超えるときにトリガされ、前記フィールド装置に対して診断テストを実行する回路をさらに備える請求項1に記載のフィールド装置。
【請求項12】
前記電流検出器が、前記フィールド装置によって消費される電流量を示すデジタル値をマイクロコントローラに提供し、前記マイクロコントローラが、前記デジタル値に基づいて前記第1の警報及び前記第2の警報が通信されるときに制御するように前記インタフェースを制御する請求項1に記載のフィールド装置。
【請求項13】
工業用プロセスのためのフィールド装置であって、
前記フィールド装置が少なくとも1つの他の装置と通信することを可能にするインタフェースであって、前記フィールド装置で消費される電流量が閾値を下回るときに、前記フィールド装置が適切に機能していないことを示す警報を通信するインタフェースを備えるフィールド装置。
【請求項14】
前記インタフェースが、前記フィールド装置で消費される電流量が第2の閾値を上回るときに、前記フィールド装置が適切に機能していないことを示す第2の警報を通信する請求項13に記載のフィールド装置。
【請求項15】
前記フィールド装置内の電力調整器を通過する電流量が前記閾値を下回るかどうかを判定することによって、前記フィールド装置で消費される電流量が前記閾値を下回るか否かを検出し、前記電力調整器を通過する電流量が前記第2の閾値を上回るかどうかを判定することによって、前記フィールド装置で消費される電流量が前記第2の閾値を上回るか否かを検出する零入力電流検出器をさらに備える請求項14に記載のフィールド装置。
【請求項16】
前記零入力電流検出器が、増幅ステージ及び比較ステージを備えており、前記増幅ステージが、前記電力調整器を通過する前記電流に基づく電圧を増幅し、前記比較ステージが、それぞれが前記増幅ステージの出力を受信する2つの並列比較器を備える請求項15に記載のフィールド装置。
【請求項17】
前記インタフェースは、前記フィールド装置が前記フィールド装置の意図される機能を実行することが不可能になる前に、前記フィールド装置が適切に機能していないことを示す警報を通信する請求項13に記載のフィールド装置。
【請求項18】
装置回路と、
2線式ループ接続部と、
前記2線式ループ接続部に提供される非調整電力に基づいて前記装置回路に調整電力を提供する電力調整器と、
前記電力調整器を通過する電流が閾値を超えるか否かのバイナリ指示を提供する零入力電流検出器であって、前記バイナリ指示が前記装置回路に提供される零入力電流検出器と、
前記装置回路及び前記2線式ループ接続部に接続され、前記電力調整器を通過する前記電流が前記閾値を超えるという前記バイナリ指示を前記装置回路が受信するときに、該フィールド装置が適切に機能していないという警報を示す信号を前記2線式ループ接続部に提供するインタフェース回路とを備える工業用プロセスフィールド装置。
【請求項19】
前記装置回路が、前記電力調整器を通過する前記電流が前記閾値を超えるという前記バイナリ指示を受信するときにトリガされ、前記装置回路が前記工業用プロセスフィールド装置に対して診断テストを実行する請求項18に記載の工業用プロセスフィールド装置。
【請求項20】
前記零入力電流検出器が、前記電力調整器を通過する電流が第2の閾値を下回るか否かのバイナリ指示を提供するものであって、前記電力調整器を通過する電流が前記第2の閾値を下回るか否かの前記バイナリ指示が前記装置回路に提供され、前記インタフェース回路が、前記電力調整器を通過する前記電流が前記第2の閾値を下回るという前記バイナリ指示を前記装置回路が受信するときに、前記フィールド装置が適切に機能していないという第2の警報を示す信号を前記2線式ループ接続部に提供する請求項18に記載の工業用プロセスフィールド装置。
【請求項21】
前記零入力電流検出器が増幅ステージ及び比較ステージを備える請求項18に記載の工業用プロセスフィールド装置。
【請求項22】
前記増幅ステージが反転入力部及び非反転入力部を有する増幅器を備えるものであって、前記反転入力部が前記電力調整器の抵抗器の第1の側に結合され、前記非反転入力部が前記電力調整器の前記抵抗器の第2の側に結合される請求項21に記載の工業用プロセスフィールド装置。
【請求項23】
前記反転入力部及び前記非反転入力部が、前記2線式ループ接続部に存在する通信信号を除去するために、それぞれのコンデンサを介してグランドに結合される請求項22に記載の工業用プロセスフィールド装置。
【請求項24】
前記比較ステージが、それぞれが前記増幅ステージから同一の出力を受信する2つの並列比較器を備える請求項21に記載の工業用プロセスフィールド装置。
【請求項25】
第1の前記2つの並列比較器が前記増幅ステージからの前記出力と第1の電圧を比較し、第2の前記2つの並列比較器が前記増幅ステージからの前記出力と第2の電圧を比較する請求項24に記載の工業用プロセスフィールド装置。
【請求項26】
前記フィールド装置が測定されたプロセス変数に誤った値を提供する前に、前記フィールド装置が適切に機能していないという前記警報を示す前記信号が前記2線式ループ接続部に提供される請求項18に記載の工業用プロセスフィールド装置。
【請求項27】
前記工業用プロセスフィールド装置に接続されている工業用プロセスフィールド装置のセグメントが故障する前に、前記フィールド装置が適切に機能していないという前記警報を示す前記信号が前記2線式ループ接続部に提供される請求項18に記載の工業用プロセスフィールド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
種々の実施形態は、工業用プロセスフィールド装置に関する。詳細には、実施形態はこのようなフィールド装置のための電流診断に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセスフィールド装置は、工業用プロセスを監視及び/又は制御するために、工業用プロセス制御システムにおいて使用されている。制御装置は、プロセスを制御するために使用されているプロセスフィールド装置である。例示的な制御装置としては、ポンプ、弁、アクチュエータ、ソレノイド、モータ、ミキサー、攪拌器、遮断器、粉砕機、ローラー、ミル、ボールミラー(ball miller)、混練機、濾過器、ブレンダー、サイクロン、遠心分離器、塔、乾燥機、コンベヤー、分離器、昇降機、巻上機、加熱器、冷却器及び他のそのような機器が挙げられる。プロセス伝送器は、例えば、温度、圧力、流量などのプロセス変数を監視することによって、プロセスの動作を感知する(又は監視する)ために用いられるプロセスフィールド装置である。監視されたプロセス変数は、プロセス内の他の設備で、例えば中央制御室で使用することができるように伝送される。
【0003】
2線式プロセスフィールド装置は、2線式プロセス制御ループから電力が供給され、2線式プロセス制御ループを通じて通信する。2線式プロセス制御ループの1つの標準的なタイプでは、プロセス変数又は制御装置の状態を示すために、制御ループに4~20mAの電流レベルを使用する。このような構成において、フィールド装置は、電流レベルを圧力などの感知されたプロセス変数を表す値、例えば10mAに制御することができる。他の実施形態では、デジタル値は、例えば、HART(登録商標)通信プロトコル、Fieldbus又はProfibusなどの通信規格を用いて2線式ループで符合化される。
【発明の概要】
【0004】
工業用プロセスのためのフィールド装置は、フィールド装置によって消費される電流量を検出するための電流検出器と、フィールド装置が少なくとも1つの他の装置と通信することを可能にするインタフェースとを備える。インタフェースは、フィールド装置によって消費される電流量が第1の閾値を超えるときに第1の警報を通信し、フィールド装置によって消費される電流量が第2の閾値を下回るときに第2の警報を通信する。
【0005】
さらなる実施形態によれば、工業用プロセスのためのフィールド装置は、フィールド装置が少なくとも1つの他の装置と通信することを可能にするインタフェースを備える。インタフェースは、フィールド装置で消費される電流量が閾値を下回るときに、フィールド装置が適切に機能していないことを示す警報を通信する。
【0006】
なお、さらなる実施形態によれば、工業用プロセスフィールド装置は、装置回路と、2線式ループ接続部と、2線式ループ接続部に提供される非調整電力に基づいて装置回路に調整電力を提供する電力調整器とを備える。零入力電流検出器は電力調整器を通過する電流が閾値を超えているか否かのバイナリ指示を提供し、ここでバイナリ指示が装置回路に提供される。インタフェース回路は、装置回路及び2線式ループ接続部に接続され、電力調整器を通過する電流が閾値を超えているというバイナリ指示を装置回路が受信するときに、フィールド装置が適切に機能していないという警報を示す信号を2線式ループ接続部に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】工業用プロセス制御システムのブロック図を示す。
【0008】
【
図2】一実施形態によるフィールド装置のブロック図を示す。
【0009】
【
図3】一実施形態による零入力電流検出器の回路図を示す。
【0010】
【
図4】第2の実施形態による零入力電流検出器の回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、コントローラ102と、コントローラ102から出ている2線式制御ループ116に沿って接続されているフィールド装置162、164、166及び104を含むフィールド装置のセグメント160とを備える、プロセス環境100のブロック図である。フィールド装置104は、センサ/被制御要素112及び電子回路114を備え、2線式ループ接続部116a及び116bで2線式制御ループ116に結合されている。電子回路114は、装置回路118及びインタフェース/電源回路120を備える。一実施形態によれば、フィールド装置104は、コントローラ102と、並びに、所望によりフィールド装置162、164及び166と通信する。加えて、フィールド装置104、162、164及び166は、コントローラ102から2線式ループ116を介して電力が供給される。
【0012】
フィールド装置104がプロセス伝送器である場合は、センサ112からの信号に基づいて、温度、圧力又は流量などのプロセス変数の測定値を生成し、2線式ループ116を通じてその情報をコントローラに伝送する。フィールド装置104がプロセス制御装置である場合は、コントローラ102から2線式ループ116を通じて送信される命令に基づいて、被制御要素112を変更する、及び/又は被制御要素112に関する状態情報を、コントローラ102並びにフィールド装置162、164及び166に2線式ループ116を通じて提供する。いくつかの実施形態によれば、フィールド装置104は、電流Iloopを変調することによってコントローラ102又は他のフィールド装置162、164及び166と通信し、Fieldbus及びProfibusなどの1又は複数の通信プロトコルを使用して情報を伝えることができる。
【0013】
図1に示される実施形態では、フィールド装置162、164、166及び104が、Fieldbus標準に従って2線式ループ116に沿って並列に接続されることが示されている。他の実施形態では、フィールド装置162、164、166及び104は、HART(登録商標)通信プロトコルに従ってマルチドロップループを形成する2線式ループ116に沿って直列に接続される。以下で説明される実施形態では、2線式ループ116に並列接続及び直列接続の両方で使用されてもよく、任意の所望の通信プロトコルで使用されてもよい。なお、さらなる実施形態では、ループ116の電流Iloopを4mA~20mAの値に設定することによって、アナログ信号としてプロセス変数又は状態情報が送信される。
【0014】
フィールド装置104のインタフェース/電源120は、フィールド装置104からの情報を伝送するために、2線式ループ116の電流Iloopを変更する。インタフェース/電源120はまた、2線式ループ116の電流を監視し、コントローラ102並びにフィールド装置162、164及び166によって2線式ループ116に伝送される情報を受信する。最後に、インタフェース/電源120は、2線式ループ116から装置回路118及びセンサ/被制御要素112のための電力を引き込む。
【0015】
本実施形態では、インタフェース/電源120は、データ線124を通じて装置回路118からデジタル情報を、及びアナログ線122に沿ってセンサ/被制御要素112に関するアナログ情報を受信する。ループ116から受信される情報は、データ線126を介して装置回路118に提供される。さらに、電力がインタフェース/電源120によって電力線128を通じて装置回路118に供給される。
【0016】
フィールド装置104が、2線式ループ116を通信チャネルとして、かつ電力源として使用するため、2線式ループ116に沿った電流及び電圧は、通信及び電力の両方に対応しなければならない。フィールド装置104によって過大な電力が消費された場合、フィールド装置からの通信、及びフィールド装置への通信が影響を受けるおそれがある。例えば、フィールド装置が4mAを超える電流を消費する場合、ループ電流を4mAに設定することはもはや不可能であり、そのため、フィールド装置が2線式ループ116のアナログ電流を用いてプロセス変数の全範囲の値を通信することはもはや不可能となるだろう。加えて、複数のフィールド装置がセグメントにある場合、フィールド装置のうちの1つによって過剰に電流が引き込まれると、他のフィールド装置で電力が足らなくなり、全てのフィールド装置からの通信に不具合を引き起こすおそれがあり、ある状況においてはセグメント全体の電源が破綻する原因となり得る。
【0017】
加えて、意図される電流量を引き込んでいないフィールド装置もまた、適切に機能していない可能性があることが観察されている。特に、装置回路118内の1又は複数の構成部品が故障しつつある場合は、それらは機能の全てを実行することができず、そのため、使用することが意図される全ての電力を使用しないことになる。
【0018】
装置回路が過大な電力を使用しているとき、又は十分な電力を使用していないときを検出することによって、以下で説明される種々の実施形態により警報を発することが可能となり、その結果、プロセス変数の値又は被制御要素の状態を提供することなどの、フィールド装置に指定されている機能を実行する能力をフィールド装置が失う前に、フィールド装置を交換することができる。したがって、プロセス変数に誤った値を提供する前にフィールド装置を交換することができる。加えて、フィールド装置が、フィールド装置のセグメント内の他のフィールド装置の動作に影響を与える前に、警報が発せされる。
【0019】
図2は、フィールド装置104の実施形態のより詳細なブロック図を示す。
図2では、インタフェース/電源120がインタフェース220及び電力調整器222を備えることが示されている。インタフェース220は、2線式ループ接続部116a及び116bで2線式ループ116と直列に接続され、データ線124、アナログ線122及びデータ線126によって装置回路118内のマイクロコントローラ230に接続している。
【0020】
電力調整器222は2線式ループ116の2線式ループ接続部116aに接続しており、トランジスタ226と、調整制御器228と、抵抗器224の形での抵抗素子とを備える。調整制御器228は、トランジスタ226のベース及びコレクタに接続している。抵抗素子224のA側は、ループ116からフィールド装置104に入力される非調整電圧に相当する。トランジスタ226のコレクタは、装置回路118に給電するために使用される調整電圧に相当する。調整制御器228は、トランジスタ226を通過する電流を制御し、トランジスタ226のコレクタにおいて定常状態に電圧を維持する。トランジスタ226のコレクタからの調整電圧は、装置回路118の零入力電流検出器232、マイクロコントローラ230及びセンサ/被制御要素インタフェース234に提供される。したがって、装置回路118によって消費された電力が電力調整器222を通過する。
【0021】
一実施形態によれば、装置回路118で消費された電流は、抵抗素子224両端の電圧を測定することによって測定される。一実施形態によれば、この電圧は2つの個別の閾値電圧と比較され、それぞれ2つのバイナリ出力236及び238を提供する。抵抗素子224両端の電圧が第1の高電圧の閾値を超えるか否かを,バイナリ出力236が示し、抵抗素子224両端の電圧が第2の低電圧の閾値を下回るか否かを、バイナリ出力238が示す。出力236及び238はマイクロコントローラ230に提供され、マイクロコントローラ230は抵抗素子224両端の電圧が高電圧閾値を超えるときに警報を発し、抵抗素子224両端の電圧が低電圧閾値を下回るときに第2の警報を発する。これらの警報は、データ線124に沿ってデジタル信号として送信され、インタフェース220に2線式ループ116に沿って警報を通信させる。
【0022】
零入力電流検出器232が、装置回路118によって引き込まれる電流が第1の閾値を上回るか又は第2の閾値を下回るかのいずれか一方のときに値を変更する2つのバイナリ信号を発するため、マイクロコントローラ230は、トリガされて警報を送信する前に任意のルックアップ機能を実行する必要がない。そのため、マイクロコントローラ230が零入力電流検出器232によって測定される電圧を格納された電圧値に対して比較をし、警報を送信するか否かを判定しなければならなかった場合よりも、マイクロコントローラ230はより効率的であり、より少ない電力を消費する。
【0023】
図3は、零入力電流検出器232の一実施形態による回路図を示す。
図3の零入力電流検出器232は、2つのステージ、増幅ステージ302及び比較ステージ304を有する。増幅ステージ302は、抵抗素子224の両側、A及びBの電圧を受けて、比較ステージ304に提供される出力306を生成する。一実施形態によれば、増幅ステージ302は、点AとBとの間の電圧差の増幅されたバージョンを提供する差動増幅器を実装している。
図3に示される実施形態によれば、点Aとグランドとの間に直列に接続される2つの抵抗器、R317とR318との間の接合部に接続している非反転入力部340を有する演算増幅器U301によって、差動増幅器が実装されている。演算増幅器U301はまた、抵抗器R319とR320との間の接合部に接続している反転入力部342を有する。抵抗器R319及びR320は、点Bと演算増幅器U301の出力306との間に直列に接続されている。
図3の実施形態では、抵抗器R318及びR320は同一の抵抗値を有し、抵抗器R317及びR319は同一の抵抗値を有する。加えて、比率R320/R319及びR318/R317は、所望の増幅を提供するために選択される。一実施形態によれば、抵抗器R320及びR318の抵抗を1MΩに、並びに、抵抗器R317及びR319の抵抗を100kΩに設定することによって、これらの比率が10に設定される。したがって、演算増幅器U301の出力306の電圧は、抵抗素子224両端の点AとBとの間の電圧差の10倍である。
【0024】
点AとBとの間の電圧を増幅することに加えて、増幅ステージ302はまた、電力調整器222を通過する電流に見られる2線式ループ116に存在する通信信号を除去するためのローパスフィルタとしての機能を果たす。特に、点A及びBに存在する高周波信号が、演算増幅器U301に伝達されず、したがって演算増幅器U301の出力306に存在しないように、非反転入力部340及び反転入力部342はそれぞれのコンデンサC310及びC312によってグランドに接続されている。
【0025】
演算増幅器U301の出力306は、比較ステージ304における2つの並列比較器360及び362への入力として提供される。比較器360は、出力306の電圧を第1の閾値電圧と比較して、出力電圧が閾値電圧を超えるときに負の値から正の値に変更するバイナリ出力236を提供する。比較器362は、出力306を第2の閾値電圧と比較して、出力電圧306が第2の閾値電圧未満に降下するときに負から正に切り替えるバイナリ出力238を提供する。
【0026】
比較器360は、増幅ステージ302の出力306に接続している非反転入力部を有する演算増幅器U370を含む。演算増幅器U370の反転入力部は、基準電圧とグランドとの間に直列に延在する抵抗器R324とR322との間の接合部で接続されている。一実施形態によれば、抵抗器R322及びR324は同一であり、それにより基準電圧の半分が反転入力部に存在することとなる。この電圧は抵抗素子224両端の電圧の上方閾値に相当し、これにより、比較器出力236を負の値から正の値に切り替えさせることになる増幅器出力306の閾値電圧を設定する。
【0027】
比較器362は演算増幅器U372を備え、演算増幅器U372は増幅器出力306に接続している反転入力部と、抵抗器R326とR328との間の接合部で接続している非反転入力部とを有する。抵抗器R326及びR328は、基準電圧とグランドとの間に直列に接続されている。一実施形態によれば、抵抗器R326は、抵抗器R328の3倍の大きさであり、演算増幅器U372の非反転入力部に基準電圧の1/3の電圧を生じさせる。この電圧は、増幅器出力306の電圧が基準電圧の1/3未満に降下したときに比較器出力238が負の値から正の値に変更するように、増幅器出力306の下方閾値電圧を設定する。
【0028】
比較器出力236及び238の両方が、ただ2つの取り得る値、大きい正の値又は大きい負の値を有するため、それらはバイナリ出力であるとみなされる。このようなバイナリ出力を、マイクロコントローラ230に対する入力として使用することができ、マイクロコントローラ230が警報をトリガするか否かを判定するために任意のルックアップ機能を実行する必要なく、マイクロコントローラ230を容易にトリガすることを可能にする。
【0029】
一実施形態によれば、比較器出力236が負の値から正の値に遷移するとき、マイクロコントローラ230はデータ線124に警報を発し、警報は、フィールド装置104が過大な電流を消費しているため適切に機能していないことを示すために、インタフェース220を介してコントローラ102並びにフィールド装置162、164及び166に通信される。比較器出力238が負の値から正の値に遷移するとき、マイクロコントローラ230はデータ線124に警報を発し、警報は、フィールド装置が十分な電流を消費していないため適切に機能していないことを示すために、インタフェース220を介してコントローラ102並びにフィールド装置162、164及び166に通信される。
【0030】
図4は、比較ステージ304並びにバイナリ出力236及び238を、アナログ-デジタル変換器404及びデジタル出力436に置き換えた、代替的実施形態の回路図を示す。アナログ-デジタル変換器404は、増幅器出力306のアナログ電圧をデジタル出力436においてデジタル値に変換し、次いでデジタル値がマイクロコントローラ230に提供される。マイクロコントローラ230は、出力されたデジタル値を第1のデジタル閾値と比較して、フィールド装置が第1の電流閾値より多くの電流を消費しているかどうかを判定し、そのデジタル出力を第2のデジタル閾値と比較し、フィールド装置が第2の電流閾値より少ない電流を消費しているかどうかを判定する。その比較によりフィールド装置104が第1の電流閾値よりも多くの電流を消費していることが示されるとき、マイクロコントローラ230はデータ線124に警報を発し、警報は、フィールド装置104が過大な電流を消費しているため適切に機能していないことを示すために、インタフェース220を介してコントローラ102、並びにフィールド装置162、164及び166に通信される。その比較によりフィールド装置104が第2の電流閾値よりも少ない電流を消費していることが示されるとき、マイクロコントローラ230はデータ線124に警報を発し、警報は、フィールド装置が十分な電流を消費していないため適切に機能していないことを示すために、インタフェース220を介してコントローラ102、並びにフィールド装置162、164及び166に通信される。いくつかの実施形態によれば、警報は、増幅器出力306のデジタルバージョンから測定されるような、フィールド装置104によって消費される電流の表示を含む。
【0031】
一実施形態によれば、第1の電流閾値及び第2の電流閾値は、フィールド装置104の中に格納されており、閾値を変更するために2線式ループ116上でフィールド装置104に命令を送信することによって、随時変更することができる。
【0032】
図4の実施形態では、アナログ-デジタル変換器404は、マイクロコントローラ230に対し別個の構成部品として示されている。他の実施形態では、アナログ-デジタル変換器404は、マイクロコントローラ230に組み込まれる。
【0033】
さらなる実施形態では、警報を送信することに加えて、フィールド装置が過大に又は過小に電流を消費していると判定するときに、マイクロコントローラ230がトリガされ、フィールド装置104の種々の構成部品に対して診断テストを実行する。
【0034】
さらに、マイクロコントローラ230によって送信される警報を使用して、フィールド装置104が正確なプロセス変数値を提示すること、被制御要素112の正確な状態を提示すること、又は、インタフェース220を介して受信される命令に基づいて、センサ又は被制御要素112を変更することなどの、主要な機能を実行することが不可能になる前に、フィールド装置104を交換することができる。その結果、種々の実施形態の零入力電流検出器は、将来故障しそうなフィールド装置を特定することができ、それらのフィールド装置が故障する前に、それらを交換することが可能となる。
【0035】
要素は上記の別個の実施形態として示し、又は説明してきたが、各実施形態の一部は、上記で説明された他の実施形態の全部又は一部と組み合わせてもよい。
【0036】
好ましい実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない形態及び詳細の変更を行い得ることが、当業者であれば理解するであろう。