(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】パワートレーン用のトルクリミッタ
(51)【国際特許分類】
F16D 7/02 20060101AFI20220113BHJP
F16D 3/14 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
F16D7/02 A
F16D3/14
(21)【出願番号】P 2019569244
(86)(22)【出願日】2018-09-12
(86)【国際出願番号】 DE2018100769
(87)【国際公開番号】W WO2019052603
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2019-12-13
(31)【優先権主張番号】102017121437.2
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン ミンガス
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-41737(JP,A)
【文献】特開2004-19834(JP,A)
【文献】特開2002-45583(JP,A)
【文献】特開平10-318301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 7/02, 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向(3)に沿って延びる回転軸線(4)ならびに駆動側(5)および被駆動側(6)を少なくとも有している、パワートレーン(2)のためのトルクリミッタ(1)であって、前記駆動側(5)と前記被駆動側(6)とが少なくとも1つの摩擦ライニング(7,8)を介して、かつ前記軸方向(3)に作用する予圧(9)を加えられて、少なくとも、周方向(10)に作用する限界トルクに到達するまで、互いにトルクを伝達するように接続されており、前記少なくとも1つの摩擦ライニング(7,8)が、前記限界トルクの超過時に、駆動側(5)および被駆動側(6)の一方のみに存在する第1の摩擦面(11)においてスリップするように配置されていて、駆動側(5)および被駆動側(6)の他方に存在する第2の摩擦面(12)に力結合式に接続されており、前記少なくとも1つの摩擦ライニング(7,8)と前記第1の摩擦面(11)との間の第1の接触面(13)が、第1の平均摩擦半径(14)を有しており、前記少なくとも1つの摩擦ライニング(7,8)と前記第2の摩擦面(12)との間の第2の接触面(15)が、前記第1の平均摩擦半径(14)とは異なる第2の平均摩擦半径(16)を有し、
前記平均摩擦半径(14,16)の差が、少なくとも1つの切欠き(17)により、前記少なくとも1つの摩擦ライニング(7,8)と少なくとも1つの摩擦面(11,12)との少なくとも一方が切り欠かれて、少なくとも1つの接触面(13,15)が減らされることで実現されている、パワートレーン(2)のためのトルクリミッタ(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの切欠き(17)が、
前記第2の摩擦面(12)に対向する摩擦ライニング(7,8)
と前記第2の摩擦面(12)
との少なくとも一方のみにおいて設けられている、請求項
1記載のトルクリミッタ(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの切欠き(17)が、半径方向(18)で前記第1の平均摩擦半径(14)の内側に配置されている、請求項
2記載のトルクリミッタ(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの切欠き(17)が、前記周方向(10)で環状に延びるように形成されている、請求項
1から
3までのいずれか1項記載のトルクリミッタ(1)。
【請求項5】
前記切欠き(17)によって減少した前記接触面(13,15)の、前記切欠き(17)に隣接した縁部(19)が、前記周方向(10)に沿って一定の第1の半径(20)上に延びている、請求項
1から
4までのいずれか1項記載のトルクリミッタ(1)。
【請求項6】
軸方向(3)に沿って延びる回転軸線(4)ならびに駆動側(5)および被駆動側(6)を少なくとも有している、パワートレーン(2)のためのトルクリミッタ(1)であって、前記駆動側(5)と前記被駆動側(6)とが少なくとも1つの摩擦ライニング(7,8)を介して、かつ前記軸方向(3)に作用する予圧(9)を加えられて、少なくとも、周方向(10)に作用する限界トルクに到達するまで、互いにトルクを伝達するように接続されており、前記少なくとも1つの摩擦ライニング(7,8)が、前記限界トルクの超過時に、駆動側(5)および被駆動側(6)の一方のみに存在する第1の摩擦面(11)においてスリップするように配置されていて、駆動側(5)および被駆動側(6)の他方に存在する第2の摩擦面(12)に力結合式に接続されており、前記少なくとも1つの摩擦ライニング(7,8)と前記第1の摩擦面(11)との間の第1の接触面(13)が、第1の平均摩擦半径(14)を有しており、前記少なくとも1つの摩擦ライニング(7,8)と前記第2の摩擦面(12)との間の第2の接触面(15)が、前記第1の平均摩擦半径(14)とは異なる第2の平均摩擦半径(16)を有し、
少なくとも1つの接触面(13,15)内で
、前記摩擦面(11,12)に配置され
、前記軸方向(3)で前記摩擦ライニング(7,8)に向かって延びる少なくとも1つの凸部(28)によって、
前記摩擦ライニングと前記摩擦面との圧着が増強される、パワートレーン(2)のためのトルクリミッタ(1)。
【請求項7】
前記第1の平均摩擦半径(14)が、前記第2の平均摩擦半径(16)よりも小さく形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のトルクリミッタ(1)。
【請求項8】
前記第1の平均摩擦半径(14)が、前記第2の平均摩擦半径(16)よりも少なくとも1%だけ小さく形成されている、請求項7記載のトルクリミッタ(1)。
【請求項9】
第1の駆動トルク(22)を提供するための第1の駆動ユニット(21)と、第2の駆動トルク(24)を提供するための第2の駆動ユニット(23)とを少なくとも有しており、前記第1の駆動ユニット(21)と前記第2の駆動ユニット(23)とが、請求項1から
8までのいずれか1項記載のトルクリミッタ(1)を介してトルクを伝達するように接続可能である、自動車のためのパワートレーン(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワートレーン用の、特に自動車のパワートレーン用のトルクリミッタに関する。パワートレーンは、特にハイブリッド車両用のパワートレーンである。パワートレーンは、特に第1の駆動ユニット(たとえば、内燃機関)と、第2の駆動ユニット(たとえば、電気機械)とを有している。これらの駆動ユニットは、トルクリミッタを介してトルクを伝達するように接続可能、または互いに遮断可能である。
【背景技術】
【0002】
トルクリミッタは、少なくとも、軸方向に沿って延びる回転軸線ならびに駆動側および被駆動側を有している。駆動側と被駆動側とは、少なくとも1つの摩擦ライニングを介して、かつ軸方向に作用する予圧を加えられて、少なくとも周方向に作用する限界トルクに到達するまで、互いにトルクを伝達するように接続されている。少なくとも1つの摩擦ライニングは、(パワートレーンの運転中に)限界トルクの超過時に、駆動側および被駆動側の一方のみに存在する第1の摩擦面においてスリップするように配置されていて、駆動側および被駆動側の他方に存在する第2の摩擦面に力結合式に接続されている。
【0003】
このようなトルクリミッタは既知である。この場合、限界トルクの超過時に、2つの摩擦面のうちの一方の摩擦面においてのみ、摩擦ライニングのスリップが可能にされる。他方の摩擦面ではスリップが阻止される。駆動側または被駆動側に設けられた2つの摩擦面のうちの一方の摩擦面をこのように意図的に位置固定することは、(限界トルクの超過時に)目標スリップモーメントの小さな変動を確保するために必要である。このために、スリップのために設けられた摩擦面上に特別な材料対が設けられる。
【0004】
駆動側および被駆動側の一方に設けられた摩擦ライニングの位置固定は、公知のトルクリミッタでは、摩擦面と摩擦ライニングとの間の周方向で形状結合式の接続を介して(たとえば、リベット結合により、または互いにかみ合って延びる成形部により)確保される。代替的には、摩擦ライニングは、接着剤を介して材料結合式に摩擦面に結合されている。
【0005】
しかし、摩擦面の一方における摩擦ライニングのこの形状結合式または材料結合式の位置固定は、組付けまたは製造の手間の増加を必要とし、より高いコストを招来する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これを起点として、本発明の根底を成す課題は、先行技術において明らかとなった欠点を少なくとも部分的に克服し、特に摩擦ライニングの、予め規定された一方の側での位置固定が異なって実現されるトルクリミッタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項1に記載の特徴によって解決される。有利な改良形態は従属請求項の対象である。請求項に個別に記載された特徴は、技術的に有意な形式で互いに組み合わせ可能であり、明細書において説明された状況および図面からの詳細により補うことができ、本発明の別の実施形態が示される。
【0008】
本発明は、軸方向に沿って延びる回転軸線ならびに駆動側および被駆動側を少なくとも有している、パワートレーンのためのトルクリミッタに関する。駆動側と被駆動側とは(トルクリミッタの運転中に)少なくとも1つの摩擦ライニングを介して、かつ軸方向に作用する予圧を加えられて、少なくとも、周方向に作用する限界トルクに到達するまで、互いにトルクを伝達するように接続されている。少なくとも1つの摩擦ライニングは、限界トルクの超過時に、駆動側および被駆動側の一方のみに存在する第1の摩擦面においてスリップするように配置されている。この際に、少なくとも1つの摩擦ライニングは、駆動側および被駆動側の他方に存在する第2の摩擦面に(引き続き)力結合式に接続されている。少なくとも1つの摩擦ライニングと第1の摩擦面との間の第1の接触面は、第1の平均摩擦半径を有しており、少なくとも1つの摩擦ライニングと第2の摩擦面との間の第2の接触面は、第1の平均摩擦半径とは異なる第2の平均摩擦半径を有している。
【0009】
通常、平均摩擦半径は、摩擦ライニングと摩擦面との間の接触面の中心にある。この中心は、半径方向に沿って、接触面の外側半径と、接触面の内側半径とからそれぞれ同じだけ離間して配置されている。
【0010】
互いに異なる平均摩擦半径を有する接触面の構成は、(予め規定された)摩擦面において(すなわち常に第1の摩擦面において)予め規定されたスリップ(つまり周方向での摩擦面に対する摩擦ライニングの回転)を可能にする一方で、別の(第2の)摩擦面は、引き続き力結合式に摩擦ライニングに接続されている(つまりスリップしない)。
【0011】
特に第1の摩擦面は特殊鋼から成っている。
【0012】
特に、第1の平均摩擦半径は、第2の平均摩擦半径よりも小さく形成されている。好適には、第1の平均摩擦半径は、第2の平均摩擦半径よりも少なくとも1%、特に少なくとも2%だけ、好適には少なくとも5%だけ小さく形成されている。
【0013】
平均摩擦半径の差は、少なくとも1つの切欠きによって実現されていてよい。少なくとも1つの切欠きは、少なくとも1つの摩擦ライニングにおいて、摩擦面に向かってかつ/または少なくとも1つの摩擦面において実現されており、その際に切欠きによって接触面が減らされている。
【0014】
少なくとも1つの切欠きが、好適には単に少なくとも1つの摩擦ライニングにおいて第2の摩擦面に向かってかつ/または第2の摩擦面において設けられている。スリップのために設けられている第1の接触面はさらに出来るだけ大きく形成されていてよく、これにより摩滅、ひいては摩耗が常に2つの接触面のうちの大きな接触面において行われる(ここでは第1の接触面であり、切欠きによって減少した第2の接触面において行われるのではない)。
【0015】
少なくとも1つの切欠きは、特に半径方向で第1の平均摩擦半径の内側に配置されている。
【0016】
少なくとも1つの切欠きは、好適には周方向で環状に延びるように形成されている。
【0017】
特に、切欠きによって減少した接触面の、切欠きに隣接する縁部は、周方向に沿って一定の第1の半径上に延びている。
【0018】
接触面は、半径方向に沿って特に外側半径と内側半径との間に延びている。切欠きが半径方向で接触面の外側に配置され、外側半径が(摩擦ライニングの他方の接触面における外側半径に対して)縮小されることにより、平均摩擦半径を切欠きによって減らすことができる。切欠きが半径方向で接触面の内側に配置され、内側半径が(摩擦ライニングの他方の接触面における内側半径に対して)拡大されることにより、平均摩擦半径を切欠きによって拡大することができる。
【0019】
切欠きは特に、第2の接触面が減少し、ひいては第2の平均摩擦半径が第1の平均摩擦半径に対して拡大されるように、配置されている。
【0020】
少なくとも1つの平均摩擦半径は、接触面内で摩擦面に配置された、少なくとも軸方向で摩擦ライニングに向かって延びる少なくとも1つの凸部によって、(付加的に)増加されるかまたは減少されていてよい。この凸部は、特に周方向に沿って環状に延びるように(かつ一定の第2の半径に沿って延びるように)形成されている。凸部によって、摩擦ライニングと摩擦面との間の圧着が増強され、これにより平均摩擦半径を変更することができる。
【0021】
凸部は、摩擦面を形成する構成部材に設けられたエンボス加工部によって実現されていてよい。
【0022】
少なくとも1つの摩擦ライニングは、限界トルクが達成されるまで、駆動側および被駆動側と一緒に、少なくとも周方向に対して、専ら力結合式の接続を形成する。つまり、ここではまさに、周方向に作用する(たとえば、接着剤による)材料結合式または(たとえば、互いにかみ合う成形部またはリベットによる)形状結合式の接続は設けられていない。提案された凸部は、特に周方向で作用する形状結合式の接続を形成するものではない。
【0023】
つまり、特に摩擦ライニングは、駆動側と被駆動側との間に、または摩擦面の間に配置され、予圧ばねの予圧によって回転軸線に対して位置固定される。したがって、簡単な組付けを実現することができる。
【0024】
トルクリミッタは、少なくとも第1の摩擦ライニングと第2の摩擦ライニングとを有していてよく、第1の摩擦ライニングと第2の摩擦ライニングとの間に駆動側または被駆動側が配置されている。
【0025】
トルクリミッタは、特に公知のトーションダンパと一緒に形成される。トーションダンパは、トルク変動を減衰する働きをする。特にトーションダンパは、半径方向で少なくとも1つの摩擦ライニングの内側に配置されている。
【0026】
少なくとも1つの摩擦ライニング、回転軸線ならびに駆動側および被駆動側は、特に互いに同軸に配置されている。
【0027】
さらに、第1の駆動トルクを提供するための第1の駆動ユニット(たとえば、内燃機関)と、第2の駆動トルクを提供するための第2の駆動ユニット(たとえば、電気機械)とを少なくとも有しており、第1の駆動ユニットと第2の駆動ユニットとが上述のトルクリミッタを介してトルクを伝達するように接続可能であり、または限界トルクへの到達時に互いに遮断可能である、自動車のためのパワートレーンが提案される。
【0028】
なお、本明細書において使用される数詞(「第1」、「第2」...)は、主として(単に)同じ種類の複数の対象物、サイズまたはプロセスを区別するために役立つものであり、つまり必ずしもこれらの対象物、サイズまたはプロセスの互いに対する関係および/または順序を示すものではないことを予め述べておく。関係および/または順序が必要である場合、関係および/または順序は本明細書において明記されるか、または具体的に説明される構成の研究時に当業者にとって明らかとなる。
【0029】
本発明ならびに技術的環境を以下に図面に基づき詳しく説明する。本発明は示した実施例により制限されるべきではないことに留意されたい。特に、別に明示されない限り、図面において説明された状況の一部の構成を採用し、本明細書および/または図面から得られる別の構成部分および知識と組み合わせることも可能である。特に、図面および特に示されたサイズは単に概略的であることに留意されたい。同一の参照符号は同一の対象物を示すので、場合によっては別の図面の説明を補足的に参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】パワートレーンにおける公知のトルクリミッタの第1の実施形態を切断した側面図である。
【
図2】公知のトルクリミッタの第2の実施形態を切断した側面図である。
【
図4】互いに異なる平均摩擦半径を有するトルクリミッタを切断した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、パワートレーン2における公知のトルクリミッタ1の第1の実施形態を切断した側面図で示している。パワートレーン2は、第1の駆動トルク22を提供するための第1の駆動ユニット21(たとえば、内燃機関)と、第2の駆動トルク24を提供するための第2の駆動ユニット23(たとえば、電気機械)とを有している。第1の駆動トルク22は、トルクリミッタ1の駆動側5に直接に作用する。第2の駆動トルク24は、トルクリミッタの被駆動側6に直接に作用する。被駆動側6は、さらに伝動装置(ここでは図示せず)にトルクを伝達するように接続されていてよい。トーションダンパ25が、被駆動側6に、かつ半径方向18で摩擦ライニング7,8の内側に配置されている。第1の駆動ユニット21と第2の駆動ユニット23とは、トルクリミッタ1を介してトルクを伝達するように接続可能、または限界トルクへの到達時に互いに遮断可能である。
【0032】
トルクリミッタ1は、軸方向3に沿って延びる回転軸線4ならびに駆動側5および被駆動側6を有している。駆動側5と被駆動側6とは、2つの摩擦ライニング7,8を介して、かつ軸方向3で作用する予圧9を加えられて、少なくとも、周方向10で作用する限界トルクに到達するまで、互いにトルクを伝達するように接続されている。第1の摩擦ライニング7と第2の摩擦ライニング8との間には駆動側5が配置されている。被駆動側6は、この実施形態では2つの金属薄板を含んでいる。これらの金属薄板の間に摩擦ライニング7,8と駆動側5とが配置されている。被駆動側6の金属薄板と、一方の摩擦ライニング7,8(ここでは第2の摩擦ライニング8)との間には、予圧ばねが配置されている。この予圧ばねは、力結合式の接続のために必要となる予圧9を形成する。
【0033】
摩擦ライニング7,8は、パワートレーン2の運転中に限界トルクを超過すると、駆動側5および被駆動側6の一方(ここでは被駆動側6)のみに存在する第1の摩擦面11においてスリップするように配置されていて、駆動側5および被駆動側6の他方(ここでは駆動側5)に存在する第2の摩擦面12に力結合式に接続されている。
【0034】
摩擦ライニング7,8、回転軸線3ならびに駆動側5および被駆動側6は、互いに同軸に配置されている。
【0035】
図2は、公知のトルクリミッタ1の第2の実施形態を切断した側面図で示している。
図1に関する説明が参照される。第1の実施形態との差異は、第2の実施形態では、第1の摩擦ライニング7と第2の摩擦ライニング8との間に被駆動側6が配置されていることにある。駆動側5は、この実施形態では2つの金属薄板を含んでいる。これらの金属薄板の間には、摩擦ライニング7,8および被駆動側6が配置されている。駆動側5の金属薄板と、一方の摩擦ライニング7,8(ここでは第2の摩擦ライニング8)との間に、予圧ばねが配置されている。この予圧ばねは、力結合式の接続のために必要となる予圧9を形成する。
【0036】
図3は、
図1の詳細図を示している。
図1に関する説明が参照される。摩擦ライニング7,8は、限界トルクを超過すると、第1の摩擦面11(この実施形態ではこの摩擦面11は被駆動側6に配置されている)においてスリップするように配置されている。摩擦ライニング7,8は、(この実施形態では駆動側5に配置されている)第2の摩擦面12に引き続き力結合式に接続されている。これは、
図1~
図3に示した実施形態では、第2の摩擦面12とそれぞれの摩擦ライニング7,8との間の(たとえば、接着剤による)材料結合式または(たとえば互いにかみ合って延びる成形部またはリベットによる)形状結合式の接続によって実現されている。
【0037】
図4は、相異なる平均摩擦半径14,16を有するトルクリミッタ1を切断した側面図で示している。
図1~
図3に関する説明が参照される。
図1~
図3に図示した公知の第1の実施形態との差異は、
図4では切欠き17が第2の接触面15の領域に設けられていることにある。
【0038】
各摩擦ライニング7,8と、第1の摩擦面11との間の第1の接触面13は、第1の平均摩擦半径14を有していて、各摩擦ライニング7,8と、第2の摩擦面12との間の第2の接触面15は、第1の平均摩擦半径14とは異なる第2の平均摩擦半径16を有している。
【0039】
平均摩擦半径14,16はそれぞれ、摩擦ライニング7,8と摩擦面11,12との間の接触面13,15の中心に存在している。この中心は、半径方向18に沿って、接触面13,15の外側半径26と、接触面13,15の内側半径27とからそれぞれ同じだけ離間して配置されている。
【0040】
平均摩擦半径14,16の差は、切欠き17によって実現されていてよい。この切欠き17は、各摩擦ライニング7,8において第2の摩擦面12に向かって、かつ同時に第2の摩擦面12において実現されている。切欠き17により、第2の接触面15が減らされている。切欠き17は、半径方向18で第1の平均摩擦半径14の内側に配置されている。切欠き17によって減少した第2の接触面15の、切欠き17に隣接する縁部19は、周方向10に沿って一定の第1の半径20上に延びている。
【0041】
接触面13,15は、半径方向18に沿って外側半径26と内側半径27との間で延びている。切欠き17が半径方向18で第2の接触面15の内側に配置され、内側半径27が(それぞれの摩擦ライニング7,8の第1の接触面13における内側半径27に対して)拡大されることによって、第2の平均摩擦半径16は切欠き17により拡大される。
【0042】
図5は、
図4の詳細図を示している。
図4に関する説明が参照される。
図5では、切欠き17の他に凸部28も図示されている。
【0043】
接触面13,15内で摩擦面11,12に配置された、少なくとも軸方向3で摩擦ライニング7,8に向かって延びる凸部28によって、平均摩擦半径14,16は増加するかまたは減少する。この凸部28は、周方向10に沿って環状に延びるように(かつ一定の第2の半径29に沿って延びるように)形成されている。凸部28により、摩擦ライニング7,8と摩擦面11,12との間の圧着が増強され、これにより平均摩擦半径14,16を変化させることができる。
【0044】
凸部28は、本実施形態では、摩擦面11,12を形成する構成部材(駆動側5または被駆動側6の金属薄板)に設けられたエンボス加工部(Sicke)により実現される。
【符号の説明】
【0045】
1 トルクリミッタ
2 パワートレーン
3 軸方向
4 回転軸線
5 駆動側
6 被駆動側
7 第1の摩擦ライニング
8 第2の摩擦ライニング
9 予圧
10 周方向
11 第1の摩擦面
12 第2の摩擦面
13 第1の接触面
14 第1の摩擦半径
15 第2の接触面
16 第2の摩擦半径
17 切欠き
18 半径方向
19 縁部
20 第1の半径
21 第1の駆動ユニット
22 第1の駆動トルク
23 第2の駆動ユニット
24 第2の駆動トルク
25 トーションダンパ
26 外側半径
27 内側半径
28 凸部
29 第2の半径