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特許70032231,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造するための触媒及びその製造ならびに再生方法
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  • 特許-1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造するための触媒及びその製造ならびに再生方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造するための触媒及びその製造ならびに再生方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/24 20060101AFI20220214BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220214BHJP
   B01J 38/00 20060101ALI20220214BHJP
   B01J 27/28 20060101ALI20220214BHJP
   C07C 17/25 20060101ALI20220214BHJP
   C07C 21/06 20060101ALI20220214BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220214BHJP
【FI】
B01J27/24 Z
B01J37/08
B01J38/00 301C
B01J27/28 Z
C07C17/25
C07C21/06
C07B61/00 300
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020507616
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 CN2019085314
(87)【国際公開番号】W WO2020220312
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2020-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(73)【特許権者】
【識別番号】520044047
【氏名又は名称】台湾塑膠工業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 金銘
(72)【発明者】
【氏名】樊 斯斯
(72)【発明者】
【氏名】黄 延強
(72)【発明者】
【氏名】張 涛
(72)【発明者】
【氏名】ホワン チン リエン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ワン トン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ユ チェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー チェン ホイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヤー ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン ミン シェン
(72)【発明者】
【氏名】チャン チャオ チン
(72)【発明者】
【氏名】ホワン ツァオ チェン
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-249590(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105833892(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104289247(CN,A)
【文献】ZHAO, W. et al.,RSC Adv.,2015年,5,pp.104071-104078,DOI:10.1039/c5ra20916a
【文献】XU, J. et al.,Carbon,2014年,80,pp.610-616,DOI:10.1016/j.carbon.2014.09.004
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J
C07C
C07B 61/00
JSTPlus(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造する触媒の製造方法であって、
少なくとも、
まず、有機物前駆体を無機多孔質材料上に担持し、その後、窒素含有化合物を含む雰囲気の中で加熱分解して炭化-窒化反応を行う工程を含
前記触媒は、担体と、
触媒活性成分としての含窒素カーボン材料と
を含み、
前記含窒素カーボン材料が前記担体上に担持されており、
前記担体が、無機多孔質材料のうちの少なくとも1種から選択され、
前記含窒素カーボン材料において、窒素元素が共有結合の形でカーボン材料中にドープされている、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記加熱分解の条件は、
加熱分解の温度が400℃~1000℃、加熱分解の時間が0.2~10時間であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記加熱分解の条件は、加熱分解の温度が600℃~900℃、加熱分解の時間が0.5~6時間であることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記窒素含有化合物は、アンモニアガス、ヒドラジド、C-N結合含有有機化合物、C=N含有有機化合物、C≡N含有有機化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記窒素含有化合物は、アンモニアガス、ヒドラジド、アセトニトリル、シアナミド、ピリジン、ピロール、エチレンジアミン又はメチルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記有機物前駆体は、炭化水素系化合物、ポリマー、*-CX、*-OH、*-C≡N、*-C=O、*-C-O-*結合、*-C-NH、*-C-NH-C-*、*-C-N=C-*のうちの少なくとも1種の基を含有する有機化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
ただし、*-CXにおけるXは、ハロゲン元素を表し、F、Cl、Br、Iからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記有機物前駆体は、アクリロニトリル、塩化ビニル、ジクロロエチレン、ビニルピリジン、アクリルアミド、アクリル化合物、ビニルエステル化合物、フェニルアミン類化合物、ピロール類化合物、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、フラン樹脂、上記物質のモノマー又はポリマー、グルコース、フルクトース、キシロース、スクロース、デキストラン、リグニン、有機物加熱分解タールあるいはアスファルトからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記有機物前駆体を無機多孔質材料に担持する方法が、下記の方法から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
(i)浸漬法、
(ii)スプレー法。
【請求項9】
1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造する触媒の再生方法であって、
前記触媒は、担体と、
触媒活性成分としての含窒素カーボン材料と
を含み、
前記含窒素カーボン材料が前記担体上に担持されており、
前記担体が、無機多孔質材料のうちの少なくとも1種から選択され、
前記含窒素カーボン材料において、窒素元素が共有結合の形でカーボン材料中にドープされており、
前記触媒は1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造するように触媒する反応において活性を失った後、活性が失われた触媒を酸素ガス含有雰囲気の中で焼成して、焼成して得られた固体を担体とし、請求項に記載の方法により製造して再生触媒を製造することを含むことを特徴とする、再生方法。
【請求項10】
前記焼成の条件は、
焼成温度が300~800℃、焼成時間が0.2~10時間である、
ことを特徴とする、請求項に記載の再生方法。
【請求項11】
前記焼成の条件は、
焼成温度が450~700℃、焼成時間が0.5~6時間である、
ことを特徴とする、請求項に記載の再生方法。
【請求項12】
窒素元素の前記含窒素カーボン材料における質量パーセント含有量が0.1~20%であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
窒素元素の前記含窒素カーボン材料における質量パーセント含有量が1~9%である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
前記含窒素カーボン材料の前記触媒における質量パーセント含有量が1~40%であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項15】
前記含窒素カーボン材料の前記触媒における質量パーセント含有量が8~30%であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項16】
前記無機多孔質材料は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒分野に属し、具体的には、1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造するための触媒及びその製造ならびに再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニルは、高分子化学工業に用いられる重要な重合性モノマーであり、現在、工業上、塩化ビニルの生産プロセスは主にエチレン法及びアセチレン法の2種がある。カーバイド・アセチレン法によるポリ塩化ビニルの生産において一般的に用いられる塩化水銀触媒は、大量のカーバイドスラグ及び廃水が発生して投資コストを増加させるに加え、さらに環境を汚染して人間の健康に危害を与える。一方、エチレン法による塩化ビニルの製造は、現在、世界中に認められている省エネで環境に優しい先進的な生産ルートである。エチレン法は主に3つの段階を有し、第1段階において原油中のディーゼル軽油又は軽質ナフサを熱分解してエチレンを得、第2段階においてエチレンを直接に塩素化又はオキシクロリネーション反応させて1,2-ジクロロエタンを生成し、第3段階において1,2-ジクロロエタンを高温管式熱分解炉内で熱分解して塩化ビニルを製造する。したがって、1,2-ジクロロエタンの熱分解はエチレン法の極めて重要な段階であり、工業上、反応温度は、通常、500~600℃が選択され、この場合、1,2-ジクロロエタンの転化率が50%程度に制御される。高温熱分解反応は温度が高く、エネルギー消耗が多く、コークを生じやすいため、熱分解炉及びその後の分離工程における装置がコーク粒子により詰められ、コーク除去を頻繁に行う必要があり、生産周期が短いなどの一連の問題が発生する。しかしながら、含窒素カーボン触媒は1,2-ジクロロエタンの熱分解に対して触媒作用を有し、熱分解温度を250~350℃まで低下させ、塩化ビニルの選択率を向上させることができる(Jinming Xu et al.「Synthesis of nitrogen-doped ordered mesoporous carbons for catalytic dehydrochlorination of 1,2-dichloroethane」. 《Carbon》. 2014、第80巻、第610~616頁;Wei Zhao et al.「Catalytic dehydrochlorination of 1,2-dichloroethane to produce vinyl chloride over N-doped coconut activated carbon」.《RSC Advances》. 2015、第5巻、第104071~104078頁)。
【0003】
第201610256390.8号の中国発明特許出願において、活性炭を担体として、窒素含有化合物を担持した触媒が提案され、従来の工業上の熱分解による塩化ビニル製造の温度を450~500℃から280~300℃まで低下させることができ、1,2-ジクロロエタンの1パス転化率を50%から93%まで高めることができるが、使用寿命が短く、たった100時間で活性が失われてしまった。
【0004】
これまでに報告された多孔質カーボン触媒の観点からは、高コスト、短寿命、再生困難などの不都合があるので、工業上の利用が実現されなかった。
【発明の概要】
【0005】
従来技術に存在する課題を解決するために、特に、従来の熱分解技術と比べて、本発明の目的は、反応温度を低下させ、エネルギー消耗を大幅に低下させ、生産コストを低下させ、選択率及び転化率を高めることができる触媒を提供することにあり、かつ、該触媒は安価で再生可能であり、使用寿命が長い。
【0006】
本発明の全体的な構想は、1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造する触媒を提供することにあり、該触媒は、担体と、触媒活性成分としての含窒素カーボンとを含み、前記含窒素カーボンが前記担体上に担持されている。該触媒の製造方法は、無機多孔質担体上に有機物を担持し、その後、窒素含有化合物の雰囲気の中で加熱分解して炭化-窒化過程を行うことである。該触媒は再生可能であり、再生方法は、カーボン堆積して活性が失われた触媒を酸化性雰囲気の中で焼成して表面の全ての炭素質部分を除去した後に改めて担体とし、さらに前記触媒の製造過程を繰り返すことである。具体的には図1に示している。
【0007】
本発明の1つの態様は、1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造する触媒を提供し、前記触媒は、担体と、触媒活性成分としての含窒素カーボン材料とを含み、前記含窒素カーボン材料が前記担体上に担持されており、前記担体が、無機多孔質材料のうちの少なくとも1種から選択され、前記含窒素カーボン材料において、窒素元素が共有結合の形でカーボン材料中にドープされている。
【0008】
当業者は、実際の必要性に応じて、本発明が提供している方法を用いることにより、窒素元素の前記含窒素カーボン材料における含有量を調整することができる。
【0009】
オプションで、窒素元素の前記含窒素カーボン材料における質量パーセント含有量が0.1~20%である。
【0010】
好ましくは、窒素元素の前記含窒素カーボン材料における質量パーセント含有量が1~9%である。
【0011】
当業者は、実際の必要性に応じて、本発明が提供している方法を用いることにより、含窒素カーボン材料の前記触媒における含有量を調整することができる。
【0012】
オプションで、前記含窒素カーボン材料の前記触媒における質量パーセント含有量が1~40%である。
【0013】
好ましくは、前記含窒素カーボン材料の前記触媒における質量パーセント含有量が8~30%である。
【0014】
オプションで、前記無機多孔質材料は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0015】
本発明のもう1つの態様によれば、上記1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造する触媒の製造方法を提供し、該製造方法は、少なくとも、まず、有機物前駆体を無機多孔質材料上に担持し、その後、窒素含有化合物を含む雰囲気の中で加熱分解して炭化-窒化反応を行う工程を含むことを特徴とする。
【0016】
オプションで、前記加熱分解の条件は、加熱分解の温度が400℃~1000℃、加熱分解の時間が0.2~10時間である。
【0017】
好ましくは、前記加熱分解の条件は、加熱分解の温度が600℃~900℃、加熱分解の時間が0.5~6時間である。
【0018】
前記窒素含有化合物を含む雰囲気は、純粋な含有化合物ガスであってもよいし、不活性ガスを含有してもよい。前記不活性ガスが、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0019】
1つの実施形態として、前記窒素含有化合物を含む雰囲気の中に不活性ガスを含有する場合、窒素含有化合物の混合ガスにおける質量含有量が0.5%以上100%未満である。
【0020】
原則として、ガス化可能な、窒素元素を含有する化合物は、いずれも本発明における窒素含有化合物として使用可能である。
【0021】
オプションで、前記窒素含有化合物は、アンモニアガス、ヒドラジド、C-N結合含有有機化合物、C=N含有有機化合物、C≡N含有有機化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0022】
好ましくは、前記窒素含有化合物は、アンモニアガス、ヒドラジド、アセトニトリル、シアナミド、ピリジン、ピロール、エチレンジアミン又はメチルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0023】
原則として、ガス化可能又は溶解後にガス化可能な有機化合物は、いずれも本発明における有機物前駆体として使用可能であり、触媒の製造において炭素源として用いられる。
【0024】
オプションで、前記有機物前駆体は、炭化水素系化合物、ポリマー、及び*-CX、*-OH、*-C≡N、*-C=O、*-C-O-*結合、*-C-NH、*-C-NH-C-*、*-C-N=C-*のうちの少なくとも1種の基を含有する有機化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
ただし、*-CXにおけるXは、ハロゲン元素を表し、F、Cl、Br、Iからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0025】
オプションで、前記有機物前駆体は、炭素数1~18の炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アミン、酸、フェノール、ニトリル、フラン、ピリジン又はピロール類物質からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0026】
前記有機物は、具体的にアクリロニトリル、塩化ビニル、ジクロロエチレン、ビニルピリジン、アクリルアミド、アクリル化合物、ビニルエステル化合物、フェニルアミン類化合物、ピロール類化合物、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、フラン樹脂、上記物質のモノマー又はポリマー、グルコース、フルクトース、キシロース、スクロース、デキストラン、リグニン、有機物加熱分解タール又はアスファルトからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0027】
ただし、前記有機物前駆体がポリマーである場合、ポリマーの重量平均分子量が20000未満であり、水又は液状の有機溶媒に可溶である。
【0028】
オプションで、前記有機物前駆体を無機多孔質材料に担持する方法が、下記の方法から選択される少なくとも1種である。
【0029】
(i)浸漬法、
(ii)スプレー法。
【0030】
本願のもう1つの態様によれば、上記1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造する触媒の再生方法を提供し、該再生方法であって、
前記触媒は1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造するように触媒する反応において活性を失った後、活性が失われた触媒を酸素ガス含有雰囲気の中で焼成して、焼成して得られた固体を担体とし、上記1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造する触媒の製造方法により製造して再生触媒を製造することを含むことを特徴とする。
【0031】
オプションで、前記焼成の条件は、焼成温度が300~800℃、焼成時間が0.2~10時間である。
【0032】
好ましくは、前記焼成の条件は、焼成温度が450~700℃、焼成時間が0.5~6時間である。
【0033】
本願のもう1つの態様によれば、1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造する方法は、1,2-ジクロロエタンを含有する原料ガスを、触媒が担持されている反応器を通過させ、塩化ビニルを製造することを含む。
【0034】
前記触媒が、上記いずれかの1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造する触媒から選択される少なくとも1種である。
【0035】
本発明の有益な効果は、下記(1)~(4)を含むが、これらに制限されない。
【0036】
(1)本発明が提供する触媒は、1,2-ジクロロエタンを熱分解して塩化ビニルを製造する反応に用いられ、従来の熱分解法と比べて、反応温度及びエネルギー消耗を大幅に低下させることにより、生産コストを低下させた。
【0037】
(2)本発明が提供する触媒は、少ない含有量の含窒素カーボンを触媒活性成分として、無機多孔質材料を触媒の担体として、触媒活性を保証しながら、高い触媒強度を有する。
【0038】
(3)本発明が提供する触媒の製造方法は、簡単で取扱いやすく、大規模の工業化生産に有利である。
【0039】
(4)本発明が提供する触媒の再生方法は、活性が失われた触媒を焼成し、担体表面の炭素質部分を除去し、活性成分を改めて担持して触媒活性を回復することにより、無機多孔質材料の重複利用を実現し、触媒の製造コストを大幅に低減し、該触媒は非常に広い工業応用見込みを有することとなった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明に係る触媒、その製造、使用及び再生過程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、具体的な実施例により本発明の技術的方案を詳しく説明する。後述の実施例は本発明の一部の好適な実施例に過ぎず、本発明は実施例の内容に制限されない。当業者にとって、本発明の技術的方案の構想範囲内で様々な変化及び変更を行うことができ、行った変化及び変更はいずれも本発明の保護範囲内にある。
【0042】
実施例において、シリカゲルビーズは青島海洋化工有限公司から購入されたものである(粒子径2~4mm、白色)。
【0043】
実施例において、1,2-ジクロロエタンの転化率は下記の方法により算出された。
【0044】
1,2-ジクロロエタンの転化率=反応で消耗した1,2-ジクロロエタン(mol)/反応器に導入した1,2-ジクロロエタン(mol)
塩化ビニルの選択率は下記の方法により算出される。
【0045】
塩化ビニルの選択率=反応で生成した塩化ビニル(mol)/反応で消耗した1,2-ジクロロエタン(mol)
X線光電子分光はESCALAB 250Xi装置により測定された。
【0046】
実施例1
含窒素カーボン触媒試料CAT-1 の製造
室温で、40mLのフルフリルアルコールにおいて、撹拌しながらシュウ酸0.4gを加え、溶解した後に60mLのキシレンを加え、150mLのシリカゲルビーズをビーカーに入れて6時間浸漬し、濾過して、90℃に昇温し、さらに12h重合反応させ、前駆体1を得た。
【0047】
前駆体1を石英管内に放置した後に管式炉内に入れて、石英管に窒素ガスを導入して450℃に昇温し、3時間定温にした。ガス流路を切り換えて石英管にアンモニアガスを導入し、その後、5℃/minの昇温速度で600℃に昇温し、3時間定温にし、炭化-窒化過程を行った後、前記触媒を得、試料CAT-1 と記した。担持されている含窒素カーボン材料における窒素元素の質量パーセント含有量が6.5%であった。
【0048】
担持型含窒素カーボン触媒試料CAT-1 の活性試験
恒流ポンプで1,2-ジクロロエタン液体を蒸発器内で予熱してガス化した後、触媒CAT-1 が担持されている固定床反応器に導入し、反応器温度が260℃、1,2-ジクロロエタンの体積空間速度(GHSV)が180h-1であった。測定した結果、ジクロロエタンの転化率が54%、塩化ビニルの選択率が99%超えであることを示した。
【0049】
触媒試料CAT-1 の再生及び活性試験
活性が失われた触媒を空気中、600℃で1時間焼成し、得られた固体試料を試料ZCAT-1 -Z1と記した。
【0050】
シリカゲルビーズの代わりに試料ZCAT-1 -Z1を用い、その他の製造工程及び条件を試料CAT-1 と同様にして、得られた再生後の触媒を試料ZCAT-1 -1と記した。
【0051】
恒流ポンプで1,2-ジクロロエタン液体を蒸発器内で予熱してガス化した後、触媒ZCAT-1 -1が担持されている固定床反応器に導入し、反応器温度が260℃、1,2-ジクロロエタンの体積空間速度(GHSV)が180h-1であった。
【0052】
測定した結果は、CAT-1 と比べて、ZCAT-1 -1の触媒活性が低下していないことを示した。
【0053】
実施例2
含窒素カーボン触媒試料CAT-2 の製造
炭化-窒化過程においてアンモニアガスの処理条件が800℃、1.5時間定温にしたことである以外、本実施例の製造方法が実施例1と同様であった。得られた触媒を試料CAT-2 と記した。担持されている含窒素カーボン材料における窒素元素の質量パーセント含有量が9%であった。
【0054】
担持型含窒素カーボン触媒試料CAT-2 の活性試験
活性試験過程と実施例1との相違点は、反応器温度が260℃、1,2-ジクロロエタンの体積空間速度(GHSV)が157h-1であることにのみある。測定した結果、ジクロロエタンの転化率が72%であり、塩化ビニルの選択率が99%超えることを示した。
【0055】
触媒試料CAT-2 の再生及び活性試験
活性が失われた触媒を空気中、450℃で3時間焼成し、得られた固体試料を試料ZCAT-2 -Z1と記した。
【0056】
シリカゲルビーズの代わりに試料ZCAT-2 -Z1を用い、その他の製造工程及び条件を試料CAT-2 と同様にし、得られた再生後の触媒を試料ZCAT-2 -1と記した。
【0057】
恒流ポンプで1,2-ジクロロエタン液体を蒸発器内で予熱してガス化した後、触媒ZCAT-2 -1が担持されている固定床反応器に導入し、反応器温度が260℃、1,2-ジクロロエタンの体積空間速度(GHSV)が157h-1であった。
【0058】
測定した結果は、CAT-2 と比べて、ZCAT-2 -1の触媒活性が低下していないことを示した。
【0059】
実施例3
含窒素カーボン触媒試料CAT-3 の製造
フルフリルアルコールの使用量が25mL、シュウ酸の使用量が0.25g、トルエンの使用量が75mLであること以外、本実施例の製造方法は実施例1と同様であった。得られた触媒を試料CAT-3 と記した。担持されている含窒素カーボン材料における窒素元素の質量パーセント含有量が7%であった。
【0060】
担持型含窒素カーボン触媒試料CAT-3 の活性試験
活性試験過程と実施例1との相違点は、反応器温度が240℃、1,2-ジクロロエタンの体積空間速度(GHSV)が171h-1であることにのみある。測定した結果、含窒素カーボン触媒2#のジクロロエタンの転化率が36%、塩化ビニルの選択率が99%超えであることを示した。
【0061】
触媒試料CAT-3 の再生及び活性試験
活性が失われた触媒を空気中、700℃で0.25時間焼成し、得られた固体試料を試料ZCAT-3 -Z1と記した。
【0062】
シリカゲルビーズの代わりに試料ZCAT-3 -Z1を用い、その他の製造工程及び条件を試料CAT-3 と同様にし、得られた再生後の触媒を試料ZCAT-3 -1と記した。
【0063】
恒流ポンプで1,2-ジクロロエタン液体を蒸発器内で予熱してガス化した後、触媒ZCAT-3 -1が担持されている固定床反応器に導入し、反応器温度が240℃、1,2-ジクロロエタンの体積空間速度(GHSV)が171h-1であった。
【0064】
測定した結果は、CAT-3 と比べて、ZCAT-3 -1の触媒活性が低下していないことを示した。
【0065】
実施例4
含窒素カーボン触媒試料CAT-4 の製造
50gの酸化アルミニウムを、スクロースを25g含有する水溶液100gに入れ、100℃で水分を全部蒸発させ、前駆体4を得た。
【0066】
前駆体4を石英管内に放置した後、管式炉内に入れて、石英管に1%(質量パーセント含有量)のピリジンを含有するアルゴンガスを導入して800℃に昇温し、3時間定温にして炭化-窒化過程を行った後、前記触媒を得、試料CAT-4 と記した。担持されている含窒素カーボン材料における窒素元素の質量パーセント含有量が4%であった。
【0067】
担持型含窒素カーボン触媒試料CAT-4 の活性試験
活性試験過程と実施例1との相違点は、反応器温度が260℃、1,2-ジクロロエタンの体積空間速度(GHSV)が133h-1であることにのみある。測定した結果、ジクロロエタンの転化率が54%、塩化ビニルの選択率が99%超えであることを示した。
【0068】
触媒試料CAT-4 の再生及び活性試験
活性が失われた触媒を15%O-85%N混合雰囲気の中、600℃で2時間焼成し、得られた固体試料を試料ZCAT-4 -Z1と記した。
【0069】
シリカゲルビーズの代わりに試料ZCAT-4 -Z1を用い、その他の製造工程及び条件を試料CAT-4 と同様にし、得られた再生後の触媒を試料ZCAT-4 -1と記した。
【0070】
恒流ポンプで1,2-ジクロロエタン液体を蒸発器内で予熱してガス化した後、触媒ZCAT-4 -1が担持されている固定床反応器に導入し、反応器温度が260℃、1,2-ジクロロエタンの体積空間速度(GHSV)が133h-1であった。
【0071】
測定した結果は、CAT-4 と比べて、ZCAT-4 -1の触媒活性が低下していないことを示した。
【0072】
実施例5
含窒素カーボン触媒試料CAT-5 の製造
50gの酸化ジルコニウムを、フェノール樹脂を15g含有する無水エタノール溶液100gに放置し、80℃で無水エタノールを全部蒸発させ、前駆体5を得た。
【0073】
前駆体5を石英管内に放置した後、管式炉内に入れて、石英管に5%(質量パーセント含有量)のアセトニトリルを含有する窒素ガスを導入して750℃に昇温し、3時間定温にして炭化-窒化過程を行った後、前記触媒を得、試料CAT-5 と記した。担持されている含窒素カーボン材料における窒素元素の質量パーセント含有量が2%であった。
【0074】
担持型含窒素カーボン触媒試料CAT-5 の活性試験
活性試験過程と実施例1との相違点は、反応器温度が250℃、1,2-ジクロロエタンの体積空間速度(GHSV)が133h-1であることにのみある。測定した結果、ジクロロエタンの転化率が36%、塩化ビニルの選択率が99%超えであることを示した。
【0075】
触媒試料CAT-5 の再生及び活性試験
活性が失われた触媒を空気中、600℃で2時間焼成し、得られた固体試料を試料ZCAT-5 -Z1と記した。
【0076】
シリカゲルビーズの代わりに試料ZCAT-5 -Z1を用い、その他の製造工程及び条件を試料CAT-5 と同様にし、得られた再生後の触媒を試料ZCAT-5 -1と記した。
【0077】
恒流ポンプで1,2-ジクロロエタン液体を蒸発器内で予熱してガス化した後、触媒ZCAT-5 -1が担持されている固定床反応器に導入し、反応器温度が260℃、1,2-ジクロロエタンの体積空間速度(GHSV)が133h-1であった。
【0078】
測定した結果は、CAT-5 と比べて、ZCAT-5 -1の触媒活性が低下していないことを示した。
【0079】
実施例6
触媒試料CAT-1 ~CAT-5 のXPS特性解析
X線光電子分光を用いて試料CAT-1 ~CAT-5 を分析し、その結果は以下のとおりである。
【0080】
CAT-1 ~CAT-5 のいずれも少なくとも、ピリジン型官能基(398.6eV)、アミン又はアミド型基(399.6eV)、ピロール型基(400.3eV)、置換型N原子(401.3eV、グラファイトシート層の骨格における1つのC原子がNにより置換されている)、ピリジンオキシド型官能基(398.6eV)の5種類の含窒素官能基が存在しており、窒素元素が共有結合の形でカーボン材料中にドープされていることが明らかになった。
【0081】
以上の説明は、本願の幾つかの実施例に過ぎず、本願を限定することを意図するものではなく、本願を好適な実施例で上記のように説明しているが、それは本願を制限するためのものではなく、当業者であれば、本願の技術的方案の範囲から逸脱しない限り、上記説明している技術的内容を利用して行った幾つかの変更又は修正はいずれも等価実施例に同等であり、いずれも技術的方案の範囲内に属する。
図1