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特許7003239半導体チップを基板の上に固定する方法および電子構成素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】半導体チップを基板の上に固定する方法および電子構成素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
H01L21/52 D
H01L21/52 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020518567
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2018064914
(87)【国際公開番号】W WO2018228891
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-02-12
(31)【優先権主張番号】102017112866.2
(32)【優先日】2017-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514272140
【氏名又は名称】オスラム オーエルイーディー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OSRAM OLED GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, 93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス プレスル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ヴェント
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-516460(JP,A)
【文献】特表2015-501085(JP,A)
【文献】特開2006-287226(JP,A)
【文献】特開2016-009811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/60
H01L 33/62
H01S 5/0237
B23K 1/00
B23K 35/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ(1)を基板(3)の上に固定する方法であって、
以下の方法ステップ、すなわち、
A)半導体チップ(1)を準備するステップと、
B)はんだ金属積層体(2)を前記半導体チップ(1)の上に被着するステップと、
C)基板(3)を準備するステップと、
D)金属化積層体(4)を前記基板(3)の上に被着するステップと、
E)前記半導体チップ(1)を前記はんだ金属積層体(2)と前記金属化積層体(4)とを介して前記基板(3)の上に被着するステップと、
F)前記半導体チップ(1)を前記基板(3)の上に固定するために、前記方法ステップE)で生成されたアレイを加熱するステップと、を含み、
前記はんだ金属積層体(2)は、
-インジウムスズ合金を含む第1の金属層(2a)と、
-前記第1の金属層(2a)の上方に配置されたバリア層(2b)と、
-前記バリア層(2b)と前記半導体チップ(1)との間に配置された金を含む第2の金属層(2c)と、を含み、
前記第2の金属層(2c)の金の物質量は、前記第1の金属層(2a)のスズの物質量よりも多い、方法。
【請求項2】
前記第2の金属層(2c)の金の物質量は、前記第1の金属層(2a)のスズの物質量よりも少なくとも2倍多い、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記金属化積層体(4)は、前記基板(3)の上方に配置されたニッケルを含む第1の層(4a)を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記バリア層(2b)は、ニッケル、チタン、白金またはチタン化合物を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記方法ステップF)において、前記基板(3)と前記半導体チップ(1)との間に化合物積層体(5)が形成され、該化合物積層体(5)は、
-インジウム、スズ、およびニッケルを含む第1の金属間層(5a)と、
-インジウム、スズ、およびニッケルを含むか、インジウム、スズ、およびチタンを含むか、インジウム、スズ、およびチタン化合物を含むか、またはインジウム、スズ、および白金を含む第2の金属間層(5b)と、
-インジウム、スズ、および金を含む第3の金属間層(5c)と、を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記金属化積層体(4)は、前記基板(3)の上方に配置されたニッケルを含む第1の層(4a)と、該第1の層(4a)の上方に配置されたパラジウムを含む第2の層(4b)と、該第2の層(4b)の上方に配置された金を含む第3の層(4c)と、を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記方法ステップE)において、前記半導体チップ(1)は、前記はんだ金属積層体(2)の前記第1の金属層(2a)が前記金属化積層体(4)の前記第3の層(4c)の上に被着されるように、前記基板(3)の上に被着される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記バリア層(2b)は、5nm以上~200nm以下の間の層厚さを有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記インジウムスズ合金は、式InSn1-xを有し、ただし0.04≦x≦0.2である、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記第1の金属層(2a)は、750nm以上~3μmの間の層厚さを有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記第2の金属層(2c)は、500nm以上~2μmの間の層厚さを有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記はんだ金属積層体(2)は、第2のバリア層(2d)および金を含む酸化保護層(2e)を含み、前記第1の金属層(2a)は、前記第2のバリア層(2d)の上方に配置され、該第2のバリア層(2d)は、前記酸化保護層(2e)の上方に配置されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記半導体チップ(1)は、ケイ素を含む支持体を含む、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
基板(3)と、該基板(3)の上方に配置された半導体チップ(1)とを含む電子構成素子(100)であって、
前記基板(3)と前記半導体チップ(1)との間に化合物積層体(5)が配置されており、
前記化合物積層体(5)は、
-インジウム、スズ、およびニッケルを含む第1の金属間層(5a)と、
-インジウム、スズおよびチタン化合物を含むか、インジウム、スズ、およびニッケルを含むか、インジウム、スズ、および白金を含むか、またはインジウム、スズ、およびチタンを含む第2の金属間層(5b)と、
-インジウム、スズ、および金を含む第3の金属間層(5c)と、を含み、
前記第3の金属間層(5c)内で、金の物質量は、スズの物質量よりも多く、
前記第1の金属間層(5a)は、前記基板(3)の上方に配置されており、前記第2の金属間層(5b)は、前記第1の金属間層(5a)の上方に配置されており、前記第3の金属間層(5c)は、前記第2の金属間層(5b)の上方に配置されている、電子構成素子(100)。
【請求項15】
前記第3の金属間層(5c)は、ゼータ層の金スズ合金を含む、請求項14記載の電子構成素子(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップを基板の上に固定する方法および電子構成素子に関する。
【0002】
半導体チップを基板、例えばリードフレームに接続するために、半導体チップは、電子構成素子の製造中に頻繁に基板の上にはんだ付けされる。半導体チップと基板材料との間の熱膨張特性の違いに基づき、はんだ付け温度から室温への冷却の際には、半導体チップと基板とからなる複合体中に歪みが生じる。この歪みは、電子構成素子に機械的負荷がかかった場合、例えば半導体チップの支持体材料内で亀裂の誘因につながる可能性がある。例えば、金スズはんだは、半導体チップを基板の上にはんだ付けするために使用される。はんだ付けの場合、はんだ温度は300℃の領域にある。高いはんだ付け温度と、異なる熱膨張特性とに基づき、基板と半導体チップとからなる複合体の冷却の際には、熱的に誘起される著しい機械的応力が発生する。この機械的応力は、部品にさらなる機械的負荷がかかった場合、はんだ付け接合の不良につながり、あるいは基板内もしくはんだ付け接合部の亀裂の誘因につながる可能性がある。
【0003】
本発明の少なくとも1つの実施形態の課題は、従来技術に比べて改善されている、半導体チップを基板の上に固定する方法を提供することである。さらなる課題は、電子構成素子の提供にある。
【0004】
これらの課題は、とりわけ、独立請求項の特徴を有する方法および電子構成素子によって解決される。好適な発展形態は、従属請求項の対象である。
【0005】
ここでは、半導体チップを基板の上に固定する方法が提示される。この方法は、以下の方法ステップを、好適には提示された順序で含む。すなわち、
A)半導体チップを準備するステップ。
B)はんだ金属積層体を半導体チップの上に被着するステップ。
C)基板を準備するステップ。好適には、この基板はリードフレームである。
D)金属化積層体を基板の上に被着するステップ。
E)半導体チップをはんだ金属積層体と金属化積層体とを介して基板の上に被着するステップ。特に、この被着は、当該被着後、金属化積層体とはんだ金属積層体とが基板と半導体チップとの間に位置するように行われる。
F)半導体チップを基板の上に固定するために、方法ステップE)で生成されたアレイを加熱するステップ。特に、方法ステップF)では、金属化積層体とはんだ金属積層体とから化合物積層体が形成される。
【0006】
この場合、ここおよび以下において、1つの層もしくは1つの素子が、他の層もしくは他の素子の「上に」、または他の層もしくは他の素子の「上方に」、配置または被着されていることは、1つの層もしくは1つの素子が直接的に、他の層もしくは他の素子の上に機械的および/または電気的に直接接触して配置されていることを意味し得る。さらに、このことは、1つの層もしくは1つの素子が間接的に、他の層もしくは他の素子の上に、または他の層もしくは他の素子の上方に配置されていることも意味し得る。したがって、その場合、さらなる層および/または素子を、一方もしくは他方の層との間、または一方もしくは他方の素子との間に配置してもよい。
【0007】
ここおよび以下において、1つの層もしくは1つの素子が、他の2つの層もしくは素子の「間に」配置されていることは、1つの層もしくは1つの素子が直接的に、他の2つの層もしくは素子のうちの一方と機械的および/または電気的に直接接触もしくは間接接触し、他の2つの層もしくは素子のうちの他方と機械的および/または電気的に直接接触もしくは間接接触して配置されていることを意味し得る。したがって、ここでは、間接接触の場合、さらなる層および/または素子は、1つの層と他の2つの層のうちの少なくとも一方との間、または1つの素子と他の2つの素子の少なくとも一方との間に配置されてもよい。
【0008】
少なくとも1つの実施形態によれば、はんだ金属積層体は、第1の金属層、第1の金属層の上方に配置されたバリア層、およびバリア層と半導体チップとの間に配置された第2の金属層を含む。はんだ金属積層体は、第1の金属層、バリア層、および第2の金属層からなってもよい。
【0009】
少なくとも1つの実施形態によれば、はんだ金属積層体は、インジウムスズ合金を含む第1の金属層、第1の金属層の上方に配置されたバリア層、およびバリア層と半導体チップとの間に配置された金を含む第2の金属層を含む。好適には、方法ステップE)によれば、第1の金属層は、金属化積層体の上方に配置され、バリア層は、第1の金属層の上方に配置され、第2の金属層は、バリア層の上方に配置されている。好適には、第1の金属層は、インジウムスズ合金からなる。好適には、第2の金属層は、金からなる。
【0010】
少なくとも1つの実施形態によれば、第2の金属層を生成するためにインジウムスズ合金を被着することができ、またはインジウムとスズとを別個に堆積させることができる。例えば、最初にスズからなる層を堆積させ、次いで、インジウムからなる層を堆積させ、その後で、改めてスズからなる層を堆積させる。インジウムとスズは、既に室温で反応して合金を形成する。したがって、スズとインジウムとを別個に堆積させると、既に室温で、ひいては堆積直後に少なくとも部分的に、好適には完全にインジウムスズ合金が形成される。インジウムスズ合金が部分的にしか形成されないならば、第2の金属層内にはこのインジウムスズ合金のほかにもまだインジウムとスズとが存在し得る。第2の金属層は、インジウムスズ合金からも、インジウムスズ合金とインジウムおよびスズからもなり得る。
【0011】
少なくとも1つの実施形態によれば、第2の金属層の金の物質量は、第1の金属層のスズの物質量よりも多い。このことは、半導体チップを基板の上に接合させるのに特に有利であることが判明している。それにより、出来上がる電子構成素子では、半導体チップを基板の上に強固にかつ永続的に接合させることが保証できる。特に、方法ステップF)では、化合物積層体の内部に、式Au1-ySn、ただし0.10≦y≦0.185の少なくとも1つの金スズ合金を含む第3の金属間層が形成される。ひときわ好適には、第3の金属間層は、ゼータ(ζ)相の金スズ合金を含む。それにより、金の物質量がインジウムの物質量よりも多い第3の金属間層が形成される。そのような第3の金属間層は、その機械的特性に関して特に有利であることが判明しており、特に、より多くのスズ含有量を有する金スズ合金よりも負荷耐性があり、延性があり、著しく脆性が低い。例えば、ゼータ相の金スズ合金は、デルタ(δ)相の金スズ合金よりも著しく負荷耐性があり、延性がある。
【0012】
nで表される物質量は、物質部分の粒子数を間接的に示す。物質量nは、n=M/mから算出できる。ただし、Mはモル質量g/molを示し、mは重量gを示す。物質量は、当業者には公知である。
【0013】
少なくとも1つの実施形態によれば、第2の金属層の金の物質量は、第1の金属層のスズの物質量よりも少なくとも2倍、好適には少なくとも3倍または4倍多い。この場合、金の物質量は、スズの物質量よりも最大で7倍多くすることができる。
【0014】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の金属層のスズに対するインジウムの物質量の比は、0.04以上~0.96までの間、および0.2以上~0.8までの間、好適には0.06以上~0.94までの間、および0.18以上~0.82までの間、特に好適には0.08以上~0.92までの間、および0.16以上~0.84までの間にある。
【0015】
少なくとも1つの実施形態によれば、第2の金属層のインジウムスズ合金は、式InSn1-xを有し、ただし0.04≦x≦0.2、好適には0.06≦x≦0.18、特に好適には0.08≦x≦0.16である。第2の金属層は、式InSn1-x、ただし0.04≦x≦0.2のインジウムスズ合金からなる。インジウムスズ合金のそのような組成は、特に有利であることが判明している。少ないインジウム含有量により、融点は純粋なスズに比べて低くなる。これにより、方法ステップF)における温度を低く維持することができる。さらに、x=0.2の最大インジウム含有量でもって、インジウムスズ合金は、任意のさらなる方法ステップにおいて、既に半導体チップが基板の上に被着される前に融解しないことが保証できる。驚くべきことに、インジウム含有量がx=0.2を超えない場合、金属化積層体の濡れ特性が最良であることも示されている。
【0016】
バリア層は、第1の金属層の金属、つまりインジウムおよびスズを、最初は第2の金属層の金から分離するように形成されている。なぜなら、インジウムスズ合金は、金と既に室温で高融点相を生成するからである。それゆえ、第1および第2の金属層は、最初は相互に分離されていなければならない。インジウムスズ合金が融解温度に達した後でも、液体インジウムと液体スズもしくは液体インジウムスズ合金と第2の金属層の金とは、方法ステップF)において、相互に分離されなければならない。このことは、バリア層によって保証される。バリア層は、一時的な拡散バリアと称することもできる。このバリア層は、好適には、第1の金属層と第2の金属層との間の全面に配置されている。特に、第1の金属層と第2の金属層には、共通の界面がない。
【0017】
少なくとも1つの実施形態によれば、バリア層は、ニッケル、チタンまたは白金を含む。ニッケル、チタンまたは白金は、これらの金属そのものであるかまたはこれらの金属の化合物であり得る。チタン化合物は、例えば、Tiy-1またはTiz-1であってもよい。好適には、バリア層は、金属ニッケル、チタンまたは白金を含むかそれらからなり、特に好適には、ニッケルまたはチタンを含むかそれらからなる。これらの金属もしくは化合物は、特に好適である。なぜなら、これらは、方法ステップF)においてインジウムスズ合金が融解した後、ゆっくりと時間遅延を伴いながら液体インジウムおよびスズと、もしくは液体インジウムスズ合金と反応するだけなので、それによって、金属化積層体が液体インジウムおよび液体スズもしくは液体インジウムスズ合金で十分に濡れることが保証されるからである。
【0018】
少なくとも1つの実施形態によれば、方法ステップE)で生成されたアレイの加熱は、方法ステップF)において、240℃、好適には200℃、特に好適には190℃の温度まで行われる。既にこれらの温度では、インジウムスズ合金は融解する。この比較的低いはんだ付け温度に基づき、基板と半導体チップとからなるアレイの冷却の際に熱的に誘起される機械的応力が、特に純粋なAuSnはんだの使用に比べて低減できる。これにより、機械的負荷がかかった場合の基板からの半導体チップの剥離が防止され、機械的負荷がかかった場合に亀裂がまったく生じないかほとんど生じない。
【0019】
式InSn1-x、ただし0.04≦x≦0.2のインジウムスズ合金は、特に190℃から225℃の間の融点を有し得る。この融点は、インジウムスズ合金が完全に融解する場合の温度を表す(液相線温度)。融解過程は、特に170℃から200℃の温度の間に既に開始され得る(固相線温度)。
【0020】
InSn1-x、ただし0.04≦x≦0.2のインジウムスズ合金の使用により、融解温度は純粋なスズに比べて低下する。既にx=0.04のインジウム含有量の場合、融解温度は224℃にあり、したがって、これは、232℃にある純粋なスズの融解温度よりも明らかに低くなっている。インジウム含有量がより多く選択されるほど、Sn0.48In0.52で約121℃の融解温度の共晶に達するまで融解温度はより低くなる。本発明者は、本発明において、インジウムスズ合金の融解温度が180℃を下回るべきではないことを確認した。なぜなら、さもないと、これは、被着されたはんだ金属積層体を有する半導体チップの積層過程もしくは分離過程などのさらなる処理ステップにおいて既に融解し、隣接する層と反応するリスクが生じるからである。このことは、回避すべきである。なぜなら、さもないと、半導体チップを基板の上に強固にかつ永続的に接合させることがもはや保証できなくなるからである。第2の金属層の内部のスズに対するインジウムの比率が0.04以上~0.96までの間、および0.20以上~0.80までの間にある、スズに対するインジウムの少量調量によって、一方では、方法ステップF)における加熱温度を公知のはんだ付け法よりも低く維持することができる。このことは、半導体チップ材料と基板材料との間の熱膨張特性の違いに基づく歪みの低減につながる。他方では、第2の金属層のインジウムスズ合金が方法ステップE)またはF)の前に融解せず、そのため早期時点で隣接する層との不所望な反応に移行しないことが保証できる。
【0021】
方法ステップF)における加熱の際には、インジウムスズ合金が融解を開始する。その際、金属化積層体の表面は、液体インジウムと液体スズもしくは液体インジウムスズ合金で濡れており、金属化積層体の材料と反応する。同時に、インジウムおよびスズもしくはインジウムスズ合金は、バリア層の材料と、つまり、特にニッケル、チタンまたは白金と反応する。既存のバリア層により、インジウムおよびスズもしくはインジウムスズ合金と、第2の金属層の金との反応は最初は遅延する。これにより、金属化積層体が十分に、液体インジウムと液体スズもしくはインジウムスズ合金で濡れることが保証される。インジウムとスズもしくはインジウムスズ合金が直ちに第2の金属層の金と反応するのであれば、このことは保証されないであろう。なぜなら、この反応は、高融点相を生成し、インジウムとスズもしくはインジウムスズ合金が液体でいられる期間の長さを、金属化積層体の十分な濡れを保証し、金属化積層体の材料との反応を保証するほど十分にはさせないはずだからである。驚くべきことに、第2の金属層のスズに対するインジウムの比率を0.04以上~0.96までの間、および0.20以上~0.80までの間にした場合、濡れは特に良好となる。
【0022】
少なくとも1つの実施形態によれば、方法ステップF)において、インジウムおよびスズもしくはインジウムスズ合金と、バリア層の材料、特にニッケル、チタンもしくは白金との反応から、インジウム、スズ、およびバリア層の材料を含むかそれらからなる第2の金属間層が形成される。同時に、第1の金属間層が、インジウムおよびスズもしくはインジウムスズ合金と、金属化積層体の材料との反応から形成される。特に、第1の金属間層と第2の金属間層との間にさらに第1の金属層が配置されている。残りの液体インジウムとスズもしくは液体インジウムスズ合金は、形成された第2の金属間層を通って第2の金属層に拡散し、金と反応して高融点の固相を形成する。この固相はここおよび以下において第3の金属間層と称する。この第3の金属間層は、インジウム、スズ、および金を含むかそれらからなる。第2の金属層において本発明により使用される金の物質量がスズの物質量よりも多いことにより、金の物質量がインジウムの物質量よりも多い第3の金属間層が形成される。
【0023】
少なくとも1つの実施形態によれば、式Au1-ySn、ただし0.10≦y≦0.185の少なくとも1つの金スズ合金を含む第3の金属間層が形成される。特にひときわ好適には、ゼータ相の金スズ合金が形成される。Au1-ySn、ただし0.10≦y≦0.185の金スズ合金もしくはゼータ相の金スズ合金のほかに、さらなる金スズ合金および/または金スズインジウム合金が形成できる。特にひときわ好適には、第3の金属間層の主成分は、式Au1-ySn、ただし0.10≦y≦0.0185の金スズ合金またはゼータ相の金スズ合金である。特に、第3の金属間層には、融点が280°C未満の合金がまったくないか、ほとんどない。そのような第3の金属間層は、その機械的特性に関して特に有利であることが判明しており、特に、より多くのスズ含有量もしくはより少ない金含有量を有する金スズ合金よりも負荷耐性があり、延性があり、著しく脆性が低い。この方法によって製造された電子構成素子は、機械的負荷に対してとりわけ堅固である。
【0024】
少なくとも1つの実施形態によれば、方法ステップF)の後に、方法ステップG)、すなわち、方法ステップF)で生成されたアレイを200℃以上~260℃以下の間の温度で焼き戻しする方法ステップG)が行われる。この焼き戻しは、好適には1時間から8時間の間実施することができる。この焼き戻しにより、第3の金属間層の内部で融点が280℃未満の化合物もしくは合金の形成を効果的に阻止することができる。
【0025】
少なくとも1つの実施形態によれば、方法ステップF)において、化合物積層体が基板と半導体チップとの間に形成される。この化合物積層体を介して、半導体チップは、基板の上に固定されている。化合物積層体は、第1の金属間層、第2の金属間層、および第3の金属間層を含む。
【0026】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の金属間層は基板の上方に配置され、第2の金属間層は第1の金属間層の上方に配置され、第3の金属間層は第2の金属間層の上方に配置されている。
【0027】
少なくとも1つの実施形態によれば、金属化積層体は、基板の上方に配置されたニッケルを含むかニッケルからなる第1の層を含む。この金属化積層体は、第1の層からなってもよい。方法ステップF)で形成される第1の金属間層は、この実施形態によれば、インジウム、スズ、およびニッケルを含むかこれらの金属からなることができる。つまり、この実施形態によれば、第1および第2の金属間層は、インジウム、スズ、およびニッケルを含むかこれらの金属からなることができる。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、金属化積層体は、基板の上方に配置されたニッケルを含む第1の層と、第1の層の上方に配置されたパラジウムを含む第2の層とを含む。この第2の層は、パラジウムからなってもよい。
【0029】
少なくとも1つの実施形態によれば、金属化積層体は、第1または第2の層の上方に配置された金を含む第3の層を含む。この第3の層は、金からなってもよい。
【0030】
少なくとも1つの実施形態によれば、金属化積層体は、第1の層と第3の層とからなるか、第1の層と第2の層と第3の層とからなる。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、方法ステップE)において、半導体チップは、はんだ金属積層体の第1の金属層が金属化積層体の第3の層の上に被着されるように、基板の上に被着される。方法ステップF)で形成される第1の金属間層は、この実施形態によれば、インジウム、スズ、金、パラジウム、およびニッケルを含むかこれらの金属からなることができる。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、バリア層は、5nm以上~200nm以下の間の層厚さを有する。これらの層厚さによれば、金属化積層体を液体インジウムスズ合金で十分に濡らすための、インジウムおよびスズもしくはインジウムスズ合金と、第2の金属層の金との反応の十分な遅延を保証することができる。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の金属層は、750nm以上~3μmの間の層厚さを有する。
【0034】
特に、はんだ金属積層体および金属化積層体の個々の層の層厚さは、方法ステップF)において、インジウムおよびスズもしくはインジウムスズ合金が可及的に完全反応して、液体インジウムスズ合金が、はんだ金属積層体の第2の金属層の金および金属化積層体の第1の層のニッケルと反応することが保証されるように相互に調整されている。したがって、好適には、方法ステップF)の後で、第1の金属間層、第2の金属間層、および第3の金属間層が、半導体チップと基板との間に位置する。
【0035】
少なくとも1つの実施形態によれば、はんだ金属積層体の第2の金属層は、500nm以上~2μmの間の層厚さを有する。
【0036】
少なくとも1つの実施形態によれば、金属化積層体の第1の層は、2μm以上~4μmの間、例えば3μmの層厚さを有する。
【0037】
少なくとも1つの実施形態によれば、金属化積層体の第2の層は、10nm以上~20nmの間の層厚さを有する。
【0038】
少なくとも1つの実施形態によれば、はんだ金属積層体は、金および第2のバリア層を含む酸化保護層を含む。第1の金属層は、この場合、第2のバリア層の上方に配置され、該第2のバリア層は、酸化保護層の上方に配置されている。この酸化保護層は、第1の金属層を酸化から保護するために用いられる。インジウムおよび/またはスズの酸化もしくは部分酸化は、金属化積層体の濡れの不良につながる可能性があり、回避すべきである。特に、インジウムは、酸化に非常に敏感である。この実施形態は、はんだ金属積層体を含む半導体チップが基板の上に被着される前に、つまり方法ステップE)の前に、所定の時間の間保存される場合には特に好適である。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、第2のバリア層は、ニッケル、チタンまたは白金を含む。ニッケル、チタンまたは白金は、これらの金属そのものであるかまたはこれらの金属の化合物であり得る。チタン化合物は、例えば、Tiy-1またはTiz-1であってもよい。好適には、第2のバリア層は、金属、ニッケル、チタンまたは白金を含むかそれらからなり、特に好適には、チタンを含むかチタンからなる。第2のバリア層は、室温において、特に半導体チップの保存中に、インジウムスズ合金と酸化保護層の金との間の反応を阻止するために用いられる。第2のバリア層の金属または化合物は、方法ステップF)において、インジウムスズ合金とゆっくりとしか反応しない。それにも関わらず、金属化積層体が液体インジウムスズ合金で十分に濡れることを保証するために、第2のバリア層は、バリア層に比べて好適には著しく薄い層厚さを有する。方法ステップF)において、金属化積層体の十分な濡れを保証するために、第2のバリア層は、特に3nm以上~10nm以下の間、好適には5nm以上~10nm以下の間の層厚さを有する。バリア層は、この実施形態によれば、特に、20nmから200nmの間の層厚さを有することができる。
【0040】
少なくとも1つの実施形態によれば、酸化保護層は、50nm以上~100nm以下の間の層厚さを有する。50nm未満の層厚さは、酸化からの第1の金属層の十分な保護を保証するために十分な厚さとは言えない。金属化積層体を十分に濡らすことを保証するためには、100nmを上回る層厚さは回避すべきであろう。
【0041】
方法ステップF)における加熱の際には、インジウムスズ合金が融解を開始する。その際、これは最初に第2のバリア層の材料、つまり特にニッケル、チタンまたは白金と反応し、それに続いて酸化保護層の金と反応する。これに続いて、液体インジウムスズ合金による金属化積層体の濡れが起こる。十分な濡れを保証するためには、インジウムスズ合金と第2の金属層の金との反応が開始される前にこの濡れが起こる必要がある。このことは、特に、第2のバリア層、酸化保護層、およびバリア層の層厚さの選択によって行うことができる。特に好適には、バリア層は、20nm以上~200nm以下の間もしくは100nmの層厚さを有し、第2のバリア層は、5nm以上~10nm以下の間の層厚さを有し、酸化保護層は、50nm以上~100nm以下の間の層厚さを有する。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によれば、方法ステップF)において、インジウムおよびスズもしくインジウムスズ合金と、バリア層の材料、特にニッケル、チタンもしくは白金との反応から、インジウム、スズ、およびバリア層の材料を含むかそれらからなる第2の金属間層が形成される。同時に、第1の金属間層が、インジウムおよびスズもしくはインジウムスズ合金と、第2のバリア層の材料、酸化保護層の金、および金属化積層体との反応から形成される。特に、第1の金属間層と第2の金属間層との間にさらに第1の金属層が配置されている。残りの液体インジウムとスズもしくは液体インジウムスズ合金は、形成された第2の金属間層を通って第2の金属層に拡散し、金と反応して高融点の固相を形成し、第3の金属間層を形成する。この第3の金属間層は、インジウム、スズ、および金を含むかそれらからなる。
【0043】
少なくとも1つの実施形態によれば、金属化積層体の第3の層は、3nm以上~5nmの間の層厚さを有する。第3の層は、インジウムスズ合金および金から形成された高融点相が過度に厚くならないようにすることを保証するためには5nmの層厚さを超えるべきではなく、それによって、液体インジウムスズ合金が、金属化積層体の第1の層のニッケルに侵出してこれと反応することがかわらずに保証できる。
【0044】
少なくとも1つの実施形態によれば、基板、特にリードフレームは、銅を含むことができる。このリードフレームを介して半導体チップは、電気的に接触できる。
【0045】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体チップは、電磁ビームを放射するように形成された活性層を有する積層体である。
【0046】
これに関連して、「積層体」とは、1つ以上の層を含む積層体、例えば一連のp型ドープされた半導体層およびn型ドープされた半導体層を意味するものと理解されたい。この場合、これらの層は、上下に配置されており、ここでは、電磁ビームを発光する少なくとも1つの活性層を含んでいる。
【0047】
積層体は、エピタキシャル積層体として、またはエピタキシャル積層体を備えたビーム発光半導体チップとして、つまりエピタキシャル成長された半導体積層体として実施されてもよい。この場合、積層体は、例えばInGaAlNをベースに実施されてもよい。InGaAlNベースの半導体チップおよび半導体積層体とは、特に、次のようなものである。すなわち、エピタキシャル成長で製造された半導体積層体が、InAlGa1-x-yN、だたし0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1のIII-V族化合物半導体材料系からの材料を有する少なくとも1つの単一層を含んだ種々異なる単一層からなる積層体を有しているものである。InGaAlNベースの少なくとも1つの活性層を有する半導体積層体は、例えば、紫外領域から青色波長領域の電磁ビームを放射することができる。
【0048】
活性半導体積層体は、活性層のほかに、さらなる機能層および機能領域、例えばp型もしくはn型ドープ電荷担体移送層、つまり電子もしくは正孔移送層、非ドープまたはp型もしくはn型ドープ閉じ込め、クラッドまたは導波層、バリア層、平坦化層、バッファ層、保護層、および/または電極ならびにそれらの組合せを含むことができる。さらに、例えば成長基板とは反対側の半導体積層体の面の上に1つ以上のミラー層を被着させてもよい。本明細書で説明する、活性層またはさらなる機能層および機能領域に関する構造は、当業者にとっては特に構成、機能、および構造に関して公知であり、それゆえ、ここでは詳細に説明しない。
【0049】
ここでは、電子構成素子も提示される。この電子構成素子は、好適には、上述した実施形態の1つ以上に関連して提示されたように当該方法のうちの1つを使用して製造されている。それゆえ、当該方法に関するすべての特徴は、構成素子に関しても開示され、その逆も当てはまる。
【0050】
少なくとも1つの実施形態によれば、構成素子は、ビームもしくは光を生成するための光電子構成素子である。
【0051】
ここでは、基板と、該基板の上方に配置された半導体チップとを含む電子構成素子が提示される。半導体チップと基板との間に化合物積層体が配置されている。特に、半導体チップは、化合物積層体を介して基板に固定されている。
【0052】
少なくとも1つの実施形態によれば、化合物積層体は、第1の金属間層、第2の金属間層、および第3の金属間層を含む。特に、第1の金属間層は基板の上方に配置され、第2の金属間層は第1の金属間層の上方に配置され、第3の金属間層は第2の金属間層の上方に配置されている。化合物積層体は、第1、第2、および第3の金属間層からなってもよい。
【0053】
少なくとも1つの実施形態によれば、ニッケルを含むかニッケルからなる第1の層が、基板と化合物積層体との間に、特に基板と第1の金属間層との間に配置されている。
【0054】
少なくとも1つの実施形態によれば、化合物積層体の第1の金属間層は、スズ、インジウム、およびニッケルを含むか、スズ、インジウム、ニッケル、およびパラジウムを含むか、スズ、インジウム、ニッケル、パラジウム、および金を含むか、またはスズ、インジウム、ニッケル、および金を含むか、またはこれらの金属からなる。
【0055】
少なくとも1つの実施形態によれば、化合物積層体の第1の金属間層は、スズ、インジウム、金およびニッケルを含むか、スズ、インジウム、ニッケル、金、およびパラジウムを含むか、スズ、インジウム、ニッケル、パラジウム、および金を含むか、またはスズ、インジウム、ニッケル、および金を含むか、またはこれらの金属からなる。この実施形態は、はんだ金属積層体がニッケルを含む第2のバリア層と酸化保護層とを含む場合に好適である。
【0056】
少なくとも1つの実施形態によれば、化合物積層体の第1の金属間層は、スズ、インジウム、金、チタンおよびニッケルを含むか、スズ、インジウム、金、チタン、ニッケル、およびパラジウムを含むか、スズ、インジウム、金、チタン、ニッケル、およびパラジウムを含むか、またはスズ、インジウム、ニッケル、金、およびチタンを含むか、またはこれらの金属からなる。この実施形態は、はんだ金属積層体が、チタンを含む第2のバリア層と酸化保護層とを含む場合に好適である。
【0057】
少なくとも1つの実施形態によれば、化合物積層体の第1の金属間層は、スズ、インジウム、金、白金、およびニッケルを含むか、スズ、インジウム、金、白金、ニッケル、およびパラジウムを含むか、スズ、インジウム、金、白金、ニッケル、およびパラジウムを含むか、またはスズ、インジウム、ニッケル、金、および白金を含むか、またはこれらの金属からなる。この実施形態は、はんだ金属積層体が、白金を含む第2のバリア層と酸化保護層とを含む場合に好適である。
【0058】
少なくとも1つの実施形態によれば、化合物積層体の第1の金属間層は、スズ、インジウム、金、チタン化合物およびニッケルを含むか、スズ、インジウム、金、チタン化合物、ニッケルおよびパラジウムを含むか、スズ、インジウム、金、チタン化合物、ニッケルおよびパラジウムを含むか、またはスズ、インジウム、ニッケル、金、およびチタン化合物を含むか、またはこれらの金属からなる。この実施形態は、はんだ金属積層体が、チタン化合物を含む第2のバリア層と酸化保護層とを含む場合に好適である。
【0059】
少なくとも1つの実施形態によれば、第2の金属間層は、スズ、インジウム、およびチタン化合物を含むか、スズ、インジウム、およびニッケルを含むか、スズ、インジウム、および白金を含むか、またはスズ、インジウム、チタンを含み、またはスズ、インジウム、およびチタン化合物からなるか、スズ、インジウム、およびニッケルからなるか、スズ、インジウム、および白金からなるか、またはスズ、インジウムおよびチタンからなる。
【0060】
少なくとも1つの実施形態によれば、化合物積層体の第3の金属間層は、インジウム、スズおよび金を含むかこれらの金属からなる。特に、金の物質量は、スズの物質量よりも多い。
【0061】
少なくとも1つの実施形態によれば、第3の金属間層は、式Au1-ySn、ただし0.10≦y≦0.185の少なくとも1つの金スズ合金を含む。特にひときわ好適には、ゼータ相の金スズ合金が形成される。式Au1-ySn、ただし0.10≦y≦0.185の金スズ合金もしくはゼータ相の金スズ合金のほかに、第3の金属間層にさらなる金スズ合金および/または金スズインジウム合金が含まれてもよい。特にひときわ好適には、第3の金属間層の主成分は、式Au1-ySn、ただし0.10≦y≦0.185の金スズ合金もしくはゼータ相の金スズ合金である。そのような第3の金属間層は、その機械的特性に関して特に有利であることが判明しており、特に、より多くのスズ含有量もしくはより少ない金含有量を有する金スズ合金よりも負荷耐性があり、延性があり、著しく脆性が低い。これにより、電子構成素子は機械的負荷に対して特に安定している。
【0062】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体チップと化合物積層体との間に接着層が配置されている。この接着層は、1つ以上の金属層であり得る。この金属は、例えば、白金、チタン、および金を含むグループから選択されてよい。
【0063】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体チップは、基板の上に配置されている。この基板は、例えばサファイア基板であり得る。
【0064】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体チップは支持体の上に配置されている。この支持体は、例えばシリコンを含むかシリコンからなる支持体であり得る。
【0065】
さらなる利点、好適な実施形態、およびさらなる発展形態は、以下で図面に関連して説明する実施例から明らかになる。その際、同じおよび同種の素子または効果の同じ素子には、同じ参照符号が付されている。図面ならびにこれらの図面に示されている素子の相互間の比率は、必ずしも縮尺通りとみなされるべきではない。むしろ、個々の素子は、表現性の改善のために、かつ/または理解を深めるために、誇張して大きくしたり、簡素化して表現したりすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】A~Dは電子構成素子を製造する方法の概略図
図2】A~Dは電子構成素子を製造する方法の概略図
図3】動的示差熱量測定図
図4】動的示差熱量測定図
図5】インジウムスズ合金の状態図
図6】金-スズ合金の状態図
【0067】
図1Aは半導体チップ1を示し、その上方にはんだ金属積層体2が配置されている。このはんだ金属積層体は、第1の金属層2a、第1の金属層2aの上方に配置されたバリア層2b、およびバリア層2bの上方に配置された第2の金属層2cを含む。第1の金属層2aは、式InSn1-x、ただし0.04≦x≦0.2のインジウムスズ合金を含むかそれからなる。バリア層2bは、ニッケル、チタン、または白金からなり、第2の金属層2cは金からなる。第2の金属層2cの金の物質量は、第1の金属層2aのスズの物質量よりも多い。第1の金属層2aは、750nm以上~3μmの間の層厚さを有し、バリア層は、5nm以上~200nm以下の間の層厚さを有し、第2の金属層2cは、500nm以上~2μmの間の層厚さを有する。さらに、図1Aは、基板3を示し、その上に金属化積層体4が配置されている。この金属化積層体4は、基板3の上方に配置されたニッケルを含むかニッケルからなる第1の層4aと、該第1の層4aの上方に配置されたパラジウムを含むかパラジウムからなる第2の層4bと、該第2の層4bの上方に配置された金を含むか金からなる第3の層4cとからなる。この場合、第1の層4aは、例えば3μmの層厚さを有する。第2の層4bは、10nm以上~20nmの間の層厚さを有し、第3の層4cは、3nm以上~5nmの間の層厚さを有する。特に、基板3はリードフレームである。
【0068】
図1Bは、半導体チップ1がはんだ金属積層体2および金属化積層体4を介して基板3の上に配置されているアレイを示す。
【0069】
図1Bに示されているアレイを約200℃の温度で加熱することにより、第1の金属層2a内のインジウムスズ合金が融解する。液体インジウムスズ合金は、金属化積層体4の第3の層4cを濡らす。液体インジウムスズ合金は、バリア層2bのニッケル、白金、またはチタンと反応し、図1Cに示すように、第2の金属間層5bを形成する。同時に、液体インジウムもしくは液体インジウムスズ合金は、第3の層4cの金、第2の層4bのパラジウム、および第1の層4aのニッケルと反応し、第1の金属間層5aを形成する。その場合は、図示のように、第1の層4aのニッケルは、液体インジウムスズ合金と完全に反応することができず、そのため、層厚さを低減した第1の層4aが残る。しかしながら、ニッケルが液体インジウムスズ合金と完全に反応し、それにより、もはや層4aは存在しないこともあり得る。
【0070】
第1の金属層4a内に残っている液体インジウムスズ合金は、粒界拡散によって第2の金属間層5bを通って第2の金属層2cに拡散し、そこで金と反応して第3の金属間層5cを形成する(図1D参照)。この第3の金属間層5cは、式Au1-ySn、ただし0.10≦y≦0.185の少なくとも1つの金スズ合金、好適にはゼータ相の金スズ合金を含む。これにより、本方法によって製造された電子構成素子は、機械的負荷に対して特に安定している。
【0071】
図1Dに示されている電子構成素子100、特に光電子構成素子100は、基板3と、該基板3の上方に配置されたニッケルを含むかニッケルからなる第1の層4aとを含む。第1の層の上方には、化合物積層体5が配置されている。この化合物積層体5は、第1の金属間層5a、該第1の金属間層5aの上方に配置された第2の金属間層5b、および該第2の金属間層5bの上方に配置された第3の金属間層5cを含む。この化合物積層体5を介して半導体チップ1は基板3の上に固定されている。
【0072】
図2Aは半導体チップ1を示し、その上方にはんだ金属積層体2が配置されている。このはんだ金属積層体2は、酸化保護層2e、該酸化保護層2eの上方に配置された第2のバリア層2d、該第2のバリア層2dの上方に配置された第1の金属層2a、該第1の金属層2aの上方に配置されたバリア層2b、および該バリア層2bの上方に配置された第2の金属層2cからなる。酸化保護層2eは金からなり、50nm以上~100nm以下の間の層厚さを有する。第2のバリア層2dは、ニッケル、チタンまたは白金からなり、3nm以上~10nm以下の間の層厚さを有する。第1の金属層2aは、式InSn1-x、ただし0.04≦x≦0.2のインジウムスズ合金を含むかそれからなる。バリア層2bは、ニッケル、チタン、または白金からなり、第2の金属層2cは金からなる。第2の金属層2cの金の物質量は、第1の金属層2aのスズの物質量よりも多い。第1の金属層2aは、750nm以上~3μmの間の層厚さを有し、バリア層は、20nm以上~200nm以下の間の層厚さを有し、第2の金属層2cは、500nm以上~2μmの間の層厚さを有する。金からなる酸化保護層2eにより、第1の金属層2aは、空気および水分の侵入から、したがって不所望な酸化から保護されている。このことは、はんだ金属積層体が被着されている半導体チップ1を保存可能にする。酸化保護層2eは、既に室温における、特に半導体チップ1を基板3の上に被着する前の当該酸化保護層2eの金と第1の金属層2aのインジウムスズ合金との反応を阻止するために、第2のバリア層2dによって第1の金属層2aから分離されている。さらに、図2Aは、基板3、特にリードフレームとして成形された基板3を示し、その上には金属化積層体4が配置されている。この金属化積層体4は、基板3の上方に配置されたニッケルを含むかニッケルからなる第1の層4aと、該第1の層4aの上方に配置されたパラジウムを含むかパラジウムからなる第2の層4bと、該第2の層4bの上方に配置された金を含むか金からなる第3の層4cとからなる。この場合、第1の層4aは、例えば3μmの層厚さを有する。第2の層4bは、10nm以上~20nmの間の層厚さを有し、第3の層4cは、3nm以上~5nmの間の層厚さを有する。
【0073】
図2Bは、半導体チップ1がはんだ金属積層体2および金属化積層体4を介して基板3の上に配置されているアレイを示す。この場合、はんだ金属積層体2の酸化保護層2eは、金属化積層体4の第3の層4cの上方に配置されている。
【0074】
図2Bに示されているアレイを約200℃の温度で加熱することにより、第1の金属層2a内のインジウムスズ合金が融解する。液体インジウムスズ合金は、第2のバリア層2dのニッケル、白金、またはチタンと反応し、また酸化保護層2eの金と反応して金属化積層体4の第3の層4cを濡らす。液体インジウムスズ合金は、バリア層2bのニッケル、白金、またはチタンと反応し、図2Cに示すように、第2の金属間層5bを形成する。同時に、液体インジウムスズ合金は、第3の層4cの金、第2の層4bのパラジウム、および第1の層4aのニッケルと反応し、第1の金属間層5aを形成する。その場合は、図示のように、第1の層4aのニッケルは、液体インジウムスズ合金と完全に反応することができず、そのため、層厚さを低減した第1の層4aが残る。しかしながら、ニッケルが液体インジウムスズ合金と完全に反応し、それにより、もはや層4aは存在しないこともあり得る。
【0075】
第1の金属層4a内に残っている液体インジウムスズ合金は、粒界拡散によって第2の金属間層5bを通って第2の金属層2cに拡散し、そこで金と反応して第3の金属間層5cを形成する(図2D参照)。その際、式Au1-ySn、ただし0.10≦y≦0.185の金スズ合金、好適にはゼータ相の金スズ合金が形成される。
【0076】
図2Dに示されている電子構成素子100、特に光電子構成素子100は、基板3と、該基板3の上方に配置されたニッケルを含むかニッケルからなる第1の層4aとを含む。第1の層の上方には、化合物積層体5が配置されている。この化合物積層体5は、第1の金属間層5a、該第1の金属間層5aの上方に配置された第2の金属間層5b、および該第2の金属間層5bの上方に配置された第3の金属間層5cを含む。この化合物積層体5を介して半導体チップ1は基板3の上に固定されている。
【0077】
図3および図4は、動的示差熱量測定図を示す。x軸にはそれぞれ温度が摂氏温度℃で示され、y軸にはmW/mgが示されている。
【0078】
図3は、InSn1-x、ただし0<x≦1のインジウムスズ合金と、ニッケルとの反応の動的示差熱量測定図を示す。SPIn/Snは、インジウムスズ合金の融点を表し、RNiは、液体インジウムスズ合金とニッケルとの反応を表す。ここで明らかなように、ニッケルとの反応は非常にゆっくり起こり、融解温度に達した直後には発生しない。この理由から、ニッケルは特にバリア層での使用に適している。なぜならそれによって、金属化積層体を液体インジウムスズ合金で十分に濡らすことが保証できるからである。
【0079】
図4は、InSn1-x、ただし0<x≦1のインジウムスズ合金と、金との反応の動的示差熱量測定図を示す。SPIn/Snは、インジウムスズ合金の融点を表し、RAuは、液体インジウムスズ合金と金との反応を表す。ここで明らかなように、金との反応は、インジウムスズ合金が融解し、既存の障壁が壊れた直後に起こる。したがって、過度に薄いバリア層が使用されるかまたはバリア層が使用されていない場合、金属化積層体を濡らすこと、または十分に濡らすことはできない。なぜなら、インジウムスズ合金は、金属化積層体の金属による濡れおよび金属との反応が起こる前に、第2の金属層の金で事前に固化して高融点相を形成するからである。
【0080】
図5は、金スズ合金の状態図を示している。x軸にはスズの含有量が原子パーセント(at%)もしくは重量パーセント(Gew%)でプロットされ、y軸には温度(T)がプロットされている。ここで明らかなように、ゼータ(ζ)相の金スズ合金(斜線領域)は、10原子パーセントから18.5原子パーセントまでのスズ含有量から形成され、したがって、式Au1-ySnは、0.10≦y≦0.185である。
【0081】
図6は、インジウムスズ合金の状態図を示す。x軸にはスズの含有量が原子パーセント(at%)もしくは重量パーセント(Gew%)でプロットされ、y軸には温度(T)がプロットされている。4~20原子パーセントのスズ含有量を有するインジウムスズ合金(したがって、これは式InSn1-xを有し、ただし0.04≦x≦0.2である)は、約190℃~225℃の融点を有し、このことは、本発明による方法の実施に関して特に有利であることが判明している。
【0082】
本明細書に記載の発明は、実施例に基づく説明によって当該実施例に限定されるものではない。それどころか、本発明は、あらゆる新しい特徴ならびにそれらの特徴のあらゆる組合せを包含するものである。このことは、特に、特許請求の範囲における特徴のあらゆる組合せを包含するものであり、たとえ、それらの特徴もしくはそれらの組合せ自体が、明示的に特許請求の範囲や実施例に記載されていない場合であっても否定されるものではない。
【0083】
本件特許出願は、独国特許出願第102017112866.2号の優先権を主張し、その開示内容はここでの参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 半導体チップ
2 はんだ金属積層体
3 基板またはリードフレーム
4 金属化積層体
5 化合物積層体
2a 第1の金属層
2b バリア層
2c 第2の金属層
2d 第2のバリア層
2e 酸化保護層
4a 第1の層
4b 第2の層
4c 第3の層
5a 第1の金属間層
5b 第2の金属間層
5c 第3の金属間層
100 電子構成素子
T 温度
℃ 摂氏温度
at% 原子パーセント
Gew% 重量パーセント
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6