(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】2種以上のフィラーを含む高熱伝導性ポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20220113BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20220113BHJP
C08K 3/105 20180101ALI20220113BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220113BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
C08L79/08
C08G73/10
C08K3/105
C08K3/013
C08K3/04
(21)【出願番号】P 2020537735
(86)(22)【出願日】2018-09-27
(86)【国際出願番号】 KR2018011401
(87)【国際公開番号】W WO2019143000
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】10-2018-0007836
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514225065
【氏名又は名称】ピーアイ アドヴァンスド マテリアルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PI Advanced Materials CO., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オ,ジ ユン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ソン イル
(72)【発明者】
【氏名】リ,キル ナム
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ジョン ユル
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/027070(WO,A1)
【文献】特開2015-076356(JP,A)
【文献】国際公開第2016/135304(WO,A1)
【文献】特開2004-123867(JP,A)
【文献】特開2003-321554(JP,A)
【文献】特開2015-003953(JP,A)
【文献】特開2015-117260(JP,A)
【文献】特開2011-211190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/08
C08G 73/10
C08K 3/105
C08K 3/013
C08K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性フィラーおよび基材フィルムを含むポリイミドフィルムであって、
前記熱伝導性フィラーは、平均粒径が0.001~20μmである第1熱伝導性フィラーおよび平均粒径が0.1~20μmである第2熱伝導性フィラーを含み、
前記第1熱伝導性フィラーは、
多層グラフェン(Graphene)であり、
前記第2熱伝導性フィラーは、金属酸化物系フィラーであり、
前記第1熱伝導性フィラーの含量が、ポリイミドフィルムの全重量に対して0.1~5重量%であり、
前記基材フィルムは、ジアンヒドリドモノマーとジアミンモノマーとの反応によって形成されたポリアミック酸をイミド化して製造され、
前記ポリイミドフィルムの厚さ方向の熱伝導率が0.5W/m・K以上であり、平面方向の熱伝導率が2.0W/m・K以上であ
り、
前記ポリイミドフィルムは、可視光線領域での光透過率が1%以下である、ポリイミドフィルム。
【請求項2】
前記ジアンヒドリドモノマーは、ピロメリティックジアンヒドリド(PMDA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンヒドリド(BPDA)、オキシジフタリックアンヒドリド(ODPA)、およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンヒドリド(BTDA)からなる群から選択される1種以上のモノマーを含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記ジアミンモノマーは、1,4‐フェニレンジアミン(PPD)、4,4´‐オキシジアニリン(ODA)、3,4´‐オキシジアニリン、2,2‐ビス[4´‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、4,4´‐メチレンジアニリン(MDA)、および1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE‐R)からなる群から選択される1種以上のモノマーを含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記金属酸化物系フィラーは、アルミナ(Al
2O
3)である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記熱伝導性フィラーの含量は、ポリイミドフィルムの全重量に対して5~20重量%であり、
前記基材フィルムの含量は、ポリイミドフィルムの全重量に対して80~95重量%である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
前記第1熱伝導性フィラーおよび第2熱伝導性フィラーは、第1熱伝導性フィラーの含量(W
1)および第2熱伝導性フィラーの含量(W
2)の関係が2W
1≦W
2を満たす、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
前記第1熱伝導性フィラーの含量に対する第2熱伝導性フィラーの含量の比率は、重量基準で200%~1,900%である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項8】
前記第2熱伝導性フィラーの含量が、ポリイミドフィルムの全重量に対して1~19重量%である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項9】
請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法であって、
ジアンヒドリドモノマーとジアミンモノマーからポリアミック酸を重合し、
前記ポリアミック酸および熱伝導性フィラーを混合し、
前記ポリアミック酸および熱伝導性フィラーの混合物を支持体に製膜し、熱処理を施してイミド化する、ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載のポリイミドフィルムを含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種以上のフィラーを含む高熱伝導性ポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポリイミド(PI)樹脂とは、ジアンヒドリドと、ジアミンまたは芳香族ジイソシアネートを溶液重合してポリアミック酸誘導体を製造した後、高温で閉環脱水してイミド化することで製造される高耐熱樹脂を指す。
ポリイミド樹脂は、不溶、不融の超高耐熱性樹脂であり、耐熱酸化性、耐熱特性、耐放射線性、低温特性、耐薬品性などに優れた特性を有しており、自動車材料、航空素材、宇宙船素材などの耐熱先端素材および絶縁コーティング剤、絶縁膜、半導体、TFT‐LCDの電極保護膜など、広範な分野の電子材料に使用されている。
近年、高度情報化の傾向に伴い、大量の情報を蓄積し、かかる情報を高速で処理および伝達するための電子機器に使用されるポリイミド樹脂は、電気絶縁性が高い必要があることは言うまでもなく、電子機器から発生する熱を効果的に放出するために、熱伝導性の向上が求められている。
詳細には、放熱性能をより向上させるために、ポリイミドフィルムの平面方向だけでなく、厚さ方向に対しても所望の程度の熱伝導性を確保する必要がある。
ポリイミド樹脂の熱伝導性を改善するための方法として、前駆体溶液の中に熱伝導性物質を分散した後、この分散液を用いてフィルムを形成する方法が知られている。
しかし、かかる方法により製造されたポリイミドフィルムの場合、フィルムの平面方向に対しては所望の程度の熱伝導性を発揮できるが、厚さ方向に対しては所望の程度の熱伝導性を発揮できないという問題が生じ得る。
それだけでなく、一般的に、フィラーの含量が増加するほど熱伝導性が増加する傾向があるが、所望の熱伝導性を確保するためにフィラーを多すぎる量で含有させる場合には、過量のフィラーが凝集体を形成してフィラー凝集体がフィルムの表面から突出し、外観不良が生じ得る。
それだけでなく、フィルムの中でフィラーの含量が増加するに伴い、ポリイミドフィルムの機械的特性が低下したり、フィルム化工程自体が不可能になるという問題も生じ得る。
したがって、かかる問題を根本的に解決することができる技術に関するニーズが高い状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記のような従来技術の問題点と、過去から求められてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意研究と様々な実験を重ねた結果、以下に説明するとおり、ポリイミドフィルムに、平均粒径が0.001~20μmであるフィラーとして炭素系またはホウ素系フィラー、および平均粒径が0.1~20μmである金属酸化物系フィラーを含ませることで、前記ポリイミドフィルムの平面方向の熱伝導率および厚さ方向の熱伝導率を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
かかる目的を達成するための本発明は、
熱伝導性フィラーおよび基材フィルムを含むポリイミドフィルムであって、
前記熱伝導性フィラーは、平均粒径が0.001~20μmである第1熱伝導性フィラーおよび平均粒径が0.1~20μmである第2熱伝導性フィラーを含み、
前記第1熱伝導性フィラーは、炭素系フィラーまたはホウ素系フィラーであり、
前記第2熱伝導性フィラーは、金属酸化物系フィラーであり、
前記基材フィルムは、ジアンヒドリドモノマーとジアミンモノマーとの反応によって形成されたポリアミック酸をイミド化して製造され、
前記ポリイミドフィルムの厚さ方向の熱伝導率が0.5W/m・K以上であり、平面方向の熱伝導率が2.0W/m・K以上であるポリイミドフィルムを提供する。
【0006】
この際、前記ジアンヒドリドモノマーは、ピロメリティックジアンヒドリド(PMDA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンヒドリド(BPDA)、オキシジフタリックアンヒドリド(ODPA)、およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンヒドリド(BTDA)からなる群から選択される1種以上のモノマーを含むことができる。
また、前記ジアミンモノマーは、1,4‐フェニレンジアミン(PPD)、4,4´‐オキシジアニリン(ODA)、3,4´‐オキシジアニリン、2,2‐ビス[4´‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、4,4´‐メチレンジアニリン(MDA)、および1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE‐R)からなる群から選択される1種以上のモノマーを含むことができる。
また、前記炭素系フィラーは、グラフェン(Graphene)またはカーボンナノチューブ(CNT)であってもよく、前記ホウ素系フィラーは、窒化ホウ素(Boron nitride)であってもよい。
また、前記金属酸化物系フィラーは、アルミナ(Al2O3)であってもよい。
また、前記熱伝導性フィラーの含量は、ポリイミドフィルムの全重量に対して5~20重量%であり、前記基材フィルムの含量は、ポリイミドフィルムの全重量に対して80~95重量%であってもよい。
一方、前記第1熱伝導性フィラーおよび第2熱伝導性フィラーは、第1熱伝導性フィラーの含量(W1)および第2熱伝導性フィラーの含量(W2)の関係が2W1≦W2を満たすことができる。
より具体的には、前記第1熱伝導性フィラーの含量に対する第2熱伝導性フィラーの含量の比率は、重量基準で200%~1,900%であってもよい。
また、前記第1熱伝導性フィラーの含量が、ポリイミドフィルムの全重量に対して0.1~5重量%であってもよい。
また、前記第2熱伝導性フィラーの含量が、ポリイミドフィルムの全重量に対して1~19重量%であってもよい。
前記ポリイミドフィルムは、可視光線領域での光透過率が1%以下であってもよい。
【0007】
本発明は、また、前記ポリイミドフィルムの製造方法であって、
ジアンヒドリドモノマーとジアミンモノマーからポリアミック酸を重合し、
前記ポリアミック酸および熱伝導性フィラーを混合し、
支持体に製膜し、熱処理を施してイミド化するポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0008】
本発明は、また、前記ポリイミドフィルムを含む電子装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1のポリイミドフィルムの断面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図2】実施例3のポリイミドフィルムの断面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図3】実施例5のポリイミドフィルムの断面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図4】比較例1のポリイミドフィルムの断面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図5】比較例4のポリイミドフィルムの断面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明に係るポリイミドフィルムは、熱伝導性フィラーおよび基材フィルムを含むポリイミドフィルムであって、前記熱伝導性フィラーは、平均粒径が0.001~20μmである第1熱伝導性フィラーおよび平均粒径が0.1~20μmである第2熱伝導性フィラーを含み、前記第1熱伝導性フィラーは、炭素系フィラーまたはホウ素系フィラーであり、前記第2熱伝導性フィラーは、金属酸化物系フィラーであり、前記基材フィルムは、ジアンヒドリドモノマーとジアミンモノマーとの反応によって形成されたポリアミック酸をイミド化して製造され、前記ポリイミドフィルムの厚さ方向の熱伝導率が0.5W/m・K以上であり、平面方向の熱伝導率が2.0W/m・K以上であってもよい。
【0011】
ポリイミドフィルムが熱伝導性フィルムとして使用される場合、具体的な位置に応じて求められる物性が異なり得る。例えば、放熱体(例えば、放熱フィルム)が単層構造であるか多層構造であっても、最外側に熱伝導性フィルムが位置する場合には、平面方向の熱伝導率のみ向上させても、全体的な放熱性能がある程度改善する効果が得られる。一方、放熱体が多層構造を形成しており、最外側ではなく、多層構造の中間に介在される熱伝導性フィルムの場合には、平面方向の熱伝導率を向上させても、厚さ方向の熱伝導率がある程度の水準を下回る場合、全体的な放熱性能において大きな効果は得られない。
従来の熱伝導性フィルムは、前記のような放熱体内での具体的な位置と厚さ方向の熱伝導率に関する認識不足によって、平面方向の熱伝導率の向上にのみ注目していた。かかる従来の熱伝導性フィルムは、放熱体の最外側に位置する場合にのみ、放熱性能の向上を一部期待することができた。
これとは異なり、本発明に係るポリイミドフィルムは、厚さ方向および平面方向に対する熱伝導性がいずれも優れており、放熱体の最外側に位置するか、もしくは中間に介在されても、放熱性能を著しく向上させる効果を発揮することができる。具体的には、前記ポリイミドフィルムは、放熱体の中間に介在される場合、放熱性能をより向上させることができる。
【0012】
一つの具体例として、前記熱伝導性フィラーは、ポリイミドフィルムの全重量に対して、5~20重量%含まれてもよく、より詳細には、前記熱伝導性フィラーは、ポリイミドフィルムの全重量に対して、11~20重量%含まれてもよい。
前記熱伝導性フィラーが、ポリイミドフィルムの全重量に対して前記範囲未満で含まれる場合、所望の熱伝導率が達成されないため好ましくない。
逆に、前記熱伝導性フィラーが、ポリイミドフィルムの全重量に対して前記範囲を超えて含まれる場合、過量のフィラーが凝集体を形成してフィラー凝集体がフィルムの表面から突出し、外観不良が生じ得、製造されたポリイミドフィルムの機械的特性が低下したり、フィルム化工程自体が不可能になる問題も生じ得るため好ましくない。
【0013】
また、前記ポリイミドフィルムは、特定の平均粒径範囲の第1熱伝導性フィラーおよび第2熱伝導性フィラーを特定の含量範囲で含み、熱伝導率だけでなく、遮蔽性を向上させることができる。詳細には、前記ポリイミドフィルムは、可視光線領域での光透過率が1%以下であり得る。
より具体的には、前記第1熱伝導性フィラーの含量が、ポリイミドフィルムの全重量に対して0.1~5重量%であってもよく、前記第2熱伝導性フィラーの含量が、ポリイミドフィルムの全重量に対して1~19重量%であってもよい。
この際、前記第1熱伝導性フィラーは、ポリイミドフィルムを製造する過程、例えば、ポリイミドフィルムを延伸する過程で、フィラーのポリイミドフィルムの平面方向に配列され得、結果として、ポリイミドフィルムの平面方向に対して熱伝達経路を提供することで、ポリイミドフィルムの平面方向の熱伝導率を著しく向上させることができる。
一方、前記第1熱伝導性フィラーと第2熱伝導性フィラーがともに使用される場合、ポリイミドフィルムの平面方向の熱伝導率を高めることができ、且つポリイミドフィルムの厚さ方向に対しても熱伝達経路を提供することで、ポリイミドフィルムの厚さ方向の熱伝導率を向上させることができる。
【0014】
本発明では、所望の程度の平面方向の熱伝導率および厚さ方向の熱伝導率を発揮するポリイミドフィルムを得るために、第1熱伝導性フィラーおよび第2熱伝導性フィラーは、第1熱伝導性フィラーの含量(W1)および第2熱伝導性フィラーの含量(W2)の関係が2W1≦W2を満たすことができる。
また、前記第1熱伝導性フィラーの含量に対する第2熱伝導性フィラーの含量の比率は、重量基準で200%~1,900%であってもよく、より詳細には、前記第1熱伝導性フィラーの含量に対する第2熱伝導性フィラーの含量の比率は、重量基準で200%~1,000%であってもよい。
前記第1熱伝導性フィラーの含量(W1)および第2熱伝導性フィラーの含量(W2)の関係が2W1≦W2を満たしていないか、もしくは第1熱伝導性フィラーの含量および第2熱伝導性フィラーの含量が前記の範囲から逸脱する場合、所望の程度の厚さ方向の熱伝導率および平面方向の熱伝導率を達成できないため好ましくない。
【0015】
ここで、前記第1熱伝導性フィラーは、平均粒径が0.001~20μmである炭素系フィラーまたはホウ素系フィラーと定義することができる。
前記第1熱伝導性フィラーの平均粒径が前記範囲未満の場合、熱伝導率、特に、ポリイミドフィルムの平面方向の熱伝導率が、所望の程度に達成されないため好ましくない。
逆に、前記第1熱伝導性フィラーの平均粒径が前記範囲を超える場合、製造過程でポリアミック酸と混合する際に分散度が低下し、フィラーがフィルムの表面から突出して、外観不良が生じ得るため好ましくない。
前記炭素系フィラーは、例えば、多層グラフェン(Graphene)および/またはカーボンナノチューブ(CNT)であってもよいが、これに限定されるものではない。
前記ホウ素系フィラーは、例えば、窒化ホウ素(Boron nitride)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0016】
一方、前記第2熱伝導性フィラーは、平均粒径が0.1~20μmである金属酸化物系フィラーと定義することができる。
前記第2熱伝導性フィラーの平均粒径が前記範囲未満の場合、熱伝導率、特に、ポリイミドフィルムの厚さ方向の熱伝導率が、所望の程度に達成されないため好ましくない。
逆に、第2熱伝導性フィラーの平均粒径が前記範囲を超える場合、製造過程でポリアミック酸と混合する際に分散度が低下し、機械的物性の低下によってフィルムの形成が困難になり、フィルムを製造してもフィラーがフィルムの表面から突出するなど、外観不良が生じ得るため好ましくない。
前記金属酸化物系フィラーは、アルミナ(Al2O3)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0017】
一方、前記ジアンヒドリドモノマーは、ピロメリティックジアンヒドリド(PMDA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンヒドリド(BPDA)、オキシジフタリックアンヒドリド(ODPA)、およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンヒドリド(BTDA)からなる群から選択される1種以上のモノマーを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
また、前記ジアミンモノマーは、1,4‐フェニレンジアミン(PPD)、4,4´‐オキシジアニリン(ODA)、3,4´‐オキシジアニリン、2,2‐ビス[4´‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、4,4´‐メチレンジアニリン(MDA)、および1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE‐R)からなる群から選択される1種以上のモノマーを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明は、また、前記ポリイミドフィルムの製造方法であって、ジアンヒドリドモノマーとジアミンモノマーからポリアミック酸を重合し、前記ポリアミック酸および熱伝導性フィラーを混合し、支持体に製膜し熱処理を施してイミド化するポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
具体的には、前記ポリアミック酸は、有機溶媒の中でジアンヒドリドモノマーとジアミンモノマーを重合して製造することができる。
前記有機溶媒は、アミド系溶媒であってもよく、詳細には、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であってもよい。前記有機溶媒は、例えば、N,N´‐ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N´‐ジメチルアセトアミド、N‐メチル‐ピロリドン(NMP)、γブチロラクトン(GBL)、ジグライム(Diglyme)からなる群から選択される一つ以上であってもよいが、これに制限されるものではなく、必要に応じて、単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。
また、前記ジアンヒドリドモノマーとジアミンモノマーは、粉末(powder)状、塊(lump)状および溶液状に投入されてもよく、反応初期には粉末状に投入して反応を行い、重合粘度の調節のために溶液状に投入することが好ましい。
例えば、ジアンヒドリドモノマーとジアミンモノマーを粉末状に投入して反応を行ってから、ジアンヒドリドを溶液状に投入して、ポリアミック酸組成物の粘度が所定の範囲になるまで反応させることができる。
【0020】
一方、前記熱伝導性フィラーを含むポリアミック酸は、触媒をさらに投入した後、支持体に塗布することができる。
この際、酢酸無水物などの無水酸からなる脱水触媒とイソキノリン、β‐ピコリン、ピリジンなどの第三級アミン類などを触媒として使用することができ、無水酸/アミン類の混合物または無水酸/アミン/溶媒混合物の形態で使用することができる。
無水酸の投入量は、ポリアミック酸の中のo‐カルボキシリックアミド基(o‐carboxylic amide functional group)のモル比で計算することができ、1.0~5.0モルを使用することができ、第三級アミンの投入量は、ポリアミック酸の中のo‐カルボキシリックアミド基のモル比で計算することができ、具体的には、0.2~3.0モルを投入することができる。
【0021】
次に、支持体に塗布されたポリアミック酸に熱処理を施してゲル化するステップであり、ゲル化の温度条件は、100~250℃であってもよい。
前記支持体としては、ガラス板、アルミ箔、循環ステンレスベルト、ステンレスドラムなどを使用することができる。
ゲル化に必要な処理時間は、5~30分であってもよいが、これに制限されず、ゲル化温度、支持体の種類、塗布されたポリアミック酸の量、触媒の混合条件によって異なり得る。
【0022】
ゲル化したフィルムは、支持体から分離した後、熱処理を施し、乾燥およびイミド化を完了する。
熱処理温度は、100~500℃であってもよく、熱処理時間は、1分~30分であってもよい。ゲル化したフィルムは、熱処理の際に固定可能な支持台、例えば、ピン型のフレームまたはクリップ型などの支持台に固定して熱処理を施すことができる。
また、ピン型のフレームに固定した後、テンタードライヤーなどの機器を用いた熱処理の際、熱処理工程中にフィルムに破断が生じることを防止するために、同じ厚さのイエローポリイミドフィルムの製造時の熱処理の最高温度から50~150℃低い温度で熱処理を施すことができる。
最後に、イミド化が完了したフィルムに20~30℃で冷却処理を施し、フィルム化することができる。
【0023】
前記製造方法により製造されるポリイミドフィルムは、上述のとおり、前記ポリイミドフィルムの厚さ方向の熱伝導率が0.5W/m・K以上であってもよい。
また、前記ポリイミドフィルムの平面方向の熱伝導率が2.0W/m・K以上であり、可視光線領域での光透過率が1%であってもよい。
上述のとおり、本発明のポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルムの平面方向の熱伝導率に優れるとともに、ポリイミドフィルムの厚さ方向の熱伝導率にも優れ、且つ可視光領域で低い光透過度を有することから、ポリイミドフィルムを含む電子装置に有用に使用することができる。
【実施例】
【0024】
以下、具体的な実施例および比較例を用いて本発明をより詳細に説明する。下記の実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
【0025】
<実施例1>
製造例1‐1:第1ポリアミック酸の重合
ポリアミック酸の重合工程において、0.5L反応器に窒素雰囲気下で溶媒としてジメチルホルムアミドを407.5g投入した。
温度を25℃に設定した後、ジアミンモノマーとしてODAを44.27g投入し、約30分間攪拌してモノマーが溶解されたことを確認してから、ジアンヒドリドモノマーとしてPMDAを46.78g投入し、最終的に粘度が10万cP~15万cPになるように最後の投入量を調節して投入した。
投入が完了すると、前記溶媒に、第1熱伝導性フィラーとして平均粒径が15μmであるグラフェンを4.625g投入し、第2熱伝導性フィラーとして平均粒径が15μmであるアルミナ(Al2O3)を9.25g混合し、温度を維持しながら1時間攪拌してポリアミック酸を重合した。
【0026】
製造例1‐2:ポリイミドフィルムの製造
製造例1‐1で製造されたポリアミック酸40gに、触媒として、イソキノリン(IQ)0.81g、無水酢酸(AA)7.07g、およびDMF0.13gを投入した後、均一に混合し、SUSプレート(100SA、Sandvik社製)にドクターブレードを使用して50μmでキャスティングし、100℃~200℃の温度範囲で乾燥した。
次に、フィルムをSUSプレートから剥離し、ピンフレームに固定して高温テンターに移送した。
フィルムを高温テンターで200℃から600℃までに加熱してから25℃で冷却した後、ピンフレームから分離し、ポリイミドフィルムの全重量に対して、80重量%の基材フィルム、1重量%の第1熱伝導性フィラーおよび19重量%の第2熱伝導性フィラーを含むポリイミドフィルムを製造した。
製造されたポリイミドフィルムの断面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)写真を
図1に示した。
【0027】
<実施例2>
実施例1でポリイミドフィルムの全重量に対して、89重量%の基材フィルム、1重量%の第1熱伝導性フィラーおよび10重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0028】
<実施例3>
実施例1でポリイミドフィルムの全重量に対して、80重量%の基材フィルム、5重量%の第1熱伝導性フィラーおよび15重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
製造されたポリイミドフィルムの断面を撮影したSEM写真を
図2に示した。
【0029】
<実施例4>
実施例1でポリイミドフィルムの全重量に対して、85重量%の基材フィルム、5重量%の第1熱伝導性フィラーおよび10重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0030】
<実施例5>
実施例1でポリイミドフィルムの全重量に対して、80重量%の基材フィルム、3重量%の第1熱伝導性フィラーおよび17重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
製造されたポリイミドフィルムの断面を撮影したSEM写真を
図3に示した。
【0031】
<実施例6>
実施例1で平均粒径が15μmであるアルミナの代わりに、平均粒径が5μmであるアルミナを第2熱伝導性フィラーとして使用し、ポリイミドフィルムの全重量に対して、80重量%の基材フィルム、5重量%の第1熱伝導性フィラーおよび15重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0032】
<実施例7>
実施例1で平均粒径が15μmであるグラフェンの代わりに、平均粒径が10μmであるグラフェンを第1熱伝導性フィラーとして使用し、ポリイミドフィルムの全重量に対して、80重量%の基材フィルム、5重量%の第1熱伝導性フィラーおよび15重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0033】
<実施例8>
実施例1で平均粒径が15μmであるグラフェンの代わりに、平均粒径が15μmである窒化ホウ素を第1熱伝導性フィラーとして使用し、ポリイミドフィルムの全重量に対して、80重量%の基材フィルム、5重量%の第1熱伝導性フィラーおよび15重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0034】
<実施例9>
実施例1で平均粒径が15μmであるグラフェンの代わりに、平均粒径が15μmであるカーボンナノチューブを第1熱伝導性フィラーとして使用し、ポリイミドフィルムの全重量に対して、80重量%の基材フィルム、5重量%の第1熱伝導性フィラーおよび15重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0035】
<比較例1>
実施例1で熱伝導性フィラーを混合しない以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
製造されたポリイミドフィルムの断面を撮影したSEM写真を
図4に示した。
【0036】
<比較例2>
実施例1でアルミナを投入せず、ポリイミドフィルムの全重量に対して、85重量%の基材フィルム、15重量%の第1熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0037】
<比較例3>
実施例1でグラフェンを投入せず、ポリイミドフィルムの全重量に対して、85重量%の基材フィルム、15重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0038】
<比較例4>
実施例1でポリイミドフィルムの全重量に対して、85重量%の基材フィルム、7.5重量%の第1熱伝導性フィラーおよび7.5重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
製造されたポリイミドフィルムの断面を撮影したSEM写真を
図5に示した。
【0039】
<比較例5>
実施例1で平均粒径が15μmであるグラフェンの代わりに、平均粒径が10μmであるグラフェンを第1熱伝導性フィラーとして使用し、平均粒径が15μmであるアルミナの代わりに、平均粒径が30μmであるアルミナを第2熱伝導性フィラーとして使用し、ポリイミドフィルムの全重量に対して、85重量%の基材フィルム、5重量%の第1熱伝導性フィラーおよび10重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0040】
<比較例6>
実施例1で平均粒径が15μmであるグラフェンの代わりに、平均粒径が28μmであるグラフェンを第1熱伝導性フィラーとして使用し、ポリイミドフィルムの全重量に対して、85重量%の基材フィルム、5重量%の第1熱伝導性フィラーおよび10重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0041】
<比較例7>
実施例1でアルミナを投入せず、ポリイミドフィルムの全重量に対して、99重量%の基材フィルム、1重量%の第1熱伝導性フィラーのみを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0042】
<比較例8>
実施例1でグラフェンを投入せず、ポリイミドフィルムの全重量に対して、81重量%の基材フィルム、19重量%の第2熱伝導性フィラーのみを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0043】
<比較例9>
実施例1で平均粒径が15μmであるアルミナの代わりに、平均粒径が25μmであるアルミナを第2熱伝導性フィラーとして使用した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0044】
<比較例10>
実施例1で平均粒径が15μmであるアルミナの代わりに、平均粒径が0.01μmであるアルミナを第2熱伝導性フィラーとして使用した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0045】
<比較例11>
実施例1で平均粒径が15μmであるグラフェンの代わりに、平均粒径が25μmであるグラフェンを第1熱伝導性フィラーとして使用した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0046】
<比較例12>
実施例1でポリイミドフィルムの全重量に対して、98.9重量%の基材フィルム、1重量%の第1熱伝導性フィラーおよび0.1重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0047】
<比較例13>
実施例1でポリイミドフィルムの全重量に対して、80.999重量%の基材フィルム、0.001重量%の第1熱伝導性フィラーおよび19重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0048】
<比較例14>
実施例1で第1熱伝導性フィラーとして、グラフェンの代わりに、平均粒径が15μmである窒化シリコンを使用した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0049】
<比較例15>
実施例1で第2熱伝導性フィラーとして、アルミナの代わりに、平均粒径が15μmであるカーボンブラック(carbon black)を使用した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0050】
<参照例1>
実施例1でポリイミドフィルムの全重量に対して、70重量%の基材フィルム、15重量%の第1熱伝導性フィラーおよび15重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でフィルム製造可能可否を評価した。
【0051】
<参照例2>
実施例1でポリイミドフィルムの全重量に対して、74重量%の基材フィルム、1重量%の第1熱伝導性フィラーおよび25重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でフィルム製造可能可否を評価した。
【0052】
<参照例3>
実施例1でポリイミドフィルムの全重量に対して、71重量%の基材フィルム、10重量%の第1熱伝導性フィラーおよび第19重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でフィルム製造可能可否を評価した。
【0053】
<参照例4>
実施例1でポリイミドフィルムの全重量に対して、60重量%の基材フィルム、20重量%の第1熱伝導性フィラーおよび20重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でフィルム製造可能可否を評価した。
【0054】
<参照例5>
実施例1でポリイミドフィルムの全重量に対して、50重量%の基材フィルム、25重量%の第1熱伝導性フィラーおよび25重量%の第2熱伝導性フィラーを含むようにした以外は、実施例1と同じ方法でフィルム製造可能可否を評価した。
【0055】
実験例1:熱伝導率の評価
<実施例1>~<実施例9>および<比較例1>~<比較例15>でそれぞれ製造したポリイミドフィルムに対して、熱拡散率測定装置(モデル:LFA 447、Netsch社製)を使用してレーザフラッシュ(laser flash)法でポリイミドフィルムの厚さ方向および平面方向に対する熱拡散率を測定し、前記熱拡散率の測定値に密度(重量/体積)および比熱(DSCを使用した比熱の測定値)を乗じて熱伝導率を算出し、その結果を下記表1に示した。
【0056】
【0057】
*実施例8の場合、第1熱伝導性フィラーとして窒化ホウ素を投入した。
*実施例9の場合、第1熱伝導性フィラーとしてカーボンナノチューブを投入した。
*比較例14の場合、第1熱伝導性フィラーとして窒化シリコンを投入した。
*比較例15の場合、第2熱伝導性フィラーとしてカーボンブラック(carbon black)を投入した。
【0058】
表1を参照すると、実施例1~実施例7のポリイミドフィルムの場合、平均粒径が0.001~20μmである第1熱伝導性フィラーおよび平均粒径が0.1~20μmである第2熱伝導性フィラーを含むことで、ポリイミドフィルムの厚さ方向の熱伝導率が0.5W/m・K以上であり、平面方向の熱伝導率が2.0W/m・K以上であることを満たすことを確認することができる。
一方、第1熱伝導性フィラーおよび第2熱伝導性フィラーを含んでいないか、第1熱伝導性フィラーおよび第2熱伝導性フィラーそれぞれを単独で含む比較例1、2、3、7および8のポリイミドフィルムの場合、熱伝導率、特に、厚さ方向の熱伝導率が、実施例1~7に比べて著しく低いことを確認することができる。
また、第1熱伝導性フィラーおよび第2熱伝導性フィラーの粒径または含量が本発明の範囲から逸脱する比較例4、比較例6および比較例9~比較例13のポリイミドフィルムも、熱伝導率、特に、厚さ方向の熱伝導率が、実施例1~7に比べて著しく低いことを確認することができる。
一方、実施例8および9の場合、第1熱伝導性フィラーとして、グラフェンの他に、窒化ホウ素(Boron nitride)およびカーボンナノチューブを使用しても、所望の水準の厚さ方向の熱伝導率および平面方向の熱伝導率を達成できることを確認することができる。
一方、比較例14および15の場合、第1熱伝導性フィラーとして、炭素系フィラーまたはホウ素系フィラーではなく、窒化シリコンを使用したり、第2熱伝導性フィラーとして、金属酸化物系フィラーではなく、カーボンブラック(carbon black)を使用して、所望の水準の厚さ方向の熱伝導率および平面方向の熱伝導率を達成することができなかった。
【0059】
実験例2:光透過率の評価
<実施例1>~<実施例9>および<比較例1>~<比較例15>でそれぞれ製造したポリイミドフィルムに対して、透過率測定機器(モデル:ColorQuesetXE、製造社:HunterLab)を用いて、可視光領域でASTM D1003方法で光透過率を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0060】
【0061】
*実施例8の場合、第1熱伝導性フィラーとして窒化ホウ素を投入した。
*実施例9の場合、第1熱伝導性フィラーとしてカーボンナノチューブを投入した。
*比較例14の場合、第1熱伝導性フィラーとして窒化シリコンを投入した。
*比較例15の場合、第2熱伝導性フィラーとしてカーボンブラック(Carbon Black)を投入した。
【0062】
表2を参照すると、実施例1~実施例9のポリイミドフィルムの場合、ポリイミドフィルムの光透過率が1%以下であることを確認することができ、比較例1、3、7~10および12~14の場合、熱伝導性フィラーを含んでいないか、第1熱伝導性フィラーを含量未満で含むことで、光透過率が1%を超え、遮蔽性が低下したことを確認することができる。
【0063】
実験例3:フィルム化の評価
<参照例1>~<参照例5>と同様、実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムを製造できるか否かを評価し、その結果を下記表3に示した。
【0064】
【0065】
表3を参照すると、参照例1~参照例5の場合、フィルムの中に過量の熱伝導性フィラーが含まれ、フィルムを製造するために硬化する過程で、フィルムの物性が低下し、フィルムが破壊される現象が発生し、結果として、ポリイミドフィルムに作製できないことを確認することができる。
以上、本発明の実施例を参照して説明したが、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、上記の内容に基づいて、本発明の範疇内で様々な応用および変形を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上で説明したとおり、本発明に係るポリイミドフィルムは、熱伝導性フィラーおよび基材フィルムを含むものであって、前記熱伝導性フィラーとして、平均粒径が0.001~20μmである炭素系またはホウ素系フィラーおよび平均粒径が0.1~20μmである金属酸化物系フィラーを含むことで、平面方向の熱伝導率および厚さ方向の熱伝導率を向上したポリイミドフィルムを提供する。