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特許7003279エソメプラゾール及び炭酸水素ナトリウムを含む安定な薬剤学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】エソメプラゾール及び炭酸水素ナトリウムを含む安定な薬剤学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4439 20060101AFI20220113BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220113BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20220113BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61K47/02
A61K9/28
A61P1/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020541432
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 KR2019000309
(87)【国際公開番号】W WO2019146937
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2018-0010980
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518208484
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ジョン ソ
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン スー
(72)【発明者】
【氏名】パク シン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リム ジョン レ
【審査官】古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-500365(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0271853(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102078616(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103860584(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103599082(CN,A)
【文献】特表2016-509061(JP,A)
【文献】特表2008-504372(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/29654(US,A1)
【文献】特表2011-530569(JP,A)
【文献】特表2009-534441(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122212(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エソメプラゾールマグネシウム塩及び炭酸水素ナトリウムを含み、
エソメプラゾールマグネシウム塩をエソメプラゾール重量基準で20mg又は40mgを含み、炭酸水素ナトリウム800mgを含むことを特徴とし、エソメプラゾールマグネシウム塩がペレット又は顆粒の形態にあり、前記ペレット又は顆粒は炭酸水素ナトリウムを含まず、コーティング剤でコートされる、錠剤。
【請求項2】
エソメプラゾールマグネシウム塩がエソメプラゾールマグネシウム三水和物である、請求項1に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オメプラゾール、その鏡像異性体又は薬剤学的に許容可能な塩、及び炭酸水素ナトリウムを含む安定な薬剤学的組成物に関する。具体的には、低含量の炭酸水素ナトリウムを含み、優れた溶出率及び生体利用率を有し、高含量の炭酸水素ナトリウムによって発生する副作用を減少させた改善された安定性を有する薬剤学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オメプラゾール(omeprazole)の化学名は、5-メトキシ-2-[(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジニル)メチル]スルフィニル-1H-ベンゾイミダゾールである。オメプラゾールは、2つの異性体、すなわち、R-異性体及びS-異性体として存在する。S-異性体がR-異性体に比べて、治療効果及び副作用の面で遥かに優れていることが知られている。前記S-異性体は、(S)-5-メトキシ-2-[(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジニル)-メチル]スルフィニル-1H-ベンゾイミダゾールであり、エソメプラゾール(esomeprazole)と一般的に呼ばれている。
【0003】
エソメプラゾールは、消化不良、消化性潰瘍疾患(peptic ulcer disease)、胃食道逆流疾患(gastroesophageal reflux disease)、及びゾリンジャー・エリソン症候群(Zollinger-Ellison syndrome)などの治療に使用される代表的なプロトンポンプ阻害剤(proton pump inhibitor;PPI)である。
【0004】
オメプラゾール、特にエソメプラゾールは、酸性及び中性媒質において分解や変形されやすいことが当業界によく知られており、より具体的には、pH値が3以下である水溶液中でエソメプラゾールの分解半減期は、10分未満であると知られている。したがって、エソメプラゾールの分解は、酸性化合物によって促進され、水分、熱、有機溶媒、及び光によっても影響を受ける。
【0005】
したがって、安定したエソメプラゾール製剤に関する多くの要求があり、安定性の問題点を解決するため、大韓民国特許第384960号には、エソメプラゾールマグネシウム塩を含むペレットを製造した後、これを腸溶コーティングした後、賦形剤を添加して錠剤として製剤化する方法が開示されている。前記方法によって製造された製剤は、ネキシウム(登録商標)(Nexium(登録商標))という商品名で現在市販されている。
【0006】
しかし、ネキシウムのような腸溶コーティング錠の場合、胃で即刻の吸収が発生せず、腸で溶解及び吸収されるように設計されたため、胃酸関連疾患のように、投与後即刻の治療効果が要求される疾患の治療に適していない。
【0007】
大韓民国特許第1104349号には、酸化マグネシウムとポビドンで固体分散体剤形を製造することにより、オメプラゾールの安定性及び物性の問題点を改善した腸溶コーティング錠及びカプセル剤が開示されている。
【0008】
大韓民国特許公告第10-1996-0003605号には、オメプラゾールを有効成分とし、安定化成分としてベータ-シクロデキストリン及び水酸化ナトリウムを添加して固体分散体剤形を製造する方法が開示されている。しかしながら、前記特許に記載された発明は、人体に有害な水酸化ナトリウムを使用するという問題点がある。固体分散体を製造する過程は、有効成分であるオメプラゾールを溶媒に溶解させる過程を含むため、この過程の間、オメプラゾールを安定化させるため、水酸化ナトリウムのような特殊な安定化剤を必要とする。
【0009】
このような問題点を解決するため、大韓民国特許第679767号は、オメプラゾールの炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)のような緩衝剤を使用する方法を開示する。
【0010】
しかし、多量の炭酸水素ナトリウムを使用する場合、オメプラゾールの効能を減少させ、副作用を誘発するという短所を持つ。具体的に、多量の炭酸水素ナトリウムを投与する場合、胃の膨張によって重篤な患者に苦痛を加重させることができ、炭酸水素ナトリウムの吸収は、げっぷを誘発し得るが、げっぷが胃酸の上向き移動を誘発して胃食道逆流疾患を悪化させる可能性がある。また、高血圧や心不全のような症状を持つ患者は、高血圧の症状を誘発し得るナトリウム(sodium)の摂取を抑制しなければならないため、このような症状を持つ患者に多量の炭酸水素ナトリウムを投与することは、適していない。また、様々な合併症を持つ患者に多量の炭酸水素ナトリウムの投与は、代謝性アルカリ血症をもたらすおそれがある。また、前記胃と尿のpHを変化させる緩衝剤は、薬物の吸収、分布、及び代謝過程に影響を与えることができるので、多量の炭酸水素ナトリウムをオメプラゾールとともに使用するにあたって、様々な注意が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、低pHで不安定なオメプラゾールの安定化のため、炭酸水素ナトリウムを含む製剤を開発した。胃におけるpH値を上昇させるため、多量の炭酸水素ナトリウムを使用しなければならないという問題点を解決するため、低含量の炭酸水素ナトリウムを使用するとともに、溶出率及び生体利用率に優れた薬剤学的組成物を開発して本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、オメプラゾール、その鏡像異性体、又はその薬剤学的に許容可能な塩、及び炭酸水素ナトリウムを含む改善された安定性を有する薬剤学的組成物に関する。
【0013】
オメプラゾールの鏡像異性体は、S-異性体又はR-異性体であってもよいが、S-異性体であるエソメプラゾールが好ましい。
【0014】
本発明の「薬剤学的に許容可能な塩」は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウムなどの金属塩又はアンモニウム塩などであってもよいが、、これに制限されるものではない。これらの中で、マグネシウム塩が好ましい。
【0015】
前記オメプラゾール、その鏡像異性体又はその薬剤学的に許容可能な塩は、その溶媒化物であってもよく、溶媒化物は、一水和物、二水和物、三水和物などの水和物を含み、無定形または結晶形であってもよい。
【0016】
本発明の薬剤学的組成物は、オメプラゾール、その鏡像異性体又はその薬剤学的に許容可能な塩のオメプラゾール1重量に対して炭酸水素ナトリウム15~50重量を含んでもよく、好ましくは、20~40重量を含んでもよい。
【0017】
本発明は、オメプラゾール、その鏡像異性体又は薬剤学的に許容可能な塩、及び炭酸水素ナトリウムを含み、前記オメプラゾール、その鏡像異性体又は薬剤学的に許容可能な塩は、オメプラゾールの重量基準で20mg又は40mgを含み、炭酸水素ナトリウム600~1000mgを含む薬剤学的組成物に関する。
【0018】
炭酸水素ナトリウムの含量が600mg以上であるとき、胃液のpHを中性の環境にしてオメプラゾールの分解などを抑制することができ、1,000mg以上であるとき、胃液のpHの変化がほとんどない。
【0019】
好ましくは、前記炭酸水素ナトリウムは、700~900mgであってもよく、より好ましくは、800mgであってもよい。
【0020】
本発明は、エソメプラゾールマグネシウム三水和物及び炭酸水素ナトリウムを含み、前記エソメプラゾールマグネシウム三水和物は、エソメプラゾール重量基準で20mg又は40mgを含み、炭酸水素ナトリウム800mgを含む薬剤学的組成物に関する。
【0021】
本発明の組成物は、ペレット、カプセル剤、錠剤(単層錠、二層錠、内核錠などを含む)、顆粒剤などとして剤形化されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0022】
前記本発明による製剤は、当該技術分野に公知された任意の経口用固形製剤、具体的には、顆粒、ペレット、カプセル、または錠剤の製造方法によって製造されてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、オメプラゾール、その鏡像異性体又はその薬剤学的に許容可能な塩、及び炭酸水素ナトリウムを含む安定性が改善された薬剤学的組成物に関する。本発明の薬剤学的組成物は、改善された安定性を有し、少量の炭酸水素ナトリウムを含むことにより、優れた溶出率及び生体利用率を有し、副作用が減少する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】pHによるエソメプラゾール及びオメプラゾールの含量の分析結果を示す。
図2】炭酸水素ナトリウムの容量による人工胃液のpHを測定した結果を示す。
図3】実施例1及び比較例1の製剤に対する溶出試験の結果を示す。
図4】試験薬と対照薬に対するエソメプラゾールの血中濃度の変化を測定した結果を示す。
図5】試験薬と対照薬をそれぞれ単回投与及び反復投与した後、胃におけるpHの変化を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明に対する理解を助けるための例示の目的で提供されたものであり、本発明の範囲が下記実施例によって制限されるものではない。
【0026】
[実施例1]
炭酸水素ナトリウムを含むエソメプラゾール錠剤の製造
エソメプラゾールと炭酸水素ナトリウムを含む錠剤を下記方法で製造した。
【0027】
1.1次コーティング
精製水とヒドロキシプロピルセルロースを入れて溶解させた後、アルギニン、シメチコン、精製水、エソメプラゾールマグネシウム三水和物(22.3mg;エソメプラゾール含量基準20.00mg)、酸化マグネシウム、及びタルクを入れて分散させてコーティング液を製造した。流動層顆粒コーティング機に球形白糖を入れて、前記コーティング液を噴霧して1次ペレットを製造した。
【0028】
2.2次コーティング
精製水にポリビニルアルコール、タルク、酸化チタン、グリセロールモノカプリロカプレート、及びラウリル硫酸ナトリウムを入れて分散させてコーティング液を製造した。流動層顆粒コーティング機に前記1次コーティング液を入れて、コーティング液を噴霧して2次ペレットを製造した。
【0029】
3.混合及び打錠
混合機に前記2次ペレット、炭酸水素ナトリウム(800mg)、コポビドン、及びクロスポビドンを入れて混合した後、フマル酸ステアリルナトリウムを入れて滑沢して顆粒を製造した。製造した顆粒を打錠した。
【0030】
4.3次コーティング
精製水にポリビニルアルコール、タルク、酸化チタン、グリセロールモノカプリロカプレート、ラウリル硫酸ナトリウム、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及び黄色酸化鉄を入れてコーティング液を製造した。コーティング機に前記打錠物を入れてコーティング液を噴霧、コーティング及び乾燥して最終のコーティング錠剤を得た。
【0031】
[比較例1]
炭酸水素ナトリウムが含まれていないエソメプラゾール錠剤の製造
炭酸水素ナトリウムが含まれていないをエソメプラゾール錠剤を下記方法で製造した。
【0032】
1.1次コーティング
精製水とヒドロキシプロピルセルロースを入れて溶解させた後、アルギニン、シメチコン、精製水、エソメプラゾールマグネシウム三水和物、酸化マグネシウム、及びタルクを入れて分散させてコーティング液を製造した。流動層顆粒コーティング機に球形白糖を入れ、前記コーティング液を噴霧して1次ペレットを製造した。
【0033】
2.2次コーティング
精製水にポリビニルアルコール、タルク、酸化チタン、グリセロールモノカプリロカプレート、及びラウリル硫酸ナトリウムを入れて分散させてコーティング液を製造した。流動層顆粒コーティング機に前記1次コーティング液を入れて、コーティング液を噴霧して2次ペレットを製造した。
【0034】
3.混合及び打錠
混合機に前記2次ペレット、乳糖、微結晶セルロース、コポビドン、及びクロスポビドンを入れて混合した後、フマル酸ステアリルナトリウムを入れて滑沢して顆粒を製造した。前記顆粒を打錠した。
【0035】
4.3次コーティング
精製水にポリビニルアルコール、タルク、酸化チタン、グリセロールモノカプリロカプレート、ラウリル硫酸ナトリウム、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及び黄色酸化鉄を入れてコーティング液を製造した。コーティング機に前記打錠物を入れてコーティング液を噴霧、コーティング、及び乾燥して最終のコーティング錠剤を得た。
【0036】
[試験例1]
pHによるエソメプラゾール及びオメプラゾールの安定性試験
緩衝溶液100mLに20mg/mLの濃度のエソメプラゾール及びオメプラゾール溶液2mLをそれぞれ添加した後、pHによる含量を分析し、分析方法は、次の通りである。
【0037】
<分析方法>
a)検出器:紫外可視部吸光光度計(測定波長:280nm)
b)カラム:Inertsil C8-3(4.6×150mm、5μm)又はこれと同等のカラム
c)注入量:20μl
d)流量:1.5mL/分
e)カラム温度:40℃付近の一定温度
g)サンプル温度:10℃付近の一定温度
h)分析時間:6分
i)移動相:pH7.6緩衝液とアセトニトリルの混合液(65:35)
【0038】
前記pH7.6緩衝液は、リン酸水素ナトリウム一水和物(NaH2PO4・H2O)0.725g及びリン酸水素二ナトリウム無水物(Na2HPO4)4.472gを1Lの容量フラスコに入れて精製水で溶かした後、標線した液250mLを1Lの容量フラスコに入れて精製水で標線した後、リン酸でpH7.6となるように調整した液である。
【0039】
前記分析結果を下記表1及び図1に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
前記表1に示すように、pH7.0以上のとき、エソメプラゾール及びオメプラゾールが最低2時間安定性を示すことを確認した。
【0042】
[試験例2]
炭酸水素ナトリウムの容量による人工胃液のpH確認試験
炭酸水素ナトリウムの含有量を設定するため、薬物放出条件及び胃液条件を次のように設定した。具体的に、1)空腹の胃液量は、一般的に20~50mLであり、2)胃液分泌量は、約2L/day(約83mL/hr)であり、3)薬物(製剤)と反応する胃液の総量は、約200mLと仮定し、4)薬物を服用時に水とともに服用し、そのときの水の量は、200mLとした。
【0043】
したがって、人工胃液200mLに精製水200mLを入れた溶液(37℃)に炭酸水素ナトリウムの容量を変更しつつpHを測定し、測定結果を下記表2及び図2に示した。
【0044】
【表2】
【0045】
前記表2に示すように、炭酸水素ナトリウムの容量が増加するにつれてpHの値が上昇し、炭酸水素ナトリウム1,000mg以上では、pHがほとんど変化しないことを確認した。
【0046】
また、人工胃液200mLを中和させて中性のpHを示すことができる炭酸水素ナトリウムの量は、最低600mg以上であることを確認した。
【0047】
[試験例3]
炭酸水素ナトリウムの有無による製剤の溶出試験
実施例1及び比較例1の製剤に対して溶出試験を行い、溶出試験及び分析条件は、次の通りである。
【0048】
<溶出試験条件>
1)溶出法:大韓民国薬典第3法(Flow Through Cell法)
2)溶出液:pH1.2→pH4.0
3)溶出温度:37±0.5℃
4)流速:2mL/min
5)試験時間:pH1.2(15分)→pH4.0(15分)
【0049】
<分析条件>
1)検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:302nm)
2)カラム:Capcell Pak C18(4.6×150mm、5μm)又はこれと同等のカラム
3)注入量:20μL
4)流量:1.0mL/分
5)カラム温度:30℃付近の一定温度
6)サンプル温度:10℃付近の一定温度
7)移動相:アセトニトリル、pH7.3緩衝液及び水の混合液(350:500:150)
【0050】
pH7.3緩衝液は、1mol/Lリン酸二水素ナトリウム溶液10.5mLと0.5mol/Lリン酸水素二ナトリウム溶液60mLをそれぞれ1Lの容量フラスコに入れて精製水で標線した液である。
【0051】
前記溶出試験の結果を表3及び図3に示した。
【0052】
【表3】
【0053】
前記表3に示したように、炭酸水素ナトリウムが含まれていない比較例1の溶出率は、非常に低いので、殆ど溶出されていないことを確認しうる。一方、炭酸水素ナトリウムを含む実施例1の溶出率は、比較例1の溶出率に比べて数百ないし数千倍以上優れた溶出率を示し、投与5分後、最も高い溶出率を示し、速やかに溶出されることを確認した。
【0054】
[試験例4]
エソメプラゾールの血中濃度
試験薬(実施例1の製造方法によって製造された複合錠剤)及び対照薬(市販中のネキシウム錠20mg)を空腹時に1日1回7日間反復投与した後、時間による血中エソメプラゾールの血中濃度値の変化及びAUC値を下記表4及び図4に示した。
【0055】
【表4】
【0056】
前記表4に示すように、試験薬は、対照薬よりも優れたAUC値を示した。
【0057】
また、図4に示すように、試験薬は、腸溶性製剤である対照薬に比べて投与後にすぐに溶出及び吸収されて高い血中濃度を示すことを確認した。疾患の特性上、投与後にすぐに治療効果を示すことが重要であるため、試験薬が対照薬よりも遥かに優れた効果を示すことが分かる。
【0058】
試験薬は、対照薬に比べて2時間までさらに高い血中濃度を示し、2時間以降からは類似した血中濃度を示し、優れた生体利用率を有することが分かる。
【0059】
[試験例5]
胃におけるpHの変化
試験薬(実施例1の製造方法によって製造された複合錠剤)及び対照薬(市販中のネキシウム錠20mg)に対し、単回投与及び7日反復投与後、胃におけるpHの変化を測定した。投与後24時間の間観察された胃のpHのうちpH≦4を維持する時間を測定し、その結果を表5及び図5に示した。
【0060】
【表5】
【0061】
対照薬及び試験薬を投与した場合、基準線に比べて単回投与時、胃のpHが4以下を維持する時間が約80%からそれぞれ44.49%及び43.20%に減少した。反復投与時に対照薬と試験薬は、それぞれ29.84%、30.07%となった。したがって、胃のpHが4以下を維持する時間が基準線、単回、反復投与時、すべて類似したことを確認した。
【0062】
結局、本発明の製剤は、腸溶性製剤に比べて、初期薬物の放出、吸収、及び血中濃度が高いので、優れた生体利用率及び胃酸関連疾患の治療効果を示す。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図1g
図2
図3
図4
図5