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特許7003291補正方法および像データを補正するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】補正方法および像データを補正するための装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 5/00 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
G06T5/00 725
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020555360
(86)(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2019058348
(87)【国際公開番号】W WO2019197230
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】102018205399.5
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヴァインリヒ
【審査官】新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】Quanzeng Wang et al.,Development of the local magnification method for quantitative evaluation of endoscope geometric distortion,Journal of Biomedical Optics,SPIE,2016年05月01日,Vol. 21, No. 5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 3/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)像データを読み込むステップであって、
前記像データは、光学系(2)を介して記録された較正パターン(1)の較正像(1’)を表し、
前記較正パターン(1)は複数の構造(10)を含み、前記較正像(1’)は相応に結像された構造(10’)を含む、
ステップと、
B)前記較正像(1’)を貫く1本の直線(4)を、
前記直線(4)が、1つの基準点(5)を通って延在し、前記基準点(5)は前記直線(4)を、第1の半直線(41)と第2の半直線(42)とに分割し、かつ、
前記第1の半直線(41)および前記第2の半直線(42)はそれぞれ、結像された前記構造(10’)と1つまたは複数の交点(40)で交差する
ようにシミュレートするステップと、
C)複数の測定値から成る第1および第2のシーケンスを求めるステップであって、前記測定値は、前記較正像(1’)から結果として得られる、前記第1の半直線(41)上および前記第2の半直線(42)上の前記交点(40)から前記基準点(5)までの距離を表す、ステップと、
D)複数の目標値から成る第3および第4のシーケンスを予め規定する、または求めるステップであって、前記目標値は、前記第1の半直線(41)上および前記第2の半直線(42)上の前記交点(40)から前記基準点(5)までの目標距離を表す、ステップと、
E)マッピングルールを求めるステップであって、前記マッピングルールは、前記第3および第4のシーケンスの前記目標値を少なくとも近似的に、前記第1および第2のシーケンスの前記測定値にマッピングし、またはこの逆のマッピングを行う、ステップと、
F)光学系を介して記録された像の像データを、前記ステップE)において求められた前記マッピングルールを用いて補正するステップと、
を含む、補正方法。
【請求項2】
前記構造(10)は平行に延在する線(10)である、請求項1記載の補正方法。
【請求項3】
前記直線(4)が、結像された前記線(10’)のうち少なくとも1つの線と少なくとも80°の角度で交差するように、前記直線(4)をシミュレートする、請求項2記載の補正方法。
【請求項4】
前記構造(10)は互いに等間隔である、請求項1から3までのいずれか1項記載の補正方法。
【請求項5】
前記ステップD)において、前記基準点(5)まで前記目標値と一致する距離を有する前記直線(4)上の仮想の交点が、互いに等間隔となるように、前記第3および第4のシーケンスを予め規定する、または求める、請求項1から4までのいずれか1項記載の補正方法。
【請求項6】
基準点(5)として、前記較正像(1’)と前記光学系(2)の光軸との交点、または前記較正像(1’)の像中心を選択する、請求項1から5までのいずれか1項記載の補正方法。
【請求項7】
前記ステップD)において、前記基準点(5)まで前記目標値と一致する距離を有する前記直線(4)上の隣り合う仮想の交点同士の距離が、前記直線(4)に沿って単調かつ線形に増加または減少するように、前記第3および第4のシーケンスを予め規定する、または求める、請求項1から6までのいずれか1項記載の補正方法。
【請求項8】
D1)前記基準点(5)から予め規定された最大距離(M)以内に位置する前記第1の半直線(41)上の第1の個数n1の交点(40)を求めるステップと、
D2)前記基準点(5)から予め規定された最大距離(M)以内に位置する前記第2の半直線(42)上の第2の個数n2の交点(40)を求めるステップと、
をさらに含み、
前記第1の半直線(41)には、前記基準点まで最大で目標最大距離の距離を有する正確にn1個の仮想の交点がマッチし、かつ前記第2の半直線(42)には、前記基準点(5)まで最大で前記目標最大距離の距離を有する正確にn2個の仮想の交点がマッチするように、前記線形の増加または減少を選択する、
請求項6および7記載の補正方法。
【請求項9】
前記ステップD)において、
両方の前記最小目標値の和が予め規定された値と一致するように、かつ
前記第3のシーケンスの前記最小目標値と前記第4のシーケンスの前記最小目標値との比が、前記第1のシーケンスの最小測定値と前記第2のシーケンスの最小測定値との比と等しくなるように、
前記第3および第4のシーケンスのそれぞれ最小の目標値を予め規定する、
請求項1から8までのいずれか1項記載の補正方法。
【請求項10】
前記ステップD)において、前記第3および第4のシーケンスのそれぞれ最小の目標値を、反復法を介して求め、境界条件として、両方の前記最小目標値の和が予め規定された値と一致する、ということを予め規定する、請求項1から8までのいずれか1項記載の補正方法。
【請求項11】
マッピングルールとして多項式を用いる、請求項1から10までのいずれか1項記載の補正方法。
【請求項12】
前記較正像(1’)を貫くそれぞれ異なる複数の直線(4)をシミュレートし、各直線(4)に対し、複数の測定値から成る第1および第2のシーケンスと、複数の目標値から成る第3および第4のシーケンスとを求め、
前記マッピングルールを求めるために各直線(4)の前記シーケンスを利用する、
請求項1から11までのいずれか1項記載の補正方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の補正方法を実施するように構成されている、像データを補正するための装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は補正方法に関する。さらに本発明は像データを補正するための装置に関する。
【0002】
解決すべき1つの課題は、光学系を介して記録された像データを補正するための補正方法を呈示することである。解決すべきさらなる課題は、かかる補正方法を実施することができる装置を呈示することである。
【0003】
これらの課題は特に、独立請求項に記載された構成により解決される。従属請求項には、有利な実施形態および発展形態が記載されている。
【0004】
少なくとも1つの実施形態によれば、補正方法は、像データを読み込むステップA)を含む。像データは、光学系を介して記録された較正パターンの較正像を表す。較正パターンは複数の構造を含み、特に線または点、たとえば格子線または格子点などを含み、較正像は相応に結像された構造を含む。
【0005】
たとえば較正像は複数のピクセルに分割されており、その際に像データは、個々のピクセルにおける色値についての強度を表す。
【0006】
光学系はたとえばレンズまたはレンズシステムであり、たとえばカメラまたは顕微鏡または対物鏡のレンズまたはレンズシステムである。
【0007】
較正パターンの構造は、較正パターンの背景よりも好ましくは光学的にはっきりと際立っている。
【0008】
たとえば較正パターンは黒白パターンである。構造はたとえば規則的なパターンとして配置されている。較正パターンの構造は、好ましくは直線および/または互いに平行に延在する線である。較正パターンが複数の点を含むならば、それらの点は好ましくは規則的な格子として配置されている。ただし較正パターンをチェス盤パターンとしてもよい。
【0009】
較正パターンとしてたとえば、光学的な像中央のような基準点まで好ましくは等しい距離で線および/または点を識別することができる、あらゆるシーンを適用することができる。
【0010】
較正パターンの線がたとえば直線的にかつ/または平行に延在しているにもかかわらず、較正像の結像された線が湾曲して延在する可能性がある。これはたとえば、光学系の収差に起因する可能性がある。本明細書で説明する補正方法は特に、光学系のこの種の収差を補正するように構成されている。
【0011】
少なくとも1つの実施形態によれば、この方法はステップB)を含み、ステップB)において、較正像を貫く1本の直線がシミュレートされ、この直線は1つの基準点を通って延在し、基準点は直線を第1の半直線と第2の半直線とに分割し、さらに第1の半直線および第2の半直線はそれぞれ、結像された構造と1つまたは複数の交点で交差する。つまり各半直線は、結像された構造のうちの1つまたは複数と交差する。
【0012】
その際に交点に手動で注記を付けることができ、または完全自動で、たとえば黒白較正パターンであれば直線検出法によって、これを行うことができる。たとえば第1の半直線および第2の半直線は、結像された線とそれぞれ少なくとも2つまたは少なくとも4つまたは少なくとも8つの交点で交差する。
【0013】
少なくとも1つの実施形態によれば、この方法はステップC)を含み、ステップC)において、複数の測定値から成る第1および第2のシーケンスが求められ、その際にこれらの測定値は、較正像から結果として得られる、第1の半直線上および第2の半直線上の交点から基準点までの距離を表す。
【0014】
したがって第1のシーケンスおよび第2のシーケンスは、それぞれ数列である。これらの数列におけるシーケンス要素が上述の測定値である。これらの測定値は好ましくはそれぞれ、1つの交点から基準点までの距離の絶対値を表す。その際に第1のシーケンスは第1の半直線上の交点だけを表し、第2のシーケンスは第2の半直線上の交点だけを表す。したがってこれらのシーケンスはたとえばそれぞれ、属する半直線上の交点の個数と同じ個数のシーケンス要素を含む。ただし択一的に、シーケンスが交点よりも少ない要素を有するように、交点のうちのいくつかだけに注記を付けることもできる。
【0015】
少なくとも1つの実施形態によれば、この方法はステップD)を含み、ステップD)において、複数の目標値から成る第3および第4のシーケンスが予め規定され、または求められ、その際にこれらの目標値は、第1の半直線上および第2の半直線上の交点から基準点までの目標距離を表す。
【0016】
つまり第3および第4のシーケンスは、この場合にはシーケンス要素として目標値を含む数列である。これらの目標値は特に、これらの目標値がそれぞれ1つの交点から基準点までの予期される距離を表すまたは記述するように、予め規定され、または求められる。その際に第3のシーケンスは第1の半直線上の交点を表し、したがって第1のシーケンスと同じ個数のシーケンス要素を含む。第4のシーケンスは第2の半直線上の交点を表し、したがって第2のシーケンスと同じ個数のシーケンス要素を含む。したがって特に、第1のシーケンスの測定値各々に第3のシーケンスの目標値が一義的に割り当てられ、第2のシーケンスの測定値各々に第4のシーケンスの目標値が一義的に割り当てられる。
【0017】
少なくとも1つの実施形態によれば、この方法はステップE)を含み、ステップE)においてマッピングルールが求められ、このマッピングルールは、第3および第4のシーケンスの目標値を少なくとも近似的に第1および第2のシーケンスの測定値にマッピングし、またはこの逆のマッピングを行う。このマッピングルールは特に関数
【数1】
である。その際に第3および第4のシーケンスの各目標値は、近似的に第1および第2のシーケンスの割り当てられた測定値にマッピングされる。ただし択一的または付加的に、第1および第2のシーケンスの測定値を少なくとも近似的に第3および第4のシーケンスの目標値にマッピングするマッピングルールも、求めることができる。
【0018】
ここで「少なくとも近似的に」とは、マッピングルールを求めるために特に、たとえば最小二乗法によるなど、最小化法が適用される、ということを意味する。特に、最小化法により求められるマッピングルールのパラメータの個数は、目標値または測定値の個数よりも少ない。
【0019】
少なくとも1つの実施形態によれば、この方法はステップF)を含み、ステップF)において、光学系を介して記録された像の像データが、ステップE)において求められたマッピングルールを用いて補正される。光学系は好ましくは、較正像を記録したのと同じ光学系であり、または類似の光学系である。像データを、較正像の像データとすることができ、または光学系を介して記録された他の像の像データとすることができる。
【0020】
したがって補正にあたり、記録された像から補正された像が生成され、この像において好ましくは、光学系の収差が部分的または完全に補正されている。
【0021】
記録された像の補正は、たとえば以下のようにして行われる。すなわち、補正された像は所定数のピクセル、たとえば記録された像と同じ個数のピクセル、を有するものとする。補正された像の各ピクセルについて、そのピクセルから基準点までの距離が求められる。次いで、ステップE)において求められたマッピングルールが、この距離に対しどのような値を割り当てるのかが求められる。これに基づき、記録された像においてマッチする以下のようなピクセルが求められる。すなわちこのピクセルは、基準点を通る直線であって補正された像のピクセルと同じ直線上に位置し、かつ基準点までの距離としてこの求められた値を有する。その後、記録された像においてこのピクセルに割り当てられた像データが、補正された像のためのピクセルに割り当てられる。したがって特に、記録された像はマッピングルールによって半径方向で歪みが除去または補正され、その際に基準点は半径方向の歪み除去に対する中心を表す。
【0022】
少なくとも1つの実施形態によれば、ステップA)~F)は記載された順序で実施される。
【0023】
少なくとも1つの実施形態において、この補正方法はステップA)、B)、C)、D)、E)、F)を含む。ステップA)において、光学系を介して記録された較正パターンの較正像を表す像データが読み込まれる。較正パターンは複数の構造を含み、較正像は相応に結像された構造を含む。ステップB)において、較正像を貫く1本の直線がシミュレートされ、この直線は1つの基準点を通って延在し、基準点は直線を第1の半直線と第2の半直線とに分割し、さらに第1の半直線および第2の半直線はそれぞれ、結像された構造と1つまたは複数の交点で交差する。ステップC)において、複数の測定値から成る第1および第2のシーケンスが求められ、これらの測定値は、較正像から結果として得られる、第1の半直線上および第2の半直線上の交点から基準点までを表す。ステップD)において、複数の目標値から成る第3および第4のシーケンスが予め規定され、または求められ、その際にこれらの目標値は、第1の半直線上および第2の半直線上の交点から基準点までの目標距離を表す。ステップE)においてマッピングルールが求められ、このマッピングルールは、第3および第4のシーケンスの目標値を少なくとも近似的に第1および第2のシーケンスの測定値にマッピングし、またはこの逆のマッピングを行う。ステップF)において、光学系を介して記録された像の像データが、ステップE)において求められたマッピングルールを用いて補正される。
【0024】
本発明の基礎を成す着想とは特に、光学系の歪みがなければ特定の値をとるであろう交点から基準点までの距離を、まさしく正確にそのような値にマッピングする、ということである。たとえば結像された湾曲した格子線を直線の格子線にマッピングするという択一的な方法の場合とは異なり、ここでは距離だけが補正され、このことによって計算の手間が著しく削減される。したがってこの方法は、特にマッピングルールの算出は、極めて高速である。最小化法のパラメータ化は必要とされず、これによってこの方法は非常に安定しており、有効な入力データにおいてロバストに機能する。このような歪み除去または補正は、基準点または像中央から所定の距離範囲に制限されるのではなく、基準点から像のコーナーに至るまで同じように精密で安定している。たとえば計算ユニットまたはプロセッサにおけるこの方法の実装は、簡単かつ明快に形成される。シミュレートされた直線と結像された構造との交点の自動化された識別は、アルゴリズムとして簡単であり、このことから完全自動の実装はロバストである。光学系に対し垂直な較正パターンの正確な配向は不要である。
【0025】
少なくとも1つの実施形態によれば、構造は平行に延在する線であり、好ましくは等間隔の線である。これらの線を直線としてもよいし、または湾曲させてもよい。
【0026】
少なくとも1つの実施形態によれば、直線が結像された線のうち少なくとも1つの線と少なくとも80°の角度で交差するように、直線がシミュレートされる。シミュレートされた直線と結像された線との間の角度が大きくなるにつれて、いっそう多くの交点が第1の半直線上および第2の半直線上に位置するようになり、かついっそう精密にマッピングルールを求めることができるようになる。
【0027】
少なくとも1つの実施形態によれば、構造は互いに等間隔である。つまり隣り合う構造は、常に互いに等しい距離を有する。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、ステップD)において、第3および第4のシーケンスが、基準点まで目標値と一致する距離を有する直線上の仮想の交点が、互いに等間隔となるよう、予め規定される、または求められる。つまり、交点が基準点までの距離として目標値を有するとしたならば、交点同士は等間隔となって、その結果、直線上の隣り合う交点は、常に互いに等しい距離を有することになる。
【0029】
仮想の交点は実際の交点ではなく、想像上の交点であるにすぎない。
【0030】
つまりこの実施形態の場合、マッピングルールは、元の等間隔の構造の結像がマッピングルールによる補正後、できる限り再び等間隔で現れるように求められる。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、基準点として、較正像と光学系の光軸との交点が選択される。択一的に、基準点として、較正像の像中心を選択することもできる。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、この方法はさらにステップD1)を含み、ステップD1)において、基準点から予め規定された最大距離以内に位置する第1の半直線上の第1の個数n1の交点が求められる。最大距離は好ましくは、較正像の像周縁部から基準点までの最大距離よりも小さく選択される。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によれば、この方法はさらにステップD2)を含み、ステップD2)において、基準点から予め規定された最大距離以内に位置する第2の半直線上の第2の個数n2の交点が求められる。
【0034】
少なくとも1つの実施形態によれば、ステップD)において第3および第4のシーケンスの目標値が、基準点まで目標値と一致する距離を有する直線上の仮想の交点同士の距離が、この直線に沿って単調かつ線形に増加または減少するように、予め規定される。換言すれば、交点が基準点までの距離として目標値を有するのであれば、交点同士の距離は直線に沿って単調かつ線形に増加するかまたは単調かつ線形に減少することになる。
【0035】
つまり第2の仮想の交点と第3の仮想の交点との間の距離はたとえば、第1の仮想の交点と第2の仮想の交点との間の距離よりも値mだけ大きい。第3の仮想の交点と第4の仮想の交点との間の距離はやはり、第2の仮想の交点と第3の仮想の交点との間の距離よりも値mだけ大きい、といった具合である。勾配mはたとえば実数である。
【0036】
少なくとも1つの実施形態によれば、線形の増加または減少はこの場合、以下のように選択される。すなわち、第1の半直線には、基準点まで最大で目標最大距離の距離を有する正確にn1個の仮想の交点がマッチし、かつ第2の半直線には、基準点まで最大で目標最大距離の距離を有する正確にn2個の仮想の交点がマッチするように、選択される。
【0037】
つまり勾配mは以下のように予め規定される。すなわち、長さが目標最大距離の2倍に一致しかつ基準点により等分される直線上の区間にわたり、正確にn1+n2個の仮想の交点がマッチし、それらの交点の間において距離が勾配mで増加または減少するように、予め規定される。
【0038】
このような手法によって特に、光学系を介した記録時の較正パターンの傾斜を考慮することができる。このような傾斜があると、光学系による歪みのない像においてたとえば、距離が一方の方向で線形に増加または減少する格子線が結像されることになる。したがってこの場合には、マッピングルールを用いた較正像の補正によって、距離が線形に増加または減少する格子線が実質的にもたらされるように、目標値が選択される。
【0039】
精度を向上させるために、整数の個数の交点を用いる代わりにここでは小数を用いて処理してもよい。この場合、基準点に最も近い交点同士の比と、基準点とは最も離れた交点から最大距離までの距離とが、たとえば線形補間などによって考慮される。同様に精度を高めるためには、最大距離をできる限り大きく選択することが考慮に値する。たとえば最大距離として、以下のような交点が選択される。すなわち、半直線において基準点から最も遠く隔たっている交点であって、この交点が基準点までいっそう短い距離を有する半直線における交点が選択される。
【0040】
少なくとも1つの実施形態によれば、ステップD)において、第3および第4のシーケンスのそれぞれ最小の目標値が、これら両方の最小目標値の和が予め規定された値と一致するように、予め規定される。第3および第4のシーケンスにおける目標値がたとえば、直線上の対応する仮想の交点同士の距離が常に等しくなるように、予め規定されれば、両方の最小目標値の和はたとえば、これがやはりその距離と一致するように予め規定される。これに対し目標値がたとえば、対応する仮想の交点の距離が直線に沿って単調かつ線形に増加または減少するように予め規定されるならば、その場合には両方の最小目標値の和が、この線形の増加または減少が維持されたままとなるように予め規定される。
【0041】
少なくとも1つの実施形態によれば、ステップD)において、第3および第4のシーケンスのそれぞれ最小の目標値が、以下のように予め規定される。すなわち、第3のシーケンスの最小目標値と第4のシーケンスの最小目標値との比が、第1のシーケンスの最小測定値と第2のシーケンスの最小測定値との比と等しくなるように、予め規定される。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によれば、ステップD)において、第3および第4のシーケンスのそれぞれ最小の目標値が反復法を介して求められ、ここで境界条件として、これら両方の最小目標値の和が予め規定された値と一致する、ということが予め規定される。たとえば予め規定される値は、上述のようにして選択される。
【0043】
つまり第3および第4のシーケンスの最小目標値の比について最初から固定値を予め規定する代わりに、この値が特に反復最小法によって求められる。最小目標値はたとえば、マッピングルールと同時にまたはそれと共に、最小化法によって求められる。
【0044】
少なくとも1つの実施形態によれば、マッピングルールとして多項式が用いられる。たとえば、最大で6次の多項式が用いられる。好ましくは4次の多項式が用いられる。特に好ましくは、多項式の一定の要素が固定値ゼロにセットされる。
【0045】
半径方向のレンズの歪みを除去するために、非多項式関数をマッピングルールとして用いることもでき、この非多項式関数はそのパラメータに関して線形である。半径方向のレンズの歪みを除去するための非多項式関数が、そのパラメータに関して非線形であるならば、線形の最小化法を非線形の最小化法によって置き換える方法を適用することができる。ただしこのことにより一般的には反復的な解法となる。
【0046】
少なくとも1つの実施形態によれば、較正像は矩形の形状を有する。
【0047】
少なくとも1つ実施形態によれば、結像された線の形状の結像された構造は、較正像上を斜めに延在している。この場合に、シミュレートされた直線が結像された線と、たとえば少なくとも80°の角度で交差するならば、シミュレートされた直線は較正像上をやはり実質的に斜めに延在し、このことによって結像された線との交点の個数が増加し、これによりこの方法の精度が上昇する。
【0048】
少なくとも1つの実施形態によれば、較正像を貫くそれぞれ異なる複数の直線がシミュレートされ、各直線に対し、複数の測定値から成る第1および第2のシーケンスと、複数の目標値から成る第3および第4のシーケンスとが求められる。複数の目標値から成る第3および第4のシーケンスを、上述の実施形態に従い複数の直線または全ての直線について求めることができる。
【0049】
少なくとも1つの実施形態によれば、マッピングルールを求めるために各直線のシーケンスが利用される。これによって、マッピングルールを求める際のベースとなる点の個数が増加し、このことにより方法の精度が高められる。
【0050】
さらに本発明は像データを補正するための装置に関する。この装置は特に、本明細書で説明する補正方法を実施するために適している。つまり、補正方法に関連して開示した全ての特徴は、装置についても開示されているということであり、またその逆も当てはまるということである。
【0051】
この装置は特に、種々の方法ステップを実施するプロセッサを有することができる。この装置をたとえばカメラ、特にディジタルカメラ、とすることができる。たとえばこの装置は、光学系つまりたとえばレンズまたはレンズシステムを含み、この光学系を介して較正像が記録される。
【0052】
さらなる態様によれば本発明は、本明細書で説明する補正方法を実施するように構成されたコンピュータプログラムによって特徴づけられている。
【0053】
さらなる態様によれば本発明は、実行可能なプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品によって特徴づけられており、このプログラムコードは、データ処理装置によって実行されると、本明細書で説明する補正方法を実行する。
【0054】
次に、図面を参照しながら実施例に基づき、本明細書で説明する補正方法ならびに本明細書で説明する装置について詳しく説明する。その際に同じ参照符号は、個々の図面において同じ部材を表す。ただしこの場合、縮尺どおりに描かれているわけではなく、むしろ個々の部材は、理解を深めるために誇張して大きく描かれている場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】補正方法の実施例における種々の局面を示す図である。
図2】補正方法の実施例における種々の局面を示す図である。
図3】補正方法の実施例における種々の局面を示す図である。
図4】補正方法の実施例における種々の局面を示す図である。
図5】補正方法の実施例における種々の局面を示す図である。
図6】補正方法の実施例における種々の局面を示す図である。
図7】補正方法の実施例における種々の局面を示す図である。
図8A】補正方法の種々の実施例のフローチャートを示す図である。
図8B】補正方法の種々の実施例のフローチャートを示す図である。
図9】装置の1つの実施例を示す図である。
【0056】
図1には、補正方法の1つの実施例における第1の局面が示されている。光学系2、ここではレンズ2、を介して、較正パターン1の較正像1’が結像されている。較正パターン1は、線10の形態の複数の構造10を含む。線10はここでは、互いに平行にかつ等間隔で延在している。
【0057】
較正像1’つまり光学系2を介した較正パターン1の結像は、歪んでいる。較正像1’の結像された線10’は、この歪みゆえに互いに平行でもなく等間隔でもない。これはたとえば、光学系2の収差に起因するものである。
【0058】
図2には、補正方法の第2の局面が示されている。較正像1’を貫いて1本の直線4がシミュレートされており、この直線4は1つの基準点5を通って延在し、結像された線10’と複数の交点40で交差している。基準点5はここでは、較正像1’の光学的な像中央または像中心である。基準点5は、直線4を第1の半直線41と第2の半直線42とに分割する。第1の半直線41上にも第2の半直線42上にも、複数の交点40が存在している。
【0059】
図3には、補正方法の第3の局面が示されている。交点に基づき、複数の測定値から成る第1のシーケンスと第2のシーケンスとが求められる。第1のシーケンスの測定値は、第1の半直線上の交点から基準点までの距離を表し、またはそのような距離である。第2のシーケンスの測定値は、第2の半直線上の交点から基準点までの距離を表し、またはそのような距離である。
【0060】
第1のシーケンスにおける図示の8つの測定値および第2のシーケンスにおける図示の7つの測定値は、単に例示的に選択されたものにすぎず、図2に示した交点40から基準点までの実際の距離とは一致していない。
【0061】
図4には、補正方法の第4の局面が示されている。ここでは、複数の目標値から成る第3および第4のシーケンスが予め規定されている。第3のシーケンスの目標値は、第1の半直線上の交点から基準点までの目標距離を表す。第4のシーケンスの目標値は、第2の半直線上の交点から基準点までの目標距離を表す。したがって第3のシーケンスは、第1のシーケンスと同じ個数のシーケンス要素を有しており、第4のシーケンスは、第2のシーケンスと同じ個数のシーケンス要素を有している。
【0062】
本実施例において、第3および第4のシーケンスの目標値は、それぞれ2つの隣り合う目標値間の差が必ず等しくなるように、予め規定されている。しかも第3および第4のシーケンスの最小目標値の和は、この差と正確に一致する。つまり基準点までの距離が目標値と一致する直線上の仮想の交点は、互いに全て等間隔である。これはまさに、光学系がいかなる収差も有していないのであれば、交点に対し予期されるであろうことである。したがって目標値は、倍率を除き交点から基準点までの予期される距離と一致する。
【0063】
図5には、補正方法の第5の局面が示されており、これによれば第3および第4のシーケンスの目標値が水平方向のx軸上に書き込まれており、第1および第2のシーケンスの測定値が垂直方向のy軸上に書き込まれている。第1の半直線に割り当てられた測定値および目標値は、ここでは白丸で表されており、第2の半直線に割り当てられた測定値および目標値は黒丸で表されている。
【0064】
これに加え、これらの測定値および目標値は、x軸およびy軸により定められた座標系に(x,y)値として記入されている。しかもこれらの(x,y)値は、関数(破線)によって近似されている。この関数は特に、4次多項式によってパラメータ化されている。関数のパラメータはたとえば、最小化法たとえば最小二乗法などを介して求められる。この関数は、第3および第4のシーケンスの目標値を少なくとも近似的に第1および第2のシーケンスの測定値にマッピングするマッピングルールを表している。
【0065】
図6には、補正方法の第6の局面が示されている。ここでは事前に求められたマッピングルールを用いて、較正像の像データが半径方向で補正されている。図示されている補正された像1’’は補正された線10’’を有しており、これは近似的に互いに平行にかつ等間隔で延在している。
【0066】
図7に示されている補正方法の局面によれば、基準点5から最大で最大距離Mの距離を有する第1の半直線41上に、個数n1=5の交点40が位置している。第2の半直線42上には、基準点5から最大で最大距離Mだけ隔たった距離を有するn2=4個の交点40が位置している。
【0067】
較正像1’の記録時に較正パターン1が傾けられていたとするならば、光学系による歪みがなければ、結像された線10’同士の距離が切片の定理に従い線形に増加または減少する距離で現れるはずである。したがってマッピングルールは、較正像1’を表す像データの補正後、補正された線同士の距離が線形に増加または減少するように、求められるのが望ましい。
【0068】
このことを達成する目的で、図7の局面に続いて、第3および第4のシーケンスの目標値がたとえば、基準点まで目標値と一致する距離を有する直線上の仮想の交点同士の距離が、この直線に沿って単調かつ線形に増加または減少するように、予め規定される。この線形の増加または減少において適正な勾配を得る目的で、境界条件としてたとえば以下のことが予め規定される。すなわち第1の半直線41には、基準点5から目標最大距離以内にある正確にn1個の上述の仮想の交点がマッチし、かつ第2の半直線42には、同じ目標最大距離以内の正確にn2個の仮想の交点がマッチする、ということが予め規定される。次いで対応する目標値および測定値が、たとえば図5においてなされたように書き込まれ、マッピングルールが求められる。
【0069】
図8Aには、補正方法の1つの実施例のフローチャートが示されている。この場合、相前後して上述のステップA)~F)が実行される。
【0070】
図8Bには、さらなる実施例のフローチャートが示されている。ステップD)の前に、上述のステップD1)およびD2)が実行される。
【0071】
図9には、補正方法を実施するように構成された装置100の1つの実施例が示されている。装置100はたとえばプロセッサを含む。ここでは光学系を介して記録された較正パターンの較正像1’を表す像データが読み込まれる。この装置は上述の補正方法を実行する。次いで、補正された像データが出力される。ここでは、較正パターンの読み込まれた像データに対し補正された像データが出力される。
【0072】
図9に示したものとは異なり、装置自体が光学系を含むこともでき、この光学系を介して較正像が記録される。この場合、装置はたとえばディジタルカメラである。
【0073】
本発明は、実施例に基づく説明によってそれらの実施例に限定されるものではない。むしろ本発明は、あらゆる新たな特徴ならびに特徴のあらゆる組み合わせを含むものであり、そのような組み合わせには特に、特許請求の範囲に記載された特徴のあらゆる組み合わせが含まれ、このことは、たとえそれらの特徴またはそれらの組み合わせ自体が特許請求の範囲または実施例に明示的には挙げられていなくても、当てはまるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9