(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】二乗平均平方根(RMS)出力を有する加速度センサ
(51)【国際特許分類】
G01P 15/125 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
G01P15/125 V
(21)【出願番号】P 2020558600
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 US2019059922
(87)【国際公開番号】W WO2020097117
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2020-10-21
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509268451
【氏名又は名称】カイオニクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サミュエルソン ブライアン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ディーケン リチャード アラン
(72)【発明者】
【氏名】山城 洋
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0303319(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/125
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の加速度に応じて変化するように構成された静電容量を有する容量性構造を含むMEMS(microelectromechanical system)デバイスと、
前記容量性構造の静電容量の変化に少なくとも部分的に基づいて前記物体の加速度を求めるように構成されたASIC(application-specific integrated circuit)と
を含む加速度センサにおいて、
前記ASICが
前記容量性構造の静電容量の変化を測定して該静電容量の変化を示すアナログ信号を生成するように構成されたアナログ回路と、
前記アナログ信号をデジタル信号に変換するように構成されたアナログ/デジタルコンバータ(ADC)と、
前記デジタル信号の表現に対して二乗平均平方根(RMS)演算を行って前記物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成されたRMSファームウェアと、
少なくとも指定された期間に亘って前記RMS値が閾値以上であることに少なくとも部分的に基づいて割込信号を出力するように構成された割込制御部と、
を含むことを特徴とする加速度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の加速度センサにおいて、
前記MEMSデバイスおよび前記ASICが共通の半導体チップ上に実装される
ことを特徴とする加速度センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の加速度センサにおいて、
前記ASICがさらに
前記デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含み、
前記RMSファームウェアは前記フィルタリングされたデジタル信号に対して前記RMS演算を行って前記物体の加速度の値を表す前記RMS値を出力するように構成され、
前記デジタルフィルタが少なくとも1つのバターワースフィルターを含む
ことを特徴とする加速度センサ。
【請求項4】
請求項1に記載の加速度センサにおいて、
前記ASICがさらに
前記デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含み、
前記RMSファームウェアは前記フィルタリングされたデジタル信号に対して前記RMS演算を行って前記物体の加速度の値を表す前記RMS値を出力するように構成され、
前記デジタルフィルタが少なくとも1つのベッセルフィルターを含む
ことを特徴とする加速度センサ。
【請求項5】
請求項1に記載の加速度センサにおいて、
前記ASICがさらに
前記デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含み、
前記RMSファームウェアは前記フィルタリングされたデジタル信号に対して前記RMS演算を行って前記物体の加速度の値を表す前記RMS値を出力するように構成され、
前記デジタルフィルタが少なくとも1つのチェビシェフフィルターを含む
ことを特徴とする加速度センサ。
【請求項6】
請求項1に記載の加速度センサにおいて、
前記ASICがさらに
前記デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含み、
前記RMSファームウェアは前記フィルタリングされたデジタル信号に対して前記RMS演算を行って前記物体の加速度の値を表す前記RMS値を出力するように構成され、
前記デジタルフィルタが、特定の周波数範囲外の周波数を阻止するように構成されたバンドパスフィルタを含む
ことを特徴とする加速度センサ。
【請求項7】
請求項1に記載の加速度センサにおいて、
前記ASICがさらに
前記デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含み、
前記RMSファームウェアは前記フィルタリングされたデジタル信号に対して前記RMS演算を行って前記物体の加速度の値を表す前記RMS値を出力するように構成され、
前記デジタルフィルタが複数の信号処理フィルタを含み、
各前記信号処理フィルタがユーザーによってプログラム可能な係数群を有し、該係数群は複数の数値群を持ち得るものであり、少なくとも第1の数値群によって各前記信号処理フィルタがバターワースフィルターとして構成され、少なくとも第2の数値群によって各前記信号処理フィルタがベッセルフィルターとして構成される
ことを特徴とする加速度センサ。
【請求項8】
請求項1に記載の加速度センサにおいて、
前記ASICがさらに
前記デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含み、
前記RMSファームウェアは前記フィルタリングされたデジタル信号に対して前記RMS演算を行って前記物体の加速度の値を表す前記RMS値を出力するように構成され、
前記デジタルフィルタが、前記デジタル信号の前記表現を前記RMSファームウェアの出力データレート以上のサンプリング周波数でサンプリングするように構成される
ことを特徴とする加速度センサ。
【請求項9】
請求項1に記載の加速度センサにおいて、
前記ASICがさらに
前記デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含み、
前記RMSファームウェアは前記フィルタリングされたデジタル信号に対して前記RMS演算を行って前記物体の加速度の値を表す前記RMS値を出力するように構成され、
前記デジタルフィルタが、前記デジタル信号の前記表現を前記RMSファームウェアの出力データレートの4倍以上のサンプリング周波数でサンプリングするように構成される
ことを特徴とする加速度センサ。
【請求項10】
請求項1に記載の加速度センサにおいて、
前記ASICがさらに
前記デジタル信号の移動平均をダウンサンプリングしてダウンサンプリングされた移動平均信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含み、
前記RMSファームウェアは前記ダウンサンプリングされた移動平均信号に対して前記RMS演算を行って前記物体の加速度の値を表す前記RMS値を出力するように構成される
ことを特徴とする加速度センサ。
【請求項11】
請求項1に記載の加速度センサにおいて、
前記RMSファームウェアは前記デジタル信号の前記表現に対して複数のRMS演算を行うことによって異なる周波数それぞれに対応する前記物体の加速度の値を表す複数の前記RMS値を出力するように構成される
ことを特徴とする加速度センサ。
【請求項12】
加速度センサの製造方法において、該製造方法が
MEMS(microelectromechanical system)デバイスとASIC(application-specific integrated circuit)とを含むように半導体パッケージを作製する工程を含み、
前記半導体パッケージを作製する工程が
物体の加速度に応じて変化するように構成された静電容量を有する容量性構造を含むように前記MEMSデバイスを設ける工程と、
前記容量性構造の静電容量の変化に少なくとも部分的に基づいて前記物体の加速度を求めるように前記ASICを構成する工程と
を含み、
前記ASICを構成する工程が
前記容量性構造の静電容量の変化を測定して該静電容量の変化を示すアナログ信号を生成するように構成されたアナログ回路を前記ASICに組み込む工程と、
前記アナログ信号をデジタル信号に変換するように構成されたアナログ/デジタルコンバータ(ADC)を前記ASICに組み込む工程と、
前記デジタル信号の表現に対して二乗平均平方根(RMS)演算を行って前記物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成されたRMSファームウェアを前記ASICに組み込む工程と
、
少なくとも指定された期間に亘って前記RMS値が閾値以上であることに少なくとも部分的に基づいて割込信号を出力するように構成された割込制御部を前記ASICに組み込む工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項13】
請求項
12に記載の製造方法において、
前記MEMSデバイスを設ける工程が、前記容量性構造を含むように前記MEMSデバイスを作製する工程を含み、
前記ASICを構成する工程が、前記ASICを作製する工程を含む
ことを特徴とする製造方法。
【請求項14】
請求項
13に記載の製造方法において、
前記ASICを作製する工程が、前記アナログ回路、前記ADC、および前記RMSファームウェアを共通の基板上に作製する工程を含む
ことを特徴とする製造方法。
【請求項15】
請求項
14に記載の製造方法において、
前記MEMSデバイスを作製する工程が、前記MEMSデバイスを前記共通の基板上に作製する工程を含む
ことを特徴とする製造方法。
【請求項16】
請求項
13に記載の製造方法において、
前記ASICを作製する工程が、特定の周波数範囲外の周波数を阻止するように構成されたバンドパスフィルタを含むデジタルフィルタを、該デジタルフィルタが前記ADCと前記RMSファームウェアとの間に結合されるように作製する工程を含む
ことを特徴とする製造方法。
【請求項17】
請求項
12に記載の製造方法において、
前記ASICを構成する工程が、前記デジタル信号の移動平均をダウンサンプリングしてダウンサンプリングされた移動平均信号を出力するようにデジタルフィルタを構成する工程を含み、
前記RMSファームウェアを前記ASICに組み込む工程が、前記ダウンサンプリングされた移動平均信号に対して前記RMS演算を行って前記物体の加速度の値を表す前記RMS値を出力するように前記RMSファームウェアを構成する工程を含む
ことを特徴とする製造方法。
【請求項18】
請求項
12に記載の製造方法において、
前記RMSファームウェアを前記ASICに組み込む工程が、前記デジタル信号の前記表現に対して複数のRMS演算を行うことによって異なる周波数それぞれに対応する前記物体の加速度の値を表す複数の前記RMS値を出力するように前記RMSファームウェアを構成する工程を含む
ことを特徴とする製造方法。
【請求項19】
加速度センサの製造方法において、該製造方法が
半導体基板を設ける工程と、
物体の加速度に応じて変化するように構成された静電容量を有する容量性構造を含むMEMS(microelectromechanical system)デバイスを半導体基板上に形成する工程と、
前記容量性構造の静電容量の変化に少なくとも部分的に基づいて前記物体の加速度を求めるための、アナログ回路と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)と、RMSファームウェアとを含むASIC(application-specific integrated circuit)を半導体基板上に形成する工程と
を含み、
前記ASICを半導体基板上に形成する工程が
前記容量性構造の静電容量の変化を測定して該静電容量の変化を示すアナログ信号を生成するように前記アナログ回路を構成する工程と、
前記アナログ信号をデジタル信号に変換するように前記ADCを構成する工程と、
前記デジタル信号の表現に対して二乗平均平方根(RMS)演算を行って前記物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように前記RMSファームウェアを構成する工程と
、
少なくとも指定された期間に亘って前記RMS値が閾値以上であることに少なくとも部分的に基づいて割込信号を出力するように割込制御部を構成する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項20】
物体の加速度に応じて変化するように構成された静電容量を有する容量性構造を含むMEMS(microelectromechanical system)デバイスと、
前記容量性構造の静電容量の変化に少なくとも部分的に基づいて前記物体の加速度を求めるように構成されたASIC(application-specific integrated circuit)と
を含む加速度センサにおいて、
前記ASICが
特定の周波数範囲内の前記静電容量の変化を表す表現値を、入力値の二乗平均平方根(RMS)として算出し、
少なくとも指定された期間に亘って前記表現値が閾値以上である
ことに少なくとも部分的に基づいて割込信号を出力する
ように構成されることを特徴とする加速度センサ。
【請求項21】
請求項
20に記載の加速度センサにおいて、
前記ASICが
前記MEMSデバイスにドライブ信号を供給するように構成されるドライブ回路と、
前記容量性構造の静電容量の変化を表し、少なくとも部分的に前記ドライブ信号に基づく入力信号を前記MEMSデバイスから受け取るように構成される入力回路と、
前記ドライブ回路の第1ノードと前記入力回路
の第2ノードとの間に結合されたキャパシタと、
前記第1および第2ノード間の前記キャパシタと直列に結合され、前記ドライブ回路と前記入力回路とを前記キャパシタを介して結合するか否かを選択的に制御可能なスイッチと
を含み、
前記ASICが、前記第2ノードの前記入力信号と前記第1ノードの前記ドライブ信号との差分を表す差分信号を算出するように構成される
ことを特徴とする加速度センサ。
【請求項22】
請求項
21に記載の加速度センサにおいて、
前記MEMSデバイスおよび前記ASICが単一のパッケージに収められ、
前記MEMSデバイスが、前記ドライブ信号を前記ASICの前記ドライブ回路から受け取るための入力端子を有し、
前記MEMSデバイスが、前記入力信号を前記ASICに供給するための出力端子を有し、
前記MEMSデバイスの前記入力端子と前記ASICの前記ドライブ回路とは前記単一のパッケージ内でワイヤにより互いに結合され、
前記MEMSデバイスの前記出力端子と前記ASICの前記入力回路とは前記単一のパッケージ内でワイヤにより互いに結合される
ことを特徴とする加速度センサ。
【請求項23】
請求項1に記載の加速度センサにおいて、
前記割込制御部は、さらに、前記RMS値が第2の閾値以下であることに少なくとも部分的に基づいて前記割込信号を出力するように構成され、
前記閾値は、前記第2の閾値よりも大きい、
ことを特徴とする加速度センサ。
【請求項24】
請求項20に記載の加速度センサにおいて、
前記ASICは、さらに、前記表現値が前記閾値よりも小さい第2の閾値以下であることに少なくとも部分的に基づいて前記割込信号を出力するように構成される、
ことを特徴とする加速度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は加速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
加速度センサは物体に作用する加速度力(すなわち物体の加速度により物体に作用する力)を測定する装置である。物体の加速度とは物体の速度の変化率である。加速度力には静的加速度力と動的加速度力がある。静的加速度力の一例は、地球の引力によって物体に作用する重力である。動的加速度力は、物体の運動(例えば振動)によって生じる力である。
【0003】
従来、加速度検知システムは加速度センサと、物体の加速度を求めるプロセッサとを含む。加速度センサは、測定した加速度力を表す生データ信号を生成する。プロセッサは、加速度センサからの生データ信号を処理して、物体の加速度を計算する。従来、プロセッサは加速度センサとは別体に設けられる。例えば、プロセッサは、加速度センサが形成されるチップとは別のチップに形成される。あるいは例えば、プロセッサは、加速度センサからの信号を受けて処理するコンピュータに設けられる。
【0004】
従来、加速度センサは、プロセッサ無しに物体の加速度を計算することはできない。また、加速度センサとは別体のプロセッサを設けることで、従来の加速度検出システムは消費電力が大きく、必要スペースも大きい。
【発明の概要】
【0005】
本開示は二乗平均平方根(RMS)出力を有する加速度センサを扱う。例えば、後述の加速度センサの第1構成例はMEMSデバイス(microelectromechanical system)とASIC(application-specific integrated circuit) を含む。MEMSデバイスは、物体の加速度に応じて変化するように構成された属性(例えば静電容量)を有する構造(容量性構造)を含む。ASICは、構造の属性の変化に少なくとも部分的に基づいて物体の加速度を求めるように構成される。ASICは、アナログ回路と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)と、RMSファームウェアとを含む。アナログ回路は構造の属性の変化を測定して属性の変化を表すアナログ信号を生成するように構成される。アナログ回路(AFE)は、MEMSデバイスからの電荷入力を電圧に変換するように構成され、ASICの内部に設けられた静電容量を用いてより低ノイズな動作が可能である。ADCはアナログ信号をデジタル信号に変換するように構成される。RMSファームウェアは、デジタル信号の表現に対してRMS演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成される。
【0006】
本開示はまたそのような加速度センサの製造方法も扱う。加速度センサの製造方法の第1構成例では、MEMSデバイスとASICとを含む半導体パッケージが作製される。半導体パッケージを作製する工程は、物体の加速度に応じて変化するように構成された静電容量を有する容量性構造を含んだMEMSデバイスを設ける工程を含む。半導体パッケージを作製する工程はさらに、容量性構造の静電容量の変化に少なくとも部分的に基づいて物体の加速度を求めるようにASICを構成する工程を含む。ASICを構成する工程は、アナログ回路と、ADCと、RMSファームウェアとをASICに組み込む工程を含む。アナログ回路は、容量性構造の静電容量の変化を測定して静電容量の変化を表すアナログ信号を生成するように構成される。ADCは、アナログ信号をデジタル信号に変換するように構成される。RMSファームウェアは、デジタル信号の表現に対してRMS演算を行うことによって物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成される。
【0007】
加速度センサの製造方法の第2構成例では、半導体基板が設けられる。物体の加速度に応じて変化するように構成された静電容量を有する容量性構造を含むようにMEMSデバイスが半導体基板上に形成される。容量性構造の静電容量の変化に少なくとも部分的に基づいて物体の加速度を求めるようにASICが半導体基板上に形成される。ASICはアナログ回路と、ADCと、RMSファームウェアとを含む。ASICを半導体基板上に形成する工程は、容量性構造の静電容量の変化を測定して静電容量の変化を表すアナログ信号を生成するようにアナログ回路を構成する工程を含む。ASICを半導体基板上に形成する際はさらに、アナログ信号をデジタル信号に変換するようにADCを構成する工程を含む。ASICを半導体基板上に形成する際にはさらに、デジタル信号の表現に対してRMS演算を行うことによって物体の加速度の値を表すRMS値を出力するようにRMSファームウェアを構成する工程を含む。
【0008】
加速度センサの第2構成例はMEMS(microelectromechanical system)デバイスとASIC(application-specific integrated circuit) とを含む。MEMSデバイスは、物体の加速度に応じて変化するように構成された静電容量を有する容量性構造を含む。ASICは、容量性構造の静電容量の変化に少なくとも部分的に基づいて物体の加速度を求めるように構成される。ASICは、特定の周波数範囲の静電容量の変化を表す表現値を計算し、少なくとも指定された期間に亘って表現値が閾値以上であったときに割込信号を発生させるように構成される。表現値は入力値の二乗平均平方根(RMS)の値である。
【0009】
以上の概要は、以下に「詳細な説明」で説明する技術的特徴の一部を単純化して紹介するためのものである。本概要は請求項の主題に特徴的なあるいは不可欠な特徴の列挙を意図するものではなく、請求項の主題の範囲の限定を意図するものでもない。また本発明は、以下に「詳細な説明」及び/または他の部分で説明する特定の実施形態に限定されるものではない。本開示における実施形態はすべて例示的なものである。さらに他の実施形態は本開示に基づけば関連分野の当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付の図面は本明細書に組み入れられて開示の一部を成し、実施形態を例示するものであって、さらには以下の説明とともに各実施形態の原理を明らかにし、開示された技術を関連分野の当業者が製造、利用することを可能にする。
【0011】
【
図1】は本開示の実施形態によるRMS出力を有する加速度センサの構成例を示すブロック図である。
【
図2】は本開示の実施形態によるRMS出力を有する加速度センサの構成例を示すブロック図である。
【
図3】は本開示の実施形態によるRMS出力を有する加速度センサの構成例を示すブロック図である。
【
図4】は本開示の実施形態によるRMS出力を有する加速度センサの構成例を示すブロック図である。
【0012】
【
図5】は本開示の実施形態による
図2に示す加速度センサのモデルの一例を示すブロック図である。
【0013】
【
図6】は本開示の実施形態による加速度センサにおける要部の出力信号の一例を示す波形図である。
【0014】
【
図7A】は本開示の実施形態による加速度センサの、動作モードが異なる構成例を示すブロック図である。
【
図7B】は本開示の実施形態による加速度センサの、動作モードが異なる構成例を示すブロック図である。
【0015】
【
図8】は本開示の実施形態による加速度センサの、異なる動作モードにおけるタイミングチャートの一例である。
【0016】
【
図9】は本開示の実施形態における異なる動作モードでの入力加速度とRMS出力との関係を示す波形図のいくつかの例である。
【
図10】は本開示の実施形態における異なる動作モードでの入力加速度とRMS出力との関係を示す波形図のいくつかの例である。
【
図11】は本開示の実施形態における異なる動作モードでの入力加速度とRMS出力との関係を示す波形図のいくつかの例である。
【
図12】は本開示の実施形態における異なる動作モードでの入力加速度とRMS出力との関係を示す波形図のいくつかの例である。
【0017】
【
図13】は本開示の実施形態による加速度センサにおける、フィルタリング/RMS機能ブロックのポートの一構成例を示す表である。
【
図14】は本開示の実施形態による加速度センサにおける、フィルタリング/RMS機能ブロックのポートの一構成例を示す表である。
【0018】
【
図15】は本開示の実施形態における、上に
図12および
図13を参照して説明したフィルタリング/RMS機能ブロックのブロック図である。
【0019】
【
図16】は本開示の実施形態における、
図14に示す各フィルタのブロック図である。
【
図17】は本開示の実施形態における、
図14に示す各フィルタのブロック図である。
【0020】
【
図18】は本開示の実施形態における信号マッピングの一例を示す表である。
【
図19】は本開示の実施形態における信号マッピングの一例を示す表である。
【0021】
【
図20】は本開示の実施形態による加速度センサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図21】は本開示の実施形態による加速度センサの製造方法を示すフローチャートである。
【0022】
【
図22】は本開示の実施形態による製造システムの一構成例を示すブロック図である。
【0023】
【
図23】は様々な実施形態の実装に使用可能なコンピューティングシステムのブロック図である。
【0024】
【
図24】は本開示の実施形態におけるデジタル出力とRMS出力との対応を示す波形図の一例である。
【0025】
【
図25】は本開示の実施形態による加速度センサの一構成例を示すブロック図である。
【0026】
【
図26】は本開示の実施形態による加速度センサのタイミングチャートの一例を示す。
【0027】
【
図27】は本開示の実施形態による加速度センサに含まれ得るデジタル信号プロセッサ(DSP)の一構成例を示すブロック図である。
【0028】
【
図28】は本開示の実施形態による加速度センサの底面斜視図である。
【0029】
【
図29】は本開示の実施形態による加速度センサの上面斜視図である。
【0030】
【
図30】は本開示の実施形態による加速度センサの一部の上面斜視図である。
【0031】
本開示に記載の技術の特徴および効果は添付の図面を参照した以下の詳細な説明から明らかになろう。図面において、対応する構成要素は類似する参照符号により参照される。図面において一般に、類似する参照符号は同一、機能的に同様、および/または構成上同様な構成要素を指す。図面において、構成要素が最初に示される図面の番号がその構成要素の参照符号の左端の桁に示される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
I. はじめに
以下の詳細な説明においては、本発明の例示的な実施形態を描いた添付の図面が参照される。ただし、本発明の範囲はそれらの実施形態によって限定されるものではなく、別紙の請求項によって定義されるものである。したがって添付の図面に描かれた実施形態を変形して得られる、図示された内容を超える実施形態も本発明の範囲に含まれ得る。
【0033】
本明細書において、「実施形態」「構成例」「実装例」などの説明は、当該の実施形態などが特定の特徴、構成、または特性を備え得ることのみを意味し、必ずしも当該の特徴、構成、または特性がすべての実施形態などに含まれることを意味するものではない。また、同一の呼称が必ずしも同一の実施形態などを指すものではない。さらに、ある実施形態に関して特定の特徴、構成、または特性が言及される場合に、当該の特徴、構成、または特性を他の実施形態において実装することは、そのような明示的な言及がなくとも、関連分野の当業者の裁量の範囲内であると理解されるべきである。
II. 実施形態
【0034】
本開示で説明する加速度センサの各構成例によれば、二乗平均平方根(RMS)出力が得られる。例えば、一構成例において加速度センサは、MEMS (microelectromechanical system) デバイスなどのモーションセンサと、ASIC(application-specific integrated circuit)とを含む。モーションセンサ(例えばMEMSデバイス)は、物体の加速度に応じて変化するように構成された属性(例えば静電容量)を有する構造(例えば容量性構造)を含む。ASICは、構造の属性の変化に少なくとも部分的に基づいて物体の加速度を求めるように構成される。ASICはアナログ回路と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)と、RMSファームウェアとを含む。アナログ回路は、構造の属性の変化を測定して属性の変化を表すアナログ信号を生成するように構成される。ADCはアナログ信号をデジタル信号に変換するように構成される。RMSファームウェアはデジタル信号の表現に対してRMS演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成される。
【0035】
本開示に記載の技術によれば、物体の加速度を求める従来の技術と比べて、様々な利点が得られる。例えば、本開示に記載の技術によれば、物体の加速度を計算するための計算量を少なくできる。本開示に記載の技術によれば、RMS演算の機能を、モーションセンサならびにASICが形成されるチップに、および/またはモーションセンサならびにASICの両方が収容される半導体パッケージに、組み込むことができる。その結果、本開示に記載の技術によれば、加速度センサの内部で生成された生データの後処理を行うために外付けのマイクロプロセッサをしばしば必要とする従来の加速度測定システムと比べて、必要とするスペースを小さくできる(スペースファクターを小さくできる)。本開示に記載の技術によれば、従来の加速度測定システムと比べて、動作に必要な電力を小さくできる。例えば、物体の加速度の測定には、1つのチップで対処できる以上の複雑な計算を行いその分電力を消費するコンピュータがしばしば用いられる。本開示に記載の技術によれば、従来の加速度測定システムと比べて、加速度センサが形成されるチップに外付けされるマイクロプロセッサと必ずしも多くの情報を(通信バスを介して)やり取りする必要がない。例えば、必要のない情報は、それ以外の(つまり、必要な)情報のチップ外部とのやり取りに先立って除外しておくことができる。本開示に記載の技術によれば、物体の加速度を表すRMS値を生成する際に考慮する周波数の数を減らすために有限インパルス応答(FIR)フィルタを用いてもよい。
【0036】
本開示に記載の技術によれば、従来の加速度測定システムと比べて高解像度で物体の加速度を算出できる。例えばデジタルフィルタにおけるFIRフィルタの出力がnビットの場合、内部計算の一部をnビットを超えるビット数で行うことができる。本開示に記載の技術によれば、従来の加速度測定システムと比べて、処理後データに持ち込まれる量子化ノイズおよび/または計算誤差を少なくできる。本開示に記載の技術によれば、従来の加速度測定システムと比べて、物体の加速度を求めるために生成されるデータを多くできる。加速度センサのデータ経路は固定のデータ幅を有し得るが、加速度センサに設けられる各フィルタのコーナー周波数に依存して、各フィルタは固定のデータ幅の全幅を必ずしも必要としない。例えば、あるフィルタのコーナー周波数がサンプルレートの1/2600程度であれば、データ経路の全幅が必要になり得る。しかし当該フィルタが比較的広い帯域を有しているのであれば、その帯域対して過剰なビットを有していることがある。過剰なビットを有していることにより、そのフィルタは計算をより高精度に行える。本開示に記載の技術によれば、従来の加速度センサに比べて、ユーザーは加速度センサ内の各フィルタをより自由に構成できる。例えば、本開示に記載の加速度センサによれば、ユーザーは単にあらかじめ定められたいくつかのフィルタ特性から選択するのではなく、加速度センサに設けられたフィルタの係数の値を選択することができる。各フィルタを、対象周波数範囲が狭くなるように構成することができる。
【0037】
本開示に記載の加速度センサの各構成例は、RMS値を直接出力することができる。例えば、加速度センサの出力を、二乗平均平方根(RMS)広帯域加速度値とすることができる。一構成例において加速度センサは、MEMSデバイスと、MEMSデバイスを直接測定するためのアナログ回路と、RMS値を求めるための構成要素(例えば、ファームウェア、ソフトウェア、および/またはハードウェア回路)とを含む。構成要素はアナログ回路と同じASIC上に、かつ/またはアナログ回路と同じ半導体パッケージ内に、集積することができる。
【0038】
従来、加速度センサは装置の加速度の表示値を過渡的な形で出力する。例えば、装置が振動している場合、振動を表す正弦波が生成され得る。正弦波の表現をプロセッサに入力して処理することができるが、これにはかなりの電力と時間がかかることがある。従来の加速度センサの中に、振動量を表す単一のRMS値を出力するものはない。本開示に記載の加速度センサの構成例においては、加速度センサに、装置の振動量を表す単一の値を出力するのに必要なすべてのフィルタおよび数学的計算機能が組み込まれている(例えば単一のチップに)。
【0039】
図1は本開示の一実施形態による、RMS出力を有する加速度センサ100の一構成例のブロック図である。
図1に示すように、加速度センサ100は、MEMS (microelectromechanical system) デバイス102などのモーションセンサと、ASIC(application-specific integrated circuit)104とを含む。MEMSデバイス102は、物体の加速度に応じて変化するように構成された属性(例えば静電容量)を有する構造(例えば容量性構造)106を含む。ASIC104は、構造106の属性の変化に少なくとも部分的に基づいて物体の加速度を求めるように構成される。ASIC104はアナログ回路108と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)110と、ファームウェア112とを含む。アナログ回路108は構造106の属性の変化を測定して属性の変化を表すアナログ信号118を生成するように構成される。ADC110はアナログ信号118をデジタル信号120に変換するように構成される。ファームウェア112はRMSファームウェア116を含む。言うまでもなく、ファームウェア112は、加速度センサ100にハードコードされたロジックを含んでよく、そうすれば加速度センサ100はより効率よく動作する。RMSファームウェア116は、デジタル信号120の表現に対して二乗平均平方根(RMS)演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値114を出力するように構成される。デジタル信号120の表現とは、例えば、何の処理も施さないデジタル信号120そのもの、該デジタル信号にフィルタリングを施したもの、デジタル信号120の平均値(例えば、デジタル信号120の移動平均、ダウンサンプリング平均、もしくはダウンサンプリング移動平均)、またはデジタル信号120の他の適切な表現である。RMS値114には、フィルタリングを施しても施さなくてもよい。
【0040】
一実施形態において、RMSファームウェア116は、デジタル信号120の表現に対して複数のRMS演算を行うことによって異なる周波数それぞれに対応する物体の加速度の値を表す複数のRMS値を出力するように構成される。RMS演算は連続RMS演算、スライドRMS演算、または再同期RMS演算として実装できるが、これは実施形態の範囲を限定するものではない。
【0041】
他の一実施形態において、RMSファームウェア116は、RMS値114が閾値に達することに少なくとも部分的に基づいて割込信号を発生させるように構成される。例えば、RMSファームウェア116はそのような割込信号を、RMS値114が第1閾値以下になることに少なくとも部分的に基づいて発生させることができる。あるいは例えば、RMSファームウェア116はそのような割込信号を、RMS値114が第2閾値以上になることに少なくとも部分的に基づいて、発生させることができる。例えば、第2閾値は第1閾値より大きくてよい。
【0042】
言うまでもなく、RMSファームウェア116に関連して上に述べたRMS演算に代えて、分散演算を行ってもよい。
【0043】
一実施形態において、アナログ回路108、ADC110、およびファームウェア112は共通の(例えば、単一の)半導体チップ上に実装される。他の一実施形態において、MEMSデバイス102およびASIC104は、破線枠105で示すように、共通の半導体チップ上、すなわち共通の基板上、に実装され、かつ/または単一のパケージ内に収納される。
【0044】
加速度センサ100は任意の適切な種類の加速度測定システム(例えば振動センサ)に組み込むことができる。例えば、加速度センサを振動センサに組み込んで、機械(例えばモーター)の状態を監視することができる。この例では、加速度センサ100が測定する機械の振動の程度から、その機械が不具合を起こしそうな(動作を停止しそうな)時期を知ることができる。加速度センサ100を含んだ振動センサは、例えば、時間領域加速度よりも周波数領域加速度の把握が重要なアプリケーションで利用できる。振動センサには内部フィルタを設けて特定の周波数範囲の感度が高くなるように構成することができる。例えば、加速度センサ100に、設定された範囲内の振動のRMS値を表示させることができる。
【0045】
言うまでもなく、加速度センサ100は
図1に示す構成要素をすべて含む必要なはい。また、加速度センサ100は
図1に示す構成要素に加えて、あるいはそれに代えて、どのような構成要素を含んでもよい。例えば、加速度センサは1以上のアナログおよび/またはデジタルフィルタを含んでもよい。1以上のフィルタを含んだ加速度センサ100であれば、フィルタリングと、一定期間に亘る所定間隔の一連のRMS値の計算とを組み合わせて、物体の加速度の広帯域値を直接出力できる。
図2にデジタルフィルタ222を含む加速度センサ200の例を示す。また、
図3にアナログフィルタ330を含む加速度センサ300の例を示す。
【0046】
図2に示すように、加速度センサはMEMSデバイス202とASIC204とを含む。MEMSデバイス202は構造206を含む。ASIC204はアナログ回路208と、ADC210と、ファームウェア212とを含む。MEMSデバイス202、構造206、アナログ回路208、およびADC210は、
図1のMEMSデバイス102、構造106、アナログ回路108、およびADC110と同様に動作する。ファームウェア212はデジタルフィルタ222とRMSファームウェア216とを含む。デジタルフィルタ222は、デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号をRMSファームウェア216による処理のために出力するように構成される。例えば、デジタルフィルタ222は、デジタル信号をRMSファームウェア216の出力データレート(ODR)以上のサンプリング周波数でサンプリングするように構成することができる。あるいは例えば、デジタルフィルタ222は、デジタル信号をRMSファームウェア216の出力データレートの整数倍以上のサンプリング周波数でサンプリングするように構成することができる。整数倍とは例えば、2倍、3倍、4倍、5倍、または6倍であり得る。RMSファームウェア216はフィルタリングされたデジタル信号に対してRMS演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値214を出力するように構成される。
【0047】
図2に示すデジタルフィルタ222は有限インパルス応答(FIR)フィルタ226と、1以上の無限インパルス応答フィルタ(IIR)228とを含むが、これは例示であって限定を意図しない。言うまでもなく、デジタルフィルタ222は必ずしもFIRフィルタ226および/またはIIRフィルタ228を含む必要はない。FIRフィルタ226はデジタル信号220の移動平均をダウンサンプリングしてダウンサンプリング移動平均(DSRA)信号224を出力するように構成される。IIRフィルタ228はデジタルフィルタ222の周波数特性を変化させる。例えば、IIRフィルタ228はDSRA信号224の波形を変化させことができる。FIRフィルタ226およびIIRフィルタ228をデジタルフィルタ222に含める場合、RMSファームウェア216はDSRA信号224に対してRMS演算を行ってRMS値214を出力する。
【0048】
一実施形態において、IIRフィルタ228は少なくとも1つのバターワース(Butterworth)フィルタ、少なくとも1つのベッセル(Bessel)フィルタ、および/または少なくとも1つのチェビシェフ(Chebyshev)フィルタを含む。IIRフィルタ228に含まれる各フィルタは任意の適切な次数のものでよい(例えば、1次、2次、または3次)。各フィルタはバンドパス(帯域通過)フィルタ、バンドリジェクト(帯域阻止)フィルタ(バンドストップフィルタとも言う)、ハイパス(高域通過)フィルタ、ローパス(低域通過)フィルタ、またはこれらの組み合わせであってよい。例えば、IIRフィルタ228は、特定の(例えば予め定められた)周波数帯域内の周波数を通過させる(例えば、特定の周波数帯域外の周波数を阻止する)帯域通過フィルタを含んでよい。あるいは例えば、IIRフィルタ228は、特定の(例えば予め定められた)周波数帯域内の周波数を阻止する(例えば、特定の周波数帯域外の周波数を通過させる)帯域阻止フィルタを含んでよい。
【0049】
他の一実施形態において、IIRフィルタ228は複数のIIRフィルタを含む。この例において、各IIRフィルタはユーザーによってプログラム可能な係数群を有し、この係数群が複数の数値群を有し得る。この例においてはまた、第1の数値群によって第1のIIRフィルタがバターワースフィルタとして機能する。この例においてはさらに、第2の数値群によって第2のIIRフィルタがベッセルフィルタとして機能する。
【0050】
一実施形態において、FIRフィルタ226は、RMSファームウェア216の出力データレート以上のサンプリング周波数でデジタル信号220の移動平均をサンプリングするように構成される。他の一実施形態において、FIRフィルタ226は、RMSファームウェア216の出力データレートの2倍以上のサンプリング周波数でデジタル信号220の移動平均をサンプリングする。さらに他の一実施形態において、FIRフィルタ226は、RMSファームウェア216の出力データレートの4倍以上のサンプリング周波数でデジタル信号220の移動平均をサンプリングする。
【0051】
言うまでもなく、デジタルフィルタ222に関して上に述べたいずれのフィルタリング機能もアナログフィルタによって行ってよい。例えば、
図3の加速度センサ300はMEMSデバイス302とASIC304とを含む。MEMSデバイス302は構造306を含む。ASIC304はアナログ回路308と、アナログフィルタ330と、ADC310と、ファームウェア312とを含む。MEMSデバイス302、構造306、アナログ回路308、およびADC310は、
図1のMEMSデバイス102、構造106、アナログ回路108、およびADC110と同様に動作する。ASIC304はさらに、アナログ回路308とADC310との間に結合されたアナログフィルタ330を含む。アナログフィルタ
330は、アナログ回路308が出力するアナログ信号にフィルタリングを施すように構成される。例えば、
図2のデジタルフィルタ222がデジタル信号220に対して行ういかなるフィルタリング処理もアナログフィルタ330によってアナログ信号318に対して行われてよい。図示のファームウェア312はデジタルフィルタ322とRMSフィルタ316とを含むが、これは例示であって限定を意図しない。言うまでもなく、ファームウェア312は必ずしもデジタルフィルタ322を含まなくてよい。デジタルフィルタ322は、
図2のデジタルフィルタに関して上に述べたいかなるフィルタリング処理も行うように構成できる。RMSファームウェア
316は、
図1のRMSファームウェア116および/または
図2のRMSファームウェア216に関して上に述べたいかなる処理も行うように構成できる。
【0052】
図4は本開示の一実施形態による、RMS出力を有する加速度センサ400の他の一構成例のブロック図である。
図4に示すように、加速度センサ400はADC410と、デジタルフィルタ422と、RMSファームウェア416とを含む。デジタルフィルタ422はFIRフィルタ426と、第1IIRフィルタ428aと、第2IIRフィルタ428bとを含む。ADC410およびFIRフィルタ426は、
図2を参照して上に説明したADC210およびFIRフィルタ226と同様に動作する。第1IIRフィルタ428aは第1係数群438aによって定義される。第2IIRフィルタ428bは第2係数群438bによって定義される。第1および第2IIRフィルタ428a、428bはそれぞれ任意の適切な種類のフィルタ(ベッセルフィルタ、チェビシェフフィルタ、またはバターワースフィルタ)であってよい。例えば、バターワースフィルタを用いれば、カットオフ周波数において比較的急峻ななカットオフ特性が得られる。ベッセルフィルタを用いれば、通過帯域においてほぼリニアな位相特性が得られる。
図4に示す加速度センサ400は二つのIIRフィルタ428a、428bを含むが、これは例示であって限定を意図しない。第1および第2IIRフィルタ428a、428bの第1ならびに第2係数群係数群438a、438bおよび入力レートデータ(IDR)を知ることで、第1および第2IIRフィルタ428a、428bのコーナー周波数が設定できる。第1および第2IIRフィルタ428a、428bのIDRはFIRフィルタ426の出力データレート(ORD)と同じである。FIRフィルタ426のODRとは、FIRフィルタ426がデータを生成するレートである。言うまでもなく、加速度センサ400は任意の適切な数(例えば0、1、2、3、4、5、6、…)のフィルタを含んでよい。第1および第2IIRフィルタ428a、428bをFIRフィルタ426に組み込んでもよいが、これは実施形態の範囲を限定するものではない。
【0053】
第1および第2IIRフィルタ428a、428bはそれぞれ任意の適切な極数を有してよい。例えば、第1および第2IIRフィルタ428a、428bはそれぞれ、1極フィルタ、2極フィルタ、その他のいずれであってもよい。一例として、第1IIRフィルタ428aが2極フィルタで、第2IIRフィルタ428bが1極フィルタであってもよいし、その逆であってもよい。極数は、加速度センサ400に所望される性能に依存する設計事項である。極数は多いほうが周波数分離が良好になるが、少ないほうがフォームファクターが下がり、サイズの最適化につながる。
【0054】
RMSファームウェア416は分散ロジック430と割込ロジック440とを含む。分散ロジック430は、第1入力“a”と第2入力“b”について分散“v”を算出するように構成される。
図4において、第1および第2入力は第2IIRフィルタ428bの入力および第2IIRフィルタ428bの出力に結合されているが、これは例示であって限定を意図しない。第1および第2入力はそれぞれ、加速度センサ400内の任意の適切なノード(例えばFIRフィルタ426の出力、第1IIRフィルタ428aの入力、第1IIRフィルタ428aの出力、第2IIRフィルタ428bの入力、第2IIRフィルタ428bの出力、など)に結合され得る。割込ロジック440は、分散“v”を「復帰(ウェイクアップ)」閾値(WUFTH)に相当する上側基準434および「待機(スリープ)」閾値(BTSTH)に相当する下側基準436のそれぞれと比較する。割込ロジック440は、分散“v”が上側基準434を超えるかまたは下側基準436に満たないかに少なくとも部分的に基づいて割り込みを発生させる。分散“v”が上側基準434を超えることは、物体の振動がWUFTHを超えることを意味する。分散“v”が下側基準436に満たないことは、物体の振動がBTSTHに満たないことを意味する。
【0055】
ADC410が出力するデジタル信号を加速度センサ400がダウンサンプリングする場合、ダウンサンプリングレートがより広い範囲を必要とするときに追加ビットが使えるように加速度センサ400を構成することができる。ODRが閾レート(例えば0.78ヘルツ(Hz))未満であれば、デジタルフィルタ422用のイネーブル/ディセーブルビットを追加ビットとして利用することができる。
【0056】
図5は本開示の一実施形態による、
図4に示す加速度センサ40
0のモデル500の一例のブロック図である。このモデル500は転送機能502と、第1加算器504と、離散FIRフィルタ526と、タップ遅延506と、第1ホールドロジック508と、ローパスフィルタ(LPF)528aと、ハイパスフィルタ(HPF)528bと、スコープ510と、RMSロジック516とを含む。転送機能502は入力信号512に処理を施す。例えば、入力信号512はチャープ信号であり、転送機能502はnum(s)/den(s)と表される。第1加算器504は転送機能502の出力と定数514とを加算する。離散FIRフィルタ526は第1加算器504の出力にフィルタリングを施してタップ遅延506に入力する。第1ホールドロジック508は第1加算器504の出力をホールドしてLPF528aに入力する。LPF528aは第1ゲインロジック522aと第2離散ロジックフィルタ524aとを含む。第1ゲインロジック522aは第1ホールドロジック508の出力を増幅し、その結果に第2離散ロジックフィルタ524aがフィルタリングを施す。HPF528bは第2ゲインロジック522bと第3離散フィルタ524bとを含む。第2ゲインロジック522bはLPF528aの出力を増幅し、その結果に第3離散ロジックフィルタ524bがフィルタリングを施す。
【0057】
RMSロジックは第2加算器530と、第1計算機能ロジック532と、絶対値ロジック534と、第1メモリ536と、第2メモリ538と、第3加算器540と、スイッチ542と、パルスジェネレータ544と、第2計算機能ロジック546と、除算器548と、第2ホールドロジック550と、平方根ロジック552とを含む。第2加算器530はLPF528aの出力とHPF528bの出力とを加算する。第1計算機能ロジック532は第2加算器530の出力の二乗を求める。絶対値ロジック534は第1計算機能ロジック532の出力の絶対値を求める。第3加算器540は絶対値ロジック534の出力と、第1メモリ536の出力と、第2メモリ538の出力とを加算する。第1メモリ536は第3加算器540の出力を記憶する。第2メモリ538はスイッチ542の出力を記憶する。パルスジェネレータ544は、スイッチ542の動作を制御するパルスを生成する。スイッチ542は各パルスの持続時間中はオンとされ、パルス間ではオフとされる。スイッチ542へは他に、第3加算器540の出力と、ゼロ値の定数554も入力される。第2計算機能ロジック546は入力値556の二乗を求める。除算器548は第3加算器540の出力を第2計算機能ロジック546の出力で除す。第2ホールドロジック550は除算器548の出力をホールドして平方根ロジック552に入力する。平方根ロジック552は第2ホールドロジック550の出力の平方根を求める。スコープ510には、第1加算器504の出力と、LPF528aの出力と、HPF528bの出力と、平方根ロジック552の出力とが入力され、これによりユーザーはモデル500を観察することができる。
【0058】
図6は本開示の実施形態による加速度センサにおける要部の出力信号602、604、606、608の一例を示す波形図である。出力信号602はMEMSデバイス内の構造(例えば
図1のMEMSデバイス102内の構造106)の属性の変化の一例を示している。例えば、出力信号
602は
図5に示す第1加算器504の出力に相当する。出力信号604は第1フィルタ(例えば
図4の第1フィルタ428aまたは
図5のLPF528a)の出力の一例を示している。出力信号606は第2フィルタ(例えば
図4の第2フィルタ428bまたは
図5のHPF528b)の出力の一例を示している。出力信号608はRMSファームウェア(例えば
図1のRMSファームウェア116または
図5のRMSロジック516)の出力の一例を示している。例えば、出力信号608は、異なる周波数に対応する一連のRMS値を表す。
【0059】
図7Aおよび
図7Bは本開示の実施形態による加速度センサの、動作モードが異なる構成例700、750を示すブロック図である。
図7Aおよび
図7Bに示すように、加速度センサ700、750はそれぞれADC710と、FIRフィルタ726と、第1IIRフィルタ728aと、第2IIRフィルタ728bと、RMSファームウェア716と、割込ロジック740と、出力レジスタ756とを含む。RMSファームウェア716は二乗ロジック732と、平均ロジック754と、平方根ロジック752とを含む。ADC710、FIRフィルタ726、第1IIRフィルタ728a、第2IIRフィルタ728b、および割込ロジック740は、
図4のADC410、FIRフィルタ426、第1IIRフィルタ428a、第2IIRフィルタ428b、および割込ロジック440と同様に動作する。二乗ロジック732は入力された各データ点を二乗して二乗されたデータ点を出力する。平均ロジック754は、二乗ロジック732から入力された所定数の二乗されたデータ点の平均を求めて平均値を出力する。平方根ロジック752は平均値の平方根を求めてRMS値を出力する。出力レジスタ756は、動作モードに応じてRMSファームウェア716の出力または第2IIRフィルタ728bの出力を記憶する。例えば、
図7Aの加速度センサ700では、出力レジスタ756は第1動作モードに応じてRMSファームウェア716の出力を記憶する。
図7Bの加速度センサ750では、出力レジスタ756は第2動作モードに応じて第2IIRフィルタ728bの出力を記憶する。
【0060】
図8は本開示の実施形態による加速度センサの、異なる動作モードにおけるタイミングチャート802、804、806である。加速度センサはADCと、デジタルフィルタと、RMSファームウェアとを含む。いずれのタイミングチャート802、804、806においても、ADCが出力するデジタル信号の周波数は25.6kHzであるが、これは例示であって限定を意図しない。
【0061】
第1のタイミングチャート802は加速度センサのフルパワーモードでの動作に対応する。フルパワーモードでは、
図8を参照して説明する諸モードのうちで最大の電流と最良のフィルタリング性能(すなわち最小のエイリアシング)を得ることができる。第1のタイミングチャート802において、デジタルフィルタは常に有効状態(enabled)にあり、これはデジタルフィルタの動作を制御する制御信号のデューティー比が100%であることに相当する。このモードにおいて、デジタルフィルタはデジタル信号の周波数の1/8の周波数(すなわち(25.6kHz)/8=3.2kHz)でデジタル信号のサンプリングを行う。したがってデジタルフィルタの「フィルタリング周波数」は3.2kHzということになる。このモードにおいて、RMSファームウェアのODRはフィルタリング周波数の1/4(すなわち(3.2kHz)/4=0.8kHz=800Hz)である。
【0062】
第2のタイミングチャート804は加速度センサの低電力・低周波数モードでの動作に対応する。低電力・低周波数モードでは、比較的低周波数のフィルタ係数に対応するサンプリングを行うことができる。このモードではフィルタ係数を、比較的大きなサンプリング周波数分離および/またはコーナー周波数分離に対して適切となるように保つことができる。第2のタイミングチャート804において、デジタルフィルタの制御信号の周波数およびデジタルフィルタのフィルタリング周波数はいずれもデジタル信号の周波数の1/8(すなわち(25.6kHz)/8=3.2kHz)である。このモードにおいて、RMSファームウェアのODRはフィルタリング周波数の1/4(すなわち(3.2kHz)/4=0.8kHz=800Hz)である。
【0063】
第3のタイミングチャート806は加速度センサの低電力・高周波数モードでの動作に対応する。低電力・高周波数モードでは、比較的高周波数のフィルタ係数に対応するサンプリングを行うことができる。このモードでは、サンプリングレートを比較的高く保って、高いフィルタコーナーにおけるエイリアシングを低減することができる。第3のタイミングチャート806において、制御信号の周波数とRMSファームウェアのODRはいずれもデジタル信号の周波数の1/32(すなわち(25.6kHz)/32=0.8kHz=800Hz)である。このモードにおいて、デジタルフィルタのフィルタリング周波数はデジタル信号の周波数(すなわち25.6kHz)に等しい。
【0064】
図9~
図12は本開示の実施形態における異なる動作モードでの入力加速度とRMS出力との関係を示す波形
図900、1000、1100、1200のいくつかの例である。波形
図900、1000は、
図8のタイミングチャート802を参照して上に説明したフルパワーモードの実装例を示す。波形
図1100は、
図8のタイミングチャート804を参照して上に説明した低電力・低周波数モードの実装例を示す。波形
図1200は、
図8のタイミングチャート806を参照して上に説明した低電力・高周波数モードの実装例を示す。
図9~
図12のいずれにおいても、入力加速度は物体の物理的な振動を表す。
図9~
図12のいずれにおいても、RMS出力は周波数スペクトル内の異なる周波数に対応する一連のRMS値である。
図9~
図12のそれぞれに描かれた動作モードは、対応する周波数範囲に合わせて較正された1群のフィルター設定に対応する。例えば、
図9において、ハイパスフィルタ(HPF)のコーナー周波数は10Hz、ローパスフィルタ(LPF)のコーナー周波数は2000Hzである。
図10において、HPFのコーナー周波数は100Hzで、LPFのコーナー周波数は200Hzである。
図11において、HPFのコーナー周波数は5Hzで、LPFのコーナー周波数は50Hzである。
図12において、HPFのコーナー周波数は500Hzで、LPFのコーナー周波数は2000Hzである。
【0065】
図13および
図14は本開示の実施形態による加速度センサにおけるフィルタリング/RMS機能ブロック(例えば
図4の加速度センサ400におけるフィルタ428a、428bおよびRMSファームウェア416)のポートの一構成例を示す表1300、1400である。フィルタリング/RMS機能ブロックは構成自在にするとよい。例えば、フィルタリング/RMS機能ブロックは、ローパスフィルタとしてのみ構成可能かつ迂回可能な2次無限インパルス応答(IIR)フィルタを含むとよい。本例において、フィルタリング/RMS機能ブロックはさらに、ローパスフィルタまたはハイパスフィルタとして構成可能かつ迂回可能な2次無限インパルス応答(IIR)フィルタを含むとよい。本例において、フィルタリング/RMS機能ブロックはさらに、ウィンドウサイズが設定可能なRMS演算ブロックを含むとよい。本例において、フィルタリング/RMS機能ブロックは二つの設定可能出力を有する。
【0066】
図15は本開示の一実施形態における、
図13および
図14を参照して上に説明したフィルタリング/RMS機能ブロック1500のブロック図である。フィルタリング/RMS機能ブロック1500は、第1フィルタ1528aと、第2フィルタ1528bと、RMSウィンドウロジック1516とを含む。第1フィルタ1528a、第2フィルタ1528b、およびRMSウィンドウロジック1516はそれぞれ、
図4を参照して上に説明した第1IIRフィルタ428a、第2IIRフィルタ428b、およびRMSファームウェア416と同様に動作するが、これは実施形態の範囲を限定するものではない。
【0067】
図16および
図17は本開示の一実施形態におけるフィルタ1600、1700のブロック図である。フィルタ1600、1700は、
図15に示すフィルター1528a、1528bの実装例である。
図18および
図19は本開示の実施形態における信号マッピングの一例を示す表1800、1900である。例えば、
図16および
図17に示すように、信号rms_f1_ish_mapおよびrms_f2_ish_mapが、
図18に示す入力rms_f1_ishおよびrms_f2_ishがら生成される。信号rms_f2_oshのマッピングは
図19に示す。
【0068】
フィルタ1600、1700の係数設定値を決定する方法の一例を以下に説明する。
フィルタ1600
【0069】
フィルタの実装における一般形は下に述べるような伝達関数を有する。フィルタ1600について、所望の伝達関数は次のような形式で得られる。
【数1】
A、BおよびCは正の値であり、さらに以下に述べる条件を満たすとよい。上に示した伝達関数からフィルタ係数設定を決定する手順の一例は次のとおりである:
1.任意の周波数
における最大の大きさ(の絶対値)を求め、この最大値を、
における大きさ(の絶対値)が所望の周波数範囲(例えば全周波数)にわたって1.0未満となるように拡縮する整数値TMPORSを選ぶ(大きさが1.0を超える周波数においては計算において飽和が生じ得るが、1.0をわずかに超えた程度であれば許容できる)。一実装例において、TMPORSの有効範囲は例えば、フィルタ1600については0から1、フィルタ1700については0から20である。
2.
が128以上かつ256未満となるようにTMPIRSを選んでTMP1Aを求める。TMPIRSの有効範囲は例えば7から25である。
3.
を求める。結果は例えば0と8388607との間になる。
4.
を求める。結果は例えば0と8388607との間になる。
第7ビットの1を落としてrms_f1_1aをTMP1Aにセットする。rms_f1_baをTMPBAにセットする。rms_f1_caをTMPCAにセットする。rsm_f1_ishを(TMPIRS-7)にセットする。rms_f1_oshをTEMPORSにセットする。
フィルタ1700
【0070】
フィルタの実装における一般形は下に述べるような伝達関数を有する。フィルタ1
700について、所望の伝達関数は次のような二つの形式のいずれかで得られる。(本例ではフィルタ1700のみがハイパスであるが、これは例示であって限定を意図しない。)
【数2】
A、BおよびCは正の値であり、さらに以下に述べる条件を満たすとよい。上に示した伝達関数からフィルタ係数設定を決定する手順の一例は次のとおりである:
5.任意の周波数
における最大の大きさ(の絶対値)を求め、この最大値を、
における大きさ(の絶対値)が所望の周波数範囲(例えば全周波数)にわたって1.0未満となるように拡縮する整数値TMPORSを選ぶ(大きさが1.0を超える周波数においては計算において飽和が生じ得るが、1.0をわずかに超えた程度であれば許容できる)。一実装例において、TMPORSの有効範囲は例えば、フィルタ1600については0から1、フィルタ1700については0から20である。
6.
が128以上かつ256未満となるようにTMPIRSを選んでTMP1Aを求める。TMPIRSの有効範囲は例えば7から25である。
7.
を求める。結果は例えば0と8388607との間になる。
【0071】
第7ビットの1を落としてrms_f2_1aをTMP1Aにセットする。rms_f2_baをTMPBAにセットする。rsm_f2_ishを(TMPIRS-7)にセットする。rms_f2_oshをTEMPORSにセットする。rms_f2_hpを、ハイパスについては1に、ローパスについては0にセットする。
【0072】
図20および
図21は本開示の実施形態による加速度センサの製造方法を示すフローチャート2000、2100である。説明の便宜上、フローチャート2000、2100を
図22に示す製造システム2200に基づいて説明する。
図22に示すように、製造システム2200はMEMSロジック22
12とASICロジック22
14とを含む。実施にあたっての構造上および動作上の詳細は、フローチャート2000、2100についての以下の説明から関連分野の当業者には明らかであろう。
【0073】
フローチャート2000に示す手順は、MEMS (microelectromechanical system) デバイスとASIC(application-specific integrated circuit)とを含むように半導体パッケージを作製する工程に関わる。
図20に示すように、フローチャート2000の手順はステップ2002から始まる。ステップ2002において、MEMSデバイスが、物体の加速度に応じて変化するように構成された静電容量を有する容量性構造を含むように作製される。一実装例において、MEMSデバイス2202はMEMSロジック2212によって設けられる。
【0074】
ステップ2004において、ASICが、容量性構造の静電容量の変化に少なくとも部分的に基づいて物体の加速度を求めるように構成される。一実装例において、ASIC2204はASICロジック2214によって構成される。
【0075】
ステップ2004はステップ2006、2008、および2010を含む。ステップ2006において、アナログ回路がASICに組み込まれる。アナログ回路は、容量性構造の静電容量の変化を測定して静電容量の変化を表すアナログ信号を生成するように構成される。
【0076】
ステップ2008において、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)がASICに組み込まれる。ADCはアナログ信号をデジタル信号に変換するように構成される。
【0077】
ステップ2010において、RMSファームウェアがASICに組み込まれる。RMSファームウェアは、デジタル信号の表現に対して二乗平均平方根(RMS)演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成される。
【0078】
一実施形態において、ステップ2002でMEMSデバイスを作製する工程は、容量性構造を含むようにMEMSデバイスを作製する工程を含む。本実施形態において、ステップ2004でASICを構成する工程は、ASICを作製する工程を含む。本実施形態の一局面において、ASICを作製する工程は、アナログ回路と、ADCと、RMSファームウェアとを共通の基板上(例えば共通の半導体基板上)に作製する工程を含む。本局面の一実装例において、MEMSデバイスを作製する工程は、MEMSデバイスもその共通の基板に作製する工程を含む。本実施形態の他の一局面において、ASICを作製する工程は、特定の周波数範囲外の周波数を阻止するように構成されたバンドパスフィルタを含むデジタルフィルタを、これがADCとRMSファームウェアとの間に結合されるように作製する工程を含む。
【0079】
他の一実施形態において、ステップ2006でアナログ回路をASICに組み込む工程はアナログ回路を作製する(例えば、ASICを形成する)工程を含み、ステップ2008でADCをASICに組み込む工程はADCを作製する工程を含み、かつ/またはステップ2010でRMSファームウェアをASICに組み込む工程はRMSファームウェアを作製する工程を含む。
【0080】
さらに他の一実施形態において、ステップ2004でASICを構成する工程は、デジタル信号の移動平均にダウンサンプリングを行ってダウンサンプリング移動平均信号を出力するようにデジタルフィルタを構成する(例えば、作製する)工程を含む。本実施形態において、ステップ2010でRMSファームウェアをASICに組み込む工程は、ダウンサンプリング移動平均信号にRMS演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するようにRMSファームウェアを構成する(例えば、作製する)工程を含む。
【0081】
さらに他の一実施形態において、ステップ2010でRMSファームウェアをASICに組み込む工程は、デジタル信号の表現に複数のRMS演算を行って異なる周波数それぞれに対応する物体の加速度の値を出力するようにRMSファームウェアを構成する工程を含む。
【0082】
さらに他の一実施形態において、ステップ2010でRMSファームウェアをASICに組み込む工程は、RMS値が閾値に達することに少なくとも部分的に基づいて(例えば、RMS値が上側閾値以上または下側閾値以下であることに少なくとも部分的に基づいて)割込信号を生成することができるようにRMSファームウェアを構成する工程を含む。例えば、そのような割込信号を生成するようにRMSファームウェアを構成するとよい。
【0083】
実施形態によっては、フローチャート2000のステップ2002、2004、2006、2008、および/または2010のうち一以上を実行しなくてもよい。また、ステップ2002、2004、2006、2008、および/または2010に加えて、あるいはそれに代えて、他のステップを実行してもよい。
【0084】
図21に示すように、フローチャート2100の手順はステップ2102から始まる。ステップ2102において、半導体基板が設けられる。一実装例において、半導体基板はMEMSロジック2212および/またはASICロジック2214によって設けられる。
【0085】
ステップ2104において、MEMSデバイスが半導体基板上に形成される。MEMSデバイスは、物体の加速度に応じて変化するように構成された静電容量を有する容量性構造を含む。一実装例において、MEMSロジック2212によってMEMSデバイス2202が半導体基板上に形成される。
【0086】
ステップ2106において、容量性構造の静電容量の変化に少なくとも部分的に基づいて物体の加速度を求めるように、ASICが半導体基板上に形成される。ASICはアナログ回路と、ADCと、RMSファームウェアとを含む。一実装例において、ASICロジック2214によってASIC2204が半導体基板上に形成される。
【0087】
ステップ2106はステップ2108、2110および2112を含む。ステップ2108において、容量性構造の静電容量の変化を測定して静電容量の変化を表すアナログ信号を生成するようにアナログ回路が構成される。
【0088】
ステップ2110において、アナログ信号をデジタル信号に変換するようにADCが構成される。
【0089】
ステップ2112において、デジタル信号の表現に対してRMS演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するようにRMSファームウェアが構成される。
【0090】
実施形態によっては、フローチャート2100のステップ2102、2104、2106、2108、2110、および/または2112のうち一以上を実行しなくてもよい。また、ステップ2102、2104、2106、2108、2110、および/または2112に加えて、あるいはそれに代えて、他のステップを実行してもよい。
【0091】
図24は本開示の一実施形態におけるデジタル出力とRMS出力との対応を示す波形
図2400の一例である。波形
図2400は、RMS演算前に現れ得るデジタル出力信号S2およびRMS演算後に現れ得るRMS出力信号S4を示す。一実施形態において、RMS演算の結果(すなわちRMS出力信号S4)は割込制御部に入力される。割込制御部は割込信号をマイクロコンピュータに出力する。加速度センサが、物体の動きを測定するモーションセンサとして用いられる場合、デジタル出力信号S2は測定対象の動き(すなわちモーションセンサに作用する加速度)を反映する振動成分(すなわち交流成分)を含む。
図24において期間2460および期間2462に示すように、測定対象が動いているとき、デジタル
出力信号S2は振動成分を含み、この振動成分の信号値の振幅が所定の閾レベルVthを超える。
【0092】
RMS演算前の信号は、可変フィルタリングを施した後の信号であってよい。可変フィルタリングには構成が可変のフィルタリングが含まれる。例えば、可変フィルタリングは二つの可変フィルター部を直列に設けることで実装できる。一実施形態において、各可変フィルター部はLPFまたはHPFである。各可変フィルター部は、そのカットオフ周波数を可変とするか、またはLPFからHPFに、もしくはHPFからLPFに切り替え可能にすることができる。例えば、fH<fLとなるHPF(カットオフ周波数fH)とLPF(カットオフ周波数fL)とを直列に設けて可変フィルタリングを行えば、可変フィルタリング後の信号はfHとfLとの間の特定周波数範囲内に収まる。その結果、デジタル出力信号S2は可変フィルタリング適用後の特定周波数範囲内の動きまたは振動を示す。
【0093】
図示の実施形態において、デジタル出力信号S2の振幅は、測定対象が動いている間、常に閾レベルVthを上回っているわけではない。そうではなく、デジタル出力信号S2の振幅は振動して閾レベルVthをを上回ったり下回ったりする。このような振幅の振動により、デジタル出力信号S2を直接割込制御部に入力して閾レベルVthと比較すると、特定周波数範囲内の動きまたは振動の検出にエラーを生じることがある。さらに、デジタル出力信号S2の振動は割込制御部の動作タイミング(すなわち割込制御部が入力された信号にサンプリングを行うタイミング)と非同期であり得る。デジタル出力信号S2を直接割込制御部に入力するのであれば、エラーを避けるためには割込制御部の動作速度(すなわちクロック周波数)が十分に高くなければならない。
【0094】
しかし、RMS出力信号S4を割込制御部に入力してエラーを減らすことができる。RMS出力信号S4はデジタル出力信号S2に可変フィルタリングとRMS演算を順次施して生成され、その振幅は可変フィルタの通過帯域によって定義可能な特定周波数範囲内の動きまたは振動の持続時間に亘って閾レベルVthより上回った状態に維持される。RMS演算は例えば、N個のデジタル信号S13(1)~S13(N)を用いてRMS信号を√(S13(1)
2+S13(2)
2……+S13(N)
2)として算出することによって行われる。例えば、N個のデジタル信号は3つのデジタル信号S13(1)~S13(3)であって、それぞれがX軸、Y軸およびZ軸信号に相当する。N個のデジタル信号の構成はこれに限らない。
【0095】
一実施形態において、割込制御部は、所定の閾期間Tthに亘ってRMS出力信号S4の振幅が所定の閾レベルVth(例えばVth=0.5V)を上回り続けたかどうかをチェックすることによって特定周波数範囲内の動きまたは振動を検出することができる。一実施形態において、閾期間Tthは10ms(ミリ秒)である。他の一実施形態において、閾期間Tthは約5ms~約15msである。図示の例において、RMS出力信号S4は描かれた期間内で2回閾レベルVthを上回る。一例として、期間2460の第1の動きM1については、割込制御部はそれを無視することができる。S4>Vthとなる期間T1が閾期間Tthより短いからである。それに対して、第2の動きM2については、割込制御部はそれを検出することができる。S4>Vthとなる期間が閾期間Tthより長いからである。
【0096】
図25は加速度計2500の一構成例を示すブロックダイアグラムである。加速度計2500はMEMSデバイス2502と、ASIC2504とを含む。MEMSデバイス2502は構造2506を含み、これは例えば容量性構造である。ASIC2504はスイッチ2542と、アナログフロントエンド(AFE)2509と、キャパシタ2511と、ADC2510と、デジタル信号プロセッサ(DSP)2513と、FIFO(first-in-first-out)バッファ2515と、通信インターフェース2517と、温度センサ2519と、内部電源2521と、バッファ2523とを備える。ASIC2504は例えばホストマイクロコンピュータ(不図示)に接続される。
【0097】
スイッチ2542およびキャパシタ2511は、ASIC2504においてある軸沿い、例えばX軸沿いの加速度が検出されたときに発生するノイズを除去するために用いることができる。同様の構成をY軸およびZ軸沿いの加速度を検出するために用いることができる。キャパシタ2511の静電容量は任意である。一実施形態において、複数のキャパシタ2511が同じ静電容量を有する。
【0098】
AFE2509はセンサ出力信号S10に所定のアナログ調整処理を施してアナログ信号S11を生成する。一実施形態において、AFE2509はセンサ出力信号S10に対して増幅を行うように構成される。一実施形態において、AFE2509はセンサ出力信号S10に対してノイズ除去を行うように構成される。アナログ信号S11はADC2510に入力され、ADC2510はアナログ信号S11をデジタル信号S12に変換する。
【0099】
実施形態によっては、DSP2513はデジタル信号S12を入力されて割込信号S20を生成するように構成される。ASIC2504は割込信号S20をホストマイクロコンピュータに出力することができる。DSP2513はまた、出力選択信号S15を生成してこれをFIFOバッファ2515に供給することができる。DSP2513はさらに、FIFOバッファ2515にアクセスし、通信インターフェース2517を介してシリアル通信を行い、温度センサ2519を監視し、バッファ2523を介してMEMSデバイス2502に対して3軸(例えばX軸、Y軸およびZ軸)較正を行うように構成することができる。
【0100】
実施形態によっては、FIFOバッファ2515はDSP2513が処理する様々なデータをファースト・イン・ファースト・アウト(先入先出)方式でホールドする。様々なデータには生加速度データおよび/またはRMS演算データが含まれる。ホストは通信インターフェース2517を介してFIFOバッファ2515にアクセスして、FIFOバッファ2515に格納された様々なデータを読むことができる。一実施形態において、データはシリアルに読み出される。
【0101】
実施形態によっては、通信インターフェース2517はホストとのI2C/SPIバス4を介した双方向シリアル通信のためのインターフェースである。一実施形態において、通信インターフェース2517は制御レジスタを含む。
【0102】
実施形態によっては、温度センサ2519はASIC2504の温度を測定する内蔵センサである。一実施形態において、温度センサ2519はASIC2504の温度を、半導体基板とMEMSデバイス2502および/またはASIC2504との間の接合部において測定する。
【0103】
実施形態によっては、内部電源2521は外部からの供給電圧Vddから内部供給電圧Vccを生成してこれをASIC2504内の各部に供給する。
【0104】
バッファ2523はそれぞれ、DSP2513から入力される較正信号の波形を整形してMEMSデバイス2502に出力する。較正信号は、MEMSデバイス2502をドライブするのに用いることができる。
【0105】
実施形態によっては、ASIC2504には、ASIC2504外部の装置との電気的接続のための複数の端子またはパッド2525が設けられる。図示の例においては、複数のパッド2525がASIC2504外部の装置との電気的接続のために設けられている(例えば、chgin(入力部に相当)、car1_x、car2_x、car1_y、car2_y、car1_z、car2_z、iddq_en_ex、dvdd1_ex、Vdd、GND、IOVdd、nCS、SDO/ADDR、SDA、SCL、TRIG、INT1、およびINT2)が設けられている。
【0106】
一実施形態において、X軸差動ドライブ信号がDSP2513からMEMSデバイス2502にバッファ2523を介して(例えばパッドcar1_x、car2_x経由で)に入力される。同様に、Y軸差動ドライブ信号をバッファ2523を介してMEMSデバイス2502に(例えばパッドcar1_y、car2_y経由で)入力することができる。同様に、Z軸差動ドライブ信号をバッファ2523を介してMEMSデバイス2502に(例えばパッドcar1_z、car2_z経由で)入力することができる。
【0107】
実施形態によっては、各ドライブ信号は、MEMSデバイス2502内に設けられたMEMS構造2506のMEMSキャパシタ(図示せず)に入力される。MEMSデバイス2502においては、X軸、Y軸、およびZ軸それぞれ用に等価的な二つのMEMSキャパシタが設けられる。MEMS構造2506は、加速度に応じて各軸の二つのMEMSキャパシタの容量値の一方が増加し、他方が減少するように構成される。一実施形態において、二つのMEMSキャパシタの容量値を足し合わせることで、温度特性等に起因してMEMSデバイス2502内でおこるオフセットや、MEMSデバイス2502に加わるノイズが相殺される。
【0108】
図26は、加速度センサ、例えば
図25に示す加速度センサ2500、のタイミングチャート2600の一例である。本タイミングチャート2600はASIC、例えば
図25に示すASIC2504、からのノイズの除去を描いている。本タイミングチャート2600は、X軸沿いに1Gの加速度を検出した時の加速度センサの動作モードの例を示すものである。
【0109】
一実施形態において、差動制御のためのドライブ信号がバッファ2523を介してMEMSデバイス2502内のMEMS構造2506に含まれる二つのMEMSキャパシタ(図示せず)に入力され、各MEMSキャパシタの容量値を足し合わせた値V-QMEMが、パッド2525(例えばChgin端子)を介して、ASIC2054に入力される。
【0110】
一実施形態において、バッファ2523の出力(例えば2523-1、2523-2)は、その合計がH(V)のM(V)に対する差と等しくなるように制御される。区間T1においては、スイッチ2542-1がON、スイッチ2542-2とスイッチ2542-3がOFFであるため、Chgin端子を介して入力される値は、MEMSデバイス2502からの容量値V-QMEMとなる。
【0111】
区間T2においては、スイッチ2542-1がOFF、スイッチ2542-2とスイッチ2542-3がONであるため、Chgin端子を介して入力される値は、ノイズ除去用のキャパシタ2511からの容量値V-Qcapとなる。そして、例えばDSP2513に設けられる計算部が、デジタル値に変換されたV-QMEMとV-Qcapの差分を算出する。その結果、区間T3および区間T4で示すように、ASIC2504からのノイズが発生した場合でも、差分による相殺が可能となる。一実施形態において、すべての区間を通してスイッチ2542-1がONでスイッチ2542-2とスイッチ2542-3がオフの場合に、デジタル信号S12が出力される(計算部がデジタル信号S12を出力する)。
【0112】
図27は、DSP2713、例えば
図25の加速度センサ2500に設けられるDSP2513、の一構成例を示すブロック図である。DSP2713は、計算部2727(“CALC”)と、前処理部2729と、RMS演算部2731と、出力データ制御部2733と、各種エンジン2735と、割込制御部2737とを含む。
【0113】
一例として、計算部2727は、chgin端子からAFE2709およびADC2710を介して入力されるデジタル信号S12に所定の計算処理を施して、デジタル信号S13aを出力する。例えば、所定の計算処理には上に述べたH(V)のM(V)に対する差の算出が含まれる。上に述べたように、すべての区間を通してスイッチ2542-1がONでスイッチ2542-2とスイッチ2542-3がオフの場合にデジタル信号S12を出力するように、計算部2727を構成することができる。
【0114】
実施形態によっては、前処理部2729は、デジタル信号S13aに種々の前処理を施してデジタル信号S13を出力する。前処理には例えば、ノイズ除去、オフセット調整、ゲイン調整、および帯域制限が含まれる。
【0115】
実施形態によっては、RMS演算部2731は、デジタル信号S13の二乗平均平方根を算出してRMS演算信号S14を出力する。例えば、N個のデジタル信号S13(1)~S13(N)の二乗平均平方根を算出する場合、RMS演算信号S14は、S14=√(S13(1)
2+S13(2)
2+…+S13(N)
2)と定義され、これがRMS演算の結果となる。
【0116】
図示のように、RMS信号S14は割込制御部2737へ出力される。一実施形態において、デジタル信号S12は
図24の信号S2に相当し、RMS信号S14は
図24の信号S4に相当する。
【0117】
実施形態によっては、出力データ制御部2733は、デジタル信号S13とRMS演算信号S14の一方を選択信号S15として、DSP2713の外部へ(FIFOバッファに)出力する。一実施形態において、出力データ制御部2733は選択信号S15をFIFOバッファ、例えば
図25のFIFOバッファ2515に供給する。
【0118】
一実施形態において、情報取得エンジン2735は、デジタル信号S13(すなわち、RMS演算処理が施されていない生の加速度データ)から各種の情報(例えば電子機器の状態)を取得する機能ブロックである。情報取得エンジン2735は複数のエンジンを含んでよい。図示の例では、情報取得エンジン2735は第1エンジン2735-1と第2エンジン2735-2とを含む。
【0119】
実施形態によっては、割込制御部2737は割込信号S20を生成してホストマイクロコンピュータに出力する。一実施形態において、割込制御部2737はRMS演算部2731から入力されるRMS演算信号S14に基づいて割込信号S20を生成する。割込制御部2737はさらに、情報取得エンジン2735から入力される各種の検出信号S16aおよびS16b参照しつつ割込信号S20をホストマイクロコンピュータに出力してもよい。
【0120】
図28および
図29は一実施形態による加速度センサ2800を示す。加速度センサ2800はMEMSデバイスとASICとを備え、これらはパッケージ2805に収められる。図示の例において、パッケージ2805は、上面2839と、上面2839の裏側の下面2841と、上面2839と下面2841との間に挟まれた4つの側面2843-1~2843-4とを有する薄型の直方体状に形成されている。
【0121】
一実施形態において、対向する側面2843-2および2843-4にはそれぞれ、複数の外部端子2845および2847が設けられる。複数の外部端子2845および2847は、側面2843-2および2843-4から露出し、下面2841からも露出する。一実施形態において、下面2841に下面端子2849が設けられる。下面端子2849は下面2841の大部分を覆うように構成されてよい。一実施形態において、下面端子2849はヒートシンクパッドであり、パッケージ2805内の構成要素からの放熱を行うように構成される。図示の例において、加速度センサ2800にはDFN(Dual Flatpack No-leaded)パッケージが採用されている。
【0122】
図30は一実施形態による加速度センサ3000の内部構造の一例を示す。例えば、
図30に示す構造を
図28および
図29の加速度センサ2800に設けることができる。図示の例において、加速度センサ3000はMEMSデバイス3002、ASIC3004、および基板3005の積層体として構成される。図示の例において、MEMSデバイス3002およびASIC3004は基板3005上にスタック実装される。基板3005は例えばラミネート基板である。一実施形態において、これに限定されないが、MEMSデバイス3002が基板3005の上面に実装され、ASIC3004がMEMSデバイス3002の上面に実装されて、構成要素が共通の基板上にスタックを形成する。他の一実施形態において、MEMSデバイスおよびASICは共通の基板上に横置きされる。他の一実施形態において、MEMSデバイスおよびASICは、構成要素を共通の基板上に作製することによって形成される。
【0123】
実施形態によっては、ASIC3004には端子またはパッド3025が設けられる。パッド3025はASIC3004上にどのような形で設けてもよい。一実施形態において、パッド3025はASIC3004の1辺に沿って1列に配列される。ASIC3004は薄い長方形の板状に切り抜かれたチップであってよい。
【0124】
実施形態によっては、MEMSデバイス3002は薄い長方形の板状に形成される。一実施形態において、MEMSデバイス3002にはMEMSデバイス3002の1辺に沿って低く形成された段差部が設けられる。MEMSデバイス3002にはまた、端子またはパッド3051を設けてもよい。パッド3051は1列に配列するとよい。
【0125】
実施形態によっては、ASIC3004上のパッド3025およびMEMSデバイス3002上のパッド3051は、隣り合って延びる2列に配される。ASIC3004は、図示のように、その1辺がMEMSデバイス3002の段差部の辺と面一に配置することができ、そうするとASIC3004のパッド3025はMEMSデバイス3002のパッド3051に隣接して配置される。ASIC3004のパッド3025がMEMSデバイス3002のパッド3051の近くに配置されるので、MEMSデバイス3002とASIC3004との間の電気的接続のために用いられるワイヤを短くすることができる。
【0126】
実施形態によっては、集積回路(AFE部)は、ノイズ除去のためMEMSデバイスにドライブ信号を供給するように構成されたドライブ部と、ドライブ信号がMEMSデバイスを介して出力されるとこの出力が入力されるように構成された入力部と、入力部からの信号を処理するように構成された計算部と、ドライブ部と入力部の間に設けられてこれらの間の電気的な接続をオンオフするように構成されたキャパシタとを含むとよい。一実施形態において、計算部は、MEMSデバイスを経由して出力される信号と、MEMSデバイスを経由せずにキャパシタを経由して出力される信号との差分を算出する構成にすることができる。一実施形態において、集積回路はさらに、入力部と計算部の間に設けられた第1スイッチを含むとよい。一局面において、集積回路は、キャパシタの電気的な接続のオンオフを行うように構成された第2スイッチを含むとよい。また、他の一局面において、第1および第2スイッチはお互いが排他的関係になるようにオンオフされる構成にするとよい。他の一局面において、第1および第2スイッチは等間隔でオンオフされる構成にするとよい。一実施形態において、ドライブ信号は二つの経路間の差動信号である構成にするとよい。他の一局面において、集積回路は上述のキャパシタとして二つのキャパシタを含み、さらに第2スイッチに加えて第3スイッチを備え、第2および第3スイッチが同じ状態でオンオフされる構成にするとよい。
III. 様々な実施形態についての考察
【0127】
加速度センサの第1構成例はMEMS(microelectromechanical system)デバイスと、ASIC(application-specific integrated circuit)と、RMSファームウェアとを含む。MEMSデバイスは、物体の加速度に応じて変化するように構成された静電容量を有する容量性構造を含む。ASICは、容量性構造の静電容量の変化に少なくとも部分的に基づいて物体の加速度を求めるように構成される。ASICはアナログ回路とアナログ/デジタルコンバータ(ADC)とを備える。アナログ回路は容量性構造の静電容量の変化を測定するように構成される。アナログ回路はまた静電容量の変化を示すアナログ信号を生成するように構成される。ADCはアナログ信号をデジタル信号に変換するように構成される。RMSファームウェアは、デジタル信号の表現に対して二乗平均平方根(RMS)演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成される。
【0128】
加速度センサの第1構成例の第1局面によれば、MEMSデバイスおよびASICは共通の半導体チップ上に実装される。
【0129】
加速度センサの第1構成例の第2局面によれば、ASICはさらに、デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含む。第2局面によれば、RMSファームウェアはフィルタリングされたデジタル信号に対してRMS演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成される。第2局面によればさらに、デジタルフィルタは少なくとも1つのバターワースフィルターを含む。加速度センサの第1構成例の第2局面は加速度センサの第1構成例の第1局面と組み合わせて実装できるが、これは実施形態を限定するものではない。
【0130】
加速度センサの第1構成例の第3局面によれば、ASICはさらに、デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含む。第3局面によれば、RMSファームウェアはフィルタリングされたデジタル信号に対してRMS演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成される。第3局面によればさらに、デジタルフィルタは少なくとも1つのベッセルフィルターを含む。加速度センサの第1構成例の第3局面は加速度センサの第1構成例の第1および/または第2局面と組み合わせて実装できるが、これは実施形態を限定するものではない。
【0131】
加速度センサの第1構成例の第4局面によれば、ASICはさらに、デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含む。第4局面によれば、RMSファームウェアはフィルタリングされたデジタル信号に対してRMS演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成される。第4局面によればさらに、デジタルフィルタは少なくとも1つのチェビシェフフィルターを含む。加速度センサの第1構成例の第4局面は加速度センサの第1構成例の第1、第2、および/または第3局面と組み合わせて実装できるが、これは実施形態を限定するものではない。
【0132】
加速度センサの第1構成例の第5局面によれば、ASICはさらに、デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含む。第5局面によれば、RMSファームウェアはフィルタリングされたデジタル信号に対してRMS演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成される。第5局面によればさらに、デジタルフィルタは、特定の周波数範囲外の周波数を阻止するように構成されたバンドパスフィルタを含む。加速度センサの第1構成例の第5局面は加速度センサの第1構成例の第1、第2、第3、および/または第4局面と組み合わせて実装できるが、これは実施形態を限定するものではない。
【0133】
加速度センサの第1構成例の第6局面によれば、ASICはさらに、デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含む。第6局面によれば、RMSファームウェアはフィルタリングされたデジタル信号に対してRMS演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成される。第6局面によればさらに、デジタルフィルタは複数の信号処理フィルタを含む。第6局面によればさらに、各信号処理フィルタはユーザーによってプログラム可能な係数群を有し、係数群は1以上の数値群を有し得る。第6局面によればさらに、少なくとも第1の数値群によって各信号処理フィルタがバターワースフィルターとして構成され、少なくとも第2の数値群によって各信号処理フィルタがベッセルフィルターとして構成される。加速度センサの第1構成例の第6局面は加速度センサの第1構成例の第1、第2、第3、第4、および/または第5局面と組み合わせて実装できるが、これは実施形態を限定するものではない。
【0134】
加速度センサの第1構成例の第7局面によれば、ASICはさらに、デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含む。第7局面によれば、RMSファームウェアはフィルタリングされたデジタル信号に対してRMS演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成される。第7局面によればさらに、デジタルフィルタは、デジタル信号の表現をRMSファームウェアの出力データレート以上のサンプリング周波数でサンプリングするように構成される。加速度センサの第1構成例の第7局面は加速度センサの第1構成例の第1、第2、第3、第4、第5、および/または第6局面と組み合わせて実装できるが、これは実施形態を限定するものではない。
【0135】
加速度センサの第1構成例の第8局面によれば、ASICはさらに、デジタル信号にフィルタリングを施してフィルタリングされたデジタル信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含む。第8局面によれば、RMSファームウェアはフィルタリングされたデジタル信号に対してRMS演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成される。第8局面によればさらに、デジタルフィルタは、デジタル信号の表現をRMSファームウェアの出力データレートの4倍以上のサンプリング周波数でサンプリングするように構成される。加速度センサの第1構成例の第8局面は加速度センサの第1構成例の第1、第2、第3、第4、第5、第6、および/または第7局面と組み合わせて実装できるが、これは実施形態を限定するものではない。
【0136】
加速度センサの第1構成例の第9局面によれば、ASICはさらに、デジタル信号の移動平均をダウンサンプリングしてダウンサンプリングされた移動平均信号を出力するように構成されたデジタルフィルタを含む。第9局面によれば、RMSファームウェアはダウンサンプリングされた移動平均信号に対してRMS演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成される。加速度センサの第1構成例の第9局面は加速度センサの第1構成例の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、および/または第8局面と組み合わせて実装できるが、これは実施形態を限定するものではない。
【0137】
加速度センサの第1構成例の第10局面によれば、RMSファームウェアはデジタル信号の表現に対して複数のRMS演算を行うことによって異なる周波数それぞれに対応する物体の加速度の値を表す複数のRMS値を出力するように構成される。加速度センサの第1構成例の第10局面は加速度センサの第1構成例の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、および/または第9局面と組み合わせて実装できるが、これは実施形態を限定するものではない。
【0138】
加速度センサの第1構成例の第11局面によれば、RMSファームウェアはRMS値が閾値に達することに少なくとも部分的に基づいて割込信号を生成するように構成される。加速度センサの第1構成例の第11局面は加速度センサの第1構成例の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、および/または第10局面と組み合わせて実装できるが、これは実施形態を限定するものではない。
【0139】
加速度センサの製造方法の第1構成例では、MEMS(microelectromechanical system)デバイスとASIC(application-specific integrated circuit)とを含むように半導体パッケージが作製される。半導体パッケージを作製する工程は、物体の加速度に応じて変化するように構成された静電容量を有する容量性構造を含むようにMEMSデバイスを設ける工程を含む。半導体パッケージを作製する工程はさらに、容量性構造の静電容量の変化に少なくとも部分的に基づいて物体の加速度を求めるようにASICを構成する工程を含む。ASICを構成する工程は、アナログ回路をASICに組み込む工程を含む。アナログ回路は容量性構造の静電容量の変化を測定して静電容量の変化を示すアナログ信号を生成するように構成される。ASICを構成する工程はさらに、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)をASICに組み込む工程を含む。ADCはアナログ信号をデジタル信号に変換するように構成される。ASICを構成する工程はさらに、RMSファームウェアをASICに組み込む工程を含む。RMSファームウェアはデジタル信号の表現に対して二乗平均平方根(RMS)演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するように構成される。
【0140】
加速度センサの製造方法の第1構成例の第1局面によれば、MEMSデバイスを設ける工程は、容量性構造を含むようにMEMSデバイスを作製する工程を含む。第1局面によれば、ASICを構成する工程は、ASICを作製する工程を含む。
【0141】
第1局面の第1例において、ASICを作製する工程は、アナログ回路、ADCおよびRMSファームウェアを共通の基板上に作製する工程を含む。
【0142】
第1局面の第1例の一実装において、MEMSデバイスを作製する工程は、MEMSデバイスも共通の基板上に作製する工程を含む。
【0143】
第1局面の第2例において、ASICを作製する工程は、特定の周波数範囲外の周波数を阻止するように構成されたバンドパスフィルタを含むデジタルフィルタを、デジタルフィルタがADCとRMSファームウェアとの間に結合されるように作製する工程を含む。
【0144】
加速度センサの製造方法の第1構成例の第2局面によれば、ASICを構成する工程は、デジタル信号の移動平均をダウンサンプリングしてダウンサンプリングされた移動平均信号を出力するようにデジタルフィルタを構成する工程を含む。第2局面によれば、RMSファームウェアをASICに組み込む工程は、ダウンサンプリングされた移動平均信号に対してRMS演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するようにRMSファームウェアを構成する工程を含む。加速度センサの製造方法の第1構成例の第2局面は加速度センサの製造方法の第1構成例の第1局面と組み合わせて実装できるが、これは実施形態を限定するものではない。
【0145】
加速度センサの製造方法の第1構成例の第3局面によれば、RMSファームウェアをASICに組み込む工程は、デジタル信号の表現に対して複数のRMS演算を行うことによって異なる周波数それぞれに対応する物体の加速度の値を表す複数のRMS値を出力するようにRMSファームウェアを構成する工程を含む。加速度センサの製造方法の第1構成例の第3局面は加速度センサの製造方法の第1構成例の第1および/または第2局面と組み合わせて実装できるが、これは実施形態を限定するものではない。
【0146】
加速度センサの製造方法の第1構成例の第4局面によれば、RMSファームウェアをASICに組み込む工程は、RMS値が閾値に達することに少なくとも部分的に基づいて割込信号を生成可能なようにRMSファームウェアを構成する工程を含む。加速度センサの製造方法の第1構成例の第4局面は加速度センサの製造方法の第1構成例の第1、第2、および/または第3局面と組み合わせて実装できるが、これは実施形態を限定するものではない。
【0147】
加速度センサの製造方法の第2構成例では、半導体基板が設けられる。物体の加速度に応じて変化するように構成された静電容量を有する容量性構造を含むMEMS(microelectromechanical system)デバイスが半導体基板上に形成される。容量性構造の静電容量の変化に少なくとも部分的に基づいて物体の加速度を求めるための、アナログ回路と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)と、RMSファームウェアとを含むASIC(application-specific integrated circuit)が半導体基板上に形成される。ASICを半導体基板上に形成する工程は、容量性構造の静電容量の変化を測定して静電容量の変化を示すアナログ信号を生成するようにアナログ回路を構成する工程を含む。ASICを半導体基板上に形成する工程はさらに、アナログ信号をデジタル信号に変換するようにADCを構成する工程を含む。ASICを半導体基板上に形成する工程はさらに、デジタル信号の表現に対して二乗平均平方根(RMS)演算を行って物体の加速度の値を表すRMS値を出力するようにRMSファームウェアを構成する工程を含む。
【0148】
加速度センサの第2構成例はMEMS(microelectromechanical system)デバイスとASIC(application-specific integrated circuit)とを含む。MEMSデバイスは、物体の加速度に応じて変化するように構成された静電容量を有する容量性構造を含む。ASIC(application-specific integrated circuit)は、容量性構造の静電容量の変化に少なくとも部分的に基づいて物体の加速度を求めるように構成される。ASICは、特定の周波数範囲内の静電容量の変化を表す表現値を算出し、少なくとも指定された期間に亘って表現値が閾値以上であるときに割込信号を出力するように構成される。表現値は入力値の二乗平均平方根(RMS)である。
【0149】
加速度センサの第2構成例の第1局面によれば、ASICはドライブ回路と、入力回路と、キャパシタと、スイッチとを含む。ドライブ回路はMEMSデバイスにドライブ信号を供給するように構成される。入力回路は、容量性構造の静電容量の変化を表す入力信号をMEMSデバイスから受け取るように構成される。入力信号は少なくとも部分的にドライブ信号に基づく。キャパシタは、ドライブ回路の第1ノードと入力回路の第2ノードとの間に結合される。スイッチは、第1および第2ノード間のキャパシタと直列に結合される。スイッチはまた、ドライブ回路と入力回路とをキャパシタを介して結合するか否かを選択的に制御可能である。ASICは、第2ノードの入力信号と第1ノードのドライブ信号との差分を表す差分信号を算出するように構成される。
【0150】
加速度センサの第2構成例の第2局面によれば、MEMSデバイスおよびASICは単一のパッケージに収められる。MEMSデバイスは、ドライブ信号をASICのドライブ回路から受け取るための入力端子と、入力信号をASICに供給するための出力端子とを有する。MEMSデバイスの入力端子とASICのドライブ回路とは単一のパッケージ内でワイヤにより互いに結合され、MEMSデバイスの出力端子とASICの入力回路とは単一のパッケージ内でワイヤにより互いに結合される。加速度センサの第2構成例の第2局面は加速度センサの第2構成例の第1局面と組み合わせて実装できるが、これは実施形態を限定するものではない。
IV. コンピューティングシステムの実装例
【0151】
本開示に記載の様々な実施形態、システム、構成要素、下位構成要素、装置、方法、フローチャート、工程などは、製造システム2200およびフローチャート2000、2100を含めて、またそれらに限らず、いずれもハードウェア(例えば、ハードウェアロジック、電気回路)、ハードウェアとソフトウェアの任意の組み合わせ(1以上のプロセッサまたは処理装置において実行されるように構成されたコンピュータプログラムコード)、および/またはファームウェアとして実装することができる。本開示に記載の各実施形態は、それに関わるシステム、方法/手順、および/または装置を含めて、例えば
図23に示すコンピュータ2300のような公知のコンピューティングシステムを用いて実装することができる。例えば製造システム2200、フローチャート2000の各ステップ、およびフローチャート2100の各ステップは1以上のコンピュータ2300を用いて実装することができる。
【0152】
コンピュータ2300は、本開示に記載の機能を実行可能な、市販され、公知の、任意の通信装置、処理装置、および/またはコンピュータであってよい。そのような装置/コンピュータは例えばIBM(International Business Machines;登録商標)、Apple(登録商標)、HP(登録商標)、Dell(登録商標)、Cray(登録商標)、Samsung(登録商標)、Nokia(登録商標)などから入手できる。コンピュータ2300は、サーバ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートウォッチやヘッドマウントコンピュータなどのウェアラブルコンピュータ、携帯情報端末、携帯電話などを含めた任意の種類のコンピュータであってよい。
【0153】
コンピュータ2300はプロセッサ2306のような1以上のプロセッサ(中央演算処理装置あるいはCPUとも呼ばれる)を含む。プロセッサ2306は通信バスなどの通信インフラストラクチャ2302に接続される。実施形態によっては、プロセッサ2306は複数の計算スレッドを同時に処理できる。コンピュータ2300はまたランダムアクセスメモリ(RAM)などの一次メモリあるいは主メモリ2308を含む。主メモリ2308には制御ロジック2324(コンピュータソフトウェア)およびデータが格納される。
【0154】
コンピュータ2300はまた、1以上の二次記憶装置2310を含む。二次記憶装置2310は例えばハードディスク2312および/またはリムーバブル記憶装置またはドライブ2314を含み、またその他の種類の、メモリカードやメモリスティックなどの、記憶装置を含む。例えば、コンピュータ2300は、メモリスティックなどの装置とのインターフェースとしてユニバーサルシリアルバス(USB)などの業界標準インターフェースを含んでいてよい。リムーバブル記憶ドライブ2314は例えばフロッピーディスクドライブ、磁気テープドライブ、コンパクトディスクドライブ、光記憶装置、テープバックアップなどである。
【0155】
リムーバブル記憶ドライブ2314はリムーバブル記憶ユニット2316を扱う。リムーバブル記憶ユニット2316は、コンピュータにより使用あるいは読み取りが可能な記憶媒体2318を含み、この記憶媒体2318にコンピュータソフトウェア2326(制御ロジック)および/またはデータが格納される。リムーバブル記憶ユニット2316は例えばフロッピーディスク、磁気テープ、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、ブルーレイディスク、光記憶ディスク、メモリスティック、メモリカード、またはその他の任意のコンピュータデータ記憶装置である。リムーバブル記憶ドライブ2314は、リムーバブル記憶ユニット2316に対する読み書きを公知の方法で行う。
【0156】
コンピュータ2300はまた、タッチスクリーン、LED/LCDディスプレイ、キーボード、ポインティングディバイスなどの入力/出力/表示装置2304を含む。
【0157】
コンピュータ2300はさらに、通信インターフェースあるいはネットワークインターフェース2320を含む。通信インターフェース2320を介してコンピュータ2300は外部装置と通信を行うことができる。例えば、通信インターフェース2320を介してコンピュータ2300は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネットなどの通信網または媒体2322(ネットワークにより使用あるいは読み取りが可能な媒体)を経由した通信を行うことができる。ネットワークインターフェース2320は、遠隔サイトやネットワークとのインターフェーシングを有線または無線の接続によって行うことができる。通信インターフェース2320の例を挙げれば、以下に限定されないが、モデム(例えば、4Gまたは5G通信用)、ネットワークインターフェースカード(例えば、WiFiおよび/またはその他のプロトコルのイーサネットカード)、通信ポート、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)カード、有線または無線USBポート、などである。制御ロジック2328は、通信媒体2322を介してコンピュータ2300へ、またコンピュータ2300から、転送することができる。
【0158】
本開示において、コンピュータにより使用あるいは読み取りが可能で制御ロジック(ソフトウェア)が格納された媒体を含む任意の装置または製品をコンピュータプログラム製品またはプログラム記憶装置と称する。コンピュータプログラム製品の例を挙げれば、以下に限定されないが、主メモリ2308、二次記憶装置2310(例えば、ハードディスクドライブ2312)、およびリムーバブル記憶ユニット2316である。このような、1以上のデータ処理装置によって実行されることによって同データ処理装置に本開示に記載のような動作をさせる制御ロジックが格納されたコンピュータプログラム製品に相当するのが各実施形態である。例えば、そのようなコンピュータプログラム製品は、プロセッサ2306によって実行されると、同プロセッサ2306に
図13のフローチャート1300および/または
図15のフローチャート1500の各ステップを実行させる。
【0159】
各実施形態が実装できる装置の例を挙げれば、記憶ドライブなどの記憶装置、メモリ装置、およびその他のコンピュータ可読媒体である。コンピュータ可読媒体(例えば、非一時的記憶媒体)の例を挙げれば、ハードディスク、リムーバブル磁気ディスク、リムーバブル光学ディスク、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)などである。本開示において、「コンピュータプログラム媒体」および「コンピュータ可読媒体」という用語は広く以下のものを指す:ハードディスクドライブにおけるハードディスク、リムーバブル磁気ディスク、リムーバブル光学ディスク(例えばCD-ROM、DVD-ROMなど)、ZIPディスク、テープ、磁気記憶装置、光学記憶装置、MEMSに基づいた記憶装置、ナノテクノロジーに基づいた記憶装置、およびその他の媒体、例えばフラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク、RAM装置、ROM装置などである。そのようなコンピュータ可読記憶媒体には、本開示に記載の例えば実施形態、システム、構成要素、下位構成要素、装置、方法、フローチャート、工程など(上述のとおり)、および/または本開示に記載の他の実施形態を実装するためのコンピュータプログラムロジックを含んだプログラムモジュールを格納することができる。各実施例は、そのようなロジックが(例えば、プログラムコード、指令、またはソフトウェアの形で)コンピュータにより使用可能な任意の媒体に記憶されたコンピュータプログラム製品に関わる。そのようなプログラムコードは、1以上のプロセッサにおいて実行されることにより、装置に本開示に記載のような動作をさせる。
【0160】
上述のコンピュータ可読記憶媒体は、通信媒体とは区別され、交わりを持たない(すなわち、通信媒体を含まない)ことに注意すべきである。通信媒体とは、搬送波などに基づく被変調データ信号において、コンピュータ可読指令、データ構造、プログラムモジュール、またはその他のデータを具現するものである。ここで「被変調データ信号」という用語は、情報をエンコードするために1以上の属性が設定または変更された信号を指す。通信媒体の例を挙げれば、以下に限定されないが、無線媒体、例えば音波、高周波(RF)、赤外線、ならびに他の無線媒体、および有線媒体である。各実施形態は、そのような通信媒体も対象とする。
【0161】
本開示に記載の技術は、本開示に具体的に記載された以外のソフトウェア、ファームウェア、および/またはハードウェアの実装を用いて実施することができる。本開示に記載の機能を実行するのに適した任意のソフトウェア、ファームウェア、およびハードウェアを用いることができる。
V. おわりに
【0162】
上に説明した各実施形態はいずれも例示のためのものであって限定を意図したものではないと理解されるべきである。各実施形態の精神と範囲から逸脱することなく構成や細部に様々な変形を施し得ることは関連分野の当業者には明らかであろう。各実施形態の範囲は上に説明した例示的な実施形態のいずれによっても限定されるものではなく、別紙の請求項およびその等価物によってのみ定義されるものである。