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特許7003293ヒドロシリル化及び脱水素化シリル化触媒として有用なナノ粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ヒドロシリル化及び脱水素化シリル化触媒として有用なナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/22 20060101AFI20220203BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20220203BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20220203BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220203BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
B01J31/22 Z
C07F7/08 X
B82Y30/00
B82Y40/00
C07B61/00 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020559032
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 FR2019050054
(87)【国際公開番号】W WO2019138194
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-09-15
(31)【優先権主張番号】1850246
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507208484
【氏名又は名称】エルケム シリコンズ フランス ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ
(73)【特許権者】
【識別番号】596096180
【氏名又は名称】ユニベルシテ・クロード・ベルナール・リヨン・プルミエ
(73)【特許権者】
【識別番号】520256271
【氏名又は名称】セペエ・リヨン・フォルマシオン・コンティニュー・エ・ルシェルシュ-セペエ・リヨン・エフセエール
(73)【特許権者】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】メイエ,ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】チューレクス,クロエ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェール,ロラン
(72)【発明者】
【氏名】スレイマノフ,ユーリー
(72)【発明者】
【氏名】ガレアンドロ・ディアマント,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ブスキエ,マガリ
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-316175(JP,A)
【文献】米国特許第04252672(US,A)
【文献】米国特許第04252674(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07C 1/00-409/44
C07F 7/08
B82Y 30/00
B82Y 40/00
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過電子顕微鏡法によって求められる、50nm以下の平均径を有するナノ粒子であって、
・周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される0の酸化状態を有する少なくとも1種類の遷移金属
・少なくとも1つのカルボニルリガンド;及び
・少なくとも1種類のケイ化物
を含む、前記ナノ粒子。
【請求項2】
前記金属が、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記ケイ化物
式(I):
SiH (I)
(式中、
・1つ又は複数の記号Yは、同一か又は異なり、周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される金属を表し;
・1つ又は複数の記号Zは、同一か又は異なり、場合によりヘテロ原子又はヘテロ原子を含む基で置換されている、1~18個(端点を含む)の炭素原子を有する一価炭化水素基を表し;
・p=1、2、又は3であり;
・q=1、2、又は3であり;
・r=0、1、又は2であり;
・p+q+r=4である)
を有する化合物から選択される、請求項1又は2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
10nm以下の平均径を有する、請求項1~3のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のナノ粒子を含むコロイド懸濁液。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のナノ粒子、又は請求項5に記載のコロイド懸濁液を含む、ヒドロシリル化及び/又は脱水素シリル化及び/又はアルケン異性化触媒。
【請求項7】
ヒドロシリル化及び/又は脱水素シリル化触媒である、請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載のナノ粒子又は請求項5に記載のコロイド懸濁液の製造方法であって、
不活性雰囲気下及び/又は水素下において、周期律表の第8、9、及び10族の遷移金属カルボニルから選択される少なくとも1種類の金属錯体を、溶媒中で少なくとも1種類のシランと混合する工程を含前記混合する工程を、140℃未満の温度で行う、前記製造方法。
【請求項9】
前記シランが式(II):
SiH(4-q) (II)
(式中、
・1つ又は複数の記号Zは、同一か又は異なり、場合によりヘテロ原子又はヘテロ原子を含む基で置換されている、1~18個(端点を含む)の炭素原子を有する一価炭化水素基を表し;
q=1、2、又は3である)
を有する化合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合する工程を、10~135℃の範囲の温度で行う、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
・不飽和化合物Aと;
・少なくとも一つのヒドロゲノシリル官能基を有する化合物Bと;
の間の反応によってヒドロシリル化及び/又は脱水素シリル化生成物を製造する方法であって、
請求項1~4のいずれかに記載のナノ粒子又は請求項5に記載のコロイド懸濁液によって触媒する上記方法。
【請求項12】
UV照射下で行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
・少なくとも1種類の不飽和化合物A;
・少なくとも1つのヒドロゲノシリル官能基を含む少なくとも1種類の化合物B;及び
・請求項1~4のいずれかに記載のナノ粒子又は請求項5に記載のコロイド懸濁液;
を含む組成物X。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒として、特にヒドロシリル化及び脱水素シリル化触媒として使用することができるナノ粒子に関する。より具体的には、本発明は、周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される0の酸化状態を有する少なくとも1種類の遷移金属、及び少なくとも1つのカルボニルリガンドを含むナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロシリル化反応(重付加とも呼ばれる)中においては、少なくとも1つの不飽和を含む化合物を、少なくとも1つのヒドロゲノシリル(hydrogenosilyl:hydrogenosilyle)官能基、即ちケイ素原子に結合している水素原子を含む化合物と反応させる。この反応は、例えばアルケン型の不飽和の場合には式:
【0003】
【化1】
【0004】
によって、又はアルキン型の不飽和の場合には式:
【0005】
【化2】
【0006】
によって示すことができる。
脱水素シリル化反応中においては、反応は式:
【0007】
【化3】
【0008】
によって示すことができる。
不飽和化合物のヒドロシリル化は触媒反応によって行われる。通常は、この反応のために好適な触媒は白金触媒である。現在、ほとんどの工業的ヒドロシリル化反応は、一般式:Pt(ジビニルテトラメチルジシロキサン)、又は短縮形態でPt(DVTMS)
【0009】
【化4】
【0010】
を有するKarstedt白金錯体によって触媒される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このタイプの触媒は比較的不安定であり、Pt(0)のコロイド種(その大きさは制御されない)を形成することによって反応中に変化し、これにより反応媒体及び得られる油状物の黄色~黒色の範囲の着色がもたらされる。
【0012】
したがって、この文脈において、その製造、実施、及び活性を再現することができる、ヒドロシリル化又は脱水素シリル化反応のために有効な代替の触媒を入手することは興味深いであろう。
【0013】
したがって、本発明の目的の1つは、特にヒドロシリル化及び脱水素シリル化反応の触媒に適した、有効な触媒を提案することである。
本発明の別の目的は、有効な触媒を与えるヒドロシリル化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、周期律表の第8、9、及び10族(column)の金属から選択される0の酸化状態を有する少なくとも1種類の遷移金属、及び少なくとも1つのカルボニルリガンドを含むナノ粒子を、ヒドロシリル化又は脱水素シリル化触媒として与えることによって達成される。
【0015】
而して、本発明は、
・周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される0の酸化状態を有する少なくとも1種類の遷移金属;及び
・少なくとも1つのカルボニルリガンド;
を含むナノ粒子を対象とする。
【0016】
本発明はまた、ナノ粒子を含むコロイド懸濁液も対象とする。
本発明はまた、ナノ粒子又はナノ粒子を含むコロイド懸濁液を含む触媒も対象とする。
本発明はまた、ナノ粒子及び/又はナノ粒子を含むコロイド懸濁液の製造方法も対象とする。
【0017】
本発明はまた、ナノ粒子又はナノ粒子を含むコロイド懸濁液によって触媒されるヒドロシリル化方法も対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A図1Aは、実施例1による鉄ナノ粒子を含むコロイド溶液のHAADF-STEM写真を示す。
図1B図1Bは、実施例1による鉄ナノ粒子の直径のヒストグラムを示す。
図2図2は、実施例1による鉄ナノ粒子及び使用した鉄前駆物質の赤外スペクトルを示す。
図3図3は、実施例1による鉄ナノ粒子及び使用した鉄前駆物質の13C-NMRスペクトルを示す。
図4図4は、実施例1による鉄ナノ粒子及びn-オクチルシランのH-NMRスペクトルを示す。
図5A図5Aは、実施例2によるコバルトナノ粒子を含むコロイド溶液のHAADF-STEM写真を示す。
図5B図5Bは、実施例2によるコバルトナノ粒子の直径の、それらの直径にしたがうヒストグラムを示す。
図6図6は、実施例2によるコバルトナノ粒子及び使用したコバルト前駆物質の赤外スペクトルを示す。
図7図7は、実施例2によるコバルトナノ粒子及び使用したコバルト前駆物質の13C-NMRスペクトルを示す。
図8図8は、実施例2によるコバルトナノ粒子及びn-オクチルシランのH-NMRスペクトルを示す。
図9図9は、実施例1による鉄ナノ粒子のMossbauerスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義:
「シラン」とは、本発明においては、4個の水素原子又は有機置換基に結合しているケイ素原子を含む化合物を意味する。「ポリシラン」とは、本発明においては、少なくとも1つの単位:≡Si-Si≡を有する化合物を意味する。
【0020】
「ヒドロゲノシラン(hydrogenosilane)」とは、本発明においては、シラン族に属し、したがって少なくとも1つのケイ素原子を含み、ケイ素原子に結合している少なくとも1つの水素原子を含む化合物を意味する。
【0021】
「オルガノポリシロキサン」と、本発明においては、少なくとも1つの単位:≡Si-O-Si≡を有する化合物を意味する。
「アルキル」とは、1~40個の炭素原子、好ましくは1~20個の炭素原子、より好ましくは1~10個の炭素原子を含む、線状又は分岐の炭化水素鎖を意味する。アルキル基は、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、tert-ブチル、イソブチル、n-ブチル、n-ペンチル、イソアミル、及び1,1-ジメチルプロピルからなる群から選択することができる。
【0022】
「シクロアルキル」とは、本発明によれば、3~20個の炭素原子、好ましくは5~8個の炭素原子を含む、単環式又は多環式、好ましくは単環式又は二環式の飽和炭化水素基を意味する。シクロアルキル基が多環式である場合には、複数の環状コアは、共有結合によるか及び/又はスピロ原子によって互いと結合していてよく、及び/又は互いと縮合していてよい。シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンタン、及びノルボランからなる群から選択することができる。
【0023】
「アリール」とは、本発明によれば、5~18個の炭素原子を含む単環式又は多環式の芳香族炭化水素基を意味する。アリール基は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、及びフェナントリルからなる群から選択することができる。
【0024】
「ハロゲン原子」とは、本発明によれば、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素からなる群から選択される原子を意味する。
「ヘテロアリール」とは、本発明によれば、少なくとも1つの炭素原子がO、N、S、及びPから選択されるヘテロ原子で置換されているアリール基を意味する。ヘテロアリール基は、ピラニル、フラニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、及びインドリルからなる群から選択することができる。
【0025】
「ヘテロシクロアルキル」とは、本発明によれば、少なくとも1個の炭素原子がO、N、S、及びPから選択されるヘテロ原子で置換されているシクロアルキル基を意味する。好ましくは、ヘテロシクロアルキルは5~10員を含む。ヘテロシクロアルキル基は、特に単環式オキシラニル基又は二環式エポキシシクロヘキシル基であってよい。
【0026】
「アルコキシ」とは、本発明によれば、酸素原子に結合している、上記で規定したようなアルキル基を意味する。アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシからなる群から選択することができる。
【0027】
「アリールオキシ」とは、本発明によれば、酸素原子に結合している、上記で規定したようなアリール基を意味する。アリールオキシ基は、例えばフェノキシ基であってよい。
「シクロアルコキシ」とは、本発明によれば、酸素原子に結合している、上記で規定したようなシクロアルキル基を意味する。
【0028】
「アルキルシリル」とは、本発明によれば、ケイ素原子に結合している、上記で規定したようなアルキル基を意味する。
「アルコキシシリル」とは、本発明によれば、ケイ素原子に結合している、上記で規定したようなアルコキシ基を意味する。
【0029】
ナノ粒子:
本発明は、
・周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される0の酸化状態を有する少なくとも1種類の遷移金属;及び
・少なくとも1つのカルボニルリガンド;
を含むナノ粒子を対象とする。
【0030】
本発明において、周期律表の第8、9、及び10族の金属は、好ましくは鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)である。好ましくは、ナノ粒子は、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、及びPtからなる群から選択され、より望ましくはFe、Co、及びNiからなる群、又はFe及びCoからなる群から選択される少なくとも1種類の金属を含む。
【0031】
ナノ粒子はまた、周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される複数の金属を含み得る。ナノ粒子は、例えば2又は3種類の金属を含み得る。而して、金属Fe及びCo、又は金属Fe及びNi、又は金属Co及びNiを含むナノ粒子、或いは金属Fe、Co、及びNiを含むナノ粒子のような二金属系又は三金属系ナノ粒子を与えることが可能である。ナノ粒子中に含まれる1種類又は複数の金属は0の酸化状態を有する。
【0032】
ナノ粒子はまた、少なくとも1つのカルボニルリガンド(CO)を含む。このカルボニルリガンドは、周期律表の第8、9、又は10族の少なくとも1つの金属原子と配位する。このリガンドは、ナノ粒子の表面で配位していてよい。カルボニルリガンドの存在は、赤外分光法(IR)又は13C-NMRによって求めることができる。
【0033】
有利には、ナノ粒子はまた、少なくとも1種類のケイ化物を含む。本発明において、「ケイ化物」とは、周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される少なくとも1種類の金属原子に結合しているケイ素原子を含む化合物を意味する。好ましくは、ケイ化物はまた、少なくとも1つのSi-C結合を含む。ケイ化物は、式(I):
SiH (I)
(式中、1つ又は複数の記号Yは、同一か又は異なり、周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される金属、好ましくはFe、Co、及びNi、より好ましくはFe及びCoから選択される金属を表し;
・1つ又は複数の記号Zは、同一か又は異なり、場合によりヘテロ原子又はヘテロ原子を含む基で置換されている、1~18個(端点を含む)の炭素原子を有する一価炭化水素基、好ましくは1~18個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基からなる群から選択され、より好ましくは4~12個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択される一価炭化水素基を表し;
・p=1、2、又は3であり;
・q=1、2、又は3、好ましくはq=1であり;
・r=0、1、又は2であり;
・p+q+r=4である)
を有する化合物から選択することができる。
【0034】
1つ又は複数の記号Zは、同一か又は異なり、4~12個(端点を含む)の炭素原子を有する線状アルキル基を表し得る。4~12個(端点を含む)の炭素原子を有する線状アルキル基の中では、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシルを挙げることができる。
【0035】
一実施形態によれば、q=1であり、記号Zはn-オクチル基を表す。
ナノ粒子の寸法は変化させることができる。好ましくは、ナノ粒子は、50nm以下、又は10nm以下の平均径を有する。より好ましくは、ナノ粒子は、10nm以下、又は5nm以下、或いは3nm以下の平均径を有する。平均径は、0.5~10nmの範囲(comprised between 0.5 and 10 nm)、又は0.5~5nmの範囲、或いは0.75~3nmの範囲であってよい。ナノ粒子の平均径は、例えば透過電子顕微鏡法によって求めることができる。
【0036】
一実施形態によれば、ナノ粒子は、10nm以下の平均径を有し、
・周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される少なくとも1種類の金属;
・少なくとも1つのカルボニルリガンド;及び
・少なくとも1種類のケイ化物;
を含む。
【0037】
一実施形態によれば、ナノ粒子は、5nm以下の平均径を有し、
・Fe、Co、及びNiから選択される少なくとも1種類の金属;
・少なくとも1つのカルボニルリガンド;及び
・式(I):
SiH (I)
(式中、
1つ又は複数の記号Yは、同一か又は異なり、周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される金属、好ましくはFe、Co、及びNiから選択される金属を表し;
・1つ又は複数の記号Zは、同一か又は異なり、場合によりヘテロ原子又はヘテロ原子を含む基で置換されている、1~18個(端点を含む)の炭素原子を有する一価炭化水素基、好ましくは1~18個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基からなる群から選択され、より好ましくは4~12個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択される一価炭化水素基を表し;
・p=1、2、又は3であり;
・q=1、2、又は3、好ましくはq=1であり;
・r=0、1、又は2であり;
・p+q+r=4である)
を有する化合物から選択される少なくとも1種類のケイ化物;
を含む。
【0038】
有利には、ナノ粒子は常磁性ではない。
一実施形態によれば、ナノ粒子は、50nm以下の平均径を有し、
・周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される少なくとも1種類の金属;
・少なくとも1つのカルボニルリガンド;及び
・少なくとも1種類のケイ化物、好ましくは式(I):
SiH (I)
(式中、
1つ又は複数の記号Yは、同一か又は異なり、周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される金属、好ましくはFe、Co、及びNiから選択される金属を表し;
・1つ又は複数の記号Zは、同一か又は異なり、場合によりヘテロ原子又はヘテロ原子を含む基で置換されている、1~18個(端点を含む)の炭素原子を有する一価炭化水素基、好ましくは1~18個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基からなる群から選択され、より好ましくは4~12個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択される一価炭化水素基を表し;
・p=1、2、又は3であり;
・q=1、2、又は3、好ましくはq=1であり;
・r=0、1、又は2であり;
・p+q+r=4である)
を有する化合物から選択されるケイ化物;
を含む。
【0039】
本発明はまた、上記に記載のようなナノ粒子を含むコロイド懸濁液も対象とする。ナノ粒子は、有機溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒中に懸濁状態であってよい。溶媒は、
・芳香族化合物、好ましくはトルエン;
・アルカン、好ましくはペンタン;
・エーテル、好ましくはTHF;
・及びそれらの混合物;
からなる群から選択することができる。
【0040】
ナノ粒子はまた、シリコーン油、好ましくは25℃において100,000mPa・秒以下の動粘度を有するシリコーン油中に懸濁状態であってもよい。
ナノ粒子は、以下の方法:
・ナノ粒子及び有機溶媒を含むコロイド懸濁液中にシリコーン油を加えること;及び
・有機溶媒を蒸発させること;
でシリコーン油中に懸濁状態で配置することができる。
【0041】
このコロイド懸濁液は、1~100マイクロモル/mL、好ましくは10~50マイクロモル/mLの範囲の出発金属の濃度を有していてよい。
本発明はまた、上記に記載のような0の酸化状態を有する遷移金属のナノ粒子、又は上記に記載のようなコロイド懸濁液を含む触媒も対象とする。この触媒は、ヒドロシリル化及び/又は脱水素シリル化触媒であり得る。この触媒はまた、アルケン異性化触媒でもあり得る。
【0042】
本発明はまた、上記に記載のような0の酸化状態を有する遷移金属のナノ粒子又は上記に記載のようなコロイド懸濁液の、触媒として、好ましくはヒドロシリル化及び/又は脱水素シリル化及び/又はアルケン異性化触媒としての使用も対象とする。
【0043】
ナノ粒子の製造方法:
本発明はまた、ナノ粒子又はナノ粒子を含むコロイド懸濁液の製造方法も対象とする。この方法は、不活性雰囲気下及び/又は水素下において、周期律表の第8、9、及び10族の遷移金属カルボニルから選択される少なくとも1種類の金属錯体を、溶媒中で少なくとも1種類のシランと混合する工程を含む。
【0044】
シランは金属錯体と反応してケイ化物を形成する。金属錯体は、周期律表の第8、9、及び10族の遷移金属カルボニルから選択され、したがって、これは少なくとも1つのカルボニルリガンドを含む、周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される遷移金属の錯体である。好ましくは、これは、鉄、コバルト、又はニッケルカルボニルであり、その中では、Fe(CO)12、Fe(CO)、Fe(CO)、Co(CO)、Co(CO)12、及びNi(CO)を挙げることができる。有利には、金属錯体は鉄又はコバルトカルボニルから選択される。
【0045】
また、例えば二金属系又は三金属系ナノ粒子を合成することが所望される場合には、幾つかの異なる金属錯体を使用することも可能である。
有利には、シランは、少なくとも1つのSi-C結合及び少なくとも1つのSi-H結合を含む。これは、好ましくは式(II):
SiH(4-q) (II)
(式中、Z及びqは上記と同じ意味を有する)
を有するシランである。
【0046】
本方法において使用されるシランの量は、与えられる金属錯体中に含まれる金属に対して少なくとも0.01モル当量である。この量は、与えられる金属錯体中に含まれる金属に対して0.01~5モル当量の範囲であってよい。好ましくは、この量は、与えられる金属錯体中に含まれる金属に対して0.01~1モル当量、より好ましくは0.05~0.5モル当量の範囲である。シランの量は、ナノ粒子の寸法に影響を与え得る。有利には、50nm以下の平均径を有するナノ粒子、又はかかるナノ粒子を含むコロイド懸濁液を製造するためには、シランの量は、金属錯体中に含まれる金属に対して0.01~1モル当量、好ましくは0.05~0.5モル当量の範囲である。
【0047】
溶媒は有機溶媒であり、好ましくは非プロトン性溶媒である。溶媒は、
・芳香族化合物、好ましくはトルエン;
・アルカン、好ましくはペンタン;
・エーテル、好ましくはTHF;
・及びそれらの混合物;
からなる群から選択することができる。
【0048】
ナノ粒子の製造方法は、不活性雰囲気下及び/又は水素下で行う。「不活性雰囲気」とは、反応条件下で非反応性の気体を意味する。非反応性気体の中では、二原子窒素(dinitrogen:diazote)、及び希ガス(ヘリウム、アルゴン、クリプトン、及びキセノン)を挙げることができる。本方法の一実施形態によれば、本方法は、二原子窒素下又はアルゴン下で行う。
【0049】
本方法の一実施形態によれば、混合工程は、140℃未満、好ましくは10~135℃、10~120℃、又は10~90℃の範囲の温度で行う。ナノ粒子の製造方法の一実施形態によれば、混合工程は室温で行う。
【0050】
ナノ粒子の製造方法の一実施形態によれば、混合工程は、1~10バール、好ましくは1~5バールの範囲の水素圧下で行う。
ナノ粒子の製造方法の一実施形態によれば、混合工程は、少なくとも30分間、好ましくは1~25時間継続する。本方法の一実施形態によれば、混合工程は、少なくとも15時間、好ましくは15~25時間継続する。
【0051】
本発明はまた、上記記載の方法によって得ることができるナノ粒子及び/又はナノ粒子を含むコロイド懸濁液も対象とする。
【0052】
ヒドロシリル化方法:
本発明はまた、
・不飽和化合物Aと;
・少なくとも1つのヒドロゲノシリル官能基を含む化合物B;
との間の反応によってヒドロシリル化及び/又は脱水素シリル化生成物を製造する方法であって、上記に記載のようなナノ粒子及び/又はナノ粒子を含むコロイド懸濁液によって触媒する上記方法も対象とする。
【0053】
本発明による不飽和化合物Aは、芳香環の一部ではない少なくとも1つの不飽和を含む化合物である。化合物Aは、特に少なくとも1つのアルケン官能基及び/又はアルキン官能基を含む。少なくとも1つのアルケン官能基及び/又はアルキン官能基を含む化合物は、ヒドロシリル化反応を遅延し得、更には妨げ得る反応性化学官能基を含まないという点で、本発明による方法において使用することができる。
【0054】
一実施形態によれば、化合物Aは、1以上のアルケン官能基、及び2~40個の炭素原子を含む。それは、N、P、O、S、F、Cl、Br、及びIから選択される1~20個のヘテロ原子を更に含んでいてよい。化合物Aが複数のアルケン官能基を含む場合には、アルケン官能基は共役していてもいなくてもよい。
【0055】
別の実施形態によれば、化合物Aは、1以上のアルキン官能基及び2~40個の炭素原子を含む。それは、N、P、O、S、F、Cl、Br、及びIから選択される1~20個のヘテロ原子を更に含んでいてよい。化合物Aが複数のアルキン官能基を含む場合には、アルキン官能基は共役していてもいなくてもよい。
【0056】
化合物Aは、式(III)又は(IV):
【0057】
【化5】
【0058】
(式中
、R、R、及びRは、互いに独立して、
・水素原子;
・フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素から選択されるハロゲン原子;
・アルキル基;
・シクロアルキル基;
・アリール基;
・ヘテロアリール基;
・ヘテロシクロアルキル基;
・アルコキシ基;
・アリールオキシ基;
・シクロアルコキシ基;
・アルキルシリル基;
・アルコキシシリル基;
・カルボン酸基;
・アルキルエステル基;
・尿素基;
・アミド基;
・スルホンアミド基;
・イミド基;
・シアノ基;
・アルデヒド基;
・アルコール基;
・チオール基;
・アミン基;
・イミン基;
・スルフィド基;
・スルホキシド基;
・スルホン基;
・アジド基;
・アリルホスホネート基;又は
・アリルホスフェート基;
を表し;
これらの基は、それ自体、それらの1つ又は複数のアルキル及び/又はシクロアルキル及び/又はアリール部分において、
・場合によりハロゲン化されている1以上のC~Cアルキル基;
・場合によりハロゲン化されている1以上のC~Cアルコキシ基;
・場合によりハロゲン化されている1以上のアリール基;
・1以上のハロゲン原子;
・1以上のカルボン酸基;
・1以上のエステル基;
・1以上のエーテル基;
・1以上の尿素基;
・1以上のアミド基;
・1以上のスルホンアミド基;
・1以上のイミド基;
・1以上のシアノ基;
・1以上のアルデヒド基;
・1以上のケトン官能基;
・1以上のアルコール基;
・1以上のチオール基;
・1以上のアミン基;
・1以上のイミン基;
・1以上のスルフィド基;
・1以上のスルホキシド基;
・1以上のスルホン基;
・1以上のアジド基;
・1以上のホスフェート基;及び/又は
・1以上のホスホネート基;
で置換されていてよく;
或いは
、R、R、及びRから選択される少なくとも2つの基は、それらが結合する炭素原子と一緒になって1以上のシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、又はヘテロアリール基を形成し、これらの基、即ちシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールは、場合によりハロゲン化されている1以上のC~Cアルキル基;場合によりハロゲン化されている1以上のC~Cアルコキシ基;場合によりハロゲン化されている1以上のアリール基;1以上のハロゲン原子;1以上のカルボン酸基;1以上のエステル基;1以上のエーテル基;1以上の尿素基;1以上のアミド基;1以上のスルホンアミド基;1以上のイミド基;1以上のシアノ基;1以上のアルデヒド基;1以上のケトン官能基;1以上のアルコール基;1以上のチオール基;1以上のアミン基;1以上のイミン基;1以上のスルフィド基;1以上のスルホキシド基;1以上のスルホン基;1以上のアジド基;1以上のホスフェート基;及び/又は1以上のホスホネート基で置換されていてよく;
、R、R、及びRの中の残りの基は、上記で規定したようなもの、及びそれらの混合物である)
を有する化合物から選択することができる。
【0059】
好ましくは、R、R、R、及びRは、互いに独立して、
・水素原子;
・場合によりヒドロキシ基又はハロゲン原子で置換されているC~C16アルキル基;
・場合により、C~Cアルキル基、ハロゲン、それ自体が1以上のハロゲンで置換されているC~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、又は場合によりC~Cアルキル基で1回若しくは2回置換されているアミン官能基で置換されているフェニル;
・ピリジン;
・C~Cアルキルエステル;
・シアノ官能基;
・カルボン酸官能基;
・C~Cアシルオキシ基、特にアセチルオキシ;
・特に窒素上で非置換であるか、又はC~Cアルキル基で1回若しくは2回置換されている第一級アミド基;或いは
・場合によりヒドロキシ又はケトンで置換されているポリエトキシルアルキル基;
を表す。
【0060】
有利には、Rは水素原子であってよく、Rは水素原子とは異なる置換基を表していてよい。式(I)を有する化合物の場合には、R及びRは更に水素原子であってよい。
【0061】
好ましくは、化合物(A)はまた、
・C~Cアルキルアクリレート及びメタクリレート;
・アクリル酸又はメタクリル酸;
・アセチレン;
・アルケン、好ましくはオクテン、より好ましくは1-オクテン;
・非共役ジエン、好ましくはヘキサジエン又はオクタジエン;
・アリルアルコール;
・アリルアミン;
・アリルグリシジルエーテル;
・アリル及びピペリジンエーテル、好ましくは立体障害アリル及びピペリジンエーテル;
・スチレン、好ましくはα-メチルスチレン;
・1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン;
・塩素化アルケン、好ましくは塩化アリル;
・フッ素化アルケン、好ましくは4,4,5,5,6,6,7,7,7-ノナフルオロ-1-ヘプテン;
及びこれらの混合物;
からなる群から選択することもできる。
【0062】
化合物(A)はまた、複数のアルケン官能基、好ましくは2つ又は3つのアルケン官能基を含む化合物から選択することもでき、特に好ましくは以下の化合物:
【0063】
【化6】
【0064】
及びこれらの混合物から選択することができる。
また、本発明の構成においては、1つのアルケン官能基を含む前述の化合物(A)と、複数のアルケン官能基を含む前述の化合物(A)との混合物を与えることも可能である。
【0065】
したがって、化合物(A)はまた、ヒドロシリル化反応の後に得られる化合物を化学的に変性することを可能にする化学官能基も含んでいてよい。
1以上のエチレン性二重結合及び1以上のアセチレン性三重結合の両方を含む化合物のヒドロシリル化もまた、本発明の構成に含まれるとみなされる。
【0066】
好ましい実施形態によれば、不飽和化合物Aは、式(V):
SiO(4-(g+h))/2 (V)
(式中、
・Z基は、同一か又は異なり、2~6個の炭素原子を有する線状又は分岐のアルケニル又はアルキニル基を表し;
・U基は、同一か又は異なり、1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;
・g=1又は2、h=0、1、又は2、g+h=1、2、又は3である)
を有する単位を含み;
場合により、式(VI):
SiO(4-i)/2 (VI)
(式中、Uは上記と同じ意味を有し、i=0、1、2、又は3である)
を有する他の単位を含むオルガノポリシロキサン化合物から選択される。
【0067】
上記の式(V)及び式(VI)において、複数のU基が存在する場合、それらは互いと同一であっても異なっていてもよいことが理解される。式(V)において、記号gは好ましくは1に等しくてよい。
【0068】
式(V)及び式(VI)において、Uは、場合により塩素又はフッ素のような少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている1~8個の炭素原子を有するアルキル基、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基からなる群から選択される1価の基を表していてよい。Uは、有利には、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル、及びフェニルからなる群から選択することができる。
【0069】
かかるオルガノポリシロキサンは、25℃において約10~100,000mPa・秒、一般に25℃において約10~70,000mPa・秒の動粘度を有するオイル、又は25℃において約1,000,000mPa・秒以上の動粘度を有するガムであってよい。
【0070】
本発明に関連する粘度は全て、「ニュートン」と呼ばれる25℃における動粘度の大きさ、即ち、測定される粘度が速度勾配とは無関係であるのに十分に低い剪断速度勾配を有するブルックフィールド粘度計を用いてそれ自体公知の方法で測定される動粘度に対応する。
【0071】
これらのオルガノポリシロキサンは、線状、分岐、又は環状構造を有していてよい。それらの重合度は、好ましくは2~5000の範囲である。
これが線状ポリマーを包含する場合には、線状ポリマーは、シロキシル単位:ZSiO2/2、ZUSiO2/2、及びUSiO2/2からなる群から選択される「D」シロキシル単位、並びにシロキシル単位:ZUSiO1/2、ZUSiO1/2、及びZSiO1/2からなる群から選択される「M」シロキシル単位から実質的に構成される。記号Z及びUは、上記に記載したようなものである。
【0072】
「M」末端単位の例として、トリメチルシロキシ、ジメチルフェニルシロキシ、ジメチルビニルシロキシ、又はジメチルヘキセニルシロキシ基を挙げることができる。
「D」単位の例に関しては、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、メチルビニルシロキシ、メチルブテニルシロキシ、メチルヘキセニルシロキシ、メチルデセニルシロキシ、又はメチルデカジエニルシロキシ基を挙げることができる。
【0073】
本発明による不飽和化合物Aであり得る線状オルガノポリシロキサンの例は、
・ジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン);
・ジメチル-ビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルフェニルシロキサン);
・ジメチル-ビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルビニルシロキサン);及び
・トリメチル-シリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルビニルシロキサン);並びに
・環状ポリ(メチルビニルシロキサン);
である。
【0074】
これも本発明による不飽和化合物Aであり得る環状オルガノポリシロキサンは、例えば、ジアルキルシロキシ、アルキルアリールシロキシ、アルキルビニルシロキシ、アルキルシロキシタイプのものであってよい次式:ZSiO2/2、USiO2/2、又はZUSiO2/2を有する「D」シロキシル単位から構成されるものである。かかる環状オルガノポリシロキサンは、25℃において約10~5,000mPa・秒の粘度を有する。
【0075】
別の実施形態によれば、オルガノポリシロキサン化合物Aとは異なる、分子あたり少なくとも2つのケイ素原子に結合しているC~Cアルケニル基を含む第2のオルガノポリシロキサン化合物(かかる第2のオルガノポリシロキサン化合物は好ましくはジビニルテトラメチルシロキサン(DVTMS)である)を、本発明による方法において与えることが可能である。
【0076】
好ましくは、オルガノポリシロキサン化合物Aは、0.001~30%、好ましくは0.01~10%の範囲のSi-ビニル単位の質量含量を有する。
不飽和化合物Aの他の例として、少なくとも1つのビニル基を含むシリコーン樹脂を挙げることができる。例えば、それらは、以下のシリコーン樹脂:
・MDViQ(ここで、ビニル基は単位D中に含まれる);
・MDViTQ(ここで、ビニル基は単位D中に含まれる);
・MMViQ(ここで、ビニル基は単位Mの一部の中に含まれる);
・MMViTQ(ここで、ビニル基は単位Mの一部の中に含まれる);
・MMViDDViQ(ここで、ビニル基は単位M及びDの一部の中に含まれる);
・並びにこれらの混合物;
(式中、
・MVi=式:(R)(ビニル)SiO1/2を有するシロキシル単位;
・DVi=式:(R)(ビニル)SiO2/2を有するシロキシル単位;
・T=式:(R)SiO3/2を有するシロキシル単位;
・Q=式:SiO4/2を有するシロキシル単位;
・M=式:(R)SiO1/2を有するシロキシル単位;
・D=式:(R)SiO2/2を有するシロキシル単位;であり
R基は、同一か又は異なり、メチル、エチル、プロピル、及び3,3,3-トリフルオロプロピル基のような1~8個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基、並びにキシリル、トリル、及びフェニルのようなアリール基から選択される一価炭化水素基である)
からなる群から選択することができる。好ましくは、R基はメチルである。
【0077】
本発明による方法はまた、少なくとも1つのヒドロゲノシリル官能基、即ちケイ素原子に直接結合している少なくとも1つの水素原子(又は少なくとも1つのSi-H基)を含む化合物Bも与える。
【0078】
好ましくは、少なくとも1つのヒドロゲノシリル官能基を含む化合物Bは、
・ヒドロゲノシラン化合物;
・ケイ素原子に結合している少なくとも1つの水素原子を含むオルガノポリシロキサン化合物、好ましくは分子当たり少なくとも2つのヒドロゲノシリル官能基を含むオルガノポリシロキサン化合物;及び
・末端位置にヒドロゲノシリル官能基を含む有機ポリマー;
からなる群から選択される。
【0079】
好ましくは、化合物(B)のケイ素原子は、1つより多い水素原子に結合している。
化合物(B)はヒドロゲノシラン化合物であってよい。好ましくは、本発明によるヒドロゲノシラン化合物は5個未満のケイ素原子を含む。
【0080】
ヒドロシリル化反応を遅延し得、更には妨げ得る反応性化学官能基を含まないという点で任意のヒドロゲノシラン化合物を本発明方法において使用することができる。
本発明の一実施形態によれば、ヒドロゲノシラン化合物は、式(VII):
【0081】
【化7】
【0082】
(式中、
・Rは、互いに独立して、水素原子;ハロゲン原子、好ましくは塩素;場合により1以上のアリール又はシクロアルキル基、1以上のハロゲン原子、及び/又は1以上のケトン官能基で置換されているアルキル基;場合により1以上のアルキル基及び/又は1以上のハロゲン原子で置換されているシクロアルキル基;或いは、場合により1以上のアルキル基及び/又は1以上のハロゲン原子で置換されているアリール基;を表し;
・R’は、互いに独立して、場合により1以上のアリール又はシクロアルキル基、1以上のハロゲン原子、及び/又は1以上のケトン官能基で置換されているアルキル基;場合により1以上のアルキル基及び/又は1以上のハロゲン原子で置換されているシクロアルキル基;或いは、場合により1以上のアルキル基及び/又は1以上のハロゲン原子で置換されているアリール基;を表し;
・R”は互いに独立して、水素原子;ハロゲン原子、好ましくは塩素;場合により1以上のアリール又はシクロアルキル基及び/又は1以上のハロゲン原子で置換されているアルキル基;場合により1以上のアルキル基及び/又は1以上のハロゲン原子で置換されているシクロアルキル基;或いは、場合により1以上のアルキル基及び/又は1以上のハロゲン原子で置換されているアリール基;を表し;
・m、n、及びoは、0、1、2、又は3に等しい整数であり、m+n+o=3であり;
・R、R’及びR”は同一か又は異なる)
を有する化合物、又はそれらの混合物から選択することができる。
【0083】
ヒドロゲノシラン化合物は、式(VII)(式中、記号m=0、n=0、及びo=3であり、R”は、水素原子、ハロゲン原子、好ましくは塩素、C~C線状又は分岐アルキル基,或いはアリール基を表す)を有する化合物から選択することができる。
【0084】
ヒドロゲノシランの中では、トリス(トリメチルシリル)シラン、フェニルシラン、及びトリエトキシシランを挙げることができる。
或いは、ヒドロゲノシラン化合物は、式(VII)(式中、記号m=3、n=0、及びo=0であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、好ましくは塩素、C~C線状又は分岐アルキル基、或いはアリール基を表す)を有する化合物から選択することができる。
【0085】
化合物Bはまた、ケイ素原子に結合している少なくとも1個の水素原子を含むオルガノポリシロキサン化合物であってもよい。オルガノポリシロキサン化合物は、少なくとも2個のケイ素原子、好ましくは少なくとも3個又はそれ以上のケイ素原子を含む。
【0086】
かかる化合物Bは、有利には、式(VIII):
SiO(4-(d+e))/2 (VIII)
(式中、
・U基は、同一か又は異なり、1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;
・d=1又は2、e=0、1、又は2、d+e=1、2、又は3である)
を有する少なくとも1つの単位、及び場合により式(IX):
SiO(4-f)/2 (IX)
(式中、Uは上記と同じ意味を有し、f=0、1、2、又は3である)
を有する他の単位を含むオルガノポリシロキサンであってよい。
【0087】
上記の式(VIII)及び式(IX)において、複数のU基が存在する場合には、それらは互いに同一であっても異なっていてもよいことが理解される。式(VIII)において、記号dは好ましくは1に等しい。更に、式(VIII)及び式(IX)において、Uは、場合により塩素又はフッ素のような少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている1~8個の炭素原子を有するアルキル基、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基からなる群から選択される1価の基を表し得る。Uは、有利にはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル、及びフェニルからなる群から選択することができる。
【0088】
これらのオルガノポリシロキサンは、線状、分岐、又は環状構造を有していてよい。重合度は好ましくは2以上である。より一般的には、それは5,000未満である。
これが線状ポリマーを包含する場合には、線状ポリマーは、
・次式:USiO2/2又はUHSiO2/2を有する単位から選択される「D」シロキシル単位、及び
・次式:USiO1/2又はUHSiO1/2を有する単位から選択される「M」シロキシル単位;
から実質的に構成される。
【0089】
これらの線状オルガノポリシロキサンは、25℃において約1~100,000mPa・秒、より一般的には25℃において約10~5,000mPa・秒の動粘度を有するオイルであってよい。
【0090】
ケイ素原子に結合している少なくとも1つの水素原子を含む本発明による化合物Bであり得るオルガノポリシロキサンの例は:
・ヒドロゲノジメチルシリル(hydrogenodimethylsilyl:hydrogenodimethylsilyles)末端を有するポリ(ジメチルシロキサン);
・トリメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルヒドロゲノシロキサン(methylhydrogenosiloxane));
・ヒドロゲノジメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルヒドロゲノシロキサン);
・トリメチルシリル末端を有するポリ(メチルヒドロゲノシロキサン);及び
・環状ポリ(メチルヒドロゲノシロキサン);
である。
【0091】
これが環状オルガノポリシロキサンを包含する場合には、環状オルガノポリシロキサンは、ジアルキルシロキシ又はアルキルアリールシロキシタイプのものであってよい、次式:USiO2/2及びUHSiO2/2の「D」シロキシル単位、又はUHSiO2/2単位のみから構成される。次に、それらは約1~5,000mPa・秒の粘度を有する。
【0092】
好ましくは、化合物Bは、分子当たり少なくとも2つ、好ましくは3つのヒドロゲノシリル官能基(Si-H)を含むオルガノポリシロキサン化合物である。
次の化合物は、オルガノヒドロゲノポリシロキサン(organohydrogenopolysiloxane)化合物Bに関して本発明のために特に好適である。
【0093】
【化8】
【0094】
(式中、a、b、c、d、及びeは、下記に定義する通りである:
・式S1を有するポリマーにおいては、
・0≦a≦150、好ましくは0≦a≦100、より好ましくは0≦a≦20であり;
・1≦b≦90、好ましくは10≦b≦80、より好ましくは30≦b≦70であり;
・式S2を有するポリマーにおいては、
・0≦c≦15であり;
・式S3を有するポリマーにおいては、
・5≦d≦200、好ましくは20≦d≦100、及び2≦e≦90、好ましくは10≦e≦70である)
特に、本発明のために好適なオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、式S1(式中、a=0)を有する化合物である。
【0095】
好ましくは、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、0.2~91%、好ましくは0.2~50%の範囲のSiH単位の質量含量を有する。
最後に、化合物Bは、末端位置にヒドロゲノシリル官能基を含む有機ポリマーであってよい。有機ポリマーは,例えば、ポリオキソアルキレン、飽和炭化水素ポリマー,又はポリ(メタ)アクリレートであってよい。末端位置に反応性官能基を含む有機ポリマーは、特に米国特許出願第2009/0182099号及びUS-2009/0182091号に記載されている。
【0096】
本発明の特定の実施形態によれば、不飽和化合物A及び少なくとも1つのヒドロゲノシリル官能基を含む化合物Bは、一方では少なくとも1つのアルケン官能基及び/又はアルキン官能基を含み、他方ではケイ素原子に結合している少なくとも1つの水素原子を含む、単一の同じ化合物であることが可能である。次に、この化合物は「二官能性」とみなすことができ、それ自体でヒドロシリル化反応によって反応しやすい。したがって、本発明は、二官能性化合物をそれ自体でヒドロシリル化する方法にも関し、かかる二官能性化合物は、一方では少なくとも1つのアルケン官能基及び/又はアルキン官能基を含み、他方では少なくとも1つのケイ素原子及びケイ素原子に結合している少なくとも1つの水素原子を含み、かかる方法は、上記に記載のようなナノ粒子及び/又はナノ粒子を含むコロイド懸濁液によって触媒されることを特徴とする。
【0097】
二官能性化合物であってよいオルガノポリシロキサンの例は、
・ジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-ヒドロゲノメチルシロキサン(hydrogenomethylsiloxane)-co-ビニルメチルシロキサン);
・ジメチルヒドロゲノシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-ヒドロゲノメチルシロキサン-co-ビニルメチルシロキサン);
である。
【0098】
これが、不飽和化合物A、及び少なくとも1つのヒドロゲノシリル官能基を含む化合物Bを与えることを包含する場合には、当業者は二官能性化合物を与えることも意図することを理解する。
【0099】
本発明によるヒドロシリル化方法は、10~150℃の範囲の温度において行うことができる。一実施形態によれば、ヒドロシリル化方法は80~140℃の範囲の温度において行う。別の実施形態によれば、ヒドロシリル化方法は15~60℃の範囲の温度において行う。一実施形態によれば、ヒドロシリル化方法は室温において行う。
【0100】
「室温」とは、本発明においては15~25℃の範囲の温度を意味する。
本発明によるヒドロシリル化方法は、不活性雰囲気下、例えば二原子窒素下で行うことができる。
【0101】
本発明によるヒドロシリル化方法は、UV照射下で行うことができる。
本発明方法は、溶媒の存在下又は不在下で行うことができる。好ましい実施形態によれば、本発明方法は溶媒の不在下で行う。本発明の代替の実施形態によれば、試薬の1つ、例えば不飽和化合物Aは、溶媒の役割を果たすことができる。
【0102】
本発明による方法においては、化合物Aと化合物Bとの相対量は、不飽和基と所望のヒドロゲノシリル官能基との反応速度を確実にするように制御することができる。化合物Aのアルケン及びアルキン官能基に対する化合物Bのヒドロゲノシリル官能基のモル比Rは、0.1:5~5:0.1、好ましくは0.5:3~3:0.5、より好ましくは1:2~2:1の範囲である。
【0103】
本発明方法の一実施形態によれば、化合物Aのアルケン及びアルキン官能基に対する化合物Bのヒドロゲノシリル官能基のモル比Rは、厳密に1より大きい。つまり、ヒドロゲノシリル官能基は不飽和官能基に対して過剰である。この場合には、ヒドロシリル化方法は部分的であるとみなされる。これは、部分官能化と呼ぶこともできる。部分官能化は、例えば、ヒドロゲノシリル官能基及びエポキシ官能基を有するシリコーン油を得るために使用することができる。
【0104】
別の実施形態によれば、化合物Aのアルケン及びアルキン官能基に対する化合物Bのヒドロゲノシリル官能基のモル比は1以下である。つまり、ヒドロゲノシリル官能基は、不飽和官能基に関して不足している。これは、不飽和化合物Aが溶媒の役割を果たす場合である。
【0105】
有利には、本発明方法においては、ナノ粒子に由来する金属のモル濃度は、不飽和化合物Aが有する不飽和基の総モル数に対して、0.001%~10%、好ましくは0.01%~5%、より好ましくは0.05%~3%である。
【0106】
別の実施形態によれば、0の酸化状態を有する遷移金属のナノ粒子は、Fe、Co、及びNiから選択される少なくとも1種類の金属を含み、本発明方法においては、白金、パラジウム、ルテニウム、又はロジウムベースの化合物は与えられない。
【0107】
本発明の好ましい実施形態によれば、与えられる化合物A及びBは、上記で規定したようなオルガノポリシロキサンから選択される。この場合には、三次元のネットワークが形成され、これにより組成物の硬化がもたらされる。架橋は、組成物を形成する媒体における漸進的な物理的変化を意味する。その結果、本発明方法を使用して、エラストマー、ゲル、フォームなどを得ることができる。この場合には、架橋シリコーン材料Yが得られる。「架橋シリコーン材料」とは、少なくとも2つの不飽和結合を有するオルガノポリシロキサン、及び少なくとも3つのヒドロゲノシリル単位を有するオルガノポリシロキサンを含む組成物を架橋及び/又は硬化することによって得られるシリコーン基部を有する任意の生成物を意味する。架橋シリコーン材料Yは、例えばエラストマー、ゲル、又はフォームであってよい。
【0108】
更に、化合物A及びBが上記で規定したようなオルガノポリシロキサンから選択される本発明方法のこの好ましい実施形態によれば、通常の機能性添加剤は、シリコーン組成物中で与えることができる。通常の機能性添加剤の群としては、
・フィラー;
・接着促進剤;
・ヒドロシリル化反応の抑制剤又は遅延剤;
・接着調整剤;
・シリコーン樹脂;
・コンシステンシーを増加させる添加剤;
・顔料;及び
・耐熱性、耐油性、又は耐火性のための添加剤、例えば金属酸化物;
を挙げることができる。
【0109】
場合により与えられるフィラーは、より好ましくは鉱物系フィラーである。それらは、特にはケイ酸質であってよい。ケイ酸質材料を包含する場合には、それらは、強化又は半強化フィラーの役割を果たすことができる。強化ケイ酸質フィラーは、コロイダルシリカ、焼成及び沈降シリカ粉末、又はそれらの混合物から選択される。これらの粉末は、一般に0.1μm(マイクロメートル)未満の平均粒径、及び30m/gより大きく、好ましくは30~350m/gの範囲のBET比表面積を有する。珪藻土又は粉砕石英のような半強化ケイ酸質装填物を使用することもできる。非ケイ酸質鉱物系材料に関しては、それらは半強化又は充填鉱物系フィラーとして存在させることができる。単独又は混合物で使用することができるこれらの非ケイ酸質フィラーの例は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、水和アルミナ、膨張バーミキュライト、非膨張バーミキュライト、場合により脂肪酸、酸化亜鉛、マイカ、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム、及び消石灰で表面処理された炭酸カルシウムである。これらのフィラーは、一般に0.001~300μm(マイクロメートル)の範囲の粒度分布、及び100m/g未満のBET表面積を有する。実際的であるが非限定的な方法においては、使用するフィラーは、石英とシリカの混合物であってよい。装填物は、任意の好適な製品によって処理することができる。重量の観点からは、組成物の全構成成分に対して1重量%~50重量%、好ましくは1重量%~40重量%の範囲の量のフィラーを与えることが好ましい。
【0110】
接着促進剤は、シリコーン組成物中において広く使用されている。有利には、本発明方法においては、
・次の一般式(D1):
【0111】
【化9】
【0112】
(式中、
・R、R、Rは、それらの間で同一か又は異なる水素又は炭化水素基であり、水素原子、C~Cの線状又は分岐アルキル、又は場合により少なくとも1つのC~Cアルキルで置換されているフェニルを表し;
・Uは、C~Cの線状又は分岐アルキレンであり;
・Wは原子価結合であり;
・R及びRは、同一か又は異なる基であり、C~Cの線状又は分岐アルキルを表し、
・x’=0又は1であり;
・x=0~2である)
を有する生成物から選択される分子あたり少なくとも1つのC~Cアルケニル基を含むアルコキシルオルガノシラン:
・(a)次の一般式:
【0113】
【化10】
【0114】
(式中、
・Rは、C~Cの線状又は分岐のアルキル基であり;
・Rは、C~Cの線状又は分岐のアルキル基であり;
・yは、0、1、2、又は3に等しく;
・Xは、次式:
【0115】
【化11】
【0116】
(ここで、
・E及びDは、C~Cの線状又は分岐アルキルから選択される同一か又は異なる基であり;
・zは0又は1に等しく;
・R及びR又はR10は、水素原子或いはC~Cの線状又は分岐アルキルを表す同一か又は異なる基であり;
・RとR又はR10は、或いは、一緒になって、及びエポキシを形成する2つの炭素と共に5~7員を有するアルキル環を形成してもよい)
によって規定される)
を有する生成物(D.2a);或いは
(b)(i)式(D2bi):
【0117】
【化12】
【0118】
(式中、
・Xは、式(D.2a)に関して上記で規定したような基であり;
・Gは、場合により少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている、1~8個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基、及び6~12個の間の炭素原子を含むアリール基から選択される1価炭化水素基であり;
・p=1又は2であり;
・q=0、1、又は2であり;
・p+q=1、2、又は3である)
を有する少なくとも1つのシロキシル単位:及び
(ii)場合により式(D.2bii):
【0119】
【化13】
【0120】
(式中、
・Gは上記と同じ意味を有し;
・rは、0、1、2、又は3に等しい)
を有する少なくとも1つのシロキシル単位;
を含むエポキシ官能性ポリジオルガノシロキサンによって形成される生成物(D.2b);
から選択される、少なくとも1つのエポキシ基を含む有機ケイ素化合物;
・少なくとも1つのヒドロゲノシリル官能基及び少なくとも1つのエポキシ基を含む有機ケイ素化合物;並びに
・一般式:
M(OJ)
(式中、
Mは、Ti、Zr、Ge、Li、Mn、Fe、Al、及びMg、又はそれらの混合物から形成される群から選択され;
n=Mの原子価であり、J=C~Cの線状又は分岐アルキルであり、
好ましくは、Mは、次のリスト:Ti、Zr、Ge、Li、又はMnから選択され、より好ましくは、金属Mはチタンであり、これは、例えばブトキシタイプのアルコキシ基と会合させることができる)
を有する金属キレートM及び/又は金属アルコキシド;
からなる群から選択される1種類以上の接着促進剤を与えることができる。
【0121】
シリコーン樹脂は、市販されている周知の分岐オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーである。それらは、それらの構造中に、式:RSiO1/2(M単位)、RSiO2/2(D単位)、RSiO3/2(T単位)、及びSiO4/2(Q単位)を有するものから選択される少なくとも2つの異なる単位を有し、これらの単位の少なくとも1つはT又はQ単位である。
【0122】
R基は、同一か又は異なり、C~Cの線状又は分岐アルキル基、ヒドロキシル、フェニル、3,3,3-トリフルオロプロピルから選択される。例えばアルキル基としては、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、及びn-ヘキシル基を挙げることができる。
【0123】
分岐オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーの例としては、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂、及びMDT樹脂(M、D、及び/又はT単位はヒドロキシル官能基を有し得る)を挙げることができる。特に好適な樹脂の例としては、0.2~10重量%の範囲のヒドロキシル基の重量含量を有するヒドロキシル化MDQ樹脂を挙げることができる。
【0124】
組成物:
本発明はまた、
・上記で規定したような少なくとも1種類の不飽和化合物A;
・上記で規定したような少なくとも1つのヒドロゲノシリル官能基を含む少なくとも1種類の化合物B;及び
・上記で規定したようなナノ粒子又はナノ粒子を含むコロイド懸濁液;
を含む組成物Xも対象とする。
【0125】
本発明の別の実施形態によれば、組成物Xは、
・分子あたり少なくとも2つのケイ素原子に結合しているC~Cアルケニル基を含み、好ましくは、式(V):
SiO(4-(g+h))/2 (V)
(式中、
・Z基は、同一か又は異なり、2~6個の炭素原子を有する線状又は分岐のアルケニル基を表し;
・U基は、同一か又は異なり、1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;
・g=1又は2、h=0、1、又は2、g+h=1、2、又は3である)
を有する単位を含み;
場合により、式(VI):
UiSiO(4-i)/2 (VI)
(式中、Uは上記と同じ意味を有し、i=0、1、2、又は3である)
を有する他の単位を含むオルガノポリシロキサン化合物から選択される少なくとも1種類の不飽和化合物A:
・分子あたり少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの、同一か又は異なるケイ素原子に結合している水素原子を含む少なくとも1種類のオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物B;及び
・上記で規定したようなナノ粒子又はナノ粒子を含むコロイド懸濁液;
を含む架橋性組成物である。
【0126】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による組成物Xは架橋性組成物であり、化合物Bは、式(VIII):
SiO(4-(d+e))/2 (VIII)
(式中、
・U基は、同一か又は異なり、1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;
・d=1又は2、e=0、1、又は2、d+e=1、2、又は3である)
を有する少なくとも1つの単位;及び場合により、
式(IX):
SiO(4-f)/2 (IX)
(式中、Uは上記と同じ意味を有し、f=0、1、2、又は3である)
を有する他の単位;を含むオルガノポリシロキサンから選択される。
【0127】
本発明による組成物Xの、ナノ粒子に由来する金属のモル濃度は、不飽和化合物Aが有する不飽和基の総モル数に対して0.01%~15%、好ましくは0.05%~10%、より好ましくは0.1%~4%の範囲である。
【0128】
一実施形態によれば、本発明による組成物Xは、白金、パラジウム、ルテニウム、又はロジウムベースの触媒を含まない。触媒を「含まない」とは、本発明による組成物Xが、組成物の総重量に対して10-1重量%未満、好ましくは10-2重量%未満、より好ましくは10-3重量%未満の白金、パラジウム、ルテニウム、又はロジウムベースの触媒を含むことを意味する。
【0129】
特定の実施形態によれば、本発明による組成物Xはまた、シリコーン組成物中に1種類以上の通常の機能性添加剤も含む。通常の機能性添加剤の群としては、
・フィラー;
・接着促進剤;
・ヒドロシリル化反応の抑制剤又は遅延剤;
・接着調整剤;
・シリコーン樹脂;
・コンシステンシーを増加させる添加剤;
・顔料;及び
・耐熱性、耐油性、又は耐火性のための添加剤、例えば金属酸化物;
を挙げることができる。
【0130】
本発明による組成物Xは特に、不活性雰囲気下において、まず、反応媒体中にナノ粒子又はナノ粒子を含むコロイド懸濁液を導入し、次に撹拌下で化合物Aを加えることによって得ることができる。最後に、化合物Bを導入し、必要であれば、反応温度に到達させるために混合物の温度を上昇させる。
【0131】
本発明はまた、
・分子あたり少なくとも2つの、ケイ素原子に結合しているC~Cアルケニル基を含み、式(V):
SiO(4-(g+h))/2 (V)
(式中、
・Z基は、同一か又は異なり、2~6個の炭素原子を有する線状又は分岐のアルケニル又はアルキニル基を表し;
・U基は、同一か又は異なり、1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;
・g=1又は2、h=0、1、又は2、g+h=1、2、又は3である)
を有する単位を含み;
場合により、式(VI):
SiO(4-i)/2 (VI)
(式中、Uは上記と同じ意味を有し、i=0、1、2、又は3である)
を有する他の単位を含むオルガノポリシロキサン化合物から選択される少なくとも1種類の不飽和化合物A:
・分子あたり少なくとも2つの、同一か又は異なるケイ素原子に結合している水素原子を含む少なくとも1種類のオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物B;及び
・上記で規定したようなナノ粒子、又はナノ粒子を含むコロイド懸濁液;
を含む架橋性組成物Xを、15℃~150℃の範囲の温度に加熱することによって得られる架橋性シリコーン材料Yも対象とする。
【実施例
【0132】
本発明は、非限定的な実施形態においてより詳細に示される。
実施例1:0の酸化状態を有するFeナノ粒子の合成
不活性雰囲気下において、276.9mg(0.55ミリモル)のFe(CO)12及び50mLの乾燥脱気トルエンを、マグネチックスターラーバーを備えたFisher-Porter反応器に加える。撹拌を維持しながら、96μL(0.5ミリモル)のn-オクチルシランを溶液に加える。全体を3バールの水素下で加圧し、80℃に24時間加熱する。冷却後、溶液をSchlenk中に移して、アルゴン下に保持する。
【0133】
HAADF-STEM(高角度環状暗視野イメージングモードにおける走査透過型電子顕微鏡)によって、鉄ナノ粒子の平均径を測定した。図1Aは、鉄ナノ粒子を含むコロイド溶液のHAADF-STEM写真を示す。図1Bは、それらの直径にしたがうナノ粒子の数を示す。ナノ粒子の平均径は、2.6nm±0.7nmである。
【0134】
SiO上に含浸した鉄ナノ粒子を赤外分光法によって分析し、使用した前駆物質(Fe(CO)12)と比較した。図2は得られた結果を示す。これらの結果は、ナノ粒子中にはもはや前駆物質が存在しないこと、及びカルボニルリガンドがナノ粒子の鉄に十分に配位していることを示す。更に、2,800~3,000cm-1の間のピークは、ナノ粒子上に少なくとも1種類のケイ化物が存在していることを示す。
【0135】
ナノ粒子はまた、NMRによって特性分析した。図3は、鉄ナノ粒子及び使用した前駆物質(Fe(CO)12)の180~230ppmの間の13C-NMRスペクトルを示す。これらの結果は、前駆物質が変化すること、及びカルボニルリガンドがナノ粒子の鉄に十分に配位していることを示す。図4は、鉄ナノ粒子及びn-オクチルシランのH-NMRスペクトルを示す。これらの結果は、3.6ppmにおけるピークがもはや視認できないので、n-オクチルシランが実際にFe(CO)12と反応したことを示す。
【0136】
ナノ粒子はまた、Mossbauer分光法によって特性分析した。図9は、得られたMossbauerスペクトルを示す。このスペクトルは、得られたナノ粒子が0の酸化状態を有する鉄、少なくとも1種類のケイ化物を含むこと、及びそれらが磁気的寄与を有さず、したがってそれらは常磁性でないことを示す。
【0137】
また、上記の操作手順を用いて、温度及び鉄前駆物質を変化させることによってナノ粒子を合成した(表1参照)。
【0138】
比較例1:COリガンドを有しないFeナノ粒子の合成
カルボニルリガンドを含まない鉄ナノ粒子も合成した。これらのナノ粒子は、Fe(C及び3バールのCOを用いて、120℃において上記の操作手順にしたがって合成した。CO雰囲気にもかかわらず、得られたナノ粒子はカルボニルリガンドを含んでいない。
【0139】
比較例2:140℃におけるFeナノ粒子の合成
また、140℃において実施例1の操作手順にしたがって鉄ナノ粒子を合成した。SiO上に含浸した鉄ナノ粒子を赤外分光法によって分析した。得られたスペクトルは、140℃において製造した鉄ナノ粒子はカルボニルリガンドを含んでいないことを示す。
【0140】
実施例2:0の酸化状態を有するCoナノ粒子の合成
不活性雰囲気下において、188mg(0.55ミリモル)のCo(CO)及び50mLの乾燥脱気トルエンを、マグネチックスターラーバーを備えたFisher-Porter反応器に加える。撹拌を維持しながら、64μL(0.33ミリモル)のn-オクチルシランを溶液に加える。全体を3バールの水素下で加圧し、80℃に24時間加熱する。冷却後、溶液をSchlenkに移して、アルゴン下に保持する。
【0141】
HAADF-STEMによって、コバルトナノ粒子の平均径を測定した。図5Aは、コバルトナノ粒子を含むコロイド溶液のHAADF-STEM写真を示す。図5Bは、それらの直径にしたがうナノ粒子の数を示す。ナノ粒子の平均径は、1.6nm±0.3nmである。
【0142】
SiO上に含浸したコバルトナノ粒子の赤外スペクトルをとり、使用した前駆物質(Co(CO))のものと比較した。図6は得られた結果を示す。これらの結果は、もはや前駆物質が存在しないこと、及びナノ粒子のコバルトに配位したカルボニルリガンドが実際に得られることを示す。
【0143】
ナノ粒子はまた、NMRによって特性分析した。図7は、コバルトナノ粒子及び使用した前駆物質(Co(CO))の180~230ppmの間の13C-NMRスペクトルを示す。これらの結果は、もはや前駆物質が存在せず、カルボニルリガンドがナノ粒子のコバルトに十分に配位していることを示す。図4は、コバルトナノ粒子及びn-オクチルシランのH-NMRスペクトルを示す。これらの結果は、3.6ppmにおけるピークがもはや視認できないので、n-オクチルシランが実際にCo(CO)と反応したことを示す。
【0144】
また、上記の操作手順を用い、温度及び雰囲気を変化させることによってナノ粒子を合成した(表2参照)。
【0145】
実施例3:合成したナノ粒子を用いるヒドロシリル化反応
不活性雰囲気下において、0.68mL(2.5ミリモル)のMD’M(M=(CHSiO1/2;D’=(CH)HSiO2/2)、0.77mL(2.5ミリモル)の1-オクテン、及び0.25mL(1.1ミリモル)のドデカンを、マグネティックスターラーバーを備えたSchlenkに加える。この混合物に、0.05ミリモルのFe(試験1~4、表1)又は0.033ミリモルのCo(試験5~8、表2)を含むトルエン中のコロイド懸濁液1.5mLを加える。得られた反応混合物を、Feを有する触媒の場合には120℃において、又はCoを有する触媒を使用する場合には室温において24時間撹拌する。反応の変化は、GC(ガスクロマトグラフィー)によって制御する。結果を表1及び表2に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
これらの結果は、実施例1にしたがって合成された鉄ナノ粒子が、MD’Mと1-オクテンとの間のヒドロシリル化反応を触媒することを示す(試験1~3)。脱水素シリル化生成物、及び1-オクテンの異性化生成物も観察される。
【0148】
これらの結果はまた、COリガンドを含まない鉄ナノ粒子が、ヒドロシリル化反応を触媒しないことを示す(試験4及び4’)。ナノ粒子上に少なくとも1つのリガンドCOが存在することが必須である。
【0149】
【表2】
【0150】
これらの結果は、実施例2にしたがって合成されたコバルトナノ粒子が、MD’Mと1-オクテンとの間のヒドロシリル化反応を触媒することを示す。脱水素シリル化生成物、及び1-オクテンの異性化生成物も観察される。
【0151】
これらの結果はまた、ナノ粒子を不活性雰囲気下又は水素圧下で合成することができることも示す(試験8)。
【0152】
実施例4:より実際的な量及び別のアルケンを用いたヒドロシリル化反応
冷媒を装備した三つ口フラスコ内に、窒素フラッシュ下で、2gのMD’M、アルケン、ドデカン(GC内部標準試料)、及び適当な場合にはトルエン(溶媒)を導入する。次に、コバルトナノ粒子のコロイド懸濁液(22マイクロモル/mLの金属前駆物質濃度を用い、試験8、表2の条件を用いて実施例2にしたがって合成)を、室温において撹拌下で加える。次に、H-NMR及びGCによって反応粗生成物をを分析する。結果を表3に示す。
【0153】
【表3】
【0154】
試験9及び10について、H-NMR分析は、ヒドロシリル化生成物が得られることを示す。これらの結果は、実施例2にしたがって合成されたコバルトナノ粒子が、MD’Mとアリルグリシジルエーテルとの間のヒドロシリル化反応を触媒することを示す。これらの結果はまた、不飽和化合物が溶媒の役割を果たすことができることも示す。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1]
・周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される0の酸化状態を有する少なくとも1種類の遷移金属;及び
・少なくとも1つのカルボニルリガンド;
を含むナノ粒子。
[2]
前記金属が、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される、[1]に記載のナノ粒子。
[3]
ケイ化物、好ましくは式(I):
SiH (I)
(式中、
・1つ又は複数の記号Yは、同一か又は異なり、周期律表の第8、9、及び10族の金属から選択される金属、好ましくはFe、Co、及びNiから選択される金属を表し;
・1つ又は複数の記号Z は、同一か又は異なり、場合によりヘテロ原子又はヘテロ原子を含む基で置換されている、1~18個(端点を含む)の炭素原子を有する一価炭化水素基、好ましくは1~18個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基からなる群から選択され、より好ましくは4~12個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択される一価炭化水素基を表し;
・p=1、2、又は3であり;
・q=1、2、又は3、好ましくはq=1であり;
・r=0、1、又は2であり;
・p+q+r=4である)
を有する化合物から選択されるケイ化物を更に含む、[1]又は[2]に記載のナノ粒子。
[4]
10nm以下の平均径を有する、[1]~[3]のいずれかに記載のナノ粒子。
[5]
[1]~[4]のいずれかに記載のナノ粒子を含むコロイド懸濁液。
[6]
[1]~[4]のいずれかに記載のナノ粒子、又は[5]に記載のコロイド懸濁液を含む触媒。
[7]
ヒドロシリル化及び/又は脱水素シリル化触媒である、[6]に記載の触媒。
[8]
不活性雰囲気下及び/又は水素下において、周期律表の第8、9、及び10族の遷移金属カルボニルから選択される少なくとも1種類の金属錯体を、溶媒中で少なくとも1種類のシランと混合する工程を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のナノ粒子又は[5]に記載のコロイド懸濁液の製造方法。
[9]
前記シランが式(II):
SiH (4-q) (II)
(式中、
・1つ又は複数の記号Z は、同一か又は異なり、場合によりヘテロ原子又はヘテロ原子を含む基で置換されている、1~18個(端点を含む)の炭素原子を有する一価炭化水素基、好ましくは1~18個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基からなる群から選択され、より好ましくは4~12個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択される一価炭化水素基を表し;
q=1、2、又は3、好ましくはq=1である)
を有する化合物である、[8]に記載の方法。
[10]
前記混合する工程を、10~135℃、好ましくは10~120℃の範囲の温度で行う、[8]又は[9]に記載の方法。
[11]
・不飽和化合物Aと;
・少なくとも一つのヒドロゲノシリル官能基を有する化合物Bと;
の間の反応によってヒドロシリル化及び/又は脱水素シリル化生成物を製造する方法であって、
[1]~[4]のいずれかに記載のナノ粒子又は[5]に記載のコロイド懸濁液によって触媒する上記方法。
[12]
・少なくとも1種類の不飽和化合物A;
・少なくとも1つのヒドロゲノシリル官能基を含む少なくとも1種類の化合物B;及び
・[1]~[4]のいずれかに記載のナノ粒子又は[5]に記載のコロイド懸濁液;
を含む組成物X。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9