(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】LAG-3に特異的に結合する単クローン抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220113BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220113BHJP
A61K 49/16 20060101ALI20220113BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220113BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20220113BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220113BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220113BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220113BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220113BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220113BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220113BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220113BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220113BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220113BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
C12N15/13
A61K39/395 N
A61K49/16
A61P35/00
C07K14/725
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2020561758
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 KR2019007877
(87)【国際公開番号】W WO2020005003
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】10-2018-0075581
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519039227
【氏名又は名称】ワイ-バイオロジクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サン・ピル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジ-ヨン・シン
(72)【発明者】
【氏名】スンハ・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユンソン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ウン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ス・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジャ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ギスン・ベク
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ホ・ヨ
(72)【発明者】
【氏名】ユン-チュル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ブム-チャン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ウ・パク
【審査官】田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-516489(JP,A)
【文献】特表2018-505674(JP,A)
【文献】特表2012-500006(JP,A)
【文献】特表2019-513009(JP,A)
【文献】特表2018-536392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C07K 16/28
C12P 21/08
C12N 15/63
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C07K 16/46
C12N 15/62
C07K 19/00
C07K 14/725
A61P 35/00
A61K 39/395
A61K 49/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1と記載された重鎖CDR1;配列番号2と記載された重鎖CDR2;及び配列番号3と記載された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号8と記載された軽鎖CDR1;配列番号9と記載された軽鎖CDR2;及び配列番号10と記載された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、を含む
、LAG-3(Lymphocyte-activation gene 3)に特異的に結合する単クローン抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号27と記載された重鎖CDR1;配列番号2と記載された重鎖CDR2;及び配列番号3と記載された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号53と記載された軽鎖CDR1;配列番号9と記載された軽鎖CDR2;及び配列番号33と記載された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、を含む
、LAG-3(Lymphocyte-activation gene 3)に特異的に結合する単クローン抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
配列番号1と記載された重鎖CDR1;配列番号2と記載された重鎖CDR2;及び配列番号3と記載された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号57と記載された軽鎖CDR1;配列番号9と記載された軽鎖CDR2;及び配列番号60と記載された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、を含む
、LAG-3(Lymphocyte-activation gene 3)に特異的に結合する単クローン抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記単クローン抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号114のアミノ酸配列と記載された重鎖可変領域、及び配列番号115のアミノ酸配列と記載された軽鎖可変領域を含む、請求
項1に記載のLAG-3に特異的に結合する単クローン抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記単クローン抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号116のアミノ酸配列と記載された重鎖可変領域、及び配列番号117のアミノ酸配列と記載された軽鎖可変領域を含む、請求
項2に記載のLAG-3に特異的に結合する単クローン抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記単クローン抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号118のアミノ酸配列と記載された重鎖可変領域、及び配列番号119のアミノ酸配列と記載された軽鎖可変領域を含む、請求
項3に記載のLAG-3に特異的に結合する単クローン抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記単クローン抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメリック抗体及び組換え抗体からなる群から選択されることを特徴とする請求項1ない
し6のうちいずれか1項に記載の単クローン抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗原結合断片は、LAG-3と結合するscFv(single chain variable fragment)、dsFv、Fab、F(ab')及びF(ab')
2からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1ない
し6のうちいずれか1項に記載の単クローン抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
請求項1ない
し6のうちいずれか1項に記載の単クローン抗体またはその抗原結合断片の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコーディングするポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求
項9に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項11】
請求
項10に記載の発現ベクターによって形質転換された
ヒトを除いた形質転換体。
【請求項12】
(a)請求
項11に記載の形質転換体を培養して培養液を製造する段階と、
(b)前記(a)段階の培養液から請求項1ない
し6のうち、いずれか1項に記載の単クローン抗体またはその抗原結合断片を精製する段階と、を含む、LAG-3(Lymphocyte-activation gene 3)に特異的に結合する単クローン抗体またはその抗原結合断片を製造する方法。
【請求項13】
請求項1ない
し6のうち、いずれか1項に記載の単クローン抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む、免疫反応を刺激するための組成物。
【請求項14】
請求項1ない
し6のうち、いずれか1項に記載の単クローン抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む、癌治療用薬学組成物。
【請求項15】
前記組成物は、免疫刺激性抗体をさらに含むことを特徴とする請求
項14に記載の癌治療用薬学組成物。
【請求項16】
前記免疫刺激性抗体は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体及び抗CTLA-4抗体からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求
項15に記載の癌治療用薬学組成物。
【請求項17】
前記癌は、肝癌、乳房癌、腎臓癌、脳腫瘍、胆道癌、食道癌、胃癌、大膓癌、直膓癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、肺癌、結腸癌、子宮頸部癌、甲状腺癌、膀胱癌、骨癌、黒色腫、中皮腫、膵膓癌、卵巣癌、前立腺癌、肉腫、皮膚癌、精巣腫、白血病、ホジキン(Hodgkin)疾患、リンパ腫及び多発性骨髄腫(血液癌)で構成される群から選択されることを特徴とする請求
項14に記載の癌治療用薬学組成物。
【請求項18】
請求
項14に記載の癌治療用薬学組成物を
ヒトを除いた個体に投与する段階を含む、癌を治療する方法。
【請求項19】
請求項1ない
し6のうち、いずれか1項に記載の単クローン抗体またはその抗原結合断片を含む癌診断用組成物。
【請求項20】
請求
項19に記載の組成物を含む、癌診断用キット。
【請求項21】
請求項1ない
し6のうち、いずれか1項に記載の単クローン抗体またはその抗原結合断片に薬物が結合された、薬物結合体。
【請求項22】
i)請求項1ない
し6のうち、いずれか1項に記載の抗体;
ii)膜透過性ドメイン(transmembrane domain);及び
iii)前記i)の抗体が抗原に結合されれば、T細胞活性化を招くことが特徴である細胞内信号伝逹ドメイン(intracellular signlaing domain)を含む、CAR(chimeric antigen receptor)タンパク質。
【請求項23】
請求項1ない
し6のうち、いずれか1項に記載のLAG-3(Lymphocyte-activation gene 3)に特異的に結合する単クローン抗体またはその抗原結合断片を含む、多重特異的抗体(multi-specific antibody)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LAG-3に特異的に結合する単クローン抗体及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫恒常性を保持することは、生命体が生きて行くのに最も重要なものである。免疫恒常性は、免疫活性信号伝達体系と免疫抑制信号伝達体系とのバランスによって調節される。免疫抑制信号伝達は、免疫チェックポイントと呼ばれるタンパク質によって活性化され、自己抗原に対する自己寛容(self-tolerance)を保持するか、免疫反応後に活性化されたT細胞の機能を弱化させることで、自家免疫反応と過度な炎症反応から正常組織を保護するのに重要な免疫システムの1つである。しかし、慢性的なウイルスに感染された細胞や癌細胞は、そのような免疫抑制信号伝達システムを用いてT細胞の免疫作用から外れて自身がよく生きていくような有利な微小周辺環境(microenvironment)を作る。
【0003】
現在までCTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4), PD-1(programmed cell death protein 1), TIM-3(T cell immunoglobulin and mucin-domain containing-3), LAG-3(lymphocyte activation gene 3), TIGIT(T cell immunoreceptor with immunoglobulin and immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif domains), VISTA(v-domain Ig-containing suppressor of T cell activation)を含め、複数の免疫チェックポイントタンパク質が知られている。癌細胞の免疫回避(immune evasion)機転は、T細胞表面に位置した免疫チェックポイントタンパク質と結合して殺傷機能を有するT細胞(cytotoxic T cells)を無力化させることによってなされる。そのような事実は、免疫チェックポイントタンパク質をターゲットとして活性が弱化されたT細胞の機能を再び生かすことで、ウイルスに感染された細胞や癌細胞を死滅させうるという免疫チェックポイント阻害剤の理論的背景を提供した。また、複数の免疫チェックポイントタンパク質の信号伝逹経路は、互いに独特で重複しないと知られており、免疫チェックポイント阻害剤を共に使用することで、T細胞の免疫機能を強化して、癌治療を極大化するための研究が活発に進められる理由でもある。
【0004】
LAG-3(lymphocyte activation gene 3)は、CTLA-4、PD-1、PD-L1のような複数の免疫チェックポイントタンパク質のうち、1つであり、498個のアミノ酸で構成されたタイプ1細胞膜タンパク質(type I transmembrane protein)である。LAG-3遺伝子は、12番目ヒト染色体に存在し、CD4(cluster of differentiation 4)遺伝子に近く位置しており、CD4と構造的に類似して2つのタンパク質がいずれもMHC(major histocompatibility complex) classIIに結合することができるが、2つのタンパク質の間のアミノ酸配列に対する類似性は、20%未満であり、MHC class IIに対する結合力は、LAG-3がCD4よりも遥かに高い。LAG-3は、4個の兔疫グロブリン類似ドメインで構成された細胞外領域(extracellular domain)と膜横断領域(transmembrane domain)、そして、細胞内領域(intracellular domain)で構成されている。細胞外領域において、最初のドメイン(Ig-like V-type domain)は、MHC class II結合に重要であり、広範囲な結合部位を有するCD4と異なって、LAG-3は、少数のいくつかのアミノ酸がMHC class IIの結合に重要であり、MHC class IIに結合するために、LAG-3間の結合が重要であると知られている。細胞内領域は、ITIM(immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)とITSM(immunoreceptor tyrosine-based switch motif)部位を含まず、相対的に短く、ヒトとマウスとのLAG-3は、よく保存されたセリン残基のリン酸化部位、KIEELE部位、グルタミン-プロリン反復配列の3種の特徴的構造を有している。その中、特に、KIEELEモチーフは、T細胞の活性を抑制するのに重要な役割を行うと知られている。
【0005】
LAG-3遺伝子をなくしたマウスに葡萄状球菌で分泌する腸内毒素、staphylococcal enterotoxin B(SEB)あるいは卵白アルブミン(ovalbumin)を処理したとき、調節されないT細胞の増殖と脾臓肥大症を示す。LAG-3の発現は、T細胞が活性化された後、CD4+、CD8+ T細胞といくつかの自然殺害(natural killer)細胞において増加し、自然調節T細胞(natural Treg cells)と誘導されたCD4+FoxP3+調節T細胞(iTreg cells)にさらに多量のLAG-3が発現されると報告された。MHC class II以外に、LAG-3の結合タンパク質(ligand)としては、LSECtin(liver and lymph node sinusoidal endothelial cell C-type lectin)とGalectin-3が知られており、LSECtinは癌細胞に、Galectin-3は、腫瘍浸透(tumor-infiltrating)CD8+ T細胞にそれぞれ発現され、T細胞に存在するLAG-3と結合することで、T細胞の活性を抑制するものと知られている。
【0006】
そのような技術的背景下で、本発明者は、ヒトLAG-3タンパク質の細胞外ドメインを抗原として使用して、ヒトLAG-3に特異的に結合する単クローン抗体をファージディスプレイ技術を用いてスクリーニングしており、スクリーニングされた抗体クローンの重鎖と軽鎖との可変部位に基づいて製造された単クローン抗体がヒト、サル、及びマウスLAG-3タンパク質に高い親和度をもって結合し、LAG-3/MHC class II複合体の形成を阻害して、T細胞の活性を増加させうるということを確認することで、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、LAG-3に対する新規抗体またはその抗原結合断片を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記抗体またはその抗原結合断片をコーディングするポリヌクレオチドを提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、前記核酸を含むベクター、前記ベクターが導入された形質転換体及びその製造方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、前記抗体またはその抗原結合断片を含む癌治療用組成物を提供することである
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、配列番号1または配列番号27と記載された重鎖CDR1;配列番号2と記載された重鎖CDR2;及び配列番号3と記載された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号8、配列番号53または配列番号57と記載された軽鎖CDR1;配列番号9と記載された軽鎖CDR2;及び配列番号10、配列番号33または配列番号60と記載された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、を含む、LAG-3(Lymphocyte-activation gene 3)に特異的に結合する単クローン抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記単クローン抗体またはその抗原結合断片の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコーディングするポリヌクレオチドを提供する。
【0013】
また、本発明は、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0014】
また、本発明は、前記発現ベクターによって形質転換された形質転換体を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記形質転換体を培養して前記単クローン抗体またはその抗原結合断片を製造する方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記単クローン抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む癌治療用薬学組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記癌治療用薬学組成物を個体に投与する段階を含む、癌を治療する方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記単クローン抗体またはその抗原結合断片を含む癌診断用組成物及び前記癌診断用組成物を含む癌診断用キットを提供する。
【0019】
また、本発明は、前記単クローン抗体またはその抗原結合断片に薬物が結合された薬物結合体を提供する。
【0020】
また、本発明は、I)前記抗体;ii)膜透過性ドメイン(transmembrane domain);及びiii)前記i)の抗体が抗原に結合されれば、T細胞活性化を招くことが特徴である細胞内信号伝逹ドメインを含むCAR(chimeric antigen receptor)タンパク質を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記LAG-3に特異的に結合する単クローン抗体またはその抗原結合断片を含む多重特異的抗体(multi-specific antibody)を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のLAG-3に結合する新規な抗体またはその抗原結合断片は、LAG-3に結合し、その活性を抑制することができるので、LAG-3と関連した多様な疾患の免疫治療剤の開発に有用に活用されうると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】LAG-3タンパク質に結合する抗体の製造のために使用された抗原タンパク質の模式図(A)及び精製された抗原タンパク質の純度(B)と活性(C)とを確認した結果である。
【
図2】パンニング回数によるLAG-3に対するファージプール(pool)の結合力を示す図面である。
【
図3】LAG-3タンパク質に対する単一scFvファージクローンの結合力を示す図面である。
【
図4】精製されたLAG-3抗体である1E09の還元的あるいは非還元的条件でSDS-PAGEによる抗体の純度を分析した結果である。
【
図5】LAG-3タンパク質の発現が互いに異なるHEK293E細胞株を用いて1E09の抗原に対する結合特異性を確認した結果である。
【
図6】ヒトLAG-3(A)、サルLAG-3(B)及びマウスLAG-3(C)が過剰発現された細胞を用いて1E09抗体の交差反応性と結合特異性を確認した結果である。
【
図7】オクテットを用いて1E09抗体とヒト、サル及びマウスLAG-3タンパク質との結合親和性とキネティック定数を測定した結果を示す図面である。
【
図8】LAG-3の細胞外領域においてIg-likeV-type(Ig-V)ドメインを切断(△Ig-V)するか、Ig-Vドメイン内の特定または不特定アミノ酸を他のアミノ酸に置換したLAG-3-mFcまたは-His融合タンパク質(A及びB)を用いてLAG-3-1E09抗体の結合特異性をELISAを通じて確認した結果(C)である。
【
図9】組み換えヒトLAG-3タンパク質(hLAG-3-mFc)とMHC class IIを発現するRaji細胞を用いて1E09が濃度依存的にLAG-3/MHC class II複合体形成を阻害する効果を確認した結果を示す図面である。
【
図10】1E09がLAG-3/MHC class II複合体形成を阻害することで、T細胞の活性を増加させる結果を示す図面である。
【
図11】LAG-3に対する1E09抗体変異体の単一scFvクローンファージの結合力を示す図面である。
【
図12】1E09を最適化した後、選別された変異体抗体の還元的あるいは非還元的条件でSDS-PAGEによって分析した純度と生産量を示す結果である。
【
図13】変異体抗体である1E09-AM_2H01と1E09-FR_1E05のヒトLAG-3(A)、サルLAG-3(B)、及びマウスLAG-3(C)が過剰発現された細胞を用いて交差反応性と結合特異性とを確認した結果である。
【
図14】変異体抗体がLAG-3/MHC class II複合体形成を阻害することで、T細胞の活性を増加させることを示す結果である。
【
図15】オクテットを用いて変異体抗体とヒト、サル及びマウスLAG-3タンパク質との結合親和性とキネティック定数を測定した結果を示す図面である。
【
図16】LAG-3の細胞外領域においてIg-Vドメインを切断(△Ig-V)するか、Ig-Vドメイン内の特定または不特定アミノ酸を他のアミノ酸に置換したLAG-3-mFcまたは-His融合タンパク質(
図8A及び
図8B参照)を用いてLAG-3-1E09の変異体抗体である1E09-AM_2H01と1E09-FR_1E05との結合特異性をELISAを通じて確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的を達成するために、本発明は、配列番号1または配列番号27と記載された重鎖CDR1;配列番号2と記載された重鎖CDR2;及び配列番号3と記載された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号8、配列番号53または配列番号57と記載された軽鎖CDR1;配列番号9と記載された軽鎖CDR2;及び配列番号10、配列番号33または配列番号60と記載された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、を含む、LAG-3(Lymphocyte-activation gene 3)に特異的に結合する単クローン抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0025】
本発明の単クローン抗体またはその抗原結合断片は、ヒト、サル、またはマウスのLAG-3タンパク質の細胞外ドメインに特異的に結合することを特徴とし、本発明の単クローン抗体またはその抗原結合断片は、主要組織適合複合体(major histocompatibility complex, MHC)クラスII分子に対するLAG-3の結合を抑制するか、免疫反応を刺激するか、またはMHCクラスII分子に対するLAG-3の結合を抑制し、免疫反応を刺激することができる。
【0026】
本発明の一具現例によるLAG-3に特異的に結合する単クローン抗体またはその抗原結合断片は、望ましくは、i)配列番号1と記載された重鎖CDR1;配列番号2と記載された重鎖CDR2;及び配列番号3と記載された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号8と記載された軽鎖CDR1;配列番号9と記載された軽鎖CDR2;及び配列番号10と記載された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域からなり、ii)配列番号27と記載された重鎖CDR1;配列番号2と記載された重鎖CDR2;及び配列番号3と記載された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号53と記載された軽鎖CDR1;配列番号9と記載された軽鎖CDR2;及び配列番号33と記載された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域からなり、iii)配列番号1と記載された重鎖CDR1;配列番号2と記載された重鎖CDR2;及び配列番号3と記載された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号57と記載された軽鎖CDR1;配列番号9と記載された軽鎖CDR2;及び配列番号60と記載された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域からなるものであり、さらに望ましくは、I)配列番号114のアミノ酸配列と記載された重鎖可変領域、及び配列番号115のアミノ酸配列と記載された軽鎖可変領域を含み、ii)配列番号116のアミノ酸配列と記載された重鎖可変領域、及び配列番号117のアミノ酸配列と記載された軽鎖可変領域を含み、iii)配列番号118のアミノ酸配列と記載された重鎖可変領域、及び配列番号119のアミノ酸配列と記載された軽鎖可変領域を含んでもよい。
【0027】
本発明において用語「単クローン抗体」とは、単一な抗原性部位(単一エピトープ)に対して指示され、それと特異的な結合を行うタンパク質分子を意味する。前記単クローン抗体は、当該技術分野に公知された多様な方法を通じて製造されうる。
【0028】
本発明において、抗体(antibody)は、全体(whole)抗体形態を意味し、全体抗体は、2本の全長の軽鎖及び2本の全長の重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド結合で連結されている。前記全長抗体は、IgA、IgD、IgE、IgM及びIgGを含み、IgGは、亜型(subtype)であって、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む。また、重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びエプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとして、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)、及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変領域は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)タイプを有する。
【0029】
本発明の単クローン抗体は、ヒト抗体(fully human antibody)、ヒト化抗体(humanized antibody)、キメリック抗体(chimeric antibody)、マウス抗体(mouse antibody)、及び組換え抗体からなる群から選択されるものであり、望ましくは、ヒト抗体でもあるが、それに制限されない。前記ヒト抗体は、全ての構造がヒトに由来されたので、既存のヒト化抗体またはマウス抗体に比べて、免疫化反応が起こる確率が少なく、ヒトに投与した場合、所望しない免疫反応が起こらない長所がある。したがって、治療用抗体として非常に有用に使用されうる。
【0030】
本発明において、用語「抗原結合断片」とは、抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab')、F(ab')2及びFvなどを含む。抗体断片のうち、Fabは、軽鎖及び重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域及び重鎖の最初不変領域(CH1)を有する構造であって、1個の抗原結合部位を有する。Fab'は、重鎖CH1ドメインのC末端に1つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点で、Fabと差がある。F(ab')2抗体は、Fab'のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなしつつ生成される。Fvは、重鎖可変部位及び軽鎖可変部位のみを有している最小の抗体切片であり、Fv断片を生成する組み換え技術は、国際公開特許WO88/10649などに開示されている。二重鎖Fv(dsFv)は、ジスルフィド結合によって重鎖可変部位と軽鎖可変部位とが連結されており、単鎖Fv(scFv)は、一般にペプチドリンカーを通じて重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とが共有結合によって連結されている。そのような抗体断片は、タンパク質加水分解酵素を用いて得られ(例えば、全体抗体をパパインで制限切断すれば、Fabが得られ、ペプシンで切断すれば、F(ab')2断片が得られる)、望ましくは、遺伝子組み換え技術を通じて作製することができる。
【0031】
本発明において、用語「可変領域(variable region)」とは、抗原と特異的に結合する機能を遂行しつつ、配列上の多くの変異を示す部位を意味し、可変領域には、相補性決定領域であるCDR1、CDR2、及びCDR3が存在する。前記相補性決定領域の間には、フレームワーク領域(FR, framework region)部分が存在し、相補性決定領域の環を支持する役割を行う。
【0032】
本発明において、用語「相補性決定領域(CDR, complementarity determining region)」は、抗原の認識に関与する環状の部位であって、その部位の配列が変わることにより、抗体の抗原に対する特異性が決定する。
【0033】
本発明の一実施例によれば、本発明者は、ファージディスプレー方法によって天然ヒト単鎖Fvライブラリ(naive human single chain Fv library)をバイオパンニングしてLAG-3に特異的に結合するヒト抗体を製造した。
【0034】
本発明において、用語「バイオパンニング(biopanning)」は、ファージの外壁(coat)にペプチドを発現(display)するファージライブラリから、標的分子(抗体、酵素、細胞表面レセプタなど)と結合する性質を有するペプチドを表面に発現しているファージのみを選択する過程を言う。
【0035】
本発明の単クローン抗体またはその抗原結合断片は、特にそれに制限されないが、投与された生体内における滞留時間を増進させるために、糖化(glycosylation)及び/またはペギレーション化(PEGylation)されうる。
【0036】
本発明の用語「糖化(glycosylation)」は、グリコシル基をタンパク質に転移させる加工方法を意味する。前記糖化は、グリコシル伝達酵素によってグリコシル基が標的タンパク質のセリン、トレオニン、アスパラギンまたはヒドロキシリシン残基に結合されて行われるが、前記糖化されたタンパク質は、生体組織の構成物質として使用されるだけではなく、細胞表面において細胞認識にも重要な役割を行う。したがって、本発明では、単クローン抗体またはその抗原結合断片の糖化、または前記糖化のパターンを変化させて抗体の効果を向上させうる。
【0037】
本発明の用語「ペギレーション化(PEGylation)」は、前記単クローン抗体またはその抗原結合断片にポリエチレングリコールを導入することで、抗体の血中滞留時間を向上させる加工方法を意味する。具体的に、ポリエチレングリコールで高分子ナノ粒子をペギレーション化することによって、ナノ粒子の表面の新水性が増加し、病源菌、老廃物及び外部流入物質を飽食し、消化させる人体内の大食細胞(macrophage)などを含む免疫機能からの認識を防止する、いわゆるステルス効果(stealth effect)を通じる身体内での速い分解が防止される。したがって、前記ペギレーション化によって抗体の血中滞留時間が向上しうる。本発明で使用されるペギレーション化は、ヒアルロン酸のカルボキシル基とポリエチレングリコールのアミン基の結合によってアミド基を形成する方法によって形成されるが、それに制限されず、多様な方法によってペギレーション化を行うことができる。この際、使用されるポリエチレングリコールは、特にそれに制限されないが、望ましくは、100ないし1,000の分子量を有し、線状または枝状の構造を有することを使用することが望ましい。
【0038】
前記糖化及び/またはペギレーション化は、本発明の抗体の機能を保持する限り、当業界の公知された方法によって多様な糖化及び/またはペギレーション化パターンが変形され、本発明の抗体は、多様な糖化及び/またはペギレーション化パターンが変形された変異単クローン抗体またはその抗原結合断片をいずれも含む。
【0039】
本発明の一具現例による前記単クローン抗体またはその抗原結合断片は、ヒトLAG-3タンパク質に1.5×10-10M以下のKDで結合し、サルLAG-3タンパク質に7.0×10-10M以下のKDで結合し、マウスLAG-3タンパク質に6.0×10-10M以下のKDで結合するものでもあるが、それに制限されない。
【0040】
本発明はまた、本発明の単クローン抗体またはその抗原結合断片の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコーディングするポリヌクレオチドを提供する。
【0041】
本発明の単クローン抗体またはその抗原結合断片の軽鎖及び重鎖を暗号化するポリヌクレオチドは、コドンの縮退性(degeneracy)により、または前記ヒト抗体の軽鎖及び重鎖またはその断片を発現させようとする生物において選好されるコドンを考慮して、コーディング領域から発現される抗体の軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列を変化させない範囲内でコーディング領域に多様な変形がなされ、コーディング領域を除いた部分でも遺伝子の発現に影響を与えない範囲内で多様な変形または修飾がなされ、そのような変形遺伝子も、本発明の範囲に含まれることを、当業者であれば、よく理解できるであろう。すなわち、本発明のポリヌクレオチドは、それと同等な活性を有するタンパク質をコーディングする限り、1つ以上の核酸塩基が置換、欠失、挿入またはそれらの組合わせによって変異され、それらも本発明の範囲に含まれる。そのようなポリヌクレオチドの配列は、単鎖または二重鎖でもあり、DNA分子またはRNA(mRNA)分子でもある。
【0042】
本発明はまた、本発明の単クローン抗体またはその抗原結合断片の重鎖及び軽鎖可変領域をコーディングするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0043】
本発明において、用語「発現ベクター」とは、宿主細胞において目的遺伝子を発現させるための手段であって、プラスミドベクター;コスミド(cosmid)ベクター、アデノウイルス(Adenovirus)ベクター、レトロウイルス(Retrovirus)ベクター、及びアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus)ベクターのようなウイルスベクターなどを含み、遺伝子挿入物が発現されるように作動可能に連結された必須調節要素を含む遺伝子作製物を言う。本発明において、「作動可能に連結された(operably linked)」とは、一般的機能を行うように核酸発現調節配列と目的するタンパク質をコーディングするポリヌクレオチドが機能的に連結されていることを言う。発現ベクターとの作動的連結は、当該技術分野でよく知られている遺伝子組み換え技術を用いて製造することができ、部位特異的DNA切断及び連結は、当該技術分野で一般的に知られている酵素などを使用して容易に行える。
【0044】
本発明の適した発現ベクターは、プローモーター、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーのような発現調節エレメント以外にも、膜標的化または分泌のためのシグナル配列を含んでもよい。開始コドン及び終決コドンは、一般に免疫原性標的タンパク質をコーディングするヌクレオチド配列の一部と見なされ、遺伝子作製物が投与されたとき、個体で必ず作用を示さねばならず、コーディング配列とインフレーム(in frame)に位置せねばならない。一般プローモーターは、構成的または誘導性でもある。原核細胞には、Lac、tac、T3及びT7プローモーターがあるが、それに制限されない。真核細胞には、サルウイルス40(SV40)プローモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プローモーター、ヒト免疫欠乏ウイルス(HIV)プローモーター、HIVの長い末端反復部(LTR)プローモーター、モロニウイルスプローモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プローモーター、エプスタインバールウイルス(EBV)プローモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プローモーターのみならず、β-アクチンプローモーター、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、ヒトメタロ チオネイン由来のプローモーターがあるが、それに制限されない。
【0045】
発現ベクターは、ベクターを含む宿主細胞を選択するための選択性マーカーを含むことができる。選択マーカーは、ベクターによって形質転換された細胞を選別するためのものであって、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または、表面タンパク質の発現のような選択可能表現型を与えるマーカーが使用されうる。選択剤(selective agent)が処理された環境で選別マーカーを発現する細胞だけ生存するので、形質転換された細胞が選別可能である。
【0046】
また、ベクターは、複製可能な発現ベクターである場合、複製が開始される特定ポリヌクレオチドである複製原点(replication origin)を含んである。ウイルス(例えば、バキュロウイルス)またはファージベクター、及びレトロウイルスベクターのような宿主細胞のゲノム内に挿入されるベクターも使用可能である。全体抗体または、抗体断片を発現するベクターは、軽鎖と重鎖とが1つのベクターとして同時に発現されるベクターシステムやまたは軽鎖と重鎖とをそれぞれ別途のベクターで発現させるシステムがいずれも可能である。後者の場合、2ベクターは、同時形質転換(cotransfomation)及び標的形質転換(targeted transformation)を通じて宿主細胞に導入し、軽鎖(または、重鎖)を含むベクターによって形質転換された細胞を選別し、軽鎖を発現する選別された細胞を重鎖(または軽鎖)を含むベクターに再び形質転換して、軽鎖及び重鎖をいずれも発現する細胞を最終的に選別する。
【0047】
Fab形態の抗体を作製するため、ヒト軽鎖の可変領域(VL)と不変領域(CL)及びヒト重鎖の可変領域(VH)と最初不変領域ドメイン(CH1)のアミノ酸をコーディングする遺伝子を挿入したベクターを利用する。
【0048】
また、本発明は、本発明の前記発現ベクターで形質転換された形質転換体を提供する。
【0049】
前記ベクターの適した宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、またはスタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)のような原核細胞でもある。また、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)のような真菌、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces sp.)及びニューロスポラクラッサ(Neurospora crassa)のような酵母、その他の下等真核細胞、及び昆虫からの細胞のような高等真核生物の細胞と植物細胞でもある。また、哺乳動物からも由来する。望ましくは、哺乳動物細胞に由来のCOS-7、BHK、CHO、CHOK1、DXB-11、DG-44、CHO/-DHFR、CV1、COS-7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL3A、W138、HepG2、SK-Hep、MMT、TRI、MRC5、FS4、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS-0、U20S、または、HT1080でもあるが、それに制限されるものではない。
【0050】
本発明において、「宿主細胞への形質転換」は、核酸を有機体、細胞、組織または器官に導入する如何なる方法も含まれ、当分野で公知されたように宿主細胞によって適した標準技術を選択して行うことができる。このような方法には、エレクトロポレーション法(electroporation)、原形質融合、リン酸カルシウム(CaPO4)沈澱、塩化カルシウム(CaCl2)沈澱、シリコンカーバイド繊維を用いた撹拌、アグロバックテリア媒介された形質転換、PEG、デキストランサルフェイト、リポフェクタミン(lipofectamine)及び乾燥/抑制媒介された形質転換方法などが含まれるが、それらに制限されない。
【0051】
本発明はまた、
(a)前記形質転換体を培養して培養液を製造する段階と、
(b)前記(a)段階の培養液から本発明の単クローン抗体またはその抗原結合断片を精製する段階と、を含む、LAG-3(Lymphocyte-activation gene 3)に特異的に結合する単クローン抗体またはその抗原結合断片を製造する方法を提供する。
前記製造方法において、形質転換体の培養は、当業界に知られた適当な培地と、培養条件によってなされる。そのような培養過程は、当業者であれば、選択される菌株または動物細胞によって容易く調整して使用することができる。
【0052】
形質転換体を培養して収得した抗体は、精製していない状態で使用され、さらに多様な通常の方法、例えば、遠心分離または限外ろ過によって不純物を除去し、その結果物を透析、塩沈澱、クロマトグラフィーなどを利用し、それらを単独または組み合わせて利用することができる。そのうち、親和性クロマトグラフィーが最も多く使用され、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどがある。
【0053】
前記方法によって作製された抗体は、抗原に対する親和度(affinity)が増加した抗体である。用語「親和度」は、抗原の特定部位を特異的に認識し、結合する能力であって、抗体の抗原に対する特異性と共に、高度の親和度は、免疫反応において重要な要素である。本発明では、重鎖可変領域をランダムに突然変異を起こしてヒト化重鎖ライブラリ細胞を作製し、該ライブラリ細胞を対象にしてコロニーリフトアッセイを実施して抗原結合能に優れた変異体クローンを先に選別し、選別されたクローンを対象にして競合ELISAを実施して各クローンの親和度を調査した。その他にも、抗原に対する親和度を測定するための多様な方法を使用することができ、表面プラズモン共鳴技術(surface plasmon resonance technology)がその例である。
【0054】
本発明に使用される用語「KD」は、特定抗体-抗原相互作用の解離定数(dissociation constant)を意味し、抗体の抗原に対する親和度を測定する尺度として使用された。KD値が低ければ低いほど、抗体の抗原に対する親和力が高いということを意味する。
【0055】
また、本発明は、本発明の単クローン抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む、免疫反応を刺激するための組成物を提供する。本発明のLAG-3に特異的な抗体は、MHCクラスII分子に対するLAG-3の結合を抑制するか、免疫反応を刺激するか、またはMHCクラスII分子に対するLAG-3の結合を抑制して、免疫反応を刺激することができるので、本発明のLAG-3に特異的な単クローン抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む組成物は、免疫反応を刺激することができるものである。
【0056】
本発明はまた、前記単クローン抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む癌治療用薬学組成物を提供する。
【0057】
本発明の抗体は、MHCとT細胞受容体の相互作用を遮断してTリンパ球の活性を減少させるLAG-3に高親和度で結合するので、LAG-3の活性を抑制してTリンパ球の活性を増進させ、免疫反応を刺激することができる。前記単クローン抗体またはその抗原結合断片については、前述した通りである。
【0058】
本発明において、用語「癌」は、本発明のヒト抗体によって治療可能な癌であれば、その種類に制限なしに含まれるが、その例として、肝癌、乳房癌、腎臓癌、脳腫瘍、胆道癌、食道癌、胃癌、大膓癌、直膓癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、肺癌、結腸癌、子宮頸部癌、甲状腺癌、白血病、ホジキン(Hodgkin)疾患、リンパ腫及び多発性骨髄腫(血液癌)などでもあるが、それらに制限されない。
【0059】
本発明で提供する前記各組成物は、薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。本発明において、用語「薬学的に許容可能な担体」とは、生物体を刺激せず、投与化合物の生物学的活性及び特性を阻害しない担体または希釈剤を意味する。液状溶液に製剤化される組成物において、薬学的に許容可能な担体としては、滅菌及び生体に適したものであって、食塩水、滅菌水、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール及びそれら成分のうち、1成分以上を混合して使用し、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤をさらに添加して水溶液、懸濁液、乳濁液のような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。
【0060】
本発明の前記抗体及び薬学的に許容可能な担体を含む癌治療用組成物は、それを有効成分として含有するいかなる剤形にも適用可能であり、経口用または、非経口用剤形にも作製可能である。本発明の薬学的剤形は、口腔(oral)、直腸(rectal)、鼻腔(nasal)、局所(topical;頬及び舌下を含む)、皮下、腟(vaginal)または、非経口(parenteral;筋肉内、皮下及び静脈内を含む)投与に適したもの、または吸入(inhalation)または注入(insufflation)による投与に適した形態を含む。
【0061】
本発明の組成物を有効成分として含む経口投与用剤形としては、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水溶性または油性懸濁液、調製粉末または顆粒、エマルジョン、ハードまたはソフトカプセル、シロップまたはエリクシール剤によって製剤化することができる。錠剤及びカプセルなどの剤形に製剤化するために、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アミロペクチン、セルロースまたはゼラチンのような結合剤、ジカルシウムホスフェートのような賦形剤、とうもろこし澱粉またはさつまいも澱粉のような崩壊剤、ステアリン酸マスネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムまたはポリエチレングリコールワックスのような潤滑油を含み、カプセル剤形の場合、前記言及した物質以外にも脂肪油のような液体担体をさらに含んでもよい。
【0062】
本発明の組成物を有効成分として含む非経口投与用剤形としては、皮下注射、静脈注射または筋肉内注射などの注射用形態、坐剤注入方式または呼吸器を通じて吸入可能にするエアロゾル剤などスプレイ用としても製剤化する。注射用剤形として製剤化するためには、本発明の組成物を安定剤または緩衝制と共に、水で混合して溶液または懸濁液として製造し、それをアンプルまたはバイアルの単位投与用としても製剤化する。坐剤として注入するためには、ココアバターまたは他のグリセリドなど通常の坐薬ベースを含む坐薬または浣腸剤のような直腸投与用組成物として製剤化することができる。エアロゾル剤などのスプレイ用として剤形化する場合、水分散された濃縮物または湿潤粉末が分散されるように推進剤などが添加剤と共に配合されうる。
【0063】
本発明の組成物は、対象体に本発明の抗体を投与すれば、対象体における腫瘍の成長を抑制する。
【0064】
本発明の前記薬学組成物は、免疫刺激性抗体をさらに含み、前記免疫刺激性抗体は、望ましくは、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、及び抗CTLA-4抗体からなる群から選択される1つ以上でもあり、さらに望ましくは、抗PD-L1抗体でもあるが、それに制限されない。
【0065】
本発明はまた、前記単クローン抗体またはその抗原結合断片を含む癌治療用組成物を個体に投与することを含む、癌を治療する方法を提供する。
【0066】
本発明において、用語「投与」は、ある適切な方法によって患者に本発明の薬剤学的組成物を導入することを意味する。本発明の組成物の投与経路は、目的組織に到逹することができる限り、経口または、非経口の多様な経路を通じて投与され、具体的に、口腔、直腸、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、経皮、鼻側内、吸入、眼球内または皮内経路を通じて通常の方式で投与されうる。
【0067】
本発明の治療方法は、本発明の癌治療用組成物を薬学的有効量で投与することを含む。適した総1日使用量は、正しい医学的判断範囲内で処置医によって決定されるということは、当業者に自明である。特定患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合に応じて、他の製剤が使用されるか否かを含め、具体的組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路、及び組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物と共に使用されるか、同時使用される薬物を含めた多様な因子と医薬分野によく知られている類似因子によって異なって適用することが望ましい。したがって、本発明の目的に符合する癌の予防または治療用組成物の有効量は、前述した事項を考慮して決定することが望ましい。
【0068】
また、前記個体は、LAG-3の過度な活性によって腫瘍の発達と新生血管生成などの疾病が発生可能な任意の動物を意味するものであって、前記動物は、ヒト及び霊長類だけではなく、牛、豚、羊、馬、犬、及び猫などの家畜を含む。
【0069】
本発明はまた、本発明によるLAG-3抗体またはその抗原結合断片を含む癌診断用組成物及び前記組成物を含む癌診断用キットを提供する。
【0070】
前記単クローン抗体またはその抗原結合断片、そして癌については、前述した通りである。本発明のLAG-3に特異的な単クローン抗体またはその抗原結合断片を含む診断用組成物を使用して、LAG-3の発現如何と発現程度に係わる疾患、例えば、癌を診断することができる。
【0071】
前記癌を診断する方法は、本発明のLAG-3に特異的な単クローン抗体を、癌が疑われる個体の分離された生物学的試料と反応させ、抗原-抗体複合体形成を分析することで、検出することができ、それを通じて癌診断のための情報を提供することができる。
【0072】
本発明において、用語「生物学的試料」とは、組織、細胞、全血、血清、血漿、組織剖検試料(脳、皮膚、リンパ節、脊髓など)、細胞培養上澄み液、破裂された真核細胞及び細菌発現係などが挙げられるが、それらに制限されるものではない。それら生物学的試料を操作または未操作状態で、本発明の抗体と反応させてLAG-3の存在または癌の有無を確認することができる。
【0073】
本発明において、用語「抗原-抗体複合体」とは、試料中のLAG-3タンパク質抗原と、それを認知する本発明による単クローン抗体またはその抗原結合断片の結合物を意味し、このような抗原-抗体複合体の形成は、通常の免疫分析方法によっても測定でき、前記LAG-3に対する抗体を用いた放射能免疫分析、放射能免疫沈澱、免疫沈澱、免疫組織化学染色、ELISA(enzyme-linked immunosorbant assay)、キャプチャ-ELISA、抑制または競合分析、サンドイッチ分析、フローサイトメトリー(flow cytometry)、免疫蛍光染色及び免疫親和性精製を通じて測定することができるが、それらに限定されるのではない。
【0074】
前記免疫分析過程による最終的なシグナルの強度を分析することで、癌を診断することができる。すなわち、疑われる個体から分離した生物学的試料において本発明のLAG-3タンパク質が過剰発現されて、シグナルが正常個体から分離した生物学的試料よりも強く出る場合には、癌と診断される。
【0075】
また、本発明によるキットは、本発明のLAG-3に対する抗体を含み、試料と抗体が反応することにより示すシグナルを分析して、癌を診断することができる。この際、前記シグナルは、抗体に結合された酵素、例えば、アルカリンフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼまたはシトクロムP450を含むことができるが、それらに制限されず、この際、酵素に対する基質は、酵素としてアルカリンフォスファターゼが用される場合、基質としてブロモクロロインドリルリン酸(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(nitroblue tetrazolium, NBT)、ナフトール-AS-B1-フォスフェート(naphthol-AS-B1-phosphate)及びECF(enhanced chemifluorescence)のような発色反応基質が用いられ、ホースラディッシュペルオキシダーゼが用いられる場合には、クロロナフトール、アミノエチルカルバゾール、ジアミノベンジジン、D-ルシフェリン、ルシゲニン(ビス-N-メチルアクリジニウムニトラート)、レセルピンベンジルエーテル、ルミノール、アンプレックスレッド試薬(10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン)、HYR(p-phenylenediamine-HCl and pyrocatechol)、TMB(tetramethylbenzidine)、ABTS(2,2’-Azine-di[3-ethylbenzthiazoline sulfonate])、o-フェニレンジアミン(OPD)及びナフトール/パイロニン、グルコースオキシダーゼとt-NBT及びm-PMS(phenzaine methosulfate)のような基質が用いられるが、それらに制限されるものではない。
【0076】
また、本発明によるキットは、検出可能なシグナルを発生させるラベルを含み、前記ラベルは、化学物質(例えば、ビオチン)、酵素(例えば、アルカリンフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ及びシトクロムP450)、放射能物質(例えば、14C、125I、32P及び35S)、蛍光物質(例えば、フルオレシン)、発光物質、化学発光物質(chemiluminescent)及びFRET(fluorescence resonance energy transfer)を含むことができるが、それらに制限されるものではない。
【0077】
癌診断のために使用される酵素の活性測定またはシグナルの測定は、当業界に公知された多様な方法によっても実施される。それを通じてLAG-3発現を定性的または定量的に分析することができる。
【0078】
本発明はまた、本発明の単クローン抗体またはその抗原結合断片に薬物が結合された抗体-薬物結合体(antibody-drug conjugate)を提供する。
【0079】
本発明において、用語「薬物」とは、本発明のLAG-3に特異的な抗体またはその抗原結合断片に結合され、酸性条件によって前記抗体またはその抗原結合断片と分離され、標的細胞に対する治療効果を示す化合物を意味する。
【0080】
本発明による抗体-薬物結合体に使用される薬物は、細胞毒性または、細胞増殖抑制効果を有する任意の化合物、部分または基を含み、(i)マイクロチューブリン抑制剤、有糸分裂抑制剤、トポイソメラーゼ抑制剤、または、DNAインターカレータとして機能する化学療法剤;(ii)酵素的に機能するタンパク質毒素;及び(iii)放射性同位元素(放射性核種)などが含まれ、前記化合物で1種以上が使用されうる。
【0081】
そのような薬物の非制限的な例としては、メイタンシノイド、アウリスタチン、ドラスタチン、トリコテセン、CC1065、カリケアミシン及び他のエネジイン抗生剤、タキサン、アントラシクリン、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンデシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、テニポシド、メルファラン、ミトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、ダウノマイシン、エトポシド、テニポシド、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、ミトマイシン類、ブレオマイシン類、エスペラミシン類、5-フルオロウラシル、メルファラン、その他の窒素マスタード及びその立体異性体、同配体、同族体または誘導体、シス-白金及びシス-白金同族体、その他の挿入剤である酵素及びその断片、例えば、核酸分解酵素、抗生剤、毒素(細菌、真菌、植物または動物由来の酵素活性毒素または小分子毒素)、シスプラチン、CPT-11、ドキソルビシン、パクリタキセル及びドセタキセルなどの各種抗腫瘍または抗癌剤などが含まれるが、それらに制限されない。また、放射性同位元素(放射性核種)には、3H, 14C, 32P, 35S, 36Cl, 51Cr, 57Co, 58Co, 59Fe, 90Y, 125I, 131I, 186Re などがあり、それらに制限されず、特定の癌遺伝子(oncogene)の発現を抑制させることができるマイクロRNA(miRNA)、siRNA及びshRNAなども使用されうる。
【0082】
本発明はまた、i)本発明の抗体;ii)膜透過性ドメイン(transmembrane domain);及びiii)前記i)の抗体が抗原に結合されれば、T細胞活性化を招くことが特徴である細胞内信号伝逹ドメインを含むCAR(chimeric antigen receptor)タンパク質を提供する。
【0083】
本発明において、前記CARタンパク質は、本発明の単クローン抗体と、公知の膜透過ドメイン及び細胞内信号伝逹ドメインで構成されることで特定されうる。
【0084】
本発明において、用語「CAR(chimeric antigen receptor)」は、免疫効果器細胞に特定抗原に対する特異性を与えることができる、自然に存在しない受容体を意味する。通常、前記CARは、T細胞に単クローン抗体の特異性を移植するために使用される受容体を言う。通常、CARは、細胞外ドメイン、膜透過性ドメイン(transmembrane domain)及び細胞内ドメインで構成される。
【0085】
前記細胞外ドメインは、抗原結合部位(antigen recognition region)を含み、本発明で前記抗原結合部位は、LAG-3に特異的な抗体である。LAG-3に特異的な抗体は、前述した通りであり、CARに使用される抗体は、抗体断片の形態であることが望ましく、さらに望ましくは、Fabまたは、scFv形態であるが、それに制限されない。
【0086】
また、CARの膜透過性ドメインは、細胞外ドメインと連結された形態であって、自然的あるいは合成されたものに由来のものでもある。自然的に存在するものに由来の場合、膜結合または、膜透過性タンパク質に由来のものでもあり、T細胞受容体のアルファ、ベータ、またはゼタ体である、CD28、CD3エプシロン、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、またはCD8など多様なタンパク質の膜透過性領域に由来の部分でもある。このような膜透過性ドメインの配列は、膜透過性タンパク質の膜透過性領域部分を公知している当業界に公知された文献などから得られるが、その限りではない。
【0087】
また、前記膜透過性ドメインが合成されたものである場合、これは、ロイシン及びバリンのような疎水性アミノ酸残基を主に含むことができ、その例として、フェニルアラニン、トリプトファン及びバリンのトリプレット(triplet)が合成された膜透過ドメインに存在することができるが、それに制限されない。
【0088】
本発明のCARにおいて、前記細胞内ドメインは、細胞内に存在するCARのドメインの一部であって、膜透過性ドメインと連結された形態である。本発明の前記細胞内ドメインは、CARの抗原結合部位に抗原が結合されれば、T細胞活性化、望ましくは、T細胞増殖を招くことが特徴である、細胞内信号伝逹ドメインを含んでもよい。前記細胞内信号伝逹ドメインは、細胞外に存在する抗原結合部位に抗体が結合すれば、T細胞活性化をもたらす信号を伝達する部分であれば、特にその種類に制限されず、多様な種類の細胞内信号伝逹ドメインが使用され、その例として、免疫受容体チロシン基盤の活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif, ITAM)でもあり、前記ITAMは、CD3ゼタ(ξ、zeta)、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3エプシロン、CDS、CD22、CD79a、CD79b、CD66dまたはFcεRIγに由来のものであるということを含んでよいが、それに制限されるものではない。
【0089】
また、本発明のCARの細胞内ドメインは、細胞内信号伝逹ドメインと共に、共同刺激ドメイン(costimultatory domain)をさらに含むことが望ましいが、それに制限されない。前記共同刺激ドメインは、本発明のCARに含まれて細胞内信号伝逹ドメインによる信号に加え、T細胞に信号を伝達する役割を行う部分であって、共同刺激分子の細胞内ドメインを含む、CARの細胞内部分を意味する。
【0090】
前記共同刺激分子は、細胞表面分子であって、抗原に対するリンパ球の十分な反応を引き起こすのに必要な分子を意味し、その例として、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、LFA-1(lymphocyte function-associated antigen-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、またはB7-H3でもあるが、それに制限されない。前記共同刺激ドメインは、そのような共同刺激分子及びその組合わせからなる群から選択された分子の細胞内部分でもある。
【0091】
また、選択的に、短いオリゴペプチドまたはポリペプチドリンカーがCARの細胞内ドメイン及び膜透過性ドメインを連結することができ、前記リンカーは、本発明のCARに含まれても、細胞外に位置した抗体に抗原が結合したとき、細胞内ドメインを介したT細胞活性化を誘導することができるリンカーであれば、特にその長さに制限されない。
【0092】
本発明はまた、前記LAG-3に特異的に結合する単クローン抗体またはその抗原結合断片を含む多重特異的抗体を提供する。
【0093】
本発明において、前記多重特異的抗体は、望ましくは、二重特異的抗体でもあるが、それに制限されない。
【0094】
本発明による多重特異的抗体は、本発明による抗LAG-3抗体が免疫効能細胞-特異的標的分子に対する結合能を有する抗体またはその断片と結合された形態が望ましい。免疫効能細胞-特異的標的分子は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、TIGIT、BTLA、KIR、A2aR、VISTA、B7-H3、TCR/CD3、CD16(FcγRIIIa)CD44、Cd56、CD69、CD64(FcγRI)、CD89及びCD11b/CD18(CR3)で選択されることが望ましいが、それに限定されるものではない。
【0095】
多重特異的抗体は、同じ抗原または2つ以上の他の抗原に対して同時に互いに異なる多重(二重以上)のエピトープを認識する抗体であり、多重特異的抗体に属する抗体は、scFv基盤抗体、Fab基盤抗体及びIgG基盤抗体などに区分することができる。多重特異的、例えば、二重特異的抗体の場合、2つの信号を同時に抑制または増幅させることができるので、1つの信号を抑制/増幅する場合よりもさらに効果的であり、それぞれの信号をそれぞれの信号抑制剤で処理した場合と比較すれば、低用量投薬が可能であり、同じ時間及び空間での2つの信号を抑制/増幅させうる。
【0096】
二重特異的抗体の製造方法は、広く公知されている。伝統的に、二重特異的抗体の組み換え生産は、2つの重鎖が互いに異なる特異性を有する条件で2つの兔疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共同発現を根幹とする。
【0097】
scFvを基盤とする二重特異的抗体の場合、互いに異なるscFvのVLとVHとをそれぞれ互いに組み合わせて混成scFvをheterodimeric形態に製造して、ディアボディー(diabody)を作り(Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 90:6444, 1993)、互いに異なるscFvを互いに連結してtendem ScFvを製造し、FabのCH1とCLとをそれぞれのscFvの末端に発現させてheterodimericミニ抗体(miniantibody)を製造し(Muller et al., FEBS lett., 432:45, 1998)、そして、FcのhomodimericドメインであるCH3ドメインの一部アミノ酸を切り替えて「knob into hole」形態のheterodimeric構造に変更させ、これら変更されたCH3ドメインを互いに異なるそれぞれのscFv末端に発現させることで、heterodimeric scFv形態のミニボディー(minibody)を製造することができる(Merchant et al., Nat. Biotechnol., 16:677, 1998)。
【0098】
Fabを基盤とする二重特異的抗体の場合、特定抗原に対する個別Fab'を二硫化結合または媒介体を用いて互いに組み合わせてheterodimeric Fab形態に製造することができ、特定Fabの重鎖または軽鎖の末端に互いに異なる抗原に対するscFvを発現させることで、抗原結合価(valency)を2つにするか、FabとscFvとの間にヒンジ部位(hinge region)を設けることで、homodimeric形態に4つの抗原結合価を有するように製造することができる。また、Fabの軽鎖末端と重鎖末端に互いに異なる抗原に対するscFvを融合させることで、抗原に対する結合価を3個にした二重標的バイボディー(bibody)、Fabの軽鎖マルダンと重鎖末端に互いに異なるscFvをそれぞれ融合させることで、抗原に対する結合価を3個有するようにした三重標的バイボディー、互いに異なるFab3個を化学的に接合させることで得られた簡単な形態の三重標的抗体F(ab')3の製造方法が当業界に知られている。
【0099】
IgGを基盤とする二重特異的抗体の場合、トリオンファーマ(TrionPharma)社によってマウスとラットハイブリードマを再び交雑させることで、ハイブリッドハイブリードマ、一名クアドローマ(quadromas)を製造して二重特異的抗体を生産する方法が知られている。また、軽鎖部は、共有しつつ、互いに異なる重鎖に対してFcのCH3 homodimericドメインの一部アミノ酸を変形させてheterodimeric形態に作製した、いわゆる「Holes and Knob」形態の二重特異的抗体の製造方法(Merchant et al., Nat. Biotechnol., 16:677, 1998)、heterodimeric形態の二重特異的抗体以外に、互いに異なる2種のscFvをIgGの軽鎖と重鎖の可変ドメインの代わりに、constantドメインにそれぞれ融合発現させ、homodimeric形態の(scFv)4-IgGで製造した方法が知られている。また、イムクローン(ImClone)社は、ヒトVEGFR-2に対するキメリック単クローン抗体であるIMC-1C11を基盤として、この抗体の軽鎖アミノ末端にマウス血小板誘導成長因子受容体-アルファ(Platelet-derived Growth Factor Receptor-α)に対するsingle variable domainのみを融合させ、二重特異的抗体を作製して報告した。また、Rossiなどは、タンパク質キナーゼA(protein kinase A, PKA)Rサブユニットのdimerization and docking domain(DDD)とPKAのanchoring domainを用いた、いわゆる「dock and lock(DNL)」方法を通じてCD20に対する多数の抗原結合価を有する抗体を開示している(Rossi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 103:6841, 2006)。
【0100】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するための一例に過ぎず、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0101】
実施例1.LAG-3抗原作製と精製及び活性確認
1-1.LAG-3抗原タンパク質発現ベクターの作製
LAG-3タンパク質のクローニングは、LAG-3 gene cDNA cloneプラスミド(#HG16498-G、Sino Biological Inc, China)を用いて細胞外ドメイン(29-450番目アミノ酸配列)のみを得るために、5'末端と3'末端に制限酵素SfiI位が含まれたLAG-3に対するプライマー(表1)を用いて重合酵素連鎖反応(polymerase chain reaction, PCR)によって増幅させた。増幅されたPCR産物は、発現ベクターを用いてカルボキシ末端にマウスFc(mFc)を融合させて作製した(
図1A)。
【表1】
【0102】
1-2.LAG-3抗原タンパク質の発現及び精製
作製したLAG-3プラスミドは、HEK293F細胞(Invitrogen、USA)にPEI(Polyethylenimine:#23966、Polysciences、USA)を使用して形質感染(transfection)させた後、無血清培地であるフリースタイル293発現培地(FreeStyle 293 Expression Medium: #AG100009, Thermo Fisher Scientific, USA)で7日間培養した。LAG-3タンパク質を含む細胞培養液を回収して10分間5,000rpmで遠心分離し、0.22μm Top-フィルタ(Millipore、USA)を通じて残っている細胞と浮遊物質を除去した。LAG-3タンパク質の精製は、タンパク質Aアガロースレジン(protein A agarose resin)を用いた親和性クロマトグラフィー(affinity chromatography)を利用し、1次精製されたタンパク質は、superdex 200(1.5cm x 100cm)ゲルろ過クロマトグラフィー(gel filtration chromatography)を用いて2次精製を進めた。
【0103】
精製されたタンパク質は、還元あるいは非還元条件でSDS-PAGE(sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis)を用いて純度を確認した。その結果、
図1Bに示されたように、精製されたLAG-3-mFcタンパク質の純度は95%以上であることを確認した。
【0104】
1-3.LAG-3抗原タンパク質の活性確認
精製したLAG-3-mFcタンパク質活性は、LAG-3レセプタであるMHC class IIを発現しているDaudi(human B cell line)細胞に結合可能な否かを通じて確認した。5x105のDaudi細胞(# 10213, Korean Cell Line Bank, Korea)は、10μg/mlのLAG-3-mFcまたはMHC class II抗体(blocking antibody)である200μg/mlの抗ヒトHLA-DR、DP、DQ(#555556、BD、USA)抗体と共に、4℃で45分間反応させた。その後、細胞は、2%ウシ胎児血清(fetal bovine serum, FBS)(#26140-079, Thermo Fisher Scientific)が含まれたPBS(phosphate buffered saline: #LB001-02, Welgene, Korea)で3回水洗し、細胞表面に結合したLAG-3確認のためにPE(phycoerythrin)蛍光物質が結合された抗ヒトLAG-3抗体(#565616, BD Biosciences, USA)を4℃で30分間処理した後、同じ水洗過程を経て、以後0.2mlの2% FBSが含まれたPBSで懸濁させた後、フローサイトメトリー(flow cytometry)であるFACSCanto II (BD Biosciences)を使用して分析した。
【0105】
その結果、精製したLAG-3-mFcタンパク質は、Daudi細胞によく結合し、MHC class IIに対する抗体を処理してブロッキング(blocking)したときは、その結合が減少することを確認した(
図1C)。その結果は、精製したLAG-3-mFcタンパク質が細胞表面に発現しているMHC class IIと結合することができ、構造的に活性を有していることを示す。
【0106】
実施例2.LAG-3ヒト抗体の選別
2-1.バイオパンニング
実施例1で作製したLAG-3-mFc及びSino Biological Inc.で購入したLAG-3-his(#16498-H08H)タンパク質抗原50ugを免疫吸着(immunosorb)チューブにコーティングした後、ブロッキングを行った。
【0107】
ヒト抗体ライブラリファージは、2.7x1010の多様性を有するヒトscFv(single-chain variable fragment)ライブラリをバクテリアに感染させた後、バクテリアを30℃で16時間培養した。培養後、遠心分離して上澄み液をPEG(polyethylene glycol, Sigma)で濃縮した後、それをPBS緩衝溶液に溶かしてヒト抗体ライブラリを準備した。免疫チューブにライブラリファージを入れた後、室温で2時間反応させた後、1 x PBS-Tween20(PBS-T)と1 x PBSで水洗した後、抗原に特異的に結合したscFv-ファージだけ溶出した。溶出されたファージを再び大膓菌に感染させて増幅させるパンニング過程を通じて陽性ファージのプール(pool)を得て、類似した方法で2~3次ラウンドパンニングを行い、各パンニングラウンドでのファージ流入数と結合数は、表2に示した通りである。
【0108】
【0109】
2-2.ポリ(poly)ファージELISA
実施例2-1の各ラウンドのパンニング過程を通じて収得した陽性ポリscFv-ファージ抗体プールに対する抗原との特異性を調べるために、ポリファージELISA(enzyme linked immunoassay)を行った。
【0110】
1次から3次までパンニングして冷凍しておいたそれぞれの細胞ストック(stock)を5mlの2 x YTCM(Yeast extract 10g, Tryptone 17g, NaCl 5g, chloramphenicol 34μg/ml)、2%グルコース、5 mM MgCl2培地にOD600で0.1になるように入れた後、37℃で2~3時間(OD600=0.5~0.7)培養した後、M1ヘルパーファージを感染させて2 x YTCMK(2 x YTCM, Kanamycin 35 μg/ml), 5 mM MgCl2, 1 mM IPTG培地に30℃で16時間培養した。培養した細胞を遠心分離(4,500rpm、15分、4℃)後、上澄み液を新たなチューブに移した。96ウェル免疫プレート(#439454、NUNC、USA)には、カルボキシ末端が他の標識(tag)で融合された2種のヒトLAG-3抗原、LAG-3-mFcとLAG-3-hisタンパク質をそれぞれウェル当り100ngずつ4℃で約16時間、コーティング緩衝溶液(coating buffer)でコーティングした後、PBSに溶かした4%スキムミルク(skim milk)を使用して各ウェルをブロッキング(blocking)した。その後、各ウェルごとにPBS-T 0.2mlを使用して水洗し、1次~3次パンニングポリscFv-ファージを各ウェルに100μlずつ入れ、常温で2時間反応させた。再び、各ウェルごとにPBS-T 0.2mlを使用して4回水洗後、HRP(horseradish peroxidase)が結合されたマウス抗M13抗体(#11973-MM05, Sino Biological Inc.)を1:2,000に希釈して室温で1時間反応させた。PBS-Tで水洗した後、OPD tablet(#8787-TAB、Sigma)をPC緩衝溶液(0.1 M Na2HPO4, 0.005 M Na-Citrate, pH 5.0)に溶かした基質溶液を作製し、100μl/wellずつ入れて10分間発色させた後、吸光度(absorbance)490nmで分光光度計(spectrophotometer: Molecular Devices, USA)で測定した。
【0111】
その結果、
図2によれば、カルボキシ末端の標識(tag)が異なる2種のヒトLAG-3抗原であるLAG-3-mFcとLAG-3-hisタンパク質に対する結合能が3次ポリscFv-ファージで増強(enrichment)されることをELISA分析法で確認した。
【0112】
2-3.単一クローン選別
抗原に対して特異的な単一scFvファージクローンを選別するために、結合能に優れた3次パンニング多クローンファージ抗体群から得たコロニーを選択して2 x YTCM 、2%グルコース、5mM MgCl2培地1mlが含まれた96ディップウェルプレート(#90030、Bioneer、Korea)において37℃条件で16時間培養した。培養後、1mlの2 x YTCM、2%グルコース、5 mM MgCl2培地にOD600で値が0.1になるように100~200μlを取って入れた後、37℃で2~3時間(OD600=0.5~0.7)培養し、M1ヘルパーファージをMOI(multiplicity of infection)値が1:20になるように感染させた後、前記実施例2-2と同様の方法で進めて、単一scFvファージに対してファージ-ELISAを行った。
【0113】
その結果、
図3に示されたように、組み換えヒトLAG-3-his抗原に対して結合能に優れた28個の単一ファージクローンを選別して得た。選別されたファージクローンは、下記実施例2-4塩基配列分析と、実施例3ないし実施例5のような抗体特性分析過程を通じて追加選別され、そのうち、LAG-3に特異的に結合する単一クローン1E09クローンに係わる実施例を記述した。
【0114】
2-4.単一クローンの塩基配列分析
選別されたLAG-3に特異的に結合する単一クローン1E09に対してDNA精製キット(Qiagen、Germany)を用いてDNA-prepを行い、配列分析を依頼した(Solgent、Korea)。配列分析結果から、選別された抗体のVH(variable region of heavy chain)と、VL(variable region of light chain)のCDR(complementarity determining region)部位を確認し、それら抗体と生殖系列(germ line)抗体群の類似性をNCBIのウェブページhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/のIg BLASTプログラムを用いて調査した。LAG-3に特異的に結合する単一クローン1E09の特性を表3に整理して提示した。
【0115】
【0116】
選別された抗体の重鎖及び軽鎖CDR、FR(framework region)配列、及びそれを含む重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗体は、次の表4及び表5の通りである。
【0117】
【0118】
【0119】
実施例3.LAG-3ヒト単一抗体の生産
3-1.scFv形態をIgG形態に転換(conversion)
選別されたLAG-3に対する単一クローンファージ抗体1E09を完全(fully)IgG形態に転換するために、重鎖と軽鎖とのDNA塩基配列に対してそれぞれSfiI/NheIとSfiI/BglII制限酵素部位の塩基配列を有するプライマーを用いてPCR(iCycler iQ, Bio-Rad, USA)を行った。重鎖と軽鎖PCR産物は、それぞれ一致する制限酵素部位を有するそれぞれの発現ベクターと共に切断して、DNA-gel extractionキット(Qiagen)でDNAを溶出した。ライゲーション(ligation)は、ベクター1μl(10ng)、重鎖または軽鎖15μl(100~200ng)、10xバッファ2 μl, ligase(1U/μl) 1μl、蒸溜水を混合して室温で1~2時間放置した後、形質転換細胞(competent cell, XL1-blue)に入れて氷に5分間載置し、42℃で90秒間熱衝撃(heat shock)を加えた。
【0120】
熱衝撃後、培地1mlを入れ、37℃で1時間育った後、LB Ampプレートにスプレディング(spreading)して37℃で16時間培養した。このようにして得たコロニーを取ってLB Amp培地5mlを接種して37℃で16時間培養した後、DNA-prepキット(Nuclogen)を用いてDNA-prepを行った。得られたDNAは、配列分析を依頼した(Solgent、Korea)。
【0121】
その結果、完全IgGに転換した1E09の重鎖と軽鎖クローンのDNA塩基配列が表3のクローンのファージ抗体の配列と一致することを確認した。以後、1E09の抗体生産のために、それぞれの重鎖と軽鎖クローンをLB Amp 100ml培地で育ってmidi-prepキット(QIAgen)を用いてそれぞれ多量のプラスミドを得た。
【0122】
3-2.ヒト単一抗体の生産
準備された重鎖と軽鎖とを含む発現ベクターは、6:4の比率でHEK-293F細胞に同時形質感染(co-transfection)して7日目上澄み液を収去して遠心分離と0.22μm Top-フィルタを通じて細胞と浮遊物質とを除去した後、上澄み液を集めてタンパク質A親和性クロマトグラフィー(protein A affinity chromatography)を行い、IgG抗体を精製した。精製後、グリシン緩衝溶液(glycine buffer)で抗体を溶出し、最終PBS緩衝溶液に交換した。精製された抗体は、抗体のモル吸光係数(molar extinction coefficient)を用いて分光光度計(SpectraMX M5, Molecular Devices, USA)を使用して吸光度(absorbance)280nmで定量され、使用前まで-70℃に保管した。精製された抗体は、還元、非還元条件で各5μgずつローディングし、SDS-PAGE分析して精製タンパク質の純度及び移動度(mobility)状態を確認した。
【0123】
その結果、LAG-3ヒト単一抗体1E09は、非還元条件で150kDa以上サイズで検出され、生産量は、130mg/Lであった(
図4)。
【0124】
実施例4.LAG-3ヒト単一抗体の特性
4-1.LAG-3抗原に対する抗体特異性
ヒトLAG-3を過剰発現する形質転換細胞プールは、ヒトLAG-3(NCBI accession number NM_002286.5)を含んでいるpcDNA3.1プラスミドをHEK293Eに形質感染させた後、100 μg/ml Zeocin(#R25001, Thermo Fisher Scientific)が入っている選択的培養培地で選別過程を行った。選別過程後、細胞プールは、PE(phycoerythrin)蛍光物質が結合された抗ヒトLAG-3抗体(#565616、BD、USA)を用いたFACS(fluorescence activated cell sorting)分析を通じて発現状態を確認して分離し、抗原に対する抗体の特性分析評価のために使用された。
【0125】
LAG-3-1E09抗体の抗原特異性は、製造したヒトLAG-3過剰発現HEK293E細胞プールにLAG-3 siRNA(small interfering RNA)(Bioneer, Korea)を処理してLAG-3発現を減少させた後、抗体の結合程度をFACS分析を通じて減少以前と比較して確認した。
【0126】
ヒトLAG-3過剰発現細胞に20nMの対照siRNA(siCon)またはLAG-3 siRNA (siLAG-3)を処理し、48時間後にウエスタンブロット(Western blot)を通じて確認した結果、LAG-3siRNAを処理した細胞でLAG-3の発現量が90%以上減少することを確認した(
図5A)。この際、LAG-3抗体の細胞結合を確認するために、試料当り0.5x10
6の各細胞を準備して2μg/mlの抗体と4℃で30分間反応させた。その後、細胞は、2% FBSが含まれたPBSで3回水洗し、 FITC(fluorescein isothiocyanate)蛍光物質が結合された抗ヒトIgG抗体(#FI-3000、Vectorlabs)を使用し、4℃で30分間反応後、同じ水洗過程を経た後、0.2mlの2% FBSが含まれたPBSで懸濁させた後、フローサイトメトリーであるFACSCanto II flow cytometerを使用して分析した。その結果、LAG-3-1E09ヒト単一抗体は、ヒトLAG-3過剰発現細胞にはよく結合したが、LAG-3siRNA処理によってLAG-3発現が減少した細胞では、結合が減少することを示した(
図5B)。その結果、LAG-3-1E09ヒト単一抗体がヒトLAG-3抗原に特異的に結合するということを意味した。
【0127】
4-2.他種のLAG-3タンパク質に対する交差反応性(cross-reactivity)分析
実施例4-1のヒトLAG-3過剰発現形質転換細胞プール作製と同じ方法でサル(Rhesus monkey) LAG-3(NCBI accession number XM_001108923.2)またはマウスLAG-3(NCBI accession number NM_008479)を含んでいるpcDNA3.1プラスミドをHEK293E細胞にそれぞれ形質転換して細胞プールを作製し、抗原に対する1E09抗体の特性分析評価のために使用した。
【0128】
LAG-3-1E09ヒト単一抗体の交差反応性確認のために、ヒト、サル、マウスLAG-3をそれぞれ過剰発現する形質転換HEK293E細胞を試料当り0.2 x 106個準備し、抗体を6μg/ml(40nm)から1/3希釈倍数で連続希釈して準備された細胞と4℃で30分間反応させた。その後、細胞は、2% FBSが含まれたPBSで3回水洗し、FITC蛍光物質が結合された抗ヒトIgG抗体(#FI-3000、Vectorlabs)を使用して4℃で30分間反応後、同じ水洗過程を経た後、0.2mlの2% FBSが含まれたPBSで懸濁させた後、フローサイトメトリーであるFACSCanto II flow cytometerを使用して分析した。
【0129】
その結果、LAG-3ヒト単一抗体1E09は、細胞表面に過剰発現されたヒト、サル、及びマウスのLAG-3タンパク質に対していずれも特異的に結合し、抗体濃度に依存的に結合が増加することを示した(
図6)。この際、抗体の細胞結合能(cell binding capacity)を、最大結合の50%に達するのに必要な量(EC
50)によって計算したとき、細胞結合程度を示すMFI(mean fluorescence intensity)値をGraphPad Prismソフトウェアを使用して分析した結果、LAG-3-1E09抗体の細胞結合能を示すEC
50値は、ヒトLAG-3に対しては、0.0757μg/ml、サルLAG-3に対しては、0.2462μg/ml、マウスLAG-3に対しては、1.5003μg/mlと計算された。
【0130】
4-3.LAG-3ヒト単一抗体の抗原に対する親和度(affinity)確認
LAG-3ヒト単一抗体1E09の抗原に対する結合親和度は、カルボキシ末端にマウスFc(mFc)が融合された組み換え融合タンパク質であるヒトLAG-3(hLAG-3-mFc)、サルLAG-3(MrhLAG-3-mFc)、マウスLAG-3(mLAG-Fc)抗原を用いてOctet(登録商標) QKe(Fortebio Inc. USA)分析装備を通じて測定した。
【0131】
抗原抗体間親和度測定のために、AHC(anti-human Fc capture: #18-5060, Fortebio Inc.)またはAMC(anti-mouse Fc capture: #18-5088, Fortebio Inc.)バイオセンサーを緩衝液(#18-1042、Fortebio Inc.)に10分間安定化させた後、抗原または抗体を固定し、緩衝液(#18-1042、Fortebio Inc.)に10分間安定化させた後に固定されていない抗原または抗体は、緩衝液で5分間洗浄し、96ウェルプレート(#655209, Greiner Bio-One, USA)に結合を希望する抗体または抗原を濃度別(0.94-60nm)に準備して10分間結合(association)反応を行い、次いで、10分または30分間解離(dissociation)反応を行った。全ての実験は、30℃、1,000rpm条件で行い、経時的な結合と解離過程中のセンサーグラム(sensorgram)データを収集してOctetデータ分析ソフトウェア9.0によって1:1グローバルバインディングフィッティングモデル(global binding fitting model)を適用して平衡解離定数(equilibrium dissociation constant, KD)を求めた。
【0132】
その結果、
図7のように、LAG-3ヒト単一抗体1E09の抗原結合力(KD)は、ヒトLAG-3抗原に対して0.0918 nM(
図7A)と最も高い親和度を示し、サルLAG-3抗原には、0.328nM(
図7B)、マウスのLAG-3抗原には、0.596nM(
図7C)の親和度を示した。
【0133】
4-4.ELISA分析法によるLAG-3抗原に対する結合部位(epitope)決定
LAG-3ヒト単一抗体1E09の抗原に対する結合部位を調べるために、
図8AのようにLAG-3の細胞外領域でIg-Vドメイン(29-167番目アミノ酸配列)を切断(△Ig-V)するか、Ig-Vドメイン内特定または不特定アミノ酸を他のアミノ酸に置換した変異体(M1-M7)とwild-type(WT)をmFcまたはHisタッグと融合して作製した組み換えLAG-3タンパク質を前記実施例1のように、生産、精製した(
図8A及び
図8B)。但し、LAG-3-His(WT)は、Sino Biological Inc.(#16498-H08H)で購入して使用し、生産した組み換えLAG-3-Hisタンパク質は、Ni Sepharose 6 Fast Flow resin (#17531803, GE Healthcare)を用いた親和性クロマグレピ(affinity chromatography)を通じて精製した。精製または購買した組み換えLAG-3タンパク質は、SDS-PAGEを通じて純度を確認した後(
図8B)、LAG-3ヒト単一抗体1E09の結合特異性確認のためにELISA分析に使用した(
図8C)。
【0134】
LAG-3抗原変異体を用いたELISA分析結果、LAG-3-1E09抗体は、wild-type LAG-3 抗原と比較して、LAG-3-ΔIg-V変異体に結合しておらず、LAG-3 Ig-Vドメイン変異体では、M7>M6≧M4>M1順に結合が減少することが分かった(
図8C)。その結果、LAG-3-1E09ヒト単一抗体は、LAG-3の細胞外領域部分のうち、Ig-Vドメイン(29-167番目アミノ酸配列)に結合部位を有すると確認され、詳細的には、LAG-3 Ig-VドメインのM1、M4、M6、M7変異体の変異アミノ酸位置に結合部位を有し、前記アミノ酸位置は、wild-type LAG-3 でそれぞれ
52DL
53,
107GGLRSGRLPLQ
117,
137R,
150AVHLRDRALSCR
161であると確認され、本発明のLAG-3-1E09抗体は、立体形態的エピトープ(conformational epitope)を有することを確認した。
【0135】
実施例5.LAG-3ヒト単一抗体の活性評価
5-1.LAG-3抗体によるLAG-3/MHC class II複合体形成抑制確認
LAG-3-1E09抗体がLAG-3/MHC class II複合体形成を、抑制可能か否かを確認するために、細胞表面にMHC class IIを発現しているRaji細胞株(Burkittリンパ腫由来のヒト白血病細胞)をそれぞれ試料当り0.2 x 106個準備し、200nm (14.4μg/ml)のLAG-3-mFcタンパク質に抗体を400nmから1/2希釈倍数で連続希釈して4℃で30分間反応(pre-incubation)させた後、抗原-抗体混合物を準備した細胞と4℃で30分間反応させた。その後、細胞は、2% FBSが含まれたPBSで3回水洗し、LAG-3-mFcを検出することができるFITC蛍光物質が結合された抗マウスIgG抗体(#FI-2000、Vectorlabs)を使用して4℃で30分間反応させてから、同じ水洗過程を経た後、0.2mlの2% FBSが含まれたPBSで懸濁させた後、フローサイトメトリーであるCytoFLEX (Beckman coulter, USA)を使用して分析した。
【0136】
LAG-3-1E09抗体のLAG-3/MHC class II複合体形成を防ぐ阻害能は、MHC class II発現細胞に結合するLAG-3-mFcの結合力減少によって分かり、実験結果でアイソタイプコントロール抗体(韓国公開特許公報第2015-0023909号)を含めてLAG-3ヒト単一抗体1E09は、濃度依存的にLAG-3とMHC class II複合体の形成を阻害することを確認した(
図9)。その阻害程度は、抗体による最大抑制の50%に達するのに必要な試料の量(IC
50)と示し、LAG-3-mFcの結合程度を確認するMFI値とGraphPad Prismソフトウェアを用いて分析した結果、アイソタイプコントロール抗体(reference)と1E09抗体のIC
50値は、それぞれ26.6084 nM、25.0922 nMと類似していると確認された。
【0137】
5-2.LAG-3-1E09抗体のT細胞に対する活性評価
LAG-3に結合するヒト単一抗体1E09の活性評価実験は、LAG-3/MHC class II遮断バイオアッセイキット(blockade bioassay kit: #CS194822, Promega)を使用して進行した。MHC class IIが過剰発現されているAPC細胞株を96ウェルプレートに16時間以上培養した後、10μg/mlの抗体濃度から1/2.5希釈倍数で連続希釈した各抗体を処理し、ヒトLAG-3が過剰発現される作用細胞株(Jurakat T 細胞株)を6時間、共に培養した。抗体の阻害回復程度は、ルシフェラーゼ(luciferase)が基質を分解して出る発光強度によって分かり、分光光度計(GloMax(登録商標) Discover System, Model # GM3000, Promega)で測定した。アイソタイプコントロール抗体(reference)を含んでLAG-3-1E09抗体は、LAG-3/MHC II複合体形成によって減少していた作用細胞株であるJurkat T細胞のシグナルを濃度勾配依存的に回復させる活性を示した(
図10)。その回復程度は、抗体による最大効果の50%に達するのに必要な試料の量(EC
50)で示し、GraphPad Prismソフトウェアを用いて分析した結果、LAG-3-1E09抗体の阻害回復能力であるEC
50値は、0.05784μg/ml、アイソタイプコントロール抗体(reference)は、0.16811μg/mlと確認され、本発明の1E09抗体は、アイソタイプコントロール抗体対比で約2.9倍優れた活性度を示した。
【0138】
実施例6.LAG-3ヒト単一抗体の最適化
6-1.1E09抗体の最適化のためのライブラリ作製
抗体最適化は、重鎖は、固定し、(株)Yバイオロジックスで保有している105-106軽鎖(light chain, LC)プール(pool)を入れて新たなLCシャッフリングライブラリ(LC shuffling library)を作製し、1)LCシャッフリング、2)重鎖の疎水性コア(hydrophobic core)、露出残基(exposed residue)、電荷クラスタ(charge cluster)、塩ブリッジ(salt bridge)のように構造的に重要な部位の残基と比較分析を行って保存された残基(conserved residue)に変異させた後、LCシャッフリングを進めるコアパッキング(core packing)+LCシャッフリング、3)抗体可変領域(variable region)のDNAは、in vivo親和度成熟(affinity maturation)過程で頻繁に変異される変異ホットスポット(mutational hot spot)をランダムに変異させた後、LCシャッフリングを進めるCDRホットスポット+LCシャッフリングの3つの方法で進めた。
【0139】
LCシャッフリングライブラリを作製するために、1E09抗体のLC遺伝子をBstX Iで切断した後、ベクターとして使用し、(株)Yバイオロジックスで保有しているライブラリプールをBstX Iで切断してインサート(insert)として使用した。リガーゼでライゲーションした後、電気穿孔形質転換用細胞を用いて形質転換を行った。四角プレート(square plate)に形質転換された細胞を集めて抗体ライブラリを製造した結果、約1.5x107の多様なライブラリを得て、塩基配列分析結果重鎖(heavy chain、HC)の配列は、いずれも同一であり、LCの配列が互いに異なることを確認した。
【0140】
Coreパッキング+LCシャッフリングライブラリを作製するために、1E09抗体のFR部分を保存(conserved)されたアミノ酸配列で置換した後、LC遺伝子をBstX Iで切断した後、ベクターとして使用し、(株)Yバイオロジックスで保有しているライブラリプールをBstX Iで切断してインサートとして使用した。リガーゼでライゲーションした後、電気穿孔形質転換用細胞を用いて形質転換を行った。四角プレートに形質転換された細胞を集めて抗体ライブラリを製造した結果、約8.4x106の多様なライブラリを得て、塩基配列分析結果、HCのFR部位が保存されたアミノ酸配列で置換され、LCの配列が互いに異なることを確認した。
【0141】
CDRホットスポット+LCシャッフリングライブラリを作製するために、1E09抗体のFR部分を保存(conserved)されたアミノ酸配列で置換された後、CDR1、CDR2のホットスポットライブラリをSfiIで切断した後、インサートとして使用し、(株)Yバイオロジックスで保有しているライブラリプールをSfiIで切断してベクターとして使用した。リガーゼでライゲーションした後、電気穿孔形質転換用細胞を用いて形質転換を行った。四角プレートに形質転換された細胞を集めて抗体ライブラリを製造した結果、約5.6 x 106の多様なライブラリを得て、塩基配列分析結果、HCのFR部位が保存されたアミノ酸配列で置換され、CDR1、CDR2のホットスポット配列のアミノ酸がランダムに変異され、LCの配列が互いに異なることを確認した。
【0142】
実施例7.LAG-3ヒト単一抗体変異体の選別
7-1.バイオパンニング
1E09抗体の変異体選別のためのバイオパンニングは、実施例6-1において、抗体最適化のために作製したヒト抗体ライブラリをバクテリアに感染させた後、実施例2-1と同じ方法で進行し、LAG-3抗原に特異的に結合するscFv-ファージを溶出した。溶出されたファージを再び大膓菌に感染させて増幅させるパンニング過程を通じて陽性ファージのプール(pool)を得て、抗体変異体を得るためのパンニングは、最初ラウンドのみ進めた。その結果、表6のように最適化ヒト抗体ライブラリを用いたパンニングにおけるファージ流入数と抗原に対する結合数を確認した。
【表6】
【0143】
7-2.LAG-3抗体変異体の単一クローン選別
LAG-3抗原に対して特異的な単一scFvファージクローンを選別するために作製した最適化ヒト抗体ライブラリを用いたパンニングで得たコロニーを、実施例2-3と同じ方法で進めて単一scFvファージに対してファージ-ELISAを行った。
【0144】
その結果、1E09最適化ヒト抗体ライブラリを用いたパンニング結果のうち、例えば、Coreパッキング+LCシャッフリング(
図11A)とCoreパッキング+CDRホットスポット+LCシャッフリング(
図11B)方法を通じて得た132個のクローンのうち、親抗体(1E09)と類似して抗原に対する結合能を有するクローンを含んで78個の単一ファージクローンを確認することができた。
【0145】
7-3.LAG-3抗体変異体の塩基配列分析
選別された単一クローンに対する塩基配列分析は、実施例2-4と同様の方法で遂行及び調査した。その結果、親抗体1E09と類似性において差がある22種の新たなファージ抗体を確認し、表7にまとめた。
【0146】
【0147】
選別された抗体の重鎖及び軽鎖CDR、FR配列、及びそれを含む重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗体は、次の表8ないし表13の通りである。
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
実施例8.選別されたLAG-3ヒト単一抗体変異体の生産
8-1.scFv形態をIgG形態に転換(conversion)
選別された22種のLAG-3に対する単一クローンファージ抗体をファージから完全ヒトIgG形態に転換するために、実施例3-1と同じ方法を行い、重鎖と軽鎖DNA塩基配列を含むそれぞれのプラスミドDNAを得て配列分析を依頼した(Solgent、Korea)。
【0155】
その結果、完全IgGに転換したLAG-3に対する22個抗体クローンの重鎖と軽鎖配列は、それぞれファージ抗体の配列と一致することを確認した。次いで、それぞれの配列が確認された重鎖と軽鎖プラスミドDNAは、抗体生産のために使用された。
【0156】
8-2.LAG-3抗体変異体の生産
選別された1E09抗体変異体である22種の抗体生産は、実施例3-2の記述と同様の過程によって行われた。クローニングされた重鎖と軽鎖とを含むそれぞれのベクターは、動物臨時発現細胞HEK-293Fに同時形質感染させて発現させた後、タンパク質A親和性クロマトグラフィーで精製して生産量を確認し、還元、非還元条件でSDS-PAGE分析を通じてタンパク質純度及び移動度状態を確認した。
【0157】
その結果、
図12のようにLAG-3-1E09ヒト単一抗体変異体は、非還元条件では、いずれも150kDa以上のサイズで検出され、生産量は、最低22mg/Lから最大186mg/Lの間で多様に確認された。
【0158】
実施例9.選別されたLAG-3ヒト抗体変異体の特性
9-1.選別されたLAG-3ヒト抗体変異体の交差反応性(cross-reactivity)
LAG-3ヒト単一抗体の変異体である22種抗体のヒトLAG-3抗原に対する結合及び他の種間交差反応性は、実施例4-1、4-2に記述した方法でヒト、サル、またはマウスLAG-3が過剰発現されたHEK293E細胞でフローサイトメトリーであるCytoFLEXを使用して抗体結合を示すMFI値を測定して確認した。LAG-3-1E09親抗体(parent)を含めてその変異抗体のヒトLAG-3抗原に対する結合とサル、マウス種間交差反応性如何は、それぞれ2μg/mlの抗体濃度で測定した値を使用して下記表14に示した。
【0159】
【0160】
また、22種の抗体において、例えば、1E09_AM_2H01、1E09_FR_1E05抗体の場合、細胞結合能(cellbinding capcity)は、
図13に示したEC
50値の通りである。
【0161】
9-2.選別されたLAG-3ヒト単一抗体変異体抗体の活性評価
LAG-3ヒト単一抗体1E09変異体である22種抗体の活性評価実験は、実施例5-2のような方法でLAG-3/MHC class II遮断バイオアッセイキットを使用して進行した。MHC IIが過剰発現されているAPC細胞株を96ウェルプレートに16時間以上培養した後、抗体濃度は、25μg/ml(
図14A)または10μg/ml(
図14B)から1/2.5希釈倍数で連続希釈された各抗体を処理し、ヒトLAG-3が過剰発現される作用細胞株を6時間、共に培養した。抗体の阻害回復程度は、ルシフェラーゼが基質を分解して出る発光強度を分光光度計(GloMax(登録商標) Discover System, Model # GM3000, Promega)で測定して確認した。LAG-3-1E09親抗体(parent)を含めて22種の抗体のうち、例えば、15種抗体の場合、LAG-3/MHC class II複合体形成によって減少していた作用細胞株(Jurkat T細胞)のシグナルを濃度勾配依存的に回復させる活性を示した(
図14)。アイソタイプコントロール抗体(reference)と比較したとき、本発明の12種の抗体が優れた活性を示すということを確認することができ、各抗体の阻害回復能力を示すEC
50値は、表15に示した。
【0162】
【0163】
9-3.選別されたLAG-3ヒト単一抗体変異体の抗原に対する親和度確認
選別されたLAG-3ヒト単一抗体変異体の抗原に対する親和度は、実施例4-3のように組み換え融合タンパク質であるヒトLAG-3(hLAG-3-mFc)、サルLAG-3(MrhLAG-3-mFc)、マウスLAG-3(mLAG-Fc)抗原を用いてOctet(登録商標) QKe (Fortebio Inc. USA)分析装備を通じて同じ方法で平衡解離定数KDを求めて確認した。
【0164】
その結果、LAG-3ヒト単一抗体1E09の変異体抗体のうち、例えば、1E09-AM_2H01(
図15、A-C)と1E09-FR_1E05(
図15D、E)の場合、抗原結合力KDは、ヒトLAG-3抗原に対してそれぞれ0.136nM、0.0906nMと確認され、サルLAG-3抗原には、それぞれ0.629nM、0.456nMと確認され、マウスLAG-3抗原において、1E09-AM_2H01には、2.62nM、1E09-FR_1E05には、結合反応を示していないと確認された。
【0165】
9-4.選別されたLAG-3ヒト単一抗体変異体の抗原に対する結合部位(epitope)の決定
LAG-3ヒト単一抗体1E09変異体の抗原に対する結合部位の確認は、実施例4-4のようにLAG-3の細胞外領域において、Ig-Vドメインが切断(ΔIg-V)されるか、特定または不特定のアミノ酸配列を他のアミノ酸に置換(M1-M7)した組み換えLAG-3突然変異体とWTを用いてELISA分析によって確認した(
図16)
【0166】
その結果、LAG-3ヒト単一抗体1E09の変異体抗体のうち、例えば、1E09-AM_2H01と1E09-FR_1E05の場合、親抗体である1E09(
図8C)と類似してLAG-3細胞外領域部分においてIg-Vドメインに結合し、詳細的には、LAG-3 Ig-VドメインのM1、M4、M6、M7部位に結合すると示され、WT LAG-3の
52DL
53,
107GGLRSGRLPLQ
117,
137R,及び
150AVHLRDRALSCR
161に結合する立体構造エピトープ(conformational epitope)を有するということを確認した(
図16)。
【配列表】