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特許7003310不飽和結合を有する新規含フッ素化合物およびこれを用いた表面改質剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】不飽和結合を有する新規含フッ素化合物およびこれを用いた表面改質剤
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/12 20060101AFI20220113BHJP
   C07C 69/653 20060101ALI20220113BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20220113BHJP
   C07F 9/09 20060101ALI20220113BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20220113BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
C07F7/12 R CSP
C07C69/653
C07F7/18 E
C07F7/18 L
C07F9/09 J
C09K3/18 104
C08F220/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021034127
(22)【出願日】2021-03-04
(62)【分割の表示】P 2017560362の分割
【原出願日】2016-12-27
(65)【公開番号】P2021100940
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2016002872
(32)【優先日】2016-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016044421
(32)【優先日】2016-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】中村 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 典久
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 隆之
(72)【発明者】
【氏名】白井 智大
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-117410(JP,A)
【文献】国際公開第2009/093568(WO,A1)
【文献】特開平5-214029(JP,A)
【文献】特開平6-248026(JP,A)
【文献】特開2010-215518(JP,A)
【文献】特開2014-40373(JP,A)
【文献】米国特許第5243025(US,A)
【文献】Elena V. Sablina et al.,The role of multiple bonds in the radiolysis of linear perfluorocarbons.,Mendeleev Communications,1992年,2(4),p.141-143, Table.1
【文献】S. R. Allayarov et al.,Radiolysis of n-perfluoroalkanes and polytetrafluoroethylene.,Journal of Fluorine Chemistry,1999年,Vol.96,p.61-64 Table.1
【文献】Zhen Yu Yang and Donald J. Burton,A novel double insertion of the difluoromethylene unit from trifluoromethylcopper into the carbon-co,Journal of Fluorine Chemistry,2000年,Vol.102,p.89-103, p.91 2.2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(5)
Rf-(CF=CR-CR=CF-Rf-Y-Z (5)
{式(5)中、
Rfは、末端がCFである炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、
Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキレン基であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり、
nは1~5の整数であり、
Yは連結基であって、下記一般式(8)で示される、
(CH-Q-(CH (8)
{式(8)中、lとmの合計は2~6の整数であり、
l及び/またはmが2以上のとき、-CHCH-の代わりに-CH=CH-構造を含んでもよく、
Qは、式(8)において存在しないか、または、-OCONH-、-CONH-、-O-、-NH-、-CO-O-、-O-CO-、-NHCONH-もしくは-C-である}
Zは、下記(i)~(iii)のいずれかの構造である、
(i)下記一般式(6)または下記一般式(7)で示される
-P(=O)(OM)(OM) (6)
-O-P(=O)(OM)(OM) (7)
(式(6)中、または式(7)中、MおよびMは、それぞれ独立して、水素原子、アンモニウム塩、有機アミン塩、または炭素数1~4のアルキル基である)、
(ii)ビニル基、アリル基、スチリル基、メタクリロイル基又はアクリロイル基、または
(iii)SiLL’(3-k)(LはCl、OR(Rは炭素数1~6のアルキル基)または水酸基であり、L’は炭素数1~6の炭化水素基であり、kは1~3の整数であり、LおよびL’が複数存在する場合はLとL’とは互いに異なっても同一でもよい)}
で示される含フッ素化合物。
【請求項2】
Rfが炭素数1~5の直鎖パーフルオロアルキレン基である、請求項1記載の含フッ素化合物。
【請求項3】
及び/またはRが水素原子である、請求項1又は請求項2に記載の含フッ素化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の一般式(5)において、Zがビニル基、アリル基、スチリル基、メタクリロイル基又はアクリロイル基であるモノマーA由来の繰り返し単位を含む、含フッ素重合体。
【請求項5】
前記モノマーAと、分子内に少なくとも1個のビニル基、アリル基、スチリル基、メタクリロイル基又はアクリロイル基を有するモノマーBを共重合させて得られる、請求項4に記載の含フッ素重合体。
【請求項6】
前記モノマーBが、(メタ)アクリル酸もしくはそのエステル類、脂肪酸ビニルエステル類、脂肪族アリルエステル類、ビニルアルキルケトン類、アクリルアミド類、ジエン類、エチレン、アクリロニトリルまたはハロゲンモノマーである、請求項4又は請求項5に記載の含フッ素重合体。
【請求項7】
重量平均分子量が1,000~200,000である、請求項4~6のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項8】
請求項1~3のいずれかに記載の含フッ素化合物または請求項4~6のいずれかに記載の含フッ素重合体を含有する表面改質剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質剤などの原料として有用な不飽和結合を有する新規含フッ素化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素は電気陰性度が大きく分極率が小さいなど独特な性質を有しており、耐熱性、耐薬品性、撥水撥油性、低摩擦性、低屈折性などの性質を利用した機能材の有用な元素として使われている。
しかしながら、これまで撥水性や撥油性を付与する機能製品には炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物が用いられてきたが、環境や人体への蓄積性、および有害性が課題となってきている。
【0003】
そのため、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物で代替する検討が行われてきているが、パーフルオロカーボンの炭素鎖が短くなればなるほど撥水性・撥油性の性能が従来の炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物に比べて劣ることが知られている。
炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を持つ材料の撥水性・撥油性を改善する方法として、フルオロ含有基と基材との結合性基間に種々の相互作用を及ぼす基を導入した例が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
パーフルオロアルキル基のフッ素の一部を水素に置換した化合物とすることで、生体蓄積性が低いといわれている炭素数6以下のパーフルオロアルキル基ユニットの構成体として、改質剤に使用する方法も知られている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
また、オプツール(登録商標)等のパーフルオロポリエーテル構造を有する代替材料を使用したものも知られている。
【0005】
このようにパーフルオロアルキル基を含む表面改質剤は多く見出されているが、これら改質剤の構造に不飽和結合を含むものは知られておらず、またフッ素含有改質剤の内部に不飽和結合を含むことにより表面改質性能が改善されるという例も知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2009/087981号
【文献】特許第5146455号公報
【文献】特開2014-040373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来よりも優れた高い撥水および撥油効果を与え、表面改質性能を高めた新しい材料となる新規含フッ素化合物およびこれを用いた表面改質剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下に示す不飽和結合を有する長鎖の含フッ素基を含有する化合物を用いて表面を改質することにより、高い撥水および撥油性能を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記一般式(1)または下記一般式(2)または下記一般式(5)で示される含フッ素化合物に係る発明である。
Rf-(CR=CR-X-Rf-Y-Z (1)
Rf-(X-CR=CR-Rf-Y-Z (2)
{式(1)中、または式(2)中、
Rfは、末端がCFである炭素数1~6のパーフルオロアルキル基であり、
Rfは、炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり、
nは1~5の整数であり、
Xは、式(1)もしくは式(2)において存在しないか、またはCHもしくはOもしくはSであり、
Yは連結基であり、
Zは、下記(i)~(iii)のいずれかの構造である、
(i)下記一般式(3)または下記一般式(4)で示される
-P(=O)(OM)(OM) (3)
-O-P(=O)(OM)(OM) (4)
(式(3)中、または式(4)中、MおよびMは、それぞれ独立して、水素原子、アンモニウム塩、有機アミン塩、または炭素数1~4のアルキル基である)、
(ii)重合性基、または
(iii)SiLL’(3-k)(Lは加水分解性基または水酸基であり、L’は炭素数1~6の炭化水素基であり、kは1~3の整数であり、LおよびL’が複数存在する場合はLとL’とは互いに異なっても同一でもよい)}
【0010】
また本発明は、Rfが炭素数1~6の直鎖パーフルオロアルキレン基である、上記の含フッ素化合物である。
Rf-(CF=CR-CR=CF-Rf-Y-Z (5)
{式(5)中、
Rfは、末端がCFである炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、
Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキレン基であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり、
nは1~5の整数であり、
Yは連結基であり、
Zは、下記(i)~(iii)のいずれかの構造である、
(i)下記一般式(6)または下記一般式(7)で示される
-P(=O)(OM)(OM) (6)
-O-P(=O)(OM)(OM) (7)
(式(6)中、または式(7)中、MおよびMは、それぞれ独立して、水素原子、アンモニウム塩、有機アミン塩、または炭素数1~4のアルキル基である)、
(ii)重合性基、または
(iii)SiLL’(3-k)(Lは加水分解性基または水酸基であり、L’は炭素数1~6の炭化水素基であり、kは1~3の整数であり、LおよびL’が複数存在する場合はLとL’とは互いに異なっても同一でもよい)}
【0011】
また本発明は、Rfが炭素数1~5の直鎖パーフルオロアルキレン基である、上記の含フッ素化合物である。
【0012】
また本発明は、Yは、下記一般式(8)で示される、
(CH-Q-(CH (8)
{式(8)中、lとmの合計は2~6の整数であり、
l及び/またはmが2以上のとき、-CHCH-の代わりに-CH=CH-構造を含んでもよく、
Qは、式(8)において存在しないか、または、-OCONH-、-CONH-、-O-、-NH-、-CO-O-、-O-CO-、-NHCONH-もしくは-C-である}、上記の含フッ素化合物である。
【0013】
また本発明は、R及び/またはRが水素原子であり、R及び/またはRが水素原子である、上記の含フッ素化合物である。
【0014】
また本発明は、Xが、式(1)もしくは式(2)において存在しないか、またはCHである、上記の含フッ素化合物である。
【0015】
また本発明は、加水分解性基LがClまたはOR(Rは炭素数1~4のアルキル基)である、上記の含フッ素化合物である。
【0016】
また本発明は、上記の新規フッ素化合物よりなる表面改質剤である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の含フッ素化合物は、下記一般式(1)または下記一般式(2)で示される。
Rf-(CR=CR-X-Rf-Y-Z (1)
Rf-(X-CR=CR-Rf-Y-Z (2)
【0018】
ここで一般式(1)及び一般式(2)において、Rf基は末端がCFである炭素数1~6のパーフルオロアルキル基である。その構造として分岐構造を有していてもよいが、直鎖のパーフルオロアルキル基は自己会合構造をとりやすく、ガラス表面に単分子層を形成しやすくなると考えられるため、直鎖のパーフルオロアルキル基が好ましい。また、Rf基は炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基である。その構造として分岐構造を有していてもよいが、直鎖のパーフルオロアルキレン基が好ましい。
【0019】
上記の一般式(1)および一般式(2)における、Rf-(CR=CR-X-Rf-の部分の具体的構造としては、C-CH=CH-C-、C-CH=CF-C-、C-CF=CH-C-、C-CF=CF-C-、C-(CH=CH-C-、C-(CH=CH-C-、C-CH=CH-C12-、C-CH=CH-C-、C-CH=CH-C12、C13-CH=CH-C-、C13-CH=CH-C12-、C-CH=CH-C-、CF-CF=CHCH-、CF-CF=CHCH12-、C-CF=CHCH-、C-CF=CHCH12-、C11-CF=CHCH-、C11-CF=CHCH12-、C-CHCH=CF-C-、C-CHCH=CF-C10-、C-CHCH=CF-C-、C-CHCH=CF-C10-、C13-CHCH=CF-C-、C13-CHCH=CF-C10-、C13-(CHCH=CF-C-、C13-(CHCH=CF-C-などが挙げられる。
【0020】
これらの構造は、Rf-IとCHR=CR-Rf-IまたはRf-CR=CHRとI-Rf-Iなどの組み合わせでヨウ素化合物のラジカル的オレフィン付加を行った後、生成する-CF-CIR-CHRCF-の構造部を脱HIまたは脱IF化反応を行うことにより得ることができる。
【0021】
Rf端と反対側の末端ヨウ素は、適当な反応試剤で処理することにより、オレフィン、アルコール、アミン等の基を導入することができる。ここで「Rf端と反対側の末端ヨウ素」とは、例えば、C13-CH=CH-C-IであればCの隣のI(ヨウ素)の意であり、上記の付加反応後に残るRf側の未反応末端ヨウ素を意味する。
【0022】
例えば、Rf-CIR-CHR-Rf-Iを脱HI化合物の場合、得られたRf-CR=CR-Rf-Iにエチレンと付加させたのち得られるRf-CR=CR-Rf-CHCHIを加水分解しRf-CR=CR-Rf-CHCHOHを合成したのち、適切なZ基の導入材、例えばクロロリン酸エステル、アクリル酸クロリド、イソシアン酸基含有トリアルコキシシラン等と既知の方法で結合することにより、目的の含フッ素化合物を得ることができる。
【0023】
上記の一般式(1)および一般式(2)における、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり、nは1~5の整数であることが好ましい。さらに、R及び/またはRが水素原子であることが好ましい。
【0024】
Xは、一般式(1)もしくは一般式(2)において存在しないか、またはCHもしくはOもしくはSであることが好ましい。すわわち、Xは、一般式(1)もしくは一般式(2)で表わされるオレフィン化合物であれば、存在しなくても、CHもしくはOもしくはSであっても高い改質性能を与えることができる。
【0025】
具体的には、Xが存在しない場合には、一般式(1)および一般式(2)は、Rf-(CR=CR-Rf-Y-Zとなる。また、XがCHの場合を例とすれば、式(1)はRf-(CR=CR-CH-Rf-Y-Zとなり、式(2)はRf-(CH-CR=CR-Rf-Y-Zとなる。
【0026】
Xが存在しない場合の合成法は、たとえば、Rf-IおよびCHR=CR-Rf-I、またはRf-CR=CHRおよびI-Rf-Iを、ラジカル的オレフィン付加を行った後、脱HIを行うことによりRf-CR=CR-Rf-Iが合成できる。
【0027】
また、XがCHの場合の合成法は、Rf-CFR-CR=CHおよびI-Rf-I、またはRf-IおよびCH=CHR-CFR-Rf-Iを、ラジカル的オレフィン付加を行った後、脱IF化反応を行うことにより、それぞれRf-CR=CR-CH-Rf-IまたはRf-CH-CR=CR-Rf-Iが合成できる。
【0028】
さらに、X=OまたはSの化合物は、Rf-X-CR-CR-Rf-IまたはRf-CR-CR-X-Rf-Iで表される化合物(R、Rは、その一方がHで、もう一方がCl、BrおよびIから選ばれる元素)である化合物から脱ハロゲン化水素化することにより得ることができる。
【0029】
上記の一般式(1)および一般式(2)におけるZは、下記一般式(3)または下記一般式(4)で示される表面修飾基である。
-P(=O)(OM)(OM) (3)
-O-P(=O)(OM)(OM) (4)
【0030】
ここで一般式(3)中、または一般式(4)中、MおよびMは、それぞれ独立して、水素原子、アンモニウム塩、有機アミン塩、または炭素数1~4のアルキル基である。
【0031】
また本発明の含フッ素化合物は、下記一般式(5)で示される。
Rf-(CF=CR-CR=CF-Rf-Y-Z (5)
【0032】
ここで一般式(5)において、Rf基は末端がCFである炭素数1~5のパーフルオロアルキル基である。その構造として分岐構造を有していてもよいが、直鎖のパーフルオロアルキル基は自己会合構造をとりやすく、ガラス表面に単分子層を形成しやすくなると考えられるため、直鎖のパーフルオロアルキル基が好ましい。また、Rf基は炭素数1~5のパーフルオロアルキレン基である。その構造として分岐構造を有していてもよいが、直鎖のパーフルオロアルキレン基が好ましい。
【0033】
上記の一般式(5)における、Rf-(CF=CR-CR=CF-Rf-の部分の具体的構造としては、CF-CF=CH―CH=CF-C-、CF-CF=CH―CH=CF-C10-、C-CF=CH―CH=CF-C-、C-CF=CH―CH=CF-C10-、C11-CF=CF―CH=CF-C10-、C11-CF=CH―CF=CF-C10-、C11-CF=CF―CF=CF-C10-、C11-CF=CH―CH=CF-C-、C11-CF=CH―CH=CF-C10-、CF-(CF=CH―CH=CF-C10-、C-(CF=CH―CH=CF-C10-、C11-(CF=CH―CH=CF-C10-などが挙げられる。
【0034】
これらの構造は、Rf-CF-IとCHR=CR-CF-Rf-IまたはRfCF-CR=CHRとI-CF-Rf-Iなどの組み合わせでヨウ素化合物のラジカル的オレフィン付加を行った後、生成する-CF-CIR-CHRCF-の構造部を脱HIと脱IF化反応を行うことにより得ることができる。
【0035】
Rf端と反対側の末端ヨウ素は、適当な反応試材で処理することにより、オレフィン、アルコール、アミン等の基を導入することができる。ここで「Rf端と反対側の末端ヨウ素」とは、例えば、C11-CF=CH-CH=CF-C10-IであればC10の隣のI(ヨウ素)の意であり、上記の付加反応後に残るRf側の未反応末端ヨウ素を意味する。
【0036】
例えば、Rf-CF-CIR-CHR-CF-Rf-Iを脱IFした化合物の場合、得られたRf-CF=CR-CHR-CF-Rf-Iを更に脱HF化してRf-CF=CR-CR=CF-Rf-Iを得たのち、更にエチレンと付加させて得られるRf-CF=CR-CR=CF-Rf-CHCHIを加水分解しRf-CR=CR-Rf-CHCHOHを合成したのち、適切なZ基の導入材、例えばクロロリン酸エステル、アクリル酸クロリド、イソシアン酸基含有トリアルコキシシラン等と既知の方法で結合することにより、目的の含フッ素化合物を得ることができる。
【0037】
上記の一般式(5)における、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり、nは1~5の整数であることが好ましい。さらに、R及び/またはRが水素原子であることが好ましい。
【0038】
上記の一般式(5)におけるZは、下記一般式(6)または下記一般式(7)で示される表面修飾基である。
-P(=O)(OM)(OM) (6)
-O-P(=O)(OM)(OM) (7)
【0039】
ここで一般式(6)中、または一般式(7)中、MおよびMは、それぞれ独立して、水素原子、アンモニウム塩、有機アミン塩、または炭素数1~4のアルキル基である。
【0040】
これらのパーフルオロアルキル鎖に挟まれたオレフィン構造を有する機能性基は、スペーサー部でもある連結基Yを介して表面修飾基Zと結合することにより、目的の化合物が合成できる。
【0041】
連結基Yは、下記一般式(8)で示される。
(CH-Q-(CH (8)
【0042】
ここで一般式(8)中、lとmの合計は2~6の整数であり、l及び/またはmが2以上のとき、-CHCH-の代わりに-CH=CH-構造を含んでもよい。
【0043】
Qは、一般式(8)において存在しないか、または、-OCONH-、-CONH-、-O-、-NH-、-CO-O-、-O-CO-、-NHCONH-もしくは-C-である。なおQが-C-の場合、オルト体、メタ体、パラ体が例示できるが、その構造からパラ体が好ましい。
【0044】
例えば離型剤やガラス表面改質剤においては、連結基YにQが存在することにより、分子間でのQの水素結合やπ-π相互作用が作用し、分子の単分子配列の形成を容易にする効果がある。逆に、高分子内でのフッ素含有基の分散を高めるためにはQは存在しない場合の方がよくなるため、その用途により適切なQを選択する必要がある。
【0045】
Qが存在する場合、従来知られている技術により容易に形成することができる。例えば、ウレタン結合(-OCONH-)の場合は、含フッ素アルコール誘導体に対して0.9~1.1倍のイソシアン酸基を有する化合物を、無溶媒または1~10倍重量のジクロロメタンやテトラヒドロフランなどの有機溶媒中で、0.1~5mol%のジラウリン酸ジブチルスズ等を触媒として0℃~50℃で反応することにより形成することができる。
【0046】
表面修飾基Zが、フリーのホスホニル基(-P(=O)(OH))若しくはリン酸基(-OP(=O)(OH))、又はそれらのエステル若しくは塩の場合は、金属表面が修飾可能で、金型などの離型材として利用できる。
【0047】
またZは、重合性基とすることもできる。Zが重合性基の場合には樹脂やフィルム等の表面などの修飾が可能である。この場合、重合性基の種類も特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基等であってもよい。
【0048】
さらにZは、SiLL’(3-k)とすることもできる。
【0049】
ここで式:SiLL’(3-k)において、Lは加水分解性基または水酸基であり、L’は炭素数1~6の炭化水素基であり、kは1~3の整数であることが好ましい。なお、LおよびL’が複数存在する場合はLとL’とは互いに異なっても同一でもよい。
【0050】
ZがSiLL’(3-k)の場合、ガラスや水酸基を有する樹脂、陶器、金属(酸化物)などの表面が修飾可能である。
【0051】
Lが加水分解性基の場合は、Cl、OR(Rは炭素数1~6のアルキル基)が例示される。
【0052】
また、国際公開第2015/136913号記載のようにSi-Hを有するヒドロシラン類を結合性基として利用することも可能である。
【0053】
ZがSiLL’(3-k)のときの改質の方法は当該分野の従来の技術によって達成できる。
【0054】
L’は炭素数1~6の炭化水素基であり、メチル、エチル、プロピル、ビニル、アリル基等が例示される。
【0055】
LおよびL’が複数存在する場合は、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0056】
本発明の記載の化合物を使用することにより、材料表面に撥水および撥油特性を付与して、表面改質剤として利用することができる。
【0057】
本発明の一般式(1)、(2)、(5)で表わされる含フッ素化合物の製造に適用可能な溶剤としては、ヘキサン、トルエン、ジクロロメタン等の(ハロゲン化)炭化水素系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤など、反応に不活性な溶剤であればあらゆるものが使用可能である。溶媒は、表面改質剤として使用する化合物に応じて適切に選択の上で使用でき、また反応に供する材料が液体であれば溶媒を用いなくともよい。
【0058】
本発明の一般式(1)、(2)、(5)で表わされる含フッ素化合物の製造後の後処理としては、周知の方応で実施可能で、例えば、蒸留等により目的物を得たり、中和、溶媒抽出、乾燥、ろ過、濃縮等の公知の方法で粗製物を得、再結晶やカラムクロマトグラフィー等により精製し、目的物の一般式(1)、(2)、(5)で表わされる含フッ素化合物及びこれを用いた表面改質剤を得ることができる。
【0059】
発明の一般式(1)、(2)、(5)で表わされる含フッ素化合物はそのまま改質剤として用いることができるが、他の材料と混合して用いることも可能である。例えば、これらの含フッ素化合物は有機溶媒に溶解して用いることができる。
【0060】
有機溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン、ヘキサンなどの炭化水素類、パーフルオロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼンなどのフローラス溶媒など、これらの含フッ素化合物と反応しない溶媒であればよい。これらの溶媒は混合して用いることもできる。
【0061】
本発明における樹脂やフィルム表面の修飾については、本発明に記載の重合性基を有する化合物(モノマ-A)と、分子内に少なくとも1個の重合性基を有するモノマ-Bとを、重合開始剤Cの存在下で重合させ、含フッ素ポリマーとすることにより達成できる。
【0062】
前記モノマ-Bとしては、例えば、以下の(X)~(X)に示す化合物が挙げられる。
(X)アクリル酸およびメタクリル酸ならびにこれらのエステル類:
メチル、エチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、プロピル、2-エチルヘキシル、ヘキシル、デシル、ラウリル、ステアリル、イソボルニル、ベヘニル、β-ヒドロキシエチル、グリシジル、フェニル、ベンジル、4-シアノフェニルエステル類;
(X)脂肪酸ビニルエステル類:
酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリル酸、ステアリン酸、ベヘン酸等;
(X)スチレン系化合物:スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等;
(X)ハロゲン化ビニルまたはビニリデン化合物類:
フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン等;
(X)脂肪族アリルエステル類:
ヘプタン酸アリル、カプリル酸アリル、カプロン酸アリル等;
(X)ビニルアルキルケトン類:
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン等;
(X)アクリルアミド類:
N-メチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等;
(X)ジエン類:
2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、イソプレン等;
(X)その他:
エチレン、アクリロニトリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルキルエーテル、イソプレン等。
【0063】
モノマーBは、(メタ)アクリル酸エステル、特に(メタ)アクリル酸のアルキルエステルであることが好ましい。アルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
【0064】
モノマーBとして、非フッ素モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸エステルに加えて、ハロゲンモノマー(特に、塩素またはフッ素を含有するモノマー、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン)を使用してもよい。
【0065】
モノマーBの量は、モノマーAの100重量部に対して、好ましくは1~1000重量部、より好ましくは10~100重量部で使用される。
【0066】
前記重合開始剤Cとしては、好ましくはアゾ系重合開始剤が用いられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、以下の(Y)~(Y)に示す化合物が挙げられる。
(Y)アゾニトリル化合物:
2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1'-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等;
(Y)アゾアミド化合物:
2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2'-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等;
(Y)環状アゾアミジン化合物:
2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジスルフェートジヒドレート、2,2'-アゾビス[2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジヒドロクロリド等;
(Y)アゾアミジン化合物:
2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート等;
(Y)その他:
2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、ジメチル1,1'-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸);
(Y)フルオロアルキル基含有アゾ系重合開始剤:
4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸2-(パーフルオロメチル)エチル)、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸2-(パーフルオロブチル)エチル)、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸2-(パーフルオロヘキシル)エチル)等。
【0067】
前記アゾ系重合開始剤の中でも、得られる含フッ素高分岐ポリマ-の表面エネルギ-の観点から、極性の比較的低い置換基を有するものが望ましく、特に2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル又は2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)が好ましい。
【0068】
前記重合開始剤Cは、前記モノマ-A及びモノマーBの合計モル数に対して、0.1~200モル%の量で使用され、好ましくは0.5~100モル%、より好ましくは0.5~50モル%、最も好ましくは0.5~20モル%の量で使用される。
【0069】
前記含フッ素ポリマーは、上記モノマーAと上記モノマーBとを、所定量の重合開始剤Cの存在下で重合させることで得られ、該重合方法としては公知の方法、例えば、溶液重合、分散重合、沈殿重合、及び塊状重合等が挙げられ、なかでも溶液重合又は沈殿重合が好ましい。特に分子量制御の点から、有機溶媒中での溶液重合によって反応を実施することが好ましい。
【0070】
このとき用いられる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶媒;n-ヘキサン、n-ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系又はエステルエーテル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N-メチル-2-ピロリドン等の複素環式化合物系溶媒、並びにこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0071】
これらのうち好ましいのは、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系又はエステルエーテル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒等であり、特に好ましいものはトルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、2-ブタノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等である。
【0072】
上記重合反応を有機溶媒の存在下で行う場合、重合反応物全体における有機溶媒の含量は、上記モノマーAの1質量部に対し、好ましくは1~100質量部、さらに好ましくは5~50質量部である。
【0073】
重合反応は常圧、加圧密閉下、又は減圧下で行われ、装置及び操作の簡便さから常圧下で行うのが好ましい。また、N等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。重合反応の温度は、好ましくは50~200℃、さらに好ましくは70~150℃である。
【0074】
重合反応の終了後、得られた含フッ素ポリマーを任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行う。反応溶液から高分子を回収する方法としては、再沈殿等の方法が挙げられる。
【0075】
得られた含フッ素ポリマーの重量平均分子量(以下、Mwと略記)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で好ましくは1,000~200,000、さらに好ましくは2,000~100,000、最も好ましくは5,000~60,000である。
【0076】
本発明において得られたホスホニル基又はリン酸(エステル)基含有化合物を用いた離型剤の調製は、濃度が約0.01~30重量%、好ましくは約0.05~3重量%の水溶液、水性分散液または有機溶媒溶液となるように水または有機溶媒により希釈することにより行われる。
【0077】
用いられる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン等のポリオールまたはそのエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどの多価アルコール誘導体類、四塩化炭素、塩化メチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロフルオロメタン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などの少なくとも一種類が用いられる。
【0078】
ここで、有機溶媒は水と併用して用いることもできる。
【0079】
離型剤溶液中には、必要に応じてトリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリス(2-ヒドロキシエチル)アミン、モルホリンなどのアミン系中和剤、離型剤の濡れ性を改善するイオン系、非イオン系などの各種界面活性剤、離型性、潤滑性を更に改善するシリコーンオイル、シリコーンワニスなどを添加することもできる。アミン系中和剤は、それとホスホニル基またはリン酸基含有化合物および水、有機溶媒またはこれら両者との合計量中、約0.01~300重量%の割合で用いられる。
【0080】
離型剤溶液の金型への塗布は、浸せき、吹き付け、刷毛塗り、エアゾル噴射、含浸布による塗布など、通常用いられる任意の方法によって行うことができる。また、離型剤が塗布された金型で形成される成形材料としては、例えばポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニル樹脂などの樹脂類、天然ゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴムなどのゴム類等が挙げられる。
【発明の効果】
【0081】
本発明は、従来の改質材化合物とは異なる構造を有し、極めて高い撥水および撥油効果を与える含フッ素化合物及びこれを用いた表面改質剤が提供できる。
【実施例
【0082】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
なお、分析に当たっては下記機器を使用した。
H-NMR,19F-NMR:ブルカー(BRUKER)社製AVANCE II 400
GC-MS: GCMS-QP2010Plus (島津製作所)
接触角測定:VHX-500F (キーエンス社製)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC):
装置:東ソー(株)製8320GPC
カラム:東ソー(株)製 TSKgel SuperHM-H、SuperHM-M
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:RI
スピンコーター:(株)アクティブ製 ACT-300A
【0083】
実施例1
3,3,4,4,5,5,6,6,9,9,10,10,11,12,12,13,13,14,14,14-ヘンイコサフルオロテトラデカ-1,7-ジエン(3)の合成
1-1)3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロ-8-ヨード-1-オクテン(1)
【0084】
【化1】
【0085】
100mlナスフラスコ中に3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロ-1,8-ジヨードオクタン(α)(Synquest試薬)150g(294mol)と150gのTHFを投入し溶解した。5℃以下に冷却したのち、撹拌しながらジアザビシクロウンデセン44.8g(294mmol)を25gのTHFに溶解した液を1時間かけて投入した。
【0086】
その後室温で3時間反応させたのち、水60gとジイソプロピルエーテル120gを加え、二相分離した。有機相を水及び飽和食塩水で洗浄したのち、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧除去した。
【0087】
得られた淡黄色のスラリーをヘキサンに加熱溶解後冷却晶析し、析出した結晶を除去し、ろ液の溶媒を減圧除去したのち、減圧蒸留することにより淡桃色油状物の化合物(1)52.9gを得た。
【0088】
ガスクロマトグラフィー(GC)による純度は98.7%、収率46.5%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):5.86(m,2H,CH2=CH-), 5.67(m,1H,CHCH-), 3.14(m,2H,CH2I), 2.61(m,2H,CF CH2CHI)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm)-114.44(s,2F,CH=CH-CF2), -115.54(s,2F,CF2CHCHI), -123.77(s,2F,CF), -124.06(s,4F,CF
【0089】
1-2)1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,9,9,10,10,11,11,12,12-ヘンイコサフルオロ-8,14-ジヨードテトラデセン(2)
【0090】
【化2】
150mlのSUS製オートクレーブに1-ヨードパーフルオロヘキサン(α)(東京化成工業試薬)61.3g(137.4mmol), 3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロ-8-ヨード-1-オクテン(1)50.0g(130.9mmol) 及びジターシャルブチルペルオキシド 0.19g(1.3mmol)を投入し、内部を充分窒素置換したのち昇温し、120℃で2時間撹拌反応した。
【0091】
得られた反応液を減圧蒸留して85~90℃(2kPa)の留分の無色透明液の化合物(2)26.7gを得た。
【0092】
ガスクロマトグラフィー(GC)による純度は90.5%、収率24.7%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):4.56(m,1H,CF CHI), 3.17(t,2H,CH2I), 3.04(m,2H,CH2CHI), 2.69(m,2H,CFCH CH2I)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.34(s,3F,CF), -109.99(dd,2F,CF2CHI), -115.09(dd,2F,CF2CHCHI),-115.43(s,2F,CF2CHCHI), -117.89(m,2F,CHCF CF2), -122.27(s,2F CF), -123.2~124.2(m,4F,CF), -126.67(s,2F,CFCF2
GC-MS(m/e): 828 (M+)
【0093】
1-3)3,3,4,4,5,5,6,6,9,9,10,10,11,12,12,13,13,14,14,14-ヘンイコサフルオロテトラデカ-1,7-ジエン(3)
【0094】
【化3】
【0095】
200mlの3つ口フラスコ中に、窒素雰囲気下で化合物(2)43.5g(52.5mmol)をジクロロメタン100gに溶解したのち冷却し、5~10℃でジアザビシクロウンデセン17.6g(115.5mmol)を1時間かけて滴下した。
【0096】
室温で一晩撹拌反応したのち、1重量%の塩酸溶液100gを添加し、水相を分離した。有機相を水、1重量%炭酸水素カリウム、飽和食塩水で洗浄したのち、溶媒を除去し、シリカ処理したのち、減圧蒸留して90~94℃(2kPa)留分の無色透明液の化合物(3)を19.0g取得した。収率は90.1%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.43(m,2H,-CH=CH-), 5.96(m,2H,-CH=CH2), 5.82(m,1H,-CH=CH
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.34(s,3F,CF), -112.34(m,2F,CF2CH=), -114.48(m,2F,CF2CH=), -114.58(m,2F,CF2CH=), -122.07(s,2F,CF), -123.32(s,2F,CF), -123.4~123.9(m,6F,CF), -126.64(s,2F,CFCF2
MS(m/e): 553(M-F)
【0097】
実施例2
4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,12,12,13,13,14,14,15,15,15-ヘンイコサフルオロ-10-ペンタデセン-1-オール(7)の合成
2-1)1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,9,9,10,10,11,11,12,12,12-ヘンイコサフルオロ-1,8-ジヨードドデカン(4)の合成
【0098】
【化4】
【0099】
150mlのSUS製オートクレーブに3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-1-オクテン(α)(東京化成工業試薬)88.42g(0.36mol)と1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ドデカフルオロ-1,6-ジヨードヘキサン(α)(東ソー・エフテック製)199.00g(0.36mol) 及びジターシャリブチルペルオキシド0.53g(0.004mol)を仕込み内部を窒素置換した。
【0100】
密閉後、昇温し、120℃で3時間、150℃で2時間反応した。冷却したのち、得られた反応液を減圧蒸留して111℃で0.4kPaの留分の化合物(4)85.13gを取得した。収率は29.2%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):4.63(m,1H,CF CHI), 3.16(m,1H,CF CH2
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-59.38(m,2F,CF2I), -81.31(t,3F,CF), -105.81(dd,2F,CF2CHI), -113.49(m,2F,CF2CFI), -114.95(m,2F,CH CF2), -119.27(m,2F,CH CF2), -121.46(m,2F,CF), -122.00(m,2F,CF),-124.13(s,2F,CF), -126.31(m,2F,CF
【0101】
2-2)1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,9,9,10,10,11,11,12,12,12-ヘンイコサフルオロ1-ヨード-7-ドデセン(5)の合成
【0102】
【化5】
【0103】
100mlの2つ口フラスコ中に10%水酸化カリウム-メタノール溶液41.45gを仕込み、室温下で化合物(4)80.00g(116.63mmol)を40分かけて滴下した。室温で1.5時間反応後、反応液を35gの水で洗浄し、有機層をジクロロメタンで希釈した。さらに有機層を1%塩酸35g、水40g、飽和食塩水40gで洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで有機相から水分を除去して化合物(5)63.94gを取得した。収率は53.9%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.48(m,2H,C CH=CH12
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-59.38(m,2F,CF2I), -81.60(t,3F,CF), -113.47(m,2F,CF2CFI), -114.42(m,2F,CF2CH),-114.67(m,2F,CHCF2), -121.49(m,2F,
CF), -121.86(m,2F,CF), -123.77(m,2F,CF),-124.78(m,2F,CF), -126.31(m,2F,CF
【0104】
2-3)4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,12,12,13,13,14,14,15,15,15-ヘンイコサフルオロ-10-ペンタデセン-1-オール(6)の合成
【0105】
【化6】
【0106】
100mlのナスフラスコに化合物(5)10.00g(14.45mmol)と25重量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液7.7gを投入し、内部を窒素で充分置換した。内温を70℃に昇温し、アゾビスイソブチロニトリル0.05g(0.30mmol)をアリルアルコール(α)1.01g(17.34mmol)に溶解した溶液を、内温を75~85℃に保ったまま、強撹拌下1時間かけてゆっくり滴下した。滴下後75℃で16時間撹拌反応を行った後、100℃で10分処理した。
【0107】
冷却後、ジクロロメタン15gで抽出し二相分離したのち、有機相を水15g及び飽和食塩水20gで洗浄したのち、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相を減圧濃縮して化合物(6)9.96gを取得した。収率は89.4%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.47(m,2H,C CH=CH12), 4.40(m,1H,CHI), 3.77(m,2H,CH2O), 2.88(m,2H,CH2CF), 1.99(s,1H,OH)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.58(t,3F,CF), -113.93(m,2F,CF2CH), -114.42(m,2F,CF2CH),-122.00(m,4F,CFCF), -123.98(m,4F,CFCF), -124.82(m,2F,CF), -126.33(m,2F,CF
【0108】
2-4)4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,12,12,13,13,14,14,15,15,15-ヘンイコサフルオロ-10-ペンタデセン-1-オール(7)の合成
【0109】
【化7】
【0110】
50mlの2つ口フラスコ中にアゾビスイソブチロニトリル0.34g(1.95mmol)、化合物(6)9.50g(13.01mmol)、水素化トリブチルスズ5.98g(19.52)mmolを仕込み、70℃で3時間反応した。反応液を40gのジイソプロピルエーテルで希釈し、水50g、1Mフッ化カリウム水溶液50g、飽和食塩水50gで洗浄したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧濃縮したのち、ヘキサンで再結晶して化合物(7)4.45gを取得した。収率は54.0%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.47(m,2H,C CH=CH12), 3.70(m,2H,CH2O), 2.22(m,2H,CH2CF), 1.85(m,2H,CH),1.49(s,1H,OH)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.59(t,3F,CF), -114.53(m,4F,CF2CH), -114.85(m,2F,CF2CH),-122.17(m,4F,CFCF), -123.97(m,4F,CFCF), -124.78(m,2F,CF), -126.33(m,2F,CF
【0111】
実施例3
4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,17,17,17-ペンタイコサフルオロ-10-ヘプタデセン-1-オール(11)の合成
【0112】
3-1)1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,14-ペンタイコサフルオロ-1,8-ジヨードテトラデカン(8)の合成
【0113】
【化8】
【0114】
150mlのSUS製オートクレーブに3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ノナフルオロ-1-デセン(α)(東京化成工業試薬)31.24g(0.090mol)と1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ドデカフルオロ-1,6-ジヨードヘキサン(α)(東ソー・エフテック製)50.00g(0.090mol)及びジターシャリブチルペルオキシド0.13g(0.001mol)を仕込み内部を窒素置換した。
【0115】
密閉後、昇温し、120℃で3時間、150℃で2時間反応した。冷却したのち、得られた反応液を減圧濃縮して化合物(8)の粗体65.21gを得た。ガスクロマトグラフィー(GC)による純度は48.5%であった。
【0116】
3-2)1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,14-ペンタイコサフルオロ-1-ヨード-7-テトラデセン(9)の合成
【0117】
【化9】
【0118】
100mlの2つ口フラスコ中に上記反応で得られた(8)を含む混合物65.21gを仕込み、室温下で10%水酸化カリウム-メタノール溶液55.71gを15分かけて滴下した。室温で1時間反応後、反応液を水50g、10%塩化アンモニウム水溶液50g、飽和食塩水50gで洗浄した。有機層をジクロロメタンで希釈した。さらに有機層を1%塩酸35g、水40g、飽和食塩水40gで洗浄した。得られた有機層を減圧蒸留して108℃で0.8kPaの留分の化合物(9)21.69gを取得した。収率は31.1%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.46(m,2H,C CH=CH12
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-59.43(m,2F,CF2I), -81.44(t,3F,CF), -113.49(m,2F,CF2CFI), -114.42(m,4F,CF2CH), -121.46(m,2F,CF), -121.84(m,2F,CF), -122.09(m,2F,CF), -123.35(m,2F,CF),-123.84(m,4F,CFCF), -126.73(m,2F,CF2CF
【0119】
3-3)4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,17,17,17-ペンタイコサフルオロ-2-ヨード-10-ヘプタデセン-1-オール(10)の合成
【0120】
【化10】
【0121】
100mlのナスフラスコに化合物(9)10.00g(12.95mmol)と25重量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液6.9gを投入し、内部を窒素で充分置換した。内温を70℃に昇温し、アゾビスイソブチロニトリル0.04g(0.27mmol)をアリルアルコール(α)0.90g(15.54mmol)に溶解した溶液を、内温を75~85℃に保ったまま、強撹拌下1時間かけてゆっくり滴下した。滴下後75℃で16時間撹拌反応を行った後、100℃で10分処理した。
【0122】
冷却後、ジクロロメタン50gで抽出し二相分離したのち、有機相を水20g及び飽和食塩水20gで洗浄したのち、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相を減圧濃縮して化合物(10)9.68gを取得した。収率は90.0%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.49(m,2H,C CH=CH12), 4.43(m,1H,CI), 3.79(m,2H,CH2O), 2.92(m,2H,CH2CF), 1.99(s,1H,OH)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.32(t,3F,CF), -113.96(m,2F,CF2CH), -114.38(m,4F,CF2CH),-122.17(m,6F,CFCFCF),-123.38(m,2F,CF), -123.89(m,4F,CFCF), -124.09(m,2F,CF), -126.67(m,2F,CF
【0123】
3-4)4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,17,17,17-ペンタイコサフルオロ-10-ヘプタデセン-1-オール(11)の合成
【0124】
【化11】
【0125】
50mlの2つ口フラスコ中にアゾビスイソブチロニトリル0.15g(0.90mmol)、化合物(10)5.00g(6.02mmol)、水素化トリブチルスズ2.63g(9.03mmol)、トルエン10gを仕込み、70℃で3時間反応した。反応液を40gのジイソプロピルエーテルで希釈し、水40g、1Mフッ化カリウム水溶液40g、飽和食塩水40gで洗浄したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧濃縮したのち、ヘキサンで再結晶して化合物(11)3.48gを取得した。収率は75.2%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.48(m,2H,C CH=CH12), 3.71(m,2H,CH2O), 2.20(m,2H,CH2CF), 1.86(m,2H,CH),1.70(s,1H,OH)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.36(t,3F,CF), -114.39(m,4F,CF2CH), -114.86(m,2F,CF2CH), -122.13(m,6F,CFCFCF), -123.39(m,2F,CF), -123.96(m,6F,CFCFCF), -126.69(m,2F,CF
【0126】
実施例4
4,4,5,5,6,6,7,7,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,15-エイコサフルオロ-9-ペンタデセン-1-オール(16)の合成
【0127】
4-1)1,1,2,2,3,3,4,4,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12-ヘンイコサフルオロ-1,6-ジヨードドデカン(12)の合成
【0128】
【化12】
【0129】
150mlのSUS製オートクレーブに3,3,4,4,5,5,6,6,7,7、8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクテン(α)(東京化成工業試薬)76g(0.22mol)と1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-1,4-ジヨードブタン(α)(東ソー・エフテック製)200g(0.44mol)及びジターシャリブチルペルオキシド0.65g(0.004mol)を仕込み内部を窒素置換した。
【0130】
密閉後、昇温し、120℃で3時間、150℃で2時間反応した。冷却したのち、得られた反応液を減圧蒸留して130~135℃で0.4kPaの留分の化合物(12)94.58gを取得した。収率は53.9%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):4.55(m,1H,CFCHI), 2.97(m,1H,CFCH
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-59.33(s,2F,CF2I), -81.30(s,3F,CF), -105.54(dd,2F,CF2CHI), -112.98(m,2F,CF2CFCHI), -114.99(m,2F,CH CF2), -117.92(m,2F,CHCF CF2), -122.16(s,2F,CF), -123.23~123.25(m,4F, CF×2), -126.61(s,2F,CFCF2
MS(m/e): 800(M+)
【0131】
4-2)4,4,5,5,6,6,7,7,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,15-ヘンイコサフルオロ-2,9-ジヨード-1-ペンタデカノール(13)の合成
【0132】
【化13】
【0133】
100mlのナスフラスコに化合物(12)27.75g(34.7mmol)と25重量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液18.5gを投入し、内部を窒素で充分置換した。
【0134】
内温を70℃に昇温し、アゾビスイソブチロニトリル0.12g(0.73mmol)をアリルアルコール(α)4.03g(69.4mmol)に溶解した溶液を、内温を75~85℃に保ったまま、強撹拌下2時間かけてゆっくり滴下した。滴下後75℃で16時間撹拌反応を行った後、100℃で10分処理した。
【0135】
冷却後、ジクロロメタン23gで抽出し二相分離したのち、有機相を水38g及び飽和食塩水40gで洗浄したのち、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相を減圧濃縮して茶色の化合物(13)の粗体を得た。
【0136】
ガスクロマトグラフィー(GC)による純度は31.9%、収率24.7%であった。
【0137】
この粗体には、原料の(12)が19.3%、1ヨウ素還元体(14)が17.2%、2付加体(15)が10.6%含まれていた。算出は何れもGC面積%によった。
【0138】
4-3)4,4,5,5,6,6,7,7,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,15-エイコサフルオロ-9-ペンタデセン-1-オール(16)の合成
【0139】
【化14】
【0140】
窒素で内部置換した100mlの4つ口フラスコ中に水素化アルミニウムリチウム1.27g(33.51mmol)とテトラヒドロフラン43.68gを加え-10℃以下に冷却し、上記反応で得られた(13)を含む混合物5.66gをテトラヒドロフラン21.6gに溶解した溶液を-10℃で1時間かけて滴下した。
【0141】
反応後、室温で一晩撹拌反応した。反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液300gに発泡に注意しながらゆっくり加えた。その後濾過し、結晶を300mlの酢酸エチルでリンスして得られたろ液を二相分離した。有機相を220gの2.5%食塩水、150gの飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで有機相から水分を除去したのち、溶媒を減圧留去した。
【0142】
得られた橙色油状物をシリカカラムクロマトグラフ法(充填材:シリカゲル60N 関東化学製、展開溶媒:ジクロロメタン)にて精製分離して、化合物(20)を0.32g取得した。化合物(12)からの収率 1.5%。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):5.66(dt,1H,CF=C-), 3.66(t,2H,CH2OH), 3.01(td,2H,CF CH2CH=), 2.10(tt,2H,CF CH2CH), 1.78(m,2H,CH CH2CH), 1.66(s,1H,-OH)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.33(t,3F,CF), -113.06(s,2F,CF2-CF=), -114.95(m,2F,CF), -118.49(m,2F,CH CF2CF), -123.43(s,2F,CF), -123.7~124.2(m,6F, CF×3), -125.42(s,1F,-CF=CH), -126.62(s,2F,CFCF2
GC-MS(m/e): 800(M+)
【0143】
実施例5
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-テトライコサフルオロ-8-ヘキサデセン-1-オール(18)の合成
【0144】
5-1)3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-テトライコサフルオロヘキサデシル-1,8-ジエン(17)の合成
【0145】
【化15】
【0146】
500mlの3つ口フラスコ中にアルミニウム粉末(和光純薬工業試薬)6.09g(225.90mol)、塩化ニッケル6水和物(和光純薬工業試薬)5.37g(22.59mmol)、アセトニトリル177g、及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-ドデカフルオロオクタデシル-1,9-ジエン(α)(東ソー・エフテック製)40.00g(113.0mmol)を仕込み、室温下で1-ヨード-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-トリデカフルオロヘキサン(α)50.37g(446.0mol)を15分かけて滴下した。室温で12時間反応後、反応液に2.5%塩酸100gを加え、100gのジイソプロピルエーテルで3回抽出した。得られた有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液200g、飽和食塩水200gで洗浄したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧濃縮したのち、減圧蒸留して0.4kPaで168~170℃の留分の化合物(17)19.21gを取得した。収率は25.8%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):5.92(m,2H,CH=CH2), 5.73(m,1H,CH=CH),5.67(m,1H,CH CHCF), 3.03(m,2H,CH2CHCF)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.43(t,3F,CF), -112.96(m,2F,CF2CH), -114.38(m,2F,CF2CH), -118.47(m,2F,CF), -121.99(m,4F,CFCF), -123.50(m,6F,CFCFCF), -124.20(m,2F,CF), -124.59(m,1F,CF),-126.66(m,2F,CF
【0147】
5-2)3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-テトライコサフルオロ-8-ヘキサデセン-1-オール(18)の合成
【0148】
【化16】
【0149】
100mlの3つ口フラスコ中にトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(東京化成工業試薬)0.28g(0.31mmol)、テトラヒドロフラン20g、4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(α)(東京化成工業試薬)2.30g(16.8mmol)を仕込み、室温下で5分攪拌した。化合物(17)10.00g(15.3mmol)を加え、室温で24時間反応後、反応液に3M水酸化ナトリウム水溶液30gを加え、30%過酸化水素水溶液60gを5分かけて滴下した。飽和塩化アンモニウム水溶液150gを加えた後、ジイソプロピルエーテル150gで2回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水150gで洗浄したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧濃縮したのち、得られた褐色油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲルC-300 和光純薬工業製、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1:2)にて精製分離して、化合物(18)を3.00g取得した。収率は29.2%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm): 5.68(m,1H,CH=CH), 3.94(t,2H,CFCH CH2OH), 3.04(m,2H,CH2CHCF), 2.35(m,2H,CF CH2CHOH), 2.01(s,1H,OH)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.41(t,3F,CF), -112.91(m,2F,CF2CH), -113.97(m,2F,CF2CH), -118.45(m,2F,CF), -122.30(m,4F,CFCF), -123.47(m,6F,CFCFCF), -124.34(m,2F,CF), -124.34(m,1F,CF),-126.66(m,2F,CF
【0150】
実施例6
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-トリコサフルオロ-1,8,10-ヘキサデカトリエン(19)の合成
【0151】
【化17】
【0152】
10mlのバイアル中に化合物(17)5.00gを仕込み、室温下で10%水酸化カリウム-メタノール溶液4.67gを5分かけて滴下した。室温で1時間反応後、反応液を10%塩化アンモニウム水溶液5g、水5g、飽和食塩水5gで洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮して化合物(19)4.46gを取得した。収率は93.9%であった。
1H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm) :6.46(m,2H,CFCH-CHCF), 5.93(m,2H,CH=CH2), 5.75(m,1H,CH=CH
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm) :-81.38(m,3F,CF), -114.34(m,2F,CF2CH), -118.46(m,4F,CF2CF), -119.67(m,1F,CF), -120.56(m,1F,CF), -121.92(m,2F,CF), -123.30(m,6F ,CFCFCF), -124.17(m,2F ,CF), -126.66(m, 2F ,CF
【0153】
実施例7
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-トリコサフルオロ-8,10-ヘキサデカジエン-1-オール(20)の合成
【0154】
【化18】
【0155】
内部を窒素置換した200mlの三つ口フラスコにボランジメチルスルフィド錯体1.72g(22.6mmol)とテトラヒドロフラン47.9gを投入して-15℃まで冷却した。
【0156】
窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで撹拌しながらシクロヘキセン(α10)3.72g(45.3mmol)を-15℃以下で30分かけて滴下した。滴下後0℃で2時間撹拌したのち、化合物(17)10g(15.29mmol)をテトラヒドロフラン30gに溶解した溶液を5℃以下で60分かけて滴下した。
【0157】
その後、5℃で3時間、室温で63時間撹拌反応した。再び0℃に冷却したのち、20重量%の水酸化ナトリウム水溶液15.29g(76.4mmol)を10分かけて滴下し、引き続き30重量%の過酸化水素水17.33g(152.9mmol)を30分かけて滴下したのち、室温にて2時間撹拌反応を行った。
【0158】
反応液に10重量%の塩酸27.56gを30分かけて滴下したのち、ジイソプロピルエーテル30gを加え抽出を行った後、有機相を30gの水で1回、飽和食塩水30gで2回洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで脱水したのち、溶媒を減圧留去し、淡黄色の油状物9.89gを得た。
【0159】
得られた粗体をクーゲルロール蒸留にてシクロヘキサノールを除去したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル)にて精製し、化合物(20)を1.30g取得した。
【0160】
得られた化合物(20)を分析し、以下の結果を得た。
ガスクロマトグラフィー(GC)による純度は89.3%であった。収率は11.8%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.63(dt,2H,-CF=CHCH=CF-), 3.74(t,2H,CH2O), 3.28(b,1H,-OH), 2.28(tt,CF CH2
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.69(t,3F,CF), -114.03(m,2F,CF2CH), -118.47(m,4F,CF),-121.09(m,1F,CF=CH), -21.88(m,1F,CF=CH), -122.31(m,2F CF), -123.42(m,2F,CF), -123.55(m,2F CF),-124.42(m,4F CF×2),-126.82(m,2F,CF
GC-MS(m/e): 652 (M+)
【0161】
実施例8
1‐トリクロロシリル-3,3,4,4,5,5,6,6,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,14-ヘンイコサフルオロ-7-テトラデセン(21)の合成
【0162】
【化19】
【0163】
ガラス製耐圧チューブ(Ace Glass Inc.製:40ml)に化合物(3)1.00g(1.7mmol)、塩化白金酸六水和物(和光純薬工業試薬)0.004g(0.01mmol)及びトリクロロシラン(東京化成工業試薬)0.45g(3.3mmol)を仕込み、撹拌下50℃で3日反応を行った。
【0164】
反応後窒素バブリングで過剰のトリクロロシランを除去したのち、クーゲルロール蒸留を行って、無色液状物の化合物(21)を0.72g取得した。収率は42.7%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.45(m,2H,-CH=CH-), 2.29(m,2H,CF CH2), 1.65(m,2H,CH2-Si)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.34(s,3F,CF), -114.3~-114.6(m,4F,CF2CH=), -116.13(t,2F,CF2CH), -122.0
8(s,2F,CF), -123.30(b,4F,CF), -123.6~123.9(m,4F,CF), -126.64(s, 2F,CFCF2
【0165】
実施例9
1-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]カルバモイルオキシ-4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,12,12,13,13,14,14,15,15,15-ヘンイコサフルオロ-10-ペンタデセン(22)の合成
【0166】
【化20】
【0167】
化合物(7)4.00g(6.62mmol)とイソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル1.72g(6.95mmol)をジクロロメタン4gに溶解し、ジラウリン酸ジブチルスズを0.04g(0.07mmol)加えた。室温で2時間撹拌反応し、シリカカラムクロマトグラフ法(充填剤:シリカゲルC-300 和光純薬工業製、展開溶媒:ジクロロメタン)により精製を行い、目的物(22)5.41gを得た。収率は95.4%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.47(m,2H,C CH=CH12), 5.03(t,1H,NH),4.12(t,2H,CHO), 3.81(q,6H,CH2CH),3.20(q,2H,NHCH2), 2.22(m,2H,CH2CF), 2.15(m,2H,CH2CF), 1.91(m,2H,NHCH CH2CH),1.65(m,2H,CFCH CH2CH),1.23(t,9H,CH CH3), 0.65(t,2H,CH2Si)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.58(t,3F,CF), -114.51(m,4F,CF2CH), -114.92(m,2F,CF2CH),-122.15(m,4F,CFCF), -123.95(m,4F,CFCF), -124.78(m,2F,CF), -126.32(m,2F,CF
【0168】
実施例10
1-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]カルバモイルオキシ-4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9, 12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,17,17,17-ペンタイコサフルオロ-10-ヘプタデセン(23)の合成
【0169】
【化21】
【0170】
化合物(11)2.26g(3.21mmol)とイソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル0.83g(3.37mmol)をジクロロメタン4gに溶解し、ジラウリン酸ジブチルスズを0.02g(0.03mmol)加えた。室温で2時間撹拌反応し、シリカカラムクロマトグラフ法(充填剤:シリカゲルC-300 和光純薬工業製、展開溶媒:ジクロロメタン)により精製を行い、目的物(23)2.78gを得た。収率は91.3%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.48(m,2H,C13 CH=CH12), 5.03(t,1H,NH),4.12(t,2H,CH2O), 3.82(q,6H,CH2CH),3.20(q,2H,NHCH2), 2.22(m,2H,CH2CF), 2.15(m,2H,CH2CF), 1.91(m,2H,NHCH CH2CH),1.65(m,2H,CFCH CH2CH),1.23(t,9H,CH CH3), 0.65(t,2H,CH2Si)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.35(t,3F,CF), -114.38(m,4F,CF2CH), -114.94(m,2F,CF2CH), -122.09(m,6F,CFCFCF), -123.37(m,2F,CF), -123.95(m,6F,CFCFCF), -126.67(m,2F,CF
【0171】
実施例11
1-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]カルバモイルオキシ-4,4,5,5,6,6,7,7,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,15-エイコサフルオロ-9-ペンタデセン(24)の合成
【0172】
【化22】
【0173】
化合物(16)0.2513g(0.41mmol)とイソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル0.1077g(0.44mmol)をジクロロメタン1gに溶解し、ジラウリン酸ジブチルスズを0.0026g(0.004mmol)加えた。
【0174】
室温で2時間撹拌反応し、シリカカラムクロマトグラフ法(充填剤:シリカゲル60N 関東化学製、展開溶媒:ヘキサン)により精製を行い、目的物(24)を0.33g得た。収率は93.3%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):5.67(dt,1H,CF=CH-), 4.97(b,1H,-CONH-), 4.05(m,2H,CH2O), 3.75(q,6H,CH3CHO), 3.11(m,2H,N-CH2), 3.01(td,2H,CF CH2CH=), 2.10(m,2H,CF CH2CH), 1.83(m,2H,CH CH2CHO), 1.56(m,2H,NCH2CHCH), 1.15(t,9H,CH), 0.56(m,2H,CH2-Si)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.34(t,3F,CF), -113.07(s,2F,CF2-CF=), -115.11(m,2F, CF), -118.51(m,2F,CH CF2CF), -123.48(s,2F, CF), -123.7~124.2(m,6F,CF), -125.39(s,1F,-CF=CH), -126.73(s,2F,CFCF2
【0175】
実施例12
1-トリクロロシリル-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-テトライコサフルオロ-8-ヘキサデセン(25)の合成
【0176】
【化23】
【0177】
ガラス製耐圧チューブ(Ace Glass Inc.製:40ml)に化合物(17)1.00g(1.53mmol)、塩化白金酸六水和物(和光純薬工業試薬)0.008g(0.02mmol)及びトリクロロシラン(東京化成工業試薬)0.31g(2.29mmol)を仕込み、撹拌下50℃で15時間反応を行った。
【0178】
反応後窒素バブリングで過剰のトリクロロシランを除去したのち、クーゲルロール蒸留を行って、黄色液状物の化合物(25)を0.54g取得した。収率は44.7%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):5.71(m,1H,CH CHCF), 3.10(m,2H,CH2CHCF), 2.31(m,2H,CH2CHSi), 1.65(m,2H,CH CH2Si)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.28(t,3F,CF), -112.84(m,2F,CF2CHCF), -116.10(m,2F,CF2CHCH), -118.48(m,2F,CF), -122.43(m,4F,CFCF), -123.79(m,8F,CFCFCFCF),-124.50(m,1F,CF),-126.65(m,2F,CF
【0179】
実施例13
1-トリエトキシシリル-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-テトライコサフルオロ-8-ヘキサデセン(26)の合成
【0180】
【化24】
【0181】
ガラス製耐圧チューブ(Ace Glass Inc.製:40ml)に化合物(17)2.00g(3.06mmol)、Karstedt触媒(東京化成工業試薬)0.012g(0.03mmol)及びトリエトキシシラン(東京化成工業試薬)0.60g(3.67mmol)を仕込み、撹拌下80℃で15時間反応を行った。
【0182】
得られた橙色油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲルC-300 和光純薬工業製、展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン=1:3)にて精製分離して、化合物(26)を1.19g取得した。収率は47.5%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):5.71(m,1H,CH CHCF), 3.84(q,6H,CH2CH),
3.10(m,2H,CH2CHCF), 3.06(m,2H,CH=CH2), 2.17(m,2H,CH2CHSi), 1.23(t,9H,CH CH3), 0.86(m,2H,CH CH2Si)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.36(t,3F,CF), -112.92(m,2F,CF2CHCF), -116.91(m,2F,CF2CHCH), -118.45(m,2F,CF), -122.34(m,4F,CFCF), -123.89(m,8F,CFCFCFCF),-124.49(m,1F,CF),-126.62(m,2F,CF
【0183】
実施例14
1-トリクロロシリル-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-トリコサフルオロ-8,10-ヘキサデカジエン(27)の合成
【0184】
【化25】
【0185】
ガラス製耐圧チューブ(Ace Glass Inc.製:40ml)に化合物(19)1.00g(1.63mmol)、塩化白金酸六水和物(和光純薬工業試薬)0.008g(0.02mmol)及びトリクロロシラン(東京化成工業試薬)0.33g(2.44mmol)を仕込み、撹拌下50℃で15時間反応を行った。
【0186】
反応後窒素バブリングで過剰のトリクロロシランを除去したのち、クーゲルロール蒸留を行って、黄色液状物の化合物(27)を0.31g取得した。収率は25.0%であった。
1H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm) :6.48(m,2H,CFCH-CHCF), 2.30(m,2H,CH2CHSi), 1.66(m,2H,CH CH2Si)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm) :-81.27(m,3F,CF), -114.39(m,2F,CF2CH), -116.91(m,2F,CF2CF), -118.45(m,2F,CFCF),-119.50(m,1F,CF), -120.43(m,1F,CF), -121.21(m,2F,CF), -123.34(m,6F ,CFCFCF), -124.20(m,2F ,CF), -126.69(m,2F,CF
【0187】
実施例15
1-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]カルバモイルオキシ-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-トリコサフルオロ-8,10-ヘキサデカジエン(28)の合成
【0188】
【化26】
【0189】
窒素置換した5mlナスフラスコに化合物(20)1.00g(1.53mmol)とイソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル0.38g(1.53mmol)とテトラヒドロフラン1.78gに溶解し、ジラウリン酸ジブチルスズ0.0097g(0.02mmol)を加えた。
【0190】
窒素雰囲気下、室温で65時間撹拌反応し、シリカカラムクロマトグラフ法(充填剤:シリカゲル60N 関東化学製、展開溶媒:ヘキサン-酢酸エチル95/5(体積/体積))により精製を行い、目的化合物(28)を0.75g得た。収率は55.3%であった。
【0191】
得られた化合物(28)を分析し、以下の結果を得た。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.48(dt,2H,CF=CH-CH=CF), 5.06(b,1H,-CONH-), 4.36(t,2H,CH2O), 3.81(q,6H,CH O), 3.20(m,2H,N-CH2), 2.43(m,2H,CF CH2), 1.63(m,2H,CH CH2CHO), 1.23(t,9H,CH), 0.64(m,2H,CH2-Si)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.34(t,3F,CF), -114.15(m,2F,CF2CH), -118.49(m,4F, CF2CF=), -119.8(m,1F,CF=CH), -120.44(m,1F, CF=CH),-122.24(m,2F,CF), -123.36(m,6F, CF), -124.20(m,2F,CF), -126.72(m,2F,CFCF2
【0192】
実施例16
2-メチルプロペン酸4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,17,17,17-ペンタイコサフルオロ-10-ヘプタデセニル(29)の合成
【0193】
【化27】
【0194】
ガラス製耐圧チューブ(Ace Glass Inc.製:40ml)に化合物(11)1.00g(1.42mmol)、ジクロロメタン4.7g及びトリエチルアミン(和光純薬工業試薬)0.22g(2.13mmol)を仕込み、撹拌下0℃でメタクリロイルクロリド(α12)(東京化成工業試薬)0.28g(2.13mmol)を5分間かけて滴下した。攪拌下室温で1時間反応を行った後、窒素バブリングで溶媒を除去し、反応液を20gのジイソプロピルエーテルで希釈し、飽和食塩水20gで3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮したのち、得られた黄色油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲルC-300 和光純薬工業製、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1:9)にて精製分離して、化合物(29)を0.70g取得した。収率は63.8%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.47(m,2H,C13 CH=CH12), 6.11(m,1H,CH), 5.55(m,1H,CH), 4.20(t,2H,CH2O), 2.19(m,2H,CH2CF), 1.99(m,2H,CH CH2CH), 1.93(m,3H,CH
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.39(t,3F,CF), -114.34(m,4F,CF2CH), -114.80(m,2F,CF2CH), -122.04(m,6F,CFCFCF), -123.31(m,2F,CF), -123.87(m,6F,CFCFCF), -126.64(m,2F,CF
【0195】
実施例17
プロペン酸4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,17,17,17-ペンタイコサフルオロ-10-ヘプタデセニル(30)の合成
【0196】
【化28】
【0197】
ガラス製耐圧チューブ(Ace Glass Inc.製:40ml)に化合物(11)0.50g(0.71mmol)、ジクロロメタン2.4g及びトリエチルアミン(和光純薬工業試薬)0.11g(1.07mmol)を仕込み、撹拌下0℃でアクリロイルクロリド(α13)(東京化成工業試薬)0.12g(1.07mmol)を5分間かけて滴下した。攪拌下室温で1時間反応を行った後、窒素バブリングで溶媒を除去し、反応液を20gのジイソプロピルエーテルで希釈し、飽和食塩水20gで3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮したのち、得られた黄色油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲルC-300 和光純薬工業製、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1:9)にて精製分離して、化合物(30)を0.11g取得した。収率は20.4%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.49(m,2H,C13 CH=CH12), 6.45(m,1H,CH), 6.13(m,1H,CH), 5.85(m,1H,CH), 4.24(t,2H,CH2O), 2.19(m,2H,CH2CF), 2.01(m,2H,CH CH2CH
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.31(t,3F,CF), -114.36(m,4F,CF2CH), -114.91(m,2F,CF2CH), -122.12(m,6F,CFCFCF), -123.37(m,2F,CF), -123.95(m,6F,CFCFCF), -126.65(m,2F,CF
【0198】
実施例18
2-メチルプロペン酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-テトライコサフルオロ-8-ヘキサデセニル(31)の合成
【0199】
【化29】
【0200】
ガラス製耐圧チューブ(Ace Glass Inc.製:40ml)に化合物(18)0.50g(0.74mmol)、ジクロロメタン2.5g及びトリエチルアミン(和光純薬工業試薬)0.11g(1.12mmol)を仕込み、撹拌下0℃でメタクリロイルクロリド(α12)(東京化成工業試薬)0.15g(1.12mmol)を5分間かけて滴下した。攪拌下室温で1時間反応を行った後、窒素バブリングで溶媒を除去し、反応液を20gのジイソプロピルエーテルで希釈し、飽和食塩水20gで3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮したのち、得られた黄色油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲルC-300 和光純薬工業製、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1:9)にて精製分離して、化合物(31)を0.31g取得した。収率は56.6%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm): 6.14(m,1H,CH), 5.71(m,1H,CH=CH), 5.60(m,1H,CH), 4.45(t,2H,CFCH CH2OH), 3.09(m,2H,CH2CHCF), 2.50(m,2H,CF CH2CHOH), 1.95(m,3H,CH
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.37(t,3F,CF), -112.91(m,2F,CF2CH), -114.13(m,2F,CF2CH), -118.45(m,2F,CF), -122.36(m,4F,CFCF), -123.47(m,6F,CFCFCF), -124.18(m,2F,CF), -124.57(m,1F,CF),-126.67(m,2F,CF
【0201】
実施例19
2-メチルプロペン酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-トリコサフルオロ-8,10-ヘキサデカジエニル(32)の合成
【0202】
【化30】
【0203】
ガラス製耐圧チューブ(Ace Glass Inc.製:40ml)に化合物(20)0.44g(0.67mmol)、ジクロロメタン2.2g及びトリエチルアミン(和光純薬工業試薬)0.10g(1.01mmol)を仕込み、撹拌下0℃でメタクリロイルクロリド(α12)(東京化成工業試薬)0.13g(1.01mmol)を5分間かけて滴下した。攪拌下室温で1時間反応を行った後、窒素バブリングで溶媒を除去し、反応液を20gのジイソプロピルエーテルで希釈し、飽和食塩水20gで3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮したのち、得られた黄色油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲルC-300 和光純薬工業製、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1:9)にて精製分離して、化合物(32)を0.24g取得した。収率は49.7%であった。
1H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm) :6.48(m,2H,CFCH-CHCF), 6.14(m,1H,CH=CH), 5.61(m,1H,CH), 4.45(t,2H,CFCH CH2OH), 2.51(m,2H,CF CH2CHOH), 1.95(m,3H,CH
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm) :-81.27(m,3F,CF), -114.13(m,2F,CF2CH), -118.46(m,4F,CF2CF), -119.59(m,1F,CF), -120.32(m,1F,CF), -122.23(m,2F,CF), -123.35(m,6F ,CFCFCF), -124.17(m,2F ,CF), -126.669(m, 2F ,CF
【0204】
実施例20
リン酸4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,17,17,17-ペンタイコサフルオロ-10-ヘプタデセニル(33)の合成
【0205】
【化31】
【0206】
50mlの2つ口フラスコ中にオキシ塩化リン(和光純薬工業試薬)1.96g(12.78mmol)、化合物(11)2.00g(2.84mmol)を仕込み、攪拌下80℃で3時間反応を行った。反応液を20gの水に滴下し、クロロホルム30gで抽出した。水層をデカンテーションし、有機層を飽和食塩水で洗浄したのち、アセトン50gで抽出した。有機層を減圧濃縮したのち、得られた黄色油状物をアセトン20gに溶解し、吸引ろ過により沈殿物を除去した。ろ液を減圧濃縮して、化合物(33)を1.65g取得した。収率は74.1%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.51(m,2H,C13 CH=CH12), 4.44(m,2H,CH2OP), 2.32(m,2H,CH2CF), 2.13(m,2H,CH CH2CH
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.73(t,3F,CF), -114.00(m,4F,CF2CH), -114.86(m,2F,CF2CH), -122.21(m,6F,CFCFCF), -123.51(m,2F,CF), -123.94(m,6F,CFCFCF), -126.86(m,2F,CF
【0207】
実施例21
リン酸ジエチル4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,17,17,17-ペンタイコサフルオロ-10-ヘプタデセニル(34)の合成
【0208】
【化32】
【0209】
ガラス製耐圧チューブ(Ace Glass Inc.製:40ml)に化合物(11)1.00g(1.42mmol)、ジクロロメタン4.7g及びトリエチルアミン(和光純薬工業試薬)0.43g(4.26mmol)を仕込み、撹拌下0℃でクロロリン酸ジエチル(東京化成工業試薬)0.74g(4.26mmol)を5分間かけて滴下した。攪拌下室温で1時間反応を行った後、窒素バブリングで溶媒を除去し、反応液を20gのジイソプロピルエーテルで希釈し、飽和食塩水20gで3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮したのち、得られた黄色油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲルC-300 和光純薬工業製、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1:1)にて精製分離して、化合物(34)を1.02g取得した。収率は85.5%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.48(m,2H,C13 CH=CH12), 4.14(m,2H,CH2OP),4.12(m,4H,CH2CH), 2.23(m,2H,CH2CF), 1.98(m,2H,CH CH2CH),1.33(m,6H,CH CH3
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.35(t,3F,CF), -114.33(m,4F,CF2CH), -114.83(m,2F,CF2CH), -122.04(m,6F,CFCFCF), -123.32(m,2F,CF), -123.85(m,6F,CFCFCF), -126.68(m,2F,CF
【0210】
実施例22
リン酸ジエチル3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-テトライコサフルオロ-8-ヘキサデセニル(35)の合成
【0211】
【化33】
【0212】
ガラス製耐圧チューブ(Ace Glass Inc.製:40ml)に化合物(18)0.50g(0.74mmol)、ジクロロメタン2.5g及びトリエチルアミン(和光純薬工業試薬)0.23g(2.23mmol)を仕込み、撹拌下0℃でクロロリン酸ジエチル(東京化成工業試薬)0.39g(2.23mmol)を5分間かけて滴下した。攪拌下室温で1時間反応を行った後、窒素バブリングで溶媒を除去し、反応液を20gのジイソプロピルエーテルで希釈し、飽和食塩水20gで3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮したのち、得られた黄色油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲルC-300 和光純薬工業製、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1:1)にて精製分離して、化合物(35)を0.51g取得した。収率は85.3%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm): 5.71(m,1H,CH=CH), 4.33(q,2H,CFCH CH2OH), 4.13(m,4H,CH2OP),3.09(m,2H,CH2CHCF), 2.53(m,2H,CF CH2CHOH), 1.35(m,6H,CH CH3
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.28(t,3F,CF), -112.91(m,2F,CF2CH), -114.17(m,2F,CF2CH), -118.47(m,2F,CF), -122.41(m,4F,CFCF), -123.47(m,6F,CFCFCF), -124.28(m,2F,CF), -124.57(m,1F,CF),-126.66(m,2F,CF
【0213】
実施例23
リン酸ジエチル3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-トリコサフルオロ-8,10-ヘキサデカジエニル(36)の合成
【0214】
【化34】
【0215】
ガラス製耐圧チューブ(Ace Glass Inc.製:40ml)に化合物(20)0.25g(0.39mmol)、ジクロロメタン1.3g及びトリエチルアミン(和光純薬工業試薬)0.12g(1.18mmol)を仕込み、撹拌下0℃でクロロリン酸ジエチル(東京化成工業試薬)0.39g(2.23mmol)を5分間かけて滴下した。攪拌下室温で1時間反応を行った後、窒素バブリングで溶媒を除去し、反応液を20gのジイソプロピルエーテルで希釈し、飽和食塩水20gで3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮したのち、得られた黄色油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲルC-300 和光純薬工業製、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1:1)にて精製分離して、化合物(36)を0.26g取得した。収率は86.5%であった。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm) :6.49(m,2H,CFCH-CHCF), 4.33(t,2H,CFCH CH2OH), 4.14(m,4H,CH2OP), 2.54(m,2H,CF CH2CHOH), 1.35(m,6H,CH CH3
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm) :-81.28(m,3F,CF), -114.15(m,2F,CF2CH),-118.46(m,4F,CF2CF), -119.63(m,1F,CF), -120.29(m,1F,CF), -122.24(m,2F,CF), -123.35(m,6F ,CFCFCF), -124.23(m,2F ,CF), -126.69(m,2F,CF
【0216】
比較例1
リン酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル(37)の合成
【0217】
【化35】
【0218】
特許文献4(特開2015-71552号公報)に記載の方法に基づいて合成した。500mlの三つ口フラスコに、室温(25℃)で、五酸化リン32.7g(225.7mmol)、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン118.7gおよび85質量%リン酸23.2g(五酸化リンとして100.5mmol、水として495.1mmol)を加えた後、10分間撹拌を実施した後に、パーフルオロヘキシルエチルアルコール(α14)118.7g(326.2mmol)を加えた。オイルバスを50℃まで昇温させ、同温度で24時間撹拌下に反応させた。次いで、オイルバスを60℃まで昇温させ、同温度で24時間撹拌下に反応させた後、脱溶剤し、新たに酢酸エチル150gを加えて溶解させた。そこに同量の水を加えて撹拌下に水洗を行い、使用した水を除去する操作を計3度実施した。その後、脱溶剤し、乾燥して、白色粉末状の化合物(37)145gを得た。収率は93.5モル%であった。
【0219】
実施例24
ガラス改質条件
スライドガラス(松浪硝子工業製サイズ:76mm×26mm×1.2mm))は使用前に水酸化カリウム-イソプロピルアルコール飽和溶液に室温で17時間浸漬後、水洗し、60℃にて2時間乾燥したものを前処理ガラスとして直ぐに使用した。
【0220】
この前処理ガラスを、実施例8で合成した化合物(21)をクロロホルム溶媒に0.3重量%となるように溶解した表面改質剤溶液に50℃にて2時間撹拌浸漬処理した。ガラスを改質溶液から取り出し、ガラス表面に付着した余分な表面改質剤をNovec(登録商標) 7100(3M社製)および水にて拭き取った後、150℃で2時間処理して、表面改質ガラス基板を得た。
【0221】
接触角測定
接触角測定は以下の機材、方法を用いて行った。
機材 VHX-500F (キーエンス社製)
方法 1μLの液滴を表面改質ガラス基板の表面に滴下し、真横から撮った映像をθ/2法にて接触角を求めた。
【0222】
実施例25
化合物(21)に替えて、実施例9で合成した化合物(22)を用いて、実施例24と同様にスライドガラスの表面を改質し、接触角を測定した。
【0223】
実施例26
化合物(21)に替えて、実施例10で合成した化合物(23)を用いて、実施例24と同様にスライドガラスの表面を改質し、接触角を測定した。
【0224】
実施例27
化合物(21)に替えて、実施例11で合成した化合物(24)を用いて、実施例24と同様にスライドガラスの表面を改質し、接触角を測定した。
【0225】
実施例28
化合物(21)に替えて、実施例12で合成した化合物(25)を用いて、実施例24と同様にスライドガラスの表面を改質し、接触角を測定した。
【0226】
実施例29
化合物(21)に替えて、実施例13で合成した化合物(26)を用いて、実施例24と同様にスライドガラスの表面を改質し、接触角を測定した。
【0227】
実施例30
化合物(21)に替えて、実施例14で合成した化合物(27)を用いて、実施例24と同様にスライドガラスの表面を改質し、接触角を測定した。
【0228】
実施例31
化合物(21)に替えて、実施例15で合成した化合物(28)を用いて、実施例24と同様にスライドガラスの表面を改質し、接触角を測定した。
【0229】
比較例2
化合物(21)に替えて、比較剤として、CF(CFCHCHSi(OMe) (アルドリッチ社製)を用いて、実施例24と同様にスライドガラスの表面を改質し、接触角を測定した。
得られた結果を表1に示した。
【0230】
【表1】
【0231】
実施例32
ポリマー1の合成
50mlの3つ口フラスコ中にメタクリル酸メチル(東京化成工業試薬)0.52g(5.18mmol)、化合物(29)1.00g(1.29mmol)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業試薬)0.016g(0.06mmol)及び2-ブタノン2.9gを仕込み、攪拌しながら5分間窒素を流し込むことにより窒素置換した後、80℃で7時間攪拌した。反応液をヘキサン42.4gに滴下してポリマーを沈殿させ、上澄み液をデカンテーションした。残った沈殿物を、テトラヒドロフラン3.5gで再溶解し、この溶液をヘキサン42.4gに添加してポリマーを再沈殿させた。沈殿物を吸引濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(ポリマー1)0.92gを得た。収率は60.5%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは17,000、分散度Mw/Mnは1.5であった。
【0232】
実施例33
ポリマー2の合成
50mlの3つ口フラスコ中にメタクリル酸メチル(東京化成工業試薬)0.53g(5.28mmol)、化合物(30)1.00g(1.32mmol)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業試薬)0.017g(0.07mmol)及び2-ブタノン2.9gを仕込み、攪拌しながら5分間窒素を流し込むことにより窒素置換した後、80℃で7時間攪拌した。反応液をヘキサン42.4gに滴下してポリマーを沈殿させ、上澄み液をデカンテーションした。残った沈殿物を、テトラヒドロフラン3.5gで再溶解し、この溶液をヘキサン42.4gに添加してポリマーを再沈殿させた。沈殿物を吸引濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(ポリマー2)0.95gを得た。収率は61.7%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは32,000、分散度Mw/Mnは2.0であった。
【0233】
実施例34
ポリマー3の合成
50mlの3つ口フラスコ中にメタクリル酸メチル(東京化成工業試薬)0.54g(5.40mmol)、化合物(31)1.00g(1.35mmol)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業試薬)0.017g(0.07mmol)及び2-ブタノン2.9gを仕込み、攪拌しながら5分間窒素を流し込むことにより窒素置換した後、80℃で7時間攪拌した。反応液をヘキサン42.4gに滴下してポリマーを沈殿させ、上澄み液をデカンテーションした。残った沈殿物を、テトラヒドロフラン3.5gで再溶解し、この溶液をヘキサン42.4gに添加してポリマーを再沈殿させた。沈殿物を吸引濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(ポリマー3)0.85gを得た。収率は55.2%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは18,000、分散度Mw/Mnは1.7であった。
【0234】
実施例35
ポリマー4の合成
50mlの3つ口フラスコ中にメタクリル酸メチル(東京化成工業試薬)0.53g(5.25mmol)、化合物(32)1.00g(1.28mmol)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業試薬)0.017g(0.07mmol)及び2-ブタノン2.9gを仕込み、攪拌しながら5分間窒素を流し込むことにより窒素置換した後、80℃で7時間攪拌した。反応液をヘキサン42.4gに滴下してポリマーを沈殿させ、上澄み液をデカンテーションした。残った沈殿物を、テトラヒドロフラン3.5gで再溶解し、この溶液をヘキサン42.4gに添加してポリマーを再沈殿させた。沈殿物を吸引濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(ポリマー4)0.81gを得た。収率は52.6%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは19,000、分散度Mw/Mnは1.6であった。
【0235】
比較例3
ポリマー5の合成
50mlの3つ口フラスコ中にメタクリル酸メチル(東京化成工業試薬)1.85g(18.51mmol)、2-メチルプロペン酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-n-オクチル(東京化成工業試薬)2.00g(4.63mmol)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業試薬)0.057g(0.23mmol)及び2-ブタノン6.17gを仕込み、攪拌しながら5分間窒素を流し込むことにより窒素置換した後、80℃で7時間攪拌した。反応液をヘキサン151.5gに滴下してポリマーを沈殿させ、上澄み液をデカンテーションした。残った沈殿物を、テトラヒドロフラン12.5gで再溶解し、この溶液をヘキサン151.5gに添加してポリマーを再沈殿させた。沈殿物を吸引濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(ポリマー5)2.01gを得た。収率は52.2%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは21,000、分散度Mw/Mnは2.0であった。
【0236】
実施例36
ポリマーの物性評価
実施例32で得られたポリマー1の0.25gを、2-ブタノン4.75gに溶解させてフィルタろ過を行い、ポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液をガラス基板(50mm×50mm×1.0mm)上にスピンコーティング(slope5秒間、次いで1,500rpm10秒間、さらにslope5秒間)し、120℃にて1時間の熱処理を行うことにより溶媒を蒸発させて、製膜した。得られた薄膜の水およびヘキサデカンの接触角を測定した。
【0237】
実施例37
ポリマー1に替えて、実施例33で合成したポリマー2を用いて、実施例36と同様に薄膜を作成し、接触角を測定した。
【0238】
実施例38
ポリマー1に替えて、実施例34で合成したポリマー3を用いて、実施例36と同様に薄膜を作成し、接触角を測定した。
【0239】
実施例39
ポリマー1に替えて、実施例35で合成したポリマー4を用いて、実施例36と同様に薄膜を作成し、接触角を測定した。
【0240】
比較例4
ポリマー1に替えて、比較例3で合成したポリマー5を用いて、実施例36と同様に薄膜を作成し、接触角を測定した。
得られた結果を表2に示した。
【0241】
【表2】
【0242】
実施例40
離型剤溶液の調製
実施例20で得られた化合物(33)0.5重量%、純水49.8重量%及びイソプロパノール49.7重量%よりなる離型剤水溶液を調製した。この離型剤溶液を用いて、次のような測定方法で離型性の評価を行った。
【0243】
離型性評価
ポリウレタンプレポリマーおよび硬化剤を上記離型剤塗布金型(アルミニウム製、直径60mm、深さ50mm)に注入し、加熱・加圧条件下で硬化させた後、成型品を金型から剥離した時の荷重をプッシュプルスケールで測定した。要した荷重が10N未満である場合の離型性を◎、10N以上20N未満を○、20N以上50N未満を△、50N以上を×とした。また、同じ条件下で、50N未満の荷重で何回まで離型が可能であったかを測定し、離型寿命とした。
【0244】
実施例41~44
実施例40において、離型剤化合物、添加剤量及び溶媒量を種々変更した離型剤水溶液を用いて、同様の測定を行った。
【0245】
比較例5~6
実施例40において、離型剤化合物、添加剤量及び溶媒量を種々変更した離型剤水溶液を用いて、同様の測定を行った。
得られた結果を離型剤溶液各成分量(単位:重量%)とともに、表3に示した。
【0246】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0247】
本発明の新規含フッ素化合物及びこれを用いた表面改質剤は高い撥水性および撥油性を示し、離型剤、防汚剤などの表面改質剤として利用可能である。