(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】積層造形により3次元物体を形成するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
B29C 64/165 20170101AFI20220113BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220113BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20220113BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20220113BHJP
【FI】
B29C64/165
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2018566481
(86)(22)【出願日】2017-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2017068521
(87)【国際公開番号】W WO2018015553
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-05-27
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521400615
【氏名又は名称】コベストロ (ネザーランズ) ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン, ヨハン フランツ グラドゥス アントニウス
(72)【発明者】
【氏名】ファン ベントヘム, ルドルフス アントニウス テオドルス マリア
(72)【発明者】
【氏名】バイセン, パウルス フランシスカス アンナ
(72)【発明者】
【氏名】デルクス, フランシスカス ヨハネス マリー
(72)【発明者】
【氏名】ペペルス, マーク ペトルス フランシスカス
(72)【発明者】
【氏名】ビュックマン, アルフレド ジャン ポール
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-508279(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0291314(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/165,64/20
B33Y 10/00,30/00,70/00,80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.微粒子組成物の層を形成するステップであって、前記微粒子組成物が、
i.
電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を有する第1の樹脂重合性基を備える第1の樹
脂を含む樹脂成分、
ii.前記樹脂成分中に分散または溶解された熱ラジカル開始剤、および
iii.前記樹脂成分中に分散または溶解された遅延剤
を含む複数の第1の粒子を含む、ステップと、
b.3次元物体の少なくとも一部分の形状に対応するコンピュータデータに従って、前記微粒子組成物の層の上に液体組成物を選択的に付着させるステップであって、前記液体組成物が、
i.
前記第1の樹脂重合性基と(共)重合することができる炭素-炭素二重結合を有する第1の液体重合性基を備える第1の液体重合性成
分を含む、ステップと、
c.任意選択的に、前記液体組成物が選択的に付着された前記微粒子組成物の層の複数の位置に電磁放射線を照射するステップと、
d.前記液体組成物が選択的に付着された前記微粒子組成物の層の複数の位置において前記熱ラジカル開始剤を活性化するステップと、
e.ステップa~dを複数回繰り返して、3次元物体を形成するステップと
を含む、3次元物体の形成方法。
【請求項2】
前記液体組成物が、前記熱ラジカル開始剤の促進剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱ラジカル開始剤が前記促進剤と接触していないときに前記熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度と、前記熱ラジカル開始剤が前記促進剤と接触しているときに前記熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度との間の差が30℃~100℃である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱ラジカル開始剤が過酸化物を含み、前記促進剤がアミンを含む、請求項
2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の樹脂重合性基が、メタクリレート、フマラート、マレアート、またはイタコナートを含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記樹脂成分の各分子中の重合性基の平均数で割った前記樹脂成分のMnが450~1200g/molである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の樹脂が非晶質であり、20~60℃のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の樹脂が結晶性であり、-70~100℃のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の樹脂が不飽和ポリエステルを含み、前記第1の液体重合性基がビニルエーテルである、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記液体組成物が、第2の液体重合性基を含む第2の液体重合性成分を更に含み、前記第2の液体重合性基がフマラートを含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記液体組成物が、3次元物体の一部分を表す複数のボクセルに従って前記微粒子組成物の層の上に選択的に分配され、ボクセル当たりのビニルエーテル基のフマラートおよびマレアート基に対するモル比が1.5:1~1:1.5である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記液体組成物が吸収剤を更に含み、前記液体組成物が選択的に付着された前記微粒子組成物の層の複数の位置に電磁放射線
を照射する前記ステップが実行される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記微粒子組成物に阻害剤を選択的に付着させるステップを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記熱ラジカル開始剤の活性化よりも前または活性化と同時に、前記液体組成物が選択的に付着された前記微粒子組成物の層の複数の位置において前記第1の樹脂を融解させることを更に含み、前記微粒子組成物が乾燥温度を有し、前記乾燥温度が前記微粒子組成物の層の表面における温度であり、前記第1の樹脂が結晶性または半結晶性であり、そして前記第1の樹脂が、前記微粒子組成物が前記液体組成物と接触しているときには前記乾燥温度よりも低いかそれに等しい温度で融解するが、前記微粒子組成物が前記液体組成物と接触していないときには前記乾燥温度で融解しない、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
積層造形プロセスにより物体を形成するための材料のキットであって、
a.i.
電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を有する第1の樹脂重合性基を備える第1の樹
脂を含む樹脂成分、
ii.前記樹脂成分中に分散または溶解された熱ラジカル開始剤、および
iii.前記樹脂成分中に分散または溶解された遅延剤
を含む複数の第1の粒子を含む微粒子組成物と、
b.i.
前記第1の樹脂重合性基と(共)重合することができる炭素-炭素二重結合を有する第1の液体重合性基を備える第1の液体重合性成分
を含む液体組成物と
を含む、キット。
【請求項16】
前記第1の樹脂がテレケリック型であり、少なくとも2つの第1の樹脂重合性基を末端基として含み、そして前記第1の樹脂重合性基が(メタ)アクリレート基を含む、
請求項15に記載
のキット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年7月22日に出願された欧州特許出願第16180915.7号、2016年10月28日に出願された同第16196328.5号、および2017年4月21日に出願された同第17167544.0号(これらはそれぞれ、参照によってその全体が本明細書に援用される)からの優先権を主張する国際特許出願である。
【0002】
[分野]
本発明は、積層造形による3次元物体の形成方法と、積層造形により3次元物体を形成するために有用であり得る組成物および材料のキットと、積層造形により形成された3次元物体とに関する。
【0003】
[背景]
3次元印刷としても知られている積層造形は、最終の3次元物体が製造されるまで一度に一部分ずつ物体を築き上げることにより3次元物体を形成するための技術である。積層技術は、最終の3次元物体を製造するためにより大量の材料から材料の一部分が除去されるミリングなどの減法技術と対比させることができる。
【0004】
1つの既知の積層造形技術は、米国特許第5204055号明細書に開示されている。この技術では、粉末材料の層が形成される。次に、3次元物体の少なくとも一部分の形状に対応するコンピュータデータに従って、選択された領域において粉末材料の層の上に液体結合剤が付着される。液体結合剤は、選択された領域において粉末材料を結合させる。粉末材料の層を形成するステップと、粉末材料の層の選択された領域に液体結合剤を付着させるステップとは、3次元物体を製造するために選択された回数繰り返される。粉末は固体または多孔質でよく、セラミック、金属、またはプラスチック材料であり得る。
【0005】
米国特許第5204055号明細書のプロセスに基づいた更なる技術では、結合剤材料の硬化に関与する化学反応に焦点が合わせられており、場合により、粉末材料自体の化学反応に関係している。例えば、米国特許出願公開第20040036200号明細書では、粉末が実質的に第1の反応性成分を含み、液体結合剤が第2の活性成分を含む系が言及されており、第2の活性成分は、第1の反応性成分と反応することができるか、あるいは第1の反応性成分のそれ自体での反応を促進することができる。
【0006】
更なるこのような系は、米国特許第7381360号明細書に記載されている。このような系では、粉末材料として微粒子組成物が利用される。微粒子組成物は、高分子微粒子、重合開始剤、および任意選択的に、他の微粒子成分を含有する。液体結合剤は、重合性モノマーおよび重合促進剤を含む。重合促進剤は、通常、微粒子組成物の重合開始剤と反応するために存在する。
【0007】
これらの進歩にもかかわらず、積層造形により3次元物体を形成するための更なるおよび代替的な方法が必要とされている。
【0008】
[概要]
本発明の実施形態において、3次元物体の形成方法は、
a.微粒子組成物の層を形成するステップであって、微粒子組成物が、
i.第1の樹脂(第1の樹脂は第1の樹脂重合性基を含み、第1の樹脂重合性基は、電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む)を含む樹脂成分、
ii.樹脂成分中に分散または溶解された熱ラジカル開始剤、および
iii.樹脂成分中に分散または溶解された遅延剤
を含む複数の第1の粒子を含む、ステップと、
b.3次元物体の少なくとも一部分の形状に対応するコンピュータデータに従って、微粒子組成物の層の上に液体組成物を選択的に付着させるステップであって、液体組成物が、
i.第1の液体重合性成分(第1の液体重合性成分は第1の液体重合性基を含み、第1の液体重合性基は、第1の樹脂重合性基と(共)重合することができる炭素-炭素二重結合を含む)
を含む、ステップと、
c.任意選択的に、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置に電磁放射線を照射するステップと、
d.液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置において熱ラジカル開始剤を活性化するステップと、
e.ステップa~dを複数回繰り返して、3次元物体を形成するステップと
を含む。
【0009】
熱ラジカル開始剤および遅延剤を樹脂成分中に分散または溶解させることは、安定性、安全性、加工、硬化速度、または形成される3次元物体の特性において種々の利点があり得る。
【0010】
液体組成物は更に、促進剤および/または吸収剤を含み得る。実施形態において、液体組成物は、熱ラジカル開始剤の促進剤を更に含み、促進剤が熱ラジカル開始剤と接触されると、熱ラジカル開始剤は、促進剤が存在しない場合に熱ラジカル開始剤がラジカルを生成することができる温度よりも低い温度でラジカルを生成することができる。実施形態において、液体組成物は吸収剤を更に含み、吸収剤は電磁放射線を吸収することができる。
【0011】
[詳細な説明]
一般に、3次元物体の層は、微粒子組成物の層を形成するステップと、3次元物体の少なくとも一部分の形状に対応するコンピュータデータに従って、微粒子組成物の層の上に液体組成物を選択的に付着させるステップとを含むプロセスによって形成され得る。本プロセスを付加的な回数繰り返して、更なる層を形成することができ、最終的に、所望の3次元物体が築き上げられる。任意選択的に、各層の硬化を助けるために電磁放射線を照射することができる。温度または光による処理などの後処理ステップも存在し得る。
【0012】
本発明の実施形態によると、3次元物体の形成方法は、
a.微粒子組成物の層を形成するステップであって、微粒子組成物が、
i.第1の樹脂(第1の樹脂は第1の樹脂重合性基を含み、第1の樹脂重合性基は、電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む)を含む樹脂成分、
ii.樹脂成分中に分散または溶解された熱ラジカル開始剤、および
iii.樹脂成分中に分散または溶解された遅延剤
を含む複数の第1の粒子を含む、ステップと
b.3次元物体の少なくとも一部分の形状に対応するコンピュータデータに従って、微粒子組成物の層の上に液体組成物を選択的に付着させるステップであって、液体組成物が、
i.第1の液体重合性成分(第1の液体重合性成分は第1の液体重合性基を含み、第1の液体重合性基は、第1の樹脂重合性基と(共)重合することができる炭素-炭素二重結合を含む)
を含む、ステップと、
c.任意選択的に、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置に電磁放射線を照射するステップと、
d.液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置において熱ラジカル開始剤を活性化するステップと、
e.ステップa~dを複数回繰り返して、3次元物体を形成するステップと
を含む。
【0013】
微粒子組成物の層を形成するステップは、単にある量の微粒子組成物を平滑化して十分に水平な平面にすることによって形成され得る。これは、大量の微粒子組成物の上部平面を平滑化するか、あるいは形成中の所望の3次元物体の硬化済層の全面に微粒子組成物の層を押し付けることによって行うことができる。平面は、微粒子組成物と空気または窒素などの気体との界面、または同等の位置(真空下の場合)である表面を有する。微粒子組成物の層を形成する際に粉末は流動性である。微粒子組成物の層を形成するステップは、ドクターブレードまたはローラーの使用により実施することができる。別のプロセスでは、微粒子組成物は、微粒子組成物の層を形成するために基材上に分配され得る。
【0014】
微粒子組成物は乾燥温度を有してもよく、乾燥温度は、微粒子組成物の層の表面の温度である。表面の温度は、微粒子組成物と液体組成物とを接触させる前の温度である。乾燥温度は、通常、積層造形プロセスの環境温度である。実施形態において、微粒子組成物の表面における空気または窒素などの他の気体の平均温度は乾燥温度に等しい。乾燥温度は、適切な加熱、冷却、または換気装置を用いて保持され得る。
【0015】
微粒子組成物の層を形成した後、3次元物体の少なくとも一部分の形状に対応するコンピュータデータに従って、微粒子組成物の層の上に液体組成物が選択的に付着される。実施形態において、液体組成物は第1の液体重合性成分を含み、第1の液体重合性成分は第1の液体重合性基を含む。
【0016】
液体組成物は、ボクセル当たりの微粒子組成物および液体組成物の全重量を基準として、ボクセル当たり少なくとも1wt%、5wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、または40wt%の液体組成物の量で、選択的に付着され得る。液体組成物は、ボクセル当たりの微粒子組成物および液体組成物の全重量を基準として、ボクセル当たり最大で90wt%、80wt%、75wt%、70wt%、65wt%、または60wt%の液体組成物の量で、選択的に付着され得る。
【0017】
本特許出願全体を通して、融解温度は、DSCサーモグラムの融解ピークのピーク温度として定義される。融解温度は融点と同義である。
【0018】
融解温度に関連する融解エンタルピーは以下のように決定される。各融解温度の間の最小融解エンタルピーを定義し、次にこれらの2つの最小値の間に位置する融解温度に、最小値間の全融解エンタルピーを割り当てることにより、各融解温度に融解エンタルピーが割り当てられる。各融解温度に割り当てられた融解エンタルピーの合計は、DSCサーモグラムの全融解エンタルピーに等しい。
【0019】
液体組成物を選択的に付着させた後、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置に電磁放射線が任意選択的に照射されてもよい。実施形態において、液体組成物を選択的に付着させた後、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の位置の実質的に全てに電磁放射線が照射される。実施形態において、液体組成物を選択的に付着させた後、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の位置の全てに電磁放射線が照射される。電磁放射線は、例えば、熱(例えば、赤外放射線など)、または光(例えば、可視またはUVA放射線など)を含み得る。実施形態において、電磁放射線は赤外光を含む。実施形態において、電磁放射線はUV光を含む。実施形態において、電磁放射線は、340~415nmの波長を有する電磁放射線を含む。実施形態において、電磁放射線は、700~1500nmの波長を有する電磁放射線を含む。
【0020】
電磁放射線は、ランプ、レーザー、またはLEDなどの任意の適切な装置を用いて照射され得る。電磁放射線は、微粒子組成物の層全体に、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の部分にだけ、あるいは2つの組合せで照射され得る。
【0021】
液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置において熱ラジカル開始剤を活性化すると、少なくとも液体組成物が選択的に付着された複数の位置において、少なくとも第1の樹脂および第1の液体重合性成分の重合が開始される。熱ラジカル開始剤は、熱ラジカル開始剤が活性化温度よりも高いかそれに等しい温度にさらされたときに、2時間以内に第1の樹脂の重合を開始させるのに十分なラジカルを生成し、活性化温度は30℃よりも高い。熱ラジカル開始剤を促進剤と接触させることにより、活性化温度は任意選択的に低下され得る。
【0022】
実施形態において、熱ラジカル開始剤は、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置に電磁放射線を照射することにより、局所温度を一時的に活性化温度またはそれ以上に上昇させることによって活性化される。実施形態において、電磁放射線は、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置に選択的に照射される。実施形態において、液体組成物は更に、電磁放射線が照射されたところの局所温度の上昇を促進するために吸収剤を含み得る。実施形態において、熱ラジカル開始剤は、ステップcの実行の結果として活性化される。
【0023】
実施形態において、熱ラジカル開始剤は液体組成物中に存在する促進剤により活性化され、従って、液体組成物が微粒子組成物と接触すると、熱ラジカル開始剤の活性化温度が低下して乾燥温度よりも低くなり、それにより熱ラジカル開始剤の活性化が起こり、そして少なくとも第1の樹脂および第1の液体重合性成分の重合が開始される。実施形態において、熱ラジカル開始剤は、促進剤の選択的な付着および適切な乾燥温度の選択の結果として活性化される。
【0024】
実施形態において、本方法は更に、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置において第1の樹脂を融解させることを含む。実施形態において、融解は、熱ラジカル開始剤の活性化の前に起こる。実施形態において、融解は、熱ラジカル開始剤の活性化と同時に起こる。実施形態において、第1の樹脂は、微粒子組成物が液体組成物と接触しているときに乾燥温度よりも低いかそれに等しい温度で融解するが、微粒子組成物が液体組成物と接触していないときには乾燥温度で融解しない。実施形態において、融解は、第1の樹脂が液体組成物と接触すると第1の樹脂の融点が低下されるように結晶性または半結晶性である第1の樹脂の使用により達成される。実施形態において、融解は、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置の局所温度を電磁放射線の照射により上昇させることによって達成される。
【0025】
本プロセスは付加的な回数繰り返され、それにより、3次元物体の形状に従って多数の層が形成される。微粒子組成物の新たな層は、硬化されたばかりの層に隣接して形成される。
【0026】
3次元物体は、更に後硬化を受けてもよい。実施形態において、3次元物体は、電磁放射線を3次元物体に照射することによって後硬化される。実施形態において、電磁放射線は赤外放射線を含む。実施形態において、電磁放射線は紫外放射線を含む。実施形態において、後硬化は熱後硬化を含む。実施形態において、後硬化は、微粒子組成物の最高融解温度よりも高いかそれに等しい温度における熱後硬化を含む。実施形態において、後硬化は、微粒子組成物が液体組成物と接触していないときの第1の樹脂、微粒子組成物中の全ての樹脂、第1の粒子、または微粒子組成物の全ての融解温度よりも高い温度における熱後硬化を含む。実施形態において、後硬化は、少なくとも15、30、45、60、75、90、105、または120分間持続する。
【0027】
実施形態において、後硬化は、乾燥温度よりも高く、そして微粒子組成物が液体組成物と接触しているときの第1の樹脂、樹脂成分、微粒子組成物中の全ての結晶性もしくは半結晶性樹脂、微粒子組成物中の全ての樹脂、第1の粒子、または微粒子組成物の少なくとも1つの融解温度(少なくとも1つの融解温度は乾燥温度よりも高い)よりも高い温度における後硬化を含む。実施形態において、後硬化は、乾燥温度よりも高く、そして熱開始剤の活性化温度よりも高いかそれに等しい温度における後硬化を含む。
【0028】
微粒子組成物および液体組成物の成分、および更なる任意選択的な成分、ならびに本方法および材料のキットの更なる態様は、更に以下で議論される。
【0029】
[微粒子組成物]
微粒子組成物は、1つまたは複数の異なる種類の粒子、例えば、異なる化学組成を有する粒子を含み得る。複数の粒子は、樹脂成分と、樹脂成分中に分散または溶解された熱ラジカル開始剤と、樹脂成分中に分散または溶解された遅延剤とを含む第1の粒子である。このような第1の粒子は、通常、微粒子組成物の40~100wt%、例えば、微粒子組成物の50wt%~99wt%の量で存在する。
【0030】
微粒子組成物の可能性のある付加的な成分は、流動性改良剤、非反応性充填剤、安定剤、または添加剤、例えば着色剤である。実施形態において、微粒子組成物は着色剤を含み、着色剤は顔料または染料を含む。
【0031】
実施形態において、微粒子組成物は流動性改良剤を含む。適切な流動性改良剤は、ヒュームド二酸化ケイ素、沈殿二酸化ケイ素、ヒュームド酸化アルミニウム、タルク、またはヒュームド二酸化チタンである。流動性改良剤は、単に、微粒子組成物の他の要素に混入させることができる。実施形態において、微粒子組成物は、微粒子組成物の全重量を基準として、0.05~5wt%の流動性改良剤を含む。
【0032】
実施形態において、微粒子組成物は、充填剤である複数の粒子を含む。このような充填剤は有機でも無機でもよい。実施形態において、充填剤は、微粒子組成物および液体組成物の他の成分と非反応性である。実施形態において、充填剤は、微粒子組成物の少なくとも1つの他の成分または液体組成物中の成分と反応性である。有機充填剤が反応基を含む場合、有機充填剤は、1分子当たりの重合性基の平均数で割ったMnが3000g/molよりも大きく、そして微粒子組成物中の全ての樹脂は、1分子当たりの重合性基の平均数で割ったMnが3000g/molよりも小さい。
【0033】
実施形態において、微粒子組成物中の全ての樹脂は、1分子当たりの重合性基の平均数で割ったMnが3000g/molよりも小さい。
【0034】
実施形態において、微粒子組成物は、更に、二酸化ケイ素、二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ゼオライト、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、アルミナ、またはアルミナ水和物の複数の粒子を含む。実施形態において、微粒子組成物は更に複数の金属粒子を含む。
【0035】
実施形態において、微粒子組成物は、ポリウレタン粒子、ポリスチレン粒子、ポリ(メチルメタクリレート)粒子、ポリカーボネート粒子、またはコアシェル粒子などの有機充填剤を含む。実施形態において、有機充填剤は衝撃改良剤を含む。衝撃改良剤の例は、エラストマー粒子である。実施形態において、組成物内に分散され得る衝撃改良成分は、エチレンまたはプロピレンおよび1つまたは複数のC2~C12α-オレフィンモノマーのコポリマーに基づくエラストマーである。
【0036】
このようなものの例は、エチレン/プロピレンコポリマー、または第3の共重合性ジエンモノマー(例えば、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ジ-シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネンおよびテトラヒドロインデンなど)を任意選択的に含有するエチレン/プロピレンコポリマー(EPDM);エチレン/α-オレフィンコポリマー、例えば、エチレン-オクテンコポリマー、ならびにエチレン/α-オレフィン/ポリエンコポリマーである。
【0037】
実施形態において、微粒子充填剤は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエンランダムコポリマー、スチレン/イソプレンランダムコポリマー、アクリルゴム(例えば、ポリブチルアクリレート)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)を含む。
【0038】
エラストマー粒子は、乳化重合により作られたラテックスからの単離を含む様々な手段によって調製され得る。これらのエラストマー粒子の平均サイズは、好ましくは、約10nmと約10μmの間である。実施形態において、エラストマー粒子の平均サイズは、10nm~1μmである。
【0039】
任意選択的に、粒子の上にシェルが存在してもよく、例えば、グラフト化によって、または乳化重合の第2段階の間に導入され得る。このような粒子の例は、ゴムコアおよびガラス状シェルを含有するコアシェル衝撃改良剤粒子である。コア材料の例は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリルゴム(例えば、ポリブチルアクリレートゴム)、スチレン/ブタジエンランダムコポリマー、スチレン/イソプレンランダムコポリマー、またはポリシロキサンである。シェル材料またはグラフトコポリマーの例は、ビニル芳香族化合物(例えば、スチレン)およびビニルシアニド(例えば、アクリロニトリル)または(メタ)アクリレート(例えば、MMA)の(コ)ポリマーである。
【0040】
これらのコアシェル型エラストマー粒子の市販の製品は、Resinous Bond RKB(Resinous Chemical Industries Co.,Ltd.により製造された、エポキシ中のコアシェル粒子の分散体)、Durastrength D400、Durastrength 400R(Arkema Groupにより製造)、Paraloid EXL-2300(非官能性シェル)、Paraloid EXL-2314(エポキシ官能性シェル)、Paraloid EXL-2600、Paraloid EXL-3387およびParaloid KM-365(Dowにより製造)、Genioperl P53、Genioperl P23、Genioperl P22(Wacker Chemicalにより製造)、Kane Ace MX製品(Kanekaにより製造)などである。
【0041】
このようなエラストマー粒子の他の例は、ジアルキルシロキサン繰り返し単位を含み得る架橋ポリオルガノシロキサンゴムであり、ここで、「アルキル」はC1~C6アルキルである。粒子は、好ましくは粒子の表面に反応基を含むように修飾され得る。
【0042】
市販されているポリオルガノシロキサンエラストマー粒子の例は、Albidur EP 2240(A)、Albidur EP 2640、Albidur VE 3320、Albidur EP 5340、Albidur EP 5640、およびAlbiflex 296(エポキシまたはビニルエーテル樹脂中の粒子の分散体、Hanse Chemie,Germany)、Genioperl M41C(エポキシ中の分散体、Wacker Chemical)、Chemisnow MX シリーズおよびMPシリーズ(Soken Chemical and Engineering Co.)である。
【0043】
任意選択的に、充填剤は、微粒子組成物または液体組成物中の成分と(共)重合する反応基を含有するように修飾され得る。この修飾は、反応性グラフト化または共重合によって導入することができる。後者の市販の例は、Arkemaにより製造されるLotaderランダムエチレン/アクリレートコポリマーAX8840(グリシジルメタクリレート/GMA修飾)、AX8900およびAX8930(GMAおよび無水マレイン酸修飾/MA)である。任意選択的に、重合性基は、共重合(例えば、グリシジルメタクリレートとの共重合)によって、あるいは、反応性官能基を形成するためのシェルの処理によってコアシェル粒子のシェル内に導入され得る。
【0044】
実施形態において、微粒子組成物は、微粒子組成物の全重量を基準として1~50wt%の充填剤を含む。実施形態において、微粒子組成物は、微粒子組成物の全重量を基準として10~35wt%の充填剤を含む。
【0045】
実施形態において、微粒子組成物は安定剤を含む。実施形態において、微粒子組成物は、難燃剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、および/またはUV吸収剤を含む。安定剤は、微粒子自体として存在してもよいし、あるいは樹脂成分などの別の成分中に分散または溶解されてもよい。
【0046】
実施形態において、微粒子組成物は複数の第2の粒子を含む。実施形態において、微粒子組成物は更に、第1の粒子の樹脂成分と同じでも異なっていてよく、第1の樹脂と(共)重合することができる更なる樹脂成分を含む複数の第2の粒子と、任意選択的に、更なる樹脂成分の重合を開始させるための更なる開始剤、例えば更なる熱ラジカル開始剤とを含む。実施形態において、微粒子組成物は更に、樹脂成分とは異なっており、かつ樹脂成分と(共)重合することができない更なる樹脂成分を含む複数の第2の粒子と、任意選択的に、更なる樹脂成分の重合を開始させるために更なる樹脂成分中に分散または溶解された更なる開始剤、例えば熱開始剤とを含む。
【0047】
実施形態において、第1または第2の粒子は更に、1000~20,000g/molの数平均分子量を有する非反応性ポリマーを含む。実施形態において、非反応性ポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリアミド、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはこれらのコポリマーである。
【0048】
微粒子組成物の可能性のある更なる成分は、染料、着色のための顔料、または赤外線吸収のための顔料などの添加剤である。このような添加剤は、微粒子自体として存在してもよいし、あるいは樹脂成分などの別の成分中に分散または溶解されてもよい。
【0049】
粒子を形成するために、微粒子組成物を構成する複数の粒子の成分を含むプレミックスが形成され得る。例えば、プレミックスは、樹脂成分、熱ラジカル開始剤、および遅延剤を含み得る。プレミックス成分は別々に秤量され、プレミキサー内で混ぜ合わせられ、プレミックスが形成され得る。プレミックス成分を適切に混ぜ合わせるために、溶媒処理、押出、または混練が必要とされ得る。例えば、プレミックスは、例えば混練機または押出機において加熱され、押出物が得られる。
【0050】
押出物は次に凝固するまで冷却されてから、粒子に粉砕され得る。次に、粒子は、粒径を更に小さくするために更に粉砕された後、所望の粒径の複数の粒子を得るために大きさに基づいて適切に分類され得る。
【0051】
混合温度、混合期間、および遅延剤含量は、粒子の調製の間に望ましくない大幅な重合を回避するように選択することができる。プレミックスが押出機内で加熱される場合、押出機内で樹脂成分の硬化を起こし得る温度に到達するのを回避するために、適切な温度制御を使用することが好ましい。
【0052】
実施形態において、複数の第1の粒子は、10~100μmの平均粒径を有する。実施形態において、複数の第1の粒子は、30~80μmの平均粒径を有する。第1の粒子の要素は、以下において更に記載される。
【0053】
複数の粒子は、樹脂成分を含む第1の粒子であり、樹脂成分中に分散または溶解された熱ラジカル開始剤であり、樹脂成分中に分散または溶解された遅延剤である。
【0054】
[樹脂成分]
第1の粒子は樹脂成分を含む。樹脂成分は、第1の樹脂、第2の樹脂などの複数の樹脂を含み得る。樹脂成分は少なくとも第1の樹脂を含み、第1の樹脂は、第1の樹脂重合性基を含む。第1の樹脂重合性基は、電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む。第1の樹脂のみが以下において言及されるが、第1の樹脂の説明は、任意選択的な第2の樹脂または更なる樹脂の可能性のある態様についても説明することが意図される。
【0055】
実施形態において、樹脂成分は、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、エポキシ、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリ尿素、またはこれらの混合物を含む。実施形態において、第1の樹脂は、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、エポキシ、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリ尿素、またはこれらの混合物である。
【0056】
実施形態において、第1の樹脂は、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、または少なくとも60℃の融解温度(Tm)を有する。実施形態において、第1の樹脂は、最大で250、最大で200、最大で180、最大で160、最大で140、最大で130、最大で120、または最大で110℃の融解温度(Tm)を有する。実施形態において、第1の樹脂は、50~120℃の融解温度を有する。実施形態において、結晶性または半結晶性樹脂は、少なくとも38、少なくとも40、少なくとも50、または少なくとも60J/gの融解エンタルピー(ΔHm)を有する。
【0057】
実施形態において、第1の樹脂は、少なくとも-70、少なくとも-50、少なくとも-40、少なくとも-35、少なくとも-20、少なくとも-10、少なくとも0、少なくとも10、または少なくとも20℃のガラス転移温度(Tg)を有する。実施形態において、第1の樹脂は、最大で120、最大で110、最大で100、最大で90、最大で80、最大で75、最大で70、最大で60、または最大で50℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0058】
第1の樹脂は、1つまたは複数の第1の樹脂重合性基を含む。第1の樹脂は、複数の重合性基、例えば、平均して少なくとも2つの重合性基、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの重合性基を含み得る。第1の樹脂は、直鎖状または分枝状であり得る。実施形態において、第1の樹脂の各分子中の第1の樹脂重合性基の平均数は、少なくとも1、少なくとも1.5、少なくとも2、2に等しい、少なくとも2.01、少なくとも2.05、少なくとも2.10、少なくとも2.12、少なくとも2.15、少なくとも2.20、少なくとも2.30、少なくとも2.35、または少なくとも2.40である。実施形態において、第1の樹脂の各分子中の第1の樹脂重合性基の平均数は、最大で10、最大で9、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で5.5、最大で5、最大で4.5、最大で4、最大で3.80、または最大で3.50である。
【0059】
実施形態において、第1の樹脂の各分子中の第1の樹脂重合性基の平均数は、少なくとも2かつ最大で4.5、少なくとも2かつ最大で4、少なくとも2かつ最大で3.5、または少なくとも2かつ最大で3である。
【0060】
少なくとも1つの第1の樹脂重合性基は、電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む。実施形態において、第1の樹脂重合性基は、電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合からなる。
【0061】
第1の樹脂は、電子吸引性基に直接結合した1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を含む。第1の樹脂は、電子吸引性基に直接結合した複数の炭素-炭素二重結合、例えば、電子吸引性基に直接結合した平均して少なくとも2つの炭素-炭素二重結合、電子吸引性基に直接結合した少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの炭素-炭素二重結合を含み得る。第1の樹脂は、直鎖状または分枝状であり得る。実施形態において、第1の樹脂の各分子中の電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合の平均数は、少なくとも1、少なくとも1.5、少なくとも2、2に等しい、少なくとも2.01、少なくとも2.05、少なくとも2.10、少なくとも2.12、少なくとも2.15、少なくとも2.20、少なくとも2.30、少なくとも2.35、または少なくとも2.40である。実施形態において、第1の樹脂の各分子中の電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合の平均数は、最大で10、最大で9、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で5.5、最大で5、最大で4.5、最大で4、最大で3.80、または最大で3.50である。
【0062】
実施形態において、第1の樹脂の各分子中の電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合の平均数は、少なくとも2かつ最大で4.5、少なくとも2かつ最大で4、少なくとも2かつ最大で3.5、または少なくとも2かつ最大で3である。
【0063】
実施形態において、第1の樹脂はテレケリック型である。テレケリック型樹脂は、少なくとも2つの反応性末端基を含む樹脂である。実施形態において、第1の樹脂はテレケリック型であり、少なくとも2つの第1の樹脂重合性基を末端基として含む。実施形態において、第1の樹脂はテレケリック型であり、少なくとも2つの第1の樹脂重合性基を末端基として含み、第1の樹脂重合性基は(メタ)アクリレート基を含む。
【0064】
実施形態において、樹脂成分、熱ラジカル開始剤、および遅延剤を含む粒子中で、樹脂成分の量は、第1の粒子の全重量を基準として、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも69、少なくとも70、または少なくとも75wt%である。実施形態において、樹脂成分、熱ラジカル開始剤、および遅延剤を含む粒子中で、樹脂成分の量は、第1の粒子の全重量を基準として、最大で99、最大で95、最大で90、最大で88、最大で85、最大で82、最大で81、または最大で80wt%である。実施形態において、樹脂成分の量は、第1の粒子の全重量を基準として69~84wt%である。
【0065】
実施形態において、樹脂成分、熱ラジカル開始剤、および遅延剤を含む粒子中で、第1の樹脂の量は、樹脂成分の全重量を基準として、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも69、少なくとも70、または少なくとも75wt%である。実施形態において、樹脂成分、熱ラジカル開始剤、および遅延剤を含む粒子中で、第1の樹脂の量は、樹脂成分の全重量を基準として、最大で99、最大で95、最大で90、最大で88、最大で85、最大で82、最大で81、または最大で80wt%である。実施形態において、第1の樹脂の量は、樹脂成分の全重量を基準として69~84wt%である。
【0066】
実施形態において、樹脂成分は、少なくとも800、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも1800、少なくとも2000、または少なくとも2300DaのMnを有する。実施形態において、樹脂成分は、最大で20000、最大で10000、最大で9000、最大で8000、最大で7000、最大で6000、または最大で5000DaのMnを有する。実施形態において、樹脂成分は、少なくとも2000Daかつ最大で8000DaのMnを有する。
【0067】
実施形態において、第1の樹脂は、少なくとも800、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも1800、少なくとも2000、または少なくとも2300DaのMnを有する。実施形態において、第1の樹脂は、最大で20000、最大で10000、最大で9000、最大で8000、最大で7000、最大で6000、または最大で5000DaのMnを有する。実施形態において、第1の樹脂は、少なくとも2000Daかつ最大で8000DaのMnを有する。
【0068】
実施形態において、樹脂成分の各分子中の重合性基の平均数で割った樹脂成分のMnは、少なくとも150、少なくとも180、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、または少なくとも500g/molである。実施形態において、樹脂成分の各分子中の重合性基の平均数で割った樹脂成分のMnは、最大で2000、最大で1500、最大で1300、最大で1200、最大で1100、最大で1000、最大で900、最大で850、最大で800g/molである。実施形態において、樹脂成分の各分子中の重合性基の平均数で割った樹脂成分のMnは、450~1200g/molである。
【0069】
実施形態において、第1の樹脂の各分子中の第1の樹脂重合性基の平均数で割った第1の樹脂のMnは、少なくとも150、少なくとも180、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、または少なくとも500g/molである。実施形態において、第1の樹脂の各分子中の第1の樹脂重合性基の平均数で割った第1の樹脂のMnは、最大で2000、最大で1500、最大で1300、最大で1200、最大で1100、最大で1000、最大で900、最大で850、最大で800g/molである。実施形態において、第1の樹脂の各分子中の第1の樹脂重合性基の平均数で割った第1の樹脂のMnは、450~1200g/molである。
【0070】
実施形態において、樹脂成分の各分子中の電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合の平均数で割った樹脂成分のMnは、少なくとも150、少なくとも180、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、または少なくとも500g/molである。実施形態において、樹脂成分の各分子中の電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合の平均数で割った樹脂成分のMnは、最大で3000、最大で2000、最大で1500、最大で1300、最大で1200、最大で1100、最大で1000、最大で900、最大で850、最大で800g/molである。実施形態において、樹脂成分の各分子中の電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合の平均数で割った樹脂成分のMnは、450~1200g/molである。
【0071】
実施形態において、第1の樹脂の各分子中の電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合の平均数で割った第1の樹脂のMnは、少なくとも150、少なくとも180、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、または少なくとも500g/molである。実施形態において、第1の樹脂の各分子中の電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合の平均数で割った第1の樹脂のMnは、最大で2000、最大で1500、最大で1300、最大で1200、最大で1100、最大で1000、最大で900、最大で850、最大で800g/molである。実施形態において、第1の樹脂の各分子中の電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合の平均数で割った第1の樹脂のMnは、450~1200g/molである。
【0072】
第1の樹脂は、結晶性または非晶質であり得る。「非晶質」とは樹脂が融解ピークを示さないことを意味するが、結晶性および半結晶性樹脂は少なくとも1つの融解ピークを示す。実施形態において、非晶質樹脂は融解温度(Tm)を有さない。実施形態において、結晶性樹脂は、少なくとも38、少なくとも40、少なくとも50、または少なくとも60J/gの融解エンタルピー(ΔHm)を有する。
【0073】
実施形態において、第1の樹脂は非晶質であり、電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合の平均数が少なくとも2かつ最大で6である。実施形態において、第1の樹脂は結晶性であり、電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合の平均数が少なくとも2かつ最大で4である。実施形態において、第1の樹脂は結晶性であり、電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合の平均数が少なくとも2かつ最大で3である。実施形態において、樹脂成分は第1の樹脂および第2の樹脂を含み、第1の樹脂は非晶質であり、電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含み、そして第2の樹脂は結晶性であり、電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む。
【0074】
実施形態において、第1の樹脂は非晶質であり、少なくとも2000Daかつ最大で8000DaのMnを有する。実施形態において、第1の樹脂は非晶質であり、少なくとも2000Daかつ最大で5000DaのMnを有する。
【0075】
実施形態において、第1の樹脂は非晶質であり、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも45、または少なくとも50℃のガラス転移温度(Tg)を有する。実施形態において、第1の樹脂は非晶質であり、最大で120、最大で110、最大で100、最大で90、最大で80、最大で75、最大で70、最大で65、または最大で60℃のガラス転移温度(Tg)を有する。実施形態において、第1の樹脂は非晶質であり、少なくとも20℃かつ最大で65℃のガラス転移温度(Tg)を有する。実施形態において、第1の樹脂は非晶質であり、160℃における溶融粘度が少なくとも1、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、または少なくとも15Pa.sである。実施形態において、第1の樹脂は非晶質であり、160℃における溶融粘度が最大で400、最大で300、最大で200、最大で150、最大で100、最大で80、または最大で50Pa.sである。実施形態において、第1の樹脂は非晶質であり、160℃における溶融粘度が2~50Pa.sである。
【0076】
実施形態において、第1の樹脂は結晶性であり、少なくとも2000Daかつ最大で8000DaのMnを有する。実施形態において、第1の樹脂は結晶性であり、少なくとも2300Daかつ最大で8000DaのMnを有する。
【0077】
実施形態において、第1の樹脂は結晶性であり、少なくとも-70、少なくとも-50、少なくとも-40、少なくとも-35、少なくとも-20、少なくとも-10、少なくとも0、少なくとも10、または少なくとも20℃のガラス転移温度(Tg)を有する。実施形態において、第1の樹脂は結晶性であり、最大で120、最大で110、最大で100、最大で90、最大で80、最大で75、最大で70、最大で60、または最大で50℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0078】
実施形態において、第1の樹脂は結晶性であり、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、または少なくとも60℃の融解温度(Tm)を有する。実施形態において、第1の樹脂は結晶性であり、最大で200、最大で180、最大で160、最大で140、最大で130、最大で120、または最大で110℃の融解温度(Tm)を有する。実施形態において、第1の樹脂は結晶性であり、融解温度は50~120℃である。樹脂が複数の融解を有する場合、最大融解エンタルピー(ΔHm)を有する融解のTmがTmであるとされる。
【0079】
実施形態において、第1の樹脂は、ポリエステル、アクリル(ポリアクリレート)、ポリウレタン、エポキシ、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリ尿素、またはこれらの混合物もしくはコポリマーである。実施形態において、第1の樹脂は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、またはポリエステルアミド、または混合物もしくはコポリマーである。実施形態において、第1の樹脂は不飽和ポリエステルである。
【0080】
実施形態において、第1の樹脂は、不飽和ポリエステルなどのポリエステルである。ポリエステルは、一般に、ポリカルボン酸およびポリオールの重縮合生成物である。ポリカルボン酸の例は、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸および4,4’-オキシビス安息香酸、3,6-ジクロロフタル酸、テトラクロロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸または無水物、イタコン酸または無水物、メサコン酸、シトラコン酸およびトリメリット酸である。ポリオールの例は、脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール(ネオペンチルグリコール)、ヘキサン-2,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、2,2-ビス-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン(水素化ビスフェノール-A)、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよび2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバル酸エステルおよび4,8-ビス-(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5,2,1,0]デカン(トリシクロデカンジメチロール)、ならびに2,3-ブテンジオールである。
【0081】
三官能性またはそれよりも多官能性のアルコールまたはカルボン酸は、分枝状ポリエステルを得るために使用することができる。適切な三官能性またはそれよりも多官能性のアルコールまたはカルボン酸の例としては、グリセロール、ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールおよびソルビトール、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリト酸、またはジメチロールプロピオン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
ポリエステルは、一般的に知られている通例の重合方法を用いて、従来のエステル化および/またはエステル交換反応によって、あるいは酵素の使用によるエステル化および/またはエステル交換反応によって調製することができる。例えば、必要に応じて、例えば、ブチルクロロ二水酸化物、ジブチルスズ酸化物、チタン酸テトラブチルまたはブチルスタン酸などの通例のエステル化触媒を使用することができる。使用されるこれらのエステル化触媒の量の例は、ポリエステル樹脂の全重量を基準として0.01~1wt%、例えば、0.1wt%である。ポリエステルの合成において、以下の二酸:コハク酸、アジピン酸、セバシン酸またはドデカン二酸のうちの1つまたは複数、および/または以下のジオール:エチレングリコール、ヘキサンジオール、ブタンジオールのうちの1つまたは複数を使用することにより、ポリエステルに結晶化度が導入されてもよい。
【0083】
実施形態において、第1の樹脂は、ポリアクリレートとしても知られているアクリルであってもよい。一般に、アクリルは、任意選択的にスチレンと組み合わせたアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルに基づく。これらのアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルは、ヒドロキシルまたはグリシジル官能性アクリル酸またはメタクリル酸によって置換され得る。例示的なアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルとしては、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-プロピルアクリレート、イソブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレートおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ヒドロキシル官能性を有するアクリル樹脂を得るために、アクリル樹脂は、好ましくは(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと組み合わせて、ヒドロキシル官能性(メタ)アクリル酸を含有する[「(メタ)アクリル」という用語は、本明細書では、「メタクリルまたはアクリル」を意味する]。ヒドロキシル官能性(メタ)アクリル酸エステルの例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。グリシジル官能性を有するアクリル樹脂を得るために、アクリル樹脂は、好ましくは(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと組み合わせて、グリシジル官能性(メタ)アクリル酸エステルを含有する。グリシジル官能性(メタ)アクリル酸エステルの例としては、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。また、ヒドロキシル官能性およびグリシジル官能性の両方を有するアクリル樹脂を合成することも可能である。アクリル樹脂へのエチレン不飽和の導入は、アクリル樹脂上のヒドロキシルおよび/またはグリシジル部分と、アクリル酸、メタクリル酸、2-ブテン二酸、(メタ)アクリル酸無水物、および(メタ)アクリロイルクロリドなどの不飽和有機酸とを反応させることにより実行され得る。
【0084】
実施形態において、第1の樹脂はポリウレタンである。ポリウレタンは、例えば、必要に応じて触媒および他の添加剤の存在下において、(ポリ)イソシアネートと(ポリ)アルコールとの一般的に知られている通例の重付加反応を用いて調製することができる。例えば、必要に応じて、通例の触媒、例えば第3級アミンまたは有機金属化合物、例えば、モノブチルスズ、トリス(2-エチルヘキサノアート)、チタン酸テトラブチルまたはジラウリン酸ジブチルスズなどを使用することができる。ポリウレタンの調製において使用され得る(ポリ)アルコールの例は、ポリエステルの調製において使用できるものと同じである。(ポリ)アルコールは、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリビニルポリオール、ポリシロキサンポリオール、またはアクリルポリオールであり得る。適切なポリエステルポリオールには、多価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、フランジメタノール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA誘導体、グリセロール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリトリトール、またはこれらの混合物と、ポリカルボン酸、特にジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体、例えば、コハク酸、グルタル酸およびアジピン酸またはこれらのメチルエステル、フタル酸無水物またはテレフタル酸ジメチルとのヒドロキシル末端反応生成物が含まれる。ポリオールと共に、ラクトン、例えばカプロラクトンの重合によって得られるポリエステルも使用され得る。ポリエステル化混合物中にエタノールアミンなどのアミノ-アルコールを包含させることによって、ポリエステルアミドを得ることができる。ポリウレタンの調製において使用され得るイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-メチレンジフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート、1,4-ベンゼンジイソシアネート、3,3’-ジエトキシ-4,4-ジフェニルジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピル-m-フェニレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサン-1,6ジイソシアネート、およびこれらの混合物が挙げられる。ポリウレタン樹脂へのエチレン不飽和の導入は、ポリウレタン樹脂上のイソシアネート部分と、不飽和ヒドロキシル官能性エステル、例えば、ヒドロキシルプロピルメタクリレートまたはヒドロキシルエチルアクリレートまたはヒドロキシルエチルメタクリレートとを反応させることにより実行されてもよいし、あるいは、ポリウレタン樹脂へのエチレン不飽和の導入は、ポリウレタン上のヒドロキシル部分と、アクリル酸、メタクリル酸、2-ブテン二酸などの不飽和有機酸とを反応させることにより実行されてもよい。
【0085】
実施形態において、第1の樹脂はエポキシである。エポキシは、例えば、エピクロロヒドリンと組み合わせてフェノール化合物から調製され得る。実施形態において、エポキシは、例えば、Epikote(商標)1001として市販されているようなビスフェノールAジグリシジルエーテル、またはNovolacエポキシドである。エポキシへの第1の樹脂重合性基の導入は、エポキシ上のエポキシ部分と、アクリル酸、メタクリル酸、または2-ブテン二酸などの不飽和有機酸とを反応させることにより実行され得る。
【0086】
実施形態において、第1の樹脂は、ポリアミド、ポリイミド、またはポリアミド-イミドである。実施形態において、第1の樹脂はポリアミドである。ポリアミドは、例えば、ジアミンおよびジカルボン酸の重縮合反応によって調製することができる。ジカルボン酸は、分枝状、非直鎖状または直鎖状であり得る。例示的なジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、フェニレンジ(オキシ酢酸)、セバシン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸および/またはアゼライン酸が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なジアミンとしては、イソホロンジアミン、1,2-エチレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,12-ドデシレンジアミン、二量体脂肪族(dimerfatty)ジアミン、1,4シクロヘキサンビスメチルアミン、ピペラジン、p-キシリレンジアミンおよび/またはm-キシリレンジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。また分枝化剤(branching agent)を使用して、ポリアミドは分枝状であってもよい。例示的な分枝化剤としては、アミン、例えばジ-アルキレン-トリアミン、例えば、ジ-エチレン-トリアミンまたはジ-ヘキサメチレン-トリアミン;ジ-アルキレン-テトラアミンまたはジ-アルキレン-ペンタアミン;酸、例えば1,3,5-ベンゼントリカルボン酸またはトリメリット酸無水物;および多官能性アミノ酸、例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸が挙げられるが、これらに限定されない。重合性基の導入は、ポリアミド樹脂上のカルボキシル部分と、ヒドロキシエチルアクリレートなどの不飽和有機アルコールとを反応させることにより実行され得る。
【0087】
実施形態において、第1の樹脂はポリエステルアミドである。ポリエステルアミドは、エステル結合(ポリエステルの場合のように)およびアミド結合(ポリアミドの場合のように)の両方を含む樹脂である。ポリエステルアミドは、例えば、一官能性、二官能性、三官能性または多官能性モノマー、例えば、カルボン酸官能性を有するモノマー、ヒドロキシル官能性を有するモノマー、アミン官能性を有するモノマーおよび/またはこれらの官能性のいずれかの組合せを有するモノマーから調製され得る。重合性基の導入は、ポリエステルアミド樹脂上のカルボキシル部分と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの不飽和有機アルコールとを反応させることにより実行され得る。
【0088】
実施形態において、第1の樹脂はポリカーボネートである。ポリカーボネートへの重合性基の導入は、ポリカーボネート上のヒドロキシル部分と、アクリル酸、メタクリル酸、または2-ブテン二酸などの不飽和有機酸とを反応させることにより実行され得る。
【0089】
実施形態において、第1の樹脂はポリ尿素である。ポリ尿素は、例えば、必要に応じてポリウレタンについて上記されたものと同様の触媒および他の添加剤の存在下において、(ポリ)イソシアネートと(ポリ)アミンとの一般的に知られている通例の重付加反応を用いて調製することができる。ポリ尿素の調製のために適切な(ポリ)アミンには、ポリアミドについて上記で例示されたようなものが含まれる。ポリ尿素の調製のために適切な(ポリ)イソシアネートには、ポリウレタンについて上記で例示されたようなものが含まれる。あるいは、ポリ尿素は、例えば、(ポリ)ウレタンとポリアミンとの一般的に知られている通例の重縮合反応を用いて調製することもできる。ポリ尿素の調製のために適切な(ポリ)アミンには、ポリアミドについて上記で例示されたようなものが含まれる。ポリ尿素の調製のために適切な(ポリ)ウレタンは、イソホロンジエ(メ)チルウレタン、1,6-ヘキサンジエ(メ)チルウレタン、1,12-ドデシレンジエ(メ)チルウレタン、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジエ(メ)チルウレタンを含み、例えば、ポリアミンとジエ(メ)チルカーボネートとの反応から調製することができる。ポリ尿素へのエチレン不飽和の導入は、例えば、ポリ尿素上のアミンおよび/またはイソシアネート部分と、(メタ)アクリル酸などの不飽和有機酸とを反応させることにより、あるいはイソシアネート部分と、ヒドロキシルプロピルメタクリレート、ヒドロキシルエチルアクリレートもしくはヒドロキシルエチルメタクリレートなどの不飽和ヒドロキシル官能性エステル、またはヒドロキシエチルアクリルアミドなどのヒドロキシル官能性アクリルアミドとを反応させることにより実行され得る。
【0090】
第1の樹脂重合性基は、第1の樹脂の骨格中に、そして/あるいは第1の樹脂の骨格のペンダントとして、そして/あるいは第1の樹脂の末端に存在し得る。実施形態において、第1の樹脂重合性基は、アクリレート、メタクリレート、フマラート、マレアート、イタコナート、シトラコナート、またはメサコナートを含む。アクリレート、メタクリレート、フマラート、マレアート、イタコナート、シトラコナート、およびメサコナートは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸または無水物、イタコン酸または無水物、シトラコン酸、およびメサコン酸からそれぞれ誘導される重合性基である。
【0091】
第2の樹脂または更なる樹脂(第3、第4など)は、第1の樹脂と同じであっても異なっていてもよい。第2の樹脂重合性基または更なる樹脂重合性基(第3、第4など)は、第1の樹脂重合性基と同じであっても異なっていてもよい。従って、上記の種々の態様は第1の樹脂または第1の樹脂重合性基に関して記載されているが、これらの記載は、第2の樹脂、第2の樹脂重合性基、第3の樹脂、第3の樹脂重合性基などの更なる樹脂または樹脂重合性基の種々の態様を開示することも意図される。従って、第1の樹脂および第2の樹脂の種々の態様の組合せも開示されることが意図される。
【0092】
電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む第1の樹脂重合性基に加えて、更なる樹脂重合性基(例えば、第2の樹脂重合性基)が存在していてもよい。実施形態において、樹脂成分は第2の樹脂を含み、第2の樹脂は第2の樹脂重合性基を含み、第2の樹脂重合性基は第1の樹脂重合性基と(共)重合することができる炭素-炭素二重結合を含む。実施形態において、更なる樹脂重合性基は、電子供与性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含み得る。
【0093】
実施形態において、樹脂成分は第1の樹脂を含み、第1の樹脂は第1の樹脂重合性基を含み、第1の樹脂重合性基は電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含み、そして第2の樹脂は第2の樹脂重合性基を含み、第2の樹脂重合性基は電子供与性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む。実施形態において、第2の樹脂重合性基はビニルエーテルを含む。実施形態において、第2の樹脂は、モノビニルエーテルまたはジビニルエーテルを含む。実施形態において、第2の樹脂はウレタン(メタ)アクリレートを含む。
【0094】
実施形態において、第2の樹脂は、ビニル官能化ウレタン樹脂またはビニル官能化尿素樹脂を含む。ビニル官能化ウレタン樹脂は、ビニル基を含むウレタン樹脂である。ビニル官能化尿素樹脂は、ビニル基を含む尿素樹脂である。実施形態において、ビニル官能化ウレタン樹脂は、ビニルエーテルポリウレタン樹脂またはビニルエステルポリウレタン樹脂である。実施形態において、ビニル官能化尿素樹脂は、ビニルエーテルポリ尿素樹脂またはビニルエステルポリ尿素樹脂である。実施形態において、ビニル官能化ウレタン樹脂またはビニル官能化尿素樹脂は非晶質、結晶性または半結晶性である。実施形態において、ビニル官能化ウレタン樹脂はビニルエーテルポリエステルウレタンである。実施形態において、ビニル官能化尿素樹脂はビニルエーテルポリエステル尿素である。ビニルエーテルポリエステルウレタンまたは尿素のポリエステル部分は、一般に、ポリアルコールおよびポリカルボン酸の重縮合生成物である。
【0095】
ビニル官能化ウレタン樹脂を調製するために、イソシアネートは、ヒドロキシ官能性ビニルエーテルおよび/または多価アルコールと反応され得る。ビニルエーテルポリエステルウレタンを調製するために、イソシアネートは、ヒドロキシ官能性ビニルエーテルおよびヒドロキシ官能性ポリエステル(例えば、上記のようなポリエステル)と反応され得る。反応は、必要に応じて触媒および他の添加剤の存在下で実施され得る。ビニルエステルポリウレタンまたはポリ尿素樹脂は、トランスビニル化(transvinylation)プロセスによって形成され得る。
【0096】
実施形態において、第2の樹脂はビニルエーテルポリエステルである。ビニルエーテルポリエステルは、例えば、酸官能性ポリエステルとヒドロキシル官能性ビニルエーテルとから調製することができる。また、ヒドロキシ官能性またはアルキル官能性ポリエステルとヒドロキシ官能性ビニルエーテルとのエステル交換反応によってビニルエーテルポリエステルを調製することも可能である。
【0097】
実施形態において、第2の樹脂は重合性であるが、第1の樹脂と共重合することができない。実施形態において、第2の樹脂重合性基はエポキシを含む。実施形態において、第1の樹脂重合性基は(メタ)アクリレートであり、第2の樹脂重合性基はエポキシを含む。
【0098】
[熱ラジカル開始剤]
熱ラジカル開始剤は、熱ラジカル開始剤が活性化温度よりも高いかそれに等しい温度にさらされたときに、2時間以内に第1の樹脂の重合を開始させるのに十分なラジカルを生成する成分であり、活性化温度は30℃よりも高い。従って、活性化温度は、熱ラジカル開始剤が、2時間以内に第1の樹脂の重合を開始させるのに十分なラジカルを生成する最低温度である。実施形態において、熱ラジカル開始剤の活性化温度は、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、120℃、または150℃よりも高い。実施形態において、熱ラジカル開始剤の活性化温度は、300℃、250℃、200℃、180℃、160℃、140℃、120℃、100℃、80℃、60℃、または50℃よりも低い。ラジカルは、例えば、熱ラジカル開始剤の分解によって生成され得る。
【0099】
熱ラジカル開始剤は、樹脂成分中に分散または溶解される。熱ラジカル開始剤は、単に樹脂成分と混合することによって樹脂中に分散または溶解され得る。例えば、熱ラジカル開始剤が樹脂成分中に分散または溶解されるように、樹脂、熱ラジカル開始剤、および遅延剤を含む組成物を混合した後に、組成物から粒子を形成することによって、熱ラジカル開始剤は樹脂成分中に分散または溶解され得る。樹脂成分粒子を熱ラジカル開始剤粒子と単にブレンドすることは、熱ラジカル開始剤を樹脂成分中に溶解または分散させることではない。熱ラジカル開始剤を樹脂成分中に溶解または分散させるために、溶媒処理、押出、または混練が必要とされ得る。実施形態において、液体組成物は更に熱ラジカル開始剤を含む。
【0100】
熱ラジカル開始剤の例としては、例えば、アゾイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンニトリル)、1,1’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)などのアゾ化合物、C-C不安定化合物、例えばベンゾピナコール、過酸化物、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
実施形態において、熱ラジカル開始剤は過酸化物である。適切であると思われる過酸化物には、固体か液体かにかかわらず有機および無機過酸化物(担体上の過酸化物を含む)が含まれ、過酸化水素が適用されてもよい。
【0102】
適切な過酸化物の例としては、例えば、ペルカーボネート(式-OC(O)O-)、ペルオキシエステル(式-C(O)OO-)、過無水物(peranhydride)としても知られているジアシルペルオキシド(式-C(O)OOC(O)-)、ジアルキルペルオキシドまたはペルエーテル(式-OO-)、ヒドロペルオキシド(式-OOH)などが挙げられる。また過酸化物は本質的にオリゴマーまたはポリマーであってもよい。
【0103】
熱ラジカル開始剤は、例えば、ペルカーボネート、ペルエステルまたは過無水物であり得る。適切な過無水物は、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)および過酸化ラウロイル(LauroxTMとして市販されている)である。適切なペルエステルは、例えば、t-ブチルペルベンゾアートおよび2-エチルヘキシルペルラウラートである。適切なペルカーボネートは、例えば、ジ-t-ブチルペルカーボネートおよびジ-2-エチルヘキシルペルカーボネートまたはモノペルカーボネートである。
【0104】
実施形態において、熱ラジカル開始剤は有機過酸化物である。適切な有機過酸化物の例は、第3級アルキルヒドロペルオキシド(例えば、t-ブチルヒドロペルオキシドなど)、他のヒドロペルオキシド(例えば、クメンヒドロペルオキシドなど)、ケトンペルオキシド(過酸化水素およびケトンの付加生成物であるペルケトン、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシドおよびアセチルアセトンペルオキシドなど)、ペルオキシエステルまたは過酸(例えば、t-ブチルペルエステル、過酸化、過酢酸および過安息香酸ベンゾイル、過酸化ラウロイルなど、(ジ)ペルオキシエステルを含む)、ペルエーテル(例えば、ペルオキシジエチルエーテルなど)である。当然ながら、粒子中で過酸化物の混合物を使用することも可能である。また過酸化物は、混合過酸化物、すなわち、1つの分子中に任意の2つの異なるペルオキシ保持部分を含有する過酸化物であってもよい。
【0105】
実施形態において、熱ラジカル開始剤は過無水物、例えば過酸化ベンゾイルまたは過酸化ラウロイル、ペルオキシジカーボネート、例えばジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)-ペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、またはジミリスチルペルオキシジカーボネートである。
【0106】
通常、過酸化物の反応性は、その半減期によって決定される。ヒドロペルオキシドを除いて、半減期は、モノクロロベンゼン中の開始剤の希釈溶液の示差走査熱量測定-熱活性モニタリング(DSC-TAM)によって決定される。ヒドロペルオキシド(hydroxperoxide)については、半減期は、モノクロロベンゼン中で滴定により決定される。半減期は、以下の式(1):
【数1】
から計算することができ、式中、t
1/2は半減期(秒)であり、k
dは熱ラジカル開始剤解離の速度定数(s
-1)であり、以下の式(2):
【数2】
により決定され、式中、Aはアレニウスの頻度因子(s
-1)であり、E
aは開始剤解離の活性化エネルギー(J/モル)であり、Rは8.3142J/モル・Kであり、Tは温度(K)である。
【0107】
実施形態において、熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期(t1/2)を有する温度は50~400℃である。実施形態において、熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、または150℃以上である。実施形態において、熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、または150℃以上である。実施形態において、熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、または150℃以上である。実施形態において、熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度の上限は、150℃、175℃、200℃、225℃、250℃、275℃、300℃、325℃、350℃、375℃、または400℃である。実施形態において、熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度の下限は、-20℃、-10℃、0℃、10℃、20℃、30℃、40℃、または50℃である。実施形態において、第1の粒子中の熱ラジカル開始剤の量は、第1の粒子の全重量を基準として、少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.5、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、または少なくとも8wt%である。実施形態において、第1の粒子中の熱ラジカル開始剤の量は、第1の粒子の全重量を基準として、最大で30、最大で20、最大で15、最大で10、または最大で8wt%である。実施形態において、熱ラジカル開始剤の量は、第1の粒子の全重量を基準として0.5~5wt%である。
【0108】
[遅延剤]
遅延剤は、樹脂成分中に分散または溶解される。実施形態において、液体組成物は更に遅延剤を含む。実施形態において、遅延剤は、熱ラジカル開始剤により生成されるラジカルに応答して、第1の粒子重合性基の重合の開始を阻害する。遅延剤は、単に樹脂と混合することによって樹脂中に分散または溶解され得る。例えば、遅延剤が樹脂成分中に分散または溶解されるように、樹脂、熱ラジカル開始剤、および遅延剤を含む組成物を混合した後に、組成物から粒子を形成することによって、遅延剤は樹脂中に分散または溶解され得る。樹脂成分粒子を遅延剤粒子と単にブレンドすることは、遅延剤を樹脂成分中に溶解または分散させることではない。遅延剤を樹脂成分中に溶解または分散させるために、溶媒処理、押出、または混練が必要とされ得る。
【0109】
実施形態において、遅延剤は、フェノール化合物、安定ラジカル、カテコール、フェノチアジン、ヒドロキノン、ベンゾキノン、またはこれらの混合物である。
【0110】
実施形態において、遅延剤はフェノール化合物である。フェノール化合物の例としては、2-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-6-ブチル-4-エチルフェノール、2,4,6-トリメチル-フェノール、2,4,6-トリス-ジメチルアミノメチルフェノール、4,4’-チオ-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノールおよび6,6’-ジ-t-ブチル-2,2’-メチレンジ-p-クレゾールが挙げられる。
【0111】
実施形態において、遅延剤は安定ラジカルである。安定ラジカルの例としては、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール(TEMPOLとも呼ばれる化合物)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン(TEMPONとも呼ばれる化合物)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチル-4-カルボキシル-ピペリジン(4-カルボキシ-TEMPOとも呼ばれる化合物)、1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン、1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチル-3-カルボキシルピロリジン(3-カルボキシ-PROXYLとも呼ばれる)およびガルビノキシル(2,6-ジ-tert-ブチル-α-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-オキソ-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン)-p-トリルオキシ)が挙げられる。
【0112】
実施形態において、遅延剤はカテコールである。カテコールの例としては、カテコール、4-tert-ブチルカテコール、および3,5-ジ-tert-ブチルカテコールが挙げられる。
【0113】
実施形態において、遅延剤はヒドロキノンである。ヒドロキノンの例としては、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、2-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジメチルヒドロキノンおよび2,3,5-トリメチルヒドロキノンが挙げられる。
【0114】
ベンゾキノンの例としては、ベンゾキノン、2,3,5,6-テトラクロロ-1,4-ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、およびナフトキノン(napthoquinone)が挙げられる。
【0115】
他の適切な遅延剤は、例えば、アルミニウム-N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミンおよびフェノチアジンの群から選択され得る。
【0116】
実施形態において、遅延剤は、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、2-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジメチルヒドロキノン、または2,3,5-トリメチルヒドロキノンを含む。実施形態において、遅延剤は、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、2-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジメチルヒドロキノン、またはこれらの混合物を含む。実施形態において、遅延剤は、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、2-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、またはこれらの混合物を含む。実施形態において、遅延剤は、2-メチルヒドロキノンまたは2-tert-ブチルヒドロキノンを含む。好ましくは、第1の粒子を形成するための組成物中の遅延剤の量は、少なくとも0.0001、より好ましくは少なくとも0.0005、更により好ましくは少なくとも0.0010、最も好ましくは少なくとも0.0025、特別には少なくとも0.0050、より特別には少なくとも0.010、最も特別には少なくとも0.020、例えば少なくとも0.025、例えば少なくとも0.030、例えば少なくとも0.040、例えば少なくとも0.050、例えば少なくとも0.060、例えば少なくとも0.070、例えば少なくとも0.080、例えば少なくとも0.100pphである。第1の粒子を形成するための組成物中の遅延剤の量は、好ましくは最大で10、より好ましくは最大で5、更により好ましくは最大で2、最も好ましくは最大で1、特別には最大で0.75、より特別には最大で0.50、最も特別には最大で0.25、例えば最大で0.20、例えば最大で0.150、例えば最大で0.125pphである。好ましくは、微粒子組成物中の遅延剤の量は、少なくとも0.025pphかつ最大で0.125pphである。
【0117】
[液体組成物]
液体組成物は、噴霧、ジェッティング(例えば、圧電による)、サーマルもしくはバブルインクジェット、またはマスクもしくはステンシル上での付着などの任意の適切なプロセスを用いて、選択的に付着され得る。液体組成物は、少なくとも、第1の液体重合性基を含む第1の液体重合性成分を含む。
【0118】
[液体重合性成分]
液体重合性成分は、樹脂成分中の第1の重合性基と(共)重合することができる。実施形態において、液体重合性成分は、樹脂の第1の重合性基と(共)重合可能な反応性部分として不飽和を含む。液体重合性成分は、第1の液体重合性成分、第2の液体重合性成分などの1つまたは複数の液体重合性成分を含み得る。以下の開示が「液体重合性成分」または「液体重合性基」について言及する場合、第1、第2、および/または第3などの液体重合性成分または液体重合性基も開示される。液体重合性成分は、モノマー、オリゴマー、および/またはポリマーである成分、ならびに一官能性または多官能性であり得る成分を含み得る。
【0119】
液体重合性成分は液体重合性基を含む。実施形態において、液体重合性成分は、アクリレート基、メタクリレート基、または電子供与性基に結合した炭素-炭素二重結合を含む。実施形態において、重合性基は、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルアミド、ビニルアミン、アクリレート、メタクリレート、またはイタコナートである。実施形態において、重合性基は、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルアミン、アクリレート、またはメタクリレートである。実施形態において、液体重合性基は、ビニルエーテル、ビニルエステル、またはビニルアミンを含む。実施形態において、液体重合性基は、ウレタンビニルエーテルまたはウレタンビニルエステルを含む。
【0120】
例示的な(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、カプロラクトンアクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ベータ-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルカルバミルエチル(メタ)アクリレート、n-イソプロピル(メタ)アクリルアミドフッ素化(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、[2-[1,1-ジメチル-2-[(1-オキソアリル)オキシ]エチル]-5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル]メチルアクリレート;3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンジ(メタ)アクリレート、1,6-ビス-(2-メタクリロイルオキシ-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチル-ヘキサン(UDMA)、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、リン酸モノ-およびジ(メタ)アクリレート、C7~C20アルキルジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラート(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチルジ(メタ)アクリレート、および前述のモノマーのいずれかのアルコキシ化バージョン(例えば、エトキシル化および/またはプロポキシル化)が挙げられ、そして、ビスフェノールAへのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加生成物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAへのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加生成物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ジグリシジルエーテルのビスフェノールAへの(メタ)アクリレート付加生成物であるエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキル化ビスフェノールAのジアクリレート、およびトリエチレングリコールジビニルエーテル、ならびにヒドロキシエチルアクリレートの付加生成物も挙げられる。
【0121】
実施形態において、液体重合性成分はオリゴマーまたはポリマーを含む。実施形態において、液体重合性成分は、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、またはポリエステル(メタ)アクリレートを含む。
【0122】
実施形態において、液体重合性成分は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールAまたはビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、[2-[1,1-ジメチル-2-[(1-オキソアリル)オキシ]エチル]-5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル]メチルアクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0123】
例示的なビニルエーテルとしては、モノ(アルコール)官能化ビニルエーテル、例えば6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、または4-(ヒドロキシルメチル)シクロヘキシルメチルビニルエーテル(1,4-シクロヘキサンジメタノールビニルエーテル)が挙げられるが、これらに限定されない。更なるビニルエーテルには、ジ(アルコール官能化ビニルエーテル、例えば、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、またはトリエチレングリコールジビニルエーテルが含まれる。
【0124】
例示的なビニルエステルとしては、ヒドロキシルビニルエステル、および当業者に周知の方法のいずれかで調製されたものが挙げられるが、これらに限定されない。ヒドロキシルビニルエステルは、通常、第3級アミンの存在下でアセトアルデヒドと酸クロリドの反応によって調製され、ヒドロキシルビニルエステルの調製方法は当該技術分野において知られている。
【0125】
例示的なビニルアミンとしては、ビニルイミダゾール、ジメチルビニルアミン、およびN-ビニルカルバゾールが挙げられる。例示的なビニルアミドとしては、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、およびN-ビニルホルムアミドが挙げられる。
【0126】
実施形態において、液体組成物は、第1の液体重合性成分および第2の液体重合性成分を含む。実施形態において、第2の液体重合性基は、アクリレート、メタクリレート、フマラート、マレアート、またはイタコナートを含む。実施形態において、第1の液体重合性成分は第1の液体重合性基を含み、第1の液体重合性基は第1の樹脂重合性基と(共)重合することができる炭素-炭素二重結合を含み、そして第2の液体重合性成分は第2の液体重合性基を含み、第2の液体重合性基は電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む。実施形態において、第2の液体重合性基は、第1の液体重合性基と(共)重合することができる。実施形態において、第2の液体重合性基は、第1の樹脂重合性基または第2の樹脂重合性基などの樹脂成分中の重合性基と(共)重合することができる。実施形態において、第1の液体重合性基はビニルエーテルを含み、第2の液体重合性基はフマラートを含む。
【0127】
実施形態において、液体組成物は、第1の液体重合性成分と、第2の液体重合性基を含む第2の液体重合性成分とを含み、第2の液体重合性基は、第1の液体重合性基と(共)重合することができない。実施形態において、第2の液体重合性基は、エポキシまたはオキセタンを含む。
【0128】
実施形態において、液体組成物中の液体重合性成分は、液体組成物の全重量を基準として、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも92、少なくとも95、少なくとも96、少なくとも97、または少なくとも98wt%である。実施形態において、液体組成物中の液体重合性成分の量は、液体組成物の全重量を基準として、最大で99.9、最大で99.5、最大で99、最大で98、または最大で95wt%である。実施形態において、液体重合性成分の量は、液体組成物の全重量を基準として95~99.9wt%である。実施形態において、液体重合性成分の量は、液体組成物の全重量を基準として98~99.5wt%である。
【0129】
[任意選択的な促進剤]
実施形態において、促進剤は液体組成物中に存在する。促進剤が熱ラジカル開始剤と接触されると、熱ラジカル開始剤は、促進剤が存在しない場合に熱ラジカル開始剤が分解可能である温度よりも低い温度で分解可能である。実施形態において、促進剤は微粒子組成物中に付加的に存在し、熱ラジカル開始剤は液体組成物中に付加的に存在する。実施形態において、液体組成物を微粒子組成物上に付着させた後、促進剤は熱ラジカル開始剤と接触され、それにより、促進剤が存在しない場合に熱ラジカル開始剤が十分なラジカルを生成することができる温度よりも低い温度において、熱ラジカル開始剤に十分なラジカルを生成させる。実施形態において、促進剤が存在しない場合に熱ラジカル開始剤が十分なラジカルを生成することができる温度は微粒子組成物の温度よりも高いが、促進剤の存在下で熱ラジカル開始剤がラジカルを生成することができる温度は、微粒子組成物の温度よりも低い。
【0130】
実施形態において、促進剤は、アミン、アセトアセトアミド、アンモニウム塩、遷移金属化合物、またはこれらの混合物である。
【0131】
実施形態において、促進剤はアミンである。実施形態において、促進剤は第3級アミンである。実施形態において、促進剤は、芳香族環に直接結合した電子供与性基を含む芳香族第3級アミンである。実施形態において、促進剤は、第3級アミンに結合したβ-ヒドロキシアルキルを含む。実施形態において、促進剤は、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジイソプロパノール(diiosopropanol)-パラ-トルイジン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)キシリジン、N,N-ジメチルナフチルアミン、N,N-ジメチルトルイジン、ジイソプロパノール-p-トルイジン、またはエチルN,N-ジメチルアミノベンゾアートである。
【0132】
実施形態において、促進剤は遷移金属化合物である。好ましくは、遷移金属は21~79の原子番号を有する。適切な遷移金属の例は、以下の遷移金属Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Wのものである。実施形態において、遷移金属はMn、Fe、Co、またはCuである。実施形態において、遷移金属はMn、Fe、またはCuである。銅化合物が使用される場合、それは、例えば、Cu+塩またはCu2+塩の形態であり得る。マンガン化合物が使用される場合、それは、例えば、Mn2+塩またはMn3+塩の形態であり得る。コバルト化合物が使用される場合、それは、例えば、Co2+塩の形態であり得る。
【0133】
実施形態において、遷移金属化合物は、遷移金属塩、遷移金属錯体、またはこれらの混合物である。実施形態において、促進剤は、遷移金属有機酸塩または遷移金属有機酸塩の誘導体である。促進剤として適した遷移金属化合物の例は、遷移金属カルボン酸塩および遷移金属アセト酢酸塩、例えば遷移金属エチルヘキサン酸塩である。
【0134】
遷移金属化合物の反応性に応じて、開始系の反応性は、共促進剤を用いて更に増強され得る。実施形態において、液体組成物は共促進剤を含む。実施形態において、組成物は共促進剤を含む。共促進剤は促進剤と同じ組成物(液体または微粒子)中にあってもよいし、あるいは異なる組成物(液体または微粒子)中にあってもよい。共促進剤は熱ラジカル開始剤と同じ組成物(液体または微粒子)中にあってもよいし、あるいは異なる組成物(液体または微粒子)中にあってもよい。
【0135】
共促進剤の例としては、1,3-ジオキソ化合物、塩基および、チオールを含む化合物が挙げられる。実施形態において、共促進剤は液体組成物中に存在し、1,3-ジオキソ化合物である。実施形態において、共促進剤は液体組成物中に存在し、1,3-ジケトン、1,3-ジアルデヒド、1,3-ケトアルデヒド、1,3-ケトエステル、または1,3-ケトアミドを含む。
【0136】
実施形態において、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触していないときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度と、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度との間の差は、少なくとも10℃、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも70℃、または少なくとも80℃である。実施形態において、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触していないときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度と、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度との間の差は、最大で50℃、最大で60℃、最大で70℃、最大で80℃、最大で90℃、最大で100℃、最大で125℃、最大で150℃、最大で175℃、最大で200℃、最大で225℃、または最大で250℃である。実施形態において、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触していないときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度と、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度との間の差は、30℃~200℃である。実施形態において、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触していないときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度と、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度との間の差は、30℃~100℃である。
【0137】
実施形態において、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触していないときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、または150℃以上であり、そして熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下、または30℃以下である。実施形態において、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触していないときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、または150℃以上であり、そして熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は、60℃以下、50℃以下、40℃以下、または30℃以下である。実施形態において、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触していないときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、または150℃以上であり、そして熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は、40℃以下または30℃以下である。実施形態において、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は、20℃~50℃である。
【0138】
実施形態において、液体組成物中の促進剤の量は、液体組成物の全重量を基準として、少なくとも0.01、少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.5、少なくとも1、少なくとも2、または少なくとも3wt%である。実施形態において、液体組成物中の促進剤の量は、液体組成物の全重量を基準として、最大で8、最大で6、最大で5、最大で3、または最大で2wt%である。実施形態において、促進剤の量は、液体組成物の全重量を基準として0.1~5wt%である。実施形態において、促進剤の量は、液体組成物の全重量を基準として0.5~2wt%である。
【0139】
[任意選択的な液体ラジカル開始剤]
実施形態において、液体組成物は更に液体ラジカル開始剤を含む。液体ラジカル開始剤という用語は、液体組成物中のラジカル開始剤を指すために使用される。液体ラジカル開始剤は、それ自体が液体である必要はない。しかしながら、実施形態において、液体ラジカル開始剤は30℃で液体である。液体ラジカル開始剤は、第1の樹脂および/または液体重合性成分の重合をもたらすラジカルを生成することができる。実施形態において、液体ラジカル開始剤は、上記のような熱ラジカル開始剤である。
【0140】
実施形態において、液体ラジカル開始剤はラジカル光開始剤である。実施形態において、液体ラジカル開始剤は、ベンゾイルホスフィンオキシド、アリールケトン、ベンゾフェノン、ヒドロキシル化ケトン、l-ヒドロキシフェニルケトン、ケタール、メタロセン、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0141】
実施形態において、液体組成物は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドおよび2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニル、エトキシホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、および4,4’-ビス(N,N’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、ジメトキシベンゾフェノン、l-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル(1-ヒドロキシイソプロピル)ケトン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、4-イソプロピルフェニル(1-ヒドロキシイソプロピル)ケトン、オリゴ-[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、カンファーキノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、ビス(イータ5-2-4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル]チタン、ならびにこれらの任意の組合せを含むラジカル光開始剤を含む。
【0142】
実施形態において、液体組成物は、ベンゾイルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFからのLucirin TPO)および2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニル,エトキシホスフィンオキシド(BASFからのLucirin TPO-L)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(CibaからのIrgacure 819またはBAPO)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1(CibaからのIrgacure 907)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(CibaからのIrgacure 369)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(CibaからのIrgacure 379)、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド(ChitecからのChivacure BMS)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ChitecからのChivacure EMK)、ならびに4,4’-ビス(N,N’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)などを含むラジカル光開始剤を含む。またこれらの混合物も適している。
【0143】
付加的に、使用される電磁ラジカルの波長に応じて、ラジカル光開始剤と共に光増感剤が有用であり得る。適切な光増感剤の例としては、アントラキノン、例えば、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tertブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、および2-アミルアントラキノン、チオキサントンおよびキサントン、例えば、イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、および1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、メチルベンゾイルホルマート(CibaからのDarocur MBF)、メチル-2-ベンゾイルベンゾアート(ChitecからのChivacure OMB)、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド(ChitecからのChivacure BMS)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ChitecからのChivacure EMK)が挙げられる。
【0144】
液体ラジカル開始剤は、液体組成物の全重量を基準として、液体組成物の約10wt%までで存在することができ、特定の実施形態では、液体組成物の約6wt%まで、更なる実施形態では、液体組成物の重量により約0.01wt%~約5wt%で存在し得る。実施形態において、液体組成物は、液体組成物の全重量を基準として、0.1wt%~4wt%の液体ラジカル開始剤を含む。
【0145】
[任意選択的な可塑剤]
実施形態において、液体組成物は更に可塑剤を含む。実施形態において、可塑剤は液体である。実施形態において、可塑剤はポリアルキレンエーテルである。実施形態において、可塑剤は、デカノール、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、または脂肪酸である。実施形態において、可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのジアルキルフタラートである。実施形態において、可塑剤は、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリ-(2-エチルヘキシル)、トリメリット酸トリ-(n-オクチル,n-デシル)、トリメリット酸トリ-(ヘプチル,ノニル)、トリメリット酸n-オクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジメチル、アジピン酸モノメチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、またはマレイン酸ジイソブチルである。実施形態において、可塑剤の量は、全液体組成物の25、20、15、または10wt%未満である。実施形態において、可塑剤の量は、全液体組成物の1、5、10、または20wt%よりも多い。
【0146】
[任意選択的な吸収剤]
実施形態において、液体組成物または微粒子組成物は更に吸収剤を含む。吸収剤は、電磁放射線を吸収することができる。実施形態において、吸収剤は、赤外光、近赤外光、および可視光のうちの1つまたは複数を吸収する。吸収剤を包含させ、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置に電磁放射線を照射する任意選択のステップを実行することにより、吸収剤が存在する微粒子組成物の層においてより高い温度を得ることができる。吸収剤により吸収される波長は、電磁放射線の波長と重複しなければならない。
【0147】
より高い温度を達成することで、熱ラジカル開始剤は、吸収剤の非存在下で生成され得るよりも多いラジカルを生成し得る。好ましくは、吸収剤は液体組成物中に存在し、それにより、吸収剤が付着されていない微粒子組成物の領域と比べて、吸収剤が付着された微粒子組成物の領域において温度の上昇が起こる。
【0148】
実施形態において、吸収剤は、顔料、染料、金属粒子、またはカーボンブラックである。
【0149】
更なる任意選択的なステップにおいて、阻害剤は微粒子組成物上に付着され得る。阻害剤は、微粒子組成物、および任意選択的に液体組成物の硬化を阻害するために有用であり得る。阻害剤は、例えば、遅延剤、反射剤、またはバリアであり得る。適切な遅延剤は、上記の通りである。
【0150】
反射剤は、電磁放射線を反射する働きをする。例えば、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置に電磁放射線を照射する任意選択的なステップが実行される場合、反射剤は、硬化を促進することが所望されない微粒子組成物の領域に付着され得る。実施形態において、反射剤は、液体組成物が付着されていない位置に選択的に付着される。
【0151】
可能性のある反射剤は、顔料または染料、例えば金属インクまたは銀顔料である。セラミック粉末などの反射粉末または断熱材が使用されてもよい。反射剤は、水または別の溶媒などの適切な担体と共に存在し得る。
【0152】
バリアは、微粒子組成物と液体組成物との間のバリアとして働く。従って、このような材料は、液体組成物が微粒子組成物と接触するまたはそれに浸透する能力に影響を与え得る。実施形態において、バリアはシリコーンである。
【0153】
実施形態において、液体組成物は着色剤を含み、着色剤は顔料または染料を含む。このようにして、最終の3次元物体は、目に見える色が提供され得る。
【0154】
実施形態において、液体組成物は界面活性剤を含む。界面活性剤は液体組成物の表面張力を低下させ、従って、液体組成物による微粒子組成物の湿潤を改善するために使用され得る。例示的な界面活性剤は、i)シリコーンならびにii)エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドのブロックコポリマーである。実施形態において、界面活性剤は、i)ポリジメチルシロキサンのブロックと、ii)エチレンオキシドのブロックおよび/またはプロピレンオキシドのブロックとを含む直鎖ブロックコポリマーである。実施形態において、界面活性剤は、ポリジメチルシロキサン骨格と、エチレンオキシドのブロックおよび/またはプロピレンオキシドのブロックのペンダント基とを含むポリマーである。例示的な界面活性剤は、Momentive(商標)からのSilwet(登録商標)製品である。更に例示的な界面活性剤は、ポリアクリレートおよびナフタ/メトキシプロパノールアセタート、例えば、特定の表面添加剤、排気添加剤、またはBYKから入手可能な湿潤もしくは排気添加剤、例えばBYKからの非シリコーン湿潤もしくは排気添加剤である。更に例示的な界面活性剤は、フッ素系界面活性剤、例えばNovec FC4430、Novec FC4432、およびZonyl FSOである。
【0155】
実施形態において、液体組成物は、3次元物体の一部分を表す複数のボクセルに従って、微粒子組成物の層の上に選択的に分配される。ボクセルは3次元ピクセルであり、定義された体積を有し得る。ボクセルの体積は、3次元物体の形成方法の解像度に対応し得る。例えば、ボクセルは、特定の深さの微粒子組成物を硬化させることができる、選択的に分配された液体組成物の液滴の大きさによって定義することができる。従って、ボクセル体積は、硬化され得る関連微粒子組成物の深さのサイズを乗じた液滴の面積に対応し得る。
【0156】
特定の実施形態では、種々の重合性基種のモル比は制御される。実施形態において、ボクセル当たりのビニルエーテル基のフマラートおよびマレアート基に対するモル比は、5:1~1:5である。実施形態において、ボクセル当たりのビニルエーテル基のフマラートおよびマレアート基に対するモル比は、1.5:1~1:1.5である。実施形態において、ボクセル当たりのビニルエーテル基のフマラートおよびマレアート基に対するモル比は、1.1:1~1:1.1である。実施形態において、ボクセル当たりのメタクリレート基対ビニルエーテル基対フマラートおよびマレアート基のモル比は、4.5:2.5:1~3.5:1.5:1である。
【0157】
特定の実施形態では、微粒子組成物および液体組成物の量は、ボクセル当たりに存在するそれぞれの量に基づいて定義され得る。実施形態において、ボクセル当たりの微粒子組成物の重量の液体組成物の重量に対する比は、30:70~70:30である。実施形態において、ボクセル当たりの微粒子組成物の重量の液体組成物の重量に対する比は、95:5~50:50である。
【0158】
実施形態において、熱ラジカル開始剤は過酸化物であり、促進剤が存在し、かつアミンであり、ボクセル当たりの過酸化物のアミンに対するモル比は、0.1:2、0.2:1.5、または0.5:1.1である。実施形態において、促進剤が存在し、かつ遷移金属化合物であり、遷移金属化合物の量は、ボクセル当たりの微粒子組成物+液体組成物1kgにつき、少なくとも0.01、少なくとも0.05、少なくとも0.1mmolである。実施形態において、促進剤が存在し、かつ遷移金属化合物であり、遷移金属化合物の量は、ボクセル当たりの微粒子組成物+液体組成物1kgにつき、最大で10、最大で5、または最大で3mmolである。実施形態において、促進剤が存在し、かつ遷移金属化合物であり、遷移金属化合物の量は、ボクセル当たりの微粒子組成物+液体組成物1kgにつき1~3mmolである。
【0159】
更なる実施形態は、前述の微粒子組成物および液体組成物を含む、積層造形プロセスにより物体を形成するための材料のキットに関する。更なる実施形態は、前述の方法または材料のキットから形成された3次元物体に関する。
【0160】
[測定方法]
他に言及されない限り、本特許出願において報告または特許請求される任意の測定値は以下のように得られる。
【0161】
ガラス転移温度(Tg)、融解温度(Tm)、結晶化温度(Tc)、融解エンタルピー(ΔHm)、結晶化エンタルピー(ΔHC)、および反応エンタルピー(ΔHr)測定は、N2雰囲気中、Refrigerated Cooling System 90を備えたTA instruments DSC Q2000において、示差走査熱量測定(DSC)により実行され、インジウムで較正される。シグナルの処理(DSCサーモグラム、熱流量対温度)は、TA instrumentsからのAlカップ内の8±5mgのサンプルを用いて、TA instrumentsにより提供されるUniversal Analysis 2000ソフトウェアバージョン4.5aを使用して実行される。加熱速度は5℃/分である。
【0162】
酸価およびヒドロキシル価は、それぞれISO 2114-2000およびISO 4629-1978に従って、滴定により決定される。NCO価は、ASTM D 2572-97に従って測定される。
【0163】
数平均分子量(Mn)は、0.8%酢酸で変性された安定化テトラヒドロフラン(THF)を40℃で溶離液として1mL/分で使用し、そして40℃でAlliance Waters 2414屈折率検出器を用いて、2本の連続PL-ゲルカラム、Mixed-C型、l/d=300/7.5mm(Polymer Laboratories)、カラム粒子サイズ10μmを備えたAlliance Waters 2695 GPCにおいてGPCにより測定される。500~7×106g/モルの分子量範囲を有するポリスチレン標準物セットを使用して、GPC装置を較正する。
【0164】
以下の実施例は本発明を更に解明するのに役立つが、決してその範囲を限定すると解釈されてはならない。
【0165】
[実施例]
実施例で使用される種々の成分のいくつかは、以下の表0.1および0.2に記載される。WPUは、不飽和当たりの重量(weight per unsaturation)である。WPUは、製造された材料の重量を、添加した不飽和のモル数で割ることによって計算される。
【0166】
【0167】
【0168】
[特定の樹脂成分の形成]
SOEAは以下のように形成される。最初に、ポリエステルポリオールを形成する:20モルのテレフタル酸、20モルのネオペンチルグリコールおよび1モルのトリメチロールプロパンを、酸価が10未満になるまで180~240℃において0.1%のBuSnCl(OH)2を用いてエステル化する。次に、得られたポリエステルポリオールを以下のようにアクリレート化する。ステップ1のポリエステルポリオールを120℃に冷却し、105モル%のアクリル酸(OH量に対して)、15wt%のトルエン、1wt%のp-トルエンスルホン酸(PTSA)、および0.2wt%のジブチルヒドロキノン(全てポリエステルポリオール+アクリル酸の量に基づく)と混合する。反応混合物を通して空気をパージし、トルエンが沸騰するまで温度を上昇させる。次に、Dean-Stark装置を備えたフラスコ内で、混合物を8時間還流させる(120~140℃)。必要に応じて、圧力を低下させて、トルエンの還流を保持する。8時間後にサンプルを取り、電位差により滴定して、遊離PTSAに属する酸価(AV1)およびカルボン酸の酸価(AV2)を決定する。105モル%(PTSAのAV1に対して)の3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタンを添加して、PTSAを中和する。15分後にサンプルを取り、AV1=0であるかどうかを検査し、続いて、160℃および50mmHgにおける蒸留により溶媒および残留アクリル酸を除去する。最終値は、AV1=0およびAV2=8.9である。樹脂のTg(DSC)は45℃である。
【0169】
UPEcrysは以下のように形成される。温度計と、攪拌器と、合成中に形成された水を除去するための蒸留デバイスとを取り付けた反応容器に、1.0gのスズ触媒、ジエチレングリコール(187.5g)および1,6-ヘキサンジオール(875.9g)を入れる。混合物が融解するまで容器を150℃に加熱する。次に、窒素流の下でテレフタル酸(1117.9g)を添加し、水がもう捕集されなくなるまで反応水を蒸留しながら、温度を徐々に250℃まで上昇させる。反応混合物を180℃に冷却し、フマル酸(153.9g)を添加し、その後、水を留去しながら温度を205℃に上昇させる。水がもう捕集されなくなったら真空を2.5時間適用し、その後、樹脂をアルミニウム箔上に排出し、室温に保持する。酸価(AV)=2.6mgKOH/gおよびOH=54.3mgKOH/g。DSCは、5℃/分で-50から175℃まで2回のランで行われ、ランの合間の冷却速度は最大(プログラムにおける「ジャンプ」)である。2回目のランからのデータをとる:Tg=-10.4℃、Tc=6.3℃およびTm=109.5℃(ここで、TcおよびTmは樹脂の結晶化温度および融解温度(ピークの頂点)である)。融解エンタルピーは38J/gである。
【0170】
非官能性PEは以下のように形成される。温度計と、攪拌器と、合成中に形成された水を除去するための蒸留デバイスとを取り付けた反応容器に、3.4gのスズ触媒および1,2プロパンジオール(1847.8g)を入れる。容器を150℃に加熱し、テレフタル酸(3503.4g)を窒素流の下で添加し、その後、水がもう捕集されなくなるまで反応水を留去しながら、温度を徐々に245℃まで上昇させる。反応混合物を215℃に冷却し、真空を3時間適用し、その後、樹脂のAVは3.7である。材料を180℃に冷却し、26.2gのエチレンカーボネートを添加し、一晩放置させる。翌日、樹脂を200℃に加熱し、真空を2.5時間適用し、その後、材料をアルミニウム箔上に排出し、室温に保持する。AV=1.8mgKOH/gおよびOH=38.9mgKOH/g。Tg測定のために、サンプルをDSCにおいて40℃/分で150℃まで加熱し、10分間保持する。0℃まで急速に冷却した後、樹脂を5℃/分で100℃まで加熱し、67.9℃のTgが測定される。
【0171】
PU-maは以下のように形成される。152.04gのヘキサメチレンジイソシアネートを攪拌しながら反応容器に添加し、70℃に加熱する。TIB chemicalsからの0.04gのTIB cat 716((ビスマス(ネオデカノアート))を次に添加する。10分間にわたって、47.96gのジエチレングリコールを添加する。この供給プロセスの間、温度は90~92℃に保持される。供給が完了したら、混合物を90~92℃に5分間保持する。5分後に、TIB chemicalsからの0.04gのTIB cat 716((ビスマス(ネオデカノアート))および0.04gの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを反応混合物に素早く添加する。次に、105.87gの2,-ヒドロキシエチルメタクリレートを40分間にわたってゆっくり添加する。この供給プロセスの間、温度を90~92℃に保持する。供給が完了したら、AkzoNobelからの6.11gのTrigonox(登録商標)C(tBu-ペルオキシベンゾアート)を反応器相(reactor phase)に素早く添加する。この添加の後、混合物を更に5分間攪拌し、室温まで冷却する。冷却すると材料は結晶化する。
【0172】
PE-U-maは以下のように形成される。温度計と、攪拌器と、合成中に形成された水を除去するための蒸留デバイスとを取り付けた反応容器に、1.0gのスズ触媒、ジエチレングリコール(172.4g)および1,6-ヘキサンジオール(848.9g)を入れる。窒素流の下、混合物が融解するまで容器を150℃に加熱する。窒素流の下でテレフタル酸(1100.4g)およびイソフタル酸(194.0g)を添加する。水の形成がもう見えなくなるまで反応水を蒸留しながら、温度を徐々に260℃まで上昇させる。反応混合物を220℃に冷却し、真空を2.5時間適用する。次に、樹脂をアルミニウム箔上に排出し、室温に保持する。AV=0.7mgKOH/gおよびOH=41.2mgKOH/g。DSCは、5℃/分で-50から-175℃まで2回のランで実施され、ランの合間の冷却速度は最大(プログラムにおける「ジャンプ」)である。2回目のランからのデータをとる:Tg=-2.7℃、Tc=21.4℃、およびTm=108.9℃(ここで、TcおよびTmは、樹脂の結晶化温度および融解温度である)。融解エンタルピーは32.6J/gである。
【0173】
希薄空気下で攪拌した別の反応器内に、イソホロンジイソシアネート(80.1g)、ジブチルスズジラウラート(0.5g)、および2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(0.5g)を添加し、20℃に加熱する。滴下漏斗から2-ヒドロキシエチルメタクリレート(46.9g)を1.5時間~2時間かけて添加し、温度を35℃まで上昇させる。混合物を40℃に加熱し、2時間後にNCO%は11.5であった。127.1gのこのイソシアネート付加生成物を滴下漏斗に移し、IRランプで加熱することにより低粘度に保持する。上記で形成された樹脂(500g)を120℃の反応器内で融解させ、希薄空気下で攪拌しながらイソシアネート付加生成物を15分間かけて添加する。混合物を更に40分間反応させ、その後にNCO%は0.1未満であった。材料をアルミニウム箔上に排出する。材料のTgは13.1℃であり、融点は103.6℃であった。融解エンタルピーは0.9J/gである。
【0174】
[微粒子組成物の形成方法]
PU-maを含有しない微粒子組成物については、樹脂成分は、そして熱ラジカル開始剤および/または遅延剤が樹脂成分中に分散または溶解されている場合には樹脂成分および/または遅延剤は、ブレンダー内で混合され、続いて、押出機の最大値の70~90%のトルクに達するようにスクリュー速度を調節して70℃のPRISM TSE16 PCツインスクリューにおいて押出される。押出物を室温まで冷却させ、破壊してチップにする。0.5mmの環状のふるいを備えたRetsch ZM100において18000rpmでチップを粉砕し、そしてふるいにかける。粒径が90μm未満のふるい画分を捕集する。
【0175】
PU-maを含む微粒子組成物については、上記のような材料の合成の間に、熱ラジカル開始剤((tBu-ペルオキシベンゾアート)および遅延剤(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)を添加する。室温まで冷却してから、材料をブレンダー内で粉砕する。平均粒径は500μm未満である。
【0176】
熱ラジカル開始剤が微粒子組成物中にブレンドされる場合、粉砕してふるいにかけた粒子をブレンダーに入れ、熱ラジカル開始剤と混合する。
【0177】
[液体組成物の形成方法]
液体組成物の成分を室温で十分に混合する。
【0178】
[フィルムの形成方法]
0.8mm厚のクロム酸アルミニウム(chromate aluminum)Q-パネル(タイプALQ-46)上に微粒子組成物を適用する。樹脂成分としてPU-maを含有するものを除く全ての微粒子組成物を処理済Q-パネル上に適用する。PU-maは、未処理のQ-パネル上に形成される。処理済Q-パネルは、Loctiteからの1-STEP Frekote(登録商標)離型剤でQ-パネルを処理し、次にHeraeus Instruments UT6120オーブンにおいて130℃で15分間乾燥させることによって形成される。この手順を更に2回、各Q-パネルにつき全部で3回繰り返して、処理済Q-パネルを形成する。
【0179】
微粒子組成物および液体組成物を形成したら、フィルムを以下のように調製する。EPG-Sprint Xコントロールユニットと組み合わせたWagnerマニュアルガンPEM-X1により、微粒子組成物の層をQ-パネル上にスプレーする。次に、エアブラシガン(モデル:Iwata Eclipse HP-BCSボトムフィードエアブラシ)により、室温で特定の微粒子組成物の層にある量の特定の液体組成物を適用する。Q-パネルを鉛直位置に置き、液体組成物を約10~20cmの距離から微粒子組成物上にスプレーする。スプレーの前後にパネルの重量を測定し、適用された液体組成物の量を決定する。以下の表に示される液体組成物のwt%は、Q-パネル上の微粒子組成物および液体組成物の全量に対する液体組成物の量である。
【0180】
形成された各層について液体組成物の量(wt%)を記録する。例えば、表が液体組成物の量について3つの値を示す場合、第1の値は第1の層の値であり、第2の値は、第1の層の上部に直接形成された第2の層の値であり、第3の値は、第2の層の上部に直接形成された第3の層の値である。層の量は、アセトンスポット試験またはDMAの結果に実質的に影響を与えないことが予想される。
【0181】
各層の液体組成物の量を報告する際に「wet」が表示されない限り、液体組成物の層の適用の5分後に、表示される温度(以下の表において「Temp」と示される)で5分間、Q-パネルをオーブンに入れる。付加的な層が形成される場合、Q-パネルをオーブンから取り出し、既に形成された層の上部に微粒子組成物の付加的な層を形成してから、液体組成物を微粒子組成物上にスプレーする。
【0182】
各層の液体組成物の量を報告する際に「wet」が表示されていれば、Q-パネルは、各層の後ではなく最終層が形成された後にだけ、表示される温度でオーブンに入れられる。
【0183】
[アセトンスポット試験(AST)]
形成されたフィルムを周囲条件で数日間貯蔵した後、数滴のアセトンをフィルムに付着させ、約10秒後にアセトンを布で除去する。次に、層を目視検査で評価する。「+」は、層がASTにより損なわれないことを示す。「+/-」は、最上層が損なわれるか、または部分的に拭き取られることを示す。「-」は、層が完全にまたはほぼ完全に拭き取られることを示す。
【0184】
[動的機械分析(DMA)]
幅約2mmのサンプルを硬化フィルムから打ち抜く。厚さは、較正されたHeidenhain厚さ計で測定される。動的機械分析は、ASTM D5026に従い、RSA-III試験システムを用いて、1Hzの周波数において5℃/分の加熱速度で-100℃~200℃の範囲の温度にわたって実行される。測定の間に、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)およびタンジェントデルタ(tanδ)が温度の関数として決定される。「n.t.」は試験されないことを意味する。
【0185】
[実施例1-微粒子組成物の安定性および硬化特性]
複数の粒子を含む種々の微粒子組成物を形成する。粒子は、非晶質不飽和ポリエステル(UPE1010)およびビニルエーテル(P1900)を含む樹脂成分を含む。反応性不飽和のビニルエーテル基に対するモル比は、おおよそ1:0.5である。微粒子組成物は、樹脂成分中に分散または溶解された熱ラジカル開始剤(T.R.I.)として3.6wt%のmBPOを含む。いくつかの実験では、遅延剤として250ppmのヒドロキノンを樹脂成分中に溶解させる。全ての成分を押出により混合する。
【0186】
各微粒子組成物の安定性は、表示される時間および表示される温度で微粒子組成物を貯蔵した後の反応エンタルピー(ΔHr)の変化を測定することによって決定される。反応エンタルピーは、微粒子組成物を5℃/分で0から200℃まで加熱し、DSCで100℃を超える硬化発熱を測定することによって測定される。より多くの予備反応を受けた微粒子組成物はより低い反応エンタルピーを有し得る。従って、反応エンタルピーのより大きい低下は、微粒子組成物の安定性の低下を示す。
【0187】
結果は表1に示される。
【0188】
【0189】
溶解した遅延剤を包含させると、微粒子組成物を70℃で1日貯蔵したときに、より少ないΔHrの低下が得られる。工業規模では、有用な押出機は、本出願において微粒子組成物を形成するために使用される押出機よりも高い温度で動作する。より大きいΔHrの低下は、工業用押出機において望ましくないゲル化または前硬化を予測し得る。
【0190】
[実施例2-分散または溶解された開始剤を含む硬化系の特性]
種々の微粒子組成物を形成する。粒子は、非晶質不飽和ポリエステル(UPE1010)およびビニルエーテル(P1900)を含む樹脂成分を含む。反応性不飽和のビニルエーテル基に対するモル比は、おおよそ1:0.5である。熱ラジカル開始剤(T.R.I.)としての3.6wt%のmBPOは、樹脂成分中に分散または溶解されている(「D」)か、存在しない(「-」)か、あるいは別の微粒子としてブレンドされている(「B」)。遅延剤としての250ppmのヒドロキノンは、樹脂成分中に溶解されている(「D」)か、あるいは存在しない(「-」)。
【0191】
試験した液体組成物は、液体組成物の全重量を基準として規定されるwt%の特定の促進剤またはTRIと、残りの部分の液体重合性成分とからなる。フマラートが存在する場合、液体重合性成分を構成する材料は、ビニルエーテル基のフマラート基に対する規定のモル比で存在する。
【0192】
既に記載した通りにフィルムを形成する。アセトンスポット試験を実施する。結果は表2に示される。
【0193】
【0194】
TRIが溶解された系はASTにおいて+を得るが、その他の点では同一の系は、-を得る。(実施例2.1対比較例2.1)。熱ラジカル開始剤を液体組成物中に配置すると、促進剤が微粒子組成物中にブレンドされた場合(比較例2.5)でも、ASTにおいて-が得られる(比較例2.4)。
【0195】
[実施例3-フィルム特性に対する樹脂重合性基の効果]
種々の微粒子組成物を形成する。熱ラジカル開始剤(T.R.I.)としての3.6wt%のmBPOは、樹脂成分中に溶解される(「D」)か、あるいは別の微粒子としてブレンドされている(「B」)。遅延剤としての250ppmのヒドロキノンは、押出により樹脂成分中に溶解されている(「D」)か、あるいは存在しない(「-」)。規定される樹脂成分は、微粒子組成物の残りを構成する。樹脂成分が不飽和ポリエステルおよびビニルエーテルの両方を含む場合、反応性不飽和のビニルエーテル基に対するモル比は、おおよそ規定される通りである。
【0196】
試験した液体組成物は、液体組成物の全重量を基準として規定されるwt%の特定の促進剤と、残りの部分の液体重合性成分とからなる。フマラートが存在する場合、液体重合性成分を構成する材料は、ビニルエーテル基のフマラート基に対する規定のモル比で存在する。
【0197】
既に記載した通りにフィルムを形成する。アセトンスポット試験を実施する。結果は表3に示される。
【0198】
【0199】
官能性樹脂成分を用いる実施例は、非官能性樹脂成分を用いる実施例と比べて、ASTにおいて優れた性能を示す。
【0200】
[実施例4-非晶質樹脂成分を含む硬化フィルムの特性]
種々の微粒子組成物を形成する。熱ラジカル開始剤(T.R.I.)としての3.6wt%のmBPOおよび遅延剤としての250ppmのヒドロキノンを押出により樹脂成分中に分散または溶解させる。規定される樹脂成分は、微粒子組成物の残りを構成する。樹脂成分が不飽和ポリエステルおよびビニルエーテルの両方を含む場合、反応性不飽和のビニルエーテル基に対するモル比は、おおよそ規定される通りである。
【0201】
試験した液体組成物は、液体組成物の全重量を基準として規定されるwt%の特定の促進剤と、残りの部分の液体重合性成分とからなる。フマラートが存在する場合、液体重合性成分を構成する材料は、ビニルエーテル基のフマラート基に対する規定のモル比で存在する。既に記載した通りにフィルムを形成する。実施例4.8および4.9は窒素下で硬化される。アセトンスポット試験およびDMAを実施する。結果は表4.1および表4.2に示される。実施例4.10および4.11は、恐らく酸素阻害のためにASTに不合格であった。これらの系は、窒素下で硬化させればASTに合格し得ることが予想される。
【0202】
【0203】
【0204】
[実施例5-結晶性または半結晶性不飽和ポリエステル樹脂成分のみを有する硬化フィルムの特性]
種々の微粒子組成物を形成する。実施例5.5の場合(TRIとしての2wt%のtBu-ペルオキシベンゾアートおよび遅延剤としての130ppmの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを樹脂成分中に溶解させる)を除いて、熱ラジカル開始剤(T.R.I.)としての3.6wt%のmBPOおよび遅延剤としての250ppmのヒドロキノンを押出により樹脂成分中に溶解させる。規定される樹脂成分は、微粒子組成物の残りを構成する。樹脂成分が不飽和ポリエステルおよびビニルエーテルの両方を含む場合、反応性不飽和のビニルエーテル基に対するモル比は、おおよそ規定される通りである。
【0205】
液体組成物は、単に混合することにより形成される。試験した液体組成物は、液体組成物の全重量を基準として規定されるwt%の特定の促進剤と、残りの部分の液体重合性成分とからなる。フマラートが存在する場合、液体重合性成分を構成する材料は、ビニルエーテル基のフマラート基に対する規定のモル比で存在する。
【0206】
既に記載した通りにフィルムを形成する。実施例5.7を窒素下で硬化させた。アセトンスポット試験を実行する。結果は表5に示される。
【0207】
【0208】
不飽和半結晶性ポリエステルを含む微粒子組成物の層の上に液体組成物を選択的に分配することによって、ゴム状フィルムを形成することが可能である。
【0209】
[例示的な実施形態の付加的な説明]
1)a.微粒子組成物の層を形成するステップであって、微粒子組成物が、
i.第1の樹脂(第1の樹脂は第1の樹脂重合性基を含み、第1の樹脂重合性基は、電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む)を含む樹脂成分、
ii.樹脂成分中に分散または溶解された熱ラジカル開始剤、および
iii.樹脂成分中に分散または溶解された遅延剤
を含む複数の第1の粒子を含む、ステップと、
b.3次元物体の少なくとも一部分の形状に対応するコンピュータデータに従って、微粒子組成物の層の上に液体組成物を選択的に付着させるステップであって、液体組成物が、
i.第1の液体重合性成分(第1の液体重合性成分は第1の液体重合性基を含み、第1の液体重合性基は、第1の樹脂重合性基と(共)重合することができる炭素-炭素二重結合を含む)
を含む、ステップと、
c.任意選択的に、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置に電磁放射線を照射するステップと、
d.液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置において熱ラジカル開始剤を活性化するステップと、
e.ステップa~dを複数回繰り返して、3次元物体を形成するステップと
を含む、3次元物体の形成方法。
【0210】
2)a.i.第1の樹脂(第1の樹脂は第1の樹脂重合性基を含み、第1の樹脂重合性基は、電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む)を含む樹脂成分、
ii.樹脂成分中に分散または溶解された熱ラジカル開始剤、および
iii.樹脂成分中に分散または溶解された遅延剤
を含む複数の第1の粒子を含む微粒子組成物と、
b.i.第1の液体重合性成分(第1の液体重合性成分は第1の液体重合性基を含み、第1の液体重合性基は、第1の樹脂重合性基と(共)重合することができる炭素-炭素二重結合を含む)
を含む液体組成物と
を含む、積層造形プロセスにより物体を形成するための材料のキット。
【0211】
3)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、熱ラジカル開始剤は、熱ラジカル開始剤が活性化温度よりも高いかそれに等しい温度にさらされたときに、2時間以内に第1の樹脂の重合を開始させるのに十分なラジカルを生成し、そして活性化温度は30℃よりも高い方法またはキット。
【0212】
4)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、遅延剤は、熱ラジカル開始剤により生成されるラジカルに応答して、第1の粒子重合性基の重合の開始を阻害する方法またはキット。
【0213】
5)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、複数の第1の粒子は、ISO13320(2009)に従ってレーザー回折により測定したときに10~100μmの平均粒径を有する方法またはキット。
【0214】
6)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、複数の第1の粒子は、ISO13320(2009)に従ってレーザー回折により測定したときに30~80μmの平均粒径を有する方法またはキット。
【0215】
7)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、液体組成物は更に熱ラジカル開始剤の促進剤を含む方法またはキット。
【0216】
8)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、促進剤が熱ラジカル開始剤と接触されると、熱ラジカル開始剤は、促進剤が存在しない場合に熱ラジカル開始剤がラジカルを生成することができる温度よりも低い温度でラジカルを生成することができる方法またはキット。
【0217】
9)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触していないときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度と、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度との間の差は、少なくとも10℃である方法またはキット。
【0218】
10)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触していないときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度と、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度との間の差は、30℃~200℃である方法またはキット。
【0219】
11)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触していないときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度と、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度との間の差は、30℃~100℃である方法またはキット。
【0220】
12)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触していないときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は60℃以上であり、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は50℃以下である方法またはキット。
【0221】
13)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触していないときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は70℃以上であり、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は40℃以下である方法またはキット。
【0222】
14)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触していないときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は100℃以上であり、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は50℃以下である方法またはキット。
【0223】
15)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、熱ラジカル開始剤が促進剤と接触しているときに熱ラジカル開始剤が6分以下の半減期を有する温度は20℃~50℃である方法またはキット。
【0224】
16)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂重合性基は、アクリレート、メタクリレート、フマラート、マレアート、イタコナート、シトラコナート、またはメサコナートを含む方法またはキット。
【0225】
17)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂重合性基は、メタクリレート、フマラート、マレアート、またはイタコナートを含む方法またはキット。
【0226】
18)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂は骨格を含み、骨格は、ポリ酸およびポリオールの反応生成物を含む方法またはキット。
【0227】
19)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂は骨格を含み、骨格は、ポリ酸およびポリオールの反応生成物を含み、ポリ酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、またはフタル酸を含む方法またはキット。
【0228】
20)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂の骨格の少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも75モル%、少なくとも80モル%、少なくとも85モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、または100モル%は、ポリ酸およびポリオールの反応生成物を含む方法またはキット。
【0229】
21)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂の骨格の少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも75モル%、少なくとも80モル%、少なくとも85モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、または100モル%は、テレフタル酸およびポリオールの反応生成物を含む方法またはキット。
【0230】
22)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂の骨格の最大で100モル%、最大で98モル%、最大で95モル%、最大で90モル%、最大で80モル%、最大で70モル%、または最大で60モル%は、テレフタル酸およびポリオールの反応生成物を含む方法またはキット。
【0231】
23)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、微粒子組成物は、40~100wt%の第1の粒子を含む方法またはキット。
【0232】
24)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、微粒子組成物は、50~99wt%の第1の粒子を含む方法またはキット。
【0233】
25)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、微粒子組成物は更に、流動性改良剤、非反応性充填剤、安定剤、更なる活性有機粒子または着色剤を含む方法またはキット。
【0234】
26)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、微粒子組成物は更に、10~35wt%の非反応性充填剤を含む方法またはキット。
【0235】
27)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂重合性基の平均数は、少なくとも1、少なくとも1.5、少なくとも2、2に等しい、少なくとも2.01、少なくとも2.05、少なくとも2.10、少なくとも2.12、少なくとも2.15、少なくとも2.20、少なくとも2.30、少なくとも2.35、または少なくとも2.40である方法またはキット。
【0236】
28)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂重合性基の平均数は、最大で10、最大で9、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で5.5、最大で5、最大で4.5、最大で4、最大で3.80、または最大で3.50である方法またはキット。
【0237】
29)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂はテレケリック型である方法またはキット。
【0238】
30)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂はテレケリック型であり、少なくとも2つの第1の樹脂重合性基を末端基として含む方法またはキット。
【0239】
31)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂はテレケリック型であり、2~3個の第1の樹脂重合性基を末端基として含む方法またはキット。
【0240】
32)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂はテレケリック型であり、少なくとも2つの第1の樹脂重合性基を末端基として含み、第1の樹脂重合性基は(メタ)アクリレート基を含む方法またはキット。
【0241】
33)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂は、少なくとも800、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも1800、少なくとも2000、または少なくとも2300DaのMnを有する方法またはキット。
【0242】
34)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂は、最大で20000、最大で10000、最大で9000、最大で8000、最大で7000、最大で6000、または最大で5000DaのMnを有する。実施形態において、第1の樹脂は、少なくとも2000Daかつ最大で8000DaのMnを有する方法またはキット。
【0243】
35)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、樹脂成分の各分子中の重合性基の平均数で割った樹脂成分のMnは、少なくとも150、少なくとも180、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、または少なくとも500g/molである方法またはキット。
【0244】
36)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、樹脂成分の各分子中の重合性基の平均数で割った樹脂成分のMnは、最大で3000、最大で2000、最大で1500、最大で1300、最大で1200、最大で1100、最大で1000、最大で900、最大で850、最大で800g/molである方法またはキット。
【0245】
37)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂は非晶質であり、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも45、または少なくとも50℃のガラス転移温度(Tg)を有する方法またはキット。
【0246】
38)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂は非晶質であり、最大で120、最大で110、最大で100、最大で90、最大で80、最大で75、最大で70、最大で65、または最大で60℃のガラス転移温度(Tg)を有する方法またはキット。
【0247】
39)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂は結晶性であり、少なくとも-70、少なくとも-50、少なくとも-40、少なくとも-35、少なくとも-20、少なくとも-10、少なくとも0、少なくとも10、または少なくとも20℃のガラス転移温度(Tg)を有する方法またはキット。
【0248】
40)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂は結晶性であり、最大で120、最大で110、最大で100、最大で90、最大で80、最大で75、最大で70、最大で60、または最大で50℃のガラス転移温度(Tg)を有する方法またはキット。
【0249】
41)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂は結晶性であり、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、または少なくとも60℃の融解温度(Tm)を有する方法またはキット。
【0250】
42)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂は結晶性であり、最大で200、最大で180、最大で160、最大で140、最大で130、最大で120、または最大で110℃の融解温度(Tm)を有する方法またはキット。
【0251】
43)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、樹脂成分は更に第2の樹脂を含み、第2の樹脂は第2の樹脂重合性基を含み、第2の樹脂重合性基は、電子供与性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む方法またはキット。
【0252】
44)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、樹脂成分は、電子供与性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む結晶性樹脂と、電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む非晶質樹脂とを含む方法またはキット。
【0253】
45)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、樹脂成分は、20~120℃のTgを有する非晶質樹脂のみを含む方法またはキット。
【0254】
46)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、樹脂成分は、40~120℃の融解温度を有する1つまたは複数の結晶性樹脂を含む方法またはキット。
【0255】
47)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、樹脂成分は、少なくとも40℃の融解温度を有する結晶性ビニルエーテルを含む方法またはキット。
【0256】
48)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、微粒子組成物が液体組成物と接触しているときに、樹脂成分は、熱ラジカル開始剤の活性化温度よりも低いかそれに等しい融解温度を有する樹脂を含む方法またはキット。
【0257】
49)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第2の樹脂重合性基はビニルエーテルを含む方法またはキット。
【0258】
50)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第2の樹脂はモノビニルエーテルを含む方法またはキット。
【0259】
51)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第2の樹脂はジビニルエーテルを含む方法またはキット。
【0260】
52)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、樹脂成分は、1000~5000g/molの数平均分子量(Mn)を有する1つまたは複数の樹脂を含む方法またはキット。
【0261】
53)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の液体重合性基は、アクリレート基、メタクリレート基、または電子供与性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む方法またはキット。
【0262】
54)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の液体重合性基はビニルエーテル、ビニルエステル、またはビニルアミンを含む方法またはキット。
【0263】
55)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の液体重合性基はビニルエーテルを含む方法またはキット。
【0264】
56)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、液体組成物は第2の液体重合性成分を更に含み、第2の液体重合性成分は第2の液体重合性基を含み、第2の液体重合性基は、電子吸引性基に直接結合した炭素-炭素二重結合を含む方法またはキット。
【0265】
57)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第2の液体重合性基は、第1の液体重合性基と(共)重合することができる方法またはキット。
【0266】
58)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第2の液体重合性基は、第1の樹脂重合性基および/または第2の樹脂重合性基(存在する場合)と(共)重合することができる方法またはキット。
【0267】
59)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂重合性基は(メタ)アクリレートを含み、第1の液体重合性基は(メタ)アクリレートを含む方法またはキット。
【0268】
60)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂はポリエステル(メタ)アクリレートを含み、第1の樹脂重合性基は(メタ)アクリレートを含み、第1の液体重合性基は(メタ)アクリレートを含む方法またはキット。
【0269】
61)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第1の樹脂は不飽和ポリエステルを含み、第1の液体重合性基はビニルエーテルである方法またはキット。
【0270】
62)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、樹脂重合性基はアクリレートを含み、第1の液体重合性基はビニルエーテルを含み、そして第2の液体重合性基はフマラートを含む方法またはキット。
【0271】
63)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、樹脂成分は第1の樹脂および第2の樹脂を含み、第2の樹脂は第2の樹脂重合性基を含み、第1の樹脂は不飽和ポリエステルを含み、第2の樹脂重合性基はビニルエーテルを含み、液体重合性基はビニルエーテルを含む方法またはキット。
【0272】
64)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、樹脂成分は第1の樹脂および第2の樹脂を含み、第2の樹脂は第2の樹脂重合性基を含み、第1の樹脂は不飽和ポリエステルを含み、第2の樹脂重合性基はビニルエーテルを含み、液体組成物は、第2の液体重合性基を含む第2の液体重合性成分を含み、第1の液体重合性基はビニルエーテルを含み、第2の液体重合性基はフマラートを含む方法またはキット。
【0273】
65)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、樹脂成分は第1の樹脂および第2の樹脂を含み、第2の樹脂は第2の樹脂重合性基を含み、第1の樹脂は第2の樹脂と共重合することができない方法またはキット。
【0274】
66)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、樹脂成分は第1の樹脂および第2の樹脂を含み、第2の樹脂は第2の樹脂重合性基を含み、第1の樹脂は第2の樹脂と共重合することができず、第2の樹脂重合性基はエポキシを含む方法またはキット。
【0275】
67)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、樹脂成分は更に、第2の樹脂重合性基を含む第2の樹脂を含み、第1の樹脂重合性基は(メタ)アクリレートであり、第2の樹脂重合性基はエポキシを含む方法またはキット。
【0276】
68)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第2の液体重合性基は、アクリレート、メタクリレート、フマラート、マレアート、またはイタコナートを含む方法またはキット。
【0277】
69)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、第2の液体重合性基は、フマラートまたはイタコナートを含む方法またはキット。
【0278】
70)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、液体組成物は更に、第2の液体重合性基を含む第2の液体重合性成分を含み、第2の液体重合性基は、第1の液体重合性基と(共)重合することができない方法またはキット。
【0279】
71)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、液体組成物は更に、第2の液体重合性基を含む第2の液体重合性成分を含み、第2の液体重合性基は、エポキシまたはオキセタンを含む方法またはキット。
【0280】
72)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、熱ラジカル開始剤は過酸化物を含む方法またはキット。
【0281】
73)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、熱ラジカル開始剤は、過無水物、ペルエステル、ペルエーテル、ペルカーボネート、またはヒドロペルオキシドを含む方法またはキット。
【0282】
74)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、熱ラジカル開始剤は、過無水物、ペルエステル、またはペルカーボネートを含む方法またはキット。
【0283】
75)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、促進剤は芳香族第3級アミンを含む方法またはキット。
【0284】
76)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、芳香族第3級アミンは、N’N’ジアルキル芳香族アミン、芳香族環に直接結合した電子供与性基を含む芳香族第3級アミン、または第3級アミンに結合したβ-ヒドロキシアルキルを含む芳香族第3級アミンを含む方法またはキット。
【0285】
77)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、芳香族第3級アミンはジイソプロパノール-p-トルイジンを含む方法またはキット。
【0286】
78)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、遅延剤はフェノール化合物を含む方法またはキット。
【0287】
79)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、遅延剤は2-メチルヒドロキノンまたは2-t-ブチルヒドロキノンを含む方法またはキット。
【0288】
80)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、液体組成物は更に液体ラジカル開始剤を含む方法またはキット。
【0289】
81)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、液体ラジカル開始剤は熱ラジカル開始剤またはラジカル光開始剤を含む方法またはキット。
【0290】
82)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、液体ラジカル開始剤は、熱ラジカル開始剤を含む方法またはキット。
【0291】
83)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、液体ラジカル開始剤は、ラジカル光開始剤を含む方法またはキット。
【0292】
84)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、複数の第1の粒子は更に、1000~20,000g/molの数平均分子量を有する非反応性ポリマーを含む方法またはキット。
【0293】
85)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、促進剤は遷移金属触媒を含む方法またはキット。
【0294】
86)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、遷移金属触媒は、遷移金属塩または遷移金属錯体を含む方法またはキット。
【0295】
87)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、遷移金属触媒はCo、Mn、Cu、Fe、V、またはTiを含む方法またはキット。
【0296】
88)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、液体組成物は更に可塑剤を含む方法またはキット。
【0297】
89)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、液体組成物は更に可塑剤を含み、可塑剤はポリアルキレンエーテルを含む方法またはキット。
【0298】
90)前述の例示的な実施形態のいずれか1つの方法であって、液体組成物は、3次元物体の一部分を表す複数のボクセルに従って、微粒子組成物の層の上に選択的に分配される方法。
【0299】
91)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、ボクセル当たりのビニルエーテル基のフマラートおよびマレアート基に対するモル比は、5:1~1:5である方法。
【0300】
92)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、ボクセル当たりのビニルエーテル基のフマラートおよびマレアート基に対するモル比は、1.5:1~1:1.5である方法。
【0301】
93)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、液体組成物は、ボクセル当たりのビニルエーテル基のフマラートおよびマレアート基に対するモル比は、1.1:1~1:1.1である方法。
【0302】
94)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、液体組成物は、ボクセル当たりのメタクリレート基対ビニルエーテル基対フマラートおよびマレアート基のモル比は、4.5:2.5:1~3.5:1.5:1である方法。
【0303】
95)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、液体組成物は、ボクセル当たりの微粒子組成物の重量の液体組成物の重量に対する比は、30:70~70:30である方法。
【0304】
96)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、ボクセル当たりの微粒子組成物の重量の液体組成物の重量に対する比は、95:5~50:50である方法。
【0305】
97)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、熱ラジカル開始剤の活性化温度は40℃よりも高い方法またはキット。
【0306】
98)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、熱ラジカル開始剤の活性化温度は50℃よりも高い方法またはキット。
【0307】
99)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法またはキットであって、微粒子組成物は更に、更なる樹脂成分を含むと共に更なる樹脂成分中に分散または溶解された熱ラジカル開始剤を持たない複数の第2の粒子を含み、更なる樹脂成分は樹脂成分と同一または異なっており、更なる樹脂成分は、樹脂成分と(共)重合することができる方法またはキット。
【0308】
100)前述の例示的な実施形態のいずれか1つの方法またはキットであって、微粒子組成物は更に、樹脂成分とは異なり、かつ樹脂成分と(共)重合することができない更なる樹脂成分を含む複数の第2の粒子を含み、更なる熱開始剤は、更なる樹脂成分の重合を開始させるために更なる樹脂成分中に分散または溶解される方法またはキット。
【0309】
101)前述の例示的な実施形態のいずれか1つの方法またはキットであって、微粒子組成物は更に、樹脂成分とは異なり、かつ樹脂成分と(共)重合することができない更なる樹脂成分を含む複数の第2の粒子を含み、更なる熱開始剤は、更なる樹脂成分の重合を開始させるために更なる樹脂成分中に分散または溶解される方法またはキット。
【0310】
102)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、熱ラジカル開始剤は、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置に電磁放射線を照射することにより、局所温度を一時的に活性化温度またはそれ以上に上昇させることによって活性化される方法。
【0311】
103)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、液体組成物は更に促進剤を含み、微粒子組成物は乾燥温度を有し、乾燥温度は微粒子組成物の層の表面における温度であり、そして液体組成物が微粒子組成物と接触すると、熱ラジカル開始剤の活性化温度が低下して乾燥温度よりも低くなり、それにより、熱ラジカル開始剤の活性化が起こる方法。
【0312】
104)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置において第1の樹脂を融解させることを更に含む方法。
【0313】
105)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、熱ラジカル開始剤を活性化させる前に液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置において第1の樹脂を融解させることを更に含む方法。
【0314】
106)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、熱ラジカル開始剤の活性化と同時に液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置において第1の樹脂を融解させることを更に含む方法。
【0315】
107)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、第1の樹脂は、微粒子組成物が液体組成物と接触しているときに乾燥温度よりも低いかそれに等しい温度で融解するが、微粒子組成物が液体組成物と接触していないときには乾燥温度で融解しない方法。
【0316】
108)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置において第1の樹脂を融解させることを更に含み、そして融解は、第1の樹脂が液体組成物と接触すると第1の樹脂の融点が低下されるように、結晶性または半結晶性である第1の樹脂の使用により達成される方法。
【0317】
109)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置において第1の樹脂を融解させることを更に含み、そして融解は、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置の局所温度を電磁放射線の適用により上昇させることによって達成される方法。
【0318】
110)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、電磁放射線は、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の実質的に全ての位置に照射される方法。
【0319】
111)前述の例示的な実施形態のいずれか1つに従う方法であって、電磁放射線は、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の全ての位置に照射される方法。
【0320】
112)前述の例示的な実施形態のいずれか1つの方法であって、液体組成物は吸収剤を更に含み、液体組成物が選択的に付着された微粒子組成物の層の複数の位置に電磁放射線を任意選択的に照射するステップが実行される方法。
【0321】
113)前述の例示的な実施形態のいずれか1つの方法であって、微粒子組成物上に阻害剤を選択的に付着させるステップを更に含む方法。
【0322】
114)前述の例示的な実施形態のいずれか1つの方法であって、微粒子組成物上に阻害剤を選択的に付着させるステップを更に含み、阻害剤は、遅延剤、反射剤、またはバリアである方法。
【0323】
115)前述の実施形態のいずれか1つの方法またはキットから形成された3次元物体。
【0324】
116)a.前述の実施形態のいずれか1つの方法によりモールドを形成するステップと、
b.モールドを用いて3次元物体を形成するステップと
を含む、3次元物体の形成方法。
【0325】
117)a.前述の実施形態のいずれか1つの方法により形成されたモールドを提供するステップと、
b.モールドを用いて3次元物体を形成するステップと
を含む、3次元物体の形成方法。
【0326】
118)前述の例示的な実施形態のいずれか1つの方法であって、ステップcが実行される方法。
【0327】
119)前述の例示的な実施形態のいずれか1つの方法であって、ステップcが実行され、電磁放射線は、赤外光、UV光、340~415nmの波長を有する電磁放射線、および/または700~1500nmの波長を有する電磁放射線を含む方法。
【0328】
本発明を説明する文脈(特に、以下の特許請求の範囲の文脈)における「a」および「an」および「the」という用語ならびに同様の指示対象の使用は、本明細書において他に記載されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含有する(containing)」という用語は、他に言及されない限り、制約のない(open-ended)用語(すなわち、「を含むが、これらに限定されない」ことを意味する)と解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記述は、本明細書において他に記載されない限り、単に、その範囲内に含まれるそれぞれの別個の値を個々に示すことの簡略化された方法としての役割を果たすことが意図され、それぞれの別個の値は、それが本明細書において個々に記述されているかのように本明細書中に援用される。本明細書に提供される任意のおよび全ての例、または例示的な言語(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにすることが意図され、他に請求されない限り、本発明の範囲に限定を与えるものではない。本明細書中のどの言語も、特許請求されていない任意の要素が本発明の実施に必須であることを示すと解釈されてはならない。
【0329】
本発明の好ましい実施形態は、本発明者らによって知られている本発明を実行するための最良の形態を含めて、本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読めば、当業者には明らかになり得る。本発明者らは、当業者がこのような変形を必要に応じて使用することを予想し、そして本発明者らは、本発明が、本明細書中に具体的に記載されたものとは違って実施されることを意図する。従って、本発明は、適用可能な法により認められるように特許請求の範囲に記載される主題の全ての修正および等価物を含む。本発明の実施形態として特定の任意選択的な特徴が記載されるが、具体的に示されない限り、あるいは物理的に不可能でない限り、本記載はこれらの実施形態の全ての組合せを包含し、具体的に開示することを意味する。