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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】玉軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 19/08 20060101AFI20220203BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20220203BHJP
   F16C 35/067 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
F16C19/08
F16C19/18
F16C35/067
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021000603
(22)【出願日】2021-01-05
【審査請求日】2021-01-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511008713
【氏名又は名称】岡田 泰一
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】岡田 泰一
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-056822(JP,U)
【文献】特開2004-308792(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049296(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/08
F16C 19/18
F16C 35/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心線が一致する環状をなす外輪及び内輪と、該外輪と内輪との間において前記中心線を中心とした周方向に複数設けられ、且つ、前記外輪の内周面と前記内輪の外周面とにそれぞれ接するように配設された玉とを備え、前記各玉が前記周方向に転動することにより前記外輪と内輪とが前記中心線周りに相対回転するよう構成された玉軸受であって、
前記玉の前記中心線に沿う方向の移動を規制して前記玉を前記周方向に案内する第一転動ガイド部と、前記第一転動ガイド部に並設され、前記玉の前記中心線に沿う方向の移動を規制して前記玉を前記周方向に案内するとともに、玉の進路方向に見たときに前記第一転動ガイド部により案内される玉と前記中心線に沿う方向において部分的に重なるように前記玉を案内する第二転動ガイド部とを有し、
前記第一転動ガイド部により案内される玉と前記第二転動ガイド部により案内される玉とは、前記周方向に沿って交互に配置されており、
前記第一転動ガイド部は、前記外輪の内周面においてその外輪の周方向に沿って形成され前記玉が転動可能な溝から成る第一外側環状溝と、前記内輪の外周面における前記第一外側環状溝と対向する位置においてその内輪の周方向に沿って形成され前記玉が転動可能な溝から成る第一内側環状溝とにより構成され、
前記第二転動ガイド部は、前記中心線に沿う方向において前記第一外側環状溝に並設され、前記外輪の内周面においてその外輪の周方向に沿って形成され前記玉が転動可能な溝から成る第二外側環状溝と、前記中心線に沿う方向において前記第一内側環状溝に並設され、前記内輪の外周面における前記第二外側環状溝と対向する位置においてその内輪の周方向に沿って形成され前記玉が転動可能な溝から成る第二内側環状溝とにより構成され、
前記第一転動ガイド部により案内される各玉と前記第二転動ガイド部により案内される各玉の少なくとも一方に関し、各玉の前記周方向の間隔が該玉の直径の10分の1未満となるまで互いに接近するように、前記第一転動ガイド部の第一外側環状溝及び第一内側環状溝ならびに前記第二転動ガイド部の第二外側環状溝及び第二内側環状溝が形成され
前記外輪は、前記中心線に沿う方向の一方側の端部から前記外輪の径方向内側に向かって前記外輪と内輪との間に配設された各玉の中心点を超え且つ前記内輪における前記中心線に沿う方向の一方側の端部を覆う位置まで延びるとともに、各玉と接するように設けられた壁部を有し、
前記内輪の前記中心線に沿う方向の他端には、前記第一内側環状溝及び前記第二内側環状溝の底部から相対的に隆起するとともに前記中心線を中心として環状に延びる内側襟部が設けられ、該内側襟部は、前記外輪における前記中心線に沿う方向の他端よりも前記中心線に沿う方向の他方側に飛び出していることを特徴とする玉軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の玉軸受において、
前記第二外側環状溝は、前記第一外側環状溝よりも径方向内側に偏った位置に配置され、前記第二内側環状溝は、前記第一内側環状溝よりも径方向内側に偏った位置に配置されていることを特徴とする玉軸受。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の玉軸受において、
前記外輪及び内輪の対向する一部領域を部分的に切り欠かくことにより形成され、且つ、前記玉が通過可能に構成された開口部が設けられていることを特徴とする玉軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸体を回転自在に支持する玉軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に開示されている玉軸受は、中心線が一致する環状をなす外輪及び内輪を備え、当該外輪及び内輪の間には、中心線が外輪及び内輪の中心線と一致する環状をなす保持器が配設されている。該保持器は、剛体球である玉を回転可能に保持しており、各玉は、上記中心線周りに所定の間隔をあけて等間隔に位置している。そして、各玉は、外輪の内周面と内輪の外周面とにそれぞれ接していて、保持器によって周方向に隣り合う玉が互いに間隔をあけた状態で外輪と内輪との間を転動することにより、該周方向に隣り合う玉同士が正面から直接接触することで発生しうる大きな摩擦を回避しながら外輪と内輪とがスムーズに相対回転するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-133770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、故障し難い製品にするための多くの取り組みがなされており、それらの製品に組み込む軸受に関しても同様に、外輪と内輪との間におけるスムーズな相対回転動作を長く維持して耐用年数を向上させることが強く望まれている。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高い軸受性能を発揮すると共に耐用年数を向上させることのできる玉軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明では、玉軸受における玉の軌道配置に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、中心線が一致する環状をなす外輪及び内輪と、該外輪と内輪との間において前記中心線を中心とした周方向に複数設けられ、且つ、前記外輪の内周面と前記内輪の外周面とにそれぞれ接するように配設された玉とを備え、前記各玉が前記周方向に転動することにより前記外輪と内輪とが前記中心線周りに相対回転するよう構成された玉軸受を対象とし、次のような対策を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明では、前記玉の前記中心線に沿う方向の移動を規制して前記玉を前記周方向に案内する第一転動ガイド部と、前記第一転動ガイド部に並設され、前記玉の前記中心線に沿う方向の移動を規制して前記玉を前記周方向に案内するとともに、玉の進路方向に見たときに前記第一転動ガイド部により案内される玉と前記中心線に沿う方向において部分的に重なるように前記玉を案内する第二転動ガイド部とを有し、前記第一転動ガイド部により案内される玉と前記第二転動ガイド部により案内される玉とは、前記周方向に沿って交互に配置されており、前記第一転動ガイド部は、前記外輪の内周面においてその外輪の周方向に沿って形成され前記玉が転動可能な溝から成る第一外側環状溝と、前記内輪の外周面における前記第一外側環状溝と対向する位置においてその内輪の周方向に沿って形成され前記玉が転動可能な溝から成る第一内側環状溝とにより構成され、前記第二転動ガイド部は、前記中心線に沿う方向において前記第一外側環状溝に並設され、前記外輪の内周面においてその外輪の周方向に沿って形成され前記玉が転動可能な溝から成る第二外側環状溝と、前記中心線に沿う方向において前記第一内側環状溝に並設され、前記内輪の外周面における前記第二外側環状溝と対向する位置においてその内輪の周方向に沿って形成され前記玉が転動可能な溝から成る第二内側環状溝とにより構成され、前記第一転動ガイド部により案内される各玉と前記第二転動ガイド部により案内される各玉の少なくとも一方に関し、各玉の前記周方向の間隔が該玉の直径の10分の1未満となるまで互いに接近するように、前記第一転動ガイド部の第一外側環状溝及び第一内側環状溝ならびに前記第二転動ガイド部の第二外側環状溝及び第二内側環状溝が形成され、前記外輪は、前記中心線に沿う方向の一方側の端部から前記外輪の径方向内側に向かって前記外輪と内輪との間に配設された各玉の中心点を超え且つ前記内輪における前記中心線に沿う方向の一方側の端部を覆う位置まで延びるとともに、各玉と接するように設けられた壁部を有し、前記内輪の前記中心線に沿う方向の他端には、前記第一内側環状溝及び前記第二内側環状溝の底部から相対的に隆起するとともに前記中心線を中心として環状に延びる内側襟部が設けられ、該内側襟部は、前記外輪における前記中心線に沿う方向の他端よりも前記中心線に沿う方向の他方側に飛び出していることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、前記第二外側環状溝は、前記第一外側環状溝よりも径方向内側に偏った位置に配置され、前記第二内側環状溝は、前記第一内側環状溝よりも径方向内側に偏った位置に配置されていることを特徴とする。
【0010】
の発明では、第1又は第2の発明において、前記外輪及び内輪の対向する一部領域を部分的に切り欠かくことにより形成され、且つ、前記玉が通過可能に構成された開口部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明では、玉軸受において外輪及び内輪を相対回転させると、外輪の内周面及び内輪の外周面とにそれぞれ接する各玉は、第一転動ガイド部及び第二転動ガイド部によって外輪及び内輪の周方向に案内されながら転動する。
【0012】
このとき、玉の進路方向に見たときに第一転動ガイド部により案内される玉と第二転動ガイド部により案内される玉とが外輪及び内輪の中心線に沿う方向において互いに部分的に重なるようにして、外輪及び内輪の周方向に沿って交互に配置されているため、第一転動ガイド部の玉と第二転動ガイド部の玉との相互接触は、各玉の最大円周部では生じず、該最大円周部から外側に離れたより小さい円周部で生じるようになる。本明細書において、「円周」は、上記の外輪と内輪との間に配設された状態の玉を上記中心線に直交する方向に切ったときの円形断面に関わる円周とする。
【0013】
このため、従来の玉軸受のように玉の転動ガイド部が1つで各玉が直列に配置されることにより、各玉の相互接触がそれらの最大円周部で生じる構成と比べ、各玉に生じる転がり摩擦(内部摩擦)ないしそれに基づく転動時の抵抗が小さくなる。
【0014】
すなわち、第二転動ガイド部の玉が第一転動ガイド部の玉同士の最大円周部における相互接触を回避して抵抗を抑える保持器の役割を担い、他方、第一転動ガイド部の玉が第二転動ガイド部の玉同士の最大円周部における相互接触を回避して抵抗を抑える保持器の役割を担う。したがって、第1の発明によれば、外輪と内輪との間に保持器を設けなくても、外輪及び内輪の相対回転動作をスムーズにすることができ、高い軸受性能を発揮させることができる。
【0015】
また、外輪と内輪との間に保持器を装着する必要がないので、外輪と内輪との間における保持器が占有していた空間に新たに多くの玉を組付可能になる。したがって、第1の発明によれば、もし仮に、各玉の中の1つ又は数個に摩耗や変形等が生じたとしても、その他の多くの玉によって外輪と内輪との間における相対回転動作が維持されるようになるので、従来の玉軸受よりも耐用年数を向上させることができる。
【0016】
また、第1の発明では、上記の第一転動ガイド部及び第二転動ガイド部が何れも外輪の内周面と内輪の外周面に形成された溝により構成されているため、別途の部材を用いない簡素な構成による製造容易化や低コスト化も図ることができる。
【0017】
また、第1の発明では、外輪と内輪との間において、各玉が外輪及び内輪の径方向に延びる上記壁部と接し転動しうるので、上記中心線に沿う方向のスラスト荷重を受けることができる。したがって、第3の発明によれば、1つの玉軸受で、上記中心線と垂直をなす方向のラジアル荷重と上記スラスト荷重の両方を受けることができるようになる。
【0018】
第2の発明では、上記の第一転動ガイド部の玉と第二転動ガイド部の玉とが外輪及び内輪の中心線に沿う方向だけでなく、外輪及び内輪の径方向においても互いに異なる位置に配置されるようになり、玉の進路方向に見たときの第一転動ガイド部の玉と第二転動ガイド部の玉との互いの上記中心線に沿う方向の重なり領域がより減少したものとなる。したがって、第一転動ガイド部の玉と第二転動ガイド部の玉との相互接触時に各玉に作用する荷重がより小さくなる。その結果、第2の発明によれば、各玉に生じる摩擦をいっそう低減でき、より高い軸受性能を発揮させることができる
【0019】
第3の発明では、玉を開口部から挿入するとともに、外輪と内輪との間で中心線の周りに移動させると、外輪と内輪との間に玉の装着が完了する一方、外輪と内輪との間に装着した玉を開口部に正確に位置合わせさせると、外輪と内輪との間から開口部を介して玉を取り出すことも可能となる。したがって、外輪と内輪とを分離することなく玉を外輪及び内輪の間に装着することができ、摩耗や損傷等を受けた玉を新しいものに交換するといった玉軸受のメンテナンスも従来に比べて容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態1に係る玉軸受を示す図であり、玉軸受をその中心線方向に見た図である。
図2図1の内輪を省略して示すA矢視内部模式図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4図1の玉軸受の組み付け説明図であり、第二転動ガイド部に玉を仮装着した状態を示す図である。
図5図1の玉軸受の組み付け説明図であり、第二転動ガイド部に玉を装着した状態を示す図である。
図6図5の内輪を省略して示すB矢視内部模式図である。
図7】本発明の実施形態2に係る玉軸受を示す図であり、玉軸受をその中心線方向に見た図である。
図8図7の内輪を省略して示すC矢視内部模式図である。
図9図7の玉軸受の外輪及び内輪を示す図である。
図10図9のX-X線断面図である。
図11】本発明の実施形態3に係る玉軸受を示す図であり、玉軸受をその中心線方向に見た図である。
図12図11の玉軸受の外輪及び内輪を示す図である。
図13図11の玉軸受の外輪及び内輪に係るXIII-XIII断面図である。
図14図11の玉軸受の内輪の側面図である。
図15図11の内輪を省略して示すD矢視内部模式図である。
図16】本発明の実施形態4に係る玉軸受を示す図であり、玉軸受をその中心線方向に見た図である。
図17図16のXVII-XVII線断面図である。
図18図16の内輪の背面図である。
図19図16の玉軸受の組み付け説明図である。
図20図16の玉軸受における玉の並びを示す内部模式図である。
図21図16の玉軸受における玉の並びを示すE矢視内部模式図である。
図22】本発明の他の形態に係る玉の並びを示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
《発明の実施形態1》
図1乃至図6は、本発明の実施形態1に係る玉軸受1を示す。
【0022】
本実施形態の玉軸受1は、図1に示すように、中心線C1周りに環状に延びる外輪2と、該外輪2の内側に配設され、当該外輪2と中心線C1が一致する環状をなす内輪3と、何れも同じ直径寸法を有し外輪2及び内輪3の間において中心線C1を中心とした周方向に複数設けられ、且つ、該外輪2の内周面と該内輪3の外周面とにそれぞれ接するように配設された球形の玉4とを備えてなり、各玉4が周方向に転動することにより外輪2と内輪3とが中心線周りに相対回転するよう構成されている。本実施形態の外輪2、内輪3、及び各玉4は、何れも耐摩耗性に優れる高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ材)製となっている。尚、図1における二点鎖線を境とした概ね上半分は、外輪2及び内輪3の間における玉4の配設の説明上、玉4の飛び出しを防止する外側襟部2b及び内側襟部3bを省略して示している。
【0023】
玉軸受1は、図2及び図3に示すように、玉4aの中心線C1に沿う方向の移動を規制して玉4aを周方向に案内する第一転動ガイド部10aと、該第一転動ガイド部10aに並設され、第一転動ガイド部10aと同様に玉4bの中心線C1に沿う方向の移動を規制して該玉4bを周方向に案内するとともに、玉4の進路方向に見たときに第一転動ガイド部10aにより案内される玉4aと中心線C1に沿う方向において玉直径寸法の1/4程度重なるようにして当該玉4bを案内する第二転動ガイド部10bとを備えている。尚、説明の便宜上、図2において内輪3を省略し、図3において玉4の一部を省略している。
【0024】
第一転動ガイド部10aにより案内される玉4aと玉4aとの間に第二転動ガイド部10bにより案内される玉4bが位置し、第二転動ガイド部10bにより案内される玉4bと玉4bとの間に第一転動ガイド部10aにより案内される玉4aが位置し、該玉4aと玉4bとが中心線C1周りの周方向に沿って交互に且つ転動時に互いに間隔を形成するようにして配置されている。
【0025】
第一転動ガイド部10aは、外輪2の内周面においてその外輪2の周方向に沿って形成され玉4aが転動可能な溝から成る第一外側環状溝21aと、内輪3の外周面における第一外側環状溝21aと対向する位置においてその内輪3の周方向に沿って形成され玉4aが転動可能な溝から成る第一内側環状溝31aとにより構成されている。第一外側環状溝21a及び第一内側環状溝31aは、いずれも玉4aの球面に対応する曲率を持つ断面視湾曲形状が設定されており、玉4aが中心線C1に沿う方向に移動しないようになっている。
【0026】
第二転動ガイド部10bは、中心線C1に沿う方向において第一外側環状溝21aに並設され、外輪2の内周面においてその外輪2の周方向に沿って形成されて玉4bが転動可能な溝から成る第二外側環状溝21bと、中心線C1に沿う方向において第一内側環状溝31aに並設され、内輪3の外周面における第二外側環状溝21bと対向する位置においてその内輪3の周方向に沿って形成されて玉4bが転動可能な溝から成る第二内側環状溝31bとにより構成されている。第二外側環状溝21b及び第二内側環状溝31bは、いずれも玉4aの球面に対応する曲率を持つ断面視湾曲形状が設定されており、玉4aが中心線C1に沿う方向に移動しないようになっている。
【0027】
そして、第一外側環状溝21a及び第二外側環状溝21bの形成によって、該第一外側環状溝21aや第二外側環状溝21bの底部から相対的に隆起した外側襟部2bが外輪2の中心線C1方向外側で周方向に沿って形成されるとともに、該第一外側環状溝21aと第二外側環状溝21bとの境界をなし該第一外側環状溝21aや第二外側環状溝21bの底部から相対的に隆起した突条のリッジ部24が外輪2の中心線C1方向中央部に形成される。
【0028】
また、第一内側環状溝31a及び第二内側環状溝31bの形成によって、該第一内側環状溝31aや第二内側環状溝31bの底部から相対的に隆起した内側襟部3bが内輪3の中心線C1方向外側で周方向に沿って形成されるとともに、該第一内側環状溝31aと第二内側環状溝31bとの境界をなし該第一内側環状溝31aや第二内側環状溝31bの底部から相対的に隆起した突条のリッジ部34が内輪3の中心線C1方向中央部に形成される。
【0029】
外輪2には、図1及び図3に示すように、中心線C1方向に見て円弧状をなす第一外側切り欠き凹部2aが形成されている。該第一外側切り欠き凹部2aの中心線C1に沿う方向の奥行は、外輪2における該中心線C1に沿う方向の外側から内側に向かうにつれて外輪2の径方向外側に向かう形状をなして該中心線C1に対してやや傾斜し、玉4aを第一転動ガイド部10aに案内するようになっている。
【0030】
内輪3にも、中心線C1方向に見て円弧状をなす第一内側切り欠き凹部3aが形成されている。該第一内側切り欠き凹部3aの中心線C1に沿う方向の奥行も、内輪3における該中心線C1に沿う方向の外側から内側に向かうにつれて内輪3の径方向外側に向かう形状をなして該中心線C1に対してやや傾斜し、玉4aを第一転動ガイド部10aに案内するようになっている。該第一外側切り欠き凹部2aと第一内側切り欠き凹部3aとで形成される第一開口部5aは、第一転動ガイド部10aに装着される玉4aを挿通可能な寸法を有する。
次に、玉軸受1の組み付け方法の一例を説明する。
【0031】
玉軸受1の組み付けにおいては、先ず、図4に示すように、中心線C1が鉛直方向を向くようにして外輪2及び内輪3を台座上に載置するとともに外輪2の内周面に内輪3の外周面を接触させて、外輪2と内輪3との間における第二外側環状溝21bに沿って、つまり、第二転動ガイド部10bの軌道上に、配置可能な最大個数の玉4bを配置する。次いで、図5に示すように、外輪2及び内輪3の中心線C1が一致した状態となるように外輪2と内輪3との相対位置を変化させる。このとき、第二転動ガイド部10bに配置された各玉4bの間隔を等間隔に維持しながら、外輪2及び内輪3の相対回転位置を第一外側切り欠き凹部2aと第一内側切り欠き凹部3aとが向かい合い第一開口部5aが形成される状態(図1、3の状態)に移動させる。そして、第一開口部5aを介し、第二転動ガイド部10bにおいて周方向に隣り合う2つの玉4bの間に玉を挿入し、第一転動ガイド部10aに玉4aを装着する。
【0032】
以降、第二転動ガイド部10bの各玉4bを等間隔に保った状態で該玉4bを周方向に回転させるか、又は、該間隔を保った状態で外輪2及び内輪3を回転させて第一開口部5aの位置を移動させ、第一転動ガイド部10aの玉4aと第二転動ガイド部10bの玉4bとが交互になるよう第一転動ガイド部10aに玉4aを装着していく。第一開口部5aから挿入した玉4aは、第一外側環状溝21aと第二外側環状溝21bとの境界をなすリッジ部24及び第一内側環状溝31aと第二内側環状溝31bとの境界をなすリッジ部34により、第二転動ガイド部10b側に進入できないようになっている。尚、図5においては、説明の便宜上、図1と同様に外側襟部2b及び内側襟部3bを省略している。これで、玉軸受1の組み付けが完了し、図1及び図2に示す玉軸受1の状態となる。
次に、玉軸受1の使用時の動作について詳述する。
【0033】
本実施形態の玉軸受1において外輪2及び内輪3を相対回転させると、外輪2の内周面及び内輪3の外周面とにそれぞれ接する各玉4は、第一転動ガイド部10a及び第二転動ガイド部10bによって外輪2及び内輪3の周方向に案内されながら転動する。
【0034】
このとき、玉4の進路方向に見たときに第一転動ガイド部10aにより案内される玉4aと第二転動ガイド部10bにより案内される玉4bとが外輪2及び内輪3の中心線C1に沿う方向において互いに部分的に重なるようにして、外輪2及び内輪3の周方向に沿って交互に配置されているため、第一転動ガイド部10aの玉4aと第二転動ガイド部10bの玉4bとの相互接触は、各玉4の最大円周部L1(図2参照)では生じず、該最大円周部L1から離れたより小さい円周部で生じるようになる。
【0035】
このため、従来の玉軸受のように玉の転動ガイド部が1つで各玉が直列に配置されることにより、各玉の相互接触がそれらの最大円周部で生じる構成と比べ、各玉に生じる転がり摩擦(内部摩擦)ないしそれに基づく転動時の抵抗が小さくなる。
【0036】
すなわち、第二転動ガイド部10bの玉4bが第一転動ガイド部10aの玉4a同士の最大円周部L1における相互接触を回避して抵抗を抑える保持器の役割を担い、他方、第一転動ガイド部10aの玉4bが第二転動ガイド部10bの玉4a同士の最大円周部L1における相互接触を回避して抵抗を抑える保持器の役割を担う。したがって、本実施形態の玉軸受1によれば、外輪2と内輪3との間に保持器を設けなくても、外輪2及び内輪3の相対回転動作をスムーズにすることができ、高い軸受性能を発揮させることができる。
【0037】
また、外輪2と内輪3との間に保持器を装着する必要がないので、外輪2と内輪3との間における保持器が占有していた空間に新たに多くの玉4を組付可能になる。したがって、本実施形態の玉軸受1によれば、もし仮に、各玉4の中の1つ又は数個に摩耗や変形等が生じたとしても、その他の多くの玉4によって外輪2と内輪3との間における相対回転動作が維持されるようになるので、従来の玉軸受1よりも耐用年数を向上させることができる。
【0038】
さらに、第一転動ガイド部10a及び第二転動ガイド部10bが何れも外輪2の内周面と内輪3の外周面に形成された溝により構成されているため、別途の部材を用いない簡素な構成による製造容易化や低コスト化も図ることができる。
【0039】
また、玉4を第一開口部5aから挿入するとともに、外輪2と内輪3との間で中心線C1の周りに移動させると、外輪2と内輪3との間に玉4の装着が完了する一方、外輪2と内輪3との間に装着した玉4を第一開口部5aに正確に位置合わせさせると、外輪2と内輪3との間から第一開口部5aを介して玉4を取り出すことも可能となる。したがって、外輪2と内輪3とを分離することなく玉4を外輪2及び内輪3の間に装着することができ、摩耗や損傷等を受けた玉4を新しいものに交換するといった玉軸受1のメンテナンスも従来に比べて容易となる。
【0040】
さらに、第一開口部5aにおける第一外側切り欠き凹部2a及び第一内側切り欠き凹部3aの奥行の傾斜により、万一、玉4が中心線C1に沿って移動し第一開口部5aから飛び出そうとしても、該傾斜によって玉4の中心線C1方向の移動が妨げられ該玉4の飛び出しが防止される。
《発明の実施形態2》
【0041】
図7乃至図10は、本発明の実施形態2に係る玉軸受1を示す。この実施形態2は、実施形態1の玉軸受1における外輪2及び内輪3の構成の一部が異なっている以外は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0042】
外輪2には、図9及び図10に示すように、中心線C1方向に見て円弧状をなす第二外側切り欠き凹部2cが形成されている。該第二外側切り欠き凹部2cの中心線C1に沿う方向の奥行は、外輪2における該中心線C1に沿う方向の外側から内側に向かうにつれて外輪2の径方向外側に向かう形状をなして該中心線C1に対してやや傾斜し、玉4bを第二転動ガイド部10bに案内するようになっている。
【0043】
内輪3にも、中心線C1方向に見て円弧状をなす第二内側切り欠き凹部3cが形成されている。該第二内側切り欠き凹部3cの中心線C1に沿う方向の奥行も、内輪3における該中心線C1に沿う方向の外側から内側に向かうにつれて内輪3の径方向外側に向かう形状をなして該中心線C1に対してやや傾斜し、玉4bを第二転動ガイド部10bに案内するようになっている。該第二外側切り欠き凹部2cと第二内側切り欠き凹部3cとで形成される第二開口部5cは、第二転動ガイド部10bに装着される玉4bを挿通可能な寸法を有する。
次に、本実施形態の玉軸受1の組み付け方法の一例を説明する。
【0044】
玉軸受1の組み付けにおいては、先ず、図9に示すように中心線C1が鉛直方向を向くようにして外輪2及び内輪3を台座上に載置する。このとき、外輪2及び内輪3の中心線C1が一致しており且つ第一開口部5a及び第二開口部5cが形成されている状態にしておく。そして、第一開口部5aから所定数の玉を挿入して第一転動ガイド部10aに玉4aを装着し、第一転動ガイド部10aの各玉4aの間隔を等間隔に維持する。
【0045】
以降、第一転動ガイド部10aの各玉4aを等間隔に保った状態で該玉4aを周方向に回転させるか、又は、該間隔を保った状態で外輪2及び内輪3を回転させて第二開口部5cの位置を移動させ、第一転動ガイド部10aの玉4aと第二転動ガイド部10bの玉4bとが交互になるよう第二開口部5cから第二転動ガイド部10bに玉4bを順次装着していく。これで、玉軸受1の組み付けが完了し、図7及び図8に示す玉軸受1の状態となる。
【0046】
以上より、本発明の実施形態2によると、第一開口部5aと第二開口部5cとを介して第一転動ガイド部10aと第二転動ガイド部10bとに玉4を装着できることから、実施形態1のように外輪2の内周面と内輪3の外周面とを接触させて生じるスペース内でのみ玉を装着できる構成よりも多くの玉4を配設できるようになり、玉軸受1の耐久性をより高めることができる。
《発明の実施形態3》
【0047】
図11乃至図15は、本発明の実施形態3に係る玉軸受1を示す。この実施形態3は、実施形態1の玉軸受1における外輪2及び内輪3の構成の一部が異なっている以外は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0048】
実施形態3の玉軸受1においては、図11に示すように、第二転動ガイド部10bを案内される玉4bが第一転動ガイド部10aを案内される玉4aよりも所定の寸法A1だけ径方向内側に偏るように構成されている。すなわち、図13及び図14に示すように、第二外側環状溝21bの底部が第一外側環状溝21aの底部よりも径方向内側に所定の寸法A1だけ偏った位置に配置され、また、これに対応し、第二内側環状溝31bの底部が第一内側環状溝31aの底部よりも径方向内側に所定の寸法A1だけ偏った位置に配置されている。第一転動ガイド部10aと第二転動ガイド部10bとの径方向の相対的なずれの寸法A1は、玉直径寸法の概ね1/5程度に設定されている。
【0049】
本実施形態の外輪2の第一外側切り欠き凹部2aにおいては、図13に示すように、中心線C1に沿う方向の奥行は、該中心線C1に沿う方向の外側端部から第一外側環状溝21aに至るまでは当該中心線C1と概ね並行をなしており、該第一外側環状溝21aから第二外側環状溝21bに至るまで外輪2の径方向内側に向かう形状をなして該中心線C1に対してやや傾斜し、玉を第一転動ガイド部10a及びその先にある第二転動ガイド部10bまで案内するようになっている。
【0050】
第一内側切り欠き凹部3aにおいても、中心線C1に沿う方向の奥行は、該中心線C1に沿う方向の外側端部から第一内側環状溝31aに至るまでは当該中心線C1と概ね並行をなしており、該第一内側環状溝31aから第二内側環状溝31bに至るまで内輪3の径方向内側に向かう形状をなして該中心線C1に対してやや傾斜し、玉を第一転動ガイド部10a及びその先にある第二転動ガイド部10bまで案内するようになっている。
【0051】
また、外輪2における中心線C1に沿う方向の中央部、すなわち、第一外側環状溝21aと第二外側環状溝21bとで挟まれた位置には、外輪中央油溝22が周方向に沿って環状に設けられている。該外輪中央油溝22には、玉4の転動を滑らかにするための潤滑油を貯められるようになっている。
次に、本実施形態の玉軸受1の組み付け方法の一例を説明する。
【0052】
玉軸受1の組み付けにおいては、先ず、図12に示すように、中心線C1が鉛直方向を向くようにして外輪2及び内輪3を台座上に載置する。このとき、外輪2及び内輪3の中心線C1が一致しており且つ第一開口部5aが形成されている状態にしておく。そして、第一開口部5aから所定数の玉を挿入して第二転動ガイド部10bに玉4bを装着し、第二転動ガイド部10bの各玉4bの間隔を等間隔に維持する。
【0053】
以降、第二転動ガイド部10bの各玉4bを等間隔に保った状態で該玉4bを周方向に回転させるか、又は、該間隔を保った状態で外輪2及び内輪3を回転させて第一開口部5aの位置を移動させ、第一転動ガイド部10aの玉4aと第二転動ガイド部10bの玉4bとが交互になるよう第一開口部5aから玉を挿入し第一転動ガイド部10aに玉4aを順次装着していく。これで、玉軸受1の組み付けが完了し、図11及び図15に示す玉軸受1の状態となり、第一転動ガイド部10aの玉4aと第二転動ガイド部10bの玉4bとが中心線C1に沿う方向及び外輪2及び内輪3の径方向において互いに位置ずれした状態で外輪2と内輪3との間を転動するように配設される。
【0054】
以上より、本発明の実施形態3によると、第一転動ガイド部10aの玉4aと第二転動ガイド部10bの玉4bとが外輪2及び内輪3の中心線C1に沿う方向だけでなく、外輪2及び内輪3の径方向内側においても互いに位置がずれて転動するようになり、玉4の進路方向に見たときの第一転動ガイド部10aの玉4と第二転動ガイド部10bの玉4との互いの中心線C1に沿う方向の重なり領域がより減少するようになる。したがって、第一転動ガイド部10aの玉4aと第二転動ガイド部10bの玉4bとの相互接触時に各玉4に作用する荷重がより小さくなる。その結果、本実施形態の玉軸受1によれば、各玉4に生じる摩擦をいっそう低減でき、より高い軸受性能を発揮させることができる。
【0055】
また、本実施形態の外輪2には、外輪中央油溝22が設けられているので、第一転動ガイド部10aを案内される玉4aと第二転動ガイド部10bを案内される玉4bとの相互接触時の摩擦や、第一転動ガイド部10aや第二転動ガイド部10bと各玉4との摩擦を緩和でき、さらに高い軸受性能を発揮させることができる。
《発明の実施形態4》
【0056】
図16乃至図21は、本発明の実施形態4に係る玉軸受1を示す。この実施形態4は、実施形態3の玉軸受1における外輪2及び内輪3の構成の一部、及び玉4aの寸法が異なっている以外は実施形態3と同様であるので、実施形態3と同様の部分には同じ符号を付し、その他、実施形態3と異なる構成についてのみ説明する。
【0057】
本実施形態の外輪2の第一外側環状溝21aは、図17に示すように、第二外側環状溝21bより曲率半径が小さくなっており、また、外輪2における第二外側環状溝21bの底部は、第一外側環状溝21aの底部よりも外輪2径方向内側寄りに偏っている。当該偏りの寸法A2は、実施形態3における対応する偏りの寸法A1よりも大きく設定されている。
【0058】
本実施形態の内輪3の第一内側環状溝31aも、図17に示すように、第二内側環状溝31bより曲率半径が小さくなっており、また、内輪3における第二内側環状溝31bの底部は、第一内側環状溝31aの底部よりも径方向内側寄りに偏っている。そして、当該偏りの寸法A2は、実施形態3における対応する偏りの寸法A1よりも大きく設定されている。また、第一内側環状溝31a及び第二内側環状溝31bは、断面視対称軸C2(図19)が中心線C1と概ね45°の角度をなしている。
【0059】
第一内側環状溝31aと第二内側環状溝31bとの境界に位置する突条のリッジ部34は、図19に示すよう、内輪3の中心線C1が鉛直方向を向くようにして該内輪3を平台に置いた状態で該第二内側環状溝31bに玉4bを安定して載置できる玉受け形状部としても機能するようになっている。
【0060】
本実施形態においては、第一転動ガイド部10aを案内される玉4aが第二転動ガイド部10bを案内される玉4bよりも直径が小さく、また、第二転動ガイド部10bを案内される玉4bが第一転動ガイド部10aを案内される玉4aよりも外輪2及び内輪3の径方向内側に偏って配置されるようになっている。
【0061】
本実施形態の外輪2は、中心線C1に沿う方向の一方側の端部から外輪2の径方向内側に向かって平板状に延び、且つ、第二転動ガイド部10bの各玉4bの中心点を超える位置まで延びるとともに、各玉4bと接するように設けられた壁部23を有している。中心線C1に沿う方向に見ると、第二転動ガイド部10bを案内される玉4bは、該壁部23の領域内に完全に含まれている。
【0062】
また、第一外側環状溝21a内、第二外側環状溝21b内、第一内側環状溝31a内、及び第二内側環状溝31b内の適所には、それぞれ、外輪2及び内輪3の周方向に沿って環状に延びる第一外輪油溝22a、第二外輪油溝22b、第一内輪油溝32a、第二内輪油溝32bが形成されている。
【0063】
本実施形態の第一開口部5aを形成する第一外側切り欠き凹部2a及び第一内側切り欠き凹部3aは、図21に示すように、その奥行きが中心線C1に並行となっており、傾斜は設定されていない。
【0064】
次に、本実施形態の玉軸受1の組み付け方法の一例を説明する。
玉軸受1の組み付けにおいては、先ず、図19に示すように、内輪3の中心線C1が鉛直方向を向くように該内輪3を平台上に載置し、第二内側環状溝31bに所定数の玉を載置する。そして、内輪3の第二内側環状溝31bの玉4bが外輪2の第二外側環状溝21bないし壁部23に当接するように、内輪3の上方から矢印Fの方向に外輪2を下げる。このとき、外輪2の第一外側切り欠き凹部2aと内輪3の第一内側切り欠き凹部3aとが向かい合い第一開口部5aが形成されるように位置合わせを行うとともに、第二転動ガイド部10bの各玉4bの間隔を等間隔に維持する。そして、第一開口部5aを介し、第二転動ガイド部10bにおいて周方向に隣り合う2つの玉4bの間に玉を挿入し、第一転動ガイド部10aに玉4aを装着する。
【0065】
以降、第二転動ガイド部10bの玉4bを等間隔に保った状態で該玉4bを周方向に回転させるか、又は、該間隔を保った状態で外輪2及び内輪3を回転させて第一開口部5aの位置を移動させ、第一転動ガイド部10aの玉4aと第二転動ガイド部10bの玉4bとが交互になるよう第一転動ガイド部10aに玉4aを装着していく。これで、本実施形態の玉軸受1が完成し、図20及び図21のように第一転動ガイド部10aの玉4aと第二転動ガイド部10bの玉4bとが中心線C1に沿う方向及び外輪2及び内輪3の径方向に互いに位置ずれした状態で外輪2と内輪3との間を転動するように、且つ、第二転動ガイド部10bの玉4bが外輪2の壁部23と接し転動するように配設される。
【0066】
以上より、実施形態4の玉軸受1では、外輪2と内輪3との間において、各玉4bが外輪2及び内輪3の径方向に延びる壁部23と接し転動しうるので、内輪3に装着される回転軸から伝わる中心線C1に沿う方向のスラスト荷重を受けることができる。したがって、本実施形態の玉軸受1によれば、1つの玉軸受で、中心線C1と垂直をなす方向のラジアル荷重とスラスト荷重の両方を受けることができる。
【0067】
また、本実施形態の玉軸受1における第一転動ガイド部10aの玉4aと第二転動ガイド部10bの玉4bとの外輪2及び内輪3の径方向の相対的な位置のずれが実施形態3よりも大きいので、実施形態3よりも各玉4の相互接触により生じる転動時の抵抗が小さくなる。
【0068】
また、本実施形態の玉軸受1では、第一外輪油溝22a、第二外輪油溝22b、第一内輪油溝32a、第二内輪油溝32bが形成されており、1つの外輪中央油溝22のみが形成された実施形態3の玉軸受1よりも、外輪2及び内輪3と玉4との間により多くの潤滑油をより広範囲均等に充填でき、軸受性能や耐久性をより良好に維持することができる。
【0069】
また、他の実施形態と異なり、第一転動ガイド部10aの玉4aは、第二転動ガイド部10bの玉4bよりも相対的に小さくなっているので、各玉4ならびに各玉4を収容する外輪2及び内輪3のサイズとコストを抑えることができる。
【0070】
尚、上記の実施形態1~4は、一例である。実際には、図22に示すように2つの玉が間隔を置いて並列して転動する並列玉軸受と2つの玉が直列に配置されて転動する単列玉軸受との中間形態のすべてが本発明の対象となりうる。すなわち、玉の進路方向に見たときに2つの玉が中心線C1に沿う方向において部分的に重なるように配列されていればよい。但し、本発明の実施にあっては、各玉の相互接触時の抵抗の観点からは、上記間隔を可能な限り小さくすることが好ましい。例えば、図22の例において、各玉の接触時に前後(周方向)の玉の間隔が5mmとなる形態よりも該間隔が1mmとなる形態の方が各玉の相互接触時の抵抗は理論上小さくなるので、各玉の相互接触時の抵抗の観点からは、前後(周方向)の玉の間隔が5mmとなる形態よりも該間隔が1mmとなる形態の方が好ましい。尚、図22における前後(周方向)の玉の間隔は、玉の直径を10mmとした場合の具体例を離散的に示したものにすぎず、理論上、該間隔の下限は、0mmよりも大きくなればよい。
【0071】
本発明の実施形態1~4では、外輪2、内輪3、及び各玉4の材質として、何れも耐摩耗性に優れる高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ材)を用いているが、材質は用途等に応じて適宜選択でき、例えば、ステンレス鋼材やセラミックなどを用いることもできる。
【0072】
本発明の実施形態1~4では、第一外側環状溝21a、第一内側環状溝31a、第二外側環状溝21b、及び第二内側環状溝31bは、外輪2の内周面や内輪3の外周面を玉4の球面に対応するように窪ませて構成したものであるが、第一外側環状溝21a等は、外輪2の内周面及び内輪3の外周面のそれぞれの中央において外輪2の内周面及び内輪3の外周面に沿った隆起部を設け、該隆起部、外輪2の外側襟部2b、及び内輪3の内側襟部3bにおける玉4との接触面を該玉4の球面に沿った形状とすることによっても構成しうる。
本発明の実施形態4は、壁部23を外輪2に設ける場合の例であるが、壁部23を内輪3に設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、軸体を回転自在に支持するものに適している。
【符号の説明】
【0074】
1 玉軸受
10a 第一転動ガイド部
10b 第二転動ガイド部
2 外輪
21a 第一外側環状溝
21b 第二外側環状溝
23 壁部
3 内輪
31a 第一内側環状溝
31b 第二内側環状溝
4、4a、4b 玉
5a 第一開口部
5c 第二開口部
C1 中心線
【要約】
【課題】高い軸受性能を発揮すると共に耐用年数を向上させることのできる玉軸受を提供する。
【解決手段】玉軸受1は、中心線C1が一致する環状をなす外輪2及び内輪3と、該外輪2と内輪3との間において中心線C1を中心とした周方向に複数設けられ、且つ、外輪2の内周面と内輪3の外周面とにそれぞれ接するように配設された玉4とを備えている。該玉軸受1は、玉4の中心線C1に沿う方向の移動を規制して玉4を周方向に案内する第一転動ガイド部10aと、第一転動ガイド部10aに並設され、玉4の中心線C1に沿う方向の移動を規制して玉4を周方向に案内するとともに、玉4の進路方向に見たときに第一転動ガイド部10aにより案内される玉4と中心線C1に沿う方向において部分的に重なるように玉4を案内する第二転動ガイド部10bとを有する。該第一転動ガイド部10aにより案内される玉4と第二転動ガイド部10bにより案内される玉4とは、周方向に沿って交互に配置されている。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22