(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】マルチホップ中継システム、通信方法、及び通信装置
(51)【国際特許分類】
H04W 56/00 20090101AFI20220113BHJP
H04W 84/18 20090101ALI20220113BHJP
H04W 52/02 20090101ALI20220113BHJP
【FI】
H04W56/00
H04W84/18
H04W52/02 110
(21)【出願番号】P 2020082796
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2020-05-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519166154
【氏名又は名称】ソナス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100172591
【氏名又は名称】江嶋 清仁
(72)【発明者】
【氏名】大原 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-210563(JP,A)
【文献】特許第5896584(JP,B1)
【文献】特開2007-288598(JP,A)
【文献】特開2012-134604(JP,A)
【文献】鈴木誠、森川博之,Choco:無線センサネットワーク向け多目的プラットフォーム,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2014年07月29日,Vol.114 No.160
【文献】東峯圭佑、明石和陽、木村崇之、田中久陽,2つの帯域を利用する省電力フラッディング手法の提案と評価,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.110 No.49 IEICE Technical Report,日本,社団法人電子情報通信学会,2010年05月21日,第110巻,第1-2節
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッディング方式を用いて通信する、送信ノードと中継ノードとを含むマルチホップ中継システムであって、
前記送信ノードは、所定の周期で複数の前記中継ノードを同期させるための同期パケットを生成して送信するように構成され、
前記中継ノードは、
前記同期パケットを、前記所定の周期に対応する第1の周期ごとに第1の期間において待ち受ける第1の間欠受信と、
前記第1の周期より長い第2の周期ごとに、前記所定の周期の長さ以上の第2の期間において前記同期パケットを待ち受ける第2の間欠受信と、
を行うように構成され、
前記中継ノードは、
前記第1の間欠受信において同期パケットの受信ができなかったときに前記第2の間欠受信を行い、前記第2の間欠受信において前記同期パケットを受信した場合に、受信した前記同期パケットが所定の条件を満たすか否かの判定を行い、
前記所定の条件を満たすと判定された場合に、前記第2の間欠受信を停止し、前記第1の間欠受信を行い、
前記所定の条件を満たさないと判定された場合に、同期回復処理を実行する、
ことを特徴とするマルチホップ中継システム。
【請求項2】
前記判定は、前記同期パケットの受信タイミング、前記同期パケットのシーケンス番号、および前記送信ノードの起動時刻に対応する情報の少なくとも何れかを含む、前記同期パケットのパラメータに基づいて行われ、
前記中継ノードは、
受信すべき前記同期パケットの前記パラメータの推定と、
受信した前記同期パケットの前記パラメータと推定した前記パラメータとの比較と、
に基づいて前記判定を行うことを特徴とする請求項1に記載のマルチホップ中継システム。
【請求項3】
前記同期回復処理とは、前記第1の期間の再設定処理、前記中継ノードの再起動処理、前記中継ノードが実行するプログラムの再起動処理、前記中継ノードのプログラムの更新処理、および前記中継ノードのファームウェアの更新処理の少なくとも何れかを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のマルチホップ中継システム。
【請求項4】
前記送信ノードは、ユーザから同期リセット指示を受付け、
前記同期リセット指示を受付けた場合に、前記同期パケットの送信タイミングおよび送信周期の少なくとも何れかを変更する処理、および前記同期パケットのシーケンス番号および前記送信ノードの起動時刻に対応する情報の連続性を損なうように前記同期パケットに前記シーケンス番号および前記送信ノードの起動時刻に対応する前記情報を設定して送信する処理の少なくとも何れかを実行することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマルチホップ中継システム。
【請求項5】
前記送信ノードは、前記同期リセット指示を受付けた場合に、前記同期回復処理の種類および前記同期回復処理の実行開始時刻の少なくともいずれかを指定する情報を前記同期パケットに設定して送信し、
前記中継ノードは、前記情報に基づいて前記同期回復処理を実行することを特徴とする請求項4に記載のマルチホップ中継システム。
【請求項6】
前記中継ノードは、前記第1の間欠受信において連続して複数回、前記同期パケットの受信ができなかったときに前記第2の間欠受信を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のマルチホップ中継システム。
【請求項7】
フラッディング方式を用いて送信する、送信ノードと中継ノードとを含む通信システムが実行する通信方法であって、
前記送信ノードが、第1の周期で複数の前記中継ノードを同期させるための同期パケットを生成して送信することと、
前記中継ノードが、
前記同期パケットを、第1の周期ごとに第1の期間において待ち受ける第1の間欠受信を行うことと、
前記第1の周期より長い第2の周期ごとに、前記第1の周期の長さ以上の第2の期間において同期パケットを待ち受ける第2の間欠受信を行うことと、
前記第1の間欠受信において同期パケットの受信ができなかったときに前記第2の間欠受信を行い、前記第2の間欠受信において前記同期パケットを受信した場合に、受信した前記同期パケットが所定の条件を満たすか否かを判定することと、
前記所定の条件を満たすと判定された場合に、前記第2の間欠受信を停止し、前記第1の間欠受信を行うことと、
前記所定の条件を満たさないと判定された場合に、同期回復処理を実行することと、
を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項8】
フラッディング方式を用いて通信する通信装置であって、
同期パケットを受信する受信部と、受信した同期パケットに基づき同期を行う制御部とを含み、
前記制御部は、
前記受信部を用いて、所定の周期で送信される同期パケットを、前記所定の周期に対応する第1の周期ごとに第1の期間において待ち受ける第1の間欠受信と、
前記受信部を用いて、前記第1の周期より長い第2の周期ごとに、前記所定の周期の長さ以上の第2の期間において同期パケットを待ち受ける第2の間欠受信と、
を行うように構成され、
前記制御部は、
前記第1の間欠受信において同期パケットの受信ができなかったときに前記第2の間欠受信を行い、前記第2の間欠受信において前記同期パケットを受信した場合に、受信した前記同期パケットが所定の条件を満たすか否かを判定し、
前記所定の条件を満たすと判定された場合に、前記第2の間欠受信を停止し、前記第1の間欠受信を行い、
前記所定の条件を満たさないと判定された場合に、同期回復処理を実行する、
ことを特徴とする通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッディング方式で通信を行うマルチホップ中継システム、通信方法、及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
センサノードを複数配置して、データ収集を行う場合、センサノードの消費電力を抑え、データ収集の確率を高めるため、同時送信を利用したフラッディングというブロードキャスト方式が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
同時送信を利用したフラッディング方式では、1つのセンサノードがデータ送信を行った際、そのデータを受信した1つ以上の中継ノードが、データ受信後直ちに、もしくは固定遅延で同じデータをブロードキャスト的に送信することで、無線信号の同時送信(複数の中継ノードが同時または準同時で同じ無線信号を送出すること)を起こし、これを複数回繰り返すことで、無線通信システム全体にデータを伝達することが可能である。同時送信を利用したフラッディング方式では、同時または準同時に同じデータが送信されるために、中継ノードが複数のノードから同時または準同時に信号を受信しても復号ができる。またルーティングも不要であり、実装も簡単化でき、消費電力を低減できる利点がある。
【0004】
同様な方式には、各無線通信ノードにタイムスロットを割当て、タイムスロット内にフラッディング方式を用いて自ノードのデータを送信し、受信した中継ノードは割り当てられたタイムスロットでデータを中継する。これを繰り返すことで送信ノードから送信されたデータを中継し、最終的にデータ収集ノードに到達させる方式がある。(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】F. Ferrari et al., "Efficient Network Flooding and Time Synchronization with Glossy", IPSN'11, 2011
【文献】Chao GAO et al., "Efficient Collection Using Constructive-Interference Flooding in Wireless Sensor Networks", 電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集,2011年_通信(2),428,2011-08-30
【文献】鈴木 誠、長山 智則、大原 壮太郎、森川 博之、"同時送信型フラッディングを利用した構造モニタリング"、電子情報通信学会論文誌B、No.12、pp.952-960、2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タイムスロットを用いて通信を行う無線通信システムにおいては、複数の中継ノードが同時送信を行う必要があるため、システム内のノード間の同期が必要である。ノード間の同期をとるために、無線通信システム内の1台の送信ノードは、同期パケットを定期的に送出し、当該同期パケットを受信した中継ノードがフラッディング方式の通信によって同期パケットを転送することによって、無線通信システム内の全ノードに同期パケットを伝送する。
【0007】
同期パケットを受信した各ノードは、同期パケットに含まれる時刻情報や同期パケットの転送回数から各ノードと送信ノードとの時刻のずれを計算して時刻同期を行う。また、通信環境の悪化に起因して長期間同期パケットを受信できなかった場合や、電源の電圧・温度変化などによるクロックずれなどに由来して、中継ノードの時刻同期が外れることがある。時刻同期が外れた場合は、仮に通信環境が良好になったとしても、同期パケットの受信に失敗することとなる。このような場合には、無線通信システムは、システム内の各ノードを再度同期させるための同期回復処理を試みる必要がある。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みて成されたものであり、フラッディング方式を用いる通信を行う無線通信システムを同期させるのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係るマルチホップ中継システムは、フラッディング方式を用いて通信する、送信ノードと中継ノードとを含むマルチホップ中継システムであって、前記送信ノードは、所定の周期で複数の前記中継ノードを同期させるための同期パケットを生成して送信するように構成され、前記中継ノードは、前記同期パケットを、前記所定の周期に対応する第1の周期ごとに第1の期間において待ち受ける第1の間欠受信と、前記第1の周期より長い第2の周期ごとに、前記所定の周期の長さ以上の第2の期間において前記同期パケットを待ち受ける第2の間欠受信と、を行うように構成され、前記中継ノードは、前記第1の間欠受信において同期パケットの受信ができなかったときに前記第2の間欠受信を行い、前記第2の間欠受信において前記同期パケットを受信した場合に、受信した前記同期パケットが所定の条件を満たすか否かの判定を行い、前記所定の条件を満たすと判定された場合に、前記第2の間欠受信を停止し、前記第1の間欠受信を行い、前記所定の条件を満たさないと判定された場合に、同期回復処理を実行する。
【0010】
また、上記目的を達成するために本発明の一態様に係る通信方法は、フラッディング方式を用いて送信する、送信ノードと中継ノードとを含む通信システムが実行する通信方法であって、前記送信ノードが、第1の周期で複数の前記中継ノードを同期させるための同期パケットを生成して送信することと、前記中継ノードが、前記同期パケットを、第1の周期ごとに第1の期間において待ち受ける第1の間欠受信を行うことと、前記第1の周期より長い第2の周期ごとに、前記第1の周期の長さ以上の第2の期間において同期パケットを待ち受ける第2の間欠受信を行うことと、前記第1の間欠受信において同期パケットの受信ができなかったときに前記第2の間欠受信を行い、前記第2の間欠受信において前記同期パケットを受信した場合に、受信した前記同期パケットが所定の条件を満たすか否かを判定することと、前記所定の条件を満たすと判定された場合に、前記第2の間欠受信を停止し、前記第1の間欠受信を行うことと、前記所定の条件を満たさないと判定された場合に、同期回復処理を実行することと、を含む。
【0011】
また、上記目的を達成するために本発明の一態様に係る通信装置は、フラッディング方式を用いて通信する通信装置であって、同期パケットを受信する受信部と、受信した同期パケットに基づき同期を行う制御部とを含み、前記制御部は、前記受信部を用いて、所定の周期で送信される同期パケットを、前記所定の周期に対応する第1の周期ごとに第1の期間において待ち受ける第1の間欠受信と、前記受信部を用いて、前記第1の周期より長い第2の周期ごとに、前記所定の周期の長さ以上の第2の期間において同期パケットを待ち受ける第2の間欠受信と、を行うように構成され、前記制御部は、前記第1の間欠受信において同期パケットの受信ができなかったときに前記第2の間欠受信を行い、前記第2の間欠受信において前記同期パケットを受信した場合に、受信した前記同期パケットが所定の条件を満たすか否かを判定し、前記所定の条件を満たすと判定された場合に、前記第2の間欠受信を停止し、前記第1の間欠受信を行い、前記所定の条件を満たさないと判定された場合に、同期回復処理を実行する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フラッディング方式を用いる通信を行う無線通信システムを同期させるのに有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図。
【
図2】一実施形態に係る送信ノードの機能ブロック図。
【
図3】一実施形態に係る中継ノードの機能ブロック図。
【
図4】一実施形態に係るフラッディング方式を用いる通信のサブスロットを示すタイミング図。
【
図5】一実施形態に係るフラッディング方式を用いる通信のフラッディングスロットを示すシーケンス図。
【
図6】一実施形態に係るフラッディング方式を用いた通信で送受信されるパケットの構造の一例を示す図。
【
図7】一実施形態に係る無線通信システムで送受信される同期パケットを示すタイミング図。
【
図8】一実施形態に係る中継ノードが実行する処理の一例を示すフローチャート図。
【
図9】一実施形態に係る送信ノードが実行する処理の一例を示すフローチャート図。
【
図10】一実施形態に係る同期パケットの待ち受け期間を示すタイミング図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る無線通信システム100(マルチホップ中継システム)を示すブロック図である。
【0016】
無線通信システム100は、送信ノード110、中継ノード120a~120eを含む。
【0017】
本実施形態に係る無線通信システム100は、センサデータなどを含むパケットを送信するためのフラッディングスロットを各無線通信ノードに割り当てる。また、各無線通信ノードは、自己に割当てられたフラッディングスロット内でセンサデータなどを含むパケットの送信を行い、そのパケットを受信した他のノードが直ちに同じパケットをフラッディング方式を用いてブロードキャスト送信するという動作を繰り返す。通信システムを同期させるために送信ノード110は、同期のためのフラッディングスロットにおいて、フラッディング方式を用いて各ノードを同期させるための同期パケットを送信する。中継ノード120a~120e(中継ノード120と称する)は、送信ノード110または他の中継ノード120から受信した同期パケットを転送することで、システム全体に同期パケットをフラッディングさせる。フラッディングスロットとは、1つの無線通信ノードから別の少なくとも1つの宛先となる無線通信ノードへ、パケットを送信するために、フラッディング方式を用いるブロードキャスト送信を繰り返す1つのサイクルを指す。なお、フラッディングスロット内において、各ノードが送信または受信を行うためのタイムスロットはサブスロットと呼ぶ。なお、サブスロット長は送信ノードによって送信されるパケット長などに依存し、フラッディングスロットごとに異なってもよい。
【0018】
なお、
図1では、1台の送信ノード110、及び複数の中継ノード120a~120eを含む無線通信システム100を例に説明を行うが、無線通信システム100は複数の送信ノード110を含んでもよい。
【0019】
また、送信ノード110及び複数の中継ノード120a~120eは、時刻同期のためのフラッディングスロット以外のフラッディングスロットでは、異なる役割を果たしてもよい。例えば、送信ノード110は、後述するセンサデータの送信のためのフラッディングスロットにおいては、他のノードが送信したセンサデータを含むパケットを中継する中継ノードとして動作してもよいし、他のノードからセンサノードを収集するシンクノードとして動作してもよい。すなわち、
図1の送信ノード110及び複数の中継ノード120a~120eは、時刻同期のためのフラッディングスロットにおける役割に基づいて設定される例を示すものであり、別の例えばデータ送信を行うためのフラッディングスロットにおいては別の役割を果たしてもよい。なお、本実施形態において、送信ノード110、中継ノード120、およびシンクノードを含む、無線通信システム内のノードを無線通信ノードと称する。
【0020】
図2は、上記送信ノード110の構成を示すブロック図である。この送信ノード110は、無線通信部201と、通信制御部202と、同期パケット生成部203と、リセット指示受付部204とを備える。
【0021】
無線通信部201は、無線信号の送受信部として動作するモジュールであり、他の中継ノード120との間で無線通信部201が備えるアンテナまたは外部のアンテナ(不図示)を介して無線によりデータの送受信を行う。通信制御部202は、無線通信部201の通信状態を管理し、決められたシーケンスに従って送信・転送処理を実行させる。なお、通信制御部202は、他の無線通信ノードからのパケットを受信すると共に、他の無線通信ノードからのデータを解析して、受信したパケットをフラッディング方式に従いブロードキャスト送信する中継処理を行ってもよい。
【0022】
同期パケット生成部203は、所定の時間周期で同期パケットを生成し、通信制御部202に送信する。一例では、同期パケット生成部203は、高精度なクロックを生成するために、水晶発振器などのクロックユニットを備える。リセット指示受付部204は、ユーザからのリセット指示を受け付けると、後述する同期パケット生成部203の再設定を行う。一例では、リセット指示受付部204は、トグルスイッチやタクトスイッチなどのユーザ入力インタフェース(I/F)を備えてもよい。また、別の例では、リセット指示受付部204は、有線通信I/Fまたは無線通信I/Fを備え、通信を介してユーザからリセット指示を受付けてもよい。
【0023】
なお、送信ノード110はプロセッサを備え、当該プロセッサがストレージに格納されたプログラムをメモリに展開して実行することで無線通信部201、通信制御部202、同期パケット生成部203、およびリセット指示受付部204の少なくともいずれかの機能を実現してもよい。
【0024】
図3は、上記中継ノード120の構成を示すブロック図である。この中継ノード120は、無線通信部301、通信制御部302、時刻同期部303、同期回復部304、およびデータ生成部305を備える。
【0025】
中継ノード120の無線通信部301及び通信制御部302は、それぞれ送信ノード110の無線通信部201及び通信制御部202と同様の機能を有するため、説明を省略する。時刻同期部303は、無線通信部301を介して受信した同期パケットに基づいて、中継ノード120のクロック補正を行う。同期回復部304は、時刻同期部303で時刻同期が失敗し、かつ中継ノード120の再起動処理、中継ノード120が実行するアプリケーションの再起動処理、などを含む同期回復処理が必要であると判定した場合に、所定の同期回復処理を実行する。データ生成部305は、シンクノードが収集する対象のデータを生成する。中継ノード120がセンサから取得したデータを送信するセンサノードである場合には、データ生成部305はセンサであってもよいし、中継ノード120の外部のセンサに接続されるインタフェースであってもよい。なお、中継ノード120は随意に送信ノード110と同様の構成を備えてもよい。すなわち、中継ノード120は、追加で同期パケット生成部203およびリセット指示受付部204に対応する構成を備えてもよい。本実施形態において、無線通信ノードが実行する再起動処理とは、電源を一度切って再度電源を投入することで起動プログラムを実行することであってもよいし、所定のプログラムの終了と起動を実行することであってもよい。
【0026】
なお、中継ノード120はプロセッサを備え、当該プロセッサがストレージに格納されたプログラムをメモリに展開して実行することで無線通信部301、通信制御部302、時刻同期部303、同期回復部304、およびデータ生成部305の少なくともいずれかの機能を実現してもよい。
【0027】
ここで、
図6を参照して、送信ノード110が送信する同期パケットフォーマットの一例を説明する。
【0028】
送信元601は、送信ノード110の識別子を示す情報である。宛先602は、パケットの宛先を示す情報であり、時刻同期パケットでは宛先602はブロードキャスト又はエニーキャストを示す識別子に設定される。時刻603は、送信ノード110の同期パケット生成部203が同期パケットを生成した時刻、または送信ノード110の無線通信部201が同期パケットを送信する時刻に対応する時刻情報である。タイミング情報604は、同期パケットが送信されるサブスロットに対応する情報であり、同期パケットがフラッディング方式で転送される度に変更される。一例では、同期パケットを受信した中継ノード120は、次のサブスロットにおいてタイミング情報604を更新してパケットを再構成して送信することで同期パケットの転送処理を行う。
【0029】
シーケンス番号605は、送信ノードにより同期パケットが送信されるときに付与される、同期パケットを識別する識別子である。中継ノード120において複数の同期パケットが連続して受信されているか否か、及び当該複数の同期パケットの間に、受信されるべき同期パケットがあるか否かを判定することを可能にする。
【0030】
例えば、同期パケットにシーケンス番号605が含まれる場合、送信ノード110は、同期パケットを送信するたびにシーケンス番号605を1ずつ増加させるよう構成されうる。この場合、中継ノード120は、前回受信した同期パケットに含まれるシーケンス番号605と、新たに受信した同期パケットに含まれるシーケンス番号605とを比較し、番号が1増加している場合にシーケンス番号605の連続性が保たれていると判断することができる。あるいは、同期パケットが送信間隔t0で周期的に送信される場合、時刻t1において受信した同期パケットに含まれるシーケンス番号と、時刻t0以降の時刻t2において受信した同期パケットに含まれるシーケンス番号とを比較し、(t2-t1)/t0がシーケンス番号の差分となる場合に、シーケンス番号605の連続性が保たれていると判断することができる。
【0031】
また、例えば、同期パケットに送信ノード110の起動時刻に対応する情報(不図示)が含まれる場合、すなわち送信ノード110が、送信ノード110の起動時刻を含む同期パケットを送信する。この場合、中継ノード120は、これまでに受信した同期パケットに含まれる送信ノード110の起動時刻を記憶し、新たに受信した同期パケットに含まれる送信ノード110の起動時刻と比較し、起動時刻に変更がなければ起動時刻に対応する情報の連続性が保たれていると判断してもよい。
【0032】
フラッディングスロット設定606は、同期パケットを受信した中継ノード120がフラッディングスロットまたはサブスロットのパラメータを取得することを可能にするためのパラメータである。フラッディングスロット設定606は、フラッディングスロットの時間的な長さ、サブスロットの時間的な長さ、同期パケットの送信周期、フラッディングスロット内での最大送信回数、同期回復処理を実行するまでに許容される同期パケットのパケットロス数を含む。
【0033】
次に、
図4を参照して、
図1の構成の無線通信システムが行うフラッディング方式による通信の一例を説明する。
【0034】
図4は、
図1に示す無線システムにおいて、各無線通信ノードのサブスロットの使用例を示している。
図4に示すフラッディング方式では、無線通信ノードが1つのフラッディングスロット内で送信を行うことができる回数を規定する、最大送信回数は2回であるものとして説明を行う。
【0035】
まず、最初のサブスロット401において、送信ノード110は、同期パケットを送信する。送信ノード110からの同期パケットは、中継ノード120aおよび120bが受信するものとする。
【0036】
例えば、サブスロット401において、送信ノード110は、タイミング情報604が「1」を示す情報を設定して同期パケットを送信する。送信ノード110から送信された同期パケットは、中継ノード120aおよび120bに受信される。
【0037】
サブスロット401の次のサブスロット402において、中継ノード120aおよび120bは、受信した同期パケットを転送する。1つのサブスロット内で、複数の無線通信ノードが送信した同期パケットは、データが同一であり、かつ送信時刻が同期されているため、衝突しても問題なく復号される。このため、中継ノード120cは、中継ノード120aおよび120bから同時送信された2つの同期パケットを1つの同期パケットとして受信する。ここで、中継ノード120aおよび120bは、タイミング情報604を「2」に増やして同期パケットの送信を行う。中継ノード120aおよび120bからの同期パケットは、送信ノード110ならびに中継ノード120cおよび120dが受信するものとする。
【0038】
続いて、サブスロット402の次のサブスロット403において、中継ノード120aおよび120bからの同期パケットを受信した送信ノード110ならびに中継ノード120cおよび120dは、タイミング情報604を「3」に設定して受信した同期パケットを転送する。送信ノード110ならびに中継ノード120cおよび120dからの同期パケットは、中継ノード120a、120b、及び120eが受信するものとする。送信ノード110は、最大送信回数である2回送信を行ったため、以降のサブスロットでは受信も送信も行わない。
【0039】
続いて、サブスロット403の次のサブスロット404において、送信ノード110ならびに中継ノード120cおよび120dからの同期パケットを受信した中継ノード120a、120b、及び120eは、タイミング情報604を「4」に設定して受信した同期パケットを転送する。中継ノード120eからの同期パケットは、中継ノード120c及び120dが受信する。中継ノード120a、120bは、2回送信を行ったため、以降のスロットでは受信も送信も行わない。
【0040】
続いて、サブスロット404の次のサブスロット405において、中継ノード120a、120b、及び120eからの同期パケットを受信した中継ノード120cおよび120dは、タイミング情報604を「5」に設定して受信した同期パケットを転送する。中継ノード120cおよび120dは、2回送信を行ったため、以降のサブスロットでは受信も送信も行わない。中継ノード120cおよび120dからの同期パケットは、中継ノード120eが受信する。
【0041】
続いて、サブスロット405の次のサブスロット406において、中継ノード120cおよび120dからの同期パケットを受信した中継ノード120eは、タイミング情報604を「6」に設定して受信した同期パケットを転送する。
【0042】
なお、本実施形態では、送信ノード110および中継ノード120がサブスロットごとに送信と受信とを繰り返すよう構成される場合について説明した。一例では、本発明は、送信ノード110および中継ノード120が、フラッディングスロット内で送信すべき同期パケットを受信すると、同期パケットを受信したサブスロット以降の所定の数のサブスロットで同期パケットの送信のみを行う態様にも適用可能である。例えば、当該所定の数が3である場合、
図4の例では、送信ノード110はサブスロット401~403において、中継ノード120a、120bはサブスロット402~404において、中継ノード120c、120dはサブスロット403~405において、そして中継ノード120eはサブスロット404~406において同期パケットの送信を繰り返してもよい。
【0043】
なお、この例では、サブスロット401では中継ノード120c~120eは同期パケットを検出しなくても同期パケットを待受けている。また、サブスロット402でも、中継ノード120eは同期パケットを待受けている。すなわち、フラッディングスロットが始まってから、中継ノード120a~120eは同期パケットを受信するために待受け処理を実行している。
【0044】
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る無線通信システムが実行する処理の一例を説明する。
【0045】
図5は、送信ノード110が無線通信システム内の時刻同期を実行させ、いずれかの中継ノード120からデータを収集するまでの処理のシーケンス図を示す。なお、
図5においては、送信ノード110が中継ノード120からデータを収集するシンクノードであるものとして説明を行うが、無線通信システム100は送信ノード110とは別にシンクノードを備えてもよい。
【0046】
各フラッディングスロットは、フラッディングによるデータ転送の期間を表す。1つのフラッディングスロットは、送信ノード110及び中継ノード120を含む通信ノードのうちの1台から、他の通信ノードのうちの少なくとも1台のノードを宛先とした送信(ダウンリンク)、または他の通信ノードのうちの少なくとも1台の無線通信ノードから送信ノード110への送信(アップリンク)に割当てられる期間を表す。
【0047】
なお、アップリンクおよびダウンリンクの両方において、
図4で説明したようなフラッディング方式の通信が用いられる。
【0048】
まず、フラッディングスロット501は、送信ノード110が同期パケットを送信し、フラッディング方式に従いネットワーク内の各通信ノードに時刻同期に必要な情報を無線通信システム内の通信ノードに通知するためのフラッディングスロットである。
【0049】
続いて、フラッディングスロット502において、送信ノード110に送信すべきデータを有している中継ノード120は、送信ノード110を宛先に、送信すべきデータの送信を希望する送信要求パケットを送信する。
【0050】
一例では、フラッディングスロット502では、送信すべきデータを有している1つ以上の中継ノード120が、疑似ランダム関数を用いて生成したランダム時間だけ待機し、送信要求パケット(送信要求信号)を送信する、ランダムバックオフベースのフラッディング方式の通信を行う。この場合、送信すべきデータを有している中継ノード120であって、送信要求パケットを送信する前に他の中継ノード120から送信要求パケットを受信した中継ノード120は、当該他の中継ノード120からの送信要求パケットを中継し、自身の送信要求パケットは送信しない。これによって、疑似ランダム関数を用いて生成したランダム時間が短い中継ノード120が送信要求パケットを送信することができる。このように、フラッディングスロット502において、送信ノード110はデータの送信を許可するノードを把握することができる。
【0051】
続いて、フラッディングスロット503において、送信ノード110は、次のフラッディングスロット504におけるデータ送信を許可する中継ノード120を宛先602に設定し、送信許可パケットを送信する。
【0052】
続いて、フラッディングスロット504において、送信許可パケットで指定された中継ノード120は、当該スロットで送信を開始する。すなわち、送信元601をその中継ノード120の識別子に設定し、宛先602を送信ノード110に設定し、センサデータを送信する。
【0053】
続いて、フラッディングスロット504においてセンサデータを正常に受信したと判断した送信ノード110は、フラッディングスロット505において他の中継ノード120にも、送信許可を送信する。一例では、フラッディングスロット506以降は、送信ノード110によって送信を許可された中継ノード120の数に対応するフラッディングスロット数だけセンサデータのアップリンク送信が行われる。その後、フラッディングスロットNにおいて、送信ノード110は全ての中継ノード120からのデータ収集が完了したと判定すると、スリープを指示するスリープパケット(スリープ信号)を送信する。スリープパケットを受信した無線通信システム内の無線通信ノードは、フラッディングスロットNの終了後、所定の時刻までスリープ状態に遷移する。所定の時刻とは、1000ミリ秒などの無線通信ノードで共通で事前に設定された時刻であってもよいし、スリープパケットに含まれる情報に基づいて特定されてもよい。
【0054】
<時刻同期>
続いて、
図7を参照して、無線通信システム100において送受信される同期パケットによる同期処理について説明する。
【0055】
送信ノード110は、時刻同期のためのフラッディングスロットにおいて、同期パケット701~708を所定の周期TI0で送信する。中継ノード120は、所定の周期TI1の期間TP1において同期パケットを待受ける。なお、隣接する同期パケットの間には、
図5の送信要求、送信許可、データ送信、およびスリープ指示の少なくとも何れかのフラッディングスロットが設けられてもよいが、
図7では省略する。また、
図7においては、中継ノード120は送信ノード110から同期パケットを受信するものとして図示されるが、他の中継ノード120から同期パケットを受信してもよい。
【0056】
まず送信ノード110が送信した同期パケット(SYN)701は、中継ノード120が同期パケットを待受ける待受け期間TP1において中継ノード120に受信される。中継ノード120は、受信した同期パケット701を用いて時刻同期を行う。一例では、中継ノード120は、受信した同期パケット701に基づいて、次に同期パケットを待受けるまで期間TI1だけ待機する。本実施形態では、周期TI1(第1の周期)で待受け期間TP1(第1の期間)に同期パケットを待受ける処理を第1の待受け処理(第1の間欠受信)と称する。
【0057】
この例では続いて、中継ノード120は、次のタイミングで送信ノード110が送信した同期パケット702の受信に失敗したと判定する。中継ノード120が同期パケットの受信に失敗する要因としては、自ノードの時刻とシステム全体の時刻とがずれてしまうことや、通信環境が悪化し、受信パケットの検出ができないことが挙げられる。同期パケット702に対応する待受け期間TP1において同期パケットの受信に失敗したと判定した中継ノード120は、次の同期パケット703の送信タイミングに対応して同期パケットの送信周期TI0より長い待受け期間TP2を設定する。同期パケットの送信周期より長い期間同期パケットを待受けることで、自ノードの時刻とシステム全体の時刻とがずれてしまった場合であっても、待受け期間TP2は1つ以上の同期パケットが送信されるタイミングを必ず含む。これによって、自ノードの時刻とシステム全体の時刻とがずれてしまった場合であっても同期パケットを受信することができる。なお、本実施形態において、中継ノード120は、同期パケットを1つの第1の期間TP1で受信しなかった場合に同期パケットの送信周期より長い期間同期パケットを待ち受けるものとして説明を行う。しかしながら一例では、同期パケットを連続して複数回受信しなかった場合に同期パケットの送信周期より長い期間同期パケットを待ち受けてもよい。
【0058】
図7では、中継ノード120は、送信ノード110が送信した同期パケット703及び704の受信にも失敗する。このような状況は、例えば通信環境の悪化によって同期パケットの受信に失敗した場合に起こりうる。このため、中継ノード120は、次に同期パケットを待受けるまで期間TI2だけ待機する。本実施形態では、周期TI2(第2の周期)で待受け期間TP2(第2の期間)に同期パケットを待受ける処理を第2の待受け処理(第2の間欠受信)と称する。
【0059】
続いて、送信ノード110が送信した同期パケット705及び706が、中継ノード120の待受け期間TP2に受信されたものとする。この場合、中継ノード120は、受信した同期パケットが所定の条件を満たすか否かを判定し、所定の条件を満たすと判定した場合には、第2の待受け処理を終了して第1の待受け処理を実行する。これによって、通信環境が悪化したために同期パケットの受信に失敗した場合であっても、中継ノード120の移動などによって通信環境が改善されるまで待機し、所定の条件を満たす同期パケットを受信し次第、第1の待受け処理に復帰することができる。
【0060】
なお、所定の条件とは、一例では、受信した同期パケットが、第2の期間TP2のうちの第3の期間TP3に受信されたことを含む。第3の期間TP3とは、第2の期間TP2のうちで、中継ノード120が送信ノード110との同期がとれていて、通信環境に問題がない場合に、中継ノード120が同期パケットを受信すべき期間である。この例では、中継ノード120は、第3の期間TP3を第1の周期TI1に基づいて推定してもよい。例えば、第3の期間TP3は、直前の第1の期間TP1から第1の周期TI1の整数倍だけ遅れた期間であって、第2の期間TP2に含まれる期間であるものとして推定される。第3の期間TP3の長さは、第1の期間TP1の長さと同じであってもよい。
【0061】
次に、
図8を参照して、本実施形態に係る中継ノード120が実行する処理の一例を説明する。
図8の処理は、中継ノード120の起動時に、通信制御部302によって実行される。
【0062】
まず、
図8(A)のS801で、中継ノード120は、第1の期間TP1において同期パケットを待受ける。続いて、S802で、中継ノード120は、第1の期間TP1において同期パケットの受信に成功したか否かを判定する。中継ノード120が同期パケットの受信に成功したと判定した場合(S802でYes)には処理をS803に進め、失敗したと判定した場合(S802でNo)には処理をS805に進める。なお、S802の処理において、中継ノード120は、1つの同期パケットの受信に失敗したと判定した場合に処理をS805に進めてもよいし、複数回連続して同期パケットの受信に失敗した場合に処理をS805に進めてもよい。あるいは、直近の複数回の第1の期間TP1における同期パケットの受信成功率が閾値より大きい場合には同期パケットの受信に成功したと判定し、当該閾値以下の場合には同期パケットの受信に失敗したと判定してもよい。
【0063】
S803において、中継ノード120は第1の期間TP1において受信した同期パケットに基づいて同期処理を行う。一例では、S803において、中継ノード120は、以降同期パケットを受信されるべき第3の期間、または受信されるべき同期パケットのシーケンス番号605を推定する。続いて、S804で中継ノード120は第1の周期TI1に対応する時間待機し、処理をS801に戻す。本実施形態では、第1の周期TI1の長さは、同期パケットが送信される時間間隔TI0に対応する、すなわちTI0=TI1であるものとして説明を行うが、中継ノード120が、送信ノード110が送信する同期パケットを1つおきに受信するよう設定される場合には、TI1=TI0×2であってもよい。
【0064】
図8(B)は、
図8(A)のS805の第2の待受け処理の詳細を示す。まず
図8(B)のS811で、中継ノード120は、第2の期間TP2において同期パケットを待受ける。第2の期間TP2の長さは、同期パケットの送信間隔TI0の長さより長いものとする。続いて、S812で、中継ノード120は、第2の期間TP2において同期パケットを受信したか否かを判定する。中継ノード120が第2の期間TP2において同期パケットを受信したと判定した場合(S512でYes)には中継ノード120は処理をS814に進め、受信しなかったと判定した場合(S512でNo)には処理をS813に進める。
【0065】
S813では、第1の周期TI1より長い第2の周期TI2に対応する時間待機して、処理をS811に戻す。
【0066】
S814では、第2の期間TP2において受信した同期パケットが所定の条件を満たすか否かを判定する。所定の条件は、中継ノード120が推定したタイミングで同期パケットが受信されたこと、および中継ノード120が推定したシーケンス番号605の同期パケットが受信されたことの少なくとも何れかを含む。所定の条件は、上述したように、同期パケットの受信タイミングが、S803の同期処理に基づいて判定された所定の期間(第3の期間TP3)に収まることを含んでもよい。
【0067】
また、この判定は、S803の同期処理に基づいて判定されたシーケンス番号605と受信した同期パケットのシーケンス番号605とを比較することを含んでもよい。例えば、シーケンス番号605が同期パケットを送信する度に1ずつ増加される状況において、中継ノード120が第1の待受け処理において最後に受信した同期パケットのシーケンス番号605がNであるとする。そして、最後に第1の待受け処理において同期パケットを受信してから、第2の待受け処理において同期パケットを受信するまでの時間がTであるとすると、N+T/TI0(小数点以下切り捨て)が受信すべきシーケンス番号であると推定することができる。
【0068】
S814で同期パケットが所定の条件を満たすと判定した場合(S814でYes)には、中継ノード120は処理をS803に進める。所定の条件を満たさないと判定した場合(S814でNo)には、中継ノード120は処理をS815に進め、同期回復処理を実行して
図8の処理を終了する。一例では、同期回復処理は、第1の期間TP1および第1の周期TI1の少なくとも何れかを再設定する再設定処理、中継ノード120の再起動処理、中継ノード120が実行するプログラムの再起動処理を含む。
【0069】
なお、本実施形態では、第1の期間TP1、第2の期間TP2では、固定した長さだけ同期パケットを待受けるものとして説明を行った。しかしながら、第1の期間TP1又は第2の期間TP2の間であっても、同期パケットを受信したと判定すると、同期パケットの待受け処理を終了してもよい。すなわち、第1の期間TP1及び第2の期間TP2は、同期パケットを待受ける最長の期間であり、中継ノード120は、同期パケットを受信したら同期パケットの待受けを終了してもよい。
【0070】
また、フラッディングスロットの長さ、同期パケットのパケット長、および最大転送回数の少なくとも何れかによって、第1の期間TP1、第1の周期TI1、第2の期間TP2、および第2の周期TI2の長さは異なりうる。一例では、同期パケットの長さは2ミリ秒であり、第1の周期TI1の長さは1秒であり、第1の期間TP1は30ミリ秒であり、第2の周期TI2の長さは60秒であり、第2の期間TP2は1秒であってもよい。
【0071】
また、第2の周期TI2の長さは、第1の期間TP1の長さを第1の周期TI1の長さで割った値より、第2の期間TP2の長さを第2の周期TI2の長さで割った値の方が小さくなるように設定されてもよい。これによって、第2の待受け処理の実行に必要な電力を、第1の待受け処理に必要な電力より抑えることができ、省電力性を維持したまま同期パケットを待受けることができる。また、第2の待受け処理においては、第2の期間TP2以外の時間はスリープ状態に移行してもよい。これによって、第2の期間TP2における同期パケット以外のパケットを待ち受けることを防ぐことができ、同期パケットの受信に失敗した場合における消費電力の増大を抑えることができる。
【0072】
このように、本実施形態に係る中継ノードを含む無線通信システムによれば、同期パケットの受信に失敗した場合に、同期パケットの送信間隔より長い期間同期パケットを待受ける。これによって、同期パケットの待受けタイミングが同期パケットの送信タイミングとずれてしまった場合でも、同期パケットを受信することができ、同期されたネットワークを提供することができる。
【0073】
また、本実施形態に係る中継ノードを含む無線通信システムによれば、同期パケットの送信間隔より長い期間同期パケットを待受け、受信した同期パケットが所定の条件を満たす場合には受信した同期パケットを用いて同期処理を実行する。これによって、通信環境の悪化に由来して同期パケットの受信に失敗した場合であっても、通信環境が改善した場合には、受信した同期パケットで同期処理を実行するため、同期されたネットワークを提供しながら、中継ノードが不要に同期回復処理を実行することを防ぐことができる。
【0074】
<同期リセット指示>
次に、
図9を参照して、無線通信システムで送信ノード110が実行するネットワークリセットの処理の一例を説明する。
図9の処理は、例えば送信ノード110の起動時に開始される。
【0075】
まず、S901において、送信ノード110は同期パケットを生成して送信する。続いて、送信ノード110は処理をS902に進め、ユーザからのリセット指示を受信したか否かを判定する。ユーザからのリセット指示を受信したと判定した場合(S902でYes)は、処理をS904に進め、ユーザからのリセット指示を受信しなかったと判定した場合(S902でNo)は、処理をS903に進める。S903では、
図7の同期パケットの送信周期TI0に対応する時間待機し、処理をS901に戻す。
【0076】
S904では、送信ノード110は、同期パケットに含まれる、送信タイミング、シーケンス番号605、および送信ノード110の起動時刻に対応する情報の少なくとも何れかのパラメータを、パラメータの連続性を損なうように設定して同期パケットを送信する。なお、同期パケットのシーケンス番号605および送信ノード110の起動時刻に対応する情報の少なくともいずれかは含まれなくてもよい。
【0077】
例えば、送信ノード110は、同期パケットを送信する度に、シーケンス番号605を1ずつ増加させる場合、ユーザのリセット指示に応じて、シーケンス番号605を0にするなどの初期化を行う、または、シーケンス番号605を増加させずに次の同期パケットを送信してもよい。すなわち、送信ノード110は、上述したシーケンス番号605の連続性を損なうように次の同期パケットのシーケンス番号を設定する。この場合、中継ノード120は、前回受信した同期パケットのシーケンス番号と、新たに受信した同期パケットのシーケンス番号とを比較することで、同期パケットの連続性が損なわれていることを検出し、同期回復処理を実行することができる。
【0078】
また、同期パケットに送信ノード110の起動時刻に対応する情報を含める場合、送信ノード110は、ユーザのリセット指示に応じて、同期パケットに含まれる起動時刻に対応する情報が変化して連続性が損なわれるように、送信ノード110が再起動処理を実行してもよい。
【0079】
また、送信ノード110は、中継ノード120が少なくとも1回同期パケットの受信に失敗するように、送信タイミングのオフセットを変更して同期パケットの送信タイミングを変更してもよい。あるいは、送信ノード110は、同期パケットの送信周期を変更してもよい。これによって、同期パケットの受信に失敗した中継ノード120に同期回復処理を実行させることができる。
【0080】
このように、本実施形態に係る送信ノード110を含む無線通信システムによれば、ユーザからのリセット指示を受信した場合に、送信ノード110は同期パケットのパラメータを変更して送信する。これによって、パラメータを変更して送信された同期パケットを受信した全ての中継ノード120は、同期回復処理を実行することになるため、無線通信システム100全体で同期して同期回復処理を実行させることができる。
【0081】
なお、送信ノード110は、同期パケットに、実行すべき同期回復処理を指定する情報を含めてもよい。この場合、例えば、同期回復処理は、上述した中継ノード120の再起動処理、中継ノード120が実行するプログラムの再起動処理に加え、プログラムの更新処理や、ファームウェアの更新処理を含んでもよい。これによって、送信ノード110は、中継ノード120に更新すべきプログラムまたはファームウェアを配布したあとに当該プログラムまたはファームウェアの適用を指示することができ、ユーザの利便性を向上することができる。
【0082】
また、送信ノード110は、送信する同期パケットに、中継ノード120が実行すべき再起動処理の種類を指定する情報を含めてもよい。これによって、同期パケットを受信した中継ノード120は、上述した同期回復処理の何れを実行すべきかを判定することができ、ユーザの利便性を向上することができる。また、送信ノード110は、送信する同期パケットに、中継ノード120が同期回復処理を実行すべき実行開始時刻を含めてもよい。この場合、実行開始時刻は、ネットワークで共有される時刻603に対応する絶対時刻であってもよいし、同期パケットを受信してから同期回復処理を実行するまでの時間長に対応する相対時刻であってもよい。
【0083】
<変形例>
図8では、S802で同期パケットを受信した場合にはS803に処理を進めるものとして説明を行った。一例では、S802で同期パケットを受信した場合には、同期パケットが所定の条件を満たしているか否かを判定し、所定の条件を満たしていると判定した場合にはS803に処理を進め、所定の条件を満たしていないと判定した場合にS815と同様の同期回復処理を実行してもよい。
【0084】
図7および
図8では、中継ノード120は第1の待受け処理または第2の待受け処理を実行するものとして説明を行った。一例では、第1の待受け処理と第2の待受け処理と並行して実行してもよい。この例について次に説明する。
【0085】
図10に、同期パケットの待受け期間を示す。
図10(A)における期間1001~1004および
図10(B)における期間1101~1110は、長さTP1の
図7の第1の期間に対応する。
図10(A)における期間1011~1013及び
図10(B)における期間1111~1113は、長さTP2の
図7の第2の期間に対応する。
図10(A)における期間1011a、1011b、1012a、1012b、及び1013a並びに
図10(B)における期間1111a、1111b、1112a、1112b、1113a、及び1113bは、長さTP3の第3の期間に対応する。
【0086】
図10(A)において、時刻T1の第1の期間1002において、中継ノード120は同期パケットの受信に失敗したものとする。この場合、中継ノード120は続いて第2の待受け処理を開始し、第2の期間1011でパケットの待受けを行う。そして時刻T2の第2の期間1013において、中継ノード120は所定の条件を満たす同期パケットの受信に成功したため、第2の待受け処理を停止し、第1の待受け処理に移行する。
【0087】
図10(B)において、時刻T1の第1の期間1102において、中継ノード120は同期パケットの受信に失敗したものとする。この場合、中継ノード120は続いて第2の待受け処理を開始し、第2の期間1111でパケットの待受けを行う。それと共に、第1の待受け処理を継続する。このため、第2の期間1111と1112との間に、第1の期間1103~1105において同期パケットの待受け処理を行う。そして時刻T2の第2の期間1113において、中継ノード120は所定の条件を満たす同期パケットの受信に成功したため、第2の待受け処理を停止し、第1の待受け処理のみを実行する。これによって、通信環境に由来して同期パケットの受信が失敗し、同期パケットを待受けるタイミングがずれていない中継ノード120が、通信環境が改善された場合に高速に同期パケットを検出することができる。このように、第2の待受け処理の実行によって、第1の待受け処理は停止されてもよいし、継続されてもよい。
【0088】
本実施形態では、第2の待受け処理を開始する前に実行される第1の待受け処理と、第2の待受け処理を停止した場合に実行される第1の待受け処理は同じであるものとして説明を行った。一例では、第2の待受け処理を停止した場合には、第1の待受け処理のパラメータを変更して実行してもよい。
【0089】
なお、本実施形態で説明した無線通信システムは、マルチチャネルネットワークにも適用することができる。この場合、例えば同期パケットは、フラッディングスロットごとに異なるチャネル(周波数)で送信されてもよい。例えば無線通信システムは周波数ホッピングするように構成してもよい。この場合、無線通信システムの各ノードは、ランダムシードを共有することで、ランダムシードに基づいて生成された疑似乱数に応じて周波数ホッピングを行い、送受信を行うチャネルを特定することができる。また、中継ノードは、フラッディングスロット内で同期パケットの受信に失敗した場合、次の時刻同期に係るフラッディングスロットでは、あらかじめ設定された所定の周波数に固定して同期パケットを待ち受けてもよいし、各ノード間で共有した疑似乱数列とは異なる疑似乱数列に基づく疑似乱数で生成した周波数に固定して同期パケットを待ち受けてもよい。
【0090】
また、同期パケットは、次のフラッディングスロットにおいて同期パケットが送信されるチャネルに関する情報を含んでもよい。このような場合、中継ノードは、同期パケットを受信すると、次に同期パケットを待受けるチャネルを特定してもよい。また、中継ノードは、同期パケットの受信に失敗した場合には次のフラッディングスロットで同期パケットが送信されるチャネルが分からないため、次の時刻同期に係るフラッディングスロットでは、第2の待受け処理において所定の周波数に固定して同期パケットを待受けてもよいし、疑似乱数に基づいて決定したチャネルに固定して同期パケットを待ち受けてもよい。
【0091】
また、本実施形態では、同期回復処理の一例として、中継ノードの再起動(電源再投入)処理を説明したが、中継ノードの再起動処理は、マルチCPUのうちの1つの再起動を含む。同様に、同期回復処理の一例として説明した、中継ノードが実行するソフトウェアの再起動(アプリケーションの再実行)は、中継ノードが実行する複数のソフトウェアのうちの1つの再起動を含む。
【0092】
<その他の実施形態>
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
100:無線通信システム、110:送信ノード、120:中継ノード