(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】エチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレット及び該エチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 29/04 20060101AFI20220203BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20220203BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C08L29/04 B
C08L77/00
C08J3/20 Z CEX
(21)【出願番号】P 2016574203
(86)(22)【出願日】2016-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2016086926
(87)【国際公開番号】W WO2017110561
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2015251832
(32)【優先日】2015-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 誠
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-338771(JP,A)
【文献】特開2002-210887(JP,A)
【文献】特開2012-036341(JP,A)
【文献】特開2001-200123(JP,A)
【文献】特開2015-110734(JP,A)
【文献】特開2010-059418(JP,A)
【文献】国際公開第2015/174396(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L29、77
C08K13/02
B29B7/42、7/48、9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)、ポリアミド系樹脂(B)及びマグネシウム塩を含有するエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットであって、
前記ポリアミド系樹脂(B)は、融点180~270℃のポリアミド系樹脂であり、
前記マグネシウム塩の含有割合は、前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)と前記ポリアミド系樹脂(B)の合計量に対して、金属換算で10~50ppmであり、
前記ペレットを分光色差計にて透過法により測定したイエローインデックス(YI)値が10以下であるエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレット。
【請求項2】
前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)と前記ポリアミド系樹脂(B)の質量比((A)/(B))が、60/40~98/2である、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレット。
【請求項3】
さらに酸化防止剤を
、前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)と前記ポリアミド系樹脂(B)の合計量100質量部に対して、1~200ppm含む、請求項1又は2に記載のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットが溶融成形されたエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物成形体。
【請求項5】
分光色差計にて透過法により測定したときのイエローインデックス(YI)値が10以下であるエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットの製造方法であって、
エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)、ポリアミド系樹脂(B)及びマグネシウム塩を含有する樹脂組成物を溶融混練装置を用いて溶融混練する工程を含み、
前記ポリアミド系樹脂(B)は、融点180~270℃のポリアミド系樹脂であり、
前記マグネシウム塩の含有割合は、前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)と前記ポリアミド系樹脂(B)の合計量に対して、金属換算で10~50ppmであり、
前記溶融混練装置から吐出された直後のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ストランドの温度を268℃以下とするエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色が抑制されたエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレット及び該エチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン-ビニルアルコール系共重合体(以下、「EVOH樹脂」と称することがある。)は、配列しやすい構造であり、高分子側鎖に存在する水酸基同士の水素結合のため、非常に強い分子間力を有することから、結晶性が高く、さらに非晶部分においても分子間力が高いため、酸素等の気体分子はEVOH樹脂を通過しにくく、EVOH樹脂を用いたフィルム等は優れたガスバリア性を示す。
【0003】
EVOH樹脂は、その優れたガスバリア性を利用して、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等のフィルムやシート、或いはボトル等の容器等に成形されて利用されている。
【0004】
EVOH樹脂は上記したように優れたガスバリア性を示すが、水に弱く、水に濡れたり、湿度の高い状況下に置かれるとそのガスバリア性が低下してしまう。よって、レトルト用の包装材料等に用いられる場合には、EVOH樹脂層を中間層に配し、ポリオレフィン樹脂層等で挟んで多層構造にするのが一般的である。そして、EVOH樹脂層においてもEVOH樹脂にナイロン等のポリアミド系樹脂を混合し、水に対する耐久性を高めることが行われている。
【0005】
しかしながら、EVOH樹脂にポリアミド系樹脂を混合することにより熱安定性が低下するため、溶融混練時や溶融成形時に熱劣化物や架橋物が形成されやすくなり、成形物が変色したり、フィッシュアイ(樹脂の微小粒)が発生する場合がある。
【0006】
加熱溶融時の熱安定性を改善する技術として、例えば、特許文献1には、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)、末端調整剤により末端COOH基の数(x)と末端CONRR´基(ただし、Rは炭素数1~22の炭化水素基、R´はHまたは炭素数1~22の炭化水素基)の数(y)の割合を調整した末端調整ポリアミド系樹脂(B)、ヒンダードフェノール系化合物(C)、及び脂肪族カルボン酸アルカリ土類金属塩(D)からなる樹脂組成物が提案されている。特許文献1では、EVOH樹脂とポリアミド系樹脂の混合物に脂肪族カルボン酸アルカリ土類金属塩を加えることで熱安定性が向上し、ゲルの発生が抑制され、ロングラン成形が可能になることが記載されている。
【0007】
一方、熱溶融時におけるEVOH樹脂組成物の着色を低減する方法として、一般的に押出機を用いて溶融させてペレットを製造する際の製造条件を調整することが行われる。例えば、特許文献2には、EVOH樹脂とポリオレフィン系樹脂を混合した樹脂組成物或いはEVOH樹脂とポリアミド系樹脂を混合した樹脂組成物を加熱溶融する際に、押出機のスクリュー長L(mm)とスクリュー外径D(mm)の比(L/D)、溶融押出し時の比エネルギー、ダイスノズル一本あたりの吐出量、加工温度を特定範囲とすることが記載されている。特許文献2では、加熱溶融時の押し出し条件を特定範囲とすることで、ゲルの発生が無く、着色のないペレットが得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】日本国特開平6-345919号公報
【文献】日本国特開2003-276021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された樹脂組成物は押出機での加熱溶融時に着色する傾向があり、得られた成形物は、透明性が求められる用途には適用しにくいという問題があった。また、特許文献2に記載された技術でも十分な着色抑制効果は得られず、さらなる改良が求められていた。
【0010】
したがって、本願は着色が低減されたエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が上記実情に鑑み鋭意検討した結果、EVOH樹脂、ポリアミド系樹脂及びアルカリ土類金属塩を含有する樹脂組成物は、その溶融混練時よりも押出機から押し出した後で着色が発生することがわかった。押出機から押し出した後も樹脂ペレットは高温状態が続く。本発明者は、EVOH樹脂、ポリアミド系樹脂及びアルカリ土類金属塩を含有する樹脂ペレットが高温であると着色しやすくなることに着目し、押出機のダイス(吐出口の金型)からの吐出直後の樹脂温度を低く制御することで、着色の少ない樹脂ペレットが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の(1)~(6)の構成をとる。
(1)エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)、ポリアミド系樹脂(B)及びアルカリ土類金属塩(C)を含有するエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットであって、前記ペレットを分光色差計にて透過法により測定したイエローインデックス(YI)値が10以下であるエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレット。
(2)前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)と前記ポリアミド系樹脂(B)の質量比((A)/(B))が、60/40~98/2である、前記(1)に記載のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレット。
(3)前記アルカリ土類金属塩(C)の含有割合が、前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)と前記ポリアミド系樹脂(B)の合計量に対して、金属換算で10~200ppmである、前記(1)又は(2)に記載のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレット。
(4)さらに酸化防止剤を含む、前記(1)~(3)のいずれか1つに記載のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレット。
(5)前記(1)~(4)のいずれか1つに記載のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットが溶融成形されたエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物成形体。
(6)分光色差計にて透過法により測定したときのイエローインデックス(YI)値が10以下であるエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットの製造方法であって、エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)、ポリアミド系樹脂(B)及びアルカリ土類金属塩(C)を含有する樹脂組成物を溶融混練装置を用いて溶融混練する工程を含み、前記溶融混練装置から吐出された直後のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ストランドの温度を268℃以下とするエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、イエローインデックス(YI)値が10以下という着色が低減されたエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットを提供することができるので、透明性が要求される成形物においても好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、これらの内容に特定されるものではない。
尚、本明細書において、質量で表される全ての百分率や部は、重量で表される百分率や部と同様である。
【0015】
本発明のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットは、エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)、ポリアミド系樹脂(B)及びアルカリ土類金属塩(C)を含有し、前記ペレットを分光色差計にて透過法により測定したイエローインデックス(YI)値が10以下であることを特徴とする。
以下に各成分について説明する。
【0016】
<エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)>
本発明で用いるエチレン-ビニルアルコール系共重合体(EVOH樹脂)は、公知の樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。EVOH樹脂は、通常、ビニルエステル系単量体とエチレンを共重合してエチレン-ビニルエステル系共重合体を得、これをケン化して得られるものである。すなわち、エチレン構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化工程後に残存した若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。上記共重合に際しては、溶液重合法など、公知の重合法が採用され得る。
【0017】
上記ビニルエステル系単量体としては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられ、通常炭素数3~20、好ましくは炭素数4~10、特に好ましくは炭素数4~7の脂肪族ビニルエステルである。中でも、経済的な点から酢酸ビニルを用いることが好ましい。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
【0018】
EVOH樹脂のエチレン含有量は、エチレンとビニルエステル系単量体の重合時に決定されるものであり、ケン化の前後で変化するものではない。ISO14663に基づいて測定したエチレン構造単位の含有率が通常20~60モル%、好ましくは25~50モル%、特に好ましくは25~45モル%である。エチレン含有量が低すぎると耐衝撃性や加工性が低下する傾向があり、高すぎるとガスバリア性や耐溶剤性が低くなる傾向がある。
【0019】
EVOH樹脂のケン化度は滴定法(JIS K6726)(ただし、EVOH樹脂は水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)で測定した値で通常90~100モル%、好ましくは95~100モル%、特に好ましくは98~100%である。ケン化度が低すぎるとガスバリア性が低下する傾向がある。
【0020】
EVOH樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと称することがある。)は210℃、荷重2160gで測定した値で、通常0.1~100g/10分、好ましくは1~50g/10分、より好ましくは2~40g/10分である。かかる値が高すぎたり低すぎたりすると加工性が低下する傾向がある。
【0021】
EVOHの融点は、示差走査熱量計(DSC)で昇降温速度10℃/minで測定した値で、通常100~220℃、好ましくは120~210℃、より好ましくは140~200℃である。
【0022】
なお、本発明では、エチレンとビニルエステル以外に、EVOH樹脂に要求される特性を阻害しない範囲(例えば、10モル%未満)で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよく、上記単量体としては、下記のものが挙げられる。例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィン類や、2-プロペン-1-オール、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、5-ヘキセン-1,2-ジオール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類や、そのアシル化物、エステル化物が挙げられ、エステル化物としては、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、特に、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン等が挙げられる。また、2-メチレンプロパン-1,3-ジオール、3-メチレンペンタン-1,5-ジオール等のヒドロキシアルキルビニリデン類;1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジプロピオニルオキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジブチロニルオキシ-2-メチレンプロパン等のヒドロキシアルキルビニリデンジアセテート類が挙げられる。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩、ならびに、炭素数1~18のモノまたはジアルキルエステル類が挙げられる。また、アクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、ならびに、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類や、メタクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、2-メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩ならびにその4級塩等のメタクリルアミド類が挙げられる。また、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類や、炭素数1~18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、ならびに、酢酸アリル、塩化アリル、トリメチル-(3-アクリルアミド-3-ジメチルプロピル)-アンモニウムクロリド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルエチレンカーボネート、グリセリンモノアリルエーテル等が挙げられる。また、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等「後変性」されていても差し支えない。
特に延伸加工や真空・圧空成形などの二次成形性が必要な用途においてはヒドロキシ基含有α-オレフィン類を共重合したEVOH、特には1,2-ジオールを側鎖に有するEVOHが好ましく用いられる。
【0023】
本発明で用いられるEVOH樹脂には、目的に応じて、他の熱可塑性樹脂を含んでもよい。他の熱可塑性樹脂を含む場合、他の熱可塑性樹脂の含有量は樹脂組成物全体に対して通常30質量%未満である。
【0024】
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、目的に応じて、他の配合剤成分を含んでいてもよい。これら配合剤の添加量は樹脂組成物に対して、通常5質量%未満である。他の配合成分としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス繊維などのフィラー、パラフィンオイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤、界面活性剤、乾燥剤、帯電防止剤、防菌剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、生分解用添加剤、蛍光増白剤、シランカップリング剤などが挙げられ、任意の配合剤を1種又は2種以上にて含有することができる。
【0025】
かかる含有可能な樹脂および配合剤は、樹脂分への均一添加である(ペレット内部均一添加である)ことを意味する。
【0026】
上記熱安定剤としては、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させる目的で、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸類またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)などのアルカリ土類金属塩以外の塩;または、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、亜鉛塩などのアルカリ土類金属塩以外の塩等の添加剤を添加してもよい。これらのうち、特に、酢酸、ホウ酸およびその塩を含むホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加することが好ましい。
【0027】
酢酸を添加する場合、その添加量は、EVOH樹脂100質量部に対して通常0.001~1質量部、好ましくは0.005~0.2質量部、特に好ましくは0.01~0.1質量部である。酢酸の添加量が少なすぎると、酢酸の含有効果が十分に得られない傾向があり、逆に多すぎると均一なフィルムを得ることが難しくなる傾向がある。
【0028】
また、ホウ素化合物を添加する場合、その添加量は、EVOH樹脂100質量部に対してホウ素換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.001~1質量部であり、好ましくは0.002~0.2質量部であり、特に好ましくは0.005~0.1質量部である。ホウ素化合物の添加量が少なすぎると、ホウ素化合物の添加効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。
【0029】
また、酢酸塩、リン酸塩(リン酸水素塩を含む)の添加量としては、EVOH樹脂(A)100質量部に対して金属換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.0005~0.1質量部、好ましくは0.001~0.05質量部、特に好ましくは0.002~0.03質量部である。かかる添加量が少なすぎるとその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。尚、EVOH樹脂に2種以上の塩を添加する場合は、その総量が上記の添加量の範囲にあることが好ましい。
【0030】
EVOH樹脂に酢酸、ホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加する方法については、特に限定されず、i)含水率20~80質量%のEVOH樹脂の多孔性析出物を、添加物の水溶液と接触させて、添加物を含有させてから乾燥する方法;ii)EVOH樹脂の均一溶液(水/アルコール溶液等)に添加物を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレットとして、さらに乾燥処理をする方法;iii)EVOH樹脂と添加物を一括して混合してから押出機等で溶融混練する方法;iv)EVOH樹脂の製造時において、ケン化工程で使用したアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を酢酸等の有機酸類で中和して、残存する酢酸等の有機酸類や副生成する塩の量を水洗処理により調整したりする方法等を挙げることができる。
本発明の効果をより顕著に得るためには、添加物の分散性に優れるi)、ii)の方法、有機酸およびその塩を含有させる場合はiv)の方法を併用することが好ましい。
【0031】
かかるEVOH樹脂は通常ペレット形状にて市場流通し、各種溶融成形に供される。かかるペレットの形状は例えば、球形、円柱形、立方体形、直方体形等があるが、通常、球状(ラグビーボール状)または円柱形であり、その大きさは、後に成形材料として用いる場合の利便性の観点から、球状の場合は径が通常1~6mm、好ましくは2~5mmであり、高さは通常1~6mm、好ましくは2~5mmであり、円柱状の場合は底面の直径が通常1~6mm、好ましくは2~5mmであり、長さは通常1~6mm、好ましくは2~5mmである。
【0032】
<ポリアミド系樹脂(B)>
本発明で用いるポリアミド系樹脂(B)は、公知の樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。
【0033】
ポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等の脂肪族ポリアミド系樹脂が挙げられる。また共重合ポリアミド系樹脂としては、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン86)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン108)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン66/610)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)等の脂肪族共重合ポリアミドや、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミドや、ポリ-p-フェニレン-3,4’-ジフェニルエーテルテレフタルアミド等の芳香族共重合ポリアミド、非晶性ポリアミド、上記のポリアミド系樹脂をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等のカルボキシル基やアミノ基で末端を変性した末端変性ポリアミド等が挙げられる。
これらのポリアミド系樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でもEVOH樹脂組成物とし、これを多層フィルムの中間層として用いた場合の耐レトルト性の観点から、ナイロン6を用いることが好ましい。
【0034】
ポリアミド系樹脂(B)として好ましくは、融点が通常150~270℃、好ましくは180~250℃、より好ましくは200~230℃のものである。また、メルトフローレイト(MFR)が、230℃、荷重2160gにて、通常0.1~100g/10分、好ましくは1~50g/10分、より好ましくは3~20g/10分のものである。
【0035】
<アルカリ土類金属塩(C)>
本発明で用いるアルカリ土類金属塩(C)としては、例えば、アルカリ土類金属の酢酸塩、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の脂肪族カルボン酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩、アルカリ土類金属のホウ酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸水素塩、アルカリ土類金属のリン酸塩等の無機酸塩等が挙げられる。
アルカリ土類金属の酢酸塩としては、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属の炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素バリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属のリン酸塩としては、例えば、リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素バリウム等が挙げられる。
これらのアルカリ土類金属塩は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有させることができる。
中でも、EVOH樹脂の生産性の観点から、好ましくは水溶性塩である。さらに、EVOH樹脂組成物を溶融成形する際の成形性の観点から、アルカリ土類金属塩として、有機酸塩が好ましく、さらには炭素数1~6の脂肪族カルボン酸塩が好ましく、特には酢酸マグネシウムを用いることが好ましい。
【0036】
本発明において、エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)の質量比((A)/(B))は、60/40~98/2であることが好ましい。エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)の質量比を前記範囲とすることで、耐レトルト性に優れたEVOH樹脂組成物を得ることができる。エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)の質量比は、70/30~95/5であることがより好ましく、80/20~90/10が更に好ましい。
【0037】
また、アルカリ土類金属塩(C)の含有割合は、エチレン-ビニルエステル系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)の合計量に対して、金属換算で10~200ppmであることが好ましく、10~100ppmがより好ましく、10~50ppmが更に好ましい。アルカリ土類金属塩(C)の含有割合が多すぎると、ペレット中にゲルや発泡、着色が生じたり、成形性が不安定となる傾向があり、少なすぎると、溶融粘度が上昇しやすくなる傾向がある。
【0038】
本発明のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットには、酸化防止剤を配合することが好ましい。酸化防止剤を含有することで、成形加工時の熱安定性を向上させることができる。
【0039】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、アミノエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0040】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジシクロヘキシル-4-メチルフェノール、2,6-ジイソプロピル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-t-アミル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-オクチル-4-n-プロピルフェノール、2,6-ジシクロヘキシル-4-n-オクチルフェノール、2-イソプロピル-4-メチル-6-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4-エチル-6-t-オクチルフェノール、2-イソブチル-4-エチル-6-t-ヘキシルフェノール、2-シクロヘキシル-4-n-ブチル-6-イソプロピルフェノール、スチレン化混合クレゾール、DL-α-トコフェロール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等の単環フェノール化合物;2,2´-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4´-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4´-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2´-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4´-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2´-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、2,2´-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2´-ブチリデンビス(2-t-ブチル-4-メチルフェノール)、3,6-ジオキサオクタメチレンビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2´-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等の2環フェノール化合物;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(4-t-ブチル-2,6-ジメチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等の3環フェノール化合物;テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等の4環フェノール化合物;ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)ニッケル等のリン含有フェノール化合物;等を挙げることができる。
【0041】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチルと1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンエタノールの重縮合物、N,N´,N´´,N´´´-テトラキス-[4,6-ビス-{ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ}-トリアジン-2-イル]-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ジブチルアミン-1,3,5-トリアジン-N,N´-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミン)とN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス-(1,2,6,6-ペンタメチル-4-ペピリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、ビス-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、1,1´-(1,2-エタンジイル)ビス(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)、(ミックスト2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、(ミックスト1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト[2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル/β,β,β´,β´-テトラメチル-3,9-{2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン}ジエチル]-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト[1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/β,β,β´,β´-テトラメチル-3,9-{2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン}ジエチル]-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、N,N´-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物、ポリ[6-N-モルホリル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミド]、N,N´-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2-ジブロモエタンとの縮合物、N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-2-メチル等が挙げられる。
【0042】
アミノエーテル系酸化防止剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-エトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-プロポキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ブトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ペンチロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ヘキシロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ヘプチロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ノニロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-デカニロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ドデシロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート等が挙げられる。
【0043】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4´-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ジノニルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルトリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0044】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)、4,4-チオビス(2-第三ブチル-5-メチルフェノール)ビス-3-(ドデシルチオ)プロピオネート、ジミリスチル-3,3´-チオジプロピオネート、ラウリル-ステアリル-3,3´-チオジプロピオネート、ネオペンタンテトライルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
【0045】
これら酸化防止剤は1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。中でも、成形加工時の熱安定性の観点から、フェノール系酸化防止剤を用いることが好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることがより好ましい。
【0046】
酸化防止剤の含有量は、EVOH系樹脂(A)とポリアミド系樹脂(B)の合計量100質量部に対して、0.1~200ppmであることが好ましく、1~100ppmがより好ましく、1~50ppmが更に好ましい。酸化防止剤の含有量が前記範囲であると、成形加工時の熱安定性が良好となる。
【0047】
本発明のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットには、本発明の効果を損ねない範囲において、その他の添加物を配合することができる。
その他の添加物としては、例えば、可塑剤、安定剤、フィラー、着色剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤などが挙げられる。
【0048】
本発明において、エチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットは、分光色差計を用いて透過法により測定したイエローインデックス(YI)値が10以下であることを特徴とする。
イエローインデックス(YI)値が10以下であることで、樹脂ペレットの透明性が確保できる。イエローインデックス(YI)値は8以下であることがより好ましい。
かかる測定は、例えばペレットを直径35mm×高さ30mmの円柱型ガラス製セルに充填して測定用サンプルを作成し、かかるサンプルをJISZ-8722に準拠して分光色差計を用いて透過法にて測定することができる。
【0049】
<エチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットの製造方法>
本発明のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットの製造方法は、特に限定されるものではない。
上記(A)~(C)成分を配合する方法として、(1)エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)とアルカリ土類金属塩(C)をあらかじめ配合した組成物にポリアミド系樹脂(B)を配合する方法、(2)ポリアミド系樹脂(B)とアルカリ土類金属塩(C)をあらかじめ配合した組成物にエチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)を配合する方法、(3)エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)、ポリアミド系樹脂(B)及びアルカリ土類金属塩(C)を一括して配合する方法、等が挙げられる。EVOH樹脂の物性改善効果と生産性の点で好ましくは(1)の方法である。
なお、かかる(1)の方法においては、i)含水率20~80質量%のEVOH樹脂の多孔性析出物を、アルカリ土類金属塩(C)の水溶液と接触させてから乾燥する方法;ii)EVOH樹脂の均一溶液(水/アルコール溶液等)にアルカリ土類金属塩(C)を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレットとし、乾燥する方法;iii)EVOH樹脂とアルカリ土類金属塩(C)を一括して混合してから押出機等で溶融混練する方法が挙げられる。EVOH樹脂の物性改善効果と生産性の点で、好ましくはi)の方法である。
【0050】
本発明のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットは、エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)、ポリアミド系樹脂(B)及びアルカリ土類金属塩(C)を上記の様に配合し、得られた組成物を溶融混練装置を用いて溶融混練し、溶融混練装置から吐出された直後の樹脂温度を従来よりも低くするよう調節することで得ることができる。
【0051】
本発明者は、EVOH樹脂、ポリアミド系樹脂及びアルカリ土類金属塩を含有する樹脂組成物を溶融混練する場合においては、高温状態で空気と接触することで着色が進行することに着目した。これは、EVOH樹脂とポリアミド系樹脂との樹脂組成物において、アルカリ土類金属塩は種々の物性改善のため配合する必要があるが、かかるアルカリ土類金属塩が触媒となることで樹脂組成物の劣化が進行しやすくなるものと推測される。そこで、本発明者は押出機から吐出直後の温度に着目し、かかる温度が従来よりも低くなるよう調整することで、EVOH樹脂とポリアミド系樹脂との樹脂組成物の劣化の進行を抑制することができ、着色の少ない樹脂ペレットが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0052】
溶融混練装置としては、混練機、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダールーダー、ブラストミルなどが挙げられ、特に連続的に処理することが可能で、混合効率に優れる押出機を用いる方法が好適である。
【0053】
押出機としては、単軸押出機、二軸押出機のいずれも用いることができるが、中でも、二軸押出機、特にスクリュー回転方向が同方向の二軸押出機が適度なせん断により十分な混練が得られる点で好ましい。
【0054】
押出機のスクリュー有効長(L/D)は、通常、10~100であり、好ましくは15~70、より好ましくは40~60である。L/Dが小さすぎると、溶融混練が不十分となり、均一分散性が不十分となる場合がある。一方、L/Dが大きすぎると、過度のせん断や過度の滞留によって、せん断発熱による分解を引き起こす傾向がある。押出機のスクリューにおけるニーディング領域のL/Dはニーディング領域が複数ある場合にはその総和にて、通常3~15、好ましくは5~10、特に好ましくは5~8である。ニーディング領域のL/Dが上記範囲である場合、後述する所望の温度に調節しやすくなる傾向がある。
【0055】
スクリュー回転数は、通常、100~1000rpmであり、好ましくは300~800rpmであり、より好ましくは400~600rpmである。スクリュー回転数が小さすぎると、吐出が不安定になる傾向があり、大きすぎると、押出機から吐出された直後の樹脂温度を268℃以下にできず、ペレットに着色が発生する場合がある。
【0056】
ダイス(吐出口の金型)の形状は通常円形である。その径の大きさは通常1~10mm、好ましくは3~5mm、特に好ましくは3.5~4.5mmである。かかる径が大きすぎる場合、ストランドが安定しないため生産性が低下する傾向があり、小さすぎる場合、後述する所望の温度に調整し難くなる傾向がある。
【0057】
押出機内における溶融時の組成物の温度は、通常、150~300℃であり、好ましくは180~290℃であり、より好ましくは200~280℃である。組成物の温度が低すぎると、溶融混練が不十分となって、均一な樹脂ペレットが得られない場合がある。一方、組成物の温度が高すぎると、押出機から吐出された直後の樹脂温度を低く調整することができず、ペレットに着色が発生する場合がある。
なお、組成物の温度の調整は、通常、押出機内のシリンダーの温度、及びスクリュー回転数を適宜設定することにより行うことができる。
【0058】
押出機等の溶融混練装置から吐出された直後の樹脂ペレット(ストランド状の混練物)の温度は、従来よりも低い温度である。かかる温度としては、通常、ポリアミド系樹脂(B)の融点+5~48℃であり、好ましくはポリアミド系樹脂(B)の融点+10~40℃であり、特に好ましくはポリアミド系樹脂(B)の融点+20~30℃である。かかる融点は、例えばポリアミド系樹脂を示差走査熱量分析計(DSC)にて測定することにより得られる。
また、押出機等の溶融混練装置から吐出された直後の樹脂ペレット(ストランド状の混練物)の温度は、通常268℃以下であり、好ましくは230~266℃、より好ましくは240~266℃である。吐出直後のペレット(ストランド)の温度をかかる範囲に調整することで、着色の発生を低減したエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットを得ることができる。
【0059】
吐出直後の樹脂温度を上記範囲に調整する方法としては、特に限定はされないが、溶融混練装置として押出機を用いる場合は、押出機のバレル温度を調整する方法、押出機のダイス(吐出口の金型)直近の温度を下げる方法、押出機のダイスから吐出される直後のペレットに冷風をあてる方法、押出機のダイスから吐出される直後のストランドを水冷する方法、押出機のスクリューにおいてニーディング領域の数が少ないスクリューを用いる方法、押出機のスクリューにおいてニーディング領域のL/Dが小さいスクリューを用いる方法、押出機のダイス(吐出口の金型)径を大きくする方法等が挙げられ、これらの要素を調節することで総合的に吐出直後の樹脂温度を調整する。
【0060】
以上のようにして得られたエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットは、分光色差計にて透過法により測定した際のイエローインデックス(YI)値が10以下であり、着色の低減された成形体を得ることができる。
【0061】
なお、本発明において、溶融押出時の比エネルギー(kWh/kg)は0.1~0.5の範囲であることが好ましい。比エネルギーが0.1未満では溶融混練が十分に行えない場合があり、逆に0.5を超えると樹脂組成物が熱劣化して着色を招いたり、得られたペレットによる成形物にフィッシュアイが多発する場合がある。なお、かかる値は押出機のスクリューモーターの電力値からを押出機からの吐出量で除することで求めることができる。
【0062】
本発明のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットは、溶融成形により、例えばフィルムやシート等の薄膜、袋、カップ、トレイ、チューブ、ボトル、タンク等の中空容器、蓋材等の各種成形物とすることができる。
【0063】
かかる溶融成形方法としては、例えばT-ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等の押出成形法、射出成形法等が挙げられる。かかる溶融成形温度は、通常190~250℃である。
【0064】
本発明のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットは、溶融成形して単独層にて各種成形物とすることができるが、水の存在下で使用する場合のガスバリア性低下防止や機械的強度の向上等の点から、EVOH樹脂組成物層にEVOH樹脂以外の熱可塑性樹脂層を積層した多層構造体にて各種成形物に供することが好ましい。
【0065】
EVOH樹脂以外の熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂(以下、「他の熱可塑性樹脂」と称することがある。)としては、具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体、等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体、等のポリプロピレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン-プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む);ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;アクリル系樹脂;ポリスチレン;ビニルエステル系樹脂;ポリエステルエラストマー;ポリウレタンエラストマー;塩素化ポリエチレン;塩素化ポリプロピレン;芳香族または脂肪族ポリケトン;さらにこれらを還元して得られるポリアルコール類が挙げられる。
中でも、樹脂組成物のガスバリア性低下を抑制する目的から疎水性樹脂を用いることが好ましく、具体的にはポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にはポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0066】
上記EVOH樹脂組成物層および他の熱可塑性樹脂層は、多層構造体中にそれぞれ2層以上を有していてもよい。
【0067】
上記EVOH樹脂組成物層および他の熱可塑性樹脂層は、さらにEVOH樹脂組成物層と他の熱可塑性樹脂層との間に接着樹脂層が介在していてもよい。
接着樹脂層としては、例えば、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(上述のポリオレフィン系樹脂)に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができる。具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。このときの、熱可塑性樹脂に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の量は、通常0.001~3質量%であり、好ましくは0.01~1質量%、特に好ましくは0.03~0.5質量%である。変性物中の変性量が少ないと、接着性が不充分となる傾向があり、逆に多いと架橋反応を起こし、成形性が悪くなる傾向がある。
【0068】
なお、他の熱可塑性樹脂層や接着樹脂層には、通常配合される公知の酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、核材、ブロッキング防止剤、ワックス等が含まれていてもよい。
【0069】
上記多層構造体は、本発明に係るEVOH樹脂組成物層を少なくとも1層含むものであればよく、その構成は特に限定しないが、水分による樹脂組成物のガスバリア性能の低下を防ぐ目的で、本発明のEVOH樹脂組成物層が中間層であることが好ましい。そして、他の熱可塑性樹脂層が外側層であることが好ましい。すなわち、たとえば多層構造体を包装物とした場合、他の熱可塑性樹脂層(特には疎水性樹脂層)が内包物と接触する層、および外気と接触する層となる。
【0070】
多層構造体の層構成は、本発明のEVOH樹脂組成物層をa(a1、a2、・・・)、他の熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、通常3~20層、好ましくは3~15層、特に好ましくは3~10層である。例えば具体的には、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能である。
また、かかる多層構造体は、該多層構造体を製造する過程で発生する端部や不良品等を再溶融成形して得られる、EVOH樹脂組成物とEVOH樹脂以外の熱可塑性樹脂の混合物を含むリサイクル層を設けることが可能である。かかるリサイクル層をRとするとき、多層構造体の層構成は、例えばb/a/R、R/b/a、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等が挙げられる。
特にリサイクル層を設けることは、成形時に発生する多量のスクラップを有効に活用できる点で工業上好ましい。
【0071】
多層構造における各層の厚みは、層構成、用途や容器形態、要求される物性などにより調節される。例えば下記の通りである。なお、下記の数値は、EVOH樹脂組成物層、接着性樹脂層、他の熱可塑性樹脂層のうち少なくとも1種の層が2層以上存在する場合には、そのうちの最も厚い層の厚みを採用する。
【0072】
本発明のEVOH樹脂組成物層は通常1~500μm、好ましくは3~300μm、より好ましくは5~200μmである。EVOH樹脂組成物層が薄すぎる場合、ガスバリア性が低下する傾向があり、EVOH樹脂組成物層が厚すぎる場合は、得られる成形物の柔軟性や二次加工性が低下する傾向がある。
他の熱可塑性樹脂層は通常10~6000μm、好ましくは20~4000μm、特に好ましくは100~2000μmである。他の熱可塑性樹脂層が薄すぎる場合、得られる成形物の剛性が低下する傾向があり、他の熱可塑性樹脂層が厚すぎる場合、得られる成形物の柔軟性や二次加工性が低下する傾向がある。
接着性樹脂層は通常1~100μm、好ましくは2~50μm、特に好ましくは5~40μmである。
また、各層の厚み比は、EVOH樹脂組成物層/他の熱可塑性樹脂層の厚み比が通常0.005以上1未満、好ましくは0.01以上1未満、特に好ましくは0.02~0.2であり、樹脂組成物層/接着性樹脂層の厚み比が通常0.2~100、好ましくは1~10、特に好ましくは1~5である。
【0073】
上記多層構造体は、さらに公知の方法で延伸処理を行ってもよい。
なお、延伸については、公知の延伸方法でよく、例えば、一軸延伸、二軸延伸等が挙げられる。加熱延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、共射出延伸ブロー法、深絞成形法、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト式真空圧空成形法等のものが採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。共射出延伸ブロー法の場合はコールドパリソン法、ホットパリソン法のいずれの方式も採用できる。延伸温度は、多層構造体の温度(多層構造体近傍温度)で、通常80~200℃、好ましくは100~160℃程度の範囲から選ばれる。延伸倍率は、面積比にて、通常2~100倍、好ましくは2~50倍である。
【0074】
延伸処理された多層構造体における各層の厚みは、例えば下記の通りである。EVOH樹脂組成物層は通常0.1~200μm、好ましくは1~100μmである。他の熱可塑性樹脂層は通常1~1000μm、好ましくは3~500μmである。接着性樹脂層は通常0.1~50μm、好ましくは1~30μmである。また、各層の厚み比は、EVOH樹脂組成物層/他の熱可塑性樹脂層の厚み比が通常0.0002以上1未満、好ましくは0.01以上1未満であり、EVOH樹脂組成物層/接着性樹脂層の厚み比が0.2~100、好ましくは1~10である。
【0075】
上記の如く得られる多層構造体は、フィルム、シート等の薄膜、袋およびカップ、トレイ、チューブ、ボトル、タンク等の中空容器、蓋材等の形状の容器に加工することが可能である。
かかる容器は、一般的な食品の他、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品、農薬品、工業薬品等の各種の包装容器として有用である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り質量基準を意味する。
【0077】
(実施例1)
含水EVOHの多孔性析出物を、アルカリ土類金属塩(C)の水溶液と接触させてから乾燥する方法により得られた、アルカリ土類金属塩(C)として酢酸マグネシウムを金属換算で35ppm含有するEVOH樹脂(A)(エチレン含有量29モル%、ケン化度99.6モル%、MFR4.1g/10分(210℃、荷重2160g)、融点185.6℃)を85部、ポリアミド系樹脂(B)としてナイロン6である「NOVAMID 1028EN」(商品名、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、融点220℃)を15部、及び酸化防止剤としてヒンダードフェノール系化合物(ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]「Irganox1010」(商品名、チバ・ガイギー社製))を0.001部用いた。
なお、EVOH樹脂(A)とポリアミド系樹脂(B)の質量比(A)/(B)は85/15であり、アルカリ土類金属塩(C)の含有割合は、EVOH樹脂(A)とポリアミド系樹脂(B)の合計量に対して、金属換算で30ppmである。
これらを押出機に入れ、弱混練仕様スクリュー(株式会社日本製鋼所製)を用いて、窒素雰囲気下、スクリュー回転数が500rpm、ダイスの吐出口径が4.0mm、押出機のバレル温度(℃)がC2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/C9/C10/C11/C12/C13/C14/C15=100/230/230/230/230/230/230/230/230/230/230/210/210/210となるように加熱し、エチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットを作製した。
なお、かかる弱混練仕様スクリューとは、ニーディング領域を2か所有し、かかるニーディング領域のL/Dの総計が6.5であった。
【0078】
上記のように溶融混練したペレットについて、ダイス出口の吐出直後におけるストランドの温度をFLIR社製「赤外温度計FLIRi3」(商品名)を用いて測定した。
また、ペレットを直径35mm×高さ30mmの円柱型ガラス製セルに充填し、3回タッピングしてから摺り切りイエローインデックス(YI)値測定用サンプルとした。得られたYI値測定用サンプルのイエローインデックス(YI)値を、JISZ-8722に準拠し、日本電色工業株式会社製「分光色差計 SE6000」(商品名)を用いて測定した。
また、押出機からの吐出量とスクリューモーターの電力値により溶融押出時の樹脂組成物の比エネルギーを求めた。
これらの結果を表1に示す。
【0079】
(実施例2)
実施例1において、溶融混練の条件を、スクリュー回転数を456rpm、押出機のバレルの温度(℃)をC2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/C9/C10/C11/C12/C13/C14/C15=100/230/230/230/230/240/240/240/240/240/240/240/240/240とした以外は実施例1と同様に行い、エチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットを作製した。
ダイス出口の吐出直後におけるストランドの温度、成形体のイエローインデックス(YI)値、比エネルギーを求め、結果を表1に示す。
【0080】
(比較例1)
実施例1において、溶融混練の条件を、押出機のバレルの温度(℃)をC2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/C9/C10/C11/C12/C13/C14/C15=100/230/230/230/230/240/240/240/240/240/240/240/240/240とした以外は実施例1と同様に行い、エチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットを作製した。
ダイス出口の吐出直後におけるストランドの温度、成形体のイエローインデックス(YI)値、比エネルギーを求め、結果を表1に示す。
【0081】
(比較例2)
実施例1において、スクリューとして通常仕様スクリュー(株式会社日本製鋼所製)を用いて、溶融混練の条件を、押出機のバレルの温度(℃)をC2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/C9/C10/C11/C12/C13/C14/C15=100/230/230/230/230/240/240/240/240/240/240/240/240/240とした以外は実施例1と同様に行い、エチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットを作製した。なお、かかる通常仕様スクリューとは、ニーディング領域を2か所有し、かかるニーディング領域のL/Dの総計が10.25であった。
ダイス出口の吐出直後におけるストランドの温度、成形体のイエローインデックス(YI)値、比エネルギーを求め、結果を表1に示す。
【0082】
【0083】
表1の結果より、実施例1、2は、イエローインデックス(YI)値が10以下であり、着色が抑えられたエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットが得られることがわかった。これに対し、比較例1、2は、イエローインデックス(YI)値が10を超えるものであり、ペレットに着色が見られた。
これにより、ダイス出口の吐出直後における樹脂温度を従来より低く調整し、特には268℃以下とすることで、着色の抑えられたエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットが得られることがわかった。
【0084】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2015年12月24日出願の日本特許出願(特願2015-251832)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
エチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物ペレットを用いた成形物は、ガスバリア性に優れると共に着色が抑えられており、工業的に極めて有用である。