(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
B08B 7/00 20060101AFI20220113BHJP
B08B 11/00 20060101ALI20220113BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B08B7/00
B08B11/00 A
H01L21/304 645D
(21)【出願番号】P 2017075786
(22)【出願日】2017-04-06
【審査請求日】2020-03-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】山森 賢治
(72)【発明者】
【氏名】吉原 啓太
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-147928(JP,A)
【文献】特開2011-243913(JP,A)
【文献】特開2009-097801(JP,A)
【文献】特開2000-218248(JP,A)
【文献】特開2013-111489(JP,A)
【文献】特開2010-75888(JP,A)
【文献】特開2012-195058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 7/00
B08B 11/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿って搬送される帯状の被処理体の一面に紫外線を照射する光照射装置であって、
搬送経路における被処理体の一面側の通過平面に沿って開口を有するランプハウスと、
前記ランプハウス内に設けられた、前記被処理体の幅方向に伸びる紫外線ランプと、
前記ランプハウス内に不活性ガスを供給するガス供給手段と、
前記搬送経路における被処理体の他面側の通過平面に沿って開口を有する排気空間形成部材とを備え、
前記ランプハウスの開口に、前記被処理体の両側縁部との間にガス流通抵抗用隘路を形成する遮蔽体が設けられ、
前記ランプハウス内に不活性ガスが供給された状態であるときに、前記遮蔽体によって、
前記ランプハウス内の圧力は外部雰囲気である大気圧よりも高い陽圧、前記排気空間形成部材内の圧力は外部雰囲気である大気圧よりも低い陰圧となることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記遮蔽体
は、被処理体の搬送方向に伸びる側縁部が、被処理体の側縁部の他面を覆う状態に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送経路に沿って搬送される帯状の被処理体の一面に紫外線を照射して光洗浄する光照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶などの製造工程におけるレジストの光アッシング処理、ナノインプリント装置におけるテンプレートのパターン面に付着したレジストの除去、あるいは液晶用のガラス基板やシリコンウエハなどのドライ洗浄処理、ロールに巻き取られたシート状のフィルムの貼合わせ面の洗浄処理として、紫外線を照射する光洗浄(ドライ洗浄)方法が知られている。
【0003】
このような光洗浄を行うための光照射装置として、例えば特許文献1には、ガラス基板に対して真空紫外線を照射し、当該真空紫外線およびその真空紫外線によって発生された活性酸素の洗浄作用によってガラス基板の表面の汚染物を除去するものが開示されている。
図18は、従来の光照射装置の一例を模式的に示す、被処理体の搬送方向の断面図であり、
図19は、
図18の光照射装置の、被処理体の幅方向の断面図であり、
図20は、
図18の光照射装置の要部を模式的に説明する斜視図である。
この光照射装置は、搬送経路に沿って、上流側(
図18において右側)の搬入口58から被処理体Wが搬入され、紫外線が照射される処理領域において放電ランプ51からの紫外線が被処理体Wの一面(
図18において上面)に照射された後、搬出口59から搬出されるものである。
真空紫外線は、大気中の酸素によって吸収されて大きく減衰してしまう性質を有するので、従来、このような光照射装置においては、放電ランプ51が配設されたランプハウス52内に窒素ガスなどの不活性ガスを外部から供給して、放電ランプ51と被処理体との間の紫外線放射空間における洗浄に必要な量以上の過剰な酸素を除去して真空紫外線の減衰を抑制することが行われている。なお、極端に酸素濃度の低い雰囲気下において真空紫外線を照射すると、オゾンの発生量が極めて少なくなるため、オゾンによる被処理体の表面の活性化作用が働かず、かえって光洗浄の効果が低下することが知られている。不活性ガスは、例えば、被処理体Wの一面側(
図18において上面側)に設けられたランプハウス52内の放電ランプ51の背面側(
図18において上面側)に設けられたガス供給管56のガス供給口から吐出され、ランプハウス52内の特に紫外線放射空間を不活性ガス雰囲気に置換した後、主として被処理体Wの他面側(
図18において下面側)に設けられた排気空間形成部材53のガス排出口57から排出される。
なお、
図18において、55は排気部55Aを有するサブチャンバーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光照射装置において、被処理体は基本的に帯状のものであり、具体的には板状のもの、シート状のフィルムなど、種々の形状や材質のものが光洗浄の処理対象とされる。また、被処理体の処理領域への搬送速度、例えばシート状のフィルムを流す速度は、被処理体の形状や材質、表面状態などによって決定されるので、被処理体毎に異なる。
そして、被処理体が搬送されることに伴って処理領域の周囲(紫外線放射空間)に引き込まれる空気の量は、被処理体の搬送速度に依存するので、被処理体毎に紫外線放射空間内の酸素濃度にバラツキが生じ、その結果、所期の光洗浄効果が安定的に得られない、という問題が生じる。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、被処理体の搬送速度によらず、高い安定性で光洗浄を行うことができる光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光照射装置は、搬送経路に沿って搬送される帯状の被処理体の一面に紫外線を照射する光照射装置であって、
搬送経路における被処理体の一面側の通過平面に沿って開口を有するランプハウスと、
前記ランプハウス内に設けられた、前記被処理体の幅方向に伸びる紫外線ランプと、
前記ランプハウス内に不活性ガスを供給するガス供給手段と、
前記搬送経路における被処理体の他面側の通過平面に沿って開口を有する排気空間形成部材とを備え、
前記ランプハウスの開口に、前記被処理体の両側縁部との間にガス流通抵抗用隘路を形成する遮蔽体が設けられ、
前記ランプハウス内に不活性ガスが供給された状態であるときに、前記遮蔽体によって、前記ランプハウス内の圧力は外部雰囲気である大気圧よりも高い陽圧、前記排気空間形成部材内の圧力は外部雰囲気である大気圧よりも低い陰圧となることを特徴とする。
【0008】
本発明の光照射装置においては、前記遮蔽体は、被処理体の搬送方向に伸びる側縁部が、被処理体の側縁部の他面を覆う状態に設けられている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光照射装置は、ランプハウスの開口に、被処理体の両側縁部との間にガス流通抵抗用隘路を形成する遮蔽体が設けられている。そして、ガス流通抵抗用隘路が形成されていることによってランプハウス内の空間と排気空間形成部材内の空間との間の自由なガスの流通が阻害されてガスの流通抵抗が大きくなることにより、ランプハウス内の密閉性が高められる。従って、被処理体の種類および形状に基づいて決定される搬送速度によらずに、従来よりも少量の不活性ガスによって紫外線放射空間内の酸素濃度を安定的に低減させることができ、その結果、紫外線放射空間内の酸素濃度にバラツキが生ずることを抑制することができ、これにより、紫外線放射空間における紫外線の減衰が安定的に抑制されると共に、オゾン源となる酸素は被処理体に付着する空気として少量が当該被処理体の搬送に伴って安定的に供給されるので、結局、高い安定性で光洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の光照射装置の一例を模式的に示す、被処理体の搬送方向の断面図である。
【
図2】
図1の光照射装置の、被処理体の幅方向の断面図である。
【
図3】
図1の光照射装置の要部を模式的に説明する、排気空間側から見た斜視図である。
【
図4】本発明の光照射装置の別の一例を模式的に示す、被処理体の幅方向の断面図である。
【
図5】本発明の光照射装置のさらに別の一例を模式的に示す、被処理体の幅方向の断面図である。
【
図6】
図5の光照射装置の要部を模式的に説明する、排気空間側から見た斜視図である。
【
図7】本発明の光照射装置のさらに別の一例を模式的に示す、被処理体の幅方向の断面図である。
【
図8】
図7の光照射装置の要部を模式的に説明する、排気空間側から見た斜視図である。
【
図9】本発明の光照射装置のさらにまた別の一例を模式的に示す、被処理体の幅方向の断面図である。
【
図10】
図9の光照射装置の要部を模式的に説明する、排気空間側から見た斜視図である。
【
図11】本発明の光照射装置のさらにまた別の一例を模式的に示す、被処理体の幅方向の断面図である。
【
図12】
図11の光照射装置の要部を模式的に説明する、排気空間側から見た斜視図である。
【
図13】本発明の光照射装置のさらにまた別の一例を模式的に示す、被処理体の幅方向の断面図である。
【
図14】
図13の光照射装置の要部を模式的に説明する、排気空間側から見た斜視図である。
【
図15】本発明の光照射装置のさらにまた別の一例を模式的に示す、被処理体の幅方向の断面図である。
【
図16】
図15の光照射装置の要部を模式的に説明する、排気空間側から見た斜視図である。
【
図17】実施例および比較例における被処理体の表面の酸素濃度を示すグラフである。
【
図18】従来の光照射装置の一例を模式的に示す、被処理体の搬送方向の断面図である。
【
図19】
図18の光照射装置の、被処理体の幅方向の断面図である。
【
図20】
図18の光照射装置の要部を模式的に説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の光照射装置の一例を模式的に示す、被処理体の搬送方向の断面図であり、
図2は、
図1の光照射装置の、被処理体の幅方向の断面図であり、
図3は、
図1の光照射装置の要部を模式的に説明する、排気空間側から見た斜視図である。
本発明の光照射装置は、処理チャンバー10の上流側(
図1において右側)の搬入口18から搬送経路に沿って搬送された帯状の被処理体Wの一面(
図1において上面)に、紫外線ランプ11からの紫外線が照射される処理領域において紫外線を照射して光洗浄するものである。
【0014】
この光照射装置において光洗浄される帯状の被処理体(ワーク)Wとしては、ガラス基板やプリント基板などの板状体、および、連続するシート状のフィルムなどが挙げられる。
被処理体Wは、例えば幅が100~2000mm程度のものである。
【0015】
処理チャンバー10は、搬送経路の処理領域における被処理体Wの一面側(
図1において上面側)の通過平面に沿って開口12Hを有する筺体状のランプハウス12と、処理領域における被処理体Wの他面側(
図1において下面側)の通過平面に沿って開口13Hを有する筺体状の排気空間形成部材13とによって形成されている。これにより、処理チャンバー10内が、搬送経路の処理領域を介して、ランプハウス12内からなる洗浄処理空間と排気空間形成部材13内からなる排気空間とに区画されている。処理チャンバー10における搬送経路の両端部には、それぞれ、ランプハウス12および排気空間形成部材13によりスリット状の搬入口18および搬出口19が形成されている。
【0016】
ランプハウス12内には、被処理体Wの幅方向に伸びる複数の紫外線ランプ11が被処理体Wの搬送方向に互いに離間して同一平面上に設けられると共に、当該ランプハウス12内に不活性ガスを供給するガス供給手段が紫外線ランプ11の背面側(
図1において上側)に設けられている。
【0017】
紫外線ランプ11としては、例えば、中心波長が172~380nm程度の真空紫外線を放射する、断面が被処理体Wの搬送方向に伸びる扁平な形状のキセノンエキシマランプが用いられる。
【0018】
ガス供給手段は、具体的には、孔またはスリットからなる多数のガス供給口が開口されたガス供給管16を備えており、少なくとも1つのガス供給管16が、ランプハウス12内の搬入口18の近傍に配置されている。
図1の光照射装置においては、ガス供給手段は、複数のガス供給管16を有し、ガス供給管16の各々が、紫外線ランプ11が伸びる方向と平行に伸び、かつ、隣接する紫外線ランプ11に対して等距離となる状態で紫外線ランプ11の背面側に配置されている。
【0019】
不活性ガスとしては、例えば窒素ガスが用いられる。
【0020】
排気空間形成部材13の底部(
図1において下部)には、当該排気空間形成部材13内の気体を強制的に外部に排気するガス排出口17が設けられている。
この光照射装置において、排気空間形成部材13のガス排出口17からの排気量は、ガス供給手段のガス供給管16からのガス供給量よりも大きいことが好ましい。
【0021】
搬送経路における処理チャンバー10の上流側には、搬入口18に近接してサブチャンバー21が設けられている。また、搬送経路における処理チャンバー10の下流側にも、搬出口19に近接してサブチャンバー22が設けられることが好ましい。
サブチャンバー21,22は、それぞれ、搬送経路を介して排気部21A,21B,22A,22Bが対向して設けられてなり、排気空間形成部材13内およびランプハウス12内から搬入口18および搬出口19を介して漏洩する気体を強制的に外部に排気するものである。
サブチャンバー21,22からの排気量は、ガス供給手段のガス供給管16からのガス供給量よりも大きいことが好ましい。
【0022】
被処理体Wを搬送経路に沿って搬送させる搬送手段としては、被処理体Wが板状体である場合には、例えば複数の搬送ローラが設けられて当該搬送ローラ上を搬送される構造のものを用いてもよく、被処理体Wが連続するシート状のフィルムである場合には、例えばシート状のフィルムが巻き出し用ロールと巻き取り用ロールとの間に張設され、巻き出し用ロールから巻き取り用ロールに巻き取られる構造のものを用いてもよい。
【0023】
そして、本発明の光照射装置においては、ランプハウス12の開口12Hに、被処理体Wの幅方向の両側縁部との間にガス流通抵抗用隘路Gを形成する遮蔽体が設けられている。具体的には、遮蔽体は、ランプハウス12の開口12Hの周縁に連続して被処理体Wの搬送平面に沿って伸びる、被処理体Wの通過を許容する幅の開口15Hを有する板状の枠部12Aからなる。これにより、枠部12Aの開口15Hにおける、被処理体Wの搬送方向に平行に伸びる側縁と、被処理体Wの幅方向の側縁との間に、ガス流通抵抗用隘路Gが形成される。ランプハウス12の枠部12Aは、被処理体Wに係る処理領域と同じレベル位置に設けられている。
ガス流通抵抗用隘路Gの距離(ギャップ)は、排気空間形成部材13内の圧力が、ランプハウス12内の圧力よりも低く、両空間の圧力状態が維持される程度の大きさであることが好ましく、具体的には、ランプハウス12内の圧力と排気空間形成部材13内の圧力との差圧が例えば1Pa以上に維持されることが好ましい。この差圧は、ガス流通抵抗用隘路Gの距離が小さくなるほど大きくなる。
【0024】
本発明の光照射装置の寸法等の一例を示すと、被処理体Wの幅が例えば500mmのものである場合に、処理チャンバー10における被処理体Wの搬送方向の長さが445mm、被処理体Wの幅方向の長さが1090mmである。
ガス流通抵抗用隘路Gの距離(ギャップ)は10mm、被処理体Wが配置されるべき処理領域とランプハウス12の天井面(
図1において上面)との距離が72mm、被処理体Wが配置されるべき処理領域と排気空間形成部材13の底面(
図1において下面)との距離が150mmである。
ランプハウス12内の圧力は外部雰囲気(大気圧)よりも2Pa高い陽圧、排気空間形成部材13内の圧力は外部雰囲気(大気圧)よりも2Pa低い陰圧、その差圧は4Paとされる。
紫外線ランプ11の長さが640mm、紫外線ランプ11の有効照射幅が510mmである。紫外線ランプ11の表面(
図1において下面)と被処理体Wが配置されるべき処理領域との距離が4mmである。
ガス供給口からの不活性ガスの供給量は100L/min、排気空間形成部材13のガス排出口17からのガスの排気量は200L/min、サブチャンバー21,22の各排気部21A,21B,22A,22Bからの排気量は、各々200L/minとされる。
【0025】
上記の光照射装置においては、以下のように光洗浄処理が行われる。すなわち、搬送経路に沿って、搬送手段によって処理チャンバー10の搬入口18から被処理体Wが処理領域に搬入される。被処理体Wの処理領域への搬送に伴っては、ランプハウス12の開口12Hに設けられた遮蔽体(枠部12A)と被処理体Wの幅方向の両側縁との距離(ガス流通抵抗用隘路Gの距離)が小さいために、少量の空気しか被照射物Wの表面に付着して処理領域の周囲に持ち込まれない。処理領域において被処理体Wの一面に紫外線ランプ11からの紫外線が照射されると、当該紫外線、および、被処理体Wの搬送に伴って僅かに持ち込まれた空気に紫外線が照射されることによって発生したオゾンによって、被処理体Wの一面が光洗浄される。紫外線が照射された被処理体Wは、その後、搬送経路に沿って搬出口19から搬出される。
この一連の処理中、ランプハウス12内においては、ガス供給管16のガス供給口から不活性ガス(窒素ガス)が供給される。供給された不活性ガスは、ランプハウス12内に充満して、紫外線ランプ11を冷却すると共に、紫外線ランプ11と被処理体Wとの間の紫外線放射空間の空気を置換する。ランプハウス12内に充満した不活性ガスは、開口12Hに設けられた遮蔽体(枠部12A)と被処理体Wの幅方向の両側縁との間のガス流通抵抗用隘路Gから排気空間形成部材13内の排気空間へと僅かずつ流出し、排気空間形成部材13のガス排出口17から、ランプハウス12内および排気空間において発生されたオゾンと共に強制的に排気される。また、ランプハウス12内に供給された不活性ガス、ランプハウス12内および排気空間において発生されたオゾンは、処理チャンバー10の搬入口18および搬出口19を介してサブチャンバー21,22の方向に流出し、当該サブチャンバー21,22の各排気部21A,21B,22A,22Bからも強制的に排気される。
【0026】
被処理体Wの搬送速度は、例えば被処理体Wがシート状のフィルムである場合には0.5~40m/minとされ、板状のガラス基板である場合には0.5~9m/minとされる。
【0027】
以上のような光照射装置によれば、ランプハウス12の開口に、被処理体Wの両側縁部との間にガス流通抵抗用隘路Gを形成する遮蔽体が設けられている。そして、ガス流通抵抗用隘路Gが形成されていることによってランプハウス12内の空間と排気空間形成部材13内の空間との間の自由なガスの流通が阻害されてガスの流通抵抗が大きくなることにより、ランプハウス12内の密閉性が高められる。従って、被処理体Wの種類および形状に基づいて決定される搬送速度によらずに、従来よりも少量の不活性ガスによって紫外線放射空間内の酸素濃度を安定的に低減させることができ、その結果、紫外線放射空間内の酸素濃度にバラツキが生ずることを抑制することができ、これにより、紫外線放射空間における紫外線の減衰が安定的に抑制されると共に、オゾン源となる酸素は被処理体に付着する空気として少量が当該被処理体の搬送に伴って安定的に供給されるので、結局、高い安定性で光洗浄を行うことができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば遮蔽体は、被処理体の搬送方向に伸びる側縁部の先端が、被処理体の側縁部に接近する状態に設けられているものであってもよい。
具体的には、遮蔽体が、
図4に示されるように、基端部24Aおよび先端部24Bがクランク状に連続された遮蔽部材24よりなるものであってもよい。この遮蔽部材24は、基端部24Aがランプハウス12の枠部12Aの下面側(
図4において下面側)に接着されて、先端部24Bが被処理体Wの搬送平面よりも被処理体Wの他面側のレベル位置の平行平面に沿って伸び、さらに、先端部24Bにおける被処理体Wの搬送方向に伸びる側縁(先端縁)が被処理体Wの幅方向の両側縁部に接近し、かつ、被処理体Wの幅方向の両側縁部の他面を覆わない状態に突出されている。これにより、被処理体Wの両側縁と遮蔽部材24の先端部24Bにおける被処理体Wの搬送方向に伸びる側縁(先端縁)との間にガス流通抵抗用隘路Gが形成される。この遮蔽部材24の先端部24Bにおける被処理体Wの搬送方向に伸びる側縁(先端縁)と被処理体Wが配置されるべき処理領域の幅方向の側縁との距離d1は5~10mmとされる。また、この遮蔽部材25の先端部25Bにおける被処理体Wの搬送方向に伸びる側縁(先端縁)と被処理体Wが配置されるべき処理領域の幅方向の側縁との被処理体Wの幅方向の距離d2は0~5mmとされる。この例の光照射装置においては、ランプハウス12の枠部12Aと被処理体Wの幅方向の両側縁との距離は、
図1~
図3の光照射装置よりも大きくてもよい。なお、
図4において、
図1~
図3の光照射装置と同じ構成部材については同じ符号を付して示した。
【0029】
また遮蔽体は、被処理体の搬送方向に伸びる側縁部が、被処理体の側縁部の他面を覆う状態に設けられているものであってもよい。
具体的には、遮蔽体が、
図5および
図6に示されるように、基端部25Aおよび先端部25Bがクランク状に連続された遮蔽部材25よりなるものであってもよい。この遮蔽部材25は、基端部25Aがランプハウス12の枠部12Aの下面側(
図5において下面側)に接着されて、先端部25Bが被処理体Wの幅方向の両側縁部の他面(
図5において下面)を接触せずに覆うよう突出されている。これにより、被処理体Wの他面(
図5において下面)と遮蔽部材25の先端部25Bの上面(
図5において上面)との間に、ガス流通抵抗用隘路Gが形成される。この遮蔽部材25の先端部25Bにおける被処理体Wの搬送方向に伸びる側縁と被処理体Wが配置されるべき処理領域の幅方向の側縁との被処理体Wの幅方向の距離d3は0~5mm、遮蔽部材25の先端部25Bの上面と被処理体Wが配置されるべき処理領域の他面側の通過平面との高さ方向の距離d4は5~10mmとされる。この例の光照射装置においては、ランプハウス12の枠部12Aと被処理体Wの幅方向の両側縁との距離は、
図1~
図3の光照射装置よりも大きくてもよい。なお、
図6は排気空間側から見た斜視図である。また、
図5および
図6において、
図1~
図3の光照射装置と同じ構成部材については同じ符号を付して示した。
【0030】
また、遮蔽体が、
図7および
図8に示されるように、板状の遮蔽部材26よりなるものであってもよい。この板状の遮蔽部材26は、ランプハウス12の枠部12Aにおける被処理体Wの搬送方向に伸びる両側縁部の下面(
図7において下面)と、被処理体Wの幅方向の両側縁部の他面(
図7において下面)とを、接触せずに覆うように、被処理体Wの搬送方向の両端部が支持されることにより配置されている。これにより、被処理体Wの幅方向の両側縁部の他面と遮蔽部材26の上面(
図7において上面)との間、および、ランプハウス12の枠部12Aにおける被処理体Wの搬送方向に伸びる側縁部の下面と遮蔽部材26の上面との間に、ガス流通抵抗用隘路Gが形成される。この遮蔽部材26における被処理体Wの搬送方向に伸びる内方の側縁と被処理体Wが配置されるべき処理領域の幅方向の側縁との被処理体Wの幅方向の距離は0~5mm、遮蔽部材26の上面と被処理体Wが配置されるべき処理領域の他面側の通過平面との高さ方向の距離は5~10mmとされる。また、遮蔽部材26における被処理体Wの搬送方向に伸びる外方の側縁とランプハウス12の枠部12Aの側縁との被処理体Wの幅方向の距離は0~5mm、遮蔽部材26の上面とランプハウス12の枠部12Aの下面との高さ方向の距離は5~10mmとされる。この例の光照射装置においては、ランプハウス12の枠部12Aと被処理体Wの幅方向の両側縁との距離は、
図1~
図3の光照射装置よりも大きくてもよい。なお、
図8は排気空間側から見た斜視図である。また、
図7および
図8において、
図1~
図3の光照射装置と同じ構成部材については同じ符号を付して示した。
【0031】
また、遮蔽体が、
図9および
図10に示されるように、ランプハウス12の開口12Hに連続して、被処理体Wの搬送平面よりも被処理体Wの他面側のレベル位置の平行平面に沿って伸びる板状の枠部12Bよりなり、当該枠部12Bにおける被処理体Wの搬送方向に伸びる側縁部が被処理体Wの幅方向の両側縁部の他面を接触せずに覆うよう状態に突出されているものであってもよい。これにより、被処理体Wの他面(
図9において下面)とランプハウス12の枠部12Bの上面(
図9において上面)との間に、ガス流通抵抗用隘路Gが形成される。この枠部12Bにおける被処理体Wの搬送方向に伸びる側縁と被処理体Wが配置されるべき処理領域の幅方向の側縁との被処理体Wの幅方向の距離は0~5mm、枠部12Bの上面と被処理体Wが配置されるべき処理領域の他面側の通過平面との高さ方向の距離は5~10mmとされる。なお、
図10は排気空間側から見た斜視図である。また、
図9および
図10において、
図1~
図3の光照射装置と同じ構成部材については同じ符号を付して示した。
【0032】
また例えば、遮蔽体は、被処理体の他面側の全面を覆う状態に設けられているものであってもよい。
具体的には、
図11および
図12に示されるように、板状の遮蔽部材27よりなる。この遮蔽部材27は、ランプハウス12の枠部12Aにおける被処理体Wの搬送方向に伸びる両側縁部の下面(
図11において下面)と、被処理体Wの他面の全面とを、接触せずに覆うように、被処理体Wの搬送方向の両端部が支持されることにより配置されている。これにより、ランプハウス12の枠部12Aにおける被処理体Wの搬送方向に伸びる側縁部の下面と遮蔽部材27の上面(
図11において上面)との間に、ガス流通抵抗用隘路Gが形成される。この遮蔽部材27における被処理体Wの搬送方向に伸びる側縁とランプハウス12の枠部12Aの側縁との被処理体Wの幅方向の距離は0~5mm、遮蔽部材27の上面とランプハウス12の枠部12Aの下面との高さ方向の距離は5~10mmとされる。この例の光照射装置においては、ランプハウス12の枠部12Aと被処理体Wの幅方向の両側縁との距離は、
図1~
図3の光照射装置よりも大きくてもよい。なお、
図12は排気空間側から見た斜視図である。また、
図11および
図12において、
図1~
図3の光照射装置と同じ構成部材については同じ符号を付して示した。
【0033】
また例えば、遮蔽体は、被処理体の搬送方向に伸びる両側縁部が、被処理体の幅方向に変位可能に設けられていてもよい。
具体的には、
図13および
図14に示されるように、遮蔽体が、ランプハウス12の開口12Hに連続して、被処理体Wの搬送平面よりも被処理体Wの他面側のレベル位置の平行平面に沿って伸びる板状の枠部12Cの他面(
図13において下面)上に支持され、被処理体Wの幅方向の両側縁部の他面(
図13において下面)を接触せずに覆うよう突出された板状の遮蔽部材28よりなる。この遮蔽部材28におけるランプハウス12の枠部12Cに支持される両側縁部の、被処理体Wの搬送方向の先端部および後端部に、被処理体Wの幅方向に伸びる長穴28hが合計4つ形成されており、当該長穴28hがランプハウス12の枠部12Cにネジ29によってネジ止めされることによって、当該遮蔽部材28がランプハウス12に固定されている。そして、長穴28hにおけるネジ止めの位置を調整することによって、遮蔽部材28の被処理体Wの搬送方向に伸びる両側縁部の、被処理体Wの幅方向に突出する長さを変位させることができる。この例の光照射装置においては、被処理体Wの他面(
図13において下面)と遮蔽部材28の上面(
図13において上面)との間に、ガス流通抵抗用隘路Gが形成される。この遮蔽部材28における被処理体Wの搬送方向に伸びる側縁と被処理体Wが配置されるべき処理領域の幅方向の側縁との被処理体Wの幅方向の距離は0~5mm、遮蔽部材28の上面と被処理体Wが配置されるべき処理領域の他面側の通過平面との高さ方向の距離は5~10mmとされる。なお、
図13および
図14において、
図1~
図3の光照射装置と同じ構成部材については同じ符号を付して示した。
【0034】
さらに例えば、本発明の光照射装置においては、被処理体が孔を有するものである場合には、当該孔を覆う遮風体が設けられていてもよい。
例えば
図7および
図8に示した光照射装置において被処理体として孔を有するものを用いる場合について説明する。
図15および
図16に示されるように、板状の遮風体30が、被処理体Wの幅方向の中央部に、搬送方向に離間するよう設けられた複数の貫通孔Whを接触せずに覆うよう状態に、被処理体Wの搬送方向の両端部が支持されることにより配置されている。
これにより、被処理体Wの他面における貫通孔Whの両側縁部と遮風体30の上面(
図15において上面)との間に、ランプハウス12内の空間と排気空間形成部材13内の空間との間の自由なガスの流通が阻害されるガス流通抵抗用隘路Gxが形成される。この遮風体30における被処理体Wの搬送方向に伸びる両側縁と被処理体Wの貫通孔Whが配置されるべき位置との被処理体Wの幅方向の距離は0~5mm、遮風体30の上面と被処理体Wが配置されるべき処理領域の他面側の通過平面との高さ方向の距離は5~10mmとされる。なお、
図16は排気空間側から見た斜視図である。また、
図15および
図16において、
図7および
図8の光照射装置と同じ構成部材については同じ符号を付して示した。
このような光照射装置によれば、被処理体Wが貫通孔Whを有するものである場合であっても、当該貫通孔Whからの自由なガスの流通が阻害されてガスの流通抵抗が大きくなることにより、ランプハウス12内の密閉性を高めることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
<実施例1>
図1~
図3に従った構成を有する光照射装置〔1〕を作製した。具体的には、以下の通りである。
・処理チャンバー;被処理体の搬送方向の長さ:445mm、被処理体の幅方向の長さ:1090mm、処理領域とランプハウスの天井面との距離:72mm、処理領域と排気空間形成部材の底面との距離:150mm、ガス流通抵抗用隘路の距離(ギャップ):10mm
・紫外線ランプ;種類:キセノンエキシマランプ、中心波長:172nm、長さ:640mm、有効照射幅:510mm、処理領域との距離:4mm
・ランプハウス内の圧力:外部雰囲気(大気圧)よりも2Pa高い陽圧
・排気空間形成部材内の圧力:外部雰囲気(大気圧)よりも2Pa低い陰圧(差圧は4Pa)
・ガス供給口からの不活性ガスの供給量:100L/min
・排気空間形成部材のガス排出口からのガスの排気量:200L/min
・サブチャンバーの各排気部からの排気量:各々200L/min
・被処理体;種類:シート状のフィルム、幅:500mm
【0037】
<比較例1>
実施例1において、ガス流通抵抗用隘路を設けず、被処理体の両側縁とランプハウスの枠部の側縁との距離を50mmとしたこと以外は同様にして、比較用の光照射装置〔2〕を作製した。
【0038】
このような光照射装置〔1〕、〔2〕において、被処理体の搬送速度を0~20m/minに変更し、搬送経路の処理領域に位置されたときの被処理体の表面の酸素濃度を測定した。結果を
図17のグラフに示す。
図17において、光照射装置〔1〕に係る結果を四角プロット(■)で示し、光照射装置〔2〕に係る結果を三角プロット(▲)で示した。
【0039】
図17のグラフから明らかなように、ガス流通抵抗用隘路が設けられた実施例に係る光照射装置〔1〕においては、搬送経路の処理領域に位置されたときの被処理体の表面の酸素濃度のバラツキが2.5%±0.1%程度であり、比較例に係る光照射装置〔2〕における表面の酸素濃度のバラツキ(2.5%±1%程度)と比較して略一定に維持され、従って、搬送速度に依存しないことが確認された。
【符号の説明】
【0040】
10 処理チャンバー
11 紫外線ランプ
12 ランプハウス
12A,12B,12C 枠部
12H 開口
13 排気空間形成部材
13H 開口
15H 開口
16 ガス供給管
17 ガス排出口
18 搬入口
19 搬出口
21,22 サブチャンバー
21A,21B,22A,22B 排気部
24,25,26,27,28遮蔽部材
24A,25A 基端部
24B,25B 先端部
28h 長穴
29 ネジ
30 遮風体
51 放電ランプ
52 ランプハウス
53 排気空間形成部材
55 サブチャンバー
55A 排気部
56 ガス供給管
57 ガス排出口
58 搬入口
59 搬出口
G,Gx ガス流通抵抗用隘路
W 被処理体
Wh 孔