IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】塗料用樹脂組成物、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/12 20060101AFI20220113BHJP
   C09D 123/00 20060101ALI20220113BHJP
   C09D 123/28 20060101ALI20220113BHJP
   C09D 127/24 20060101ALI20220113BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
C09D133/12
C09D123/00
C09D123/28
C09D127/24
C08F220/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017148998
(22)【出願日】2017-08-01
(65)【公開番号】P2019026768
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】小杉 直宏
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-256577(JP,A)
【文献】特開昭61-215666(JP,A)
【文献】特開昭58-071966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00- 10/00
C09D 101/00-201/10
C08C 19/00- 19/44
C08F 6/00-246/00
C08F 301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂(A)と、共重合体(B)とを含む塗料用樹脂組成物であって、
前記共重合体(B)は、メタクリル酸メチル(b1)由来の構成単位の割合が80~97質量%、
前記(b1)以外の(メタ)アクリル酸アルキルモノエステル(b2)由来の構成単位の割合が、0~10質量%、
酸基を有する重合性単量体(b3)由来の構成単位の割合が、2~10質量%、
前記(b1)、(b2)、及び(b3)以外の単量体(b4)由来の構成単位の割合が、0~18質量%であり、
塗料用樹脂組成物の数平均分子量(Mn)が、1,000~30,000である、塗料用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂(A)と前記共重合体(B)との質量比である(A)/(B)が0.5/99.5~50/50である請求項1に記載の塗料用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂(A)が、塩素化ポリオレフィン樹脂である請求項1又は2に記載の塗料用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の塗料用樹脂組成物を製造する方法であって、
前記ポリオレフィン樹脂(A)の存在下で、前記共重合体(B)の原料となる単量体を共重合して前記共重合体(B)を生成する工程を含む、塗料用樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料用樹脂組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系共重合体を含む樹脂組成物は、耐候性、柔軟性、強度、及び接着性等に優れており、塗料、インキ、接着剤、及び合成皮革等の用途に広く使用されている。特に塗料の用途にあっては、自動車、家庭電化製品、及び建材等の分野で各種素材への塗装用として、それぞれの製品に要求される性能に合った種々のアクリル系共重合体を含む樹脂組成物が提供されている。
【0003】
軽量化、低コスト化又はその他の目的から、塗装対象の基材として、プラスチックの需要が増加している。中でもポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂は、成型性、軽量化、低コスト、及びリサイクル性等を特徴とすることから、自動車部品、及び家庭電化製品等の用途における使用量が増加している。
しかし、ポリオレフィン系樹脂は、一般に結晶性が高く極性も小さいことから、塗料、印刷インキ、及び接着剤等の膜がポリオレフィン系基材に付着しにくいという欠点を有している。かかる欠点を解決するために、従来、研磨等の物理的処理、クロム酸混液、及び溶剤等による化学的処理、その他プラズマ、及びコロナ放電等による処理、並びにプライマー組成物を用いる処理等が提案されてきた。
ポリオレフィン系樹脂の他にも、塗膜の付着性が悪く塗装が困難な難塗装性プラスチックとして、ナイロン樹脂が知られている。
【0004】
特許文献1は、特定のアクリル系単量体と、特定の塩素化ポリオレフィンとを、特殊な製法によって反応させることで、塗装作業性が良好で、付着性、塗膜の外観、耐溶剤性、及び保存安定性のバランスが良好なポリオレフィン系樹脂基材用の塗料を開示している。
特許文献2は、塩素化ポリオレフィン、塩素化ポリジエン、及びアクリル系単量体を共重合して得られる樹脂を含む塗料が、ポリオレフィン系樹脂に対して優れた付着性を有し、耐候性、耐水性、耐溶剤性等の諸物性に加え、強靭で光沢のある塗膜を与えることができることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭59-138271号公報
【文献】特開昭61-215666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の塗料から得られる塗膜にあっては、化粧品、及び日焼け止めクリーム等が付着した人の手等が触れることによって、軟化等の劣化が起きてしまうことがあった。かかる劣化は化粧品等に含まれる溶剤成分に起因する。そのため従来の塗料は、化粧品に対する耐性(耐化粧品汚染性)、及び日焼け止めクリームに対する耐性(耐日焼け止めクリーム汚染性)が十分でなかった。
特許文献1に記載の塗料にあっては、塗膜の耐日焼け止めクリーム汚染性が劣る傾向がある。
特許文献2に記載の塗料にあっては、貯蔵安定性が悪く、経時での増粘が発生しやすく、塗膜の耐日焼け止めクリーム汚染性が劣る傾向がある。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、ポリオレフィン系樹脂、及びナイロン樹脂等の難塗装性プラスチック基材に、前処理やプライマー塗装等の工程を必要とすることなく塗装でき、かつ貯蔵安定性、並びに塗膜の外観、付着性、耐化粧品汚染性及び耐日焼け止めクリーム汚染性等に優れた塗料用樹脂組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の構成成分と組成比とを有する塗料用樹脂組成物が、上記課題を解決することを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は下記に関する。
[1] ポリオレフィン樹脂(A)と、共重合体(B)とを含む塗料用樹脂組成物であって、前記共重合体(B)は、メタクリル酸メチル(b1)由来の構成単位の割合が80~97質量%、前記(b1)以外の(メタ)アクリル酸アルキルモノエステル(b2)由来の構成単位の割合が、0~10質量%、酸基を有する重合性単量体(b3)由来の構成単位の割合が、2~10質量%、前記(b1)、(b2)、及び(b3)以外の単量体(b4)由来の構成単位の割合が、0~18質量%である塗料用樹脂組成物。
[2] 前記ポリオレフィン樹脂(A)と前記共重合体(B)との質量比である(A)/(B)が0.5/99.5~50/50である[1]に記載の塗料用樹脂組成物。
[3] 前記ポリオレフィン樹脂(A)が、塩素化ポリオレフィン樹脂である[1]又は[2]に記載の塗料用樹脂組成物。
[4] [1]~[3]のいずれか1項に記載の塗料用樹脂組成物を製造する方法であって、前記ポリオレフィン樹脂(A)の存在下で、前記共重合体(B)の原料となる単量体を共重合して前記共重合体(B)を生成する工程を含む、塗料用樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂、及びナイロン樹脂等の難塗装性プラスチック基材に、前処理やプライマー塗装等の工程を必要とすることなく塗装でき、かつ貯蔵安定性、外観、付着性、耐化粧品汚染性、耐日焼け止めクリーム汚染性等に優れた塗料用樹脂組成物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の塗料用樹脂組成物、及びその製造方法について、順次詳細に説明する。
[塗料用樹脂組成物]
本発明の塗料用樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)を含む。
≪ポリオレフィン樹脂(A)≫
塗料用樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)を含む。ポリオレフィン樹脂(A)は、塩素化ポリオレフィン樹脂であってもよく、非塩素化ポリオレフィン樹脂であってもよい。また、ポリオレフィン樹脂(A)は、酸変性されたものであってもよい。ポリオレフィン樹脂(A)は、塗料用樹脂組成物によって形成される塗膜に優れた付着性を付与する。
ポリオレフィン樹脂(A)としては、市販品を用いてもよい。
ポリオレフィン樹脂(A)の市販品としては、以下の市販品が挙げられる。
アウローレン350S(日本製紙(株)製ポリオレフィン)、アウローレン500S(日本製紙(株)製ポリオレフィン)、ハードレンTD-15B(東洋紡(株)製ポリオレフィン)、ハードレンNA-3002(東洋紡(株)製ポリオレフィン)、スーパークロンL(日本製紙(株)製塩素化ポリオレフィン、塩素含有率27.5%)、スーパークロン832L(日本製紙(株)製無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィン、塩素含有率27質量%)、スーパークロン822(日本製紙(株)製無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィン、塩素含有率24.5質量%)、スーパークロン803MW(日本製紙(株)製塩素化ポリオレフィン、塩素含有率29.5質量%)、スーパークロン814H(日本製紙(株)製無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィン、塩素含有率41質量%)、スーパークロン813A(日本製紙(株)製無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィン、塩素含有率30質量%)、ハードレン14LLB(東洋紡(株)製塩素化ポリオレフィン、塩素含有率27質量%)、ハードレンB-13(東洋紡(株)製アクリル変性塩素化ポリオレフィン、塩素含有率16質量%)等のポリオレフィン樹脂;ハードレン14LWP(東洋紡(株)製塩素化ポリオレフィン、塩素含有率27質量%)、ハードレン15LLP(東洋紡(株)製塩素化ポリオレフィン、塩素含有率30質量%)、ハードレンM-28P(東洋紡(株)製無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィン、塩素含有率20質量%)、ハードレンF-225P(東洋紡(株)製無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィン、塩素含有率25質量%)、スーパークロン831S(日本製紙(株)製塩素化ポリオレフィン、塩素含有率30質量%)、スーパークロンS-481(日本製紙(株)製塩素化ポリオレフィン、塩素含有率24.5質量%)、スーパークロン836S(日本製紙(株)製塩素化ポリオレフィン、塩素含有率28質量%)等の固形タイプのポリオレフィン樹脂等。これらの中でも、耐日焼け止めクリーム汚染性の観点から、塩素化ポリオレフィン樹脂であることが好ましく、無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンがより好ましい。環境対応の観点から、トルエン等の溶剤を含まない固形タイプの市販品が好ましい。これらの市販品は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率が50質量%以下であれば、ポリオレフィン樹脂、及びナイロン樹脂等の難塗装性プラスチックとの付着性に優れる傾向にある。
また、塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率は多いほど貯蔵安定性に優れる傾向にある。
【0012】
≪共重合体(B)≫
本発明の塗料用樹脂組成物は、共重合体(B)を含む。共重合体(B)は、メタクリル酸メチル(b1)由来の構成単位の割合が80~97質量%、(b1)以外の(メタ)アクリル酸アルキルモノエステル(b2)由来の構成単位の割合が、0~10質量%、酸基を有する重合性単量体(b3)由来の構成単位の割合が、2~10質量%、(b1)、(b2)、及び(b3)以外の単量体(b4)由来の構成単位の割合が、0~18質量%である。
【0013】
<メタクリル酸メチル(b1)>
メタクリル酸メチル(b1)由来の構成単位は、塗膜を形成するための基本的性能、すなわち、塗装作業性、乾燥性、硬度、耐溶剤性、耐候性、耐化粧品汚染性、耐日焼け止めクリーム汚染性、及び外観等の向上に寄与する。
メタクリル酸メチル(b1)由来の構成単位の割合は、共重合体(B)の全構成単位100質量%に対して、80~97質量%である。メタクリル酸メチル(b1)由来の構成単位の割合が多いほど塗料用樹脂組成物によって形成される塗膜の耐溶剤性、及び耐日焼け止めクリーム汚染性が良好となる傾向にある。該下限値は、好ましくは82質量%以上である。メタクリル酸メチル(b1)由来の構成単位の割合が少ないほど塗料用樹脂組成物によって形成される塗膜の耐水性、及び耐化粧品汚染性が良好となる傾向にある。該上限値は、好ましくは96質量%以下である。
【0014】
<(b1)以外の(メタ)アクリル酸アルキルモノエステル(b2)>
(b1)以外の(メタ)アクリル酸アルキルモノエステル(b2)(以下、「(メタ)アクリル酸エステル(b2)」と記す。)としては、以下の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。
エチル(メタ)アクリレート、ノルマルプロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル基が直鎖又は分岐状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート等のアルキル基が環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル。これらの(メタ)アクリル酸エステル(b2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、「(メタ)アクリル酸エステル」とはアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの総称である。また、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートとメタクリレートの総称であり、他の化合物もこれに準ずる。
【0015】
(メタ)アクリル酸エステル(b2)由来の構成単位の割合は、共重合体(B)の全構成単位100質量%に対して、0~10質量%である。(メタ)アクリル酸エステル(b2)由来の構成単位の割合が10質量%以下であり、好ましくは6質量%以下である。この割合は少ないほど耐日焼け止めクリーム汚染性が優れる傾向にある。なお、(メタ)アクリル酸エステル(b2)は任意の構成単位であり、その割合は0質量%であってもよい。
【0016】
<酸基を有する重合性単量体(b3)>
酸基を有する重合性単量体(b3)(以下、「単量体(b3)」と記す。)としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
(メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、5-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等。これらの単量体(b3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、共重合体(B)を製造する際の共重合性、塗料用樹脂組成物の貯蔵安定性、得られる塗膜の付着性及び耐日焼け止めクリーム汚染性の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸とメタクリル酸の総称である。
【0017】
単量体(b3)由来の構成単位の割合は、共重合体(B)の全構成単位100質量%に対して、2~10質量%である。単量体(b3)由来の構成単位の割合が多いほど耐日焼け止めクリーム汚染性が優れる傾向にある。該下限値は、好ましくは3質量%以上である。単量体(b3)由来の構成単位の割合が少ないほど塗料用樹脂組成物の貯蔵安定性、塗膜の耐水性、及び耐化粧品汚染性が優れる傾向にある。該上限値は、好ましくは8.0質量%以下である。
【0018】
<(b1)、(b2)、及び(b3)以外の単量体(b4)>
(b1)、(b2)、及び(b3)以外の単量体(b4)(以下、「単量体(b4)」と記す。)としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プラクセルFM((株)ダイセル製、カプロラクトン付加モノマー)、及びプラクセルFA((株)ダイセル製、カプロラクトン付加モノマー)等の水酸基を有する重合性単量体;スチレン、α-メチルスチレン、及びクロロスチレン等の芳香族重合性単量体;ビニルトルエン、及びエチルビニルベンゼン等のアルキルビニルベンゼン;ビニルナフタレン等の多環芳香族重合性化合物;アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等のシアノ基を有する重合性単量体;N-シクロヘキシルマレイミド、及びN-ブチルマレイミド等のマレイミド誘導体;アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルアルキルケトン、(メタ)アクリルアミドピバリンアルデヒド、ジアセトン(メタ)アクリレ-ト、アセトニルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレ-トアセチルアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタンジオ-ル-1,4-アクリレート-アセチルアセテート、及びアクリルアミドメチルアニスアルデヒド等のアルデヒド基、又はカルボニル基を有する重合性単量体;(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、及びN-メチロールアクリルアミド等のアミド基を有する重合性単量体;アリルグリシジルエーテル、及びグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する重合性単量体;α-ブチル-ω-(3-メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、及びアクリロイル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等の重合性不飽和基を有するポリジメチルシロキサン;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及びビニルトリメトキシシラン等の重合性不飽和有機シラン化合物;ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の内部架橋反応する化合物;1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、及びトリアリルシアヌレート等の分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有する単量体;上記の化合物と共重合可能なビニル系単量体等。これらの単量体(b4)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
単量体(b4)由来の構成単位の割合は、共重合体(B)の全構成単位100質量%に対して、0~18質量%である。単量体(b4)由来の構成単位の割合が18質量%以下であり、好ましくは12質量%以下である。この割合は少ないほど耐日焼け止めクリーム汚染性が優れる傾向にある。
【0020】
塗料用樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)と、共重合体(B)とを含む。ポリオレフィン樹脂(A)と共重合体(B)との質量比である(A)/(B)は、0.5/99.5~50/50であることが好ましい。前記(A)/(B)が前記下限値以上であれば、形成される塗膜の難塗装性プラスチックに対する付着性が良好となる傾向にある。該下限値は、より好ましくは、3/97以上であり、さらに好ましくは5/95以上である。前記(A)/(B)が前記上限値以下であれば、形成される塗膜の耐溶剤性や硬度が良好となる傾向にある。該上限値は、より好ましくは40/60以下であり、さらに好ましくは30/70以上である。
【0021】
塗料用樹脂組成物の数平均分子量(Mn)は、1,000~30,000であることが好ましい。塗料用樹脂組成物の数平均分子量が前記下限値以上であれば、得られる塗膜の耐油性、及び耐溶剤性が良好となる傾向にある。塗料用樹脂組成物の数平均分子量が前記上限値以下であれば、得られる塗膜の外観が良好になる傾向にある。
なお、数平均分子量は、ゲルパーミェーションクロマトグラフィ装置(東ソー(株)製)によって、テトラヒドロフランを溶媒として、40℃で測定される値である。
【0022】
≪塗料用樹脂組成物の任意成分≫
本発明の塗料用樹脂組成物は、そのままでも塗料とすることができるが、必要に応じて、任意成分として、光輝剤、充填剤、可塑剤、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、及びレベリング剤等の公知の塗料用添加物、並びにポリウレタン等の軟質付与剤を含んでもよい。ポリオレフィン系基材に対する付着性をさらに向上させるために、付着付与剤として、塩素化ポリオレフィン、及び無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィン等を添加してもよい。
【0023】
塗料用樹脂組成物は、任意成分として架橋剤を含んでもよい。
塗料用樹脂組成物が水酸基を有する場合には、架橋剤としてメラミン樹脂、及びイソシアネート化合物等を含んでもよい。これにより、耐溶剤性、耐水性、及び耐候性等の塗膜性能をさらに向上させることができる。
メラミン樹脂としては、n-ブチル化メラミン樹脂、及びメチル化メラミン樹脂等を挙げることができる。メラミン樹脂の配合量は、塗料用樹脂組成物中の配合比率が5~50質量%の範囲となる量とするのが好ましい。
イソシアネート化合物としては、フリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等を使用することができる。イソシアネート化合物としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
ヘキサメチレンジイソシアネート、及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,4-(ないしは2,6-)ジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、及び1,3-ジ(イソシアネートメチル)-シクロヘキサン等の環状脂肪族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、及びキシレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;上記のイソシアネート化合物と多価アルコール、及び水等との付加物;上記のイソシアネート化合物の重合体、及びイソシアネート・ビューレット体等。イソシアネート化合物の配合量は、塗料用樹脂組成物中の水酸基含有成分との当量比でNCO/OHの比が0.1/1~3/1となることが好ましい。
【0024】
塗料用樹脂組成物の製造方法の製造方法は、特に制限されないが、得られる塗料用樹脂組成物が相分離しにくく、良好な経時安定性を実現できる等の理由から後述する本発明の「[塗料用樹脂組成物の製造方法]」の項で述べる方法が好ましい。
【0025】
[塗料用樹脂組成物の製造方法]
本発明の塗料用樹脂組成物の製造方法は、上述した塗料用樹脂組成物を製造する方法であって、前記ポリオレフィン樹脂(A)の存在下で、前記共重合体(B)の原料となる単量体を共重合して前記共重合体(B)を生成する工程を含む。共重合体(B)の原料となる単量体とは、必須原料である前記メタクリル酸メチル(b1)及び前記単量体(b3)、並びに任意原料である前記(メタ)アクリル酸エステル(b2)及び前記単量体(b4)である。
【0026】
前記メタクリル酸メチル(b1)、前記(メタ)アクリル酸エステル(b2)、前記単量体(b3)、並びに前記単量体(b4)については、前述した「[塗料用樹脂組成物]」の項で述べた内容と、同内容とすることができる。
【0027】
前記メタクリル酸メチル(b1)と、前記(メタ)アクリル酸エステル(b2)と、前記単量体(b3)と、前記単量体(b4)とを重合する際には、ラジカル重合開始剤を用いてもよい。
ラジカル重合開始剤としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、及び2,2’-アゾビスメチロニトリル等のアゾ系化合物;ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオクトエート、及びターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等の過酸化物系化合物等。
【0028】
重合反応は、60~180℃、より好ましくは75~120℃の反応温度で3~15時間反応を続ける等の方法を採用できる。重合方法は、乳化重合、懸濁重合、及び塊状重合等の方法を採用することができる。特に制限されないが、生産性、及び作業性の観点から有機溶剤を用いる溶液重合法が好ましい。
溶液重合法に使用できる溶剤としては、下記の溶剤が挙げられる。
トルエン、キシレン、及びその他高沸点の芳香族溶剤等の芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、及びセロソルブアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、及びイソブチルアルコール等のアルコール系溶剤;SS-100(JXTGエネルギー(株)製、製品名)、及びシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤等。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、建物、及び自動車の室内等での濃度規制の観点から、芳香族系溶剤以外の溶剤が好ましい。塗料化する際に軟質化等の性能向上を目的とし、ポリウレタン等を配合する場合には、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤は、溶解性を損なうため使用しないことが好ましい。
【0029】
(用途)
本発明の塗料用樹脂組成物は、プラスチック基材の塗料として適用することができる。
プラスチック基材の具体例としては、ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体;ポリカーボネート樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ナイロン樹脂、及びABS樹脂等が挙げられる。なお、上記のプラスチック基材の他にも、本発明の塗料用樹脂組成物は、ステンレススチール、及びアルミニウム等の金属基材;ガラス、スレート板、コンクリート、及び珪酸カルシウム等の珪酸塩系基材;石膏系、石綿系、及びセラミック系等の無機基材;木材類、紙類、繊維類、及びFRP等の各種基材に適用することもできる。
【0030】
本発明の塗料用樹脂組成物は、本発明の塗料用樹脂組成物から得られる塗膜をプラスチック基材の表面上に積層させて、積層体とすることができる。プラスチック基材の表面上の塗膜からなる積層体の一例として、以下に示す1層の塗膜、及び2層の塗膜が挙げられる。1層の塗膜としては、本発明の塗料用樹脂組成物に顔料を添加して得られる塗膜が挙げられる。該1層構造の塗膜は、表面の光沢、及び平滑性が良好である。2層の塗膜としては、ベース層と、クリア層とから構成される2層の塗膜が挙げられる。前記ベース層は、本発明の塗料用樹脂組成物に顔料を添加して得られ、意匠性に優れる。前記クリア層は、本発明の塗料用樹脂組成物から得られ、光沢、及び平滑性が良好である。
上述した1層、又は2層の塗膜を得るために塗料用樹脂組成物に添加される顔料としては、公知の有機系顔料、並びにアルミ、酸化チタン、酸化鉄、アルミニウム・フレーク、及びチタン・コート・マイカ等の無機系顔料が挙げられる。
【0031】
プラスチック基材上に本発明の塗料用樹脂組成物を塗工する塗装方法の具体例としては、スプレー塗装法、刷毛塗り塗装法、浸漬塗装法、ロール塗装法、及び流し塗装法が挙げられる。
塗工された本発明の塗料用樹脂組成物を乾燥させる温度、及び時間は、本発明の塗料用樹脂組成物の種類、希釈剤の種類、及び含有量等によって適宜選択することができる。
乾燥させる温度の一例は、室温~200℃であるが、プラスチック基材の耐熱温度以下であることが好ましい。乾燥時間は1~30分以上が好ましいが、上限は特に限定されず、使用するシンナーの蒸発速度、及び乾燥条件等を考慮して目的に応じて設定されることができる。
【0032】
(作用効果)
以上説明したように、塗料用樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)と共重合体(B)とを含む。前記共重合体(B)は、メタクリル酸メチル(b1)由来の構成単位の割合が80~97質量%、(メタ)アクリル酸エステル(b2)由来の構成単位の割合が、0~10質量%、単量体(b3)由来の構成単位の割合が、2~10質量%、単量体(b4)由来の構成単位の割合が、0~18質量%である。よって、本発明の塗料用樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂、及びナイロン樹脂等の、難塗装性プラスチック基材に、前処理やプライマー塗装等の工程を必要とすることなく塗装でき、かつ貯蔵安定性、外観、付着性、耐化粧品汚染性、及び耐日焼け止めクリーム汚染性等に優れる。
【実施例
【0033】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。なお、実施例中の「部」、及び「%」はそれぞれ「質量部」、及び「質量%」を表す。
【0034】
[塗料用樹脂組成物の原料]
実施例で用いた塗料用樹脂組成物の原料は下記の通りである。表1で使用した略号とともに下記に示す。
「ポリオレフィン樹脂(A)」
・塩素化ポリプロピレン(東洋紡(株)製「ハードレンF-225P」、表1中「F-225P」と記す。)
・塩素化ポリプロピレン(東洋紡(株)製「ハードレンF-15LLP」、表1中「15LLP」と記す。)
・塩素化ポリプロピレン(日本製紙(株)製「スーパークロン831S」、表1中「831S」と記す。)
・塩素化ポリプロピレン(日本製紙(株)製「スーパークロン836S」、表1中「836S」と記す。)
「メタクリル酸メチル(b1)」
・メチルメタクリレート(表1中「MMA」と記す。)
「(b1)以外の(メタ)アクリル酸アルキルモノエステル(b2)」
・ブチルメタクリレート(表1中「BMA」と記す。)
・イソブチルメタクリレート(表1中「IBMA」と記す。)
・ブチルアクリレート(表1中「BA」と記す。)
「酸基を有する重合性単量体(b3)」
・メタクリル酸(表1中「MAA」と記す。)
・アクリル酸(表1中「AA」と記す。)
「(b1)、(b2)、及び(b3)以外の単量体(b4)」
・ヒドロキシエチルメタクリレート(表1中「HEMA」と記す。)
・ヒドロキシエチルアクリレート(表1中「HEA」と記す。)
・1,3-ブチレングリコールジメタクリレート(表1中「BDMA」と記す。)
・エチレングリコールンジメタクリレート(表1中「EDMA」と記す。)
・α-ブチル-ω-(3-メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン(JNC(株)社製「サイラプレーンFM0721」(表1中「シラン化合物」と記す。)
【0035】
【表1】
【0036】
[実施例1~4、比較例1~4]
冷却器、温度計、滴下ロート、及び撹拌機を備えた四つ口フラスコに、酢酸ブチル55部、及び表1に示す配合割合で、ポリオレフィン(A)として、塩素化ポリオレフィンを仕込み、フラスコの内温を100℃に昇温した後、30分保持し塩素化ポリオレフィンを溶解した。
次に、フラスコの内温を100℃に保持したまま、酢酸ブチル12部、及びノルマルブタノール12部、メタクリル酸メチル(b1)82.5部、(b1)以外の(メタ)アクリル酸アルキルモノエステル(b2)としてブチルアクリレート2.0部、(メタ)アクリル酸(b3)としてアクリル酸6.0部、(b1)、(b2)、及び(b3)以外の単量体(b4)として、HEMA9.0部、及びシラン化合物(サイラプレーンFM0721)0.5部を入れ、ラジカル重合開始剤(D1)としてt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエートを4時間かけて滴下した。
滴下終了後、1時間反応を進行させた後に、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート0.2部を1時間かけて添加し、更に100℃で2時間保持した。
次いで、固形分が30%になるように酢酸エチルを添加し、塩素化ポリオレフィンの軟化点以下の温度まで強制冷却した後に取り出し、ポリオレフィン(A)と共重合体(B)を含む塗料用樹脂組成物を得た。
【0037】
得られた各塗料用樹脂組成物について、数平均分子量、加熱残分、及びガードナー粘度を以下の「[塗料用樹脂組成物の特性値]」の記載にしたがって測定した。得られた塗料用樹脂組成物によって形成される塗膜の性能を以下の「[塗料用樹脂組成物の評価]」の記載にしたがって評価した。それぞれの結果を表1に示した。
【0038】
[塗料用樹脂組成物の特性値]
「数平均分子量」
テトラヒドロフランにて溶液濃度が0.4%になるように調整した各塗料用樹脂組成物を東ソー(株)製カラム(GE4000HXLおよびG2000HXL)を用いた東ソー(株)製ゲルパーミェーションクロマトグラフィ装置に注入し(注入量100μl)、流量1ml/分(溶離液テトラヒドロフラン)、カラム温度40℃の条件で、ポリスチレン基準の数平均分子量を測定した。
「加熱残分」
塗料用樹脂を105℃で乾燥させ、各塗料用樹脂の加熱残分を得た。
「ガードナー粘度」
ガードナーホルト泡粘度計にて25℃で測定した。
【0039】
[塗料用樹脂組成物の評価]
「ワニス安定性(貯蔵安定性)」
室温の屋内貯蔵所に得られた各塗料用樹脂組成物を50℃で貯蔵し1ヶ月後の溶液状態を分離の有無を観察した。溶液状態を下記の評価基準によって3段階で評価した。
○:良好。
△:貯蔵した50ml瓶を逆さまにすると不均一な状態で流動する。
×:2層に完全分離。
【0040】
[塗料用樹脂組成物の塗膜の性能評価]
「付着性」
得られた各塗料用樹脂組成物を、酢酸エチル/酢酸ブチル/SS-100(JXTGエネルギー(株)製炭化水素系高沸点溶剤)の配合比が20/40/40とされたシンナーによりフォードカップ#4にて12秒となるように希釈してプラスチック用塗料を調製した。プラスチック用塗料を、基材であるポリプロピレン樹脂(日本ポリケム(株)製「TX-1810A」)から成形した厚さ3mmの板に、乾燥膜厚15μとなるようにスプレー塗装して塗膜を形成した。20分間放置した後、80℃で30分加熱乾燥し、得られた塗装板を塗膜試験片とした。この塗膜試験片に対して、碁盤目(1mm間隔)のセロテープ(登録商標)を用いた剥離テストによる試験を行うことにより判定した。付着性について、○:剥離なし、△:やや剥離、×:剥離ありの3段階で評価した。
「耐化粧品汚染性」
上述した塗膜試験片の上にブラバスヘアーリキッド((株)資生堂製)1gを均一に塗り広げ、続いてガーゼをかぶせた後、50℃の密閉容器中に7日間放置した。取り出し中性洗剤水で洗浄後、水をよく拭き取り、塗膜試験片の外観を目視により判定し、○:良好、△:やや軟化、×:不良の3段階で評価した。
「耐日焼け止めクリーム汚染性」
上述した塗膜試験片の上に日焼け止め剤(ウルトラシアードライタッチ・サンブロックSPF45、ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)製)0.5gを均一に塗り広げ、続いてガーゼをかぶせた後、50℃の密閉容器中に7日間放置した。取り出し中性洗剤水で洗浄後、水をよく拭き取り、塗膜試験片の外観を目視により判定し、○:良好、△:わずかに軟化、×:軟化の3段階で評価した。
【0041】
表1に示すように、実施例1~4の塗料用樹脂組成物は貯蔵安定性に優れ、さらに本発明の被覆用樹脂を用いて形成した塗膜は、付着性、耐化粧品汚染性、及び耐日焼け止めクリーム汚染性等に優れていた。(メタ)アクリル酸エステル(b2)由来の構成単位の割合が10質量%より大きい比較例1の塗料用樹脂組成物の塗膜は、耐日焼け止めクリーム汚染性に劣っていた。単量体(b3)由来の構成単位の割合が2質量%より小さい比較例2の塗料用樹脂組成物の塗膜は、耐化粧品汚染性、及び耐日焼け止めクリーム汚染性に劣っていた。メタクリル酸メチル(b1)由来の構成単位の割合が80質量%より小さい比較例3の塗料用樹脂組成物の塗膜は、貯蔵安定性、付着性、及び耐化粧品汚染性に劣っていた。単量体(b3)由来の構成単位の割合が10質量%より大きい比較例4の塗料用樹脂組成物の塗膜は、貯蔵安定性、付着性、及び耐化粧品汚染性に劣っていた。