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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】粘接着剤層、粘接着シートおよび樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220113BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20220113BHJP
   C09J 167/02 20060101ALI20220113BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J167/00
C09J167/02
C09J11/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017187719
(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公開番号】P2019059892
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀昭
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-189580(JP,A)
【文献】特開2002-235064(JP,A)
【文献】特開2002-121527(JP,A)
【文献】特開2009-221388(JP,A)
【文献】特開2017-115149(JP,A)
【文献】特開2015-134906(JP,A)
【文献】特開2010-059228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂(A)および加水分解抑制剤(B)を含有する粘接着剤組成物[I]からなる粘接着剤層であって、
上記粘接着剤層が、基材上に形成され、基材とともに粘接着シートを構成した際に、
下記の初期粘着力(α)が1N/25mm未満となり、かつ、下記の経時粘着力(β)が初期粘着力(α)の10倍以上となることを特徴とする粘接着剤層。
初期粘着力(α):粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、23℃、50%RH環境下で30分間放置した後に、オートグラフを用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)で測定される粘着力。
経時粘着力(β):粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、50℃環境下で5日間加熱し、その後23℃、50%RH環境下に戻し、30分間放置した後に、オートグラフを用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)で測定される粘着力。
【請求項2】
下記の経時粘着力(γ)が1N/25mm以下となり、かつ、経時粘着力(β)が経時粘着力(γ)の5倍以上となることを特徴とする請求項1記載の粘接着剤層。
経時粘着力(γ):粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、23℃、50%RH環境下に2日間放置した後に、オートグラフを用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)で測定される粘着力。
【請求項3】
ポリエステル系樹脂(A)の構成原料として、多価カルボン酸類(A1)と多価アルコール(A2)とを含有し、多価アルコール(A2)がポリエーテルグリコール(A2-1)を含有することを特徴とする請求項1または2記載の粘接着剤層。
【請求項4】
多価アルコール(A2)がアルキレングリコール(A2-2)を含有することを特徴とする請求項3記載の粘接着剤層。
【請求項5】
多価カルボン酸類(A1)が芳香族多価カルボン酸類(A1-1)を含有することを特徴とする請求項3または4記載の粘接着剤層。
【請求項6】
粘接着剤組成物[I]が、さらに架橋剤(C)を含有することを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘接着剤層。
【請求項7】
光学部材の貼り合わせに用いることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘接着剤層。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の粘接着剤層を有することを特徴とする粘接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系樹脂を用いてなる粘接着剤層および粘接着シートに関し、さらに詳しくは、常温では粘着力が低く、貼り直しができる程度に仮固定でき、加熱により強粘着となり被着体と強固に接着する、または、被着体同士を強固に接着することができる粘接着剤層および粘接着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル系樹脂は、耐熱性、耐薬品性、耐久性、機械的強度に優れているため、フィルム、ペットボトル、繊維、トナー、電機部品、および、接着剤や粘着剤等、幅広い用途で用いられている。
【0003】
また、近年では、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等の表示装置や、タッチパネル等の上記表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられるようになっており、これらの製造においては、光学フィルムや基材等の光学部材の貼り合わせに、透明な粘着シートが使用されている。
【0004】
かかる粘着シートとしては、例えば、溶剤系厚塗り粘着剤で分子量を下げて、固形分を上げたアクリル系粘着剤を使い、衝撃吸収でき、強固に貼り付けることができる粘着シート(例えば、特許文献1参照。)や、被着体に貼合後に活性エネルギー線を照射することで、粘着力を上げる粘着シート(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-21142号公報
【文献】特開2013-234322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の粘着シートは、光学部材の貼り合わせにおいて、充分な粘着力を有するものの、光学部材の貼り合わせをする際に仮止めや貼り直しをするには粘着力が強くて作業性の点で更なる改善が望まれる。
また、特許文献2の粘着シートは、初期の粘着力は低くなる場合もあるが、粘着力を上げるために、活性エネルギー線照射が必要で、活性エネルギー線に弱い基材、被着体を用いた場合には使用が困難であった。また、活性エネルギー線としてよく用いられる紫外線を用いる場合には、紫外線を通さない基材や被着体では、使用できないことがあった。熱重合開始剤を用いれば、熱でも使用可能であるが、その保存安定性は充分なものではなかった。
このように光学部材の貼り合わせにおいては、仮止めや貼り直しが容易に行えるほどに初期粘着力が低く、その後の部材同士の接着には強固に接着させることができる粘接着シートが望まれている。
【0007】
そこで、本発明ではこのような背景下において、常温(例えば、23℃)では粘着力が低く、貼り直しができる程度に仮固定でき、加熱により強粘着となり被着体と強固に接着する、または、被着体同士を強固に接着することができる粘接着剤層および粘接着シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ポリエステル系樹脂(A)および加水分解抑制剤(B)を含有する粘接着剤組成物[I]からなる粘接着剤層であって、上記粘接着剤層が、基材上に形成され、基材とともに粘接着シートを構成した際に、貼り合わせ初期の粘着力が低くて、加熱により、粘着力が初期粘着力よりも非常に大きくなる粘接着剤層を見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明の要旨は、ポリエステル系樹脂(A)および加水分解抑制剤(B)を含有する粘接着剤組成物[I]からなる粘接着剤層であって、上記粘接着剤層が、基材上に形成され、基材とともに粘接着シートを構成した際に、下記の初期粘着力(α)が1N/25mm未満となり、かつ、下記の経時粘着力(β)が初期粘着力(α)の10倍以上となる粘接着剤層に関するものである。
初期粘着力(α):粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、23℃、50%RH環境下で30分間放置した後に、オートグラフを用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)で測定される粘着力。
経時粘着力(β):粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、50℃環境下で5日間加熱し、その後23℃、50%RH環境下に戻し、30分間放置した後に、オートグラフを用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)で測定される粘着力。
【0010】
また、本発明の第2の要旨は、下記の経時粘着力(γ)が1N/25mm以下となり、かつ、経時粘着力(β)が経時粘着力(γ)の5倍以上となる粘接着剤層に関するものである。
経時粘着力(γ):粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、23℃、50%RH環境下に2日間放置した後に、オートグラフを用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)で測定される粘着力。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粘接着剤層は、常温では粘着力が低く、貼り直しができる程度に仮固定でき、加熱により強粘着となり被着体と強固に接着する、または、被着体同士を強固に接着することができる粘接着剤層であり、粘接着剤層を有する粘接着シートに有用であり、とりわけ、光学部材の貼り合わせ用の粘接着シートに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、「粘接着」とは、初期では貼り直しができる程度の微粘着であり、加熱等により後に強粘着となる状態のことをいう。
また、「カルボン酸類」との用語は、カルボン酸に加え、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル等のカルボン酸誘導体も含むものである。
【0013】
本発明の粘接着剤層は、ポリエステル系樹脂(A)および加水分解抑制剤(B)を含有する粘接着剤組成物[I]からなる粘接着剤層であって、上記粘接着剤層が、基材上に形成され、基材とともに粘接着シートを構成した際に、下記の初期粘着力(α)が1N/25mm未満となり、かつ、下記の経時粘着力(β)が初期粘着力(α)の10倍以上となるものである。
初期粘着力(α):粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、23℃、50%RH環境下で30分間放置した後に、オートグラフを用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)で測定される粘着力。
経時粘着力(β):粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、50℃環境下で5日間加熱し、その後23℃、50%RH環境下に戻し、30分間放置した後に、オートグラフを用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)で測定される粘着力。
【0014】
上記初期粘着力(α)の測定においては、具体的には例えば、以下のようにして行うことができる。
【0015】
まず、粘接着剤組成物を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケータを用いて塗布し、100℃で3分間乾燥して、粘接着剤組成物層(厚さ25μm)を形成し、ついで、得られた粘接着剤組成物層表面を離型処理されたPETフィルム(離型フィルム)で覆い、40℃で4日間エージング処理を行い、離型フィルム付き粘接着シートを作製する。
作製した離型フィルム付き粘接着シートから測定用サンプルとして25mm×150mmのサイズに切り出し、その離型フィルムを剥がして、粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、23℃、50%RH環境下で30分間放置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、「オートグラフAGS-H 500N」)を用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)を測定することにより、初期粘着力(α)が求められる。
【0016】
また、上記経時粘着力(β)の測定においては、具体的には例えば、以下のようにして行うことができる。
【0017】
上記初期粘着力(α)において作製した測定用サンプルである離型フィルム付き粘接着シートの、離型フィルムを剥がして、粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、50℃環境下(特に湿度を制御しない状態)で5日間加熱し、その後23℃、50%RH環境下に戻し、30分間放置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、「オートグラフAGS-H 500N」)を用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)を測定することにより、経時粘着力(β)が求められる。
【0018】
本発明において、上記初期粘着力(α)は、1N/25mm未満であり、好ましくは、0.5N/25mm以下、特に好ましくは0.3N/25mm以下である。かかる粘着力(α)が大きすぎると強粘着になりすぎて、貼り直しができる程度の仮固定に用いることができないこととなる。なお、初期粘着力(α)の下限値は通常0.0001N/25mmであるが、仮止めの時に不具合が起こりにくい点で、0.02N/25mm以上が好ましく、更には0.05N/25mm以上が好ましく、特には0.08N/25mm以上が好ましい。
【0019】
また、本発明において、上記経時粘着力(β)は、初期粘着力(α)の10倍以上であり、好ましくは15~1000倍、さらに好ましくは20~100倍である。かかる経時粘着力が上記倍率より小さすぎると、初期では貼り直しができ、経時において強粘着となる、目的とする粘接着シートが得られなくなる。
【0020】
さらに、本発明の粘接着剤層は、下記の経時粘着力(γ)が1N/25mm以下となり、かつ、経時粘着力(β)が経時粘着力(γ)の5倍以上となることが好ましい。
経時粘着力(γ):粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、23℃、50%RH環境下に2日間放置した後に、オートグラフを用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)で測定される粘着力。
【0021】
上記経時粘着力(γ)の測定においては、具体的には、以下のようにして行うことができる。
【0022】
上記初期粘着力(α)において作製した測定用サンプルである離型フィルム付き粘接着シートの、離型フィルムを剥がして、粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、23℃、50%RH環境下に2日間放置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、「オートグラフAGS-H 500N」)を用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)を測定することにより、経時粘着力(γ)が求められる。
【0023】
本発明において、上記の経時粘着力(γ)は、1N/25mm以下であることが好ましく、さらに0.8N/25mm以下、特に0.6N/25mm以下であることが好ましい。かかる経時粘着力(γ)が大きすぎると強粘着になりすぎて、加熱をしない状態にも関わらず貼り直しができる程度の仮固定に用いることが困難な傾向がある。なお、経時粘着力(γ)の下限値は通常0.0001N/25mmであるが、仮止めの時に不具合が起こりにくい点で、0.02以上が好ましく、更には0.05以上が好ましく、特には0.1以上が好ましい。
【0024】
また、上記経時粘着力(β)は、経時粘着力(γ)の5倍以上であることが好ましく、さらに8~1000倍、特に10~100倍であることが好ましい。かかる経時粘着力(β)が上記倍率より小さすぎると、常温では貼り直しができ、加熱後において強粘着となる、目的とする粘接着シートを得ることが困難となる傾向がある。
【0025】
本発明の粘接着剤層は、ポリエステル系樹脂(A)および加水分解抑制剤(B)を含有する粘接着剤組成物[I]が硬化されてなる層であり、通常、かかる粘接着剤層が基材上に形成された粘接着シートとして用いられる。
また、基材を有さない基材レスタイプの基材レス両面粘接着シートとしても用いることができる。基材レス両面粘接着シートとは、粘接着剤層の両面に離型フィルムを設けた構成の粘接着シートであり、その一方の離型フィルムを剥がして、基材と貼合し、粘接着シートとして用いることができる。
【0026】
本発明において、上記粘接着剤組成物[I]は、接着力の点から、下記のポリエステル系樹脂(A)を必須成分とし、加水分解抑制剤(B)を含有してな、さらに(B)および(C)成分の両成分を含有することが好ましい。
以下、粘接着剤組成物[I]を構成する各成分について順次説明する。
【0027】
<ポリエステル系樹脂(A)>
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、構成原料として、多価カルボン酸類(A1)および多価アルコール(A2)を含む共重合成分を共重合することにより得られるものである。なかでも、上記初期粘着力(α)および経時粘着力(β)の値を満足させるべく、多価アルコール(A2)が、ポリエーテルグリコール(A2-1)およびアルキレングリコール(A2-2)の少なくとも一方を含有することが初期粘着力と経時粘着力のバランスの点から好ましい。
【0028】
〔多価カルボン酸類(A1)〕
本発明で用いられる多価カルボン酸類(A1)としては、二価カルボン酸類、三価以上の多価カルボン酸類があり、ポリエステル系樹脂を安定的に得られる点から二価カルボン酸類が好ましく用いられる。
【0029】
上記二価カルボン酸類としては、例えば、マロン酸類、ジメチルマロン酸類、コハク酸類、グルタル酸類、アジピン酸類、トリメチルアジピン酸類、ピメリン酸類、2,2-ジメチルグルタル酸類、アゼライン酸類、セバシン酸類、フマル酸類、マレイン酸類、イタコン酸類、チオジプロピオン酸類、ジグリコール酸類、等の脂肪族ジカルボン酸類;
テレフタル酸類、イソフタル酸類、ベンジルマロン酸類、ジフェン酸類、4,4’-オキシジ安息香酸類、ナフタレンジカルボン酸類、等の芳香族ジカルボン酸類;
1,3-シクロペンタンジカルボン酸類、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸類、1,3-シクロペンタンジカルボン酸類、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸類、2,5-ノルボルナンジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸類、等の脂環族ジカルボン酸類;等が挙げられる。
また、上記三価以上のカルボン酸類としては、例えば、トリメリット酸類、ピロメリット酸類、アダマンタントリカルボン酸類、トリメシン酸類、等が挙げられる。
これらの多価カルボン酸類(A1)は単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0030】
また、上記多価カルボン酸類(A1)の中でも、凝集力を付与する点から、芳香族多価カルボン酸類(A1-1)を含ませることが好ましく、特にイソフタル酸類が好ましく用いられる。
【0031】
かかる芳香族多価カルボン酸類(A1-1)の含有割合としては、多価カルボン酸類(A1)全体に対して、30モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは50~90モル%、さらに好ましくは60~80モル%である。かかる含有割合が低すぎると、経時粘着力が上がらず、充分な粘着性能が得られなくなる傾向がある。
【0032】
また、これらの中でも、タック感を付与する点から、脂肪族多価カルボン酸類を含ませることもでき、例えば、セバシン酸類が挙げられる。
【0033】
かかる脂肪族多価カルボン酸類の含有割合としては、多価カルボン酸類(A1)全体に対して、50モル%以下であることが好ましく、特に好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下である。かかる含有割合が高すぎると経時粘着力の向上が不充分となる傾向がある。
【0034】
本発明においては、粘着物性の点から、多価カルボン酸類(A1)として、芳香族多価カルボン酸類(A1-1)および脂肪族多価カルボン酸類を併用することもできる。芳香族多価カルボン酸類(A1-1)および脂肪族多価カルボン酸類の含有比率(モル比)としては、芳香族多価カルボン酸類(A1-1)/脂肪族多価カルボン酸類=30/70~100/0であることが好ましく、特に好ましくは50/50~100/0、さらに好ましくは80/20~100/0である。
【0035】
なお、ポリエステル系樹脂(A)中に分岐点を増やす目的で、三価以上の多価カルボン酸類を用いることが好ましく、なかでも比較的、ゲル化が発生しにくい点でトリメリット酸類を用いることがさらに好ましい。
【0036】
かかる三価以上の多価カルボン酸類の含有割合としては、粘着剤の凝集力を高めることができる点で、多価カルボン酸類(A1)全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%であり、かかる含有量が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造時にゲル化が生じやすい傾向がある。
【0037】
多価カルボン酸類(A1)の含有割合は、ポリエステル系樹脂(A)全体に対して、5重量%以上であることが好ましく、さらには、8~50重量%、特には、10~30重量%であることが好ましい。かかる含有割合が低すぎると、基材密着性が得られ難くなる傾向があり、高すぎると、初期粘着力が上昇する傾向がある。
【0038】
〔多価アルコール(A2)〕
本発明で用いられる多価アルコール(A2)としては、二価アルコール、三価以上の多価アルコールがある。
【0039】
上記二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;
1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等の脂環族ジオール;
4,4’-チオジフェノール、4,4’-メチレンジフェノール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、o-,m-およびp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオールおよびそれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体等の芳香族ジオール;
等が挙げられる。
また、上記三価以上の多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,3,6-ヘキサントリオール、アダマンタントリオール等が挙げられる。
さらに、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルグリコール(A2-1)が挙げられる。
上記のこれら多価アルコール(A2)は単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0040】
本発明においては、上記多価アルコール(A2)の中でも、初期粘着力を低くすることができる点から、ポリエーテルグリコール(A2-1)を含むことが好ましく、なかでもポリテトラメチレンエーテルグリコールが好ましく用いられる。
【0041】
多価アルコール(A2)におけるポリエーテルグリコール(A2-1)の含有割合は、多価アルコール(A2)全体に対して10~99モル%であることが好ましく、特には30~98モル%、さらには51~97モル%であることが好ましい。かかる含有割合が低すぎると、充分に低い初期粘着力が得られ難くなる傾向があり、高すぎると、ポリエステル系樹脂が得られにくい傾向がある。
【0042】
さらに、本発明において、上記多価アルコール(A2)の中でも、重合のしやすさの点から、アルキレングリコール(A2-2)を含むことが好ましく、アルキレングリコール(A2-2)としては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)等の脂肪族ジオールが挙げられ、なかでもエチレングリコールが好ましく用いられる。
【0043】
上記アルキレングリコール(A2-2)の含有割合は、多価アルコール(A2)全体に対して、1~90モル%であることが好ましく、特には2~70モル%、さらには3~49モル%、殊には3.5~20モル%であることが好ましい。かかる含有割合が低すぎると、安定した樹脂形成が得られ難くなる傾向があり、高すぎると室温(23℃)での経時粘着力が上昇してしまう傾向がある。
【0044】
また、ポリエステル系樹脂(A)中に分岐点を増やす目的で三価以上の多価アルコールを用いることが好ましく、このような三価以上の多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,3,6-ヘキサントリオール、アダマンタントリオール等が挙げられる。
【0045】
かかる三価以上の多価アルコールの含有割合としては、多価アルコール(A2)全体に対して、20モル%以下であることが好ましく、さらには0.1~10モル%であることが好ましく、特には0.5~5.0モル%が好ましく、かかる含有割合が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造が困難となる傾向がある。
【0046】
上記多価アルコール(A2)の含有割合は、ポリエステル系樹脂(A)全体に対して、15重量%以上であることが好ましく、さらには、40~95重量%、特には、70~90重量%であることが好ましい。かかる含有割合が低すぎると、充分に初期粘着力が下がらない傾向があり、高すぎると、粘着性能が低下する傾向がある。
【0047】
多価カルボン酸類(A1)と多価アルコール(A2)の配合割合としては、多価カルボン酸類(A1)1当量あたり、多価アルコール(A2)が1~3.0当量であることが好ましく、特に好ましくは1.1~2.0当量である。多価アルコール(A2)の配合割合が低すぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、高すぎると収率が低下する傾向がある。
【0048】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、上記多価カルボン酸類(A1)と多価アルコール(A2)とを任意に選び、これらを触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより製造される。
【0049】
重縮合反応に際しては、まずエステル化反応が行われた後、重縮合反応が行われる。
【0050】
かかるエステル化反応においては、触媒が用いられ、具体的には、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、二酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系触媒等の触媒や酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド等の触媒を挙げることができ、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらの中でも、触媒活性の高さと色相のバランスから、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネート、二酸化ゲルマニウム、酢酸亜鉛が好ましい。
【0051】
該触媒の配合量は、全共重合成分に対して1~10,000ppmであることが好ましく、特に好ましくは10~5,000ppm、さらに好ましくは20~3,000ppmである。かかる配合量が少なすぎると、重合反応が充分に進行しにくい傾向があり、多すぎても反応時間短縮等の利点はなく副反応が起こりやすい傾向がある。
【0052】
エステル化反応時の反応温度については、200~300℃が好ましく、特に好ましくは210~280℃、さらに好ましくは220~250℃である。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進みにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。また、反応時の圧力は通常、常圧下である。
【0053】
上記エステル化反応が行われた後、重縮合反応が行われる。
重縮合反応の反応条件としては、上記のエステル化反応で用いるものと同様の触媒をさらに同程度の量を配合し、反応温度を好ましくは220~280℃、特に好ましくは230~270℃として、反応系を徐々に減圧して最終的には5hPa以下で反応させることが好ましい。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進行しにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。
【0054】
かくして本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)が得られる。
【0055】
なお、かかるポリエステル系樹脂(A)の樹脂組成割合(各成分由来の構造単位割合)は、例えば、NMRにより求めることができる。
【0056】
かかるポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度は、粘着物性の点から-100~40℃であることが好ましく、特には-80~0℃以下、さらには-70~-10℃以下であることが好ましい。かかるガラス転移温度が高すぎると柔軟性が失われ、初期粘着性が低下し、指圧程度の圧力で粘着力が発揮しにくくなり、作業性が低下する傾向があり、低すぎると凝集力が低下し、粘接着シートが変形しやすくなってしまい外観をそこねる傾向がある。
【0057】
ここで、上記ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、TAインスツルメント社製の示差走査熱量計DSC Q20を用いて測定される値である。
なお、測定温度範囲は-90℃から100℃で、温度上昇速度は、10℃/分である。
【0058】
また、上記ポリエステル系樹脂(A)の重量平均分子量は、粘接着剤の凝集力の点から8,000~200,000であることが好ましく、特には10,000~180,000、さらには20,000~150,000であることが好ましい。かかる重量平均分子量が小さすぎると粘接着剤として充分な凝集力が得られず、耐熱性や機械的強度が低下しやすい傾向があり、大きすぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造時にゲル化しやすくなり、樹脂が得られにくい傾向がある。
【0059】
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、「HLC-8320GPC」)に、カラム:TSKgel SuperMultipore HZ-M(排除限界分子量:2×106、理論段数:16,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:4μm)の2本直列を用いることにより測定されるものである。
【0060】
かかるポリスエテル系樹脂(A)の酸価は10mgKOH/g以下であることが好ましく、特には3mgKOH/g以下、さらには1mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が高すぎると、粘接着剤層の一方の面に、金属等の層を重ねた場合に腐食してしまう懸念がある。例えば、金属酸化物薄膜層となる構成とした際に、腐食が起こり、金属酸化物薄膜の導電性が低下する傾向がある。
【0061】
なお、上記ポリエステル系樹脂(A)の酸価は、JIS K 0070に基づき中和滴定により求められるものである。
【0062】
<加水分解抑制剤(B)>
本発明に用いられる粘接着剤組成物[I]は、上記ポリエステル系樹脂(A)と共に、加水分解抑制剤(B)を含有する。かかる加水分解抑制剤(B)は、長期耐久性を担保させるために含有されるものである。
【0063】
上記加水分解抑制剤(B)としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、上記ポリエステル系樹脂(A)のカルボン酸末端基と反応して結合する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、等の官能基を有する化合物等が挙げられる。これらの中でもカルボジイミド基含有化合物が、カルボキシル基末端基由来のプロトンの触媒活性を消失させる効果が高い点で好ましい。
【0064】
上記カルボジイミド基含有化合物としては、通常、カルボジイミド基(-N=C=N-)を分子内に1個以上有する公知のポリカルボジイミドを用いればよいが、より高温高湿下での耐久性を上げる点でカルボジイミド基を分子内に2個以上含有する化合物、すなわち多価カルボジイミド系化合物であることが好ましく、特には3個以上、さらには5個以上、殊には7個以上含有する化合物であることが好ましい。なお、30個以上含有すると分子構造が大きくなりすぎるために、好ましくない傾向がある。また、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成する高分子量ポリカルボジイミドを用いることも好ましい。
【0065】
このような高分子量ポリカルボジイミドとしては、以下のジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させたものが挙げられる。
【0066】
かかるジイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上を併用することができる。このような高分子量ポリカルボジイミドは、合成してもよいし市販品を使用してもよい。
【0067】
カルボジイミド基含有化合物の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)シリーズが挙げられ、それらの中でも、カルボジライト(登録商標)V-01、V-03、V-05、V-07、V-09は有機溶剤との相溶性に優れる点で好ましい。
【0068】
上記エポキシ基含有化合物としては、例えば、グリシジルエステル化合物やグリシジルエーテル化合物等が好ましい。
【0069】
グリシジルエステル化合物の具体例としては、例えば、安息香酸グリシジルエステル、t-Bu-安息香酸グリシジルエステル、p-トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサチック酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステル等が挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0070】
グリシジルエーテル化合物の具体例としては、例えば、フェニルグリシジルエ-テル、o-フェニルグリシジルエ-テル、1,4-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ブタン、1,6-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4-ビス(β,γ-エポキシプポキシ)ベンゼン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-エトキシエタン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-ベンジルオキシエタン、2,2-ビス-[р-(β,γ-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、および2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパンや2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン等のビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるビスグリシジルポリエーテル等が挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0071】
上記オキサゾリン基含有化合物としては、ビスオキサゾリン化合物等が好ましい。具体的には、例えば、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-エチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4,4’-ジエチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-プロピル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ブチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-シクロヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-o-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-エチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ヘキサメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-オクタメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-デカメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-9,9’-ジフェノキシエタンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-シクロヘキシレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ジフェニレンビス(2-オキサゾリン)等を例示することができ、これらの中では、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)が、ポリエステルとの反応性の観点から最も好ましい。また、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0072】
これら加水分解抑制剤(B)としては、揮発性が低い方が好ましく、そのために数平均分子量は高いものを用いる方が好ましく、通常、300~10,000、好ましくは1,000~5,000のものを用いる。
【0073】
加水分解抑制剤(B)の中でも、カルボジイミド基含有化合物を使用することが好ましい。その際の、カルボジイミド当量は、好ましくは、50~10,000、特には100~1,000、さらには150~500であることが好ましい。なお、カルボジイミド当量とは、カルボジイミド基1個あたりの化学式量を示す。
【0074】
上記加水分解抑制剤(B)の含有量は、前記ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1~5重量部、さらに好ましくは0.2~3重量部である。かかる含有量が、多すぎるとポリエステル系樹脂(A)との相溶性不良により濁りが発生する傾向があり、少なすぎると充分な耐久性が得られにくい傾向がある。
【0075】
また、上記加水分解抑制剤(B)の含有量は、前記ポリエステル系樹脂(A)の酸価に応じて、含有量を最適化させることが好ましく、粘接着剤組成物[I]中のポリエステル系樹脂(A)の酸性の官能基のモル数合計(a)に対する、粘接着剤組成物中の加水分解抑制剤(B)の官能基モル数の合計(b)のモル比((b)/(a))が、0.5≦(b)/(a)であることが好ましく、特に好ましくは1≦(b)/(a)≦1,000、さらに好ましくは1.5≦(b)/(a)≦100である。
(a)に対する(b)の含有割合が高すぎると、ポリエステル系樹脂(A)との相溶性が低下したり、粘着力、凝集力、耐久性能が低下する傾向があり、(a)に対する(b)の含有割合が低すぎると、耐湿熱性能が低下する傾向がある。
【0076】
<架橋剤(C)>
本発明に用いられる粘接着剤組成物[I]は、上記ポリエステル系樹脂(A)を含有するものであり、さらに加水分解抑制剤(B)を含むものであるが、通常は架橋剤(C)を含有することが好ましく、架橋剤(C)を含有させることにより、ポリエステル系樹脂(A)を架橋剤(C)で架橋させ凝集力に優れたものとなり、粘接着剤としての性能を向上させる。
【0077】
かかる架橋剤(C)としては、例えば、ポリイソシアネート系化合物、ポリエポキシ系化合物等、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基およびカルボキシル基の少なくとも一方と反応する官能基を有する化合物が挙げられる。これらの中でも初期粘着性と機械的強度、耐熱性をバランスよく両立できる点から、特にポリイソシアネート系化合物を用いることが好ましい。
【0078】
かかるポリイソシアネート系化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、等のポリイソシアネートが挙げられ、また、上記ポリイソシアネートと、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体や、これらポリイソシアネート系化合物のビュレット体、イソシアヌレート体、等が挙げられる。なお、上記ポリイソシアネート系化合物は、フェノール、ラクタム等でイソシアネート部分がブロックされたものでも使用することができる。これらの架橋剤(C)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0079】
かかる架橋剤(C)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)の分子量と用途目的により適宜選択できるが、通常は、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基およびカルボキシル基の少なくとも一方の1当量に対して、架橋剤(C)に含まれる反応性基が、0.2~10当量となる割合で架橋剤(C)を含有することが好ましく、特に好ましくは0.5~5当量、さらに好ましくは0.5~3当量である。
かかる架橋剤(C)に含まれる反応性基の当量数が小さすぎると凝集力が低下し、初期粘着力が高くなる傾向があり、大きすぎると柔軟性が低下し、熱経時粘着力が上がりにくい傾向がある。
【0080】
なお、架橋剤(C)を配合するときは、同時に触媒(D)を含有することが好ましい。
かかる触媒(D)としては、金属触媒、例えば、スズ系や鉛、ビスマス化合物または、鉄、銅、チタン、ジルコニウム、ニッケル、コバルト、マンガン等の遷移金属化合物や、アセチルアセトナート錯体、非金属触媒として三級アミン化合物等が挙げられる。触媒活性の点から、有機スズ系、有機チタン、有機ジルコニウムが好ましい。
【0081】
またポリエステル系樹脂(A)と架橋剤(C)との反応においては、これら(A)および(C)成分と反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0082】
本発明に用いられる粘接着剤組成物[I]においては、上記のポリエステル系樹脂(A)、加水分解抑制剤(B)、架橋剤(C)、触媒(D)の他にも、本発明の効果を損なわない範囲において、ヒンダードフェノール類等の酸化防止剤(E)、軟化剤、紫外線吸収剤、安定剤、耐電防止剤、粘着付与剤、等の添加剤やその他、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料等の粉体、粒子状等の添加剤を配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
なお、上記粘着付与剤については、耐久性と透明性の点から実質的に含有しないことが好ましい。
【0083】
本発明の粘接着剤層の粘接着剤は、上記粘接着剤組成物[I]からなるもの、即ち、粘接着剤組成物[I]が硬化されてなるものである。
【0084】
粘接着剤において、前記の初期粘着力(α)が1N/25mm未満であり、かつ、前記の経時粘着力(β)が初期粘着力(α)の10倍以上に調整するに際しては、例えば、(1)ポリエステル系樹脂(A)の原料組成において、多価カルボン酸類(A1)の中でも、芳香族多価カルボン酸類(A1-1)を多く含有する方法、(2)ポリエステル系樹脂(A)の原料組成において、多価アルコール(A2)の中でも、ポリエーテルグリコール(A2-1)を多く含有する方法、(3) ポリエステル系樹脂(A)の原料組成において、多価アルコール(A2)の中でも、ポリエーテルグリコール(A2-1)とアルキレングリコール(A2-2)を併用する方法、(4)上記(1)および(2)、(1)および(3)の組み合わせ等が挙げられ、粘接着性能の点で(4)の方法が好ましい。
【0085】
かかる粘接着剤は、実質的に酸性基を含有していないことが好ましく、具体的には、酸価が10mgKOH/g以下であることが好ましく、特に好ましくは5mgKOH/g以下、さらに好ましくは1mgKOH/g以下、殊に好ましくは0.5mgKOH/g以下である。実質的な下限は0mgKOH/gである。
なお、上記粘接着剤の酸価は、上記ポリスエテル系樹脂(A)の酸価と同様の方法で求めることができる。
【0086】
本発明に用いられる粘接着剤組成物[I]は、種々の部材の貼り合わせに用いることができるが、なかでも、光学部材の貼り合せに用いる光学部材用粘接着剤として用いることが好ましく、かかる粘接着剤組成物[I]からなる粘接着剤の粘接着剤層を光学部材上に積層形成することにより、上記粘接着剤層付き光学部材を得ることができる。
【0087】
かかる光学部材としては、ITO電極膜やポリチオフェン等の無機系や有機系導電膜等の透明電極膜、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、電磁波シールドフィルム、近赤外線吸収フィルム、AR(アンチリフレクション)フィルム等が挙げられる。これらの中でも、光学部材が透明電極膜であるときに有効で、高い粘着力が得られる点で好ましく、特に好ましくはITO電極膜である。なお、ITO電極膜はガラスやPET等の基材上に薄膜で形成されていることが多いが、本発明では、ITO電極膜がPET基材上に薄膜形成されているフィルムを使用することが特に好ましい。
また、有機EL素子の面発光体の発光面に設けられる光取出フィルム用や、液晶ディスプレイの光拡散シートにも好適である。
【0088】
上記粘接着剤層付き光学部材には、粘接着剤層の光学部材面とは逆の面に、さらに離型フィルムを設けることが好ましく、実用に供する際には、上記離型フィルムを剥離して、粘接着剤層と被着体を貼合する。かかる離型フィルムとしては、シリコン系の離型フィルムを用いることが好ましい。
【0089】
また、本発明の粘接着シートは、支持基材の片面または両面に、粘接着剤層を有する粘接着シートであり、特には、光学部材の貼り合せに用いる光学部材用粘接着シートとして好適である。
なお、本発明において「シート」とは、「フィルム」や「テープ」をも含めた意味として記載するものである。
【0090】
<粘接着シート>
粘接着シートは、例えば、つぎのようにして作製することができる。
かかる粘接着シートの製造方法としては、公知一般の粘接着シートの製造方法にしたがって製造することができ、例えば、基材上に、上記粘接着剤組成物[I]を塗工、乾燥し、反対側の粘接着剤組成物層面に離型シート(または離型フィルム)を貼合し、必要により養生することで基材上に、粘接着剤組成物[I]からなる粘接着剤層を有する本発明の粘接着シートが得られる。
【0091】
また、離型シート上に、上記粘接着剤組成物[I]を塗工、乾燥し、反対側の粘接着剤組成物層面に基材を貼合し、必要により養生することでも、本発明の粘接着シートが得られる。
【0092】
また、離型シートに粘接着剤層を形成し、反対側の粘接着剤層面に離型シートを貼り合わせることにより、基材レス両面粘接着シートを製造することができる。
【0093】
得られた粘接着シートや基材レス両面粘接着シートは、使用時には、上記離型シートを粘接着剤層から剥離して粘接着剤層と被着体を貼合する。
【0094】
上記基材としては、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリイミド;シクロオレフィンポリマー等の合成樹脂シート,アルミニウム、銅、鉄の金属箔,上質紙、グラシン紙等の紙,硝子繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布が挙げられる。これらの基材は、単層体としてまたは2種以上が積層された複層体として用いることができる。
【0095】
これらの中でも特にポリエチレンテレフタレート、ポリイミドからなる基材が好ましく、特には粘接着剤との接着性に優れる点でポリエチレンテレフタレートが好ましく、さらには金属薄膜層を有したポリエチレンテレフタレート(PET)であることが、基材と粘接着剤との粘着力に優れ、なおかつ金属薄膜層を腐食せずに基材を安定的に保つことができ、本発明に用いられる粘接着剤の効果を顕著に発揮できる点で好ましい。
【0096】
なお、本発明においては、ITO電極膜がPET基材上に薄膜形成されているITO電極膜付きPET基材のPET側に粘接着剤層を有し、粘接着剤層を介してPET基材とポリカーボネート(PC)系フィルムが積層され、さらにアクリル系フィルムが積層されてなる光学積層体とすることも好ましい(層構成:ITO電極膜/PET基材/粘接着剤層/PC系フィルム/アクリル系フィルム)。
【0097】
上記離型シートとしては、例えば、上記基材で例示した各種合成樹脂シート、紙、布、不織布等に離型処理したものを使用することができる。離型シートとしては、シリコン系の離型シートを用いることが好ましい。
【0098】
上記基材の厚みとしては、例えば、1~1000μmであることが好ましく、特に好ましくは2~500μm、さらに好ましくは3~300μmである。
【0099】
上記粘接着剤組成物[I]の塗工方法としては、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター等を用いればよい。
【0100】
上記養生処理の条件としては、温度は通常室温(23℃)~70℃、時間は通常1~30日であり、具体的には、例えば23℃で1~20日間、好ましくは、23℃で3~14日間、40℃で1~10日間等の条件で行なえばよい。
【0101】
また、乾燥条件として、乾燥温度は60~140℃が好ましく、特に好ましくは80~120℃であり、乾燥時間は0.5~30分間が好ましく、特に好ましくは1~5分間である。
【0102】
上記粘接着シート、基材レス両面粘接着シートの粘接着剤層の厚みは、2~500μmであることが好ましく、特に好ましくは5~200μm、さらに好ましくは10~100μmである。かかる粘接着剤層の厚みが薄すぎると、粘着力が低下する傾向があり、厚すぎると均一に塗工することが困難となるうえ、塗膜に気泡が入る等の不具合が発生しやすい傾向がある。なお、衝撃吸収性を考慮する際には、50μm以上とすることが好ましい。
【0103】
なお、上記粘接着剤層の厚みは、ミツトヨ社製「ID-C112B」を用いて、粘接着シート全体の厚みの測定値から、粘接着剤層以外の構成部材の厚みの測定値を差し引くことにより求められる値である。
【0104】
上記粘接着シートの粘接着剤層のゲル分率については、耐久性能と粘着力の点から50重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは60~92重量%、さらに好ましくは70~90重量%である。ゲル分率が低すぎると凝集力が低下することにより耐久性が低下する傾向がある。なお、ゲル分率が高すぎると凝集力の上昇により粘着力が低下する懸念がある。
【0105】
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘接着剤層が形成されてなる粘接着シート(離型フィルムを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘接着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0106】
さらに、かかる粘接着シートは、必要に応じて、粘接着剤層の外側に離型フィルムを設け保護されていてもよい。また、粘接着剤層が基材の片面に形成されている粘接着シートでは、基材の粘接着剤層とは反対側の面に剥離処理を施すことにより、該剥離処理面を利用して粘接着剤層を保護することも可能である。
【実施例
【0107】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
また、下記実施例中におけるポリエステル系樹脂の重量平均分子量、ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。ポリエステル系樹脂の酸価については、ポリエステル系樹脂0.5gを7/3(重量比)(トルエン/メタノール)の混合溶媒に溶解し、JIS K0070に基づき中和滴定により測定した。
【0108】
<ポリエステル系樹脂(A)の製造>
以下の製造例で記載するモルとは、多価カルボン酸類(A1)の合計量を1.0モルとした場合のモル比を示す。
【0109】
〔ポリエステル系樹脂(A-1)の製造〕
加熱装置、温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸類(A1)として、イソフタル酸15.5部(1.0モル)、多価アルコール(A2)として、エチレングリコール2.9部(0.5モル)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTG-L1000、保土谷化学社製)80.4部(0.9モル)、トリメチロールプロパン1.2部(0.1モル)、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重縮合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-1)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(A-1)の重量平均分子量は97,000、ガラス転移温度は-69℃、酸価は0.8mgKOH/g、出来上がり成分比は、多価カルボン酸類(A1)としてイソフタル酸が100モル%、多価アルコール(A2)としてエチレングリコール/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/トリメチロールプロパン=6.1モル%/89.8モル%/4.1モル%であった。
【0110】
〔ポリエステル系樹脂(A-2)の製造〕
加熱装置、温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸類(A1)として、イソフタル酸14.3部(1.0モル)、多価アルコール(A2)として、エチレングリコール5.3部(1.0モル)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTG-L1000、保土谷化学社製)80.0部(0.97モル)、トリメチロールプロパン0.3部(0.03モル)、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-2)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(A-2)の重量平均分子量は45,000、ガラス転移温度は-70℃、酸価は0.4mgKOH/gであった。出来上がり成分比は、多価カルボン酸類(A1)としてイソフタル酸が100モル%、多価アルコール(A2)としてエチレングリコール/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/トリメチロールプロパン=2.2モル%/96.8モル%/1.0モル%であった。
【0111】
〔ポリエステル系樹脂(A’-1)の製造〕
加熱装置、温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸類(A1)として、イソフタル酸9.6部(0.2モル)およびセバシン酸46.8部(0.8モル)、多価アルコール(A2)として、ネオペンチルグリコール27.1部(0.9モル)、1,4-ブタンジオール13.0部(0.5モル)、1,6-ヘキサンジオール3.0部(0.087モル)およびトリメチロールプロパン0.5部(0.013モル)、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A’-1)を製造した。得られたポリエステル系樹脂(A’-1)の重量平均分子量は70,000、ガラス転移温度は-50℃、酸価は0.4mgKOH/gであった。
【0112】
<加水分解抑制剤(B)>
加水分解抑制剤(B)として以下のものを用意した。
・(B-1)カルボジイミド基含有加水分解抑制剤(日清紡ケミカル社製、カルボジライトV-07、カルボジイミド当量200)
【0113】
<架橋剤(C)>
架橋剤(C)として以下のものを用意した。
・(C-1)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートの三量体(日本ポリウレタン工業社製、コロネートHX)
【0114】
<触媒(D)>
触媒(D)として以下のものを用意した。
・(D-1)ジブチルチンジラウリレート(DBTL)
・(D-2)ジルコニウムテトラアセチルアセトナート(マツモトファインケミカル製、ZC-150)
【0115】
<酸化防止剤(E)>
酸化防止剤(E)として以下のものを用意した。
・(E-1)ヒンダートフェノール系酸化防止剤(BASF社製、イルガノックス1010)
【0116】
(実施例1~4、比較例1~3)
上記で得られたポリエステル系樹脂を酢酸エチルで固形分濃度50%に希釈し、このポリエステル系樹脂溶液200部(固形分100部)に対し、後記の表1に示す通りに各成分を配合し、撹拌、混合することにより、ポリエステル系粘接着剤組成物を得た。なお、表中の数字は固形分換算の部数を示す。
得られたポリエステル系粘接着剤組成物を用いて、以下の通り評価を行った。
【0117】
<離型フィルム付き粘接着シートの製造>
実施例1~4、比較例1~3で得られたポリエステル系粘接着剤組成物をそれぞれ厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケータを用いて塗布し、100℃で3分間乾燥し、粘接着剤組成物層(厚さ25μm)を形成し、ついで、得られた粘接着剤組成物層表面を離型処理されたPETフィルム(離型フィルム)で覆い、40℃で4日間エージング処理を行い、離型フィルム付き粘接着シートを得た。
【0118】
かかる離型フィルム付き粘接着シートを用いて、ゲル分率、および各条件での粘着力を評価した。結果を後記の表1にまとめて示す。
【0119】
[ゲル分率(%)]
上記で得られた離型フィルム付き粘接着シートの離型フィルムを剥がして、200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘接着剤成分の重量百分率をゲル分率として求めた。ただし、基材の重量は差し引いておいた。
【0120】
[粘着力(N/25mm)]
<初期粘着力(α)>
上記で得られた離型フィルム付き粘接着シートから測定用サンプルとして25mm×150mmのサイズに切り出し、その離型フィルムを剥がして、粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板(ソーダガラス)に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、23℃、50%RH環境下で30分間放置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、「オートグラフAGS-H 500N」)を用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)を測定することにより、粘着力を求めた。
【0121】
<経時粘着力(β)>
上記で得られた離型フィルム付き粘接着シートの離型フィルムを剥がして、粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板(ソーダガラス)に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、50℃環境下で5日間加熱し、その後23℃、50%RH環境下に戻し、30分間放置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、「オートグラフAGS-H 500N」)を用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)を測定することにより、粘着力を求めた。
【0122】
<経時粘着力(γ)>
上記で得られた離型フィルム付き粘接着シートの離型フィルムを剥がして、粘接着シートの粘接着剤層側を23℃、50%RH環境下でガラス板(ソーダガラス)に2kgローラーを往復させて加圧貼付し、23℃、50%RH環境下に2日間放置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、「オートグラフAGS-H 500N」)を用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)を測定することにより、粘着力を求めた。
【0123】
【表1】
【0124】
上記表1の結果より、実施例1~4の粘接着シートは、初期粘着力(α)が低く、貼り直しができる程度の粘着力であり、その後、50℃環境下で5日間加熱した後の経時粘着力(β)は、初期粘着力(α)の10倍以上の強粘着を示すものであった。
これに対して、比較例1および3は、初期粘着力(α)が低く、貼り直しができる程度の粘着力であったが、加熱後の経時粘着力(β)は、強粘着ではなく、初期粘着力(α)の5倍程度の粘着力しか示さなかった。また、比較例2は、初期粘着力(α)が2.5N/25mmという、貼り直しが困難となる粘着力を示す一方、加熱後の経時粘着力(β)は、初期粘着力(α)の5倍程度の粘着力しか示さなかった。
【0125】
また、実施例1~4は、初期の環境条件(23℃×50%RH)を2日間継続した状態の経時粘着力(γ)でも、貼り直しができる程度の低粘着力を維持しつつ、一方で、加熱後の経時粘着力(β)は、経時粘着力(γ)の5倍以上の強粘着を示すものであった。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の粘接着シートは、常温では粘着力が低く、貼り直しができる程度に仮固定でき、加熱により強粘着となり被着体と強固に接着する、または、被着体同士を強固に接着することができる粘接着シートであるため、ディスプレイやそれを構成する光学部品等を貼り合わせるための光学部材の貼り合せ用途に好適に用いることができる。