(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】球体研磨装置及び球体研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 11/06 20060101AFI20220113BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20220113BHJP
B24B 37/025 20120101ALI20220113BHJP
【FI】
B24B11/06
B24B49/10
B24B37/025
(21)【出願番号】P 2017197897
(22)【出願日】2017-10-11
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】増田 祐生
(72)【発明者】
【氏名】河原 徹
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-090811(JP,A)
【文献】特開2005-144562(JP,A)
【文献】実開平06-005858(JP,U)
【文献】特開2015-077657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 11/06
B24B 49/10
B24B 37/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置されて対向面の間に球体を挟圧可能であり、前記球体を研磨加工するために前記対向面に対し平行な面内において相対移動可能且つ前記対向面に対し垂直な方向に相対移動可能な一対の研磨盤と、
前記一対の研磨盤を前記対向面に対し平行な面内において相対移動させるとともに前記対向面に対し垂直な方向に相対移動させる移動装置と、
前記移動装置による前記一対の研磨盤の相対移動によって、前記対向面の間に挟圧される前記球体に発生する荷重を計測する荷重センサと、
前記球体の研磨加工中における前記荷重センサで計測される前記荷重及び前記球体の転がり距離から求まる仕事量を経時的に算出し、前記球体の加工精度と相関する累積仕事量を求める累積仕事量算出部と、
前記累積仕事量算出部による前記累積仕事量に基づいて、前記移動装置を制御して前記球体の研磨加工を行う研磨制御部と、
を備える、球体研磨装置。
【請求項2】
前記球体研磨装置は、前記累積仕事量と前記球体の加工パラメータとを関連付けたデータベース及び前記球体の加工パラメータと前記球体の加工精度とを関連付けたデータベースを記憶する記憶部、を備え、
前記研磨制御部は、前記累積仕事量及び前記データベースに基づいて前記移動装置を制御して前記球体の研磨加工を行う、請求項1に記載の球体研磨装置。
【請求項3】
前記球体研磨装置は、前記一対の研磨盤の前記対向面に対し平行な面内における相対移動速度に基づいて前記球体の転がり距離を算出する転がり距離算出部、を備える、請求項1又は2に記載の球体研磨装置。
【請求項4】
対向配置されて対向面の間に球体を挟圧可能であり、前記球体を研磨加工するために前記対向面に対し平行な面内において相対移動可能且つ前記対向面に対し垂直な方向に相対移動可能な一対の研磨盤と、
前記一対の研磨盤を前記対向面に対し平行な面内において相対移動させるとともに前記対向面に対し垂直な方向に相対移動させる移動装置と、
前記移動装置による前記一対の研磨盤の相対移動によって、前記対向面の間に挟圧される前記球体に発生する荷重を計測する荷重センサと、
前記球体の研磨加工中における前記荷重センサで計測される前記荷重を経時的に計測し、前記球体の加工精度と相関する累積荷重を算出する累積荷重算出部と、
前記累積荷重と前記球体の加工パラメータとを関連付けたデータベース及び前記球体の加工パラメータと前記球体の加工精度とを関連付けたデータベースを記憶する記憶部と、
前記累積荷重算出部による前記累積荷重
及び前記記憶部に記憶された前記データベースに基づいて、前記移動装置を制御して前記球体の研磨加工を行う研磨制御部と、
を備える、球体研磨装置。
【請求項5】
前記一対の研磨盤は、中心軸線が同軸となるように配置され、前記中心軸線の回りに相対回転可能且つ前記中心軸線の方向に相対移動可能に設けられ、前記一対の研磨盤の前記対向面の少なくとも一方に前記中心軸線の回りに環状に形成される研磨溝を有する、請求項1-
4の何れか一項に記載の球体研磨装置。
【請求項6】
球体研磨装置を用いる球体研磨方法であって、
前記球体研磨装置は、
対向配置されて対向面の間に球体を挟圧可能であり、前記球体を研磨加工するために前記対向面に対し平行な面内において相対移動可能且つ前記対向面に対し垂直な方向に相対移動可能な一対の研磨盤と、
前記一対の研磨盤を前記対向面に対し平行な面内において相対移動させるとともに前記対向面に対し垂直な方向に相対移動させる移動装置と、
前記移動装置による前記一対の研磨盤の相対移動によって、前記対向面の間に挟圧される前記球体に発生する荷重を計測する荷重センサと、を備え、
前記球体研磨方法は、
前記一対の研磨盤の前記対向面に対し平行な面内における相対移動速度に基づいて前記球体の転がり距離を算出する転がり距離算出工程と、
前記球体の研磨加工中における前記荷重センサで計測される前記荷重及び前記球体の転がり距離から求まる仕事量を経時的に算出し、前記球体の加工精度と相関する累積仕事量を求める累積仕事量算出工程と、
前記累積仕事量算出工程で求まる前記累積仕事量に基づいて、前記移動装置を制御して前記球体の研磨加工を行う研磨制御工程と、
を備える、球体研磨方法。
【請求項7】
球体研磨装置を用いる球体研磨方法であって、
前記球体研磨装置は、
対向配置されて対向面の間に球体を挟圧可能であり、前記球体を研磨加工するために前記対向面に対し平行な面内において相対移動可能且つ前記対向面に対し垂直な方向に相対移動可能な一対の研磨盤と、
前記一対の研磨盤を前記対向面に対し平行な面内において相対移動させるとともに前記対向面に対し垂直な方向に相対移動させる移動装置と、
前記移動装置による前記一対の研磨盤の相対移動によって、前記対向面の間に挟圧される前記球体に発生する荷重を計測する荷重センサと、を備え、
前記球体研磨方法は、
前記球体の研磨加工中における前記荷重センサで計測される前記荷重を経時的に計測し、前記球体の加工精度と相関する累積荷重を算出する累積荷重算出工程と、
前記累積荷重算出工程で求まる前記累積荷重に基づいて、前記移動装置を制御して前記球体の研磨加工を行う研磨制御工程と、
を備え
、
前記球体研磨装置は、前記累積荷重と前記球体の加工パラメータとを関連付けたデータベース及び前記球体の加工パラメータと前記球体の加工精度とを関連付けたデータベースを記憶する記憶部、を備え、
前記研磨制御工程は、前記累積荷重及び前記データベースに基づいて前記移動装置を制御して前記球体の研磨加工を行う、球体研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球体研磨装置及び球体研磨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、球体を研磨加工する球体研磨装置が記載されている。この球体研磨装置は、環状の第一研磨溝を有する第一研磨盤と、第一研磨盤に対して中心軸線が同軸となるように対向配置され、中心軸線方向に相対移動可能且つ中心軸線回りに相対回転可能に設けられ、第一研磨盤に対向する面に第一研磨溝と対向する環状の第二研磨溝を有する第二研磨盤とを備える。
【0003】
この球体研磨装置は、第一研磨溝と第二研磨溝の間に球体を挟圧し、第一研磨盤と第二研磨盤を相対移動させるとともに相対回転させ、所定の荷重に達したら相対移動を停止させ、所定の時間だけスパークアウトを行って相対回転を停止させる。研磨加工においては、第一研磨盤と第二研磨盤を相対移動させても球体研磨装置や第一研磨盤、第二研磨盤の剛性不足によって設定値通りの研磨量が得られない場合がある。そこで、スパークアウト、すなわち研磨加工の最終段階で第一研磨盤と第二研磨盤の相対移動を停止させ、相対回転のみ行って所定の研磨量に近付ける工程を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の球体研磨装置では、荷重を増加させながら研磨加工を行い、所定の荷重に達したらスパークアウトを行って研磨加工を終了する。しかし、研磨加工の加工条件、すなわち第一研磨盤と第二研磨盤の移動速度や回転速度、スパークアウトの開始荷重等が同一であっても、外乱等により球体の加工精度、特に真球度にバラツキが発生する場合がある。
【0006】
本発明は、球体の加工精度を向上できる球体研磨装置及び球体研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(球体研磨装置及び球体研磨方法)
本発明の第一の球体研磨装置は、対向配置されて対向面の間に球体を挟圧可能であり、前記球体を研磨加工するために前記対向面に対し平行な面内において相対移動可能且つ前記対向面に対し垂直な方向に相対移動可能な一対の研磨盤と、前記一対の研磨盤を前記対向面に対し平行な面内において相対移動させるとともに前記対向面に対し垂直な方向に相対移動させる移動装置と、前記移動装置による前記一対の研磨盤の相対移動によって、前記対向面の間に挟圧される前記球体に発生する荷重を計測する荷重センサと、前記球体の研磨加工中における前記荷重センサで計測される前記荷重及び前記球体の転がり距離から求まる仕事量を経時的に算出し、前記球体の加工精度と相関する累積仕事量を求める累積仕事量算出部と、前記累積仕事量算出部による前記累積仕事量に基づいて、前記移動装置を制御して前記球体の研磨加工を行う研磨制御部と、を備える。
本発明の第二の球体研磨装置は、対向配置されて対向面の間に球体を挟圧可能であり、前記球体を研磨加工するために前記対向面に対し平行な面内において相対移動可能且つ前記対向面に対し垂直な方向に相対移動可能な一対の研磨盤と、前記一対の研磨盤を前記対向面に対し平行な面内において相対移動させるとともに前記対向面に対し垂直な方向に相対移動させる移動装置と、前記移動装置による前記一対の研磨盤の相対移動によって、前記対向面の間に挟圧される前記球体に発生する荷重を計測する荷重センサと、前記球体の研磨加工中における前記荷重センサで計測される前記荷重を経時的に計測し、前記球体の加工精度と相関する累積荷重を算出する累積荷重算出部と、前記累積荷重と前記球体の加工パラメータとを関連付けたデータベース及び前記球体の加工パラメータと前記球体の加工精度とを関連付けたデータベースを記憶する記憶部と、前記累積荷重算出部による前記累積荷重及び前記記憶部に記憶された前記データベースに基づいて、前記移動装置を制御して前記球体の研磨加工を行う研磨制御部と、を備える。
【0008】
本発明の第一の球体研磨方法は、第一の球体研磨装置を用いる球体研磨方法であって、前記球体研磨装置は、対向配置されて対向面の間に球体を挟圧可能であり、前記球体を研磨加工するために前記対向面に対し平行な面内において相対移動可能且つ前記対向面に対し垂直な方向に相対移動可能な一対の研磨盤と、前記一対の研磨盤を前記対向面に対し平行な面内において相対移動させるとともに前記対向面に対し垂直な方向に相対移動させる移動装置と、前記移動装置による前記一対の研磨盤の相対移動によって、前記対向面の間に挟圧される前記球体に発生する荷重を計測する荷重センサと、を備え、前記球体研磨方法は、前記一対の研磨盤の前記対向面に対し平行な面内における相対移動速度に基づいて前記球体の転がり距離を算出する転がり距離算出工程と、前記球体の研磨加工中における前記荷重センサで計測される前記荷重及び前記球体の転がり距離から求まる仕事量を経時的に算出し、前記球体の加工精度と相関する累積仕事量を求める累積仕事量算出工程と、前記累積仕事量算出工程で求まる前記累積仕事量に基づいて、前記移動装置を制御して前記球体の研磨加工を行う研磨制御工程と、を備える。
本発明の第二の球体研磨方法は、第二の球体研磨装置を用いる球体研磨方法であって、前記球体研磨装置は、対向配置されて対向面の間に球体を挟圧可能であり、前記球体を研磨加工するために前記対向面に対し平行な面内において相対移動可能且つ前記対向面に対し垂直な方向に相対移動可能な一対の研磨盤と、前記一対の研磨盤を前記対向面に対し平行な面内において相対移動させるとともに前記対向面に対し垂直な方向に相対移動させる移動装置と、前記移動装置による前記一対の研磨盤の相対移動によって、前記対向面の間に挟圧される前記球体に発生する荷重を計測する荷重センサと、を備え、前記球体研磨方法は、前記球体の研磨加工中における前記荷重センサで計測される前記荷重を経時的に計測し、前記球体の加工精度と相関する累積荷重を算出する累積荷重算出工程と、前記累積荷重算出工程で求まる前記累積荷重に基づいて、前記移動装置を制御して前記球体の研磨加工を行う研磨制御工程と、を備え、前記球体研磨装置は、前記累積荷重と前記球体の加工パラメータとを関連付けたデータベース及び前記球体の加工パラメータと前記球体の加工精度とを関連付けたデータベースを記憶する記憶部、を備え、前記研磨制御工程は、前記累積荷重及び前記データベースに基づいて前記移動装置を制御して前記球体の研磨加工を行う。
【0009】
本発明者は、研磨加工について鋭意研究した結果、球体の研磨加工の累積仕事量又は累積荷重は、球体の加工精度と相関関係があることを見い出した。よって、本発明の球体研磨装置又は本発明の球体研磨方法によれば、球体の研磨加工の累積仕事量又は累積荷重を常時モニタすることにより、球体を狙った真球度に研磨加工できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の球体研磨装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1の球体研磨装置の制御装置の構成を示す図である。
【
図3】
図2の制御装置による球体研磨方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】球体の研磨加工における第二研磨盤の下降位置の経時変化を示す図である。
【
図5】球体の研磨加工における球体に掛かる荷重の経時変化を示す図である。
【
図6】球体の研磨加工における累積仕事量の経時変化を示す図である。
【
図7】球体の真球度と球体の研磨量との関係を示す図である。
【
図8】球体の研磨量と球体の研磨加工における累積仕事量との関係を示す図である。
【
図9】球体の真球度と球体の研磨加工における累積仕事量との関係を示す図である。
【
図10】第一研磨盤の回転速度と第二研磨盤の回転速度の関係を示す図である。
【
図11】第一研磨盤の回転速度と第二研磨盤の回転速度の別例の関係を示す図である。
【
図12】
図1の球体研磨装置の別例の制御装置の構成を示す図である。
【
図13】
図12の制御装置による球体研磨方法を説明するためのフローチャートである。
【
図14】球体及びセンサユニットを保持する保持器の軸線方向断面図である。
図15のXVI-XVI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.球体研磨装置の構成)
本実施形態の球体研磨装置の構成について、図を参照して説明する。
図1に示すように、球体研磨装置1は、基台11、コラム12、第一移動体13、第二移動体14、上下駆動機構15(移動装置)、荷重センサ16及び制御装置18(
図2参照)を備える。
【0012】
基台11は、床面に設置され、中央に上下方向への貫通孔11aを備える。コラム12は、基台11の上面に固定される。コラム12の側面には、上下方向に延びるガイドレール12a,12bが設けられる。
【0013】
第一移動体13は、基台11の上面及び貫通孔11aに配置される。第一移動体13は、第一本体部21、第一研磨盤支持体22、第一盤として第一研磨盤23、第一静圧軸受24及び第一モータ25(移動装置)を備える。
【0014】
第一本体部21は、中央孔21aを有する円盤状に形成される。第一本体部21は、中央孔21aが基台11の貫通孔11aと同軸上に位置するように、基台11の上面に固定される。中央孔21aの中心軸線は、L1であり、鉛直軸方向に一致する。
【0015】
第一研磨盤支持体22は、第一本体部21に対して、中心軸線L1の回りに回転可能に設けられる。第一研磨盤支持体22は、第一本体部21の中央孔21aを貫通する軸部22a、第一本体部21の上面及び下面に対向する円盤状のフランジ部22b,22cを備える。
【0016】
第一研磨盤23は、第一研磨盤支持体22の上側のフランジ部22bの上面に一体的に固定される。つまり、第一研磨盤23は、第一本体部21に対して中心軸線L1の回りに回転可能に設けられる。第一研磨盤23は、環状に形成される。
【0017】
さらに、第一研磨盤23は、一方の面(上面)に中心軸線L1の回りに環状に形成される第一研磨溝23aを有する。第一研磨溝23aの断面形状は、円弧凹状に形成される。第一研磨溝23aは、後述の第二研磨溝33aと協働して研磨対象である球体2を研磨する。これにより、複数の球体2を効率的に研磨加工できる。
【0018】
第一静圧軸受24は、第一本体部21に保持され、第一研磨盤23に一体的に固定される第一研磨盤支持体22を、第一本体部21に対してラジアル方向及びスラスト方向に支持する。
【0019】
詳細には、第一静圧軸受24は、第一本体部21の中央孔21aに保持され、軸部22aの外周面に対して流体圧により支持するラジアル軸受24aを備える。さらに、第一静圧軸受24は、第一本体部21の上面及び下面に保持され、フランジ部22b,22cに対して流体圧により支持するスラスト軸受24b,24cを備える。
【0020】
第一静圧軸受24に供給される流体は、共通の流体供給源から供給され、ラジアル軸受24a、スラスト軸受24b,24cに分岐される。第一静圧軸受24は、さらにオリフィス絞り24d(
図2参照)を備える。
【0021】
オリフィス絞り24dは、ラジアル軸受24a、スラスト軸受24b,24cのそれぞれに設けられる。ここで、第一静圧軸受24を構成するオリフィス絞り24dの位置は可変であるため、流体圧は可変とされる。第一モータ25は、第一本体部21に支持され、第一研磨盤支持体22を回転駆動する。
【0022】
第二移動体14は、コラム12に対して上下方向に移動可能に配置される。第二移動体14は、第二本体部31、第二研磨盤支持体32、第二盤として第二研磨盤33、第二静圧軸受34及び第二モータ35(移動装置)を備える。
【0023】
第二本体部31は、円筒状に形成され、下円盤部及び上円盤部には中央孔31a,31bを有する。第二本体部31の中央孔31a,31bの中心軸線は、L2であり、第一本体部21の中央孔21aの中心軸線L1に一致する。
【0024】
第二本体部31の円筒部は、コラム12の側面のガイドレール12a,12bに摺動可能に設けられる。つまり、第二本体部31は、コラム12に対して上下方向に移動可能である。
【0025】
第二研磨盤支持体32は、第二本体部31に対して、中心軸線L2の回りに回転可能に設けられる。第二研磨盤支持体32は、第二本体部31の下円盤部の中央孔31aを貫通する軸部32a、第二本体部31の下円盤部の下面及び上面に対向する円盤状のフランジ部32b,32cを備える。
【0026】
第二研磨盤33は、第二研磨盤支持体32の下側のフランジ部32bの下面に一体的に固定される。つまり、第二研磨盤33は、第二本体部31に対して中心軸線L2の回りに回転可能に設けられる。第二研磨盤33は、環状に形成される。
【0027】
さらに、第二研磨盤33は、一方の面(下面)に中心軸線L2の回りに環状に形成される第二研磨溝33aを有する。第二研磨溝33aの断面形状は、円弧凹状に形成される。第二研磨溝33aは、研磨対象である球体2を研磨する。
【0028】
第二研磨盤33の第二研磨溝33a側の面は、第一研磨盤23の第一研磨溝23a側の面に対向する。第二研磨溝33aの環状径は、第一研磨溝23aの環状径と同径に形成される。さらに、第二研磨溝33aの断面円弧径は、第一研磨溝23aの断面円弧径と同径に形成される。
【0029】
第二静圧軸受34は、第二本体部31の下円盤部に保持され、第二研磨盤33に一体的に固定される第二研磨盤支持体32を、第二本体部31に対してラジアル方向及びスラスト方向に支持する。詳細には、第二静圧軸受34は、第二本体部31の下円盤部の中央孔31aに保持され、軸部32aの外周面に対して流体圧により支持するラジアル軸受34aを備える。
【0030】
さらに、第二静圧軸受34は、第二本体部31の下円盤部の上面及び下面に保持され、フランジ部32b,32cに対して流体圧により支持するスラスト軸受34b,34cを備える。
【0031】
第二静圧軸受34に供給される流体は、共通の流体供給源から供給され、ラジアル軸受34a、スラスト軸受34b,34cに分岐される。第二静圧軸受34は、さらにオリフィス絞り34d(
図2参照)を備える。オリフィス絞り34dは、ラジアル軸受34a、スラスト軸受34b,34cのそれぞれに設けられる。
【0032】
ここで、第二静圧軸受34を構成するオリフィス絞り34dの位置は可変であるため、流体圧は可変とされる。また、第二静圧軸受34に流体を供給する流体供給源は、第一静圧軸受24に流体を供給する流体供給源と共通して設けられる。第二モータ35は、第二本体部31に支持され、第二研磨盤支持体32を回転駆動する。
【0033】
上下駆動機構15は、コラム12に対して第二本体部31を上下移動させる。上下駆動機構15は、コラム12の上端に固定されるモータ41と、モータ41の出力軸に連結されるボールねじ42と、ボールねじ42に螺合する第二本体部31の上円盤部の中央孔31bに固定されるボールねじナット43とを備える。
【0034】
荷重センサ16は、例えばロードセルであり、第一本体部21と基台11の間に配置される。この荷重センサ16は、第一研磨盤23と第二研磨盤33との間で発生する荷重、すなわち球体2に掛ける荷重を計測する。
【0035】
(2.制御装置の構成)
次に、制御装置18の構成について、図を参照して説明する。
図2に示すように、制御装置18は、転がり距離算出部81と、累積仕事量算出部82と、研磨制御部83と、モータ制御部84と、流体圧調整部85と、記憶部86とを備える。
【0036】
転がり距離算出部81は、対向配置される一対の第一、第二研磨盤23,33の各回転速度等に基づいて、第一、第二研磨溝23a,33a内における球体2の転がり距離を算出する。これにより、球体2の転がり距離の測定装置は不要であり、球体研磨装置1の装置コストの上昇を抑制できる。
【0037】
具体的には、転がり距離算出部81は、第一、第二モータ25,35に備えられる図略のエンコーダからの検出回転速度から求まる第一、第二研磨盤23,33の各回転速度N1,N2、記憶部86に記憶される球体2の直径d及び第一、第二研磨溝23a,33aの直径D(両者は同一であり、
図1参照)並びにサンプリング時間tを次式(1)に代入することで、第一、第二研磨溝23a,33a内における球体2の転がり距離Sを算出する。
【0038】
【0039】
累積仕事量算出部82は、転がり距離算出部81で求める球体2の転がり距離に基づいて、研磨加工の累積仕事量を算出する。具体的には、累積仕事量算出部82は、荷重センサ16からの検出荷重G及び転がり距離算出部81からの球体2の転がり距離Sを次式(2)に代入することで、研磨加工の累積仕事量Wを算出する。式(2)において、tsは研磨加工開始時刻、teは研磨加工終了時刻である。なお、研磨加工の累積仕事量Wの詳細については後述する。
【0040】
【0041】
研磨制御部83は、累積仕事量算出部82で求める研磨加工の累積仕事量に基づいて、球体2の研磨加工を制御する。具体的には、研磨制御部83は、記憶部86に記憶される現球体2の研磨加工の加工条件、すなわち第一、第二研磨盤23,33の各回転速度、第二研磨盤33の下降速度、スパークアウトの開始荷重等を読み込み、モータ制御部84に上記加工条件に従った加工制御開始指令を入力して研磨加工を開始する。
【0042】
そして、研磨制御部83は、記憶部86に記憶されるデータベースから得られる現球体2の真球度と研磨加工の累積仕事量との関係に基づいて、累積仕事量算出部82からの研磨加工の累積仕事量が所定範囲内になったら、モータ制御部84に加工制御停止指令を入力して研磨加工を停止する。なお、データベースの詳細については後述する。
【0043】
モータ制御部84は、研磨制御部83からの加工制御開始指令及び加工制御停止指令に基づいて、各モータ25,35,41を制御する。つまり、モータ制御部84が第一モータ25を回転駆動することにより、第一研磨盤23が回転する。また、モータ制御部84が第二モータ35を回転駆動することにより、第二研磨盤33が回転する。また、モータ制御部84がモータ41を回転駆動することにより、第二移動体14が上下動する。
【0044】
流体圧調整部85は、各オリフィス絞り24d,34dの絞り量を調整する。流体圧調整部85が第一オリフィス絞り24dの位置を移動させることにより、第一静圧軸受24の剛性が変化する。また、流体圧調整部85が第二オリフィス絞り34dの位置を移動させることにより、第二静圧軸受34の剛性が変化する。
【0045】
第一オリフィス絞り24dは、ラジアル軸受24a、スラスト軸受24b,24cの流体圧全てを同時に調整する。つまり、第一オリフィス絞り24dが調整されることで、ラジアル軸受24aによる剛性、及び、スラスト軸受24b,24cによる剛性が調整される。同時に、第一静圧軸受24によるモーメント剛性が調整される。
【0046】
第二オリフィス絞り34dは、ラジアル軸受34a、スラスト軸受34b,34cの流体圧全てを同時に調整する。つまり、第二オリフィス絞り34dが調整されることで、ラジアル軸受34aによる剛性、及び、スラスト軸受34b,34cによる剛性が調整される。同時に、第二静圧軸受34によるモーメント剛性が調整される。
【0047】
なお、第一オリフィス絞り24dをラジアル軸受24a、スラスト軸受24b,24cのそれぞれに設けることで、ラジアル軸受24a、スラスト軸受24b,24cのそれぞれの流体圧を独立して調整することも可能である。また、第二オリフィス絞り34dについても同様である。
【0048】
また、第一,第二オリフィス絞り24d,34dの位置を可変とすることにより、第一,第二静圧軸受24,34の流体圧を可変とした。この他に、流体圧調整部85は、第一,第二静圧軸受24,34への流体供給源による供給される流体圧を調整することもできる。
【0049】
(3.研磨加工の累積仕事量)
次に、研磨加工の累積仕事量について、図を参照して説明する。球体研磨装置1では、第一、第二研磨盤23,33を第一、第二研磨盤23,33の対向面に対し平行な面内において回転させるとともに第二研磨盤33を第一、第二研磨盤23,33の対向面に対し垂直な方向に下降させ(
図4の時刻T1-T2)、球体2に掛かる荷重Gを増加させながら研磨加工を行う(
図5の時刻T1-T2)。
【0050】
そして、球体2に掛かる荷重Gがスパークアウトの開始荷重Gsに達したら(
図5の時刻T2)、第二研磨盤33の下降を停止させ(
図4の時刻T2)、スパークアウトを所定時間行って(
図4及び
図5の時刻T2-T3)、研磨加工を終了する。
【0051】
しかし、課題でも述べたように、研磨加工の加工条件、すなわち第一、第二研磨盤23,33の回転速度、第二研磨盤33の下降速度、スパークアウトの開始荷重等が同一であっても、外乱等により球体2の加工精度、特に真球度にバラツキが発生する場合がある。
【0052】
発明者は、上述の研磨加工の加工条件が同一である場合、球体2の加工精度(真球度)が、球体2の加工パラメータ(研磨量)と相関があること、及び球体2の研磨量は、球体2の研磨加工の累積仕事量と相関があることを見い出した。よって、球体2の真球度と球体2の研磨加工の累積仕事量とは、相関があることになる。
【0053】
球体2の研磨加工の累積仕事量は、単位時間当たりの仕事量、すなわち球体2の研磨加工中において球体2に掛かる単位時間当たりの荷重と球体2の単位時間当たりの転がり距離との積を、研磨加工開始から経時的に求めて順次加算した値で表される。
図4及び
図5に示す球体2の研磨加工では、
図6に示すように、球体2の研磨加工の累積仕事量Wは、時刻T1から時刻T2までは急激に増加し、時刻T2から時刻T3までは漸増する。
【0054】
上述の相関関係の具体例としては、第一、第二研磨盤23,33の回転方向が逆方向で、第一研磨盤23の回転速度N1と第二研磨盤33の回転速度N2が共に一定である場合(
図10参照)、球体2の真球度Cと球体2の研磨量Qとの関係は、
図7の実線で示すように変化し、球体2の研磨量Qと球体2の研磨加工の累積仕事量Wとの関係は、
図8の実線で示すように変化する。
【0055】
図7から明らかなように、球体2の研磨量Qが大きくなるにつれて球体2の真球度Cは悪化する。また、
図8から明らかなように、球体2の研磨加工の累積仕事量Wが大きくなるにつれて球体2の研磨量Qは大きくなる。なお、球体2の真球度Cと球体2の研磨量Qとの関係は、スパークアウトの開始荷重Gsを変化させて球体2の研磨加工を行ったときの実測値から求められる。
【0056】
図7の実線及び
図8の実線の関係から、
図9の実線で示すように、球体2の真球度Cと球体2の研磨加工の累積仕事量Wとの関係を求めることができる。よって、球体2の真球度Cを所定範囲内Ca-Cbになるように球体2を研磨加工するには、球体2の研磨量Qを所定範囲内Qa-Qbに収める必要がある。
【0057】
そして、球体2の研磨量Qを所定範囲内Qa-Qbになるように球体2を研磨加工するには、球体2の研磨加工の累積仕事量Wを所定範囲内Wa-Wbに収める必要がある。つまり、球体2の真球度Cを所定範囲内Ca-Cbになるように球体2を研磨加工するには、球体2の研磨加工の累積仕事量Wを所定範囲内Wa-Wbに収める必要がある。
【0058】
また、上述の相関関係の別の具体例としては、第一、第二研磨盤23,33の回転方向が逆方向で、第二研磨盤33の回転速度がN2max-N2mid-N2minの間で振幅Pで台形波状に変動し、第一研磨盤23の回転速度N1が一定である場合(
図11参照)、球体2の真球度Cと球体2の研磨量Qとの関係は、
図7の一点鎖線で示すように変化し、球体2の研磨量Qと球体2の研磨加工の累積仕事量Wとの関係は、
図8の一点鎖線で示すように変化する。
【0059】
図7から明らかなように、球体2の研磨量Qが大きくなるにつれて球体2の真球度Cは悪化する。また、
図8から明らかなように、球体2の研磨加工の累積仕事量Wが大きくなるにつれて球体2の研磨量Qは大きくなる。
【0060】
図7の一点鎖線及び
図8の一点鎖線の関係から、
図9の一点鎖線で示すように、球体2の真球度Cと球体2の研磨加工の累積仕事量Wとの関係を求めることができる。よって、球体2の真球度Cを所定範囲内Cc-Cdになるように球体2を研磨加工するには、球体2の研磨量Qを所定範囲内Qc-Qdに収める必要がある。
【0061】
そして、球体2の研磨量Qを所定範囲内Qc-Qdになるように球体2を研磨加工するには、球体2の研磨加工の累積仕事量Wを所定範囲内Wc-Wdに収める必要がある。つまり、球体2の真球度Cを所定範囲内Cc-Cdになるように球体2を研磨加工するには、球体2の研磨加工の累積仕事量Wを所定範囲内Wc-Wdに収める必要がある。
【0062】
以上のような、球体2の真球度Cと球体2の研磨量Qとを関連付けたデータ及び球体2の研磨量Qと球体2の研磨加工の累積仕事量Wとを関連付けたデータは、研磨加工の種々の加工条件において作成され、記憶部86にデータベースとして記憶される。
【0063】
これにより、種々の球体2の真球度Cを高めることが可能な最適な累積仕事量Wを的確に見出すことが可能となる。なお、球体2の真球度Cと球体2の研磨加工の累積仕事量Wを記憶部86にデータベースとして記憶するようにしてもよい。
【0064】
(4.制御装置による球体研磨方法)
次に、制御装置18による球体2の研磨方法について、図を参照して説明する。先ず、球体研磨装置1において球体2の研磨が可能な状態に準備する(
図3のステップS1)。具体的には、流体圧調整部85は、第一、第二静圧軸受24,34の流体圧が球体2の研磨を行うときに使用する流体圧となるように、オリフィス絞り24d,34dを設定しておく。そして、モータ制御部84は、モータ41を駆動して、第二移動体14を上方へ移動させておく。
【0065】
この状態で、作業者は、複数の球体2を、第一研磨盤23の第一研磨溝23aに配置する。続いて、モータ制御部84は、モータ41を駆動して、第二移動体14を下方へ移動させて、第二研磨盤33の第二研磨溝33aが球体2に接触する状態とする。
【0066】
つまり、第一研磨盤23と第二研磨盤33の間であって中心軸線L1,L2回りに環状に球体2を挟持する。以上により、球体2の研磨が可能な状態になる。そして、作業者は、研磨加工前後の球体2の外径等を考慮して最適な研磨加工条件を決定し、当該条件読込指令を制御装置18の入力部から入力する。
【0067】
次に、研磨制御部83は、球体2の研磨を開始する(
図3のステップS2、研磨制御工程)。すなわち、研磨制御部83は、入力される条件読込指令に該当する研磨加工条件を記憶部86から読み込み、モータ制御部84に研磨加工開始指令を入力する。
【0068】
モータ制御部84は、入力される研磨加工開始指令に従って、第一モータ25及び第二モータ35を駆動制御して、第一研磨盤23の回転及び第二研磨盤33の回転を所定の回転速度で制御するとともに、モータ41を低速で駆動制御して、第二移動体14を下方へ徐々に移動させ、第一研磨盤23と第二研磨盤33の間で球体2を挟圧して研磨加工を行う。
【0069】
そして、転がり距離算出部81は、第一、第二研磨盤23,33の各回転速度等に基づいて、第一、第二研磨溝23a,33a内における球体2の転がり距離を算出する(
図3のステップS3、転がり距離算出工程)。
【0070】
そして、累積仕事量算出部82は、転がり距離算出部81で求める球体2の転がり距離及び荷重センサ16からの計測荷重に基づいて、研磨加工の累積仕事量を算出する(
図3のステップS4、累積仕事量算出工程)。
【0071】
研磨制御部83は、荷重センサ16で計測した計測荷重がスパークアウト開始荷重に達したか否かを判断し(
図3のステップS5)、計測荷重がスパークアウト開始荷重に達していないときはステップS3に戻って上述の処理を繰り返す。
【0072】
一方、計測荷重がスパークアウト開始荷重に達したらモータ制御部84に対しスパークアウトを指令する(
図3のステップS6、研磨制御工程)。具体的には、モータ制御部84は、第二移動体14の下方への移動を停止し、第一研磨盤23の回転及び第二研磨盤33の回転はそのままで所定の研磨量に近付けるための研磨加工を継続する。
【0073】
そして、研磨制御部83は、累積仕事量算出部82で求める研磨加工の累積仕事量が、所定範囲内に入ったか否かを判断し(
図3のステップS7、研磨制御工程)、研磨加工の累積仕事量が、所定範囲内に入ったら、研磨加工停止指令をモータ制御部84に入力する。
【0074】
モータ制御部84は、入力される研磨加工停止指令に従って、第一モータ25及び第二モータ35を停止して研磨加工を停止し、モータ41を駆動して第二移動体14を上方の退避位置へ移動させ(
図3のステップS8、研磨制御工程)、全ての処理を終了する。
【0075】
以上のように、球体2の研磨加工の累積仕事量は、球体2の加工精度、すなわち真球度と相関関係があることが判明したので、球体2の研磨加工の累積仕事量を常時モニタすることにより、球体2を狙った真球度に研磨加工できる。
【0076】
(5.別形態の制御装置の構成)
上述の制御装置18では、球体2の研磨加工における累積仕事量に基づいて、球体2の研磨加工を制御する構成としたが、球体2の研磨加工における累積荷重に基づいて、球体2の研磨加工を制御する構成としてもよい。前提条件となる第一、第二研磨盤23,33の各回転速度N1,N2が一定又は周期的な変動である(平均で見たときに見た目上速度一定に見える)場合は、式(2)はサンプリング時間tと球体2の転がり距離Sだけが変数となるため、累積荷重tSと累積仕事量Wが比例関係になり、累積仕事量Wに代えて累積荷重tSを用いてもほぼ同様のことが実行可能だからである。
【0077】
すなわち、
図2に対応させて示す
図12に示すように、制御装置19は、制御装置18と比較して、転がり距離算出部81を備えておらず、累積仕事量算出部82の代わりに累積荷重算出部92を備える構成となっている。なお、
図12においては、
図2と同一構成部は同一番号を付して詳細な説明を省略する。
【0078】
この制御装置19の記憶部86には、球体2の真球度と球体2の研磨量とを関連付けたデータ及び球体2の研磨量と球体2の研磨加工の累積荷重とを関連付けたデータが、研磨加工の種々の加工条件において作成されてデータベースとして記憶される。これらのデータは、制御装置18におけるデータと同様の傾向を示しており、球体2の研磨加工の累積荷重を常時モニタすることにより、球体2を狙った真球度に研磨加工できる。
【0079】
(6.別形態の制御装置による球体研磨加工方法)
次に、制御装置19による球体2の研磨加工方法について、
図13を参照して説明する。なお、
図3と同一のステップは同一符号を付して詳細な説明は省略する。先ず、球体研磨装置1において球体2の研磨が可能な状態に準備する(
図13のステップS1)。
【0080】
次に、研磨制御部83は、球体2の研磨を開始する(
図13のステップS2、研磨制御工程)。そして、累積荷重算出部92は、荷重センサ16からの計測荷重に基づいて、研磨加工の累積荷重を算出する(
図13のステップS11、累積荷重算出工程)。
【0081】
研磨制御部83は、荷重センサ16で計測した計測荷重がスパークアウト開始荷重に達したか否かを判断し(
図13のステップS5)、計測荷重がスパークアウト開始荷重に達していないときはステップS11に戻って上述の処理を繰り返す。一方、計測荷重がスパークアウト開始荷重に達したらモータ制御部84に対しスパークアウトを指令する(
図13のステップS6、研磨制御工程)。
【0082】
そして、研磨制御部83は、累積荷重算出部92で求める研磨加工の累積荷重が、所定範囲内に入ったか否かを判断し(
図13のステップS12、研磨制御工程)、研磨加工の累積荷重が、所定範囲内に入ったら、研磨加工停止指令をモータ制御部84に入力する。
【0083】
モータ制御部84は、入力される研磨加工停止指令に従って、第一モータ25及び第二モータ35を停止して研磨加工を停止し、モータ41を駆動して第二移動体14を上方の退避位置へ移動させ(
図13のステップS8、研磨制御工程)、全ての処理を終了する。
【0084】
以上のように、球体2の研磨加工の累積荷重は、球体2の加工精度、すなわち真球度と相関関係があることが判明したので、球体2の研磨加工の累積荷重を常時モニタすることにより、球体2を狙った真球度に研磨加工できる。
【0085】
(7.その他)
上述の実施形態では、第一研磨盤23及び第二研磨盤33は、対向面に第一研磨溝23a及び第二研磨溝33aをそれぞれ有する構成としたが、第一研磨盤23及び第二研磨盤33の対向面の一方に第一研磨溝23a又は第二研磨溝33aを形成し、対向面の他方は研磨溝が形成されていない平坦状の構成としてもよい。
【0086】
また、第一研磨盤23及び第二研磨盤33は、対向面に研磨溝が形成されていない平坦状の構成としてもよい。この場合、第一研磨盤23及び第二研磨盤33の間に挟持される球体2を中心軸線L1(L2)回りに回転させるため、球体研磨装置1は、以下に説明する保持器17を備える構成とする。
【0087】
保持器17の構成について、図を参照して説明する。
図14及び
図15に示すように、保持器17は、環状に形成され、本体部17aと、つば部17bとを備える。本体部17aは、環状で、且つ、円盤状に形成される。
【0088】
本体部17aの内径は、第一研磨溝23aの内径より小さく、本体部17aの外径は、第一研磨溝23aの外径より大きい。さらに、本体部17aの厚み(軸線方向幅)は、球体2の外径より小さい。本体部17aは、第一研磨盤23における第二研磨盤33に対向する側の面、すなわち第一研磨盤23の上面に載置される。
【0089】
本体部17aは、周方向に等角度間隔で複数(本実施形態では、12個)の円形状のポケット17cを備える。各ポケット17cは、中心軸線L3方向に貫通している。12個のポケット17cのうち90度間隔の4個のポケット17cは、保持器17の本体部17aの面上において球体2を全周に亘って囲んでおらず、径方向に開口する開口部17dが設けられる。
【0090】
ポケット17cの開口部17dは、保持器17の本体部17aの外周面に開口する。開口部17dは、クーラントの排出口として機能する。また、ポケット17cの開口部17dの周方向長さは、球体2の直径より小さく形成される。そのため、球体2がポケット17cに配置された状態において、球体2がポケット17cの開口部17dから抜け出すことが規制される。つまり、保持器17の本体部17aは、球体2の径方向移動及び周方向移動を規制する。
【0091】
つば部17bは、本体部17aの内周縁から中心軸線L3方向に延在し、第一研磨盤23に対する径方向移動を規制する。すなわち、つば部17bは、ポケット17cの開口部17dとは反対側に形成される。つば部17bは、周方向に断続して複数形成されるが、周方向全周に亘って形成してもよい。つば部17bの外径は、第一研磨盤23の内径と同程度に形成される。
【0092】
このような保持器17は、球体研磨装置1において以下のように配置される。作業者は、保持器17を第一研磨盤23と第二研磨盤33の対向領域に配置する。具体的には、保持器17を第一研磨盤23の上面において保持器17の中心軸線L3と第一研磨盤23の中心軸線L1とが一致するように載置する。
【0093】
つまり、保持器17のつば部17bが第一研磨盤23の内周側に入り込む状態となるように、且つ、保持器17の本体部17aが第一研磨盤23の上面に接触する状態となるようにする。そして、複数の球体2を、保持器17のそれぞれのポケット17cに配置する。
【0094】
なお、保持器17は、対向面に研磨溝が形成されていない平坦状の第一研磨盤23及び第二研磨盤33で研磨加工を行う場合は必須であるが、対向面のいずれか一方もしくは両方に研磨溝が形成されている第一研磨盤23及び第二研磨盤33で研磨加工を行う場合も用いることができる。
【0095】
また、上述の実施形態では、第一研磨盤23及び第二研磨盤33は、対向面に環状の一つの第一研磨溝23a及び第二研磨溝33aをそれぞれ有する構成としたが、第一研磨盤23及び第二研磨盤33の対向面のいずれか一方もしくは両方に同心円状の複数の研磨溝が形成されている構成としてもよい。また、第一研磨盤23及び第二研磨盤33の対向面のいずれか一方もしくは両方に螺旋状の一つの研磨溝が形成されている構成としてもよい。
【0096】
同心円状の複数の研磨溝を有する研磨盤又は螺旋状の研磨溝を有する研磨盤を用いる場合、累積仕事量算出部82又は累積荷重算出部92は、荷重センサ16からの検出荷重Gを研磨加工中の球体2の個数で割った値で累積仕事量又は累積荷重を求める。
【0097】
また、上述の実施形態では、第一研磨盤23及び第二研磨盤33は、環状に形成される構成としたが、直方体状に形成し、対向面に直線状の研磨溝を形成する構成としてもよい。
【0098】
また、上述した実施形態では、転がり距離算出部81が、第一、第二モータ25,35に備えられるエンコーダからの検出回転速度に基づいて、球体2の転がり距離を算出する構成としたが、転がる球体2を画像認識することで球体2の転がり距離を算出する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1:球体研磨装置、 2:球体、 16:荷重センサ、 17:保持器、 18,19:制御装置、 81:転がり距離算出部、 82:累積仕事量算出部、 83:研磨制御部、 84:モータ制御部、 85:流体圧調整部、 86:記憶部、 92:累積荷重算出部