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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】超音波噴霧装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 17/06 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
B05B17/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017199170
(22)【出願日】2017-10-13
(65)【公開番号】P2019072656
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴史
(72)【発明者】
【氏名】西浦 正洋
【審査官】團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-155908(JP,A)
【文献】特開2014-205114(JP,A)
【文献】特開2015-062892(JP,A)
【文献】特開2009-274022(JP,A)
【文献】登録実用新案第3140444(JP,U)
【文献】特表2013-533084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61M11/00-19/00
B05B17/00-17/08
B05D 1/00- 7/26
F24F 6/00- 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が貯留される貯留室と、
複数の微細孔を有する振動板、及び該振動板を超音波振動させる振動子を備え、前記貯留室内の液体を前記微細孔を通じて外部に噴霧する噴霧部と、
を備える超音波噴霧装置であって、
前記振動板の微細孔の孔径が、10~12μmに設定されるとともに、
前記貯留室の構造及び噴霧部の位置が、超音波噴霧装置を姿勢変化させた場合における、前記貯留室内の液体の前記振動板の微細孔のうち前記液体を通す最下部となる微細孔の位置からの水位の最大値が、50mm以下になるように設定され、
前記貯留室内に、前記液体として、表面張力が30mN/m以下である液体が貯留された、
超音波噴霧装置。
【請求項2】
液体が貯留される貯留室と、
複数の微細孔を有する振動板、及び該振動板を超音波振動させる振動子を備え、前記貯留室内の液体を前記微細孔を通じて外部に噴霧する噴霧部と、
を備える超音波噴霧装置であって、
前記振動板の微細孔の孔径が、10~12μmに設定されるとともに、
前記貯留室の構造及び噴霧部の位置が、超音波噴霧装置を姿勢変化させた場合における、前記貯留室内の液体の前記振動板の微細孔のうち前記液体を通す最下部となる微細孔の位置からの水位の最大値が、50mm以下になるように設定され、
前記液体として、表面張力が30mN/m以下である液体を噴霧する装置として用いられる、
超音波噴霧装置。
【請求項3】
前記水位の最大値が、30mm以上になるように設定される請求項1又は2記載の超音波噴霧装置。
【請求項4】
前記振動板がポリイミド又はステンレスからなる請求項1~のいずれか1項記載の超音波噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の微細孔を有する振動板と振動子とを組み合わせた超音波噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の超音波噴霧装置として、従来、液体が貯留される貯留室と、複数の微細孔を有する振動板、及び中央部に所定の大きさの液体通過孔を有する圧電振動子を備え、該圧電振動子により前記振動板を超音波振動させることにより、前記貯留室内の液体を前記微細孔を通じて外部に噴霧する噴霧部とを備える超音波噴霧装置が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。このような従来の超音波噴霧装置においては、不使用時にも貯留室内の液体の水圧が噴霧部に作用し、振動板の微細孔から液体が漏洩してしまうといった問題があった。
【0003】
このような漏洩の問題を解決するものとして、例えば、チキソトロピー性を有する薬液を貯留する薬液容器と、厚さ方向に複数の微細孔を有し、通電により超音波振動を生じる圧電振動子の振動によって、上記薬液容器から供給される上記薬液を霧化噴霧する振動板とを備え、上記振動板は、上記薬液容器に貯留された薬液と直接接し、上記振動板の非振動時に、接液する上記薬液の上記微細孔からの漏洩が抑制されることを特徴とする超音波霧化装置も提案されている(特許文献2参照)。しかし、このような超音波霧化装置では、使用できる液体に大きな制限が発生してしまう。
【0004】
また、液体容器内の液体を吸液する吸液芯と、該吸液芯が吸液した液体を振動板に供給する吸収体とが備えられており、吸収体は、上記振動板との接触面が、当該吸収体と接触する上記振動板の接触面に対応する形状であり、上記液体容器が自装置に着脱されるときに、上記液体容器とともに上記超音波霧化装置に着脱され、上記振動板が振動することにより、上記吸収体によって供給された液体が霧化噴霧される超音波噴霧装置も提案されている(特許文献3参照)。これによれば液体を安定供給できるとともに不使用時に不要な水圧がかかりにくく、液体の漏洩も防止できるものとなる。しかし、構造が複雑で且つ吸収芯や吸収体などの部品点数も増え、コスト高が避けられず、また、噴霧方向も限られてしまうといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-274022号公報
【文献】特開2014-205114号公報
【文献】特開2015-62892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、構造の複雑化や部品点数の増加を回避しつつ、液体の漏洩を防止することができ、また、それにより噴霧方向や使用できる液体についても大きく制限されることがない超音波噴霧装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 液体が貯留される貯留室と、複数の微細孔を有する振動板、及び該振動板を超音波振動させる振動子を備え、前記貯留室内の液体を前記微細孔を通じて外部に噴霧する噴霧部と、を備える超音波噴霧装置であって、前記振動板の微細孔の孔径が、8~12μmに設定されるとともに、前記貯留室の構造及び噴霧部の位置が、超音波噴霧装置を姿勢変化させた場合における、前記貯留室内の液体の前記振動板の微細孔のうち前記液体を通す最下部となる微細孔の位置からの水位の最大値が、50mm以下になるように設定され、前記貯留室内に、前記液体として、表面張力が40mN/m以下である液体が貯留された、超音波噴霧装置。なお、本発明において表面張力はプレート法で測定されるものとする。
【0008】
(2) 液体が貯留される貯留室と、複数の微細孔を有する振動板、及び該振動板を超音波振動させる振動子を備え、前記貯留室内の液体を前記微細孔を通じて外部に噴霧する噴霧部と、を備える超音波噴霧装置であって、前記振動板の微細孔の孔径が、8~12μmに設定されるとともに、前記貯留室の構造及び噴霧部の位置が、超音波噴霧装置を姿勢変化させた場合における、前記貯留室内の液体の前記振動板の微細孔のうち前記液体を通す最下部となる微細孔の位置からの水位の最大値が、50mm以下になるように設定され、前記液体として、表面張力が40mN/m以下である液体を噴霧する装置として用いられる、超音波噴霧装置。
【0009】
(3) 前記振動板の微細孔の孔径が10μm以上に設定される(1)又は(2)記載の超音波噴霧装置。
【0010】
(4) 前記水位の最大値が、30mm以上になるように設定される(1)~(3)のいずれかに記載の超音波噴霧装置。
【0011】
(5) 前記振動板がポリイミド又はステンレスからなる(1)~(4)のいずれかに記載の超音波噴霧装置。
【発明の効果】
【0012】
以上にしてなる本願発明に係る超音波噴霧装置によれば、振動板の微細孔の孔径、液体の上記水位、及び液体の表面張力をそれぞれ上記のとおり設定するだけで、液体の漏洩が防止され、また、これにより構造が複雑化したり部品点数が増加することもなく、コスト増を回避でき、さらに、噴霧方向や使用できる液体についても大きく制限されることはなく、使用勝手の良い超音波噴霧装置を低コストで提供することができる。
【0013】
特に、振動板の微細孔の孔径を10μm以上に設定することで、十分な噴霧量が確保され、使用に支障を生じることなく不使用時の液体の漏洩を防止できる。
【0014】
また、上記水位の最大値を30mm以上に設定することで、水がすぐに無くならず使い勝手が向上する。
【0015】
また、振動板がポリイミド又はステンレスからなるものでは、より確実に液体の漏洩を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る超音波噴霧装置を示す斜視図。
図2】同じく超音波噴霧装置の底面図。
図3】同じく超音波噴霧装置の使用状態を示す縦断面図。
図4】同じく超音波噴霧装置のノーズ部先端側部分を示す縦断面図。
図5】同じく超音波噴霧装置の上部ケースを除去した状態でのノーズ部を示す平面図。
図6】(a)は図4のVI-VI線断面図、(b)は噴霧部を示す拡大図。
図7】噴霧部の分解斜視図。
図8】液体を貯留室へ充填するときの説明図。
図9】ノーズ部を水平にして液体を噴霧するときの説明図。
図10】ノーズ部を下側へ向けて液体を貯留室全体に満充填させた後、ノーズ部を上側へ向けて液体を噴霧するときの説明図。
図11】ノーズ部を下側へ向けて液体を噴霧するときの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の一実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。本実施形態にかかる超音波噴霧装置1は、図1図6に示すように、本体部11と、本体部11に設けたハンドル部12と、本体部11から延びる、内部に液体供給路13を形成した細長いノーズ部14とを有する本体ケース2と、本体部11に着脱自在に取り付けた液体タンク3と、ノーズ部14の長さ方向に間隔をあけてノーズ部14内に設けた複数の噴霧ユニット4とを備えている。複数の噴霧ユニット4は、連通孔23を介して液体供給路13に連通された貯留室21と、連通孔23を開閉して、貯留室21における液体Wの充填量を調整可能な複数の調整機構24と、貯留室21内の液体Wを外部へ噴霧する噴霧部30とをそれぞれ備えている。
【0018】
液体タンク3は、本体部11に対して着脱可能に設けることが好ましいが、着脱不能に本体部11に一体的に設けることもできる。着脱可能に構成する場合には、液体タンク3は、内容物の使用後は使い捨てとすることもできるし、詰め換え用の液体を液体タンク3に移し替えることで、繰り返して使用できるように構成することもできる。また、本実施の形態では、4つの噴霧ユニット4を設けたが、それ以外の複数個の噴霧ユニット4をノーズ部14の長さ方向に間隔をあけて設けることができる。噴霧ユニット4が一つのみの装置でもよい。また、噴霧ユニット4は、一つの貯留室21に対して一つの噴霧部30が設けられているが、一つの貯留室21に複数の噴霧部30を設けたものでもよい。
【0019】
液体Wは、芳香剤を添加した溶液、抗アレルギー性や除菌・殺菌効果や脱臭効果などの効能を有する薬液、美容液など、任意の成分の液体Wを充填することができる。ただし、表面張力が40mN/m以下であるが用いられる。前記液体Wの表面張力が40mN/mを超えると、後述する微細孔33の径が12μmのものの場合に漏洩が多くなる。好ましくは32mN/m以下、より好ましくは30mN/m以下である。また、下限としては20mN/m以上、より好ましくは26mN/m以上に設定される。
【0020】
ノーズ部14は、その長さ方向と直交方向の断面が半円状の細長い上部カバー15と、上部カバー15の下面側を閉塞する細長い仕切部材16と、上部カバー15と仕切部材16の外周部間に介装したパッキン17と、上部カバー15の下面側を覆うように上部カバー15に固定した細長い平板状の下面板18とを備えている。
【0021】
仕切部材16と上部カバー15間にはノーズ部14の長さ方向に沿ってノーズ部14の略全長にわたって液体供給路13が形成されている。仕切部材16には、ノーズ部14の長さ方向に沿って細長い、上面側を開放した4つの凹部19が、ノーズ部14の長さ方向に間隔をあけて形成され、仕切部材16には凹部19の上面を閉塞する4つの蓋部材20が固定され、蓋部材20と凹部19とでノーズ部14の長さ方向に細長い4つの貯留室21が形成されている。
【0022】
本体部11内には液体タンク3の先端部と液体供給路13の基端部とを接続する接続管22が設けられ、図3に示すように、例えば地面方向に噴霧する場合において、ハンドル部12をノーズ部より上側に配置するとともにノーズ部14を地面に対して略水平に配置した状態で、液体タンク3及び接続管22がノーズ部の長手方向に対して先端側下がりに傾斜するように配置されて、液体タンク3内の液体Wが、接続管22を通じて液体供給路13に充填されるように構成されている。
【0023】
蓋部材20におけるノーズ部14の先端側には液体供給路13と貯留室21とを連通する連通孔23が形成され、貯留室21内には連通孔23を開閉可能な調整機構24を構成する球形のフロート25が設けられ、この調整機構24により、貯留室21に充填される液体Wの最大容量が規制されるように構成されている。ただし、調整機構24として、フロート25に代えて、連通孔23を開閉する電磁弁を設けて、貯留室21内の液体Wの最大容量が規制されるように電磁弁を開閉制御するように構成することも可能である。
【0024】
連通孔23の貯留室21側の口径は、フロート25にて連通孔23を開閉できるようにフロート25の直径よりも小さく設定され、連通孔23の貯留室21側の端部と貯留室21の底面間の距離はフロート25の直径よりも小さく設定され、フロート25は、連通孔23の口縁と貯留室21の底面間において、連通孔23を開閉し得るように遊動自在に保持されている。ただし、蓋部材20及び/又は凹部19に、連通孔23の開閉方向にフロート25を移動自在に案内する案内部を設けることもできる。
【0025】
フロート25の比重は、噴霧する液体Wの比重よりも小さく設定され、例えば図8に示すように、ノーズ部14を地面に対して略水平方向に配置させた状態で、貯留室21内の液体W量が規定値以下の場合には、液体供給路13内の液体Wが貯留室21内に流入するが、図9に示すように、貯留室21内に充填された液体W上にフロート25が浮かんで、貯留室21内に規定値の液体Wが充填されたときには、フロート25がその浮力Fにより連通孔23の貯留室21側の開口縁に圧接されて連通孔23が閉塞され、液体供給路13内の液体Wが貯留室21内にそれ以上流入しないように構成されている。
【0026】
貯留室21の底壁部におけるノーズ部14の基部側には液供給孔26が形成され、底壁部の下面には液供給孔26を閉塞するように噴霧部30が設けられ、下面板18には噴霧部30に対応させて噴霧孔27が形成され、貯留室21内の液体Wは、噴霧部30により霧化されて、噴霧孔27から外部へ噴霧されるように構成されている。噴霧部30は、図7に示すように、貫通孔31を有するベース板32と、貫通孔31を閉塞するようにベース板32に積層状に設けた、複数の微細孔33を有する振動板34と、振動板34をベース板32とともに超音波振動させる圧電素子35とを備えている。
【0027】
振動板34は、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトンなどの合成樹脂シート材、またはステンレスなどの金属薄板で構成できる。特に、ポリイミドとステンレスが、本発明にかかる上記表面張力を有する液体Wとの関係で液漏れを防止する観点から好ましく、同じく液漏れ防止の観点からより好ましくはポリイミドのものとされる。ポリイミドのものはステンレスのものに比べて微細孔33にバリがなく、液体Wの薬剤が詰まりにくい点からも好ましい。
【0028】
また、振動板34の微細孔33の孔径(最大径、本例の円形の場合は直径)は、8~12μmに設定されている。8μm未満は液体が詰まりやすくなり、水位が30mmでも噴霧量を確保できる点で10μm以上がより好ましい。12μmを超えると、上記液体Wが漏れやすくなる。
【0029】
圧電素子35として、ジルコン酸塩(PZT)、メタニオブ酸(PN)、チタン酸バリウム又は酸化亜鉛などのセラミック材料などからなる圧電材料を、図示外の電極板間に配置した、周知の構成のものである。本実施例では、圧電素子35を環状に構成し、中央部に挿通孔36を形成したが、それ以外の形状のものを採用することもできる。
【0030】
ベース板32は、振動板34を保形するためのもので、ステンレスなどからなる金属板で構成されている。ただし、振動板34をステンレスなどの金属板で構成する場合には、このベース板32は省略することもできる。
【0031】
ノーズ部14の下面板18には、各噴霧部30に対応させて各噴霧部30よりもノーズ部14の基部側に1対の発光ダイオード37がそれぞれ設けられ、発光ダイオード37からの光を、噴霧部30から噴霧される霧に対して照射することで、噴霧状態を目視できるように構成されている。
【0032】
ハンドル部12にはリチウムイオン電池などの二次電池40が内装され、本体部11には圧電素子35及び発光ダイオード37を制御するための制御部41が設けられ、圧電素子35は、制御部41から供給される交流電圧により、所望の振幅及び振動数で振動するように構成されている。
【0033】
圧電素子35を振動させていない状態において、噴霧部30の微細孔33を通じて貯留室21内の液体Wが漏洩することを極力防止するため、各噴霧ユニット4の貯留室21の構造及び噴霧部30の位置は、超音波噴霧装置1を姿勢変化させた場合における、前記貯留室21内の液体Wの前記振動板34の微細孔33のうち前記液体Wを通す最下部となる微細孔33の位置からの水位の最大値、本例では、図10に示す状態のH1が、50mm以下になるように設定されている。
【0034】
振動板34の微細孔33のうち前記液体Wを通す最下部となる微細孔33の位置とは、図6(b)に示すように液体を通すベース板32の貫通孔31内部に開口している微細孔33のうち、各姿勢で最も下に位置するものであり、図10の姿勢では図6の符号33’となる。一つの貯留室21に対して複数の噴霧部30が設けられている場合であっても、各姿勢変化において最下部となる噴霧部の微細孔33を同じく特定すればよい。
【0035】
最下部となる微細孔33の位置からの水位とは、たとえば、最下部となる微細孔33の貯留室内部側の開口部の下端位置から計測することが、漏れ防止の観点からより正確であるが、微細であるためこれに限定されず、同じく開口部の中心からの計測水位でもその他の位置からでもよい。
【0036】
このように構成することで、圧電素子35を振動させている場合と、圧電素子35への通電を一時的に停止した場合は云うまでもなく、図示外のスタンドに対して超音波噴霧装置1を、ノーズ部14を上側にして縦向きにセットして保管した場合であっても、貯留室21内の液体Wが噴霧部30から漏洩しない構成されている。なお、最大値H1は、貯留室21の内容量を十分に確保できるとともに良好な噴霧ができる30mm以上に設定することがより好ましい。
【0037】
また、超音波噴霧装置1を住宅の室内や自動車の車内などで使用すること考慮すると、図3に示すように、噴霧部30から噴霧対象物までの距離H2は、例えば100mm~300mm程度であるので、例えばノズル部をその長さ方向と直交方向へ移動させて、広い面を一度にムラなく噴霧できるように、噴霧部30からの噴霧角θは、20°±3°程度に設定することができる。また、隣接する噴霧部30間の距離Lは、想定する噴霧対象物までの距離H2に応じて、隣接する噴霧部30から噴霧される霧が、噴霧対象物において一部重複するように、例えば30mm~100mmに設定できる。
【0038】
この超音波噴霧装置1を使用する際には、先ずノーズ部14を水平にしたり、ノーズ部14の先端を斜め下側へ向けたりすることで、図8図9に示すように、液体タンク3内の液体Wを液体供給路13へ供給して、液体供給路13から複数の貯留室21内へ連通孔23を通じて、フロート25の浮力により決定される規定量の液体Wを充填することになる。次に、圧電素子35により振動板34を超音波振動させて、貯留室21内の液体Wを振動板34の複数の微細孔33から霧状にして噴霧するとともに、ハンドル部12を保持して超音波噴霧装置1を操作し、ノーズ部14に設けた複数の噴霧部30を所望の方向へ向けて、室内のカーテンや絨毯や布団や衣類、自動車のシートバックやシートクッションなど所望の噴霧対象物に対して液体Wを噴霧することになる。
【0039】
このとき、図10に示すように、ノーズ部14の先端側を上側へ向けると、貯留室21内の液体Wが順次噴霧され、貯留室21内の液体Wが空になって、液体Wが噴霧されなくなったときには、ノーズ部14を地面に対して略水平にしたり、ノーズ部14の先端を地面方向に斜め下側へ向けたりすることで、前述と同様にして、液体タンク3内の液体Wを貯留室21に充填することになる。また、図11に示すように、ノーズ部14の先端側を下側へ向けると、貯留室21内の液体Wが順次噴霧されるとともに、液体タンク3から貯留室21へ液体Wが順次補給されることになる。
【0040】
このように、この超音波噴霧装置1では、電動ポンプを使用せず噴霧する液体Wを供給したり、超音波振動を利用して液体Wを噴霧したりするので、装置を小型軽量に構成できるとともに、装置の静粛性を向上できる。また、ノーズ部14の長さ方向に間隔をあけて設けた複数の噴霧部30から液体Wを霧状にして噴霧するので、噴霧する対象が広い面積を有していても効率良く噴霧できる。更に、貯留室21と液体供給路13との連通孔23を開閉可能な調整機構24を設けて、大容量の液体タンク3から小容量の貯留室21へ液体Wを小分けにして供給するので、噴霧部30に作用する液圧を小さくして、噴霧を停止させたときだけでなく、噴霧時、特に液体タンク3よりも下方向へ向けて噴霧するときにおける、振動板34の微細孔33からの液漏れを防止できる。また、噴霧部30からの液体Wの噴霧は、鉛直方向の真上側以外であれば、上側方向、下側方向、水平方向などの任意の方向に噴霧することができるので、装置の噴霧姿勢に対する自由度を大幅に拡大できる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではない。本発明の超音波噴霧装置は、液体が貯留される貯留室と、複数の微細孔を有する振動板、及び該振動板を超音波振動させる振動子を備え、貯留室内の液体Wを微細孔を通じて外部に噴霧する噴霧部とを備えているものであれば、他は省略することも勿論でき、たとえば、液体タンクや流路をなくし、貯留室が一つのみで、該貯留室が液体タンクであるものも含まれる。このように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例
【0042】
(漏洩量の測定)
次に、図7に示した構造の噴霧部のサンプルとして、振動板の素材が異なるもの(ポリイミド製/ステンレス製)2種類について、ポリイミド製のものについては微細孔の孔径が異なるもの(8μm/10μm/12μm)3種類用意し、ステンレス製のものは微細孔の孔径が12μmのものを用意し、それぞれ貯留室に見立てた容器の側壁の下方に取り付け、表面張力の異なる実施例1~3、比較例1、2の液体を容器に入れた場合の異なる水位(30mm/50mm/100mm)での噴霧部からの液の漏洩量を測定した結果について説明する。
【0043】
振動板の寸法は、外径6.0mm、厚み0.05mm、孔数50個/mm2であり、ベース板は、外径14.0mmのSUS板である。圧電素子の寸法は、外径12mm、内径6.0mmである。
【0044】
実施例1~3、比較例1の液体は、水、エタノール、芳香族ヒドロキシ化合物、タンニンの混合液であって、芳香族ヒドロキシ化合物の量(混合比)のみ変更して表面張力値をそれぞれ異なる値に調整したものである。具体的には、実施例1の液体は表面張力26mN/m、実施例2の液体は表面張力30mN/m、実施例3の液体は表面張力38mN/m、比較例1の液体は表面張力54mN/mに調整されたものである。比較例2の液体は水道水(表面張力73mN/m)である。
【0045】
漏洩量は、1分間噴霧して停止した後、3分間の漏水量を測定し、一分間あたりの漏洩量を算出したものであり、測定は5回行い、その平均値とした。噴霧時の圧電素子に加える電流、周波数は、それぞれ350mA、133kHz(一定)とした。
評価「○」、「×」は、実使用状態を考慮し、0.13mL/minまでは許容できるものとして「○」とし、0.13mL/minを超えると「×」とした。
結果を下記表1~4に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
以上の結果から、表面張力の常識に反し、表面張力が小さい実施例1~3、特に実施例1、2の液体で漏洩量が小さくなり、実施例3の液体も水位50mm以下にすれば微細孔の孔径が10μmでも漏れ量を抑えることができ、好ましい結果となることが分かる。
【0051】
(噴霧量の測定)
次に、同じく噴霧部のサンプルとして、ポリイミド製の振動板について微細孔の孔径が異なるもの(8μm/10μm/12μm)3種類用意し、それぞれ貯留室に見立てた容器の側壁の下方に取り付け、表面張力の異なる実施例1~3、比較例1、2の液体を容器に入れて水位30mmとして、噴霧部からの液の噴霧量を測定した結果について説明する。
【0052】
振動板、ベース板、圧電素子の寸法等、実施例、比較例の液体、噴霧時に圧電素子に加える電流、周波数は、すべて上述の漏洩量の測定試験と同様とした。
【0053】
評価「○」、「×」は、ユーザビリティを考慮し、1.5mL/min以上を「○」とし、それ未満を「×」とした。
結果を下記表5に示す。
【0054】
【表5】
【0055】
表5の結果より、孔径10μm以上であれば、水位30mmでも十分な噴霧量が得られることが分かる。
【0056】
(粒度分布)
次に、同じく噴霧部のサンプルとして、ポリイミド製の振動板について微細孔の孔径が異なるもの(8μm/10μm/12μm)3種類用意し、それぞれ貯留室に見立てた容器の側壁の下方に取り付け、表面張力の異なる実施例1~3、比較例1、2の液体を容器に入れて水位50mmとして、噴霧部からの液を噴霧し、粒度分布を測定した結果について説明する。
【0057】
振動板、ベース板、圧電素子の寸法等、実施例、比較例の液体、噴霧時に圧電素子に加える電流、周波数は、すべて上述の漏洩量の測定試験と同様とした。測定は、レーザー回折式粒度分布計を用いた。結果を下記表6に示す。
【0058】
【表6】
【0059】
表6の結果より、諸条件による差が小さく、いずれも安全面、効果面で問題ないことが確認できた。
【符号の説明】
【0060】
1:超音波噴霧装置
2:本体ケース
3:液体タンク
4:噴霧ユニット
11:本体部
12:ハンドル部
13:液体供給路
14:ノーズ部
15:上部カバー
16:仕切部材
17:パッキン
18:下面板
19:凹部
20:蓋部材
21:貯留室
22:接続管
23:連通孔
24:調整機構
25:フロート
26:液供給孔
27:噴霧孔
30:噴霧部
31:貫通孔
32:ベース板
33:微細孔
34:振動板
35:圧電素子
36:挿通孔
37:発光ダイオード
40:二次電池
41:制御部
図1
図2
図3
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図5
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図11